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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】樹脂成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 39/38 20060101AFI20241112BHJP
   B29C 39/24 20060101ALI20241112BHJP
   B29K 101/12 20060101ALN20241112BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20241112BHJP
【FI】
B29C39/38
B29C39/24
B29K101:12
B29L9:00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021126510
(22)【出願日】2021-08-02
(65)【公開番号】P2023021568
(43)【公開日】2023-02-14
【審査請求日】2024-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518455354
【氏名又は名称】株式会社micro-AMS
(73)【特許権者】
【識別番号】520285880
【氏名又は名称】中部電力ミライズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】立石 浩規
(72)【発明者】
【氏名】鷲頭 慎一
(72)【発明者】
【氏名】香川 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 千春
(72)【発明者】
【氏名】岡墻 慎祐
(72)【発明者】
【氏名】田中 良
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-140218(JP,A)
【文献】特開2020-183109(JP,A)
【文献】特開2020-183110(JP,A)
【文献】特開2002-274892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 39/38
B29C 39/24
B29K 101/12
B29L 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂からなるプリフォームと他の樹脂とを成形型の中で加熱することでこれらを一体に成形し、ウィンドシールドを作製するために行う樹脂成形方法であって、
第1樹脂と、第2樹脂を構成するとともに前記第1樹脂の呈する色とは異なる色で予め着色されたプリフォームとを成形型のキャビティの中に配置し、
前記キャビティに向けて電磁波で照射することで前記第1樹脂と前記プリフォームとを溶融し、
前記キャビティを減圧することで、溶融した前記第1樹脂と溶融した前記プリフォームとに対して前記キャビティの形状が反転した形状を与え
前記第1樹脂でウィンドシールドの中央の透明部分を形成し、前記第2樹脂で前記ウィンドシールドの縁を形成し、第3樹脂で前記ウィンドシールドのトップシェードを形成するように、前記キャビティの中にこれらの樹脂を配置し、
前記第3樹脂は、前記第1樹脂の呈する前記色とも異なり、さらに前記第2樹脂の呈する色とも異なる色で予め着色されているとともに、前記第2樹脂よりも可視光の透過率が高く、
前記第1樹脂及び前記第2樹脂とともに、前記電磁波により前記第3樹脂を溶融し、
前記キャビティの減圧により、前記キャビティの形状が反転した形状を前記第3樹脂に与える、
樹脂成形方法。
【請求項2】
前記キャビティの中で前記第1樹脂と前記プリフォームとを隣り合わせに配置し、
前記キャビティを減圧することで、前記第1樹脂と前記プリフォームとをそれらの界面にて接合する、
請求項1に記載の樹脂成形方法。
【請求項3】
前記第1樹脂の呈する前記色とは異なる色で着色された樹脂を積層造形することで前記プリフォームを作製する、
請求項1又は2に記載の樹脂成形方法。
【請求項4】
さらに前記第1樹脂のプリフォームを積層造形で作製し、
各プリフォームの粗い表面と前記キャビティの滑らかな表面との間にできる隙間を通じて前記キャビティの中の気体を吸い出すことで前記キャビティを減圧するところ、
各プリフォームの積層造形の積層ピッチは0.2mm以上であり、
前記キャビティの表面に対向する各プリフォームの表面の算術平均粗さRaは、前記キャビティの表面の算術平均粗さRaよりも大きい、
請求項3に記載の樹脂成形方法。
【請求項5】
ペレットの集合からなる前記第1樹脂と前記プリフォームからなる前記第2樹脂とを前記キャビティの中に配置し、
前記プリフォームの粗い表面と前記キャビティの滑らかな表面との間にできる隙間を通じて前記キャビティの中の気体を吸い出すことで前記キャビティを減圧するところ、
前記プリフォームの積層造形の積層ピッチは0.2mm以上であり、
前記キャビティの表面に対向する前記プリフォームの表面の算術平均粗さRaは、前記キャビティの表面の算術平均粗さRaよりも大きい、
請求項3に記載の樹脂成形方法。
【請求項6】
前記プリフォームの前記表面の前記算術平均粗さRaは6μm以上である、
請求項4に記載の樹脂成形方法。
【請求項7】
前記プリフォームの表面を塗装することで前記プリフォームを着色し、
前記プリフォームの塗装された表面を前記キャビティの前記表面に向けた状態で前記キャビティの中に前記プリフォームを配置する、
請求項1又は2に記載の樹脂成形方法。
【請求項8】
さらに他の樹脂を前記キャビティの中に配置する、
請求項1~のいずれかに記載の樹脂成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は樹脂の成形方法を開示している。ゴム型のキャビティの一部に、その形状に沿った形状の固形状態の第1樹脂を配置する。キャビティの残部に粒子状態の第2樹脂を配置する。ゴム型を介してキャビティ内における第1樹脂及び第2樹脂に電磁波を照射することでこれらを加熱する。キャビティ内でこれらの樹脂が溶融する。これらの溶融した樹脂を冷却することで第1樹脂と第2樹脂とが一体化した成形品を得る。
【0003】
特許文献2及び特許文献3は樹脂成形方法を開示している。当該方法では積層造形により複数のプリフォーム(予備成形体)を作製する。成形型内にこれらのプリフォームを配置する。成形型を透過する電磁波又は交番電界によってプリフォームを加熱する。プリフォームが溶融してなる樹脂を成形型内に充填する。溶融した樹脂を冷却することで固化する。成形型内では、プリフォーム内の積層造形の界面が無くなっている。
【0004】
さらに成形後の工程で成形品を塗装することで成形品の表面に色分けを施すこともできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-140218号公報
【文献】特開2020-183109号公報
【文献】特開2020-183110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
樹脂からなるプリフォームと他の樹脂とを成形型の中で電磁波によって加熱することでこれらを一体に成形する方法において、プリフォームからなる部分と他の樹脂からなる部分とを色分けする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<1> 樹脂からなるプリフォームと他の樹脂とを成形型の中で加熱することでこれらを一体に成形する樹脂成形方法であって、
第1樹脂と、第2樹脂を構成するとともに前記第1樹脂の呈する色とは異なる色で予め着色されたプリフォームとを成形型のキャビティの中に配置し、
前記キャビティに向けて電磁波で照射することで前記第1樹脂と前記プリフォームとを溶融し、
前記キャビティを減圧することで、溶融した前記第1樹脂と溶融した前記プリフォームとに対して前記キャビティの形状が反転した形状を与える、
樹脂成形方法。
【0008】
<2> 前記キャビティの中で前記第1樹脂と前記プリフォームとを隣り合わせに配置し、
前記キャビティを減圧することで、前記第1樹脂と前記プリフォームとをそれらの界面にて接合する、
<1>に記載の樹脂成形方法。
【0009】
<3> 前記第1樹脂の呈する前記色とは異なる色で着色された樹脂を積層造形することで前記プリフォームを作製する、
<1>又は<2>に記載の樹脂成形方法。
【0010】
<4> さらに前記第1樹脂のプリフォームを積層造形で作製し、
各プリフォームのより粗い表面と前記キャビティのより滑らかな表面との間にできる隙間を通じて前記キャビティの中の気体を吸い出すことで前記キャビティを減圧するところ、
各プリフォームの積層造形の積層ピッチは0.2mm以上であり、
前記キャビティの表面に対向する各プリフォームの表面の算術平均粗さRaは、前記キャビティの表面の算術平均粗さRaよりも大きい、
<3>に記載の樹脂成形方法。
【0011】
<5> ペレットの集合からなる前記第1樹脂と前記プリフォームからなる前記第2樹脂とを前記キャビティの中に配置し、
前記プリフォームのより粗い表面と前記キャビティのより滑らかな表面との間にできる隙間を通じて前記キャビティの中の気体を吸い出すことで前記キャビティを減圧するところ、
前記プリフォームの積層造形の積層ピッチは0.2mm以上であり、
前記キャビティの表面に対向する前記プリフォームの表面の算術平均粗さRaは、前記キャビティの表面の算術平均粗さRaよりも大きい、
<3>に記載の樹脂成形方法。
【0012】
<6> 前記プリフォームの前記表面の前記算術平均粗さRaは6μm以上である、
<4>に記載の樹脂成形方法。
【0013】
<7> 前記プリフォームの表面を塗装することで前記プリフォームを着色し、
前記プリフォームの塗装された表面を前記キャビティの前記表面に向けた状態で前記キャビティの中に前記プリフォームを配置する、
<1>又は<2>に記載の樹脂成形方法。
【0014】
<8> ウィンドシールドを作製するために行う前記樹脂成形方法であって、
前記第1樹脂でウィンドシールドの中央の透明部分を形成し、前記第2樹脂で前記ウィンドシールドの縁を形成し、第3樹脂で前記ウィンドシールドのトップシェードを形成するように、前記キャビティの中にこれらの樹脂を配置し、
前記第3樹脂は、前記第1樹脂の呈する前記色とも異なり、さらに前記第2樹脂の呈する色とも異なる色で予め着色されているとともに、前記第2樹脂よりも可視光の透過率が高く、
前記第1樹脂及び前記第2樹脂とともに、前記電磁波により前記第3樹脂を溶融し、
前記キャビティの減圧により、前記キャビティの形状が反転した形状を前記第3樹脂に与える、
<1>~<7>のいずれかに記載の樹脂成形方法。
【0015】
<9> さらに他の樹脂を前記キャビティの中に配置する、
<1>~<8>のいずれかに記載の樹脂成形方法。
【発明の効果】
【0016】
樹脂からなるプリフォームと他の樹脂とを成形型の中で電磁波によって加熱することでこれらを一体に成形する方法において、プリフォームからなる部分と他の樹脂からなる部分との間で色分けを行う。また従来は成形後の塗装により行っていた色分けを、成形時に行う。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】プリフォーム及び成形型の断面図。
図2】プリフォーム及び成形型の断面図。
図3】成形品の写真。
図4】プリフォーム及び成形型の断面図。
図5】並べられたプリフォーム及びペレットの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<成形の要領>
【0019】
図1は第1樹脂からなるプリフォーム11及び第2樹脂からなるプリフォーム12との断面を示す。図はさらに成形型Fmを構成する蓋Ld及び容器Ctとの断面を示す。容器CtはキャビティCvを有する。容器CtはさらにキャビティCvと真空ポンプVcを接続する孔を有する。第2樹脂からなるプリフォーム12と、他の樹脂、ここでは第1樹脂からなるプリフォーム11とを一体に成形する。具体的にはキャビティCvの中でこれらの樹脂を輻射加熱器Rdによって加熱することで成形を行う。これにより色分けされた成形品を得る。
【0020】
<プリフォーム>
【0021】
図1に示すように、プリフォーム11及びプリフォーム12は予め成形された樹脂であり、また成形型Fmにてさらに成形される樹脂である。これらのプリフォームはキャビティCvに嵌る形状を有する。キャビティCvはこれらのプリフォームで満たされる。これらのプリフォームとプリフォームとの間には遊びがある。これらのプリフォームとキャビティCvとの間には遊びがある。さらに他のプリフォームをキャビティCvに配置した場合でも、その周りには同様の遊びがある。
【0022】
<プリフォームの代替>
【0023】
図1に示すように第2樹脂はプリフォーム12からなる。一方で第1樹脂は必ずしもプリフォームでなくともよい。図に示す態様と異なる態様において、プリフォーム11は、特定の形状を有さないペレットであって第1樹脂を構成するものに置き換えてもよい。
【0024】
特に断らない限り、本明細書において「ペレット」の用語はペレット粒子の集合を表す。ペレット粒子は必ずしも凝集したり、互いに結合したりしていない。ペレット粒子がその粒子形状を保ったまま凝集したり、互いに結合したりしたものはプリフォームと考えてもよく、ペレットと考えてもよい。
【0025】
<樹脂の用語>
【0026】
本明細書において用語「樹脂」は熱可塑性樹脂を主成分とする、熱可塑性の材料を表す。熱可塑性樹脂の例はポリカーボネート(PC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ABS(acrylonitrile-butadiene-styrene-copolymer)及びポリプロピレン(PP)である。熱可塑性樹脂の他の例はポリ乳酸(PLA)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリスチレン(PS)好ましくは耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PET/G)、ポリアミド(PA)、ポリビニルアルコール(PVA)である。熱可塑性樹脂の他の例は熱可塑性エラストマー(TPE)である。
【0027】
本明細書において「第1樹脂、第2樹脂、第3樹脂・・・」の用語は、例えば樹脂の主成分がこれらの間で共通か否かという観点で、これらの樹脂を区別するものではない。当該用語は、体積の違いという観点これらの樹脂を区別するものではない。当該用語は、これらの樹脂が成形型内で一体に成形された後において、これらの樹脂からなる各部分の間でその呈色に違いのあること又は違いのないことの区別に用いられる。一態様において、第1樹脂と第2樹脂とは同一の主成分からなる熱可塑性樹脂である。一方でこれらが一体に成形された後において、これらの樹脂からなる各部分の呈色に違いがある。
【0028】
本明細書において成形型内に配置された樹脂は、成形型内で所定の体積を占める。また成形型内に配置を完了した際に樹脂は固体である。また、後述するように樹脂に電磁波の照射を始める際に樹脂は固体である。樹脂がプリフォームの状態であれば、「樹脂」の用語はプリフォームそれ自体を表すことがある。樹脂がペレットの状態であれば、「樹脂」の用語は個々のペレット粒子が集合した状態を表すことがある。この場合、ペレット粒子は必ずしも凝集したり、互いに結合したりしていない。
【0029】
<樹脂の着色>
【0030】
図1に示す一態様において、第2樹脂を、第1樹脂の呈する色とは異なる色で予め着色する。色が異なることには、色味が同じであるがその濃さが異なることを含む。一方で第1樹脂は着色してもよく、着色しなくともよい。図に示す一態様において第1樹脂は透明である。一態様において樹脂の内部に呈色成分を混合することで樹脂の着色を行う。樹脂に対する着色は他の様々な方法で行ってもよい。
【0031】
図1に示すプリフォーム12を予め積層造形又はその他の手法で作製する。一態様において第1樹脂の呈する色とは異なる色で着色された樹脂を原料に用いて積層造形を行う。図に示す態様において第1樹脂は透明である。したがって、第2樹脂を着色すれば自ずと第2樹脂は第1樹脂の呈する色とは異なる色を呈する。プリフォーム11も透明の樹脂を原料に用いて積層造形で作製する。
【0032】
上記積層造形の手法の例は押出成形法、インクジェット法及び粉末焼結積層造形法(SLS, Selective Laser Sintering)である。押出成形法の例は材料押出堆積法又は熱溶解積層法とも呼ばれるFDM(Fused Deposition Modeling)である。インクジェット法の例はマテリアルジェッティング及びバインダージェッティングである。
【0033】
<他の樹脂の追加>
【0034】
図1に示すように第1樹脂と、第2樹脂とを成形型Fmのキャビティの中に配置する。図と異なる他の態様において、これらの樹脂以外の第3樹脂をキャビティCvの中に配置する。その一態様において第1樹脂と第2樹脂との間に、第3樹脂をさらに配置する。係る態様において第3樹脂は第1樹脂の呈する色とも異なり、さらに第2樹脂の呈する色とも異なる色で予め着色されている。またさらに他の樹脂をキャビティCvの中に配置してもよい。
【0035】
<減圧による成形>
【0036】
図1に示す一態様において、輻射加熱器Rdは予め定めた強度、時間スケジュール、照射範囲に従って電磁波をキャビティCvに向けて照射する。一態様において電磁波は、波長760nm-1x106nmの赤外線、好ましくは波長780nm-2x103nmの近赤外線である。一態様において輻射加熱器Rdはハロゲンランプである。樹脂に赤外線、好ましくは近赤外線を照射することで樹脂にこれを吸収させる。これにより樹脂を加熱する。一態様において成形型Fmを構成する蓋Ld及び容器Ctは、プリフォーム11やプリフォーム12よりも近赤外線を透過しやすいゴムからなる。このようなゴムの例は透明又は半透明のシリコーンである。
【0037】
図1に示す他の態様において、輻射加熱器Rdの照射する電磁波は、波長1x105nm-1x109nmの、好ましくは波長1x107nm-1x109nmのマイクロ波である。一態様において輻射加熱器Rdはマイクロ波発振器である。樹脂にマイクロ波を照射することで樹脂にて誘電体損失を起こす。これにより樹脂を加熱する。成形型Fmを構成する蓋Ld及び容器Ctは、プリフォーム11やプリフォーム12よりも誘電体損失が少ないゴムからなる。成形型Fmを構成する蓋Ld及び容器Ctの誘電力率(誘電正接,tanδ)を、プリフォーム11やプリフォーム12の誘電力率よりも小さくする。
【0038】
図1において、電磁波による加熱によってプリフォーム11と、プリフォーム12とが溶融する。すでにキャビティCv内の各部分をプリフォーム11と、プリフォーム12とで占有している。したがって溶融した樹脂がそれらの部分を大きく超えて流れ出すことはない。
【0039】
<減圧による成形>
【0040】
図1においてキャビティCvを真空ポンプVcで減圧する。溶融した樹脂が、樹脂と樹脂の隙間や樹脂とキャビティCvとの隙間に流れ込む。また蓋LdがキャビティCvに押し込まれる。これによりキャビティCvの中には隙間が無くなる。また好ましい態様においてプリフォーム11とプリフォーム12の内部からも隙間が無くなる。
【0041】
図1において、蓋Ld及び容器Ctからなる成形型Fmは、溶融したプリフォーム11とプリフォーム12とに対して、キャビティCvの形状が反転した形状を与える。キャビティCv内の樹脂を冷却することで形状を固定する。蓋Ldを容器Ctから取り外すとともに容器Ctから成形品を取り出す。
【0042】
<減圧による界面の形成>
【0043】
図1に示すようにキャビティCvの中でプリフォーム11とプリフォーム12とを隣り合わせに配置する。これらのプリフォームの溶融後にキャビティCvを減圧することで、プリフォーム11とプリフォーム12との間の隙間に溶融した樹脂が流れ込む。これらのプリフォーム間の界面、図1においてキャビティCvの中心、にてこれらのプリフォームが接合する。係る界面は第1樹脂の色と第2樹脂の色との境界を成す。
【0044】
図1に示す態様と異なる態様において、第1樹脂をプリフォーム11に代えてペレットとすることができる。もしも成形後において第1樹脂の色と第2樹脂の色とが混ざり合うことでその境界が崩れる場合は、これをさらに改善することができる。例えば第1樹脂をプリフォーム11に代えることで色の混ざり合いを減らすとともに明瞭な境界を得てもよい。もしも第1樹脂にペレットを用いても、成形後の境界で色が混ざり合わない場合は、第1樹脂をペレットのままとする。これによりプリフォーム11を予め作製する工程を省くことができる。
【0045】
<減圧におけるプリフォーム表面の影響>
【0046】
図1に示すように、キャビティCvの表面に対向するプリフォーム11及びプリフォーム12の表面は、キャビティCvの表面よりも粗い。一態様においてプリフォームの表面の算術平均粗さRaは、キャビティCvの表面の算術平均粗さRaよりも大きい。このような粗い表面は上述の積層造形において形成される。
【0047】
図1に示すように、プリフォーム11及びプリフォーム12の粗い表面とキャビティCvの滑らかな表面との間にできる隙間を通じて、真空ポンプVcがキャビティCvの中の気体を吸い出す。これにより効率的に減圧する。第1樹脂をプリフォーム11に代えてペレットとした場合は、ペレットの間の隙間が気体を吸い出すための通路となる。
【0048】
一例においてABSを積層造形することでプリフォームを作製できる。その積層ピッチを0.1mmとした場合、プリフォームの表面の算術平均粗さRaは4μmであった。積層ピッチを0.2mmとした場合、プリフォームの表面の算術平均粗さRaは6μmであった。
【0049】
図1においてキャビティCvの減圧がうまくいかない場合、キャビティCvの形状が反転した形状を成形体に与えられないことがある。またキャビティCvの減圧がうまくいかない場合、第1樹脂と第2樹脂との間の密着が得られないことがある。プリフォームの表面の算術平均粗さRaは6μm以上とすることで、これらを改善できる場合がある。
【0050】
<呈色の境界周辺のペレットへの置き換え>
【0051】
図2はプリフォーム11、プリフォーム12及び成形型Fmの断面を示す。先に述べた通りキャビティCvに配置される樹脂としてペレットを用いてもよい。本態様では第1樹脂及び第2樹脂のそれぞれの一部をプリフォームからペレットに置き換える。キャビティCvへの電磁波の照射、キャビティCvの減圧、キャビティCv内の樹脂の冷却は上述の通り行う。
【0052】
図2に示すようにプリフォーム11及びプリフォーム12に加えて、ペレット14及びペレット15を、キャビティCvの中央に配置する。ペレット14及びペレット15はそれぞれペレット粒子の集合である。ペレット14はプリフォーム11及びペレット15の間に配置される。ペレット15はペレット14及びプリフォーム12の間に配置される。ペレット14はプリフォーム11と同色である。図に示す態様においてペレット14は透明である。ペレット15はプリフォーム12と同色である。
【0053】
図2に示す態様において、その成形の条件によってはペレット14及びペレット15が互いに溶けて混ざり合うことがある。したがって成形品の色分けの境界が不明瞭になることがある。図2に示す態様と異なる態様においてペレット14は用いなくてもよい。ペレット14が配置されていた空間をプリフォーム11で埋めてもよい。またペレット15は用いなくてもよい。ペレット15が配置されていた空間をプリフォーム12で埋めてもよい。このようにプリフォームとペレットとの境界を成形品における色分けの境界とすることは成形品の色分けの境界を明瞭にする上で役立つことがある。
【0054】
図1において、もしも成形後において第1樹脂と第2樹脂との間の接合がその境界で壊れやすい場合は、これをさらに改善することができる。例えば図2に示すように第1樹脂のプリフォーム12に近い側をペレット14に代える。またプリフォーム11に近い側をペレット15に代える。これにより第1樹脂と第2樹脂との間の接合の強度を高める。ペレットを利用しても第1樹脂と第2樹脂との間の接合の強度が高まらない場合は、第1樹脂又は第2樹脂にペレットを用いなくてもよい。又は図1に示すようにその両方でペレットを用いなくともよい。これによりキャビティCvの中で第1樹脂及び第2樹脂を正確な位置に配置することが容易になる。
【0055】
<作製例>
【0056】
図3図1に示す方法によって作製した成形品M01と、図2に示す方法によって作製した成形品M02の写真を示す。いずれの成形品においても透明な第1樹脂と着色された第2樹脂との色分けの境界は明瞭であった。またいずれの成形品においても色分けの境界付近の機械強度は同等であった。
【0057】
<プリフォームの塗装>
【0058】
図4はプリフォーム11及び成形型Fmの断面を示す。本態様では、樹脂の内部に呈色成分を混合しなくても成形品を色分けできることを示す。第1樹脂として透明のペレット14を用いる。第2樹脂として透明のプリフォーム11を用いる。予めプリフォーム11の表面に塗装17を付与することでプリフォーム11を着色する。一態様において塗装17は顔料からなる。一態様において顔料はセラミックス粉末である。一態様においてセラミックス粉末は黒色である。
【0059】
図4に示すようにプリフォーム11の塗装された表面、すなわち塗装17をキャビティCvの表面に向けた状態でキャビティCvの中にプリフォーム11を配置する。キャビティCvへの電磁波の照射、キャビティCvの減圧、キャビティCv内の樹脂の冷却は上述の通り行う。
【0060】
図4に示す態様と異なる態様においてプリフォーム11及びペレット14の少なくともいずれかの樹脂の内部に予め呈色成分を混合されていてもよい。呈色成分は塗装17と同じ色でもよく、異なる色でもよい。プリフォーム11に混合された呈色成分は、ペレット14に混合された呈色成分と同じ色でもよく、異なる色でもよい。
【0061】
図1及び図2に示す一態様において、プリフォームの表面には予め塗装をしない。この場合塗装がキャビティに付着することはない。
【0062】
<ウィンドシールド>
【0063】
図5は、並べられたプリフォーム12、プリフォーム13及びペレット14を平面視したものである。本態様ではこれら3種の樹脂を用いて自動車のウィンドシールドを作製する。
【0064】
図5に示すように第1樹脂は敷き詰められたペレット14である。第1樹脂でウィンドシールドの中央の透明部分を形成する。第2樹脂はプリフォーム13とペレット14を取り囲むプリフォーム12である。第2樹脂でウィンドシールドの縁にある、ウィンドシールドの枠との接合部分を形成する。係る接合部分はコーキングを紫外線から遮蔽する。第3樹脂はプリフォーム13である。第3樹脂の可視光の透過率は、第2樹脂のそれよりも高い。第1樹脂は透明である。第3樹脂でウィンドシールドのトップシェードを形成する。
【0065】
図5において、プリフォーム12とペレット14とともにプリフォーム13を不図示の成形型の不図示のキャビティに配置する。キャビティへの電磁波の照射、キャビティの減圧、キャビティ内の樹脂の冷却は上述の通り行う。プリフォーム12とプリフォーム13とをそれらの界面にて接合する。プリフォーム13とペレット14とをそれらの界面にて接合する。
【0066】
図5に示すウィンドシールド以外にも、上記樹脂成形方法によって車両の外装部品例えばバンパーや、内装部品例えばインスツルメントパネル及びドアトリムを作製できる。またこれらの部品に対して樹脂の色分けを適用できる。
【符号の説明】
【0067】
11-13 プリフォーム, 14-15 ペレット, 17 塗装, Ct 容器, Cv キャビティ, Fm 成形型, Ld 蓋, M01-M02 成形品, Rd 輻射加熱器, Vc 真空ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5