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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】固定装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 3/08 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
A61G3/08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021146473
(22)【出願日】2021-09-08
(65)【公開番号】P2023039345
(43)【公開日】2023-03-20
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100149009
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 稔久
(72)【発明者】
【氏名】瀬崎 陽子
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】西独国実用新案公開第29709994(DE,U)
【文献】特開2019-025034(JP,A)
【文献】特開平11-076309(JP,A)
【文献】特開平05-258193(JP,A)
【文献】特開2004-048177(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0356090(US,A1)
【文献】韓国公開実用新案第20-2017-0003312(KR,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される固定対象を固定する固定装置であって、
前記固定対象を固定する固定機構と、
前記固定機構に所定動作をさせるために操作されるスイッチと、
前記車両が所定条件を満たす場合、前記スイッチの操作を、前記スイッチの操作に伴って出力される信号が切り替わる際のエッジで検出する制御部と、を備え
前記制御部は、前記車両が所定条件を満たした後の初めの一回は前記信号のエッジを判定することによって前記スイッチの操作を検出し、二回目以降は、前記信号のオフ状態とオン状態のレベルの違いによって前記スイッチの操作を検出する、
固定装置。
【請求項2】
前記固定機構は、
前記固定対象を固定する長尺部材と、
前記長尺部材の巻取りまたは前記長尺部材の引き出しが可能な巻取り装置と、を有し、
前記所定動作は、前記固定対象に接続された前記長尺部材を張ることによって固縛された前記固定対象の固縛を解除する固縛解除動作を含む、
請求項1に記載の固定装置。
【請求項3】
前記固定機構は、
前記固定対象を固定する長尺部材と、
前記長尺部材の巻取りまたは前記長尺部材の引き出しが可能な巻取り装置と、を有し、
前記所定動作は、前記固定対象に接続された前記長尺部材を張ることによって前記固定対象を固縛する固縛動作を含む、
請求項1に記載の固定装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記車両の状態を検出する検出部から受信した検出情報に基づいて、前記車両が前記所定条件を満たしているか否かを判定する、
請求項1~のいずれか1項に記載の固定装置。
【請求項5】
前記検出情報は、前記車両が駐車状態か否かの情報、またはバックドアの開閉状態の情報を含み、
前記制御部は、前記車両が駐車状態であるか、または、前記バックドアが開いている状態の場合に、前記車両が所定条件を満たしていると判定する、
請求項に記載の固定装置。
【請求項6】
前記固定対象は、車椅子である、
請求項1~のいずれか1項に記載の固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車椅子を乗り入れ可能な福祉車両には、車椅子を固定する車椅子固定装置が設けられている。車椅子固定装置は、例えば、車椅子に係合可能な係合部が設けられたベルト等の牽引部材をウインチ装置によって巻き取ることで、車椅子を車両に引っ張り上げて固定する(例えば、特許文献1参照。)
特許文献1に示すような車椅子固定装置では、ウインチ装置を操作するための複数のスイッチが車両内に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021―24695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウインチ装置は、例えば車両が停止している等の所定条件を満たしたときに動作可能に設定されている。
【0005】
しかしながら、車両内にスイッチが配置されているため、例えば、カバン等の荷物をスイッチの上に置くなどしてスイッチが押下されている状態で、車両が所定の条件を満たすと、ユーザが意図しないタイミングで車椅子固定装置が動作することがあった。
【0006】
本開示は、意図しないタイミングでの動作を抑制可能な固定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合わせることができる。
【0008】
第1の態様にかかる固定装置は、車両に搭載される固定対象を固定する固定装置であって、固定機構と、スイッチと、制御部と、を備える。固定機構は、固定対象を固定する。スイッチは、固定機構に所定動作をさせるために操作される。制御部は、車両が所定条件を満たす場合、スイッチの操作を、スイッチの操作に伴って出力される信号が切り替わる際のエッジで検出する。
【0009】
これにより、スイッチがオフ状態からオン状態に切り替わる信号のエッジを用いてスイッチの操作を検出するため、鞄等の荷物がスイッチに置かれてスイッチがオンされている状態において、固定機構が所定動作を行うことが可能な車両状態になったとしても、既にオン状態となっているためスイッチからの信号のエッジは検出されない。そのため、スイッチの操作が検出されず、固定機構による所定動作が行わないので、意図しないタイミングにおける動作を抑制することができる。
【0010】
第2の態様にかかる固定装置は、第1の態様にかかる固定装置であって、制御部は、車両が所定条件を満たした後の初めの一回目は信号のエッジを判定することによってスイッチの操作を検出し、二回目以降は、信号のオフ状態とオン状態のレベルの違いによってスイッチの操作を検出する。
【0011】
エッジを用いたスイッチ操作の検出では、スイッチ信号監視周期のタイミングと操作のタイミングが合わない場合に検出を取り逃がすことがあるが、二回目以降を信号のレベルを用いて検出することによって、確実に検出を行うことが出来る。
【0012】
第3の態様にかかる固定装置は、第1または第2の態様にかかる固定装置であって、固定機構は、長尺部材と、巻取り装置と、を有する。長尺部材は、固定対象を固定する。巻取り装置は、長尺部材の巻取りまたは長尺部材の引き出しが可能である。所定動作は、車椅子に接続された長尺部材を張ることによって固縛された固定対象の固縛を解除する固縛解除動作を含む。
【0013】
これにより、意図しないタイミングにおける固縛解除を抑制することができる。
【0014】
第4の態様にかかる固定装置は、第1または第2の態様にかかる固定装置であって、固定機構は、長尺部材と、巻取り装置と、を有する。長尺部材は、固定対象を固定する。巻取り装置は、長尺部材の巻取りまたは長尺部材の引き出しが可能である。所定動作は、車椅子に接続された長尺部材を張ることによって固定対象を固縛する固縛動作を含む。
【0015】
これにより、意図しないタイミングにおける固縛動作を抑制することができる。
【0016】
第5の態様にかかる固定装置は、第1~4のいずれかの態様にかかる固定装置であって、制御部は、車両の状態を検出する検出部から受信した検出情報に基づいて、車両が所定条件を満たしているか否かを判定する。
【0017】
これにより、車両が所定条件を満たすか判定したうえで、スイッチ操作に伴って固定機構による所定動作を実行することができる。
【0018】
第6の態様にかかる固定装置は、第5の態様にかかる固定装置であって、検出情報は、車両が駐車状態か否かの情報、またはバックドアの開閉状態の情報を含む。制御部は、車両が駐車状態であり、または、バックドアが開いている状態の場合に、車両が所定条件を満たしていると判定する。
【0019】
これにより、車両が駐車状態であり、安全に固定機構を操作可能な状態の場合に、固定機構を動作可能な状態とし、スイッチ操作に伴って固定機構による所定動作を実行することができる。
【0020】
第7の態様にかかる固定装置は、第1~6のいずれかの態様にかかる固定装置であって、固定対象は、車椅子である。
【0021】
これにより、車椅子を固定する固定機構の意図しないタイミングでの動作を抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、意図しないタイミングでの動作を抑制可能な固定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本開示にかかる実施の形態の固定装置が車両に配置された状態を模式的に示す斜視図。
図2】本開示にかかる実施の形態の固定装置が車両に配置された状態を示す平面模式図。
図3】本開示にかかる実施の形態の固定装置によって車椅子が固定されている状態を示す図。
図4】本開示にかかる実施の形態の固定装置の制御構成を示すブロック図。
図5】本開示にかかる実施の形態の固定装置のスイッチ操作による信号の一例を示す図。
図6】本開示にかかる実施の形態の固定装置のスイッチ操作による信号の一例を示す図。
図7】本開示にかかる実施の形態の固定装置のスイッチ操作による信号の一例を示す図。
図8】本開示にかかる実施の形態の固定装置のスイッチ操作による信号の一例を示す図。
図9】本開示にかかる実施の形態の固定装置の動作を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本開示にかかる実施の形態の固定装置について図面を参照しながら説明する。
(固定装置1の概要)
図1は、本実施の形態の固定装置1が車両200に配置された状態を模式的に示す斜視図である。図2は、固定装置1が車両200に配置された状態を示す平面模式図である。
【0025】
固定装置1は、車両200に搭載される固定対象を固定する。本実施の形態では、固定対象の一例として車椅子を例に挙げて説明する。
【0026】
車両200は、図1に示すように、バックドア201と、バックドア201によって開閉される後部202と、を有している。図1では、バックドア201が開かれて後部202が車両200の外側に開放されている。
【0027】
本実施の形態の固定装置1は、後部202の床面に配置されている。固定装置1は、車椅子300を車両200に固定する。固定装置1は、固定機構10を有している。固定機構10は、一対の固定用のベルト部材31を有しており、ベルト部材31の先端に設けられたフック32が車椅子300の前側の左右のフレーム301に係止される。
【0028】
スロープ203は、車椅子300を車両200に昇降させるためのものである。スロープ203は車両200の後部に繋がるように配置される。スロープ203は、車両200の外側の地面に向かって下方に傾斜するように設けられている。図1では、車椅子300は、車両200に対してスロープ203を挟んで地面に載置されている。スロープ203は、車椅子300が通過可能に構成され、車椅子の種類に応じて材質、幅および長さが適宜設定される。
【0029】
図1に示す状態からベルト部材31が巻き取られることで車椅子300はスロープ203上を上昇して車両200内の後部202に引き上げられる。
【0030】
(固定装置1)
本実施の形態の固定装置1は、後部202の床面に配置されている。固定装置1は、車椅子300を車両200の床面に固定することができる。
【0031】
固定装置1は、固定機構10(図1参照)と、操作部11(図1参照)と、制御部12(図4参照)と、を備える。固定機構10が、車椅子300を固定する。図3は、固定機構10によって車椅子が固定されている状態を示す図である。
【0032】
操作部11は、作業者によって操作される複数のスイッチを有する。作業者による操作部11の操作によって固定機構10を動作できる。制御部12は、操作部11の操作に基づいて、固定機構10を制御する。制御部12は、車両200が動作可能前提条件を満たす場合に、固定機構10を動作させる。
【0033】
(固定機構10)
固定機構10は、図2では、点線で囲まれて示されており、図2に示すように、後部202の出口近傍に配置されている。
【0034】
固定機構10は、図1に示すように、2つのウインチ部21と、固定部22と、を有する。図3に示すように、2つのウインチ部21と固定部22によって一台の車椅子300が車両200に固定される。なお、本実施の形態では、車椅子300を車両200へ乗降させる際に左右の安定性を向上するためにウインチ部21が2個設けられているが、ウインチ部21の数は1個であってもよい。
【0035】
(ウインチ部21)
2つのウインチ部21は、車椅子300の幅方向に互いに間隔を空けて後部202に設けられている。ウインチ部21は、後部202のフロア上に配置されている。
【0036】
ウインチ部21は、図1に示すように、ベルト部材31と、フック32と、巻取り装置30と、有する。ベルト部材31は巻取り装置30から繰り出される。巻取り装置30は、ベルト部材31の巻き取りまたは送り出し(引き出しともいう)を行う。
【0037】
フック32は、ベルト部材31の先端に配置されている。フック32は、図1および図3に示すように、車椅子300の前側の左または右のフレーム301に係止可能である。
【0038】
図4は、本実施の形態の固定装置1の制御構成を示すブロック図である。巻取り装置30は、フック32(図1参照)と、ドラム33と、モータ34と、クラッチ35と、回転センサ36と、ロック部37と、を有する。
【0039】
ドラム33は、車両200の床面に固定されたフレームに回転可能に支持されている。ドラム33には、ベルト部材31が巻き回されている。ドラム33を第1方向に回転することによって、ベルト部材31がドラム33に巻き取られ、第1方向と反対の第2方向に回転することによってベルト部材31がドラム33から送り出される。
【0040】
モータ34は、ドラム33を回転駆動する。モータ34の回転駆動によって、ベルト部材31の巻き取り、または送り出しを行われる。
【0041】
クラッチ35は、モータ34の回転駆動をドラム33に伝達、またはモータ34からドラム33への回転駆動の伝達を遮断する。
【0042】
回転センサ36は、ドラム33の回転方向と回転速度を検出する。回転センサ36は、例えばホール素子を用いることができる。回転センサ36は、ドラム33の側面に対向して配置されている。ドラム33の側面には、回転軸を中心とした周方向に沿って回転センサ36側にN極およびS極が交互に向くように磁石が配置されている。ドラム33の回転に伴って径方向と周方向の磁場成分が交互に発生する。回転センサ36は、2方向の磁場成分の変化に応じて90度位相差の2つのパルス信号を生成し、制御部12に出力する。制御部12は、2つのパルス信号に基づいて、ドラム33の回転方向と回転速度を検出する。
【0043】
ロック部37は、ドラム33の第1方向(ベルト部材31を巻き取る方向)への回転は可能にし、ドラム33の第2方向(ベルト部材31を送り出す(引き出す)方向)への回転をロックする。ロック部37としては、例えば、ドラム33の回転軸に固定され、ドラム33とともに回転するギヤと、ギヤの歯の間に嵌合可能な嵌合部材と、嵌合部材をギヤの歯の間から出し入れするソレノイドと、を備えた構成が挙げられる。ギヤと嵌合部材はラチェット機構を構成しており、嵌合部材がギヤの歯の間に配置された状態では、ドラム33の第1方向にギヤは回転できるが、ドラム33の第2方向には嵌合部材の干渉によってギヤは回転できない。また、ソレノイドに通電されていない状態では、嵌合部材がギヤの歯の間に嵌り込んでおり、ドラム33の第2方向への回転がロックされる。ソレノイドに通電することによって、嵌合部材がドラム33とともに回転するギヤの歯の間から離間し、ドラム33の第2方向への回転のロックを解除することができる。
【0044】
(固定部22)
固定部22は、図1および図3に示すように、一対のベルト部材41と、一対のフック42と、を有する。ベルト部材41は、所定の長さを有している。フック42は、ベルト部材41の先端に配置されている。フック42は、図3に示すように、車椅子300の車輪302に係止しても良いし、車椅子300の後部又は車輪302に設けられた図示しないフレームに係止しても良い。
【0045】
(操作部11)
操作部11は、作業者によって操作される複数のスイッチを有する。操作部11は、図1に示すように、車両200の後部202に配置されている。操作部11は、第1操作部分11aと、第2操作部分11bと、を有する。第1操作部分11aは、図1に示すように、車両200の後部202の側面等に固定されている。第2操作部分11bは、コードが接続されており、作業者が手に把持して移動可能に構成されている。これにより、車椅子300を車両200に乗せる際に、作業者が車椅子300を押しながら、把持した操作部11を操作して固定機構10を作動できる。また、操作部11は、制御部12と有線で接続してもよいが、無線で接続してもよい。
【0046】
操作部11は、図4に示すように、切り替えスイッチ51(設定部の一例)と、入スイッチ52と、出スイッチ53と、固縛スイッチ54と、固縛解除スイッチ55と、を有する。作業者が、操作部11の各々のスイッチを操作すると、操作したスイッチから信号が制御部12に送信され、制御部12は、スイッチに応じて固定機構10aまたは固定機構10bに動作指示を行う。なお、切り替えスイッチ51と、入スイッチ52と、出スイッチ53と、固縛スイッチ54と、固縛解除スイッチ55は、第1操作部分11aと第2操作部分11bに適宜分けて配置されている。例えば、車椅子300を動かしながら操作できるように、入スイッチ52と出スイッチ53が、第1操作部分11aに配置されており、切り替えスイッチ51と、固縛スイッチ54と、固縛解除スイッチ55が、第2操作部分11bに配置されていてもよい。また、第1操作部分11aと第2操作部分11bのいずれか一方だけ設けられていてもよいし、更に、別にスイッチが配置された操作部が設けられていてもよい。
【0047】
(切り替えスイッチ51)
切り替えスイッチ51は、固定機構10を操作可能に設定する場合(第1位置)と、固定機構10を操作可能に設定しない場合(第2位置)と、を切り替える。
【0048】
操作可能とは、入スイッチ52、出スイッチ53、固縛スイッチ54、または固縛解除スイッチ55が操作された場合に、スイッチ操作に合わせて固定機構10が動作することである。
【0049】
なお、切り替えスイッチ51は、固定機構10を操作可能に設定する場合の位置と、固定機構10を操作可能に設定しない場合の位置の2つの位置をとるレバー状のスイッチであってもよいし、それぞれの場合に対応する釦状のスイッチが設けられていてもよい。また、2つの場合が、押下するたびに切り換えられる釦状のスイッチが設けられていてもよいし、2つの場合が、液晶ディスプレイに表示されており、それらを選択する表示が行われてもよい。また、固定機構10が操作可能に設定されているかを示すランプが設けられていてもよいし、液晶ディスプレイに表示されていてもよい。
【0050】
(入スイッチ52)
入スイッチ52は、固定機構10にベルト部材41を巻き取る巻取り動作を行わせるためのスイッチである。入スイッチ52が作業者によって操作されると、ロック部37によるドラム33のロックが解除され、クラッチ35が動作してモータ34の回転駆動がドラム33に伝達される状態となる。そして、モータ34が回転されることによってドラム33も回転し、ベルト部材31がドラム33に巻き取られる。入スイッチ52が操作されている間(例えば、押下されている間)、ドラム33が第1方向に回転してベルト部材31が巻き取られる。入スイッチ52の操作を停止すると、モータ34の回転が停止され、クラッチ35が動作してモータ34からドラム33への回転駆動の伝達が遮断された状態となる。これにより、ドラム33の回転が停止し、ベルト部材31の巻き取り動作も停止する。
【0051】
入スイッチ52は、例えばスロープ203を介して車椅子300を車両200の後部202に乗せる際に使用される。車椅子300を車両200に乗せる際には、固定機構10の2つのウインチ部21のドラム33から引き出されたベルト部材31の先端のフック32が、車椅子300の左右のフレーム301に係止される。次に、作業者が、車椅子300を押すとともに、入スイッチ52を操作することによって、ベルト部材31がドラム33に巻き取られ、スロープ203を介して車椅子300を車両200の後部202に乗せることができる。
【0052】
(出スイッチ53)
出スイッチ53は、固定機構10にベルト部材41を送り出す送り出し(引き出し)動作を行わせるためのスイッチである。出スイッチ53が作業者によって操作されると、ロック部37によるドラム33のロックが解除され、クラッチ35が動作してモータ34の回転駆動がドラム33に伝達される状態となる。そして、モータ34の回転によってドラム33が第1方向と反対の第2方向に回転し、ベルト部材31がドラム33から送り出される。出スイッチ53が操作されている間(例えば、押下されている間)、ドラム33が回転してベルト部材31が送り出される。出スイッチ53の操作を停止すると、モータ34の回転が停止され、クラッチ35が動作してモータ34からドラム33への回転駆動の伝達が遮断された状態となる。これにより、ドラム33の回転が停止し、ベルト部材31の送り出し動作も停止する。
【0053】
出スイッチ53は、例えばスロープ203を介して車椅子300を車両200の後部202から地面に降ろす際に使用される。車椅子300を車両200に降ろす際には、固定部22のフック42による車椅子300の係止(図3参照)を解除する。次に、作業者が、車椅子300を引き出すとともに、出スイッチ53を操作することによって、ベルト部材31がドラム33から送り出され、スロープ203を介して車椅子300を車両200の後部202から降ろすことができる。
【0054】
なお、出スイッチ53は、モータ34を回転させずにロック部37によるドラム33のロックのみを解除してベルト部材41を引き出し可能な状態にするだけでもよい。
【0055】
(固縛スイッチ54)
固縛スイッチ54は、固定機構10に固縛動作(所定動作の一例)を行わせるスイッチである。固縛動作は、車両200の後部202に引き上げた車椅子300が車両200の走行によって動かないように、ベルト部材31、41に張力をかけることによって車椅子300を固縛する動作である。
【0056】
具体的には、入スイッチ52の操作によって車両200の後部202上に車椅子300が引き上げられた後、固定部22の2つのフック42が車椅子300の左右の車輪302に係止される。その後、固縛スイッチ54を操作することによってクラッチ35が動作されてモータ34の回転駆動がドラム33に伝達される状態となる。そして、モータ34が回転されてドラム33が回転し、ベルト部材31がドラム33に巻き取られる。ベルト部材31、41に張力がかかることによってドラム33が回転できなくなると、モータ34の回転が停止され、クラッチ35が動作してモータ34からドラム33への回転駆動の伝達が遮断された状態となる。これにより、ドラム33の回転が停止し、固縛動作が完了する。なお、ロック部37によってドラム33の第2方向への回転がロックされているため、モータ34の回転を停止してもベルト部材31が緩まない。
【0057】
これによって車椅子300が車両200に固定され、車両200が走行した場合でも安定した状態を保つことができる。なお、回転センサ36によって所定時間の間、ドラム33が回転していないことが検出された場合に、制御部12はベルト部材31に固縛に必要なテンションがかかったと判定し、モータ34の停止と、クラッチ35による駆動伝達の遮断を行う。このように、制御部12がモータ34の停止まで行うため、入スイッチ52および出スイッチ53と異なり、固縛スイッチ54は操作し続ける必要はなく、1回操作するだけでよい。
【0058】
(固縛解除スイッチ55)
固縛解除スイッチ55は、固定機構10に固縛解除動作(所定動作の一例)を行わせるスイッチである。固縛解除動作は、固縛状態におけるベルト部材31、41への張力を緩めることによって、車椅子300の固縛を解除する動作である。
【0059】
具体的には、固縛解除スイッチ55が操作されると、制御部12がロック部37によるドラム33のロックを解除し、固定解除動作を終了する。これによって、作業者は、ベルト部材31を引き出すことができる。固縛解除スイッチ55も固縛スイッチ54と同様に、1回操作するだけで固縛解除動作が終了するまで行われる。
【0060】
なお、入スイッチ52、出スイッチ53、固縛スイッチ54、および固縛解除スイッチ55は、通常はオフ状態であり、指等で押下することによってオン状態となり、指を離すことによって付勢力によってオフ状態に戻るようなスイッチを用いることができるが、このような構成に限らなくてもよい。これらのスイッチの全部または一部は、これに限らず、オン・オフが可能なレバー状のスイッチであってもよいし、押下するたびに切り換えられる釦状のスイッチでもよいし、液晶ディスプレイに表示されていてもよい。
【0061】
(制御部12、記憶部13)
制御部12は、プロセッサを含む。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)である。或いは、プロセッサは、CPUと異なるプロセッサであってもよい。プロセッサは、操作部11の操作による入力を受けて、プログラムに従って固定機構10a、10bの制御のための処理を実行する。記憶部13は、例えば前記プロセッサに内蔵される内部レジスタである。或いは、RAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリおよび/またはROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリも含まれ、記憶部13は、ハードディスク、あるいはSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置を含んでいてもよい。記憶部13は、非一時的な(non-transitory)コンピュータで読み取り可能な記録媒体の一例である。記憶部13は、固定機構10を制御するプログラムおよびデータを記憶している。具体的には、記憶部13は、固定機構10に巻き取り動作、送り出し動作、固縛動作、および固縛解除動作を行わせるプログラムおよびデータを記憶している。
【0062】
制御部12は、固定機構10を動作させるための動作可能前提条件を車両200が満たした後に、操作部11の各スイッチの操作を検出すると、各スイッチに応じて固定機構10を操作可能に設定または動作する。
【0063】
(スイッチに応じた制御)
はじめにスイッチに応じた固定機構10の制御について説明し、操作信号の検出については後段にて説明する。
【0064】
制御部12は、入スイッチ52の操作信号を検出すると、ロック部37を動作させてドラム33のロックを解除し、クラッチ35を動作してモータ34の駆動をドラム33に伝達可能な状態とする。そして、制御部12は、操作信号を受信している間、モータ34を駆動することによってドラム33を回転させてベルト部材31を巻き取る。入スイッチ52の操作信号の受信が停止すると、制御部12は、クラッチ35を動作させてモータ34からドラム33への回転駆動の伝達が遮断された状態とする。そして、制御部12は、モータ34を停止させてドラム33の回転を停止して、ロック部37を動作させてドラム33のロックを行い、巻取り動作を終了する。
【0065】
制御部12は、出スイッチ53の操作信号を検出すると、ロック部37を動作させてドラム33のロックを解除し、クラッチ35を動作してモータ34の駆動をドラム33に伝達可能な状態とする。そして、制御部12は、操作信号を受信している間、モータ34を駆動することによってドラム33を回転させて、ベルト部材31をドラム33から送り出す。そして、出スイッチ53の操作信号の受信が停止すると、制御部12は、クラッチ35を動作させてモータ34からドラム33への回転駆動の伝達が遮断された状態とする。そして、制御部12は、モータ34を停止させてドラム33の回転を停止して、ロック部37を動作させてドラム33のロックを行い、送り出し動作を終了する。
【0066】
制御部12は、固縛スイッチ54の操作信号を検出すると、クラッチ35を動作してモータ34の駆動をドラム33に伝達可能な状態とし、モータ34を駆動することによってドラム33を回転させてベルト部材31を巻き取る。そして、所定時間、ドラム33の回転が回転センサ36によって検出されない場合、制御部12は、ベルト部材31に固縛に必要な張力がかかりドラム33の回転が停止したと判断し、クラッチ35を動作させてモータ34からドラム33への回転駆動の伝達が遮断された状態とする。そして、制御部12は、モータ34を停止して固縛動作を終了する。
【0067】
制御部12は、固縛解除スイッチ55の操作信号を検出すると、ロック部37を動作させてドラム33のロックを解除し、固縛解除動作を終了する。
【0068】
(動作可能前提条件)
動作可能前提条件は、例えば、車両200が駐車状態であり、かつバックドア201が開いている状態となっていることである。車両200が駐車状態であるか否かは、パーキングブレーキの制動状態とシフトレバーの位置から判定できる。
【0069】
制御部12は、たとえば図4に示すように、車両200のパーキングブレーキ210、シフトレバー211と、およびバックドア開閉検出部212の検出に基づいて、車両200が動作可能前提条件を満たしているか否かを判定する。制御部12は、パーキングブレーキ210が制動状態であり、シフトレバー211がPレンジに位置し、バックドア開閉検出部212によってバックドア201が開放状態である場合に、動作可能前提条件を満たしていると判定する。パーキングブレーキ210が制動状態であり、シフトレバー211がPレンジに位置している場合に、車両200が駐車状態であると判定できる。
【0070】
パーキングブレーキ210、シフトレバー211、またはバックドア開閉検出部212が、検出部の一例に対応する。また、パーキングブレーキ210の状態、シフトレバー211の位置、またはバックドア201の開閉状態が、検出情報の一例に対応する。このように、検出情報は、車両が駐車状態か否かの情報、またはバックドアの開閉状態の情報など安全に固定機構10を操作可能な状態であるか否かの判断に必要な所定の情報を含む。
【0071】
パーキングブレーキ210は、車両200を制動し、停車時や駐車時に停止状態を保持する。作業者によってパーキングブレーキ210が操作されると、作動信号が制御部12に送信される。
【0072】
シフトレバー211は、例えば、P(パーキング)、R(リバース)、N(ニュートラル)、D(ドライブ)、3、2、L等の位置に配置可能である。シフトレバー211には、ポジションセンサ211aが設けられている。ポジションセンサ211aは、シフトレバー211がP、R、N、D、3、2、およびLのいずれの位置に操作されたかを検出し、制御部12に送信する。
【0073】
バックドア開閉検出部212は、バックドア201が開放されたことを検出して、検出信号を制御部12に送信する。バックドア開閉検出部212は、例えば赤外線センサ等を用いることができる。
【0074】
(スイッチ操作の検出)
制御部12は、動作可能前提条件を満たしている場合、操作部11のスイッチ操作について以下のように検出を行う。
【0075】
図5は、操作部11の各スイッチが操作された場合に、制御部12に送信される信号の一例を示す図である。
【0076】
入スイッチ52、出スイッチ53、固縛スイッチ54、および固縛解除スイッチ55の各々のスイッチが操作されると、オフ状態からオン状態となり、スイッチの操作が解除されると付勢力によってオフ状態となる。このため、各々のスイッチから、電気的レベルが低い状態から電気的レベルが高い状態になり、再び、電気的レベルが低い状態になるような信号が制御部12に送信される。電気的レベルとしては、図5に示す電圧値を用いることができ、オフ状態では各スイッチから電圧値VLの信号が制御部12に送信され、オン状態では各スイッチから、電圧値VLよりも高い電圧値VHの信号が制御部12に送信される。また、各々のスイッチが押されている間は、電気的レベルが高いオン状態が維持されるため、図6に示すように、電圧値VLから電圧値VHに変化した状態が維持される。
【0077】
制御部12は、動作可能前提条件を車両200が満たした後、切り替えスイッチ51、入スイッチ52、出スイッチ53、固縛スイッチ54、および固縛解除スイッチ55のいずれかのスイッチからの信号については、はじめの一回目はエッジを用いてスイッチの操作を検出し、二回目以降は、信号のオフ状態とオン状態のレベルの違いを用いてスイッチの操作を検出する。
【0078】
(エッジによるスイッチ操作の検出)
エッジによってスイッチの操作を検出するとは、電気的レベルが低い状態から電気的レベルが高い状態に変化する際のエッジを検出した場合に、スイッチが操作されたと判定することである。具体的には、図6における電圧値VLから電圧値VHに変化するエッジEを検出した場合に、スイッチが操作されたと判定される。
【0079】
制御部12は、一定の周期でスイッチからの入力信号を監視している。監視のタイミングであるスイッチ信号監視周期Fが、一点鎖線で示されている。図6では、監視周期F(1)において電圧値がVLとなっており、監視周期F(2)において電圧値がVHとなっている。制御部12は、監視周期F(1)と監視周期F(2)において、電圧値がVLからVHに変化したこことを検出することによってエッジEを検出し、スイッチが操作されたと判定する。なお、特定のスイッチ信号監視周期Fを示して説明を行う場合に、Fの後の括弧内に符号を付している。
【0080】
なお、エッジEは、電圧値VLから電圧値VHへの変化のみではなく、電圧値VLから電圧値VHへの変化や電圧値VHから電圧値VLへの変化も含める電圧値の変化であっても良い。
【0081】
これによって、例えば、鞄等の荷物がスイッチの上に載せられ、スイッチがオン状態になっている場合に、車両200の動作可能前提条件が満足したとしても、固定機構10が動作することを防ぐことができる。
【0082】
具体的には、図3に示すような車椅子を固縛している状態において、荷物が固縛解除スイッチ55の上に落下して固縛解除スイッチ55がオン状態となっている場合に、図6に示す時刻T1において動作可能前提条件が満足したと仮定する。このようなときであっても、エッジEは検出されないため、制御部12は、固縛解除スイッチ55の操作信号を検出せず、固縛解除動作が行われない。そのため、意図しないタイミングで急に固縛解除が行われ車椅子300が不安定になることを防止することができる。
【0083】
また、ベルト部材31が巻取り装置30から引き出され、車椅子300に接続されていない状態において、荷物が固縛スイッチ54の上に落下して固縛スイッチ54がオン状態となっている場合に、図6に示す時刻T1において動作可能前提条件が満足したと仮定する。このようなときであっても、エッジEは検出されないため、制御部12は、固縛解除スイッチ55の操作信号を検出せず、固縛動作が行われない。そのため、意図しないタイミングで急に固縛動作が行われ、ベルト部材31が動くことを防止することができる。なお、複数のスイッチが同時に荷物等によって操作されてオン状態になっていた場合であっても、いずれの信号もエッジが検出されないため、固定機構10は動作しない。
【0084】
また、図7に示すように、荷物等によってスイッチがオン状態となっている場合に時刻T3で初めて動作可能前提条件が満足したと仮定すると、時刻T3より前の時刻T2におけるオンON状態(ON(0)参照)へのエッジE(0)は検出されない。作業者が、スイッチをオフにして時刻T4に再度スイッチをオン状態にした場合のオン状態(ON(1)参照)へのエッジE(1)が、監視周期F(3)と監視周期F(4)の間における電圧値のVLからVHへの変化に基づいて検出されると、制御部12は、1回目の検出としてカウントする。エッジによる信号の検出は、信号の監視周期のタイミング等によって取り逃がす場合もあるが、その場合には、作業者が再度スイッチを操作すると考えられる。時刻T4におけるエッジE(1)を取り逃し、後の時刻におけるオン状態へのエッジを検出した場合、制御部12は、そのエッジの検出を1回目の検出としてカウントする。
【0085】
(レベル判定によるスイッチ操作の検出)
信号のオフ状態とオン状態のレベルの違いによってスイッチの操作を検出するとは、所定の閾値を設けて、電気的レベルが閾値を超えたことを検出した場合に、スイッチが操作されたと判定することである。
【0086】
具体的には、図5および図6において閾値をVaとすると、電圧値がVaを超えたことを検出した場合に、スイッチが操作されたと判定される。
【0087】
動作可能前提条件が満たされた後に、切り替えスイッチ51、入スイッチ52、出スイッチ53、固縛スイッチ54、または固縛解除スイッチ55のいずれかのスイッチからの操作信号を検出した場合に、制御部12は、その検出を1回目とし、1回目と同じスイッチか否かにかかわらず、1回目以降の検出を2回目とし、レベル判定によるスイッチ操作の検出を行う。
【0088】
図8は、複数回の検出を行った場合の具体例を示す図である。図8に示す例は、動作可能設定条件が時刻T3で満たされており、時刻T3より前の時刻T2におけるオン状態(ON(0)参照)へのエッジE(0)は検出されない。作業者が、スイッチをオフにして時刻T4に再度スイッチをオン状態にした場合のオン状態(ON(1)参照)へのエッジE(1)が、監視周期F(3)と監視周期F(4)の間における電圧値のVLからVHへの変化に基づいて検出されると、制御部12は、1回目の検出としてカウントする。次のスイッチの検出は2回目であるため、時刻T6において、他のスイッチが操作されてオン状態(ON(2)参照)になり、閾値Vaを超えた場合に、スイッチ操作が検出される。例えば、ON(0)およびON(1)が、固縛解除スイッチ55のオン状態への操作とした場合、ON(2)は、出スイッチ53のオン状態への操作を例として挙げることができる。なお、時刻T6においてオン状態に操作したスイッチは、時刻T4においてオン状態に操作したスイッチと同じであってもよい。
【0089】
なお、制御部12は、動作可能前提条件が満たされなくなった場合、カウントをリセットし、動作可能前提条件が満たされた後に、エッジが検出されると1回目とカウントする。
【0090】
<動作>
次に、本実施の形態の固定装置1の制御動作について説明する。
【0091】
図9は、固定装置1の制御動作を説明するフロー図である。
【0092】
はじめに、ステップS10において、制御部12は、車両200が動作可能前提条件を満たすか否かを判定する。具体的には、制御部12は、パーキングブレーキ210が制動状態であり、シフトレバー211がPレンジに位置し、バックドア開閉検出部212によってバックドア201が開放状態である場合に、動作可能前提条件を満たしていると判定する。
【0093】
ステップS10において、制御部12が、車両200が動作可能前提条件を満たすと判定した場合、制御はステップS11に進む。
【0094】
ステップS11では、制御部12は、信号のエッジを用いてスイッチ操作の検出を行う。作業者によって切り替えスイッチ51、入スイッチ52、出スイッチ53、固縛スイッチ54、または固縛解除スイッチ55のいずれかのスイッチの操作が行われ、ステップS11において、制御部12が、いずれかのスイッチの操作をエッジ判定によって検出した場合には、制御はステップS12に進む。
【0095】
ステップS12において、制御部12は、カウントがゼロか否かを判断する。ステップS12において、カウントがゼロであると判定された場合、制御は、ステップS13に進む。一方、ステップS12において、カウントがゼロと判定されない場合には、制御は終了する。
【0096】
ステップS13において、制御部12は、ステップS11におけるスイッチの操作の検出を1回目の検出としてカウントする。このカウントは、記憶部13に記憶されてもよい。
次に、ステップS14において、制御部12は、操作が検出されたスイッチに応じて固定機構10の制御動作を実行する。なお、ステップS13とステップS14は同時に行われてもよい。
【0097】
一方、ステップS10において、動作可能前提条件を満たすと判定されない場合、制御は、ステップS15に進み、ステップS15において、制御部12が、カウントゼロリセットを実行する。
【0098】
また、ステップS11において、制御部12が、いずれかのスイッチの操作をエッジ判定によって検出していない場合には、制御はステップS16に進む。
【0099】
ステップS16において、制御部12は、信号のレベルを用いてスイッチ操作の検出を行う。作業者によって切り替えスイッチ51、入スイッチ52、出スイッチ53、固縛スイッチ54、または固縛解除スイッチ55のいずれかのスイッチの操作が行われ、ステップS17において、制御部12が、いずれかのスイッチの操作を信号のレベルを用いて検出した場合には、制御はステップS17に進む。
【0100】
一方、ステップS16において、いずれかのスイッチの操作が信号のレベルを用いて検出されなかった場合、制御は終了する。
【0101】
ステップS17において、制御部12は、カウントがゼロか否かを判断する。ステップS17において、カウントがゼロでないと判定された場合には、制御は、ステップS18に進む。一方、ステップS17において、カウントがゼロと判定された場合には、制御は終了する。これにより、スイッチ操作の検出が2回目以降の場合には、信号のレベルを用いた判定が行われることになる。
【0102】
ステップS18において、制御部12は、操作が検出されたスイッチに応じて固定機構10の制御動作を実行する。
【0103】
(特徴等)
本実施の形態の固定装置1では、スイッチがオフ状態からオン状態に切り替わる信号のエッジEを用いてスイッチの操作を検出するため、鞄等の荷物がスイッチに置かれてスイッチがオンされている状態において、固定機構10が所定動作を行うことが可能な車両200状態になったとしても、既にオン状態となっているためスイッチからの信号のエッジEは検出されない。そのため、スイッチの操作が検出されず、固定機構10による所定動作が行わないので、意図しないタイミングにおける動作を抑制することができる。
【0104】
また、エッジを用いたスイッチ操作の検出では、スイッチ信号監視周期のタイミングと操作のタイミングが合わない場合に検出を取り逃がすことがあるが、二回目以降は信号のレベルを用いて検出するため、確実に検出を行うことが出来る。
【0105】
本実施の形態の固定装置1は、荷物が固縛解除スイッチ55上に置かれてスイッチがオン状態になっている場合であっても意図しないタイミングにおける固縛解除動作を抑制することができ、車椅子300が突然不安定になることを低減できる。
【0106】
本実施の形態の固定装置1は、荷物が固縛スイッチ54上に置かれてスイッチがオン状態になっている場合であっても意図しないタイミングにおける固縛動作を抑制することができ、ベルト部材31が急に動くことを低減できる。
【0107】
本実施の形態の固定装置1は、車両200が動作可能前提条件を満たすか判定した上で、スイッチ操作に伴って固定機構10による所定動作を実行することができる。
【0108】
本実施の形態の固定装置1は、車両が駐車状態であるか、またはバックドア201が開いている状態の場合に、固定機構10を動作可能な状態とし、スイッチ操作に伴って固定機構10による所定動作を実行することができる。
【0109】
(他の実施の形態)
以上、本開示の一実施の形態について説明したが、本開示は上記実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0110】
(A)
上記実施の形態では、パーキングブレーキ210が制動状態であり、シフトレバー211がP位置に配置され、およびバックドア201が開放されている場合に動作可能前提条件を満たしていると判定しているが、これに限らなくてもよい。
【0111】
例えば、バックドア201の開放を判定せず、パーキングブレーキ210が制動状態であり、シフトレバー211がP位置に配置されている場合に、動作可能前提条件を満たしていると判定してもよい。
【0112】
さらに、例えば、傾斜センサが設けられており、坂道に停車していないことを動作可能前提条件に加えてもよい。また、スロープ203が電動である場合には、スロープ203が降りている状態であることを、動作可能前提条件に加えてもよい。
【0113】
(B)
上記実施の形態の固定装置1では、スイッチの一例として、入スイッチ52、出スイッチ53、固縛スイッチ54、固縛解除スイッチ55および切り替えスイッチ51が挙げられているが、これらに限られるものではなく、他にスイッチを追加してもよいし、入スイッチ52、出スイッチ53など一部のスイッチが設けられていなくてもよい。この場合、巻取り装置30はモータ34ではなく、手動及び付勢部材によってベルト部材31は巻き取られる。
【0114】
(C)
上記実施の形態の固定装置1は、1つの固定機構10を有しているが、固定機構10は1つに限定されるものではなく、2つ以上の固定機構が設けられていてもよい。
【0115】
(D)
上記実施の形態では、ウインチ部21はベルト部材31を有しているが、長尺部材であればベルト部材に限らなくてもよく、ワイヤまたはチェーン等であってもよい。
【0116】
(E)
上記実施の形態では、ベルト部材31の車椅子300への接続の一例として、ベルト部材31の先端に配置されたフック32のフレーム301への係止を例に挙げて説明しているが、これに限らなくてもよい。例えばフレーム301に嵌合するような嵌合部材がベルト部材31の先端に設けられ、嵌合部材がフレーム301に嵌合することによってベルト部材31が車椅子300に接続されていてもよい。また、ベルト部材31を車椅子300に直接結んでもよく、要するに、ベルト部材31を固定対象である車椅子300に接続できさえすればよい。
【0117】
(F)
上記実施の形態では、制御部12は、回転センサ36によってドラム33の回転の停止を検出しているが、これに限らず、例えばテンションセンサ等を配置し、ベルト部材31が所定のテンションの値以上になった場合に、ドラム33の回転が停止していると判断してもよい。また、回転センサ36に代えて、または回転センサ36とともに、モータ34の電流値を観測する電流センサを設け、電流値が所定閾値以上になった場合に、ドラム33の回転が停止したと判断してもよい。
【0118】
(G)
上記実施の形態では、各々のスイッチ操作によってオフ状態からオン状態となったとき、各々のスイッチから電気的レベルが低い状態から電気的レベルが高い状態になるような信号が制御部12に送信され、スイッチの操作が解除されると、各々のスイッチから電気的レベルが低い状態になるような信号が制御部12に送信されるが、これに限らず、オフ状態からオン状態となるとき、各々のスイッチから、電気的レベルが高い状態から電気的レベルが低い状態となるような信号が制御部12に送信され、オン状態からオフ状態になるとき、各々のスイッチから、電気的レベルが低い状態から電気的レベルが高い状態になるような信号が制御部12に送信されてもよい。なお、オフ状態からオン状態となるとき、各々のスイッチから、電気的レベルが高い状態から電気的レベルが低い状態となるような信号が制御部12に送信される形態のとき、電圧値VHから電圧値VLに変化するエッジEを検出したときにスイッチが操作されたと判定される。
【0119】
(H)
上記実施の形態では、固定部22のベルト部材41の長さは固定であるが、ウインチ部21のようにドラムに巻き回されていてもよい。ドラムは、モータによって回転されてもよいし、ベルト部材41を巻き取る方向に付勢手段が設けられていてもよい。これらの場合、固定部22のドラムには、固縛の際にドラムの回転をロックするロック機構を設ける方が好ましい。また、ロック機構を設ける場合、制御部12が制御を行ってもよい。
【0120】
(I)
上記実施の形態では、ロック部37は、ドラム33のベルト部材31を巻き取る方向への回転は可能にし、ドラム33のベルト部材31を引き出す方向への回転をロックすると説明したが、ロック部37は、ドラム33の双方への回転をロックしてもよい。この場合、固縛動作においてモータ34を回転する前に、ロック部37によるドラム33のロックを解除すればよい。また、固縛動作を終了する際には、制御部12は、モータ34の停止後に、ロック部37によってドラム33のロックを行えばよい。
【0121】
(J)
また、上記実施の形態では、操作部11に、入スイッチ52、出スイッチ53、固縛スイッチ54、固縛解除スイッチ55および切り替えスイッチ51が設けられているが、入スイッチ52および出スイッチ53は設けられていなくてもよい。入スイッチ52および出スイッチ53の代わりに、手動でベルト部材31を巻き取るまたは引き出すことが可能な構成が設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本開示の固定装置は、意図しないタイミングでの動作を抑制可能な効果を有し、車椅子の車両への乗降補助装置などとして有用である。
【符号の説明】
【0123】
1 :固定装置
10 :固定機構
10a :固定機構
10b :固定機構
11 :操作部
11a :第1操作部分
11b :第2操作部分
12 :制御部
13 :記憶部
21 :ウインチ部
22 :固定部
30 :巻取り装置
31 :ベルト部材
32 :フック
33 :ドラム
34 :モータ
35 :クラッチ
36 :回転センサ
37 :ロック部
41 :ベルト部材
42 :フック
51 :切り替えスイッチ
52 :入スイッチ
53 :出スイッチ
54 :固縛スイッチ
55 :固縛解除スイッチ
200 :車両
201 :バックドア
202 :後部
203 :スロープ
210 :パーキングブレーキ
211 :シフトレバー
211a :ポジションセンサ
212 :バックドア開閉検出部
300 :車椅子
301 :フレーム
302 :車輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9