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7586760プリフォーム、樹脂製容器およびそれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】プリフォーム、樹脂製容器およびそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/16 20060101AFI20241112BHJP
   B29C 49/22 20060101ALI20241112BHJP
   B29C 49/06 20060101ALI20241112BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20241112BHJP
   B65D 1/02 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
B29C45/16
B29C49/22
B29C49/06
B29C45/26
B65D1/02 110
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021075978
(22)【出願日】2021-04-28
(62)【分割の表示】P 2021505789の分割
【原出願日】2020-06-12
(65)【公開番号】P2021120226
(43)【公開日】2021-08-19
【審査請求日】2023-06-12
(31)【優先権主張番号】P 2019109558
(32)【優先日】2019-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 要一
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-256328(JP,A)
【文献】特開2004-160670(JP,A)
【文献】特開2004-148616(JP,A)
【文献】特開2002-104362(JP,A)
【文献】特開平11-90975(JP,A)
【文献】特開平7-258394(JP,A)
【文献】国際公開第2019/078358(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/006686(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/012067(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/16
B29C 49/22
B29C 49/06
B29C 45/26
B65D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部と、胴部と、底部とを備え、前記胴部および前記底部が、未使用の樹脂材料であるバージン材で構成される内層と使用済の樹脂材料を再生利用して調製されたリサイクル材で構成される外層とで構成される二層構造を備える、プリフォームの製造方法であって、
第1の金型に前記リサイクル材を射出し外層材を射出成形する第1の射出成形工程と、
前記第1の射出成形工程で成形された前記外層材を第2の金型に収容して、前記外層材の内側に前記バージン材を射出し内層材を射出成形する第2の射出成形工程と、を含む射出成形工程を有し、
記第1の射出成形工程において、前記外層材には、薄膜部が形成され、
前記薄膜部は、前記薄膜部の周辺の前記外層材よりも薄く形成され、
前記第2の射出成形工程において、前記バージン材は、前記薄膜部が前記バージン材の流れによって破断されることで、キャビティ内に流し込まれ
前記射出成形工程において、前記プリフォームは、前記プリフォームの総重量に対する前記リサイクル材の重量比が50重量%以上となるように、かつ、前記胴部における前記内層の厚みに対する前記外層の厚みの比が1.5以上となるように、前記内層材および前記外層材を成形するように構成されている、
プリフォームの製造方法。
【請求項2】
前記薄膜部は、前記外層材の外面から押圧されて形成される凹部として形成される、
請求項1に記載のプリフォームの製造方法。
【請求項3】
前記第2の射出成形工程で射出される前記バージン材の射出量が、前記第1の射出成形工程で射出される前記リサイクル材の射出量よりも少ないことで、前記リサイクル材の再加熱の程度を小さくする、
請求項1または2に記載のプリフォームの製造方法。
【請求項4】
開口部と、胴部と、底部とを備え、前記胴部および前記底部がバージン材で構成される内層とリサイクル材で構成される外層とで構成される二層構造を備えるプリフォームを射出成形する射出成形工程と、
前記プリフォームを温調する温調工程と、
前記プリフォームをブロー成形して樹脂製容器を成形するブロー成形工程と、
を含む、ホットパリソン式で樹脂製容器を製造する方法であって、
前記射出成形工程は、
第1の金型に前記リサイクル材を射出し外層材を射出成形する第1の射出成形工程と、
前記第1の射出成形工程で成形された前記外層材を第2の金型に収容して、前記外層材の内側に前記バージン材を射出し内層材を射出成形する第2の射出成形工程と、を含み
記第1の射出成形工程において、前記外層材には、薄膜部が形成され、
前記薄膜部は、前記薄膜部の周辺の前記外層材よりも薄く形成され、
前記第2の射出成形工程において、前記バージン材は、前記薄膜部が前記バージン材の流れによって破断されることで、キャビティ内に流し込まれ
前記射出成形工程において、前記プリフォームは、前記プリフォームの総重量に対する前記リサイクル材の重量比が50重量%以上となるように、かつ、前記胴部における前記内層の厚みに対する前記外層の厚みの比が1.5以上となるように、前記内層材および前記外層材を成形するように構成されている、
樹脂製容器の製造方法。
【請求項5】
前記薄膜部は、前記外層材の外面から押圧されて形成される凹部として形成される、
請求項に記載の樹脂製容器の製造方法。
【請求項6】
ホットパリソン式で前記樹脂製容器を製造することを含む、
請求項またはに記載の樹脂製容器の製造方法。
【請求項7】
前記第2の射出成形工程で射出される前記バージン材の射出量が、前記第1の射出成形工程で射出される前記リサイクル材の射出量よりも少ないことで、前記リサイクル材の再加熱の程度を小さくする、
請求項からのいずれか一項に記載の樹脂製容器の製造方法。
【請求項8】
開口部と、胴部と、底部とを備え、前記胴部および前記底部がバージン材で構成される内層とリサイクル材で構成される外層とで構成される二層構造を備える、プリフォームを製造する製造装置であって
1の金型を備え、第1のホットランナー型から前記第1の金型に前記リサイクル材を射出することで、外層材を射出成形する第1の射出成形部と、
前記第1の射出成形部において成形された前記外層材を収容する第2の金型を備え、第2のホットランナー型から前記外層材の内側に前記バージン材を射出することで、内層材を射出成形する第2の射出成形部と、
を備え、
前記第1の射出成形部において、前記外層材には、薄膜部が形成され、
前記薄膜部は、前記薄膜部の周辺の前記外層材よりも薄く形成され、
前記第2の射出成形部において、前記バージン材は、前記薄膜部を破断するように射出されることで、キャビティ内に流し込まれ
前記プリフォームは、前記プリフォームの総重量に対する前記リサイクル材の重量比が50重量%以上となるように、かつ、前記胴部における前記内層の厚みに対する前記外層の厚みの比が1.5以上となるように、前記内層材および前記外層材を成形するように構成されている、
前記プリフォームの製造装置。
【請求項9】
前記第1のホットランナー型は、前記外層材に向かって移動可能なピンを備え、
第1のホットランナー型から前記第1の金型に前記リサイクル材を射出した後に、前記ピンが前記外層材に向かって移動することで、前記外層材の外面から押圧されて凹状の前記薄膜部が形成される、
請求項に記載のプリフォームの製造装置。
【請求項10】
前記第2の射出成形部で射出される前記バージン材の射出量が、前記第1の射出成形部で射出される前記リサイクル材の射出量よりも少ないことで、前記リサイクル材の再加熱の程度を小さくする、
請求項またはに記載のプリフォームの製造装置。
【請求項11】
開口部と、胴部と、底部とを備え、前記胴部および前記底部がバージン材で構成される内層とリサイクル材で構成される外層とで構成される二層構造を備えるプリフォームから樹脂製容器を製造する製造装置であって
1の金型を備え、第1のホットランナー型から前記第1の金型に前記リサイクル材を射出することで、外層材を射出成形する第1の射出成形部と、
前記第1の射出成形部において成形された前記外層材を収容する第2の金型を備え、第2のホットランナー型から前記外層材の内側に前記バージン材を射出することで、内層材を射出成形する第2の射出成形部と、
前記プリフォームをブロー成形して樹脂製容器を成形するブロー成形部と、
を備え、
前記第1の射出成形部において、前記外層材には、薄膜部が形成され、
前記薄膜部は、前記薄膜部の周辺の前記外層材よりも薄く形成され、
前記第2の射出成形部において、前記バージン材は、前記薄膜部を破断するように射出されることで、キャビティ内に流し込まれ
前記プリフォームは、前記プリフォームの総重量に対する前記リサイクル材の重量比が50重量%以上となるように、かつ、前記胴部における前記内層の厚みに対する前記外層の厚みの比が1.5以上となるように、前記内層材および前記外層材を成形するように構成されている、
樹脂製容器の製造装置。
【請求項12】
前記第1のホットランナー型は、前記外層材に向かって移動可能なピンを備え、
第1のホットランナー型から前記第1の金型に前記リサイクル材を射出した後に、前記ピンが前記外層材に向かって移動することで、前記外層材の外面から押圧されて凹状の前記薄膜部が形成される、
請求項1に記載の樹脂製容器の製造装置。
【請求項13】
前記樹脂製容器はホットパリソン式で製造される、
請求項1または1に記載の樹脂製容器の製造装置。
【請求項14】
前記第2の射出成形部で射出される前記バージン材の射出量が、前記第1の射出成形部で射出される前記リサイクル材の射出量よりも少ないことで、前記リサイクル材の再加熱の程度を小さくする、
請求項1から1のいずれか1項に記載の樹脂製容器の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリフォーム、樹脂製容器およびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内層が新生プラスチック、外層が再生プラスチックで構成される2層構造のプラスチック製ボトルが開示されている。特許文献2には、リサイクル樹脂により筒状の外層材を成形する外層成形工程と、外層材の内面側に外層材よりも薄肉の筒状のバージン樹脂で構成される内層材を積層成形する内層成形工程と、を有する積層樹脂成形品の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開2002-103429号公報
【文献】日本国特開2002-104362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年プラスチックごみによる海洋汚染が大きく問題視されるようになり、プラスチックの3R(リユース、リデュース、リサイクル)の取り組みが国際的に活発化してきている。食品/飲料/医薬品用ボトル(食品系容器)で、内外二層構造で射出成形されたプリフォームをブロー成形し、内容物が接触する部分(内層)はバージン材、非接触部分(外層)はリサイクル材を、各々利用するという方法が開発されている。しかし、従来の二層成形法ではボトルのヘイズ(濁度)が大きくなり易く、十分な透明性を備えたボトルは製造困難であり、商用化(実用化)は進んでいなかった。
【0005】
本発明は、リサイクル材の使用比率が大きくても高い透明性を具備する二層構造の樹脂製容器を形成できるプリフォーム、リサイクル材の使用比率が大きくても高い透明性を具備する二層構造の樹脂製容器およびそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決することのできる本発明の一態様は、
開口部と、胴部と、底部とを備え、前記胴部および前記底部がバージン材で構成される内層とリサイクル材で構成される外層とで構成される二層構造を備える、プリフォームであって、
前記プリフォームの総重量に対する前記リサイクル材の重量比が50重量%以上であり、
前記胴部における前記内層の厚みに対する前記外層の厚みの比が1.5以上であり、
前記プリフォームから成形される容器の胴部のヘイズが1.8%以下である、
プリフォームである。
【0007】
上記課題を解決することのできる本発明の別の態様は、
開口部と、胴部と、底部とを備え、前記胴部および前記底部がバージン材で構成される内層とリサイクル材で構成される外層とで構成される二層構造を備える、プリフォームの製造方法であって、
第1の金型に前記バージン材または前記リサイクル材を射出し内層材または外層材を射出成形する第1の射出成形工程と、
前記第1の射出成形工程で成形された前記内層材または前記外層材を第2の金型に収容して、前記内層材の外側に前記リサイクル材を射出し外層材を射出成形するか、または前記外層材の内側に前記バージン材を射出し内層材を射出成形する第2の射出成形工程と、を含み、
前記プリフォームの総重量に対する前記リサイクル材の重量比が50重量%以上となるように、かつ、前記胴部における前記内層の厚みに対する前記外層の厚みの比が1.5以上となるように、前記内層材および前記外層材を成形する、プリフォームの製造方法である。
【0008】
上記課題を解決することのできる本発明の別の態様は、
開口部と、胴部と、底部とを備え、前記胴部および前記底部がバージン材で構成される内層とリサイクル材で構成される外層とで構成される二層構造を備える、樹脂製容器であって、
前記樹脂製容器の総重量に対する前記リサイクル材の重量比が50重量%以上であり、
前記胴部における前記内層の厚みに対する前記外層の厚みの比が1.5以上であり、
前記胴部のヘイズが1.8%以下である、
樹脂製容器である。
【0009】
上記課題を解決することのできる本発明の別の態様は、
開口部と、胴部と、底部とを備え、前記胴部および前記底部がバージン材で構成される内層とリサイクル材で構成される外層とで構成される二層構造を備えるプリフォームを射出成形する射出成形工程と、
前記プリフォームを温調する温調工程と、
前記プリフォームをブロー成形して樹脂製容器を成形するブロー成形工程と、
を含む、樹脂製容器の製造方法であって、
前記射出成形工程は、
第1の金型に前記バージン材または前記リサイクル材を射出し内層材または外層材を射出成形する第1の射出成形工程と、
前記第1の射出成形工程で成形された前記内層材または前記外層材を第2の金型に収容して、前記内層材の外側に前記リサイクル材を射出し外層材を射出成形するか、または前記外層材の内側に前記バージン材を射出し内層材を射出成形する第2の射出成形工程と、を含み、
前記射出成形工程において、前記プリフォームの総重量に対する前記リサイクル材の重量比が50重量%以上となるように、かつ、前記胴部における前記内層の厚みに対する前記外層の厚みの比が1.5以上となるように、前記内層材および前記外層材を成形する、樹脂製容器の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リサイクル材の使用比率が大きくても高い透明性を具備する二層構造の樹脂製容器を形成できるプリフォーム、リサイクル材の使用比率が大きくても高い透明性を具備する二層構造の樹脂製容器およびそれらの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るプリフォームを表す断面図である。
図2】実施形態に係る樹脂製容器を表す断面図である。
図3】実施形態に係るプリフォームの製造工程を表すフローチャートである。
図4】実施形態に係るプリフォームの射出成形の態様を表す断面図である。
図5】実施形態に係るプリフォームの冷却の一態様を表す断面図である。
図6】実施形態に係るプリフォームの冷却の別の態様を表す断面図である。
図7】実施形態に係る樹脂製容器の製造工程を表すフローチャートである。
図8】実施形態に係る樹脂製容器の製造装置を表す模式図である。
図9】実施形態の変形例に係る樹脂製容器の製造工程を表すフローチャートである。
図10】実施形態の変形例に係る樹脂製容器の製造装置を表す模式図である。
図11】実施形態の変形例に係るプリフォームの射出成形の態様を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。尚、本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0013】
まず、図1を参照して、実施形態に係るプリフォーム10について説明する。図1はプリフォーム10の断面図である。プリフォーム10は開口部12、開口部12と連なるネック部14、ネック部14と連なる胴部16、および胴部16と連なる底部18を備える、筒状の樹脂成形品である。胴部16および底部18は、内層22と外層24とで構成される二層構造を備えている。内層22は、未使用の樹脂材料であるバージン材で構成される。外層24は、使用済の樹脂材料を再生利用して調製されたリサイクル材で構成される。バージン材およびリサイクル材は非晶状態で透明性を有する熱可塑性樹脂(結晶性プラスチック)、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を母材とする。プリフォーム10は後述する樹脂製容器30を成形するために使用される。
【0014】
プリフォーム10の総重量に対するリサイクル材の重量比は50重量%以上である。また当該重量比は、樹脂材料のリサイクル率の観点から60重量%以上であると好ましく、成形される容器の透明性の観点から70重量%以下であると好ましい。胴部16における内層22の厚みth1に対する外層24の厚みth2の比は1.5以上である。また当該比は、成形される容器の透明性の観点から3.0以下であると好ましい。
【0015】
プリフォーム10の底部18における内層22及び外層24には、それぞれ射出成形により形成されるゲート痕22a,24aが存在している。内層22のゲート痕22aの高さhe1は、底部18における外層24の厚みth3よりも小さい。
【0016】
次に、図2を参照して、実施形態に係る容器30について説明する。図2は容器30の断面図である。容器30はプリフォーム10をブロー成形することにより得られたボトル形状の樹脂製容器である。容器30は、開口部12と連なるネック部14、ネック部14と連なる胴部36、および胴部36と連なる底部38を備える。プリフォーム10と同様に、胴部36及び底部38は、バージン材で構成される内層42とリサイクル材で構成される外層44とで構成される二層構造を備えている。
【0017】
容器30の総重量に対するリサイクル材の重量比および胴部36における内層42の厚みth11に対する外層44の厚みth12の比は、それぞれプリフォーム10の総重量に対するリサイクル材の重量比および胴部16における内層22の厚みth1に対する外層24の厚みth2の比と同様であるため、説明を省略する。
【0018】
容器30の胴部36のヘイズは1.8%以下、より好ましくは1.4%以下、さらに好ましくは1.0%以下である。特に限定されるものではないが、ヘイズの下限は0.1%であってもよい。ここでいうヘイズとは、胴部36の任意の箇所を10か所選択して測定した値の平均値を表す。当該ヘイズは、「プラスチック-透明材料のヘーズの求め方(JIS K 7136:2000)」に従って、ヘイズメーター(曇り度測定器)を使用して測定される。容器30は、リサイクル材の使用比率が大きくても高い透明性を具備する二層構造の樹脂製容器であり、実用性に優れつつプラスチック材料の高いリサイクル率を達成できる。
【0019】
次に、図3図6を参照して、プリフォーム10の製造方法について説明する。図3はプリフォーム10の製造工程を示す図である。図4はプリフォーム10を射出成形の態様を示す図である。図5及び図6はプリフォーム10の射出成形後の冷却の態様を示す図である。
【0020】
図3に示すように、本実施形態のプリフォーム10の製造方法は、二段階の射出成形工程となる、内層材成形工程S1と、外層材成形工程S2とを含む。ここで、図4を参照して各工程について説明する。内層材成形工程S1では、第1のキャビティ型52、第1の射出コア型54およびネック型56で構成される第1の金型50が形成するキャビティ内に、第1のゲート58を介してバージン材を射出する。第1の金型50は第1のホットランナー型59を備えている。第1のホットランナー型59は、溶融状態(例えばPET樹脂では約255℃で溶融された状態)の樹脂材料が流れる流路内を第1のゲート58に向けて移動可能なバルブピン59aを有している。すなわち、第1の金型50における第1のゲート58はバルブゲートとして構成されている。バージン材のキャビティ内への充填が完了したところで、所定時間第1の金型50の型締めを維持し、その後開放することで、内層材60を成形する。なお、第1のキャビティ型52や第1の射出コア型54には、内層材60を冷却させる冷却媒体(流体)が流れる回路(媒体流通孔または媒体流通溝)が設けられ、その冷却媒体は、例えば約5℃~約20℃の範囲内で適宜設定される。
【0021】
成形された内層材60は、第1の射出コア型54およびネック型56と共に上昇されて第1のキャビティ型52から離される。また、第1の射出コア型54はさらに上昇されて内層材60から離される。そして、内層材60はネック型56に保持された状態で図示を省略する回転手段によってネック型56ごと回転されて、第2のキャビティ型72の上方に配置される。外層材成形工程S2では、第2の射出コア型55および第2のキャビティ型72に対して内層材60を保持するネック型56を型締めすることで、第2のキャビティ型72、第2の射出コア型55およびネック型56で構成される第2の金型70に内層材60を収容する。そして、第2の金型70が形成するキャビティ内のうちの、内層材60の外側の部分に第2のゲート78を介して溶融状態のリサイクル材を射出する。第2の金型70は第2のホットランナー型79を備えている。第2のホットランナー型79は、樹脂材料が流れる流路内を第2のゲート78に向けて移動可能なバルブピンを有してもよい。すなわち、第2の金型70における第2のゲート78はバルブゲートとして構成されてもよい。リサイクル材のキャビティ内への充填が完了したところで、所定時間第2の金型70の型締めを維持し、その後開放することで、外層材80および内層材60で構成されるプリフォーム10を成形する。なお、本実施形態では、前のプリフォーム10の外層材成形工程S2の間に、次のプリフォーム10の内層材成形工程S1が実施される。また、第2のキャビティ型72や第2の射出コア型55にも、外層材80および内層材60を冷却させる冷却媒体が流れる回路が設けられ、その冷却媒体は、例えば約5℃~約20℃の範囲内で適宜設定される。なお、第1の金型50と第2の金型70とで冷却媒体の温度、つまり、冷却強度を異ならせても良い(例えば、第1の金型50より第2の金型70の冷却媒体の温度を低く設定する。)。さらに、第2の金型70でも、第2のキャビティ型72と第2の射出コア型55とで冷却強度を変えても構わない(例えば、第2の射出コア型55より第2のキャビティ型72の冷却媒体の温度を低く設定する。)。
【0022】
内層材成形工程S1および外層材成形工程S2では、プリフォーム10の総重量に対するリサイクル材(外層材80)の重量比が50重量%以上となるように、かつ、プリフォームの胴部16における内層22(内層材60)の厚みに対する外層24(外層材80)の厚みの比が1.5以上となるように、設計された第1の金型50および第2の金型70を用いることで、内層材60および外層材80を成形する。ここで、第1の金型50における第1のゲート58は、その長さle1がプリフォーム10の底部18における外層24(外層材80)の厚みth3よりも小さい。
【0023】
本実施形態のプリフォーム10の製造方法は、外層材成形工程S2の後に、プリフォームを冷却する冷却工程S3を含むと、射出成形工程の冷却時間の短縮化を図ることができ、生産効率の観点で好ましい(図3)。なお、ここでいう冷却工程S3は、第2の金型70の型締めを維持することにより第2の金型70でプリフォーム10を冷却する工程を含まない。ここで、図5及び図6を参照して、冷却工程S3の態様を説明する。
【0024】
図5は、冷却工程S3の一態様の様子を示す図である。図5に示す冷却工程S3では、第2の金型70から解放されたプリフォーム10を第3のキャビティ型100に収容し、プリフォーム10にエア導入部材110を気密可能に当接する。エア導入部材110は、中空で内部にエア流通孔が設けられたロッド部材112と、嵌合コア(ブローコア部材)114と、により構成されている。ロッド部材112は嵌合コア114の内部に上下動可能に収容されている。ロッド部材112の先端にはエアを噴出または吸引可能な内方流通口116が設けられている。エアの温度はプリフォーム10や容器30の肉厚に応じ、例えば約0℃~約20℃(常温)の範囲内で適宜設定される。嵌合コア114は、エア導入部材110がプリフォーム10に挿入されると(気密可能に当接されると)、ネック部14に嵌る(密接する)ように構成されている。これにより、プリフォーム10の内部のエアがネック部14から嵌合コア114の外側に漏れることを防止できる。ロッド部材112と嵌合コア114との間の隙間は、プリフォーム10に対しエアを給排するためのエア流通経路である。嵌合コア114の先端とロッド部材112とが形成する隙間が、エアを噴出または吸引可能な外方流通口118を構成する。内方流通口116および外方流通口118は、それぞれ送風口および排出口となり得る。例えば、エア導入部材110の送風口からプリフォーム10の内部にエアを送り、エア導入部材110の排出口からエアをプリフォーム10の外部に排出することで、プリフォーム10を冷却する。また、第3のキャビティ型100にも、外層材80を冷却させる冷却媒体用の回路が設けられ、その流体媒体は、例えば約5℃~約80℃、より好ましくは10℃~70℃、さらに好ましくは20℃~65℃の範囲内で適宜設定される。
【0025】
図6は、冷却工程S3の別の態様の様子を示す図である。図6に示す冷却工程S3では、第2の金型70から解放されたプリフォーム10を第4のキャビティ型120に収容し、プリフォーム10を第4のキャビティ型120と昇降可能に構成されたコア型130とにより挟み込むことで、プリフォーム10を冷却する。なお、第4のキャビティ型120とコア型130にも、例えば約5℃~約80℃、より好ましくは10℃~70℃、さらに好ましくは20℃~65℃の範囲で設定された冷却媒体が流通する回路が設けられている。
【0026】
次に図4図7を参照して、容器30の製造方法について説明する。図7は、容器30の製造工程を示す図である。図7に示すように、本実施形態の容器30の製造方法は、プリフォーム10を射出成形する射出成形工程S11と、プリフォーム10を温調する温調工程S12と、プリフォーム10をブロー成形して容器30を成形するブロー成形工程S13と、を含む。
【0027】
まず、射出成形工程S11について説明する。射出成形工程S11は、プリフォーム10の製造方法において説明した内層材成形工程S1と、外層材成形工程S2と、を含む。射出成形工程S11において、プリフォーム10の内層材成形工程S1と、外層材成形工程S2と、で説明したように、プリフォーム10の総重量に対するリサイクル材(外層材80)の重量比が50重量%以上となるように、かつ、プリフォームの胴部16における内層22(内層材60)の厚みに対する外層24(外層材80)の厚みの比が1.5以上となるように、内層材60および外層材80を成形する。内層材成形工程S1で用いられる第1の金型50、外層材成形工程S2で用いられる第2の金型70およびその他射出成形工程S11において採用される態様は、プリフォーム10の製造方法において説明したもの(図4)と同様であるので、説明を省略する。
【0028】
続いて、温調工程S12について説明する。温調工程S12は、射出成形されたプリフォーム10の温度をブロー成形に適した温度帯に調整する工程である。温調工程S12では温調ポッドや温調コア、赤外線ヒーター等を使用してプリフォーム10が温調される。また、温調工程S12において、プリフォーム10の製造方法の冷却工程S3で説明した態様(図5および図6)を採用して、プリフォームを冷却しつつ温調してもよい。温調工程S12が、プリフォーム10の製造方法の冷却工程S3で説明した態様である場合、容器30の生産効率が向上するため好ましい。特に後述する図8に示すホットパリソン式の樹脂製容器の製造装置においてプリフォーム10及び容器30の製造を連続的に実施する場合、容器30の生産効率が向上するため好ましい。また、ホットパリソン式ブロー成形法により、二層プリフォームの射出成形とブロー成形とを連続して行う場合、内層22と外層24の境界部分が冷却不足となり(徐冷され)、ヘイズが大きくなり易い。しかし、温調工程S12にて冷却工程S3で説明した態様(図5および図6)を採用すれば、ブロー成形で必要な熱量を維持しつつ、境界部分の冷却効率を高めることができ、容器30のヘイズを低減させることが可能になる。なお、温調工程S12で冷却工程S3を採用する場合は、第3のキャビティ型100、第4のキャビティ型120およびコア型130に流される冷却媒体の温度は、例えば、約10℃~約65℃とより広範囲で適宜設定される。
【0029】
続いて、ブロー成形工程S13について説明する。ブロー成形工程S13において、ブローキャビティ型にプリフォーム10を収容する。続いて、任意選択的にプリフォーム10を延伸ロッドによって延伸させつつ、ブローコア型からブローエアを導入することでプリフォーム10を容器30の形状まで膨らませ、容器30を製造する。その後、金型から容器30を開放する。以上の手順によって、容器が製造される。
【0030】
ここで、図8を参照して、本実施形態の容器30の製造装置150を説明する。図8は、容器30の製造装置150の機能ブロック図である。製造装置150は、プリフォーム10を製造するための射出成形部152と、製造されたプリフォーム10の温度を調整するための温調部154と、プリフォーム10をブローして容器30を製造するためのブロー成形部(ブロー装置の一例)156と、製造された容器30を取り出すための取出部158とを備えている。プリフォーム10および容器30は、図示を省略する搬送手段によって、製造装置150内で、射出成形部152、温調部154、ブロー成形部156、取出部158の順に、搬送される。射出成形部152、温調部154及びブロー成形部156の態様としては、プリフォーム10の製造方法及び容器30の製造方法において説明した態様(図4図6)の構成が採用される。製造装置150は、ホットパリソン式の樹脂製容器の製造装置であって、プリフォーム10及び容器30の製造を連続的に実施する。
【0031】
ところで、プラスチックの3Rの取り組みが国際的に活発化する中、PET容器の領域でも「ボトルtоボトル」を最終目標に、様々なリサイクル化の取り組みが行われている。例えば、洗剤用/トナー用PETボトル(非食品系容器)は、使用済PETボトルを粉砕し得られたフレーク材や再生ペレット材とバージン材とのブレンド材が利用され、製造されることが多い。一方、食品/飲料/医薬品用PETボトル(食品系容器)ではリサイクル材はほとんど用いられず、バージン材で製造されている。この種のPETボトルは衛生面で高い安全性が要求されるためである。そこで、内外二層構造で射出成形されたプリフォームをブロー成形し、内容物が接触する部分(内層)はバージン材、非接触部分(外層)はリサイクル材を、各々利用するという方法が開発されている。
【0032】
しかし、従来の二層成形法ではボトルのヘイズ(濁度)が大きくなり易く、十分な透明性を備えたボトルは製造困難であり、商用化(実用化)は進んでいなかった。また、ブレンド材を用いる場合も、ボトルの透明性を考慮すると、再生ペレット材の使用比率(重量比率)はせいぜい30重量%程度が限度であり、更なる改善が必要であった。
【0033】
上記構成を備えるプリフォーム10によれば、リサイクル材の使用比率が大きくても高い透明性を具備する二層構造の樹脂製容器30を形成できる。具体的には30重量%の再生ペレット材を含むブレンド材で構成される二層のプリフォームから形成される容器と同等の透明性を備える樹脂製の容器を形成できる。
【0034】
また、プリフォーム10は、ゲート痕22aの高さhe1が底部18における外層24の厚みth3よりも小さいことで、リサイクル材を射出する際にバージン材が溶融してリサイクル材と混合することを抑制できる。これによりプリフォーム10の底部18における白化を抑制でき、高い透明性を具備する二層構造の樹脂製容器30を形成できるプリフォーム10を提供できる。
【0035】
また、リサイクル材はバージン材と比較して結晶化の速度が早く、白化が生じやすい。リサイクル材の白化を抑制するべく、先にバージン材で構成される内層材60を成形して、その後にリサイクル材で構成される外層材80を成形したところ、リサイクル材の射出によりバージン材が結晶化し易い温度帯(例えばPET樹脂の場合は約150℃)に再加熱されて徐冷される現象が発生し、バージン材のリサイクル材との境界表面で白化(結晶化)が生じやすいことがわかった。そこで、プリフォーム10の全重量に対するバージン材の重量比を低くし、外層24に対する内層22の厚みを薄くすることにより、第1の金型50や第2の金型70(第2の射出コア型55)による内層22の冷却効率を上げて、バージン材のリサイクル材との境界表面で白化を抑制することに成功した。すなわち、上記のプリフォーム10の製造方法によれば、バージン材で構成される内層材60を成形した後にリサイクル材で構成される外層材80を成形し、プリフォーム10の総重量に対するリサイクル材の重量比が50重量%以上となるように、かつ、胴部16における内層22の厚みth1に対する外層24の厚みth2の比が1.5以上となるように、内層材60および外層材80を成形することにより、リサイクル材の使用比率が大きくても高い透明性を具備する二層構造の樹脂製容器30を形成できるプリフォーム10を提供できる。
【0036】
また、上記のプリフォーム10の製造方法は、バージン材が射出される第1のゲート58の長さle1が底部18における外層24の厚みth3よりも小さいことで、内層材60に形成されるゲート痕22aの高さhe1が小さくなり、リサイクル材を射出する際にバージン材が溶融してリサイクル材と混合することを抑制できる。これによりプリフォーム10の底部18における結晶化等による白化を抑制でき、高い透明性を具備する二層構造の樹脂製容器30を形成できるプリフォーム10を提供できる。
【0037】
また、上記のプリフォーム10の製造方法において、外層材成形工程S2の後に、プリフォーム10を冷却する冷却工程S3を設けることにより、射出成形時のプリフォーム10の冷却時間を短縮することができる。これにより、プリフォーム10の冷却の間に次のプリフォーム10の成形を開始でき、生産効率を向上させることができる。
【0038】
また、上記のプリフォーム10の製造方法の冷却工程S3でエアを送排してプリフォーム10を冷却することで、プリフォーム10の冷却を早めることができ、プリフォーム10の生産効率を向上させつつ、より透明性に優れる二層構造の樹脂製容器30を形成できるプリフォーム10を提供できる。
【0039】
また、上記のプリフォーム10の製造方法の冷却工程S3でプリフォーム10を第4のキャビティ型120とコア型130とにより挟み込むことで、プリフォーム10の冷却を早めることができ、プリフォーム10の生産効率を向上させつつ、より透明性に優れる二層構造の樹脂製容器30を形成できるプリフォーム10を提供できる。
【0040】
また、上記の容器30の製造方法によれば、プリフォーム10の内層材60を成形した後にプリフォーム10の外層材80を成形し、プリフォーム10の総重量に対するリサイクル材の重量比が50重量%以上となるように、かつ、胴部16における内層22の厚みth1に対する外層24の厚みth2の比が1.5以上となるように、プリフォーム10の内層材60および外層材80を成形することにより、リサイクル材の使用比率が大きくても高い透明性を具備する二層構造の容器30を提供できる。また、従来のホットパリソン式の二層成形方法では、容器のヘイズが大きくなり易く、十分な透明性を備えたボトルは製造困難であり、商用化(実用化)は進んでいなかった。上記の方法によれば特にホットパリソン式の二層成形方法において、リサイクル材の使用比率が大きくても高い透明性を具備する二層構造の容器30を提供できる。
【0041】
また、上記の容器30の製造方法における射出成形工程S11および温調工程S12を、プリフォーム10の製造方法において説明した態様とすることで、より透明性に優れる二層構造の樹脂製容器を形成でき、また容器成形のサイクルタイムを短縮することができ、生産効率を向上させることができる。
【0042】
ところで、上記の実施形態では内層材成形工程S1の後に、外層材成形工程S2を実施する態様を説明したが、本発明はこの態様に限定されない。図9は、上記実施形態の変形例に係る樹脂製容器の製造工程を表すフローチャートである。図9に示すように、第1の射出成形工程S31、第1の温調工程S32、第2の射出成形工程S33、第2の温調工程S34、ブロー成形工程S35をこの順に実施して樹脂製容器を製造してもよい。プリフォームの成形の際には、第1の射出成形工程S31、第1の温調工程S32、第2の射出成形工程S33、第2の温調工程S34をこの順に実施してもよい。
【0043】
この変形例における第1の射出成形工程S31は、プリフォームの内層材および外層材のいずれかを成形する工程であり、第2の射出成形工程S33は、第1の射出成形工程S31で成形されていないプリフォームの内層材および外層材のいずれかを成形してプリフォームを成形する工程である。第1の温調工程S32は、第1の射出成形工程S31で成形されたプリフォームの内層材または外層材の温度を調整する工程である。第1の温調工程S32は、プリフォームの内層材または外層材を冷却する工程であってもよい。第1の射出成形工程S31と第2の射出成形工程S33との間の第1の温調工程S32で、最初に成形されるプリフォームの内層材または外層材を後冷却することで(特に、第2の射出成形工程S33で樹脂材料が積層される面を後冷却することで)、二層プリフォームのヘイズ低減(内層材と外層材との境界表面における白化を抑制することによるヘイズ低減)や成形サイクル短縮を実現できる。第2の温調工程S34は、第2の射出成形工程S33で成形されたプリフォームの温度を調整する工程である。第2の温調工程S34は、プリフォームを冷却する工程であってもよい。ブロー成形工程S35は、第2の温調工程S34で温調されたプリフォームをブロー成形して樹脂製容器を得る工程である。
【0044】
図10は、上記実施形態の変形例に係る樹脂製容器の製造装置350を表す模式図である。図10に示すように、製造装置350は、第1の射出装置362を備える第1の射出成形部352と、第1の温調部354と、第2の射出装置363を備える第2の射出成形部353と、第2の温調部355と、ブロー成形部356と、取出部358と、を備える6ステーション式の製造装置である。製造装置350において、プリフォームおよび樹脂製容器は回転盤等で構成される搬送装置370によって図示する矢印の方向に搬送されて、上述した製造工程に従って成形される。各ステーションの具体的な態様としては、上述した実施形態のものを適宜採用できる。
【0045】
ところで、上記の実施形態では内層材成形工程S1の後に、外層材成形工程S2を実施する二段階の射出成形工程を含む態様を説明したが、先に外層材を成形した後に、内層材を成形する態様も採用し得る。以下、本実施形態の変形例について図11を参照して説明する。図11は、上記の実施形態の変形例に係るプリフォーム210の射出成形の態様を表す断面図である。
【0046】
以下では、プリフォーム210の成形とプリフォーム210から樹脂製容器とを成形する製造装置を基に、本変形例を説明する。本変形例に係る製造装置は、射出成形部の構成が異なる以外は、上述の実施形態・変形例において説明した製造装置150や製造装置350と同様である。本変形例の製造装置の射出成形部は、外層材280を成形する第1の金型250と、外層材280の内側に内層材260を成形する第2の金型270と、を備えている(図11参照)。
【0047】
第1の金型250は、第1のキャビティ型252と、第1の射出コア型254と、ネック型256と、を含む。第1の金型250は、これらの型が型締めされることで形成されるキャビティ内にリサイクル材を流し込むことにより外層材280を形成するように構成されている。リサイクル材は、第1のホットランナー型259から供給され、第1のゲート258を介してキャビティ内に流し込まれる。
【0048】
第1のホットランナー型259は、リサイクル材が流れる流路内を第1のゲート258に向けて移動可能なバルブピン259aを有している。バルブピン259aは、リサイクル材がキャビティ内に充填された後に第1のゲート258を通じて第1の射出コア型254に近接した位置まで移動するように構成されている。これにより、外層材280の底部の中央部に厚みが周辺部よりも薄い薄膜部281が形成される。
【0049】
第2の金型270は、第2のキャビティ型272と、第2の射出コア型255と、ネック型256と、を含む。ネック型256は、第1の金型250で成形された外層材280を保持した状態で第2の金型270の位置まで移動する共通のネック型である。第2の射出コア型255のコアの径は、第1の射出コア型254のコアの径よりも内層材260の層の厚さ分だけ小さく形成されている。また、第2のキャビティ型272の上面視での凹部の大きさ(径)と、第1のキャビティ型252の上面視での凹部の大きさ(径)とは同じ径となるように形成されている。第2の金型270は、これらの型が型締めされることで形成されるキャビティ内にバージン材を流し込むことにより、第1の金型250で成形された外層材280の内側に内層材260を形成するように構成されている。
【0050】
バージン材は、第2のホットランナー型279から供給され、第2のゲート278を介してキャビティ内に流し込まれる。バージン材は、外層材280に形成されている薄膜部281がバージン材の流れによって破断されることで、キャビティ内に流し込まれる。外層材280の薄膜部281が破断されることにより、プリフォーム210の底部218(外層材280の底部)に開口部282が形成される。キャビティ内に流し込まれるバージン材は、開口部282を介してキャビティ内に充填される。
【0051】
本変形例では、上記した第1の金型250によって外層材280を形成する外層材成形工程を実施し、その後第2の金型270によって外層材280の内側に内層材260を成形する内層材成形工程を実施する二段階の射出成形工程が採用される。本変形例では、当該二段階の射出成形工程によって成形されるプリフォーム210の総重量に対するリサイクル材の重量比及び胴部における内層の厚みに対する外層の厚みの比が上述した実施形態と同様となるように、プリフォーム210が成形される。また本変形例では、プリフォーム210から成形される容器の胴部のヘイズが上述した実施形態と同様となるように、容器が成形される。
【0052】
また、本変形例では、内層材成形工程S1の後に外層材成形工程S2を実施する方法(図7参照)と異なり、第1の射出成形工程で最初に成形される外層材280(リサイクル材)にゲート痕が形成されない。よって、プリフォーム210の底部領域においてバージン材とリサイクルとが溶融して混合する可能性が一層低減され、底部の白化(結晶化等)もより確実に抑制できる。また、第2の射出成形工程で射出される内層材260(バージン材)の射出量は、第1の射出成形工程で射出される外層材280(リサイクル材)の射出量よりも少なく、最初に成形された外層材280を再加熱する程度も小さくなる。よって、バージン材とリサイクル材との境界表面で白化(結晶化)する現象も生じ辛くなる。その結果、本変形例では、高い透明性を具備する二層構造の樹脂製容器を形成できるプリフォーム210を、より簡単に製造して提供できる。
【0053】
なお、本変形例は、図9の製造方法や図10の製造装置350により実施されるのが好ましい。リサイクル材からなるプリフォーム210の肉厚な外層材280を、第1の射出成形工程S31(第1の金型250)で冷却させることに加え、第1の温調工程S32(第1の温調部354)で追加冷却(後冷却)させることが可能になるためである。これにより、プリフォーム210の肉厚な外層材280を十分に冷却して温度低下させることができるため、第2の射出成形工程S33(第2の金型270)におけるバージン材の射出による外層材280の温度上昇(再加熱)を抑えることができる。したがって、プリフォーム210の白化を一層低減させることができ、ヘイズの値がより低い容器を製造できる。
【実施例
【0054】
以下、本実施形態の実施例について説明する。なお、本発明の技術的範囲は本実施例に限定されない。本発明の技術的範囲は、請求の範囲に記載の範囲またはそれと均等の範囲において定められる。
【0055】
本実施形態において説明された製造装置150を使用して、ただしプリフォームの射出成形において使用する樹脂材料を変更して、例1、例2及び例3の二層構造を備える樹脂製容器の製造試験を実施した。
【0056】
例1の容器は、PETバージン材(三菱ケミカル社製、BK-2180)で構成される内層と、PETリサイクル材(メキシコPet One社製、LCG-1810)で構成される外層と、を備える図1に示される構造のプリフォームから成形された。全体重量に対するバージン材の重量比は38%であり、全体重量に対するリサイクル材の重量比は62%であった。また、プリフォームの胴部における内層の厚みは1.8mmであり、外層の厚みは2.98mmであった。
【0057】
例2の容器は、全体重量に対するリサイクル材の占める割合が30%である、バージン材とリサイクル材とのブレンド材(三菱ケミカル社製のBK-2180とメキシコPet One社製のLCG-1810との混合材)で構成される内層及び外層を備える図1に示される構造のプリフォームから成形された。全体重量に対するバージン材の重量比は70%であった。また、プリフォームの胴部における内層の厚みは1.8mmであり、外層の厚みは2.98mmであった。
【0058】
例3の容器は、リサイクル材(メキシコPet One社製、LCG-1810)で構成される内層及び外層を備える図1に示される構造のプリフォームから成形された。プリフォームの胴部における内層の厚みは1.8mmであり、外層の厚みは2.98mmであった。
【0059】
例1~例3の容器の胴部におけるヘイズを、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH-300)を使用して測定した。例1~例3の容器の胴部の任意の箇所を10か所選択して測定した値から算出された平均値は、それぞれ1.74%、1.75%および2.69%であった。また、胴部の厚さを0.5mmとして換算した場合、例1~例3のヘイズの値は、それぞれ、1.36%、1.49%および2.13%となる。例1及び例2の容器では、リサイクル材のみを使用した例3の容器よりもヘイズが低く、透明性が良好であることがわかった。また、例1の容器はリサイクル材の使用比率が例2の容器に比べて高いにも関わらず、同等のヘイズ値を示し、高いリサイクル率でありつつも透明性に優れる容器であることがわかった。
【0060】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0061】
例えば、上記の実施形態において、バージン材およびリサイクル材はPET樹脂を母材とする態様を説明したが、その他にもPE樹脂、PP樹脂などを母材とする材料を使用しても良い。ただし、本実施形態の態様においてはPET樹脂が好ましい。
【0062】
以下、上述した実施形態およびその変形から抽出される態様を列記する。
[1]
開口部と、胴部と、底部とを備え、前記胴部および前記底部がバージン材で構成される内層とリサイクル材で構成される外層とで構成される二層構造を備える、プリフォームであって、
前記プリフォームの総重量に対する前記リサイクル材の重量比が50重量%以上であり、
前記胴部における前記内層の厚みに対する前記外層の厚みの比が1.5以上であり、
前記プリフォームから成形される容器の胴部のヘイズが1.8%以下である、
プリフォーム。
[2]
前記底部における前記内層のゲート痕の高さが前記底部における前記外層の厚みよりも小さい、[1]に記載のプリフォーム。
[3]
開口部と、胴部と、底部とを備え、前記胴部および前記底部がバージン材で構成される内層とリサイクル材で構成される外層とで構成される二層構造を備える、プリフォームの製造方法であって、
第1の金型に前記バージン材または前記リサイクル材を射出し内層材または外層材を射出成形する第1の射出成形工程と、
前記第1の射出成形工程で成形された前記内層材又は前記外層材を第2の金型に収容して、前記内層材の外側に前記リサイクル材を射出し外層材を射出成形するか、または前記外層材の内側に前記バージン材を射出し内層材を射出成形する第2の射出成形工程と、を含み、
前記プリフォームの総重量に対する前記リサイクル材の重量比が50重量%以上となるように、かつ、前記胴部における前記内層の厚みに対する前記外層の厚みの比が1.5以上となるように、前記内層材および前記外層材を成形する、プリフォームの製造方法。
[4]
前記第1の射出成形工程が、前記第1の金型に前記バージン材を射出し内層材を射出成形する内層材成形工程であり、
前記第2の射出成形工程が、前記第2の金型に内層材を収容して、内層材の外側に前記リサイクル材を射出し外層材を射出成形する外層材成形工程である、
[3]に記載のプリフォームの製造方法。
[5]
前記第1の金型における前記バージン材が射出されるゲートの長さが前記プリフォームの前記底部における前記外層の厚みよりも小さい、[4]に記載のプリフォームの製造方法。
[6]
前記第1の射出成形工程が、前記第1の金型に前記リサイクル材を射出し外層材を射出成形する外層材成形工程であり、
前記第2の射出成形工程が、前記第2の金型に外層材を収容して、外層材の内側に前記バージン材を射出し内層材を射出成形する内層材成形工程である、
[3]に記載のプリフォームの製造方法。
[7]
前記第2の射出成形工程の後に、前記プリフォームを冷却する冷却工程を含む、
[3]から[6]のいずれかに記載のプリフォームの製造方法。
[8]
前記冷却工程において、
前記プリフォームをキャビティ型に収容し、
前記プリフォームにエア導入部材を気密可能に当接し、
前記エア導入部材の送風口から前記プリフォームの内部にエアを送り、前記エア導入部材の排出口から前記エアを前記プリフォームの外部に排出することで、前記プリフォームを冷却する、
[7]に記載のプリフォームの製造方法。
[9]
前記冷却工程において、前記プリフォームをキャビティ型とコア型とにより挟み込むことで、前記プリフォームを冷却する、
[7]に記載のプリフォームの製造方法。
[10]
前記第1の射出成形工程の後に前記内層材または前記外層材を冷却する第1の冷却工程を含み、
前記第2の射出成形工程の後に前記プリフォームを冷却する第2の冷却工程を含む、
[3]から[6]のいずれかに記載のプリフォームの製造方法。
[11]
前記第1の冷却工程および前記第2の冷却工程において、
前記プリフォームをキャビティ型に収容し、
前記プリフォームにエア導入部材を気密可能に当接し、
前記エア導入部材の送風口から前記プリフォームの内部にエアを送り、前記エア導入部材の排出口から前記エアを前記プリフォームの外部に排出することで、前記プリフォームを冷却する、
[10]に記載のプリフォームの製造方法。
[12]
前記第1の冷却工程および前記第2の冷却工程において、前記プリフォームをキャビティ型とコア型とにより挟み込むことで、前記プリフォームを冷却する、
[10]に記載のプリフォームの製造方法。
[13]
開口部と、胴部と、底部とを備え、前記胴部および前記底部がバージン材で構成される内層とリサイクル材で構成される外層とで構成される二層構造を備える、樹脂製容器であって、
前記樹脂製容器の総重量に対する前記リサイクル材の重量比が50重量%以上であり、
前記胴部における前記内層の厚みに対する前記外層の厚みの比が1.5以上であり、
前記胴部のヘイズが1.8%以下である、
樹脂製容器。
[14]
開口部と、胴部と、底部とを備え、前記胴部および前記底部がバージン材で構成される内層とリサイクル材で構成される外層とで構成される二層構造を備えるプリフォームを射出成形する射出成形工程と、
前記プリフォームを温調する温調工程と、
前記プリフォームをブロー成形して樹脂製容器を成形するブロー成形工程と、
を含む、樹脂製容器の製造方法であって、
前記射出成形工程は、
第1の金型に前記バージン材または前記リサイクル材を射出し内層材または外層材を射出成形する第1の射出成形工程と、
前記第1の射出成形工程で成形された前記内層材または前記外層材を第2の金型に収容して、前記内層材の外側に前記リサイクル材を射出し外層材を射出成形するか、または前記外層材の内側に前記バージン材を射出し内層材を射出成形する第2の射出成形工程と、を含み、
前記射出成形工程において、前記プリフォームの総重量に対する前記リサイクル材の重量比が50重量%以上となるように、かつ、前記胴部における前記内層の厚みに対する前記外層の厚みの比が1.5以上となるように、前記内層材および前記外層材を成形する、樹脂製容器の製造方法。
[15]
前記第1の射出成形工程が、前記第1の金型に前記バージン材を射出し内層材を射出成形する内層材成形工程であり、
前記第2の射出成形工程が、前記第2の金型に内層材を収容して、内層材の外側に前記リサイクル材を射出し外層材を射出成形する外層材成形工程である、
[14]に記載の樹脂製容器の製造方法。
[16]
前記第1の金型における前記バージン材が射出されるゲートの長さが前記プリフォームの前記底部における前記外層の厚みよりも小さい、[15]に記載の樹脂製容器の製造方法。
[17]
前記第1の射出成形工程が、前記第1の金型に前記リサイクル材を射出し外層材を射出成形する外層材成形工程であり、
前記第2の射出成形工程が、前記第2の金型に外層材を収容して、外層材の内側に前記バージン材を射出し内層材を射出成形する内層材成形工程である、
[14]に記載の樹脂製容器の製造方法。
[18]
前記温調工程において、前記射出成形工程にて成形された前記プリフォームを冷却する、
[14]から[17]のいずれかに記載の樹脂製容器の製造方法。
[19]
前記温調工程において、
前記プリフォームをキャビティ型に収容し、
前記プリフォームにエア導入部材を気密可能に当接し、
前記エア導入部材の送風口から前記プリフォームの内部にエアを送り、前記エア導入部材の排出口から前記エアを前記プリフォームの外部に排出することで、前記プリフォームを冷却する、
[18]に記載の樹脂製容器の製造方法。
[20]
前記温調工程において、前記プリフォームをキャビティ型とコア型とにより挟み込むことで、前記プリフォームを冷却する、
[18]に記載の樹脂製容器の製造方法。
[21]
前記温調工程が第1の温調工程および第2の温調工程を含み、
前記第1の温調工程は前記第1の射出成形工程の後に前記内層材または前記外層材を冷却する工程であり、
前記第2の温調工程は前記第2の射出成形工程の後に前記プリフォームを冷却する工程である、
[14]から[17]のいずれかに記載の樹脂製容器の製造方法。
[22]
前記第1の冷却工程および前記第2の冷却工程において、
前記プリフォームをキャビティ型に収容し、
前記プリフォームにエア導入部材を気密可能に当接し、
前記エア導入部材の送風口から前記プリフォームの内部にエアを送り、前記エア導入部材の排出口から前記エアを前記プリフォームの外部に排出することで、前記プリフォームを冷却する、
[21]に記載の樹脂製容器の製造方法。
[23]
前記第1の冷却工程および前記第2の冷却工程において、前記プリフォームをキャビティ型とコア型とにより挟み込むことで、前記プリフォームを冷却する、
[21]に記載の樹脂製容器の製造方法。
【0063】
なお、本願は、2019年6月12日付で出願された日本国特許出願(特願2019-109558)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
【符号の説明】
【0064】
10,210:プリフォーム、12:開口部、14:ネック部、16:胴部、18,218:底部、22:内層、24:外層、22a,24a:ゲート痕、30:容器、36:胴部、38:底部、42:内層、44:外層、50,250:第1の金型、52,252:第1のキャビティ型、54,254:第1の射出コア型、55,255:第2の射出コア型、56,256:ネック型、58,258:第1のゲート、59,259:第1のホットランナー型、59a,259a:バルブピン、60,260:内層材、70,270:第2の金型、72,272:第2のキャビティ型、78,278:第2のゲート、79,279:第2のホットランナー型、80,280:外層材、282:開口部、100:第3のキャビティ型、110:エア導入部材、120:第4のキャビティ型、130:コア型、150,350:製造装置、152:射出成形部、154:温調部、156,356:ブロー成形部、158,358:取出部、352:第1の射出成形部、353:第2の射出成形部、354:第1の温調部、355:第2の温調部、362:第1の射出装置、363:第2の射出装置、370:搬送装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11