(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】反射したGNSS信号に対する感度を高めること
(51)【国際特許分類】
G01S 19/22 20100101AFI20241112BHJP
【FI】
G01S19/22
(21)【出願番号】P 2022500734
(86)(22)【出願日】2019-07-08
(86)【国際出願番号】 US2019040823
(87)【国際公開番号】W WO2021006866
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-06-23
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502208397
【氏名又は名称】グーグル エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Google LLC
【住所又は居所原語表記】1600 Amphitheatre Parkway 94043 Mountain View, CA U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バン・ディゲレン,フランク
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/102146(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0050103(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0090037(US,A1)
【文献】特表2008-527394(JP,A)
【文献】米国特許第09766349(US,B1)
【文献】国際公開第2017/010230(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0067999(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S19/00-19/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
移動中の受信機が、前記受信機に到達する前に
複数の反射面に反射した特定の測位信号を識別するステップと、
前記特定の測位信号を識別したことに基づいて、コヒーレント積分に利用するための前記特定の測位信号を送信した衛星の最後の反射衛星位置を特定するステップとを含み、前記最後の反射衛星位置は、前記
複数の反射面の各々に対して前記衛星の位置を繰り返し反射させることによって特定され、前記方法は、さらに、
前記衛星の前記最後の反射衛星位置までの方向ベクトルを求めるステップと、
前記最後の反射衛星位置までの前記方向ベクトルに基づいて、コヒーレント積分をしきい値期間行って前記特定の測位信号のSN比を上げるステップとを含む、方法。
【請求項2】
複数の衛星から複数の測位信号を受信するステップと、
コヒーレント積分を前記しきい値期間行ったことに基づいて、前記特定の測位信号および前記複数の測位信号を用いて前記受信機の位置を特定するステップとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記受信機は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記受信機に到達する前に前記
複数の反射面に反射した前記特定の測位信号を識別するステップは、
前記受信機の位置に基づいて、反射面の定義済みマップを用いて前記特定の測位信号を識別するステップを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
コヒーレント積分を前記しきい値期間行って前記特定の測位信号のSN比を上げるステップは、
前記衛星から前記特定の測位信号を受信するときに前記方向ベクトルに沿った指向性利得を上げるステップをさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
コヒーレント積分を前記しきい値期間行って前記特定の測位信号のSN比を上げるステップは、
前記受信機の周波数を調整して前記衛星からの前記特定の測位信号のドップラーに一致させるステップをさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
コヒーレント積分を前記しきい値期間行って前記特定の測位信号のSN比を上げるステップは、さらに、1つ以上の異なる方向から前記受信機に到来する信号を分離させることを可能にする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
複数の衛星から複数の測位信号を受信するステップと、
前記複数の測位信号を用いて、移動中の前記受信機の速度を特定するステップとをさらに含み、
コヒーレント積分を前記しきい値期間行って前記特定の測位信号のSN比を上げるステップは、前記受信機の速度にさらに基づく、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
複数の衛星から複数の測位信号を受信するステップと、
反射面の定義済みマップおよび各測位信号に含まれる情報に基づいて、前記複数の測位信号の中から、LOS(Line-of-Sight)衛星から送信された第1組の測位信号と、NLOS(Non-Line-of-Sight)衛星から送信された第2組の測位信号とを識別するステップとをさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記複数の測位信号のうち、前記第1組の測位信号または前記第2組の測位信号に該当しない1つ以上の測位信号を破棄するステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1組の測位信号が3つ以下の測位信号を含むと判断するステップと、
前記第1組の測位信号が3つ以下の測位信号を含むと判断したことに基づいて、前記第1組の測位信号と、前記第2組の測位信号のうち少なくとも1つの測位信号との組合せを用いて前記受信機の位置および速度を特定するステップとをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1組の測位信号と前記第2組の測位信号のうち前記少なくとも1つの測位信号との組合せを用いて前記受信機の位置および速度を特定するステップは、
前記第1組の測位信号に含まれる各測位信号に第1の重みを割り当てるステップと、
前記第2組の測位信号に含まれる各測位に前記第1の重みよりも小さい第2の重みを割り当てるステップと、
加重平均分析に基づいて、前記第1組の測位信号と前記第2組の測位信号のうち前記少なくとも1つの測位信号との組合せを用いて前記受信機の位置および速度を特定するステップとを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1組の測位信号と前記第2組の測位信号のうち前記少なくとも1つの測位信号との組合せを用いて前記受信機の位置および速度を特定するステップは、
前記第2組の測位信号の中から用いられる測位信号の各々について、
所与の測位信号を送信した所与の衛星の反射衛星位置を特定するステップと、
前記反射衛星位置までの方向ベクトルを求めるステップと、
前記反射衛星位置までの前記方向ベクトルに基づいて、コヒーレント積分をしきい値期間行って前記所与の測位信号のSN比を上げるステップと、
コヒーレント積分を前記しきい値期間行って前記セットされた第2の測位信号のうち1つ以上の信号の前記SN比を上げたことに基づいて前記受信機の位置および速度を特定するステップとを含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
LOS衛星からの測位信号および逐次カルマンフィルタのみを用いて前記受信機の次の位置および次の速度を特定するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記受信機に到達する前に前記
複数の反射面に反射した前記特定の測位信号を識別するステップは、
前記特定の測位信号が前記受信機に到達する前に第1の反射面および第2の反射面を反射したと判断するステップと、
前記特定の測位信号が前記受信機に到達する前に前記第1の反射面および前記第2の反射面を反射したと判断したことに基づいて、前記特定の測位信号を送信した前記衛星の第1の反射衛星位置を特定するステップとを含み、前記第1の反射衛星位置は、前記第1の反射面に対して前記衛星の位置を反射させることによって特定され、前記受信機に到達する前に前記反射面に反射した前記特定の測位信号を識別するステップは、さらに、
前記衛星の前記第1の反射衛星位置を特定したことに基づいて、前記衛星の第2の反射衛星位置を特定するステップを含み、前記第2の反射衛星位置は、前記第2の反射面に対して前記第1の反射衛星位置を反射させることによって特定される、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記衛星の前記反射衛星位置までの前記方向ベクトルを求めるステップは、
前記第2の反射衛星位置までの特定の方向ベクトルを求めるステップを含み、
コヒーレント積分を前記しきい値期間行って前記特定の測位信号のSN比を上げるステップは、
前記第2の反射衛星位置までの前記特定の方向ベクトルに基づいてコヒーレント積分を前記しきい値期間行って前記特定の測位信号のSN比を上げるステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
システムであって、
受信機と、
プロセッサとを備え、前記プロセッサは、
移動中の受信機に到達する前に
複数の反射面に反射した特定の測位信号を識別し、
前記特定の測位信号を識別したことに基づいて、コヒーレント積分に利用するための前記特定の測位信号を送信した衛星の最後の反射衛星位置を特定するように構成され、前記最後の反射衛星位置は、前記
複数の反射面の各々に対して前記衛星の位置を繰り返し反射することによって特定され、前記プロセッサは、さらに、
前記衛星の前記最後の反射衛星位置までの方向ベクトルを求め、
前記最後の反射衛星位置までの前記方向ベクトルに基づいて、コヒーレント積分をしきい値期間行って前記特定の測位信号のSN比を上げるように構成される、システム。
【請求項18】
前記プロセッサは、さらに、
複数の衛星から複数の測位信号を受信し、
コヒーレント積分を前記しきい値期間行ったことに基づいて、前記特定の測位信号および前記複数の測位信号を用いて前記受信機の位置を特定するように構成される、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記プロセッサは、さらに、
複数の衛星から複数の測位信号を受信し、
前記複数の測位信号を用いて、移動中の前記受信機の速度を特定し、
前記受信機の速度に基づいて、コヒーレント積分を前記しきい値期間行って前記特定の測位信号のSN比を上げるように構成される、請求項17または18に記載のシステム。
【請求項20】
コンピューティングシステムに請求項1~16のいずれか1項に記載の方法を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
スマートフォン、ウェアラブルコンピューティングデバイス、車載ナビゲーションシステム、およびその他の種類のデバイスは、GPS(Global Positioning System)、およびその他のGNSS(Global Navigation Satellites System)を利用して位置および速度の特定を行うように構成された受信機を備えている場合が多い。GPSは、正確な軌道で地球を巡回しながら測位信号(すなわち、信号)を送信するように構成された複数の衛星から構成されるネットワークを必要とする、衛星に基づいたナビゲーションシステムである。各衛星は、衛星が各信号を送信した時刻および衛星の位置情報の表示など、受信機が使用する情報を含んだ信号を送信する。GLONASS、Galileo、BeiDou、QZSS、およびIRNSSなど、その他のGNSSも同様に動作し、位置の特定に用いられる場合もある。
【0002】
受信機は、複数の衛星からの信号内にある情報を受信および利用して、その位置を予測してもよい。たとえば、受信機は、三辺測量術を利用して、少なくとも4つのGNSS衛星から取得したタイミング信号によって地球上のユーザの位置を予測してもよい。衛星から信号を受信すると、受信機は、信号が受信機において受信された時刻を特定し、その時刻を、信号内で示される信号が衛星によって送信された時刻と比較してもよい。次に、受信機は、求められた時間差に基づいて衛星までの距離を求めてもよい。4つの衛星からの信号を使うことによって、受信機は、その位置を判断してもよい。受信機がその高度などその他の測定値にアクセスできる場合、位置算出においてこれらの測定値を使用して、必要なGNSS信号の数を減らしてもよい。また、位置を特定することに加えて、受信機は、GNSSを利用して受信機の現在の速度を特定してもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
概要
受信機が十分な信号(たとえば、4つの信号)をGNSS衛星から直接受信することができないいくつかの状況が生じ得る。特に、建物、陸上の構造物(たとえば、山)、およびその他の構造物が、衛星と受信機との間の直接路を遮ることによって信号を受信することを妨げ得る。本明細書では、建物またはその他の構造物による「干渉/邪魔/妨げ」は、信号の遮断および/または反射、回折、ならびに散乱を意味し得る。干渉の結果、受信機は、受信機に到達する前に1つ以上の建物を反射した後の反射という形態で衛星からの信号を間接的に受信するであろう。受信機が位置および速度の特定について反射に依拠している場合、この反射では、あまり正確でない結果がもたらされる。したがって、本明細書において示す例示的な実施の形態は、反射信号を用いてコヒーレント積分を行って、当該反射信号のSN比を上げることを可能にすることより、次の位置および速度の算出の精度を改善することができる技術に関係する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様では、例示的な方法を提供する。この方法は、受信機が、受信機に到達する前に反射面に反射した特定の測位信号を識別するステップを含む。受信機は、移動中である。この方法は、さらに、特定の測位信号を識別したことに基づいて、特定の測位信号を送信した衛星の反射衛星位置を特定するステップを含む。反射衛星位置は、反射面に対して衛星の位置を反映することによって特定される。また、この方法は、衛星の反射衛星位置までの方向ベクトルを求めるステップと、反射衛星位置までの方向ベクトルに基づいて、コヒーレント積分をしきい値期間行って特定の測位信号のSN比を上げるステップとを含む。
【0005】
別の態様では、システムを提供する。このシステムは、受信機と、プロセッサとを備えてもよい。このプロセッサは、受信機に到達する前に反射面に反射した特定の測位信号を識別するように構成される。受信機は、移動中である。このプロセッサは、さらに、特定の測位信号を識別したことに基づいて、特定の測位信号を送信した衛星の反射衛星位置を特定するように構成される。反射衛星位置は、反射面に対して衛星の位置を反映することによって特定される。また、このプロセッサは、衛星の反射衛星位置までの方向ベクトルを求めるように構成される。プロセッサは、さらに、反射衛星位置までの方向ベクトルに基づいて、コヒーレント積分をしきい値期間行って特定の測位信号のSN比を上げるように構成される。
【0006】
さらに別の態様では、非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体を提供する。この非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体は、コンピューティングシステムによって実行されると、コンピューティングシステムに機能を実行させる命令を格納するように構成される。これらの機能は、受信機に到達する前に反射面に反射した特定の測位信号を識別する機能を含む。受信機は、移動中である。また、これらの機能は、特定の測位信号を識別したことに基づいて、特定の測位信号を送信した衛星の反射衛星位置を特定する機能を含む。反射衛星位置は、反射面に対して衛星の位置を反映することによって特定される。これらの機能は、さらに、衛星の反射衛星位置までの方向ベクトルを求める機能と、反射衛星位置までの方向ベクトルに基づいて、コヒーレント積分をしきい値期間行って特定の測位信号のSN比を上げる機能とを含む。
【0007】
さらに別の態様では、反射したGNSS信号に対する感度を高めるための手段を備えるシステムを提供する。このシステムは、上述した例示的な方法のステップを実行するための手段を備えてもよい。
【0008】
これらおよびその他の態様、利点、ならびに別の選択肢は、下記の詳細な説明を添付の図面を適宜参照しながら読むことによって当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】例示的な実施の形態に係る、コンピューティングシステムの簡略ブロック図である。
【
図2】例示的な実施の形態に係る、1組の衛星からの信号を用いた位置の特定を示す図である。
【
図3】例示的な実施の形態に係る、速度の求め方を示す図である。
【
図4A】例示的な実施の形態に係る、衛星から信号を直接受信している受信機を示す図である。
【
図4B】例示的な実施の形態に係る、信号の反射を受信している受信機を示す図である。
【
図5】例示的な実施の形態に係る、方法のフローチャートである。
【
図6】例示的な実施の形態に係る、コヒーレント積分を行っている受信機を示す図である。
【
図7A】例示的な実施の形態に係る、衛星からの信号の反射を受信している受信機を示す図である。
【
図7B】例示的な実施の形態に係る、衛星からの信号の反射に対する感度を高めている受信機を示す図である。
【
図8】例示的な実施の形態に係る、複数の建物を反射した信号を使用して長時間コヒーレント積分を行っている受信機を示す図である。
【
図9】例示的なデバイス上でコンピュータ処理を実行するためのコンピュータプログラムを含む例示的なコンピュータプログラムプロダクトの概念的な部分ビューを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
本明細書において、例示的な方法およびシステムを説明する。「例(example)」、「典型的(exemplary)」、および「例示(illustrative)」という単語は、「例、具体例、または例示として用いられる」という意味で本明細書において使用されていることを理解されたい。「例」、「典型的」、もしくは「例示」であるとして本明細書において説明されるいずれの実施態様もしくは特徴も、必ずしもその他の実施態様もしくは特徴よりも好ましいまたは有利であると解釈されない。
【0011】
本明細書において説明する実施態様の例は、限定ではない。本明細書において一般的に説明および図示されている本開示の態様を、様々な異なる構成で配置したり、置き換えたり、組み合わせたり、分けたり、設計したりすることができることは、容易に理解されるであろう。これらのすべては、本明細書において明確に考慮されている。
【0012】
スマートフォン、ウェアラブルコンピューティングデバイス、および車載ナビゲーションシステムなど、様々な種類のデバイスの位置および速度の測定値を提供するために、受信機に依拠している。GNSSは、受信機のパッシブ動作モード(すなわち、受信機は、信号を受信だけするように構成されている)により、限りない数の受信機に対応することができるので、自律ナビゲーション、地図作成および測量、救急救助の戦略、デートアプリケーション、ならびに走行中のルート決定を含む、GNSSを利用した数多くのアプリケーションが開発されてきた。
【0013】
GNSSは、各衛星に搭載された正確な原子周波数標準器に関係する衛星からの信号を参照することを含む片道TOA(Time Of Arrival)レンジング技術を利用して動作する。これらの原子周波数標準器は、GNSS時間基準に同期されている。各GPS衛星は、2つの周波数チャンネル(L1:1,575.42MHz、L2:1,227.6MHz)上でCDMA(Code-Division Multiple Access)を用いて、レンジングコードとナビゲーションデータとを含んだ信号を同報通信する。特に、衛星は、一意のレンジングコードを有する信号を一方または両方の周波数で送信する。より新しいGPS衛星は、第3周波数(L5:1176.45MHz)で送信を行う。その他のGNSSシステムも、当業者に周知のシステム間の違いはあるが、ほぼ同様に動作する。
【0014】
受信機によって信号が受信されると、信号内のナビゲーションデータによって、受信機が信号送信時の衛星の位置を特定することが可能になる。これに加えて、同じ信号内のレンジングコードによって、受信機が信号の伝播時間を特定することが可能になる。よって、受信機は、衛星から受信機までのレンジおよびその緯度、経度、高度、ならびに4つの衛星からの信号内で取得されるTOAレンジングによる測定値を使用した場合の内部の衛星システム時刻を基準とした受信機クロックオフセットを特定することができる。
【0015】
また、GNSSは、様々な技術によって受信機がその位置に加えて速度を特定することを可能にする。ある速度特定技術は、受信機の2つの連続した位置間の差を求めて受信機の速度とすることを含む。別の速度特定技術は、受信機の移動と衛星の移動から導出されるドップラー測定値を使用することを含む。
【0016】
受信機が複数の衛星からの信号を区別するために利用する技術など、信号処理において、ドップラー情報には幅広い用途がある。受信機の速度を特定するとき、受信機と送信側衛星との間のレンジレートを特定するためにドップラーデータを利用してもよい。レンジレートは、衛星と受信機との距離が特定の期間に変化する速度を表す。
【0017】
レンジレートを特定するために、受信機は、コヒーレント積分を行い、受信信号を拡散コードのローカルコピーで乗算してもよい。拡散コードは、理論上、受信信号との位相コヒーレンスを維持する。信号のドップラーが変化した場合、拡散コードのローカルコピーのドップラーを調整して位相コヒーレンスを維持する必要がある。受信機の速度の変化は、ドップラーシフトを生じさせる可能性がある。このドップラーシフトを測定して速度を正確に演算することができる。特に、受信機は、追跡される信号を送信している衛星の方向に向むけられた単位ベクトルを用いた受信機の新しい速度ドット積を使用して、新しいドップラー値を求めてもよい。この技術を利用して、受信機は、1秒当たり数センチメートル内で正確にその速度を特定してもよい。
【0018】
位置および速度を特定するために衛星からの信号を追跡するとき、受信機は、コヒーレント積分を行ってもよい。コヒーレント積分(コヒーレント平均化または時間領域平均化とも称される)は、信号特性を推定する前に信号の測定値を一連のパルスにわたって(たとえば、観察時間にわたって)積分することを含む。信号についてコヒーレント積分を行うことで、全体的な信号処理要件を最小限に抑えつつ、この信号のSN比を改善することができる。このように、コヒーレント積分を有効にするために、基準位相に対する信号の位相が実質的に変わらない時間(すなわち、信号のコヒーレンス時間)に積分期間を限定しなければならない。
【0019】
受信機は、コヒーレント積分を使用して、異なる方向から受信機に到来する信号同士の干渉をなくしてもよい。干渉がなくなる程度は、受信機の速度およびコヒーレント積分時間によって異なり得る。少量のコヒーレント積分(たとえば、20ミリ秒未満)を行うように構成された受信機もある。次に、これらの受信機は、オプションで、何百ミリ秒もの間インコヒーレントに積分を行って、必要であれば信号に対する感度を上げてもよい。しかしながら、この手法は、マルチパス干渉の影響を受けやすい。特に、インコヒーレント積分は、信号から取り込まれたデータ内に格納された位相情報を、取り込まれた当該データが結合される前に破壊してしまう可能性がある。位相情報の破壊によって、LOS(Line-of-Sight)衛星からの信号およびNLOS(Non-Line-of-Sight)衛星からの信号の反射が同じ相関ピーク内に蓄積されることになり、所望のLOS信号情報に歪みが生じる可能性がある。この歪みが誤ったコード位相予測を生じさせて、誤った位置予測につながる可能性がある。
【0020】
数十ミリ秒または数百ミリ秒を超えるコヒーレント積分を行うことができるようになるクロック/モーション補償フェイザー補正シーケンス(clock-and-motion-compensated phasor correction sequence)を実装するように構成される受信機もある。この長期間(たとえば、数十ミリ秒または数百ミリ秒というしきい値期間)を超えるコヒーレント積分を行うとき、受信機は長時間コヒーレント積分を行っていると言える。長時間コヒーレント積分によって、信号を追跡する感度をほぼゼロdBHzまで下がるよう改善してもよく、また、位相情報の破壊を抑える高い倍数の緩和性能が与えられてもよい。特に、長時間コヒーレント積分を行うことによって、異なる方向から到来する信号を周波数領域内で分離させることが可能になる。これに加えて、長時間コヒーレント積分は、1つの移動するアンテナを用いてGNSSの到来角を直接解決することによって、なりすまし防止方法および3次元(3D)マッピング支援方法における新しい機能を可能にすることができる。
【0021】
受信機が速度vで移動中の場合、角度θを有する信号の利得指向性を長時間コヒーレント積分によって上げることができる。ここで、v cosθは、コヒーレント積分のために選ばれた周波数ビンのオフセットである。長時間コヒーレント積分を行うことによって、受信機は、衛星の方向の利得を上げて、その他の方向の利得を下げてもよい。その結果、受信機は、マルチパスを抑制することができる。
【0022】
受信機が、干渉なしで衛星から直接受信した信号ではなく、衛星からの信号の反射を追跡している状況が生じる。特に、大きな建物およびその他の構造物(たとえば、山)があるエリアは、衛星から信号を直接受信するという受信機の機能を邪魔する可能性がある。干渉が受信機と衛星との直接路が遮蔽されているため、受信機は、1つ以上の反射面(たとえば、建物上のポイント)を反射した反射という形態で衛星からの信号を間接的に受信してもよい。
【0023】
受信機が1つ以上の反射を利用して速度および/または位置を特定する場合、これらの反射が結果の精度を低下させてしまう可能性がある。特に、信号が受信機に接近して受信される方向は、衛星の実際の方向とは異なり得る。反射は、信号を衛星の実際の方向とは異なる特定の方向から到来しているように見せてしまう。ひいては、受信機は、反射信号を利用して長時間コヒーレント積分を正確に行うことができなくなるであろう。なぜならば、計算内の方向ベクトルが衛星の実際の位置を指し示しており、反射が入ってくる方向とは異なるためである。よって、反射信号を利用して長時間コヒーレント積分を行って当該反射信号のSN比を上げることができるようになる必要がある。
【0024】
本明細書において示す例示的な実施の形態は、反射したGNSS信号に対する感度を高めるための技術を提供する。例示的な技術は、受信機が、衛星信号を直接受信することを邪魔する可能性のある構造物があるエリアで動作していても、反射信号を使用して長時間コヒーレント積分を行うことを可能にしてもよい。長時間コヒーレント積分を行うことによって、受信機は、反射信号のSN比を上げて、その他の方向から受信機に到来する信号を分離させることが可能になってもよい。その結果、信号を直接受信することの妨げになる構造物があるエリアで動作していても、受信機はその位置および速度をより正確に判定するであろう。
【0025】
さらに説明するために、例示的な実施の形態は、受信機が、移動中、最初に1組のGNSS信号を取得することを含んでもよい。たとえば、受信機は、4つの信号を受信し、これらの信号を用いて三辺測量術によってその位置を特定してもよい。当該1組の信号から、受信機は、受信機に到達する前に反射面(たとえば、建物上のポイント)を反射したように見える特定の信号を識別してもよい。受信機は、特に、衛星の位置を指定する情報、反射が受信機に到来した角度を指定する到来角度、信号の強度、受信機の現在地の地形情報など、1つ以上の要因を用いて反射を特定してもよい。たとえば、受信機は、受信機の位置の近くの建物の位置および高さを含んだ定義済みマップを用いてもよい。
【0026】
反射に依拠して長時間コヒーレント積分を行うとき、受信機は、この信号が反射であると識別することを鑑みて計算を調整するように構成されてもよい。特に、受信機は、受信機に到達する前に信号を反射した建物またはその他の構造物を反射として判断(すなわち、反射面を識別)してもよい。これは、たとえば、予め算出されたまたは大体の受信機の位置を考慮した周辺エリアの幾何学モデルを参照して行われてもよい。次に、受信機は、反射面に対して衛星の実際の位置を反映させることによって衛星の反射衛星位置を生成してもよい。次に、上述したように、この反射衛星位置を用いて、反射衛星位置に向かう方向に受信機から延びる単位ベクトルを求めてもよい。続いて、反射信号についてコヒーレント積分をしきい値期間(たとえば、数十ミリ秒以上)行うときに、特定した単位ベクトルを用いることができる。コヒーレント積分を行うことによって反射信号のSN比を上げることができ、その一方でその他の方向から受信機に到来する信号を分離させることも可能になる。反射衛星位置(実際の位置ではなく)に基づいた単位ベクトルを用いてコヒーレント積分が行われるので信号の反射に関する効果が考慮しつつ、信号のSN比を正常に上げることができる。
【0027】
例において、受信機または別のコンピューティングデバイス(たとえば、1つ以上のプロセッサ)は、受信機の位置および動きの測定のために信号を用いることに関する動作(たとえば、コヒーレント積分)を行うように構成されてもよい。たとえば、受信機は、コンピューティングデバイスの位置および動きの測定値を提供することに関する1つ以上の動作を実行するように構成されたGNSSコンポーネントをさらに備えるコンピューティングデバイスの構成要素であってもよい。別の例では、サーバ装置は、本明細書において示す1つ以上の動作を実行するように構成されてもよい。
【0028】
いくつかの実施の形態では、受信機(または関連するコンピューティングデバイス)は、受信信号に基づいて衛星を分類し、信号がLOS(Line-of-Sight)衛星から受信されたか、NLOS(Non-Line of Sight)衛星から受信されたかを判断するように構成されてもよい。衛星と受信機との間に信号が横断するための直接路がある場合、当該衛星を、LOS衛星とみなす。より具体的には、受信機は、建物、陸上の構造物、またはその他の物理エンティティが移動経路を邪魔することなく、LOS衛星から信号を直接受信してもよい。長時間コヒーレント積分を利用しており、かつ、信号がLOS衛星からの信号であった場合、受信機は、ある方向の受信機から衛星の実際の位置までの単位ベクトルを用いた受信機の速度のドット積を使用して、予想ドップラー値を演算してもよい。
【0029】
いくつかの構造物(たとえば、建物)が衛星と受信機との直接路と干渉する場合、当該衛星を、NLOS衛星とみなす。干渉のせいで、受信機は、NLOS衛星から信号を受信できない可能性があり、または、信号が1つ以上の反射面(たとえば、1つ以上の建物)にぶつかって跳ね返ったあと、散乱した信号または信号の反射を受信する可能性がある。長時間コヒーレント積分を利用しており、かつ、信号がNLOS衛星からの信号であった場合、受信機は、単位ベクトルおよび受信機から反射衛星位置まで延びる単位ベクトルを用いた受信機の速度のドット積を使用して、予想ドップラー値を演算してもよい。このような状況では、受信機は、信号を当初送信した衛星の反射衛星位置を判定できるようになるために、反射面(たとえば、どの建物が受信機に向けて信号を反射したのか、または、信号を反射した建物上の特定のポイント)を特定する必要があるであろう。
【0030】
状況によっては、受信機は、LOS衛星から到来したかNLOS衛星から到来したかを判断することが難しい信号を受信する場合がある。このように、受信機は、これらの信号を必要な場合にのみ利用する、または、位置の算出および動きの算出を行うときに破棄してもよい。
【0031】
例では、受信機は、衛星から受信した信号を3つの組に分割してもよい。第1組は、1つ以上のLOS衛星から到来した可能性のある信号に相当する。たとえば、受信機は、LOS衛星(たとえば、90パーセント以上の可能性)からであるというしきい値確率を少なくとも有する信号を第1組に割り当ててもよい。第1組に含まれる各信号の場合、コヒーレント積分を行うときの角度は、衛星の実際の方向にあるはずである。第2組は、1つ以上のNLOS衛星から到来した可能性のある信号に相当する。たとえば、受信機は、LOS衛星からではないというしきい値確率(たとえば、10パーセント以下)を有する信号を第2組に割り当ててもよい。第2組に含まれる各信号の場合、コヒーレント積分を行うときの角度は、反射した衛星の方向にあるはずである。第3組は、第1組にも第2組にも配置されなかった信号に相当してもよい。第3組に含まれる信号の場合、受信機は、衛星の方向にある角度を用いてもよく、場合によっては、これらの信号をまとめに使用して長時間コヒーレント積分を行うことを避けてもよい。
【0032】
上記分割システムを用いる場合、受信機は、その位置および速度を、これらの組に従って信号に優先順位を付けることによって特定してもよい。特に、受信機は、第1組からの信号を用いることを第2組および第3組からの信号を用いることよりも優先してもよい。また、受信機は、第3組からの信号よりも第2組からの信号を使用することを優先してもよい。よって、受信機は、第1組、第2組、第3組という順番で信号に優先順位を付けてもよい。優先度が低い信号は、低い重みで重み付けされた分析において使用されてもよく、まったく使用しなくてもよい。いくつかの例では、受信機は、逐次実装(たとえば、逐次カルマンフィルタ)を用いてその速度および位置を特定してもよい。このように、位置および速度が何らかの精度および不確実性のしきい値に収束すると、優先度が低い信号は無視してもよい。
【0033】
いくつかの例では、受信機は、強度が同様である複数の反射を1つのNLOS衛星から受信してもよい。このような状況では、受信機は、短時間のコヒーレント積分を行うか、反射の組合せを検索して、強度が最も大きい反射を識別するように構成されてもよい。複数の反射が受信機に到来したときに引き起こされ得る予想ドップラーの不確実性という理由から、受信機は、これらの戦略の一方または両方を利用してもよい。これに加えて、場合によっては、受信機は、信号がLOS衛星から受信した信号であるか、NLOS衛星からの反射であるかを識別できない場合がある。このように、受信機は、定義済みのしきい値信頼度を上回る信頼度で信号の送信元を確認できない場合、これらの信号を破棄するように構成されてもよい。
【0034】
いくつかの実施の形態は、受信機が、受信機に到達する前に複数の反射面(たとえば、複数の建物)を反射した信号を利用することを含んでもよい。このような状況では、受信機は、その衛星から受信機に集まる信号が他にないと判断してもよい。受信機が複数の反射面を反射した信号を、同じ衛星からその他のNLOS信号を受信することなく受信していると判断したことに応答して、受信機は、衛星の最後の反射位置を取得するまで、各反射面に対して衛星を反射させるように構成されてもよい。特に、衛星の最後の反射位置は、反射が受信機に到達する前に信号を反射した最後の反射面を用いて導出されてもよい。受信機は、最後の反射位置を利用して、その後反射信号について長時間コヒーレント積分を行うときに利用できるNLOS衛星の方向ベクトルを求めてもよい。
【0035】
ここで、例が実装され得るシステム、方法、およびデバイスの詳細について説明する。一般に、説明される方法は、様々な種類のコンピューティングデバイスまたはこれらデバイスの構成要素によって実装されてもよい。一例では、システムは、1つ以上のサーバを備えてもよい。当該1つ以上のサーバは、携帯電話などのデバイスから情報を受信したり、デバイスに情報を提供したりしてもよい。しかしながら、説明する方法は、特に、パーソナルコンピュータ、ウェアラブルコンピューティングデバイス、スタンドアロン受信機、またはモバイル機器など、その他のコンピューティングデバイスによって実装されてもよい。
【0036】
さらには、例示的なシステムは、本明細書において説明する機能を提供するためにプロセッサによって実行可能なプログラム命令を格納したコンピュータ読み取り可能な媒体の形をとってもよい。よって、例示的なシステムは、このようなプログラム命令を格納したコンピュータ読み取り可能な媒体を格納した、サーバなどのデバイス、またはこのようなデバイスのサブシステムなどの形をとってもよい。
【0037】
ここで、図面を参照すると、
図1は、本開示において説明する動作および/または機能など、様々な動作および/または機能を実行できる例示的なコンピューティングシステム100の簡略ブロック図である。コンピューティングシステム100は、スマートフォン、ポータブルコンピュータ、またはウェアラブルコンピューティングデバイスなど、任意の種類のデバイスに相当してもよく、プロセッサ102、データ記憶部104、通信インターフェース106、ユーザインターフェース108、および/またはGNSS受信機110など、様々な構成要素を備え得る。
【0038】
これらの構成要素およびその他の予想される構成要素は、接続機構112を介して互いに(または、別のデバイス、システム、もしくはその他のエンティティに)接続することができる。接続機構112は、2つ以上のデバイス、システム、またはその他のエンティティ間の通信を容易にする機構を表す。このように、接続機構112は、ケーブルまたはシステムバスなど、単純な機構であり得、パケットベースの通信ネットワーク(たとえば、インターネット)など、比較的複雑な機構でもあり得る。場合によっては、接続機構は、(たとえば、接続がワイヤレスである)無形媒体を含み得る。さらに別の実施態様では、コンピューティングシステム100は、より多い数の構成要素を備えることができ、またはより少ない数の構成要素を備えることができ、本明細書において説明する位置特定処理を実行するように構成されたスタンドアロン受信機に相当してもよい。
【0039】
プロセッサ102は、汎用プロセッサ(たとえば、マイクロプロセッサ)および/または専用プロセッサ(たとえば、デジタルシグナルプロセッサ(DSP))に相当してもよい。場合によっては、コンピューティングシステム100は、プロセッサの組合せを備えてもよい。
【0040】
データ記憶部104は、磁気記憶媒体、光記憶装置、もしくはフラッシュ記憶装置など、1つ以上の揮発性コンポーネント、不揮発性コンポーネント、取り外し可能なコンポーネント、および/もしくは固定ストレージコンポーネントを含んでもよく、ならびに/または、全体または一部をプロセッサ102と統合することができる。このように、データ記憶部104は、プロセッサ102によって実行されるとコンピューティングシステム100に本開示において説明するような1つ以上の動作および/または機能を実行させるプログラム命令(たとえば、コンパイルされたまたはコンパイルされていないプログラムロジックおよび/または機械コード)を格納した非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体の形をとってもよい。コンピューティングシステム100は、本開示において説明される動作および/または機能など、1つ以上の動作および/または機能を実行するように構成することができる。このようなプログラム命令は、ディスクリートソフトウェアアプリケーションを定義し得るおよび/またはディスクリートソフトウェアアプリケーションの一部であり得る。場合によっては、コンピューティングシステム100は、通信インターフェース106および/またはユーザインターフェース108などから入力を受け付けたことに応答して、プログラム命令を実行することができる。また、データ記憶部104は、本開示において説明される種類のデータなど、その他の種類のデータを格納してもよい。
【0041】
いくつかの例では、データ記憶部104は、コンピューティングシステム100が横断し得るエリアにおける反射面の位置である可能性のある位置を示した1つ以上のマップを格納してもよい。たとえば、これらのマップは、建物およびその他の構造的特徴の位置および高さを表してもよい。また、これに加えて、これらのマップは、信号の受信と干渉し得る山およびその他の陸地など、物理的特徴の位置および高さを示してもよい。コンピューティングシステム100は、外部ソースからこれらのマップを取得してデータ記憶部104に格納してもよい。
【0042】
通信インターフェース106によって、コンピューティングシステム100は、1つ以上のプロトコルに従って別のエンティティに接続するおよび/または通信を行うことができる。ある例では、通信インターフェース106は、Ethernet(登録商標)インターフェースまたはHD-SDI(High-Definition Serial-Digital-Interface)など、有線のインターフェースあり得る。別の例では、通信インターフェース106は、セルラーインターフェースまたはWI-FIインターフェースなど、ワイヤレスインターフェースであり得る。接続は、直接接続であり得、間接接続であり得る。後者は、ルータ、スイッチャー、その他のネットワーク機器など、1つ以上のエンティティを通過および/または横断する接続である。同様に、伝送は、直接伝送であり得、間接伝送であり得る。
【0043】
ユーザインターフェース108は、適用可能な場合、コンピューティングシステム100とコンピューティングシステム100のユーザとのやり取りを容易にすることができる。このように、ユーザインターフェース108は、キーボード、キーパッド、マウス、タッチパネル、マイクロフォン、および/もしくはカメラなどの入力コンポーネント、ならびに/または(たとえば、タッチパネルと組み合わせ可能な)表示装置、サウンドスピーカー、および/もしくはハプティックフィードバックシステムなどの出力コンポーネントとを含み得る。より一般的には、ユーザインターフェース108は、コンピューティングシステム100とコンピューティングデバイスシステムのユーザとのやり取りを容易にするハードウェアおよび/またはソフトウェアコンポーネントを含み得る。
【0044】
GNSS受信機110は、コンピューティングシステム100が位置の特定処理および速度の特定処理のために備え得る構成要素を表す。GNSS受信機110は、GNSS位置特定を行い得る様々な種類の受信機に相当してもよい。たとえば、GNSS受信機110は、位置の特定処理および速度の特定処理を行うために用いる信号を衛星から受信してもよい。このように、GNSS受信機110は、1つ以上のプロセッサ102、電源、ならびに、表示インターフェースおよびオーディオインターフェースなど様々なインターフェースからの支援を利用して動作してもよい。
【0045】
場合によっては、GNSS受信機110は、三辺測量および/またはその他の工程を行って、コンピューティングシステム100の位置を特定してもよい。三辺測量は、3つの異なるランドマークからの正確な距離を把握しているマップ上の位置を一対のコンパスを用いて特定することに類似している。ここで、この位置は、各サークルの半径が各ランドマークからの距離に相当するとした場合、ランドマークの各々の上で3つのサークルが重なる点に相当してもよい。実際は、GNSSを用いた位置の特定は、1組の連立方程式を用いて実装された三辺測量術を利用して行われる。ここで、各式は、受信機の位置に応じた1つの特定の衛星までの距離を記述している。ほとんどの場合、4つ以上の連立方程式がある。
【0046】
様々な技術を利用して、GNSS受信機110は、1組の衛星からの信号を用いて受信機のユーザの位置および速度を算出してもよい。いくつかの例では、GNSS受信機110は、2つの連続した位置を区別する(すなわち、ユーザ位置の微分係数を近似させる)ことによって速度を予測してもよい。この技術は、実行するのが簡単であるかもしれないが、その他の技術ほど正確ではないかもしれない。特に、疑似距離ベースの位置精度に依拠するため、2つの連続した位置を区別することでは、メートル/秒レベルの精度を有する結果が生成される可能性がある。
【0047】
その他の例では、GNSS受信機110は、ユーザの移動と衛星の移動に関するドップラー測定値を用いることによってコンピューティングシステム100の速度を特定してもよい。ユーザと衛星との相対運動によって生成される受信信号のドップラー周波数シフトによって、1秒当たり数センチメートル内で正確に速度を特定することが可能になる。これに加えて、GNSS受信機110は、連続したキャリア位相測定値(時間差動的キャリア位相(TDCP))の差を処理することによって性能を上げてもよい。このような戦略によって、GNSS受信機110が受信機の追跡ループからの出力された生のドップラー測定値のみを用いた場合よりも1桁分正確に速度を算出することが可能になり得る。
【0048】
このように、GNSS受信機110は、コンピューティングシステム100またはコンピューティングシステム100上のアプリケーションが位置、速度、および方向情報に素早くアクセスして利用することを可能にしてもよい。一般に、位置は、高度を含む3つの次元で特定されてもよい。GNSS受信機110は、Bluetooth(登録商標)またはWi-Fi信号を介して受信した情報を用いて位置の特定を補うように構成されてもよい。
【0049】
上記したように、接続機構112は、コンピューティングシステム100の構成要素同士を接続してもよい。接続機構112は、有線接続として図示されているが、いくつかの実施態様では、ワイヤレス接続が用いられてもよい。たとえば、通信リンク112は、ユニバーサルシリアルバスまたはパラレルバスなど、有線のシリアルバスであってもよい。また、有線接続は、プロプライエタリ接続であってもよい。また、同様に、通信リンク112は、特に、たとえば、Bluetooth無線技術、IEEE802.11(任意のIEEE802.11リビジョンを含む)に記載されている通信プロトコル、セルラー技術(GSM(登録商標)、CDMA、UMTS、EV-DO、WiMAX、LTE、または5Gなど)、またはZigbee(登録商標)テクノロジーを利用したワイヤレス接続であってもよい。
【0050】
図2は、1組の衛星からの信号を用いて位置を特定する受信機202を示す図である。特に、
図2は、受信機202が複数の衛星からの信号(衛星204A、衛星204B、衛星204C、および衛星204D)を受信および使用してユーザの位置を特定することを含む一般的な状況を表すためのシナリオ200を図示している。その他の実施態様では、シナリオ200は、より多くのまたは少ない衛星および/または受信機を含んでもよい。
【0051】
図示されているように、受信機202は、1組の衛星(衛星204A、衛星204B、衛星204C、および衛星204D)から信号を受信している。受信機202は、コンピューティングシステム100および/またはより多くのまたは少ない構成要素を有する別のデバイスに相当してもよい。たとえば、受信機202は、予想される他のデバイスの中でも特に、スマートフォン、ウェアラブルコンピューティングデバイス、または車載GNSSシステムに相当してもよい。
【0052】
GNSSネットワークにある衛星204A~204Dおよびその他の衛星は、地球の周囲を軌道を描いて回り、受信機が位置を特定するために使用し得る情報を有する信号を定期的に送信してもよい。各送信信号は、衛星が衛星の原子クロックに基づいて地球上に向けて信号を送信した時刻を示すものなど、受信機が位置の特定を行うことを支援する情報を含んでもよい。また、送信信号は、衛星のクロックとGPS時刻との関係を示したもの、またはその他のGNSSの基準時間、および受信機が送信側衛星の位置を特定するのに役立つ正確な軌道情報など、その他の情報を提供してもよい。このように、受信機202およびその他の受信機は、1組の衛星から定期的に送信される信号を受信して、位置および/または速度などその他の予想される情報を特定してもよい。複数の衛星(たとえば、4つの衛星)から信号を受信することによって、受信機が、上述した三辺測量の計算など、位置の特定処理を実行することが可能になってもよい。
【0053】
場合によっては、受信機202において受信された1つ以上の信号は、受信機202に到達する前に建物またはその他の機械構造物など、1つ以上の特徴を反射した信号であってもよい。たとえば、受信機202は、受信機202が近くに位置しているときに衛星204A~204Dからの信号を反射する可能性のある複数の大きな建物がある町に位置してもよい。このように、受信機202は、本明細書において説明する処理を実行して、反射のせいで1つ以上の信号が移動した余分な経路を計算に含めた正確な位置を特定してもよい。
【0054】
全体的に、いくつかの信号を送信側衛星から受信し、いくつかの信号を受信機202の大体の位置に位置する1つ以上の特徴を反射した後に受信するなど、受信機202は、様々な方法で信号を受信してもよい。これに加えて、
図2には示していないが、受信機202は、所与の衛星と受信機202との間のすべての経路を完全に遮断している1つ以上の特徴のせいで当該所与の衛星からいくつかの信号を受信できない場合がある。
【0055】
図3は、例示的な実施の形態に係る、受信機による速度の求め方を示す図である。シナリオ300は、受信機302を基準に衛星304の位置が変化すると衛星304から信号を受信する受信機302を図示している。
図3では衛星304しか示していないが、受信機302は、その他の複数の衛星からの信号(たとえば、合計で4つの衛星)を用いて正確にその速度を特定してもよい。
【0056】
受信機302は、GNSSから信号をパッシブに受信するように構成された受信機を有する任意の種類のデバイスを表す。いくつかの例では、受信機302は、車載ナビゲーションシステムに相当してもよく、速度変化を連続して測定するように構成されてもよい。また、受信機302は、スタンドアロン受信機に相当してもよい。
【0057】
上述したように、受信機302は、様々な技術を利用して速度を算出するように構成されてもよい。たとえば、受信機302は、以下のように受信機の位置の近似微分係数を形成することによって速度を予測するように構成されてもよい。
【0058】
【0059】
式1を利用することによって、選択した期間にわたって速度がほぼ一定である(すなわち、第1時刻(t1)と第2時刻(t2)との間の時間に加速または急激な動きの影響を受けない)限り、受信機302が速度を特定することが可能になってもよい。よって、異なる2つの連続した位置を区別することによって受信機302の速度を推定することは受信機302にとって容易であるかもしれないが、受信機302は、キャリア位相測定値を処理するなど、その他の技術を用いてもよい。
【0060】
キャリア位相測定値を処理することで、受信機302が、受信した衛星信号(たとえば、信号306、307、308)のドップラー周波数を精密に予測することが可能になってもよい。上述したように、ドップラーシフトは、受信機302に対する衛星304の相対運動によって生成される。天体位置情報と、受信機302がアクセス可能な(たとえば、受信機302にあるメモリに格納されている)軌道モデルとを用いて、衛星の速度ベクトルvが演算されてもよい。天体位置情報は、時間経過に伴う衛星304およびその他の衛星の軌跡(たとえば、位置および速度)を提供することができる。
【0061】
衛星304が軌道に乗ると、受信機302において受信した周波数は、衛星304が(たとえば、第1の位置310および第2の位置311から)受信機302に接近すると高くなり、衛星304が(たとえば、第2の位置311から第3の位置312に)受信機302から後退すると低くなる。よって、受信機302において受信した周波数は、衛星304が第1の位置310から第2の位置311に向かって受信機302に向けて移動すると高くなり、衛星304が第2の位置311から第3の位置312に向かって受信機から離れると低くなる。このように、衛星304が受信機302に対してその最も近い位置にあるとき(たとえば、衛星304が受信機302の上方である第2の位置311に位置しているとき)、ドップラーシフトはゼロである。この地点では、受信機302に対する衛星304の速度の法線成分はゼロである。衛星304がこの地点(すなわち、第2の位置311)を通過すると、周波数は、符号を変化させる(すなわち、Δfの符号が変化する)。受信機302では、受信した周波数(fR)を、以下のようなドップラー式によって近似させることができる。
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
衛星送信周波数fTnは、実際に送信された衛星の周波数である。衛星周波数の生成およびタイミングは、非常に正確な自走の原子標準に基づいて構成されてもよい。原子標準は、システム時刻からずれていてもよい。
【0070】
地上管制/管理ネットワークによって、このオフセットを定期的に補正するためのいくつかの補正値が生成されてもよい。たとえば、補正値は、ナビゲーションメッセージにおいて使用可能であってもよく、実際の衛星送信周波数を得るために受信機が適用させることができる。その結果、以下が求められる。
【0071】
【0072】
ここで、f0は、公称の、送信された衛星の周波数を表し、ΔfTnは、ナビゲーションメッセージの更新から求めた補正を表す。
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
ドット積をベクトルコンポーネントに換算して展開すると、以下が得られる。
【0078】
【0079】
【0080】
よって、式9の左辺にあるすべての変数は、算出されるか測定値から導出されるかのいずれかである。anの成分は、(速度の演算よりも前であると想定される)受信機302の位置を特定する間に取得される。vnの成分は、天体位置データおよび衛星軌道モデルから求められる。fTnは、上に示した式6、およびナビゲーション更新から導出された周波数補正値を用いて予測することができる。場合によっては、周波数補正は必要でなくてもよく、fTnは、にf0置き換えることができる。fnは、受信機のデルタレンジの測定値で表すことができる。
【0081】
式9を簡素化するために、以下の変数dnを用いてもよい。
【0082】
【0083】
式9に示すfn/fTnという項を、計算において誤差を生じさせることなく近似させることができる。その結果、式9を以下のように書き換えることができる。
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
上に示したようにHは、受信機の位置を特定するための式で用いられる行列と同一である。行列表記では、以下の通りである。
【0088】
【0089】
速度および時刻ドリフトの解は、以下のように求められる。
【0090】
【0091】
速度の公式化において用いられる周波数の予測値に繋がる位相測定値は、測定ノイズおよびマルチパスなどのエラーなどによって不正な値になってしまう場合がある。さらには、受信機302の速度の演算は、受信機302の位置の精度および衛星の天体位置ならびに衛星の速度の正確な知識によって左右される。いくつかの例では、5つ以上の衛星に対する測定が行われた場合、最小二乗推定法を採用して未知数の予測を改善させてもよい。
【0092】
図4Aは、衛星404から信号406を直接受信している受信機402を示す例示的なシナリオ400を示す図である。状況によっては、受信機は、建物またはその他の高い構造物からの干渉なしで衛星から信号を受信できるように位置していてもよい。たとえば、高い構造物がない開けたエリアに位置した受信機は、その速度を正確に予測するのに十分な信号を受信することができる場合が多い。このような状況では、衛星と受信機との視線が開かれている(すなわち、干渉がない)ので、送信側衛星は、受信機に対してLOS衛星であると考えられてもよい。
【0093】
シナリオ400に示すように、受信機402は、干渉なしで衛星404からの直接路を介して信号406を受信するように位置している。その結果、現在地にある衛星404は、受信機402に対してLOS衛星であると考えることができる。よって、信号406は、さらに変更を行うことなく位置および速度の算出に用いることができる。いくつかの例では、衛星404の位置および向きに加えて、受信機402は、その大体の位置および当該位置の地形情報を用いて、信号406が干渉なしで受信されたと判断してもよい。
【0094】
図4Bは、衛星412から信号414Aを直接受信できなかった後の反射信号414Bを受信機402が受信している様子を示した例示的なシナリオ410を示す。状況によっては、受信機は、受信機に到達する前に信号を遮断または反射させ得る大きな建物またはその他の構造物のせいで信号の受信を邪魔される場合がある。
【0095】
シナリオ410は、特徴416が存在するために受信機402が衛星412から信号414Aを直接受信できなくなっている例示的な状況を表している。特に、特徴416は、特徴416の近くに位置する受信機402およびその他の受信機が1つ以上の送信側衛星から信号を受信できないようにし得る大きな建物または別の種類の構造物を表してもよい。図示されているように、特徴416は、受信機402に対する軌道における衛星412が送信した信号414Aのその向きおよび位置からの経路を完全に遮断するように位置している。
【0096】
受信機402は、衛星412から信号414Aを直接受信できないと図示されているが、受信機402は、衛星412からの信号を受信して位置を特定するために用いることができる。シナリオ410にさらに示すように、受信機402は、信号414Bが特徴418に反射した後の反射信号414Bを受信してもよい。信号414Bを受信すると、受信機402に対する衛星412の位置および向き、地形情報、衛星412に対する信号414Bの受信角度および受信機402の位置など、様々な要因に基づいて、受信機402は、信号414Bが反射に相当し得ると識別してもよい。たとえば、受信機402は、地形情報ならびに衛星412の位置および向きを用いて、特徴416の位置は受信機402に対する位置であると判断し、特徴416が衛星412から信号414Aを受信機402が直接受信できないようにしている全体的な高さを特定してもよい。この分析が、特徴418に対する受信機402の測位および衛星412の大体の位置に基づいて信号414Bが反射である可能性があるとする受信機402の判断を、さらに支援してもよい。
【0097】
図5は、反射したGNSS信号に対する感度を高める方法500のフローチャートである。方法500は、ブロック502、504、506、508、および510のうち1つ以上に例示されるような1つ以上の動作、機能、または動作を含んでもよい。これらのブロックは連続した順序で示されているが、これらのブロックは、場合によっては、並列で行われてもよく、および/または本明細書において説明される順序とは異なる順序で行われてもよい。また、様々なブロックをより少ないブロックに組み合わせてもよいし、さらなるブロックに分割してもよいし、および/または、所望の実施態様に基づいて省いてもよい。
【0098】
これに加えて、本明細書に記載の方法500ならびにその他の工程および方法の場合、このフローチャートは、本実施の形態の1つの予想される実施態様の機能および動作を示す。この点に関して、各ブロックは、モジュール、セグメント化、またはプログラムコードの一部を表してもよく、工程において特殊な論理関数またはステップを実装するためのプロセッサによって実行可能な1つ以上の命令を含む。プログラムコードは、たとえば、ディスクまたはハードドライブを含む記憶装置など、任意の種類のコンピュータ読み取り可能な媒体またはメモリ上に格納されてもよい。
【0099】
コンピュータ読み取り可能な媒体は、たとえば、レジスタメモリ、プロセッサキャッシュ、およびRAM(Random Access Memory)のように、データを短期間格納するコンピュータ読み取り可能な媒体など、非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体を含んでもよい。また、コンピュータ読み取り可能な媒体は、たとえば、ROM(Read Only Memory)、光ディスクまたは磁気ディスク、CD-ROM(compact-disc read only memory)のような補助長期記憶装置または永続長期記憶装置など、非一時的な媒体またはメモリを含んでもよい。
【0100】
また、コンピュータ読み取り可能な媒体は、任意のその他の揮発性または不揮発性記憶システムであってもよい。コンピュータ読み取り可能な媒体は、たとえば、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体、有形記憶装置、またはその他の製品と考えられてもよい。さらには、本明細書に記載の方法500ならびにその他の工程および方法の場合、
図5の各ブロックは、工程において特殊な論理関数を実行するために有線で接続された回路を表してもよい。
【0101】
ブロック502において、方法500は、受信機に到達する前に反射面に反射した特定の測位信号を識別するステップを含む。受信機は、移動中に特定の測位を受信して識別してもよい。
【0102】
受信機(たとえば、受信機202)は、GNSSネットワークにおいて動作している複数の衛星から信号を受信するGNSS受信機であってもよい。受信機は、複数の衛星からの信号を用いて、位置ならびに/または、受信機の現在地および速度など、その他の情報を特定してもよい。その他の例では、受信機は、同じ衛星から複数の信号(たとえば、2つ以上の信号)を受信して追跡してもよい。たとえば、受信機は、同じ衛星からの2周波の信号(たとえば、L1およびL5)を監視するように構成されてもよい。
【0103】
いくつかの実施態様では、受信機は、位置の算出を行うときの受信機に対する衛星の位置を記述した軌道情報、および衛星のクロックに従って、衛星が信号を送信した時刻の表示を用いてもよい。いくつかの例では、受信機は、少なくとも4つの衛星からの信号を受信して、三辺測量による識別を可能にしてもよい。
【0104】
これに加えて、衛星から測位信号を受信したことに応答して、受信機は、ドップラーシフトを検出してもよい。このように、ドップラーシフトを検出したことに応答して、受信機は、特定の信号が反射であると識別してもよい。
【0105】
さらに別の実施態様では、受信機は、情報の組合せに基づいて、信号が反射信号に対応すると識別してもよい。たとえば、受信機は、受信機の大体の位置についての地形情報、受信機のおおよその位置、および衛星の位置を用いて、反射信号に相当する可能性のある1つ以上の受信信号を識別してもよい。受信機は、当該大体の位置における建物および/またはその他の特徴の位置および高さを用いて、反射信号であると思われる信号を識別することを支援してもよい。たとえば、受信機は、一般的なエリアの地形情報ならびに受信機および衛星の位置を用いて、直接路が遮断されている可能性のある信号を識別してもよいため、これらの信号は、受信機に到達する前に反射された1つ以上の特徴であろう。
【0106】
ブロック504において、方法500は、特定の測位信号を送信した衛星の反射衛星位置を、当該特定の測位信号を識別したことに基づいて特定するステップを含む。受信機は、反射面に対して衛星の位置を反映することによって反射衛星位置を特定してもよい。場合によっては、受信機は、そのエリアにおける反射面の定義済みマップ(たとえば、3D市内地図または地形図)を用いて反射面を検出してもよい。定義済みマップは、受信機の位置に基づいてもよい。
【0107】
ブロック508において、方法500は、衛星の反射衛星位置までの方向ベクトルを求めるステップを含む。たとえば、方向ベクトルは、受信機から反射衛星位置に向かって延在してもよい。
【0108】
ブロック510において、方法500は、反射衛星位置までの方向ベクトルに基づいて、コヒーレント積分をしきい値期間行って特定の測位信号のSN比を上げるステップを含む。受信機は、コヒーレント積分をしきい値期間行うことによって、1つ以上の方向から受信機に到来する信号を分離させることを可能にしてもよい。
【0109】
コヒーレント積分を行うことは、衛星から特定の測位信号を受信するときに方向ベクトルに沿った指向性利得を上げることを含んでもよい。これに加えて、コヒーレント積分を行うことは、受信機の周波数を調整して衛星からの特定の測位信号のドップラーに一致させることを含んでもよい。
【0110】
いくつかの例では、受信機は、1組の衛星から複数の測位信号を受信して、特定の測位信号およびその他の測位信号を用いて受信機の位置を特定してもよい。また、受信機は、その速度を、これらの測位信号を用いて求めてもよい。ひいては、受信機の速度に基づいて、受信機は、コヒーレント積分をしきい値期間行って特定の測位のSN比を上げてもよい。速度の測定値は、コヒーレント積分を行うときの補足としての役割を果たしてもよい。場合によっては、受信機は、その速度を1つ以上のセンサ(たとえば、慣性計測装置)を用いて特定し、コヒーレント積分を行うときに当該速度を利用してもよい。
【0111】
いくつかの例では、方法500は、LOS衛星からの測位信号と逐次フィルタ(たとえば、カルマンフィルタ)のみを用いて、受信機の次の位置および次の速度を特定するステップを含んでもよい。カルマンフィルタは、システムの動的モデル(たとえば、運動の法則)、そのシステムへの既知の制御入力、および(たとえば、さらに別の信号および/またはセンサからの)複数の連続した測定値を用いて、1つの測定値だけを用いて得られる予測よりもよいシステムの変動量(その状態)の予測を形成してもよい。コンピューティングシステムは、カルマンフィルタを使用してセンサーフュージョンおよびデータフュージョンを行ってもよい。
【0112】
いくつかの例では、受信機は、1組の衛星から測位信号を受信してもよい。これらの信号を用いて、受信機は、反射面の定義済みマップおよび各測位信号に含まれる情報に基づいて、複数の測位信号の中から、LOS衛星から送信された第1組の測位信号と、NLOS衛星から送信された第2組の測位信号とを識別してもよい。受信機は、測位信号のうち、第1組の測位信号または第2組の測位信号に該当しない1つ以上の測位信号を破棄してもよい。
【0113】
いくつかの例では、受信機は、第1組の測位信号が3つ以下の測位信号を含むと判断してもよい。この判断に基づいて、第1組の測位信号と、第2組の測位信号のうち少なくとも1つの測位信号との組合せを用いて、受信機はその位置および速度を特定してもよい。用いられる第2組の信号の数は、使用可能な第1組の信号の数によって異なってもよい。このように、受信機は、第1組の信号を優先してもよい。第2組の測位信号の中から用いられる測位信号ごとに、受信機は、当該信号を送信した衛星の反射衛星位置を特定してもよい。受信機は、反射衛星位置までの方向ベクトルを求めて、コヒーレントをしきい値期間行って信号のSN比を上げてもよい。さらに、受信機は、コヒーレント積分を当該しきい値期間行って第2組からの信号のSN比を上げたことに基づいて、受信機の位置および速度を特定してもよい。
【0114】
いくつかの例では、第1組の測位信号と第2組の測位信号のうち少なくとも1つの測位信号との組合せを用いて受信機の位置および速度を特定することは、各信号に重みを割り当てることを含んでもよい。たとえば、受信機は、第1組の測位信号に含まれる各測位信号に第1の重みを割り当てて、第2組の測位信号に含まれる各測位に第2の重みを割り当ててもよい。第2の重みは、第1の重みとは異なる(たとえば、第2の重みは、第1の重みよりも小さい)。次に、受信機は、加重平均分析に基づいて、第1組の測位信号と、第2組の測位信号のうち少なくとも1つの測位信号との組合せを用いて受信機の位置および速度を特定もよい。加重平均分析によって、重みが大きい信号(たとえば、第1組の信号)にはより多くの重みが与えられ(たとえば、より大きな値を割り当てられ)てもよい。
【0115】
いくつかの例では、受信機(または関連するコンピューティングデバイス)は、1組の測位信号のうち、受信機に到達する前に第2の反射面を反射した第2の測位信号を特定してもよい。受信機は、特定の測位信号と第2の測位信号との比較を行って、第2の測位信号を破棄してもよい。たとえば、受信機は、特定の測位信号を送信した衛星が第2の測位信号も送信したと判断し、第2の測位信号よりも特定の信号のほうが優勢であると判断してもよい。特定の信号および第2の信号は、いずれも、異なる反射面(たとえば、異なる建物)から受信機に到来する同じ信号の反射であってもよい。このように、受信機は、長時間コヒーレント積分、ならびに次の速度算出および位置算出に優勢な反射を用いてもよい。優勢であるとは、優勢でない信号(たとえば、同じ信号の別の反射)と比べて、特定の信号(または信号の反射)がより強い強度で受信されること、または、受信機が当該信号をより簡単に利用できることもしくはより正確な測定値に利用できることを示してもよい。
【0116】
いくつかの例では、受信機は、受信機において受信された第2の測位信号を第2の衛星が送信したと判断してもよい。特に、第2の衛星は、NLOS衛星であってもよい。このように、第2の衛星が第2の測位信号を送信したと判断したことに基づいて長時間コヒーレント積分を用いて受信機の速度および位置を特定するとき、受信機は、第2の測位信号を破棄してもよい。特に、受信機は、その他の衛星からの信号が十分に使用可能である場合、第2の信号を破棄してもよい。
【0117】
図6は、例示的な実施の形態に係る、コヒーレント積分を行っている受信機を示す図である。速度(v)606で移動中の受信機602が図示されている。これに加えて、受信機602は、角度(θ)608で衛星604から到来する1つ以上の信号を受信している。このように、受信機602は、1つ以上の衛星604から受信した信号について、コヒーレント積分をしきい値期間行ってもよい(たとえば、数十ミリ秒以上)。コヒーレント積分をしきい値期間(たとえば、数十ミリ秒以上)行う(本明細書において、長時間コヒーレント積分を行うとも言う)ことは、受信機602が角度(θ)608を有する信号の指向性の利得を上げることを可能にし得る。その結果、受信機602は、衛星604の方向の利得610を上げて、その他の方向の利得を下げてもよく、このようにマルチパスを抑制する。特に、マルチパスを抑制することは、受信機602が衛星604から受信した信号のSN比および測定精度を上げることを可能にする。
【0118】
図7Aおよび
図7Bは、例示的な実施の形態に係る、反射信号に対する感度を高めている受信機を示すシナリオを説明する図である。シナリオ700は、受信機がその速度を推定する際に送信側衛星から信号を直接受信できないことを含む状況を表すように示されている。たとえば、受信機702が大きな建物がある市街での車両走行用のナビゲーションシステムに相当する場合、シナリオ700が生じ得る。大きな建物は、衛星704からの信号の受信を遮断または干渉する場合がある。
【0119】
図7Aは、例示的な実施の形態に係る、衛星704からの信号712の反射を受信する受信機702を示す図である。状況によっては、市内のナビゲーション中など、受信機は、受信機の性能に影響を与え得る建物およびその他の障害物に遭遇する場合がある。特に、建物は、衛星から信号を直接受信するという受信機の機能を邪魔する可能性がある。これらの状況では、受信機は、1つ以上の信号を反射という形で受信してもよい。反射とは、受信機に到達する前に1つ以上の障害物(たとえば、1つ以上の建物)に反射した後に受信機に到来する信号である。
【0120】
シナリオ700は、受信機702が障害物(たとえば、建物706、708)に対するその位置、および受信機702に対する衛星704の位置のせいで反射を受信し得る例示的な状況を示している。特に、受信機702は、信号712が建物708に跳ね返った後に信号712の反射を受信することが図示されている。また、建物706が受信機702と衛星704との直接路を遮断しているために受信機702が信号710を受信できないことが図示されている。
【0121】
図7Bは、例示的な実施の形態に係る、衛星704からの信号712の反射に対する感度を高めている受信機702を示す。建物706と708との間を速度714で移動中の受信機702が図示されている。
【0122】
衛星からの信号を処理するとき、受信機702(または関連するコンピューティングデバイス)は、コヒーレント積分を行ってもよい。このコヒーレント積分は、信号712を拡散コードのローカルコピーで乗算することを含む。拡散コードは、理論上、受信信号との位相コヒーレンスを維持する。受信信号のドップラーが変化した場合、特に長時間コヒーレント積分(すなわち、数十ミリ秒または数百ミリ秒、またはそれ以上の時間のコヒーレント積分)を行う際に拡散コードのローカルコピーのドップラーを変更して位相コヒーレンスを維持するべきである。上記したような衛星に向かう単位ベクトルを用いた受信機の新しい速度のドット積から新しいドップラー値が演算され得るよう、受信機702の速度714が変化した場合にドップラー変化が生じる場合がある。位相コヒーレンスを維持するために新しいドップラー値を演算することは、「密結合」、「超密結合」、および「S-GPS」としても知られている。
【0123】
受信機702は、その位置および速度714を算出するために、信号712の反射を利用してもよい。特に、信号712の反射は、衛星704の現在地からではなく、建物708の向こうの方向から到来しているように見える。よって、信号712の反射のSN比を上げるために、受信機702は、建物708を反射面であると識別し、建物708に対して衛星704の位置を反射させて反射衛星位置716を予測するように構成されてもよい。
図7Bに示すように、反射衛星位置716は、信号712の反射が反射衛星位置716の同じ方向から到来しているように見えるように位置している。
【0124】
衛星704の反射衛星位置716を予測するために、受信機702は、反射面を通る座標系(X,Y,Z)を論理的に配置してもよい。よって、衛星704の現在地が座標(x,y,z)に位置している場合、受信機702(または、関連するプロセッサ)は、衛星704の反射衛星位置716が座標(-x,y,z)に位置していると予測してもよい。次に、受信機702は、受信機702の速度を特定するときに、反射衛星位置716を利用して受信機702から反射衛星位置716に向かって延びる方向ベクトルを求めて、衛星704に対応付けてもよい。反射衛星位置716までの方向ベクトルに基づいて、受信機702は、コヒーレント積分をしきい値期間(たとえば、数十ミリ秒以上)行って、測位信号のSN比を上げてもよい。
【0125】
図8は、例示的な実施の形態に係る、複数の建物を反射した信号を使用して長時間コヒーレント積分を行っている受信機に示す図である。シナリオ800に示すように、受信機802は、衛星804Aが送信した信号806の反射を受信してもよい。この反射は、最初に建物808を反射し、続いて受信機802に向かって建物810を反射した後、受信機802に到来してもよい。このように、シナリオ800は、信号が受信機に到達する前に複数の特徴を反射した後に受信機がコヒーレント積分をしきい値期間(たとえば、数十ミリ秒以上)行い得る例示的な状況を示す。よって、信号806は複数の建物808、810を反射するが、受信機802は、コヒーレント積分を行って信号806のSN比を上げてもよい。
【0126】
いくつかの実施の形態では、受信機802は、受信機802上で収束する衛星804Aからのその他のNLOS信号があるかどうかをまず判断するように構成されてもよい。信号806の反射が受信した唯一の信号である(または少なくとも強度が最も大きい受信信号)と判断したことに応答して、受信機802は、反射が受信機802に到達する前に最後の反射面で終わるよう、各反射面に対して衛星804Aの位置を反射させてもよい。特に、受信機802は、まず、建物808上の反射面812に対して衛星804の位置を反射させて、反射衛星位置804Bを特定してもよい。続いて、受信機802は、建物810上の反射面814に対して第1の反射衛星位置804Bの位置を反射させて、第2の反射衛星位置804Cを特定してもよい。その結果、受信機802は、受信機802から第2の反射衛星位置804Cに延びる単位ベクトルを利用してもよい。同様に、信号が受信機802に到達する前に最後の反射面で終わるよう、連続する各反射面に対して衛星の位置を順番に反映させることによって、3つ以上の信号の反射を合体させてもよい。
【0127】
これに加えて、受信機802に関して、異なる衛星の位置までの予測距離が
図8に示されている。特に、衛星804Aが位置「-Xsv」にあり、反射面(たとえば、建物808、810)間の距離が「w」であるとすると、第1の反射衛星位置804Bは、位置「Xsv+2w」であり、第2の反射位置804Cは、位置「-(Xsv+2w)」である。
【0128】
さらに別の例では、信号は、受信機802に到達する前にさらに多くの表面を反射する場合がある。たとえば、信号は、受信機802に到達する前に建物に3回反射する可能性がある。このように、受信機802または関連するコンピューティングデバイスは、最後の反射衛星位置をコヒーレント積分に利用するために、上記処理を実行して衛星の位置を3回反射させてもよい。
【0129】
図9は、本明細書において示す少なくともいくつかの実施の形態に従って配置された、コンピューティングデバイス上でコンピュータ処理を実行するためのコンピュータプログラムを含む例示的なコンピュータプログラムプロダクトの概念的な部分ビューを示した概略図である。一実施の形態では、信号担持媒体902を用いてコンピュータプログラムプロダクト900を提供する。
【0130】
信号担持媒体902は、1つ以上のプロセッサによって実行されると
図1~
図8で上述した機能またはそれら機能の一部を提供し得る1つ以上のプログラミング命令904を含んでもよい。いくつかの例では、信号担持媒体902は、ハードディスクドライブ、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Video Disk)、デジタルテープ、メモリなど、コンピュータ読み取り可能な媒体906を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0131】
いくつかの実施態様では、信号担持媒体902は、メモリ、R/W(read/write)CD、R/W DVDなど、コンピュータ書き込み可能な媒体908を含んでもよいが、これらに限定されない。信号担持媒体902は、デジタルおよび/またはアナログ通信媒体など(たとえば、光ファイバケーブル、導波路、有線の通信リンク、ワイヤレス通信リンクなど)、通信媒体910を含んでもよいが、これらに限定されない。よって、たとえば、信号担持媒体902は、ワイヤレス形式の通信媒体910によって伝達されもよい。
【0132】
プログラミング命令904は、たとえば、コンピュータにより実行可能なおよび/またはロジックが実装された命令であってもよい。いくつかの例では、
図1のプロセッサ102など、コンピューティングデバイスは、コンピュータ読み取り可能な媒体906、コンピュータ書き込み可能な媒体908、および/または通信媒体910のうち1つ以上によってプロセッサ102に伝達されたプログラミング命令904に応答して様々な操作、機能、または動作を提供するように構成されてもよい。
【0133】
また、非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体を、互いに遠隔に位置し得る複数のデータ記憶素子間で分散させることができる。格納された命令の一部またはすべてを実行するコンピューティングデバイスは、
図1に示すコンピューティングシステム100または
図2に示す受信機202などのデバイスであってもよい。あるいは、格納された命令の一部またはすべてを実行するコンピューティングデバイスは、サーバなど、別のコンピューティングデバイスであり得る。
【0134】
本明細書において説明した配置は、例示に過ぎないことを理解されたい。このように、当業者は、その他の配置およびその他の要素(たとえば、マシン、インターフェース、機能、命令、および機能のグループ化など)を代わりに用いることができること、所望の結果に従っていくつかの要素を完全に省いてもよいことを理解するであろう。さらには、説明した要素の多くは、任意の適した組合せおよび位置において、離散または分散したコンポーネントとして実装され得る機能エンティティ、または、その他のコンポーネントと共に実装され得る機能エンティティである。
【0135】
様々な態様および実施の形態を本明細書に開示したが、その他の態様および実施の形態も当業者に明らかになるであろう。本明細書に開示の様々な態様および実施の形態は、例示であり、限定ではなく、実際の範囲は、添付の特許請求の範囲に示されており、このような特許請求の範囲が与えられる均等物の全範囲とともに示されている。また、本明細書において用いられた用語は、特定の実施の形態を説明するための用語に過ぎず、限定ではないことを理解されたい。
【0136】
説明した例に対して多くの詳細な改変、変形、変更を行うことができるため、先の説明および添付の図面に示したすべての事項は例示と解釈されることを意図しており、限定という意味ではない。