(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】試料観察方法およびカートリッジ
(51)【国際特許分類】
H01J 37/20 20060101AFI20241112BHJP
H01J 37/26 20060101ALI20241112BHJP
G01N 1/42 20060101ALI20241112BHJP
G01N 1/32 20060101ALI20241112BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
H01J37/20 E
H01J37/26
H01J37/20 C
H01J37/20 B
G01N1/42
G01N1/32 B
G01N1/28 G
G01N1/28 F
G01N1/28 J
(21)【出願番号】P 2021104683
(22)【出願日】2021-06-24
【審査請求日】2024-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100161540
【氏名又は名称】吉田 良伸
(72)【発明者】
【氏名】水野 議覚
(72)【発明者】
【氏名】永沼 朋之
(72)【発明者】
【氏名】飯島 寛文
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-015056(JP,A)
【文献】国際公開第2020/119956(WO,A1)
【文献】特表2014-501906(JP,A)
【文献】特開2000-146781(JP,A)
【文献】特開2013-008633(JP,A)
【文献】特開2015-088237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
G01N 1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を凍結させて透過電子顕微鏡で観察する試料観察方法であって、
カートリッジで凍結した前記試料を支持する工程と、
前記カートリッジに支持された前記試料を光学顕微鏡で観察し、観察対象の位置情報を取得する工程と、
前記カートリッジを集束イオンビーム装置に導入し、前記位置情報に基づいて前記試料を加工する工程と、
前記カートリッジを前記透過電子顕微鏡に導入し、加工された前記試料を前記透過電子顕微鏡で観察する工程と、
を含む、試料観察方法。
【請求項2】
請求項1において、
凍結試料支持体に支持された前記試料を凍結装置で凍結させる工程を含み、
前記カートリッジで凍結した前記試料を支持する工程では、前記凍結試料支持体を、前記カートリッジの第1取付け部に取付け、
前記試料を加工する工程では、
前記位置情報に基づいて前記凍結試料支持体に支持された前記試料を加工し、
加工された前記試料を、前記カートリッジの第2取付け部に取付けられた電子顕微鏡用試料支持体に移し、
前記電子顕微鏡用試料支持体に支持された前記試料を加工して、前記試料を薄片化する、試料観察方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記試料を加工する工程では、加工された前記試料を、前記集束イオンビーム装置に搭載されたマニピュレータを用いて前記電子顕微鏡用試料支持体に移す、試料観察方法。
【請求項4】
請求項1において、
電子顕微鏡用試料支持体に支持された前記試料を凍結させる工程を含み、
前記カートリッジで凍結した前記試料を支持する工程では、前記電子顕微鏡用試料支持
体を、前記カートリッジの取付け部に取付ける、試料観察方法。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれか1項において、
前記カートリッジには、前記集束イオンビーム装置において集束イオンビームを前記試料に照射するための切り欠きと、前記透過電子顕微鏡において電子線を通過させるための貫通孔と、が設けられ、
前記切り欠きには、前記切り欠きを跨ぐ梁部が設けられている、試料観察方法。
【請求項6】
請求項5において、
前記カートリッジは、ベースを含み、
前記ベースは、前記切り欠きを規定する2つの面を有し、
前記2つの面は、前記切り欠きを挟み、
前記梁部は、前記2つの面を接続している、試料観察方法。
【請求項7】
請求項2ないし4のいずれか1項において、
前記カートリッジは、ベースを含み、前記電子顕微鏡用試料支持体を前記ベースの上面に対して傾けて支持する、試料観察方法。
【請求項8】
請求項5ないし7のいずれか1項において、
前記透過電子顕微鏡は、
試料室と、
仕切弁を介して前記試料室に接続された試料交換室と、
前記カートリッジを前記試料交換室と前記試料室との間で搬送する搬送装置と、
を含む、試料観察方法。
【請求項9】
ベースと、
前記ベースに設けられ、電子顕微鏡用試料支持体が取り付けられる取付け部と、
を含み、
前記ベースには、集束イオンビーム装置において集束イオンビームを試料に照射するための切り欠きと、透過電子顕微鏡において電子線を通過させるための貫通孔と、
が設けられ、
前記切り欠きには、前記切り欠きを跨ぐ梁部が設けられている、カートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料観察方法およびカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、TEM)において、含水率の高い生物試料は、そのままでは観察できないため、例えば、凍結して観察を行う。このように、凍結した試料を染色などを行わずに電子顕微鏡に導入して観察するクライオ電子顕微鏡法が注目されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、冷却された試料が固定されたカートリッジを試料交換室から試料室に自動で搬送できる搬送装置を備えたクライオ電子顕微鏡が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなクライオ電子顕微鏡法で試料を観察するためには、例えば、まず、試料を冷却装置で冷却して凍結させ、試料を加工装置で薄片化する。そして、薄片化した試料を透過電子顕微鏡に導入して観察を行う。
【0006】
このように、試料を観察するためには、試料を凍結してから観察するまで、複数の処理装置で処理を行わなければならない。各処理装置は、ステージやホルダーが異なるため、試料を凍結してから観察するまで、試料の載せ替えを行う必要がある。試料を載せかえる際には、作業者は、試料を支持するTEM用グリッドなどを、ピンセットなどを用いて取り扱わなければならない。TEM用グリッドなどの試料支持体は、薄く、かつ、小さいため、作業の難易度が高い。また、このような作業では、試料が脱落したり、破損したりするおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る試料観察方法の一態様は、
試料を凍結させて透過電子顕微鏡で観察する試料観察方法であって、
カートリッジで凍結した前記試料を支持する工程と、
前記カートリッジに支持された前記試料を光学顕微鏡で観察し、観察対象の位置情報を取得する工程と、
前記カートリッジを集束イオンビーム装置に導入し、前記位置情報に基づいて前記試料を加工する工程と、
前記カートリッジを前記透過電子顕微鏡に導入し、加工された前記試料を前記透過電子顕微鏡で観察する工程と、
を含む。
【0008】
このような試料観察方法では、光学顕微鏡で試料を観察してから加工された試料を透過電子顕微鏡で観察するまで、試料はカートリッジに支持されている。そのため、作業者は、試料や試料支持体を、直接取り扱わなくてもよいため、透過電子顕微鏡用の試料を容易に作製できる。さらに、作製された試料を容易に透過電子顕微鏡に導入できる。
【0009】
本発明に係るカートリッジの一態様は、
ベースと、
前記ベースに設けられ、電子顕微鏡用試料支持体が取り付けられる取付け部と、
を含み、
前記ベースには、集束イオンビーム装置において集束イオンビームを試料に照射するための切り欠きと、透過電子顕微鏡において電子線を通過させるための貫通孔と、
が設けられ、
前記切り欠きには、前記切り欠きを跨ぐ梁部が設けられている。
【0010】
このようなカートリッジでは、光学顕微鏡で試料を観察してから加工された試料を透過電子顕微鏡で観察するまで、試料を支持できる。さらに、このようなカートリッジでは、切り欠きに梁部が設けられているため、カートリッジの強度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係る試料観察方法で用いられるカートリッジを模式的に示す斜視図。
【
図2】第1実施形態に係る試料観察方法で用いられるTEM用の冷却試料ホルダーを模式的に示す断面図。
【
図3】第1実施形態に係る試料観察方法の一例を示すフローチャート。
【
図6】試料をカートリッジで支持する工程を模式的に示す斜視図。
【
図7】集束イオンビーム装置を模式的に示す斜視図。
【
図8】集束イオンビーム装置で試料を加工している様子を模式的に示す斜視図。
【
図9】集束イオンビーム装置で試料を加工している様子を模式的に示す斜視図。
【
図11】カートリッジで支持された試料を模式的に示す図。
【
図13】第2実施形態に係る試料観察方法で用いられるカートリッジを模式的に示す斜視図。
【
図14】第2実施形態に係る試料観察方法の一例を示すフローチャート。
【
図15】試料をカートリッジで支持する工程を模式的に示す斜視図。
【
図16】集束イオンビームで試料を加工している様子を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説
明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0015】
1. 第1実施形態
1.1. カートリッジ
まず、第1実施形態に係る試料観察方法で用いられるカートリッジについて、図面を参照しながら説明する。
図1は、第1実施形態に係る試料観察方法で用いられるカートリッジ100を模式的に示す斜視図である。
【0016】
カートリッジ100は、
図1に示すように、ベース110と、固定溝120と、第1取付け部130と、第2取付け部140と、を含む。
【0017】
ベース110は、板状の部材である。ベース110には、固定溝120と、第1取付け部130、および第2取付け部140が設けられている。
【0018】
固定溝120は、カートリッジ100を、後述する
図2に示すTEM用の冷却試料ホルダー200に装着するための溝である。冷却試料ホルダー200については後述する。
【0019】
第1取付け部130は、凍結試料支持体をカートリッジ100に取り付け可能に構成されている。凍結試料支持体は、第1取付け部130によってベース110に装着される。第1取付け部130は、例えば、ベース110に設けられた凹部を含み、当該凹部に凍結試料支持体を嵌め込むことで凍結試料支持体がベース110に装着される。凍結試料支持体は、凍結装置で試料を凍結させる際に、試料を支持するための支持体である。凍結試料支持体は、例えば、凍結用ディッシュである。
【0020】
第2取付け部140は、TEM用試料支持体をカートリッジ100に取付け可能に構成されている。TEM用試料支持体は、第2取付け部140によってベース110に装着される。第2取付け部140は、例えば、ベース110に設けられた凹部を含み、当該凹部にTEM用試料支持体を嵌め込むことでTEM用試料支持体がベース110に装着される。TEM用試料支持体は、TEM用の試料を支持するための支持体である。TEM用試料支持体は、例えば、TEM用グリッド、集束イオンビーム装置で使用可能な切り欠きグリッドなどである。
【0021】
第2取付け部140にTEM用試料支持体を取り付けた場合、TEM用試料支持体に支持された試料は、例えば、ベース110の厚さ方向において、ベース110の中心に位置する。すなわち、第2取付け部140にTEM用試料支持体を取り付けた場合、試料とベース110の上面110aとの間の距離は、試料とベース110の下面110bとの間の距離と等しい。
【0022】
カートリッジ100には、
図1に示すように、集束イオンビーム装置において集束イオンビームを試料に照射するための切り欠き150と、透過電子顕微鏡において電子線を通過させるための貫通孔160と、が設けられている。
【0023】
切り欠き150は、ベース110の側面102を切り欠いて形成されている。切り欠き150は、第2取付け部140の凹部に接続されている。そのため、第2取付け部140に取り付けられたTEM用試料支持体に支持された試料に、切り欠き150を通して、集束イオンビームを照射できる。
【0024】
ベース110は、切り欠き150を規定する第1面111、第2面112、第3面113、および第4面114を有している。第1面111および第4面114は、ベース110の側面102に接続されている。第2面112は、第1面111と第2取付け部140を規定する面を接続している。第3面113は、第4面114と第2取付け部140を規定する面を接続している。
【0025】
切り欠き150には、切り欠き150を跨ぐ梁部170が設けられている。梁部170は、切り欠き150を規定する複数の面のうち、切り欠き150を挟む2つの面を接続している。第1面111と第4面114は、切り欠き150を挟む2つの面であり、梁部170は、第1面111と第4面114を接続している。
【0026】
切り欠き150に梁部170を設けることによって、例えば切り欠き150に梁部170を設けない場合と比べて、カートリッジ100の強度を向上できる。
【0027】
貫通孔160は、第2取付け部140の凹部の底面に設けられている。透過電子顕微鏡において、第2取付け部140に取り付けられたTEM用試料支持体に支持された試料に電子線を照射すると、試料を通過した電子線は貫通孔160を通過する。
【0028】
1.2. 冷却試料ホルダー
次に、第1実施形態に係る試料観察方法で用いられるTEM用の冷却試料ホルダーについて、図面を参照しながら説明する。
図2は、第1実施形態に係る試料観察方法で用いられるTEM用の冷却試料ホルダー200を模式的に示す断面図である。
【0029】
冷却試料ホルダー200は、凍結した試料を冷却できる試料ホルダーである。冷却試料ホルダー200を用いることによって、凍結した試料を溶解させることなく保持できる。冷却試料ホルダー200は、
図2に示すように、カートリッジ保持部210と、熱伝導体220と、タンク230と、カバー240と、を含む。
【0030】
カートリッジ保持部210は、冷却試料ホルダー200の先端に設けられている。カートリッジ保持部210では、カートリッジ100を保持できる。カートリッジ保持部210は、例えば、カートリッジ100の固定溝120に、不図示の留め具を差し込むことで、カートリッジ100を保持する。
【0031】
タンク230には、冷却媒体が収容されている。冷却媒体としては、例えば、液体窒素を用いることができる。熱伝導体220は、熱伝導率の高い材料からなる。熱伝導体220の一端は、タンク230の冷却媒体に接続され、熱伝導体220の他端は、カートリッジ保持部210に接続されている。そのため、カートリッジ100を冷却できる。
【0032】
カバー240は、カートリッジ保持部210に保持されたカートリッジ100を覆っている。カバー240でカートリッジ100を覆うことによって、カートリッジ100やカートリッジ100に支持された試料に霜が付着することを防ぐことができる。
【0033】
1.3. 試料観察方法
次に、第1実施形態に試料観察方法について説明する。
図3は、第1実施形態に係る試料観察方法の一例を示すフローチャートである。
【0034】
1.3.1. 試料を凍結する工程S100
まず、試料を凍結する。試料は、例えば、細胞、タンパク質、ウイルス、脂質分子などの生物試料である。含水率の高い生物試料を凍結することによって、染色などを行わずに、透過電子顕微鏡で観察できる。
【0035】
試料の凍結は、凍結装置を用いて行われる。凍結装置としては、例えば、高圧凍結装置
を用いることができる。高圧凍結装置では、試料に圧力を加えて凍結させることによって、大気圧下での凍結に比べて、試料のより深くまで非晶質に水を凍結できる。
【0036】
図4および
図5は、試料2を凍結する工程を説明するための図である。
【0037】
図4に示すように、まず、2つの凍結試料支持体10で試料2を挟む。次に、試料2を挟んだ2つの凍結試料支持体10を高圧凍結装置にセットする。次に、高圧凍結装置で試料2を凍結する。次に、2つの凍結試料支持体10に挟まれた試料2を、冷却割断装置で割断する。これにより、
図5に示すように、凍結試料支持体10に支持された試料2を得ることができる。冷却割断装置で試料2を割断することによって、試料2に平坦な面を形成できる。これにより、集束イオンビームを用いて試料2を加工しやすくなる。
【0038】
冷却割断装置では、試料2への霜の付着を防ぐために、真空中または窒素ガス雰囲気に試料2が配置される。
図5に示す凍結試料支持体10に支持された試料2は、液体窒素カップに収容され、ワークステーションに搬送される。
【0039】
1.3.2. 試料をカートリッジで支持する工程S102
図6は、試料2をカートリッジ100で支持する工程S102を模式的に示す斜視図である。
【0040】
図6に示すように、凍結試料支持体10に支持された試料2をカートリッジ100に装着する。ワークステーションにおいて、凍結試料支持体10を第1取付け部130に取り付ける。ワークステーションの作業スペースは、液体窒素が充填されており、試料2に霜を付着させることなく、凍結試料支持体10をカートリッジ100に取り付けることができる。
【0041】
なお、凍結試料支持体10をカートリッジ100に取り付ける前に、あらかじめカートリッジ100の第2取付け部140にTEM用試料支持体20を取り付けておく。
【0042】
このように、本工程において、凍結した試料2とTEM用試料支持体20の両方がカートリッジ100に装着される。そのため、これ以降の工程では、作業者はカートリッジ100を取り扱えばよく、試料2やTEM用試料支持体20を直接取り扱わなくてもよい。
【0043】
1.3.3. 光学顕微鏡で試料を観察する工程S104
凍結した試料2およびTEM用試料支持体20を支持したカートリッジ100を光学顕微鏡に搬送し、カートリッジ100を光学顕微鏡のステージに取り付ける。なお、ワークステーションから光学顕微鏡へのカートリッジ100の搬送は、液体窒素カップを用いて行われる。
【0044】
光学顕微鏡のステージは、カートリッジ100を搭載可能である。光学顕微鏡のステージは、液体窒素タンクに接続されており、カートリッジ100を冷却できる。ステージに搭載されたカートリッジ100は、例えば、加圧状態の窒素ガス雰囲気に置かれる。これにより、試料2に霜を付着させることなく、光学顕微鏡で試料2を観察できる。
【0045】
光学顕微鏡では、試料2を観察し、観察対象の位置情報を取得する。観察対象の位置は、例えば、カートリッジ100に設けられた、複数のアライメントマーカーによって特定できる。具体的には、光学顕微鏡において、各アライメントマーカーの位置にステージを移動させ、各アライメントマーカーのステージ座標を記録する。次に、観察対象の位置にステージを移動させ、観察対象のステージ座標を記録する。このようにして、観察対象の位置情報を取得する。観察対象の位置情報は、例えば、各アライメントマーカーのステー
ジ座標と、観察対象のステージ座標と、を含む。なお、アライメントマーカーは、TEM用試料支持体20に設けられていてもよい。
【0046】
例えば、試料2を観察するための光学顕微鏡として、蛍光顕微鏡を用いてもよい。蛍光顕微鏡では、試料2から発せられた蛍光を観察できる。
【0047】
1.3.4. カートリッジを冷却試料ホルダーに取り付ける工程S106
光学顕微鏡で観察対象の位置情報を取得した後、液体窒素カップを用いてカートリッジ100を光学顕微鏡からワークステーションに搬送する。ワークステーションにおいて、カートリッジ100を
図2に示す冷却試料ホルダー200に装着する。具体的には、ワークステーションにおいて、液体窒素中でカートリッジ100を冷却試料ホルダー200のカートリッジ保持部210に取り付ける。カートリッジ保持部210にカートリッジ100を取付けた後、カバー240でカートリッジ100を覆う。カートリッジ保持部210は、タンク230と熱的に接続されているため、冷却試料ホルダー200で保持されたカートリッジ100は冷却される。
【0048】
1.3.5. 集束イオンビーム装置で試料を板状に加工する工程S108
集束イオンビーム装置の処理室に冷却試料ホルダー200を用いてカートリッジ100を搬送する。そして、集束イオンビーム装置を用いて、試料2を加工する。
【0049】
図7は、集束イオンビーム装置300を模式的に示す斜視図である。集束イオンビーム装置300は、
図7に示すように、電子ビーム鏡筒310と、ガスインジェクションシステム320と、集束イオンビーム鏡筒330と、マニピュレータシステム340と、処理室350と、搬送ロッド360と、試料室370と、を含む。
【0050】
集束イオンビーム装置300は、電子ビーム鏡筒310および集束イオンビーム鏡筒330を備えており、集束イオンビームによる試料2の加工、および走査電子顕微鏡による試料2の観察が可能である。
【0051】
試料2の加工は、
図7に示すように、まず、処理室350に冷却試料ホルダー200を挿入し、処理室350内のテーブルにカートリッジ100を装着する。カートリッジ100をテーブルに装着した後、冷却試料ホルダー200を引き抜く。処理室350は真空状態に保たれており、テーブルは液体窒素タンクに接続されているため、処理室350内においても試料2は、凍結した状態を維持できる。
【0052】
処理室350において、凍結した試料2に導電性コーティングを行う。処理室350は、試料室370とは独立した排気系で真空状態が維持されている。そのため、処理室350のみにアルゴンガスを流して、試料2に対してスパッタコーティングを行うことができる。
【0053】
試料2に対してコーティングを行った後、搬送ロッド360を用いて、カートリッジ100を処理室350から試料室370に搬送する。試料室370に搬送されたカートリッジ100は、試料室370内に配置された冷却ステージに固定される。
【0054】
図8および
図9は、集束イオンビーム装置300で試料2を加工している様子を模式的に示す斜視図である。
【0055】
図8に示すように、観察対象の位置情報に基づいて試料2を加工する。例えば、走査電子顕微鏡(電子ビーム鏡筒310)でカートリッジ100を観察することによってカートリッジ100に設けられたアライメントマーカーを探し、各アライメントマーカーのステ
ージ座標を記録する。記録したステージ座標と、観察対象の位置情報(各アライメントマーカーの位置情報)と、を比較して、観察対象の集束イオンビーム装置300におけるステージ座標を求める。
【0056】
なお、上記では、観察対象の位置あわせの際に、アライメントマーカーを電子線を用いたSEM像で確認する場合について説明したが、アライメントマーカーをイオンビームを用いたSIM(Scanning Ion Microscope)像で確認してもよい。
【0057】
観察対象のステージ座標を特定できたら、特定されたステージ座標に試料2を移動させる。そして、集束イオンビーム鏡筒330から集束イオンビームを試料2に照射し、試料2を加工する。
【0058】
試料2の加工では、まず、試料2に保護膜としてのデポジション膜を成膜する。具体的には、ガスインジェクションシステム320のノズルを試料2の近傍に配置し、試料2にPtの有機系化合物ガスを吹き付ける。これにより、試料2の表面にデポジション膜を成膜できる。試料2の表面に保護膜を成膜することによって、加工中の観察対象へのダメージを低減できる。
【0059】
なお、低温では電子ビームまたはイオンビームを用いたCVD(Chemical Vapor Deposition)法による成膜を行うことができないため、上記のように、低温の試料2にガスを吹き付けて成膜を行う。
【0060】
次に、集束イオンビームを用いて試料2を加工する。具体的には、まず、集束イオンビームを用いて、試料2の一部を板状に加工する。次に、集束イオンビームを用いて、板状部分の底部と側面を切り落とす。このとき、側面の全部を切り落とさずに、板状部分と試料2の残りの部分とがつながった状態にする。
【0061】
1.3.6. 試料をマニピュレータでTEM用試料支持体に移す工程S110
次に、マニピュレータシステム340を用いて、板状の試料2を凍結試料支持体10からTEM用試料支持体20に移す。
【0062】
具体的には、まず、マニピュレータ342の先端を試料2の板状部分に固定し、マニピュレータ342と板状部分を接続する。次に、集束イオンビームを用いて板状部分と試料2の残りの部分とがつながった部分を切り落とし、板状部分を分離する。次に、
図9に示すように、マニピュレータ342で板状部分を凍結試料支持体10上からTEM用試料支持体20上に搬送する。次に、板状部分をTEM用試料支持体20上に接続し、マニピュレータ342と板状部分の接続部分を切り離す。以上の工程により、板状の試料2をTEM用試料支持体20に移すことができる。
【0063】
1.3.7. 集束イオンビーム装置で試料を薄片化する工程S112
次に、TEM用試料支持体20に支持された試料2を集束イオンビームで薄片化する。試料2を薄片化することによって、試料2を透過電子顕微鏡で観察できる。
【0064】
試料2の薄片化が完了した後、搬送ロッド360でカートリッジ100を試料室370から処理室350に搬送する。処理室350に冷却試料ホルダー200を挿入し、処理室350からカートリッジ100を搬出する。
【0065】
なお、処理室350において、薄片化した試料2に導電性膜のコーティングを行ってもよい。これにより、透過電子顕微鏡で試料2を観察する際のチャージによる試料ドリフトを低減できる。
【0066】
1.3.8. 透過電子顕微鏡で試料を観察する工程S114
ワークステーションにおいて、冷却試料ホルダー200からカートリッジ100を取り外し、取り外したカートリッジ100をマガジンに装填する。カートリッジ100が装填されたマガジンを透過電子顕微鏡に取り付ける。これにより、カートリッジ100を透過電子顕微鏡に導入できる。この結果、試料2の観察対象を透過電子顕微鏡で観察できる。
【0067】
図10は、透過電子顕微鏡400を模式的に示す図である。
【0068】
透過電子顕微鏡400は、試料2を透過した電子線でTEM像を結像する。透過電子顕微鏡400は、試料2を冷却しながら観察可能なクライオ電顕である。透過電子顕微鏡400は、
図10に示すように、仕切弁420と、搬送装置430と、搬送装置440と、仕切弁450と、試料ホルダー460と、を含む。
【0069】
仕切弁420は、試料交換室404と液体窒素カップ410との間を仕切る弁である。液体窒素カップ410は、仕切弁420を介して、試料交換室404に装着される。搬送装置430は、液体窒素カップ410と試料交換室404との間でマガジン412を搬送する。マガジン412は、複数のカートリッジ100を保持可能である。搬送装置440は、カートリッジ100を、試料交換室404と試料室402との間で搬送する。仕切弁450は、試料交換室404と試料室402との間を仕切る弁である。試料ホルダー460は、試料2を冷却しながら保持できる。
【0070】
透過電子顕微鏡400において、カートリッジ100を試料室402に導入する場合、まず、カートリッジ100が取り付けられたマガジン412を収容する液体窒素カップ410を、仕切弁420を介して試料交換室404に取付ける。仕切弁420を開いた後、搬送装置430でマガジン412を掴み、マガジン412を試料交換室404に導入する。試料交換室404において、搬送装置440でマガジン412に取り付けられたカートリッジ100を掴む。仕切弁450を開いて、搬送装置440でカートリッジ100を試料交換室404から試料室402に搬送する。試料室402においてカートリッジ100を試料ホルダー460に受け渡す。これにより、試料室402にカートリッジ100、すなわち、試料2を導入できる。
【0071】
試料室402では、試料2に電子線が照射される。これにより、TEM像を取得できる。
【0072】
ここで、透過電子顕微鏡400では、上述したように、カートリッジ100は搬送装置440で搬送される。搬送装置440でカートリッジ100をマガジン412に収容する際や、搬送装置440と試料ホルダー460との間でカートリッジ100を受け渡す際に、カートリッジ100に力が加わってしまう。
【0073】
例えば、カートリッジ100の切り欠き150に梁部170が無い場合、カートリッジ100の切り欠き150が設けられた部分の強度が低いため、カートリッジ100が変形してしまう場合があった。これに対して、カートリッジ100では、切り欠き150に梁部170が設けられているため、カートリッジ100の強度が高く、カートリッジ100の変形を防ぐことができる。
【0074】
なお、透過電子顕微鏡は、例えば、冷却試料ホルダー200を直接挿入できるように構成されていてもよい。これにより、容易に、薄片化された試料2を透過電子顕微鏡に導入できる。
【0075】
図11は、カートリッジ100に支持された試料2を模式的に示す図である。
【0076】
図11に示すように、試料2は、TEM用試料支持体20で支持される。TEM用試料支持体20は、第2取付け部140に取付けられている。ここで、カートリッジ100には、切り欠き150が設けられているため、試料2を集束イオンビームで加工できる。さらに、カートリッジ100には、貫通孔160が設けられているため、透過電子顕微鏡において試料2を観察できる。
【0077】
1.4. 効果
第1実施形態に係る試料観察方法は、カートリッジ100で凍結した試料2を支持する工程と、カートリッジ100に支持された試料2を光学顕微鏡で観察し、観察対象の位置情報を取得する工程と、カートリッジ100を集束イオンビーム装置300に導入し、観察対象の位置情報に基づいて試料2を加工する工程と、カートリッジ100を透過電子顕微鏡に導入し、加工された試料2を透過電子顕微鏡で観察する工程と、を含む。このように第1実施形態に係る試料観察方法では、光学顕微鏡で試料2を観察してから透過電子顕微鏡で加工された試料2を観察するまで、試料2はカートリッジ100に支持されている。そのため、作業者は、直接、試料2や試料支持体を取り扱わなくてもよいため、透過電子顕微鏡用の試料を容易に作製できる。さらに、作製された試料を容易に透過電子顕微鏡に導入できる。
【0078】
例えば、カートリッジ100を用いない場合、作業者が、試料2が支持されたグリッドをFIB用試料ホルダーに載せ、加工終了後には、FIB用試料ホルダーからTEM用試料ホルダーにグリッドを載せ替えなければならなかった。
【0079】
第1実施形態に係る試料観察方法では、このような作業が不要であり、容易に透過電子顕微鏡用の試料を作製できる。
【0080】
第1実施形態に係る試料観察方法は、凍結試料支持体10に支持された試料2を凍結装置で凍結させる工程を含み、カートリッジ100で凍結した試料2を支持する工程では、凍結試料支持体10を、カートリッジ100の第1取付け部130に取付け、試料2を加工する工程では、観察対象の位置情報に基づいて凍結試料支持体10に支持された試料2を加工し、加工された試料2をカートリッジ100の第2取付け部140に取付けられたTEM用試料支持体20に移し、TEM用試料支持体20に支持された試料2を加工して、試料2を薄片化する。
【0081】
このように、第1実施形態に係る試料観察方法では、凍結装置で試料2を凍結させた後、カートリッジ100で凍結した試料2を支持してから透過電子顕微鏡による観察まで、試料2は、カートリッジ100に支持されている。そのため、作業者がTEM用グリッドなどの試料支持体を直接取り扱う必要がない。
【0082】
また、カートリッジ100には、凍結試料支持体10およびTEM用試料支持体20の両方があらかじめ取り付けられている。そのため、各処理装置間の座標の共有が容易である。
【0083】
例えば、カートリッジ100を用いない場合、FIB用試料ホルダーからTEM用試料ホルダーにグリッドを載せ替える際には、グリッドの回転を考慮して座標を共有しなければならなかった。これは、一般的に、グリッドは円形であり、TEM用試料ホルダーにグリッドを取付ける際には、グリッドには回転の自由度があるためである。
【0084】
これに対して、カートリッジ100を用いた場合、TEM用試料支持体20は、カート
リッジ100に固定されているため、座標を共有する際にグリッドの回転を考慮しなくてもよい。また、カートリッジ100には、凍結試料支持体10およびTEM用試料支持体20の両方があらかじめ取付けられているため、共通のアライメントマーカーを用いることができる。したがって、座標の共有が容易である。
【0085】
第1実施形態に係る試料観察方法では、試料2を加工する工程において、加工された試料2を、集束イオンビーム装置300に搭載されたマニピュレータ342を用いてTEM用試料支持体20に移す。そのため、より確実に、試料2を凍結試料支持体10からTEM用試料支持体20に移すことができる。
【0086】
第1実施形態に係る試料観察方法では、カートリッジ100には、集束イオンビーム装置300において集束イオンビームを試料2に照射するための切り欠き150と、透過電子顕微鏡において電子線を通過させるための貫通孔160と、が設けられ、切り欠き150には、切り欠き150を跨ぐ梁部170が設けられている。そのため、カートリッジ100の強度を向上できる。
【0087】
また、梁部170を設けることによって梁部170を設けない場合と比べて、輻射熱による試料2の温度の上昇を低減できる。
【0088】
カートリッジ100のベース110は、切り欠き150を規定する第1面111および第4面114を有し、第1面111および第4面114は切り欠き150を挟み、梁部170は、第1面111と第4面114を接続している。そのため、カートリッジ100の強度を向上できる。
【0089】
第1実施形態に係る試料観察方法では、透過電子顕微鏡は、試料室402と、仕切弁450を介して試料室402に接続された試料交換室404と、カートリッジ100を試料交換室404と試料室402との間で搬送する搬送装置440と、を含む。カートリッジ100には、切り欠き150を跨ぐ梁部170が設けられているため、搬送装置440でカートリッジ100を搬送しても、カートリッジ100の変形を防ぐことができる。
【0090】
カートリッジ100は、ベース110と、ベース110に設けられ、TEM用試料支持体20が取り付けられる第2取付け部140と、を含む。また、ベース110には、集束イオンビーム装置300において集束イオンビームを試料2に照射するための切り欠き150と、透過電子顕微鏡400において電子線を通過させるための貫通孔160と、が設けられ、切り欠き150には、切り欠き150を跨ぐ梁部170が設けられている。
【0091】
カートリッジ100を用いることで、光学顕微鏡で試料を観察してから加工された試料を透過電子顕微鏡で観察するまで、試料を支持できる。さらに、カートリッジ100では、切り欠き150に梁部170が設けられているため、カートリッジ100の強度を向上できる。これにより、例えば、透過電子顕微鏡において、搬送装置440でカートリッジ100を搬送しても、カートリッジ100の変形を防ぐことができる。
【0092】
1.5. 変形例
図12は、カートリッジ100の変形例を模式的に示す図である。
図12は、
図11に対応している。
【0093】
図12に示すように、カートリッジ100は、切り欠き150を有していなくてもよい。
図12に示すカートリッジ100では、第2取付け部140がTEM用試料支持体20をベース110の上面110aに対して傾けて支持している。これにより、切り欠き150を設けなくても、ベース110が集束イオンビームを遮らない。したがって、カートリ
ッジ100では、試料2を集束イオンビームで加工でき、かつ、透過電子顕微鏡で加工された試料2を観察できる。
【0094】
図12に示すカートリッジ100でも、上述した
図1および
図11に示すカートリッジ100と同様の作用効果を奏することができる。
【0095】
2. 第2実施形態
2.1. カートリッジ
次に、第2実施形態に係る試料観察方法について説明する。まず、第2実施形態に係る試料観察方法で用いられるカートリッジについて図面を参照しながら説明する。
【0096】
図13は、第2実施形態に係る試料観察方法で用いられるカートリッジ500を模式的に示す斜視図である。
図13に示すカートリッジ500において、上述した
図1に示すカートリッジ100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0097】
図13に示すように、カートリッジ500は、凍結試料支持体10を取り付けるための取付け部(第1取付け部130)を有していない。
【0098】
2.2. 試料観察方法
図14は、第2実施形態に係る試料観察方法の一例を示すフローチャートである。以下、第2実施形態に係る試料観察方法について、第1実施形態に係る試料観察方法の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0099】
2.2.1. 試料を凍結する工程S200
第2実施形態に係る試料観察方法では、グリッド(TEM用試料支持体の一例)に滴下した試料や、グリッド上で培養した試料を凍結する。例えば、グリッドに試料を滴下し、液体エタンなどにグリッドごと投入して試料を凍結する。凍結した試料は、液体窒素カップでワークステーションに搬送する。
【0100】
2.2.2. 試料をカートリッジで支持する工程S202
図15は、試料2をカートリッジ500で支持する工程S202を模式的に示す斜視図である。
【0101】
ワークステーションにおいて、凍結した試料2を保持するグリッド22を、第2取付け部140(以下、単に「取付け部140」ともいう)に取り付ける。第1実施形態と同様に、これ以降の工程では、カートリッジ500のみを取り扱えばよく、作業者が試料2やグリッド22を直接取り扱う必要がない。
【0102】
2.2.3. 光学顕微鏡で試料を観察する工程S204
カートリッジ500を光学顕微鏡のステージに取り付けて、光学顕微鏡で試料2を観察し、観察対象の位置情報を取得する。本工程S204は、上述した
図3に示す光学顕微鏡で試料2を観察する工程S104と同様に行われる。
【0103】
2.2.4. カートリッジを冷却試料ホルダーに取り付ける工程S206
カートリッジ500を冷却試料ホルダー200に取り付ける。本工程S206は、上述した
図3に示すカートリッジ100を冷却試料ホルダー200に取り付ける工程S106と同様に行われる。
【0104】
2.2.5. 集束イオンビーム装置で試料を薄片化する工程S208
図16は、集束イオンビームで試料2を加工している様子を模式的に示す図である。
【0105】
図16に示すように、グリッド22上の試料2に対して集束イオンビームFIBを照射し、試料2を薄片化する。例えば、グリッド22の上面に対して10°程度傾斜した角度から集束イオンビームFIBを入射させて加工を行う。
【0106】
このように、第2実施形態では、グリッド22上で試料2を凍結させ、グリッド22上で試料2を加工するため、試料2をマニピュレータでTEM用試料支持体に移す工程S110を行わなくてよい。
【0107】
2.2.6. 透過電子顕微鏡で試料を観察する工程S210
透過電子顕微鏡にカートリッジ100を導入し、試料2の観察対象を透過電子顕微鏡で観察する。本工程は、上述した
図3に示す透過電子顕微鏡400で試料2を観察する工程S114と同様に行われる。
【0108】
図17は、薄片化された試料2を模式的に示す図である。
【0109】
図17に示すように、試料2は、薄片2aと、薄片2aを保持する塊2bと、を含む。上記の工程S208において、試料2を加工することによって、薄片2aと、薄片2aの両側に位置する塊2bと、が形成される。
【0110】
ここで、透過電子顕微鏡で試料2を観察する際には、透過電子顕微鏡の試料ステージの傾斜軸Lが2つの塊2bを通り薄片2aの中心を通るように、カートリッジ500を試料ステージに装着することが望ましい。これにより、傾斜軸Lまわりに試料2を傾斜させたときに、薄片2aが塊2bの影になって視野が制限されてしまうことを防ぐことができる。
【0111】
第2実施形態に係る試料観察方法では、グリッド22をカートリッジ500で支持した状態で、集束イオンビーム装置300による試料2の加工および透過電子顕微鏡による試料2の観察ができる。そのため、集束イオンビーム装置300による試料2の加工時の向きと、透過電子顕微鏡による試料2の観察時の向きと、を合わせることが容易である。したがって、薄片2aに対して傾斜軸Lがずれて塊2bで視野が制限されてしまうことを防ぐことができる。
【0112】
2.3. 効果
第2実施形態に係る試料観察方法は、上述した第1実施形態に係る試料観察方法と同様の作用効果を奏することができる。
【0113】
第2実施形態に係る試料観察方法では、グリッド22に支持された試料2を凍結させる工程を含み、カートリッジ500で凍結した試料2を支持する工程では、グリッド22を、カートリッジ500の取付け部140に取り付ける。そのため、試料2を凍結試料支持体10からTEM用試料支持体20に移す工程が不要となり、より容易に試料を作製できる。
【0114】
カートリッジ500は、ベース110と、ベース110に設けられ、グリッド22が取り付けられる取付け部140と、を含み、取付け部140は、グリッド22を、ベース110の上面110aに対して傾けて支持する。そのため、例えば、ベース110に切り欠きを設けた場合と比べて、カートリッジ500の強度を向上できる。
【0115】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能であ
る。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。実質的に同一の構成とは、例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0116】
2…試料、2a…薄片、2b…塊、10…凍結試料支持体、20…TEM用試料支持体、22…グリッド、100…カートリッジ、102…側面、110…ベース、110a…上面、111…第1面、112…第2面、113…第3面、114…第4面、120…固定溝、130…第1取付け部、140…第2取付け部、150…切り欠き、160…貫通孔、170…梁部、200…冷却試料ホルダー、210…カートリッジ保持部、220…熱伝導体、230…タンク、240…カバー、300…集束イオンビーム装置、310…電子ビーム鏡筒、320…ガスインジェクションシステム、330…集束イオンビーム鏡筒、340…マニピュレータシステム、342…マニピュレータ、350…処理室、360…搬送ロッド、370…試料室、400…透過電子顕微鏡、402…試料室、404…試料交換室、410…液体窒素カップ、412…マガジン、420…仕切弁、430…搬送装置、440…搬送装置、450…仕切弁、460…試料ホルダー、500…カートリッジ