(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】風車の解体方法及び風車の組立方法
(51)【国際特許分類】
F03D 13/10 20160101AFI20241112BHJP
【FI】
F03D13/10
(21)【出願番号】P 2022169172
(22)【出願日】2022-10-21
【審査請求日】2024-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000204000
【氏名又は名称】太平電業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】水上 魁
(72)【発明者】
【氏名】落合 孝之
(72)【発明者】
【氏名】長井 延光
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-143599(JP,A)
【文献】特開2022-088204(JP,A)
【文献】特開2005-042313(JP,A)
【文献】特開2014-020016(JP,A)
【文献】特開平07-197696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/00-80/80
E04G 21/14-21/22
E04H 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風車のタワーを囲う位置に構築される第1架台と、
前記タワーを囲う位置であって前記第1架台の外側に構築される第2架台と、
前記第2架台に設けられ、前記第1架台を昇降させる架台用昇降手段と、
前記第1架台に設けられ、前記タワーを構成する複数のタワー部材のうち最下段にある前記タワー部材より上にあるその他の前記タワー部材を吊った状態で昇降させる第1昇降手段と、
前記第1架台に設けられ、前記最下段にあるタワー部材を吊った状態で昇降させる第2昇降手段と、
を備え、前記第1架台が、その頂部に、最上段の前記タワー部材の上部に設置されたナセルを載置可能な載置部を有する風車施工用架台を用いた前記風車の解体方法であって、
前記最下段にあるタワー部材と、最下段から一段上にある前記タワー部材を分割する分割工程と、
前記第1架台が前記第2架台に対してせり上がった状態で、前記第1昇降手段により前記最下段にあるタワー部材より上にある前記風車の部材の荷重を支持する支持工程と、
前記支持工程により荷重を支持している状態で、前記第2昇降手段により前記最下段にあるタワー部材を支持しつつ、前記風車施工用架台から搬出する搬出工程と、
前記搬出工程の後に、前記第1昇降手段により前記その他のタワー部材を下降させる風車部材下降工程と、
前記風車部材下降工程により前記ナセルが前記載置部に載置された場合に、前記最上段のタワー部材と前記ナセルを切り離す切り離し工程と、
前記ナセルが前記載置部に載置された状態で、前記架台用昇降手段がせり上がった状態の前記第1架台を下降させる架台下降工程と、
前記架台下降工程の後に、前記ナセルが前記載置部に載置された状態で、前記第1架台の上部を残して下部を解体する第1架台解体工程と、
前記第1架台解体工程の後に、前記ナセルが前記載置部に載置された状態で、前記架台用昇降手段が前記第1架台の上部を更に下降させる架台上部下降工程と、
を含むことを特徴とする風車の解体方法。
【請求項2】
請求項1に記載の風車の解体方法であって、
前記架台上部下降工程の前に、前記第1架台の上部を下降させる際に干渉する、前記第2架台の部材を撤去する撤去工程を更に含むことを特徴とする風車の解体方法。
【請求項3】
風車のタワーを囲う位置に構築される第1架台と、
前記タワーを囲う位置であって前記第1架台の外側に構築される第2架台と、
前記第2架台に設けられ、前記第1架台を昇降させる架台用昇降手段と、
前記第1架台に設けられ、前記タワーを構成する複数のタワー部材のうち一部の前記タワー部材を吊った状態で昇降させる第1昇降手段と、
前記第1架台に設けられ、前記一部のタワー部材より下に配置されるその他の前記タワー部材を吊った状態で昇降させる第2昇降手段と、
を備え、前記第1架台が、その頂部に、最上段の前記タワー部材の上部に設置されたナセルを載置可能な載置部を有する風車施工用架台を用いた前記風車の組立方法であって、
前記載置部を有する、前記第1架台の上部を構築する架台上部構築工程と、
前記ナセルが前記載置部に載置された状態で、前記架台用昇降手段が前記第1架台の上部を上昇させる架台上部上昇工程と、
前記架台上部上昇工程の後に、前記第1架台の上部に対して前記第1架台の下部を構築する架台下部構築工程と、
前記架台下部構築工程の後に、前記ナセルが前記載置部に載置された状態で、前記架台用昇降手段が、前記第1架台を上昇させる架台上昇工程と、
前記架台上昇工程の後に、前記第1昇降手段により最上段の前記タワー部材を前記ナセルと接合可能な位置まで吊り上げ、前記最上段のタワー部材と前記ナセルを接合するナセル接合工程と、
前記第1架台が前記第2架台に対してせり上がった状態で、前記第1昇降手段により前記一部のタワー部材を吊り上げる吊り上げ工程と、
前記第1昇降手段により吊り上げられた前記一部のタワー部材の下方に、前記第2昇降手段により前記その他のタワー部材を吊った状態で配置する配置工程と、
前記第1昇降手段により前記一部のタワー部材を下降させ、前記配置工程で配置された前記その他のタワー部材の上に載置する載置工程と、
前記載置工程の後に、前記一部のタワー部材と前記その他のタワー部材を接合するタワー部材接合工程と、を含むことを特徴とする風車の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電等に用いられる風車の解体又は組み立てに係る施工方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、風力発電に用いられる風車の施工方法が開示されている。特許文献1の施工方法では、特許文献1の
図1等に示すように、風車のタワーの横に自己昇降式作業台を構築し、その上に自走式クレーンを配置し、自走式クレーンを用いて風車の施工を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、風車が設置される山間部において風車の解体を行うための施工スペースは限られており、自己昇降式作業台を設置することが困難な場合がある。また、自走式クレーンに代えて超大型の非自走式クレーンを用いるとしても、クレーンの組立、解体、設置スペース、風車タワー下架後の解体スペースを考慮すると広大な作業スペースが必要となる。更に、大型クレーンや大型のトレーラーが通行する為の搬入路の整備や地盤整備のために多くの木々を切り開くこととなり、多大な時間と費用が掛かることもある。
【0005】
本発明は、こうした事情を鑑み、狭小な土地において巨大な風車の施工を可能とする風車施工用架台を用いた風車の施工方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記目的を達成するためになされたものであって、下記を特徴とするものである。
【0007】
請求項1記載の発明は、風車のタワーを囲う位置に構築される第1架台と、前記タワーを囲う位置であって前記第1架台の外側に構築される第2架台と、前記第2架台に設けられ、前記第1架台を昇降させる架台用昇降手段と、前記第1架台に設けられ、前記タワーを構成する複数のタワー部材のうち最下段にある前記タワー部材より上にあるその他の前記タワー部材を吊った状態で昇降させる第1昇降手段と、前記第1架台に設けられ、前記最下段にあるタワー部材を吊った状態で昇降させる第2昇降手段と、を備え、前記第1架台が、その頂部に、最上段の前記タワー部材の上部に設置されたナセルを載置可能な載置部を有する風車施工用架台を用いた前記風車の解体方法であって、前記最下段にあるタワー部材と、最下段から一段上にある前記タワー部材を分割する分割工程と、前記第1架台が前記第2架台に対してせり上がった状態で、前記第1昇降手段により前記最下段にあるタワー部材より上にある前記風車の部材の荷重を支持する支持工程と、前記支持工程により荷重を支持している状態で、前記第2昇降手段により前記最下段にあるタワー部材を支持しつつ、前記風車施工用架台から搬出する搬出工程と、前記搬出工程の後に、前記第1昇降手段により前記その他のタワー部材を下降させる風車部材下降工程と、前記風車部材下降工程により前記ナセルが前記載置部に載置された場合に、前記最上段のタワー部材と前記ナセルを切り離す切り離し工程と、前記ナセルが前記載置部に載置された状態で、前記架台用昇降手段がせり上がった状態の前記第1架台を下降させる架台下降工程と、前記架台下降工程の後に、前記ナセルが前記載置部に載置された状態で、前記第1架台の上部を残して下部を解体する第1架台解体工程と、前記第1架台解体工程の後に、前記ナセルが前記載置部に載置された状態で、前記架台用昇降手段が前記第1架台の上部を更に下降させる架台上部下降工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の風車の解体方法であって、前記架台上部下降工程の前に、前記第1架台の上部を下降させる際に干渉する、前記第2架台の部材を撤去する撤去工程を更に含むことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、風車のタワーを囲う位置に構築される第1架台と、前記タワーを囲う位置であって前記第1架台の外側に構築される第2架台と、前記第2架台に設けられ、前記第1架台を昇降させる架台用昇降手段と、前記第1架台に設けられ、前記タワーを構成する複数のタワー部材のうち一部の前記タワー部材を吊った状態で昇降させる第1昇降手段と、前記第1架台に設けられ、前記一部のタワー部材より下に配置されるその他の前記タワー部材を吊った状態で昇降させる第2昇降手段と、を備え、前記第1架台が、その頂部に、最上段の前記タワー部材の上部に設置されたナセルを載置可能な載置部を有する風車施工用架台を用いた前記風車の組立方法であって、前記載置部を有する、前記第1架台の上部を構築する架台上部構築工程と、前記ナセルが前記載置部に載置された状態で、前記架台用昇降手段が前記第1架台の上部を上昇させる架台上部上昇工程と、前記架台上部上昇工程の後に、前記第1架台の上部に対して前記第1架台の下部を構築する架台下部構築工程と、前記架台下部構築工程の後に、前記ナセルが前記載置部に載置された状態で、前記架台用昇降手段が、前記第1架台を上昇させる架台上昇工程と、前記架台上昇工程の後に、前記第1昇降手段により最上段の前記タワー部材を前記ナセルと接合可能な位置まで吊り上げ、前記最上段のタワー部材と前記ナセルを接合するナセル接合工程と、前記第1架台が前記第2架台に対してせり上がった状態で、前記第1昇降手段により前記一部のタワー部材を吊り上げる吊り上げ工程と、前記第1昇降手段により吊り上げられた前記一部のタワー部材の下方に、前記第2昇降手段により前記その他のタワー部材を吊った状態で配置する配置工程と、前記第1昇降手段により前記一部のタワー部材を下降させ、前記配置工程で配置された前記その他のタワー部材の上に載置する載置工程と、前記載置工程の後に、前記一部のタワー部材と前記その他のタワー部材を接合するタワー部材接合工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、風車のタワーを囲う位置に構築される第1架台と第2架台が二重に構築され、第1架台が第2架台からせり上がり、第1架台に設けられた第1昇降手段により風車の最下段にあるタワー部材より上方の風車の部材を支持している間に、第1架台に設けられた第2昇降手段により最下段にあるタワー部材を搬出することから、クレーン等を設置するための広大な用地が不要であり、狭い土地においても巨大な風車の解体を行うことができる。また、架台用昇降手段により第1架台の上部とともにナセルを地上付近まで下降させることから、ナセルの解体を高所で行う場合よりも安全に行うことができる。
【0011】
請求項3の発明によれば、風車のタワーを囲う位置に構築される第1架台と第2架台が二重に構築され、第1架台が第2架台からせり上がり、第1架台に設けられた第1昇降手段により吊り上げられた一部のタワー部材の下方に、第1架台に設けられた第2昇降手段によりその他のタワー部材を吊った状態で配置し、その他のタワー部材の上に一部のタワー部材を載置して接合することから、クレーン等を設置するための広大な用地が不要となり、狭い土地においても巨大な風車の組立を行うことができる。また、地上付近で組み立てたナセルを、架台用昇降手段により第1架台の上部とともに上昇させることから、ナセルの組み立てを高所で行う場合よりも安全に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(A)は風車100のブレード130Cをチェーンブロック11により吊っている際の正面図であり、(B)は同左側面図である。
【
図2】(A)は吊治具1の平面図であり、(B)は同正面図であり、(C)は同左側面図であり、(D)は吊治具1をブレード130Cのフランジ131の下部に取り付けた場合の平面図である。
【
図3】吊治具1を用いてチェーンブロック11によりブレード130Cを吊っている状態を示す正面図である。
【
図4】(A)は風車100のブレード130Cをチルクライマー21により吊り下ろしている際の正面図であり、(B)は同左側面図である。
【
図5】吊治具1を用いてチルクライマー21によりブレード130Cを吊っている状態を示す正面図である。
【
図6】(A)は風車100のブレード130Cをクレーンにより吊っている際の正面図であり、(B)は同左側面図である。
【
図7】タワー110と風車施工用架台300の正面図である。
【
図8】タワー110と風車施工用架台300の側面図である。
【
図9】タワー110と風車施工用架台300の平面図である。
【
図10】(A)はジャッキベース306の平面図であり、(B)はジャッキベース306の側面図である。
【
図11】(A)~(D)はタワー部材111に鋼材を貫通させた際の平面図及び側面図であり、(E)はタワー部材111の接合部を示す側面図である。
【
図12】(A)はタワー部材111Cを搬出する際の風車施工用架台300の側面図であり、(B)はタワー部材111Bを搬出する際の風車施工用架台300の側面図であり、(C)はタワー部材111Aを搬出する際の風車施工用架台300の側面図である。
【
図13】(A)は内側架台301を下降させた際の風車施工用架台300の側面図であり、(B)はナセル120を解体している際の風車施工用架台300の側面図である。
【
図14】風車100の解体方法の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図15】風車100の組立方法の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図16】変形例における、内側架台301を下降させた際の風車施工用架台300の斜視図である。
【
図17】(A)は変形例における、内側架台301を下降させた際の風車施工用架台300の正面図であり、(B)は変形例における、内側架台301を下降させた際の風車施工用架台300の側面図である。
【
図18】変形例における、内側架台301の上部301Aを下降させる前の風車施工用架台300の斜視図である。
【
図19】(A)は変形例における、内側架台301の上部301Aを下降させる前の風車施工用架台300の正面図であり、(B)は変形例における、内側架台301の上部301Aを下降させる前の風車施工用架台300の側面図である。
【
図20】変形例における、内側架台301の上部301Aを下降させた際の風車施工用架台300の斜視図である。
【
図21】(A)は変形例における、内側架台301の上部301Aを下降させた際の風車施工用架台300の正面図であり、(B)は変形例における、内側架台301の上部301Aを下降させた際の風車施工用架台300の側面図である。
【
図22】(A)は変形例における、内側架台301の上部301Aを解体した際の正面図であり、(B)は変形例における、内側架台301の上部301Aを解体した際の側面図である。
【
図23】(A)は変形例における、ナセル搬出用車両405を搬入する際の正面図であり、(B)は変形例における、ナセル搬出用車両405を搬入する際の側面図である。
【
図24】(A)は変形例における、ナセル搬出用車両405にナセル120を積載する際の正面図であり、(B)は変形例における、ナセル搬出用車両を積載する際の側面図である。
【
図25】(A)は変形例における、ナセル搬出用車両405でナセル120を搬出する際の正面図であり、(B)は変形例における、ナセル搬出用車両405でナセル120を搬出する際の側面図である。
【
図26】変形例における、風車100の解体方法の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図27】変形例における、風車100の組立方法の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図28】(A)は変形例における、外側架台302の別の補強方法を示す風車施工用架台300の正面図であり、(B)は変形例における、外側架台302の別の補強方法を示す風車施工用架台300の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態(具体的には、風車100の解体方法及び風車100の組立方法)について説明する。
【0014】
[1.風車100の構成]
図1(A)、(B)に示すように、風車100は、タワー110と、ナセル120と、3本のブレード130A、130B、130C(以下、3本のブレードを総称してブレード130という場合がある)と、ハブ140とを含む。なお、タワー110は、例えば100m前後の塔状の構造物である。
【0015】
タワー110は、高さ方向に分割された3つのタワー部材111A、111B、111Cにより構成される(以下、3つのタワー部材を総称してタワー部材111という場合がある)。なお、タワー部材111Aが最上段のタワー部材であり、タワー部材111Bが上から2段目(中段)のタワー部材であり、タワー部材111Cが上から3段目(最下段)のタワー部材である。
【0016】
ナセル120は、軸受けや発電装置等を格納する。発電装置は、ブレード130の回転数を引き上げる増速機や、発電機(誘導発電機、同期発電機等)や、風車100の運転状況等を監視する監視装置を含む。ナセル120は、最上段のタワー部材111Aの上部に取り付けられる。また、ナセル120の正面側にはハブ140が設けられており、ハブ140には3本のブレード130が取り付けられている。
【0017】
次に、
図2を用いて、ブレード130Cをハブ140から取り外して吊り下ろす際に用いられる吊治具1について説明する。
【0018】
[2.吊治具1の構成]
図2(A)~(C)に示すように、吊治具1は、リング状の吊治具本体2と、吊板3と、吊ピース4とを含む。吊治具本体2は2つの半リング状の本体部材2A、2Bからなる。吊治具本体2は、ブレード130Cのフランジ131に下方から当接する。
【0019】
本体部材2A、2Bにはそれぞれ1枚ずつ吊板3が設けられており、吊板3には挿通孔3Aが形成されている。挿通孔3Aには、後述するチェーンブロック11の吊ワイヤー13が取り付けられる。
【0020】
また、本体部材2A、2Bにはそれぞれ2枚ずつ吊ピース4が設けられており、吊ピース4には挿通孔4Aが形成されている。挿通孔4Aには、後述するチルクライマー21の吊ワイヤー23が取り付けられる。
【0021】
図2(D)に示すように、吊治具1はリング状の吊治具本体2の内側にブレード130を抱え込んだ際に、吊治具本体2の外周がブレード130のフランジ131の外周よりも小さくなっている。
【0022】
[3.風車100の解体方法]
図1~
図14を用いて、本実施形態に係る風車100の解体方法について説明する。
【0023】
[3.1.解体工程1]
図1に示すように、まず、ハブ140及びブレード130を回転させて、吊り下ろし対象であるブレード130Cの先端を下方(鉛直方向下向き)に向ける。
【0024】
[3.2.解体工程2]
次に、
図3に示すように、吊り下ろし対象であるブレード130C以外のブレード130A、130Bにチェーンブロック11を取り付け、チェーンブロック11と吊り下ろし対象であるブレード130Cを接続する。
【0025】
解体工程2では、吊り下ろし対象であるブレード130Cのフランジ131を下方から支持する吊治具1に対してチェーンブロック11を取り付けることにより、チェーンブロック11と吊り下ろし対象であるブレード130Cを間接的に接続する。
【0026】
具体的には、2つのチェーンブロック11をそれぞれブレード130Aとブレード130Bに取り付けるために、チェーンブロック11に設けられたチェーンブロック取付ワイヤー12をそれぞれブレード130Aとブレード130Bに括り付ける。また、ブレード130Cにおける、ブレード130Cをハブ140に取り付けるためのフランジ131の下面(ブレード130Cの先端を下方に向けた状態の下側の面)に接するように治具受け具14を取り付ける。次いで予め分割しておいた本体部材2A、2Bをブレード130Cの根元を挟み込み、吊治具本体2の上面が治具受け具14の下面と接するようにボルト接合により取り付ける。
【0027】
そして、吊治具1の吊板3に形成された挿通孔3Aにチェーンブロック11の吊ワイヤー13を通して固定する。次いで、チェーンブロック11で吊治具1を吊り上げることにより治具受け具14と吊治具1が当接した状態となる。これにより、チェーンブロック11とブレード130Cが間接的に接続され、チェーンブロック11でブレード130Cの荷重を支える。
【0028】
なお、解体工程2から解体工程5の作業等は、タワー110に沿って設けられたゴンドラ用ワイヤー202により昇降するゴンドラ201に作業員が搭乗して行う。
【0029】
[3.3.解体工程3]
次に、チェーンブロック11と吊り下ろし対象であるブレード130Cが接続された状態において、ハブ140から吊り下ろし対象であるブレード130Cを取り外す。このとき、チェーンブロック11がブレード130Cの荷重を受けることでブレード130Cの落下を防ぐ。
【0030】
[3.4.解体工程4]
次に、チェーンブロック11と吊り下ろし対象であるブレード130Cが接続された状態において、ハブ140又はナセル120の内部にチルクライマー21を設置し、チルクライマー21と吊り下ろし対象であるブレード130Cを接続する。
【0031】
解体工程4では、吊治具1に対してチルクライマー21を取り付けることにより、チルクライマー21と吊り下ろし対象であるブレード130Cを間接的に接続する。
【0032】
具体的には、
図5に示すように、4つのチルクライマー21(
図5は水平方向からの図のため2つのチルクライマー21を示している)をそれぞれハブ140又はナセル120の内部の固定部(図示しない)に取り付けるために、チルクライマー21に設けられたチルクライマー取付ワイヤー22をそれぞれ当該固定部に固定する。
【0033】
そして、吊治具1の吊ピース4に形成された挿通孔4Aにチルクライマー21の吊ワイヤー23を通して固定する。これにより、チルクライマー21とブレード130Cが間接的に接続され、チェーンブロック11とチルクライマー21でブレード130Cの荷重を支える。
【0034】
[3.5.解体工程5]
次に、チェーンブロック11と吊り下ろし対象であるブレード130Cの接続を解除する。具体的には、
図5に示すように、吊治具1の吊板3の挿通孔3Aに挿通されているチェーンブロック11の吊ワイヤー13を取り外す。これにより、チルクライマー21のみでブレード130Cの荷重を支える。
【0035】
[3.6.解体工程6]
次に、
図4に示すように、チルクライマー21により吊り下ろし対象であるブレード130Cを地上に吊り下ろす。
【0036】
なお、解体工程6では、チルクライマー21によりブレード130Cを地上まで吊り下ろすのではなく、
図6(A)、
図6(B)に示すように、下降の途中でチルクライマー21からクレーン30に吊り替えを行い、クレーン30で地上まで吊り下ろすこととしてもよい。このとき、クレーン30のブーム30Aの先端のフックに取り付けられた吊ワイヤー31は、空いている吊板3の挿通孔3Aに通して固定する。そして、クレーン30のブーム30Aで荷重を受けられるようになったら、チルクライマー21の吊ワイヤー23を吊ピース4の挿通孔4Aから取り外して荷重をチルクライマー21からクレーン30へと切り替える。
【0037】
解体工程1~解体工程6を各ブレード130について行うことにより、全てのブレード130を取り外す。但し、解体工程2において、取り外したブレード130にはチェーンブロック11を取り付けることができないので、取り外したブレード130が取り付けてあったフランジ穴にアイボルト等の治具を取り付けて、チェーンブロック11を取り付けることとする。
【0038】
[3.7.解体工程7]
次に、
図7-
図9に示すような風車施工用架台300を、例えば、クレーン30のメインブームのみで構築する。風車施工用架台300は、風車100のタワー110を囲う位置に構築される内側架台301と、タワー110を囲う位置であって内側架台301の外側に構築される外側架台302と、を含む。また、外側架台302には内側架台用ジャッキ303が4台設けられ、内側架台用ジャッキ303が内側架台301を昇降させる。これにより、外側架台302に対して内側架台301がせり上がり、風車施工用架台300を高くすることができる。
【0039】
外側架台302は、架台用マット304の上に配された架台用ガーダー305上に構築される。架台用マット304を設けることにより、風車施工用架台300の自重及び風車100の部材の荷重を広く地面に分散し、地耐力が弱い場所でも施工が可能となる。また、架台用ガーダー305を設けることにより、風車施工用架台300の転倒リスクを低減させる。
【0040】
内側架台301には、8台のジャッキを備えるジャッキベース306が固定されている。
図10(A)、(B)に示すように、ジャッキベース306は、下段フレーム307、中段支持材308、上段支持材309を備える。下段フレーム307は、内側架台301と同サイズの平面視正方形をしており、4つの角部307Aが内側架台301の柱に固定される。下段フレーム307上には、下段フレーム307の2辺に架かるように4つの中段支持材308が固定されている。また、中段支持材308上には、4つの上段支持材309が固定されている。4つの中段支持材308にはそれぞれ下ジャッキ311が固定されている。同様に4つの上段支持材309にはそれぞれ上ジャッキ310が固定されている。これによりジャッキベース306には、平面視した場合に重ならない位置に4台の上ジャッキ310と4台の下ジャッキ311が固定される。
【0041】
なお、風車施工用架台300は、内側架台301を一番下まで下降させた際に、クレーン30のメインブームのみ(ジブ不要)で組立・解体が可能な高さとする。これによりジブの組立・解体に掛かる時間及びコストを削減でき、クレーンのエリア移動時間も短縮できる。また、風車施工用架台300は、軽量の仮設鋼材を採用することにより、搬出入に大型トレーラーを用いたり、組立・解体に大型クレーンを用いたりする必要が無い。
【0042】
[3.8.解体工程8]
次に、解体工程7で構築した風車施工用架台300の内側架台301を4台の内側架台用ジャッキ303により水平に上昇させ(せり上げ)、その状態で内側架台301と外側架台302を鋼材(図示しない)で接続する。これにより、風車施工用架台300の安定性を向上させ、強風等により転倒することを防止する。なお、内側架台301に作業用足場を設けておくことにより、高所で安全に作業を行うことができる。
【0043】
[3.9.解体工程9]
次に、タワー部材111Bとタワー部材111Cに吊点を設ける。具体的には
図11(A)~(E)に示すように、タワー部材111Bの下部とタワー部材111Cの上部(すなわち、タワー部材111Bとタワー部材111Cの接合部近傍)に、それぞれ吊具313が設けられた二本の鋼材312を上下で直角に交差するように貫通させる。これにより、タワー部材111Bとタワー部材111Cのそれぞれに4つの吊点が設けられる。
【0044】
[3.10.解体工程10]
次に、タワー部材111C(「最下段にあるタワー部材」の一例)とタワー部材111B(「最下段から一段上にあるタワー部材」の一例)を分割する(「分割工程」の一例)。なお、解体工程10は、タワー部材111Bと4台の上ジャッキ310の接続(後続の解体工程11を参照)、及び、タワー部材111Cと4台の下ジャッキ311の接続(後続の解体工程12を参照)の少なくとも一方が完了してから行うこととしてもよい。これにより、タワー部材111B、タワー部材111Cの少なくとも一方がジャッキにより支持された状態で分割できるため安定して作業を行うことができる。
【0045】
[3.11.解体工程11]
次に、4台の上ジャッキ310の吊ワイヤー314に設けられたアンカーをそれぞれタワー部材111Bに設けた4つの吊具(吊点)313に接続し、吊り上げる(「支持工程」の一例)。これにより、タワー部材111Bより上方の風車100の部材(タワー部材111B、タワー部材111A、ナセル120、ハブ140)の荷重を4台の上ジャッキ310により水平に支持する。また、4台の上ジャッキ310により4点で吊り上げることにより風の影響を受けにくく、例えば1台のクレーンにより1点で吊り上げる場合よりも荷振れや荷の回転を抑制できる。
【0046】
[3.12.解体工程12]
次に、4台の下ジャッキ311の吊ワイヤー314に設けられたアンカーをそれぞれタワー部材111Cに設けた吊具(吊点)313に接続し、吊り上げる。これにより、タワー部材111Cを地面から水平に浮かすことができる。また、上ジャッキ310と同様に、4台の下ジャッキ311により4点で吊り上げることにより風の影響を受けにくく、例えば1台のクレーンにより1点で吊り上げる場合よりも荷振れや荷の回転を抑制できる。
【0047】
[3.13.解体工程13]
次に、工解体程12で浮かしたタワー部材111Cと地面の間に台車315を入れ、次いで、タワー部材111Cを4台の下ジャッキ311により水平に下降させて台車315に載せる。
【0048】
[3.14.解体工程14]
次に、
図12(A)に示すように、4台の下ジャッキ311によりタワー部材111Cを下降させつつ、台車315をウインチ(図示しない)で横引きすることにより、タワー部材111Cを横倒しにする。
【0049】
[3.15.解体工程15]
次に、4台の下ジャッキ311とクレーン30でタワー部材111Cを相吊りして、風車施工用架台300から搬出しつつトレーラー(図示しない)に載せる。なお、解体工程14~解体工程15は「搬出工程」の一例である。
【0050】
[3.16.解体工程16]
次に、4台の下ジャッキ311の吊ワイヤー314とタワー部材111Cを切り離す。
【0051】
[3.17.解体工程17]
次に、4台の上ジャッキ310によりタワー部材111Bより上方の風車100の部材(タワー部材111B、タワー部材111A、ナセル120、ハブ140)を地面まで下降させる(「風車部材下降工程」の一例)。これにより、タワー部材111Bが最下段にあるタワー部材となる。
【0052】
[3.18.解体工程18]
次に、
図12(B)に示すように、タワー部材111B、タワー部材111Aについてもタワー部材111Cと同様に解体工程9~解体工程17を繰り返し、風車施工用架台300から搬出する。なお、解体工程9では上ジャッキ310と下ジャッキ311で吊り替えを行う。具体的には、最下段にある(最下段の位置にある。以下同様)タワー部材111の上部と、その一段上にあるタワー部材111の下部に鋼材を貫通させて吊点を設け、それぞれ、下ジャッキ311と上ジャッキ310を吊ワイヤー314で接続する。但し、最上段のタワー部材111Aについては、上ジャッキ310から下ジャッキ311に吊り替えを行わなくても風車施工用架台300から搬出可能であれば、そのまま上ジャッキ310で下部を吊ったまま搬出することとしてもよい。
【0053】
[3.19.解体工程19]
タワー部材111B又はタワー部材111Aについての解体工程17において、ナセル120が内側架台301の上部に予め設けられたナセル載置部(「載置部」の一例)まで下降してきて、ナセル120がナセル載置部に載置されたら下降を停止する。そして、ナセル120を内側架台301に固定してから、ナセル120とタワー部材111Aを切り離す(「切り離し工程」の一例)。
【0054】
[3.20.解体工程20]
次に、解体工程19により、ナセル120とタワー部材111Aを切り離したら、
図12(C)に示すように、タワー部材111Aについて解体工程13~解体工程16を行う。
【0055】
[3.21.解体工程21]
そして、全てのタワー部材111の搬出が完了したら、次いで、
図13(A)に示すように、ナセル120が載置・固定された内側架台301を内側架台用ジャッキ303により下降させる(「架台下降工程」の一例)。
【0056】
[3.22.解体工程22]
次に、
図13(B)に示すように、ナセル120を内側架台301に載置された状態で、クレーン30を用いて解体する。風車100の構成部品の中で最も重量のあるナセル120を内側架台301に載せて内側架台301を下降させることで解体の際の揚程が低くなり、また、解体に要するクレーンも小型のものを利用することができる。
【0057】
[3.23.解体工程23]
次に、クレーン30を用いて風車施工用架台300を解体する。
【0058】
このように、本実施形態の風車100の解体方法では、だるま落としの要領で、最下段の位置にあるタワー部材111の分割、搬出を繰り返すことでタワー110を解体していく。なお、本実施形態では、タワー110が3段のタワー部材111で構成されている場合について説明したが、4段以上のタワー部材111で構成されるタワー110についても本解体方法を適用することができる。
【0059】
ここで、
図14のフローチャートを用いて風車100の解体方法の流れの一例について説明する。
【0060】
まず、ブレード130をハブ140から取り外す(ステップS1)。ステップS1は、上述した解体工程1~解体工程6に対応する。
【0061】
次に、風車施工用架台300を構築する(ステップS2)。ステップS2は、上述した解体工程7に対応する。
【0062】
次に、内側架台301を上昇させる(ステップS3)。ステップS3は、上述した解体工程8に対応する。
【0063】
次に、最下段にあるタワー部材111と、その一段上にあるタワー部材111を分割する(ステップS4)。ステップS4は、上述した解体工程10に対応する。
【0064】
次に、最下段にあるタワー部材111より上の風車100の部材を上ジャッキ310により支持する(ステップS5)。なお、ステップS5の前までに(好ましくはステップS4の前までに)、最下段にあるタワー部材111と、その一段上にあるタワー部材111に吊点を設け(上述した解体工程9に対応)、最下段にあるタワー部材111と下ジャッキ311を接続し、その一段上にあるタワー部材111と上ジャッキ310を接続しておくこととする。ステップS5は、上述した解体工程11に対応する。
【0065】
次に、最下段にあるタワー部材111を、下ジャッキ311を用いて風車施工用架台300から搬出する(ステップS6)。ステップS6は、上述した解体工程12~解体工程15に対応する。
【0066】
次に、上ジャッキ310により支持している風車100の部材を下降させる(ステップS7)。ステップS7は、上述した解体工程17に対応する。
【0067】
ステップS7の途中で、ナセル120が内側架台301の上部のナセル載置部に載置された場合には(ステップS8:YES)、ナセル120を内側架台301に固定し(ステップS9)、ナセル120とタワー部材111Aを切り離してから(ステップS10)、再度、上ジャッキ310により支持しているタワー部材111を下降させる(ステップS11)。ステップS9、ステップS10は、上述した解体工程19に対応し、ステップS11は、上述した解体工程17に対応する。
【0068】
一方、ナセル120が内側架台301の上部のナセル載置部に載置されない場合には(ステップS8:NO)、ステップS12に移行する。
【0069】
次に、搬出が済んでいない残りのタワー部材111が最上段のタワー部材111Aだけではない場合には(ステップS12:NO)、ステップS4に移行する。一方、搬出が済んでいない残りのタワー部材111が最上段のタワー部材111Aだけである場合には(ステップS12:YES)、次いで、最上段のタワー部材111Aを風車施工用架台300から搬出する(ステップS13)。ステップS13は、上述した解体工程18で繰り返す解体工程9~解体工程16に対応する。
【0070】
次に、内側架台301をナセル120とともに下降させる(ステップS14)。ステップS14は、上述した解体工程21に対応する。
【0071】
次に、クレーン30を用いてナセル120を内側架台301上で解体する(ステップS15)。ステップS15は、上述した解体工程22に対応する。
【0072】
次に、クレーン30を用いて風車施工用架台300を解体する(ステップS16)。ステップS16は、上述した解体工程23に対応する。
【0073】
以上説明したように、本実施形態の風車100の解体方法は、
風車100のタワー110を囲う位置に構築される内側架台301(「第1架台」の一例)と、タワー110を囲う位置であって内側架台301の外側に構築される外側架台302(「第2架台」の一例)と、外側架台302に設けられ、内側架台301を昇降させる内側架台用ジャッキ303(「架台用昇降手段」の一例)と、内側架台301に設けられ、タワー110を構成する複数のタワー部材111のうち最下段にあるタワー部材111より上にあるその他のタワー部材111を吊った状態で昇降させる上ジャッキ310(「第1昇降手段」の一例)と、内側架台301に設けられ、最下段にあるタワー部材111を吊った状態で昇降させる下ジャッキ311(「第2昇降手段」の一例)と、を備える風車施工用架台300を用いた風車100の解体方法であって、最下段にあるタワー部材111と、最下段から一段上にあるタワー部材111を分割する解体工程10(「分割工程」の一例)と、内側架台301が外側架台302に対してせり上がった状態で、上ジャッキ310により最下段にあるタワー部材111より上にある風車100の部材の荷重を支持する解体工程11(「支持工程」の一例)と、上ジャッキ310により荷重を支持している状態で、下ジャッキ311により最下段にあるタワー部材111を支持しつつ、風車施工用架台300から搬出する解体工程14及び解体工程15(「搬出工程」の一例)と、を含む。
【0074】
したがって、本実施形態の風車100の解体方法によれば、風車100のタワー110を囲う位置に構築される内側架台301と外側架台302が二重に構築され、内側架台301が外側架台302からせり上がり、内側架台301に設けられた上ジャッキ310により風車100の最下段にあるタワー部材111より上方の風車100の部材を支持している間に、内側架台301に設けられた下ジャッキ311により最下段にあるタワー部材111を搬出することから、クレーン等を設置するための広大な用地が不要であり、狭い土地においても巨大な風車の解体を行うことができる。
【0075】
また、本実施形態の風車100の解体方法は、解体工程14及び解体工程15の後に、上ジャッキ310により搬出したタワー部材111より上のその他のタワー部材111を下降させる解体工程17(「風車部材下降工程」の一例)を更に含む。これにより、先に搬出したタワー部材111より一段上のタワー部材を次の搬出対象となる最下段にあるタワー部材111とすることができる。
【0076】
さらに、本実施形態の風車100の解体方法は、解体工程10(「分割工程」の一例)、解体工程11(「支持工程」の一例)、解体工程14及び解体工程15(「搬出工程」の一例)、解体工程17(「風車部材下降工程」の一例)を繰り返し、タワー110を構成する全てのタワー部材111を搬出する。これにより、大型のクレーン等を用いずに狭い土地においても全てのタワー部材111を解体・搬出することできる。
【0077】
さらにまた、本実施形態の風車100の解体方法は、内側架台301がその頂部にタワー部材111A(「最上段のタワー部材」の一例)の上部に設置されたナセル120を載置可能な載置部を有し、解体工程17によりナセル120が載置部に載置された場合に、タワー部材111Aとナセル120を切り離す解体工程19(「切り離し工程」の一例)を更に含む。これにより、ナセル120が安定した状態で、ナセル120とタワー部材111Aを切り離すことができる。
【0078】
さらにまた、本実施形態の風車100の解体方法は、ナセル120が載置部に載置された状態で、内側架台用ジャッキ303がせり上がった状態の内側架台301を下降させる解体工程21(「架台下降工程」の一例)を更に含む。これにより、風車100の構成部品の中でも重量のあるナセル120を安定して下方に移動させて解体することができる。
【0079】
なお、解体工程11では、上ジャッキ310により最下段にあるタワー部材111より上にある風車100の部材の荷重を支持することができればよく、上ジャッキ310は、タワー部材111Bのみならず、タワー部材111Aに吊点を設けて吊り上げることにより、これを支持することとしてもよい。
【0080】
[4.風車100の組立方法]
次に、風車施工用架台300を用いた風車100の組立方法について説明する。基本的には、上述した風車100の解体方法を逆手順で行うことにより風車100を組み立てることができる。以下、風車100の組立方法について説明する。
【0081】
[4.1.組立工程1]
まず、風車100の解体方法の解体工程7と同様に、風車施工用架台300を構築する。
【0082】
[4.2.組立工程2]
次に、
図13(B)に示すように、クレーン30を用いてナセル120を内側架台301上で組み立てる。ナセル120が完成したら、ナセル120を内側架台301に固定する
【0083】
[4.3.組立工程3]
次に、
図13(A)に示すように、ナセル120が載置された状態の内側架台301を内側架台用ジャッキ303により水平に上昇させる(「架台上昇工程」の一例)。
【0084】
[4.4.組立工程4]
次に、トレーラー(図示しない)によりタワー部材111Aを搬入し、4台の下ジャッキ311をタワー部材111Aの上部と接続する。なお、タワー部材111Aには予め吊点を設けておくこととする(但し、解体方法の場合とは異なり、鋼材を貫通させて吊点を設けるのではなく、タワー部材111の外壁面に吊具を設けるなどするのが強度や外観を考慮すると好ましい)。次いで、タワー部材111Aの下部をトレーラーから台車315に積み替える。
【0085】
[4.5.組立工程5]
次に、
図12(C)に示すように、タワー部材111Aの上部を4台の下ジャッキ311で吊り上げつつ、タワー部材111Aの下部を台車115でスライドさせ、タワー部材111Aを内側架台301の内部に滑り込ませて、立たせた状態で配置する。
【0086】
[4.6.工程6]
次に、下ジャッキ311でタワー部材111Aの上部を吊った状態で、上ジャッキ310の吊ワイヤー314をタワー部材111Aの下部に予め設けられた吊点(但し、解体方法の場合とは異なり、鋼材を貫通させて吊点を設けるのではなく、タワー部材111の外壁面に吊具を設けるなどするのが強度や外観を考慮すると好ましい)に取り付けることで下ジャッキ311から上ジャッキ310に吊り替えを行う。
【0087】
[4.7.組立工程7]
次に、タワー部材111A(「一部のタワー部材」、「最上段のタワー部材」の一例)を4台の上ジャッキ310で水平に吊り上げ(「吊り上げ工程」の一例)、上部がナセル120に接触したところで吊り上げを止める。
【0088】
[4.8.組立工程8]
次に、タワー部材111Aの上部とナセル120を接合する。なお、組立工程7及び組立工程8は「ナセル接合工程」の一例である。
【0089】
[4.9.組立工程9]
次に、
図12(B)に示すように、タワー部材111Bについて組立工程4、5を行い、タワー部材111Bをタワー部材111Aの下方に配置する(「配置工程」の一例)。
【0090】
[4.10.組立工程10]
次に、上ジャッキ310によりタワー部材111A及びナセル120(「一部のタワー部材」の一例)を水平に下降させ、組立工程9で配置したタワー部材111B(「その他のタワー部材」の一例)の上に載置する(「載置工程」の一例)。
【0091】
[4.11.組立工程11]
次に、タワー部材111Bの上部とタワー部材111Aの下部を接合する(「タワー部材接合工程」の一例)。
【0092】
[4.12.組立工程12]
次に、タワー部材111Bについて組立工程6を行う。
【0093】
[4.13.組立工程13]
次に、タワー部材111B及びその上のタワー部材111A(「一部のタワー部材」の一例)を4台の上ジャッキ310で水平に吊り上げ(「吊り上げ工程」の一例)、下方にタワー部材111Cを配置可能なスペースができたところで吊り上げを止める。
【0094】
[4.14.組立工程14]
次に、
図12(A)に示すように、タワー部材111Cについて組立工程4、5を行い、タワー部材111Bをタワー部材111Bの下方に配置する(「配置工程」の一例)。
【0095】
[4.15.組立工程15]
次に、上ジャッキ310によりタワー部材111A、タワー部材111B及びナセル120(「一部のタワー部材」の一例)を水平に下降させ、組立工程14で配置されたタワー部材111C(「その他のタワー部材」の一例)の上に載置する(「載置工程」の一例)。
【0096】
[4.16.組立工程16]
次に、タワー部材111Cの上部とタワー部材111Bの下部を接合する(「タワー部材接合工程」の一例)。タワー部材111A、タワー部材111B及びタワー部材111Cを接合してタワー110ができたら、タワー110を上ジャッキ310で吊り上げ(ジャッキアップし)、基礎上に吊り下げて(ジャッキダウンして)基礎に固定する。
【0097】
[4.17.組立工程17]
次に、内側架台301を下降させた後、風車施工用架台300を解体する。
【0098】
[4.18.組立工程18]
次に、クレーン30を用いてハブ140に3本のブレード130を取り付ける。
【0099】
このように、本実施形態の風車100の組立方法では、だるま落としの逆手順の要領で、最下段の位置にタワー部材111を継ぎ足していくことでタワー110を組み立てていく。本実施形態では、タワー110が3段のタワー部材111で構成されている場合について説明したが、4段以上のタワー部材111で構成されるタワー110についても本組立方法を適用することができる。
【0100】
ここで、
図15のフローチャートを用いて風車100の組立方法の流れの一例について説明する。
【0101】
まず、クレーン30を用いて、タワー110を設置する位置を囲うように、内側架台301及び外側架台302を配置した風車施工用架台300を構築する(ステップS51)。ステップS51は、上述した組立方法の組立工程1に対応する。
【0102】
次に、クレーン30を用いて、ナセル120を内側架台301の載置部に固定し(ステップS52)、載置部にてナセル120を組み立てる(ステップS53)。ステップS52、ステップS53は、上述した組立方法の組立工程2に対応する。
【0103】
次に、内側架台301をナセル120とともに上昇させる(ステップS54)。ステップS54は、上述した組立方法の組立工程3に対応する。
【0104】
次に、最上段のタワー部材111Aを風車施工用架台300内に搬入し、立たせた状態で配置する(ステップS55)。このとき、下ジャッキ311でタワー部材111Aの上部を吊りながら最上段のタワー部材111Aを搬入して立たせる。ステップS55は、上述した組立工程4、組立工程5に対応する。
【0105】
次に、最上段のタワー部材111Aを下ジャッキ311から上ジャッキ310に吊り替えを行ってから、最上段のタワー部材111Aを上ジャッキ310で吊り上げる(ステップS56)。ステップS56は、上述した組立方法の組立工程6、組立工程7に対応する。
【0106】
最上段のタワー部材111Aとナセル120が接する高さまで上昇したら、最上段のタワー部材111Aとナセル120を接合する(ステップS57)。ステップS57は、上述した組立方法の組立工程8に対応する。
【0107】
次に、上ジャッキ310で吊っている(支持している)タワー部材111の下方に次のタワー部材111を配置する(ステップS58)。次のタワー部材111とは、上ジャッキ310で最上段のタワー部材111Aを吊っている場合にはタワー部材111Bのことであり、上ジャッキ310で中段のタワー部材111Bを吊っている場合にはタワー部材111Cのことである。ステップS58は、上述した組立方法の組立工程9に対応する。
【0108】
次に、ステップS58で配置したタワー部材111の上に、上ジャッキ310で吊っている(支持している)タワー部材111を下降させて載置する(ステップS59)。ステップS59は、上述した組立方法の組立工程10に対応する。
【0109】
次に、ステップS58で配置したタワー部材111と、ステップS59で載置したタワー部材111同士を接合する(ステップS60)。ステップS60は、上述した組立方法の組立工程11に対応する。
【0110】
次に、全てのタワー部材111を搬入していない場合には(ステップS61:NO)、ステップS60で接合した下側のタワー部材111を上ジャッキ310で吊り上げ(ステップS62)、ステップS58に移行する。ステップS62は、上述した組立方法の組立工程12(組立工程6)、組立工程13に対応する。
【0111】
一方、全てのタワー部材111を搬入した場合には(ステップS61:YES)、タワー110を上ジャッキ310で吊り上げ(ジャッキアップし)、基礎上に吊り下げて(ジャッキダウンして)基礎に固定する(ステップS63)。ステップS63は、上述した組立方法の組立工程16に対応する。次いで、内側架台301を下降させ(ステップS64)、クレーン30を用いて風車施工用架台300を解体する(ステップS65)。ステップS64、ステップS65は、上述した組立方法の組立工程17に対応する。
【0112】
次に、ハブ140にブレード130を取り付ける(ステップS66)。ステップS66は、上述した組立方法の組立工程18に対応する。
【0113】
以上説明した本実施形態の風車100の組立方法は、風車100のタワー110を囲う位置に構築される内側架台301(「第1架台」の一例)と、タワー110を囲う位置であって内側架台301の外側に構築される外側架台302(「第2架台」の一例)と、外側架台302に設けられ、内側架台301を昇降させる内側架台用ジャッキ303(「架台用昇降手段」の一例)と、内側架台301に設けられ、タワー110を構成する複数のタワー部材111のうち一部のタワー部材111を吊った状態で昇降させる上ジャッキ310(「第1昇降手段」の一例)と、内側架台301に設けられ、一部のタワー部材より下に配置されるその他のタワー部材111を吊った状態で昇降させる下ジャッキ311(「第2昇降手段」の一例)と、を備える風車施工用架台300を用いた風車100の組立方法であって、内側架台301が外側架台302に対してせり上がった状態で、上ジャッキ310により一部のタワー部材111を吊り上げる組立工程7、組立工程13(「吊り上げ工程」の一例)と、上ジャッキ310により吊り上げられた一部のタワー部材の下方に、下ジャッキ311によりその他のタワー部材111を吊った状態で配置する組立工程9、組立工程14(「配置工程」の一例)と、上ジャッキ310により一部のタワー部材111を下降させ、組立工程9、組立工程14で配置されたその他のタワー部材111の上に載置する組立工程10、組立工程15(「載置工程」の一例)と、組立工程10、組立工程15の後に、一部のタワー部材111とその他のタワー部材111を接合する組立工程11、組立工程16(「タワー部材接合工程」の一例)と、を含む。
【0114】
したがって、本実施形態の風車100の組立方法によれば、風車100のタワー110を囲う位置に構築される内側架台301と外側架台302が二重に構築され、内側架台301が外側架台302からせり上がり、内側架台301に設けられた上ジャッキ310により吊り上げられた一部のタワー部材111の下方に、内側架台301に設けられた下ジャッキ311によりその他のタワー部材111を吊った状態で配置し、その他のタワー部材111の上に一部のタワー部材111を載置して接合することから、クレーン等を設置するための広大な用地が不要となり、狭い土地においても巨大な風車の組立を行うことができる。
【0115】
また、本実施形態の風車100の組立方法は、組立工程7、組立工程13(「吊り上げ工程」の一例)、組立工程9、組立工程14(「配置工程」の一例)、組立工程10、組立工程15(「載置工程」の一例)、組立工程11、組立工程16(「タワー部材接合工程」の一例)を繰り返し、タワー110を組み立てる。これにより、大型のクレーン等を用いずに狭い土地においてもタワー110を組み立てることできる。
【0116】
さらに、本実施形態の風車100の組立方法は、内側架台301は、その頂部に、タワー部材111A(「最上段のタワー部材」の一例)の上部に設置されるナセル120を載置可能な載置部を有し、ナセル120が載置部に載置された状態で、内側架台用ジャッキ303が内側架台301を上昇させる組立工程3(「架台上昇工程」の一例)と、組立工程3の後に、上ジャッキ310によりタワー部材111Aをナセル120と接合可能な位置まで吊り上げ、タワー部材111Aとナセル120を接合する組立工程7、組立工程8(「ナセル接合工程」の一例)と、を更に含む。これにより、風車100の構成部品の中でも重量のあるナセル120を安定して上方に移動させてタワー部材111Aと接合することができる。
【0117】
以上説明したように、本実施形態の風車施工用架台300を用いた風車100の解体方法及び組立方法によれば、従来行われている超大型クレーンを使用した施工方法よりも、作業エリアを狭くすることができ、施工の適用範囲を広げることができる。また、小型のクレーンのブームのみで施工できるため、クレーンジブの組立が不要となり、クレーンジブそのものの組立、解体のスペースが不要となる。
【0118】
また、風車100の規模やエリアの条件に応じて風車施工用架台300の設計ができる。また、風車100が大型なものでもクレーンの規模はほとんど変わらないため、施工にかかるコスト変動を抑制することができる。
【0119】
さらに、風車100を風車施工用架台300で解体している間、クレーン30は別箇所の作業に従事できるので2エリア同時施工が可能となり、工期短縮を図ることができ、延いては単位期間当たりの施工可能基数を増加させることでき、コスト的にも優位となる。
【0120】
さらにまた、従来のクレーンのみで行う施工方法では狭い風車の内部で作業を行うが、内側架台301に作業用足場を架設することにより、作業エリアを広くでき、安全性、作業性が向上する。
【0121】
[5.変形例]
次に、
図16-
図27を用いて、上記実施形態の変形例について説明する。上記実施形態では、風車100の解体時において、
図13(B)に示すように、外側架台302に対してせり上がった状態の内側架台301をナセル120(ハブ140を含む。以下、変形例の説明において同様)とともに下降させた後、クレーン30を用いてナセル120を内側架台301上で解体することとした。また、風車100の組立時において、
図13(B)に示すように、クレーン30を用いて内側架台301上でナセル120を組み立てることとした。これに対して、本変形例では、解体時においては、ナセル120を載置した状態で内側架台301の下部を解体し、次いで、内側架台用ジャッキ303により、残った内側架台301の上部をナセル120とともに地上付近まで下降させる。また、組立時には、地上付近でナセル120を組み立て、内側架台用ジャッキ303により内側架台301の上部とともにナセル120を上昇させる。つまり、内側架台301の上部とともにナセル120を地上付近と外側架台302の上部付近の間を下降・上昇させることにより、外側架台302の上部付近(
図13(B)参照)、すなわち高所で、ナセル120を解体・組立をする場合より安全に作業を行うことができる。以下、変形例について具体的に説明する。なお、変形例の説明は、上記実施形態との相違点を中心に説明し、上記実施形態と重複する部分については説明を一部省略する。
【0122】
[5.1.変形例における風車100の解体方法]
図26に示すように、変形例におけるステップS21-ステップS34は、上記実施形態におけるステップS1-ステップS14(
図14参照)と同様なので説明を省略する。なお、
図16、
図17(A)、(B)は、
図13(B)の状態に相当する。
【0123】
図26においてステップS34(
図14のステップS14に対応)を終えると、次いで、外側架台302の補強及び分割を行う(ステップS35)。具体的には、
図16-
図18に示すように、外側架台302の補強をするため、外側架台302の下部にアウトリガー402を設けたり、外側架台302の支柱の本数を増やしたりする。なお、アウトリガー402は外側架台302を構築する際に取り付けておくことで風車100の解体時の安定性を向上できる。また、外側架台302の補強が済んだら、外側架台302の正面側及び背面側の梁401や筋交い(正面側上段の筋交い、背面側上段・中段・下段の筋交い)を撤去する(「撤去工程」の一例)ことにより、外側架台302の両側面を残す。これにより、外側架台302の正面側及び背面側の梁401や筋交いが無くなり、内側架台301の上部301Aとともにナセル120を下降させる際に、ナセル120が梁401や筋交いと干渉しない。
【0124】
次に、内側架台301に対する内側架台用ジャッキ303の吊り替えを行う(ステップS36)。具体的には、
図16に示すように、4台の内側架台用ジャッキ303のフック403は、それぞれ内側架台301をせり上げるために内側架台301の下端部に取り付けられているので、これらを一度外して巻き上げた後、
図18に示すように、内側架台301の上部301Aに取り付けることにより吊り替えを行う。これにより、ステップS37において内側架台301の下部(上部301Aより下の部分)を解体しても、上部301Aが落下することがない。
【0125】
次に、内側架台301の下部を解体する(ステップS37。「第1架台解体工程」の一例)。これにより、
図18に示すように、内側架台301の下部が無くなり、内側架台301の上部301Aがナセル120とともに内側架台用ジャッキ303に吊られた状態となる。
【0126】
次に、
図20、
図21(A)、(B)に示すように、内側架台用ジャッキ303により、内側架台301の上部301Aをナセル120とともに地上まで下降させる(ステップS38)(「架台上部下降工程」の一例)。
【0127】
次に、
図22に示すように、ナセル120が載置されている、内側架台301の上部301Aの梁(ナセル搬出用梁404)に内側架台用ジャッキ303のフック403を取り付け、ナセル搬出用梁404(「載置部」の一例)を残して、内側架台301の上部301Aを解体・撤去する(ステップS39)。
【0128】
次に、ナセル120を搬出する(ステップS40)。具体的には、
図23に示すように、ナセル搬出用梁404の下方にナセル搬出用車両405を搬入し、次いで、
図24に示すように、内側架台用ジャッキ303によりナセル搬出用梁404とともにナセル120を下降させてナセル搬出用車両405に積載し、次いで、
図25に示すように、ナセル搬出用車両405でナセル搬出用梁404とともにナセル120を搬出する。ナセル120は、ナセル搬出用車両405によりナセル解体場所まで運搬し、解体する。
【0129】
次に、外側架台302を解体・撤去する(ステップS41)。
【0130】
以上説明したように、変形例における、風車100の解体方法は、風車100のタワー110を囲う位置に構築される内側架台301(「第1架台」の一例)と、タワー110を囲う位置であって内側架台301の外側に構築される外側架台302(「第2架台」の一例)と、外側架台302に設けられ、内側架台301を昇降させる内側架台用ジャッキ303(「架台用昇降手段」の一例)と、内側架台301に設けられ、タワー110を構成する複数のタワー部材111のうち最下段にあるタワー部材111より上にあるその他のタワー部材111を吊った状態で昇降させる上ジャッキ310(「第1昇降手段」の一例)と、内側架台301に設けられ、最下段にあるタワー部材111を吊った状態で昇降させる下ジャッキ311(「第2昇降手段」の一例)と、を備え、内側架台301が、その頂部に、タワー部材111A(「最上段のタワー部材」の一例)の上部に設置されたナセル120を載置可能な載置部を有する風車施工用架台300を用いた風車100の解体方法であって、最下段にあるタワー部材111と、最下段から一段上にあるタワー部材111を分割する解体工程10(「分割工程」の一例)と、内側架台301が外側架台302に対してせり上がった状態で、上ジャッキ310により最下段にあるタワー部材111より上にある風車100の部材の荷重を支持する解体工程11(「支持工程」の一例)と、上ジャッキ310により荷重を支持している状態で、下ジャッキ311により最下段にあるタワー部材111を支持しつつ、風車施工用架台300から搬出する解体工程14及び解体工程15(「搬出工程」の一例)と、解体工程14及び解体工程15の後に、上ジャッキ310により搬出したタワー部材111より上のその他のタワー部材111を下降させる解体工程17(「風車部材下降工程」の一例)と、解体工程17によりナセル120が載置部に載置された場合に、タワー部材111Aとナセル120を切り離す解体工程19(「切り離し工程」の一例)と、ナセル120が載置部に載置された状態で、内側架台用ジャッキ303がせり上がった状態の内側架台301を下降させる解体工程21(「架台下降工程」の一例)と、工程21の後に、ナセル120が載置部に載置された状態で、内側架台301の上部301Aを残して下部を解体する工程(ステップS37。「第1架台解体工程」の一例)と、内側架台301の下部を解体する工程の後に、ナセル120が載置部に載置された状態で、内側架台用ジャッキ303が内側架台301の上部301Aを更に下降させる工程(ステップS38。「架台上部下降工程」の一例)と、を含む。
【0131】
したがって、変形例における、風車100の解体方法によれば、内側架台用ジャッキ303により内側架台301の上部301Aとともにナセル120を地上付近まで下降させることから、ナセル120の解体を高所で行う場合よりも安全に行うことができる。
【0132】
また、変形例における、風車100の解体方法は、内側架台301の上部301Aを下降させる工程(ステップS38)の前に、内側架台301の上部301Aを下降させる際に干渉する、外側架台302の梁401や筋交い(「部材」の一例)を撤去する工程(ステップS38。「撤去工程」の一例)を含む。これにより、内側架台用ジャッキ303により内側架台301の上部301Aを下降させる際に、外側架台302の梁401や筋交いと、ナセル120が接触することを防ぐことができる。
【0133】
[5.2.変形例における風車100の組立方法]
次に、
図27等を用いて、変形例における風車100の組立方法について説明するが、基本的には、上述した変形例における風車100の解体方法を逆手順で行う。なお、
図27に示すように、変形例におけるステップS77-ステップS88は、上記実施形態におけるステップS55-ステップS66(
図15参照)と同様なので説明を省略する。
【0134】
まず、風車100の設置位置に外側架台302を構築する(ステップS71)。このとき、内側架台301の上部301Aとナセル120を上昇させる際に干渉しないように、正面側及び背面側の梁401は設けない。つまり、外側架台302を左右に分割した状態で構築する。また、外側架台302の下には、架台用マット304及び架台用ガーダー305を設けることとする。
【0135】
次に、外側架台302の内側に内側架台301の上部301Aを構築し(「架台上部構築工程」の一例)、その上にナセル120を載置・固定する(ステップS72)。ナセル120は、先に構築した内側架台301の上部301A上で構築してもよい。また、予め構築したナセル120をナセル搬出用車両405とナセル搬出用梁404(「載置部」の一例)を用いて外側架台302の内側に搬入し、次いで、ナセル搬出用梁404及びナセル120を内側架台用ジャッキ303で吊り上げ、ナセル搬出用梁404を上部301Aの一部として上部301Aを構築してもよい。
【0136】
次に、内側架台用ジャッキ303により、内側架台301の上部301Aをナセル120とともに上昇させる(ステップS73)。なお、予め、内側架台301の上部301Aに4台の内側架台用ジャッキ303のフック403を取り付けておくこととする。
【0137】
次に、内側架台301の下部(上部301Aより下の部分)を構築する(ステップS74)。このとき、内側架台301の下部は架台用ガーダー305に接地させ、内側架台301及びナセル120の荷重を地面で受けるようにする。
【0138】
次に、内側架台301の内側架台用ジャッキ303の吊り替えを行う(ステップS75)。具体的には、4台の内側架台用ジャッキ303のフック403は、内側架台301の上部301Aに取り付けられているので、これらを一度外して下降させた後、
図16に示すように、内側架台301の下端部に取り付けることにより、吊り替えを行う。
【0139】
次に、分割された状態の外側架台302を統合し、次いで、内側架台用ジャッキ303により内側架台301が外側架台302に対してせり上がった状態まで内側架台301をナセル120とともに上昇させる(ステップS76)。外側架台302を統合は、正面側及び背面側の梁401を取り付けることにより統合する。次いで、ステップS77の工程に移る。
【0140】
以上説明したように、変形例における、風車100の組立方法は、風車100のタワー110を囲う位置に構築される内側架台301(「第1架台」の一例)と、タワー110を囲う位置であって内側架台301の外側に構築される外側架台302(「第2架台」の一例)と、外側架台302に設けられ、内側架台301を昇降させる内側架台用ジャッキ303(「架台用昇降手段」の一例)と、内側架台301に設けられ、タワー110を構成する複数のタワー部材111のうち一部のタワー部材111を吊った状態で昇降させる上ジャッキ310(「第1昇降手段」の一例)と、内側架台301に設けられ、一部のタワー部材より下に配置されるその他のタワー部材111を吊った状態で昇降させる下ジャッキ311(「第2昇降手段」の一例)と、を備え、内側架台301が、その頂部に、タワー部材111A(「最上段のタワー部材」の一例)の上部に設置されたナセル120を載置可能な載置部を有する風車施工用架台300を用いた風車100の組立方法であって、載置部を有する、内側架台301の上部301Aを構築する工程(ステップS72。「架台上部構築工程」の一例)と、ナセル120が載置部に載置された状態で、内側架台用ジャッキ303が内側架台301の上部301Aを上昇させる工程(ステップS73。「架台上部上昇工程」の一例)と、内側架台301の上部301Aを上昇させる工程の後に、内側架台301の上部301Aに対して内側架台301の下部を構築する工程(ステップS74。「架台下部構築工程」の一例)と、内側架台301の下部を構築する工程の後に、ナセル120が載置部に載置された状態で、内側架台用ジャッキ303が、内側架台301が外側架台302に対してせり上がった状態まで内側架台301を上昇させる工程(ステップS76。「架台上昇工程」の一例)と、内側架台301を上昇させる工程の後に、上ジャッキ310によりタワー部材111Aをナセル120と接合可能な位置まで吊り上げ、タワー部材111Aとナセル120を接合する組立工程7、組立工程8(「ナセル接合工程」の一例)と、内側架台301が外側架台302に対してせり上がった状態で、上ジャッキ310により一部のタワー部材111を吊り上げる組立工程7、組立工程13(「吊り上げ工程」の一例)と、上ジャッキ310により吊り上げられた一部のタワー部材の下方に、下ジャッキ311によりその他のタワー部材111を吊った状態で配置する組立工程9、組立工程14(「配置工程」の一例)と、上ジャッキ310により一部のタワー部材111を下降させ、組立工程9、組立工程14で配置されたその他のタワー部材111の上に載置する組立工程10、組立工程15(「載置工程」の一例)と、組立工程10、組立工程15の後に、一部のタワー部材111とその他のタワー部材111を接合する組立工程11、組立工程16(「タワー部材接合工程」の一例)と、を含む。
【0141】
したがって、変形例における、風車100の組立方法によれば、地上付近で組み立てたナセル120を、内側架台用ジャッキ303により内側架台301の上部301Aとともに上昇させることから、ナセル120の組み立てを高所で行う場合よりも安全に行うことができる。
【0142】
なお、変形例では、
図16-
図18に示すように、外側架台302の補強をするため、外側架台302の下部にアウトリガー402を設けたり、外側架台302の支柱の本数を増やしたりしたが、これに代えて、
図28に示すように、外側架台302の外側の左右にそれぞれ補強架台410を構築することとしてもよい。左右の補強架台410は、それぞれ、2本(正面側と背面側に1本ずつ)の補強支柱412と、補強支柱412と外側架台302を接続する補強梁411と、筋交い413と、正面側の補強支柱412と背面側の補強支柱412を接続する補強梁414と、補強支柱412に固定されるアウトリガー402と、を含む。補強梁411は、外側架台302の支柱と補強支柱412の間に水平に設けられる。また、補強支柱412は、底部が基礎に固定されている。補強架台410を構築することで、外側架台302の強度を高めることができる。
【符号の説明】
【0143】
1 吊治具
2 吊治具本体
2A、2B 本体部材
3 吊板
3A 挿通孔
4 吊ピース
4A 挿通孔
11 チェーンブロック
12 チェーンブロック取付ワイヤー
13 吊ワイヤー
14 治具受け具
21 チルクライマー
22 チルクライマー取付ワイヤー
23 吊ワイヤー
30 クレーン
30A ブーム
31 吊りワイヤー
100 風車
110 タワー
111(111A、111B、111C) タワー部材
120 ナセル
130(130A、130B、130C) ブレード
131 フランジ
140 ハブ
201 ゴンドラ
202 ゴンドラ用ワイヤー
300 風車施工用架台
301 内側架台
302 外側架台
303 内側架台用ジャッキ
304 架台用マット
305 架台用ガーダー
306 ジャッキベース
307 下段フレーム
308 中段支持材
309 上段支持材
310 上ジャッキ
311 下ジャッキ
312 鋼材
313 吊具
314 吊ワイヤー
315 台車
401 梁
402 アウトリガー
403 フック
404 ナセル搬出用梁
405 ナセル搬出用車両
410 補強架台
411 補強梁
412 補強支柱
413 筋交い