IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -キャニスタ 図1
  • -キャニスタ 図2
  • -キャニスタ 図3
  • -キャニスタ 図4
  • -キャニスタ 図5
  • -キャニスタ 図6
  • -キャニスタ 図7
  • -キャニスタ 図8
  • -キャニスタ 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】キャニスタ
(51)【国際特許分類】
   F02M 25/08 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
F02M25/08 311E
F02M25/08 311C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021185793
(22)【出願日】2021-11-15
(65)【公開番号】P2023073006
(43)【公開日】2023-05-25
【審査請求日】2022-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岩本 光司
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第2003-0049631(KR,A)
【文献】特開2018-096254(JP,A)
【文献】特開2009-156030(JP,A)
【文献】特開2008-240683(JP,A)
【文献】特開昭63-246462(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0134151(US,A1)
【文献】特開2019-108880(JP,A)
【文献】特開2021-107704(JP,A)
【文献】特開平05-202818(JP,A)
【文献】特開2019-167899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを有する車両に搭載されるよう構成されたキャニスタであって、
燃料蒸気を吸着する吸着材が配置された少なくとも1つの室と、
前記車両の燃料タンクから、前記少なくとも1つの室に燃料蒸気を流入させるよう構成された流入ポートと、
前記車両の外部から、前記少なくとも1つの室に大気を流入させるよう構成された大気ポートと、
前記大気ポートから流入した前記大気により、前記吸着材に吸着した燃料蒸気を前記エンジンに向けて流出させるよう構成された流出ポートと、
前記少なくとも1つの室のいずれかである対象室に配置された樹脂部材と、を備え、
前記対象室に配置される前記吸着材は、複数の粒状部材として構成されており、
前記樹脂部材は、一体的に形成された樹脂製の部材であり、連結部と、少なくとも1つの棒状ユニットとを有し、
前記棒状ユニットは、前記対象室における気体の流れ方向に対し45°以上90°以下の角度で交差する伸長方向に、前記連結部から伸びる複数の棒状部を有し、
前記複数の棒状部は、先端に向かうに従い細くなるテーパ状に形成されていると共に、略平行に伸び、前記気体の流れ方向に沿って並ぶ複数の列を形成するように配置される
キャニスタ。
【請求項2】
請求項1に記載のキャニスタであって、
前記対象室は、当該対象室における気体の流れ方向に伸びる細長い形状である
キャニスタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のキャニスタであって、
前記複数の棒状部の少なくとも一部には、その外周面に少なくとも1つの凹部が形成されている
キャニスタ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載のキャニスタであって、
前記樹脂部材は、前記少なくとも1つの棒状ユニットとして、第1及び第2棒状ユニットを有し、
前記連結部は、第1部分と、前記第1部分の反対側に位置する第2部分とを有し、
前記第1棒状ユニットの前記複数の棒状部は、前記第1部分から、前記第1棒状ユニットに対応して定められた伸長方向に略平行に伸び、
前記第2棒状ユニットの前記複数の棒状部は、前記第2部分から、前記第2棒状ユニットに対応して定められた伸長方向に略平行に伸びる
キャニスタ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載のキャニスタであって、
前記複数の棒状部の前記伸長方向は、前記対象室における気体の流れ方向に対し、略90°の角度で交差する方向である
キャニスタ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のうちのいずれか1項に記載のキャニスタであって、
前記連結部は、前記気体の流れ方向に伸び、前記棒状部の根元に繋がる棒状の部位を有する
キャニスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料タンクから発生する燃料蒸気を吸着するキャニスタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のキャニスタでは、複数の棒状部と、複数の棒状部の根元を結合する結合部とを有する調整部材が配置された対象室が設けられる。複数の棒状部は、気体の流れ方向に略平行に伸び、間隔を空けて対象室全体に配置される。そして、対象室に配置された粒状の吸着材である活性炭のペレットと各棒状部との間に隙間が生じ、その結果、対象室の通気抵抗が抑制される。
【0003】
ここで、調整部材は、射出成形により樹脂から製造することが考えられる。そして、射出成形を行うためには、結合部から離間するに従い細くなるように各棒状部の外周面を傾斜させることで各棒状部の外周面に抜きテーパを形成し、金型から調整部材を取り出せるようにする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-96254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、複数の棒状部が長くなると、抜きテーパの形成の際、各棒状部の根元をより太くする必要があり、これにより、射出成形の際、複数の棒状部の根元周辺に熱が蓄積され易くなる。
【0006】
すなわち、一般的に、射出成形の金型の内部には、成形部材を冷却するための冷媒を流す冷却配管が設けられる。しかし、調整部材の棒状部同士の間隔は狭いため、調整部材の金型では、調整部材の周囲に冷却配管を設けることはできるが、各棒状部の間を通過するように冷却配管を配置するのは困難である。
【0007】
このため、抜きテーパにより太くなった各棒状部の根元周辺は、他の部分に比べて冷却され難くなる。その結果、複数の棒状部の根元周辺にて温度の偏りが生じ、これにより、棒状部に傾斜(以後、ソリとも記載)が生じる。このため、複数の棒状部が長くなると、調整部材の製造が困難となっていた。
【0008】
本開示の一態様では、キャニスタの製造を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様は、エンジンを有する車両に搭載されるよう構成されたキャニスタであって、少なくとも1つの室と、流入ポートと、大気ポートと、流出ポートと、樹脂部材と、を備える。少なくとも1つの室は、燃料蒸気を吸着する吸着材が配置される。流入ポートは、車両の燃料タンクから、少なくとも1つの室に燃料蒸気を流入させるよう構成される。大気ポートは、車両の外部から、少なくとも1つの室に大気を流入させるよう構成される。流出ポートは、大気ポートから流入した大気により、吸着材に吸着した燃料蒸気をエンジンに向けて流出させるよう構成される。樹脂部材は、少なくとも1つの室のいずれかである対象室に配置される。対象室に配置される吸着材は、複数の粒状部材として構成されている。樹脂部材は、一体的に形成された樹脂製の部材であり、連結部と、少なくとも1つの棒状ユニットとを有する。棒状ユニットは、対象室における気体の流れ方向に対し45°以上90°以下の角度で交差する伸長方向に略平行な方向に、連結部から伸びる複数の棒状部を有する。
【0010】
上記構成によれば、対象室の全域に複数の棒状部を配置しつつ、複数の棒状部が短くなるよう促すことができ、これにより、抜きテーパの形成により棒状部の根元が太くなるのを抑制できる。このため、樹脂部材の射出成形の際に棒状部にソリが発生するのを抑制でき、その結果、キャニスタの製造が容易になる。
【0011】
本開示の一態様では、対象室は、当該対象室における気体の流れ方向に伸びる細長い形状であってもよい。
上記構成によれば、より一層、複数の棒状部が短くなるよう促すことができ、これにより、抜きテーパの形成により棒状部の根元が太くなるのを抑制できる。このため、樹脂部材の射出成形の際に棒状部にソリが発生するのをより一層抑制できる。
【0012】
本開示の一態様では、複数の棒状部の少なくとも一部には、その外周面に少なくとも1つの凹部が形成されていてもよい。
上記構成によれば、棒状部に形成された凹部と、複数の粒状部材である吸着材との間に隙間が形成される。このため、キャニスタの通気抵抗を抑制できる。
【0013】
本開示の一態様では、樹脂部材は、少なくとも1つの棒状ユニットとして、第1及び第2棒状ユニットを有してもよい。連結部は、第1部分と、第2部分とを有してもよい。第2部分は、第1部分の反対側に位置する。第1棒状ユニットの複数の棒状部は、第1部分から、第1棒状ユニットに対応して定められた伸長方向に略平行に伸びてもよい。第2棒状ユニットの複数の棒状部は、第2部分から、第2棒状ユニットに対応して定められた伸長方向に略平行に伸びてもよい。
【0014】
上記構成によれば、射出成形の際、第1及び第2棒状ユニットを、連結部の両側に位置する別々の金型により形成できる。また、第1及び第2棒状ユニットの各々における複数の棒状部は、これらの棒状ユニットの間に位置する連結部から異なる伸長方向に伸びる。このため、対象室の全域に複数の棒状部を配置しつつ、より一層、各棒状ユニットの複数の棒状部が短くなるよう促すことができる。これにより、樹脂部材の射出成形の際に棒状部にソリが発生するのをより一層抑制できる。
【0015】
本開示の一態様では、複数の棒状部の伸長方向は、対象室における気体の流れ方向に対し、略90°の角度で交差する方向であってもよい。
上記構成によれば、より一層、複数の棒状部が短くなるよう促すことができ、これにより、抜きテーパの形成により棒状部の根元が太くなるのを抑制できる。このため、樹脂部材の射出成形の際に棒状部にソリが発生するのをより一層抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】キャニスタを側面視した際の断面図である。
図2】樹脂部材の正面図である。
図3】樹脂部材の側面図である。
図4】樹脂部材を第1端側から視た底面図である。
図5】凹部が形成された第1棒状部51の断面図である。
図6】凹部が形成された第1棒状部51の断面図である。
図7】樹脂部材の射出成型についての説明図である。
図8】変形例の樹脂部材の正面図である。
図9】変形例の樹脂部材の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本開示の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0018】
[1.キャニスタの構成]
第1実施形態のキャニスタ1は、車両に搭載される(図1参照)。以後、キャニスタ1が搭載された車両を、自車両と記載する。キャニスタ1は、第1~第3室20~40を備える合成樹脂製の容器10を有し、第1~第3室20~40には、それぞれ、燃料蒸気を吸着するための吸着材60~62が配置される。なお、キャニスタ1の室の数は、例えば、2以下、又は4以上であっても良い。
【0019】
第2室30の吸着材61は、粒状の活性炭であるペレットにより構成される。なお、第2室30の吸着材61は、ペレット以外の粒状の吸着材として構成されていても良い。また、第1、第3室20、40の吸着材60、62は、例えば、粉状の活性炭により構成されても良いし、ペレットにより構成されていても良い。また、第3室40の吸着材62は、一例として、ハニカムカーボンとして構成されていても良い。ハニカムカーボンは、円筒状の側壁を有し、気体の流れ方向に伸びた状態で第3室40に配置される。また、側壁の内側には、ハニカムカーボンを伸長方向に貫通する複数の流路が設けられる。また、第1~第3室20~40の吸着材60~62は、活性炭以外の材料から構成されていても良い。
【0020】
容器10の端部には、流入ポート11、流出ポート12、及び、大気ポート13が設けられている。流入ポート11及び流出ポート12は、第1室20の内部と容器10の外部とを繋ぎ、大気ポート13は、第3室40の内部と容器10の外部とを繋ぐ。
【0021】
以後、キャニスタ1の容器10における流入ポート11、流出ポート12、及び、大気ポート13が設けられた側を、ポート側と記載する。また、容器10は、ポート側の反対側に開口を有している。該開口は、蓋部材14により閉鎖されている。以後、ポート側の反対側(換言すれば、蓋部材14が設けられた側)を、蓋側と記載する。
【0022】
流入ポート11は、自車両のエンジンの燃料タンクに接続される。燃料タンクにて生じた燃料蒸気は、流入ポート11を介してキャニスタ1の内部に流入し、各室の吸着材60~62に吸着する。これにより、キャニスタ1の内部に燃料が蓄積される。
【0023】
また、流出ポート12は、自車両のエンジンの吸気管に接続されており、大気ポート13は、自車両の外部に繋がっている。そして、エンジンの吸気負圧により、大気ポート13を介して大気(換言すれば、パージエア)がキャニスタ1の内部に流入する。パージエアの流入により、吸着材60~62に吸着した燃料が脱離し、脱離した燃料は、パージエアと共に流出ポート12から吸気管に向けて流出する。これにより、吸着材60~62に吸着していた燃料を除去するパージが行われ、吸着材60~62が再生される。
【0024】
つまり、流入ポート11から流入した燃料蒸気、パージの際に流出ポート12から流出する燃料蒸気、及びパージの際に大気ポート13から流入するパージエアは、ポート側の端部と蓋側の端部とが対面する方向に沿って各室20~40を流れる。
【0025】
第1室20は、一例として略直方体形状であり、蓋側からポート側に伸びる細長い形状を有すると共に、ポート側の端部が、流入ポート11及び流出ポート12に繋がっている。また、第1室20のポート側の端部と蓋側の端部とには、それぞれ、フィルタ21、22が配置されており、フィルタ21、22の間には、吸着材60が配置されている。
【0026】
また、第1室20は、蓋側の端部が連通路15に繋がっている。連通路15は、蓋部材14に沿って設けられ、第1室20と第2室30とを繋ぐ。そして、第1室20の蓋側のフィルタ22と連通路15との間には、透過性を有する多孔板23が配置されており、多孔板23と蓋部材14との間には、コイルばね16が配置されている。コイルばね16は、多孔板23をポート側に向けて押し付けている。このため、キャニスタ1の内部では、流体は、連通路15を介して第1室20と第2室30とを往来できる。
【0027】
また、第2室30及び第3室40は、第1室20に隣接しており、蓋側からポート側に伸びる細長い形状を有する。一例として、第2室30及び/又は第3室40のL/Dは、1より大きくても良い。なお、Lとは、室における気体の流れ方向の長さを意味し、Dとは、室における気体の流れ方向に直交する断面の相当直径を意味する。また、第2及び第3室30、40は、端部が隣接した状態で、蓋側からポート側に並び、第2室30と第3室40とは、透過性を有する板状の仕切り部材18により隔てられている。このため、流体は、仕切り部材18を通過して、第2室30の内部空間と第3室40の内部空間とを往来できる。
【0028】
また、第2室30の蓋側の端部には、フィルタ31が配置されており、フィルタ31と仕切り部材18との間には、吸着材61が配置される。また、第3室40のポート側の端部には、フィルタ41が配置されており、フィルタ41と仕切り部材18との間には、吸着材62が配置される。
【0029】
また、第2室30の蓋側のフィルタ31と連通路15との間には、透過性を有する多孔板32が配置され、多孔板32と蓋部材14との間には、コイルばね17が配置される。コイルばね17は、多孔板32をポート側に向けて押し付けている。また、第3室40は、ポート側の端部が大気ポート13に繋がっている。
【0030】
[2.樹脂部材]
本実施形態では、一例として、第2室30が対象室として構成され、第2室30に樹脂部材5が配置される(図1参照)。なお、第1又は第3室20、40を、樹脂部材5が配置される対象室として構成しても良いし、第1~第3室20~40のうちの2つ以上を対象室として構成しても良い。なお、対象室には、例えばペレット等といった粒状の吸着材が配置される。
【0031】
樹脂部材5は、第1端5Aがポート側に位置し、第2端5Bが蓋側に位置するように第2室30に配置される(図2~4参照)。しかし、これとは反対に、樹脂部材5は、第2端5Bがポート側に位置し、第1端5Aが蓋側に位置するように第2室30に配置されても良い。
【0032】
樹脂部材5は、樹脂により一体的に構成されており、第1及び第2棒状ユニット50、52と、連結部54とを備える。
[3.第1及び第2棒状ユニット]
第1棒状ユニット50は、複数の第1棒状部51を有する(図2~4参照)。複数の第1棒状部51は、高いに間隔を空けて略平行に伸び、略同一の長さを有する細長い部位であり、連結部54の第1部分54Aから第1伸長方向51Aに伸びる。また、各第1棒状部51には抜きテーパが形成されており、先端に向かうに従い細くなる。また、各第1棒状部51は、一例として、伸長方向に直交する断面(以後、単に断面と記載)が略円形となっている。しかし、断面の形状は、適宜定められ得る。
【0033】
第2棒状ユニット52もまた、複数の第1棒状部51と同様に構成された複数の第2棒状部53を有する。複数の第2棒状部53は、複数の第1棒状部51と略同一の長さを有し、連結部54における第1部分54Aの反対側の第2部分54Bから、第2伸長方向53Aに伸びる。
【0034】
一例として、第1及び第2伸長方向51A、53Aは、第2室30における気体の流れ方向5Cに対し略90°で交差し、第1伸長方向51Aは、第2伸長方向53Aの反対方向となる。また、各第1棒状部51の根元は、いずれかの第2棒状部53の根元に隣接しており、各第1棒状部51と、該第1棒状部51と根元が隣接する第2棒状部53とは、連結部54を間に挟んで略一直線状に伸びる。
【0035】
つまり、第1及び第2棒状ユニット50、52は、略同一の形状を有しており、樹脂部材5は、連結部54を通過する面を中心に略面対称の形状を有する。
また、複数の第1及び第2棒状部51、53は、一例として、第1列~第3列5D~5Fを形成するように並び、第2室30の全域に配置される。なお、複数の第1及び第2棒状部51、53の列の数、及び、各列に並ぶ第1及び第2棒状部51、53の数は、樹脂部材5が配置される室の大きさに応じて適宜定められ得る。
【0036】
第2室30に配置された吸着材60は、粒状のペレットとして構成されている。このため、第2室30に複数の第1及び第2棒状部51、53(以後、単に棒状部とも記載)が配置されることで、各棒状部と吸着材60との間に隙間が形成される。これにより、第2室30の通気抵抗が抑制される。
【0037】
[4.連結部]
連結部54は、樹脂部材5の第1端5Aから第2端5Bにわたって設けられ、第2室30における気体の流れ方向5Cに伸びる(図2~4参照)。連結部54は、樹脂部材5における第1及び第2伸長方向51A、53Aの略中央に位置し、複数の第1及び第2棒状部51、53の根元を連結する。なお、本実施形態の樹脂部材5では、一例として、複数の棒状部51、53は、連結部54により連結されており、他の構成要素によっては連結されていないという点を念のため付言しておく。連結部54は、本体部55と、複数の第1及び第2枝部56、57と、2つの扁平部58とを有する(図3、4参照)。
【0038】
本体部55は、気体の流れ方向5Cに沿って略直線状に伸びる棒状の部位である。本体部55は、第2列5Eの複数の第1及び第2棒状部51、53の各々の根元を連結する。
複数の第1枝部56は、それぞれ、第2列5Eの各棒状部の根元から、第1列5Dに向かって突出するように設けられる。各第1枝部56は、第2列5Eの各棒状部の根元を、該棒状部よりも第2端5B側に位置し、最も近接する第1列5Dの棒状部の根元と連結する。
【0039】
複数の第2枝部57は、それぞれ、第2列5Eの各棒状部の根元から、第3列5Fに向かって突出するように設けられる。各第2枝部57は、第2列5Eの各棒状部の根元を、該棒状部よりも第2端5B側に位置し、最も近接する第3列5Fの棒状部の根元と連結する。
【0040】
扁平部58は、第1列5Dと第3列5Fとに設けられる。第1列5Dの扁平部58は、第1列5Dにおける第1端5Aから並ぶ3つの棒状部の根元を互いに連結する。また、第3列5Fの扁平部58は、第3列5Fにおける第1端5Aから並ぶ3つの棒状部の根元を互いに連結する。
【0041】
また、各扁平部58は、気体の流れ方向5Cに略平行であると共に、第1及び第2伸長方向51A、53Aに略直交するように広がる扁平な形状を有し、第2室30の内壁に向かって突出して該内壁に当接する。これにより、第1列5D及び第3列5Fの複数の棒状部と第2室30の内壁との間に、隙間が形成される。
【0042】
[5.凹部]
第1及び/又は第2棒状ユニット50、52における複数の棒状部の少なくとも一部では、外周面に凹部59が形成されていても良い(図5、6参照)。具体的には、例えば、凹部59は、棒状部の根元又はその付近から先端又はその付近まで、棒状部の伸長方向と略平行に伸びる溝状の部位として形成されていても良い。一例として、略等間隔で4つの凹部59を設け、棒状部の断面をX状に形成しても良い(図5参照)。また、例えば、略等間隔で5つの凹部59を設け、棒状部の断面を星型に形成しても良い(図6参照)。
【0043】
無論、これに限らず、凹部59は、伸長方向とは異なる方向に伸びる溝状の部位として形成されていても良い。また、凹部59は、溝状に限らず、例えば、棒状部の外周面における複数の点状の領域に形成されていても良い。
【0044】
また、第1及び/又は棒状第2ユニット50、52における複数の棒状部は、断面の形状が異なる複数の種類の棒状部を含んでいても良いし、少なくとも1つの特定棒状部を含んでいても良い。なお、特定棒状部は、当該特定棒状部の伸長方向に並んでおり、断面の形状が異なる複数の区間を有する。
【0045】
[6.樹脂部材の製造方法]
樹脂部材5は、第1及び第2金型7A、7Bを用いて射出成形により製造される(図7参照)。第1金型7Aは、第1棒状ユニット50(換言すれば、複数の第1棒状部51)、及び、連結部54の第1部分54Aを形成するよう構成されている。また、第2金型7Bは、第2棒状ユニット52(換言すれば、複数の第2棒状部53)、及び、連結部54の第2部分54Bを形成するよう構成されている。
【0046】
第1金型7Aは、凹部70と、複数の穴部71と、当接面72と、冷却配管73とを備える。
凹部70は、連結部54の第1部分54Aを形成するための部位であり、当接面72に設けられる。
【0047】
複数の穴部71は、複数の第1棒状部51を形成するため円柱状の部位であり、凹部70の底部に設けられる。なお、各第1棒状部51に抜きテーパを形成するため、各穴部71は、当該穴部71の底側に向かうに従い径が狭くなっている。
【0048】
冷却配管73は、射出成型の際、凹部70及び複数の穴部71に充填された樹脂を冷却するための冷却液を流すための部位である。冷却配管73は、複数の第1棒状部51の周辺を通過するように配置される。しかし、冷却配管73は、複数の第1棒状部51の間は通過しない。
【0049】
また、第2金型7Bは、第1金型7Aと同様の構成を有しており、凹部70と、複数の穴部71と、当接面72と、冷却配管73とを備える。
樹脂部材5を製造する際には、当接面72同士が当接するように第1及び第2金型7A、7Bを配置する。このとき、第1金型7Aの凹部70及び複数の穴部71と、第2金型7Bの凹部70及び複数の穴部71とは、当接面72を中心に略面対称となる。
【0050】
次に、第1及び第2金型7A、7Bの凹部70及び複数の穴部71により形成される空間に、高温の樹脂を充填する。そして、冷却配管73に冷却液を流すことで充填された樹脂を冷却し、該樹脂を硬化させる。
【0051】
樹脂の硬化が終了すると、第1及び第2金型7A、7Bを離間させ、第1及び第2金型7A、7Bの内部から樹脂部材5を取り出す。
なお、第1金型7Aを複数の金型により構成し、射出成形の際、第1棒状ユニット50、及び、連結部54の第1部分54Aを、これらの金型により形成しても良い。同様に、第2金型7Bもまた、複数の金型により構成しても良い。
【0052】
[7.変形例]
本実施形態では、第1棒状部51における第1伸長方向51Aと、気体の流れ方向5Cとが交差する角度(以後、第1交差角度)は、略90°となっている。また、第2棒状部53における第2伸長方向53Aと、気体の流れ方向5Cとが交差する角度(以後、第2交差角度)もまた、略90°となっている(図2参照)。
【0053】
しかし、第1及び第2交差角度は、略90°に限らず、45°以上90°以下の範囲で定められ得る。なお、第1及び第2棒状部51、53の先端は、図8に示すように、根元よりも第2端5B側に位置していても良いし、図9に示すように、第1端5A側に位置していても良い。どちらのケースにおいても、第1及び第2交差角度は、略90°に限らず、45°以上90°以下の範囲で定められ得る。また、第1及び第2交差角度は、略同一の値であっても良いし、異なる値であっても良い。
【0054】
なお、第1及び第2交差角度は略90°とは異なる値である場合や、第1及び第2交差角度が異なる場合であっても、本実施形態と同様にして、射出成型により樹脂部材5が製造される。
【0055】
[8.効果]
(1)上記実施形態によれば、第2室30の全域に複数の棒状部を配置しつつ、複数の棒状部が短くなるよう促すことができる。このため、抜きテーパの形成により棒状部の根元が太くなるのを抑制でき、射出成形の際に棒状部の根元周辺に熱が蓄積されるのを抑制できる。これにより、棒状部にソリが発生するのを抑制でき、その結果、キャニスタ1の製造が容易になる。
【0056】
また、棒状部のソリを抑制することで、樹脂部材5の寸法の精度が向上する。また、仮に棒状部にソリが生じたとしても、棒状部を短くすることで、ソリによる寸法のずれを抑制できる。また、複数の棒状部を短くすることで、射出成形により樹脂部材5を製造する際の射出ストロークを低減でき、より短いサイクルで射出成形を行うことができる。また、棒状部の根元が太くなるのを抑制することで、樹脂部材5の製造に必要な樹脂の量を低減でき、キャニスタ1を軽量化できると共に、コストを抑制できる。
【0057】
(2)また、樹脂部材5は、細長い形状の第2室30に配置されているため、より一層、複数の棒状部が短くなるよう促すことができる。これにより、抜きテーパの形成により棒状部の根元が太くなるのを抑制でき、その結果、樹脂部材5の射出成形の際に棒状部にソリが発生するのをより一層抑制できる。
【0058】
(3)また、複数の棒状部に凹部59を形成することで、凹部59と吸着材であるペレットとの間に隙間が形成される。このため、キャニスタ1の通気抵抗を抑制できる。
(4)また、射出成形の際、第1及び第2棒状ユニット50、52を、それぞれ、連結部54の両側に位置する第1及び第2金型7A、7Bにより形成できる。また、第1棒状ユニット50における複数の第1棒状部51と、第2棒状ユニット52における複数の第2棒状部53とは、反対方向に伸びる。このため、第2室30の全域に複数の棒状部を配置しつつ、より一層、各棒状部が短くなるよう促すことができる。これにより、樹脂部材5の射出成形の際に棒状部にソリが発生するのをより一層抑制できる。
【0059】
[9.他の実施形態]
(1)上記実施形態の樹脂部材5は、第1及び第2棒状ユニット50、52を備えているが、第1棒状ユニット50のみを備える構成としても良い。つまり、連結部54の第1部分54Aのみに、複数の第1棒状部51が設けられても良い。そして、複数の第1棒状部51の長さを調整し、連結部54と、各第1棒状部51の先端とが第2室30の内壁又はその付近に位置するように、樹脂部材5を室に配置しても良い。また、上記実施形態の樹脂部材5の第1及び/又は第2部分54A、54Bに複数の棒状ユニットを設けることで、樹脂部材5に3つ以上の棒状ユニットを設けても良い。
【0060】
(2)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…キャニスタ、20~40…第1~第3室、5…樹脂部材、5A…第1端、5B…第2端、5C…気体の流れ方向、50…第1棒状ユニット、51…第1棒状部、51A…第1伸長方向、52…第2棒状ユニット、53…第2棒状部、53A…第2伸長方向、54…連結部、54A…第1部分、54B…第2部分、59…凹部、60~62…吸着材、7A…第1金型、7B…第2金型。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9