IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルコン インコーポレイティドの特許一覧

<>
  • 特許-その場調整可能な眼内レンズ 図1A
  • 特許-その場調整可能な眼内レンズ 図1B
  • 特許-その場調整可能な眼内レンズ 図1C
  • 特許-その場調整可能な眼内レンズ 図2A
  • 特許-その場調整可能な眼内レンズ 図2B
  • 特許-その場調整可能な眼内レンズ 図3
  • 特許-その場調整可能な眼内レンズ 図4
  • 特許-その場調整可能な眼内レンズ 図5
  • 特許-その場調整可能な眼内レンズ 図6
  • 特許-その場調整可能な眼内レンズ 図7
  • 特許-その場調整可能な眼内レンズ 図8
  • 特許-その場調整可能な眼内レンズ 図9
  • 特許-その場調整可能な眼内レンズ 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】その場調整可能な眼内レンズ
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/16 20060101AFI20241112BHJP
   A61L 27/16 20060101ALI20241112BHJP
   A61L 27/48 20060101ALI20241112BHJP
   A61L 27/56 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
A61F2/16
A61L27/16
A61L27/48
A61L27/56
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021559326
(86)(22)【出願日】2020-04-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-06
(86)【国際出願番号】 IB2020053279
(87)【国際公開番号】W WO2020208501
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】62/831,520
(32)【優先日】2019-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100165995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 寿人
(72)【発明者】
【氏名】アリ アキネイ
(72)【発明者】
【氏名】シュイウェイ チアン
(72)【発明者】
【氏名】チエン リョウ
(72)【発明者】
【氏名】チンポー リョウ
【審査官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0082017(US,A1)
【文献】特開2007-262195(JP,A)
【文献】特開2008-019744(JP,A)
【文献】特開2013-245296(JP,A)
【文献】国際公開第2010/125596(WO,A1)
【文献】特表2006-517447(JP,A)
【文献】池田 富樹ら,光駆動高分子液晶フィルム-光で自由に曲がるプラスチック-,応用物理,2004年07月10日,73, 7,pp.947-951,https://doi.org/10.11470/oubutsu.73.7_947
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/16
A61L 27/00-27/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学部と、
少なくとも一部がポリドメインアゾ液晶ポリマ網目構造(PD-LCN)を含む複数の支持部と、
を含み、
前記支持部の前記PD-LCNの部分は、前記光学部の位置を可逆的に調整するように構成されており、
前記支持部は支持部接合部を含み、前記複数の支持部の内の2つの支持部の支持部接合部は、異なるwt%のジアクリレートアゾベンゼン液晶モノマ又は異なる架橋密度を有する、眼内レンズ(IOL)。
【請求項2】
記支持部接合部の少なくとも一部はPD-LCNから形成される、請求項1に記載のIOL。
【請求項3】
記支持部は前記光学部に前記支持部接合部を介して取り付けられる、請求項2に記載のIOL。
【請求項4】
前記光学部を保持するように構成されたベースをさらに含み、前記支持部は前記ベースに取り付けられる、請求項1又は2に記載のIOL。
【請求項5】
前記PD-LCNは架橋されたジアクリレート液晶モノマとジアクリレートアゾベンゼン液晶モノマとを含む、請求項1~の何れか一項に記載のIOL。
【請求項6】
前記PD-LCNは25wt%以下のジアクリレートアゾベンゼン液晶モノマを含む、請求項に記載のIOL。
【請求項7】
前記PD-LCNの架橋密度は1.0モル/dm~8.0モル/dmである、請求項に記載のIOL。
【請求項8】
前記ジアクリレートアゾベンゼン液晶モノマは4-(3-アクリロイルオキシプロピルオキシ)-benzoesure 2-メチル-1,4-フェニルエステルを含む、請求項に記載のIOL。
【請求項9】
前記ジアクリレートアゾベンゼン液晶モノマは4,4’-ビス[6-アクリロルオキシ(acryloloxy))ヘキシルオキシ]アゾベンゼンを含む、請求項に記載のIOL。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年4月9日に出願された、Xuwei Jiang、Ali Akinay、Jingbo Liu、及びJian Liuを発明者とする米国仮特許出願第62/831,520号の“IN-SITU ADJUSTABLE INTRAOCULAR LENS”の優先権の利益を主張するものであり、その全体を本明細書中に全文が完全に記載されているかのように本願に援用する。
【0002】
本開示は、その位置が眼の水晶体嚢内でその場で調整され得る眼内レンズ(IOL:intraocular lens)に関する。本開示はさらに、このようなIOLの位置を調整する方法及びIOLの位置を調整するシステムにも関する。
【背景技術】
【0003】
人の眼は、角膜と水晶体を含み、これらは眼の瞳孔に入射した光を網膜に集束するものである。しかしながら、眼は様々な屈折異常を示し得、その結果、光が網膜に正しく集束されず、及び視力が低下し得る。長年にわたり、様々な眼の収差を補正するための多くの介入方法が開発されてきた。その中には、眼鏡、コンタクトレンズ、レーザ角膜屈折矯正手術(LASIK:laser-assisted in situ keratomileusis)又は角膜移植等の角膜屈折矯正手術、及びIOLが含まれる。IOLはまた、患者の眼の病変した生来の水晶体と置換することによって白内障を治療するためにも使用される。典型的なIOL留置手術では、IOLは患者の水晶体嚢に挿入されて、生来の水晶体と置換される。
【0004】
IOLは、屈折異常に関して移植されるか、白内障治療のために移植されるかを問わず、術後に常に目標位置に位置付けられるとは限らないことがあり得る。それに加えて、IOLは時間の経過と共に、おそらく水晶体嚢内で回転方向若しくは軸方向又はそれらの組合せでシフトすることがあり得、その結果目標位置にもはや存在しない。IOLの位置が適正でないと、患者の見え方の質に不利な影響が及ぶことがあり得、それは、眼内のIOL位置は屈折力に、及び該当する場合には乱視矯正にも影響を与えるからである。したがって、眼内のIOLの目標位置を使って、手術計画を立て、及び患者に合ったIOLを選択する。IOLの実際の位置が手術計画内の目標位置からずれていると、術後は最適に至らないことがあり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、光学部と、少なくとも一部がポリドメインアゾ液晶ポリマ網目構造(PD-LCN:poly-domain azo liquid crystalline polymer network)から形成される少なくとも1つの支持部と、を含む、眼内レンズ(IOL)を提供する。
【0006】
明確に相互に排他的でないかぎり、相互に、又は本開示の他の何れの部分とも何れの組合せでも組み合わされてよい、さらに詳細な点において、本開示はさらに以下の事柄を提供する:
i)少なくとも1つの支持部は、その少なくとも一部がPD-LCNから形成される支持部接合部を含んでいてよく、
ii)少なくとも1つの支持部は光学部に支持部接合部を介して取り付けられてよく、
iv)IOLは、光学部を保持するベースをさらに含み、少なくとも1つの支持部はベースに取り付けられてよく、
v)IOLは複数の支持部を含んでいてよく、各々の少なくとも一部はPD-LCNから形成されてよく、
vi)各支持部は、その少なくとも一部がPD-LCNから形成されてよい支持部接合部を含んでいてよく、
vii)PD-LCNは架橋されたジアクリレート液晶モノマとジアクリレートアゾベンゼン液晶モノマとを含んでいてよく、
viii)PD-LCNは25wt%以下のジアクリレートアゾベンゼン液晶モノマを含んでいてよく、
ix)PD-LCNの架橋密度は1.0モル/dm~8.0モル/dmであってよく、
x)ジアクリレート液晶モノマは4-(3-アクリロイルオキシプロピルオキシ)-benzoesure 2-メチル-1,4-フェニルエステルを含んでいてよく、
xi)ジアクリレートアゾベンゼン液晶モノマは4,4’-ビス[6-アクリロルオキシ(acryloloxy))ヘキシルオキシ]アゾベンゼンを含んでいてよく、
xii)ジアクリレート液晶モノマは4-(3-アクリロイルオキシルオキシプロピルオキシ)-benzoesure 2-メチル-1,4-フェニルエステルを含んでいてよく、ジアクリレートアゾベンゼン液晶モノマは4,4’-ビス[6-アクリロルオキシ(acryloloxy))ヘキシルオキシ]アゾベンゼンを含んでいてよい。
【0007】
本開示はさらに、眼内レンズの光学部を受けるように構成された開口を含むベースと、ベースに連結された少なくとも1つの支持部を含み、少なくとも1つの支持部の少なくとも一部は光誘起形状記憶ポリマ網目構造を含む眼科用機器を提供する。
【0008】
明確に相互に排他的でないかぎり、相互に、又は本開示の他の何れの部分とも何れの組合せでも組み合わされてよい、さらに詳細な点において、本開示はさらに以下の事柄を提供する:
i)光誘起形状記憶ポリマ網目構造は、ポリドメインアゾ液晶ポリマ網目構造(PD-LCN)を含んでいてよく、
ii)少なくとも1つの支持部は、その少なくとも一部が光誘起形状記憶ポリマ網目構造から形成されてよい支持部接合部を含んでいてよく、
iii)少なくとも1つの支持部は光学部に支持部接合部を介して取り付けられてよく、
iv)少なくとも1つの支持部は複数の支持部を含んでいてよく、各々の少なくとも一部は光誘起形状記憶ポリマ網目構造から形成されてよく、
v)PD-LCDは架橋されたジアクリレート液晶モノマとジアクリレートアゾベンゼン液晶モノマを含んでいてよく、
vi)PD-LCNは25wt%以下のジアクリレートアゾベンゼン液晶モノマを含んでいてよく、
vii)PD-LCNの架橋密度は1.0モル/dm~8.0モル/dmであってよく、
viii)ジアクリレート液晶モノマは4-(3-アクリロイルオキシプロピルオキシ)-benzoesure 2-メチル-1,4-フェニルエステルを含んでいてよく、
ix)ジアクリレートアゾベンゼン液晶モノマは4,4’-ビス[6-アクリロルオキシ(acryloloxy))ヘキシルオキシ]アゾベンゼンを含んでいてよく、
x)ジアクリレート液晶モノマは4-(3-アクリルオキシルオキシプロピルオキシ)-benzoesure 2-メチル-1,4-フェニルエステルを含んでいてよく、ジアクリレートアゾベンゼン液晶モノマは4,4’-ビス[6-アクリロルオキシ(acryloloxy))ヘキシルオキシ]アゾベンゼンを含んでいてよい。
【0009】
本開示は、IOL又は眼科用機器を調整する方法を含んでいてよい。IOL又は眼科用機器は、前述の、又は本開示内の何れかの部分に記載の何れのIOL又は眼科用機器であってもよい。方法は、IOL又は眼科用機器の支持部の一部に放射を照射するステップを含んでいてよく、支持部はPD-LCN等の光誘起形状記憶ポリマ網目構造を含み、偏光レーザ放射によってPD-LCN等の光誘起形状記憶ポリマ網目構造がある曲げ角度まで曲がり、それによってIOL又は眼科用機器がその中に位置付けられている水晶体嚢に押し付けられ、水晶体嚢内のIOL又は眼科用機器の位置が調整される。
【0010】
明確に相互に排他的でないかぎり、相互に、又は本開示の他の何れの部分とも何れの組合せでも組み合わされてもよい、さらに詳細な点において、本開示はさらに以下の事柄を提供する:
i)偏光レーザ放射は、両端の値を含む440nm~514nmの範囲の波長を有していてよく、
ii)IOLの位置は軸方向に前後に調整されてよく、
iii)IOLの位置は半径方向にある角度だけ調整されてよく、
iv)IOLは、実際の位置が水晶体嚢内の標的位置とは異なる位置であってもよく、IOlの位置を調整することは、IOLを標的位置まで移動させることを含んでいてよく、
v)照射は、両端の値を含む0.5秒~5分にわたり行われてよい。
【0011】
本開示は、屈折異常を補正する方法を提供する。方法は、少なくとも1つの支持部を含み、少なくとも1つの支持部の少なくとも一部は光誘起形状記憶ポリマ網目構造を含むIOL又は眼科用機器を患者の眼内に移植するステップと、患者の眼についての術後バイオメトリックデータを取得するステップと、患者の眼の術後屈折異常を特定するステップと、術後バイオメトリックデータ及び術後屈折異常に基づいて、レーザを制御し、偏光レーザ放射を光誘起形状記憶ポリマ網目構造に当てて、支持部の形状変化を誘導し、それによって眼内レンズを患者の眼内で並進移動又は回転の少なくとも一方を生じさせるための計算図表を生成し、それによって術後屈折異常を補正するステップと、レーザを使って光誘起形状記憶ポリマ網目構造に放射を照射するステップと、を含む。IOL又は眼科用機器は、前述の、又は本開示の他の何れかの箇所に記載の何れのIOL又は眼科用機器であってもよい。
【0012】
明確に相互に排他的でないかぎり、相互に、又は本開示の他の何れの部分とも何れの組合せでも組み合わされてよい、さらに詳細な点において、本開示はさらに以下の事柄を提供する:
i)光誘起形状記憶ポリマ網目構造はPD-LCNを含み、
ii)偏光レーザ放射は、両端の値を含む440nm~514nmの範囲の波長を有していてよく、
iii)IOLの位置は軸方向に前後に調整されてよく、
iv)IOLの位置は半径方向に角度θだけ調整されてよく、
v)照射は、両端の値を含む0.5秒~5分にわたり行われてよく、
vi)PD-LCNを含む支持部の照射される部分は支持部接合部を含んでいてよい。
【0013】
本開示はさらに、前述の、又は本開示の他の何れかの箇所に記載の、何れかのIOL又は眼科用機器等、IOL又は眼科用機器の位置を調整するための手術システムを提供する。システムは、両端の値を含む440nm~514nmの範囲のレーザ放射を提供することのできるレーザと、レーザからの放射の偏光角度を調整することのできる偏光フィルタと、プロセッサ、メモリ、及び通信インタフェースを含むコンピュータと、を含み、コンピュータはプロセッサを使ってメモリ内に記憶された命令を実行して、命令が通信インタフェースを通じて送信され、レーザ及び偏光フィルタが患者の眼の水晶体嚢内にあるIOL又は眼科用機器の支持部の少なくとも一部に偏光レーザ放射を照射させるようにすることができ、照射される部分はPD-LCN等の光誘起形状記憶ポリマ網目構造を含み、放射に応答してある曲げ角度まで曲がる。命令は、前述の、又は本明細書中でそれ以外に開示された何れかの方法の全部又は一部を含んでいてよい。
【0014】
明確に相互に排他的でないかぎり、相互に、又は本開示の他の何れの部分とも何れの組合せでも組み合わされてよい、さらに詳細な点において、本開示はさらに以下の事柄を提供する:
i)支持部の放射が照射される部分は支持部接合部を含み、
ii)レーザはフェムト秒レーザ又はエキシマレーザを含んでいてよい。
【0015】
本開示をより十分に理解するために、ここで、本開示の態様を示す下記のような添付の図面と併せて読むべき以下の説明を参照するが、図中、同様の構成要素には同様の番号が付与され、これには10a、10b等、変形がアルファベットにより示されることも含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A図1Aは、2つの支持部を有する1ピース型IOLの概略上面図である。
図1B図1Bは、図1Aの1ピース型IOLの概略側面図である。
図1C図1Cは、図1A及び図1Bの1ピース型IOLの、PD-LNCが約40°の曲げ角度まで曲げられた状態の概略側面図である。
図2A図2Aは、2ピース型IOLの概略上面図である。
図2B図2Bは、図2Aの2ピース型IOLの概略側面図である。
図3図3は、3つの支持部を有する1ピース型IOLの概略上面図である。
図4図4は、4つの支持部を有する1ピース型IOLの概略上面図である。
図5図5は、複雑な構造の2つの支持部を有する1ピース型IOLの概略上面図である。
図6図6は、2つのループ式支持部を有する1ピース型IOLの概略上面図である。
図7図7は、2つの立体支持部を有する1ピース型IOLの概略斜視図である。
図8図8は、IOLを移植し、調整する方法のフローチャートである。
図9図9は、PD-LCN曲げ角度とレーザ放射の偏光角との関係の例示的なグラフである。
図10図10は、IOLの位置を調整するための手術システムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示は、その位置がその場で調整されてよい眼内レンズ(IOL)に関する。本開示はさらに、このようなIOLの位置を調整する方法及びIOL位置を調整するシステムに関する。特に、本開示のIOLは少なくとも1つの支持部を含んでいてよく、支持部の少なくとも一部は、ポリドメインアゾ液晶ポリマ網目構造(PD-LCN)等の光誘起形状記憶ポリマ網目構造から形成される。PD-LCNは特定の偏光のレーザ放射の特定の波長に応答してある方向に目標通りに曲がり、それによって眼内のIOL位置の調整が可能となる。それに加えて、PD-LCNはその形状のままであり、それによって調整済みのIOL位置が保持される。さらに、PD-LCNの曲げ及びそれゆえIOL位置調整は、レーザ放射の異なる偏光に応答して可逆的である。
【0018】
本開示のIOLは、1ピース型でもモジュール式IOL(例えば、2ピース型又は3ピース型IOL)でもよい。一般に、IOLは少なくとも1つの光学部と少なくとも1つの支持部を含む。支持部は光学部の側部に位置付けられ、IOLを眼内の安定位置に保持するのを助ける。IOLの設計に応じて、支持部は光学部と一体であっても、そこに直接連結されてもよい。幾つかの設計では、IOLはまた、別々の、又は一体のベースも含んでいてよく、光学部及び/又は支持部がそれと一体であるか、又は連結されてよい。ベースは光学部を保持してよく、支持部はベースに取り付けられてよい。支持部のうち、光学部又はベースに取り付けられる領域は、本明細書において支持部接合部と呼ばれる。モジュール式IOLの構成要素は、個別に挿入されて、手術中に眼内で組み立てられてもよい。
【0019】
支持部全体、その一部、又は支持部接合部のみがPD-LCNから形成されてもよい。本開示の幾つかのIOLは、複数の支持部を含んでいてよい。このような場合、支持部の全部が、PD-LCNから形成される少なくとも一部を含んでいてよい。例えば、支持部の全部が、PD-LCNから形成される支持部接合部を有していてよい。複数の支持部を有する幾つかのIOLにおいて、相互に反対にある支持部又は120度の角度にある支持部等、対称に設置された支持部は、IOLの位置を対称に調整できるようにするために、PD-LCNの同じ配置を有していてもよい。それに加えて、複数の支持部を有する幾つかのIOLにおいて、支持部の群、特にその部材が対称に設置される群は、支持部が偏光レーザ放射に対して異なる応答を示すことができるように、PD-LCNの異なる配置を有していてもよく、それによってIOLの位置の、より微調節された調整が可能となる。
【0020】
何れのIOLであっても、不適正に配置されることがあるため、本開示は何れのタイプのIOLにも適合可能である。具体的なIOLが図1~7に示され、PD-LCNがIOLの中でどのように使用され得るかを示している。当業者であれば、本開示を利用して、具体的に例示されたものに加えて、他の多くの種類のIOLにおける適当なPD-LCNを特定し得る。
【0021】
図1Aは、光学部20aと光学部20a及び/又はベース(図示せず)に取り付けられた2つの支持部30aを含む、IOL 10aの概略図である。支持部30aの各々は、アーム40aと、アーム40aと光学部20aとの間の支持部接合部50aを有する。支持部接合部50aは、支持部30aを光学部20a(又はベース)に取り付けられてよい。IOLはまた、中心60aも有する。それが水晶体嚢の中に移植され、固定された後、支持部接合部50aの1つ又は複数への放射の照射によりPD-LNCに形状変化を生じさせることによって、IOL 10aは中心60aの周囲で方向70又は方向80に角度θだけ回転されてもよい。図1Bに示されるように、IOL 10aはまた、眼内で方向90に前方に(前側に)又は眼内で方向100に後方に(後側に)移動されてもよい。図1Cは、両方の支持部接合部50aに放射が照射されて、PD-LNCを約40°の曲げ角度まで曲げた後、IOLを眼内で方向100に後方に(後側に)押しているIOL 10aを示す。
【0022】
図2Aは、光学部20bと、光学部20b又はベース(図示せず)に取り付けられた2つの支持部30bを含むIOL 10bの略図である。支持部30bの各々は、アーム40bと、アーム40bと光学部20bとの間の支持部接合部50bを有する。それが水晶体嚢内に移植され、固定された後、IOL 10bの光学部は中心60bの周囲で方向70又は方向80に角度θだけ回転させることができる。それに加えて、図2Bに示されるように、IOL 10bの光学部20bは、支持部接合部50bに放射を照射して、PD-LNCに形状変化させることによって、眼内で方向90又は100へとそれぞれ前方又は後方に調整できる。図2Bはまた、2ピース型IOLの幾つかの実施形態により光学部20bがベース110内にどのように位置付けられてよいかも示している。
【0023】
図3は、光学部20cと光学部20c又はベース(図示せず)に取り付けられた3つの支持部30cを含む他のIOL 10cの概略図である。支持部30cの各々は、アーム40cと、アーム40cと光学部20cとの間の支持部接合部50cを有する。支持部接合部50cは、支持部30cを光学部20cに取り付け得る。IOLはまた、中心60cも有する。それが水晶体嚢に移植され、固定された後、支持部接合部50cの1つ又は複数に放射を照射してPD-LNCに形状変化させることによって、IOL 10cの光学部を中心60cの周囲で方向70又は方向80へと角度θだけ回転させ、及び/又は眼内で後方又は前方に調整することができる。
【0024】
図4は、光学部20dと光学部20d又はベース(図示せず)に取り付けられた4つの支持部30dを含む、他のIOL 10dの略図である。支持部30dの各々は、アーム40dと、アーム40dと光学部20dとの間の支持部接合部50d-1又は50d-2を有する。各支持部接合部50d-1又は50d-2は、支持部30dを光学部20d又はベースに取り付け得る。IOLはまた、中心60dも有する。それが水晶体嚢に移植され、固定された後、支持部接合部50d-1及び/又は50d-2の1つ又は複数に放射を照射してPD-LNCに形状変化させることによって、IOL 10dの光学部を中心60dの周囲で方向70又は方向80に角度θだけ回転させ、及び/又は眼内で後方又は前方に調整することができる。支持部接合部50d-1は、支持部接合部50d-2と同じPD-LCNから、又は異なるPD-LCNから形成され得る。例えば、支持部接合部50d-1は、ジアクリレートアゾベンゼン液晶モノマを異なるwt%だけ有しても、又は支持部接合部50d-2とは異なる架橋密度を有して、支持部接合部が偏光レーザ放射に対して異なる応答を示すようにしてもよい。
【0025】
図5は、光学部20eと光学部20e又はベース(図示せず)に取り付けられた2つの支持部30eを含む他のIOL 10eの略図である。支持部30eはどちらも、アーム40eとアーム40eと光学部20eとの間の支持部接合部50eを有する。支持部接合部50eは、支持部30eを光学部20eに取り付け得る。IOLはまた、中心60eも有する。それが水晶体嚢内に移植され、固定された後、支持部接合部50eの1つ又は複数に放射を照射して、PD-LNCに形状変化させることによって、IOL 10eの光学部20eを中心60eの周囲で方向70又は方向80に角度θだけ回転させ、及び/又は眼内で後方又は前方に調整することができる。
【0026】
図6は、光学部20fと光学部20f又はベース(図示せず)に取り付けられた2つのループ状支持部30fを含む、他のIOL 10fの略図である。支持部30fの各々は、アーム40fと、アーム40fと光学部20fとの間の少なくとも1つの支持部接合部50fを有する。支持部接合部50fは、支持部30fを光学部20fに取り付け得る。IOLはまた、中心60fも有する。それが水晶体嚢内に移植され、固定された後、支持部接合部50fの1つ又は複数に放射を照射して、PD-LNCに形状変化させることによって、IOL 10fの光学部20fを中心60fの周囲で方向70又は方向80に角度θだけ回転させ、及び/又は眼内で後方又は前方に調整することができる。
【0027】
図7は、光学部20gと光学部20g又はベース(図示せず)に取り付けられた2つの立体支持部30gを含む、他のIOL 10gの略図である。本実施例では複雑立体構造を有する支持部30gの各々は、アーム40gと、アーム40gと光学部20gとの間の少なくとも1つの支持部接合部50gを有する。支持部接合部50gは、支持部30gを光学部に取り付け得る。IOLはまた、中心60gも有する。それが水晶体嚢内に移植され、固定された後、支持部接合部50gの1つ又は複数に放射を照射して、PD-LNCに形状変化させることによって、IOL 10gの光学部20gを中心60gの周囲で方向70又は方向80に角度θだけ回転させ、及び/又は眼内で後方又は前方に調整することができる。
【0028】
図1A~7において、支持部30の全体がPD-LCNから形成されても、又はその一部のみがPD-LCNから形成されてもよい。特に、支持部接合部50はPD-LCNから形成され、アーム40等の支持部30の保持部分と光学部20又はベース110の両方に取り付けられてよい。それに加えて、支持部30又は支持部接合部50は、複数の種類のPD-LCNから形成されてもよい。例えば、支持部30又は支持部接合部50の異なる部分のPD-LCNは、組成又は架橋密度を違えて、偏光レーザ放射に対する異なる程度の応答性を提供してもよい。
【0029】
本開示での使用に適したPD-LCNは、両端の値を含む440nm~514nmの範囲、457nm~514nmの範囲、又は440nm~445nmの範囲、又は特に442nmの偏光レーザ放射への露光に応答して曲がる、何れの生体適合PD-LCNであってもよい。
【0030】
PD-LCNには、架橋されたジアクリレート液晶モノマとジアクリレートアゾベンゼン液晶モノマが含まれていてよい。ジアクリレートアゾベンゼン液晶モノマは、25wt%以下、20wt%以下、15wt%以下、10wt%以下、5wt%以下、0.1wt%~25Wt、0.1wt%~20wt%、0.1wt%~15wt%、0.1wt%~10wt%、0.1wt%~5wt%、1wt%~25wt%、1wt%~20wt%、1wt%~15wt%、1wt%~10wt%、1wt%~5wt%、3wt%~25wt%、3wt%~20wt%、3wt%~15wt%、3wt%~10wt%、3wt%~5wt%、5wt%~25wt%、5wt%~20wt%、5wt%~15wt%、5wt%~10wt%、10wt%~25wt%、10wt%~20wt%、10wt%~15wt%、15wt%~25wt%、15wt%~20wt%、又は20wt%~25wt%の量で存在していてよく、2つの量の間の範囲は両端の数値を含む。
【0031】
架橋密度の低いPD-LCNは、偏光レーザ放射に対して架橋密度のより高いPD-LCNより顕著な曲げ応答を示す。多くのIOLについて、より顕著な曲げ応答は、それが応答を誘導するのにかかる時間を限定するために望ましい。しかしながら、より制御された曲げが有益であるIOLの場合、PD-LCN架橋密度を高くしてもよい。それに加えて、安定したPD-LCNを形成するために、ある程度の架橋が必要である。
【0032】
架橋密度は形成条件、特に、架橋を誘導するために相互に存在する中でモノマを光硬化させる長さによって影響を受け得る。それに加えて、架橋密度はモノマの分子量の影響を受け得、他の要素の全てが同じである場合、分子量のより低いモノマは、より高い架橋密度のPD-LCNを生成する。
【0033】
典型的に、支持部30又は支持部接合部50で使用されるPD-LCNの架橋密度は、1.0モル/dm3~8.0モル/dm3であろう。
【0034】
本開示での使用に適した1つのジアクリレート液晶モノマは、4-(3-アクリロイルオキシプロピルオキシ)-benzoesure 2-メチル-1,4-フェニルエステル(2-メチルベンゼン-1,4-ジイルビス{4-[3-(アクリロイルオキシ)プロポキシ]ベンゾエート}としても知られる)であり、これは以下の構造式を有する:
【化1】
【0035】
本開示での使用に適したジアクリレートアゾベンゼン液晶モノマには、以下の構造式:
【化2】
を有する4,4’-ビス[6-アクリロルオキシ(acryloloxy))ヘキシルオキシ]アゾベンゼンのほか、4-ヘプチル4’-プロピルアゾベンゼン、4-オクチル4’-プロピルアゾベンゼン、4-シアノ4’-ヘプチルオキシアゾベンゼン、及び4-シアノ4’-オクチルオキシアゾベンゼンが含まれる。
【0036】
光誘起形状記憶ポリマ網目構造の例としてPD-LCNが詳しく論じられているが、その他の光誘起形状記憶ポリマ網目構造もPD-LCNと同じ方法で使用されてよい。例えば、ジアクリレート以外の1つ又は複数の架橋剤を含むか、又は異なるモノマを有する光誘起形状記憶ポリマ網目構造が使用されてもよい。PD-LCNを含む光誘起形状記憶ポリマ網目構造では、添加物が使用されてもよい。一般に、光誘起形状記憶ポリマ網目構造は、偏光レーザ放射、特にある偏光角の偏光レーザ放射に応答して目標通りに、例えば目標の曲げ角度で曲がりさえすればよい。
【0037】
本開示はさらに、図8のフローチャートで示されるように、患者の眼内に、PD-LCN等の光誘起形状記憶ポリマ網目構造を含むIOL、例えばIOL 10を移植し、調整する方法200を提供する。ステップ210で、水晶体(典型的には生来の水晶体であるが、過去に入れたIOLであってもよい)を水晶体嚢から取り除く。ステップ220で、IOLを水晶体嚢の中にセットする。このステップ中、外科医はIOLを選択された位置にセットしようとするが、必ずしもそれが成功するわけではない。ステップ230で、ある期間、典型的には2~4週間にわたり、眼を治癒させる。この期間中に眼内でIOLを移動させ、又はその位置を変えてよい。
【0038】
ステップ240で、典型的に手術の数日、数週間、又は数カ月後に患者に対して診断のための検眼を行い、術後データを取得する。ステップ240では、眼のバイオメトリックデータを取得してよい。ステップ240では、単純な屈折力測定又は、適当であれば乱視軸等のより複雑な測定を含む屈折異常等の見え方の質に関するデータも取得してよい。ステップ240はまた、IOLメンテナンスステップとして、しばしば、当初IOL設置の数週間、数カ月、又は数年後に開始されてよい。
【0039】
ステップ250で、少なくとも一部に、術後バイオメトリックデータ及び術後屈折異常等の診断のための検眼からの情報に基づいて、患者の見え方の質が改善されたか否かを特定する。例えば、患者は眼内の最適とは言えない屈折力を感じているかもしれず、又は依然として乱視を感じているかもしれない。診断のための検眼では例えば、例えば屈折計又は収差計を使って屈折力又は乱視度数を測定してよい。
【0040】
ステップ250で、術後バイオメトリックデータ及び術後屈折異常等の診断のための検眼からのデータに基づいて、レーザを制御して、偏光レーザ放射をPD-LCN等の光誘起形状記憶ポリマ網目構造に当てて、支持部の形状変化を誘導し、それによって眼内レンズを患者の眼内での並進移動又は回転の少なくとも一方を起こさせ、それによって術後屈折異常を補正するための計算図表を生成してよい。計算図表は例えば、PD-LCN等の光誘起形状記憶ポリマ網目構造の曲げ角度及びその曲げ角度を実現する偏光角を含む偏光レーザ放射を特定するために使用されてよい。代替的に、計算図表に基づかないアルゴリズムを使って同じようにレーザを制御してもよい。計算図表が生成されても、又は計算図表に基づかないアルゴリズムがプログラムされたコンピュータを使って実行されてもよく、これは診断のための検眼からのデータを受信し、保存することもできてよい。
【0041】
ステップ260で、ある偏光角の、及びIOLの部分を曲げるのに十分な時間にわたる偏光レーザ放射を、PD-LCN等の光誘起形状記憶ポリマ網目構造を含むIOL支持部の少なくとも一部に当てて、水晶体嚢内のIOLの位置を調整する。
【0042】
PD-LCN等の光誘起形状記憶ポリマ網目構造を含むIOLのうち、放射が照射される部分は、支持部接合部又は、支持部のうち、眼の瞳孔が拡大しているときに偏光レーザ放射が到達できるその他の部分であってよい。したがって、IOL支持部のうちPD-LCN等の光誘起形状記憶ポリマ網目構造を含む部分に偏光レーザ放射を照射する前に、患者の眼の瞳孔を拡大させて、PD-LCN等の光誘起形状記憶ポリマ網目構造にアクセスできるようにしてもよい。IOLのうち、PD-LCN等の光誘起形状記憶ポリマ網目構造を含む部分が通常、瞳孔により覆われて、光に露出されない場合、IOLを移植し、その位置を調整する何れの外科的処置の後に、患者は保護眼鏡を装用する必要がない可能性がある。
【0043】
偏光レーザ放射は、偏光フィルタを通過すると、PD-LCN等の光誘起形状記憶ポリマ網目構造を曲げることのできる波長を供給できる何れのレーザにより提供されてもよい。例えば、レーザはフェムト秒又はマキシマレーザであってよい。波長は、両端の数値を含む440nm~514nmの範囲、457nm~514nmの範囲、又は440nm~445nmの範囲、又は特に442nmであってよい。
【0044】
偏光フィルタは、レーザの一部であっても、又はそれ以外にレーザと眼との間に適当な光学系を使って設置されてもよい。
【0045】
偏光角は、実現すべきPD-LCN等の光誘起形状記憶ポリマ網目構造の曲げの程度に基づいて選択されてよい。図9に示されるように、支持部に含まれてよいPD-LCNの細いストリップは、特定の程度の偏光レーザ放射に応答して目標の角度だけ曲がる。この曲げ角度と偏光角の関係は線形である傾向にある。曲げ角度の応答性は一部にPD-LCNの架橋密度によって特定されてよい。
【0046】
偏光レーザの照射は、標的曲げ角度を実現するのに適当であると特定される時間の長さにわたり続く。例えば、時間の長さは5分以下、2分以下、1分以下、0.5秒~1分、0.5秒~2分、0.5秒~5分、5秒~1分、5秒~2分、又は5秒~5分であり、2つ長さの範囲は両端の数値を含む。照射は一定でもパルス状でもよい。
【0047】
同じ支持部に放射を複数回照射して、正しい曲げ角度を取得してもよい。それに加えて、1つの支持部だけに放射を照射してもよいが、多くの調整を行うために、複数の又は全部の支持部に放射を照射される。
【0048】
支持部のうち照射される部分の物理的形状、どの支持部に放射が照射されるか、水晶体嚢内の支持部の位置、及びPD-LCN等の光誘起形状記憶ポリマ網目構造の誘導される曲げの程度に応じて、IOLは水晶体嚢内で調整された位置まで移動する。
【0049】
例えば、IOLの支持部に、支持部を水晶体嚢の後方領域に押し付けられるようにする偏光角でレーザ放射が当てられると、IOLは水晶体嚢内で軸方向に前方に、眼内のより前方の位置まで移動される。IOLの支持部に、支持部を水晶体嚢内の前方領域に押し付けられるようにする偏光角のレーザ放射が当てられると、IOLは水晶体嚢内で軸方向に後方に、眼内のより後方の位置まで移動される。これらの単純な前後の軸方向の調整によって、IOLのディオプトリが変化し、屈折異常が補正され得る。
【0050】
より複雑なIOLは、曲がって水晶体嚢の異なる部分に押し付けられるか、又は内部で回転し、中心の周囲でIOLの光学部を標的角度だけ回転させてよい。これは、例えば患者が乱視であり、IOLが乱視軸と適正に整列しない場合に有益であり得る。
【0051】
位置、曲げ角度及び偏光角は、眼とIOLに関するデータにアクセスし、レーザ照射が曲げ及びIOL光学部の位置に与える影響を計算し、IOLの標的位置を実現するためのレーザ放射の適正な位置と持続時間を選択するようにプログラムされたコンピュータを使って計算されてよい。
【0052】
レーザ放射の位置、持続時間、及び、幾つかのシステムにおいては、偏光フィルタの配置、及びそれゆえ偏光角は、レーザを制御するようにプログラムされたコンピュータを使って実装されてもよい。コンピュータは、IOLの標的位置をどのように実現するかを計算するようにプログラムされたコンピュータと同じであっても、又は別のコンピュータであってもよい。
【0053】
本開示の解釈において、コンピュータはプロセッサ、メモリ、及び通信インタフェースを含む。
【0054】
ステップ270で、眼は、その後正確な検眼結果を得るのに十分な時間の長さにわたって回復させられる。典型的に、瞳孔はステップ260の前に拡張され、したがって、持続時間は少なくとも瞳孔拡大が終息するのに十分な長さであってよい。例えば、持続時間は少なくとも1日又は少なくとも1週間であってもよい。
【0055】
プロセスはその後、ステップ240に戻り、患者の評価を再び行い、実際のIOL位置が標的位置にあるか否かを特定する。
【0056】
方法200は複数のステップで説明されているが、本開示は、これらのステップの一部のみ、例えばステップ240~260、又はステップ250~270を含む、他の方法も含む。
【0057】
曲げの後、PD-LCN等の光誘起形状記憶ポリマ網目構造は無期限にその位置にとどまり、それによって、IOLがその他の原因によりシフトしないかぎり、方法200を用いた調整は永久的となる。しかしながら、PD-LCN等の光誘起形状記憶ポリマ網目構造は、PD-LCN等の光誘起形状記憶ポリマ網目構造に異なる偏光角のレーザ放射を照射することによって、異なる程度まで何度も容易に曲げることができる。したがって、例えば、IOL光学部がステップ260で眼内の前方に移動されすぎた場合、同じ支持部に異なる偏光角のレーザ放射を照射して、より少ない程度まで曲がるようにし、有効にIOL光学部を眼内で後方に移動させてよい。
【0058】
本開示は、眼の水晶体嚢内でIOL 10等のIOLの位置を調整するための、図10に示されるような手術システム300をさらに含む。システム300はコンピュータ310を含み、これはプロセッサ320、メモリ330、及び通信インタフェース340を含む。システム300はまた、レーザ350も含み、これは例えば両端の数値を含む440nm~514nmの範囲、457nm~514nmの範囲、又は440nm~445nmの範囲であり、又は特に442nmの、支持部の材料の形状変化を誘導するのに適当な範囲のレーザ放射を提供することができる。システム300は、偏光フィルタ360をさらに含んでいてよく、これはレーザ350からの放射の偏光角を調整できる。偏光フィルタ360はレーザ350の一部であっても、別の構成要素であってもよい。
【0059】
コンピュータ310は、メモリ330の中に、プロセッサ320により実行されると命令が通信インタフェース340を通じて送信されて、レーザ350と偏光フィルタ360に患者の眼の水晶体嚢内のIOLの特定の部分に放射を照射させて、IOLのPD-LCN等の光誘起形状記憶ポリマ網目構造を曲げる、命令を含んでいてよい。特に、命令は、プロセッサ320により実行されると、レーザ350及び偏光フィルタ360に方法200のステップ260を実行させてよい。それに加えて、メモリ330は、患者ごとのバイオメトリック、波面、及び/又は術後に取られたその他の測定値に基づいて、レーザ350が光を支持部に当てて水晶体の位置を変化させ、それによって残留する屈折異常及び/又はトーリックミスアラインメントがあればそれを補正するような形状変化を誘導する、アルゴリズム又は計算図表を生成するための命令を記憶していてよい。
【0060】
上述の主題は例示的であって、限定的ではないと考えられ、付属の特許請求の範囲は、本開示の真の主旨と範囲内に含まれる改良、改善、及びその他の実施形態の全てをカバーするものとする。それゆえ、法の下で可能な最大の範囲で、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲及びそれらの均等物の可能なかぎり最も広い解釈により特定される、上述の詳細な説明によって制限又は限定されるものではない。
また、本開示は以下の発明を含む。
第1の態様は、
光学部と、
少なくとも一部がポリドメインアゾ液晶ポリマ網目構造(PD-LCN)を含む少なくとも1つの支持部と、
を含む、眼内レンズ(IOL)である。
第2の態様は、
前記少なくとも1つの支持部は支持部接合部を含み、前記支持部接合部の少なくとも一部はPD-LCNから形成される、第1の態様におけるIOLである。
第3の態様は、
前記少なくとも1つの支持部は前記光学部に前記支持部接合部を介して取り付けられる、第1の態様又は第2の態様におけるIOLである。
第4の態様は、
前記光学部を保持するように構成されたベースをさらに含み、前記少なくとも1つの支持部は前記ベースに取り付けられる、第1の態様又は第2の態様におけるIOLである。
第5の態様は、
複数の支持部を含み、前記複数の支持部の各々の少なくとも一部はPD-LCNを含む、第1の態様~第4の態様の何れか一つにおけるIOLである。
第6の態様は、
前記PD-LCNは架橋されたジアクリレート液晶モノマとジアクリレートアゾベンゼン液晶モノマとを含む、第1の態様~第5の態様の何れか一つにおけるIOLである。
第7の態様は、
前記PD-LCNは25wt%以下のジアクリレートアゾベンゼン液晶モノマを含む、第6の態様におけるIOLである。
第8の態様は、
前記PD-LCNの架橋密度は1.0モル/dm ~8.0モル/dm である、第6の態様におけるIOLである。
第9の態様は、
前記ジアクリレートアゾベンゼン液晶モノマは4-(3-アクリロイルオキシプロピルオキシ)-benzoesure 2-メチル-1,4-フェニルエステルを含む、第6の態様におけるIOLである。
第10の態様は、
前記ジアクリレートアゾベンゼン液晶モノマは4,4’-ビス[6-アクリロルオキシ(acryloloxy))ヘキシルオキシ]アゾベンゼンを含む、第6の態様におけるIOLである。
第11の態様は、
眼内レンズ(IOL)を調整する方法において、前記IOLの支持部であって、ポリドメインアゾ液晶ポリマ網目構造(PD-LCN)を含む支持部の一部に偏光レーザ放射を照射して、前記PD-LCNをある曲げ角度まで曲げ、それによって前記IOLが入っている水晶体嚢に押し付け、前記水晶体嚢内の前記IOLの位置を調整するステップを含む方法である。
第12の態様は、
前記偏光レーザ放射の波長は、両端の数値を含む440nm~514nmの範囲である、第11の態様における方法である。
第13の態様は、
前記IOLの位置は軸方向に前後に調整される、第11の態様又は第12の態様における方法である。
第14の態様は、
前記IOLの位置は半径方向に角度θだけ調整される、第11の態様~第13の態様の何れか一つにおける方法である。
第15の態様は、
前記PD-LCNを含む前記支持部の前記照射される部分は支持部接合部を含む、第11の態様~第14の態様の何れか一つにおける方法である。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10