(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】2つのラフィングシリンダによって起伏することができるブームを有する車両クレーン
(51)【国際特許分類】
B66C 23/82 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
B66C23/82 A
(21)【出願番号】P 2021535242
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(86)【国際出願番号】 EP2019085718
(87)【国際公開番号】W WO2020127318
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】102018133493.1
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520417377
【氏名又は名称】タダノ デマグ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Tadano Demag GmbH
【住所又は居所原語表記】Europaallee 2, 66482 Zweibruecken, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(72)【発明者】
【氏名】ウルバン クリスティアン モリッツ
【審査官】山田 拓実
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第02996196(US,A)
【文献】米国特許第03045836(US,A)
【文献】特開平10-087278(JP,A)
【文献】国際公開第01/014239(WO,A1)
【文献】特開2003-048687(JP,A)
【文献】米国特許第05597078(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/00-23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
格納位置(P1)と動作位置(P2)との間の垂直ラフィング平面(WE)内で少なくとも2つのラフィングシリンダ(5a、5b)を介して起伏することができるジブ(4)を備える車両クレーン(1)であって、
前記垂直ラフィング平面(WE)上で互いに対向して位置する前記ラフィングシリンダ(5a、5b)が、前記動作位置(P2)において、それらの縦軸(x1、x2)間の広がり角(a)を形成し、前記ラフィングシリンダ(5a、5b)が前記ジブ(4)の端部の外側で前記ジブ(4)に作用し、
前記ジブ(4)が前記格納位置(P1)にあるとき、前記垂直ラフィング平面(WE)上に投影されたラフィングシリンダ(5a、5b)の前記縦軸(x1、x2)、および前記垂直ラフィング平面(WE)内に延在する上向き方向(Z)が、それらの間に傾斜角(b)を形成し、
前記ジブ(4)が、ベースフレーム(11)に起伏可能に取り付けられ、前記ベースフレーム(11)が、各々がユニバーサルジョイントまたはボールジョイントとして設計され、それを介して前記ラフィングシリンダ(5a、5b)が前記ベースフレーム(11)上に関節式に支持される、下部取り付けアセンブリ(12a、12b)を有し、
前記ジブ(4)が、各々がユニバーサルジョイントまたはボールジョイントとして設計され、それを介して前記ラフィングシリンダ(5a、5b)が前記ジブ(4)に関節式に支持される、上部取り付けアセンブリ(13a、13b)を有し、
前記下部取り付けアセンブリ(12a、12b)及び/又は前記上部取り付けアセンブリ(13a、13b)のうちの少なくとも1つが、前記垂直ラフィング平面(WE)に対して垂直に延在する経路(P)に沿って可変的に位置決めすることができ、前記経路(P)が、少なくとも部分的に直線状または曲線状のコースを有し、
前記ジブ(4)が前記格納位置(P1)にあるとき、前記傾斜角(b)が80°~100°、特に好ましくは90°~97°であり、前記ジブ(4)が前記動作位置(P2)にあるとき、前記広がり角(a)が2°~30°であることを特徴とする、
車両クレーン(1)。
【請求項2】
前記下部取り付けアセンブリ(12a、12b)及び/又は前記上部取り付けアセンブリ(13a、13b)が、前記経路(P)に沿って互いに向かってまたは互いから離れてそれぞれ反対方向(R1、R2)に同時に変位できることを特徴とする、
請求項
1に記載の車両クレーン(1)。
【請求項3】
前記ジブ(4)が前記格納位置(P1)および/または前記動作位置(P2)にあるとき、前記2つのラフィングシリンダ(5a、5b)の前記縦軸(x1、x2)の間の前記広がり角(a)を変えることができることを特徴とする、
請求項1
または2に記載の車両クレーン(1)。
【請求項4】
前記格納位置(P1)において、前記広がり角(a)が0°~45°、好ましくは0°~6°であることを特徴とする、
請求項1から
3のいずれか一項に記載の車両クレーン(1)アセンブリ(10)。
【請求項5】
前記ベースフレーム(11)が、下部キャリッジ(2)に対して回転することができる車両クレーン(1)の上部構造(3)の一部であるか、または前記上部構造(3)自体であることを特徴とする、
請求項
1に記載の車両クレーン(1)。
【請求項6】
前記ベースフレーム(11)が、車両クレーン(1)の下部キャリッジ(2)の一部であるか、または前記下部キャリッジ(2)自体であることを特徴とする、
請求項
1に記載の車両クレーン(1)。
【請求項7】
前記ジブ(4)が、基本ボックス(4a)および内外に伸縮することができる内部ボックス(4b)を有する伸縮ジブであることを特徴とする、
請求項1から
6のいずれか一項に記載の車両クレーン(1)。
【請求項8】
前記ラフィングシリンダ(5a、5b)が、前記ジブ(4)の前記基本ボックス(4a)に作用することを特徴とする、
請求項
7に記載の車両クレーン(1)。
【請求項9】
正確に二つのラフィングシリンダ(5a、5b)が設けられることを特徴とする、
請求項1から
8のいずれか一項に記載の車両クレーン(1)。
【請求項10】
前記車両クレーン(1)が下部キャリッジ(2)を備えることを特徴とする、
請求項1から
9のいずれか一項に記載の車両クレーン(1)。
【請求項11】
前記ジブ(4)が前記格納位置(P1)にあるとき、前記ジブ(4)が前記下部キャリッジ(2)上に支持されることを特徴とする、
請求項
10に記載の車両クレーン(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、格納位置と動作位置との間の垂直ラフィング平面内で少なくとも2つのラフィングシリンダを介して起伏することができるジブを備える車両クレーンに関し、ラフィング平面上で互いに対向して位置するラフィングシリンダは、動作位置において、それらの縦軸間の広がり角を形成し、ラフィングシリンダはジブの端部の外側でジブに作用する。本発明はまた、そのようなアセンブリを備える車両クレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
使用時に必要とされる移動式車両クレーンの性能能力は、それらのそれぞれのジブによって最終的に決定される。回転可能な上部構造上のその大部分が起伏可能で伸縮可能な配置は、それに対応して大きい作業空間を開放し、その中で必要な荷重の変位を達成することができる。走行中に実質的に水平に延在するジブの、ジブの格納位置と、それに対して持ち上げられた動作位置との間の垂直方向付けは、長さを変えることができる少なくとも1つのラフィングシリンダを介して達成される。
【0003】
英国公開文書英国特許出願公告第843,024号明細書および特許文書米国特許第2996196号明細書は、互いに独立して動作する合計2つのラフィングシリンダを有するジブを備える車両クレーンを開示している。車両クレーンは、ジブがその下端を介して関節式に支持される下部キャリッジを有する。ジブと下部キャリッジとの間に延在するラフィングシリンダは、それらの上端を介して関節式にジブの領域に接続される。ラフィングシリンダの下端は、それらの縦軸がそれらの間に広がり角を形成するように互いに距離を置いて下部キャリッジ上で関節式に支持される。2つのラフィングシリンダを互いに別々に作動させる能力は、垂直なラフィング平面内で、また下部キャリッジに対して水平に限られた範囲でジブを旋回させることを可能にする。
【0004】
互いに対してA字形に広げられた2つのラフィングシリンダの位置は、垂直方向の旋回能力を超えて車両クレーンの下部キャリッジに対してジブを方向付けるオプションに対する要望に基づく。このように限定されたジブの横方向の旋回能力に加えて、ジブの設計は、ジブが、2つのラフィングシリンダ上のその格納位置にあることを意味し、2つのラフィングシリンダは、ラフィング平面上に投影して垂直に方向付けられ、それは、特に走行中の可能な限り最もコンパクトな車両寸法の利点に対抗する。これらの知見に鑑みて、既知のアセンブリにはまだ改善されるべき余地がある。伸縮ジブが図示された水平な格納位置にあるとき、ラフィングシリンダは垂直線と0°の傾斜角を形成する。
【0005】
特許文書米国特許第2996196号明細書は、主ジブおよびラフィングジブを備えるさらなる車両クレーンを開示している。この場合、主ジブは、主ジブヘッドの上端に一緒に取り付けられ、ここから車両の方向にV字状に延在する2本の主ジブアームからなる。2本の主ジブアームは、各々水平軸のまわりに起伏可能であるように、それらの下端が車両に取り付けられる。主ジブアームは、主ジブを左右に横方向に傾けることができるように、各々反対方向に伸縮可能である。2本の主ジブアームを起伏させる目的で、主ジブヘッドおよび車両上の旋回フレームに同様に関節式に固定された単一の伸縮式ラフィングジブが設けられる。したがって、主ジブヘッドを起点として、2本の主ジブアームおよびラフィングジブが三脚を形成する。2本の主ジブアームの起伏手順とともに、それらは圧縮荷重を受け、ラフィングジブは引張荷重を受ける。U字形の旋回フレームは、順次、車両の主ジブアームの水平軸の領域に関節式に取り付けられる。その上、旋回フレームは、同様に車両上に支持された油圧シリンダを介して、持ち上げられた動作位置から実質的に水平な搬送位置まで旋回することができる。したがって、旋回フレームと一緒に、ラフィングジブを有する2本の主ジブアームも、動作位置から搬送位置までさらなる油圧シリンダによって旋回する。
【0006】
さらに、実用新案文書独国実用新案第202005015044号明細書は、道路を走行することができ、垂直旋回軸のまわりに旋回可能な上部構造が取り付けられた下部キャリッジを備える車両クレーンがすでに記載されている。基本ボックスおよびそこから伸縮可能な複数の内部ボックスを備える伸縮ジブは、水平軸のまわりに起伏可能であるように上部構造に取り付けられる。伸縮シリンダは、2つの油圧ラフィングシリンダを介して上下に起伏し、2つの油圧ラフィングシリンダは、互いに平行に間隔を空けて配置され、それらの下端で上部構造上に支持され、それらの上端が伸縮ジブの基本ボックスのほぼ中央の領域内で下側に関節結合される。
【0007】
さらに、公開文書国際公開第01/14239号は、リーチスタッカとも呼ばれる走行可能なコンテナスタッキングデバイスを開示する。そのようなコンテナスタッキングデバイスは、たとえば港においてコンテナを扱うために使用される。コンテナスタッキングデバイスは、円周上に均一に分配され、各々完全に360°操縦することができる6個のゴムタイヤの二重車輪を有する環状下部キャリアから実質的に構成される。2つのラフィングシリンダを介して水平なラフィング軸のまわりの下げられた非動作位置から所望の動作位置まで油圧で持ち上げることができる伸縮ジブが下部キャリア上に配置される。コンテナを扱うために散布機の形態の荷重持ち上げ手段が伸縮ジブの端部に配置される。伸縮ジブは、通常、基本ボックスおよびその中に後退および延在することができる複数の内部ボックスから構成される。ラフィングシリンダは、それらの下端がいずれの場合も下部キャリッジの反対側の端部の中央で支持され、それらの上端がいずれの場合も基本ボックスの上端の領域内で横方向に関節接合される。伸縮ジブの縦方向に見られるように、伸縮ジブから始まり、2つのラフィングシリンダは、実質的にV字形に、非動作位置および動作位置の各々にも延在する。非動作位置では、すなわち、伸縮ジブは下げられ、ラフィングシリンダは垂直線と約45°の傾斜角を形成する。
【0008】
特許文書米国特許第3792778号明細書も、水平な格納位置から持ち上げられた動作位置まで単一のラフィングシリンダを介して起伏することができる伸縮ジブを備える車両クレーンをすでに開示している。格納位置では、伸縮ジブは2つの支持体を介して車両上にさらに支持されている。この場合、車両クレーンの縦方向に見られるように、支持体は伸縮ジブに対してV字形に向けられる。伸縮ジブが水平な格納位置にあるとき、支持体は垂直線と45°の傾斜角を形成する。
【0009】
さらに、特許文書米国特許第6089388号明細書は、水平な格納位置から持ち上げられた動作位置まで2つの相互に平行なラフィングシリンダを介して起伏することができる伸縮ジブを備えるさらなる車両クレーンを開示する。伸縮ジブが格納位置にあるとき、ラフィングシリンダは垂直線と75°の傾斜角を形成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、特にジブが格納位置にあるときに可能な限り最もコンパクトな設計を達成することが可能であるように、起伏可能なジブを備えるこれまで既知のアセンブリおよびこのように装備された車両クレーンをさらに開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、請求項1の特徴を備える車両クレーンにおいて、本発明に従って達成される。従属請求項2~14は、本発明の有利な実施形態を記載する。
【0012】
したがって、本発明は、格納位置と動作位置との間の垂直ラフィング平面内で少なくとも2つのラフィングシリンダを介して起伏することができるジブを備える車両クレーンの場合、ラフィング平面上で互いに対向して位置するラフィングシリンダは、動作位置において、それらの縦軸間の広がり角を形成し、ラフィングシリンダはジブの端部の外側でジブに作用し、ジブが好ましくは水平な格納位置にあるとき、ラフィング平面上に投影されたラフィングシリンダの縦軸、およびラフィング平面内に延在する上向き方向または垂直方向が、それらの間に傾斜角を形成し、ジブが格納位置にあるとき、傾斜角が80°~100°、特に好ましくは90°~97°であるという事実のおかげで、ジブが格納位置にあるとき可能な限り最もコンパクトな設計が達成されることを提案する。言い換えれば、ジブの側面図において、2つのラフィングシリンダは、ジブがその格納位置に配置されると、前記垂直上向き方向に対してこのように傾斜し、ジブが動作位置にあるとき、広がり角は2°~30°である。基本的な発明概念によれば、ジブが格納位置にあるとき、上向き方向に対するラフィングシリンダの傾斜角は80°~100°である。したがって、ジブが格納位置にあるとき、各ラフィングシリンダが水平より最大+10°上だけでなく、その最大-10°下にも延在できることが可能である。ラフィングシリンダおよび旋回可能な台の下端側接続部の配置に応じて、格納位置にあるときのジブは、上向きまたは下向きに傾斜して、かつそれと平行に水平に対して同様に延在することができる。
【0013】
構成に応じて、ジブが格納位置にあるとき、ラフィングシリンダが水平とほとんど平行に延在することができるならば有利であると考えられ、上向き方向に対するその傾斜角は、好ましくは90°~97°であり得る。
【0014】
これに関して、ジブが動作位置にあるとき、底部または頂部で開いている広がり角は2°~30°である。
【0015】
本発明に関連して、ジブの端部の外側でジブに作用するラフィングシリンダに関する特徴は、ラフィングシリンダがジブまたは基本ボックス上の領域に作用し、この領域が、ジブまたはジブの基本ボックスの縦方向に見られるように、ジブまたは基本ボックスの上端から、また下端から、いずれの場合もジブまたは基本ボックスの全長の少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、特に好ましくは少なくとも30%離間していることを意味すると理解される。したがって、全体として、ラフィングシリンダは、ジブまたは基本ボックスの先端よりもジブまたは基本ボックス上の中心に作用する可能性が高い。
【0016】
結果として得られる利点は、ラフィングシリンダを介して支持されるジブが、その格納位置に配置されると、収縮状態のままであるその構成要素の全長にわたって以前のようにもはや持ち上げられないという事実に基づいている。これまでは格納位置において上向き方向に対して垂直または平行に延在していたラフィングシリンダの向きに関して、特に現在可能である、ラフィングシリンダのほぼまたは正確に水平な方向付け能力において、ラフィングシリンダを収容することができるように、格納位置に配置されたジブの下に現在必要な設置スペースがかなり少ない。本発明によれば、ジブが格納位置にあるときに上向き方向に対して現在常に傾斜している各個々のラフィングシリンダの向きは、これまで上下に配置されていたその端側接続部の位置が、傾斜から生じる水平方向および垂直方向の成分のために互いに対してオフセットされることを保証する。各個々のラフィングシリンダの上端側接続部は、その下端側接続部のまわりの円形経路上で旋回するので、ジブは、その格納位置において対応して下方に方向付けすることができる。
【0017】
本発明は、車両クレーンがベースフレームを備えることができ、このベースフレーム上にジブがその下端で起伏可能に取り付けられることを規定する。可能な限り最も安定した自己完結型アセンブリを得るために、ラフィングシリンダが同様にベースフレーム上に関節式に支持されれば特に有利であると考えられる。この目的のために、有利なことに、たとえばいずれの場合にも、ユニバーサルジョイントまたはボールジョイントとして設計され、それを介してラフィングシリンダがベースフレームに対応して接続される下部取り付けアセンブリを提供することが可能である。
【0018】
代替として、またはそれに加えて、ベースフレームに起伏可能に取り付けられたジブは、2つのラフィングシリンダのうちの1つの上端にいずれの場合にも割り当てられる上部取り付けアセンブリを備えることができる。このようにして、ラフィングシリンダはまた、上部取り付けアセンブリを介してジブ上に関節式にそれらの上端で支持される。好ましくは、上部取り付けアセンブリは、ユニバーサルジョイントまたはボールジョイントとして設計することができる。
【0019】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、前述の取り付けアセンブリのうちの少なくとも1つは、必要に応じて、ラフィング平面に対して垂直に延在する関連する経路に沿って可変的に配置されるために、ベースフレームまたはジブに対して移動可能であり得る。この目的のために、前記経路は、少なくとも部分的に直線状または曲線状のコースを有することができる。2つの下部取り付けアセンブリおよび/または上部取り付けアセンブリのうちの少なくとも1つの結果として生じる変位可能性は、ラフィングシリンダ間の広がり角の対応する変化を可能にし、それによってその間に形成される広がり角は、それに応じて下方(A字形)または上方(V字形)に開くことができる。言い換えれば、正面図から、2つのラフィングシリンダは、互いにA字形またはV字形を有することができる。前記V字形の場合、ジブ上のラフィングシリンダの上端は、ベースフレーム上のそれらの対向する下端よりも、ラフィング平面に対して直角方向に互いにさらに離れている。A字形の場合、上記はそれに応じて逆に当てはまる。V字形は、ラフィングシリンダの下部取り付けアセンブリに近いよりコンパクトな設計を可能にする。
【0020】
下部および/または上部取り付けアセンブリの前記変位可能性により、A字形またはV字形の位置からもたらされ、ジブを特に横方向の影響に対してA字形に安定させる効果は、たとえば有利なことに、必要に応じて増大させることができる。それにもかかわらず、少なくとも1つのラフィングシリンダの取り付けアセンブリの変位は、必要に応じて、本発明によるアセンブリのよりコンパクトな寸法を再び可能にする。したがって、ジブが好ましくは格納位置にあるとき、少なくとも1つの取り付けアセンブリは、それに応じてアセンブリの横方向寸法を少なくとも一時的に減少させるために、前記ジブに向かってより近くに変位することができる。同時に減少する広がり角は、ジブの横方向の安定性を低下させる可能性があり、いずれの場合も、それはジブがその格納位置にあるときには特に重要でない。
【0021】
さらに、変位および/または回転のオプションの助けを借りて、ベースフレーム上にジブを支持する旋回ジョイントに対するラフィングシリンダの取り付け位置を変更することも可能である。結果として、ベースフレーム上およびジブ上のラフィングシリンダの端部、ならびにベースフレーム上のジブの旋回ジョイントを含むそれぞれの三角形を変えることが可能である。このように可能な変位は、ラフィングシリンダ、ベースフレーム、およびジブ上の構成要素が最適化され得るような、改善された力の流れを可能にする。
【0022】
上記で指定された変位可能性のさらなる発展形態では、ラフィングシリンダの下部および/または上部取り付けアセンブリが、対応する方式で互いに向かって、または関連する経路に沿って互いに離れるように、それぞれ反対方向に同時に変位することができれば特に有利であると考えられる。結果として、2つのラフィングシリンダの傾斜を同じ程度に変更することができ、そのため、それらのジブへの接続は、ラフィングシリンダの縦軸の間の広がり角が変更される間、常にラフィング平面内に留まる。したがって、取り付けアセンブリの変位中のジブの望ましくない横方向の変位を効果的に防止することができる。
【0023】
対照的に、ジブが格納位置にあるとき、底部または頂部で開いている広がり角の値は、特に好ましい方式では0°~45°または0°~6°であり得、その結果、たとえば本発明による車両クレーンの走行中に、ラフィングシリンダの少なくともほぼ平行な方向付けが可能になる。
【0024】
ベースフレームが、たとえば車両クレーンの領域に接続することができる構成要素であり得る場合でも、ベースフレーム自体が、下部キャリッジに対して回転することができる車両クレーンの上部構造の一部であれば有利であると考えられる。当然、ベースフレーム自体を上部構造とすることができ、または上部構造として設計することができる。それに代わるものとして、ベースフレーム自体を車両クレーンの下部キャリッジの一部とすることができる。当然、この点において、ベースフレーム自体がそのような下部キャリッジとすることができ、または下部キャリッジとして構成できることも確かである。
【0025】
次に提示される本発明による車両クレーンにより、特に前記アセンブリのジブが格納位置にあるとき、全体的にコンパクトな設計を達成することが可能である。これは、ジブが格納位置にあるときに傾斜するラフィングシリンダの向きによって可能になる。変位可能な取り付けアセンブリと組み合わせて、ラフィングシリンダの互いに対するA字形の向きのためにすでに提供されているジブの横方向の安定性を再び高めることができ、それはジブの旋回可能な台の構成に時折大きい影響を及ぼす可能性がある。通常、これは、特に動作位置に位置するジブに作用する横方向の力を単独で吸収することができ、前記横方向の力をたとえばそれを装備した車両クレーンに伝達することができるように、一般に互いに平行に向けられたラフィングシリンダと組み合わせて設計されるべきである。ジブが少なくとも動作位置にあるときの2つのラフィングシリンダのA字形またはV字形の向きのために、特にA字形において、静的に見て有利で全体的に安定した三角形が生成され、ジブに横方向に作用する力は、次に、ラフィングシリンダを介して少なくとも部分的に吸収および伝達することができ、それは、そのような力を吸収する能力に関してジブおよびベースフレーム自体の旋回可能な台の要件を著しく単純化する。結果として、ジブおよびベースフレームの前記旋回可能な構造物の台は、たとえば、それに対応してより有利であり、より細長くすることができる。
【0026】
好ましい実施形態では、ジブは、基本ボックスおよび内外に伸縮することができる内部ボックスを有する伸縮ジブであることが規定される。次いで、ラフィングシリンダはジブの基本ボックスに作用する。
【0027】
特に有利な方式では、正確に2つのラフィングシリンダが設けられる。
【0028】
さらに、前記車両クレーンは、下部キャリッジを備える。
【0029】
特に有利な方式では、特に、ゴムタイヤを有し、道路を走行することができる下部キャリッジを備える車両クレーンの一実施形態では、ジブが格納位置にあるとき、ジブが下部キャリッジ上に支持されることが規定される。
【0030】
本発明の例示的な実施形態は、以下の記述を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、本発明による車両クレーンを概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の本発明の車両クレーンの
詳細を概略的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、別の実施形態における
図2の
詳細を示す概略立面図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態における本発明による車両クレーンを概略的に示す正面図である。
【
図5】
図5は、さらなる実施形態における本発明による車両クレーンを概略的に示す正面図である。
【
図6】
図6は、移動式クレーンとして設計された本発明による車両クレーンを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、本発明による車両クレーン1を示す。たとえば、それは、互いに平行に離間した2つの履帯2a、2bを装備した下部キャリッジ2を有するチェーンドライブを備える車両クレーン1である。当然、たとえば、ここではより詳細には示されていないが、タイヤを有する下部キャリッジも使用することができる。運転室3aおよびジブ4を備える上部構造3は、下部キャリッジ2上に回転可能に配置される。通常、ジブ4は、外部基本ボックス4aおよび前記基本ボックスの内外に油圧で伸縮することができる内部ボックス4bからなる伸縮ジブとして構成される。ジブ4は、その下端を介して上部構造3に旋回可能に取り付けられ、その結果、この場合にのみ示されている水平な格納位置P1と、この場合に示され、それに対して持ち上げられた動作位置P2との間で、ジブ4を起伏させることができる。この場合に示された動作位置P2における水平に対するジブ4の傾斜は、当然、その格納位置P1におけるジブ4の向きから逸脱するすべての他の値も想定することができるので、一例として考慮されるべきである。
【0033】
ジブ4は、垂直ラフィング平面WE内でのみ起伏することができ、その向きは、下部キャリッジ2に対して上部構造3を回転させる可能性によって、より詳細には示されていない方式で必要に応じて変更することができる。ジブ4を起伏および支持するために必要な駆動は、ラフィング平面WE上で互いに対向して位置する2つ、好ましくは正確には2つのラフィングシリンダ5a、5bを介して達成される。2つのラフィングシリンダ5a、5bは、ジブ4がこの場合に示された動作位置P2にあるとき、それらの縦軸x1、x2がそれらの間に底部で開いている広がり角aを形成するように、互いに対して配置されていることが明らかである。その上、ラフィングシリンダ5a、5bは、ジブ4の端部の外側でジブ4に作用する。
【0034】
図2は、
図1にすでに示されている車両クレーン1の部品のいくつかを備える本発明によるアセンブリ10を示す。具体的には、アセンブリ10は、この場合明確にするためにのみその基本ボックスに縮小されたジブ4、ならびにすべてがアセンブリ10のベースフレーム11上のそれらの下端を介して支持された2つのラフィングシリンダ5a、5bを有する。ジブ4は、水平な旋回軸Sのまわりに起伏することができるようにベースフレーム11に取り付けられ、2つのラフィングシリンダ5a、5bは、ベースフレーム11上に関節式に支持される。この目的のために、この場合、2つの示された取り付けアセンブリ12a、12bがベースフレーム11上に設けられ、2つの示された上部取り付けアセンブリ13aおよび13bがジブ4上に設けられ、これらは各々2つのラフィングシリンダ5a、5bに配置される。これらの取り付けアセンブリ12a、12b、13a、13bの各々は、より詳細には示されていない方式で、2つのラフィングシリンダ5a、5bがジブ4の起伏中に必要とされる移動の自由を可能にするために、ユニバーサルジョイントまたはボールジョイントとして設計されている。
【0035】
その上、ラフィングシリンダ5a、5bに関連して、油圧シリンダとして設計されたラフィングシリンダ5a、5bは、好ましくはそれらのピストンロッドの上端で、その上端および下端の外側の基本ボックス4aに関節接合されることが
図1から明らかである。2つのラフィングシリンダ5a、5bは、基本ボックス4aの上半分のほぼ中央で基本ボックス4aに作用する。好ましくは、2つのラフィングシリンダ5a、5bは、基本ボックス4aの縦方向に見られるように、いずれの場合も基本ボックス4aの上端および下端からも基本ボックス4aの全長の少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、特に好ましくは少なくとも30%離間した領域内でジブ4の基本ボックス4aに作用することが規定される。
【0036】
基本的に、ここに示されたベースフレーム11は、下部キャリッジ2に対して回転することができる
図1の車両クレーン1の上部構造3の一部であること、あるいは上部構造3自体であることが可能である。それに代わるものとして、前記ベースフレーム11が
図1の車両クレーン1の下部キャリッジ2の一部であること、あるいは下部キャリッジ2自体であることが実現可能である。
【0037】
図3は、
図2のアセンブリ10を次に側面図で示す。この場合、ジブ4の水平な格納位置P1が示され、これは、明確にするために、この場合はまたジブ4の基本ボックスに縮小されているが、ジブ4の動作位置P2は破線によって示されている。ジブ4は、その格納位置P1をたとえば水平方向Xと平行に延在し、一方、ラフィング平面WE上で互いに対向して位置し、横方向Yに互いに離間している2つのラフィングシリンダ5a、5bは、この図では上下に位置している。したがって、前景にあるラフィングシリンダ5bのみを見ることが可能であり、その後方に位置するラフィングシリンダ5aはそれによって隠されている。ジブ4が動作位置P2にあるときに変化するラフィングシリンダ5a、5bの傾斜は、同様に破線を使用してそれに応じて示されている。
【0038】
図から分かるように、ラフィングシリンダ5a、5bの縦軸x1、x2は、ラフィング平面WEに投影され、水平方向Xに対して直交してラフィング平面WE内に延在する上向き方向Zは、ジブ4がその格納位置P1に配置されると、それらの間に傾斜角bを形成する。言い換えれば、ジブ4が格納位置P1にあるとき、2つのラフィングシリンダ5a、5bは、上向き方向Zに対して傾斜している。この場合、ジブ4が格納位置P1にあるとき、前記傾斜角bは約75°である。アセンブリ10の構成に応じて、ジブ4が格納位置P1にあるとき、傾斜角bはまた、ここには示されていない方式で、好ましくはまた水平方向Xの下に平行にラフィングシリンダ5a、5bが延在することができるほど大きくすることができる。
【0039】
図4は、代替の実施形態を参照して
図2および
図3のアセンブリ10の構造を示す。ここに示されたアセンブリ10の図から分かるように、2つのラフィングシリンダ5a、5bの上部取り付けアセンブリ13a、13bは、当然、ジブ4の基本ボックス上に横方向に配置することもできる。この場合、2つの下部取り付けアセンブリ12a、12bは、より詳細には示されていない方式で、ラフィング平面WEに対して垂直に延在する経路Pに沿って変位することができる。前記経路は、少なくとも部分的に直線状および/または曲線状のコースを有することができ、この場合、前記経路は、例として曲線状で示されている。2つの取り付けアセンブリ12a、12bは、経路Pに沿って、互いに向かってまたは互いから離れて、それぞれ反対方向R1、R2に同時に変位できることが規定される。取り付けアセンブリ12a、12bの変位可能な設計により、2つのラフィングシリンダ5a、5bの縦軸x1、x2の間に形成される広がり角aを変更することが可能である。ジブ4が格納位置P1および/または動作位置P2にあるとき、底部でまたはベースフレーム11に向かって開いている広がり角aの変更を達成することができる。広がり角aは、0°より大きく45°までの値を想定することができ、前記角度は、好ましくはジブ4が格納位置P1にあるときよりも動作位置P2にあるときの方が大きくなることができる。たとえば、ジブ4が格納位置P1にあるとき、広がり角aは、たとえば、0°~6°とすることができ、その結果、2つのラフィングシリンダ5a、5bは、たとえば、このように装備された車両1の走行中に可能な限り最もコンパクトな寸法を得るために、互いにほぼ平行に延在する。
【0040】
図5は、本発明によるアセンブリ10のさらなる代替の実施形態を示す。そこでは、2つのラフィングシリンダ5a、5bの間に形成された広がり角aが次に上部で開いているように、下部取り付けアセンブリ12a、12bが上部取り付けアセンブリ13a、13bの反対側に配置されていることが分かる。言い換えれば、2つのラフィングシリンダ5a、5bの配置は、この点においてベースフレーム11に向かって先細になっている。この場合、上部取り付けアセンブリ13a、13bのそれぞれの位置は、経路Pに沿って同様に変更することができ、上部で開いている広がり角aにおいて対応するばらつきをもたらす。
【0041】
当然、上部および下部取り付けアセンブリ12a、12b、13a、13bは、必要に応じて頂部または底部で広がり角aを開くことができるように変位することができる。
【0042】
図6は、公道を走行することができ、それに対応して、たとえば4つの車軸に分配されたゴム車輪タイヤ2cを有する下部キャリッジ2を有する移動式クレーンとして設計された本発明による車両クレーン1の概略図を示す。典型的な方式では、垂直回転軸のまわりを旋回することができ、起伏可能なジブ4を有する上部構造3が下部キャリッジ2に取り付けられる。ジブ4が
図3に関してすでに記載された実質的に水平な格納位置P1にあるとき、ジブは支持体14を介して下部キャリッジ2に支持されることが分かる。この目的のために、支持体14は、下部キャリッジ2の上面から始まり、ジブ4の基本ボックス4aの底面に向かって垂直に延在し、この位置でそれに接する。
【符号の説明】
【0043】
1 車両クレーン
2 下部キャリッジ
2a 履帯
2b 履帯
2c 車輪タイヤ
3 上部構造
3a 運転室
4 ジブ
4a 基本ボックス
4b 内部ボックス
5a ラフィングシリンダ
5b ラフィングシリンダ
10 アセンブリ
11 ベースフレーム
12a 取り付けアセンブリ、底部
12b 取り付けアセンブリ、底部
13a 取り付けアセンブリ、頂部
13b 取り付けアセンブリ、頂部
14 支持体
a 広がり角
b 傾斜角
P 経路
P1 格納位置
P2 動作位置
R1 方向
R2 方向
S 旋回軸
W ラフィング平面
x1 縦軸
x2 縦軸
X 水平方向
Y 横方向
Z 上向き方向