(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】医療機器
(51)【国際特許分類】
C08F 220/28 20060101AFI20241112BHJP
A61L 31/02 20060101ALI20241112BHJP
A61L 31/04 20060101ALI20241112BHJP
A61L 31/10 20060101ALI20241112BHJP
A61L 33/06 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
C08F220/28
A61L31/02
A61L31/04 110
A61L31/10
A61L33/06 200
(21)【出願番号】P 2021542083
(86)(22)【出願日】2019-10-01
(86)【国際出願番号】 US2019054047
(87)【国際公開番号】W WO2020072481
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-09-30
(32)【優先日】2018-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517416374
【氏名又は名称】マイクロベンション インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MICROVENTION, INC.
【住所又は居所原語表記】35 Enterprise, Aliso Viejo, California 92656 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ボールドウィン、アーロン
(72)【発明者】
【氏名】ウ、シンピン
(72)【発明者】
【氏名】フィアメンゴ、ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ウルリッヒ、ギャレット
(72)【発明者】
【氏名】ベレット、ジョン
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0083610(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0048349(US,A1)
【文献】特表2017-501763(JP,A)
【文献】特表2013-502486(JP,A)
【文献】特表2010-527274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
A61L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコキシアルキル
エステル、(テトラヒドロフラン-2-イル)メチルアクリレート又はその組み合わせから選択される第1モノマーと、
第2モノマ
ーと、
のフリーラジカル重合から調製されるポリマーであって、
前記アルコキシアルキル
エステルは、式
【化1】
の構造を有し、
式中、
R
1は、C
1-4アルキルであり、
R
2は、C
1-4アルキレンであり、
R
3は、C
1-4アルキルであり、
前記第2モノマーは、
(3-アクリルオキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3-アクリルオキシプロピル)メチルジエトキシシラン、(3-アクリルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3-アクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタクリルオキシメチル)メチルジメトキシシラン、(メタクリルオキシメチル)メチルジエトキシシラン、メタクリルオキシメチルトリエトキシシラン、メタクリルオキシメチルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルジメチルエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、又はそれらの組み合わせである、
ポリマー。
【請求項2】
前記アルコキシアルキル
エステル又はその組み合わせと、
前記第2モノマ
ーと、
のフリーラジカル重合から調製される、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
(テトラヒドロフラン-2-イル)メチルアクリレートと、
前記第2モノマ
ーと、
のフリーラジカル重合から調製される、請求項1に記載のポリマー。
【請求項4】
R
1は、メチルであり、
R
2は、メチレン、エチレン、プロピレン又はブチレンである、
請求項1に記載のポリマー。
【請求項5】
R
1は、メチルであり、
R
2は、メチレン又はエチレンである、
請求項1に記載のポリマー。
【請求項6】
R
2
は、メチレン、エチレン、プロピレン又はブチレンであり、
R
3は、メチルであ
る、
請求項1に記載のポリマー。
【請求項7】
R
1は、メチルであり、
R
3は、メチルである、
請求項1に記載のポリマー。
【請求項8】
第1モノマーと第2モノマーのフリーラジカル重合から調製されるポリマーであって、
前記第1モノマーは、メトキシエチルメタクリレートであり、
前記第2モノマーは、(3-アクリルオキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3-アクリルオキシプロピル)メチルジエトキシシラン、(3-アクリルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3-アクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタクリルオキシメチル)メチルジメトキシシラン、(メタクリルオキシメチル)メチルジエトキシシラン、メタクリルオキシメチルトリエトキシシラン、メタクリルオキシメチルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルジメチルエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、又はそれらの組み合わせである、
ポリマー。
【請求項9】
前記第1モノマーは、2-メトキシエチルメタクリレートである、請求項
8に記載のポリマー。
【請求項10】
前記第1モノマー対前記第2モノマーの比率は、50:50から99:1である、又は前記第2モノマー対前記第1モノマーの比率は、50:50から99:1である、請求項1
~9のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか1項に記載のポリマーと結合した外表面を含む製造物品。
【請求項12】
血管内に埋め込まれるように構成された拡張可能な管状体を含む、請求項
11に記載の製造物品。
【請求項13】
前記拡張可能な管状体は、金属を含む、請求項
12に記載の製造物品。
【請求項14】
前記金属は、金、銀、銅、鋼、アルミニウム、チタン、コバルト、クロム、白金、ニッケル、それらの組み合わせ、以下に限るものではないが、ニチノール(ニッケル-チタン)、コバルト-ニッケル、コバルト-クロム、白金-タングステン等のそれらの合金、又はそれらの組み合わせ、を含む、請求項
13に記載の製造物品。
【請求項15】
前記金属は、ニチノールと、白金-タングステンとの組み合わせである、請求項
13又は14に記載の製造物品。
【請求項16】
前記ポリマーは、前記外表面に共有結合している、請求項
11~15のいずれか1項に記載の製造物品。
【請求項17】
医療機器である、請求項
11~
16のいずれか1項に記載の製造物品。
【請求項18】
埋め込み可能医療機器の表面をヒドロキシル化によって活性化させることと、
請求項1~
10のいずれか1項に記載のポリマーを、活性化された前記表面に結合させることと、
を含む、
埋め込み可能医療機器をコーティングする方法。
【請求項19】
前記表面の前記ヒドロキシル化は、酸素プラズマを使用して行われる、請求項
18に記載の方法。
【請求項20】
前記酸素プラズマは、120sccmの酸素流量、500ワットの電力、400mTorrの圧力、5分の時間、又はそれらの組み合わせによって適用される、請求項
19に記載の方法。
【請求項21】
ヒドロキシル化後に、アルゴンプラズマ処理を更に含む、請求項
18~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記アルゴンプラズマは、365sccmのアルゴン流量、300ワットの電力、500mTorrの圧力、10分の時間、又はそれらの組み合わせによって適用される、請求項
21に記載の方法。
【請求項23】
前記結合が、ディップコーティング、スプレー、ブラッシング、又はそれらの組み合わせによる、請求項
18~22のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2018年10月1日に出願した米国仮特許出願番号第62/739,633号に基づく優先権を主張し、該仮出願に記載されたすべて内容は、参照によって本明細書に援用される。
【0002】
(技術分野)
本明細書は、医療機器を説明し、該医療機器は、血栓形成を低減可能なポリマーコーティングが共有結合された、ステント及び分流器を含む。該医療機器の製造方法及び使用方法についても説明する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
医療機器のコーティングを本明細書で説明する。機器のコーティングは、組織及び/又は血液と接触しうる任意の医療機器に使用できる。いくつかの実施形態において、本コーティングは、コーティングされていない機器に比べ、機器周辺の血栓形成を防止又は低減できる。
【0004】
ステント及び分流器を含む拡張可能な管状体は、医療分野において、狭窄症、及び動脈壁の膨張又は脆弱化(すなわち動脈瘤)を含む血管の様々な病状の治療に広く使用されている。狭窄症の治療において、ステントは、血管内の狭窄部に挿入され、展開される。ステントは、血管管腔から狭窄部を押し広げ、血管内の血流を回復させる。頭蓋内動脈瘤の治療において、ステントは動脈瘤頸部にまたがるよう配置され、その後の動脈瘤コイル塞栓術を補助する。又は、分流器を動脈瘤頸部にまたがって配置し、動脈瘤壁の血流への曝露を低減又は排除する。
【0005】
ステント及び分流器は様々な血管症状への治療にうまく使用されている一方で、制約がないわけではない。一つの制約の例として、ステントの血栓形成を防ぐために抗血小板療法が必要となることがあげられる。現在、抗血小板薬2剤併用療法が標準治療である。低用量のアスピリンの無期限の服用が推奨される。術後12ヶ月までのP2Y12阻害剤(クロピドグレル、プラスグレル、チカグレロール、及びカングレロール)の服用も推奨される。抗血小板薬2剤併用療法はステントした血管管腔の維持に効果的だが、出血(胃腸部又は頭蓋内)及び他の合併症(ステント原因の血栓症)が生じうる。頻繁ではないにしろ、このような合併症は、罹患率と死亡率に関連がある。結果として、抗血小板薬2剤併用療法の減少又は排除する取り組みが行われている。
【0006】
ステントによる血栓形成を低減させるためのコーティングの一つとして、ホスホリルコリンがある。かかる実施形態において、コバルト-クロム編組分流器には、血栓形成を低減させる取り組みにおいて、ホスホリルコリンが共有結合されている。トロンボグラム試験において、コーティングされていない分流器と比べ、コーティングした分流器において血栓形成の低下が確認されている。
【0007】
ステントによる血栓形成を低減しうる他のコーティングとして、ヘパリンがある。かかる実施形態において、ヘパリンコーティングは、血栓形成を低減させる取り組みにおいて、ステント上にディップコーティング又はスプレーコーティングされる。しかしながら、ヘパリンコーティングの血栓形成における低減効果は確認されていない。
【0008】
抗血栓コーティングは、管状の拡張可能な機器や、チューブ、カテーテル、心肺バイパス、及び血液酸素発生器を含むさまざまな血液接触医療機器上に施すことができる。例えば、ポリ(メトキシエチルアクリレート)を含むポリマーコーティングは、血液ガス酸素供給器のコーティングのために開発されてきた。このポリマーは、血栓形成を低減するために、灌流回路のすべての表面にコーティングされている。ただし、このポリマーは表面に簡易に吸着しており、短期間使用する機器にのみ適している。
【0009】
他の多くの分子について、ステント、分流器、及び他の血液と接触する医療機器のコーティングとして評価されてきた。しかしながら、十分な耐久性のあるコーティングは見つかっていない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書では、管状の拡張可能な機器について説明する。これらの機器は、血管系又は他の体管腔内に埋め込まれるように構成されることができる。医療機器表面には、管状の拡張可能な機器による血栓形成を低減することができる活性化コポリマーが結合されている。いくつかの実施形態において、結合は、共有結合による。
【0011】
一つの実施形態において、管状の拡張可能な機器は、血管に埋め込まれる構成に織り込まれた複数の編組フィラメントを含む。編組フィラメントは、金属製とすることができる。金属組成は、金、銀、銅、鋼、アルミニウム、チタン、コバルト、クロム、白金、ニッケル、それらの組み合わせ、以下に限るものではないが、ニチノール(ニッケル-チタン)、コバルト-ニッケル、コバルト-クロム、白金-タングステン等の合金、及びそれらの組み合わせを含むことができる。編組フィラメントは、ポリマー化することができる。ポリマー編組フィラメントは、例えば、フィラメントの表面上にヒドロキシル基を含むことができる。
【0012】
他の実施形態において、管状の拡張可能な機器は、血管に埋め込まれる構成にレーザー切断されたポリマーチューブを含むことができる。ポリマーチューブは、例えば、ポリマーチューブの表面上にヒドロキシル基を含むことができる。
【0013】
他の実施形態において、管状の拡張可能な機器は、血管に埋め込まれる構成にレーザー切断された金属チューブを含むことができる。金属チューブは、金、銀、銅、鋼、アルミニウム、チタン、コバルト、クロム、白金、ニッケル、それらの組み合わせ、以下に限るものではないが、ニチノール(ニッケル-チタン)、コバルト-ニッケル、コバルト-クロム、白金-タングステン等の合金、及びそれらの組み合わせを含むことができる。
【0014】
一つの実施形態において、活性化コポリマーは、第1モノマー(例えば、アルコキシアルキルアクリレート又はその誘導体)と、第2モノマー(例えば、シラン含有モノマー)とを共重合させることによって調製することができる。
【0015】
一つの実施形態において、第1モノマーは、式(I)
【化1】
のモノマーであって、
式中、
R
1は、H又はC
1-4アルキルであり、
R
2は、C
1-4アルキレンであり、
R
3は、C
1-4アルキルであるか、又は、
第1モノマーは、式(II)
【化2】
のモノマーである。
【0016】
いくつかの実施形態において、第1モノマーは、式(I)である。いくつかの実施形態において、第1モノマーは、式(II)である。
【0017】
いくつかの実施形態において、R1は、H、メチル、エチル、プロピル、又はブチルである。いくつかの実施形態では、R1はH又はメチルである。
【0018】
いくつかの実施形態において、R2は、メチレン、エチレン、プロピレン、又はブチレンである。いくつかの実施形態では、R2はメチレン又はエチレンである。
【0019】
いくつかの実施形態において、R3は、メチル、エチル、プロピル、又はブチルである。いくつかの実施形態において、R3は、メチルである。
【0020】
いくつかの実施形態において、R1は、メチルであり、かつ、R3は、メチルである。
【0021】
一つの実施形態において、第1モノマーは、メトキシエチルアクリレート(例えば、2-メトキシエチルアクリレート)、又はメトキシエチルメタクリレート(例えば、2-メトキシエチルメタクリレート)である。
【0022】
一つの実施形態において、第2モノマーは、1)アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、又はそれらの組み合わせなどの重合部位と、2)モノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、又はそれらの組み合わせなどのシランを含む。
【0023】
一つの実施形態において、第2モノマーは、式(III)
【化3】
のモノマーであり、
式中、
R
4は、H又はC
1-4アルキルであり、
R
5は、C
1-4アルキレンであり、
R
6は、-O-(C
1-4アルキル)であり、
R
7は、C
1-4アルキル又は-O-(C
1-4アルキル)であり、
R
8は、C
1-4アルキル又は-O-(C
1-4アルキル)である。
【0024】
いくつかの実施形態において、R4は、H又は-CH3である。いくつかの実施形態において、R3は、-CH3である。いくつかの実施形態において、R4は、-CH3であり、かつ、R6は、-OCH3である。
【0025】
いくつかの実施形態において、R5は、メチレン、エチレン、プロピレン、又はブチレンである。
【0026】
いくつかの実施形態において、R6は、-O-メチル、-O-エチル、-O-プロピル、又は-O-ブチルである。
【0027】
いくつかの実施形態において、R7は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、-O-メチル、-O-エチル、-O-プロピル、又は-O-ブチルである。
【0028】
いくつかの実施形態において、R8は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、-O-メチル、-O-エチル、-O-プロピル、又は-O-ブチルである。
【0029】
いくつかの実施形態において、R6は、-O-メチル、-O-エチル、-O-プロピル、又は-O-ブチルであり、R7は、メチル、エチル、プロピル、又はブチルであり、かつ、R8は、メチル、エチル、プロピル、又はブチルである。
【0030】
いくつかの実施形態において、R6は、-O-メチル、-O-エチル、-O-プロピル、又は-O-ブチルであり、R7は、-O-メチル、-O-エチル、-O-プロピル、又は-O-ブチルであり、かつ、R8は、メチル、エチル、プロピル、又はブチルである。
【0031】
いくつかの実施形態において、R6は、-O-メチル、-O-エチル、-O-プロピル、又は-O-ブチルであり、R7は、-O-メチル、-O-エチル、-O-プロピル、又は-O-ブチルであり、かつ、R8は、-O-メチル、-O-エチル、-O-プロピル、又は-O-ブチルである。
【0032】
一つの実施形態において、第2モノマーは、3-アクリルオキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3-アクリルオキシプロピル)メチルジエトキシシラン、(3-アクリルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3-アクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(3-メタクリルアミドプロピル)トリメトキシシラン、(メタクリルオキシメチル)ジメチルエトキシシラン、(メタクリルオキシメチル)メチルジメトキシシラン、(メタクリルオキシメチル)メチルジエトキシシラン、3-アクリルアミドプロピルトリメトキシシラン、アクリルオキシメチルトリメトキシシラン、メタクリルオキシメチルトリエトキシシラン、メタクリルオキシメチルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルジメチルエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、又はそれらの組み合わせである。
【0033】
いくつかの実施形態において、活性化コポリマーは、本明細書記載の1つ又は複数の第1モノマーと、本明細書記載の1つ又は複数の第2モノマーとを共重合させることによって調製することができる。
【0034】
一つの実施形態において、第1モノマーは式(I)でのモノマーあり、第2モノマーは式(III)のモノマーである。一つの実施形態において、第1モノマーは式(II)のモノマーであり、第2モノマーは式(III)のモノマーである。
【0035】
一つの実施形態において、第1モノマーは、メトキシエチルアクリレート(例えば、2-メトキシエチルアクリレート)又はメトキシエチルメタクリレート(例えば、2-メトキシエチルメタクリレート)、又はそれらの組み合わせであり、第2モノマーは、3-アクリルオキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3-アクリルオキシプロピル)メチルジエトキシシラン、(3-アクリルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3-アクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(3-メタクリルアミドプロピル)トリメトキシシラン、(メタクリルオキシメチル)ジメチルエトキシシラン、(メタクリルオキシメチル)メチルジメトキシシラン、(メタクリルオキシメチル)メチルジエトキシシラン、3-アクリルアミドプロピルトリメトキシシラン、アクリルオキシメチルトリメトキシシラン、メタクリルオキシメチルトリエトキシシラン、メタクリルオキシメチルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルジメチルエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、又はそれらの組み合わせである。
【0036】
いくつかの実施形態において、第1モノマー対第2モノマーの比率は、約50:50から約99:1である。いくつかの実施形態において、第2モノマー対第1モノマーの比率は、約50:50から約99:1である。
【0037】
埋め込み可能医療機器をコーティングする方法についても説明する。本方法は、ヒドロキシル化により埋め込み可能医療機器の表面を活性化すること、及び、第1モノマー、例えば、アルコキシアルキルアクリレート又はその誘導体と、第2モノマー、例えば、シラン含有モノマーから形成される活性化コポリマーを、活性化表面に結合させることを含むことができる。
【0038】
いくつかの実施形態において、本方法は、活性化表面を生成するため、酸素プラズマ、水プラズマ、又は過酸化水素による表面のヒドロキシル化を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、活性化表面を生成するため、酸素プラズマによる表面のヒドロキシル化を含む。
【0039】
いくつかの実施形態において、本方法には、ヒドロキシル化に続いてアルゴンプラズマ処理を更に含む。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本明細書記載の医療機器は、人工心肺、人工血管、心肺バイパス装置、カテーテル、ガイドワイヤー、ステント、分流器、静脈フィルター、末梢保護装置、チューブ、ステントグラフトなどを含む、血流に接触する任意の材料又は機器である。いくつかの実施形態では、医療機器は、ステント又は分流器である。他の実施形態では、医療機器は、編組ステント又は編組分流器である。
【0041】
少なくとも、医療機器表面の一部はコーティングされ得る。いくつかの実施形態において、医療機器の一部は、本明細書記載のコーティングによって、覆われている。いくつかの実施形態においては、医療機器表面の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約95%は、コーティングされている。
【0042】
医療機器の表面は、血栓形成を低減するために処理/コーティングされる。医療機器は、血栓形成を低減するための表面処理、及び医療機器にコーティングを施すための方法を含むことができる。
【0043】
コーティングのための基材は、金属、ガラス、ポリマー、セラミック、これらの組み合わせなどを含む任意の適切な材料とすることができる。いくつかの実施形態では、基材は金属である。任意の金属表面を使用することができるが、適切な金属には、金、銀、銅、鋼、アルミニウム、チタン、コバルト、クロム、白金、ニッケル、それらの合金、及びそれらの組み合わせを含むことができる。適切な合金には、ニチノール(ニッケル-チタン)、コバルト-ニッケル、コバルト-クロム、及び白金-タングステンが含むことができる。一つの実施形態では、基材は、ニチノールと白金-タングステンの組み合わせである。いくつかの実施形態では、基材はポリマーである。いくつかの実施形態において、適切な材料は、ヒドロキシル化によって活性化することができる。
【0044】
血栓形成を低減するためにコーティングされるポリマーは、2つ以上のモノマー(例えば、本明細書記載の第1モノマー及び第2モノマー)の重合によって調製することができる。
【0045】
一つの実施形態では、ポリマーを調製するために、2つ以上のモノマー及び開始剤が溶媒に溶解される。一般に、2つ以上のモノマー及び開始剤を溶解する任意の溶媒を使用することができる。適切な溶媒には、メタノール/水、エタノール/水、イソプロパノール/水、ジオキサン/水、テトラヒドロフラン/水、ジメチルホルムアミド/水、ジメチルスルホキシド及び/又は水、及びそれらの組み合わせを含むことができる。カルボン酸及びヒドロキシル含有モノマーを使用した場合、トルエン、キシレン、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、THF、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミドを含む、さまざまな溶媒を利用することができる。
【0046】
重合開始剤は、溶液中のモノマーの重合を開始させるために使用することができる。重合は、酸化還元、放射線、熱、又は当技術分野で知られている他の任意の方法によって開始することができる。モノマー溶液の放射線架橋は、適切な開始剤を用いた紫外線又は可視光、又は開始剤を使用しない電離放射線(例えば、電子ビーム又はガンマ線)により達成することができる。重合は、加熱ウェルのような熱源を使用して溶液を従来通りに加熱すること、又はモノマー溶液に赤外光を当てることのいずれかにより、熱を加えることによって達成することができる。
【0047】
いくつかの実施形態において、開始剤は使用しなくてもよい。
【0048】
一つの実施形態において、重合開始剤は、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)又は水溶性AIBN誘導体(2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩)、又は4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)である。他の適切な開始剤には、アゾビスイソブチロニトリルを含む、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、過硫酸アンモニウム、過酸化ベンゾイル、及びそれらの組み合わせを含むことができる。重合開始剤濃度は、溶液中のモノマーの質量の約0.25~約2%w/wの範囲とすることができる。重合反応は、約65~約85℃の範囲などの高温で実施することができる。重合完了後、ポリマーは、非溶媒中での沈殿によって回収され、真空下で乾燥させることができる。
【0049】
いくつかの実施形態において、本明細書記載のポリマーは、約10,000g/mol超、約10,000と約200,000g/molの間、約8,000と約200,000g/molの間、約100,000と約200,000g/molの間、約50,000と約200,000g/molの間、約25,000と約200,000g/molの間、約8,000と約100,000g/molの間、約10,000と約100,000g/molの間、約50,000と約100,000g/molの間、約75,000と約100,000g/molの間、約75,000と約200,000g/molの間、約10,000g/mol、約50,000g/mol、約100,000g/mol、約150,000g/mol、又は約200,000g/molの分子量を有することができる。
【0050】
一つの実施形態において、ポリマーは、複数のステップで基材に適用され、各ステップは、任意であってもなくてもよい。いくつかの実施形態において、ポリマーは、3つのステップで基材に適用される。各ステップの必要性は、基材の選択によって決まる。
【0051】
ステップ1は、洗浄工程を含む。基材を洗浄するため、超音波処理下で、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、水、又はそれらの組み合わせでインキュベートすることができる。各洗浄工程の持続時間は、約1~約20分の範囲である。超音波処理の温度は約18~約55℃の範囲とすることができる。ステップ1終了後、基材はステップ2へと移行する。いくつかの実施形態において、ステップ2はステップ1の直後に行われる。
【0052】
いくつかの実施形態において、洗浄工程は、任意で石けん/洗剤及び水での洗浄を含むことができる。
【0053】
ステップ2は、基材表面上のヒドロキシル基数を増加させる処理である、ヒドロキシル化を含む。処理される表面は、酸、塩基、過酸化物、プラズマ処理、及びそれらの組み合わせを含む、多くの異なる酸化剤を使用してヒドロキシル化してもよい。
【0054】
処理用の酸には、塩酸、硝酸、硫酸、フッ化水素酸、過塩素酸、及びそれらの組み合わせが含まれる。処理用の塩基には、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、及びそれらの組み合わせが含まれる。処理用の過酸化物には、過酸化水素、過酸化t-ブチル、及びそれらの組み合わせが含まれる。一つの実施形態において、酸化剤は過酸化水素である。ヒドロキシル化に使用される酸化剤は、約1~約100%の濃度であってもよい。ヒドロキシル化する継続期間は、約18~約100℃の範囲の温度で約0.25~約4時間の範囲とすることができる。ヒドロキシル化後、超音波を用いて又は用いずに、基材をアセトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、水、又はそれらの組み合わせで洗浄してもよい。各洗浄時間は、約1~約15分の範囲とすることができる。真空下での乾燥は、必要に応じて洗浄の後に行うことができる。一つの実施形態において、ヒドロキシル化は、約10%過酸化水素を利用して100℃で約45分間行い、続いて水、エタノール、及びアセトンで約5分間連続して洗浄し、続いて真空下で乾燥する。
【0055】
他の実施形態においては、処理のために酸素プラズマを使用する。基材は、プラズマ処理機中で、酸素プラズマにさらされる。プラズマ処理パラメータには、酸素流量、電力、圧力、及び時間を含むことができる。酸素流量は、約1~約500sccm、約1~約250sccm、約1~約120sccm、約100~約500sccm、約100~約200sccm、約100~約140sccm、少なくとも約100sccm、少なくとも約50sccm、又は約500sccm未満とすることができる。電力は、約1~約600ワット、約1~約500ワット、約1~約400ワット、約100~約600ワット、約200~約600ワット、約400~約600ワット、少なくとも約400ワット、少なくとも約500ワット、又は約600ワット未満とすることができる。圧力は、約120~約2000mTorr、約200~約2000mTorr、約200~約1000mTorr、約300~約500mTorr、約300~約2000mTorr、少なくとも約200mTorr、少なくとも約300mTorr、又は2000mTorr未満とすることができる。時間は、約1~約15分、約5~約15分、約5~約10分、少なくとも約5分、少なくとも約4分、少なくとも約3分、少なくとも約2分、又は少なくとも約1分とすることができる。一つの実施形態において、酸素流量は約120sccmであり、電力は約500ワットであり、圧力は約400mTorrであり、時間は約5分である。
【0056】
ヒドロキシル化に続いて、基材表面を洗浄するために、基材を、任意でアルゴンプラズマでプラズマ処理してもよい。
【0057】
プラズマ処理パラメータは、アルゴン流量、電力、圧力、及び時間を含むことができる。アルゴン流量は、約1~約500sccm、約1~約250sccm、約1~約120sccm、約100~約500sccm、約100~約200sccm、約100~約140sccm、少なくとも約100sccm、少なくとも約50sccm、又は約500sccm未満とすることができる。電力は、約1~約500ワット、約1~約400ワット、約1~約300ワット、約100~約500ワット、約200~約500ワット、約200~約400ワット、少なくとも約100ワット、少なくとも約200ワット、又は約500ワット未満とすることができる。圧力は、約120~約2000mTorr、約200~約2000mTorr、約200~約1000mTorr、約300~約500mTorr、約300~約2000mTorr、少なくとも約200mTorr、少なくとも約300mTorr、又は約2000mTorr未満とすることができる。時間は、約1~約15分、約5~約15分、約5~約10分、少なくとも約5分、少なくとも約4分、少なくとも約3分、少なくとも約2分、又は少なくとも約1分とすることができる。一つの実施形態において、アルゴン流量は約365sccmであり、電力は約300ワットであり、圧力は約500mTorrであり、時間は約10分間である。
【0058】
ステップ3は、活性化コポリマーを基材に共有結合させる処理である、活性化コポリマー結合処理を含む。プラズマ処理に続いて、基材は、活性化コポリマーを基材に結合させるために、活性化コポリマー(シランを含むコポリマー):溶媒系に配置させることができる。このステップの間に、第2以上のモノマーからポリマーに付与された官能基を、ヒドロキシル化を介して基質に付与されたヒドロキシル基と反応させることができる。このステップでは、ポリマーを、水、緩衝液、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、又はそれらの組み合わせに溶解させることができる。このステップの溶媒は、50%v/vエタノール:50%v/vクエン酸緩衝液(水溶液、pH7)とすることができる。溶媒中のポリマーの濃度は、溶媒中の約0.5~約95%の範囲とすることができる。一つの実施形態において、溶媒中のポリマーの濃度は約1%である。インキュベーションの時間は、約18~約55℃の温度範囲で約1~約48時間(例えば、約6時間から約24時間)の範囲で行う。結合は、任意で、約100~約250rpmの速度で振とうしながら反応させてもよい。一つの実施形態において、結合反応条件は、約150rpmの速度での振とうしながら、室温、及び約18時間のインキュベーションである。
【0059】
結合反応後、基材は、エタノール、メタノール、イソプロパノール、トルエン、水、ブタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、クロロホルム、ジクロロメタン、及びそれらの組み合わせですすいでもよい。一つの実施形態においては、すすぎはエタノールである。次に、コポリマー層は、約30~約150℃の範囲の温度で、約5~約60分の範囲の持続時間にわたって硬化させてもよい。硬化条件は、約110℃で約30分間とすることができる。
【0060】
ポリマー溶液は、ディップコート、スプレー、ブラッシング、又はそれらの組み合わせによって基材に適用することができる。一つの実施形態において、基材は、活性化されたコポリマー溶液に約1~48時間浸漬してもよい。別の実施形態において、浸漬時間は約18時間である。インキュベーション温度は、約18~約100℃の範囲の温度で実施してもよい。一つの実施形態において、インキュベーション温度は室温である。結合は、任意で、約100~約250rpmの速度で振とうしながら反応させてもよい。一つの実施形態において、振とう条件は、約150rpmである。
【0061】
インキュベーション後、基材は、任意で、エタノール、メタノール、イソプロパノール、トルエン、水、ブタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、クロロホルム、ジクロロメタン、及びそれらの組み合わせですすいでもよい。一つの実施形態において、すすぎは、50%v/vエタノール:50%v/v水の中で行う。すすいだ後、基材は、熱又は真空を使用して乾燥させてもよい。基材は、真空下で又は非真空下で、約40~約100℃の範囲の温度で加熱させてもよい。いくつかの実施形態において、乾燥条件は、真空下で40℃である。乾燥後、基板を滅菌して包装することができる。
【0062】
コーティングされた機器は、コーティングを実質的に劣化させることなく滅菌させることができる。滅菌後、コーティングの少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約99%、又は約100%がそのまま残っている。一つの実施形態において、滅菌方法は、オートクレーブ、ガンマ線照射、圧力滅菌、及び/又は蒸気滅菌とすることができる。
【0063】
本明細書記載のコーティングは、トロンビンの成長を防ぐことができる。いくつかの実施形態において、コーティングは、約50~約90%、約70~約90%、約70~約100%、少なくとも約60%、又は少なくとも約70%まで、湿ったトロンビン形成量を、低減させることができる。いくつかの実施形態において、コーティングは、乾燥状態で測定した場合、約60~約95%、約70~約95%、約70~約100%、少なくとも約70%、少なくとも約80%又は少なくとも約90%、トロンビン形成量を、低減させることができる。
【0064】
(実施例1)
(ヒドロキシル化のための編組医療機器の準備)
最初に、編組医療機器は、超音波処理しながら、アセトン、エタノール、及び水中でそれぞれ5分間の連続的なインキュベーションによって事前に洗浄される。洗浄された編組医療機器は、10%過酸化水素水溶液中で100℃で45分間インキュベートされ、次に水で3回すすがれる。編組医療機器は、超音波処理により、水、エタノール、及びアセトン中でそれぞれ5分間の連続インキュベーションを使用して洗浄される。最後に、編組医療機器を真空下で18時間乾燥させる。
【0065】
(実施例2)
(酸素プラズマを介した編組医療機器のヒドロキシ化)
最初に、編組医療機器は、超音波処理により、アセトン、エタノール、及び水中でそれぞれ5分間の連続的なインキュベーションにより事前に洗浄される。次に、編組医療機器を真空オーブンに移し、減圧下、40℃で30分間乾燥させる。乾燥させた編組医療機器は、以下のパラメータで、IoN40プラズマ処理システム機器によって活性化される。
【表1】
【0066】
活性化された編組医療機器は、その後バイアルに保管される。
【0067】
(実施例3)
(式(I)のモノマー及び式(III)のモノマーのコポリマーの調製)
水40mLとメタノール40mLの混合物に、式(I)のモノマー40g、式(III)のモノマー4g、及びアゾビスイソブチロニトリル440mgを溶解させる。重合は、65℃で20時間かけて反応させる。コポリマーは、イソプロパノール:ヘキサン(500mL:500mL)の混合物中で沈殿させ、回収する。コポリマーを、100mLのテトラヒドロフランに再溶解させ、イソプロパノール:ヘキサン(400mL:600mL)の混合物に再沈殿させる。コポリマーを100mLのテトラヒドロフランに再溶解させ、イソプロパノール:ヘキサン(300mL:700mL)の混合物に再沈殿させる。コポリマーを100mLのテトラヒドロフランに再溶解させ、イソプロパノール:ヘキサン(200mL:800mL)の混合物に再沈殿させる。最後に、コポリマーを1Lのヘキサン中で1時間撹拌し、真空下で乾燥させる。
【0068】
(実施例4)
(式(I)のモノマー及び式(III)のモノマーのコポリマーを使用するコーティングされた編組医療機器の調製)
実施例3のコポリマーを、50%/50%のエタノール/pH7.0のクエン酸緩衝液(v/v)に最終濃度10mg/mLで溶解させる。実施例2の編組医療機器を、コポリマー溶液を含むバイアルに入れ、150rpmのオービタルシェーカー上で室温にて18時間インキュベートする。インキュベーション後、編成医療機器を50%/50%エタノール/水ですすぎ、40℃で30分間、真空下で硬化させる。
【0069】
(実施例5)
(チャンドラーループモデルを使用したコーティングされた編組医療機器の評価)
PVCチューブ(内径4mm、外径6mm、長さ54.86cm)を測定の上、チャンドラーループ装置(インダストリーデザイン、ノイフェン、ドイツ)のクレードルに収まるよう切断する。事前に計量された単一コーティングされた編組医療機器(4.5mm×2cm)をチューブ内に配置する。ウシの血液を、地元の食肉処理場から新鮮な状態で採取し、1U/mLでヘパリン化させる。必要に応じて、活性化凝固時間(ACT)は、プロタミンを使用して150~250秒になるように調整する。チューブは血液で満たされ、チューブはコネクタで密閉される。ループは、ポリカーボネート安定化ディスクに嵌められ、その後ディスクはチャンドラーループ装置に固定される。ループは、37℃で300s-1のせん断速度で2時間回転させる。
【0070】
次に、アセンブリをチャンドラーループ器具から取り出し、血液をPTFEビーカーに排出させる。排出された血液のACTを決定する。チューブは、PBSで3回完全にすすがれ、残留血液をすべて除去する。チューブはかみそりの刃で縦方向に切断され、編組医療機器が回収され、写真を撮られる。ステントの重量を測定し(湿重量)、重量(乾燥重量)が一定になるまで37℃で乾燥させる。
【0071】
(実施例6)
(X線光電子分光法を用いたコーティングされた編組医療機器の評価)
編組医療機器の支柱を、X線光電子分光法を使用して分析し、元素組成が決定される。
【0072】
(実施例7)
(トロンボグラムを使用したコーティングされた医療機器の評価)
トロンボグラムは、マニュアルに従い、トロンビノスコープ機器(トロンビノスコープB.V.、マーストリヒト、オランダ)で実施される。96ウェルプレートに、陰性対照、試験品、及びトロンビンキャリブレーターが、グループごとに9回繰り返して配列される。血小板欠乏血漿(PPP、240μL)をすべてのウェルに加え、PPP試薬(60μL)を陰性対照及び試験品に加える。FluCa溶液を機器に加えた後、スタートボタンを押し、96ウェルプレートを機器に挿入して、10分間のインキュベーションを開始する。インキュベーション完了時、結果が処理され、報告される。
【0073】
(実施例8)
(ブラッドループ(BloodLoop)を使用したコーティングされた編組医療機器の評価)
実施例7の編組医療機器は、デリバリーシステム内に包装され、電子ビームにより、滅菌される。Xコーティングで裏打ちされたPVCチューブ(OD=5/16”、ID=3/16”、テルモ、日本)は、140cmの長さにカットされる。チューブを生理食塩水で満たし、3つの同一機器がチューブに配置される。次に、生理食塩水がヒツジの血液(1U/mLでヘパリン化されたもの)に置き換えられ、血液のACTは150~250秒の間とする。検査を開始するため、チューブをチューブコネクタで閉じてループにし、蠕動ポンプにロードする。加熱チャンバー内でループをインキュベートしている間、血液は273s-1で2時間±30分間ループ内を循環する。インキュベーションの最後に、各ループから血液が排出され、ACTが測定される。チューブの全長を、生理食塩水ですすぐ。ステントをチューブから切り取り、重量を測定し(湿重量)、重量(乾燥重量)が一定になるまで37℃で乾燥させる。
【0074】
特に明記しない限り、本明細書及び請求項で使用される成分の量、分子量、反応条件などの特性を表すすべての数字は、すべての場合において「約」という用語によって修飾されると理解される。したがって、反対に示されない限り、本明細書及び添付の請求項に記載された数値パラメータは、本発明によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。非常に少なくとも、均等論の適用を請求項の範囲に限定する意図ではなく、各数値パラメータは、報告された有効桁数に照らして、通常の概数の手法を適用することによって、少なくとも解釈される。本発明の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータは近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に記載の数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、数値は、本質的に、それぞれの試験測定で発見される標準偏差に必然的に起因する特定のエラーが含まれる。
【0075】
本発明を説明する文脈で(特に以下の請求項で)使用される用語「a」、「an」、「the」及び同様の指示対象は、本明細書に別段の記載がない限り、又は文脈によって明確に矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を包含すると解釈される。本明細書での数値範囲の列挙は、単に、範囲内にある個々の値を個別に参照する簡潔な方法として機能することを意図する。本明細書に別段の記載がない限り、個々の値は、本明細書に個別に参照されているかのように本明細書に取り込まれる。本明細書記載のすべての方法は、本明細書に別段の記載がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書で提供されるありとあらゆる例、又は例示的な記載(例えば、「など」、「のような」)の使用は、単に、本発明をよりよく説明することを意図しており、請求項記載の本発明の範囲を限定するものではない。本明細書のいかなる文言も、本発明の実施に不可欠な、請求項に記載されていない要素を示すものとして解釈されない。
【0076】
本明細書で使用される、「アルコキシ」という用語は、単独でも、又は他の用語と組み合わせて使用されている場合であっても、特に明記しない限り、酸素原子を介して分子の残りの部分に結合した、本明細書で定義される指定された数の炭素原子を有するアルキル基を意味する。
【0077】
本明細書で使用される、「アルキル」という用語は、単独でも、又は他の用語と組み合わせて使用されている場合であっても、特に明記しない限り、指定された炭素原子の数を有する直鎖又は分岐鎖炭化水素を意味し(例えば、C1-4は、1から4個の炭素原子を意味する)、直鎖又は分岐鎖置換基を含む。
【0078】
本明細書記載の本発明の代替要素又は実施形態のグループ化は、限定として解釈されるべきではない。各グループの構成要素は、個別に、又は本明細書に記載のグループの他の構成要素又は他の要素との任意の組み合わせで、参照及び請求されてもよい。グループの1つ又は複数の構成要素が、利便性及び/又は特許性の理由から、グループに含まれる、又はグループから削除されることが予想される。任意のそのような包含又は削除が発生した場合、本明細書には修正されたグループが含まれると見なされ、添付の請求項で使用されるすべてのマーカッシュグループの記載要件を満たす。
【0079】
本発明の特定の実施形態が本明細書に記載されており、本明細書には、本発明を実施するために本発明者らが知っている最良の形態が含まれる。当然ながら、本明細書記載の実施形態の変形は、上記の説明を読むと、当業者には明確となるであろう。本発明者は、当業者がそのような変形を適切に採用することを期待し、本発明者らは、本明細書に具体的に記載されている以外の方法で本発明が実施されることを意図している。したがって、本発明は、適用可能な法が許可する限り、本明細書に添付された請求項記載の主題のすべての変形及び同等物を含む。さらに、そのすべての可能な変形における上記の要素の任意の組み合わせは、本明細書に別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、本発明に含まれる。
【0080】
さらに、本明細書全体を通して、特許及び印刷された出版物について多くの参照がなされてきた。上記の参照文献及び印刷された出版物のそれぞれは、その全体が、参照により、個別に本明細書に援用される。
【0081】
最後に、本明細書記載の発明の実施形態は、本発明の原理の例示であることと理解されるべきである。採用されうる他の変形例は、本発明の範囲に含まれる。したがって、限定ではないが例として、本発明の代替構成を、本明細書の教示に従って利用することができる。したがって、本発明は、正確に示され、及び、説明されたものに限定されない。
【0082】
(付記)
(付記1)
式(I)又は式(II)の第1モノマーと、式(III)の第2モノマーとのフリーラジカル重合から調製されるポリマーと結合した外表面を含む製造物品であって、
式(I)は、構造
【化4】
を有し、
式中、
R
1は、H又はC
1-4アルキルであり、
R
2は、C
1-4アルキレンであり、
R
3は、C
1-4アルキルであり、
式(II)は、構造
【化5】
を有し、
式(III)は、構造
【化6】
を有し、
式中、
R
4は、H又はC
1-4アルキルであり、
R
5は、C
1-4アルキレンであり、
R
6は、-O-(C
1-4アルキル)であり、
R
7は、C
1-4アルキル、又は、-O-(C
1-4アルキル)であり、
R
8は、C
1-4アルキル、又は、-O-(C
1-4アルキル)である、
製造物品。
【0083】
(付記2)
前記製造物品が医療機器である、ことを特徴とする付記1に記載の製造物品。
【0084】
(付記3)
前記医療機器は、血管内に埋め込まれるように構成された拡張可能な管状体を含む、ことを特徴とする付記2に記載の製造物品。
【0085】
(付記4)
前記拡張可能な管状体は、金属を含む、ことを特徴とする付記3に記載の製造物品。
【0086】
(付記5)
前記金属は、金、銀、銅、鋼、アルミニウム、チタン、コバルト、クロム、白金、ニッケル、それらの組み合わせ、以下に限るものではないが、ニチノール(ニッケル-チタン)、コバルト-ニッケル、コバルト-クロム、白金-タングステン等のそれらの合金、又はそれらの組み合わせ、を含む、ことを特徴とする付記4に記載の製造物品。
【0087】
(付記6)
前記金属は、ニチノールと、白金-タングステンとの組み合わせである、ことを特徴とする付記4に記載の製造物品。
【0088】
(付記7)
前記ポリマーが、前記外表面に共有結合している、ことを特徴とする付記2に記載の製造物品。
【0089】
(付記8)
血管に埋め込まれるように構成された拡張可能な管状体を備える医療機器であって、
前記拡張可能な管状体の外表面には、アルコキシアルキルアクリレート又はその誘導体とシラン含有モノマーとのフリーラジカル重合から調製されたポリマーが結合している、
ことを特徴とする医療機器。
【0090】
(付記9)
前記拡張可能な管状体が金属を含む、ことを特徴とする付記8に記載の医療機器。
【0091】
(付記10)
前記金属が、ニチノール、ニッケル、チタン、白金、クロム、コバルト、それらの合金、又はそれらの組み合わせを含む、ことを特徴とする付記9に記載の医療機器。
【0092】
(付記11)
前記ポリマーが、前記管状体に共有結合している、ことを特徴とする付記8に記載の医療機器。
【0093】
(付記12)
埋め込み可能医療機器の表面をヒドロキシル化によって活性化させることと、
第1アクリレートモノマーと、シランを含む第2モノマーとから形成されたポリマーを、活性化された前記表面に結合させることと、
を含む、
埋め込み可能医療機器をコーティングする方法。
【0094】
(付記13)
前記表面の前記ヒドロキシル化は、酸素プラズマを使用して行われる、ことを特徴とする付記12に記載の方法。
【0095】
(付記14)
前記酸素プラズマは、約120sccmの酸素流量、約500ワットの電力、約400mTorrの圧力、約5分の時間、又はそれらの組み合わせによって適用される、ことを特徴とする付記13に記載の方法。
【0096】
(付記15)
ヒドロキシル化後に、アルゴンプラズマ処理を更に含む、ことを特徴とする付記12に記載の方法。
【0097】
(付記16)
前記アルゴンプラズマは、約365sccmのアルゴン流量、約300ワットの電力、約500mTorrの圧力、約10分の時間、又はそれらの組み合わせによって適用される、ことを特徴とする付記15に記載の方法。
【0098】
(付記17)
前記結合が、ディップコーティング、スプレー、ブラッシング、又はそれらの組み合わせによる、ことを特徴とする付記12に記載の方法。
【0099】
(付記18)
前記第1モノマーがアルコキシアルキル(メタ)アクリレート又は(テトラヒドロフラン-2-イル)メチルアクリレートである、ことを特徴とする付記12に記載の方法。
【0100】
(付記19)
前記第2モノマーが、3-アクリルオキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3-アクリルオキシプロピル)メチルジエトキシシラン、(3-アクリルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3-アクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(3-メタクリルアミドプロピル)トリメトキシシラン、(メタクリルオキシメチル)ジメチルエトキシシラン、(メタクリルオキシメチル)メチルジメトキシシラン、(メタクリルオキシメチル)メチルジエトキシシラン、3-アクリルアミドプロピルトリメトキシシラン、アクリルオキシメチルトリメトキシシラン、メタクリルオキシメチルトリエトキシシラン、メタクリルオキシメチルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルジメチルエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、又はそれらの組み合わせである、ことを特徴とする付記12に記載の方法。