(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】試験システム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/00 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
G01R31/00
(21)【出願番号】P 2022014038
(22)【出願日】2022-02-01
【審査請求日】2024-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 豊
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-169606(JP,A)
【文献】特開2010-190851(JP,A)
【文献】特開平7-253898(JP,A)
【文献】特開2022-19068(JP,A)
【文献】特開平11-202013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の被試験器に対して複数の測定器を使用して一連の試験項目について測定順位に従って測定する試験を制御する制御装置が複数接続された試験システムであって、
特定の制御装置は、前記一連の試験項目に暫定順位を付して記憶している自装置であり、他の制御装置に当該他の制御装置における一連の試験項目を問い合わせ、当該自装置における一連の試験項目において当該試験項目毎の測定時間を全て加算して総測定時間を算出し、前記試験項目毎に前記総測定時間から測定時間を差し引き、更に当該試験項目において使用される測定器が他の試験項目でも使用される場合に当該他の試験項目での測定時間も差し引いて前記試験項目毎に有効時間を算出し、
前記自装置における一連の試験項目と前記他の制御装置における一連の試験項目を比較し、前記自装置における試験項目で使用される測定器が、前記他の制御装置における試験項目で使用される測定器と重複しない場合には、前記暫定順位に従って当該一連の試験項目の測定順位を決定し、前記自装置における試験項目で使用される測定器が、前記他の制御装置における試験項目で使用される測定器と重複する場合には、前記有効時間が小さい順に当該一連の試験項目の測定順位を決定することを特徴とする試験システム。
【請求項2】
前記特定の制御装置は、前記自装置における一連の試験項目で使用される測定器が、前記他の制御装置における試験項目で使用される測定器と重複しない試験項目と、前記他の制御装置における試験項目で使用される測定器と重複する試験項目とが混在する場合には、前記測定器が重複しない試験項目の順位を上位として決定することを特徴とする請求項1記載の試験システム。
【請求項3】
前記特定の制御装置は、前記試験項目毎に前記有効時間から当該試験項目の測定時間を差し引いて測定順位決定時間を算出し、前記測定順位決定時間が小さい順に前記一連の試験項目の測定順位を変更することを特徴とする請求項1又は2記載の試験システム。
【請求項4】
前記特定の制御装置は、試験項目の測定開始前に前記他の制御装置に使用する測定器の使用状況を問い合わせ、当該測定器が未使用である場合に、前記試験項目の測定を行わせることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の試験システム。
【請求項5】
前記特定の制御装置は、一連の試験項目の試験開始時に、当該試験項目の測定順位の決定を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の試験システム。
【請求項6】
前記特定の制御装置は、前記他の制御装置から一連の試験項目の完了状況を取得し、前記他の制御装置で測定が完了している試験項目は、自装置における一連の試験項目との比較対象から除外することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載の試験システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の制御装置が、複数の測定器を用いて複数の被試験器の試験を行う試験システムにおいて、測定器の競合による待ち時間を短縮し、効率よく試験を実施することができる試験システムに関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
試験システムは、航空機内に装備された各種機器類(被試験器、供試器)について、正常に動作しているか否かの試験を行うものである。従来、試験システムでは、複数の制御装置を備え、複数の供試器の試験を並列に行っている。
また、供試器の試験では、複数の汎用測定器を使用し、詳細な試験項目毎に使用する測定器が異なる。
【0003】
複数の制御装置(制御装置A、制御装置B)が、同一の測定器を使用して並列に試験を行う際に、例えば制御装置Aが測定器を使用中であった場合には、制御装置Bは、競合しているため使用不可と判断し、制御装置Aの当該試験が終了するまで試験を停止し、制御装置Aの試験終了後に再開していた。
【0004】
実際には、制御装置Bにおいて、使用する測定器が制御装置Aと競合した場合には、制御装置Bの作業員が試験を一旦終了し、同一測定器を使用しない試験を先に実施し、制御装置Aの試験が終了した後に試験を再開するという方法をとっており、複数の制御装置で動作させていながら、作業者へ負担をかけ、時間効率も悪い状態であった。
【0005】
また、従来、汎用測定器の使用状態の情報を各制御装置が共有すると共に、試験項目毎に使用する測定器の情報を記憶しておき、より効率的に汎用測定器を使用して、並列に試験を実施する試験システムがあった(特許文献1)。
【0006】
特許文献1には、複数の制御装置によって複数の供試器を同時に試験し、各制御装置が、それぞれの詳細試験(試験項目)で使用する測定器を記憶する詳細試験項目データテーブルと、各測定器の使用状態/未使用状態(解放状態)を記憶する測定器データテーブルを備え、使用中の測定器にはフラグを立てて排他的使用を確保し、測定器が競合した場合にはその詳細試験を一旦保留として別の詳細試験を実施することが記載されている。
【0007】
[測定器データテーブル:
図9]
ここで、測定器データテーブルの例について
図9を用いて説明する。
図9は、測定器データテーブルの例を示す説明図である。
図9に示すように、測定器データテーブルは、制御装置毎に、どの測定器を使用しているかを記憶しているものである。
図9の例では、制御装置として、制御装置A、制御装置B、制御装置Cの3台が登録され、これらの制御装置が共通に使用可能な測定器として、電力計、位相検波器、スペクトラム分析器、標準信号発生器、低周波分析器、等が記憶されている。
【0008】
測定器データテーブルでは、各制御装置に対応して、使用中の測定器には「1」が設定され、使用中ではない(使用前の、又は使用後に解放された)測定器には「0」が設定されている。使用中ではない状態を、ここでは「未使用」と称するものとする。
【0009】
そして、制御装置は、測定器を使用する場合には、当該測定器に「1」を設定して確保する。使用が終了して未使用となった場合には「0」を設定して、当該測定器を解放する。
図9の例では、制御装置Aは、電力計を使用中であり、制御装置Bは、標準信号発生器を使用中である。
また、制御装置Cは測定を行っていないため、全て「0」となっている。
【0010】
測定器データテーブルの情報は、システム内の全ての制御装置が共有(共通の情報を保持(記憶))している。
つまり、各制御装置は、測定器の使用を開始する際に、自装置の測定器データテーブルにおいて「1」を設定すると共に、当該測定器の「使用」を示す情報を他の全ての制御装置に対して報知する。また、測定器の使用を終了した際には測定器データテーブルに「0」を設定し、当該測定器の「解放」を示す情報を、他の制御装置に報知する。
そして、各制御装置は、他の制御装置から測定器の使用/解放の情報を受信すると、当該情報に基づいて自装置が記憶している測定器データテーブルを更新する。
【0011】
[従来の詳細試験項目データテーブル:
図10]
次に、従来の詳細試験項目データテーブルについて
図10を用いて説明する。
図10は、従来の詳細試験項目データテーブルの例を示す説明図である。
図10に示すように、従来の詳細試験項目データテーブルは、詳細試験項目(試験項目、項目と記載することもある)毎に、当該詳細試験項目で使用する測定器と、試験に要する測定時間を記憶しているものである。
【0012】
例えば、送信出力の試験項目では、電力計を使用し、測定時間は30秒である。
また、位相検波器は、送信周波数確度と、側音出力の試験項目で使用され、送信周波数確度の試験では30秒、側音出力の試験では60秒を要することが記憶されている。
つまり、送信周波数確度の試験項目と、側音出力の試験項目は同時に実施することはできない。
詳細試験項目データテーブルの情報は、全ての制御装置が共有しているものである。
【0013】
[従来の試験方法]
測定器データテーブルと詳細試験項目データテーブルとを備えた従来の試験システムにおける試験方法について簡単に説明する。
例えば、制御装置Aと制御装置Bとで並列に試験を実施する場合に、先に試験を開始した制御装置Aは、詳細試験項目データテーブルを参照して、実施する試験項目で使用する測定器類を抽出(特定)し、1項目毎に測定器データテーブルで使用状況を確認して、当該測定器類が使用されていない場合は、「1」を設定して、当該測定器類を排他的に使用するための確保を行う。
1つの試験項目が終了すると、終了した測定器に「0」を設定して、次の試験項目について使用状況を確認する。
【0014】
同様に、制御装置Bが試験を開始する際も、詳細試験項目データテーブルを参照して、実施する試験項目で使用する測定器類を抽出し、1項目毎に測定器データテーブルで測定器の使用状況を確認する。
使用する測定器の使用状況に「1」が設定されており、既に使用されている場合には、その試験項目を保留し、使用中の測定器を使用しない試験項目(使用状況に「0」が設定されている測定器を用いる試験項目)がある場合には当該試験項目を先に実施する。
【0015】
使用中の測定器を使用しない試験項目が無い場合には、試験を停止し、他の制御装置(ここでは制御装置A)が競合使用する測定器の試験項目を終了して、測定器データテーブルの使用状況に「0」が設定されるまで試験終了待ちとなる。
試験終了待ちの場合、制御装置Bは測定器データテーブルを監視して使用状況を定期的に確認し、制御装置1の試験が終了して「0」が設定されたら、制御装置2の試験を実施するようにしていた。
【0016】
しかし、特許文献1の方法では、競合する詳細試験を保留して別の詳細試験を実施しても、後になると、同じ測定器を使用する詳細試験のみが残り、結局は測定器待ちが発生していた。
【0017】
また、従来、測定器の競合が起こった場合に別のブロックで使用している同機能の測定器を使用して並列試験を可能とする試験システムもあった(特許文献2)。特許文献2の試験システムでは、試験開始前に測定器が競合しないような試験の組合せのバッチファイルを作成し、並列試験を実現している。
【0018】
しかし、試験システム内に同機能の測定器が全て存在するわけではないので同機能の測定器が無い場合には待ちは発生する。また、バッチファイルについても、試験中に後から別の試験を実施した場合には対応できず測定器の待ちが発生する。
【0019】
[関連技術]
試験システムの従来技術としては、特開2007-292723号公報「自動試験システム」(特許文献1)、特開2011-169606号公報「試験システム」(特許文献2)がある。
特許文献1には、試験システムにおいて、測定器の使用状態の情報と、試験項目毎に使用する測定器の情報を各制御装置が共有して記憶しておき、効率的に並列試験を実施することが記載されている。
また、特許文献2には、測定器の競合が起こった場合に別のブロックで使用している同機能の測定器を使用して並列試験を可能とすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【文献】特開2007-292723号公報
【文献】特開2011-169606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上述したように、従来の試験システムでは、複数の制御装置で並列に試験を実施する場合に、他の制御装置が測定器を使用していることで試験の待ち時間が長くなることがあり、効率が悪く、作業員の負荷が大きくなってしまうという問題点があった。
【0022】
尚、特許文献1及び特許文献2には、各制御装置が、測定器を用いた試験項目の測定を行う前に、試験項目の測定順を適切に変更する測定順位決定処理を行って、他の制御装置との測定器の競合による待ち時間の低減を図ることは記載されていない。
【0023】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、複数の制御装置で並列に試験を実施する場合に、測定器の競合による待ち時間を短縮して試験の効率を向上させることができる試験システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、複数の被試験器に対して複数の測定器を使用して一連の試験項目について測定順位に従って測定する試験を制御する制御装置が複数接続された試験システムであって、特定の制御装置は、一連の試験項目に暫定順位を付して記憶している自装置であり、他の制御装置に当該他の制御装置における一連の試験項目を問い合わせ、当該自装置における一連の試験項目において当該試験項目毎の測定時間を全て加算して総測定時間を算出し、試験項目毎に総測定時間から測定時間を差し引き、更に当該試験項目において使用される測定器が他の試験項目でも使用される場合に当該他の試験項目での測定時間も差し引いて試験項目毎に有効時間を算出し、自装置における一連の試験項目と他の制御装置における一連の試験項目を比較し、自装置における試験項目で使用される測定器が、他の制御装置における試験項目で使用される測定器と重複しない場合には、暫定順位に従って当該一連の試験項目の測定順位を決定し、自装置における試験項目で使用される測定器が、他の制御装置における試験項目で使用される測定器と重複する場合には、有効時間が小さい順に当該一連の試験項目の測定順位を決定することを特徴としている。
【0025】
また、本発明は、上記試験システムにおいて、特定の制御装置は、自装置における一連の試験項目で使用される測定器が、他の制御装置における試験項目で使用される測定器と重複しない試験項目と、他の制御装置における試験項目で使用される測定器と重複する試験項目とが混在する場合には、測定器が重複しない試験項目の順位を上位として決定することを特徴としている。
【0026】
また、本発明は、上記試験システムにおいて、特定の制御装置は、試験項目毎に有効時間から当該試験項目の測定時間を差し引いて測定順位決定時間を算出し、測定順位決定時間が小さい順に一連の試験項目の測定順位を変更することを特徴としている。
【0027】
また、本発明は、上記試験システムにおいて、特定の制御装置は、試験項目の測定開始前に他の制御装置に使用する測定器の使用状況を問い合わせ、当該測定器が未使用である場合に、当該試験項目の測定を行わせることを特徴としている。
【0028】
また、本発明は、上記試験システムにおいて、特定の制御装置は、一連の試験項目の試験開始時に、当該試験項目の測定順位の決定を行うことを特徴としている。
【0029】
また、本発明は、上記試験システムにおいて、特定の制御装置は、他の制御装置から一連の試験項目の完了状況を取得し、他の制御装置で測定が完了している試験項目は、自装置における一連の試験項目との比較対象から除外することを特徴としている。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、複数の被試験器に対して複数の測定器を使用して一連の試験項目について測定順位に従って測定する試験を制御する制御装置が複数接続された試験システムであって、特定の制御装置は、一連の試験項目に暫定順位を付して記憶している自装置であり、他の制御装置に当該他の制御装置における一連の試験項目を問い合わせ、当該自装置における一連の試験項目において当該試験項目毎の測定時間を全て加算して総測定時間を算出し、試験項目毎に総測定時間から測定時間を差し引き、更に当該試験項目において使用される測定器が他の試験項目でも使用される場合に当該他の試験項目での測定時間も差し引いて試験項目毎に有効時間を算出し、自装置における一連の試験項目と他の制御装置における一連の試験項目を比較し、自装置における試験項目で使用される測定器が、他の制御装置における試験項目で使用される測定器と重複しない場合には、暫定順位に従って当該一連の試験項目の測定順位を決定し、自装置における試験項目で使用される測定器が、他の制御装置における試験項目で使用される測定器と重複する場合には、有効時間が小さい順に当該一連の試験項目の測定順位を決定する試験システムとしているので、測定器が他の制御装置と重複している場合には、測定器の使用時間が長く、他の制御装置と競合する可能性の高い試験項目から順に実施して、全体として待ち時間を短縮し、試験の効率を向上させることができる効果がある。
【0031】
また、本発明によれば、特定の制御装置は、自装置における一連の試験項目で使用される測定器が、他の制御装置における試験項目で使用される測定器と重複しない試験項目と、他の制御装置における試験項目で使用される測定器と重複する試験項目とが混在する場合には、測定器が重複しない試験項目の順位を上位として決定する上記試験システムとしているので、他の制御装置と競合の恐れがなく、待ち時間が発生しない試験項目から実施して、全体の試験時間を短縮できる効果がある。
【0032】
また、本発明によれば、特定の制御装置は、試験項目毎に有効時間から当該試験項目の測定時間を差し引いて測定順位決定時間を算出し、測定順位決定時間が小さい順に一連の試験項目の測定順位を変更する上記試験システムとしているので、有効時間が同じ試験項目があった場合でも容易に測定順位を決定できる効果がある。
【0033】
また、本発明によれば、特定の制御装置は、一連の試験項目の試験開始時に、当該試験項目の測定順位の決定を行う上記試験システムとしているので、測定が実施される前に適切な測定順を決定することができ、試験の効率を向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図3】他装置詳細試験項目テーブルの例を示す説明図である。
【
図4】自装置詳細試験項目テーブルの例を示す説明図である。
【
図5】詳細試験項目テーブル生成処理を示すフローチャートである。
【
図6】測定順位決定処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図7】2台の制御装置が並行して試験を行った場合の試験時間の比較を示す説明図である。
【
図9】測定器データテーブルの例を示す説明図である。
【
図10】従来の詳細試験項目データテーブルの例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る試験システム(本試験システム)は、複数の制御装置が並列して被試験器の試験を行うものであり、各制御装置が、測定器を用いた試験項目の測定を行う前に、試験項目の測定順を適切に変更して、他の制御装置との測定器の競合による待ち時間を低減して試験の効率を向上させるものである。
【0036】
具体的には、本試験システムは、制御装置が、暫定の順位が設定された一連の試験項目を記憶しており、自装置の試験項目と他の制御装置での一連の試験項目とを比較して、自装置で使用する測定器が、他の制御装置でも使用されるかどうか(重複するかどうか)を判定し、使用されない試験項目については、暫定の順位に従って試験項目の測定順を決定し、使用される試験項目については、測定器が使用される試験項目の数や、使用される時間の長さを反映した有効時間を試験項目毎に算出し、有効時間の短い順に試験項目の測定順を決定するものであり、まず、他の制御装置で測定器が使用されない試験項目を待ち時間なく実施し、その後、他の制御装置と競合する可能性が高い測定器を用いる試験項目を早めに実施するよう測定順を決定しておくことで、他の制御装置と同じ測定器を使用する場合でも全体として待ち時間を短縮でき、効率的に試験を行うことができるものである。
【0037】
更に具体的には、本試験システムは、制御装置が、自装置における一連の試験項目について、試験項目毎の測定時間を加算した総測定時間から、各試験項目の測定時間を差し引き、当該試験項目で使用される測定器が他の試験項目でも使用される場合には、当該他の試験項目の測定時間も差し引いて試験項目毎の有効時間を算出するものであり、有効時間の短い順に試験項目の試験順を決定することで、全体として待ち時間を短縮でき、効率的に試験を行うことができるものである。
【0038】
[本試験システムの構成:
図1]
本試験システムの構成について
図1を用いて説明する。
図1は、本試験システムの構成を示す説明図である。
図1に示すように、本試験システムは、複数の制御装置1(制御装置A(1a),制御装置B(1b),制御装置C(1c)…)と、汎用測定器群2と、専用試験器群3と、接続BOX4と、LAN(Local Area Network)5とを備え、LAN5を介して複数の制御装置1と汎用測定器群2、専用試験器群3、接続BOX5とが接続されている。
【0039】
汎用測定器群2には、標準信号発生器、位相検波器等の汎用測定器が含まれる。
また、専用試験器群3には、専用試験器AAA、専用試験器BBB等の専用試験器が含まれる。
接続BOX4は、複数の供試器(被試験器)6(供試器6-1,供試器6-2,供試器6-3,…)をLAN5に接続する接続部である。
【0040】
制御装置1は、汎用測定器や専用試験器を制御して、接続BOX4に接続された複数の供試器6についての試験を実施し、結果を取得して記憶し、表示する。
本試験システムでは、複数の制御装置1が並列に試験を実施する。その際、本試験システムの特徴として、制御装置1は、複数の試験項目について試験を実施する順番(測定順)を最適なものとするよう測定順を決定する処理を行う。制御装置1の構成及び動作については後述する。
【0041】
[制御装置1の構成:
図2]
次に、制御装置1の構成について
図2を用いて説明する。
図2は、制御装置1の構成ブロック図である。
図2に示すように、制御装置1は、パーソナルコンピュータ(PC)等で構成され、制御部11と、記憶部12と、操作部13と、表示部14と、通信インタフェース部(通信I/F)15とを備えている。
【0042】
制御部11は、供試器6の試験に伴う各種処理を実行する処理部である。本試験システムの制御装置1においては、試験項目判定処理、詳細試験判定処理、測定順位決定処理、測定器判定処理、結果取得処理、測定器処理等が実行される。
この内、測定順位決定処理が本試験システムの特徴となっている。測定順位決定処理の詳細については後述する。
【0043】
操作部13は、担当者が操作を行う入力部である。
表示部14は、試験結果等を表示する。
通信インタフェース15は、LAN5を介して、汎用測定器群2及び専用試験器群3の各測定器と制御部11とを接続する。
記憶部12は、制御部11で実行される処理プログラムに加えて、自装置詳細試験項目テーブル16と、他装置詳細試験項目テーブル17と、測定器データテーブル18とを備えている。
処理プログラムが、制御部11で実行されて、以下に説明する機能が実現されるものである。
【0044】
自装置詳細試験項目テーブル16は、本試験システムの特徴部分であり、
図10に示した従来の詳細試験項目テーブルに加えて、測定順位の決定に用いられる情報を記憶している。詳細試験項目データテーブル16については後述する。
【0045】
また、本試験システムの制御装置1は、自装置詳細試験項目テーブル16に加えて、他の制御装置1からも試験項目の情報を取得して、他の制御装置の試験について他装置詳細試験項目テーブル17を生成して記憶している。
そして、自装置詳細試験項目テーブル16と、他装置詳細試験項目テーブル17とを比較して、試験で用いる測定器が他装置でも使用されるか否かを判定し、測定順位の決定に利用している。
【0046】
測定器データテーブル18は、
図9に示した測定器データテーブルと同様の構成であり、制御装置毎に、測定器の使用状況を示す情報を記憶するものである。
制御装置1は、従来と同様に、測定器の使用を開始する際に、測定器データテーブル18を参照して、当該測定器に対応して「1」が設定されていないことを確認してから、使用状態を示す「1」を設定して当該測定器を確保し、測定を実施する。
【0047】
また、制御装置1は、測定終了時に、測定器データテーブル18の当該測定器に対応して、未使用状態を示す「0」を設定する。そして、測定器の使用/解放(未使用)を示す情報を、他の制御装置1に送信する。他の制御装置1は、記憶している測定器データテーブル18を受信した情報に基づいて更新する。
【0048】
[他装置詳細試験項目テーブル17:
図3]
他装置詳細試験項目テーブル17について
図3を用いて説明する。
図3は、他装置詳細試験項目テーブルの例を示す説明図である。尚、ここでは、説明を簡単にするために、制御装置B(1b)が記憶している制御装置A(1a)についての他装置詳細試験項目テーブル17を示している。
【0049】
図3に示すように、制御装置B(1b)は、他の制御装置である制御装置A(1a)の他装置詳細試験項目テーブル17として、制御装置A(1a)において行われる試験項目毎に、番号と、使用する測定器と、測定順と、測定時間と、測定完了フラグとを記憶している。他装置詳細試験項目テーブル17に記憶されている試験項目が、請求項に記載した他の制御装置における一連の試験項目に相当する。
測定完了フラグは、当該試験項目の測定が完了したことを示すフラグであり、完了している場合には「1」が設定される。
【0050】
本試験システムでは、制御装置B(1b)が試験を開始する際に、制御装置A(1a)に対して、試験を行う供試器と、実施する試験項目と、測定順と、試験完了フラグの情報を問い合わせ、受信した情報に基づいて制御装置B(1b)が制御装置A(1a)についての他装置詳細試験項目テーブル17を生成する。
尚、詳細試験項目毎の測定時間は、予め全ての制御装置1に記憶されている。
【0051】
また、番号は、試験項目の番号であり、暫定的な測定順位(暫定順位)に相当している。
測定順は、制御装置A(1a)において決定された試験項目の測定順(測定順位)である。尚、測定順に変更があった場合には、その旨制御装置Aから通知され、制御装置Bはそれに従って他装置詳細試験項目テーブル17を更新する。
【0052】
[詳細試験項目テーブル:
図4]
次に、自装置詳細試験項目テーブル16について
図4を用いて説明する。
図4は、詳細試験項目テーブルの例を示す説明図である。ここでは、制御装置B(1b)の詳細試験項目テーブルを示している。
図4に示すように、自装置詳細試験項目テーブル16は、自装置の詳細試験項目についての情報を記憶したものであり、
図3に示した他装置詳細試験項目テーブル17に記憶されている情報に加えて、本試験システムの特徴部分である、有効時間と、測定順位決定時間とを記憶している。
【0053】
図4の例では、番号(暫定順位)1′~6′に対応して、送信出力、送信周波数確度、スプリアス強度、受信出力レベル、受信感度、側音出力の試験項目が記憶され、それぞれの試験項目に対応して、使用する測定器と、決定された測定順(測定順位)と、測定時間と、有効時間と、測定順位決定時間と、測定完了フラグが記憶されている。自装置詳細試験項目テーブル16に記憶されている試験項目が、請求項に記載した自装置における一連の試験項目に相当する。
【0054】
尚、ここでは、制御装置A(1a)における試験項目の番号と区別するために、番号に「′」を付しているが、暫定的な測定順位は「′」のない数値が表す順位となる。
本試験システムの制御装置1は、自装置詳細試験項目テーブル16の試験項目を他装置詳細試験項目テーブル17と比較して、同じ測定器を全く使用しない場合には、競合する恐れがないため、暫定順位をそのまま測定順位として決定する。
本明細書では、「競合」は同じ測定器を複数の制御装置1が同時に使用しようとする状況、という意味で用いている。
【0055】
また、一部の試験項目では他装置と同じ測定器を使用する(測定器が重複する)ものの、同じ測定器を使用しない(測定器が重複しない)試験項目がある場合には、同じ測定器を使用しない試験項目について、暫定順位の高いものから順に測定順位を決定する。
更に、他の制御装置と同じ測定器を使用する試験項目については、後述する有効時間及び測定順位決定時間に基づいて測定順位を決定する。
【0056】
[有効時間の算出]
有効時間は、本試験システムの特徴となる情報であり、他装置と同じ測定器を使用する試験項目の測定順を決定する際の判断指標となるものである。
各試験項目では、それぞれ決まった測定器を決まった測定時間だけ使用するが、測定器に着目すると、1つの試験項目のみで用いられるものや、多くの試験項目で用いられるものがある。また、測定器の使用時間(測定時間)も様々である。
【0057】
ここで、1つの測定器だけを短時間使用する試験項目と、複数の測定器を長時間使用する試験項目とを比較した場合、前者は後者と比べて他の制御装置1と測定器が競合する可能性が低く、競合したとしても、一旦保留すればすぐに測定器が解放されて測定器を確保することができる。
それに対して、後者は競合する可能性が高い上、使用時間も長くなるため、測定器の確保が困難になりやすい。
【0058】
本試験システムでは、このような事情を考慮して、他装置も使用する測定器を用いる測定項目については、測定器の確保が困難になりやすい試験項目の測定順位を上げて、優先的に実施するようにしている。具体的には、有効時間が短い試験項目の順位を上位とする。
このように、他装置と競合する確率の高い測定器を使う試験項目を先に測定することで、後になって競合する確率を低減し、待ち時間を短縮するようにしている。
【0059】
制御装置1における有効時間の算出方法について説明する。ここでは、制御装置B(1b)を例として説明する。
制御装置B(1b)は、まず、自装置詳細試験項目テーブル16を参照して、登録されている全試験項目の測定時間を合計して、総測定時間を算出する。
図4の例では、総測定時間は、315秒となる。
そして、各試験項目について、総測定時間から、当該試験項目で用いられる測定器が使用される試験項目の合計測定時間を差し引いて、有効時間を算出する。
【0060】
例えば、試験番号1′の送信出力では電力計を用い、電力計は他の試験項目では使用されないので、総測定時間から送信出力の測定時間30秒を差し引いて、有効時間とする。
つまり、315-30=285(秒)が送信出力の試験項目の有効時間となる。
【0061】
また、試験番号6′の側音出力(測定時間60秒)では、位相検波器と低周波分析器を用いるが、位相検波器は試験番号2′の送信周波数確度(測定時間30秒)でも用いられ、低周波分析器は試験番号4′の受信出力レベル(測定時間45秒)と試験番号5′の受信感度(測定時間60秒)でも用いられる。
そのため、試験番号6′の側音出力で用いられる位相検波器と低周波分析器の合計測定時間は、30+45+60+60=195(秒)となる。
したがって、試験番号6′の側音出力の有効時間は、315-195=120(秒)となる。
制御装置B(1b)は、同様にして他の試験項目についても有効時間を算出して、自装置詳細試験項目テーブル16に記憶する。
【0062】
[測定順位決定時間の算出]
更に、制御装置B(1b)は、有効時間では順位が決定できない場合の判断指標として、測定順位決定時間を算出する。測定順位決定時間は、各試験項目の有効時間から測定時間を差し引いた値である。
【0063】
例えば、試験番号1′の送信出力の測定順位決定時間は、有効時間-測定時間で、285-30=255(秒)となる。
同様に、試験番号6′の側音出力の測定順位決定時間は、120-60=60(秒)となる。
以下同様にして、制御装置B(1b)は、詳細試験項目データテーブルのすべての試験項目について測定順位決定時間を算出して記憶する。
【0064】
[測定順位の決定]
そして、制御装置B(1b)は、制御装置A(1a)の他装置詳細試験項目テーブル17と、自装置詳細試験項目テーブル16に基づいて、測定順位を決定する。
まず、制御装置B(1B)は、自装置詳細試験項目テーブル16と、制御装置A(1a)の他装置詳細試験項目テーブル17とを比較して、同一の測定器を使用する試験項目があるかどうかをチェックする。そして、他装置で使用されない測定器を用いる試験項目があれば、暫定順位の高いものから順に1位(1番)、2位、と昇順に測定順位を決定する。
図3、
図4の例では、他装置で使用されない測定器を用いる試験項目はない。
【0065】
他装置でも使用される測定器を用いる試験項目については、有効時間の短いものを上位として測定順位を決定する。
図4の例では、有効時間の最も短い試験番号6′の側音出力が測定順位1位となる。
また、有効時間が同一の場合には、測定順位決定時間が短い順に測定順位を決定する。例えば、試験番号4′の受信出力レベルと試験番号5′の受信感度は、いずれも有効時間が150(秒)であるが、測定順位決定時間は、受信出力レベルが105(秒)、受信感度が90(秒)であるため、試験番号5′の受信感度が測定順位2位(2番)、受信出力レベルが3位(3番)となる。
【0066】
制御装置B(1b)は、以下同様にして全ての試験項目について測定順位を決定して、自装置詳細試験項目テーブル16に記憶する。
図4の例では、測定順位は、1位が側音出力、以下、受信感度、受信出力レベル、スプリアス強度、送信周波数確度、送信出力の順で6位まで決定されている。
そして、制御装置B(1b)は、自装置詳細試験項目テーブル16の測定順位に従って試験を行う。
【0067】
[詳細試験項目テーブルの生成:
図5]
本試験システムの制御装置1における処理について説明する。
制御装置1は、試験開始の際に、上述した他装置詳細試験項目テーブル17と、自装置詳細試験項目テーブル16を生成する。制御装置1における詳細試験項目テーブル及び他装置詳細試験項目テーブルの生成処理について
図5を用いて説明する。
図5は、試験開始時に実行される詳細試験項目テーブル生成処理を示すフローチャートである。ここでは、制御装置B(1b)の制御部11における処理を例として説明する。
【0068】
制御装置B(1b)は、試験開始時に、まず他装置(ここでは制御装置A(1a))に、試験項目を問い合わせる(100)。
制御装置A(1a)から、試験を行う供試器と、実施する試験項目と、測定順と、試験完了フラグの情報を受信すると、制御装置B(1b)は、受信した情報と予め記憶されている試験項目毎の測定時間の情報に基づいて、
図3に示したような制御装置A(1a)についての他装置詳細試験項目テーブル17を生成する(102)。
【0069】
次に、制御装置B(1b)は、操作部13から入力された試験項目を指定する情報に基づいて、
図4に示したような自装置詳細試験項目テーブル16を生成する(104)。
更に、制御装置B(1b)は、各試験項目について有効時間と測定順位決定時間とを算出する(106)。そして、制御装置B(1b)は、算出した有効時間及び測定順位決定時間を詳細試験項目テーブルに記憶して、後述する測定順位決定処理に移行する。
このようにして、試験開始時の詳細試験項目テーブル生成の処理が行われる。
【0070】
[測定順位決定処理:
図6]
次に、測定順位決定処理について
図6を用いて説明する。
図6は、測定順位決定処理の詳細を示すフローチャートである。
図6に示すように、制御装置1は、自装置詳細試験項目テーブル16の暫定順位に従って、試験項目を1項目セットする(300)。
そして、当該試験項目と他装置詳細試験項目テーブル17の全試験項目とを比較して(302)、他装置と測定器が重複するか(同じ測定器を使用するか)否かを判断する(304)。ここで、制御装置1は、他装置詳細試験項目テーブル17において、既に測定完了が設定されている試験項目については比較対象から除外する。
【0071】
処理304で同じ測定器を使用すると判断した場合には、制御装置1は、当該項目の測定順位決定は保留して、暫定順位に従って次の項目を選択し(306)、処理300に戻って当該項目をセットして測定器のチェックを行う。尚、処理306では、既に測定順位が決定している項目は除外して、未決の項目のみを対象としている。
【0072】
また、処理304で他装置と同じ測定器を使用しないと判断した場合には、制御装置1は、当該項目を次の測定順位に決定し、自装置詳細試験項目テーブル16に記憶する(310)。ここで、「次の測定順位」とは、測定項目が決まっていない測定順位(未決の順位)の内の最上位を示す。
【0073】
そして、制御装置1は、自装置詳細試験項目テーブル16の試験項目を全てチェックしたかどうかを判断し(312)、まだチェックしていない項目があれば(Noの場合)、処理306に戻って次の項目についてチェックする。
【0074】
また、処理312で全ての項目をチェックした場合(YESの場合)には、制御装置1は、測定順位が決まっていない項目の内、測定順位決定時間が最小の項目を次の順位に決定し、自装置詳細試験項目テーブル16に記憶する(314)。
処理312で全ての項目のチェックが終わっていれば、他装置と同じ測定器を用いない項目の順位は既に決定しているため、処理314では、同じ測定器を用いる項目について測定順位決定時間を比較している。
【0075】
尚、処理314では測定順位決定時間のみで順位を判断しているが、まず有効時間で判断し、それで決まらない場合に測定順位決定時間で判断するようにしてもよい。
具体的には、測定順位が決まっていない試験項目(他装置と同じ測定器を用いる項目)について、まず、有効時間の小さい試験項目から順に測定順位を決定する。そして、有効時間が同一の場合には、測定順位決定時間の小さい方を上位とするよう、測定順位を変更する。
【0076】
そして、制御装置1は、自装置詳細試験項目テーブル16の測定順位が全て決定したかどうかを判断し(316)、全ての測定順位が決定していない場合には、測定順位が決まっていない項目の先頭を選択して(318)、自装置の試験項目セットの処理300に戻って再度チェックを行う。これは、比較する他装置の次の試験項目を求めるために、測定順序が決まった自装置の測定項目の測定時間を合計し、その合計時間が経過したときに実施している他装置の測定項目を次の比較項目とするものである。この場合、処理302で自装置の試験項目と他装置の試験項目を比較するが、測定順位が決まり再び他装置の試験項目と比較する際には、どの項目と比較するのかといった操作が不要となる。つまり、他装置の試験項目が自装置の決定した試験項目より試験時間が長い場合には、自装置の試験が終わっても他装置の試験が終わっていないので他装置の試験項目は変更せずに自装置の次の試験項目と比較する。一方で、他装置の試験項目が自装置の決定した試験項目より試験時間が短い場合には、自装置の試験中に他装置の試験は終了している為、どの試験項目と比較するかを求める必要がある。
また、処理316で、測定順位が全て決定していれば(Yesの場合)、測定順位決定処理を終わる。
このようにして測定順位決定処理が行われる。
【0077】
[試験時間比較:
図7]
次に、本試験システムと従来の試験システムにおける試験時間について説明する。
図7は、2台の制御装置が並行して試験を行った場合の試験時間の比較を示す説明図である。尚、
図7では制御装置A(1a)の試験を薄いグレーで、制御装置B(1b)の試験を濃いグレーで示している。
【0078】
図7(a)は、従来の方法(1)で、競合した場合に当該測定器が解放されるのを待って暫定順位通りに試験項目の測定を行った場合を示している。この方法では、待ち時間(空白部分の時間)が長くなり、2台の制御装置双方において試験が終了するまでの試験時間も一番長い。
【0079】
図7(b)は、従来の方法(2)で、競合した場合に当該試験項目を保留し、暫定順位に従って次の試験項目の測定を行った場合を示しており、番号1の試験項目で競合があったため、番号2の試験を先に行っている。
この場合は、(a)の方法に比べると待ち時間及び全体の試験時間は短くなる。
【0080】
図7(c)は、本試験システムにおける測定順位で試験を行った場合を示している。
本試験システムの測定順位で測定を行った場合には、
図8(c)に示すように、待ち時間が短くなり、全体の試験時間も最短となっている。
このように、本試験システムでは複数の制御装置1で並行して試験を行う場合の測定順を変更することで、競合の確率を抑えて待ち時間を低減し、試験時間を短縮することができるものである。
【0081】
[試験実施処理:
図8]
次に、本試験システムの制御装置1における試験実施処理について
図8を用いて説明する。
図8は、試験実施処理を示すフローチャートである。
図8に示すように、制御装置1は、試験が開始時に試験機材が選択されると(400)、まず、
図5に示した詳細試験項目テーブル生成処理を行う(402)。
次に、制御装置1は、
図7に示した測定順位決定処理を行う(404)。
【0082】
そして、制御装置1は、自装置詳細試験項目テーブル16の測定順位に従って、まだ測定が完了していない試験項目を設定し(406)、測定器データテーブル18を参照して、当該試験項目で使用する測定器の使用状態を判定する(408)。
測定器データテーブル18において、当該測定器が使用状態であれば(「1」が設定されていれば)、制御装置1は、処理406に戻って次の試験項目を設定する。
【0083】
また、処理408において、当該測定器が未使用状態であれば(「0」が設定されていれば)、制御装置1は、測定器データテーブル18に使用状態(「1」)を設定し(410)、測定を実施する(412)
そして、測定が終了すると、測定器データテーブル18に未使用状態(「0」)を設定し(414)、自装置詳細試験項目テーブル16に測定完了を設定する(416)。
【0084】
そして、制御装置1は、全ての試験項目が測定完了したかどうかを確認し(418)、完了していない場合には、処理406に移行して、次の試験項目を設定する。
また、処理418で全ての試験項目の測定が完了した場合には、処理を終わる。
このようにして本試験システムの制御装置1における試験実施処理が行われる。
【0085】
[実施の形態の効果]
本試験システムによれば、制御装置1が、暫定順位が設定された一連の試験項目を記憶しており、自装置の試験項目と他の制御装置での一連の試験項目とを比較して、自装置で使用する測定器が、他の制御装置と重複するどうかを判定し、重複しない試験項目については、暫定順位に従って試験項目の測定順を決定し、重複する試験項目については、測定器が使用される試験項目の数や、使用される時間の長さを反映した有効時間を試験項目毎に算出し、有効時間の短い順に試験項目の測定順を決定するものであり、まず、他の制御装置1で測定器が使用されない試験項目を待ち時間なく実施し、その後、他の制御装置1と競合する可能性が高い測定器を用いる試験項目を早めに実施するよう測定順を決定しておくことで、他の制御装置1と同じ測定器を使用する場合でも全体として待ち時間を短縮でき、効率的に試験を行うことができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、複数の制御装置で並列に試験を実施する場合に、測定器の競合による待ち時間を短縮して試験の効率を向上させることができる試験システムに適している。
【符号の説明】
【0087】
1…制御装置、 2…汎用測定器群、 3…専用試験器群、 4…接続BOX、 5…LAN、 6…供試器、 11…制御部、 12…記憶部、 13…操作部、 14…表示部、 15…通信インタフェース、 16…自装置詳細試験項目テーブル、 17…他装置詳細試験項目テーブル、 18…測定器データテーブル