(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】自動変速機のパーキングロックユニットを作動させる装置、およびその装置を操作する方法
(51)【国際特許分類】
F16H 63/34 20060101AFI20241112BHJP
B60T 1/06 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
F16H63/34
B60T1/06 G
(21)【出願番号】P 2021561847
(86)(22)【出願日】2020-03-20
(86)【国際出願番号】 EP2020057845
(87)【国際公開番号】W WO2020212076
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-01-24
(31)【優先権主張番号】102019205596.6
(32)【優先日】2019-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500045121
【氏名又は名称】ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100186716
【氏名又は名称】真能 清志
(72)【発明者】
【氏名】トーマス シュヴェーグラー
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン ヤブス
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ビスピン
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン ヴァインル
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-505225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 63/34
B60T 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動変速機のパーキングロックユニット(2)を作動させる装置(1)であって、シリンダ(5)内でガイドされ、作動ばね(4)のばね力に抗して油圧的に調整可能なピストン(3)を備え、前記ピストン(3)は、前記パーキングロックユニット(2)のパーキングロックポール(13)と作用結合可能であり、ロックユニット(15)の径方向に調整可能なロック要素(26)を介して、第1位置および第2位置に形状結合的に固定可能であり、前記第1位置は、前記パーキングロックユニット(2)の係合された作動状態に対応し、前記第2位置は、前記パーキングロックユニット(2)の係合解除された作動状態に対応し、前記ロック要素(26)は、作動要素(17)を介して径方向に調整可能な前記装置(1)において、
前記ピストン(3)の前記第1位置における前記ロック要素(26)の径方向の調整経路、およびそれに対応する前記作動要素(17)の作動状態は、前記ピストン(3)の前記第2位置における前記ロック要素(26)の径方向の調整経路、およびそれに対応する前記作動要素(17)の作動状態とは異なり、
前記ロック要素(26)はボールとして構成され、前記ボールは、前記シリンダ(5)と作用結合するガイドスリーブ(35)のスロット(34)内で、軸方向および径方向にガイドされ
、
前記作動要素(17)は、少なくともほぼ回転対称に構成され、前記作動要素(17)の軸方向の延在方向(X)において、相互に続いて、円筒形状部分(24)と、前記円筒形状部分(24)から始まる円錐台形状に広がる2つの部分(25、27)と、を備え、前記ロック要素(26)は前記作動要素(17)の各々の部分(24、25、27)に当接し、前記ロック要素(26)は、前記作動要素を前記作動要素(17)に対して前記軸方向の延在方向(X)に移動させることによって、径方向に調整可能であり、前記作動要素(17)の前記軸方向の延在方向(X)で前記円筒形状部分(24)に隣接する円錐台形状部分(25)の開口角度が、前記円錐台形状部分(25)に隣接する更なる円錐台形状部分(27)の開口角度よりも大きいことを特徴とする、装置(1)。
【請求項2】
請求項
1に記載の装置であって、前記ピストン(3)は、前記作動要素(17)に面する前記ピストン(3)の径方向内側(28)の領域に、軸方向に延在して相互に隣接する中空円筒形状部分(29~31)を備え、前記中空円筒形状部分(29~31)の内径は相互に異なり、中央の中空円筒形状部分(30)の内径は、前記中央の中空円筒形状部分(30)に各々隣接する中空円筒形状部分(29、31)の内径よりも小さく、前記ロック要素(26)は、前記ピストン(3)の前記第1位置において形状結合的に第1外側中空円筒形状部分(31)に突出し、前記ピストン(3)の前記第2位置において形状結合的に第2外側中空円筒形状部分(29)に突出することを特徴とする、装置。
【請求項3】
請求項
2に記載の装置であって、前記ロック要素(26)が前記ピストン(3)の前記中空円筒形状部分(29または31)に突出すると、前記ロック要素(26)は、軸方向で、前記ピストン(3)の円錐台形状部分(32、33)各々に当接し、前記円錐台形状部分(32、33)は、各々、前記中央の中空円筒形状部分(30)と外側の中空円筒形状部分(29または31)の一つとの間に設けられていることを特徴とする、装置。
【請求項4】
請求項
2または
3に記載の装置であって、前記ピストン(3)が前記第1位置と前記第2位置との間の位置にある時に、前記ロック要素(26)が、径方向で、前記ピストン(3)の前記中央の中空円筒形状部分(30)と、前記円筒形状部分(24)に隣接する前記作動要素(17)の前記円錐台形状部分(25)との間に配置されていることを特徴とする、装置。
【請求項5】
請求項
1に記載の装置であって、前記ピストン(3)は、前記作動要素(17)に面する径方向内側(28)の領域に、軸方向に延在する中空円筒形状部分(29、31)を備え、前記中空円筒形状部分(29、31)の内径は相互に異なり、前記中空円筒形状部分の間に、中央の円錐台形状部分(42)が備えられ、前記中央の円錐台形状部分(42)の内径は、前記中央の円錐台形状部分(42)に各々隣接する中空円筒形状部分(29、31)の内径よりも小さく、前記ロック要素(26)は、前記ピストン(3)の前記第1位置において形状結合的に第1外側中空円筒形状部分(31)に突出し、前記ピストン(3)の前記第2位置において形状結合的に第2外側中空円筒形状部分(29)に突出することを特徴とする、装置。
【請求項6】
請求項
5に記載の装置であって、前記ロック要素(26)が前記ピストン(3)の前記中空円筒形状部分(29または31)に突出すると、前記ロック要素(26)は、軸方向で、前記ピストン(3)の円錐台形状部分(32、33)各々に当接し、前記円錐台形状部分(32、33)は、各々、前記中央の円錐台形状部分(42)と、外側の前記中空円筒形状部分(29または31)のうちの一つとの間に設けられていることを特徴とする、装置。
【請求項7】
請求項
6に記載の装置であって、前記中央の円錐台形状部分(42)の直径は、前記円錐台形状部分(32、33)の間で、前記ピストン(3)の軸方向に着実に増加または着実に低減することを特徴とする、装置。
【請求項8】
請求項
4~
7の何れか一項に記載の装置であって、前記ピストン(3)が前記第1位置と前記第2位置との間の位置にあるときに、前記ロック要素(26)は、前記ピストン(3)の前記中央の円錐台形状部分(42)と、前記円筒形状部分(24)に隣接する前記作動要素(17)の前記円錐台形状部分(25)の径方向に配置されていることを特徴とする、装置。
【請求項9】
請求項
2~
8の何れか一項に記載の装置であって、前記ロック要素(26)は、前記ピストン(3)の前記第1位置および前記第2位置において、前記作動要素(17)の前記更なる円錐台形状部分(27)に当接することを特徴とする、装置。
【請求項10】
請求項
1~
9の何れか一項に記載の装置であって、前記シリンダ(5)と前記作動要素(17)との間にばねユニット(18)が設けられ、前記ばねユニット(18)のばね力は、前記ロック要素(26)が前記作動要素(17)の前記更なる円錐台形状部分(27)に当接する前記作動要素(17)の位置の方向へと作用して、前記作動要素(17)に加えられることを特徴とする、装置。
【請求項11】
請求項
10に記載の装置であって、前記作動要素(17)は、電磁作動ユニット(16)によって、前記ばねユニット(18)に抗して作動可能であることを特徴とする、装置。
【請求項12】
請求項
10または
11に記載の装置であって、前記作動要素(17)のばねユニット側の軸方向の調整経路は、機械的なストッパ(36)によって制限されていることを特徴とする、装置。
【請求項13】
請求項
1~
12の何れか一項に記載の装置であって、前記作動要素(17)の軸方向の調整経路を決定するセンサ(40)が設けられていることを特徴とする、装置。
【請求項14】
請求項
3に記載の装置(1)を操作する方法であって、前記シリンダ(5)と前記作動要素(17)との間にばねユニット(18)が設けられ、前記ばねユニット(18)のばね力は、前記ロック要素(26)が前記作動要素(17)の前記更なる円錐台形状部分(27)に当接する前記作動要素(17)の位置の方向へと作用して、前記作動要素(17)に加えられ、前記作動要素(17)は、電磁作動ユニット(16)によって、前記ばねユニット(18)に抗して作動可能であり、
前記ロックユニット(15)をロック解除する要求が存在すると、前記電磁作動ユニット(16)を通電し、前記ロック要素(26)を前記ピストン(3)の前記円錐台形状部分(32、33)に沿って径方向内向きに調整して前記ロック要素(26)と前記ピストン(3)との間の形状結合が解除されるように、前記作動要素(17)を前記ばねユニット(18)のばね力に抗して軸方向に調整し、その結果、前記パーキングロックユニット(2)を係合、または係合解除する前記ピストン(3)は、軸方向(X)で前記ピストン(3)の第1位置と第2位置との間で調整可能であることを特徴とする、方法。
【請求項15】
請求項
14に記載の方法であって、前記作動要素(17)の軸方向の調整経路を決定するセンサ(40)が設けられ、前記センサ(40)を介して、前記作動要素(17)の軸方向の位置をその都度決定し、それに応じて前記ロックユニット(15)の作動状態を決定することを特徴とする、方法。
【請求項16】
請求項
15に記載の方法であって、更なるセンサ(38)を介して、前記パーキングロックユニット(2)の係合された作動状態または係合解除された作動状態をその都度決定することを特徴とする、方法。
【請求項17】
請求項
16に記載の方法であって、前記パーキングロックユニット(2)が要求された係合された状態にあるとき、または前記パーキングロックユニット(2)が要求された係合解除された状態にあるときに前記作動要素(17)が有する前記作動要素(17)の位置と、前記作動要素(17)の現在の位置との間で、前記センサ(40)を介して決定した逸脱が閾値よりも大きい場合に、前記パーキングロックユニット(2)の係合されていない作動状態、または係合解除されていない作動状態を検出することを特徴とする、方法。
【請求項18】
請求項
17に記載の方法であって、前記パーキングロックユニット(2)の前記更なるセンサ(38)によって決定される作動状態は、前記作動要素(17)に割り当てられた前記センサ(40)の側によって前記閾値よりも大きい逸脱が決定される場合に、誤作動として分類させることを特徴とする、方法。
【請求項19】
請求項
18に記載の方法であって、前記パーキングロックユニット(2)の係合されていない、もしくは係合解除されていない作動状態が検出されたとき、または前記パーキングロックユニット(2)の作動状態が誤作動として分類されたとき、
前記装置(1)および前記パーキングロックユニット(2)を備えて構成されている自動変速機を含む車両の操作者に対して触覚信号、視覚信号および/または音響信号を出力させ、
前記パーキングロックユニット(2)を作動させる代替手段、および/または車両固有の拡大戦略をトリガすることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念により詳細に定義されたタイプの自動変速機のパーキングロックユニットを作動させる装置に関する。さらに、本発明は、その装置を操作する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドイツ特許出願公開第DE102012013373A1号から、特に自動車の自動変速機用のパーキングロックを作動させるアクチュエータが既知である。アクチュエータは、シリンダ内でガイドされるピストンを含む。ピストンは、作動ロッドを介して、変速機内のパーキングロック歯車用の係止爪を作動させる。ピストンは、油圧で付勢可能であり、一体化された予圧ばねの力に抗してパーキングロックを係合解除することができる。ピストンが減圧されると、予圧ばねは、パーキングロックを係合する。加えて、係合解除位置に形状結合的にピストンを固定可能な、電磁的に作動可能なロックユニットが備えられている。ロックユニットは、径方向に伸長可能なロック要素を介して、ピストンを、シリンダに固定されたガイドスリーブに対して固定する。ロックユニットを介して、ピストンを、パーキングロックの係合状態に対応する位置にも、形状結合的に固定することができる。
【0003】
パーキングロックシステムは、ドライブトレインを固定する、および自由にするために、自動車の自動変速機に使用される。快適性を理由として、また安全性に関連する理由から、運転者はパーキングロックシステムの状態について知らされなければならない。このために、PNPセンサが使用されることが多い。しかしながら、PNPセンサを用いてパーキングロックシステムの状態を感知するために必要とされるセンサ閾値は、パーキングロックの状態に対して、一意に割り当てられない場合がある。
【0004】
パーキングロックシステムが適切に機能している場合には、パーキングロックピストンは、パーキングロックの係合状態とパーキングロックの係合解除状態の両方で、このために設けられた端部位置をとる。パーキングロックピストンのこれらの端部位置では、PNP信号から、パーキングロックの状態に関する結論を一意的に引き出すことができる。しかしながら、故障の場合には、パーキングロックピストンがその意図された端部位置に到達しない可能性がある。パーキングロックピストンには、切屑または摩擦の増大によって、端部位置から離れた位置に留まる可能性がある。パーキングロックシステムの不都合な作動状態によって、PNPセンサは、パーキングロックピストンの端部位置への到達を識別はする。しかしながら、ロックコーンの重なりは、パーキングロックの係合状態または係合解除状態とは必ずしも対応しない。
【0005】
この問題は、端部位置スイッチを使用することによって解決することができる。しかしながら、このような端部位置スイッチを使用するために必要な設置スペースを確保できない場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】ドイツ特許出願公開第DE102012013373A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、従来技術を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、主請求項に記載の特徴によって解決される。好適な実施形態は、従属請求項から明らかである。
【0009】
そこで、自動変速機のパーキングロックユニットを作動させる装置が提案される。装置は、ピストンを備える。ピストンは、シリンダ内でガイドされ、パーキングロックユニットのパーキングロックポールに作用する作動ばねのばね力に抗して油圧的に調整可能である。ピストンは、パーキングロックポールと作用結合することができる。さらに、ピストンは、ロックユニットの径方向に調整可能なロック要素を介して、第1位置および第2位置に形状結合的に固定可能である。第1位置は、パーキングロックユニットの係合された作動状態に対応する。一方、ピストンの第2位置は、パーキングロックユニットの係合解除された作動状態に対応する。ロック要素は、作動要素を介して径方向に調整可能である。
【0010】
ピストンの第1位置におけるロック要素の径方向の調整経路、およびそれに対応する作動要素の作動状態は、ピストンの第2位置におけるロック要素の径方向の調整経路、およびそれに対応する作動要素の作動状態とは異なる。
【0011】
好適には、ロック形状を巧みに選択することによって、装置のロック状態を区別する可能性を、簡単に得ることができる。このように区別することによって、今度は、センサを適合させるなどの複数の機能を実現する可能性が提供される。このようなセンサを用いて、例えば、ピストンのロックが有効であるか、すなわちアクティブであるか、またはピストンの調整移動がロックユニットによって自由になっているかを検出可能である。
【0012】
センサのこのような適合および/または対応する校正を介して、対応する材料公差および製造公差にもかかわらず、このようなセンサの所望の高精度を保証可能である。
【0013】
本発明による装置は、パーキングロックピストンと、ロックアンカーまたは作動要素との間の構造的な関係を提供する。それを介して、ピストンと作動要素との間の作用関係を決定することができる。これは、ロックユニットの定義されたロック輪郭によって達成される。このロック輪郭によって、パーキングロックシステムの作動状態を一意的に決定可能である。定義されたロック輪郭に基づいて、パーキングロックのロックシステムに関する一意的な更なるセンサ情報を、わずかな労力で決定することができる。これらの更なるセンサ情報に基づいて、パーキングロックユニットが、係合されてロックされている、もしくは係合解除されてロックされているか、またはパーキングロックユニットがロック解除された作動状態を有し、パーキングロックピストンがその端部位置の間の位置にあるかを一意的に決定可能である。
【0014】
作動要素は、少なくともほぼ回転対称に構成することができる。さらに、作動要素は、作動要素の軸方向の延在方向において、相互に続いて、円筒形状部分と、円筒形状部分から始まる円錐台形状に広がる2つの部分と、を備えることができる。さらに、本発明によれば、ロック要素は、作動要素の部分に当接することができる。そして、ロック要素は、作動要素を作動要素に対して軸方向の延在方向に移動させることによって、径方向に調整可能である。作動要素の軸方向の延在方向で円筒形状部分に隣接する円錐台形状部分の開口角度が、円錐台形状部分に隣接する更なる円錐台形状部分の開口角度よりも大きい場合、ロック要素は、わずかな保持力のみで、ピストン内のロック要素のロックされた位置に保持可能である。さらに作動要素は、この場合、またわずかな調整力で、作動状態に、またはロックユニットが非アクティブ化される軸方向の調整位置に移動可能である。この場合、ロックユニットの非アクティブ化された作動状態とは、ピストンが再び調節可能にされているピストンのロック解除された作動状態と理解される。
【0015】
ピストンは、ピストンに面するその径方向内側の領域に、軸方向に延在して相互に隣接する中空円筒形状部分を備えることができる。中空円筒形状部分の内径が相互に異なる場合、ロックユニットおよびピストンのブロック位置を、簡単に相互に区別可能である。
【0016】
この場合、本発明によれば、中央の中空円筒形状部分の内径は、中央の中空円筒形状部分に各々隣接する中空円筒形状部分の内径よりも小さくすることができる。
【0017】
さらに、ロック要素は、ピストンの第1位置において形状結合的に第1外側中空円筒形状部分に突出し、ピストンの第2位置において形状結合的に第2中空円筒形状部分に突出する。これによって、ピストンの第1位置およびピストンの第2位置において、ロック要素が異なる径方向の調整経路を備えることが、構造的に簡単な態様で達成される。
【0018】
加えて、本発明によれば、ロック要素は、ピストンの第1位置およびピストンの第2位置において、軸方向で、ピストンの円錐台形状部分各々に当接する。円錐台形状部分は、各々、中央の中空円筒形状部分と外側の中空円筒形状部分のうちの一つとの間に設けることができる。この構造的手段によって、ロック要素を確実に、それらのロック位置に移動させ、ロック位置から、ピストンの調整移動を自由にするそれらの径方向位置にロック要素を戻す可能性が提供される。
【0019】
ピストンは、作動要素に面する径方向内側の領域に、軸方向に延在する中空円筒形状部分を備えることができる。中空円筒形状部分の内径は、相互に異なってよい。加えて、中空円筒形状部分の間に、中央の円錐台形状部分を備えることが可能である。中央の円錐台形状部分の内径は、中央の円錐台形状部分に各々隣接する中空円筒形状部分の内径よりも小さい。さらに、ロック要素は、ピストンの第1位置において形状結合的に第1外側中空円筒形状部分に突出し、ピストンの第2位置において形状結合的に第2外側中空円筒形状部分に突出する。
【0020】
したがって、ピストンの2つの端部位置と、2つの端部位置の間のピストンの位置とを、作動要素の軸方向の位置に応じて簡単に感知することができる。
【0021】
ロック要素がピストンの中空円筒形状部分に突出すると、ロック要素は、軸方向で、ピストンの円錐台形状部分各々に当接することができる。ピストンの円錐台形状部分は、各々、中央の円錐台形状部分と、外側の中空円筒形状部分のうちの一つとの間に設けることができる。この構造的手段によって、ロック要素を確実に、それらのロック位置に、またロック位置から、ピストンの調整移動を自由にするそれらの径方向位置に移動可能である。
【0022】
中央の円錐台形状部分の直径は、円錐台形状部分の間で、ピストンの軸方向で着実に増加または着実に低減することができる。そして、ピストンの端部位置の間のピストンの現在位置、および好適にはピストンの調整移動の方向も、簡単に感知可能である。
【0023】
本発明による装置の有利な発展形態では、ロック要素は、ピストンの第1位置および第2位置において、作動要素の更なる円錐台形状部分に当接する。
【0024】
ピストンが第1位置と第2位置との間の位置にあるときに、ロック要素が、径方向で、ピストンの中央の中空円筒形状部分と、円筒形状部分に隣接する作動要素の円錐台形状部分との間に配置されていると、ピストンの2つの位置の間のピストンの調整移動は、ロック要素によって簡単に自由にされる。
【0025】
加えて、シリンダと作動要素との間に、ばねユニットを設けることができる。この場合、ばねユニットのばね力は、ロック要素が作動要素の更なる円錐台形状部分に当接する作動要素の位置の方向へと作用して、作動要素に加えられることができる。これによって、ピストンがその第1位置またはその第2位置にあるとき、ロックユニットが自動的にそのロック位置に移行することを保証する。換言すると、本発明による装置のこの実施形態では、ピストンが第1位置または第2位置に到達したときに、ロックユニットはピストンを自動的にロックする。
【0026】
作動要素は、電磁アクチュエータによって、ばねユニットに抗して作動可能である。そして、装置を介して作動可能なパーキングロックユニットを係合させる、または係合解除させる対応する要求が存在する場合に、ロックユニットは、非アクティブ化可能、またはロック解除された作動状態に移行可能である。
【0027】
ばねユニットによってもたらされる作動要素の軸方向の調整経路は、シリンダ側のストッパによって制限することができる。これによって、今度は、装置または作動要素を、既定の作動状態から電磁アクチュエータによって作動可能であること、また装置がわずかな制御労力および調整努力で作動可能であることが保証される。
【0028】
本発明による装置の省スペースの実施形態では、ロック要素はボールとして構成されている。この場合、ボールは、シリンダと作用結合するガイドスリーブのスロット内で、軸方向および径方向にガイドすることができる。
【0029】
作動要素の軸方向の調整移動を決定するセンサが設けられている場合、ロックユニットの作動状態を簡単に決定可能である。
【0030】
この場合、センサを、PNPセンサとして、またはホールセンサとして構成することが可能である。センサを介して、作動要素の調整経路を感知可能である。加えて、電磁的に作動可能なロック機構が構成される場合、ロックユニットの作動状態も、間接的に感知することができる。これは、例えば、2点式コントローラを介して行うことができる。
【0031】
電磁アクチュエータを操作し、その作動状態を決定する装置の一部である、このような2点式コントローラは、ドイツ特許出願公開第DE102016221477A1号から既知である。既知の装置は、アクチュエータを操作する2点式コントローラに加えて、決定手段を備える。決定手段は、2点式コントローラによって出力される制御信号の時間プロファイルを決定し、これから作動状態を決定するように構成されている。特に、このために、制御信号のダイナミクスが決定される。既知の装置は、制御信号に基づいてアクチュエータに電流またはアクチュエータ電流を供給するように構成されている。アクチュエータ電流の特徴的な時間プロファイルは、制御信号の時間プロファイルに従って形成される。これには、本質的に、アクチュエータの作動状態が含まれている。アクチュエータの作動状態が、実質的に、アクチュエータ電流が増加し、再び減少する速度、ならびにアクチュエータ電流の最大値および平均値を決定するためである。最終的に、アクチュエータの作動状態は、2点式コントローラの制御信号を考慮して決定可能である。
【0032】
この知識は、本発明による装置を操作する方法によって使用される。この方法によれば、ロックユニットをロック解除する要求が存在すると、電磁アクチュエータを通電する。これによって、作動要素を、ロック要素がピストンの円錐台形状部分に沿って径方向内向きに調整してロック要素とピストンとの間の形状結合を解除するように、ばねユニットのばね力に抗して軸方向に調整する。これによって、パーキングロックユニットを係合または係合解除するピストンの調整が、軸方向でピストンの第1位置と第2位置との間で可能になる。
【0033】
センサの設計とは無関係に、本発明による方法の有利な変更形態では、作動要素の軸方向のその都度の位置およびそれに応じたロックユニットの作動状態を決定する。
【0034】
これは簡単に可能である。なぜなら、作動要素がピストンの第1位置において、ピストンの第2位置とは異なる軸方向の位置をとるためである。
【0035】
電磁アクチュエータが、例えば電磁リニアアクチュエータとして構成され、アクチュエータのアーマチュアを磁気的に作動可能な少なくとも1つの、または厳密に1つのコイルを備える場合、アーマチュアの動きは、アクチュエータで感知可能であり、アクチュエータの調整移動として機械的に使用することができる。この場合、アーマチュアの動きは、例えば、既に上記で提案されたPNPセンサまたはホールセンサのような位置センサを介して直接に決定することができる。これに対して代替的に、ドイツ特許出願公開第DE102016221477A1号から既知であるように、アクチュエータ電流を介して間接的にアーマチュアまたは作動要素の軸方向の位置を決定することも可能である。
【0036】
本発明による方法の有利な変更形態では、パーキングロックユニットの係合された、または係合解除された作動状態を、その都度、更なるセンサを介して決定する。そして、パーキングロックユニットの作動状態は、パーキングロックユニットおよびロックユニットの作動状態を比較することによって高精度で決定することができる。これらの作動状態をその都度、センサおよび更なるセンサを介して決定する。
【0037】
さらに、本発明による方法の更なる有利な変更形態では、パーキングロックユニットの、係合されていない、または係合解除されていない作動状態を簡単に検出することが可能である。このために、その都度センサによって出力される信号を評価することができる。このような信号によって、パーキングロックユニットが要求された係合された状態にあるとき、またはパーキングロックユニットが要求された係合解除された状態にあるときに作動要素が有する作動要素の位置と、作動要素の現在の位置との間に、現在は逸脱があるかを確認することができる。
【0038】
決定された逸脱が、例えば製造公差によって引き起こされる逸脱を考慮可能な閾値よりも大きい場合、パーキングロックユニットの誤動作状態を決定することができる。
【0039】
加えて、本発明によれば、パーキングロックユニットの更なるセンサによって決定されるパーキングロックユニットの作動状態は、作動要素に割り当てられたセンサの側によって閾値よりも大きい逸脱が決定される場合に、誤作動として分類されるようにすることができる。
【0040】
さらに、本発明による方法の更なる有利な変更形態によれば、パーキングロックユニットの係合されていない作動状態が検出されたとき、もしくはパーキングロックユニットの係合解除されていない作動状態が検出されたとき、またはパーキングロックユニットの作動状態が誤作動として分類されたとき、触覚信号、視覚信号および/または音響信号を出力させる。このような1つ以上の信号によって、装置およびパーキングロックユニットを備えて構成されている自動変速機を含む車両の操作者は、パーキングロックユニットの可能性のある故障状態に関して情報を受け取ることができる。
【0041】
これに対して追加的または代替的に、本発明によれば、パーキングロックユニットの制限された機能が検出されるときに、パーキングロックユニットを作動させる代替手段、および/または車両固有の拡大戦略、および/または少なくとも1つの診断機能をトリガすることもできる。
【0042】
パーキングロックユニットを作動させる代替手段は、例えば、パーキングロックユニットを現在要求されている作動状態に移行させることができるように、油圧作動可能なパーキングロックユニットを通常よりも高い圧力で付勢することにすることができる。
【0043】
例えば、要求通りにパーキングロックユニットを係合することができないと検出される場合に、車両固有の拡大戦略を介して、電子作動ブレーキを自動的に作動させることによって、不所望な動き出しに対して車両の安全性を確保することができる。
【0044】
さらに、このような拡大戦略を介して、運転者に、車検場に行くことが必要であると示すことができる。非常に高い拡大ステップでは、例えば、パーキングロックユニットの機能障害が決定された場合に、車両を停止させることができる。
【0045】
本発明は、さらに、本発明による方法を実行するように構成された制御装置に関する。制御装置は、例えば、本発明による方法を実行するために使用される手段を含む。これらの手段は、ハードウェア側の手段およびソフトウェア側の手段とすることができる。制御装置または制御ユニットのハードウェア側の手段は、例えば、本発明による方法の実施に関与する装置のアセンブリとデータを交換するためのデータインターフェイスである。更なるハードウェア側の手段は、例えば、データを記憶するためのメモリ、およびデータ処理のためのプロセッサである。ソフトウェア側の手段は、特に、本発明による方法を実行するプログラムモジュールとすることができる。
【0046】
制御装置は、本発明による方法を実施するために、信号送信機から信号を受信するように構成された少なくとも1つの受信インターフェイスを備えて構成可能である。信号送信機は、例えば、測定値をキャプチャし、それらを制御装置に送信するセンサとして構成することができる。信号送信機は、信号ガイドと称することもできる。例えば、受信インターフェイスは、信号送信機から信号を受信可能であり、信号に関して、ロックユニットがロック解除されるべきであること、作動要素のその都度の軸方向の位置、およびそれに応じてロックユニットの作動状態が決定されるべきであることを、信号で知らせる。信号は、例えば、操作者が操作要素を作動させることによって生成ができる。この操作要素を介して、装置のこのような作動、ならびに作動要素の軸方向の位置およびロックユニットの作動状態のこうした決定を、要求することができる。
【0047】
制御装置は、さらに、受信された入力信号、または受信された入力信号からの情報を評価および/または処理するために、データ処理ユニットを備えることもできる。
【0048】
制御装置は、アクチュエータに制御信号を出力するように構成された送信インターフェイスを備えて構成することもできる。アクチュエータは、制御装置からのコマンドを実行するアクチュエータであると理解される。アクチュエータは、例えば、電磁弁として構成することができる。
【0049】
装置の作動中に、ロックユニットをロック解除する要求があると、制御装置によって検出される場合、または受信した入力信号によって決定される場合、制御装置は、キャプチャした入力信号を使用して対応する要求を決定し、電磁アクチュエータへの対応する通電をトリガする。電磁アクチュエータを通電することによって、作動要素は、ばねユニットのばね力に抗して軸方向に調整される。これによって、ロック要素は、ピストンの円錐台形状領域に沿って径方向内向きに調整される。加えて、これによって、ロック要素とピストンとの間の形状結合が解除される。形状結合が解除されると、ピストンは、パーキングロックユニットを係合または係合解除するために、その第1位置とその第2位置との間で軸方向に調整可能である。
【0050】
さらに、制御装置は、センサを介して決定される作動要素の軸方向の位置、およびそれに応じたロックユニットの作動状態を決定可能であるように構成されている。この場合、制御装置は、作動要素が定義された軸方向の位置を有するとき、ロックユニットのロックされた作動状態を検出する。加えて、制御装置は、ロックユニットがピストンの第1位置またはピストンの第2位置で、ピストンの調整移動をブロックしているかを検出する。これは、作動要素が、ピストンの第1位置において、ピストンの第2位置とは異なる軸方向の位置をとるという事実の結果である。
【0051】
前述の信号は、単に例示的としてみなされるべきであり、本発明を限定しない。キャプチャされた入力信号および出力された制御信号は、車両の信号伝送システムを介して、例えばCAN-BUSを介して伝送することができる。制御ユニットまたは制御装置は、例えば、車両ドライブトレインの中央電子制御装置として、または電子変速機制御装置として構成することができる。
【0052】
本発明による解決策は、制御ユニットのプロセッサ上で実行されるときに、本発明の対象である方法のステップを実行するようにソフトウェアでプロセッサに指示するコンピュータプログラム製品として具現化することもできる。これに関連して、上述のコンピュータプログラム製品が検索可能な方法で格納されるコンピュータ可読媒体も、本発明の対象に含まれる。
【0053】
本発明は、独立請求項またはそれに従属する請求項の特徴の特定の組み合わせに限定されない。さらに、特許請求の範囲、以下の実施形態の説明、または直接的に図面から明らかである限り、個々の特徴を互いに組み合わせる可能性が生じる。参照符号の使用による図面への特許請求の範囲の参照は、特許請求の範囲の保護範囲を限定することを意図するものではない。
【0054】
好適な発展形態は、従属請求項および以下の説明から明らかとなる。本発明の例示的な実施形態を、それらに限定することなく、図面を参照して詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】自動変速機のパーキングロックユニットを作動させる装置の極めて概略的な部分図である。
【
図2】
図1に詳細に示した領域IIの拡大図である。領域IIは、装置のロックユニットを含む。ロックユニットは、ピストンの第1位置にロックされている。
【
図3】
図2に対応する図である。
図1に記載の装置のピストンは、第2位置にあり、ピストンの軸方向の調整運動は、ロックユニットによってブロックされている。
【
図4】
図2に対応する図である。ロックユニットはロック解除された作動状態を有する。
【
図5】
図4に示された実施形態による、ピストンとロックユニットとの間の機能的な相互作用をそれぞれが示す折れ線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1は、パーキングロックユニット2を作動させる装置1の、概略的な部分縦断面図である。装置1は、作動流体のような流体によって付勢可能なピストン3を備える。ピストン3は、その都度作用する流体圧力に応じて、この場合には例示的にパーキングロックユニット2の閉鎖方向に作用する作動ばね4に抗して、パーキングロックユニット2の開放方向、またはパーキングロック2の係合解除された作動状態の方向に作動可能である。このために、ピストン3は、シリンダ5内で軸方向に変位可能に配置されている。加えて、ピストン3は、フォロワピン6を介して偏向機構7と連結されている。この場合、偏向機構7は、ボルト9の領域で回転可能に構成された回転ディスク8を含む。この場合、作動ばね4は、例示的に引張ばねとして構成されている。作動ばね4は、一端で回転ディスク8と接続されている。作動ばね4は、他方の端部においてハウジング10の領域に支持されている。
【0057】
さらに、回転ディスク8は、パーキングロックコーン12と連結されたパーキングロックロッド11と作動的に接続されている。パーキングロックコーン12は、パーキングロックポール13と相互作用する。パーキングロックポール13は、回転的に固定された出力部をもたらすために、ピストン3の軸方向の移動を介してパーキングロック歯車14と係合可能である。パーキングロック歯車14は、車両ドライブトレインの出力部と、相対回転不能な状態で接続されている。パーキングロックポール13が、それに対向するピストン3の軸方向の移動を介して、パーキングロック歯車14との係合から外れるようにガイドされると、パーキングロックユニット2は係合解除され、出力部が回転可能である。
【0058】
さらに、装置1は、径方向に調整可能なロック要素26を含むロックユニット15を備えて構成されている。この場合、ロック要素26は、作動要素17を介して径方向に調整可能である。
図1および
図2に示すピストン3の第1位置において、パーキングロックユニット2は係合されている。加えて、回転対称に構成された作動要素17の円周上に分布して配置されたロック要素26は、作動要素17によって径方向外向きに調整されて、ピストン3を形状結合的に固定する。これは、ピストン3が、
図1に示される第1位置から、油圧が対応して作用することによって、その第1位置から出て軸方向Xに変位できないことを意味する。装置1のこの作動状態において、ロックユニット15はアクティブ化され、ロックユニット15のロックされた作動状態にある。
【0059】
加えて、装置1はまた、この場合アンカーロッド19と相互作用する電磁作動ユニット16を備える。アンカーロッド19および作動要素17は、共に長手方向に移動可能にシリンダ5の内部に配置されている。作動要素17、アンカーロッド19、および今度はアンカーロッド19と作動的に接続されたアンカー要素20は、軸方向Xでシリンダ5およびピストン3に対して変位可能に構成されている。アンカーロッド19に押し付けられているばねユニット18は、作動要素17の端面21と、ハウジングに固定された作動ユニット16の構成部分23との間に設けられている。このばねユニット18を介して、作動要素17は、軸方向の位置の方向に作用する調整力によって付勢される。軸方向の位置において、この場合はボールとして構成されたロック要素26は、径方向外向きに調整され、ピストン3の軸方向の調整移動を阻止またはブロックする。
【0060】
作動要素17は、回転対称に構成されている。加えて、作動要素17は、軸方向の延在方向Xに、相互に続いて、円筒形状部分24と、円筒形状部分24から始まる円錐台形状に広がる2つの部分25および27と、を備える。ロック要素26は、ピストン3のその都度の軸方向の位置に応じて、部分24、25または27のうちの一つに当接し、作動要素17を作動要素17に対して軸方向の延在方向Xに移動させることによって、径方向に調整可能である。この場合、作動要素17の軸方向の延在方向Xで円筒形状部分24に隣接する円錐台形状部分25の開口角度は、円錐台形状部分25に隣接する更なる円錐台形状部分27の開口角度よりも大きい。
【0061】
ピストン3は、作動要素17に面する径方向内側28の領域に、軸方向Xに延在して相互に隣接する中空円筒形状部分29、30および31を備える。中空円筒形状部分29~31の内径は、相互に異なる。この場合、中央の中空円筒形状部分30の内径は、中央の中空円筒形状部分30に各々隣接する中空円筒形状部分29および31の内径よりも小さい。中空円筒形状部分29の内径は、中空円筒形状部分31の内径よりも大きい。
【0062】
ロック要素26は、ピストン3の第1位置において形状結合的に第1外側中空円筒形状部分31に突出し、ピストン3の第2位置において形状結合的に第2外側中空円筒形状部分29に突出する。加えて、ロック要素26は、軸方向Xで、ピストン3の円錐台形状部分32、33各々に当接する。円錐台形状部分32、33は、各々、中央の中空円筒形状部分30と外側の中空円筒形状部分29および31の一つとの間に設けられている。ボールとして構成されたロック要素26は、シリンダ5と作用結合するガイドスリーブ35のスロット34内で、軸方向および径方向にガイドされる。
【0063】
図2は、
図1に詳細に示した領域IIの拡大図を示す。領域IIは、ロックユニット15と、ピストン3の一部と、電磁作動ユニット16と、を含む。加えて
図2において、ロックユニット15は、ブロックされた、またはロックされた作動状態で示されている。この作動状態において、ロック要素26は、ガイドスリーブ35のスロット34を通って、ピストン3の中空円筒形状領域31に径方向に突出する。ロック要素26は、径方向内向きに作動要素17の円錐台形状部分27に当接する。
【0064】
円錐台形状部分27の開口角度は、ピストン3が、対応する油圧作動にもかかわらず、
図2に示す第1位置から、パーキングロックユニット2が完全に係合解除されている
図3に示す第2位置まで、軸方向に変位できないように構成されている。つまり、ピストン3の円錐台形状領域33からロック要素26に導入される調整力は、ロック要素26と作動要素17の円錐台形状部分27との間に作用する反力となるが、作動要素17をばねユニット18のばね力に抗して軸方向に調整するには十分な大きさではない。
【0065】
作動要素17のこのような軸方向の調整は、作動要素17のこのよう調整移動の間に、ロック要素26が、作動要素17の外側を転動するという結果をもたらす。作動要素17の軸方向の調節移動が増大するにつれて、ロック要素26は、作動要素17の円錐台形状部分25に当接するまで径方向内向きに調節される。円錐台形状部分25の開口角度は、円錐台形状部分27の開口角度よりも大きい。次いで、ロック要素26を介してピストン3によって作動要素17に導入される調整力は、ロック要素26が円錐台形状部分27と当接している間に作動要素17に作用する調整力を超える。ロックユニット15のこのような作動状態において、ロック要素26が
図2に示す第1位置から
図3に示す第2位置の方向へピストン3の調整移動を完全に自由にするまで、作動要素17が電磁作動ユニット16の方向にさらに移動される。
【0066】
パーキングロックユニット2を、対応する油圧作動なしで継続的に係合解除された作動状態に確実に保持可能とするために、ロックユニット15は、ピストン3の第2位置にあるばねユニット18のばね力により、再びそのロックされた作動状態になる。
【0067】
図4は、
図2および
図3に対応する領域IIを示す。ロックユニット15は、ピストン3がその第1位置とその第2位置との間に軸方向の調整位置を有する、ロック解除された作動状態にある。装置1のこの作動状態において、ロック要素26は、径方向で、ピストン3の中央の中空円筒形状部分30と、円筒形状部分24に隣接する作動要素17の円錐台形状部分25との間に配置されている。ロック要素26のこの位置において、ガイドスリーブ35とピストン3との間に形状結合が存在しない。その結果、ピストン3は、シリンダ5に対して軸方向に自由に変位可能である。
【0068】
ピストン3がその第2位置に到達するとすぐに、作動要素17は、ばねユニット18によって軸方向にハウジング側に設けられた機械的ストッパ36の方向に調整される。この場合、スロット34を通って径方向外向きに調節されるロック要素26は、ロック要素26がピストン3の中空円筒形状部分29に突出するまで、円錐台形状部分25および更なる円錐台形状部分27で転動する。装置1のこの作動状態において、ロック要素26は、ピストン3の回転ディスク8の方向への調節移動をブロックし、したがってパーキングロックユニット2が不所望に係合するのを阻止する。
【0069】
作動要素17の円錐台形状部分27の開口角度は、ロックユニット15のロックされた状態において、ピストン3によってロック要素26にその都度作用する調整力が、作動要素17を電磁作動ユニット16の方向に軸方向に調整してロックユニット15のロック作用を解除にするには十分でないように構成されている。
【0070】
必要に応じてロックユニット15をロック解除することが可能であるように、電磁作動ユニット16が対応して通電されると、作動要素17、またはアンカー要素20およびアンカーロッド19は、ばねユニット18のばね力に抗して、軸方向にストッパ36から離れるように変位可能である。作動要素17のこのような調整移動の間、ロック要素26は、径方向内向きに後退し、ピストン3とシリンダ5、またはそれらと作動的に接続されたガイドスリーブ35との間の形状結合が解除される。ピストン3が
図3に示す第2位置にある場合、ピストン3は、ばねユニット4によってその第1位置の方向に調整され、この場合必要に応じてパーキングロックユニット2が係合される。
【0071】
ピストン3が第1位置に到達したときにロックユニット15がそのロックされた作動状態に移行するように、ピストン3がその第1位置とその第2の位置との間の位置にあるときに、電磁作動ユニット16の通電がスイッチオフされる。これによって、ピストン3が第1位置に到達すると、作動要素17がばねユニット18によって機械的ストッパ36の方向に調整され、ロック要素26は径方向外向きに調整される。ロック要素26がピストン3の中空円筒形状部分31に形状結合的に係合すると、ロック要素26は、ピストン3の第2位置の方向への軸方向の調整移動を阻止する。
【0072】
既述したように、中空円筒形状部分31の内径は、ピストン3の中空円筒形状部分29の内径よりも小さい。加えて、作動要素17の円錐台形状部分25および27は、ロックユニット15がピストン3の第1位置に完全にロックされるように、ピストン3の中空円筒形状部分29~31の内径に適合されている。しかしながら、作動要素17の更なる端面37は、機械的ストッパ36から軸方向に離間されている。
【0073】
これとは異なり、ここに記載の装置1の実施形態では、ロックユニット15のロックされた作動状態におけるピストン3の第2位置において、作動要素17は、機械的ストッパ36に完全に当接する。これは、作動要素17が、ピストン3の第1位置において、ピストン3の第2位置とは異なる軸方向の位置をとることを意味する。
【0074】
したがって、例えばホールセンサとして構成することができる電磁作動ユニット16に割り当てられたセンサ40を介して、ロックユニット15がどのロック状態を有するかを決定することができる。この可能性によって、今度は、パーキングロックユニット2の係合解除された作動状態におけるセンサ40の適合のような、多様な機能を簡単に実装することができる。この場合、パーキングロックユニット2には、例えばホールセンサまたはPNPセンサであるセンサ38も割り当てられている。センサ38を介して、パーキングロックユニット2の係合された作動状態および係合解除された作動状態の両方を、簡単に決定可能である。
【0075】
2つのセンサ38および40を備える装置1の構成は、パーキングロックユニット2のより高い利用可能性を保証する冗長性を特徴とする。
【0076】
これに対して追加的または代替的に、電磁作動ユニット16にセンサ40が割り当てられる可能性もある。センサ40の作動モードまたは機能はドイツ特許出願公開第DE102016221477A1号から既知である。このセンサ40は、アクチュエータを操作するための2点式コントローラと、決定手段と、を備える。決定手段は、2点式コントローラによって出力される制御信号の時間プロファイルを決定し、これから作動状態を決定するように構成されている。この場合、電磁作動ユニット16のアクチュエータおよび制御信号は、電磁作動ユニット16の作動電流に対応する。これは、このようなセンサを介して、その都度出力される作動電流およびコイルの領域において設定されるコイル電流に応じて、作動要素17の現在の軸方向の位置を決定可能であることを意味する。
【0077】
センサ40のセンサ信号とセンサ38のセンサ信号とを比較することによって、今度は、センサ信号の相互の尤度チェックが可能となり、安全性が向上する。
【0078】
上述の装置1によって、作動要素の軸方向の位置を、ひいてはロックユニットの作動状態をも決定するために設けられたセンサの精度を、車両の作動における対応する適合を介して、簡単に改善することができる。このような適合は、原則として、作動要素17の両方のロック位置において実施可能である。
【0079】
原則として、ピストン3の第2位置におけるロックは、ピストン3の第1位置におけるよりも強固である。これは、ロックユニット15のロック作用を解除するために、作動要素17がより大きなストロークを通って移動しなければならないためである。ロックユニット15の2つのロックされた作動状態に加えて、さらに、ロックされた作動状態とロック解除された作動状態との間の、ロックユニット15のいわゆる過渡的状態と、ロックユニット15の完全にロック解除された作動状態とを、簡単に決定可能でもある。
【0080】
また、その都度存在する用途に応じて、電磁作動ユニット17が通電された作動状態において、ロックユニット15をそのロックされた作動状態に移行させる可能性もある。この場合、ばねユニット18は、反対方向に作用する作動要素17にショルダ部を付けている。ばねユニット18のばね力は、ロックユニットが非アクティブ化されるように、電磁作動ユニット16の通電されていない作動状態で作動要素17を軸方向に調整する。
【0081】
さらに、ボール状のロック要素の代わりに、シリンダ5と枢動可能に作用結合し、好ましくはフック状の端部を備えて構成されたロック要素を設けることも可能である。この場合、これらのロック要素は、ピストンの調整移動を阻止するために、またはそのような調整移動を自由にするために、作動要素を介して径方向外向きに枢動可能である。
【0082】
図4に示すように、ピストン3は、中空円筒形状部分30の代わりに、中空円筒形状部分29と31との間に、円錐台形状部分42を備えることができる。円錐台形状部分42の内径は、破線にしたがって、ピストン3の軸方向で、中空円筒形状部分31から中空円筒形状部分29の方向に増加する。したがって、ピストン3の軸方向の位置と作動要素17の軸方向の位置との間には、直線関係がある。
【0083】
図5には、2つの線グラフL30およびL42が示される。これらの線グラフの各々は、ピストン3の軸方向の位置と作動要素17の軸方向の位置との間の関数関係を再現している。この場合、実線で示されている線グラフL30は、作動要素17の軸方向の位置x17と、中空円筒形状部分30を備えて構成されているピストン3の構成の軸方向の位置x3との間の関数関係に対応している。これとは異なりに、破線で示されている線グラフL42は、作動要素17の軸方向の位置x17と、円錐台形状部分42を備えるピストン3の構成の軸方向の位置x3との間の関数関係を図式的に再現している。
【0084】
パーキングロックユニット2が、ピストン3の第1調節領域x3Iにおいて係合されると、パーキングロックユニット2を係合解除するピストン3の調整移動は、アクティブ化されたロックユニット15によって阻止される。調整値x3Aとx3Bとの間に延在する第1調整領域x3Iに続く調整領域x3IIにおいて、ロックユニット15は非アクティブ化され、ピストン3は変位可能であり、パーキングロックユニット2は係合可能または係合解除可能である。第3調整領域x3IIIは第2調整領域x3IIに続く。第3調整領域x3IIIにおいて、パーキングロックユニット2は係合解除され、パーキングロックユニット2を係合するピストン3の調整移動は、アクティブ化されたロックユニット15によって阻止される。
【0085】
図4に示すピストン3の2つの形態は、円錐台形状部分32と33との間でのみ異なって構成されている。したがって、2つの線グラフL30およびL42は、ピストン3の軸方向の位置の離散値x3Aとx3Bとの間の、ピストン3の軸方向の第2調整領域x3IIにおいてのみ相互に異なる。これは、ピストン3の内径が、ひいては値x3Aとx3Bとの間の第2調整領域x3IIにおける線グラフ42の推移が、連続的に変化するためである。したがって、ロックユニット15のロック解除された状態に加えて、パーキングロックユニット2の係合プロセス中または係合解除プロセス中のピストン3の調整移動の方向も、センサ40によって決定可能である。
【0086】
さらに、線グラフL42による関数関係に基づいて、パーキングロックユニット2の現在の作動状態と、センサ38のないパーキングロックユニット2の適切な機能との両方を、決定可能である。これによって、自動変速機をより費用対効果に優れて製造可能である。
【0087】
パーキングロックユニット2が作動しているとき、センサ38は、パーキングロックユニット2が係合されているか、または係合解除されているかに関する信号を供給する。ロックユニット15の作動状態、または作動要素17の軸方向の位置x17、ひいてはピストン3の軸方向の位置x3がセンサ40によって決定され、これが、センサ38によって現在決定されているパーキングロックユニット2の係合された状態または係合解除された状態と一致しない場合、情報は、センサ38の側によって、好適には少なくとも一時的に、誤りであるとして拒絶される。
【0088】
加えて、その都度存在する用途に応じて、代替反応、診断機能、警告信号、または拡大戦略をトリガすることができる。
【0089】
例えば、センサの信号と、それによって利用可能なパーキングロックユニット2の作動状態に関する情報に応じて、ダッシュボードの位置表示機を制御可能であり、および/またはセンサ38のPNPセンサ信号の尤度チェックが可能である。さらに、PNPセンサ38が故障した場合に、この信号を代替機能として使用することができる。加えて、センサ38の信号の入力と、ピストン3がロックユニット15によってロックされていると予想される信号との間の時間間隔が長すぎる場合、車両のパーキングブレーキを、センサ40の信号の情報に応じて制御することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 装置
2 パーキングロックユニット
3 ピストン
4 作動ばね
5 シリンダ
6 フォロワピン
7 偏向機構
8 回転ディスク
9 ボルト
10 ハウジング
11 パーキングロックロッド
12 パーキングロックコーン
13 パーキングロックポール
14 パーキングロック歯車
15 パーキングロックユニット
16 電磁作動ユニット
17 作動要素
18 ばねユニット
19 アンカーロッド
20 アンカー要素
21 端面
23 ハウジングに固定された構成部分
24 作動要素の円筒形状部分
25 作動要素の円錐台形状部分
26 ロック要素
27 作動要素の円錐台形状部分
28 ピストンの径方向内側
29~31 ピストンの中空円筒形状部分
32、33 ピストンの円錐台形状部分
34 ガイドスリーブのスロット
35 ガイドスリーブ
36 機械的ストッパ
37 作動要素の更なる端面
38 センサ
40 センサ
42 ピストンの円錐台形状部分
L30 線グラフ
L42 線グラフ
X 軸方向
X3 ピストンの軸方向の位置
X3A、X3B ピストンの軸方向の位置の離散値
X3I、X3II、X3III 調整領域
X17 作動要素の軸方向の位置