(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】アスファルト混合物
(51)【国際特許分類】
E01C 7/22 20060101AFI20241112BHJP
E01C 7/26 20060101ALI20241112BHJP
E01C 7/32 20060101ALI20241112BHJP
B01J 20/04 20060101ALI20241112BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20241112BHJP
C08K 3/24 20060101ALI20241112BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20241112BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20241112BHJP
C08L 95/00 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
E01C7/22
E01C7/26
E01C7/32
B01J20/04 A
B01J20/34 H
C08K3/24
C08K3/22
C08K3/26
C08L95/00
(21)【出願番号】P 2021077034
(22)【出願日】2021-04-30
【審査請求日】2023-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000181354
【氏名又は名称】鹿島道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】弁理士法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】田口 翔大
(72)【発明者】
【氏名】好見 一馬
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 修
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-042713(JP,A)
【文献】特開2020-040854(JP,A)
【文献】特開2003-053144(JP,A)
【文献】特開2017-109198(JP,A)
【文献】特公昭42-003769(JP,B1)
【文献】国際公開第2021/117623(WO,A1)
【文献】特開2021-007917(JP,A)
【文献】特開平01-278606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 7/22
E01C 7/26
E01C 7/32
B01J 20/04
B01J 20/34
C08K 3/24
C08K 3/22
C08K 3/26
C08L 95/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルト、骨材を含有するアスファルト混合物の製造方法において、
再生材、新材、石粉、新規アスファルトの何れかと、
25℃、大気圧下では二酸化炭素を吸収し、200℃未満、大気圧下で二酸化炭素を放出する二酸化炭素吸収材を混合する工程を含み、
前記二酸化炭素吸収材はナトリウムフェライト或いは炭酸カリウムであり、
前記二酸化炭素吸収材の含有量は、通常の配合設計で得られた石粉配合量の30%~100%であり、
アスファルトの含有量は通常の配合設計で得られる量に設定されており、
前記混合する工程で二酸化炭素吸収材を包含する再生材を混合する場合には、混合する工程に先立って、再生材を170~200℃に加熱する加熱工程を有し、前記加熱工程で再生材に包含されている二酸化炭素吸収材の二酸化炭素吸収能力を回復する工程を含み、
前記混合する工程で放出された二酸化炭素を回収する工程を含む
ことを特徴とするアスファルト混合物の製造方法。
【請求項2】
前記混合する工程で二酸化炭素吸収材を包含する再生材を混合する場合に混合する工程に先立って、再生材を加熱する加熱工程を有し、前記加熱工程で再生材に包含されている二酸化炭素吸収材の二酸化炭素吸収能力を回復する工程を含み、
前記混合する工程で二酸化炭素吸収材を包含する再生材を混合する場合に、二酸化炭素回収装置が加熱装置に連通しており
、加熱装置により再生材を加熱した際に、再生材内の二酸化炭素吸収材が加熱装置内で放出した二酸化炭素が二酸化炭素回収装置により回収される請求項
1のアスファルト混合物の製造方法。
【請求項3】
前記二酸化炭素回収装置が混合装置に連通しており、加熱された再生材が保有する熱量により、二酸化炭素吸収材が吸収した二酸化炭素を混合装置内で放出し、放出された二酸化炭素が二酸化炭素回収装置により回収される工程を有する請求項
2の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項の製造方法で製造されたアスファルト混合物で構成された舗装を掻き解し、掻き解した舗装を敷き均し、転圧するアスファルト舗装の修繕方法において、
アスファルト混合物が敷き均された路面を、加熱装置により加熱して二酸化炭素を放出する加熱工程と、
前記加熱工程で放出された二酸化炭素を、二酸化炭素回収装置により回収する回収工程を含むことを特徴とする二酸化炭素を吸収するアスファルト舗装の構築或いは修繕方法。
【請求項5】
前記回収工程は、
加熱装置により路面を加熱する際に二酸化炭素吸収材から放出された二酸化炭素を第1の二酸化炭素回収装置により回収する工程と、
アスファルト混合物敷き均し装置によりアスファルト混合物が路面に敷き均される際に二酸化炭素吸収材から放出された二酸化炭素を第2の二酸化炭素回収装置により回収する工程、
を含む請求項
4の構築或いは修繕方法。
【請求項6】
既設路面の加熱されたアスファルト混合物を路面かき解し装置により掻き解し、掻き解されたアスファルト混合物を混合装置で混合する混合工程を有し、
前記回収工程は、混合工程の際に混合装置で発生した二酸化炭素を第2の二酸化炭素回収装置により回収する工程を含んでいる
請求項4、請求項5の何れかの構築或いは修繕方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の舗装に用いられるアスファルト混合物であって、二酸化炭素を吸収することが出来るアスファルト混合物に関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルト舗装に用いられるアスファルト混合物は、古くなると道路から剥ぎ取られてアスファルトプラントにて再生利用されている。そして、アスファルト混合物の再生利用率は98%に達している。
再生アスファルト混合物の製造におけるアスファルト再生骨材の加熱温度は170~200℃であり、200℃以上にアスファルトを加熱すると、アスファルトは劣化する。アスファルトが劣化すると、その接着性が低下し、硬く、脆く、ひび割れ易くなる。
近年の環境意識の高まりから、二酸化炭素吸収材(例えば特許文献1)が着目されている。しかし、従来の二酸化炭素吸収材では、二酸化炭素(CO2)を吸収した後、その吸収能力を回復(再生)するためには、600℃程度に加熱する必要がある。例えばリチウムシリケート(Li4SiO4)は室温~700℃の温度で二酸化炭素を吸収し、700℃以上で二酸化炭素を放出する。
そのため、アスファルト混合物に従来の二酸化炭素吸収材を添加しても、二酸化炭素吸収能力を回復するために600℃程度まで加熱してしまうと、アスファルトが劣化してしまうという問題が存在する。
また、大気圧の環境では二酸化炭素を吸収し、真空付近まで減圧すると吸収した二酸化炭素を放出するゼオライトを混合したアスファルト混合物は、二酸化炭素を吸収した後、その吸収能力を回復(再生)するためには、真空付近まで減圧する必要があるが、再生アスファルト混合物の製造は大気圧下で行われる。このため、吸収した二酸化炭素を放出させることができないことから、二酸化炭素吸収能力を回復させることができない。
従って、二酸化炭素吸収アスファルト混合物として従来の二酸化炭素吸収材を添加することは不都合であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者は研究、開発の結果、二酸化炭素吸収能力を持つ材料として、ナトリウムフェライト(NaFeO2)、炭酸カリウムは、常温領域では二酸化炭素を吸収し、100℃程度(アスファルト再生骨材の加熱温度よりも低い温度)で二酸化炭素吸収能力が再生することに着目した。
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、二酸化炭素吸収能力を持ち、且つ、再生アスファルト骨材の加熱温度よりも低い温度で二酸化炭素吸収能力を回復することが出来るアスファルト混合物の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明におけるアスファルト混合物は、
アスファルト、骨材を含有するアスファルト混合物において、
常温常圧下では二酸化炭素を吸収し、200℃未満では二酸化炭素を放出する二酸化炭素吸収材を包含している。
ここで、前記二酸化炭素吸収材はナトリウムフェライト或いは炭酸カリウムであり、
前記二酸化炭素吸収材の含有量は、通常の配合設計で得られた石粉配合量の30%~100%であり、
アスファルトの含有量は通常の配合設計で得られる量に設定されているのが好ましい。
二酸化炭素吸収材としては、酸化セリウムや固体アミン、炭酸ナトリウムも考えられる。
【0006】
ここで、「通常の配合設計」は、例えば、新規アスファルト混合物(未だにアスファルト混合物として使用されていない材料のみで製造されたアスファルト混合物)については「舗装施工便覧(平成18年版)」(発行:社団法人日本道路協会)(平成13年12月4日初版第1刷発行、平成18年2月24日18年版発行)、再生アスファルト混合物については「舗装再生便覧(平成22年版)」(発行:社団法人日本道路協会)(平成16年2月17日初版第1刷発行、平成22年11月30日改訂版第1刷発行)に示されており、当業者に周知である。
【0007】
本発明のアスファルト混合物の実施に際して、通常の配合設計で得られた石粉配合量から二酸化炭素吸収材配合量を減じた量の一部或いは全部を消石灰に代えること、すなわち石粉配合量から二酸化炭素吸収材配合量を減じた量の一部或いは全部に相当する量の消石灰を含有することが可能である。
【0008】
本発明のアスファルト混合物の製造方法に関して、アスファルト、骨材を含有するアスファルト混合物の製造方法において、
二酸化炭素吸収材であるナトリウムフェライト、炭酸カリウムの何れかを混合する工程を含んでいる。
また本発明のアスファルト混合物の製造方法に関して、アスファルト、骨材を含有するアスファルト混合物の製造方法において、
再生材、新材、石粉、新規アスファルトの何れかと、
常温常圧下では二酸化炭素を吸収し、200℃未満では二酸化炭素を放出する二酸化炭素吸収材を混合する工程を含んでいる。
【0009】
本発明のアスファルト混合物の製造方法に関して、
前記二酸化炭素吸収材はナトリウムフェライト或いは炭酸カリウムであり、
前記二酸化炭素吸収材の含有量は、通常の配合設計で得られた石粉配合量の30%~100%であり、
アスファルトの含有量は通常の配合設計で得られる量であるのが好ましい。
また本発明のアスファルト混合物の製造方法において、(骨材と二酸化炭素吸収材を混合してからアスファルトを混合するDry mixingよりも)アスファルトと骨材が混合された後に前記二酸化炭素吸収材を添加する(Wet mixing)ことが望ましい。
本発明において、通常の配合設計で得られた石粉配合量から二酸化炭素吸収材配合量を減じた量の一部或いは全部を消石灰に代えれば剥離防止対策となり、耐水性に懸念がある場合でも路面舗装として適用することが出来る。
【0010】
本発明のアスファルト混合物の製造方法は、アスファルト、骨材を含有するアスファルト混合物の製造方法において、
再生材(アスファルト再生骨材)、新材(未だにアスファルト混合物の材料として使用されていない粗骨材、細骨材)、石粉、新規アスファルトの何れかと、
25℃、大気圧下では二酸化炭素を吸収し、200℃未満、大気圧下では二酸化炭素を放出する二酸化炭素吸収材を混合する工程を含み、
前記二酸化炭素吸収材は、ナトリウムフェライト或いは炭酸カリウムであり、
前記二酸化炭素吸収材の含有量は、通常の配合設計で得られた石粉配合量の30%~100%であり、
アスファルトの含有量は通常の配合設計で得られる量に設定されており、
前記混合する工程で二酸化炭素吸収材を包含する再生材を混合する場合には、混合する工程に先立って、再生材を170~200℃に加熱する加熱工程を有し、前記加熱工程で再生材に包含されている二酸化炭素吸収材の二酸化炭素吸収能力を回復する工程(再生材の二酸化炭素吸収能力回復工程)を含むことを特徴としている。
この場合、前記混合工程で(再生材から)放出された二酸化炭素を回収する工程を含むことが好ましい。
【0011】
前記混合工程で再生材を混合する場合に、二酸化炭素回収装置(4)が加熱装置(1)に連通しており、前記二酸化炭素を回収する工程では、加熱装置(1)により再生材を加熱した際に、再生材内のナトリウムフェライト、炭酸カリウムの何れかが加熱装置(1)内で放出した二酸化炭素が二酸化炭素回収装置(4)により回収されるのが好ましい。
及び/又は、前記二酸化炭素回収装置(4)が混合装置(3)に連通しており、加熱された再生材が保有する熱量により、二酸化炭素吸収材であるナトリウムフェライト、炭酸カリウムの何れかが吸収した二酸化炭素を混合装置(3)内で放出し、放出された二酸化炭素が二酸化炭素回収装置(4)により回収される工程を有するのが好ましい。
【0012】
これに加えて、本発明のアスファルト舗装の構築或いは修繕方法は、
加熱された舗装を掻き解し、掻き解した舗装を敷き均し、転圧するアスファルト舗装の修繕方法において、
アスファルト混合物が敷き均された路面(RD)を、加熱装置(15)により加熱して二酸化炭素を放出する加熱工程と、
前記加熱工程で放出された二酸化炭素を、二酸化炭素回収装置(第1の二酸化炭素回収装置16及び/又は第2の二酸化炭素回収装置17)により回収する回収工程を含むことを特徴としている。
【0013】
本発明のアスファルト舗装の構築或いは修繕方法において、前記回収工程は、
加熱装置(15)により路面(RD)を加熱する際に二酸化炭素吸収材から放出された二酸化炭素を第1の二酸化炭素回収装置(16)により回収する工程と、
アスファルト混合物敷き均し装置(14)によりアスファルト混合物が路面に敷き均される際に二酸化炭素吸収材から放出された二酸化炭素を第2の二酸化炭素回収装置(17)により回収する工程、
を含むのが好ましい。
【0014】
また、本発明のアスファルト舗装の構築或いは修繕方法において、
加熱された既設路面(RD)のアスファルト混合物を路面かき解し装置(12)により掻き解し、掻き解されたアスファルト混合物を混合装置(3A、3B)で混合する混合工程を有し、
前記回収工程は、混合工程の際に混合装置(3A、3B)で発生した二酸化炭素を第2の二酸化炭素回収装置(17)により回収する工程を含んでいるのが好ましい。
【0015】
本発明のアスファルト舗装の構築或いは修繕方法は、路面(RD)のアスファルト舗装を加熱装置(15)により加熱し、加熱後に路面かき解し装置(12)により掻き解されたアスファルト混合物とアスファルト混合物製造プラントで製造されたアスファルト混合物(AP製造混合物)及び/又は二酸化炭素吸収材を混合装置(3A)で混合した後に、アスファルト混合物敷き均し装置(14)により現位置(路面RD)に敷き均す工法(リミックス工法)を含むことが好ましい。
また本発明のアスファルト舗装の構築或いは修繕方法は、路面(RD)のアスファルト舗装を加熱装置(15)により加熱し、加熱後に路面かき解し装置(12)により掻き解されたアスファルト混合物を混合装置(3B)で混合した後にアスファルト混合物敷き均し装置(14)により現位置(路面RD)に敷き均し、敷き均されたアスファルト混合物(NA)の上にAP製造混合物を供給して積層する(NB)工法(いわゆる「リペーブ工法」)を含むことが好ましい。この場合、混合装置(3B)で混合する際に、二酸化炭素吸収材を混合することが出来る。
さらに本発明のアスファルト舗装の構築或いは修繕方法は、路面(RD)のアスファルト舗装を加熱装置(15)により加熱し、その材料を加熱後に路面かき解し装置(12)により掻き解されたアスファルト混合物を現位置(路面RD)に敷き均す工法(いわゆる「リシェープ工法或いはリフォーム工法」)を含むことが出来る。
【発明の効果】
【0016】
上述の構成を具備する本発明のアスファルト混合物によれば、新規アスファルト混合物或いは再生アスファルト混合物の何れにおいても、二酸化炭素吸収材であるナトリウムフェライト、炭酸カリウムの何れかをアスファルト混合物に混合しているので、本発明で製造されたアスファルト混合物で舗装された道路は、その舗装面(RD)で二酸化炭素を吸収する。道路が二酸化炭素を吸収するので、二酸化炭素排出量の減少の要請に有効に応えることが出来る。
【0017】
ここで、二酸化炭素吸収材は一定量の二酸化炭素を吸収すると、加熱して二酸化炭素吸収能力を回復しない限り、それ以上の二酸化炭素を吸収することが出来ない。本発明のアスファルト混合物は、二酸化炭素吸収材としてナトリウムフェライト、炭酸カリウムの何れかを混合しており、アスファルト再生骨材の加熱温度よりも低い温度(例えば100℃程度)で二酸化炭素吸収能力が回復し、係る温度はアスファルトが劣化する温度である200℃よりも低い。そのため、本発明のアスファルト混合物は、アスファルトを劣化させることなく、加熱して二酸化炭素吸収能力を回復することが出来る。
【0018】
本発明のアスファルト混合物の製造方法において、再生材を混合する場合には、混合工程に先立って行われる加熱工程で、二酸化炭素吸収材であるナトリウムフェライト、炭酸カリウムは二酸化炭素吸収能力を回復するのに十分な温度で加熱されるので、再生材に含有される二酸化炭素吸収材はその能力を回復する。二酸化炭素吸収材がその能力を回復する際に放出する二酸化炭素は、二酸化炭素回収装置(4)により回収されるので、本発明の製造方法を実施する設備(10)における二酸化炭素排出量を低く抑えることが出来る。また、当該設備(10)外に二酸化炭素が拡散してしまう事態を防止することが出来る。
【0019】
また、本発明のアスファルト混合物の製造方法における混合工程で二酸化炭素が発生する恐れがあるが、混合工程で発生する二酸化炭素も二酸化炭素回収装置(4)により回収される。
従って、本発明によれば、再生アスファルト混合物を製造する際に、前記加熱工程及び/又は前記混合工程と同時に、二酸化炭素吸収材の二酸化炭素吸収能力を回復する工程を実行することが出来る。
【0020】
これに加えて、本発明のアスファルト舗装の構築或いは修繕方法によれば、二酸化炭素吸収材が包含されたアスファルト混合物が敷き均された路面(RD)を加熱装置(15)により加熱することにより、二酸化炭素吸収材であるナトリウムフェライト、炭酸カリウムの二酸化炭素吸収能力が回復する。そして、二酸化炭素吸収材であるナトリウムフェライト、炭酸カリウムが吸収した二酸化炭素が放出されても、二酸化炭素回収装置(16、17)により回収されるので、損傷した舗装を修繕する際に、二酸化炭素吸収能力を復活させると共に、二酸化炭素を大気中に放散させることが防止できる。
そして、二酸化炭素吸収能力を有するアスファルト舗装を路面に再生或いは修繕することが出来る。その結果、舗装が修繕されると共に、アスファルト混合物における二酸化炭素吸収能力が復活(再生)する。
そして本発明のアスファルト舗装の構築或いは修繕方法は、二酸化炭素吸収能力を有する本発明のアスファルト混合物で舗装された路面を修繕するのみならず、二酸化炭素吸収能力を有さない路面を修繕することも出来て、しかも、修繕された路面も二酸化炭素吸収能力を有するアスファルト舗装とすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実験例1において、ナトリウムフェライトを含有する供試体と炭酸カリウムを含有する供試体におけるCO
2吸収率を示す図である。
【
図2】実験例2において、CO
2吸収材として炭酸カリウムを用いて、アスファルト種別とアスファルト量を変動してCO
2吸収率を比較して示す図である。
【
図3】実験例2において、CO
2吸収材として炭酸カリウムを用いて、アスファルト種別とアスファルト量を変動して標準マーシャル安定度を比較して示す図である。
【
図4】実験例3において、ナトリウムフェライト添加量、消石灰添加量、アスファルト種別を変えて行われた残留マーシャル安定度試験の結果を示す図である。
【
図5】実験例4において、Dry mixingとWet mixingにおけるCO
2吸収率を比較して示す図である。
【
図6】実施形態に係るアスファルト混合物の製造プラントにおける要部を示す説明図である。
【
図7】実施形態に係るアスファルト混合物による舗装を修繕するシステムの説明図である。
【
図8】実施形態に係るアスファルト混合物による舗装を修繕するシステムであって、
図7のシステムとは別のシステムの説明図である。
【
図9】実施形態に係るアスファルト混合物による舗装を修繕するシステムであって、
図7、
図8で示すシステムとはさらに別のシステムの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態や実験例について説明する。
実施形態では、二酸化炭素(CO2)吸収材としてナトリウムフェライト或いは炭酸カリウムを用いている。なお、図示の実施形態或いは実験例において、二酸化炭素吸収材として酸化セリウム、固体アミン、炭酸ナトリウムを用いることも考えられる。
最初に実験例1、実験例2を参照して、CO2吸収材であるナトリウムフェライト、炭酸カリウムにおけるCO2吸収率やその他の特性等について説明する。
【0023】
[実験例1]
密粒度アスファルト混合物の石粉6%をCO2吸収材であるナトリウムフェライト、或いは、炭酸カリウムに置換した2種類の供試体におけるCO2吸収率を測定した。
実験例1では、デシケータ内に炭酸ガスを供給してデシケータ内のCO2濃度を3000~4000ppm程度に調整し、供試体をデシケータ内に入れ、炭酸ガスの供給を停止して、デシケータを密閉状態にして、3時間経過させて、CO2濃度の経時変化を測定した。
ここで、CO2吸収率(%)は下式で算出した。
CO2吸収率(%)=[{(測定開始時のCO2濃度)-(3時間後のCO2濃度)}/(測定開始時のCO2濃度)]×100
【0024】
図1で示す様に、実験例1では、アスファルト量を5.7%、6.3%、(6.9%)、(7.5%)、(9.3%)と変動している。
図1において、CO
2吸収率は各アスファルト量で3回ずつ測定されており、3回のCO
2吸収率の平均値が「〇」のプロットで表現されている。
ナトリウムフェライトを含有するアスファルト混合物のCO
2吸収率は約10%であり、炭酸カリウムを含有するアスファルト混合物のCO
2吸収率は10~40%であった。すなわち、実験例1により、ナトリウムフェライト、炭酸カリウムを含有するアスファルト混合物がCO
2吸収能力を有することが確認された。
【0025】
図示はされていないが、発明者が行った別の実験により、CO2吸収材の含有量は、通常の配合設計で得られた石粉配合量の30%以上、100%以下が好ましいこと、CO2吸収材の含有量が石粉配合量の30%未満の場合はCO2吸収性能が著しく低下し、石粉配合量の100%より多い場合(砂等の石粉以外の材料と置換された場合)はアスファルト混合物としての耐久性が担保できないことが分かった。
【0026】
[実験例2]
次に、密粒度アスファルト混合物のCO
2吸収材として炭酸カリウムを用いて、アスファルトとして、
廉価で汎用的なストレートアスファルト(St.As)、
ストレートアスファルトに熱可塑性エラストマー等の改質材を加え、耐久力を向上させたポリマー改質アスファルトII型(改質II型アスファルト)、
改質II型アスファルトよりさらに改質材の添加量が多いアスファルトであって、排水性舗装(ポーラスアスファルト混合物)に使用されるポリマー改質アスファルトH型(改質H型アスファルト)、
とした場合に、アスファルト種別とアスファルト量を変動してCO
2吸収率(%)及び安定度(kN)を計測した。実験例2では、安定度はマーシャル安定度試験により求めた。安定度の目標値は4.9kN以上と設定した。
実験例2の結果を
図2、
図3で示す。
【0027】
図2はアスファルト種別とアスファルト量を変動してCO
2吸収率を求めた結果を示している。
図2において、左側の領域(符号「St.As」で示す領域)では、ストレートアスファルトの含有率を5.7%、6.3%、7.5%、9.3%とした場合について、各々CO
2吸収率(%)を3回計測し、計測値の各々と3回の平均値を示している。中央の符号「改質II型」で示す領域は、改質II型アスファルトの含有率を5.7%、6.3%、6.9%、7.5%、8.1%、8.7%、9.3%とした場合について、各々CO
2吸収率(%)を3回計測し、計測値の各々と3回の平均値を示している。右側の領域(符号「改質H型」で示す領域)は、改質H型アスファルトの含有率を5.7%、6.3%、6.9%、7.5%、9.3%とした場合について、各々CO
2吸収率(%)を3回計測し、計測値の各々と3回の平均値を示している。
図2から、アスファルトの種類とCO
2吸収率には明確な相関関係は存在しないことが明らかになった。
【0028】
図3では、アスファルト種別とアスファルト量と安定度との関係を示している。
図3において、「置換なし」という表示はCO
2吸収材である炭酸カリウムを包含していないことを示し、「炭酸カリウム6%」という表示は炭酸カリウムを6%包含していることを示す。
図3の横軸はアスファルト含有量を示し、縦軸は安定度(kN)を示している。
図3から、改質II型アスファルトと改質H型アスファルトについては、安定度が目標値である4.9kN以上となることが明らかになった。
【0029】
[実験例3]
発明者はさらに、
改質II型アスファルト5.7%を含有する密粒度アスファルト混合物にナトリウムフェライト(NaFeO
2)6%を添加した試料と、
改質II型アスファルト5.7%を含有する密粒度アスファルト混合物にナトリウムフェライト(NaFeO
2)4%を添加した試料と、
改質II型アスファルト5.7%を含有する密粒度アスファルト混合物にナトリウムフェライト(NaFeO
2)4%と消石灰2%を添加した試料と、
特殊改質アスファルト6.9%を含有する密粒度アスファルト混合物にナトリウムフェライト(NaFeO
2)4%を添加した試料と、
特殊改質アスファルト6.9%を含有する密粒度アスファルト混合物にナトリウムフェライト(NaFeO
2)4%と消石灰2%を添加した試料、
について残留安定度を計測した。
実験例3の結果を
図4で示す。
図4において、横方向(左右方向)に延在する点線は、残留安定度が75%(アスファルト混合物の耐水性に問題があるか否かのしきい値)のラインである。
【0030】
実験例3では、
改質II型アスファルト5.7%を含有する密粒度アスファルト混合物にナトリウムフェライト6%を添加した試料の残留安定度は49.1%、
改質II型アスファルト5.7%を含有する密粒度アスファルト混合物にナトリウムフェライト4%を添加の試料の残留安定度は63.7%、
改質II型アスファルト5.7%を含有する密粒度アスファルト混合物にナトリウムフェライト4%と消石灰2%を添加した試料の残留安定度は82.5%、
特殊改質アスファルト6.9%を含有する密粒度アスファルト混合物にナトリウムフェライト4%を添加した試料の残留安定度は80.6%、
特殊改質アスファルト6.9%を含有する密粒度アスファルト混合物にナトリウムフェライト4%と消石灰2%を添加した試料の残留安定度は86.4%、
であった。
ここで、改質II型アスファルトの場合には、消石灰2%を添加した試料のみ75%以上の残留安定度であり、耐水性に問題が無いことを示している。このことから、耐水性に問題がある配合の場合には、消石灰を添加すれば良いことが確認された。
また、特殊改質アスファルトの場合には、消石灰を添加した場合も添加しない場合も耐水性には問題が無かった(残留安定度が75%以上)。
【0031】
明確には図示されていないが、発明者の実験では、通常の配合設計で得られた石粉配合量から二酸化炭素吸収材配合量を減じた量の一部或いは全部を消石灰に代えることにより、耐水性が向上することが確認された。
【0032】
実験例1~3から、炭酸カリウム、ナトリウムフェライトはCO2吸収材として必要なCO2吸収能力を有しており、これ等を添加したアスファルト混合物は、例えば改質II型アスファルトに混合することにより、道路の舗装材として必要な安定度を有することが分かった。
【0033】
次に、炭酸カリウム、ナトリウムフェライトの何れかをCO2吸収材としてアスファルト混合物を製造するにあたって、混合の手順について、実験例4で確認した。
[実験例4]
アスファルト混合物として、粗骨材、細骨材、フィラー(石粉)、CO2吸収材、アスファルトを混合するに際して、アスファルト量を5.7%、(6.3%)、7.5%、9.3%と変動して、
最初に粗骨材、細骨材、フィラー、CO2吸収材を空練りしてからアスファルトを添加する場合(Dry mixing)と、
粗骨材、細骨材、フィラーを空練りしてからアスファルトを添加して、骨材全体によくアスファルトを被覆させた状態(Wetな状態)でCO2吸収材を添加する場合(Wet mixing)において、
実験例1と同様な態様でCO2吸収率を比較した。
【0034】
CO
2吸収材として炭酸カリウムを用いた場合には、アスファルト量が5.7%、(6.3%)、7.5%、9.3%の場合の各々において、
図5で示す様に、Dry mixingよりもWet MixingのCO
2吸収率が大きかった(CO
2吸収能力が高かった)。
また、
図5では示されていないが、実験例4において、Dry mixingよりもWet Mixingではアスファルトが被覆し易くなり、供試体の作製が容易であった。
実験例4により、Wet Mixingを行う方が、Dry mixingよりも好適なことが明らかになった。そのため、本発明の実施形態として、アスファルトと骨材が混合された後に前記CO
2吸収材を添加した。ただし、Dry mixingにより本発明のアスファルト混合物を製造することも可能である。
なお、発明者が実験例4とは別途行った実験により、ナトリウムフェライトについても、Dry mixingよりもWet Mixingの方が、CO
2吸収能力が高かった。また、供試体の作製が容易であった。
【0035】
実験例1~実験例4により、本発明の実施形態に係るアスファルト混合物は、CO2吸収材としてナトリウムフェライト、炭酸カリウムの何れかが選択された。
そして実験例3により、耐水性に問題がある場合には消石灰を添加することで対応できることが確認された。
さらに実験例4により、アスファルトと骨材が混合された後に前記CO2吸収材が添加される(Wet Mixing)ことが望ましいことが確認された。
【0036】
次に、
図6を参照して、実施形態に係る再生アスファルト混合物の製造について説明する。
図6において、アスファルト混合物の製造プラント10(製造施設)は、再生材加熱装置1、新材加熱装置2、混合装置3、二酸化炭素回収装置4(CO
2回収装置)を有している。
図6で要部のみを示すアスファルト混合物の製造プラント10では、再生材(既に舗装された後、路面から除去されたアスファルト混合物)及び石粉を含む新材(未だにアスファルト混合物の材料として使用されていない粗骨材、細骨材)を混合して、アスファルト混合物を製造する場合や、再生材のみで製造する場合や、石粉を含む新材のみでアスファルト混合物を製造する場合、再生材及び/又は新材にCO
2吸収材(ナトリウムフェライト、炭酸カリウムの何れか)及び/又は消石灰を添加する場合等、種々の態様に対応している。
図6の製造プラント10では、明示されていないが、CO
2吸収材は、アスファルトと骨材が混合された後にCO
2吸収材が添加されるので、「Wet mixing」により製造される。ただし、骨材とCO
2吸収材を混合してからアスファルトを混合するDry mixingにより製造することも可能である。
【0037】
上述した様に、
図6の製造プラント10では、製造されるアスファルト混合物を再生材のみで製造する場合や、石粉を含む新材のみで製造する場合や、再生材及び/又は新材にCO
2吸収材を添加する場合や、消石灰を添加する場合等が存在する。
再生材、新材、新規アスファルト、新規CO
2吸収材を用いて製造する場合に、混合装置3へ投入する順番としては、
再生材、石粉を含む新材、新規アスファルト、新規CO
2吸収材の順と、
石粉を含む新材、再生材、新規アスファルト、新規CO
2吸収材の順があり、個々の製造プラント10における諸条件により、どの様な順番を採用するかは異なる。
【0038】
図6において、再生材加熱装置1には、図示しない再生材供給元から、経路R1を介して再生材が搬送され、当該再生材を加熱する加熱工程が実行される。
再生材加熱装置1による加熱工程において、再生材に含まれ且つ既にCO
2を吸収してCO
2吸収能力を発揮しない状態のCO
2吸収材(ナトリウムフェライト、炭酸カリウム)は吸収したCO
2を放出して、CO
2吸収能力が回復する。
再生材加熱装置1での加熱工程における加熱温度は、例えば170~200℃程度である。加熱温度170~200℃は、再生材に含まれるCO
2吸収材(ナトリウムフェライト、炭酸カリウム)のCO
2吸収能力を回復させる温度として十分に高温であり、また再生アスファルト材の加熱温度としても一般的な温度である。換言すれば、
図6で示す実施形態に係る再生アスファルト混合物の製造では、アスファルトが劣化して、その接着性が低下して、硬く且つ脆くなり、ひび割れ易くなる温度まで高温にする必要がない。
【0039】
再生材加熱装置1における加熱工程においてCO
2吸収材から放出されたCO
2は、CO
2排出配管P1を介してCO
2回収装置4に送出され、処理される。
再生材加熱装置1における加熱工程を経て(CO
2吸収材の)CO
2吸収能力が復活した再生材(既に舗装された後、路面から除去されたアスファルト混合物)は、経路R2を介して混合装置3に搬送される。
図6において、経路R2には開閉弁V1が設けられている。例えば新材のみでアスファルト混合物を製造する場合はアスファルト混合物に再生材は添加しないので、開閉弁V1を閉鎖する。再生材を用いる場合(添加する場合)には開閉弁V1を開放する。ここで、開閉弁V1は例示であり、再生材の供給を停止する機構(例えば各種供給遮断機構)であれば開閉弁V1に代えて経路R2に介装することが出来る。開閉弁V2、V6、V8、V9、V10についても同様である。
開閉弁V1は、制御ラインCL1を介して、制御装置CU(コントロールユニット)と情報的に接続されており、制御装置CUからの開閉制御信号を受信する。
ここで、制御装置CUについては、情報処理機能を有するコンピュータ等で構成することが出来る。ただし、制御装置CUは作業者により操作される制御盤であっても良い。また、制御装置CUを作業員で構成し、作業員による人手による操作で開閉弁V1(或いはV2、V6、V8、V9、V10)或いは供給遮断機構を操作することも可能である。
【0040】
図6において、新材加熱装置2には、図示しない新材供給元から、経路R3を介して新材(未だにアスファルト混合物の材料として使用されていない粗骨材、細骨材)が搬送される。搬送された新材は、新材加熱装置2により加熱される(加熱工程)。
新材加熱装置2の加熱工程における加熱温度は、再生材加熱装置1と同様に、例えば170~200℃程度である。
ここで、新材には二酸化炭素吸収材は含まれていない。そのため、再生材加熱装置1とは異なり、新材加熱装置2にはCO
2回収装置4に連通する配管系統(CO
2排出配管)は設けられていない。ただし、新材加熱装置2において加熱する際に、CO
2が排出されることを想定して、図示はされていないが、新材加熱装置2とCO
2回収装置4を連通する配管系統(CO
2排出配管)を設けることも出来る。
新材加熱装置2における加熱工程を経た新材は、経路R4を介して混合装置3に搬送される。経路R4には開閉弁V2が介装されており、開閉弁V2は制御ラインCL2を介して制御装置CUから制御信号を受信する。開閉弁V2については、上述した開閉弁V1と同様である。
ここで、再生材を使用せず、新材のみを用いてCO
2吸収能力を有するアスファルト混合物を製造する場合には、新材(粗骨材、細骨材)を新材加熱装置2で加熱し、加熱された新材を、石粉、新規アスファルト、CO
2吸収材(新規CO
2吸収材)と混合装置3で混合する。
【0041】
再生材加熱装置1で加熱された再生材と新材加熱装置2で加熱された新材は、混合装置3に搬送され、混合装置3において混合される(混合工程)。そして新たなアスファルト混合物、すなわちAP製造混合物が製造される。
混合装置3は、開閉弁V6を介装した経路R6を介してCO2吸収材供給源32と接続されており、開閉弁V6は制御ラインCL6を介して制御装置CUと情報的に接続されている。
また混合装置3は、開閉弁V8を介装した経路R8を介して新規アスファルト供給源34と接続されており、開閉弁V8は制御ラインCL8を介して制御装置CUと情報的に接続されている。
さらに混合装置3は、開閉弁V9を介装した経路R9を介して消石灰供給源36と接続されており、開閉弁V9は制御ラインCL9を介して制御装置CUと情報的に接続されている。
それに加えて混合装置3は、開閉弁V10を介装した経路R10を介して石粉供給源38と接続されており、開閉弁V10は制御ラインCL10を介して制御装置CUと情報的に接続されている。なお、制御ラインCL6、CL8、CL9、CL10の配線については、図示の位置に限定されるものではない。
開閉弁V6、V8、V9、V10についても、上述した開閉弁V1と同様である。
【0042】
この様に、CO
2吸収材供給源32、新規アスファルト供給源34、消石灰供給源36、石粉供給源38と混合装置3を接続することにより、
図6の製造プラント10では、新規アスファルトを添加するべき場合、CO
2吸収材を添加するべき場合、耐水性に問題があるため消石灰を添加するべき場合、石粉を添加するべき場合等に対応することが出来る。そして、新規アスファルト、CO
2吸収材、消石灰、石粉を添加する必要がない場合には、開閉弁V6、V8、V9、V10を閉鎖して、混合装置3に供給しない様にすればよい。
図9では図示されていないが、混合装置3には再生用添加剤を投入することが出来る。
そのため、
図6の製造プラント10によれば、新規アスファルト及び新規CO
2吸収材その他の新規材料のみで製造する場合、新規CO
2吸収材その他の新規材料とCO
2吸収材が混入されていないアスファルト再生材で製造する場合、新規CO
2吸収材その他の新規材料とCO
2吸収材が混入されている再生材で製造する場合、CO
2吸収材が混入されている再生材のみで製造する場合について、CO
2吸収材が混入されているアスファルト混合物を製造することが出来る。
【0043】
加熱された再生材、加熱された新材、石粉、新規アスファルト、CO2吸収材、消石灰の何れかにより製造された新たなアスファルト混合物、すなわちAP製造混合物は、混合装置3から、必要な現場或いは貯蔵設備等(図示せず)に、輸送手段(トラック等)により搬送される。図示しない現場或いは貯蔵設備等への搬送を、符号「R5」で示す。
再生材を混合装置3で混合する際に、加熱された再生材が保有する熱量により、CO2吸収材が再生材加熱装置1で放出し切れなかったCO2を、混合装置3において放出する可能性がある。そのため、混合工程では、再生材から放出されたCO2を回収する工程を含んでいる。そして、混合装置3とCO2回収装置4を連通するCO2排出配管P2(配管系統)が設けられており、混合装置3から放出されたCO2は、CO2排出配管P2を介してCO2回収装置4に送出され、CO2回収装置4で回収される(混合装置3内で放出されたCO2がCO2回収装置4により回収される工程)。
【0044】
図6では、再生材加熱装置1とCO
2回収装置4を連通する配管系統(CO
2排出配管P1)と、混合装置3とCO
2回収装置4を連通する配管系統(CO
2排出配管P2)は別系統となっている。ただし、CO
2排出配管P1、P2をCO
2回収装置4に到達する手前で合流して、単一の配管系(CO
2排出配管)としてCO
2回収装置4に連通させることも出来る。
図示されていないが、再生材加熱装置1とCO
2回収装置4を連通する配管系統(CO
2排出配管P1)と、混合装置3とCO
2回収装置4を連通する配管系統(CO
2排出配管P2)と、CO
2回収装置4により、吸収塔を構成しても良い。
明確には図示されていないが、
図6の製造プラント10においては、Wet Mixingにより本発明のアスファルト混合物を製造されている。ただし、
図6の製造プラント10において、Dry mixingにより本発明のアスファルト混合物を製造することも可能である。
【0045】
上述した様に、CO2回収装置4には、再生材加熱装置1の加熱工程により排出されたCO2、混合装置3の混合工程により排出されたCO2が供給される。CO2回収装置4は供給されたCO2を、CO2排出配管P3(配管系統)を介して図示しないCO2処理機構に送出する。その際、CO2以外の廃棄物は、図示しない装置で無害化処理をされ、CO2排出配管P4を介して大気に放出される。
明確には図示されていないが、CO2回収装置4は、CO2を吸着する材料を内蔵した吸着装置で構成することが出来る。
【0046】
図6で示す製造プラント10で製造されたアスファルト混合物はCO
2吸収材を含有しているので、当該アスファルト混合物で道路を舗装すれば、舗装面でCO
2を吸収するので、CO
2排出量の減少に寄与することが出来る。
また、図示の実施形態に係る再生アスファルト混合物に包含されるCO
2吸収材(ナトリウムフェライト、炭酸カリウムの何れか)は、アスファルト再生骨材の加熱温度(例えば170~200℃)でCO
2吸収能力を回復する。そのため、
図6で示す製造プラント10によるアスファルト混合物の製造に際して、アスファルトを劣化させることなく、CO
2吸収能力を回復することが出来る。
そして
図6で示す製造プラント10では、加熱工程において再生材内のCO
2吸収材が再生材加熱装置1内で放出したCO
2がCO
2回収装置4により回収されるので、加熱工程でCO
2がアスファルト混合物の製造プラント10外部に放散してしまうことが防止される。さらに、混合工程において混合装置3内で放出されたCO
2もCO
2回収装置4により回収されるので、混合工程で放出されたCO
2がアスファルト混合物の製造プラント10外部に放散してしまうことも防止される。
【0047】
次に
図7~
図9を参照して、実施形態に係るアスファルト混合物による舗装を修繕(或いは構築)するシステムについて説明する。
図7において、アスファルト混合物の舗装を修繕するシステム20(舗装修繕システム)は、既設路面のアスファルト舗装を路面加熱用ヒーター車等で加熱、昇温して掻き解し、その材料と、AP製造混合物、CO
2吸収材等を混合装置で混合した後に、現位置に敷き均す工法(リミックス工法)を実施する。
図7のシステム20は、ヒーター車両11と、後続の作業車両(いわゆる「リミキサ」)30と、転圧機械40を備えている。ここで、ヒーター車両11は、複数台使用することもできる。作業車両30は、路面かき解し装置12と、混合装置3Aと、アスファルト混合物敷き均し装置14を有している。路面かき解し装置12は作業車両30の前方領域に配置されており、路面かき解し装置12で掻き解された既設路面のアスファルト混合物は混合装置3Aに供給される。
混合装置3Aは、矢印R4Aで示す供給経路を介してAP製造混合物供給源42と接続されており、矢印R6Aで示す供給経路を介してCO
2吸収材供給源32Aと接続されている。混合装置3Aにおいて、路面かき解し装置12で掻き解された既設路面のアスファルト混合物と、AP製造混合物供給源42から供給されたAP製造混合物と、CO
2吸収材供給源32Aから供給されたCO
2吸収材が混合されて路面に投下され、アスファルト混合物敷き均し装置14により敷き均される。
【0048】
作業車両30はヒーター車両11に後続している。
ヒーター車両11は、熱風循環式ヒーター15を内蔵(搭載)しており、さらに熱風循環式ヒーター15の後方に第1のCO
2回収装置16を内蔵している。アスファルト混合物敷き均し装置14も、第2のCO
2回収装置17を内蔵している。
転圧用機械40は、作業車両30に後続している。
図7において、舗装修繕システム20により修繕するべき舗装路面RDは、図示の実施形態に係るアスファルト混合物が敷き均された舗装路面であり、既に一定期間が経過し、CO
2を十分に吸収して、CO
2吸収能力を失っている。ここで、舗装路面RDはCO
2吸収材を包含しない従来技術に係る舗装路面であっても、
図7~
図9の舗装修繕システムで修繕し、且つ、CO
2吸収能力を新たに付与することが出来る。
【0049】
ヒーター車両11に内蔵(搭載)されている熱風循環式ヒーター15は、修繕すべき舗装面RD(路面)に向かって熱風を吹き出し(矢印A)、舗装面RDを加熱する(加熱工程)。
熱風循環式ヒーター15による加熱温度は例えば160~170℃であり、
図6における再生材加熱装置1における加熱温度と同程度の温度である。換言すると、熱風循環式ヒーター15の加熱温度は、アスファルトが劣化する温度(接着性が低下し、硬く且つ脆くなり、ひび割れ易くなる温度)よりも低温に設定されている。
熱風循環式ヒーター15により舗装面RDを加熱することにより、舗装面RDのアスファルト混合物に包含されるCO
2吸収材(ナトリウムフェライト、炭酸カリウムの何れか)が吸収したCO
2が放出される(矢印B)。CO
2を放出することにより、CO
2吸収材のCO
2吸収能力が復活する。
【0050】
ヒーター車両11において、熱風循環式ヒーター15の後方には第1のCO2回収装置16が搭載(内蔵)されている。第1のCO2回収装置16は、熱風循環式ヒーター15で舗装面RDを加熱した際に放出されるCO2(矢印B)、すなわち、アスファルト混合物に包含されるCO2吸収材から放出されるCO2を回収する(回収工程)。CO2回収装置は、例えばCO2を吸着して回収し、CO2貯蔵装置としても機能する。
さらにCO2回収装置16は、熱風循環式ヒーター15が熱風を作るときに排出するCO2も回収することができる。
熱風循環式ヒーター15により加熱され、CO2を放出した後の舗装面RDは、ヒーター車両11に後続する作業車両30における路面かき解し装置12により掻き解される。
【0051】
上述した様に、路面かき解し装置12で舗装面RDから掻き解されたアスファルト混合物は混合装置3Aに供給されて、AP製造混合物及びCO2吸収材と混合されて、アスファルト混合物敷き均し装置14により敷き均される。新たに敷き均されたアスファルト混合物を符号NAで示す。
混合装置3AでAP製造混合物及びCO2吸収材と混合されたアスファルト混合物は、ヒーター車両11の熱風循環式ヒーター15による加熱等で付与された熱量を保有しているため、含有しているCO2吸収材からCO2を新たに放出する可能性がある。
そのため、アスファルト混合物敷き均し装置14内には第2のCO2回収装置17が設けられており、新たに放出されたCO2(矢印C)を第2のCO2回収装置17により回収して、貯蔵する。
さらに作業車両30には、図示されていないが舗装面RDから掻き解されたアスファルト混合物を加熱するヒーターが備えられており、ヒーターから排出されるCO2も第2のCO2回収装置17より回収する。
アスファルト混合物敷き均し装置14で敷き均されたアスファルト混合物NAは、後続する転圧用機械40により締固められ、実施形態に係るアスファルト混合物による舗装の修繕が完了する。
ここで、路面かき解し装置12で舗装面RDから掻き解されたアスファルト混合物は熱風循環式ヒーター15で加熱されているため、混合装置3Aにおいても新たにCO2を放出する可能性がある。そのため、作業車両30では、混合装置3Aで新たに放出されたCO2を第2のCO2回収装置17に送るため、矢印P2Aで示す配管を設けている。これにより、混合装置3Aで新たに放出されたCO2も、第2のCO2回収装置17に供給、回収される。
【0052】
図7の舗装修繕システム20によれば、図示の実施形態に係るアスファルト混合物による舗装の修繕に際して、舗装路面RDを熱風循環式ヒーター15により加熱する(加熱工程)。ここで、舗装面を掻き解す程度まで加熱する温度は例えば160~170℃であるため、図示の実施形態に係るアスファルト混合物に含まれるCO
2吸収材が吸収したCO
2を放出して、CO
2吸収能力を回復する。そして、放出されたCO
2は第1のCO
2回収装置16により回収される(回収工程)ので、路面のCO
2吸収舗装材から大気へCO
2が排出されることを抑制する。また、加熱の際にアスファルトが劣化してしまうことが防止される。
さらに、加熱した後に掻き解された舗装面RDのアスファルト混合物が混合装置3AでAP製造混合物及びCO
2吸収材と混合される際に、及び/又は、アスファルト混合物敷き均し装置14により敷き均す際に、CO
2が新たに排出されたとしても、第2のCO
2回収装置17により回収され、貯蔵される。そのため、路面のCO
2吸収舗装材を加熱する際に大気へCO
2が排出されることを抑制することに加えて、作業車両30内で混合装置3Aにより混合する際及び/又はアスファルト混合物敷き均し装置14により敷き均す際に、CO
2が排出されることを抑制できる。
そして、新たに敷き均されたアスファルト混合物NAは後続する転圧用機械40により締固められ(転圧され)、CO
2吸収能力を有するアスファルト舗装の路上表層が再生される。これにより、損傷し且つCO
2吸収能力が失われた舗装が修繕される。
【0053】
明確には図示されていないが、
図7において、経路R4Aを遮断してAP製造混合物を供給せず、既存の舗装面RDから掻き解されたアスファルト混合物とCO
2吸収材を混合して新たなアスファルト混合物とすることが可能である。例えば、CO
2吸収材を含有しない従来技術に係るアスファルト舗装を路面かき解し装置12で掻き解し、混合装置3AでCO
2吸収材を混合すれば、CO
2吸収能力を有するアスファルト混合物として、舗装面RDに敷き均し、転圧することが出来る。この場合、AP製造混合物を混合せずに、CO
2吸収材だけを混合することが可能である。
もちろん、既存のCO
2吸収能力を有するアスファルト舗装の修繕に
図7のシステム20を用いることが出来る。そして、既存のCO
2吸収能力を有するアスファルト舗装の修繕の場合においても、AP製造混合物を混合せずに、CO
2吸収材だけを混合することが出来る。
また、掻き解されたアスファルト混合物がCO
2吸収材を混合している場合には、AP製造混合物のみを混合装置3Aで混合することが出来る。或いは、CO
2吸収材のみを混合することも出来る。
明確に図示はされていないが、混合装置3にAP製造混合物供給源42及びCO
2吸収材供給源32Aのみならず、その他の必要な添加物(例えば消石灰や再生用添加剤等)の供給源を接続することが出来る。
【0054】
図7で示す舗装修繕システム20は、いわゆるリミックス工法を実施するのに用いられる。これに対して、既設路面のアスファルト舗装を路面加熱用ヒーター車両で加熱、昇温し,その材料を現位置に敷き均した後に、敷き均したアスファルト混合物の上にAP製造混合物を敷き均す工法(いわゆる「リペーブ工法」)を実施するのに、本発明の実施形態に係る修繕システムを用いることが出来る。
図8には、係るリペーブ工法を実行するための修繕システム20Aを示している。以下、
図7の修繕システム20との相違点を主として、
図8の修繕システム20Aについて説明する。
図8の修繕システム20Aにおける作業車両30Aの混合装置3Bには、矢印R6Aで示す供給経路を介してCO
2吸収材供給源32Aと接続されている。混合装置3Bにおいて、路面かき解し装置12で掻き解された既設路面のアスファルト混合物と、CO
2吸収材供給源32Aから供給されたCO
2吸収材が混合されて路面に投下され、アスファルト混合物敷き均し装置14により敷き均される。新たに敷き均されたアスファルト混合物を符号NAで示す。
アスファルト混合物敷き均し装置14の後方(転圧用機械40側)にはAP製造混合物供給源42Aと連通するAP製造混合物供給系統R4Bが配置されており、敷き均されたアスファルト混合物NAの上に、AP製造混合物NB(アスファルト混合物製造プラントで製造されたアスファルト混合物:CO
2吸収材を含有している)を積層する。積層されたアスファルト混合物NA、NBは転圧用機械40で締固められる。
【0055】
図8で示す修繕システム20Aでリペーブ工法を実行するに際して、加熱されて掻き解される既存の舗装RDは、CO
2吸収材が混合されている舗装であっても、CO
2吸収材が混合されていない舗装であっても適用可能である。
また、供給経路矢印R6Aを遮断して、掻き解されたアスファルト混合物にCO
2吸収材を新たに混合しないことも可能である。
明確に図示はされていないが、混合装置3BにCO
2吸収材供給源32Aのみならず、その他の必要な添加物(例えば消石灰や再生用添加剤等)の供給源を接続することが可能である。
図8で示す修繕システム20AにおけるCO
2回収の機序は
図7のシステム20と同様である。その他の構成及び作用効果についても、
図7の修繕システム20と同様である。
【0056】
図7で示すリミックス工法を実施するシステム20、
図8で示すリペーブ工法を実施するシステム20Aに加えて、本発明の実施形態として、
図9で示す様に、既設路面のアスファルト舗装をヒーター車両で加熱、昇温し、既設路面のアスファルト舗装を路面かき解し装置12により掻き解して、現位置に敷き均す工法(いわゆる「リシェープ工法或いはリフォーム工法」)を実施するための修繕システム20Bも存在する。
図9の修繕システム20Bについて、
図7のシステム20、
図8のシステム20Aとの相違点を主として説明する。
図9の修繕システム20Bにおける作業車両30Bには混合装置は設けられておらず、路面かき解し装置12で舗装面RDから掻き解されたアスファルト混合物は、アスファルト混合物敷き均し装置14に投入されて敷き均される。新たに敷き均されたアスファルト混合物を符号NAで示す。
【0057】
図7のシステム20、
図8のシステム20Aと同様に、アスファルト混合物敷き均し装置14によりアスファルト混合物が敷き均される際にCO
2が新たに放出されたとしても、第2のCO
2回収装置17により回収され、貯蔵される。
ただし、作業車両30Bには混合装置が設けられていないので、
図7のシステム20、
図8のシステム20Aとは異なり、混合装置と第2のCO
2回収装置17を連通するCO
2回収用配管も設けられていない。
図9で示すシステム20Bでは、掻き解されたアスファルト混合物にCO
2吸収材は添加しないので、CO
2吸収材が混合されているアスファルト舗装の修繕に適用することが可能である。
図9で示す修繕システム20Bにおけるその他の構成及び作用効果については、
図7の修繕システム20、
図8の修繕システム20Aと同様である。
【0058】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
【符号の説明】
【0059】
1・・・再生材加熱装置(加熱装置)
2・・・新材加熱装置
3、3A、3B・・・混合装置
4・・・CO2回収装置(二酸化炭素回収装置)
10・・・アスファルト混合物の製造プラント
11・・・ヒーター車両
12・・・路面かき解し装置
14・・・アスファルト混合物敷き均し装置
15・・・熱風循環式ヒーター(加熱装置)
16・・・第1のCO2回収装置
17・・・第2のCO2回収装置
20、20A、20B・・・舗装修繕システム
30、30A、30B・・・作業車両
40・・・転圧用機械
RD・・・修繕すべき路面