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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】集光のための蛍光導光板
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/0915 20060101AFI20241112BHJP
   H01S 3/067 20060101ALI20241112BHJP
   G02B 6/00 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
H01S3/0915
H01S3/067
G02B6/00 301
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021165826
(22)【出願日】2021-10-07
(65)【公開番号】P2023056440
(43)【公開日】2023-04-19
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000125369
【氏名又は名称】学校法人東海大学
(74)【代理人】
【識別番号】100071216
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 昌毅
(74)【代理人】
【識別番号】100130395
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】増田 泰造
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 雅守
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-018981(JP,A)
【文献】特開2020-087864(JP,A)
【文献】特開2010-263115(JP,A)
【文献】特開昭62-266502(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00-3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の面と、第二の面と、前記第一及び第二の面の周縁を接続する縁面とから成り、その内部又は前記第一若しくは第二の面上に、前記第一の面に照射された照射光を吸収して蛍光を放出する蛍光物質が分散され且つ外部よりも屈折率が高い材料から形成された板状構造を有し、前記第一の面から照射光が入射すると、前記蛍光物質から放出される前記蛍光が前記縁面から出射する蛍光導光板であって、
前記第一の面上にダイクロイックミラーが積層され、
前記ダイクロイックミラーに於ける垂直入射光線の反射光波長帯域が前記蛍光物質の蛍光波長帯域のピーク波長よりも長波長側にある蛍光導光板。
【請求項2】
請求項1の蛍光導光板であって、該蛍光導光板の内部から前記第一の面へ向かう方向で入射角が第一の所定角を上回る光線の前記ダイクロイックミラーに於ける反射光波長帯域が前記蛍光物質の蛍光波長帯域と重なっている蛍光導光板。
【請求項3】
請求項2の蛍光導光板であって、該蛍光導光板の内部から前記第一の面へ向かう方向で入射角が前記第一の所定角を上回る光線の前記ダイクロイックミラーに於ける反射光波長帯域が前記蛍光物質の蛍光波長帯域を包含している蛍光導光板。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかの蛍光導光板であって、該蛍光導光板の外部から前記第一の面へ向かう方向で入射角が第二の所定角を下回る光線にして前記蛍光物質を励起可能な波長の光線が前記ダイクロイックミラーを透過するように前記ダイクロイックミラーの反射光波長帯域が設定されている蛍光導光板。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかの蛍光導光板を有する太陽光励起レーザー装置であって、
前記蛍光導光板の前記縁面上にて前記第一及び第二の面の周縁方向に沿って巻装された1条の光ファイバーにしてレーザー媒質が分散されたコア部と、表面及び内部が前記蛍光を透過する材料にて形成され前記コア部の屈折率よりも低い屈折率を有するクラッド部と、前記光ファイバーの一方の端面にて前記レーザー媒質が放出した光の実質的に全てを反射する第一の反射手段と、前記光ファイバーの他方の端面にて前記レーザー媒質が放出した光の一部を透過させ、その残りを反射する第二の反射手段とを含み、前記蛍光導光板の縁面から出射された前記蛍光が前記クラッド部の表面を透過して前記コア部まで達し、前記蛍光により前記レーザー媒質が励起されてレーザー発振が達成可能であり、レーザー光が前記光ファイバーの他方の端面から出射する光ファイバーと
を含む装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光などの光を集光する装置に係り、より詳細には、大掛かりなレンズ系を用いずに光を集光して光エネルギーを取り出すことが可能な集光のための蛍光導光板に係る。本発明の蛍光導光板は、太陽光をエネルギー源としてレーザー光を発生する太陽光励起レーザー装置にも適用可能である。
【背景技術】
【0002】
地球の温暖化問題又はその他の環境問題の対策の一つとして、太陽光エネルギーを利用するために、太陽光を集光するための構成が種々提案されている。例えば、本発明の発明者等の一部による特許文献1~3に於いては、レンズや太陽光追尾機構を用いない集光機構を採用した新規な太陽光励起レーザー装置の構成が提案されている。かかる新規な集光機構を備えた太陽光励起レーザー装置1に於いては、図6(A)に模式的に描かれている如く、外部よりも屈折率が高い材料から形成された板状部材に太陽光SLを吸収してレーザー媒質の感度の高い波長帯域の蛍光FLを放出する蛍光物質FMが分散された蛍光導光板2の縁面2c上に、光ファイバー3aを含む光ファイバー部3が巻装され、光ファイバー3aには、レーザー媒質が分散されたコア部(図6(D)3c)と、蛍光を透過する材料にて形成されたクラッド部(図6(D)3b)と、一方の端面にて光の実質的に全てを反射する反射手段(図6(B)5)と、他方の端面にてレーザー媒質が放出した光の一部を透過させる反射手段(図6(B)4)とが構成される。かかる構成に於いて、蛍光導光板2が太陽光を集光する機能を果たしており、その一方の面2aから太陽光SLが入射すると、蛍光物質FMから放出される蛍光FLが縁面2cに集光されて出射し、その出射された蛍光FLが光ファイバー3aのクラッド部を透過してコア部まで達し、その蛍光FLによりレーザー媒質が励起されてレーザー発振が生ずるよう構成されている。かかる構成は、集光レンズや太陽の位置を追尾するための機構などの嵩張る構成や集光レンズの焦点位置を調節する機構が必要なくなる点で、有利である。なお、上記の如き蛍光導光板を利用した例として、蛍光導光板の一方の面から入射した太陽光が蛍光導光板内部の蛍光物質を励起することにより生じた蛍光を蛍光導光板の縁面に配置された太陽電池へさせるために、蛍光導光板の縁面の周囲に複数の反射層を設けた構成が特許文献4に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-168662
【文献】特開2018-18981
【文献】特開2020-65027
【文献】特開2015-201464
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図6(A)に例示されている太陽光励起レーザー装置1などに於いて集光のために用いられている蛍光導光板に於いては、板の表面から板内へ入射する光によって板内に分散された蛍光物質が励起され、その蛍光物質から放出された蛍光が、板の表面で反射を繰返しながら、板の縁面に集められ、板に照射された光のエネルギーが板の縁面にて濃縮されて取り出されることとなる。かかる構成に於いては、蛍光物質から放出された蛍光のうちで、板表面(板と外部との界面)への入射角(板の法線方向と光線の入射方向との間の角)が臨界角を下回る光線については、一部が板表面を透過し、損失となる。そこで、そのような蛍光導光板の内側から板表面を透過する蛍光を低減する一つの手法として、板表面上に、ダイクロイックミラー(以下、「DM」と称する。)、即ち、特定の波長の光を反射し、その他の波長の光を透過する特性を有する薄膜を貼付又は積層し、蛍光導光板内部の蛍光物質から放出される蛍光に於いて、板表面を透過する量を低減することが考えられる。[なお、上記の「臨界角」とは、蛍光導光板が空気層と直接に接した界面がある場合に蛍光導光板側から界面へ光線が入射したときに全反射が生ずる光線の入射角である(以下、同様)。]
【0005】
上記の如く、蛍光導光板の表面にDMを配置し、蛍光導光板内の蛍光物質の発する蛍光の板表面から透過する量を低減しようとする場合、DMに於ける反射光の波長帯域(反射光波長帯域)が蛍光導光板内の蛍光物質の発する蛍光の波長帯域と重複し又はかかる蛍光の波長帯域を網羅し、板表面への入射角が臨界角を下回る光線ができるだけ多くの量にて反射されるように、DMが調製されるべきである(DMの反射光波長帯域は、その調製時に薄膜の構成を調整することにより、変更可能である。)。この点に関し、本発明の発明者等による研究によれば、DMの反射光波長帯域は、DMへの光線の入射角が大きくなるほど、DMの反射光波長帯域が短波長側へシフトし、更に、DMが積層された蛍光導光板の如く、屈折率の大きい媒質の板表面にDMが積層されている構成に於いては、DMへの光線の入射角の増大による反射光波長帯域の短波長側へのシフト量が(空気の場合よりも)大きくなることが見出された(図3参照)。即ち、或る波長の光線がDMに対して垂直に入射する場合(入射角=0°、垂直入射光)に反射される場合であっても、同じ波長でDMに対する入射角が大きい光線は、反射光波長帯域から外れて、DMを透過し得ることとなる(DMを透過した蛍光は損失となる。)。従って、蛍光導光板の表面にて蛍光の透過量を低減するためにDMを積層する場合には、DMに対する入射角によってシフトした反射光波長帯域が蛍光の波長帯域と重なるように、DMの反射光波長帯域を設定することが好ましいこととなる。
【0006】
ところで、太陽光などの蛍光導光板への照射光は、蛍光導光板の受光面に対して、通常、垂直入射されるか、入射角が比較的小さい状態で入射される。また、蛍光導光板にて集められる光のエネルギーをより多くするためには、板内の蛍光物質をより多くの光で励起して蛍光量を多くした方がよく、そのためには、蛍光導光板内へ進入する光量はできるだけ多い方がよいので、板内への入射可能な光の波長帯域はできるだけ広い方が好ましい。この点に関し、通常、蛍光物質の吸収波長帯域(励起波長帯域)は、その蛍光物質の発光波長帯域(蛍光波長帯域)と重複しているので、蛍光導光板の表面に於いては、入射角が比較的小さい状態の光線であって、蛍光物質の蛍光波長帯域以下の光線が透過可能となっていることが好ましいこととなる。一方、蛍光導光板内の蛍光物質から発せられる蛍光については、かかる蛍光の光線の板表面に対する入射角が小さいほど、その光線が板の縁面まで到達するまでに板表面にて反射する回数が多くなるところ(図4参照)、光線は、板表面にて反射する度に、その一部が板表面を透過して損失となってしまうので、そのように反射回数の多い光線の透過量を低減するよりも、板表面に対する入射角が比較的大きく反射回数の少ない光線がより確実に反射され、それらの光線が板の縁面まで到達できるようにした方が、より効率的に、即ち、より多くの量の蛍光を板の縁面へ集光できることとなる。即ち、蛍光導光板の表面に於いて、入射角が比較的大きい光線の反射光帯域が蛍光波長帯域と重なるようになっていることが好ましい。以上のことから、蛍光導光板に積層されるDMは、その反射光波長帯域が、垂直入射から入射角が比較的小さい範囲では、蛍光物質の蛍光波長帯域よりも長波長側であり、入射角が比較的大きい範囲では、蛍光物質の蛍光波長帯域に重複するように調製されていると、蛍光導光板に於いて、より効率的に、蛍光を集光できることが理解される。この知見は、本発明に於いて利用される。
【0007】
かくして、本発明の一つの課題は、特許文献1~3に記載されている如き太陽光励起レーザー装置に於いて採用されている蛍光導光板の如き、集光のための蛍光導光板であって、蛍光導光板へ照射された光のエネルギーをより効率的に集められるよう構成された蛍光導光板を提供することである。
【0008】
また、本発明のもう一つの課題は、上記の如き蛍光導光板にして照射光の受光面にダイクロイックミラーを積層した蛍光導光板であって、ダイクロイックミラーの反射光波長帯域が、できるだけ多くの量の照射光を板内へ透過させることができ、できるだけ多くの量の蛍光を板内に閉じ込めて光のエネルギーを集められるよう構成された蛍光導光板を提供することである。
【0009】
本発明の更なる一つの課題は、上記の如き蛍光導光板を採用した太陽光励起レーザー装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、上記の課題は、
第一の面と、第二の面と、前記第一及び第二の面の周縁を接続する縁面とから成り、その内部又は前記第一若しくは第二の面上に、前記第一の面に照射された照射光を吸収して蛍光を放出する蛍光物質が分散され且つ外部よりも屈折率が高い材料から形成された板状構造を有し、前記第一の面から照射光が入射すると、前記蛍光物質から放出される前記蛍光が前記縁面から出射する蛍光導光板であって、
前記第一の面上にダイクロイックミラーが積層され、
前記ダイクロイックミラーに於ける垂直入射光線の反射光波長帯域が前記蛍光物質の蛍光波長帯域のピーク波長よりも長波長側にある蛍光導光板
によって達成される。
【0011】
上記の構成に於いて、「蛍光導光板」は、典型的には、外部の空間よりも光の屈折率の高い透明の材料若しくは透光性のある材料、例えば、石英ガラス、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などを、母材とし、その内部又は板状構造の表面上(第一又は第二の面)に、蛍光色素、量子ドットなどの蛍光物質が分散された板状構造の部材である。「ダイクロイックミラー」とは、特定の波長の光を反射し、その他の波長の光を透過する特性を有する薄膜であり、通常、SiO2、TiO2等から調製される誘電体多層膜である。「垂直入射光線」とは、ここに於いては、ダイクロイックミラーの面に対して垂直な方向に進入する光線(入射角が0°)である。「反射光波長帯域」とは、ダイクロイックミラーに於いて、それに入射する光の反射率が高くなる波長帯域である。蛍光物質の「蛍光波長帯域」とは、蛍光物質から発せられる蛍光強度が有意に高くなる波長帯域であり、「ピーク波長」とは、蛍光波長帯域に於ける最大強度又は極大強度を与える波長である。第一の面に照射される光(照射光)は、典型的には、太陽光であってよいが、これに限定されず、任意の光源からの光であってもよいことは理解されるべきである。
【0012】
上記の如き蛍光導光板に於いては、まず、第一の面に太陽光などの光が照射されて板内に進入すると、内部に又は第一若しくは第二の面上に分散されている蛍光物質を励起し、これにより、蛍光が蛍光物質のそれぞれから放射方向に発せられる。ここで、板内の屈折率が、外部(通常、空気)の屈折率よりも高いので、蛍光物質からの蛍光の光線のうち、板と外部との界面(第一の面、第二の面)に達したときの、その面に対する入射角が臨界角より大きい光線は、全反射を繰返して、板状構造の縁面へ到達し、蛍光光線のうちで界面での入射角が臨界角より小さいものは、界面にて一部が透過し、残りが反射することを繰り返しながら、縁面へ到達することとなり、これにより、界面にて反射又は全反射した蛍光光線が板内に閉じ込められた状態で縁面へ集まり、かくして、板状構造の広い面(第一の面)に照射された光のエネルギーが板状構造の縁面に集約されることとなる(集光機能)。
【0013】
かかる構成に於いて、界面での入射角が臨界角より小さい蛍光光線のうちで界面を透過する分は縁面に到達せず、エネルギーの損失となるので、かかる損失を減らすためには、界面を透過する光線量を低減すればよいが、板内にて蛍光として放出させるエネルギーを増大するためには、界面を透過する照射光量をより増大できることが好ましい。そこで、本発明に於いては、上記の如く、照射光の受光面となる第一の面に於いてダイクロイックミラーを積層して板内からの蛍光については、透過を阻止する一方、板外からの照射光については、より多くの量の光を透過させて、縁面に到達する光量を増大することが企図される。
【0014】
この点に関し、既に触れた如く、本発明の発明者等の研究により、ダイクロイックミラーの反射光波長帯域は、ダイクロイックミラーへの光線の入射角が大きくなるほど、短波長側にシフトし、そのシフト量は、媒質の屈折率が高いほど大きくなることが見出されている。即ち、ダイクロイックミラーに於ける垂直入射光線の反射光波長帯域が蛍光物質の蛍光波長帯域に合致している場合には、入射角の比較的大きい蛍光光線については、その波長帯域が(短波長側にシフトした)反射光波長帯域から外れてしまい、光線がダイクロイックミラーを透過してしまい得ることとなる。一方、入射角が小さいほど、縁面まで到達するまでに界面での反射回数が多くなり、光線が界面を透過する機会が多くなるので、入射角の比較的小さい蛍光光線については、その波長帯域が反射光波長帯域に合致していたとしても、界面での反射回数が多くなる分、界面を透過して損失される光量が多くなる。従って、蛍光の縁面に到達する光量を多くするためには、入射角の比較的大きい蛍光光線がより確実に反射されるように、ダイクロイックミラーの反射光波長帯域は、その短波長側へのシフトを考慮して設定されることが好ましい。また、蛍光物質を励起する光の量が多いほど、蛍光物質の放出する蛍光量が多くなるところ、一般に、蛍光物質の励起波長帯域と蛍光波長帯域は重複しているので、蛍光物質の蛍光量を多くするためには、照射光として、蛍光波長帯域に及ぶ波長帯域の光がダイクロイックミラーを透過できるようになっていることが好ましい。
【0015】
そこで、本発明の構成に於いては、上記の如く、ダイクロイックミラーに於ける垂直入射光線の反射光波長帯域が蛍光物質の蛍光波長帯域のピーク波長よりも長波長側にあるように設定される。かかる構成によれば、板内からダイクロイックミラーへ向かう蛍光光線については、入射角の比較的大きい光線に対する反射光波長帯域が垂直入射光線の反射光波長帯域から短波長側にシフトして、蛍光波長帯域に重なり、これにより、より多くの光線が反射されて板内に閉じ込められることとなる。また、板外から板内へ向かう照射光は、通常、ダイクロイックミラーに対して垂直若しくは比較的小さい入射角にて入射するので、反射光波長帯域波長が蛍光物質の蛍光波長帯域のピーク波長よりも長波長側にあることにより、蛍光波長帯域のピーク波長以下の波長の照射光がダイクロイックミラーを透過することとなり、蛍光波長帯域に重複する励起波長帯域内の波長を含む広範囲な波長帯域の光が板内へ進入し、蛍光物質の励起に寄与し、板内に放出される蛍光量を増大することが可能となる。
【0016】
なお、上記の蛍光導光板に於いて、照射光が照射されない面(第二の面)上に於いては、板内からの蛍光及び板内を通過した照射光をその入射角によらず反射する反射膜又は反射鏡が積層又は貼付されていてよい。
【0017】
上記の構成に於いて、より具体的には、蛍光導光板の内部から第一の面へ向かう方向で入射角が第一の所定角を上回る光線のダイクロイックミラーに於ける反射光波長帯域が蛍光物質の蛍光波長帯域と重なっているように、ダイクロイックミラーが調製されてよい。第一の所定角は、臨界角を下回る適宜設定される角度であってよい。具体的には、適合により設定されてよく、例えば、30°程度が好適であるが、これに限定されない。かかる構成により、板内から第一の面へ向かう蛍光光線であって、ダイクロイックミラーに対する入射角が第一の所定角を上回る光線のより多くが、ダイクロイックミラーにて反射され、これにより、蛍光物質の蛍光のより多くの量が板内に閉じ込められ、縁面へ集光されることとなる。
【0018】
また、上記の構成に於いて、より好適には、蛍光導光板の内部から第一の面へ向かう方向で入射角が第一の所定角を上回る光線のダイクロイックミラーに於ける反射光波長帯域が蛍光物質の蛍光波長帯域を包含しているように、ダイクロイックミラーが調製されてよい。かかる構成によれば、入射角が第一の所定角を上回る蛍光光線については、実質的に殆どの波長帯域の光線がダイクロイックミラーにて反射され、これにより、蛍光物質の蛍光のより多くの量が板内に閉じ込められ、縁面へ集光されることとなる。
【0019】
更に、上記の構成に於いて、蛍光導光板の外部から第一の面へ向かう方向で入射角が第二の所定角を下回る光線にして蛍光物質を励起可能な波長の光線がダイクロイックミラーを透過するようにダイクロイックミラーの反射光波長帯域が設定されてよい。「第二の所定角」は、適合により、決定されてよく、第一の所定角と同一であってよいが、これに限定されない。既に触れた如く、例えば、太陽光などの照射光は、通常、蛍光導光板の上方から到来するので、入射角は、比較的小さいことが期待される。従って、第二の所定角よりも入射角が小さい光線であって蛍光物質を励起可能な波長の光線、即ち、励起波長帯域の光線、が、ダイクロイックミラーを透過するようになっていることにより、それが蛍光波長帯域内の光線であったとしても、蛍光物質の励起に寄与し、蛍光量がより増大されることとなる。
【0020】
上記の本発明の蛍光導光板は、太陽光などの比較的濃度の薄い(エネルギー強度の低い)光のエネルギーを濃縮しつつ回収して利用するために、種々の用途(例えば、光電池への導光など)にて適用されてよい。また、特許文献1、2に記載の太陽光レーザー装置のための蛍光導光板や特許文献3の集光装置のための蛍光導光板として利用されてよい。従って、本発明によれば、上記の本発明の蛍光導光板を有する太陽光励起レーザー装置であって、
前記蛍光導光板の前記縁面上にて前記第一及び第二の面の周縁方向に沿って巻装された1条の光ファイバーにして、前記レーザー媒質が分散されたコア部と、表面及び内部が前記蛍光を透過する材料にて形成され前記コア部の屈折率よりも低い屈折率を有するクラッド部と、前記光ファイバーの一方の端面にて前記レーザー媒質が放出した光の実質的に全てを反射する第一の反射手段と、前記光ファイバーの他方の端面にて前記レーザー媒質が放出した光の一部を透過させ、その残りを反射する第二の反射手段とを含み、前記蛍光導光板の縁面から出射された前記蛍光が前記クラッド部の表面を透過して前記コア部まで達し、前記蛍光により前記レーザー媒質が励起されてレーザー発振が達成可能であり、レーザー光が前記光ファイバーの他方の端面から出射する光ファイバーと
を含む装置
が提供される。
【0021】
上記の構成に於いて、1条の「光ファイバー」は、所謂、ファイバーレーザーに使用される光ファイバーであってよく、特に、本発明に於いて使用される光ファイバーに於いては、クラッド部の表面及び内部が、上記の「蛍光物質」の発する蛍光を透過する材料にて形成され、従って、蛍光が、コア部を(その延在方向(軸方向)に対して垂直な)放射方向の周囲にて囲繞するクラッド部の放射方向の外表面(外周面)から入射し、コア部へ到達するよう構成される。なお、1条の光ファイバーは、複数の光ファイバーが直列に1条に連結されたものであってもよい。「光ファイバー」のコア部に分散される「レーザー媒質」は、この分野に於いて通常使用される、ファイバーレーザーのレーザー発振が達成可能なネオジニウムイオン、イッテリビウムイオン等の物質であってよく、コア部はこれらのイオンがドープされたガラス(典型的には、石英ガラス)から構成されてよい。更に、「光ファイバー」の両端に設けられる第一及び第二の反射手段は、ファイバーレーザーに於いて通常用いられるFBG(ファイバーブラッググレーティング)等の光を反射する機構であってよい。反射率は、例えば、第一の反射手段に於いては、99.999%(上記の構成に於いて、「光の実質的に全てを反射する」とは、本発明の目的に於いて許容可能な範囲な量の光を反射するという意味である。)、出射端でもある第二の反射手段に於いては、98%などに設定されていてよい。そして、上記の如く、端的に述べれば、本発明の太陽光励起レーザー装置は、上記の「蛍光導光板」の縁面上に於いて、ファイバーレーザーとして動作可能な一条の光ファイバーが巻装されて構成される。
【発明の効果】
【0022】
かくして、上記の本発明によれば、ダイクロイックミラーの反射光波長帯域が、ダイクロイックミラーへの入射角が大きいほど、短波長側へシフトし、そのシフト量が媒質の屈折率が高いほど大きくなるという知見を有利に利用し、集光のための蛍光導光板に於いて、より多くの量の照射光を板内に取り込む一方で、より多くの量の蛍光を板内に閉じ込めることが可能となり、蛍光導光板へ照射された光のエネルギーをより効率的に縁面へ集めることが可能となる。また、本発明の構成に於いては、蛍光導光板にて太陽光を吸収→波長変換→光閉じ込めにより、エネルギー密度の向上を実現することが可能となり、太陽光をより有利に利用できるようになることが期待される。即ち、本発明に於いては、「太陽光の利用範囲を広げ多くのエネルギーを利用する」と「光閉じ込め」という背反事項が、上記のダイクロイックミラーの反射光波長帯域が入射角の増大と共に短波長側へシフトするという知見を利用することで両立できることとなる。また、本発明の蛍光導光板の構成を太陽光などの照射光にて励起される光励起レーザー装置に採用することにより、より容易なレーザー発振の実現とレーザー光として取り出せるエネルギーの増大とが期待される。
【0023】
本発明のその他の目的及び利点は、以下の本発明の好ましい実施形態の説明により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1(A)は、本発明による蛍光導光板の実施形態の模式的な斜視図であり、図1(B)は、図1(A)の蛍光導光板の模式的な断面図である。
図2図2は、太陽光のスペクトルIs、蛍光物質の吸光スペクトルAf、蛍光スペクトルIfを示している。
図3図3は、DMの光の波長に対する反射率の変化を示している(シミュレーション結果)。上段がDMの両側が空気の場合であり、下段が、DMの入射側が屈折率1.47の母材であり、出射側が空気の場合である。図中、10°、20゜、30゜、40゜は、それぞれ、DMに対して入射される光線の入射角を示している。Ifは、典型的に使用される蛍光物質の蛍光スペクトルである。
図4図4は、蛍光導光板に於いて、板外から進入し蛍光物質FMを励起する照射光SL、蛍光物質FMから放出される蛍光FLの光路を模式的に説明する図である。
図5図5は、本発明による蛍光導光板の照射光の受光面に積層されるDMの反射率の波長特性と蛍光物質の蛍光スペクトルとの関係を示している。
図6図6(A)は、本発明による蛍光導光板を用いた太陽光励起レーザー装置の実施形態の模式的な斜視図であり、図1(B)は、その模式的な平面図であり、図1(C)は、模式的な断面図である。図1(D)は、太陽光励起レーザー装置の実施形態に於ける光ファイバーの模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1…蛍光導光板
10…太陽光励起レーザー装置
2…蛍光導光板本体
2a…太陽光受容面(第一の表面)
2b…蛍光導光板内部
2c…蛍光導光板縁面
2d…蛍光導光板裏面(第二の面)
3…光ファイバー部
3a…光ファイバー
3b…クラッド部
3c…コア部
4…出射端
5…反射端
6…反射ミラー
7…ダイクロイックミラー(DM)
SL…太陽光
LL…レーザー光
LM…レーザー媒質(Nd3+
FL…蛍光
FM…蛍光物質(量子ドット)
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を幾つかの好ましい実施形態について詳細に説明する。図中、同一の符号は、同一の部位を示す。
【0027】
蛍光導光板の基本的な構成と作動
図1(A)、(B)を参照して、本実施形態による一つの実施形態の蛍光導光板1は、太陽光などの照射光SLを受容する受光面2a(第一の表面)、その裏面2d(第二の表面)、受光面2aと裏面2dとを接続する縁面2cとにより画定された板状構造の本体2を有し、受光面2a上にDM(ダイクロイックミラー)7が積層される。なお、裏面2dには、光を透過させずに反射する反射ミラー6が適用されてよい。蛍光導光板本体2は、外部の空間よりも光の屈折率が高い透明の若しくは透光性のある材料、例えば、石英ガラス、ポリカーボネート樹脂、PMMA、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、ウレタン樹脂などの樹脂を母材とし、内部2bに蛍光物質FMが分散された構成を有する。蛍光物質FMは、蛍光色素(ローダミン、Lumogenなど)、量子ドット(メチルアミンPbI3(ペロブスカイト)量子ドットPbS、量子ドット、CdTe量子ドット、Si量子ドット)などの、照射光SLを吸収して、蛍光FLを発する任意の物質であってよい。なお、図示していないが、蛍光物質FMは、板内部2bの全域に分散されていなくてもよく、例えば、受光面2a又は裏面2d上に分散されていてもよい。また、蛍光導光板本体2の面方向の形状は、図示の如き円形に限らず、任意の形状であってよい。そして、DM7は、SiO2、TiO2等から調製される誘電体多層膜であってよく、特定の波長帯域の光を反射し、それ以外の帯域の光を透過する。
【0028】
上記の蛍光導光板1の基本的な作動に於いては、太陽光などの照射光SLがDM7を透過して受光面2aに照射されると、板内の蛍光物質FMが照射光SLによって励起され、蛍光FLを放出する。その際、蛍光FLは、個々の蛍光物質FMから放射方向に発せられるところ、板状構造の母材の屈折率が外部(通常、空気)よりも高いので、蛍光光線FLが、板状構造の表面(受光面2a、裏面2d)に到達したとき、入射角が臨界角よりも大きい光線は、全反射するので、蛍光導光板本体2の内部に閉じ込められ、反射を繰り返しながら伝播して、縁面2cに集光されることとなる。また、入射角が臨界角よりも小さい光線についても、裏面2dに於いては、反射ミラー6が配置されているので、そこに於いて蛍光光線FLは、反射されて板内2bへ戻されることとなる。一方、受光面2aに於いては、照射光SLを板内へ透過させて取り込む必要があるので、反射ミラー6を配置することはできないが、照射光SLの波長帯域、即ち、蛍光物質FMの吸収波長帯域の光を透過させ、蛍光物質FMの蛍光FLの波長帯域の光を反射するよう調製されたDM7を配置することにより、板内2bから受光面2aへ伝播する蛍光光線FLは、DM7にて反射させて、板内2bへ戻すことが可能となる。即ち、DM7を適当に選択することができれば、板状構造の表面に於ける入射角が臨界角よりも小さい蛍光光線も板内2に閉じ込めて、反射を繰り返させながら、縁面2cへ集光することが可能となる。
【0029】
DMの入射角に対する反射光波長帯域の依存性について
上記の如く、蛍光導光板1の受光面2aに於いて、照射光SLの透過を許し且つ蛍光FLを反射する状態を実現するDM7を積層すれば、受光面2aへの入射角が臨界角よりも小さい蛍光光線FLも、より多くの量にて、縁面2cへ集光できるようになるところ、或る強度にて照射光が照射されている条件下で、より効率的に、できるだけ多くの量の蛍光を縁面2cに集められるようにするには、DMの波長特性を、照射光SLのうちの蛍光物質に吸収される光のできるだけ広範囲の波長帯域の成分を透過させる一方で、蛍光物質FMからの蛍光のできるだけ広範囲の波長帯域の成分を反射するように調整できることが求められる。しかしながら、照射光SLとして、太陽光が用いられる場合、太陽光の波長帯域は、図2中のIsに示されている如く広範囲に亙るところ、一般に、蛍光物質の吸収する波長帯域Afは、蛍光物質の蛍光の波長帯域Ifと重複するので、DMに於いて、照射光SLの蛍光物質に吸収される成分を透過させる波長帯域をできるだけ広く取ることと、蛍光物質からの蛍光成分を反射する波長帯域をできるだけ広く取ることは、背反した要求となる。
【0030】
ところで、発明の概要の欄に於いても触れたように、本発明の発明者等の研究に於いて、DMの反射光波長帯域は、DMへの光線の入射角が大きくなるほど、短波長側にシフトし、そのシフト量は、媒質の屈折率が高いほど大きくなることが見出された。より詳細には、本発明の発明者等によるシミュレーションによれば、まず、図3に例示されている如く、DMへの光線の入射角を10゜から40゜へ増大させると、DMの反射光波長帯域が短波長側にシフトすることが明らかになった。また、かかるDMへの光線の入射角の増大に伴う反射光波長帯域の短波長側へのシフト量は、同図の上段と下段とを比較して理解されるように、入射光の伝播する媒質の屈折率が高いほど、大きくなることも見出された。そして、図3下段から理解される如く、媒質の屈折率が、蛍光導光板本体2の母材に使用される材料と同程度の屈折率と同程度の場合(例:屈折率n=1.47)、光線の入射角が10゜である場合に、DMの反射光波長帯域が、或る蛍光物質の蛍光波長帯域Ifを網羅するように設定されていても、光線の入射角が40゜までに変化すると、同じ蛍光物質の蛍光波長帯域IfがDMの(シフト後の)反射光波長帯域から大幅にはみ出てしまう場合も起き得ることが示された。即ち、図3下段の例のDMを蛍光導光板に適用した場合には、入射角が~20°程度までの蛍光光線は、DMで反射されるが、入射角が30°以上になる蛍光光線は、DMで透過してしまうことが理解される。更に、光線の入射角が比較的小さい場合のDMの反射光波長帯域が蛍光物質の蛍光波長帯域を網羅するように設定されていると、蛍光波長帯域に重複する帯域の照射光SLもDMにて反射され、板内へ透過できず、その分、蛍光の発光量が低減することとなる。
【0031】
また更に、蛍光導光板本体2内の蛍光物質FMから放出される蛍光光線FLについては、受光面2aの光線の入射角が小さいほど、縁面に到達するまでの損失が大きくなる。これは、図4に模式的に描かれている如く、照射光SLを吸収した蛍光物質FMから放射方向に放出される蛍光光線FLに於いて、受光面2aに到達するときの入射角θの小さい光線ほど、蛍光物質FMから放出されて縁面2cに到達するまでに受光面2aで反射される回数が大きくなるところ、光線が受光面2aで反射されるときに、その一部が受光面2aを透過して損失となるためである(図示の如く、入射角θ1(<θ2)の光線の方が、入射角θ2の光線よりも、縁面に到達するまでの反射回数が多いので、その分、損失が大きくなり得る。)。従って、蛍光導光板の受光面に於いてDMにより蛍光光線を反射して、板内に閉じ込める場合には、DMの反射光波長帯域を、受光面で入射角の比較的大きい光線がより確実に反射されて板内に戻されるように設定した方が縁面に到達する蛍光量が多くなる(入射角の小さい光線をDMで反射するようにしても、縁面に届くまでの反射回数が多いために、結局、損失が大きくなってしまう。)。
【0032】
本実施形態に於けるDMの反射光波長帯域の設定
上記の考察から、本実施形態に於いては、図5に例示されている如く、受光面に積層されるDMは、その垂直入射光線に対する反射光波長帯域(R_0゜)が蛍光物質の蛍光波長帯域よりも長波長側に位置するように、具体的には、垂直入射光線の反射光波長帯域の下限値(カットオフ波長λカットオフ)が蛍光波長帯域に於けるピーク波長λピークよりも長波長側に設定されるように調製される。かかる構成によれば、まず、板内2bの蛍光物質からの蛍光光線については、受光面に対する入射角が比較的大きい光線に対するDMの反射光波長帯域が、垂直入射光線の反射光波長帯域R_0゜よりも短波長側にシフトすることとなる。そうすると、DMの反射光波長帯域の蛍光物質からの蛍光光線の蛍光波長帯域Ifに重複する幅が増大し、或いは、図示のR~30゜の如く、DMの反射光波長帯域の蛍光波長帯域Ifを網羅することとなり、これにより、(縁面までの反射回数の少ない)受光面に対する入射角が比較的大きい光線がDMにて、より確実に反射され、板内に閉じ込められて、より多くの量の蛍光光線が、縁面まで到達できるようになる。一方、受光面に照射される照射光SLについては、通常、太陽光などは、受光面に対して、上方から、比較的小さい入射角にて到来するので、小さい入射角の光線に対するDMの反射光波長帯域が蛍光物質の蛍光波長帯域よりも長波長側に位置することで、蛍光波長帯域に重複した帯域の光も含めた広い波長帯域の照射光成分が板内へ進入し、蛍光物質の励起量を増大することができ、発生する蛍光量の増大が期待されることとなる。
【0033】
実施の形態に於いて、照射光の入射角は、例えば、太陽光などであれば、通常、0°~30°程度である。また、蛍光導光板内の蛍光光線が蛍光物質から放出されてから縁面に到達するまでの受光面での反射回数は、入射角10°の場合に比して、入射角30゜の場合は、約1/3になる。従って、蛍光光線の波長の光が、例えば、入射角30゜以上の場合に、DMにて反射され、入射角30゜未満の場合に、DMを透過するように、垂直入射光線の反射光波長帯域が調整されていてよい。
【0034】
蛍光導光板の用途
本実施形態の蛍光導光板は、太陽光などの照射光を、板内で蛍光に変換し、その蛍光を板の縁面に集光することにより、照射光のエネルギーを濃縮して回収することが可能となる。かくして、本実施形態の蛍光導光板は、太陽電池又は光電変換装置への光を供給に用いられてよい。
【0035】
また、本実施形態の蛍光導光板は、特許文献1~3に記載されている太陽光励起レーザー装置の蛍光導光板として利用可能である。本実施形態の蛍光導光板を利用した太陽光励起レーザー装置10に於いては、図6に描かれている如く、略円盤形状の蛍光導光板1に、その周囲の縁面上に於いて一条の光ファイバー3aから成る光ファイバー部3が巻装される(なお、説明の目的で、同図の各部の構造は、模式的に描かれており、実際の装置の寸法の割合は大幅に異なり得る。)。
【0036】
図6(A)~(C)の構成に於いて、より詳細には、蛍光導光板1は、図1にて説明されている如く、太陽光SLを受容する太陽光受容面2a(表面)、その裏面、太陽光受容面2aと裏面とを接続する縁面2cとにより画定され、内部に蛍光物質FMが分散された、外部の空間よりも光の屈折率が高い材料にて形成される。蛍光物質FMは、特に、太陽光を吸収して、後に説明する光ファイバー3aのコア部内にドープされたレーザー媒質の吸収波長帯域の蛍光を発する物質であってよい。なお、蛍光導光板2の寸法、太陽光受容面2aと縁面2cとの面積比は、後述の如き、レーザー発振の条件が充足されるように設計される。
【0037】
光ファイバー部3に於いて、光ファイバー3aは、ファイバーレーザーに利用可能な光ファイバーであり、好適には、図示の如く、一条の光ファイバー3aが蛍光導光板1の縁面2c上にて、蛍光導光板1の周方向に沿って、好適には、複数回、より好適には、密に(隣接する表面が互いに接するように)巻き付けられる(巻装される)。光ファイバー3aは、図6(D)に模式的に描かれている断面図にて示されている如く、レーザー媒質LMがドープされたガラス材料にて形成されコア部3cがその外周にてコア部3cよりも屈折率の低いガラス材料にて形成されたクラッド部により囲繞された構成を有し、光ファイバー3aの両端4、5に於いて、光ファイバー内を伝播する光(少なくともレーザー媒質が放出する光の波長帯域の成分)を反射する反射手段が設けられて、ファブリペロー共振器が構成されるようになっていてよい。反射手段には、ファイバーレーザーに於いて、通常使用されている方式、例えば、FBG(ファイバーブラッググレーティング)が採用されてよい。また、これらの反射手段の反射率について、レーザー光の出射端となる端部4に於いては、光ファイバー内を伝播する光の一部が透過するように調整される。具体的には、反射率は、全ての光を反射させるための端部5に於いては、99.999%(端部から励起光を入射させる必要がないので、励起光が透過するようになっている必要はない。)、レーザー光を取り出す側の端部4に於いては、98%などとなるように調整されてよい。更に、特に、本実施形態の太陽光励起レーザー装置10に於いては、蛍光導光板1の縁面2cから出射される蛍光を巻装された光ファイバー3aの外周の表面から進入させることとなるので、クラッド部の表面は、被覆がない状態とするか、被覆がされたとしても、その材料として蛍光導光板1内に分散された蛍光物質の蛍光の波長の光を透過させるものが採用される。クラッド部は、複数の層にて構成されていてもよい。太陽光励起レーザー装置10のその他の構成、条件、作動は、特許文献1~3と同様であってよい。
【0038】
以上の説明は、本発明の実施の形態に関連してなされているが、当業者にとつて多くの修正及び変更が容易に可能であり、本発明は、上記に例示された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の概念から逸脱することなく種々の装置に適用されることは明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6