(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】半導体装置とその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/12 20060101AFI20241112BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20241112BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
H01L29/78 652T
H01L29/78 658E
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
(21)【出願番号】P 2021100862
(22)【出願日】2021-06-17
【審査請求日】2023-10-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 健太
(72)【発明者】
【氏名】大川 峰司
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-009989(JP,A)
【文献】特開2018-056297(JP,A)
【文献】特開2017-108080(JP,A)
【文献】特開2018-056257(JP,A)
【文献】特開平05-183189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L29/78
H01L29/12
H01L21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置(1,2)であって、
第1化合物半導体層(14,114)と第2化合物半導体層(16,116)を有する化合物半導体層(15,115)であって、前記第2化合物半導体層は前記第1化合物半導体層上に設けられているとともに前記第1化合物半導体層よりも融点が高い、化合物半導体層と、
前記第2化合物半導体層上に設けられている絶縁ゲート(40,140)と、を備えており、
前記化合物半導体層は、
第1導電型のドリフト領域(22,122)と、
第1導電型のソース領域(25,125)と、
前記ドリフト領域と前記ソース領域の間に設けられており、前記化合物半導体層の上面に露出する位置に配置されている第2導電型のボディ領域(24,124)と、を有しており、
前記絶縁ゲートは、前記ドリフト領域と前記ソース領域の間の位置にある前記ボディ領域に対向しており、
前記ドリフト領域と前記ソース領域の間の位置にある前記ボディ領域は、前記第1化合物半導体層と前記第2化合物半導体層の双方を跨いで配置されている、半導体装置。
【請求項2】
前記化合物半導体層の材料が、窒化物半導体である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1化合物半導体層の材料が、窒化ガリウムであり、
前記第2化合物半導体層の材料が、窒化アルミニウムである、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2化合物半導体層の厚みが、15nm以下である、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ドリフト領域は、前記化合物半導体層の前記上面に露出する位置に配置されており、前記ボディ領域に隣接する第1導電型のJFET領域(23)、を有しており、
前記絶縁ゲートは、プレーナー型であり、前記JFET領域と前記ソース領域の間の位置にある前記ボディ領域に対向している、請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記化合物半導体層の前記上面にトレンチ(TR)が形成されており、
前記ドリフト領域と前記ソース領域の間の位置にある前記ボディ領域が、前記トレンチの側面に露出する位置に配置されており、
前記絶縁ゲートは、トレンチ型であり、前記トレンチ内に設けられている、請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
半導体装置の製造方法であって、
第1導電型の第1化合物半導体層(14,114)と第1導電型又はi型の第2化合物半導体層(16,116)を有する化合物半導体層(15,115)を準備する第1工程であって、前記第2化合物半導体層は前記第1化合物半導体層上に設けられているとともに前記第1化合物半導体層よりも融点が高い、第1工程と、
前記化合物半導体層の上層部に第2導電型の不純物をイオン注入してボディ領域(24,124)を形成する第2工程であって、前記ボディ領域は第1導電型のドリフト領域(22,122)と第1導電型のソース領域(24,124)の間に設けられているとともに前記第1化合物半導体層と前記第2化合物半導体層の双方を跨いで配置されている第2工程と、
前記第2工程を実施した後に、前記化合物半導体層を熱処理する第3工程と、
前記第2化合物半導体層上に絶縁ゲート(40,140)を形成する第4工程であって、前記絶縁ゲートは前記ドリフト領域と前記ソース領域の間の位置にある前記ボディ領域に対向している、第4工程と、を備えている、半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記化合物半導体層の材料が、窒化物半導体である、請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1化合物半導体層の材料が、窒化ガリウム(GaN)であり、
前記第2化合物半導体層の材料が、窒化アルミニウム(AlN)である、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記第2化合物半導体層の厚みが、15nm以下である、請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記第3工程の熱処理温度が、1200℃以上である、請求
項8~10のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記第1工程は、
化合物半導体基板(12,112)の表面から前記第1化合物半導体層を結晶成長する段階と、
前記第1化合物半導体層の表面から前記第2化合物半導体層を結晶成長する段階と、を有する、請求項7~11のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、半導体装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物半導体及び酸化ガリウム等の化合物半導体では、高活性なp型の拡散領域を形成することが難しい。例えば、窒化物半導体の場合、p型ドーパントを活性化させるために1200℃以上の熱処理が必要とされている。しかしながら、このような高温の熱処理を行うと、窒化物半導体層の表面から窒素が抜け、窒化物半導体層の表面にピットが形成されてしまう。このため、高温の熱処理を行うことができず、高活性なp型の拡散領域を形成することが難しいとされている。
【0003】
特許文献1は、例えば窒化アルミニウム等の高融点な材料からなるキャップ層を窒化物半導体層上に成膜する技術を提案する。このようなキャップ層を利用すると、窒素抜けを抑えながら高温の熱処理を行うことができるので、高活性なp型の拡散領域を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
キャップ層を利用する技術では、高温の熱処理を実施した後に、エッチング技術を利用してキャップ層が除去される。しかしながら、エッチングが不十分でキャップ層が残存してしまうことがある。特に、キャップ層がチャネル領域上に残存すると、キャップ層がn型又はi型であることから、閾値電圧を低下させることが懸念される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する半導体装置は、第1化合物半導体層(14,114)と第2化合物半導体層(16,116)を有する化合物半導体層(15,115)であって、前記第2化合物半導体層は前記第1化合物半導体層上に設けられているとともに前記第1化合物半導体層よりも融点が高い、化合物半導体層と、前記化合物半導体層の前記第2化合物半導体層上に設けられている絶縁ゲート(40,140)と、を備えることができる。前記化合物半導体層は、第1導電型のドリフト領域(22,122)と、第1導電型のソース領域(25,125)と、前記ドリフト領域と前記ソース領域の間に設けられており、前記化合物半導体層の上面に露出する位置に配置されている第2導電型のボディ領域(24,124)と、を有することができる。前記絶縁ゲートは、前記ドリフト領域と前記ソース領域の間の位置にある前記ボディ領域に対向している。前記ドリフト領域と前記ソース領域の間の位置にある前記ボディ領域は、前記第1化合物半導体層と前記第2化合物半導体層の双方を跨いで配置されている。
【0007】
上記半導体装置では、キャップ層として機能する前記第2化合物半導体層が残存している。しかしながら、上記半導体装置では、前記ドリフト領域と前記ソース領域の間の位置にある前記ボディ領域、即ち、チャネル領域が前記第1化合物半導体層と前記第2化合物半導体層の双方を跨いで形成されている。このため、キャップ層として機能する前記第2化合物半導体層が残存していても、前記第2化合物半導体層が前記チャネル領域として構成されているので、上記半導体装置の閾値電圧の低下が抑えられている。
【0008】
本明細書が開示する半導体装置の製造方法は、第1導電型の第1化合物半導体層(14,114)と第1導電型又はi型の第2化合物半導体層(16,116)を有する化合物半導体層(15,115)を準備する第1工程であって、前記第2化合物半導体層は前記第1化合物半導体層上に設けられているとともに前記第1化合物半導体層よりも融点が高い、第1工程と、前記化合物半導体層の上層部に第2導電型の不純物をイオン注入してボディ領域(24,124)を形成する第2工程であって、前記ボディ領域は第1導電型のドリフト領域(22,122)と第1導電型のソース領域(25,125)の間に設けられているとともに前記第1化合物半導体層と前記第2化合物半導体層の双方を跨いで配置されている第2工程と、前記第2工程を実施した後に、前記化合物半導体層を熱処理する第3工程と、前記第2化合物半導体層上に絶縁ゲート(40,140)を形成する第4工程であって、前記絶縁ゲートは前記ドリフト領域と前記ソース領域の間の位置にある前記ボディ領域に対向している、第4工程と、を備えることができる。
【0009】
上記製造方法では、キャップ層として機能する前記第2化合物半導体層に、前記ドリフト領域と前記ソース領域の間の位置にある前記ボディ領域、即ち、チャネル領域を形成し、前記第2化合物半導体層を除去することなく、前記第2化合物半導体層上に前記絶縁ゲートを形成する。このため、上記製造方法は、前記第2窒化物半導体層を前記チャネル領域として構成することができるので、キャップ層として機能する前記第2化合物半導体層が残存していても、閾値電圧の低下が抑えられた半導体装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】半導体装置の一実施形態の要部断面図を模式的に示す。
【
図2】
図1の半導体装置の一部の製造フローを示す。
【
図3】
図1の半導体装置の製造方法の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【
図4】
図1の半導体装置の製造方法の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【
図5】
図1の半導体装置の製造方法の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【
図6】他の半導体装置の一実施形態の要部断面図を模式的に示す。
【
図7】
図6の半導体装置の一部の製造フローを示す。
【
図8】
図6の半導体装置の製造方法の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【
図9】
図6の半導体装置の製造方法の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【
図10】
図6の半導体装置の製造方法の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【
図11】
図6の半導体装置の製造方法の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【
図12】
図6の半導体装置の製造方法の一製造過程における要部断面図を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本明細書が開示する半導体装置とその製造方法について説明する。各図面において、図示明瞭化を目的とし、共通する構成要素についてはそれらの1つの構成要素にのみ符号を付すことがある。
【0012】
(第1実施形態)
図1に示されるように、半導体装置1は、化合物半導体基板12と、化合物半導体層15と、化合物半導体基板12の下面を被覆するように設けられているドレイン電極32と、化合物半導体層15の上面の一部を被覆するように設けられているソース電極34と、化合物半導体層15の上面の一部を被覆するように設けられているプレーナー型の絶縁ゲート40と、を備えている。
【0013】
化合物半導体基板12は、特に限定されるものではないが、例えば窒化ガリウム基板(GaN基板)であってもよい。化合物半導体基板12は、後述するように、化合物半導体層15をエピタキシャル成長するための下地基板である。また、化合物半導体基板12は、n型のドーパントを高濃度に含んでおり、ドレイン領域21として機能する部分でもある。n型のドーパントは、特に限定されるものではないが、例えばシリコンであってもよい。ドレイン領域21は、ドレイン電極32にオーミック接触している。
【0014】
化合物半導体層15は、化合物半導体基板12の上面に接するように設けられており、第1化合物半導体層14と第2化合物半導体層16が積層して構成されている。図中に示される破線が、第1化合物半導体層14と第2化合物半導体層16の界面を示す。化合物半導体層15は、特に限定されるものではないが、例えば窒化物半導体で構成されてもよい。一例ではあるが、第1化合物半導体層14は窒化ガリウム層(GaN層)であってもよく、第2化合物半導体層16は窒化アルミニウム層(AlN層)であってもよい。第1化合物半導体層14は、化合物半導体基板12の上面に接するように設けられており、化合物半導体基板12と第2化合物半導体層16の間に配置されている。第2化合物半導体層16は、第1化合物半導体層14の上面に接するように設けられており、化合物半導体層15の上面に露出する位置に配置されている。
【0015】
化合物半導体層15は、n型のドリフト領域22と、p-型のボディ領域24と、n+型のソース領域25と、p+型のボディコンタクト領域26と、を有している。
【0016】
ドリフト領域22は、ドレイン領域21の上面に接するように設けられており、ドレイン領域21とボディ領域24の間に配置されている。ドリフト領域22はまた、化合物半導体層15の面方向においてボディ領域24に挟まれるように設けられたJFET領域23を有している。換言すると、JFET領域23は、化合物半導体層15の上面からボディ領域24を貫通するように設けられたドリフト領域22の一部である。JFET領域23は、化合物半導体層15の上面に露出する位置に設けられており、絶縁ゲート40に接している。JFET領域23は、第1化合物半導体層14と第2化合物半導体層16の双方を跨いで配置されている。ドリフト領域22は、n型のドーパントをドレイン領域21よりも低濃度に含んでいる。n型のドーパントは、特に限定されるものではないが、例えばシリコンであってもよい。
【0017】
ボディ領域24は、ドリフト領域22の上面に接するように設けられており、JFET領域23の側面に隣接して配置されている。ボディ領域24の一部は、化合物半導体層15の上面に露出する位置に設けられており、絶縁ゲート40に接している。ボディ領域24の一部は、第1化合物半導体層14と第2化合物半導体層16の双方を跨いで配置されている。ボディ領域24は、p型のドーパントを含んでいる。p型のドーパントは、特に限定されるものではないが、例えばマグネシウムであってもよい。
【0018】
ソース領域25は、ボディ領域24の上面に接するように設けられており、ボディ領域24によってドリフト領域22から隔てられている。ソース領域25は、化合物半導体層15の上面に露出する位置に設けられており、絶縁ゲート40に接している。ソース領域25は、第1化合物半導体層14と第2化合物半導体層16の双方を跨いで配置されている。ソース領域25は、n型のドーパントをドリフト領域22よりも高濃度に含んでいる。n型のドーパントは、特に限定されるものではないが、例えばシリコンであってもよい。ソース領域25は、ソース電極34にオーミック接触している。
【0019】
ボディコンタクト領域26は、ボディ領域24の上面に接するように設けられている。ボディコンタクト領域26は、化合物半導体層15の上面に露出する位置に設けられており、第1化合物半導体層14と第2化合物半導体層16の双方を跨いで配置されている。ボディコンタクト領域26は、p型のドーパントをボディ領域24よりも高濃度に含んでいる。p型のドーパントは、特に限定されるものではないが、例えばマグネシウムであってもよい。ボディコンタクト領域26は、ソース電極34にオーミック接触している。
【0020】
絶縁ゲート40は、化合物半導体層15の第2化合物半導体層16の上面の一部に接するように設けられており、酸化シリコンのゲート絶縁膜42及びポリシリコンのゲート電極44を有している。ゲート電極44は、ドリフト領域22の一部であるJFET領域23とソース領域25を隔てる位置のボディ領域24、及び、JFET領域23にゲート絶縁膜42を介して対向している。
【0021】
次に、半導体装置1の動作を説明する。使用時には、ドレイン電極32に正電圧が印加され、ソース電極34が接地される。ゲート電極44にゲート閾値電圧よりも高い正電圧が印加されると、JFET領域23とソース領域25を隔てる部分のボディ領域24、即ち、チャネル領域に反転層が形成される。チャネル領域に形成された反転層を介してソース領域25からJFET領域23に電子が流入する。JFET領域23に流入した電子は、そのJFET領域23及びドリフト領域22を縦方向に流れてドレイン電極32に向かう。これにより、ドレイン電極32とソース電極34が導通し、半導体装置1がターンオンする。ゲート電極44が接地されると、反転層が消失し、半導体装置1がターンオフする。このように、半導体装置1は、ゲート電極44に印加する電圧に基づいてドレイン電極32とソース電極34の間のオンとオフを切り換えるスイッチング動作を実行することができる。
【0022】
(半導体装置1の製造方法)
図2は、半導体装置1を製造するための工程のうちの一部の工程の流れを示す製造フローである。
図3~
図5は、
図2の製造フローに対応した製造過程における要部断面図である。
【0023】
まず、
図3に示されるように、エピタキシャル成長技術を利用して、化合物半導体基板12の上面から第1化合物半導体層14を結晶成長し、さらに、第1化合物半導体層14の上面から第2化合物半導体層16を結晶成長し、化合物半導体層15を形成する(
図2のステップS1)。第1化合物半導体層14は、n型のドーパントを含むように結晶成長して形成される。第2化合物半導体層16は、n型のドーパントを含むように結晶成長して形成されてもよく、ノンドープで結晶成長して形成されてもよい。第2化合物半導体層16の厚みは、15nm以下である。第2化合物半導体層16の厚みが15nm以下であると、第1化合物半導体層14(この例では、GaN層)と第2化合物半導体層16(この例では、AlN層)の格子定数差の影響によって第2化合物半導体層16にクラックが入ることが抑えられ、良質な第2化合物半導体層16を形成することができる。
【0024】
次に、
図4に示されるように、イオン注入技術を利用して、p型のドーパント又はn型ドーパントを化合物半導体層15の上層部の所定領域に注入し、ボディ領域24とソース領域25とボディコンタクト領域26を形成する(
図2のステップS2)。これら半導体領域24,25,26を形成する順序は特に限定されるものではない。これら半導体領域24,25,26を形成するためのドーパントは、第1化合物半導体層14と第2化合物半導体層16の双方を跨ぐように注入される。なお、第2化合物半導体層16がi型の場合、JFET領域23に対応する第2化合物半導体層16の部分にn型のドーパントを注入してもよい。
【0025】
次に、これら半導体領域24,25,26を活性化するための熱処理を実施する(
図2のステップS3)。熱処理の温度は、特に限定されるものではないが、例えば1200℃以上であってもよい。このような高温の熱処理により、注入されたドーパント、特に、p型のドーパントであるマグネシウムを良好に活性化させることができる。また、第2化合物半導体層16(この例では、AlN層)は、第1化合物半導体層14(この例では、GaN層)よりも融点が高い材料で構成されている。このため、第2化合物半導体層16はキャップ層として機能することができ、化合物半導体層15の上面からの窒素抜けを抑制し、化合物半導体層15の上面にピットが形成されるのを抑制することができる。
【0026】
次に、
図5に示されるように、化合物半導体層15上に絶縁ゲート40を形成する(
図2のステップS4)。具体的には、蒸着技術を利用して、化合物半導体層15のうちの第2化合物半導体層16の上面を被覆するようにゲート絶縁膜42を成膜する。蒸着技術としては、特に限定されるものではないが、原子層堆積法又はプラズマCVD法が利用されてもよい。次に、熱処理技術を実施してゲート絶縁膜42の膜質を改善する。熱処理温度は、800℃以上であってもよい。次に、蒸着技術を利用して、ゲート絶縁膜42の上面にゲート電極44を成膜する。さらに、エッチング技術を利用して、ゲート絶縁膜42及びゲート電極44を加工し、絶縁ゲート40を形成する。この後、既知の製造技術を利用して、ドレイン電極32及びソース電極34を形成することで、
図1に示す半導体装置1を製造することができる。
【0027】
従来のキャップ層を利用した製造方法では、化合物半導体層にイオン注入した後に、n型又はi型のキャップ層を成膜する。その後、活性化のための熱処理を実施する。熱処理の後にキャップ層を除去し、キャップ層が除去された化合物半導体層上に絶縁ゲートを形成する。このような従来の製造方法では、n型又はi型のキャップ層がチャネル領域上に残存したときに、閾値電圧を低下させることが懸念される。また、キャップ層が残存しないように、例えばCMP技術を利用すると、コストの増加及びチャネル領域へのダメージが懸念される。
【0028】
本明細書が開示する製造方法では、キャップ層として機能する第2化合物半導体層16にも拡散領域を形成し、第2化合物半導体層16を除去することなく、第2化合物半導体層16上に絶縁ゲート40を形成する。特に、この製造方法では、ドリフト領域22とソース領域25を隔てる位置のボディ領域、即ち、チャネル領域が第1化合物半導体層14と第2化合物半導体層16の双方を跨いで形成される。このため、この製造方法では、第2化合物半導体層16の一部をチャネル領域として構成することができるので、キャップ層として機能する第2化合物半導体層16が残存していても、閾値電圧の低下が抑えられた半導体装置1を製造することができる。
【0029】
(第2実施形態)
図6に、
図1に示す半導体装置1の変形例である半導体装置2を示す。
図1に示す半導体装置1と共通する構成要素については百の位に「1」を追加し、繰り返しの説明を避けるために、それら構成要素の説明を省略することがある。
【0030】
図6に示されるように、半導体装置2は、化合物半導体層115の上面に形成されたトレンチTR内に設けられているトレンチ型の絶縁ゲート140を備えていることを特徴とする。
図1に示す半導体装置1と同様に、化合物半導体基板112が窒化ガリウム基板(GaN基板)であり、第1化合物半導体層114が窒化ガリウム層(GaN層)であり、第2化合物半導体層116が窒化アルミニウム層(AlN層)である。
【0031】
化合物半導体層115は、第1化合物半導体層114と第2化合物半導体層116が積層して構成されている。図中に示される破線が、第1化合物半導体層114と第2化合物半導体層116の界面を示す。第1化合物半導体層114は、化合物半導体基板112の上面に接するように設けられており、化合物半導体基板112と第2化合物半導体層116の間に配置されている。第2化合物半導体層116は、第1化合物半導体層114の上面に接するように設けられており、化合物半導体層115の上面に露出する位置に配置されている。なお、本明細書では、トレンチTRの側面及び底面も、化合物半導体層115の上面に含まれる。
【0032】
化合物半導体層115は、n型のドリフト領域122と、p-型のボディ領域124と、n+型のソース領域125と、p+型のボディコンタクト領域126と、p-型の電界緩和領域127と、を有している。
【0033】
ドリフト領域122は、ドレイン領域121の上面に接するように設けられており、ドレイン領域121とボディ領域124の間に配置されている。ドリフト領域122の一部は、トレンチTRの側面と底面の間の角部に露出する位置に設けられており、絶縁ゲート140の側面と底面に接している。トレンチTRの側面と底面の間の角部に露出する位置のドリフト領域122は、第1化合物半導体層14と第2化合物半導体層16の双方を跨いで配置されている。
【0034】
ボディ領域124は、ドリフト領域122の上面に接するように設けられている。ボディ領域124の一部は、トレンチTRの側面に露出する位置に設けられており、絶縁ゲート140の側面に接している。トレンチTRの側面に露出する位置のボディ領域124は、第1化合物半導体層14と第2化合物半導体層16の双方を跨いで配置されている。
【0035】
ソース領域125は、ボディ領域124の上面に接するように設けられており、ボディ領域124によってドリフト領域122から隔てられている。ソース領域125は、トレンチTRの側面に露出する位置に設けられており、絶縁ゲート140の側面に接している。ソース領域125は、第1化合物半導体層14と第2化合物半導体層16の双方を跨いで配置されている。
【0036】
ボディコンタクト領域126は、ボディ領域124の上面に接するように設けられている。ボディコンタクト領域126は、化合物半導体層115の上面に露出する位置に設けられており、第1化合物半導体層114と第2化合物半導体層116の双方を跨いで配置されている。
【0037】
電界緩和領域127は、トレンチTRの底面に露出する位置に設けられており、絶縁ゲート140の底面に接している。電界緩和領域127は、絶縁ゲート140とドリフト領域122の間に配置されており、絶縁ゲート140の底面の電界を緩和するために設けられている。電界緩和領域127は、第1化合物半導体層114と第2化合物半導体層116の双方を跨いで配置されている。電界緩和領域127は、p型のドーパントをボディ領域124と同程度に含んでいる。p型のドーパントは、特に限定されるものではないが、例えばマグネシウムであってもよい。
【0038】
絶縁ゲート140は、トレンチTR内に設けられており、酸化シリコンのゲート絶縁膜142及びポリシリコンのゲート電極144を有している。ゲート絶縁膜142は、トレンチTRの側面及び底面を被覆するように設けられている。ゲート電極144は、ゲート絶縁膜142によって化合物半導体層115から隔てられており、ドリフト領域122とソース領域125を隔てる位置のボディ領域124にゲート絶縁膜142を介して対向している。
【0039】
次に、半導体装置2の動作を説明する。使用時には、ドレイン電極132に正電圧が印加され、ソース電極134が接地される。ゲート電極144にゲート閾値電圧よりも高い正電圧が印加されると、ドリフト領域122とソース領域125を隔てる位置のボディ領域124、即ち、チャネル領域に反転層が形成される。チャネル領域に形成された反転層を介してソース領域125からドリフト領域122に電子が流入する。ドリフト領域122に流入した電子は、そのドリフト領域122を縦方向に流れてドレイン電極132に向かう。これにより、ドレイン電極132とソース電極134が導通し、半導体装置2がターンオンする。ゲート電極144が接地されると、反転層が消失し、半導体装置2がターンオフする。このように、半導体装置2は、ゲート電極144に印加する電圧に基づいてドレイン電極132とソース電極134の間のオンとオフを切り換えるスイッチング動作を実行することができる。
【0040】
(半導体装置2の製造方法)
図7は、半導体装置2を製造するための工程のうちの一部の工程の流れを示す製造フローである。
図8~
図12は、
図7の製造フローに対応した製造過程における要部断面図である。
【0041】
まず、
図8に示されるように、エピタキシャル成長技術を利用して、化合物半導体基板112の上面から第1化合物半導体層114を結晶成長する(
図7のステップS11)。第1化合物半導体層14は、n型のドーパントを含むように結晶成長して形成される。
【0042】
次に、
図9に示されるように、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術を利用して、第1化合物半導体層114の上面から深部に向けて伸びるトレンチTRを形成する(
図7のステップS12)。
【0043】
次に、
図10に示されるように、エピタキシャル成長技術を利用して、第1化合物半導体層114の上面から第2化合物半導体層116を結晶成長し、化合物半導体層115を形成する(
図7のステップS13)。第2化合物半導体層116は、トレンチTR内にも形成される。第2化合物半導体層116は、n型のドーパントを含むように結晶成長して形成されてもよく、ノンドープで結晶成長して形成されてもよい。第2化合物半導体層116の厚みは、15nm以下である。第2化合物半導体層116の厚みが15nm以下であると、第1化合物半導体層114(この例では、GaN層)と第2化合物半導体層116(この例では、AlN層)の格子定数差の影響によって第2化合物半導体層116にクラックが入ることが抑えられ、良質な第2化合物半導体層116を形成することができる。
【0044】
次に、
図11に示されるように、イオン注入技術を利用して、p型のドーパント又はn型ドーパントを化合物半導体層115の上層部の所定領域に注入し、ボディ領域124とソース領域125とボディコンタクト領域126と電界緩和領域127を形成する(
図7のステップS14)。これら半導体領域124,125,126,127を形成する順序は特に限定されるものではない。これら半導体領域124,125,126,127を形成するためのドーパントは、第1化合物半導体層114と第2化合物半導体層116の双方を跨ぐように注入される。
【0045】
次に、これら半導体領域124,125,126,127を活性化するための熱処理を実施する(
図7のステップS15)。熱処理の温度は、特に限定されるものではないが、例えば1200℃以上であってもよい。このような高温の熱処理により、注入されたドーパント、特に、p型のドーパントであるマグネシウムを良好に活性化させることができる。また、第2化合物半導体層116(この例では、AlN層)は、第1化合物半導体層114(この例では、GaN層)よりも融点が高い材料で構成されている。このため、第2化合物半導体層116はキャップ層として機能することができ、化合物半導体層115の上面からの窒素抜けを抑制し、化合物半導体層115の上面にピットが形成されるのを抑制することができる。
【0046】
次に、
図12に示されるように、化合物半導体層115上に絶縁ゲート140を形成し、トレンチTR内に絶縁ゲート140を配置させる(
図7のステップS16)。具体的には、蒸着技術を利用して、トレンチTR内を含む第2化合物半導体層116の上面を被覆するようにゲート絶縁膜142を成膜する。次に、蒸着技術を利用して、ゲート絶縁膜142の上面にゲート電極144を成膜する。さらに、エッチング技術を利用して、ゲート絶縁膜142及びゲート電極144を加工し、トレンチTR内に絶縁ゲート140を形成する。この後、既知の製造技術を利用して、ドレイン電極132及びソース電極134を形成することで、
図7に示す半導体装置2を製造することができる。
【0047】
この製造方法でも、ボディ領域124の一部のチャネル領域が第1化合物半導体層14と第2化合物半導体層16の双方を跨いで形成される。このため、この製造方法でも、第2化合物半導体層116の一部をチャネル領域として構成することができるので、キャップ層として機能する第2化合物半導体層116が残存していても、閾値電圧の低下が抑えられた半導体装置2を製造することができる。
【0048】
以下、本明細書で開示される技術の特徴を整理する。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0049】
本明細書が開示する半導体装置は、第1化合物半導体層と第2化合物半導体層を有する化合物半導体層であって、前記第2化合物半導体層は前記第1化合物半導体層上に設けられているとともに前記第1化合物半導体層よりも融点が高い、化合物半導体層と、前記第2化合物半導体層上に設けられている絶縁ゲートと、を備えることができる。前記化合物半導体層の材料は、特に限定されるものではなく、例えば窒化物半導体又は酸化ガリウムであってもよい。前記化合物半導体層の材料が窒化物半導体の場合、前記第1化合物半導体層の材料が窒化ガリウムであってもよく、前記第2化合物半導体層の材料が窒化アルミニウムであってもよい。前記化合物半導体層は、第1導電型のドリフト領域と、第1導電型のソース領域と、前記ドリフト領域と前記ソース領域の間に設けられており、前記化合物半導体層の上面に露出する位置に配置されている第2導電型のボディ領域と、を有することができる。前記絶縁ゲートは、前記ドリフト領域と前記ソース領域の間の位置にある前記ボディ領域に対向している。前記ドリフト領域と前記ソース領域の間の位置にある前記ボディ領域は、前記第1化合物半導体層と前記第2化合物半導体層の双方を跨いで配置されている。
【0050】
上記半導体装置では、前記第1化合物半導体層の材料が窒化ガリウムであり、前記第2化合物半導体層の材料が窒化アルミニウムの場合、前記第2化合物半導体層の厚みが15nm以下であってもよい。
【0051】
上記半導体装置の前記絶縁ゲートは、プレーナー型であってもよく、トレンチ型であってもよい。前記絶縁ゲートがプレーナー型の場合、前記ドリフト領域は、前記化合物半導体層の前記上面に露出する位置に配置されており、前記ボディ領域に隣接する第1導電型のJFET領域を有していてもよい。この場合、前記絶縁ゲートは、前記JFET領域と前記ソース領域の間の位置にある前記ボディ領域に対向していてもよい。前記絶縁ゲートがトレンチ型の場合、前記化合物半導体層の前記上面にトレンチ(TR)が形成されていてもよい。前記ドリフト領域と前記ソース領域の間の位置にある前記ボディ領域が、前記トレンチの側面に露出する位置に配置されていてもよい。この場合、前記絶縁ゲートは、前記トレンチ内に設けられていてもよい。
【0052】
本明細書が開示する半導体装置の製造方法は、第1導電型の第1化合物半導体層と第1導電型又はi型の第2化合物半導体層を有する化合物半導体層を準備する第1工程であって、前記第2化合物半導体層は前記第1化合物半導体層上に設けられているとともに前記第1化合物半導体層よりも融点が高い、第1工程と、前記化合物半導体層の上層部に第2導電型の不純物をイオン注入してボディ領域を形成する第2工程であって、前記ボディ領域は第1導電型のドリフト領域と第1導電型のソース領域の間に設けられているとともに前記第1化合物半導体層と前記第2化合物半導体層の双方を跨いで配置されている第2工程と、前記第2工程を実施した後に、前記化合物半導体層を熱処理する第3工程と、前記第2化合物半導体層上に絶縁ゲートを形成する第4工程であって、前記絶縁ゲートは前記ドリフト領域と前記ソース領域の間の位置にある前記ボディ領域に対向している、第4工程と、を備えることができる。前記化合物半導体層の材料は、特に限定されるものではなく、例えば窒化物半導体又は酸化ガリウムであってもよい。前記化合物半導体層の材料が窒化物半導体の場合、前記第1化合物半導体層の材料が窒化ガリウムであってもよく、前記第2化合物半導体層の材料が窒化アルミニウムであってもよい。
【0053】
上記半導体装置の製造方法では、前記第1化合物半導体層の材料が窒化ガリウムであり、前記第2化合物半導体層の材料が窒化アルミニウムの場合、前記第2化合物半導体層の厚みが15nm以下であってもよい。前記第2化合物半導体層の厚みが15nm以下であると、第1化合物半導体層と第2化合物半導体層の格子定数差の影響によって第2化合物半導体層にクラックが入ることが抑えられ、良質な第2化合物半導体層を形成することができる。
【0054】
上記半導体装置の製造方法では、前記化合物半導体層の材料が窒化物半導体の場合、前記第3工程の熱処理温度が1200℃以上であってもよい。ドーパントを効果的に活性化することができる。
【0055】
上記製造方法では、前記第1工程が、化合物半導体基板の表面から前記第1化合物半導体層を結晶成長する段階と、前記第1化合物半導体層の表面から前記第2化合物半導体層を結晶成長する段階と、を有していてもよい。キャップ層として機能する前記第2化合物半導体層をイオン注入に先立って形成することができる。
【0056】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0057】
12,112:化合物半導体基板、 14,114:第1化合物半導体層、 15,115:化合物半導体層、 16,116:第2化合物半導体層、 21,121:ドレイン領域、 22,122:ドリフト領域、 23,123:JFET領域、 24,124:ボディ領域、 25,125:ソース領域、 26,126:ボディコンタクト領域、 32,132:ドレイン電極、 34,134:ソース電極、 40,140:絶縁ゲート