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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】キャニスタ
(51)【国際特許分類】
   F02M 25/08 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
F02M25/08 311E
F02M25/08 311A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022134061
(22)【出願日】2022-08-25
(65)【公開番号】P2024030864
(43)【公開日】2024-03-07
【審査請求日】2023-08-15
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岩本 光司
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-146793(JP,A)
【文献】特開2012-251431(JP,A)
【文献】特開2013-011249(JP,A)
【文献】特開2014-037790(JP,A)
【文献】特開2014-234797(JP,A)
【文献】特開2017-110585(JP,A)
【文献】特開2021-017869(JP,A)
【文献】特許第6591955(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを有する車両に搭載され、1又は複数の室を有するキャニスタであって、
前記車両の燃料タンクから、前記1又は複数の室に燃料蒸気を流入させる流入ポートと、
前記1又は複数の室の各々に配される、前記燃料蒸気を吸着する吸着材と、
前記車両の外部から、前記1又は複数の室に大気を流入させる大気ポートと、
前記大気ポートから流入した前記大気により、前記吸着材に吸着した前記燃料蒸気を前記エンジンに向けて流出させる流出ポートと、
複数の棒状部を有する調整部材と、
を備え、
前記1又は複数の室のうちの少なくとも1つを、前記流入ポート、前記大気ポート及び前記流出ポートのうちの少なくとも1つのポートである対象ポートが接続された対象室として、
前記調整部材は、前記対象室に前記吸着材と共に配されており、
前記対象室は、
前記対象室の壁面の一部を形成する筒状の第1筒部と、
前記対象ポートから見て、前記第1筒部よりも離れた位置に配置され、かつ、前記燃料蒸気及び前記大気の流れ方向と直交する断面の断面積が、前記第1筒部の前記断面の断面積よりも大きい部分を形成する筒状の第2筒部と、
前記第1筒部と前記第2筒部との間において、前記対象ポートから離れる方向に向かって前記断面の断面積を拡大する部位を形成する筒状の連結部と、
を有し、
前記調整部材は、前記第2筒部には挿入可能であるが、前記第1筒部には挿入不能であることにより、前記対象室内で前記調整部材の位置決めを可能とする位置決め部を有し、
前記連結部の内周面には、前記位置決め部と当接することで、前記調整部材が前記対象ポート側に移動することを抑制する少なくとも1つの突出部が形成されている、キャニスタ。
【請求項2】
請求項1に記載のキャニスタであって、
前記対象室には、前記対象ポート側の領域である緩衝領域が設けられ、
前記緩衝領域の前記断面における前記複数の棒状部の面積は、前記緩衝領域よりも前記対象ポートから離れた位置の前記断面における前記複数の棒状部の面積よりも小さい、キャニスタ。
【請求項3】
エンジンを有する車両に搭載され、1又は複数の室を有するキャニスタであって、
前記車両の燃料タンクから、前記1又は複数の室に燃料蒸気を流入させる流入ポートと、
前記1又は複数の室の各々に配される、前記燃料蒸気を吸着する吸着材と、
前記車両の外部から、前記1又は複数の室に大気を流入させる大気ポートと、
前記大気ポートから流入した前記大気により、前記吸着材に吸着した前記燃料蒸気を前記エンジンに向けて流出させる流出ポートと、
複数の棒状部を有する調整部材と、
を備え、
前記1又は複数の室のうちの少なくとも1つを、前記流入ポート、前記大気ポート及び前記流出ポートのうちの少なくとも1つのポートである対象ポートが接続された対象室として、
前記調整部材は、前記対象室に前記吸着材と共に配されており、
前記対象室は、
前記対象室の壁面の一部を形成する筒状の第1筒部と、
前記対象ポートから見て、前記第1筒部よりも離れた位置に配置され、かつ、前記燃料蒸気及び前記大気の流れ方向と直交する断面の断面積が、前記第1筒部の前記断面の断面積よりも大きい部分を形成する筒状の第2筒部と、
前記第1筒部と前記第2筒部との間において、前記対象ポートから離れる方向に向かって前記断面の断面積を拡大する部位を形成する筒状の連結部と、
を有し、
前記調整部材は、前記第2筒部には挿入可能であるが、前記第1筒部には挿入不能であることにより、前記対象室内で前記調整部材の位置決めを可能とする位置決め部を有し、
前記対象室には、前記対象ポート側の領域である緩衝領域が設けられ、
前記緩衝領域の前記断面における前記複数の棒状部の面積は、前記緩衝領域よりも前記対象ポートから離れた位置の前記断面における前記複数の棒状部の面積よりも小さい、キャニスタ。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のキャニスタであって、
前記緩衝領域とは、前記調整部材が配置されない領域である、キャニスタ。
【請求項5】
請求項1に記載のキャニスタであって、
前記位置決め部は、前記第2筒部の内周面の周方向に沿うように環状に構成される、キャニスタ。
【請求項6】
請求項1に記載のキャニスタであって、
前記位置決め部は、前記第1筒部側から前記第2筒部側に向かうに従い、前記断面の厚みが薄い、キャニスタ。
【請求項7】
エンジンを有する車両に搭載され、1又は複数の室を有するキャニスタであって、
前記車両の燃料タンクから、前記1又は複数の室に燃料蒸気を流入させる流入ポートと、
前記1又は複数の室の各々に配される、前記燃料蒸気を吸着する吸着材と、
前記車両の外部から、前記1又は複数の室に大気を流入させる大気ポートと、
前記大気ポートから流入した前記大気により、前記吸着材に吸着した前記燃料蒸気を前記エンジンに向けて流出させる流出ポートと、
複数の棒状部を有する調整部材と、
を備え、
前記1又は複数の室のうちの少なくとも1つを、前記流入ポート、前記大気ポート及び前記流出ポートのうちの少なくとも1つのポートである対象ポートが接続された対象室として、
前記調整部材は、前記対象室に前記吸着材と共に配されており、
前記対象室は、
前記対象室の壁面の一部を形成する筒状の第1筒部と、
前記対象ポートから見て、前記第1筒部よりも離れた位置に配置され、かつ、前記燃料蒸気及び前記大気の流れ方向と直交する断面の断面積が、前記第1筒部の前記断面の断面積よりも大きい部分を形成する筒状の第2筒部と、
前記第1筒部と前記第2筒部との間において、前記対象ポートから離れる方向に向かって前記断面の断面積を拡大する部位を形成する筒状の連結部と、
を有し、
前記調整部材は、前記第2筒部には挿入可能であるが、前記第1筒部には挿入不能であることにより、前記対象室内で前記調整部材の位置決めを可能とする位置決め部を有し、
前記位置決め部は、前記第1筒部側から前記第2筒部側に向かうに従い、前記断面の厚みが薄い、キャニスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、キャニスタに関する。
【背景技術】
【0002】
活性炭等の吸着材が配されたキャニスタが知られている。特許文献1には、吸着材と共に配置される調整部材を有するキャニスタが開示されている。調整部材は、細長い複数の棒状部と1つの結合部とを有している。1つの結合部は、複数の棒状部の一端同士を結合するように設けられている。各棒状部の付近では、流入した燃料蒸気、及び、パージエアが流れ易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6591955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、キャニスタにおける吸着材が充填される室の広さ方向(つまり、ガス流れ方向と直交する方向)において、ガス流速の一様度が高いほど、吸着材の吸着性能がより発揮される。なぜならば、流速の大きい箇所に配置された吸着材は、早期に多くの燃料蒸気を吸着することとなるため、早期に吸着可能量が小さくなる。そのため、他の位置に配置された吸着材の吸着可能量に余裕があっても、その流速の大きい箇所では燃料蒸気が吸着されずに破過してしまうためである。ここで、ガス流速の一様度は、ガス流れ方向と直交する方向の断面において調整部材の占める割合が大きいほど低くなる。特許文献1のキャニスタでは、複数の棒状部が配置されていることから、通気抵抗は十分に低下されている。しかしながら、燃料蒸気の破過をより低減し、燃料の吸着及び脱離を良好に行うことが望まれる。そのために、調整部材を所望の位置からずれないように配置することが望まれる。
【0005】
本開示の一局面は、所定の位置に調整部材を配置することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、エンジンを有する車両に搭載され、1又は複数の室を有するキャニスタであって、流入ポートと、吸着材と、大気ポートと、流出ポートと、調整部材と、を備える。流入ポートは、車両の燃料タンクから、1又は複数の室に燃料蒸気を流入させる。吸着材は、1又は複数の室の各々に配され、燃料蒸気を吸着する。大気ポートは、車両の外部から、1又は複数の室に大気を流入させる。流出ポートは、大気ポートから流入した大気により、吸着材に吸着した燃料蒸気をエンジンに向けて流出させる。調整部材は、複数の棒状部を有する。1又は複数の室のうちの少なくとも1つを、流入ポート、大気ポート及び流出ポートのうちの少なくとも1つのポートである対象ポートが接続された対象室として、調整部材は、対象室に吸着材と共に配されている。対象室は、第1筒部と、第2筒部と、連結部と、を有する。第1筒部は、対象室の壁面の一部を形成し、筒状である。第2筒部は、対象ポートから見て、第1筒部よりも離れた位置に配置され、かつ、燃料蒸気及び大気の流れ方向と直交する断面の断面積が、第1筒部の当該断面の断面積よりも大きい部分を形成し、筒状である。連結部は、第1筒部と第2筒部との間において、対象ポートから離れる方向に向かって当該断面の断面積を拡大する部位を形成し、筒状である。調整部材は、第2筒部には挿入可能であるが、第1筒部には挿入不能であることにより、対象室内で調整部材の位置決めを可能とする位置決め部を有する。このような構成によれば、位置決め部が第1筒部に挿入不能であるため、調整部材が対象ポート側にずれてしまうことを抑制できる。よって、調整部材が対象ポートに近づきすぎないように、所定の位置に調整部材を配置することができる。
【0007】
本開示の一態様では、連結部の内周面には、位置決め部と当接することで、調整部材が対象ポート側に移動することを抑制する少なくとも1つの突出部が形成されていてもよい。このような構成によれば、少なくとも1つの突出部が位置決め部と当接するので、調整部材をより安定的に固定することができる。
【0008】
本開示の一態様では、対象室には、対象ポート側の領域である緩衝領域が設けられてもよい。緩衝領域の断面における複数の棒状部の面積は、緩衝領域よりも対象ポートから離れた位置の断面における複数の棒状部の面積よりも小さくてもよい。このような構成によれば、対象ポートに通じる側の緩衝領域に配置される調整部材が少ないため、緩衝領域において大気及び燃料蒸気の流れの一様度を高く保つことができる。もし仮に、上述した一様度が低く、調整部材の近傍を相対的に多くの燃料蒸気が通過する場合では、調整部材近傍の吸着材が破過してこれ以上吸着できない状態に、相対的に早期に到達してしまう。しかし、上記構成であれば、吸着材に吸着されずに緩衝領域を通過してしまう燃料蒸気の量を良好に低減できる。ここで、緩衝領域がポートに通じる側にある場合、緩衝領域がポートに通じる側にない場合と比較して燃料蒸気の破過をより低減することが可能となる。よって、燃料蒸気の破過を抑制しつつ、キャニスタの通気抵抗を抑制することができる。
【0009】
本開示の一態様では、緩衝領域とは、調整部材が配置されない領域であってもよい。このような構成によれば、緩衝領域に調整部材が配置されないため、複数の棒状部による一様度の低下を好適に抑制できる。よって、より好適に燃料蒸気の破過を抑制できる。
【0010】
本開示の一態様では、位置決め部は、第2筒部の内周面の周方向に沿うように環状に構成されてもよい。このような構成によれば、例えば位置決め部における突出部側のどの部分においても、突出部と当接することができるため、組み付ける際に、当接箇所がずれて調整部材を固定できないといった状況を回避できる。
【0011】
本開示の一態様では、位置決め部は、第1筒部側から第2筒部側に向かうに従い、断面の厚みが薄くてもよい。このような構成によれば、位置決め部の周辺において、第1筒部から第2筒部に向かって、大気及び燃料蒸気がスムーズに流れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態のキャニスタを側方から見た断面図である。
図2図2A~2Cは、位置決め部及び突出部を説明するための図である。
図3】位置決め部近傍におけるパージエア及び燃料蒸気の流れを説明するための図である。
図4図4A~4Fは、変形例の棒状部の斜視図である。図4Gは、ペレットの斜視図である。
図5】実施形態のキャニスタの第2室の内部空間を概略的に示した図1のV-V断面図である。
図6】変形例の調整部材の斜視図である。
図7】変形例の位置決め部近傍におけるパージエア及び燃料蒸気の流れを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す実施形態のキャニスタ1は、エンジン(図示省略)を有する車両に搭載される。キャニスタ1は、合成樹脂製の容器10を有する。容器10は、内部空間を有する第1室20及び第2室30を備える。各室の内部空間には、燃料蒸気を吸着するための吸着材60,62が配される。吸着材60,62は、粉状又は粒状の複数の物体の集合体である。複数の物体とは、例えば、活性炭であっても良いし、活性炭から生成された物体であっても良い。また、複数の物体とは、例えば、燃料蒸気を吸着できるものであれば、活性炭以外の物質であっても良い。
【0014】
容器10の一端には、流入ポート11、流出ポート12、及び、大気ポート13が設けられている。流入ポート11及び流出ポート12は、第1室20の内部空間と容器10の外部とを繋ぐ。また、大気ポート13は、第2室30の内部空間と容器10の外部とを繋ぐ。
【0015】
流入ポート11は、車両の燃料タンク(図示省略)に接続され、キャニスタ1の各室に燃料蒸気を流入させる。燃料タンクには、車両のエンジンに供給される燃料が蓄積されている。該燃料から生じた燃料蒸気は、流入ポート11を介してキャニスタ1の内部に流入し、各室に配された吸着材60,62に吸着する。これにより、キャニスタ1の内部に燃料が蓄積される。
【0016】
また、流出ポート12は、車両のエンジンの吸気管(図示省略)に接続されている。流出ポート12は、大気ポート13から流入した大気により、吸着材60,62に吸着した燃料蒸気をエンジンに向けて流出させる。大気ポート13は、車両の外部に繋がっている。そして、エンジンの吸気負圧により、大気ポート13を介して大気(以後、パージエア)がキャニスタ1の各室に流入する。パージエアの流入により、吸着材60,62に吸着した燃料が脱離する。脱離した燃料は、パージエアと共に流出ポート12から吸気管に向けて流出する。これにより、活性炭に吸着していた燃料が除去され、活性炭が再生される。このようにして活性炭を再生することは、パージと呼ばれている。
【0017】
次に、キャニスタ1の構成について詳しく説明する。以後、キャニスタ1の容器10における流入ポート11、流出ポート12、及び、大気ポート13が設けられた側を、ポート側と記載する。また、容器10は、ポート側の反対側に開口64を有している。該開口64は、蓋部材14により閉鎖されている。以後、ポート側の反対側(換言すれば、蓋部材14が設けられた側)を、蓋側と記載する。
【0018】
第1室20は、一例として、略直方体形状、又は、円柱状である。第1室20は、ポート側の端部が、流入ポート11及び流出ポート12に繋がっている。また、第1室20の両端のうち、ポート側の端部にはフィルタ21が配されている。第1室20の両端のうち、蓋側の端部には、フィルタ22が配されている。これらのフィルタ21,22の間には、吸着材60が配されている。なお吸着材60はフィルタ21,22の間の空間全体に充填されているが、一部の吸着材60のみを図示する。他の室についても同様である。
【0019】
また、第1室20は、蓋側の端部が連通路15に繋がっている。連通路15は、蓋部材14に沿って延び、第1室20と第2室30とを繋ぐ。そして、第1室20の両端のうち、蓋側のフィルタ22と連通路15との間には、燃料蒸気及びパージエアを透過する透過性を有する多孔板23が配されている。また、多孔板23と蓋部材14との間には、コイルばね16が配されている。コイルばね16は、多孔板23をポート側に向けて押している。キャニスタ1の内部では、流体は、連通路15を介して、第1室20と第2室30とを往来できる。
【0020】
第2室30は、全体として、連通路15から大気ポート13に延びる細長い形状を有する。本実施形態では、第2室30は、一例として直方体状である。しかし、第2室30は、他の形状を有していても良い。一例として、第2室30は、円柱状であっても良い。
【0021】
第2室30は、第1筒部301と、第2筒部302と、連結部303と、を備えて形成されている。第1筒部301は、第2室30の壁面の一部を形成する筒状の部位である。より詳しくは、第1筒部301は、第2室30の壁面のうち、ポート側の端部に連結する壁面を形成する。第2筒部302も、第2室30の壁面の一部を形成する筒状の部位である。第2筒部302は、第1筒部301よりも、大気ポート13から見て離れた位置に配置され、かつ、パージエア及び燃料蒸気の流れ方向と直交する断面の断面積が大きい部分を形成する。連結部303も、第2室30の壁面の一部を形成する筒状の部位である。連結部303は、第1筒部301と第2筒部302との間において、大気ポート13から離れる方向に向かってパージエア及び燃料蒸気の流れ方向と直交する断面の断面積を拡大する部位を形成する。一例として、連結部303は、連結部303の内周面にて囲まれる内部空間の断面積が、第1筒部301から離れるに従って徐々に拡大する形状であるテーパ状に構成されている。第1筒部301と、連結部303と、第2筒部302とは、ポート側から見てこの順に配置されている。
【0022】
第2室30は、ポート側の端部が大気ポート13に繋がっている。また、第2室30の両端のうち、蓋側の端部にはフィルタ31が配されている。第2室30の両端のうち、ポート側の端部には、フィルタ41が配されている。そして、第2室30におけるフィルタ31,41の間には、吸着材62が配されている。
【0023】
また、第2室30の両端のうち、蓋側に配されたフィルタ31と連通路15との間には、燃料蒸気及びパージエアを透過する透過性を有する多孔板32が配されている。そして、多孔板32と蓋部材14との間には、コイルばね17が配されている。コイルばね17は、多孔板32をポート側に向けて押している。
【0024】
図2A及び図3に示されるように、連結部303の内周面には、複数の突出部91が設けられている。なお、図2A,2C,図3では、上側が蓋側であり、下方がポート側である。複数の突出部91は、後述する位置決め部90と当接することで、後述する調整部材50が大気ポート13側に移動することを抑制する。複数の突出部91は、連結部303の壁面の一部が、第2室30内側に突出した形状に構成されている。本実施形態では、4つの突出部91が設けられている。4つの突出部91は、直方体状の第2室30を構成する4つの側壁44の各々に、1つずつ設けられている。4つの側壁44は、互いに向かい合う2組の側壁44を備える。4つの突出部91は、それぞれ側壁44の周方向の中央付近にて形成される。側壁44とは、第2室30の内部空間(以後、第2空間42)の側方の領域に接する壁部である。4つの側壁44のうち、向かい合う2つの側壁44に設けられた2つの突出部91は、第2室30におけるパージエア及び燃料蒸気の流れ方向と直交する断面の中心を基準にして点対称となる位置に設けられている。4つの突出部91におけるポート側に向く面は、同一平面上に存在するように形成される。また、4つの突出部91における調整部材50側に向く面、すなわち内側に向く面は、第1筒部301の内面と面一になるように構成される。ただし、これらの内側に向く面は、第1筒部301の内面と面一でなくてもよい。
【0025】
[1-2.調整部材]
本開示のキャニスタ1において、当該キャニスタに設けられた1又は複数の室のうちの少なくとも1つが対象室となる。対象室とは、吸着材62と共に調整部材50が配される室である。また対象室とは、流入ポート11、流出ポート12及び大気ポート13のうちの少なくとも1つのポートである対象ポートが接続されている室である。本実施形態では、一例として、第2室30が対象室となっており、対象室には、大気ポート13が接続されている。無論、第2室30に替えて、第1室20が対象室であっても良い。第1室20及び第2室30の両方が対象室であっても良い。以下では、第2室30に配された調整部材50について説明する。
【0026】
図1に示すように、第2室30の内部空間である第2空間42には、吸着材62と共に調整部材50が配される。
図2Bに示すように、調整部材50は、長尺状の複数の棒状部51と複数の結合部52とを有する。
【0027】
複数の棒状部51は、直線状、又は、略直線状に延びる。略直線状とは、全体としておおよそ直線状である形態を意味する。例えば、複数の棒状部51のうちの一部又は全部が小さい曲率で曲がっていても良い。別の言い方をすると、複数の棒状部51が一見して直線状であるように見えるものが含まれる。また、複数の棒状部51は、同一方向、又は、略同一方向に延びる。より詳しくは、複数の棒状部51は、第2室30のポート側から蓋側に向かう方向、又は、該方向と略同一の方向に延びる。換言すれば、複数の棒状部51は、パージエア及び燃料蒸気が流下する方向、又は、該方向と略同一の方向に沿って配置される。すなわち、複数の棒状部51の長手方向が、パージエア及び燃料蒸気が流下する方向と同一であっても良いし、当該方向に対して小さい角度を有していても良い。
【0028】
また、各棒状部51は、一例として、図1、2Bのように円柱状となっている。しかし、各棒状部51は、他の形状であっても良い。具体的には、図3A,3Bのように、各棒状部51は先端ほど徐々に直径が小さくなる形状であってもよい。また例えば、各棒状部51は多角柱状であっても良い。より詳しくは、各棒状部51は、図4Aのように三角柱状であっても良いし、図4B,4Cのように、断面が正方形又は長方形である四角柱状であっても良い。また、各棒状部51は、例えば、図4Dのように断面が楕円であっても良い。また、各棒状部51は、例えば、図4Eのように帯状の形状を有していても良いし、図4Fのように先細りの形状を有していても良い。また、各棒状部51は、例えば、図6のように断面が十字であっても良い。
【0029】
一方、複数の結合部52は、複数の棒状部51に分散して設けられ、複数の棒状部51を一体の部材として結合させる。本実施形態では、複数の結合部52は、パージエア及び燃料蒸気が流下する方向において、異なる2つの位置に分散して配置される。なお、調整部材50は、長尺状の複数の棒状部51と1つの結合部52とを有していてもよい。
【0030】
また、各棒状部51の周囲の空間(換言すれば、側方の空間)は、連通した状態となる。すなわち、各棒状部51は、他の棒状部に対し一定以上の距離を隔てて配されている。このため、第2空間42には、複数の棒状部51により囲まれることに起因して、第2空間42における他の空間から隔離された状態となる空間が存在しない。
【0031】
また、図5に示すように、複数の棒状部51は、第2室30の長手方向に直交する断面に沿って、均等又は略均等に分布するように配される。また、複数の棒状部51は、第2空間42の側方の領域に接する壁部である側壁44から一定以上の距離を隔てた状態で配される。また、複数の棒状部51は、第2空間42の幅方向の中央、及び、中央周辺を通過する状態で配される。
【0032】
また、図2Bに示すように、調整部材50には、位置決め部90が設けられる。位置決め部90は、第2筒部302には挿入可能であるが、第1筒部301には挿入不能であることにより、第2室30内で調整部材50の位置決めを可能とする部位である。位置決め部90は、第2筒部302の内周面の周方向に沿うように環状に構成されている。つまり、位置決め部90の外周の長さは、第2筒部302の内周面の長さよりは小さく、第1筒部301の内周面の長さよりは大きい。第2室30が円柱状である場合、位置決め部90の直径は、第2筒部302の直径よりは小さく、第1筒部301の直径よりは大きい。位置決め部90は、棒状部51の蓋側の端部から延びる連結部材94を介して棒状部51と連結している。図2Cに示すように、位置決め部90は、複数の突出部91におけるポート側に向く面に当接することにより、調整部材50を位置決めする。このとき、位置決め部90と側壁44との間には若干のクリアランスが存在する。また、パージエア及び燃料蒸気の流れ方向に直交する方向における位置決め部90の厚みは、パージエア及び燃料蒸気の流れ方向に直交する方向における第1筒部301の側壁44から第2筒部302の側壁44までの距離よりも小さい。つまり、位置決め部90の厚みは、第1筒部301の内側に出っ張らないように設計されている。
【0033】
また、図1に示すように、第2室30は、第2空間42のポート側の領域に、緩衝領域93を備える。より詳しくは、緩衝領域93は、第1筒部301内に形成される。本実施形態では、緩衝領域93とは、複数の棒状部51が配置されない領域である。一例として、フィルタ41の下方10mmの位置よりも上の部分の全域を空けて、調整部材50が配される。パージエア及び燃料蒸気の流れ方向において、緩衝領域93は、調整部材50が配される領域よりも狭くなっている。なお、複数の棒状部51が配置されない領域は、例えば2mm程度であっても良いし、吸着材62の粒や粉の平均粒径程度であっても良い。また、緩衝領域93は、パージエア及び燃料蒸気の流れ方向において、対象室の長さの30%以下となるように対象室のポート側に設けられていても良い。
【0034】
なお、第2室30に配される吸着材62は、予め定められた形状を有する粒状の複数の物体の集合体であっても良い。具体的には、例えば、吸着材62は、複数のペレット61の集合体であっても良い。ペレット61とは、粒状の活性炭である。ペレット61は、粉状の活性炭をバインダと共に混練し、所定の形状に成形することで生成される。なお、図4Gに示すように、本実施形態では、ペレット61は、一例として円柱状となっている。そして、ペレット61の底面の径は、一例として2mm程度であっても良い。また、ペレット61の2つの底面の間隔(換言すれば、長さ)は、一例として3~5mm程度であっても良い。なお、ペレット61は、他の形状を有していても良い。また、第2室30には、例えば、粉状の活性炭等、ペレット61以外の吸着材が配されても良い。
【0035】
そして、隣り合う複数の棒状部51の間隔(一例として、図5のD0)は、ペレット61のサイズに基づき定められる。具体的には、該間隔は、例えば、ペレット61の底面の径、又は、ペレット61の長さのいずれかよりも長くても良い。
【0036】
また、各棒状部51の側部と第2空間42の側壁44との間の距離(一例として、図5のD1)の最小値もまた、ペレット61のサイズに基づき定められる。具体的には、該最小値は、例えば、ペレット61の底面の径、又は、ペレット61の長さのいずれかよりも長くても良い。換言すれば、複数の棒状部51のうちの最も外側に位置する1又は複数の棒状部の側面と、第2空間42の側壁44との間の距離は、例えば、ペレット61の底面の径、又は、ペレット61の長さのいずれかよりも長くても良い。
【0037】
ここで、第2空間42において、燃料又はパージエア等の流体の流下方向(換言すれば、第2空間42の蓋側の端面とポート側の端面とが対面する方向)に直交する断面を、交差断面とする。図5の42aは、第2空間42の交差断面を示している。また、交差断面における複数の棒状部51の断面の面積の総和を、総和断面面積とする。なお、図5の51aは、交差断面42a上の棒状部51の断面を示している。そして、複数の棒状部51の数、及び、各棒状部51の太さは、総和断面面積が、交差断面42aの全体面積の1%以上30%以下となるように構成されていても良い。これにより、第2室30にて、燃料の吸着及び脱離を良好に行いつつ、通気抵抗を抑制できる。
【0038】
なお、一例として、図5に示された交差断面42aにおいては、総和断面面積は、交差断面42aの全体面積の7.5%程度となっている。
また、本実施形態では、第2空間42は、幅が一定である細長い空間である。また、各棒状部51は、円柱状であり、その幅が一定である。つまり、第2空間42のいずれの位置に交差断面42aを設けたとしても、交差断面42aの大きさ、及び、各棒状部51の断面の大きさは、一定となる。
【0039】
しかし、第2空間42の幅、及び/又は、各棒状部51の幅は、一定でなくても良い。つまり、第2空間42のどの位置に交差断面42aを設けるかによって、交差断面42aの大きさ、及び/又は、各棒状部51の断面の大きさが、変動しても良い。そして、このような場合においても、複数の棒状部51の数、及び、各棒状部51の太さは、どの場所に交差断面を設けても、総和断面面積が、交差断面42aの全体面積の1%以上30%以下となるように構成されていても良い。本実施形態の緩衝領域93においては、総和断面面積は交差断面42aの全体面積の0%となるように構成されており、緩衝領域93にはペレット61が敷き詰められている。なお、緩衝領域93における総和断面面積は、緩衝領域93以外における総和断面面積よりも小さければ良い。
【0040】
[1-3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)位置決め部90は、第2筒部302には挿入可能であるが、第1筒部301には挿入不能である。このような構成によれば、調整部材50がポート側にずれてしまい、対象ポート付近において、複数の棒状部51により一様度が低下することを抑制できる。
【0041】
(1b)連結部303は、第1筒部301と第2筒部302との間において、大気ポート13から離れる方向に向かってパージエア及び燃料蒸気の流れ方向と直交する断面の断面積を拡大する部位を形成する。ここで、仮に、第2室30が連結部303を備えず、第2筒部302は、第1筒部301よりも、大気ポート13から見て離れた位置に配置され、かつ、パージエア及び燃料蒸気の流れ方向と直交する断面の断面積が大きい場合を考える。つまり、第1筒部301と第2筒部302との連結部分に直角の段差が形成されている構成を仮定する。このような構成では、段差の部分で、パージエア及び燃料蒸気の流れが悪くなってしまう。しかし、上述した構成によれば、連結部303には段差がないため、パージエア及び燃料蒸気がスムーズに流れる。
【0042】
(1c)複数の突出部91は、位置決め部90と当接することで、調整部材50が大気ポート13側に移動することを抑制する。このような構成によれば、複数の突出部91が位置決め部90と当接するので、調整部材50をより安定的に固定することができる。
【0043】
(1d)位置決め部90は、第2筒部302の内周面の周方向に沿うように環状に構成されている。このような構成によれば、第2室30が直方体状であることから、位置決め部90が回転してしまい、所定の位置から調整部材50がずれることを抑制できる。また、第2室30が円柱状の場合には、位置決め部90を周方向においてどの方向に挿入しても、突出部91に面で当接するため、組み付けが容易となる。
【0044】
(1e)キャニスタ1は、複数の棒状部51が配置されない緩衝領域93を備える。このような構成によれば、複数の棒状部51による一様度の低下を好適に抑制できる。よって、より好適に燃料蒸気の破過を抑制できる。
【0045】
(1f)隣り合う複数の棒状部51の間隔は、ペレット61のサイズに基づき定められる。これにより、各棒状部51の間に適度な間隔が設けられる。その結果、各棒状部51の間の空間全体に、複数のペレット61が行き渡る。このため、該空間を充填する複数のペレット61の中に、過度に大きい隙間が生じるのが抑制される。したがって、該空間が、複数のペレット61により適度に充填される。
【0046】
(1g)複数の棒状部51の各々における側部と、第2空間42の側壁44との間の距離の最小値は、ペレット61のサイズに基づき定められる。これにより、各棒状部51と該側壁44との間に、適度な間隔が設けられる。その結果、各棒状部51と該側壁44との間の空間全体に、複数のペレット61が行き渡る。このため、該空間を充填する複数のペレット61の中に、過度に大きい隙間が生じるのが抑制される。したがって、該空間が複数のペレット61により適度に充填される。
【0047】
(1h)複数の棒状部51の数、及び、各棒状部51の太さは、総和断面面積が、第2空間42の交差断面42aの全体面積の1%以上30%以下となるように構成されている。このため、第2室30において、燃料の吸着及び脱離を良好に行いつつ、通気抵抗を抑制できる。なお、緩衝領域93における総和断面面積が緩衝領域93以外における総和断面面積の3分の1以下であれば、顕著に上記(1e)の効果が向上する。本実施形態のように、緩衝領域93以外における総和断面面積が交差断面42aの全体面積の7.5%程度の場合では、緩衝領域93における総和断面面積は、交差断面42aの全体面積の2.5%以下のときに顕著に効果が向上する。
【0048】
(1i)緩衝領域93は、大気ポート13が接続された第2室30に設けられる。このような構成によれば、大気ポート13の近くに緩衝領域93が設けられるため、燃料蒸気が吸着材62に吸着されずに対象室を通過して大気ポート13から大気中に放出されてしまうのを抑制することができる。
【0049】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0050】
(2a)上記実施形態では、キャニスタ1は、2つの室を有する。しかし、1つの室、又は、3つ以上の室を有するキャニスタにおいても、少なくとも1つの室を、調整部材50が配される対象室として構成しても良い。
【0051】
(2b)上記実施形態では、複数の棒状部51は、燃料蒸気及びパージエアの流下方向に沿って延びた状態で、少なくとも1つの対象室に配される。また、複数の棒状部51は、直線状又は略直線状に延びる。しかしながら、複数の棒状部51は、例えば、1か所以上で湾曲又は屈曲した状態で、流下方向に延びていても良い。また、複数の棒状部51は、例えば、流下方向に螺旋状に延びていても良い。また、複数の棒状部51は、それぞれ、異なる形状を有していても良い。
【0052】
また、複数の棒状部51は、燃料蒸気及びパージエアの流下方向とは異なる方向に沿って延びていても良い。また、複数の棒状部51の各々が延びる方向は、互いに異なっていても良い。また、仮に、3つ以上の棒状部51が存在する場合、2つの棒状部51は同じ方向に延びていてもよく、他の棒状部51は異なる方向に延びていてもよい。
【0053】
(2c)上記実施形態では、大気ポート13側に緩衝領域93が設けられる構成を例示した。しかし、緩衝領域が設けられる位置はこれに限定されるものではない。例えば、緩衝領域93は、流入ポート11又は流出ポート12が配される室に設けられても良い。より詳しくは、図1の第1室20には、調整部材が備えられていても良い。調整部材は、流入ポート11又は流出ポート12から離れた位置に配されていても良い。例えば、フィルタ21の下方10mmの位置よりも上の部分の全域を空けて、調整部材50が配されていても良い。また、緩衝領域93は設けられていなくてもよい。つまり、複数の棒状部51は、第1筒部301の蓋側の端部からポート側の端部まで延びていてもよい。
【0054】
(2d)上記実施形態では、緩衝領域93に調整部材50が配置されない構成を例示した。しかし、緩衝領域の構成はこれに限定されるものではない。緩衝領域93は、パージエア及び燃料蒸気の流れ方向と直交する断面において、緩衝領域93の断面における棒状部51の面積が、緩衝領域93よりも大気ポート13から離れた位置の断面における棒状部51の面積よりも小さければ良い。例えば、緩衝領域93は、大気ポート13から離れた位置と比較して相対的に複数の棒状部51の数が少ない構成であっても良い。また、緩衝領域93は、大気ポート13から離れた位置と比較して相対的に複数の棒状部51の太さが細くなっている構成であっても良い。
【0055】
このような構成によれば、大気ポート13に通じる側の緩衝領域93に配置される複数の棒状部51が少ないため、緩衝領域93においてパージエア及び燃料蒸気の流れの一様度を高く保つことができる。もし仮に、上述した一様度が低く、調整部材50の近傍を相対的に多くの燃料蒸気が通過する場合では、調整部材50近傍の吸着材62が破過してこれ以上吸着できない状態に、相対的に早期に到達してしまう。しかし、上記構成であれば、吸着材62に吸着されずに緩衝領域93を通過してしまう燃料蒸気の量を良好に低減できる。ここで、緩衝領域93がポートに通じる側にある場合、緩衝領域93がポートに通じる側にない場合と比較して燃料蒸気の破過をより低減することが可能となる。よって、燃料蒸気の破過を抑制しつつ、キャニスタ1の通気抵抗を抑制することができる。
【0056】
(2e)上記実施形態では、連結部303に4つの突出部91が設けられる構成を例示した。しかし、突出部の個数はこれに限定されるものではない。例えば、連結部303には3つ以下の突出部が設けられていてもよいし、5つ以上の突出部が設けられていてもよい。
【0057】
また、連結部303には突出部が設けられなくてもよい。この場合、位置決め部90は、第1筒部301側から第2筒部302側に向かって、環状の径が大きくなるように構成されていてもよい。つまり、位置決め部90は、連結部303の内周面に沿うようにテーパ状に構成されていてもよい。このような構成によれば、連結部303の内周面に位置決め部90の外周面が当接することで、調整部材50の位置を固定することができる。
【0058】
(2f)上記実施形態では、位置決め部90が環状に形成されている構成を例示した。しかし、位置決め部の形状はこれに限定されるものではない。例えば、位置決め部は、全体として環状に形成されていればよく、一部分が途切れていてもよい。また、位置決め部は、環状に形成されていなくてもよく、例えば、位置決め部は、突出部91に引っかかるように、棒状部51の端部がフック状に延び出す構成であってもよい。
【0059】
また、図6及び図7に示すように、位置決め部190は、第1筒部301側から第2筒部302側(例えば図7に示す例では下側から上側)に向かうに従い、パージエア及び燃料蒸気の流れ方向と直交する断面の厚みが薄くなるように形成されていてもよい。つまり、パージエア及び燃料蒸気の流れ方向における位置決め部190の断面が、略三角形状になるように形成されていてもよい。さらに換言すれば、位置決め部190は、環状であり、位置決め部190の内周面にて囲まれる内部空間の断面積は、第1筒部301から離れるに従って拡大するように構成される。このような構成によれば、位置決め部190の周辺において、第1筒部301から第2筒部302に向かって、パージエア及び燃料蒸気がスムーズに流れる。
【0060】
また、位置決め部は環状であっても、第2筒部302の内周面に沿っていなくてもよい。例えば、第2筒部302が直方体状であっても、位置決め部は三角形状であってもよい。このような構成においても、位置決め部は回転しようとすると側壁44に接触するため、位置決め部は大きくは回転せず、所定の位置から調整部材50がずれることを抑制できる。
【0061】
(2g)上記実施形態における1つの構成要素が有する1又は複数の機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する1又は複数の機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【0062】
[本明細書が開示する技術思想]
[項目1]
エンジンを有する車両に搭載され、1又は複数の室を有するキャニスタであって、
前記車両の燃料タンクから、前記1又は複数の室に燃料蒸気を流入させる流入ポートと、
前記1又は複数の室の各々に配される、前記燃料蒸気を吸着する吸着材と、
前記車両の外部から、前記1又は複数の室に大気を流入させる大気ポートと、
前記大気ポートから流入した前記大気により、前記吸着材に吸着した前記燃料蒸気を前記エンジンに向けて流出させる流出ポートと、
複数の棒状部を有する調整部材と、
を備え、
前記1又は複数の室のうちの少なくとも1つを、前記流入ポート、前記大気ポート及び前記流出ポートのうちの少なくとも1つのポートである対象ポートが接続された対象室として、
前記調整部材は、前記対象室に前記吸着材と共に配されており、
前記対象室は、
前記対象室の壁面の一部を形成する筒状の第1筒部と、
前記対象ポートから見て、前記第1筒部よりも離れた位置に配置され、かつ、前記燃料蒸気及び前記大気の流れ方向と直交する断面の断面積が、前記第1筒部の前記断面の断面積よりも大きい部分を形成する筒状の第2筒部と、
前記第1筒部と前記第2筒部との間において、前記対象ポートから離れる方向に向かって前記断面の断面積を拡大する部位を形成する筒状の連結部と、
を有し、
前記調整部材は、前記第2筒部には挿入可能であるが、前記第1筒部には挿入不能であることにより、前記対象室内で前記調整部材の位置決めを可能とする位置決め部を有する、キャニスタ。
【0063】
[項目2]
項目1に記載のキャニスタであって、
前記連結部の内周面には、前記位置決め部と当接することで、前記調整部材が前記対象ポート側に移動することを抑制する少なくとも1つの突出部が形成されている、キャニスタ。
【0064】
[項目3]
項目1又は項目2に記載のキャニスタであって、
前記対象室には、前記対象ポート側の領域である緩衝領域が設けられ、
前記緩衝領域の前記断面における前記複数の棒状部の面積は、前記緩衝領域よりも前記対象ポートから離れた位置の前記断面における前記複数の棒状部の面積よりも小さい、キャニスタ。
【0065】
[項目4]
項目3に記載のキャニスタであって、
前記緩衝領域とは、前記調整部材が配置されない領域である、キャニスタ。
【0066】
[項目5]
項目1から項目4までのいずれか1項に記載のキャニスタであって、
前記位置決め部は、前記第2筒部の内周面の周方向に沿うように環状に構成される、キャニスタ。
【0067】
[項目6]
項目1から項目5までのいずれか1項に記載のキャニスタであって、
前記位置決め部は、前記第1筒部側から前記第2筒部側に向かうに従い、前記断面の厚みが薄い、キャニスタ。
【符号の説明】
【0068】
1…キャニスタ、10…容器、11…流入ポート、12…流出ポート、13…大気ポート、14…蓋部材、15…連通路、16,17…コイルばね、20…第1室、21,22,31,41…フィルタ、23,32…多孔板、30…第2室、42…第2空間、42a…交差断面、44…側壁、50…調整部材、51…棒状部、52…結合部、60,62…吸着材、61…ペレット、64…開口、90,190…位置決め部、91…突出部、93…緩衝領域、94…連結部材、301…第1筒部、302…第2筒部、303…連結部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7