IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソレント・セラピューティクス・インコーポレイテッドの特許一覧

特許7586819不適応性疼痛の処置のためのレシニフェラトキシンの神経周囲投与
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】不適応性疼痛の処置のためのレシニフェラトキシンの神経周囲投与
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/357 20060101AFI20241112BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20241112BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20241112BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
A61K31/357
A61K9/08
A61K47/02
A61K47/10
A61K47/26
A61K47/34
A61P25/04
【請求項の数】 38
(21)【出願番号】P 2021535038
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(86)【国際出願番号】 US2019068030
(87)【国際公開番号】W WO2020132553
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-19
(31)【優先権主張番号】62/784,212
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514291864
【氏名又は名称】ソレント・セラピューティクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Sorrento Therapeutics, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ナハマ, アレクシス
【審査官】今村 明子
(56)【参考文献】
【文献】特許第5775246(JP,C1)
【文献】特表2006-522815(JP,A)
【文献】特表2017-513864(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/222385(US,A1)
【文献】国際公開第2017/087803(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/036876(US,A1)
【文献】国際公開第2008/109026(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/215575(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 47/00-47/69
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不適応性疼痛を処置する方法における使用のための、レシニフェラトキシン(RTX)を含む組成物であって、前記方法が、不適応性疼痛の処置を必要とする対象の末梢神経末端と細胞体との間の神経線維に前記組成物を末梢神経周囲投与するステップを含む、組成物。
【請求項2】
前記方法が、0.1μg~100μgの用量のRTXを投与するステップを含む、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
前記RTXの用量が、0.1~1μg、1~2μg、2~5μg、5~10μg、10~20μg、20~30μg、30~40μg、40~50μg、50~60μg、60~70μg、70~80μg、80~90μg、または90~100μgの範囲である、請求項2に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
前記組成物が、単一部位、複数部位、坐骨神経、伏在神経、大腿神経、橈骨神経、尺骨神経、正中神経、筋皮神経、および/または掌側指神経に神経周囲投与される、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
前記組成物が、1つまたは複数の指、足もしくは手、前肢、肢、および/または関節からの感覚入力に集合的に対応する複数部位に神経周囲投与される、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
前記対象が、切断手術を受けた者である、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
神経周囲投与が、切断部位の下流の1つまたは複数の神経線維を標的とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
前記対象が、幻肢痛または断端痛に罹患している、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
神経周囲投与が、切断部位の下流の少なくとも2つ、3つ、4つの、または5つの神経線維を標的とする、請求項6から8のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
前記対象が、神経末端において異常神経成長を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
神経周囲投与が、その末梢端に異常成長を伴う神経の下流の1つまたは複数の神経線維を標的とする、請求項10に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
神経周囲投与が、神経腫の下流の1つまたは複数の神経線維を標的とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項13】
前記方法が、前記RTXおよび薬学的に許容される担体を含む医薬製剤を投与するステップを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項14】
前記薬学的に許容される担体が、水を含む、請求項13に記載の使用のための組成物。
【請求項15】
前記薬学的に許容される担体が、ポリソルベート(登録商標)80を含む、請求項13または14に記載の使用のための組成物。
【請求項16】
前記薬学的に許容される担体が、ポリエチレングリコールを含む、請求項13から15のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項17】
前記薬学的に許容される担体が、糖または糖アルコールを含む、請求項13から16のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項18】
前記薬学的に許容される担体が、マンニトールを含む、請求項17に記載の使用のための組成物。
【請求項19】
前記薬学的に許容される担体が、デキストロースを含む、請求項17または18に記載の使用のための組成物。
【請求項20】
前記薬学的に許容される担体が、薬学的に許容される緩衝液を含む、請求項13から19のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項21】
前記薬学的に許容される担体が、リン酸緩衝液を含む、請求項20に記載の使用のための組成物。
【請求項22】
前記医薬製剤が、6~7.6の範囲のpHを有する、請求項13から21のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項23】
前記医薬製剤が、6~6.4、6.3~6.7、6.4~6.8、6.8~7.2、7~7.4、または7.2~7.6の範囲のpHを有する、請求項22に記載の使用のための組成物。
【請求項24】
前記医薬製剤が、6.5または7.2のpHを有する、請求項22に記載の使用のための組成物。
【請求項25】
前記薬学的に許容される担体が、薬学的に許容される塩を含む、請求項13から24のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項26】
前記薬学的に許容される塩が、NaClである、請求項25に記載の使用のための組成物。
【請求項27】
前記医薬製剤におけるRTXの濃度が、0.02~0.1μg/mlまたは0.1~300μg/mlの範囲である、請求項13から26のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項28】
前記医薬製剤におけるRTXの濃度が、0.02~0.1μg/ml、0.1~1μg/ml、1~5μg/ml、5~10μg/ml、10~20μg/ml、20~50μg/ml、50~100μg/ml、100~150μg/ml、150~200μg/ml、200~250μg/ml、または250~300μg/mlの範囲である、請求項27に記載の使用のための組成物。
【請求項29】
前記医薬製剤におけるRTXの濃度が、150~250μg/mlの範囲であるか、または約200μg/mlである、請求項27または28に記載の使用のための組成物。
【請求項30】
前記医薬製剤におけるRTXの濃度が、0.1~200μg/mlの範囲である、請求項27または28に記載の使用のための組成物。
【請求項31】
前記医薬製剤におけるRTXの濃度が、0.1~50μg/mlの範囲である、請求項30に記載の使用のための組成物。
【請求項32】
前記組成物が、0.05~10mlの注射体積で投与される、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項33】
前記注射体積が、0.05~0.2ml、0.2~0.5ml、0.5~1ml、1~2ml、2~5ml、または5~10mlの範囲である、請求項32に記載の使用のための組成物。
【請求項34】
前記対象が、哺乳動物である、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項35】
前記対象が、ネコ、イヌ、ウマ、ブタ、反芻動物、ウシ、ヒツジ、ヤギ、または家畜化哺乳動物である、請求項3に記載の使用のための組成物。
【請求項36】
前記対象が、ヒトである、請求項3に記載の使用のための組成物。
【請求項37】
前記処置が、前記不適応性疼痛の局所および中枢効果を低減する、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項38】
前記対象が、処置の前に不適応性疼痛の1つまたは複数の行動症状を有しており、前記処置が、前記1つまたは複数の行動症状を低減または排除する、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2018年12月21日出願の米国仮特許出願第62/784,212号の優先権の利益を主張し、その出願はあらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、レシニフェラトキシン(RTX)を神経周囲投与するステップを含む、不適応性疼痛を処置する方法、およびこのような方法において使用するためのレシニフェラトキシンを提供する。
【背景技術】
【0003】
I.導入および概要
RTXは、赤トウガラシの辛味主成分であるカプサイシンの非常に強力なアナログとして作用する。RTXは、ユーフォルビア(Eurphorbia)のある特定種から単離された三環式ジテルペンである。ホモバニリル基は、カプサイシンの重要な構造的特色であり、レシニフェラトキシンを典型的なホルボール関連化合物と区別する、最も顕著な特色である。天然RTXは、以下の構造を有する。
【化1】
【0004】
RTXおよびアナログ化合物、例えばチニアトキシンおよび他の化合物(ジテルペンの20-ホモバニリルエステル、例えば12-デオキシホルボール13-フェニルアセテート20-ホモバニレートおよびメゼレイン20-ホモバニレート)は、米国特許第4,939,194号、同第5,021,450号および同第5,232,684号に記載されている。他のレシニフェラトキシン型ホルボイドバニロイドも特定されている(Szallasi et al. (1999) Brit. J. Pharmacol. 128:428-434)。
【0005】
RTXは、TrpV1アゴニストとして公知である。一過性の受容体電位カチオンチャネルサブファミリーVメンバー1であるTrpV1(バニロイド受容体-1(VR1)としても公知)は、侵害受容一次求心性ニューロンにおいて顕著に発現される多量体のカチオンチャネルである(Caterina et al. (1997) Nature 389:816-824;Tominaga et al. (1998) Neuron 21:531-543)。TrpV1の活性化は、典型的には、疼痛性熱の適用によって神経末端において生じ、ある特定のタイプの炎症性刺激中に上方調節される。化学的アゴニストによる末梢組織におけるTrpV1の活性化は、カルシウムチャネルの開口および疼痛感覚の伝達をもたらす(Szalllasi et al. (1999) Mol. Pharmacol. 56:581-587)。しかし、TrpV1を発現するニューロンの細胞体(神経節)への、ある特定のTrpV1アゴニストの直接的な適用は、カルシウムチャネルを開口させ、プログラム細胞死(「アポトーシス」)に至る事象のカスケードを誘発する(Karai et al. (2004) J. of Clin. Invest. 113:1344-1352)。
不適応性疼痛は、治癒にもかかわらず生じ、存在している傷害または他の外部疼痛源には相関しない疼痛である。不適応性疼痛には、それに限定されるものではないが、切断手術を受けた者において生じる疼痛、例えば幻肢痛または断端痛が含まれ、ここでは、治癒プロセス中のニューロンの誤形成が、不適切なニューロンの接続および求心性侵害受容ニューロンの望ましくない活性をもたらし得る。幻肢症候群において経験される疼痛は、不適応性疼痛の一例である。より一般的には、不適応性疼痛は、例えば慢性または持続性求心性侵害受容ニューロン活性後に不適切な量の疼痛が生じ、中枢神経系における疼痛モジュレーション機序が関与する、任意の慢性状態において生じ得る。
不適応性疼痛の処置は、困難なことがある。鎮痛薬の全身投与は、副作用および/または依存性/嗜癖に関する問題に起因して、長期的には望ましくない。一方、侵害受容神経末端の部位における疼痛抑制物質の直接的な投与は、望ましくなく高い用量および/または頻繁な投薬を必要とするおそれがある。さらに、髄腔内および硬膜外投与は、脊髄に近接しているのでリスクがより高い。それにもかかわらず、既存の論文は、不適応性疼痛、例えば幻肢痛における後根神経節および中枢神経系の活性を暗示している。例えば、Subedi et al., Pain Res. Treatment (2011) 2011:864605, 8 pages(幻肢痛の機序における、皮質再構築を伴う中枢神経変化の関与を論じている)、Borkum, J. Rat-Emo. Cognitive-Behav. Ther. (2010) 28:4-24(慢性疼痛における不適応認知の役割を論じている)を参照されたい。現在では、不適応性疼痛の発生は末梢において惹起されるが、中枢神経系において感作をもたらし、その時点でその感作が、末梢治療の成功が期待されない根強い問題になっていると考えられている。したがって、現在の考えでは、後根神経節または中枢神経系を処置せずに後根神経節に対して末梢に位置する神経系の要素に焦点を合わせた処置は、後根神経節または中枢神経系を標的とする処置よりも有効性が低いまたは少ない場合があるという予測に至っている。したがって、当技術分野では、不適応性疼痛の処置において使用するための改善された方法および組成物を開発する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第4,939,194号明細書
【文献】米国特許第5,021,450号明細書
【文献】米国特許第5,232,684号明細書
【非特許文献】
【0007】
【文献】Szallasi et al. (1999) Brit. J. Pharmacol. 128:428-434
【文献】Caterina et al. (1997) Nature 389:816-824
【文献】Tominaga et al. (1998) Neuron 21:531-543
【文献】Szalllasi et al. (1999) Mol. Pharmacol. 56:581-587
【文献】Karai et al. (2004) J. of Clin. Invest. 113:1344-1352
【文献】Subedi et al., Pain Res. Treatment (2011) 2011:864605
【文献】Borkum, J. Rat-Emo. Cognitive-Behav. Ther. (2010) 28:4-24
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、この必要性を満たし、かつ/または他の利益を提供することを目的とする。本明細書では、不適応性疼痛の処置のためにそれを必要とする対象にRTXを神経周囲投与する方法が提供される。本開示は、不適応性疼痛を処置するためのRTXの神経周囲投与が、例えば関節腔において侵害受容神経末端を標的にする処置よりも低用量および/または低頻度の投薬で有効な疼痛緩和を提供することができると同時に、脊髄近傍への投与と関連するリスクを回避することもできるという認識に部分的に基づく。神経周囲投与は、神経末端から下流であるが、細胞体(例えば、後根神経節における感覚ニューロン細胞体)の上流の神経線維(軸索)を標的にする。
【0009】
したがって、以下の例示的な実施形態が提供される。実施形態1は、不適応性疼痛を処置する方法であって、不適応性疼痛の処置を必要とする対象にレシニフェラトキシン(RTX)を末梢神経周囲投与するステップを含む方法である。
【0010】
実施形態2は、不適応性疼痛を処置する方法における使用のための、レシニフェラトキシン(RTX)を含む組成物であって、方法が、不適応性疼痛の処置を必要とする対象にRTXを末梢神経周囲投与するステップを含む、組成物である。
【0011】
実施形態3は、方法が、0.1μg~100μgの用量のRTXを投与するステップを含む、実施形態1または2に記載の使用のための方法または組成物である。実施形態4は、RTXの用量が、0.1~1μg、1~2μg、2~5μg、5~10μg、10~20μg、20~30μg、30~40μg、40~50μg、50~60μg、60~70μg、70~80μg、80~90μg、または90~100μgの範囲である、実施形態3に記載の使用のための方法または組成物である。
【0012】
実施形態5は、RTXが、単一部位に神経周囲投与される、前述の実施形態のいずれか1つに記載の使用のための方法または組成物である。実施形態6は、RTXが、複数部位に神経周囲投与される、前述の実施形態のいずれか1つに記載の使用のための方法または組成物である。
【0013】
実施形態7は、RTXが、坐骨神経に神経周囲投与される、前述の実施形態のいずれか1つに記載の使用のための方法または組成物である。実施形態8は、RTXが、伏在神経に神経周囲投与される、前述の実施形態のいずれか1つに記載の使用のための方法または組成物である。実施形態9は、RTXが、大腿神経に神経周囲投与される、前述の実施形態のいずれか1つに記載の使用のための方法または組成物である。実施形態10は、RTXが、橈骨神経に神経周囲投与される、前述の実施形態のいずれか1つに記載の使用のための方法または組成物である。実施形態11は、RTXが、尺骨神経に神経周囲投与される、前述の実施形態のいずれか1つに記載の使用のための方法または組成物である。実施形態12は、RTXが、正中神経に神経周囲投与される、前述の実施形態のいずれか1つに記載の使用のための方法または組成物である。実施形態13は、RTXが、筋皮神経に神経周囲投与される、前述の実施形態のいずれか1つに記載の使用のための方法または組成物である。実施形態14は、RTXが、掌側指神経に神経周囲投与される、前述の実施形態のいずれか1つに記載の使用のための方法または組成物である。
【0014】
実施形態15は、RTXが、1つまたは複数の指からの感覚入力に集合的に対応する複数部位に神経周囲投与される、前述の実施形態のいずれか1つに記載の使用のための方法または組成物である。実施形態16は、RTXが、足または手からの感覚入力に集合的に対応する複数部位に神経周囲投与される、前述の実施形態のいずれか1つに記載の使用のための方法または組成物である。実施形態17は、RTXが、前肢からの感覚入力に集合的に対応する複数部位に神経周囲投与される、前述の実施形態のいずれか1つに記載の使用のための方法または組成物である。実施形態18は、RTXが、肢からの感覚入力に集合的に対応する複数部位に神経周囲投与される、前述の実施形態のいずれか1つに記載の使用のための方法または組成物である。実施形態19は、RTXが、関節からの感覚入力に集合的に対応する複数部位に神経周囲投与される、前述の実施形態のいずれか1つに記載の使用のための方法または組成物である。
【0015】
実施形態20は、対象が、切断手術を受けた者である、前述の実施形態のいずれか1つに記載の使用のための方法または組成物である。実施形態21は、神経周囲投与が、切断部位の下流の1つまたは複数の神経線維を標的とする、前述の実施形態のいずれか1つに記載の使用のための方法または組成物である。実施形態22は、対象が、幻肢痛または断端痛に罹患している、前述の実施形態のいずれか1つに記載の使用のための方法または組成物である。実施形態23は、神経周囲投与が、切断部位の下流の少なくとも2つ、3つ、4つ、または5つの神経線維を標的とする、実施形態20~22のいずれか1つに記載の使用のための方法または組成物である。
【0016】
実施形態24は、対象が、神経末端において異常神経成長を有する、前述の実施形態のいずれか1つに記載の使用のための方法または組成物である。実施形態25は、神経周囲投与が、その末梢端に異常成長を伴う神経の下流の1つまたは複数の神経線維を標的とする、実施形態24に記載の使用のための方法または組成物である。実施形態26は、神経周囲投与が、神経腫の下流の1つまたは複数の神経線維を標的とする、前述の実施形態のいずれか1つに記載の使用のための方法または組成物である。
【0017】
実施形態27は、前述の実施形態のいずれか1つに記載の使用のための方法または組成物であって、方法が、RTXおよび薬学的に許容される担体を含む医薬製剤を投与するステップを含む、方法または組成物である。実施形態28は、薬学的に許容される担体が、水を含む、実施形態27に記載の使用のための方法または組成物である。実施形態29は、薬学的に許容される担体が、ポリソルベート(登録商標)80を含む、実施形態27または28に記載の使用のための方法または組成物である。実施形態30は、薬学的に許容される担体が、ポリエチレングリコールを含む、実施形態27~29のいずれか1つに記載の使用のための方法または組成物である。実施形態31は、薬学的に許容される担体が、糖または糖アルコールを含む、実施形態27~30のいずれか1つに記載の使用のための方法または組成物である。実施形態32は、薬学的に許容される担体が、マンニトールを含む、実施形態31に記載の使用のための方法または組成物である。実施形態33は、薬学的に許容される担体が、デキストロースを含む、実施形態31または32に記載の使用のための方法または組成物である。実施形態34は、薬学的に許容される担体が、薬学的に許容される緩衝液を含む、実施形態27~33のいずれか1つに記載の使用のための方法または組成物である。実施形態35は、薬学的に許容される担体が、リン酸緩衝液を含む、実施形態34に記載の使用のための方法または組成物である。実施形態36は、医薬製剤が、6~7.6の範囲のpHを有する、実施形態27~35のいずれか1つに記載の使用のための方法または組成物である。実施形態37は、医薬製剤が、6~6.4、6.3~6.7、6.4~6.8、6.8~7.2、7~7.4、または7.2~7.6の範囲のpHを有する、実施形態36に記載の使用のための方法または組成物である。実施形態38は、医薬製剤が、6.5または7.2のpHを有する、実施形態36に記載の使用のための方法または組成物である。実施形態39は、薬学的に許容される担体が、薬学的に許容される塩を含む、実施形態27~38のいずれか1つに記載の使用のための方法または組成物である。実施形態40は、薬学的に許容される塩が、NaClである、実施形態39に記載の使用のための方法または組成物である。実施形態41は、医薬製剤におけるRTXの濃度が、0.02~0.1μg/mlまたは0.1~300μg/mlの範囲である、実施形態27~40のいずれか1つに記載の使用のための方法または組成物である。実施形態42は、医薬製剤におけるRTXの濃度が、0.02~0.1μg/ml、0.1~1μg/ml、1~5μg/ml、5~10μg/ml、10~20μg/ml、20~50μg/ml、50~100μg/ml、100~150μg/ml、150~200μg/ml、200~250μg/ml、または250~300μg/mlの範囲である、実施形態41に記載の使用のための方法または組成物である。実施形態43は、医薬製剤におけるRTXの濃度が、150~250μg/mlの範囲であるか、または約200μg/mlである、実施形態41または42に記載の使用のための方法または組成物である。実施形態43.1は、医薬製剤におけるRTXの濃度が、0.1~200μg/mlの範囲であり、必要に応じて医薬製剤におけるRTXの濃度が、0.1~50μg/mlの範囲である、実施形態41または42に記載の使用のための方法または組成物である。実施形態43.2は、RTXが、0.05~10mlの注射体積で投与され、必要に応じて注射体積が、0.05~0.2ml、0.2~0.5ml、0.5~1ml、1~2ml、2~5ml、または5~10mlの範囲である、前述の実施形態のいずれか1つに記載の使用のための方法または組成物である。
【0018】
実施形態44は、対象が、哺乳動物である、前述の実施形態のいずれか1つに記載の使用のための方法または組成物である。実施形態45は、対象が、ネコである、実施形態44に記載の使用のための方法または組成物である。実施形態46は、対象が、イヌである、実施形態44に記載の使用のための方法または組成物である。実施形態47は、対象が、ウマまたはブタである、実施形態44に記載の使用のための方法または組成物である。実施形態48は、哺乳動物が、反芻動物である、実施形態44に記載の使用のための方法または組成物である。実施形態49は、反芻動物が、ウシ、ヒツジ、またはヤギである、実施形態48に記載の使用のための方法または組成物である。実施形態50は、哺乳動物が、家畜化哺乳動物である、実施形態44~49のいずれか1つに記載の使用のための方法または組成物である。
【0019】
実施形態51は、対象が、ヒトである、実施形態44に記載の使用のための方法または組成物である。
【0020】
実施形態52は、処置が、不適応性疼痛の局所および中枢効果を低減する、前述の実施形態のいずれか1つに記載の使用のための方法または組成物である。実施形態53は、対象が、処置の前に不適応性疼痛の1つまたは複数の行動症状を有しており、処置が、1つまたは複数の行動症状を低減または排除する、前述の実施形態のいずれか1つに記載の使用のための方法または組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
II.詳細な説明
ここで、本発明のある特定の実施形態に詳細に言及し、その例を添付の図に例示する。本発明は、例示される実施形態と共に記載されるが、例示される実施形態は、本発明をそれらの実施形態に限定することを企図しないことが理解されよう。それとは対照的に、本発明は、あらゆる代替形態、改変形態、および等価形態を網羅することが企図され、それらは添付の特許請求の範囲によって定義される通り、本発明に含まれ得る。
【0022】
本発明の教示を詳細に記載する前に、本開示は、具体的な組成物またはプロセスステップに限定されず、したがって変わり得ると理解されるべきである。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、状況によって別段明示されない限り、複数の参照物を含むことに留意すべきである。したがって、例えば「1つのコンジュゲート」への言及は、複数のコンジュゲートを含み、「1個の細胞」への言及は、複数の細胞などを含む。
【0023】
数値範囲は、その範囲を規定する数の両端を含む。測定された測定可能な値は、有効桁およびその測定と関連する誤差を考慮して近似であると理解される。また、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含有する(contain)」、「含有する(contains)」、「含有する(containing)」、「含む(include)」、「含む(includes)」、および「含む(including)」の使用は、制限することを企図されない。前述の概要および詳細な説明は、共に、単に例示的および説明的であり、本発明の教示を制限しないと理解されるべきである。
【0024】
前述の明細書において具体的に記載されない限り、様々な構成成分を「含む(comprising)」ものとして列挙している本明細書の実施形態は、列挙された構成成分「からなる(consisting of)」または「から本質的になる(consisting essentially of)」ことも意図され、様々な構成成分「からなる(consisting of)」ものとして列挙している本明細書の実施形態は、列挙された構成成分を「含む(comprising)」またはそれ「から本質的になる(consisting essentially of)」ことも意図され、様々な構成成分「から本質的になる(consisting essentially of)」ものとして列挙している本明細書の実施形態は、列挙された構成成分「からなる(consisting of)」またはそれを「含む(comprising)」ことも意図される(この互換性は、特許請求の範囲におけるこれらの用語の使用には適用されない)。
【0025】
本明細書で使用されるセクションの見出しは、単に構成目的のものであり、いかなる方式でも望ましい主題を制限するものと解釈されるべきではない。参照により組み込まれる任意の文献が、本明細書において定義された任意の用語と矛盾する場合には、本明細書が優先する。本発明の教示は、様々な実施形態と共に記載されるが、本発明の教示をこのような実施形態に限定することは企図されない。それとは対照的に、本発明の教示は、当業者によって認識される通り、様々な代替形態、改変形態、および等価形態を包含する。
A.定義
【0026】
「末梢神経周囲投与」または簡単に「神経周囲投与」は、本明細書で使用される場合、末梢神経末端と細胞体との間の神経線維への投与である。例えば、神経周囲投与は、薬剤が神経線維と接触するように、末梢神経末端と神経細胞体との間の神経線維に十分に近接させてその薬剤を注射することを包含する。
【0027】
「不適応性疼痛」は、組織が治癒した後、および/または組織損傷がない状態で持続する、実際の組織損傷には不相応な疼痛を指し、したがってその疼痛自体は、傷害などの現在の根本的な任意の疼痛源とは別の問題である。不適応性疼痛は、感覚ニューロンに影響を及ぼす損傷または疾患から生じる神経障害性疼痛とは異なる。
【0028】
神経周囲投与の部位に関して使用される「下流」は、神経末端から遠位にある軸索に沿った部位を指し、したがって神経末端自体は、投与される薬剤によっては接触されない。
【0029】
「反芻動物」は、反芻胃を有する哺乳動物である。反芻動物の例として、それに限定されるものではないが、ウシ、ヒツジ、アンテロープ、シカ、およびキリンが挙げられる。
【0030】
用語「またはそれらの組合せ(or a combination thereof)」および「またはそれらの組合せ(or combinations thereof)」は、本明細書で使用される場合、その用語に先行して列挙される用語のありとあらゆる並び替えおよび組合せを指す。例えば、「A、B、C、またはそれらの組合せ」は、A、B、C、AB、AC、BC、またはABCの少なくとも1つを含むことが企図され、特定の文脈において順序が重要である場合には、BA、CA、CB、ACB、CBA、BCA、BAC、またはCABを含むことも企図される。この例に続いて、BB、AAA、AAB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなどの1つまたは複数の項目または用語の反復を含有する組合せは、明らかに含まれる。当業者は、文脈から別段明らかでない限り、任意の組合せの項目または用語の数には典型的に制限がないことを理解されよう。
【0031】
「または」は、包含的な意味で使用され、すなわち文脈により別段必要とされない限り、「および/または」と等価である。
B.使用のための例示的な方法および組成物
【0032】
本明細書では、不適応性疼痛を処置するための方法であって、不適応性疼痛の処置を必要とする対象にレシニフェラトキシン(RTX)を末梢神経周囲投与するステップを含む方法が提供される。また、不適応性疼痛を処置する方法において使用するためのRTXを含む組成物であって、方法が、不適応性疼痛の処置を必要とする対象にRTXを末梢神経周囲投与するステップを含む、組成物が提供される。本開示は、後根神経節および中枢神経系が、その起源を含めて不適応性疼痛において実質的役割を果たすという文献の説明(例えば、上記Subedi et al.およびBorkum)にもかかわらず、RTXの末梢神経周囲投与が、不適応性疼痛の著しい緩和を提供することができるという認識に部分的に基づく。いかなる特定の理論にも拘泥するものではないが、RTXの末梢神経周囲投与は、不適応性疼痛が、末梢処置によって対処される可能性が低い根強い問題としての中枢神経系における感作を伴うという概念に反して、後根神経節または中枢神経系の直接的な処置を必要とすることなく、局所的効果だけでなく不適応性疼痛を長期間低減または制御する中枢神経的効果も提供するのに十分な度合いまで、それに十分な期間、求心性侵害受容ニューロンによって伝えられるシグナルを中断することができる。したがって、本明細書に開示される通り、神経周囲経路を介して不適応性疼痛を処置するためのRTXの投与は、後根神経節もしくは中枢神経系の処置、または全身的処置およびそれに付随するリスクを伴わず、ならびに/あるいは侵害受容神経末端(例えば、関節腔、皮膚、または筋肉における)を標的にする処置と比較して投薬量および/または頻度を低減して有効な疼痛緩和を可能にするなどの、文献からは予測することができなかった利益を提供し得る。
1.対象
【0033】
本明細書に記載される組成物および方法は、RTXが有効となり、例えばTrpV1またはそのホモログに結合し活性化することができ、不適応性疼痛のための処置を必要とする、任意の対象に使用するためのものである。一部の実施形態では、対象は、哺乳動物である。一部の実施形態では、哺乳動物は、ヒトである。一部の実施形態では、哺乳動物は、ネコである。一部の実施形態では、哺乳動物は、イヌである。一部の実施形態では、哺乳動物は、反芻動物である。一部の実施形態では、哺乳動物は、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、またはヤギである。
【0034】
一部の実施形態では、対象は、切断手術を受けた者である。一部の実施形態では、対象は、幻肢痛に罹患している。例えば、幻肢痛は、切断された指、手、前腕、腕、足趾、足、脚、またはその一部(例えば、脚、膝上または膝下について)の部位で生じ得る。一部の実施形態では、対象は、断端痛に罹患している。例えば、幻肢痛は、例えば、切断された指、手、前腕、腕、足趾、足、脚、またはその一部(例えば、脚、膝上または膝下について)の、切断後の残留肢の末端で生じ得る。幻肢痛または断端痛を有し得る対象の別の例は、抜爪動物、例えばネコである。一部の実施形態では、対象は、神経末端において異常神経成長を有する。例えば、神経末端における異常成長は、神経腫であり得る。
【0035】
一部の実施形態では、対象は、処置の前に不適応性疼痛の1つまたは複数の行動症状を有しており、処置は、1つまたは複数の行動症状を低減または排除する。例えば、家畜動物において、不適応性疼痛の行動症状には、行動学的問題、例えば躾けられたときの攻撃性、または注意を引こうとする行動の減少(撫でられることを求めなくなる)が含まれ、ネコにおいては、排泄行動問題(例えば、ネコ用トイレの外での排尿または排便、ネコ用トイレの中に排泄物を掘って埋めない)が含まれる。
2.投与部位
【0036】
RTXは、不適応性疼痛に関与する神経に応じて、1つまたは2つ以上の部位に神経周囲投与され得る。一部の実施形態では、RTXは、単一部位に神経周囲投与される。
【0037】
一部の実施形態では、RTXは、大腿神経に神経周囲投与される。一部の実施形態では、RTXは、坐骨神経に神経周囲投与される。一部の実施形態では、RTXは、伏在神経に神経周囲投与される。一部の実施形態では、RTXは、橈骨神経に神経周囲投与される。一部の実施形態では、RTXは、尺骨神経に神経周囲投与される。一部の実施形態では、RTXは、正中神経に神経周囲投与される。一部の実施形態では、RTXは、筋皮神経に神経周囲投与される。一部の実施形態では、RTXは、掌側指神経に神経周囲投与される。坐骨神経は、脚(四足動物の場合には後肢)の後下部から走っている。伏在神経は、大腿神経の最大の皮枝であり、下腿(四足動物の場合には下後肢)に位置する。大腿神経は、脚の上大腿(四足動物の場合には上後肢)に位置する。橈骨神経は、上腕(四足動物の場合には上前肢)に位置する。尺骨神経は、前腕および手(四足動物の場合には前肢)に位置する。正中神経は、上腕(四足動物の場合には前肢)に位置する。筋皮神経は、腕(四足動物の場合には前肢)に位置し、上腕骨の中央の正中神経から枝分かれしている。掌側指神経は、手(四足動物の場合には前肢の末端分節に)に位置する。
【0038】
一部の実施形態では、RTXは、複数部位に神経周囲投与される。例えば、坐骨および伏在神経の処置は、脚の疼痛をブロックすることができ、尺骨および掌側指神経の処置は、手の疼痛をブロックすることができ、橈骨および正中神経の処置は、上腕の疼痛をブロックすることができる。一部の実施形態では、RTXは、1つまたは複数の指からの感覚入力に集合的に対応する複数部位に神経周囲投与される。一部の実施形態では、RTXは、足または手からの感覚入力に集合的に対応する複数部位に神経周囲投与される。一部の実施形態では、RTXは、前肢(例えば、前腕または下腿)からの感覚入力に集合的に対応する複数部位に神経周囲投与される。一部の実施形態では、RTXは、肢(例えば、腕または脚)からの感覚入力に集合的に対応する複数部位に神経周囲投与される。一部の実施形態では、RTXは、関節からの感覚入力に集合的に対応する複数部位に神経周囲投与される。一部の実施形態では、複数部位には、複数の神経枝(例えば、尺骨神経の背枝および掌枝)が含まれる。
【0039】
一部の実施形態では、(RTX)は、注射によって投与される。注射は、例えば1ccシリンジ、またはより一般的には、投薬体積に適したサイズのシリンジを使用して実施され得る。
3.投薬量
【0040】
一部の実施形態では、RTXは、0.1~100μgの用量で投与される。一部の実施形態では、RTXの用量は、0.1~0.5μg、0.5~1μg、1~2μg、2~5μg、5~10μg、10~20μg、20~30μg、30~40μg、40~50μg、50~60μg、60~70μg、70~80μg、80~90μg、または90~100μgの範囲である。例えば、抜爪ネコにおいて、例えば全用量2.5μgが、一方または両方の前肢に神経周囲投与され得る。ヒトにおいて、一部の実施形態では、25μgまでの用量(例えば、5~10μg、10~15μg、15~20μgもしくは20~25μg、または約5μg、約10μg、約15μg、約20μgもしくは約25μg)が投与される。一部の実施形態では、先に列挙した範囲のいずれかの全投薬量、例えば0.5~1μg、1~2μg、2~5μg、5~10μg、10~15μg、15~20μg、または20~25μgの全投薬量を用いる、2、3、または4ポイント神経ブロック技術が使用される。
【0041】
投薬量および体積は、神経線維の投与部位の近接度に応じて調整することができる。例えば、投与部位が神経に緊密に近接するように超音波または神経刺激物質が使用される場合、より低い用量および体積を使用することができる。あるいは、神経ブロック、例えば肩甲骨または坐骨ブロックは、所望の神経と接触させるために3~5mlなどのより大きい体積を使用して達成することができる。特に、RTXは、TRPV1受容体に特異的であり、したがってRTXに対して感受性になるのに十分なTRPV1受容体を有していない運動ニューロンなどの非標的神経には影響を及ぼさない。
4.製剤
【0042】
RTXの製剤の複数の例が、文献で入手可能である。例えば、Ueda et al. (2008) J. of Cardiovasc. Pharmacol. 51:513-520および米国特許出願公開第2015/0190509A1号を参照されたい。非経口投与(例えば、注射)のためのRTXの任意の適切な製剤が使用され得る。
【0043】
一部の実施形態では、先に論じた投薬量で存在し得るRTXは、薬学的に許容される担体と共に投与される。一部の実施形態では、薬学的に許容される担体は、水を含む。一部の実施形態では、薬学的に許容される担体は、ポリソルベート(登録商標)80を含む。一部の実施形態では、薬学的に許容される担体は、ポリエチレングリコールを含む。一部の実施形態では、薬学的に許容される担体は、糖または糖アルコールを含む。一部の実施形態では、薬学的に許容される担体は、マンニトールを含む。一部の実施形態では、薬学的に許容される担体は、デキストロースを含む。一部の実施形態では、薬学的に許容される担体は、薬学的に許容される緩衝液を含む。一部の実施形態では、薬学的に許容される担体は、リン酸緩衝液を含む。一部の実施形態では、薬学的に許容される担体は、薬学的に許容される塩を含む。一部の実施形態では、薬学的に許容される担体は、NaClを含む。一部の実施形態では、薬学的に許容される担体は、RTXを主に水性の組成物で希釈する前に溶解する助剤として使用される少数または残留構成成分として、エタノールまたはDMSOなどの有機溶媒を含む。
【0044】
製剤におけるRTXの濃度は、企図された用量の送達に適した任意の値であり得る。一部の実施形態では、医薬製剤におけるRTXの濃度は、0.1~300μg/mlの範囲である。一部の実施形態では、医薬製剤におけるRTXの濃度は、0.1~1μg/ml、1~5μg/ml、5~10μg/ml、10~20μg/ml、10~30μg/ml、20~30μg/ml、20~50μg/ml、50~100μg/ml、100~150μg/ml、150~200μg/ml、200~250μg/ml、または250~300μg/mlの範囲である。一部の実施形態では、医薬製剤におけるRTXの濃度は、150~250μg/mlの範囲、または200μg/mlである。一部の実施形態では、医薬製剤におけるRTXの濃度は、0.1~200μg/ml、例えば0.1~50μg/mlもしくは50~200μg/mlの範囲、または約0.1μg/ml、約0.2μg/ml、約0.5μg/ml、約1μg/ml、約1.5μg/ml、約2μg/ml、約5μg/ml、約10μg/ml、約20μg/ml、約25μg/ml、約50μg/ml、約100μg/mlもしくは約200μg/mlである。
【0045】
製剤は、神経周囲投与に適した任意のpHを有することができる。一部の実施形態では、RTXおよび薬学的に許容される担体を含む医薬製剤は、6~7.6の範囲のpHを有する。一部の実施形態では、RTXおよび薬学的に許容される担体を含む医薬製剤は、6~6.4、6.3~6.7、6.4~6.8、6.8~7.2、7~7.4、または7.2~7.6の範囲のpHを有する。一部の実施形態では、RTXおよび薬学的に許容される担体を含む医薬製剤は、6.5または7.2のpHを有する。
【0046】
一部の実施形態では、製剤は、ポリソルベート(登録商標)80およびデキストロースを含む。一部の実施形態では、ポリソルベート(登録商標)80の濃度は、2~4%w/vであり、および/またはデキストロースの濃度は、4~6%w/vである。一部の実施形態では、ポリソルベート(登録商標)80の濃度は、3%w/vであり、および/またはデキストロースの濃度は、5%w/vである。一部の実施形態では、前述の製剤のいずれかにおいて、RTXの濃度は、10~30μg/ml、例えば10μg/mlまたは25μg/mlであり得る。一部の実施形態では、製剤はさらに、例えば表1のリン酸緩衝液について示される濃度およびpHのリン酸緩衝液を含む。一部の実施形態では、製剤はさらに、例えば表1のNaClについて示される濃度のNaClを含む。リン酸緩衝液およびNaClは、共に存在する場合には、個々の製剤について示される濃度およびリン酸緩衝液のpHの組合せで存在し得る(ただし必ずしも存在するとは限らない)。
【0047】
RTXの例示的な製剤は、以下の表に示される。
【0048】
【表1】
【0049】
一部の実施形態では、表1に示される製剤におけるRTXの濃度は、本明細書で開示されるRTX濃度または濃度範囲のいずれかに調整される。例えば、一部の実施形態では、表1に示される製剤におけるRTXの濃度は、10~50μg/mlに調整される。別の例として、一部の実施形態では、表1に示される製剤におけるRTXの濃度は、10~30μg/mlに調整される。別の例として、一部の実施形態では、表1に示される製剤におけるRTXの濃度は、20~30μg/mlに調整される。別の例として、一部の実施形態では、表1に示される製剤におけるRTXの濃度は、25μg/mlに調整される。一部の実施形態では、表1に示される製剤におけるRTXの濃度は、0.1~100μg/mlもしくは0.1~50μg/ml、例えば0.1~25μg/ml、25~50μg/mlもしくは50~100μg/mlの範囲の濃度、または約0.1μg/ml、約0.2μg/ml、約0.5μg/ml、約1μg/ml、約1.5μg/ml、約2μg/ml、約5μg/ml、約10μg/ml、約20μg/ml、約25μg/ml、約50μg/mlもしくは約100μg/mlに調整される。
【0050】
表1の製剤は、以下の例示的な方法(製剤3および5のために提供されるが、その他の製剤にも、当業者によって適合され得る)に従って調製され得る。製剤3は、pH7.2の30mMリン酸緩衝液を調製することによって作成され得る。次に、1.43%w/vポリソルベート(登録商標)80および0.86%w/vNaClを混合して、水性構成成分を形成する。20mgのRTXを、定容フラスコ中、水性構成成分100mLに添加する。次に、30mLのPEG300を添加し、溶液を超音波処理して、固体を溶解させる。水性構成成分を、約80%体積まで添加し、次にそれを超音波処理して混合する。RTXは時として、最初に水溶液およびPEGの界面に沈殿するが、超音波処理時に溶液に戻ることに留意すべきである。フラスコ中の全混合物を、水性構成成分で希釈して体積を合わせ、これを反転プロセスによって混合する。全製剤を、0.2μmポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターを介して濾過する。
【0051】
製剤5は、pH7.2の30mMリン酸緩衝液を調製することによって作成され得る。次に、3.0%w/vポリソルベート(登録商標)80、0.8%w/vデキストロース、および0.54%w/vNaClを一緒に混合して、水性構成成分を形成する。20mgのRTXを、定容フラスコ中、水性構成成分100mLに添加する。水性構成成分を、約80%体積まで添加し、次にそれを超音波処理して、すべての固体を溶解させる。(あるいは、RTXを、最初に少量のエタノールまたはDMSOに完全に溶解させることができ、次にこの溶液を水性構成成分に添加することができる)。フラスコ中の全混合物を、水性構成成分で希釈して体積を合わせ、これを反転プロセスによって混合する。全製剤を、0.2μmPTFEフィルターを介して濾過する。
【0052】
製剤11による製剤を、200μgのRTX、20mgのポリソルベート(登録商標)80(商業的に入手可能なポリソルベート(登録商標)80を使用する)、5.4mgの塩化ナトリウム、50mgのデキストロース、および30mM水性リン酸緩衝液、1mLまでの水(WFI)を使用して調製する。
【0053】
一部の実施形態では、医薬製剤は、単位剤形である。このような形態では、調製物は、適切な量の活性構成成分を含有する単位用量に分割される。単位剤形は、パッケージされた調製物であってもよく、そのパッケージは、バイアル、アンプルまたは予め充填されたシリンジなどに別個の量の製剤を含有する。また、単位剤形は、例えば、復元のための溶液または凍結乾燥させた組成物であってもよい。
【0054】
製剤および投与のための技術に関するさらなる詳細は、Gennaro, A., Ed., Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. (1990) (Mack Publishing Co., Easton, Pa.)に見出され得る。
【実施例
【0055】
III.実施例
A.ネコにおける神経周囲投与試験のための研究設計
本明細書に記載の通り、RTXの局所領域的適用を、表2に示される通り耐容性、安全性、および鎮痛効果を評価するために、治療抵抗性の限局性不適応性疼痛を有するネコのコホートにおいて使用する。
【表2】
【0056】
5μg/ネコまたは2.5μg/前肢の各用量を、RTX0.1mL(2.5μg)を注射用の滅菌生理食塩水0.9mLに希釈することによって、1ccインスリンシリンジ内で使用直前に調合する。処置のために、合計1.0mL(2.5μg)を、神経ブロックとして、各前肢について4カ所の注射部位にわたって等しく分配して注射する(注射部位1カ所当たり0.25ml)。
【0057】
研究の組み入れ基準には、以下が含まれる。ネコに、抜爪外科手術後の限局性前肢疼痛が確認されていること、ネコが、標準疼痛管理に対して治療抵抗性である疼痛を経験しているか、または飼い主が、従来の処置とは異なる疼痛管理の探求を選択していること、飼っているネコが治療抵抗性疼痛に起因して生活の質の著しい低下を経験していると飼い主が述べていること、飼い主が、ネコの排泄行動問題(ネコ用トイレの外での排尿または排便、ネコ用トイレの中に排泄物を掘って埋めない)、躾けられたときの攻撃性もしくは注意を引こうとする行動の減少(撫でられることを求めなくなる)などの慢性不適応性疼痛状態に関する行動学的問題を報告していること、および/あるいは治療抵抗性疼痛に関する臨床徴候(すなわち、疼痛および運動性が生活の質に負の影響を及ぼしている)に起因して飼っているネコの安楽死を考慮していること、疼痛の処置のために一般に使用される医薬品(それらの医薬品が別の理由で処方されているとしても。例えばコルチコステロイド)が、研究への登録前に少なくとも2週間投与されているという条件で許容され、次の3週間はレジメンの変更が予測されないこと、ならびに処置日の少なくとも90日前に抜爪手順が実施されたこと。ネコはまた、少なくとも12カ月齢であり、体重が少なくとも2kgでなくてはならず、別の研究に参加していてはならず、または一次神経疾患に起因する機能障害を有していてはならない。
【0058】
ネコは、以下の除外基準のいずれかを示している場合には研究から除外される。ネコが妊娠中もしくは授乳中であること、ネコが、研究の目的を妨害するおそれがある医薬品もしくは栄養補助食品を研究過程中に必要とすること、または疼痛の重症度が、処置前の-7日目もしくは0日目のいずれかにおいて研究者によって10ポイント尺度で5未満と評定されること。
【0059】
4ポイントの神経ブロックを、1)橈骨神経の浅枝、2)尺骨神経の背枝、3)正中神経および尺骨神経の掌枝の浅枝、ならびに4)尺骨神経の掌枝の深枝に、RTX0.25mLをそれぞれ注射することによって実施する。ネコの前肢末梢環節の局所領域ブロックについて公開されている技術に従って、前肢についてそれぞれ神経ブロックを実施する(Enomoto et al. (2016) J. Feline Med. Surg. 18:838-845)。橈骨神経の浅枝(RSbr nn)をブロックするために、肢を、背面を上に向け、手根を180°の伸展度で置く。25G×5/8インチの針を、橈骨手根(antebrachiocarpal)関節のレベルで肢の中央のポイントから皮下(SC)に挿入する。針を、ベベルを上に向けて肢の長軸に対して10~20°の角度でSCにおよそ10mm進める。針の先端が副橈側皮静脈および橈側皮静脈の合流点から3~5mmに達したら、注射を行う(0.25mL)。尺骨神経の背枝(UDbr n)をブロックするために、肢を、外側面を上に向けて置く。あるポイントは、副手根骨(ACb)と尺骨の茎状突起(SpU)との間に位置する、ACbの外側の同じレベルに位置する。25G×5/8インチ針を、SCの遠位から近位に挿入し、したがって、先端をACbとSpUとの間に形成された溝の中間点に置き、次に注射を行う(0.25mL)。正中神経(M n)および尺骨神経の掌枝の浅枝(UPbrS n)をブロックするために、肢を、掌側を上に向けて置く。25G×5/8インチ針を、手根肉球の遠位縁部におけるその外側およそ5mmのSCに、中手の長軸に垂直にベベルを上に向けて挿入する。そのポイントが、肢の外側面から内側面の距離の3分の2に位置するまで、針をSCに挿入する。注射物体積の3分の2をこのポイントに注入し、針を抜きながら残りの体積を注射する(0.25mL)。皮膚下の注射体積を、5秒間優しくマッサージする。尺骨神経の掌枝の深枝(UPbrDp n)をブロックするために、肢を、掌側を上に向けて置く。25G×5/8インチ針を、針が、ベベルを上に向けてACbの中間点の内側掌側と接触するように、ACbに対してほぼ垂直に中外側方向に挿入する。次に、針を背側に向け直し、屈筋支帯を貫通するまでACbの内側に2~3mm進入し、次に注射を行う(0.25mL)。
【0060】
RTXの注射の有効性を、質的アセスメント(ジャンプ、肢の操作)について、飼い主のビデオ撮影を使用して3日目、7日目および14日目にアセスメントし、ネコを、ネコ筋骨格痛指数(FMPI)およびクライアントによる特定のアウトカム尺度(CSOM)も使用して評価する。
【0061】
CSOMでは、飼い主は、(Q1)遠位肢を伸ばす、「こねる」、ストレッチすること、(Q2)走ること、ならびに(Q3)ベッドおよび窓から飛び下りることの3つの特質について、1~5の尺度(1=問題なし、2=軽度困難、3=中程度、4=重度困難、および5=不可能)を使用してスコア化するように求められる。
【0062】
FMPIでは、ネコを、Q1~Q17と指定される17の特質について、0~4の尺度(0=全くできない、1=ほとんどできない、または大きな努力を要する、2=正常よりもやや悪化している、3=ほぼ正常、および4=正常)を使用してスコア化する。全FMPIスコアは、質問ごとのスコアの合計である。(0~68)の可能な範囲で、合計が高いほど機能障害が少ないことを示す。分析のために、全スコアまたはパーセント可能(percent possible)を使用することができる。Q1~Q17は、以下の通りである。歩く(Q1)、走る(Q2)、飛び上がる(Q3)、キッチンカウンターの高さまで飛び上がる(Q4)、飛び下りる(Q5)、階段を上る(Q6)、階段を降りる(Q7)、おもちゃで遊ぶ/おもちゃを追いかける(Q8)、他のペットと遊び、触れ合う(Q9)、静止位置から起き上がる(Q10)、横になるまたは座る(Q11)、ストレッチする(Q12)、毛づくろいをする(Q13)、飼い主と触れ合う(Q14)、触られるまたは手で扱われる(Q15)、食べる(Q16)、およびネコ用トイレを使用する(Q17)。
【0063】
RTXの注射の安全性を、スクリーニング時に行った全血算(CBC)およびケミストリーパネルの結果を、14日目に得られた結果と比較することによってアセスメントする。ネコを、有害事象についてもモニタリングした。
B.不適応性疼痛に罹患している抜爪ネコへの神経周囲投与
【0064】
RTX投与の耐容性、安全性、および鎮痛効果を、不適応性疼痛を有する抜爪ネコ一匹で評価した。ネコに、先の実施例Aに記載される通り、神経ブロックとして注射される合計1.0mL(2.5μg)のRTXを、各前肢につき4カ所の注射部位にわたって等しく分配した(注射部位1カ所当たり0.25ml)。RTX投与中、合併症は観察されなかった。RTXの注射は、一般に良好な耐容性を示した。注射の1時間後に浅速呼吸および唾液分泌の有害事象が認められたが、これらの事象は、共に2時間以内に解決した。ネコは、注射の12時間後には食欲低下からの自己治癒も示した。アレルギー様反応の徴候は観察されず、注射領域に、浮腫または疼痛の徴候はなかった。
【0065】
スクリーニング当日、ネコは、全CSOMスコア8およびQ1~Q3による軽度から中程度の困難を示していた。RTX注射後の14日目までに、ネコはQ1~Q3による軽度困難を経験しており、CSOMスコアは6であった。このネコにおいて、遠位肢を伸ばす、こねる、ストレッチする、および走ることのすべてについて改善が示された。CSOMも、7日目および14日目に評価したが、共に表3に示される通り3日目に対して改善が示された。
【0066】
【表3】
イタリック体でないセルは、ベースラインまたは変化なしを示し、イタリック体の数字を含むセルは、改善を示す。スコアの悪化は観察されなかった。
【0067】
抜爪した指に関する疼痛と関連するRTX注射前後の身体検査の概要は、表4に提示される。
【表4】
【0068】
ネコへのRTXの単回注射の鎮痛効果を、ネコ筋骨格痛指数(FMPI)を使用して評価した(表5)。全FMPIスコアは、質問ごとのスコアの合計である。(0~68)の可能な範囲で、合計が高いほど機能障害が少ないことを示す。分析のために、全スコアまたはパーセント可能を使用することができる。スクリーニング当日および0日目に、ネコは、FMPIスコアが47であった。RTX注射後の14日目までに、ネコは、FMPIスコアが57となり、改善を示した。パーセント可能の算出は、ネコの全スコアを得、可能な全ポイント(答えた質問の数に4を掛けたもの)で割ることによって実施する。したがって、パーセント可能=(Q1~17スコアの合計)/(答えた質問の数4)である。
【表5】
白色背景にイタリック体でないセルは、ベースラインまたは変化なしを示し、イタリック体を含むセルは、改善を示し、黒色で塗られたセルは、スコアの悪化を示す。
【0069】
さらにネコは、処置前に、排泄行動問題、躾けられたときの攻撃性、および注意を引こうとする行動の減少を示していた。この処置の前にそのネコに数年間疼痛があったと思われたが、これらの行動問題のそれぞれは、RTXの神経周囲投与後に好転した慢性不適応性疼痛状態に関するものであった。これらの結果は、末梢シグナル伝達の低減が、不適応性疼痛と関連する中枢神経系の持続的な長期的可塑性変化を有する可能性が高い対象においても、不適応性疼痛の中枢知覚を好転するのに十分となり得るという証拠である。
【0070】
したがって、RTXの投与は、CSOMおよびFMPIスコアの改善によって示される通り、このネコにおいて安全で有効であった。効果は、少なくとも14日間持続した。
C.抜爪ネコにおける重症慢性遠位肢疼痛についての神経周囲レシニフェラトキシンの研究
【0071】
ネコの慢性遠位肢疼痛は、それらの生活の質(QoL)にとって有害である。この研究の目的は、慢性遠位上肢疼痛の証拠を有する抜爪ネコにおいて、唯一の神経周囲疼痛管理様式としてのRTXの使用を評価することであった。
【0072】
外科手術または外傷性切断中、かなりの量の外傷が、神経および周囲組織に生じた。この神経傷害は、神経末端(endings)を発芽させ、末端(terminals)を過興奮性にし、それが永続化し、局所炎症によって悪化する。
【0073】
切断後疼痛症候群に罹患しているヒトおよびネコ患者から得られた化学的証拠は、この多因子状態の発生が、局所性神経腫の形成、ならびにその後の末梢および中枢神経経路の変更に密接に関係していることを示唆している(Hanyu-Deutmeyer AA and Dulebohn SC. StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2018 Jan-2018 Apr 17)。ネコとヒト患者との間の病態生理および臨床提示の類似点により、ネコの抜爪後疼痛症候群は、残肢疼痛および複合性局所疼痛症候群(CRPS)のようなヒトにおける疼痛性不適応性疾患の理解を深めるための優れたトランスレーショナルツールに変わる。
【0074】
爪切除術後の重症合併症の結果として重症の両側慢性疼痛(90日超)に罹患しているネコを、この研究(探索的な非盲検の多施設臨床試験)に登録した。初期疼痛および生活の質(QoL)の低下について、13の症例を処置した。次に、両側遠位肢への神経周囲注射(リングブロック技術)を、全身麻酔(ジフェンヒドラミン、ブプレノルフィン、デクスメデトミジン、ケタミン、およびイソフルランの組合せ)の下で投与した。ネコの前肢末梢環節の神経ブロックについて公開されている技術(Enomoto et al., 2016)に従って、RTXの全用量を、1)橈骨神経の浅枝、2)尺骨神経の背枝、3)正中神経および尺骨神経の掌枝の浅枝、ならびに4)尺骨神経の掌枝の深枝に隣接して等しく分配した。合計2.5ug(n=7の群1において、前肢1本当たり1.25ug/1mL)および5ug(n=6の群2において、前肢1本当たり2.5ug/1mL)のRTXを、一度限りの処置として注射した。群2には、先の実施例Bにおいて詳細な結果が提供されているネコが含まれていた。続く28日間、QoLおよび疼痛のモニタリングを、クライアントによるネコの特定のアウトカム尺度(CSOMf)、ネコ筋骨格痛指数(FMPI)、2回の注射後の身体検査、ならびに注射後3日目、7日目、14日目および28日目のビデオ撮影を使用して達成した。
【0075】
両方の群において(群1では71.4%、群2では100%)、動物は、麻酔からの回復中に処置に関係する自然治癒反応を経験した。最も一般的な有害事象(AE)は、浅速呼吸(群1では57.1%、群2では83.3%)、発声(群1では57.1%、群2では83.3%)および唾液分泌過多(群1では71.4%、群2では50%)であり、それらは処置後4時間以内に解決した。
【0076】
両方の群における提示および解決の日によって分析すると、AEの85%超が投与当日に提示され、同日に解決した(群1=86.6%[26/30]、群2=95.4%[21/22])。
【0077】
CSOMfおよびFMPIスコアは、28日間のモニタリング期間にわたって明らかな改善を示した。
【0078】
両方の群において、飼い主は、QoLの改善を示すとみなされる自然行動(すなわち、社会化、こねる、および身体活動の改善)および病理学的な飼育行動(すなわち、飼い主および同居する他のペットに対する攻撃性、不適切な排尿および排便)の著しい変化を報告した。一部の場合には、これらの行動学的改善により、捨てられた患者を譲渡し、新居に移せるようになった。公式のモニタリング期間は28日間であったが、一部の場合には数カ月間(6カ月を超えて)、非公式に改善が報告された。少なくとも2匹のネコについて、振舞いの改善および負の行動の低減、ならびに毎日の全身医薬品の必要性の低減または排除を含めた改善が数カ月間継続したことが報告された。
【0079】
したがって、この研究は、慢性疼痛管理のためのRTXの神経周囲注射が、生活の質に負の影響を及ぼす遠位上肢疼痛を有するネコを有効に処置することができ、その上、記載の用量での神経周囲へのRTXが、これらのネコにおいて良好な耐容性を示したという証拠を提供する。
D.ラットにおける神経ブロック注射としてのレシニフェラトキシンの14日間の回復期間を含む単回用量研究
【0080】
この研究は、RTXが神経ブロック注射としてラットに単回用量として与えられた場合の、RTXの投与の安全性を決定することを目的としていた。
【0081】
研究設計は、以下の通りであった。
【表6】
【表7】
【0082】
神経ブロック注射としてのレシニフェラトキシンの投与は、0.625μg、2.5μg、および10μgのレベルでラットにおいて良好な耐容性を示した。無毒性量レベル(NOAEL)は、10μgとみなされた。
【0083】
雄119匹および雌119匹のCrl:CD(SD)Sprague Dawleyラットを、Charles River Laboratories、Raleigh、NCから得た。動物は、投薬開始時に10週齢であり、体重が212~482gの間であった。
【0084】
雄および雌の動物を、類似の群平均体重を達成するために、層別化を用いて無作為的に群に別々に割り当てた。
【0085】
投薬開始前に、研究において使用するのに適していないとみなされた割り当てられた動物は、同じ入荷分から得られた、同じ環境条件下で維持されていた代替動物によって置き換えた。
【表8】
【0086】
神経ブロック注射用量を、右大腿に与えた。用量投与のために動物を一時的に拘束した。用量投与のためにイソフルラン吸入により動物を鎮静させた。動物ごとに、投薬日を1日目と指定した。研究で死亡した、回復研究の動物については剖検を実施し、特定組織を保持した。動物を、剖検の前に冷蔵して自己分解を最小限に抑えた。
【0087】
人道的理由で、回復研究の動物を安楽死させた。動物に剖検を行った。動物を、剖検の前に冷蔵して自己分解を最小限に抑えた。
【0088】
2日目の計画的安楽死まで生存した主要研究および回復の動物は、最終的な体重を記録し、臨床的病理の評価のために試料を収集し、動物をイソフルラン吸入によって安楽死させ、続いて全採血した。計画的安楽死まで生存した毒物動態研究の動物は、二酸化炭素吸入によって安楽死させた。
【0089】
主要研究および回復の動物に、完全剖検検査を行った。計画的剖検のために、有資格動物病理学者が対応可能であった。
【0090】
すべての統計的試験を、5%有意レベルで実施した。すべての一対比較を、両側試験を使用して実施した。
【0091】
目的の一対比較を以下に列挙する。
【表9】
【0092】
分析から、3つ未満の観察を伴う任意の群を除外した。
【0093】
Levene試験を使用して、郡の分散均一性をアセスメントした。
【0094】
Levene試験が有意でない場合には包括的一元ANOVA F-試験を使用し、有意な場合にはKruskal-Wallis試験を使用して、群を比較した。包括的F-試験またはKruskal-Wallis試験が有意であることが見出された場合、次に、それぞれDunnettまたはDunn試験を使用して一対比較を実施した。2つの群を用いたデータセットを、Dunnett試験(Nevis 2012の表におけるt試験と同等)またはDunn試験(Nevis 2012の表におけるWilcoxon Rank-Sum試験と同等)を使用して比較した。
結果
【0095】
対照および試験製剤におけるRTX濃度を決定するために、妥当性が検証された方法を使用した。群1および群2(ビヒクル)の試料のいずれにおいても、RTXは検出されなかった。群3~5における平均濃度は、それらの理論濃度の93.6%~117%の範囲であった。
【0096】
試験物質に関係する予定外の死亡または肉眼的観察はなかった。
【0097】
10μgにおいて1~2日目の雄および1~14日目の雌で、RTX(レシニフェラトキシン)に関係する平均体重増加の統計的に有意な低減があり、これは対照と比較した平均体重の低減に相当していた。
【0098】
2~7日目に、2.5μgにおいて雌だけおよび10μgにおいて雄だけで、食餌消費の統計的に有意な低減があった。
【0099】
ある特定の白血球数、血小板数、フィブリノーゲン(fibrogin)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼおよびアラニンアミノトランスフェラーゼ、総タンパク質、アルブミン、アルブミン/グロブリン比、リン、比重、ならびにトリグリセリドと共に、いくつかの他のパラメーターの様々な統計的に有意な差が認められた。しかしこれらの差は、以下の、絶対差が最小限であったこと、変化に明らかな用量応答関係がなかったこと、相関する顕微鏡的所見がなかったこと、絶対差が最小限であったこと、および/または変化に明らかな用量応答関係がなかったことの1つまたは複数に起因して有害であるとみなされることも、またはビヒクルもしくは試験物質に関係するとみなされることもなかった。さらに、それらの差は一般に、好中球が、10μgにおいて雌だけで統計的に有意に増大し、それが回復期間後に増大したままであったことを除いて、回復期間中に解決した。
【0100】
臨床化学パラメーターにおいて有害なRTX(レシニフェラトキシン)に関係する変化はなかった。
【0101】
最終的に安楽死したまたは回復期間の動物において、試験物質に関係する肉眼的所見は認められなかった。観察された肉眼的所見は、この系統および年齢のラットにおいて一般に観察される性質に付随的であるとみなされ、かつ/または対照および処置動物において類似の発生率を有しており、したがって、RTXの投与には無関係とみなされた。
【0102】
統計的に有意なより低い絶対的および相対的脾臓重量が、RTX10μgを投与した両方の性別で観察された。このことは、顕微鏡的に、白脾髄のリンパ系細胞充実性の最小限の低減と相関していた。RTX10μgを投与した両方の性別におけるより低い絶対的および相対的胸腺重量は、顕微鏡的に、リンパ系細胞充実性の最小限から軽度の低減と相関していた。試験物質に関係する他の臓器重量変化は認められなかった。最終的な安楽死の際に認められた試験物質に関係する臓器重量変化は、回復期間の最後(15日目)には観察されなかった。
【0103】
単離された臓器の重量の値に、それらのそれぞれの対照とは統計的に異なる値があった。しかし、これらの値が毒物学的に関連することを示唆するパターン、傾向または相関データはなかった。したがって、観察された臓器重量差は偶発的であり、かつ/または体重変化と関係しており、RTXの投与とは無関係であるとみなされた。
【0104】
2日目に死亡したことが見出されたRTX(試験物質1)2.5μgの回復研究の雌、および13日目に安楽死した対照物質2を投与した回復研究の雌を含めた2匹の予定外死亡が、試験物質投与とは無関係に生じた。試験物質1を投与した動物の死亡は、吸引に関係する異物/肺の炎症に起因しており、一方、対照物質2を投与した動物の死亡は、肉眼的または顕微鏡的評価によっては説明することができず、瀕死状態と対照物質2との関係は排除することができなかった。
【0105】
結論として、0μg、0.625μg、2.5μg、または10μgの用量でのラットへの単回用量としてのRTXの神経ブロック注射は、試験物質に関係する死亡率、臓器重量の差、または肉眼的観察をもたらさなかった。≧2.5μgのRTXでは、乳腺において非有害な顕微鏡的変化(単細胞壊死)があり、10μgのRTXでは、骨格筋において顕微鏡的変化(筋線維変性/壊死)があったが、それらはすべて14日間の回復期間後に完全に回復した。対照物質2に関係する顕微鏡的変化が、投与部位に認められた(筋線維変性/壊死を伴うまたは伴わない混合細胞炎症)。これらの所見のすべては、14日間の回復期間後に完全に回復した。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
不適応性疼痛を処置する方法であって、不適応性疼痛の処置を必要とする対象にレシニフェラトキシン(RTX)を末梢神経周囲投与するステップを含む、方法。
(項目2)
不適応性疼痛を処置する方法における使用のための、レシニフェラトキシン(RTX)を含む組成物であって、前記方法が、不適応性疼痛の処置を必要とする対象にRTXを末梢神経周囲投与するステップを含む、組成物。
(項目3)
前記方法が、0.1μg~100μgの用量のRTXを投与するステップを含む、項目1または2に記載の使用のための方法または組成物。
(項目4)
前記RTXの用量が、0.1~1μg、1~2μg、2~5μg、5~10μg、10~20μg、20~30μg、30~40μg、40~50μg、50~60μg、60~70μg、70~80μg、80~90μg、または90~100μgの範囲である、項目3に記載の使用のための方法または組成物。
(項目5)
前記RTXが、単一部位、複数部位、坐骨神経、伏在神経、大腿神経、橈骨神経、尺骨神経、正中神経、筋皮神経、および/または掌側指神経に神経周囲投与される、前記項目のいずれか一項に記載の使用のための方法または組成物。
(項目6)
前記RTXが、1つまたは複数の指、足もしくは手、前肢、肢、および/または関節からの感覚入力に集合的に対応する複数部位に神経周囲投与される、前記項目のいずれか一項に記載の使用のための方法または組成物。
(項目7)
前記対象が、切断手術を受けた者である、前記項目のいずれか一項に記載の使用のための方法または組成物。
(項目8)
神経周囲投与が、切断部位の下流の1つまたは複数の神経線維を標的とする、前記項目のいずれか一項に記載の使用のための方法または組成物。
(項目9)
前記対象が、幻肢痛または断端痛に罹患している、前記項目のいずれか一項に記載の使用のための方法または組成物。
(項目10)
神経周囲投与が、切断部位の下流の少なくとも2つ、3つ、4つの、または5つの神経線維を標的とする、項目7から9のいずれか一項に記載の使用のための方法または組成物。
(項目11)
前記対象が、神経末端において異常神経成長を有する、前記項目のいずれか一項に記載の使用のための方法または組成物。
(項目12)
神経周囲投与が、その末梢端に異常成長を伴う神経の下流の1つまたは複数の神経線維を標的とする、項目11に記載の使用のための方法または組成物。
(項目13)
神経周囲投与が、神経腫の下流の1つまたは複数の神経線維を標的とする、先行する項目のいずれか一項に記載の使用のための方法または組成物。
(項目14)
前記方法が、前記RTXおよび薬学的に許容される担体を含む医薬製剤を投与するステップを含む、先行する項目のいずれか一項に記載の使用のための方法または組成物。
(項目15)
前記薬学的に許容される担体が、水を含む、項目14に記載の使用のための方法または組成物。
(項目16)
前記薬学的に許容される担体が、ポリソルベート(登録商標)80を含む、項目14または15に記載の使用のための方法または組成物。
(項目17)
前記薬学的に許容される担体が、ポリエチレングリコールを含む、項目14から16のいずれか一項に記載の使用のための方法または組成物。
(項目18)
前記薬学的に許容される担体が、糖または糖アルコールを含む、項目14から17のいずれか一項に記載の使用のための方法または組成物。
(項目19)
前記薬学的に許容される担体が、マンニトールを含む、項目18に記載の使用のための方法または組成物。
(項目20)
前記薬学的に許容される担体が、デキストロースを含む、項目18または19に記載の使用のための方法または組成物。
(項目21)
前記薬学的に許容される担体が、薬学的に許容される緩衝液を含む、項目14から20のいずれか一項に記載の使用のための方法または組成物。
(項目22)
前記薬学的に許容される担体が、リン酸緩衝液を含む、項目21に記載の使用のための方法または組成物。
(項目23)
前記医薬製剤が、6~7.6の範囲のpHを有する、項目14から22のいずれか一項に記載の使用のための方法または組成物。
(項目24)
前記医薬製剤が、6~6.4、6.3~6.7、6.4~6.8、6.8~7.2、7~7.4、または7.2~7.6の範囲のpHを有する、項目23に記載の使用のための方法または組成物。
(項目25)
前記医薬製剤が、6.5または7.2のpHを有する、項目23に記載の使用のための方法または組成物。
(項目26)
前記薬学的に許容される担体が、薬学的に許容される塩を含む、項目14から25のいずれか一項に記載の使用のための方法または組成物。
(項目27)
前記薬学的に許容される塩が、NaClである、項目26に記載の使用のための方法または組成物。
(項目28)
前記医薬製剤におけるRTXの濃度が、0.02~0.1μg/mlまたは0.1~300μg/mlの範囲である、項目14から27のいずれか一項に記載の使用のための方法または組成物。
(項目29)
前記医薬製剤におけるRTXの濃度が、0.02~0.1μg/ml、0.1~1μg/ml、1~5μg/ml、5~10μg/ml、10~20μg/ml、20~50μg/ml、50~100μg/ml、100~150μg/ml、150~200μg/ml、200~250μg/ml、または250~300μg/mlの範囲である、項目28に記載の使用のための方法または組成物。
(項目30)
前記医薬製剤におけるRTXの濃度が、150~250μg/mlの範囲であるか、または約200μg/mlである、項目28または29に記載の使用のための方法または組成物。
(項目31)
前記医薬製剤におけるRTXの濃度が、0.1~200μg/mlの範囲であり、必要に応じて前記医薬製剤におけるRTXの濃度が、0.1~50μg/mlの範囲である、項目28または29に記載の使用のための方法または組成物。
(項目32)
前記RTXが、0.05~10mlの注射体積で投与され、必要に応じて前記注射体積が、0.05~0.2ml、0.2~0.5ml、0.5~1ml、1~2ml、2~5ml、または5~10mlの範囲である、前記項目のいずれか一項に記載の使用のための方法または組成物。
(項目33)
前記対象が、哺乳動物である、前記項目のいずれか一項に記載の使用のための方法または組成物。
(項目34)
前記対象が、ネコ、イヌ、ウマ、ブタ、反芻動物、ウシ、ヒツジ、ヤギ、または家畜化哺乳動物である、項目33に記載の使用のための方法または組成物。
(項目35)
前記対象が、ヒトである、項目33に記載の使用のための方法または組成物。
(項目36)
前記処置が、前記不適応性疼痛の局所および中枢効果を低減する、前記項目のいずれか一項に記載の使用のための方法または組成物。
(項目37)
前記対象が、処置の前に不適応性疼痛の1つまたは複数の行動症状を有しており、前記処置が、前記1つまたは複数の行動症状を低減または排除する、前記項目のいずれか一項に記載の使用のための方法または組成物。