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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】仮撚加工機
(51)【国際特許分類】
   D02G 1/04 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
D02G1/04 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021064738
(22)【出願日】2021-04-06
(65)【公開番号】P2022160158
(43)【公開日】2022-10-19
【審査請求日】2024-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】木村 宏輝
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】実公平02-041182(JP,Y2)
【文献】実公平02-041183(JP,Y2)
【文献】特公平03-017931(JP,B2)
【文献】実開平01-110278(JP,U)
【文献】実開平02-051280(JP,U)
【文献】実開平06-033976(JP,U)
【文献】特開2013-023385(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101130910(CN,A)
【文献】国際公開第2007/028439(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D 1/00 - 13/02
D02G 1/00 - 3/48
D02J 1/00 - 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸に仮撚加工を施す仮撚加工機において、
前記糸が走行する糸走行路が形成された加熱装置と、
前記糸走行路に前記糸を通すときに利用されるサクションガンと、
前記サクションガンが揺動可能な状態で掛けられる掛け部材と、
を備え、
前記サクションガンに設けられた引っ掛け部を前記掛け部材に掛けると、前記掛け部材を支点として前記サクションガンが自重によって揺動することで、前記サクションガンの先端に設けられた吸引部が前記糸走行路の出口部に係合することを特徴とする仮撚加工機。
【請求項2】
前記加熱装置に、複数の前記糸走行路が所定の配列方向に並んで形成されており、
前記掛け部材は前記配列方向に延びていることを特徴とする請求項1に記載の仮撚加工機。
【請求項3】
前記掛け部材は、前記配列方向に延びる円筒状のパイプ部材であることを特徴とする請求項2に記載の仮撚加工機。
【請求項4】
前記掛け部材に、前記複数の糸走行路に対応して、前記サクションガンの位置決めを行うための複数の位置決め部が形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の仮撚加工機。
【請求項5】
前記位置決め部は前記掛け部材の表面に形成された凹部であり、前記引っ掛け部は前記凹部に掛けることができることを特徴とする請求項4に記載の仮撚加工機。
【請求項6】
前記加熱装置に、複数の前記糸走行路が所定の配列方向に並んで形成されており、
複数の前記掛け部材が、前記複数の糸走行路に対応して、前記配列方向に並んで配置されていることを特徴とする請求項1に記載の仮撚加工機。
【請求項7】
前記サクションガンの長手方向における前記引っ掛け部の位置が調整可能であることを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の仮撚加工機。
【請求項8】
前記サクションガンが揺動する際に、前記吸引部を前記出口部に案内する案内部材が設けられていることを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載の仮撚加工機。
【請求項9】
前記吸引部は先細り形状となっており、
前記出口部の内部流路は出口に向かって拡径していることを特徴とする請求項1~8の何れか1項に記載の仮撚加工機。
【請求項10】
前記糸走行路は上下方向に延びており、前記糸走行路の下端部が前記出口部であることを特徴とする請求項1~9の何れか1項に記載の仮撚加工機。
【請求項11】
前記糸走行路に糸を通す作業の際にオペレータが乗る作業台が設けられており、
前記掛け部材は、前記作業台の上面よりも下側に配置されていることを特徴とする請求項10に記載の仮撚加工機。
【請求項12】
前記糸走行路に糸を通す作業の際にオペレータが乗る作業台が設けられており、
前記作業台の前記加熱装置側の縁部に、前記作業台の上面から上方に立ち上がる壁部が設けられており、
前記掛け部材は、前記壁部の上端よりも下側に配置されていることを特徴とする請求項10に記載の仮撚加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸に仮撚加工を施す仮撚加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には仮撚加工機の二次ヒータに糸を通す方法が開示されている。二次ヒータには上下方向に延びる糸走行路(特許文献1ではパイプ)が設けられており、この糸走行路に糸を通すのは容易ではない。そこで、サクションガンの先端に設けられた吸引部を糸走行路の出口部に係合させ、サクションガンで糸を吸引することによって糸走行路への糸通しが行われている。糸通しの際、サクションガンは所定のホルダに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平6-33976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、サクションガンが適切にホルダに固定されていないと、サクションガンの吸引部が糸走行路の出口部に係合せず、糸通しが適切に行えないことがあった。また、ホルダに固定されたサクションガンの位置の微調整は面倒であるし、不適切に固定されたサクションガンを無理に動かすことでホルダが変形するといった問題が生じていた。
【0005】
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、仮撚加工機の加熱装置に形成された糸走行路にサクションガンで容易に糸を通すことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、糸に仮撚加工を施す仮撚加工機において、前記糸が走行する糸走行路が形成された加熱装置と、前記糸走行路に前記糸を通すときに利用されるサクションガンと、前記サクションガンが揺動可能な状態で掛けられる掛け部材と、を備え、前記サクションガンに設けられた引っ掛け部を前記掛け部材に掛けると、前記掛け部材を支点として前記サクションガンが自重によって揺動することで、前記サクションガンの先端に設けられた吸引部が前記糸走行路の出口部に係合することを特徴とするものである。
【0007】
本発明では、サクションガンの引っ掛け部を掛け部材に掛けると、サクションガンが自重によって揺動することで、サクションガンの吸引部が糸走行路の出口部に係合する。このため、サクションガンの厳密な固定が不要となる。また、仮に吸引部が出口部にうまく係合しなかった場合でも、サクションガンは掛け部材に掛けられているだけなので、サクションガンの位置を容易に調整することができる。したがって、本発明によれば、仮撚加工機の加熱装置に形成された糸走行路にサクションガンで容易に糸を通すことができる。
【0008】
本発明において、前記加熱装置に、複数の前記糸走行路が所定の配列方向に並んで形成されており、前記掛け部材は前記配列方向に延びているとよい。
【0009】
このような構成によれば、複数の糸走行路に対して掛け部材を1つ設ければ済むので、部品点数を少なくすることができる。
【0010】
本発明において、前記掛け部材は、前記配列方向に延びる円筒状のパイプ部材であるとよい。
【0011】
掛け部材としてパイプ部材を利用することで、掛け部材を安価で強度の高いものにすることができる。
【0012】
本発明において、前記掛け部材に、前記複数の糸走行路に対応して、前記サクションガンの位置決めを行うための複数の位置決め部が形成されているとよい。
【0013】
このような位置決め部を設けることで、配列方向に長い掛け部材を用いた場合でも、サクションガンの配列方向における位置決めが容易となる。
【0014】
本発明において、前記位置決め部は前記掛け部材の表面に形成された凹部であり、前記引っ掛け部は前記凹部に掛けることができるとよい。
【0015】
このような位置決め部の構成であれば、サクションガンの位置決めをより確実に行うことができる。
【0016】
本発明において、前記加熱装置に、複数の前記糸走行路が所定の配列方向に並んで形成されており、複数の前記掛け部材が、前記複数の糸走行路に対応して、前記配列方向に並んで配置されているとよい。
【0017】
このように複数の糸走行路に対応した複数の掛け部材を設けることで、各掛け部材に位置決め機能を持たせることができる。
【0018】
本発明において、前記サクションガンの長手方向における前記引っ掛け部の位置が調整可能であるとよい。
【0019】
このような構成であれば、サクションガンの引っ掛け部と吸引部との間の長さを容易に調整することができ、より確実に吸引部を出口部に係合させることができる。
【0020】
本発明において、前記サクションガンが揺動する際に、前記吸引部を前記出口部に案内する案内部材が設けられているとよい。
【0021】
このような案内部材を設けることで、サクションガンの吸引部を出口部に案内することができるので、より確実に吸引部を出口部に係合させることができる。
【0022】
本発明において、前記吸引部は先細り形状となっており、前記出口部の内部流路は出口に向かって拡径しているとよい。
【0023】
このような構成によれば、サクションガンの吸引部をより確実且つ円滑に出口部に係合させることができる。
【0024】
本発明において、前記糸走行路は上下方向に延びており、前記糸走行路の下端部が前記出口部であるとよい。
【0025】
このような構成の場合、糸走行路の出口部がオペレータの足元に位置することがあり、糸を糸走行路に通す作業がしづらくなることもある。よって、サクションガンの固定が不要であり、サクションガンを掛け部材に掛けるだけで済む本発明が特に有効である。
【0026】
本発明において、前記糸走行路に糸を通す作業の際にオペレータが乗る作業台が設けられており、前記掛け部材は、前記作業台の上面よりも下側に配置されているとよい。
【0027】
掛け部材が作業台の上面よりも上側に存在すると、オペレータが加熱装置の上部で作業を行う際に掛け部材を踏み台にしやすく、その結果、掛け部材が損傷してしまうことがある。この点、上述のように、掛け部材が作業台の上面よりも下側に配置されていると、踏み台にされにくいので好適である。
【0028】
本発明において、前記糸走行路に糸を通す作業の際にオペレータが乗る作業台が設けられており、前記作業台の前記加熱装置側の縁部に、前記作業台の上面から上方に立ち上がる壁部が設けられており、前記掛け部材は、前記壁部の上端よりも下側に配置されているとよい。
【0029】
掛け部材が壁部の上端よりも上側に存在すると、オペレータが加熱装置の上部で作業を行う際に掛け部材を踏み台にしやすく、その結果、掛け部材が損傷してしまうことがある。この点、上述のように、掛け部材が壁部の上端よりも下側に配置されていると、踏み台にされにくいので好適である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本実施形態に係る仮撚加工機の構成を示す模式図である。
図2】第2加熱装置を作業空間側から見た図である。
図3】サクションガンを掛け部材に掛けた直後の状態を示す側面図である。
図4】サクションガンの吸引部が糸走行路の出口部に係合した状態を示す側面図である。
図5】サクションガンの吸引部が糸走行路の出口部に係合する前後の状態を示す断面図である。
図6】掛け部材の変形例を示す斜視図である。
図7】掛け部材の変形例を示す斜視図である。
図8】掛け部材の変形例を示す斜視図である。
図9】サクションガンの引っ掛け部の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0032】
(仮撚加工機の全体構成)
図1は、本実施形態に係る仮撚加工機1の構成を示す模式図である。仮撚加工機1は、糸Yを供給する給糸部2と、給糸部2から供給された糸Yに対して仮撚加工を施す加工部3と、加工部3で仮撚加工された糸Yを巻き取ってパッケージPを形成する巻取部4とを有して構成される。
【0033】
給糸部2は、複数の給糸パッケージQを保持するクリールスタンド10を有しており、加工部3に複数の糸Yを供給する。加工部3は、糸走行方向の上流側から順に、第1フィードローラ11、撚止ガイド12、第1加熱装置13、冷却装置14、加撚装置15、第2フィードローラ16、交絡装置17、第3フィードローラ18、第2加熱装置19、第4フィードローラ20が配置された構成となっている。巻取部4は、加工部3で仮撚加工が施された複数の糸Yを複数の巻取装置21で巻き取って複数のパッケージPを形成する。
【0034】
仮撚加工機1は、図1の左右方向に間隔を空けて配置された主機台5及び巻取台6を有する。主機台5及び巻取台6は、図1の紙面垂直方向に延びており、互いに対向配置される。主機台5の上部と巻取台6の上部とは、支持フレーム7によって連結されている。加工部3を構成する各装置は、主に主機台5や支持フレーム7に取り付けられている。主機台5と巻取台6と支持フレーム7とによって囲まれた作業空間8は、オペレータが糸掛け作業等の種々の作業を行う空間である。糸Yは主に作業空間8の周りを走行する。作業空間8の床面には作業台9が置かれており、オペレータは作業台9に乗って種々の作業を行う。
【0035】
(加工部)
第1フィードローラ11は、巻取台6の上部に配置されており、給糸部2から供給された糸Yを第1加熱装置13に向けて送る。
【0036】
撚止ガイド12は、第1フィードローラ11の糸走行方向下流側、且つ、第1加熱装置13の糸走行方向上流側に配置されている。撚止ガイド12は、後述する加撚装置15で糸Yに付与された撚りが、撚止ガイド12よりも糸走行方向上流側に伝播することを防止する。
【0037】
第1加熱装置13は、支持フレーム7に配置されており、第1フィードローラ11から送られてきた糸Yを加熱する。
【0038】
冷却装置14は、第1加熱装置13の糸走行方向下流側、且つ、加撚装置15の糸走行方向上流側に配置されており、第1加熱装置13で加熱された糸Yを冷却する。
【0039】
加撚装置15は、主機台5の上部に配置されており、糸Yに撚りを付与する。加撚装置15には、ベルト式、フリクションディスク式、ピン式等の種類があるが、本実施形態では加撚装置15の種類は限定されない。
【0040】
第2フィードローラ16は、主機台5において加撚装置15の下方に配置されており、加撚装置15で撚りが付与された糸Yを交絡装置17に向けて送る。第2フィードローラ16による糸Yの搬送速度は、第1フィードローラ11による糸Yの搬送速度よりも速い。このため、糸Yは、第1フィードローラ11と第2フィードローラ16との間で延伸される。
【0041】
交絡装置17は、主機台5において第2フィードローラ16の下方に配置されており、糸Yに交絡を付与する。
【0042】
第3フィードローラ18は、主機台5において交絡装置17の下方に配置されており、交絡装置17によって交絡が付与された糸Yを第2加熱装置19に向けて送る。第3フィードローラ18による糸Yの搬送速度は、第2フィードローラ16による糸Yの搬送速度よりも遅い。このため、糸Yは、第2フィードローラ16と第3フィードローラ18との間で弛緩される。
【0043】
第2加熱装置19は、主機台5において第3フィードローラ18の下方に配置されており、第3フィードローラ18から送られてきた糸Yを加熱する。
【0044】
第4フィードローラ20は、巻取台6の下部に配置されており、第2加熱装置19によって熱処理された糸Yを巻取装置21に向けて送る。第4フィードローラ20による糸Yの搬送速度は、第3フィードローラ18による糸Yの搬送速度よりも遅い。このため、糸Yは、第3フィードローラ18と第4フィードローラ20との間で弛緩される。
【0045】
以上のように構成された加工部3では、第1フィードローラ11と第2フィードローラ16との間で延伸された糸Yに、加撚装置15によって撚りが付与される。加撚装置15により形成される撚りは、撚止ガイド12までは伝播されるが、撚止ガイド12よりも糸走行方向上流側には伝播しない。延伸されつつ撚りが付与された糸Yは、第1加熱装置13で加熱された後、冷却装置14で冷却されて熱固定される。撚りが付与された糸Yは、加撚装置15を通過した後、第2フィードローラ16に至るまでに撚りが解かれる。しかし、糸Yの撚りは上述のように熱固定されているため、各フィラメントが波状の仮撚りされた状態を維持する。
【0046】
さらに、糸Yは、第2フィードローラ16と第3フィードローラ18との間で弛緩されながら、交絡装置17によって交絡が付与される。交絡が付与された糸Yは、第3フィードローラ18と第4フィードローラ20との間で弛緩されながら、第2加熱装置19で熱固定される。最後に、第4フィードローラ20から送られた糸Yは、巻取装置21によって巻き取られ、パッケージPが形成される。
【0047】
(第2加熱装置への糸掛け作業)
ここで、第2加熱装置19(本発明の加熱装置に相当)への糸掛け作業について説明する。オペレータは、給糸パッケージQから引き出された糸Yを、第2加熱装置19の上方に設けられた不図示の吸引装置に吸引させる。その状態で、第2加熱装置19よりも糸走行方向の上流側の各装置に糸掛けを行う。その際、オペレータは、糸Yを保持するのに適宜サクションガンを使用する。第2加熱装置19の内部には、複数の糸Yが走行する複数の糸走行路30が図1の紙面垂直方向(以下、「配列方向」と称する)に並んで形成されている。糸走行路30の上端部は入口部31、下端部は出口部32となっている。第2加熱装置19が上下方向に長いため、糸走行路30も上下方向に延びる細長い筒状空間となっており、サクションガンを糸走行路30に挿入することはできない。
【0048】
そこで、オペレータは、サクションガンの先端に設けられた吸引部を出口部32に係合させることにより、糸走行路30内に吸引流を発生させる。この状態で、不図示の吸引装置から外した糸Yを入口部31に持ってくると、糸Yがサクションガンに吸引されることで、糸走行路30に糸Yを通すことができる。
【0049】
従来、このような第2加熱装置19への糸掛け作業の際には、サクションガンをホルダに固定していた。しかしながら、サクションガンが不適切に固定されると、サクションガンの吸引部を糸走行路30の出口部32に係合させることができず、糸走行路30内の糸Yの吸引が適切に行えないことがあった。また、ホルダに固定されたサクションガンの位置の微調整は面倒であるし、不適切に固定されたサクションガンを無理に動かすことでホルダが変形するといった問題が生じていた。そこで、本実施形態では、サクションガンをホルダに固定するのではなく、サクションガンを掛け部材40に掛ける構成を採用している。
【0050】
図1に示すように、掛け部材40は、第2加熱装置19の作業空間8側、且つ、作業台9の壁部9aの上端よりも下側に配置されている。壁部9aは、作業台9の第2加熱装置19側の縁部に設けられており、作業台9の上面から上方に立ち上がっている。図2は、第2加熱装置19を作業空間8側から見た図である。図2に示すように、掛け部材40は、配列方向に延びる円筒状のパイプ部材であり、配列方向において第2加熱装置19の全域にわたって設けられている。
【0051】
図3は、サクションガン50を掛け部材40に掛けた直後の状態を示す側面図である。図4は、サクションガン50の吸引部51が糸走行路30の出口部32に係合した状態を示す側面図である。糸走行路30の出口部32は、第2加熱装置19の本体から下向きに突出している。出口部32の下端部は、作業空間8側に向かって屈曲している。図2に示すように、出口部32の先端には案内部材34が固定されている。案内部材34については後で詳細に説明する。なお、図2以外の図面では、案内部材34の図示を省略している。
【0052】
サクションガン50は、先端側から順番に吸引部51、配管52、持ち手部53が形成された長尺状の部材である。サクションガン50は、不図示の吸引装置に可撓性のホースを介して接続されており、吸引部51から空気を吸引することができるように構成されている。サクションガン50を掛け部材40に掛けたときに吸引部51が出口部32のほうを向くように、配管52の先端部は屈曲している。配管52の途中部にはU字状の引っ掛け部54が取り付けられている。引っ掛け部54は、不図示のボルトによって配管52に固定されている。このため、ボルトを緩めることによって、サクションガン50の長手方向における引っ掛け部54の位置を調整することができる。引っ掛け部54の位置を調整可能とする構成は、ボルトを用いた構成に限定されるものではない。また、引っ掛け部54の位置を調整可能とすることは必須ではなく、引っ掛け部54が配管52に溶接等で固定されていてもよい。
【0053】
オペレータは、糸Yを糸走行路30に通す際、サクションガン50を掛け部材40に掛ける。このとき、配列方向においてサクションガン50を掛ける位置は、糸Yを通そうとしている糸走行路30と略同じ位置とされる。図3に示すように、サクションガン50を掛け部材40に掛けた直後は、サクションガン50の吸引部51は糸走行路30の出口部32から離間している。ここで、サクションガン50は、引っ掛け部54より先端側の部分の重量よりも引っ掛け部54より基端側の部分の重量のほうが大きい。したがって、掛け部材40に掛けられたサクションガン50は、掛け部材40を支点にして図3の時計回りに揺動する。その結果、図4に示すように、サクションガン50の吸引部51が出口部32と係合し、糸走行路30の内部に吸引流が発生する。この状態で、不図示の吸引装置から外した糸Yを入口部31に持ってくると、糸Yがサクションガン50に吸引されることで、糸走行路30に糸Yを通すことができる。その後、サクションガン50で吸引保持されている糸Yを巻取装置21まで掛ける。
【0054】
サクションガン50の吸引部51が円滑に出口部32と係合するように、いくつかの工夫が施されている。図2に示すように、出口部32の先端には案内部材34が固定されている。案内部材34は、サクションガン50が揺動する際に、吸引部51を出口部32に案内するための湾曲状の案内面34aを有する。したがって、配列方向において、サクションガン50を掛け部材40に掛ける位置が多少ずれていても、サクションガン50の揺動時に、吸引部51を案内面34aによって出口部32に案内することができる。なお、案内部材34は出口部32と一体的に構成されていてもよい。
【0055】
図5は、サクションガン50の吸引部51が糸走行路30の出口部32に係合する前後の状態を示す断面図である。図5に示すように、吸引部51は、円錐台形状を有しており、先端に向かうほど外径が小さくなる先細り形状となっている。一方、出口部32の内部流路は出口に向かって拡径しており、その傾斜角度は吸引部51の外周面と略同じとされている。このため、吸引部51が出口部32の内部に入りやすく、且つ、吸引部51と出口部32とがほとんど隙間がない状態で係合可能である。
【0056】
(効果)
本実施形態では、サクションガン50の引っ掛け部54を掛け部材40に掛けると、サクションガン50が自重によって揺動することで、サクションガン50の吸引部51が糸走行路30の出口部32に係合する。このため、サクションガン50の厳密な固定が不要となる。また、仮に吸引部51が出口部32にうまく係合しなかった場合でも、サクションガン50は掛け部材40に掛けられているだけなので、サクションガン50の位置を容易に調整することができる。したがって、第2加熱装置19に形成された糸走行路30にサクションガン50で容易に糸Yを通すことができる。
【0057】
本実施形態では、第2加熱装置19に、複数の糸走行路30が所定の配列方向に並んで形成されており、掛け部材40は配列方向に延びている。このような構成によれば、複数の糸走行路30に対して掛け部材40を1つ設ければ済むので、部品点数を少なくすることができる。
【0058】
本実施形態では、掛け部材40は、配列方向に延びる円筒状のパイプ部材である。掛け部材40としてパイプ部材を利用することで、掛け部材40を安価で強度の高いものにすることができる。
【0059】
本実施形態では、サクションガン50の長手方向における引っ掛け部54の位置が調整可能である。このような構成であれば、サクションガン50の引っ掛け部54と吸引部51との間の長さを容易に調整することができ、より確実に吸引部51を出口部32に係合させることができる。
【0060】
本実施形態では、サクションガン50が揺動する際に、吸引部51を出口部32に案内する案内部材34が設けられている。このような案内部材34を設けることで、サクションガン50の吸引部51を出口部32に案内することができるので、より確実に吸引部51を出口部32に係合させることができる。
【0061】
本実施形態では、吸引部51は先細り形状となっており、出口部32の内部流路は出口に向かって拡径している。このような構成によれば、サクションガン50の吸引部51をより確実且つ円滑に出口部32に係合させることができる。
【0062】
本実施形態では、糸走行路30は上下方向に延びており、糸走行路30の下端部が出口部32である。このような構成の場合、糸走行路30の出口部32がオペレータの足元に位置することがあり、糸Yを糸走行路30に通す作業がしづらくなることもある。よって、サクションガン50の固定が不要であり、サクションガン50を掛け部材40に掛けるだけで済む本発明が特に有効である。
【0063】
本実施形態では、糸走行路30に糸Yを通す作業の際にオペレータが乗る作業台9が設けられており、作業台9の第2加熱装置19側の縁部に、作業台9の上面から上方に立ち上がる壁部9aが設けられており、掛け部材40は、壁部9aの上端よりも下側に配置されている。掛け部材40が壁部9aの上端よりも上側に存在すると、オペレータが第2加熱装置19の上部で作業を行う際に掛け部材40を踏み台にしやすく、その結果、掛け部材40が損傷してしまうことがある。この点、上述のように、掛け部材40が壁部9aの上端よりも下側に配置されていると、踏み台にされにくいので好適である。
【0064】
(他の実施形態)
以下、本発明の変形例について説明する。
【0065】
掛け部材40に、サクションガン50の位置決めを行うための位置決め部を設けるようにしてもよい。例えば、図6に示す掛け部材41では、配列方向におけるサクションガン50の位置決めを行うために、複数の位置決め部41aが形成されている。各位置決め部41aは、掛け部材41の表面に形成された凹部であり、配列方向において各糸走行路30と同じ位置に形成されている。サクションガン50の引っ掛け部54を位置決め部41aに掛けることができる。このような位置決め部41aを設けることで、配列方向に長い掛け部材41を用いた場合でも、サクションガン50の配列方向における位置決めが容易となる。また、位置決め部41aを凹部とすることで、サクションガン50の位置決めをより確実に行うことができる。ただし、位置決め部の具体的構成はこれに限定されるものではない。例えば、掛け部材の所定位置に目印を付し、この目印を位置決め部とすることも可能である。
【0066】
上記実施形態では、掛け部材40を円筒状のパイプ部材とした。しかしながら、掛け部材40の具体的な構成はこれに限定されるものではない。例えば、図7に示すように、配列方向に直交する断面がJ字形状の掛け部材42を用いてもよい。これ以外にも、サクションガン50を掛けたときにサクションガン50が自重で揺動できれば、掛け部材の形状はどのようなものでもよい。
【0067】
上記実施形態では、掛け部材40が配列方向に延びる単一の部材であった。しかしながら、例えば図8に示すように、複数の掛け部材43が、複数の糸走行路30に対応して、配列方向に並んで配置されていてもよい。複数の掛け部材43は、第2加熱装置19に固定された支持部材44に取り付けられている。このように複数の糸走行路30に対応した複数の掛け部材43を設けることで、各掛け部材43に位置決め機能を持たせることができる。なお、図8では、配列方向に直交する断面がJ字形状の掛け部材43を図示しているが、掛け部材43の形状はこれに限定されるものではない。
【0068】
上記実施形態では、サクションガン50の引っ掛け部54がU字状であった。しかしながら、掛け部材に掛けたときにサクションガン50が自重で揺動可能であれば、引っ掛け部54の形状は適宜変更が可能である。例えば、図9に示すサクションガン50の引っ掛け部56は、円筒部56aと、円筒部56aを配管52に固定する固定部56bとを有する。このような構成であっても、配列方向に直交する断面がJ字形状の掛け部材45に円筒部56aを置くことで、サクションガン50を掛け部材45に掛けることができる。この場合、掛け部材45は、図7に示すように1つでもよいし、図8に示すように複数設けられていてもよい。
【0069】
上記実施形態では、作業台9に壁部9aが設けられていた。しかしながら、作業台9の壁部9aを省略してもよい。この場合、オペレータが掛け部材40を踏み台として利用しないように、掛け部材40が作業台9の上面よりも下側に配置されているのが好ましい。
【0070】
上記実施形態では、上下方向に延びる第2加熱装置19に本発明を適用するものとした。しかしながら、本発明を上下方向以外に延びる加熱装置に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0071】
1:仮撚加工機
9:作業台
9a:壁部
19:第2加熱装置(加熱装置)
30:糸走行路
32:出口部
40、41、42、43、45:掛け部材
41a:位置決め部
50:サクションガン
54:引っ掛け部
Y:糸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9