IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三井化学株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社プライムポリマーの特許一覧

特許75868283次元造形用材料、3次元造形物、及び3次元造形物の製造方法
<>
  • 特許-3次元造形用材料、3次元造形物、及び3次元造形物の製造方法 図1
  • 特許-3次元造形用材料、3次元造形物、及び3次元造形物の製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】3次元造形用材料、3次元造形物、及び3次元造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/314 20170101AFI20241112BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20241112BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20241112BHJP
【FI】
B29C64/314
B29C64/106
B33Y80/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021548932
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(86)【国際出願番号】 JP2020035806
(87)【国際公開番号】W WO2021060278
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-02-28
【審判番号】
【審判請求日】2023-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2019174751
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020071719
(32)【優先日】2020-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505130112
【氏名又は名称】株式会社プライムポリマー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智章
(72)【発明者】
【氏名】竹内 文人
(72)【発明者】
【氏名】陳 平凡
【合議体】
【審判長】神谷 健一
【審判官】廣田 健介
【審判官】植前 充司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-131497(JP,A)
【文献】国際公開第2019/146474(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/057424(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C64/118, B29C64/209, B29C64/314
B33Y10/00, B33Y77/00, B33Y80/00
B29K21/00, B29K23/00, B29L9/00
C08L101/00
C08K3/013
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と、熱可塑性エラストマーと、充填材と、からなり
前記熱可塑性樹脂は、プロピレン系重合体であり、
前記充填材は、タルクを含み、
前記充填材の含有量が、3次元造形用材料の全質量に対して、25質量%以上50質量%以下であり、
前記熱可塑性エラストマーの含有量が、3次元造形用材料の全質量に対して、20質量%以上であり、
前記熱可塑性エラストマーは、プロピレン系エラストマーであり、融点が80℃~120℃で、ショアD硬度が40~60で、メルトフローレートが2g/10min~20g/10minである、3次元造形用材料(但し、酸変性ポリオレフィン系樹脂を含む場合を除く)。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂の含有量が、前記3次元造形用材料の全質量に対して、0.1質量%以上50質量%以下である、請求項1に記載の3次元造形用材料。
【請求項3】
前記熱可塑性エラストマーの含有量が、前記3次元造形用材料の全質量に対して、20質量%以上40質量%以下である、請求項1又は請求項2に記載の3次元造形用材料。
【請求項4】
測定用熱プレス品に成形されたときの前記測定用熱プレス品のJIS K7161-2:2014に準拠した引張弾性率X(MPa)が下記式(I)を満たし、
測定用ハニカム造形物に積層造形されたときの前記測定用ハニカム造形物の平均反り量Y(mm)が下記式(IIa)を満たし、
前記測定用熱プレス品は、前記3次元造形用材料を熱プレス成形して得られたJIS K7161-2:2014に規定される1BA形試験片であり、
前記測定用ハニカム造形物は、
単位空間体積に占める前記3次元造形用材料の体積の比率を示す充填率が100%となるように前記3次元造形用材料を材料押出法により積層造形して得られた、250mm×100mm×高さ15mmの直方体状フレーム部と、
前記直方体状フレーム部内に、前記充填率が30%となるように前記3次元造形用材料を前記材料押出法により積層造形して得られたハニカム構造部と、からなり、
前記平均反り量Yは、前記測定用ハニカム造形物を定盤に載置したときの、前記定盤からの前記直方体状フレーム部の4隅の浮き上がり量の算術平均値を示す、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の3次元造形用材料。
式(I) 50≦ X ≦4000
式(IIa) 0≦ Y ≦6.0
【請求項5】
前記熱可塑性エラストマーの含有量が、前記3次元造形用材料の全質量に対して、20質量%以上70質量%未満であり、
前記充填材の含有量が、前記3次元造形用材料の全質量に対して、25質量%以上50質量%未満であり、
前記熱可塑性エラストマーの含有量と前記充填材の含有量との合計が、前記3次元造形用材料の全質量に対して、45質量%以上90質量%未満である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の3次元造形用材料。
【請求項6】
測定用造形物に積層造形されたときの前記測定用造形物のJIS K7161-2:2014に準拠した引張試験の破断応力α[MPa]が下記式(III)を満たし、
測定用ハニカム造形物に積層造形されたときの前記測定用ハニカム造形物の平均反り量Y[mm]が下記式(IIb)を満たし、
前記測定用造形物は、単位空間体積に占める前記3次元造形用材料の体積の比率を示す充填率が100%で、かつ前記3次元造形用材料の積み重ね方向と前記引張試験における前記測定用造形物の引張方向とが平行となるように、前記3次元造形用材料が材料押出法により積層造形され、機械加工されて得られたJIS K7161-2:2014に規定される1BA形試験片であり、
前記測定用ハニカム造形物は、
前記充填率が100%となるように前記3次元造形用材料を前記材料押出法により積層造形して得られた、250mm×100mm×高さ15mmの直方体状フレーム部と
前記直方体状フレーム部内に、前記充填率が30%となるように前記3次元造形用材料を前記材料押出法により積層造形して得られたハニカム構造部と、からなり、
前記平均反り量Yは、前記測定用ハニカム造形物を定盤に載置したときの、前記定盤からの前記直方体状フレーム部の4隅の浮き上がり量の算術平均値を示す、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の3次元造形用材料。
式(III) 6.5≦ α <200
式(IIb) 0≦ Y ≦4.0
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の3次元造形用材料を溶融する溶融工程と、
溶融された前記3次元造形用材料を3次元造形物製造装置のノズルから押し出し、3次元造形物を造形する造形工程と、
を有する3次元造形物の製造方法。
【請求項8】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の3次元造形用材料の造形物である3次元造形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、3次元造形用材料、3次元造形物、及び3次元造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、効率的な造形技術の1つとして、3次元造形用の製造装置を用いて3次元造形物を造形する方法が注目されている。3次元造形物を造形するには、3次元造形物の3次元の座標データ(以下、「3Dデータ」という。)が必要とされる。スライサーソフトウェアは、3Dデータを輪切りにして、複数の2次元データを生成する。3次元造形用の製造装置は、複数の2次元データをもとに、2次元層を順次積層する。これによって3次元造形物は、造形される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
3次元造形物の造形方式としては、材料押出(MEX;Material Extrusion)方式、光造形方式、インクジェット方式、粉末固着造形方式、粉末焼結造形方式等が挙げられる。これらの方式の中でも、材料押出方式は、幅広い材料選択が可能である点で特に注目されている。
【0004】
材料押出方式は、熱により溶解された熱可塑性樹脂をノズルから押出して積層することで3次元造形物を造形する方式である。特許文献2は、材料押出方式の3次元造形物の造形方法を開示している。
【0005】
特許文献1:特開2017-189885号公報
特許文献2:国際公開第2015/129733号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の材料押出方式の3次元造形物の造形方法は、造形材料として熱可塑性樹脂を単独で用いる。そのため、ノズルから押し出された溶融状態の熱可塑性樹脂が3次元造形物として固化する際、熱収縮等の影響で3次元造形物に変形が生じるおそれがあった。3次元造形物の変形は、3次元造形物の反りを含む。その結果、精度の高い3次元造形物が得られないことがあった。
【0007】
本開示は、上記事情に鑑みたものである。
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、3次元造形物の変形(特に反り)が抑制される3次元造形用材料を提供することにある。
本開示の他の実施形態が解決しようとする課題は、変形(特に反り)が抑制された3次元造形物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
【0009】
<1> 熱可塑性樹脂と、熱可塑性エラストマーと、充填材と、を含み、
前記充填材は、タルクを含み、
前記充填材の含有量が、3次元造形用材料の全質量に対して、5質量%以上70質量%以下である、3次元造形用材料。
<2> 前記熱可塑性樹脂の含有量が、前記3次元造形用材料の全質量に対して、0.1質量%以上100質量%未満である、<1>に記載の3次元造形用材料。
<3> 前記熱可塑性エラストマーの含有量が、前記3次元造形用材料の全質量に対して、10質量%以上100質量%未満である、<1>又は<2>に記載の3次元造形用材料。
<4> 前記熱可塑性樹脂は、プロピレン系重合体を含む、<1>~<3>のいずれか1項に記載の3次元造形用材料。
<5> 測定用熱プレス品に成形されたときの前記測定用熱プレス品のJIS K7161-2:2014に準拠した引張弾性率X(MPa)が下記式(I)を満たし、
測定用ハニカム造形物に積層造形されたときの前記測定用ハニカム造形物の平均反り量Y(mm)が下記式(IIa)を満たし、
前記測定用熱プレス品は、前記3次元造形用材料を熱プレス成形して得られたJIS K7161-2:2014に規定される1BA形試験片であり、
前記測定用ハニカム造形物は、
単位空間体積に占める前記3次元造形用材料の体積の比率を示す充填率が100%となるように前記3次元造形用材料を材料押出法により積層造形して得られた、250mm×100mm×高さ15mmの直方体状フレーム部と、
前記直方体状フレーム部内に、前記充填率が30%となるように前記3次元造形用材料を前記材料押出法により積層造形して得られたハニカム構造部と、からなり、
前記平均反り量Yは、前記測定用ハニカム造形物を定盤に載置したときの、前記定盤からの前記直方体状フレーム部の4隅の浮き上がり量の算術平均値を示す、<1>~<4>のいずれか1項に記載の3次元造形用材料。
式(I) 50≦X≦4000
式(IIa) 0≦Y≦6.0
<6> 前記熱可塑性エラストマーの含有量が、前記3次元造形用材料の全質量に対して、10質量%以上70質量%未満であり、
前記充填材の含有量が、前記3次元造形用材料の全質量に対して、10質量%以上50質量%未満であり、
前記熱可塑性エラストマーの含有量と前記充填材の含有量との合計が、前記3次元造形用材料の全質量に対して、20質量%以上90質量%未満である、<1>~<5>のいずれか1項に記載の3次元造形用材料
<7> 測定用造形物に積層造形されたときの前記測定用造形物のJIS K7161-2:2014に準拠した引張試験の破断応力α[MPa]が下記式(III)を満たし、
測定用ハニカム造形物に積層造形されたときの前記測定用ハニカム造形物の平均反り量Y[mm]が下記式(IIb)を満たし、
前記測定用造形物は、単位空間体積に占める前記3次元造形用材料の体積の比率を示す充填率が100%で、かつ前記3次元造形用材料の積み重ね方向と前記引張試験における前記測定用造形物の引張方向とが平行となるように、前記3次元造形用材料が材料押出法により積層造形され、機械加工されて得られたJIS K7161-2:2014に規定される1BA形試験片であり、
前記測定用ハニカム造形物は、
前記充填率が100%となるように前記3次元造形用材料を前記材料押出法により積層造形して得られた、250mm×100mm×高さ15mmの直方体状フレーム部と
前記直方体状フレーム部内に、前記充填率が30%となるように前記3次元造形用材料を前記材料押出法により積層造形して得られたハニカム構造部と、からなり、
前記平均反り量Yは、前記測定用ハニカム造形物を定盤に載置したときの、前記定盤からの前記直方体状フレーム部の4隅の浮き上がり量の算術平均値を示す、<1>~<6>のいずれか1項に記載の3次元造形用材料。
式(III) 6.5 ≦ α <200
式(IIb) 0≦ Y ≦4.0
<8> <1>~<7>のいずれか1項に記載の3次元造形用材料を溶融する溶融工程と、
溶融された前記3次元造形用材料を3次元造形物製造装置のノズルから押し出し、3次元造形物を造形する造形工程と、
を有する3次元造形物の製造方法。
<9> <1>~<7>のいずれか1項に記載の3次元造形用材料の造形物である3次元造形物。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一実施形態によれば、3次元造形物の変形(特に反り)が抑制される3次元造形用材料が提供される。
本開示の他の実施形態によれば、変形(特に反り)が抑制された3次元造形物及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】測定用ハニカム造形物を示す斜視写真である。
図2】平均反り量Yを説明するための測定用ハニカム造形物の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本開示の実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0013】
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0014】
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0015】
≪3次元造形用材料≫
本開示の3次元造形用材料は、3次元造形物の造形プロセスに供給されるフィードストックである。
本開示の3次元造形用材料は、熱可塑性樹脂と、熱可塑性エラストマーと、充填材と、を含む。充填材は、タルクを含む。充填材の含有量は、3次元造形用材料の全質量に対して、5質量%以上70質量%以下である。
そのため、本開示の3次元造形用材料を造形して得られる3次元造形物の反り等の変形が抑制される。
【0016】
(充填材)
本開示の3次元造形用材料は、充填材を含む。
【0017】
〔タルク〕
充填材は、タルクを含む。タルクは造形温度で体積変化を起こさないこと、タルクの熱膨張係数が熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーの各々の熱膨張係数と比べ低いことから、3次元造形物の変形(特に反り)は抑制される。3次元造形物が材料押出法により造形される場合、造形温度とは、3次元造形物製造装置のノズル温度を示す。造形温度でタルクが体積変化を起こさないとは、造形温度において、タルクが溶融しないこと、タルクが溶解しないこと、及びタルクが相転移を起こさないことを示す。
【0018】
タルクは、滑石と呼ばれる。タルクとは、含水珪酸マグネシウムである。含水珪酸マグネシウムは、層状粘土鉱物の一種であり、マグネシウム(Mg)とシリコン(Si)が酸素及び水酸基と結びついて構成される。
タルクの化学構造式は、一般に、[MgSi10(OH)]又は[3MgO・4SiO・HO]で表される。
【0019】
タルクの形状は、特に限定されず、例えば、鱗片状、楕円等が好ましい。
【0020】
タルクの体積平均粒径の上限は、好ましくは30μm以下、より好ましくは10μm以下である。タルクの体積平均粒径の下限は、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上である。
【0021】
タルクの体積平均粒径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置等の粒度分布測定装置を用い、タルクを水中に分散した状態で測定した各粒子の粒径に基づく各粒子の体積を小粒径側から積算した場合に積算体積が全体積の50%となる粒径値をいう。
【0022】
タルクの含有量は、充填材に総量100質量%に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。
【0023】
充填材は、タルクに加えて、無機充填材、有機充填材、光輝性粉体、色素粉体、及びこれらの複合充填材等を含んでもよい。充填材は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0024】
充填材は、無機充填材を含んでいてもよい。
例えば、無機充填材としては、タルクとは異なる無機粉体(以下、単に「無機粉体」という。)、光輝性無機粉体、複合無機粉体、無機繊維等が挙げられる。
無機粉体としては、酸化チタン、黒色酸化チタン、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、シリカ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マイカ、合成雲母、合成雲母鉄、セリサイト、モスハイジ(硫酸マグネシウムウィスカー)、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイト、窒化ホウ素等が挙げられる。
光輝性無機粉体としては、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆マイカ、酸化鉄被覆マイカ、酸化鉄被覆マイカチタン、酸化鉄・酸化チタン焼結体、アルミニウムパウダー等が挙げられる。
複合無機粉体としては、微粒子酸化チタン被覆マイカチタン、微粒子酸化亜鉛被覆マイカチタン、硫酸バリウム被覆マイカチタン、酸化チタン内包シリカ、酸化亜鉛内包シリカ等が挙げられる。
無機繊維としては、ガラス繊維等が挙げられる。
上記の中でも、無機充填材は、3次元造形物の変形(特に反り)をより抑制する観点から、無機粉体及び無機繊維の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0025】
無機充填材は、3次元造形物の引張弾性率を高くし、かつ3次元造形物の外観を滑らかにする観点から、タルク及びガラス繊維の両方を含んでいてもよい。この場合、タルク(Talc)とガラス繊維(Fiber)との含有比率(Talc:Fiber)は、質量比で、90:10~40:60であることが好ましく、85:15~45:55であることがより好ましい。特に、前記含有比率(Talc:Fiber)が85:15以上であると、3次元造形物の表面の毛羽立ちがより抑制される傾向にある。3次元造形物の表面の毛羽立ちの発生は、ガラス繊維に限らず、カーボンファイバー等の繊維系材料を含む3次元造形材料の特有の問題である。
【0026】
充填材は、有機充填材を含んでいてもよい。
例えば、有機充填材としては、樹脂粒子、パルプ等が挙げられる。
樹脂粒子としては、カーボンファイバー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、テトラフルオロエチレン、シリコーンパウダー、ポリフェニレンエーテル等が挙げられる。
パルプとしては、セルロース、セルロース誘導体等が挙げられる。
【0027】
充填材の形状は、球状、板状、及び針状のいずれであってもよい。
充填材は、多孔質であってもよく、無孔性であってもよい。
【0028】
充填材の含有量は、3次元造形物の変形(特に反り)をより抑制する観点から、3次元造形用材料の全質量に対して、5質量%以上70質量%以下であり、5質量%超え55質量%以下であることが好ましく、5質量%超え45質量%以下であることがより好ましい。
充填材の含有量が5質量%以上70質量%以下であれば、3次元造形物の変形(特に反り)は抑制される。
【0029】
(熱可塑性樹脂)
本開示の3次元造形用材料は、熱可塑性樹脂を含む。
本開示において、熱可塑性樹脂の25℃での引張弾性率は、6.0×10Pa以上である。
熱可塑性樹脂は、特に制限されず、公知の熱可塑性樹脂が適用できる。熱可塑性樹脂は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
例えば、熱可塑性樹脂としては、汎用プラスチック、エンジニアリング・プラスチック、スーパーエンジニアリング・プラスチック等が挙げられる。
汎用プラスチックとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、プロピレン系重合体(プロピレン単独重合体(PP)等)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS樹脂)、スチレンアクリロニトリルコポリマー(AS樹脂)、アクリル樹脂(PMMA等)などが挙げられる。
エンジニアリング・プラスチックとしては、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE、変性PPE、PPO)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、環状ポリオレフィン(COP)等が挙げられる。
スーパーエンジニアリング・プラスチックとしては、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、非晶ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)等が挙げられる。
中でも、熱可塑性樹脂は、高密度ポリエチレン(HDPE)、プロピレン系重合体、ポリアミド(PA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)及びポリアセタール(POM)からなる群より選択される1種以上を含むことが好ましく、プロピレン系重合体を含むことがより好ましい。
【0030】
熱可塑性樹脂は、結晶性の熱可塑性樹脂であっても、非晶性の熱可塑性樹脂であってもよい。例えば、熱可塑性エラストマーとの親和性の観点及び充填材を熱可塑性樹脂に好適に分散させる観点からは、熱可塑性樹脂は、結晶性の熱可塑性樹脂を含むことが好ましく、高密度ポリエチレン(HDPE)、プロピレン系重合体、ポリアミド(PA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)及びポリアセタール(POM)からなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、結晶性のプロピレン系重合体を含むことがさらに好ましい。なお、熱可塑性樹脂の「結晶性」とは、示差走査熱量測定において、吸熱ピークを有することを指す。一方、熱可塑性樹脂の「非晶性」とは、示差走査熱量測定において、明確な吸熱ピークが認められないことを指す。
【0031】
プロピレン系重合体は、少なくともプロピレンを構成単位として有する重合体である。
プロピレン系重合体は、プロピレンの単独重合体であっても、プロピレンと他の単量体との共重合体であってもよい。プロピレン系重合体が共重合体である場合、プロピレン系重合体としては、例えば、プロピレンと炭素数2~20のα-オレフィン(但し、プロピレンを除く。)との共重合体が挙げられる。前記プロピレンと炭素数2~20のα-オレフィンとの共重合体としては、例えば、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、これらの混合物等が挙げられる。
【0032】
プロピレン系重合体が共重合体である場合、プロピレン系重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、及びグラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0033】
プロピレン系重合体が共重合体である場合、プロピレン系重合体におけるプロピレンに由来する構成単位の比率は、所望する3次元造形物の性質に応じて適宜設計してよい。例えば、プロピレン系重合体におけるプロピレンに由来する構成単位の比率は、プロピレン系重合体中の全構成単位100モル%に対して、50モル%以上であることが好ましく、70モル%~99.5モル%であることがより好ましく、80モル%~98モル%であることがさらに好ましい。
【0034】
プロピレン系重合体の立体規則性は、アイソタクチック、シンジオタクチック及びこれらの混合体のいずれであってもよい。
【0035】
プロピレン系重合体の含有量は、熱可塑性樹脂の総量100質量%に対して、95.0質量%以上であることが好ましく、98.0質量%以上であることがより好ましく、99.9質量%以上であることがさらに好ましい。
【0036】
熱可塑性樹脂の結晶化温度(Tc)は、90℃~140℃であることが好ましく、110℃~130℃であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂の結晶化温度は、示差走査熱量計(DSC)により降温速度10℃/分の条件で、測定される。
【0037】
熱可塑性樹脂の結晶化度は、2%~80%であることが好ましく、5%~75%であることが好ましい。
熱可塑性樹脂の結晶化度は、示差走査型熱量計(DSC)を用いて得られた熱流カーブのうち主成分の融解に由来する融解熱より算出される。熱流カーブは、熱可塑性樹脂を窒素雰囲気下-40℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られる。具体的には、示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、DSC-7)を用い、試料5mgを窒素雰囲気下-40℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより熱流カーブが得られる。得られた熱流カーブのうち主成分の融解に由来する融解熱より下記の式を用いて、融解熱は算出される。
結晶化度=(ΔH/ΔH0)×100(%)
式中、ΔHは熱可塑性樹脂の主成分の融解に由来する融解熱カーブより求めた融解熱量(J/g)であり、ΔH0は主成分の完全結晶の融解熱量(J/g)である。例えば、主成分がエチレンの場合、ΔH0は293J/gであり、主成分がプロピレンの場合、ΔH0は210J/gである。
【0038】
熱可塑性樹脂の融点は、90℃以上であることが好ましく、110℃以上200℃以下であることがより好ましく、110℃以上180℃以下であることがさらに好ましい。
【0039】
融点の測定は、後述する熱可塑性エラストマーの融点の測定方法と同様にして行うことができる。
【0040】
熱可塑性樹脂の含有量は、3次元造形物の変形(特に反り)をより抑制する観点から、3次元造形用材料の全質量に対して、0.1質量%以上100質量%未満の範囲とすることができ、10質量%~70質量%の範囲がより好ましく、20質量%~60質量%の範囲がさらに好ましい。
【0041】
(熱可塑性エラストマー)
本開示の3次元造形用材料は、熱可塑性エラストマーを含む。
3次元造形用材料が熱可塑性エラストマーを含むことで、3次元造形物の変形が効果的に抑制される。
【0042】
熱可塑性エラストマーは、ゴム状弾性を有する。ゴム状弾性とは、樹脂に荷重が加えられると樹脂の形状が変形し、樹脂に加えられた荷重が除かれると樹脂の形状が元の形状に戻ろうとする性質を示す。具体的には、熱可塑性エラストマーとは、25℃での引張弾性率が6.0×10Pa未満である熱可塑性樹脂を指す。この点において、熱可塑性エラストマーは、熱可塑性樹脂と区別される。
【0043】
熱可塑性エラストマーは、α-オレフィン由来の構成単位と該α-オレフィンと異なる他のオレフィン由来の構成単位とを含む共重合体であることが好ましい。
【0044】
α-オレフィンとしては、通常、炭素数2~20のα-オレフィンを1種単独で含んでもよいし、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。中でも、α-オレフィンは、炭素数が3以上であるα-オレフィンが好ましく、炭素数3~8のα-オレフィンが特に好ましい。
【0045】
α-オレフィンとして、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等が挙げられる。α-オレフィンは、1種もしくは2種以上が用いられる。
中でも、入手の容易さの観点から、α-オレフィンとして、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンが好ましい。
【0046】
α-オレフィンと異なる他のオレフィンとしては、炭素数2~4のオレフィンが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン等を挙げることができる。中でも、α-オレフィンと異なる他のオレフィンは、炭素数2~3のオレフィンがより好ましい。
【0047】
熱可塑性エラストマーである共重合体には、例えば、エチレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体、ブテン・α-オレフィン共重合体が含まれる。
【0048】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、エチレン-プロピレン共重合体(EPR)、エチレン-1-ブテン共重合体(EBR)、エチレン-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体(EOR)、プロピレン-1-ブテン共重合体(PBR)、プロピレン-1-ペンテン共重合体、プロピレン-1-オクテン共重合体(POR)等が挙げられる。
【0049】
中でも、熱可塑性エラストマーとしては、炭素数2~8のα-オレフィン由来の構成単位と炭素数2~3のオレフィン由来の構成単位とを含む共重合体が好ましく、熱可塑性樹脂(特に、プロピレン系重合体)との相溶性に優れ、3次元造形物の変形がより抑制される点で、プロピレン系エラストマーが好ましい。
【0050】
さらに、α-オレフィンは、ランダム共重合体を形成してもよく、ブロック共重合体を形成してもよい。
【0051】
熱可塑性エラストマーの融点は、30℃~120℃であることが好ましい。
融点が30℃~120℃であると、熱可塑性エラストマーは材料押出法で造形された3次元造形物の造形層間において、接着剤として作用する。これにより、材料押出法で造形された3次元造形物の造形層間の接着強度は向上する。材料押出法において、造形層は、ノズルから押し出される3次元造形用材料で構成される。
【0052】
融点は、示差走査熱量測定(DSC)によって吸熱曲線に現れる融解ピーク位置の温度Tmとして求められる値である。
融点は、試料をアルミパンに詰め、100℃/minで230℃まで昇温し、230℃で5分間保持した後、-10℃/minで-70℃まで降温し、ついで10℃/minで昇温する際の吸熱曲線より求められる。
【0053】
熱可塑性エラストマーのメルトフローレート(MFR;230℃、2.16kg荷重)の下限は、好ましくは0.5g/10min以上、より好ましくは1g/10min以上、さらに好ましくは2g/10min以上、特に好ましくは5g/10minである。
熱可塑性エラストマーのメルトフローレート(MFR;230℃、2.16kg荷重)の上限は、好ましくは70g/10min以下、より好ましくは35g/10min以下、さらに好ましくは30g/10minである。
熱可塑性エラストマーのMFRの上限及び下限がこの範囲内であると、3次元造形物の変形をより効果的に抑制することができる。
【0054】
メルトフローレート(Melt Flow Rate;MFR)は、ASTM D1238-65Tに準拠し、230℃、2.16kg荷重の条件で測定される値である。
【0055】
熱可塑性エラストマーは、ショアA硬度が50~99である熱可塑性エラストマー、又はショアD硬度が30~60である熱可塑性エラストマーが好ましい。
熱可塑性エラストマーの硬度がショアA硬度で50以上又はショアD硬度で30以上であると、熱可塑性エラストマーは変形し難くなる。換言すると、熱可塑性エラストマーの形状が維持され易くなる。そのため、後述する3次元造形物製造装置を用いて3次元造形物が造形される際、熱可塑性エラストマーがシリンダーのスクリューへ入り込みやすくなる。その結果、溶融状態の3次元造形材料の吐出効率が良くなる。これにより、表面が滑らかで外観に優れた3次元造形物が得られやすい。
硬度の下限は、上記と同様の理由から、ショアA硬度で55以上又はショアD硬度で40以上が好ましく、ショアA硬度で60以上又はショアD硬度で50以上がより好ましい。また、硬度の上限は、特に制限はなく、ショアA硬度で96以下又はショアD硬度で60以下が好ましい。硬度の下限は、上記の中でも、上記と同様の理由から、ショアD硬度が40以上であるものがさらに好ましく、ショアD硬度が50以上であるものがさらに好ましい。
【0056】
ショアA硬度及びショアD硬度は、ASTM D2240に記載の方法に準拠して測定される値である。
【0057】
熱可塑性エラストマーの具体例としては、例えば、三井化学株式会社製のタフマー(登録商標)シリーズ(例:タフマーDF605、タフマーDF610、タフマーDF640、タフマーDF710、タフマーDF740、タフマーDF7350、タフマーDF810、タフマーDF840、タフマーDF8200、タフマーDF940、タフマーDF9200、タフマーDF110、タフマーH-0530S、タフマーH-1030S、タフマーH-5030S、タフマーXM-7070、タフマーXM-7080、タフマーXM-7090、タフマーBL2491M、タフマーBL2481M、タフマーBL3110M、タフマーBL3450M、タフマーMA8510、タフマーMH7010、タフマーMH7020、タフマーMH5020、タフマーPN-2070、タフマーPN-3560)などを挙げることができる。
上記の中でも、熱可塑性樹脂(特に、プロピレン系重合体)との相溶性に優れ、3次元造形物の変形がより抑制される点で、プロピレン系エラストマーであるタフマーXMシリーズが好ましい。
タフマーXMシリーズは、熱可塑性樹脂(特に、プロピレン系重合体)との相溶性に優れ、かつ、3次元造形物に要求される破断応力αを維持することができる。これにより、材料押出法で造形される3次元造形物の造形層間の接着強度は向上する。
【0058】
熱可塑性エラストマーは、プロピレン系エラストマーであることが好ましい。プロピレン系エラストマーは、少なくともプロピレンを構成単位として有する熱可塑性エラストマーである。
熱可塑性エラストマーは、プロピレン系エラストマーであり、融点が80℃~120℃で、ショアD硬度が40~60で、MFRが2g/10min~20g/10minであることが好ましい。これにより、3次元造形物は、応力歪がより小さく、より反りにくくなる。
融点が80℃~120℃で、ショアD硬度が40~60で、MFRが2g/10min~20g/10minであるプロピレン系エラストマーとしては、タフマーXM-7090が挙げられる。
【0059】
熱可塑性エラストマーの含有量は、3次元造形用材料の全質量に対して、0.1質量%超え100質量%未満の範囲が好ましく、10質量%以上100質量%未満の範囲がより好ましく、10質量%~70質量%の範囲がさらに好ましく、20質量%~50質量%の範囲が特に好ましい。
【0060】
3次元造形用材料は、下記の(a1)、(b1)及び(c1)を満たすことが好ましい。
(a1)熱可塑性エラストマーの含有量が、3次元造形用材料の全質量に対して、10質量%以上70質量%未満であること
(b1)充填材の含有量が、3次元造形用材料の全質量に対して、10質量%以上50質量%未満であること
(c1)熱可塑性エラストマーの含有量と充填材の含有量との合計が、3次元造形用材料の全質量に対して、20質量%以上90質量%未満であること
【0061】
3次元造形用材料は、下記の(a2)、(b2)及び(c2)のいずれか1つを満たすことがより好ましい。
下記の(a2)、(b2)及び(c2)のいずれか1つを満たす3次元造形用材料を用いた3次元造形物は、応力歪がより小さく、より破断されにくく、より反りにくい。
(a2)3次元造形用材料の全質量に対して、熱可塑性エラストマーの含有量が、15質量%以上25質量%以下であり、充填材の含有量が、35質量%以上45質量%以下であること
(b2)3次元造形用材料の全質量に対して、熱可塑性エラストマーの含有量が、25質量%以上35質量%以下であり、充填材の含有量が、15質量%以上45質量%以下であること
(c2)3次元造形用材料の全質量に対して、熱可塑性エラストマーの含有量が、35質量%以上45質量%以下であり、充填材の含有量が、15質量%以上35質量%以下であること
【0062】
3次元造形用材料は、上記の(a2)、(b2)及び(c2)のうち、下記の(a3)及び(b3)のいずれか1つを満たすことがさらに好ましい。
下記の(a3)及び(b3)のいずれか1つを満たす3次元造形用材料を用いた3次元造形物は、応力歪がさらに小さく、3Dデータがより忠実に実体化され得る。
(a3)3次元造形用材料の全質量に対して、熱可塑性エラストマーの含有量が、25質量%以上35質量%以下であり、充填材の含有量が、25質量%以上35質量%以下であること
(b3)3次元造形用材料の全質量に対して、熱可塑性エラストマーの含有量が、35質量%以上45質量%以下であり、充填材の含有量が、15質量%以上35質量%以下であること
【0063】
(3次元造形用材料の性質)
3次元造形用材料の融点は、3次元造形物の変形(特に反り)をより抑制する観点から、90℃以上であることが好ましく、110℃以上200℃以下であることがより好ましく、110℃以上180℃以下であることがさらに好ましい。
【0064】
3次元造形用材料の融点を、上記範囲内とする手法は特に制限されないが、例えば、充填材、熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーの種類を後述の種類とする手法が挙げられる。
【0065】
本開示の3次元造形用材料は、例えば、引張弾性率X(MPa)が下記式(I)を満たし、且つ、250mm×100mm×高さ15mmであり、フルハニカムでの充填率30%とした直方体形状の3次元造形物としたときに、平均反り量Y(mm)が式(IIa)を満たすことが好ましく、下記式(I)を満たし、且つ、平均反り量Y(mm)が式(IIb)を満たすことがより好ましい。
式(I) 50≦X≦4000
式(IIa) 0≦Y≦6.0
式(IIb) 0≦Y≦4.0
【0066】
式(I)中、Xは、300≦X≦4000であることが好ましい。本開示に係るある態様では、Xは、1000≦X≦2500とすることができる。
【0067】
〔測定用熱プレス品の引張弾性率X〕
3次元造形用材料を測定用熱プレス品に成形したときの測定用熱プレス品の引張弾性率X(以下、単に「測定用熱プレス品の引張弾性率X」という。)の下限は、好ましくは50MPa以上、より好ましくは300MPa以上、さらに好ましくは1000MPa以上である。
測定用熱プレス品の引張弾性率Xの上限は、好ましくは4000MPa以下、より好ましくは2500MPa以下である。
【0068】
本開示において、測定用熱プレス品の引張弾性率Xは、JIS K7161-2:2014に準拠して測定される。試験速度は、0.5mm/分である。
【0069】
測定用熱プレス品は、3次元造形用材料を熱プレス成形して得られたJIS K7161-2:2014に規定される1BA形試験片である。測定用熱プレス品の全長は、75mmである。測定用熱プレス品の厚みは、2mmである。
熱プレス成形の加熱温度は、200℃である。熱プレス成形のプレス圧力は、50MPaである。熱プレス成形のプレス時間は、3分である。
測定用熱プレス品は、3次元造形用材料を熱プレス成形して得られる熱プレス成形物に機械加工が施された機械加工物であってもよい。
【0070】
〔測定用熱プレス品の熱膨張係数〕
3次元造形用材料を測定用熱プレス品に成形したときの測定用熱プレス品の熱膨張係数(以下、単に「測定用熱プレス品の熱膨張係数」という。)は、測定用ハニカム造形物10の変形(特に反り)をより抑制する観点から、1×10-6(/℃)~1×10-3(/℃)であることが好ましく、1×10-6(/℃)~5×10-4(/℃)がより好ましい。
【0071】
測定用熱プレス品の熱膨張係数は、JIS K7197:2012に準拠し測定する。
【0072】
〔測定用熱プレス品の結晶化温度〕
3次元造形用材料を測定用熱プレス品に成形したときの測定用熱プレス品の結晶化温度(Tc)(以下、単に「測定用熱プレス品の結晶化温度(Tc)」という。)は、80℃~140℃であることが好ましく、100℃~130℃であることがより好ましい。
【0073】
測定用熱プレス品の結晶化温度(Tc)の測定方法は、熱可塑性樹脂の結晶化温度の測定方法と同様である。
【0074】
〔測定用熱プレス品の融点〕
3次元造形用材料を測定用熱プレス品に成形したときの測定用熱プレス品の融点(以下、「測定用熱プレス品の融点」という。)は、3次元造形物としたときの変形(特に反り)をより抑制する観点から、好ましくは90℃以上、より好ましくは110℃以上200℃以下、さらに好ましくは110℃以上180℃以下である。
【0075】
測定用熱プレス品の融点の測定方法は、熱可塑性エラストマーの融点の測定方法と同様である。
【0076】
〔測定用ハニカム造形物の平均反り量Y〕
3次元造形用材料を測定用ハニカム造形物10に積層造形したときの測定用ハニカム造形物10の平均反り量Y(以下、単に「測定用ハニカム造形物10の平均反り量Y」という。)は、好ましくは6.0mm以下、より好ましくは4.0mm以下であり、低ければ低いほど好ましく、特に好ましくは0mmである。
【0077】
上述した「250mm×100mm×高さ15mmであり、フルハニカムでの充填率30%とした直方体形状の3次元造形物としたときに、平均反り量Y(mm)が式(IIa)を満たす」とは、測定用ハニカム造形物10の平均反り量Y(mm)が式(IIa)を満たすことを示す。
【0078】
次に、図1を参照して、測定用ハニカム造形物10について説明する。図1は、測定用ハニカム造形物10の斜視写真である。
測定用ハニカム造形物10は、図1に示すように、ハニカム構造部11と、直方体状フレーム部12とからなる。ハニカム構造部11は、直方体状フレーム部12内に位置する。ハニカム構造部11と、直方体状フレーム部12とは、一体化している。測定用ハニカム造形物10は、略直方体状物である。
直方体状フレーム部12は、上下方向(図1参照)に直交する方向において、ハニカム構造部11の周縁部を囲う。直方体状フレーム部12は、充填率が100%となるように3次元造形用材料を材料押出法により積層造形して得られる。直方体状フレーム部12は、250mm×100mm×高さ15mmである。詳しくは、図1において、前後方向における直方体状フレーム部12の長さは、250mmである。左右方向における直方体状フレーム部12の長さは、100mmである。上下方向における長さは、15mmである。直方体状フレーム部12は、4つに板部で構成される。4つの板部の各々の厚みは、5mmである。
ハニカム構造部11の構造は、ハニカム構造である。ハニカム構造部11は、直方体状フレーム部12内に、充填率が30%となるように3次元造形用材料を材料押出法により積層造形して得られる。
充填率とは、単位空間体積に占める3次元造形用材料の体積の比率を示す。
【0079】
次に、図2を参照して、測定用ハニカム造形物10の平均反り量Yについて説明する。図2は、平均反り量Yを説明するための測定用ハニカム造形物10の側面図である。
測定用ハニカム造形物10の平均反り量Yは、測定用ハニカム造形物10を定盤20に載置したときの、定盤20からの直方体状フレーム部12の4隅の浮き上がり量Yの算術平均値を示す。
直方体状フレーム部12の隅部E12の浮き上がり量Yは、下記のとおりにして測定される。図2に示すように、測定用ハニカム造形物10の第1面TS10が上向きとなるように、定盤20の表面に測定用ハニカム造形物10を載置する。次いで、定盤20の表面からの測定用ハニカム造形物10の隅部E12の下面BS10の最高高さを測定する。最高高さの測定には、ハイトゲージが用いられ得る。得られる測定値は、直方体状フレーム部12の隅部E12の浮き上がり量Yを示す。
測定用ハニカム造形物10の平均反り量Yは、このようにして測定した測定用ハニカム造形物10の4隅の各々の浮き上がり量Yを加算して、得られる加算値を4で除算することで得られる。
【0080】
3次元造形物が材料押出法により造形される際、3次元造形物の造形層間の接着強度を高める観点から、ノズルから押し出された溶融状態の3次元造形用材料からなる造形層(以下、「第1造形層」という。)と、第1造形層が堆積される造形層(以下、「第2造形層」という。)とが溶融接着をすることが好ましい。さらに、第1造形層の熱で第2造形層が溶融すること、または第1造形層を第2造形層上に堆積し終わるまで第2造形層の結晶化が進んでいないことが好ましい。そのため、3次元造形用材料の結晶化温度(Tc)が、80℃~140℃であることが好ましく、100℃~130℃であることがより好ましい。
3次元造形用材料の結晶化温度の測定は、上記熱可塑性樹脂の測定方法と同様にして行うことができる。
【0081】
〔測定用造形物の破断応力〕
3次元造形用材料を測定用造形物に積層造形したときの測定用造形物の破断応力α(以下、単に「測定用造形物の破断応力α」という。)の下限は、好ましくは4.0MPa以上、より好ましくは5MPa以上、より好ましくは6.5MPa以上、さらに好ましくは8.0MPa以上である。
測定用造形物の破断応力αの上限は、好ましくは200.0MPaである。
【0082】
3次元造形物の破断応力αは、厚さ2mmの四角柱造形物を造形し、その壁部より試験片(JIS K7161-2 1BA:2014)を引張方向が積層方向となるように打ち抜き、JIS K7161-2:2014に従い測定する(試験速度:50mm/min)。これにより、3次元造形物の積層方向の3次元造形物の破断応力αを確認する。3次元造形物の積層方向の3次元造形物の破断応力αは、一般に、3次元造形物の破断応力のうちで最も小さい。なお、3次元造形物の破断より前に3次元造形物の降伏が起きた場合は、破断応力と降伏応力のうち小さい方を破断応力αとして採用する。
【0083】
換言すると、測定用造形物の破断応力αは、JIS K7161-2:2014に準拠した引張試験の測定値である。
【0084】
測定用造形物は、3次元造形用材料を材料押出法により積層造形し、機械加工して得られたJIS K7161-2:2014に規定される1BA形試験片である。測定用造形物の全長は、75mmである。測定用造形物の厚みは、2mmである。
機械加工が施される前の測定用造形物(以下、「機械加工前の測定用造形物」という。)は、例えば、厚さ2mmの四角柱状の造形物である。機械加工前の測定用造形物は、充填率が100%で、かつ3次元造形用材料の積み重ね方向と引張試験における測定用造形物の引張方向とが平行となるように、材料押出法により3次元造形用材料を積層造形して得られる。
【0085】
〔測定用造形物の引張弾性率Z〕
3次元造形用材料を上述した測定用造形物に積層造形したときの測定用造形物の引張弾性率Z(以下、単に「測定用造形物の引張弾性率Z」という。)の下限は、好ましくは200MPa以上、より好ましくは800MPa以上、さらに好ましくは1000MPa以上である。
3次元造形用材料の引張弾性率Xの上限は、好ましくは4000MPa以下、より好ましくは2500MPa以下、より好ましくは2000MPa以下である。
【0086】
本開示において、測定用造形物の引張弾性率Zは、JIS K7161-2:2014に準拠して測定される。試験速度は、0.5mm/分である。
測定用造形物は、3次元造形用材料の積み重ね方向とJIS K7161-2:2014に準拠する引張試験における測定用造形物の引張方向とが平行な関係である。
【0087】
3次元造形用材料において、測定用造形物の破断応力α(MPa)が下記式(III)を満たし、測定用ハニカム造形物10の平均反り量Y(mm)が下記式(IIb)を満たすことが好ましい。
式(III) 6.5 ≦ α <200
式(IIb) 0≦ Y ≦4.0
【0088】
(他の成分)
本開示における3次元造形用材料は、上記した熱可塑性エラストマー及び熱可塑性樹脂以外に、他の成分を含んでもよい。
【0089】
他の成分としては、例えば、紫外線吸収剤、安定剤、酸化防止剤、可塑剤、着色剤、整色剤、難燃剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、つや消し剤、衝撃強度改良剤等が挙げられる。
【0090】
(3次元造形用材料の形態)
3次元造形用材料は、成形品であってもよい。
成形品の成形方法は特に制限はなく、押出成形等の公知の成形方法で成形された成形品でもよい。
成形品の形態は、ペレット又はフィラメントであってもよい。
ペレットは、予め形状が付与された少量の固形物を指す。
フィラメントは、細長い紐状で均一な断面をもつ長尺状物を指す。フィラメントは、一般にリールに巻きつけた形態で用いられる。
【0091】
3次元造形用材料は、ペレット及びフィラメントのいずれの形態でもよく、ペレット及びフィラメントの両方の形態の材料が混在した混合物でもよい。3次元造形用材料の形態は、サイズが比較的大きい3次元造形物を造形する観点では、ペレットが好ましい。
【0092】
3次元造形用材料をペレットに成形する場合、その成形方法は限定されない。ペレットの成形方法としては、例えば、3次元造形用材料を、溶融押出機(例:二軸押出機)により混練押出し、押出された棒状のストランドをペレタイザーにて切断する方法が挙げられる。また、溶融押出機に投入する3次元造形用材料は、ドライブレンド物であってもよい。ドライブレンド物は、3次元造形用材料の一部又は全部を予めヘンシェルミキサー等により混合して調製される。
【0093】
<3次元造形物の製造方法>
本開示の3次元造形物の製造方法は、既述の本開示の3次元造形用材料を溶融する溶融工程と、溶融された3次元造形用材料を3次元造形物製造装置のノズルから押し出し、3次元造形物を造形する造形工程と、を有している。溶融工程及び造形工程は、この順で実行される。
【0094】
(溶融工程)
本開示における溶融工程は、既述の本開示の3次元造形用材料を溶融する。
3次元造形用材料を溶融する加熱手段は、特に制限されず、公知の加熱手段が適用できる。
【0095】
溶融工程では、例えば電気ヒーター等の加熱手段を備えた3次元造形物製造装置を用いることが好ましい。
【0096】
3次元造形用材料を溶融する温度は、特に制限されず、熱可塑性樹脂の性質に応じて適宜設定すればよい。3次元造形用材料を溶融する温度は、例えば、熱可塑性樹脂の融点又はガラス転移温度(Tg)のいずれか高い温度を基準として、+10℃~150℃の温度としてもよい。
【0097】
溶融工程では、例えば、3次元造形用材料を溶融し、かつ混練してもよい。特に、3次元造形用材料がガラス繊維を含む場合、溶融工程では、3次元造形用材料を溶融し、かつ混練することが好ましい。3次元造形用材料が溶融及び混練されたことにより、3次元造形用材料はより均一に混ざる傾向にある。そのため、得られた3次元造形物の材料のムラが生じることが抑制され易い。その結果、3次元造形物の変形がより抑制される傾向にある。
【0098】
(造形工程)
本開示における造形工程は、溶融工程で溶融された3次元造形用材料をノズルから押し出し、3次元造形物を造形する。
【0099】
造形工程では、例えば、溶融された3次元造形用材料を3次元造形物製造装置のノズルから押し出し、複数の2次元データをもとに、2次元層を基板の上に順次積層することにより、3次元造形物を造形することができる。複数の2次元データは、スライサーソフトウェアによって、造形される3次元造形物の3次元の座標データが輪切りにされて、生成される。
【0100】
3次元造形物製造装置は、材料押出方式の3次元造形物製造装置を用いることができる。材料押出方式の3次元造形物製造装置は、特に制限はなく、公知の装置又は公知の装置構成を適用することができる。
【0101】
3次元造形物製造装置としては、例えば、シリンダーと、ノズルと、加熱手段と、を備えた装置であってもよい。シリンダーには、3次元造形用材料が供給される。ノズルは、シリンダーの3次元造形用材料の吐出方向下流側の部位に設けられる。ノズルは、3次元造形用材料を吐出する。加熱手段は、シリンダーに設けられる。加熱手段は、3次元造形用材料を加熱し溶融する。
3次元造形物製造装置は、加熱溶融された3次元造形用材料をノズルから押し出し、ノズルから押し出された3次元造形用材料を積層造形する。これにより、3次元造形物が造形される。
【0102】
シリンダーは、その内部にスクリューを有していてもよい。スクリューは、3次元造形材料を混練する。
3次元造形物製造装置は、テーブル装置をさらに備えていてもよい。テーブル装置は、ノズルに対向して配置される。テーブル装置上には、ノズルから押し出される溶融状態の3次元造形用材料が積層される。
3次元造形物製造装置は、制御手段をさらに備えていてもよい。制御手段は、基板及びノズルの空間座標、並びに、ノズルから押し出される3次元造形用材料の量を制御する。制御手段は、ノズルから押し出される溶融状態の3次元造形用材料の吐出を制御し、かつ、ノズル及び/又はテーブル装置の、基準面に対するX軸,Y軸,Z軸方向への移動を制御することが好ましい。
【0103】
(他の工程)
本開示の3次元造形物の製造方法は、例えば、加工工程をさらに有してもよい。加工工程では、造形工程で造形された3次元造形物を加工処理する。
【0104】
<3次元造形物>
本開示の3次元造形物は、既述の本開示の3次元造形用材料の造形物である。
本開示の3次元造形物の原材料として、本開示の3次元造形用材料が用いられる。そのため、3次元造形物の熱収縮等に起因した変形が抑制されている。
【0105】
本開示の3次元造形物は、既述の本開示の3次元造形用材料の造形物であれば特に制限はなく、いずれの方法で造形されたものでもよい。中でも、本開示の3次元造形物は、上記した本開示の3次元造形物の製造方法により造形されたものであることが好ましい。
【実施例
【0106】
以下、本開示を実施例によりさらに具体的に説明するが、本開示はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。以下に示す、融点、ショア硬度、MFR、結晶化温度、結晶化度、引張弾性率X、熱膨張係数、破断応力、平均反り量Y、及び引張弾性率Yの各々は、先述の手法により測定した。
【0107】
-材料の準備-
本実施例で用いる材料(即ち、3次元造形用材料が含有する成分)の詳細は、以下の通りである。
(熱可塑性エラストマー)
・DF8200:タフマー(登録商標;以下、同様)DF8200(三井化学株式会社)
・XM7090:タフマーXM-7090(三井化学株式会社)
・DF610:タフマーDF610(三井化学株式会社)
・DF710:タフマーDF710(三井化学株式会社)
・PN2070:タフマーPN-2070(三井化学株式会社)
・PN3560:タフマーPN-3560(三井化学株式会社)
・EP1001:アブソートマーEP1001(三井化学株式会社)
・TS6000N:ミラストマーTS6000N(三井化学株式会社)
・6030NS:ミラストマー6030NS(三井化学株式会社)
【0108】
(熱可塑性樹脂)
・J966HP:プライムポリプロ(登録商標;以下、同様)J-966HP(プロピレン―エチレン共重合体、株式会社プライムポリマー)
・J105G:プライムポリプロJ-105G(プロピレン単独重合体、株式会社プライムポリマー)
・J108M:プライムポリプロJ108M(プロピレン単独重合体、株式会社プライムポリマー)
・J721GR:プライムポリプロJ721GR(プロピレン―エチレン共重合体、株式会社プライムポリマー)
・J229E:プライムポリプロJ229E(プロピレン―エチレン共重合体、株式会社プライムポリマー)
・J707G:プライムポリプロJ707G(プロピレン―エチレン共重合体、株式会社プライムポリマー)
・J705UG:プライムポリプロJ705UG(プロピレン―エチレン共重合体、株式会社プライムポリマー)
・J708UG:プライムポリプロJ708UG(プロピレン―エチレン共重合体、株式会社プライムポリマー)
【0109】
(充填材)
・タルク:体積平均粒径5μm~10μm
・ガラス繊維(GF):重量平均繊維長0.5~2mm
【0110】
熱可塑性エラストマーの融点、ショア硬度、及びMFR、並びに熱可塑性樹脂の結晶化温度、及び結晶化度のメーカーのカタログ値を表1~表6に示す。
表中、「ショア硬度」の欄の数値の前の「A」は、ショアA硬度を示す。表中、「ショア硬度」の欄の数値の前の「D」は、ショアD硬度を示す。例えば、実施例1の「A86」は、ショアA硬度が86であることを示す。同様に、実施例9の「D58」は、ショアD硬度が58であることを示す。
表中、「(熱可塑性エラストマー)」の項目の直下に位置する「融点:Tm[℃]」、「ショア硬度」、及び「MFR[g/min]」の各々の項目は、熱可塑性エラストマーの融点、ショア硬度、及びMFRのカタログ値を示す。
表中、「(熱可塑性樹脂)」の項目の直下に位置する「結晶化温度:Tc[℃]」及び「結晶化度[%]」の各々の項目は、3次元造形用材料の構成成分である熱可塑性樹脂(プロピレン系重合体)の結晶化温度及び結晶化度のカタログ値を示す。
【0111】
[実施例1~実施例38及び比較例1~比較例19]
【0112】
-測定用熱プレス品の引張弾性率Xの測定-
加熱温度200℃、プレス圧力50MPa、プレス時間3分の条件で3次元造形用材料を熱プレス成形して、上述した測定用熱プレス品を得た。得られた測定用熱プレス品は、JIS K7161-2:2014に規定される1BA形試験片であった。測定用熱プレス品の全長は、75mmであった。測定用熱プレス品の厚みは、2mmであった。
得られた測定用熱プレス品の引張弾性率Xを測定した。測定結果を表1~表6に示す。
表中、「(熱プレス品)」の項目の直下に位置する「引張弾性率X[MPa]」の項目は、測定用熱プレス品の引張弾性率Xの測定結果を示す。
【0113】
表中、熱可塑性樹脂に併記した含有量(%)は、3次元造形用材料の全質量に対する熱可塑性樹脂の質量含有量を意味する。熱可塑性エラストマーに併記した含有量(%)は、3次元造形用材料の全質量に対する熱可塑性エラストマーの質量含有量を意味する。充填材に併記した含有量(%)は、3次元造形用材料の全質量に対する充填材の含有量を意味する。
【0114】
-測定用熱プレス品の融点、結晶化温度、熱膨張係数-
「測定用熱プレス品の引張弾性率Xの測定」と同様にして、測定用熱プレス品を得た。測定用熱プレス品の融点、結晶化温度、及び熱膨張係数の各々を測定した。測定結果を表1~表6に示す。
表中、「(熱プレス品)」の項目の下に位置する「融点:Tm[℃]」、「結晶化温度:Tc[℃]」、及び「熱膨張係数[10-5/℃]」は、測定用熱プレス品の融点、結晶化温度、及び熱膨張係数の測定結果を示す。
表中、「成分及び含有量」の欄に記載される「-」は、該当成分を含まないことを示し、対応する物性欄にも「-」を示す。
表中、「物性及び評価」の欄に記載される「-」は、該当する測定又は評価を実施していないことを示す。
【0115】
-測定用ハニカム造形物10の変形(平均反り量Y)の測定-
上述した測定用ハニカム造形物10の造形には、材料押出方式の3次元造形物製造装置(WASP株式会社製、「DeltaWASP 3MT Industrial」、ノズル径:3mm)及びアプリケーションソフトウェア(Simplify3D社製の「Simplify3D」)を用いた。
まず、ホッパーに表1~表6に記載の3次元造形用材料を投入し、ホッパーを介して3次元造形用材料をシリンダー内に供給した。3次元造形用材料を構成する成分としては、各表に示す熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂及び充填材を用いた。次いで、シリンダーに設けられたヒーターにより3次元造形用材料の温度を180℃~240℃に加熱し、溶融させた(溶融工程)。
【0116】
次に、アプリケーションソフトウェアで、下記の3Dデータを輪切りにして、複数の2次元データを生成した。複数の2次元データをもとに、アプリケーションソフトウェアの設定パラメータを下記のとおりに設定し、材料押出方式(MEX;Material Extrusion)にて、図1に示すような測定用ハニカム造形物10を造形した。具体的には、3次元の座標データをもとに、溶融した3次元造形用材料を基板の上に順次積層させることにより、250mm×100mm×高さ15mmであり、フルハニカムでの充填率30%とした直方体形状の3次元造形物を造形した(造形工程)。
<3Dデータ>
・250mm×100mm×高さ15mmの直方体
<測定用ハニカム造形物10のハニカム構造部11の設定パラメータ>
・造形スピード:3000mm/min
・ノズル温度 :240℃
・積層ピッチ :1.5mm
・充填率 :30%
・充填パターン:ハニカム
<測定用ハニカム造形物10の直方体状フレーム部12の設定パラメータ>
・造形スピード:3000mm/min
・ノズル温度 :240℃
・積層ピッチ :1.5mm
・充填率 :100%
・充填パターン:ソリッド
【0117】
得られた測定用ハニカム造形物10の平均反り量Y(mm)を測定した。測定結果を表1~表6に示す。
なお、本評価において、表中、「-」にて表記された例は、造形中の変形により測定に必要な測定用ハニカム造形物10を得ることができなかったことを意味する。
表中、「(3次元造形物)」の項目の下に位置する「平均反り量Y」は、測定用ハニカム造形物10の平均反り量Yを示す。
【0118】
-測定用ハニカム造形物10の外観及び表面の評価-
測定用ハニカム造形物10について、以下の評価基準にしたがって外観及び表面の状態を目視で評価した。評価結果を表1~表6に示す。
表中、「(3次元造形物)」の項目の下に位置する「外観及び表面の評価」は、測定用ハニカム造形物10の外観及び表面の評価結果を示す。
【0119】
<評価基準>
G1:測定用ハニカム造形物10の表面が滑らかであり、外観も良好であり、かつ、3Dデータ(3次元の座標データ)をより忠実に再現できる。
G2:測定用ハニカム造形物10の表面が滑らかであり、かつ、外観が良好である。
G3:測定用ハニカム造形物10の表面に若干凹凸があるものの、外観は許容できる程度である。
G4:測定用ハニカム造形物10の表面に許容できない顕著な凹凸がみられるか、又は3Dデータ(3次元の座標データ)を再現できない。
【0120】
-測定用造形物の破断応力α及び引張弾性率Zの測定-
上述した測定用造形物の造形には、材料押出方式の3次元造形物製造装置(WASP株式会社製、「DeltaWASP 3MT Industrial」、ノズル径:2mm)及びアプリケーションソフトウェア(Simplify3D社製の「Simplify3D」)を用いた。
まず、ホッパーに表1~表6に記載の3次元造形用材料を投入し、ホッパーを介して3次元造形用材料をシリンダー内に供給した。3次元造形用材料を構成する成分としては、各表に示す熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂及び充填材を用いた。次いで、シリンダーに設けられたヒーターにより3次元造形用材料の温度を180℃~240℃に加熱し、溶融させた(溶融工程)。
【0121】
次に、アプリケーションソフトウェアで、下記の3Dデータを輪切りにして、複数の2次元データを生成した。複数の2次元データをもとに、アプリケーションソフトウェアの設定パラメータを下記のとおりに設定し、材料押出方式(MEX;Material Extrusion)にて機械加工前の測定用造形物を造形した(造形工程)。
<3Dデータ>
・130mm×130mm×厚み2mmの直方体
<設定パラメータ>
・造形スピード:3000mm/min
・ノズル温度 :240℃
・積層ピッチ :1.0mm
・充填率 :100%
・充填パターン:ソリッド
【0122】
次に、得られた機械加工前の測定用造形物を機械加工して、測定用造形物を得た。得られた測定用造形物は、JIS K7161-2:2014に規定される1BA形試験片であった。測定用熱プレス品の全長は、75mmであった。測定用造形物の厚みは、2mmであった。
測定用造形物の破断応力α及び引張弾性率Zの各々を測定した。測定用造形物の破断応力α及び引張弾性率Zの測定の際、3次元造形用材料の積み重ね方向と引張試験における測定用造形物の引張方向とが平行な関係であった。測定結果を表1~表6に示す。
表中、「(3次元造形物)」の項目の下に位置する「破断応力α[MPa]」及び「引張弾性率Z[MPa]」は、測定用造形物の破断応力及び引張弾性率Zの測定結果を示す。
【0123】
【表1】
【0124】
【表2】
【0125】
【表3】
【0126】
【表4】
【0127】
【表5】
【0128】
【表6】
【0129】
表1~表6に示すように、実施例1~実施例38の3次元造形用材料は、熱可塑性樹脂と、熱可塑性エラストマーと、充填材と、を含む。充填材は、タルクを含む。充填材の含有量は、3次元造形用材料の全質量に対して、5質量%以上70質量%以下であった。そのため、測定用ハニカム造形物10の平均反り量Yは、6.0mm以下であった。つまり、実施例1~実施例38の3次元造形用材料を用いた3次元造形物の変形(特に反り)は抑制されることがわかった。
【0130】
また、実施例7~実施例9の3次元造形用材料は、タルクとガラス繊維とを組み合わせた充填材である。そのため、実施例7~実施例9の3次元造形用材料を用いた3次元造形物は、応力歪が小さく、外観が滑らかであることがわかった。
【0131】
一方、比較例1~比較例8の3次元造形用材料は、熱可塑性樹脂からなり、熱可塑性エラストマー及び充填材を含まなかった。比較例9~比較例19の3次元造形用材料は、熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーからなり、充填材を含まなかった。そのため、測定用ハニカム造形物10の平均反り量Yは、6.0mm超であった。つまり、比較例1~比較例19の3次元造形用材料を用いた3次元造形物の変形(特に反り)は抑制されないことがわかった。
【0132】
2019年9月25日に出願された日本国特許出願2019-174751の開示、及び2020年4月13日に出願された日本国特許出願2020-071719の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図1
図2