(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】光学積層体の製造方法、接着剤塗工装置及び光学積層体の製造装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20241112BHJP
C09J 4/00 20060101ALI20241112BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20241112BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20241112BHJP
B32B 37/12 20060101ALI20241112BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20241112BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20241112BHJP
B05D 3/12 20060101ALI20241112BHJP
B05D 3/06 20060101ALI20241112BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20241112BHJP
B05C 1/08 20060101ALI20241112BHJP
B05C 9/12 20060101ALI20241112BHJP
B05C 9/04 20060101ALI20241112BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
G02B5/30
C09J4/00
C09J11/06
B32B7/023
B32B37/12
B32B27/00 D
B05D7/24 301T
B05D7/24 301P
B05D3/12 C
B05D3/06 B
B05D3/00 B
B05C1/08
B05C9/12
B05C9/04
B05C11/10
(21)【出願番号】P 2021558248
(86)(22)【出願日】2020-10-28
(86)【国際出願番号】 JP2020040368
(87)【国際公開番号】W WO2021100423
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2023-08-21
(31)【優先権主張番号】P 2019208895
(32)【優先日】2019-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 達也
(72)【発明者】
【氏名】小川 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】植敷 大地
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/012968(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/140454(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/140450(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/147192(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/207952(WO,A1)
【文献】中国実用新案第204134843(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光学フィルム及び第2光学フィルムのうち少なくとも一方に、接着剤塗工装置によって活性エネルギー線硬化型接着剤を塗工する接着剤塗工工程と、
前記第1光学フィルムと前記第2光学フィルムとを前記接着剤を介して貼り合わせ、前記接着剤に活性エネルギー線を照射して前記接着剤を硬化させることで、光学積層体を作製する光学積層体作製工程と、を含み、
前記接着剤塗工装置は、
前記接着剤を塗工する塗工機と、
前記接着剤を貯留し、前記塗工機に前記接着剤を供給する第1タンクと、
前記接着剤を密封して貯留し、前記第1タンクに前記接着剤を供給する、前記第1タンクよりも前記接着剤の貯留
能力が大きな第2タンクとを、備え、
前記接着剤塗工工程において、前記第1タンクと前記塗工機との間で前記接着剤を循環させながら塗工すると共に、前記第1タンク内の前記接着剤の貯留量が所定値以下となった場合に、前記第2タンクから前記第1タンクに前記接着剤を供給する、
光学積層体の製造方法。
【請求項2】
前記接着剤塗工工程において、前記接着剤の塗工開始時の25℃での粘度が1mPa・s~100mPa・sである、
請求項1に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項3】
前記接着剤塗工工程において、前記接着剤の塗工厚みが0.1μm~5μmである、
請求項1又は2に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項4】
前記接着剤は、水酸基を含有する、
請求項1から3の何れか一項に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項5】
前記接着剤は、SP値が29.0(MJ/m
3)
1/2以上32.0(MJ/m
3)
1/2以下であるラジカル重合性化合物、又は、21.0(MJ/m
3)
1/2以上23.0(MJ/m
3)
1/2以下であるラジカル重合性化合物を含有する、
請求項1から4の何れか一項に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項6】
前記接着剤は、水を含有する、
請求項1から5の何れか一項に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項7】
前記接着剤は、金属アルコキシド及び金属キレートからなる群より選択される少なくとも1種の有機金属化合物を含有する、
請求項1から6の何れか一項に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項8】
前記接着剤は、カチオン重合性
化合物を含有する、
請求項1から7の何れか一項に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項9】
前記第1光学フィルムが偏光子であり、
前記第2光学フィルムが保護フィルムであり、
前記光学積層体が偏光フィルムである、
請求項1から8の何れか一項に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項10】
第1光学フィルム及び第2光学フィルムのうち少なくとも一方に、活性エネルギー線硬化型接着剤を塗工する接着剤塗工装置であって、
前記接着剤を塗工する塗工機と、
前記接着剤を貯留し、前記塗工機との間で前記接着剤を循環させながら前記塗工機に前記接着剤を供給する第1タンクと、
前記接着剤を密封して貯留し、前記第1タンクに前記接着剤を供給する、前記第1タンクよりも前記接着剤の貯留
能力が大きな第2タンクと、
前記塗工機から前記接着剤が塗工されて前記第1タンク内の前記接着剤の貯留量が所定値以下となった場合に、前記第2タンクから前記第1タンクに前記接着剤を供給させる制御装置と、
を備える接着剤塗工装置。
【請求項11】
請求項10に記載の接着剤塗工装置と、
前記接着剤を介して貼り合わされた前記第1光学フィルム及び前記第2光学フィルム間の前記接着剤に活性エネルギー線を照射して硬化させる活性エネルギー線照射装置と、
を備える光学積層体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光子と保護フィルムとを接着剤を介して貼り合わせて偏光フィルムを製造するなど、第1光学フィルムと第2光学フィルムとを接着剤を介して貼り合わせて光学積層体を製造する方法、接着剤塗工装置及び光学積層体を製造する装置に関する。特に、本発明は、接着剤のランニングコストを抑制し且つ光学積層体の製造効率を損なうことなく、光学積層体における第1光学フィルムと第2光学フィルムとの間の良好な接着性を維持することが可能な光学積層体の製造方法、接着剤塗工装置及び光学積層体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置や偏光サングラスなどの構成材料として、偏光子を含む偏光フィルムが使用されている。偏光フィルムは、例えば、ヨウ素などの二色性物質で染色した偏光子とこの偏光子を保護する保護フィルムとから構成されている。
偏光フィルムは、例えば、特許文献1~3に記載のように、偏光子及び/又は保護フィルムに活性エネルギー線硬化型接着剤を塗工して、偏光子及び保護フィルムを貼り合わせ、偏光子と保護フィルムとの間の接着剤に活性エネルギー線を照射して接着剤を硬化させることで得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-160313号公報
【文献】特開2012-144690号公報
【文献】国際公開第2017/199979号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、活性エネルギー線硬化型接着剤は、接着剤塗工装置によって、偏光子及び/又は保護フィルムに塗工される。一般的に、接着剤塗工装置は、グラビアコーター等の塗工機と、接着剤を貯留し塗工機に接着剤を供給するタンクとを備え、タンクと塗工機との間で接着剤を循環させている。
このため、接着剤がタンク内に貯留されている間や、接着剤が循環している間に、接着剤が雰囲気中の水分を吸収したり、或いは、接着剤の溶媒成分が揮発したりして、接着剤の粘度が変化する。
【0005】
接着剤の粘度が高すぎても低すぎても、偏光子と保護フィルムとの間の接着性が低下する。
偏光フィルムには、安定した光学特性が求められるため、偏光子と保護フィルムとの間の良好な接着性を維持することが求められる。
したがい、例えば、偏光フィルムと保護フィルムとの間の接着性が低下するタイミングを経験則的に把握し、タンク内に貯留された接着剤をこのタイミングまでに新品に交換する運用が行われている。
しかしながら、タンク内に貯留された接着剤を交換する頻度が高いと、接着剤のランニングコストが高くなる。また、接着剤を交換する際には偏光フィルムの製造ラインを停止させる必要があるため、接着剤を交換する頻度が高いと、偏光フィルムの製造効率が損なわれる。
【0006】
なお、タンクと塗工機との間に、前記タンクよりも接着剤の貯留量が小さな補助タンクを設置する場合もある。そして、タンクから補助タンクに接着剤を供給し、補助タンクから塗工機に接着剤を供給する一方、塗工機で塗工されなかった接着剤をタンクに戻すことで、タンク、補助タンク及び塗工機間で接着剤を循環させる場合もある。一般的に、タンクは移動式とされており、接着剤を溶解する箇所から塗工機設置箇所まで運ばれて、古いタンクと交換される。これに対し、補助タンクは据え置き式とされるため、レベル計を設置して、補助タンク内に貯留されている接着剤の液面高さを測定することが可能である。したがい、補助タンクを設置する場合には、接着剤の枯渇を機械的に検知・防止可能である。
しかしながら、上記の場合であっても、接着剤がタンク内や補助タンク内に貯留されている間や、接着剤が循環している間に、接着剤が雰囲気中の水分を吸収したり、或いは、接着剤の溶媒成分が揮発したりして、接着剤の粘度が変化する。このため、前述と同様に、接着剤のランニングコストが高くなったり、偏光フィルムの製造効率が損なわれるという問題が生じ得る。
【0007】
なお、上記の説明では、偏光子と保護フィルムとを接着剤を介して貼り合わせることで得られる偏光フィルムを例に挙げたが、上記の問題は偏光フィルムに限るものではなく、第1光学フィルムと第2光学フィルムとを接着剤を介して貼り合わせることで得られる光学積層体に共通する問題である。
したがい、本発明は、接着剤のランニングコストを抑制し且つ光学積層体の製造効率を損なうことなく、光学積層体における第1光学フィルムと第2光学フィルムとの間の良好な接着性を維持することが可能な光学積層体の製造方法、接着剤塗工装置及び光学積層体の製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、第1光学フィルム及び第2光学フィルムのうち少なくとも一方に、接着剤塗工装置によって活性エネルギー線硬化型接着剤を塗工する接着剤塗工工程と、前記第1光学フィルムと前記第2光学フィルムとを前記接着剤を介して貼り合わせ、前記接着剤に活性エネルギー線を照射して前記接着剤を硬化させることで、光学積層体を作製する光学積層体作製工程と、を含み、前記接着剤塗工装置は、前記接着剤を塗工する塗工機と、前記接着剤を貯留し、前記塗工機に前記接着剤を供給する第1タンクと、前記接着剤を密封して貯留し、前記第1タンクに前記接着剤を供給する、前記第1タンクよりも前記接着剤の貯留能力が大きな第2タンクとを、備え、前記接着剤塗工工程において、前記第1タンクと前記塗工機との間で前記接着剤を循環させながら塗工すると共に、前記第1タンク内の前記接着剤の貯留量が所定値以下となった場合に、前記第2タンクから前記第1タンクに前記接着剤を供給する、光学積層体の製造方法を提供する。
【0009】
本発明においても、接着剤が第1タンク内に貯留されている間や、接着剤が第1タンクと塗工機との間で循環している間に、第1タンクと塗工機との間にある接着剤は、雰囲気中の水分を吸収したり、或いは、接着剤の溶媒成分が揮発したりする可能性がある。
しかしながら、本発明によれば、第1タンク内に貯留されている接着剤が第1光学フィルム及び/又は第2光学フィルムに塗工されて、第1タンク内の接着剤の貯留量が所定値以下となった場合に、第2タンクから第1タンクに接着剤が供給されることになる。第2タンクでは、接着剤が密封されて貯留されているため、雰囲気中の水分を吸収し難く、溶媒成分も揮発し難い。また、塗工機で塗工されなかった接着剤は、第2タンクには戻らず第1タンクに戻るため、第2タンク内には、第1タンクと塗工機との間の循環使用によって雰囲気中の水分を吸収した接着剤や、溶媒成分の揮発した接着剤が混入しない。このため、新品に近い接着剤が第2タンクから第1タンクに供給され、この新品に近い接着剤が第1タンクと塗工機との間で新たに循環することになる。第2タンクにおける接着剤の貯留量は第1タンクよりも大きいため、第2タンク内の接着剤が無くなるまで、第2タンク内の接着剤を交換することなく、長期に亘って使用可能である。
したがい、本発明によれば、接着剤のランニングコストを抑制し且つ光学積層体の製造効率を損なうことなく、光学積層体における第1光学フィルムと第2光学フィルムとの間の良好な接着性を維持することが可能である。
【0010】
なお、本発明において、「第1光学フィルム及び第2光学フィルムのうち少なくとも一方に、接着剤塗工装置によって活性エネルギー線硬化型接着剤を塗工する接着剤塗工工程」には、例えば、(1)第1光学フィルム及び第2光学フィルムの双方に、接着剤塗工装置によって活性エネルギー線硬化型接着剤を塗工する工程、(2)第1光学フィルムに、接着剤塗工装置によって活性エネルギー線硬化型接着剤を塗工し、第2光学フィルムに、本発明の接着剤塗工装置によって易接着組成物を塗工する工程、(3)第2光学フィルムに、接着剤塗工装置によって活性エネルギー線硬化型接着剤を塗工し、第1光学フィルムに、本発明の接着剤塗工装置によって易接着組成物を塗工する工程、の何れの工程も含まれる。
【0011】
好ましくは、前記接着剤塗工工程において、前記接着剤の塗工開始時の25℃での粘度が1mPa・s~100mPa・sである。
上記の好ましい方法における粘度を維持できれば、第1光学フィルムと第2光学フィルムとの間の良好な接着性を維持し易い。
【0012】
好ましくは、前記接着剤塗工工程において、前記接着剤の塗工厚みが0.1μm~5μmである。
上記の好ましい方法のように薄い塗工厚みでは、塗工機としてグラビアコーターが好適に用いられ、グラビアコーターを用いると、第1光学フィルム及び/又は第2光学フィルムに塗工されずに余る(オーバーフローする)接着剤が生じ易い。このため、接着剤を循環使用することになり、本発明が好適に用いられる。
【0013】
好ましくは、前記接着剤は、水酸基を含有する。
接着剤が水酸基を含有すると、雰囲気中の水分を吸収し易い。したがい、水酸基を含有する接着剤の場合に、本発明が好適に用いられる。
【0014】
好ましくは、前記接着剤は、SP値が29.0(MJ/m3)1/2以上32.0(MJ/m3)1/2以下であるラジカル重合性化合物、又は、21.0(MJ/m3)1/2以上23.0(MJ/m3)1/2以下であるラジカル重合性化合物を含有する。
接着剤のSP値(溶解性パラメータ)が上記のような場合には、第1光学フィルムとして偏光子を用い、第2光学フィルムとして保護フィルムを用いた場合に、一般的に用いられる偏光子や保護フィルムの材料とSP値が近くなり、接着性の向上に寄与する。また、SP値が比較的大きく、雰囲気中の水分を吸収し易いため、本発明が好適に用いられる。
【0015】
好ましくは、前記接着剤は、水を含有する。
接着剤が水を含有すると、第1光学フィルムとして偏光子を用いた場合、偏光子表面を水が膨潤、可塑化することにより、偏光子と接着剤との間の水素結合、イオン結合、共有結合などの各種物理、化学結合が形成されやすくなり、結果として接着性が向上する。
【0016】
好ましくは、前記接着剤は、金属アルコキシド及び金属キレートからなる群より選択される少なくとも1種の有機金属化合物を含有する。
接着剤が上記の有機金属化合物を含有すると、接着性・耐水性が向上する。
【0017】
好ましくは、前記接着剤は、カチオン重合性化合物を含有する。
接着剤がカチオン重合性官能基(例えば、エポキシ基、オキセタニル基、オキセタン基、ビニルエーテル基、スピロオルトエステル基)を有するカチオン重合性化合物を含有すると、第1光学フィルムとして偏光子を用いた場合、偏光子表面に存在する酸基と接着剤との間に、より強い相互作用が生じ、水分存在下でも簡単に剥離し難い層間接着性が発現する。
【0018】
本発明は、前記第1光学フィルムが偏光子であり、前記第2光学フィルムが保護フィルムであり、前記光学積層体が偏光フィルムである場合に、好適に用いられる。
ただし、本発明はこれに限られるものではなく、第1光学フィルム及び第2光学フィルムの組み合わせとして、偏光子、保護フィルム、位相差フィルム、アンチグレアフィルム、輝度向上フィルム、視野角向上フィルム、透明導電性フィルムなど、種々の光学フィルムの組み合わせに適用可能である。
【0019】
また、前記課題を解決するため、本発明は、第1光学フィルム及び第2光学フィルムのうち少なくとも一方に、活性エネルギー線硬化型接着剤を塗工する接着剤塗工装置であって、前記接着剤を塗工する塗工機と、前記接着剤を貯留し、前記塗工機との間で前記接着剤を循環させながら前記塗工機に前記接着剤を供給する第1タンクと、前記接着剤を密封して貯留し、前記第1タンクに前記接着剤を供給する、前記第1タンクよりも前記接着剤の貯留能力が大きな第2タンクと、前記塗工機から前記接着剤が塗工されて前記第1タンク内の前記接着剤の貯留量が所定値以下となった場合に、前記第2タンクから前記第1タンクに前記接着剤を供給させる制御装置と、を備える接着剤塗工装置としても提供される。
【0020】
さらに、前記課題を解決するため、本発明は、前記接着剤塗工装置と、前記接着剤を介して貼り合わされた前記第1光学フィルム及び前記第2光学フィルム間の前記接着剤に活性エネルギー線を照射して硬化させる活性エネルギー線照射装置と、を備える光学積層体の製造装置としても提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、接着剤のランニングコストを抑制し且つ光学積層体の製造効率を損なうことなく、光学積層体における第1光学フィルムと第2光学フィルムとの間の良好な接着性を維持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る光学積層体(偏光フィルム)の製造方法を適用する光学積層体(偏光フィルム)の製造装置の概略構成例を模式的に示す図である。
【
図2】
図1に示す接着剤塗工装置100の具体的な構成例を模式的に示す図である。
【
図3】
図2に示す屈折率計23で測定した接着剤の屈折率の変化と、測定した屈折率から演算した接着剤の水分率の変化との一例を示す図である。
【
図4】実施例1~4及び比較例1~4で得られた剥離力の測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る光学積層体の製造方法、接着剤塗工装置及び光学積層体の製造装置について、第1光学フィルムが偏光子であり、第2光学フィルムが保護フィルムであり、光学積層体が偏光フィルムである場合を例に挙げて説明する。したがい、本実施形態では、「光学積層体」を「偏光フィルム」と称し、「第1光学フィルム」を「偏光子」と称し、「第2光学フィルム」を「保護フィルム」と称する。
なお、本明細書において、「下限値X~上限値Y」で表される数値範囲は、下限値X以上上限値Y以下を意味する。前記数値範囲が別個に複数記載されている場合、任意の下限値と任意の上限値とを選択して、「任意の下限値~任意の上限値」を設定できるものとする。
また、各図は、参考的に表したものであり、各図に表された部材などの寸法、縮尺及び形状は、実際のものとは異なっている場合があることに留意されたい。
【0024】
図1は、本実施形態に係る偏光フィルムの製造方法を適用する偏光フィルムの製造装置の概略構成例を模式的に示す図である。
図1に示す矢符は、各フィルムの搬送方向を意味する。
本実施形態に係る偏光フィルムの製造装置は、接着剤塗工装置100と、活性エネルギー線照射装置8と、を備える他、一般的な偏光フィルムの製造装置が備える従来公知の各種構成要素を備えている。
なお、本発明に係る偏光フィルムの製造装置は、偏光子F1を製造した後、その偏光子F1に保護フィルムF2を連続的に接着する形式でもよく、或いは、偏光子F1を別途準備しておき、その偏光子F1に保護フィルムF2を接着する形式でもよい。前者の形式は、偏光子F1の製造から保護フィルムF2を接着して偏光フィルムFを得るまでの一連の工程を1つの製造ライン上で行う形式であり、後者の形式は、偏光子F1の製造を1つの製造ライン上で行い、その偏光子F1に保護フィルムF2を接着して偏光フィルムFを得る工程を別の製造ライン上で行う形式である。
図1に示す製造装置は、偏光子F1の製造から少なくとも保護フィルムF2を接着して偏光フィルムFを得るまでの一連の工程を1つの製造ライン上で行うロールツーロール形式である。
【0025】
図1に示す製造設備を用いて偏光フィルムFを製造するにあたっては、まず、繰出ローラ1に巻回された原反フィルムF0を繰り出し、処理槽2(例えば、原反フィルムF0の搬送方向上流側から順に、膨潤処理槽、染色処理槽、架橋処理槽、延伸処理槽、洗浄処理槽から構成される)内の処理浴に浸漬して、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質で染色すると共に一軸延伸する。次いで、オーブン3で乾燥させることで、偏光子F1を得る。偏光子F1は、特定の1つの方向のみに振動する光(偏光)を透過し、それ以外の方向に振動する光を遮断する性質を有する光学素子である。本実施形態の偏光子F1は、柔軟なフィルム状である。
【0026】
原反フィルムF0は、長尺帯状である。本明細書において、長尺帯状は、長手方向の長さが短手方向(長手方向と直交する方向)の長さよりも十分に大きい長方形状を意味する。長尺帯状の長手方向の長さは、例えば、10m以上であり、好ましくは50m以上である。
原反フィルムF0としては、特に限定されないが、二色性物質による染色性に優れていることから、好ましくは、親水性ポリマーフィルム(例えば、ポリビニルアルコール系フィルムなど)を含むフィルムが用いられ、より好ましくは、親水性ポリマーフィルムが用いられる。親水性ポリマーフィルムを含むフィルムとしては、親水性ポリマーフィルムと非親水性ポリマーフィルムとが積層されたフィルムが挙げられる。この場合、非親水性ポリマーフィルムの表面及び/又は裏面に親水性ポリマーフィルムが積層されていることが好ましい。この場合、非親水性ポリマーフィルムの表面及び/又は裏面に積層される親水性ポリマーフィルムは、厚み数μm程度の薄い膜状であってもよい。
【0027】
親水性ポリマーフィルムとしては、特に限定されず、従来公知のフィルムを使用できる。具体的には、親水性ポリマーフィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系フィルム、これらの部分ケン化フィルムなどが挙げられる。また、これらの他にも、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物などのポリエン配向フィルム、延伸配向されたポリビニレン系フィルムなども使用できる。これらの中でも、特に二色性物質による染色性に優れることから、PVA系ポリマーフィルムが好ましい。
PVA系ポリマーフィルムの原料ポリマーとしては、例えば、酢酸ビニルを重合した後にケン化したポリマー、酢酸ビニルに対して少量の不飽和カルボン酸や不飽和スルホン酸等の共重合可能なモノマーを共重合したポリマー、などが挙げられる。PVA系ポリマーの重合度は、特に限定されないが、水に対する溶解度の点等から、500~10000が好ましく、より好ましくは、1000~6000である。また、PVA系ポリマーのケン化度は、75モル%以上が好ましく、より好ましくは、98モル%~100モル%である。
未処理の原反フィルムF0の厚みは、特に限定されないが、例えば、15μm~110μmである。
【0028】
処理槽2が、原反フィルムF0の搬送方向上流側から順に、膨潤処理槽、染色処理槽、架橋処理槽、延伸処理槽、洗浄処理槽から構成される場合(図示せず)、各槽は、例えば、以下に述べる構成を有する。
【0029】
<膨潤処理槽>
膨潤処理槽は、膨潤処理液が収容された処理槽である。膨潤処理液は、原反フィルムF0を膨潤させる。膨潤処理液としては、例えば、水を使用することができる。さらに、水に、グリセリンやヨウ化カリウムなどのヨウ素化合物を適量加えた水を膨潤処理液としてもよい。グリセリンを添加する場合、その濃度は5重量%以下が好ましく、ヨウ化カリウムなどのヨウ素化合物を添加する場合、その濃度は10重量%以下が好ましい。
【0030】
<染色処理槽>
染色処理槽は、染色処理液が収容された処理槽である。染色処理液は、原反フィルムF0を染色する。染色処理液としては、有効成分として二色性物質を含む溶液が挙げられる。二色性物質としては、ヨウ素、有機染料などが挙げられる。好ましくは、染色処理液として、ヨウ素を溶媒に溶解させた溶液を使用できる。溶媒としては、水が一般的に使用されるが、水と相溶性のある有機溶媒が更に添加されてもよい。染色処理液中のヨウ素の濃度としては、特に限定されないが、0.01重量%~10重量%であることが好ましく、0.02重量%~7重量%の範囲がより好ましく、0.025重量%~5重量%であることがさらに好ましい。染色効率をより一層向上させるために、必要に応じて、染色処理液にヨウ素化合物を添加してもよい。ヨウ素化合物は、分子内にヨウ素とヨウ素以外の元素とを含む化合物であり、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタンなどが挙げられる。
【0031】
<架橋処理槽>
架橋処理槽は、架橋処理液が収容された処理槽である。架橋処理液は、染色された原反フィルムF0を架橋する。架橋処理液としては、有効成分としてホウ素化合物を含む溶液を使用できる。例えば、架橋処理液としては、ホウ素化合物を溶媒に溶解させた溶液が使用できる。溶媒としては、水が一般的に使用されるが、水と相溶性のある有機溶媒が更に添加されてもよい。ホウ素化合物としては、ホウ酸、ホウ砂などが挙げられる。架橋処理液中のホウ素化合物の濃度としては、特に限定されないが、1重量%~10重量%であることが好ましく、2重量%~7重量%がより好ましく、2重量%~6重量%であることがさらに好ましい。さらに、均一な光学特性を有する偏光子が得られることから、必要に応じて、架橋処理液にヨウ素化合物を添加してもよい。
【0032】
<延伸処理槽>
延伸処理槽は、延伸処理液が収容された処理槽である。
延伸処理液は、特に限定されないが、例えば、有効成分としてホウ素化合物を含む溶液を使用できる。延伸処理液としては、例えば、ホウ素化合物、及び必要に応じて、各種金属塩、亜鉛化合物などを溶媒に溶解させた溶液が使用できる。溶媒としては、水が一般的に使用されるが、水と相溶性のある有機溶媒が更に添加されてもよい。延伸処理液中のホウ素化合物の濃度としては、特に限定されないが、1重量%~10重量%であることが好ましく、2重量%~7重量%がより好ましい。フィルムに吸着させたヨウ素の溶出を抑制する観点から、必要に応じて、延伸処理液に、ヨウ素化合物を添加してもよい。
【0033】
<洗浄処理槽>
洗浄処理槽は、洗浄処理液が収容された処理槽である。洗浄処理液は、延伸後の原反フィルムF0を洗浄する。洗浄処理液は、原反フィルムF0に付着した染色処理液や架橋処理液などの処理液を洗浄するための処理液である。洗浄処理液としては、代表的には、イオン交換水、蒸留水、純水などの水が用いられる。
【0034】
オーブン3は、以上に説明した処理槽2を構成する洗浄処理槽の下流側に設けられている。オーブン3は、処理後のフィルムを乾燥するために設けられている。
なお、以上に説明した例では、処理槽2は、膨潤処理槽、染色処理槽、架橋処理槽、延伸処理槽及び洗浄処理槽を有するが、これらのうちの1つ又は2つの処理槽を省略してもよい。他方、処理槽2は、調整処理槽(図示せず)を更に有していてもよい。調整処理槽は、調整処理液が収容された処理槽である。この調整処理槽は、架橋処理槽と延伸処理槽との間、又は、延伸処理槽と洗浄処理槽との間に設けられる。調整処理液は、フィルムの色相調整などのための溶液であり、有効成分としてヨウ素化合物を含む溶液を使用できる。
洗浄後の原反フィルムF0をオーブン3で乾燥させて得られるフィルムが、偏光子F1である。
【0035】
次いで、
図1に示すように、偏光子F1の両面に接着剤塗工装置100で活性エネルギー線硬化型接着剤を塗工する(本発明の接着剤塗工工程に相当)。また、繰出ローラ5から繰り出された保護フィルムF2の片面に接着剤塗工装置100で活性エネルギー線硬化型接着剤を塗工する。そして、貼り合わせローラ7によって、接着剤が塗工された保護フィルムF2を、接着剤が塗工された偏光子F1の両面に貼り合わせる。
接着剤の塗工厚みは、特に限定されないが、あまりに小さいと、フィルムの接着強度が低下し、あまりに大きいと、偏光フィルムFの厚みが相対的に大きくなりすぎる。かかる観点から、偏光子F1及び保護フィルムF2への接着剤の塗工厚みは、それぞれ独立して、0.1μm~5μmであることが好ましい。
また、塗工開始時の接着剤の粘度は、特に限定されないが、あまりに小さい又は大きいと、塗工開始時から接着剤の接着性の低下を生じる。かかる観点から、接着剤は、塗工開始時の25℃での粘度が1mPa・s~100mPa・sに調整されていることが好ましく、塗工開始時の25℃での粘度が10mPa・s~50mPa・sに調整されていることがより好ましく、15mPa・s~45mPa・sに調整されていることが特に好ましい。
接着剤塗工装置100の具体的な構成や、接着剤塗工装置100で塗工する接着剤の種類については、後述する。
【0036】
保護フィルムF2は、長尺帯状である。また、保護フィルムF2は、偏光子F1よりも親水性が低い(疎水性を有する)フィルムである。保護フィルムF2としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるものが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロースなどのセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)などのスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーなどが挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系又はノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミドなどのアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は上記ポリマーのブレンド物なども保護フィルムF2を形成するポリマーの例として挙げられる。保護フィルムF2中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などが挙げられる。保護フィルムF2中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50~100重量%、より好ましくは50~99重量%、さらに好ましくは60~98重量%、特に好ましくは70~97重量%である。保護フィルムF2中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50重量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性などが十分に発現できないおそれがある。
【0037】
また、保護フィルムF2としては、特開2001-343529号公報に記載のポリマーフィルム、例えば、(A)側鎖に置換及び/又は非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換及び/又は非置換フェニル並びにニトリル基を有する熱可塑性樹脂とを含有する樹脂組成物が挙げられる。具体例としては、イソブチレンとN-メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物のフィルムが挙げられる。フィルムとしては、樹脂組成物の混合押出品などからなるフィルムを用いることができる。これらのフィルムは位相差が小さく、光弾性係数が小さいため偏光フィルムFの歪みによるムラなどの不具合を解消することができ、また透湿度が小さいため、加湿耐久性に優れる。
【0038】
次いで、
図1に示すように、活性エネルギー線照射装置8から偏光子F1及び保護フィルムF2間の接着剤に活性エネルギー線を照射して硬化させた後、オーブン9で乾燥させる。活性エネルギー線は、活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化性に応じて適宜選択される。活性エネルギー線としては、電子線、紫外線、可視光線などが挙げられる。最後に、両面に保護フィルムF2が貼り合わせられた偏光子F1の片面に、繰出ローラ10から繰り出された長尺帯状の表面保護フィルムF3を貼り合わせローラ11によって貼り合わせることで、長尺帯状の偏光フィルムFが得られる。得られた偏光フィルムFは、巻取ローラ12で巻き取られる。
偏光子F1と保護フィルムF2とを接着剤を介して貼り合わせ、接着剤に活性エネルギー線を照射して接着剤を硬化させることで偏光フィルムFを作製する工程が、本発明の光学積層体作製工程に相当する。
【0039】
なお、
図1に示す例では、偏光子F1及び保護フィルムF2の双方に活性エネルギー線硬化型接着剤を塗工しているが、偏光子F1の両面にのみ接着剤を塗工することも可能である。この場合、
図1に示す計4台の接着剤塗工装置100のうち、
図1の下側(フィルムの搬送方向下流側)2台の接着剤塗工装置100は不要である。また、保護フィルムF2の片面にのみ接着剤を塗工することも可能である。この場合、
図1に示す計4台の接着剤塗工装置100のうち、
図1の上側(フィルムの搬送方向上流側)2台の接着剤塗工装置100は不要である。さらに、
図1に示す例では、偏光子F1の両面に保護フィルムF2を貼り合わせているため、接着剤塗工装置100を
図1の左右に一対配置し、活性エネルギー線照射装置8を左右に一対配置しているが、偏光子F1の片面にのみ保護フィルムF2を貼り合わせる場合には、接着剤塗工装置100及び活性エネルギー線照射装置8は、
図1の左右何れかに1台配置するだけでよい。
【0040】
図2は、接着剤塗工装置100の具体的な構成例を模式的に示す図である。
図2は、各構成要素の内部を適宜透視した状態で図示している。
図2に示すように、本実施形態の接着剤塗工装置100は、接着剤adを偏光子F1又は保護フィルムF2(
図2では図示省略)に塗工する塗工機6と、接着剤adを貯留し、塗工機6との間で接着剤adを循環させながら塗工機6に接着剤adを供給する第1タンク20と、接着剤adを密封して貯留し、第1タンク20に接着剤adを供給する、第1タンク20よりも接着剤adの貯留量が大きな第2タンク30と、第1タンク20内の接着剤adの貯留量が所定値以下となった場合に、第2タンク30から第1タンク20に接着剤adを供給させる制御装置40と、を備えている。
【0041】
塗工機6としては、グラビアコータが好適に用いられる。グラビアコータは、表面に複数のセル(供給された接着剤adが入る凹部)が形成されたグラビアロールを有し、このグラビアロール61が偏光子F1又は保護フィルムF2に接触することにより、セル内の接着剤adが偏光子F1又は保護フィルムF2の片面に転写される。このようにして、グラビアロールから偏光子F1又は保護フィルムF2の片面に、それぞれ接着剤adがベタ状に塗工される。
【0042】
本実施形態の接着剤塗工装置100は、供給管21、ポンプ22、屈折率計23及び排出管24を更に備えている。
第1タンク20内に貯留されている接着剤adは、供給管21に取り付けられたポンプ22によって、下端が第1タンク20内に挿入されて接着剤adに浸漬された供給管21を通じて吸い上げられ、塗工機6に供給される。供給管21には、屈折率計23が取り付けられており、供給管21中を流れる接着剤adの屈折率が屈折率計23によって連続的に測定される。屈折率計23としては、従来公知の屈折率計を種々適用可能であり、例えば、全反射臨界角からスネルの法則を用いて屈折率を導出する方法を測定原理とするATAGO社製のプロセス屈折計「PRM-100α」を用いることができる。
【0043】
一方、塗工機6で偏光子F1又は保護フィルムF2に塗工されなかった接着剤adは、下端が第1タンク20内に挿入された排出管24を通じて第1タンク20内に戻る。
以上のようにして、接着剤adは、第1タンク20と塗工機6との間で循環しながら使用される。
【0044】
本実施形態の接着剤塗工装置100は、袋体31、結束バンド32、第1供給管33、重り34、継手35、第2供給管36及び蓋体37を更に備えている。
第2タンク30内には、内部に接着剤adが収容されて上端部が結束バンド32で縛られた袋体31が収容されている。これにより、第2タンク30内には、接着剤adが密封されて貯留される。袋体31内には、ゴム製ホース等の可撓性を有する第1供給管33が挿入されている。第1供給管33の下端が袋体31の底面近傍に位置するように、第1供給管33の下端には重り34が取り付けられている。第1供給管33は、袋体31の上端部及び結束バンド32内を通り、その上端が継手35に接続されている。この継手35には、ゴム製ホース等の可撓性を有する第2供給管36も接続されており、継手35を介して、第1供給管33と第2供給管36とが連通している。第2タンク30内(袋体31内)に貯留されている接着剤adは、第2供給管36に取り付けられたポンプ42によって、第1供給管33の下端から、第1供給管33、継手35及び第2供給管36を通じて吸い上げられ、第2供給管36の下端から排出されて、第1タンク20に供給される。
【0045】
第2タンク30内(袋体31内)の接着剤adの貯留量は、第1タンク20内の接着剤adの貯留量よりも大きい。例えば、第2タンク30内の接着剤adの貯留量が180リットルであるのに対し、第1タンク20内の接着剤adの貯留量は30リットル以下である。第1タンク20内の接着剤adの貯留量に対し、第2タンク30内の接着剤adの貯留量は、2~50倍程度であることが好ましい。
【0046】
なお、第2タンク30から第1タンク20に接着剤adを供給する際には、
図2に示すように、第2タンク30の上端開口を閉塞するための蓋体37を開いて、継手35に第2供給管36を接続することになる。一方、第2タンク30内で接着剤adを調製する際には、継手35から第2供給管36を取り外し、蓋体37を閉じればよい。この際、蓋体37の下面に目止め(図示せず)を設け、継手35の第2供給管36との接続箇所にこの目止めで栓をすれば、第2タンク30内における接着剤adの密封状態を維持可能である。
【0047】
本実施形態の制御装置40は、コンピュータやPLC(Programmable Logic Controller)から構成される制御装置本体41と、ポンプ42と、レベル計43と、を具備する。レベル計43としては、従来公知のレベル計(液面計)を種々適用可能であり、例えば、ガイドパルス方式を測定原理とするキーエンス社製のガイドパルス式レベルセンサ「FL-001」を用いることができる。
制御装置本体41には、レベル計43で測定した第1タンク20内に貯留されている接着剤adの液面高さ測定値が入力される。制御装置本体41は、入力された液面高さ測定値が予め設定したしきい値以下となった場合(すなわち、第1タンク20内の接着剤adの貯留量が所定値以下となった場合)に、ポンプ42に対し、ポンプ42を駆動する制御信号を送信する。これにより、ポンプ42が駆動し、第2タンク30内(袋体31内)に貯留されている接着剤adが、第1供給管33の下端から、第1供給管33、継手35及び第2供給管36を通じて吸い上げられ、第2供給管36の下端から排出されて、第1タンク20に供給される。
以上のようにして、制御装置40は、第1タンク20内の接着剤adの貯留量が所定値以下となった場合に、第2タンク30から第1タンク20に接着剤adを供給させる。
【0048】
以上に説明した構成を有する接着剤塗工装置100で塗工する接着剤adとしては、活性エネルギー線硬化型接着剤が用いられる。つまり、接着剤塗工装置100の第2タンク30内には、未硬化の活性エネルギー線硬化型接着剤が調製されて貯留されている。
活性エネルギー線硬化型接着剤としては、従来公知のものを使用できる。活性エネルギー線硬化型接着剤は、一般に、活性エネルギー線硬化性成分及び重合開始剤を含み、必要に応じて、各種の添加剤を含む。
活性エネルギー線硬化性成分は、電子線硬化性、紫外線硬化性、可視光線硬化性に大別できる。また、活性エネルギー線硬化性成分は、硬化のメカニズムの観点では、ラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物とに大別できる。
【0049】
ラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基などの炭素-炭素二重結合のラジカル重合性の官能基を有する化合物が挙げられる。また、単官能ラジカル重合性化合物又は二官能以上の多官能ラジカル重合性化合物のいずれも用いることができる。また、これらラジカル重合性化合物は、1種単独で又は2種以上を併用してもよい。ラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、例えば、(メタ)アクリルアミド基を有する(メタ)アクリルアミド誘導体、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
活性エネルギー線硬化型接着剤としてラジカル重合性化合物を用いる場合の重合開始剤は、活性エネルギー線に応じて適宜に選択される。紫外線又は可視光線により接着剤を硬化させる場合には、紫外線開裂又は可視光線開裂の重合開始剤が用いられる。このような重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、芳香族ケトン化合物、アセトフェノン系化合物、芳香族ケタール系化合物、芳香族スルホニルクロリド系化合物、チオキサントン系化合物などが挙げられる。
【0050】
カチオン重合性化合物としては、分子内にカチオン重合性官能基を1つ有する単官能カチオン重合性化合物、分子内にカチオン重合性官能基を2つ以上有する多官能カチオン重合性化合物などが挙げられる。カチオン重合性官能基としては、エポキシ基、オキセタニル基、オキセタン基、ビニルエーテル基、スピロオルトエステル基などが挙げられる。エポキシ基を有するカチオン重合性化合物としては、脂肪族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物などが挙げられる。オキセタニル基を有するカチオン重合性化合物としては、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタンなどが挙げられる。ビニルエーテル基を有するカチオン重合性化合物としては、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテルなどが挙げられる。
活性エネルギー線硬化型接着剤としてカチオン重合性化合物を用いる場合、カチオン重合開始剤が配合される。このカチオン重合開始剤は、可視光線、紫外線、電子線などの活性エネルギー線の照射によって、カチオン種又はルイス酸を発生し、カチオン重合性化合物のエポキシ基などと重合反応を開始する。カチオン重合開始剤としては、光酸発生剤と光塩基発生剤とを使用することができる。
【0051】
本発明においては、380nm~450nmの可視光線を含む光で硬化する活性エネルギー線硬化型接着剤を用いることもできる。この場合、ラジカル重合性化合物と重合開始剤とを含む活性エネルギー線硬化型接着剤を用いることが好ましい。
このような活性エネルギー線硬化型接着剤は、例えば、特開2018-092186号公報に開示されており、本発明の活性エネルギー線硬化型接着剤として、上記公報に記載の活性エネルギー線硬化型接着剤を用いることができる。本明細書においては、紙面の都合上、上記公報の記載を転記することを省略するが、上記公報の接着剤に関する記載を本明細書にそのまま取り込めるものとする。
【0052】
また、本発明においては、接着剤adとして、水酸基を含有する活性エネルギー線硬化型接着剤を用いることもできる。このような活性エネルギー線硬化型接着剤としては、例えば、特許文献1の段落0152及び表1に記載の実施例1の接着剤を用いることができる。本明細書においては、紙面の都合上、上記特許文献1の記載を転記することを省略するが、上記特許文献1の接着剤に関する記載を本明細書にそのまま取り込めるものとする。
【0053】
また、本発明においては、接着剤adとして、SP値が29.0(MJ/m3)1/2以上32.0(MJ/m3)1/2以下であるラジカル重合性化合物、又は、21.0(MJ/m3)1/2以上23.0(MJ/m3)1/2以下であるラジカル重合性化合物を含有する活性エネルギー線硬化型接着剤を用いることもできる。このような活性エネルギー線硬化型接着剤としては、例えば、特許文献2の段落0015等に記載のラジカル重合性化合物(A)やラジカル重合性化合物(C)を含有する活性エネルギー線硬化型接着剤を用いることができる。本明細書においては、紙面の都合上、上記特許文献2の記載を転記することを省略するが、上記特許文献2の接着剤に関する記載を本明細書にそのまま取り込めるものとする。
【0054】
また、本発明においては、接着剤adとして、水を含有する活性エネルギー線硬化型接着剤を用いることもできる。このような活性エネルギー線硬化型接着剤としては、例えば、従来公知の活性エネルギー線硬化型接着剤と特許文献3の表3に記載の実施例16の接着剤(易接着組成物)との組み合わせを用いることができる。本明細書においては、紙面の都合上、上記特許文献3の記載を転記することを省略するが、上記特許文献3の接着剤に関する記載を本明細書にそのまま取り込めるものとする。
【0055】
さらに、本発明においては、接着剤adとして、金属アルコキシド及び金属キレートからなる群より選択される少なくとも1種の有機金属化合物を含有する活性エネルギー線硬化型接着剤を用いることもできる。このような活性エネルギー線硬化型接着剤としては、例えば、特許文献1の段落0152及び表1に記載の実施例1の接着剤を用いることができる。
【0056】
以上に説明した本実施形態に係る偏光フィルムFの製造方法によれば、第1タンク20内に貯留されている接着剤adが偏光子F1及び保護フィルムF2に塗工されて、第1タンク20内の接着剤adの貯留量が所定値以下となった場合に、第2タンク30から第1タンク20に接着剤adが供給されることになる。第2タンク30では、接着剤adが密封されて貯留されているため、雰囲気中の水分を吸収し難く、溶媒成分も揮発し難い。また、塗工機6で塗工されなかった接着剤adは、第2タンク30には戻らず第1タンク20に戻るため、第2タンク30内には、第1タンク20と塗工機6との間の循環使用によって雰囲気中の水分を吸収した接着剤adや、溶媒成分の揮発した接着剤adが混入しない。このため、新品に近い接着剤adが第2タンク30から第1タンク20に供給され、この新品に近い接着剤adが第1タンク20と塗工機6との間で新たに循環することになる。第2タンク30における接着剤adの貯留量は第1タンク20よりも大きいため、第2タンク30内の接着剤が無くなるまで、第2タンク30内の接着剤adを交換することなく、長期に亘って使用可能である。
したがい、本実施形態に係る偏光フィルムFの製造方法によれば、接着剤adのランニングコストを抑制し且つ偏光フィルムFの製造効率を損なうことなく、偏光フィルムFにおける偏光子F1と保護フィルムF2との間の良好な接着性を維持することが可能である。
【0057】
図3は、
図2に示す屈折率計23で測定した接着剤adの屈折率の変化と、測定した屈折率から演算した接着剤adの水分率の変化との一例を示す図である。なお、
図3において、屈折率についての縦軸(
図3の左側の縦軸)は、初期の屈折率からの変化量で表している。
接着剤adの屈折率と水分率とは、屈折率をX、水分率をYとすると、Y=aX+b(a、bは接着剤adに応じて決まる係数)で表される関係があり、この関係式を用いて、測定した屈折率から水分率を演算することが可能である。
接着剤adの屈折率(
図3において実線で示す)及び水分率(
図3において破線で示す)は、第1タンク20と塗工機6との間での接着剤adの循環を開始してから、「連続運転開始時点」(19時間経過後)までの間は、塗工機6から接着剤adを塗工せずに、第1タンク20と塗工機6との間で接着剤adを循環させた状態で測定・演算した。また、「連続運転開始時点」経過後は、第1タンク20と塗工機6との間で接着剤adを循環させながら、塗工機6から接着剤adを塗工した状態で測定・演算した。
図3に白抜き矢符で示す時点は、ポンプ42を駆動して第2タンク30から第1タンク20に接着剤adを供給したタイミングを示す。
図3に示すように、時間の経過と共に、雰囲気中の水分を吸収することで、接着剤adの屈折率は低下(水分率は上昇)しているが、白抜き矢符のタイミングで第2タンク30から第1タンク20に新品に近い接着剤adが供給されることで、塗工される接着剤adの屈折率は上昇(水分率は低下)し、良好な接着性の維持が期待できることが分かる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例及び比較例を説明し、本発明を更に詳述する。ただし、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0059】
[使用材料]
<活性エネルギー線硬化型接着剤A>
55重量%の1,9-ノナンジオールジアクリレート、10重量%のヒドロキシエチルアクリルアミド及び30重量%のアクリロイルモルフォリン(活性エネルギー線硬化性成分)と、3重量%のIRGACURE 907及び2重量%のKAYACURE DETX-S(重合開始剤)と、を混合し、3時間撹拌することにより、活性エネルギー線硬化型接着剤Aを得た。
この活性エネルギー線硬化型接着剤Aの塗工開始時の25℃における粘度は、20mPa・sであった。
【0060】
<活性エネルギー線硬化型接着剤B>
52重量%の1,9-ノナンジオールジアクリレート、10重量%のヒドロキシエチルアクリルアミド及び30重量%のアクリロイルモルフォリン、3重量部の3-アクリルアミドフェニルボロン酸(活性エネルギー線硬化性成分)と、3重量%のIRGACURE 907及び2重量%のKAYACURE DETX-S(重合開始剤)と、を混合し、3時間撹拌することにより、活性エネルギー線硬化型接着剤Bを得た。
この活性エネルギー線硬化型接着剤Bの塗工開始時の25℃における粘度は、22mPa・sであった。
【0061】
<活性エネルギー線硬化型接着剤C>
53重量%の1,9-ノナンジオールジアクリレート、10重量%のヒドロキシエチルアクリルアミド及び30重量%のアクリロイルモルフォリン、1重量部の3-アクリルアミドフェニルボロン酸(活性エネルギー線硬化性成分)、1重量部のオルガチックスTA-30:テトラオクチルチタネートと、3重量%のIRGACURE 907及び2重量%のKAYACURE DETX-S(重合開始剤)と、を混合し、3時間撹拌することにより、活性エネルギー線硬化型接着剤Cを得た。
この活性エネルギー線硬化型接着剤Cの塗工開始時の25℃における粘度は、20mPa・sであった。
【0062】
<活性エネルギー線硬化型接着剤D>
62重量%のグリセリントリアクリレート、10重量%の4-ヒドロキシブチルアクリレート、20重量%の3-エチル-3-{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン、3重量%のIRGACURE 907及び2重量%のKAYACURE DETX-S(重合開始剤)、3重量%のCPI-100P(光酸発生剤)を混合し、3時間撹拌することにより、活性エネルギー線硬化型接着剤Dを得た。
この活性エネルギー線硬化型接着剤Dの塗工開始時の25℃における粘度は、35mPa・sであった。
なお、活性エネルギー線硬化型接着剤A~Dの塗工開始時の25℃における粘度は、E型粘度計を用いて測定した。
【0063】
<偏光子X>
図1に示す繰出ローラ1、処理槽2及びオーブン3を備える既存の偏光子製造装置を用い、平均重合度2400、ケン化度99.9モル%の厚み45μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の温水中に60秒間浸漬し膨潤させた。次いで、ヨウ素/ヨウ化カリウム(重量比=0.5/8)の濃度0.3%の水溶液に浸漬し、3.5倍まで延伸させながらフィルムを染色した。その後、65℃のホウ酸エステル水溶液中で、トータルの延伸倍率が6倍となるように延伸を行った。延伸後に、40℃のオーブンにて3分間乾燥させ、長尺帯状のポリビニルアルコール系偏光子(厚み18μm)Xを得た。
なお、偏光子Xに易接着処理を施す場合には、特許文献3の表3に記載の実施例16の易接着組成物を用いた。
【0064】
<保護フィルムY、Z>
偏光子Xの一方の片面に貼り合わせる保護フィルムYとして、厚み52μmの環状ポリオレフィンフィルム(日本ゼオン(株)製)を用い、偏光子Xとの貼り合わせ面にコロナ処理等のドライ処理を施した。
偏光子Xの他方の片面に貼り合わせる保護フィルムZとして、厚み60μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士フイルム(株)製)を用いた。
【0065】
[実施例1]
偏光子Xと保護フィルムY、Zとを活性エネルギー線硬化型接着剤Aを用いて貼り合わせ、接着剤Aを硬化させることで偏光フィルムを作製した。偏光子Xには易接着処理を施さなかった。そして、初期の接着剤A(
図3の「連続運転開始時点」相当の接着剤)を用いて作製した偏光フィルムに対して90度剥離試験を行い、偏光子Xと保護フィルムYとの間の剥離力、及び、偏光子Xと保護フィルムZとの間の剥離力を測定した。また、32時間連続運転後の接着剤Aを用いて作製した偏光フィルムに対して90度剥離試験を行い、偏光子Xと保護フィルムYとの間の剥離力、及び、偏光子Xと保護フィルムZとの間の剥離力を測定した。
【0066】
[実施例2]
活性エネルギー線硬化型接着剤Bを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、偏光フィルムを作製し、剥離力を測定した。
【0067】
[実施例3]
活性エネルギー線硬化型接着剤Cを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、偏光フィルムを作製し、剥離力を測定した。
【0068】
[実施例4]
活性エネルギー線硬化型接着剤Dを用い、偏光子Xに易接着処理を施したこと以外は、実施例1と同様にして、偏光フィルムを作製し、剥離力を測定した。
【0069】
[比較例1]
第2タンク30を密封せずに接着剤を貯留し、塗工機6で塗工されなかった接着剤を第1タンク20ではなく第2タンク30に戻した(すなわち、第2タンク30、第1タンク20及び塗工機6の間で接着剤を循環使用した)こと以外は、実施例1と同様にして、偏光フィルムを作製し、剥離力を測定した。
【0070】
[比較例2]
第2タンク30を密封せずに接着剤を貯留し、塗工機6で塗工されなかった接着剤を第1タンク20ではなく第2タンク30に戻した(すなわち、第2タンク30、第1タンク20及び塗工機6の間で接着剤を循環使用した)こと以外は、実施例2と同様にして、偏光フィルムを作製し、剥離力を測定した。
【0071】
[比較例3]
第2タンク30を密封せずに接着剤を貯留し、塗工機6で塗工されなかった接着剤を第1タンク20ではなく第2タンク30に戻した(すなわち、第2タンク30、第1タンク20及び塗工機6の間で接着剤を循環使用した)こと以外は、実施例3と同様にして、偏光フィルムを作製し、剥離力を測定した。
【0072】
[比較例4]
第2タンク30を密封せずに接着剤を貯留し、塗工機6で塗工されなかった接着剤を第1タンク20ではなく第2タンク30に戻した(すなわち、第2タンク30、第1タンク20及び塗工機6の間で接着剤を循環使用した)こと以外は、実施例4と同様にして、偏光フィルムを作製し、剥離力を測定した。
【0073】
[測定結果の評価]
図4は、実施例1~4及び比較例1~4で得られた剥離力の測定結果を示す。
なお、剥離力の測定(90度剥離試験)は、長尺帯状の偏光フィルムの先端部(初期に製造される部分)と後端部(約32時間の稼働後に製造される部分)とを切断して、それぞれ試験片を作製し、各試験片について行った。
図4に示す「初期X-Y間90度剥離試験」及び「初期X-Z間90度剥離試験」の欄に示す剥離力は、偏光フィルムの先端部を切断して得られた試験片について測定した剥離力を意味する。
図4に示す「32時間連続運転後X-Y間90度剥離試験」及び「32時間連続運転後X-Z間90度剥離試験」の欄に示す剥離力は、偏光フィルムの後端部を切断して得られた試験片について測定した剥離力を意味する。
【0074】
具体的には、上記の試験片を、偏光子の延伸方向と平行な方向に200mm、直交する方向に15mmの大きさに切り出したものとし、この試験片をガラス板に貼り合わせた。偏光子Xと保護フィルムYとの間の剥離力を測定する場合には、試験片の偏光子Xと保護フィルムYとの間にカッターナイフで切り込みを入れ、テンシロンを用いて、90°方向に偏光子Xと保護フィルムYとを剥離速度500mm/分で剥離し、その剥離力を測定した。偏光子Xと保護フィルムZとの間の剥離力を測定する場合には、試験片の偏光子Xと保護フィルムZとの間にカッターナイフで切り込みを入れ、テンシロンを用いて、90°方向に偏光子Xと保護フィルムZとを剥離速度500mm/分で剥離し、その剥離力を測定した。
【0075】
図4に示すように、実施例1~4によれば、初期の接着剤を用いて作製した偏光フィルムだけでなく、32時間連続運転後の接着剤を用いて作製した偏光フィルムについても十分に大きな剥離力が得られており、偏光子と保護フィルムとの間の良好な接着性を維持できている。
これに対し、比較例1~4によれば、初期の接着剤を用いて作製した偏光フィルムでは偏光子と保護フィルムとの間の良好な接着性が得られているが、32時間連続運転後の接着剤を用いて作製した偏光フィルムについては剥離力が小さくなり、偏光子と保護フィルムとの間の接着性が低下している。
【符号の説明】
【0076】
ad・・・活性エネルギー線硬化型接着剤
F1・・・偏光子(第1光学フィルム)
F2・・・保護フィルム(第2光学フィルム)
F・・・偏光フィルム(光学積層体)
6・・・塗工機
20・・・第1タンク
22、42・・・ポンプ
30・・・第2タンク
40・・・制御装置
43・・・レベル計
100・・・接着剤塗工装置