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特許7586886改善されたmRNA装填脂質ナノ粒子、およびそれを作製するプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】改善されたmRNA装填脂質ナノ粒子、およびそれを作製するプロセス
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7105 20060101AFI20241112BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
A61K31/7105
A61K48/00
A61K47/24
A61K9/127
A61K9/51
A61K47/32
A61K47/28
A61K47/26
A61K38/00
A61K39/00 G
【請求項の数】 32
(21)【出願番号】P 2022500900
(86)(22)【出願日】2020-07-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-27
(86)【国際出願番号】 US2020041122
(87)【国際公開番号】W WO2021007278
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】62/871,513
(32)【優先日】2019-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517316797
【氏名又は名称】トランスレイト バイオ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】カーブ, シュリラング
(72)【発明者】
【氏名】サロード, アシシュ
(72)【発明者】
【氏名】デローサ, フランク
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03315125(EP,A1)
【文献】国際公開第2018/089801(WO,A1)
【文献】特表2018-519285(JP,A)
【文献】特許第7483294(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 48/00
A61K 47/00-47/69
A61K 9/00- 9/72
A61K 38/00-38/58
A61K 39/00-39/44
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
mRNAの送達を必要とする対象にそれを行うための組成物であって、脂質ナノ粒子を含み、前記脂質ナノ粒子が、1つ以上のカチオン性脂質と、1つ以上のPEG修飾脂質と、1つ以上のヘルパー脂質とを含み前記mRNAを封入しており、前記1つ以上のヘルパー脂質の少なくとも1つが、1,2-ジエルコイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DEPE)を含みDEPEは、前記脂質ナノ粒子中に、総脂質の25モルパーセント~35モルパーセントの濃度で存在する、組成物。
【請求項2】
前記対象への前記組成物の投与が、1つ以上の異なるヘルパー脂質を含み、かつDEPEを含まないことを除いて同じ脂質成分および量を有する脂質ナノ粒子を含む第2の組成物中の同じmRNAの発現と比較して、前記mRNAの発現の強化をもたらす、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
記1つ以上の異なるヘルパー脂質が、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DLOPE)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(POPE)、および/またはそれらの組み合わせから選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
発現が前記脂質ナノ粒子の第2の組成物と比較して少なくとも2倍強化される、請求項2または3に記載の組成物。
【請求項5】
前記1つ以上のカチオン性脂質の少なくとも1つが、各々C10-C16の鎖長の1~4つのアルキル鎖を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記1つ以上のカチオン性脂質の少なくとも1つが、4つの脂肪族鎖を含むリピドイドである、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記1つ以上のカチオン性脂質の少なくとも1つが、以下の式のカチオン性脂質、
【化1】
またはその薬学的に許容される塩であるか、またはそれを含み、
式中、R1およびR2が各々独立して、HまたはC1-C6脂肪族であり、mが各々独立して、1~4の値を有する整数であり、Aが各々独立して、共有結合またはアリーレンであり、L1が各々独立して、エステル、チオエステル、ジスルフィド、または無水物基であり、L2が各々独立して、C2-C10脂肪族であり、X1が各々独立して、HまたはOHであり、R3が各々独立して、C6-C20脂肪族である、請求項に記載の組成物。
【請求項8】
3が各々独立して、C8-C16脂肪族である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記1つ以上のカチオン性脂質の少なくとも1つが、化合物1であるか、またはそれを含む、請求項に記載の組成物。
【請求項10】
前記1つ以上のカチオン性脂質の少なくとも1つが、cKK-E12であるか、またはそれを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記1つ以上のカチオン性脂質の少なくとも1つが、ICE(イミダゾールコレステロールエステル)であるか、またはそれを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記1つ以上のPEG修飾脂質の少なくとも1つが、C6-C20の鎖長のアルキル鎖を有する脂質に共有結合した最大5kDaの鎖長のポリ(エチレン)グリコール鎖であるか、またはそれを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記ナノ粒子が1つ以上のステロールをさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記1つ以上のステロールの少なくとも1つがコレステロールベースの脂質を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記コレステロールベースの脂質がコレステロールおよび/またはPEG化コレステロールである、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記mRNAが、ペプチドまたはポリペプチドをコードする、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記mRNAが全身に送達され、翻訳されたペプチドまたはポリペプチドが投与後24時間以上の時点で肝臓または血清中で検出可能である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記ポリペプチドが治療用ポリペプチドである、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
前記治療用ポリペプチドが、(a)抗体軽鎖もしくは抗体重鎖、または(b)前記対象
に存在しないまたは欠乏しているポリペプチドである、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
記mRNAがペプチドをコードする、請求項16に記載の組成物。
【請求項21】
前記ペプチドが抗原である、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
mRNAを封入する脂質ナノ粒子を調製するための方法であって、
(a)1つ以上のカチオン性脂質、1つ以上のPEG修飾脂質、および1つ以上のヘルパー脂質の混合物であって、前記1つ以上のヘルパー脂質の少なくとも1つが、1,2-ジエルコイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DEPE)を含み、DEPEは、該混合物中の総脂質の25モルパーセント~35モルパーセントの濃度で存在する混合物を提供することと、
(b)工程(a)で提供された前記混合物から脂質ナノ粒子を形成することと、を含み、
前記方法が、前記mRNAを前記脂質ナノ粒子に封入することをさらに含み、封入が、工程(b)での前記脂質ナノ粒子の形成前または形成後に行われる、方法。
【請求項23】
前記mRNAを封入する前記脂質ナノ粒子が安定している、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
記ヘルパー脂質が、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DLOPE)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(POPE)、および/またはそれらの組み合わせのうちのいずれか1つを含まない、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記混合物中の前記1つ以上のPEG修飾脂質の少なくとも1つが、C6-C20の鎖長のアルキル鎖を有する脂質に共有結合した最大5kDaの鎖長のポリ(エチレン)グリコール鎖を含む、請求項2224のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記混合物が1つ以上のステロールをさらに含む、請求項2225のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記1つ以上のステロールの少なくとも1つがコレステロールベースの脂質を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記コレステロールベースの脂質がコレステロールおよび/またはPEG化コレステロールである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記mRNAが、治療用ペプチドまたはポリペプチドをコードする、請求項2228のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記mRNAが、予め形成された脂質ナノ粒子中に封入される、請求項2229のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記方法が、前記mRNAの封入前および/または封入後に、前記脂質ナノ粒子を接線流濾過(TFF)に供することをさらに含む、請求項2230のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記方法が、前記脂質ナノ粒子をトレハロース溶液中で製剤化することをさらに含む、請求項2231のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年7月8日に出願された米国仮出願第62/871,513号に対する優先権を主張するものであり、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、脂質媒介性mRNA送達、ならびにその脂質化合物およびそのような化合物を含む組成物に関する。特に、本発明は、そのような化合物および組成物の方法および使用、ならびにそのような化合物および組成物を作製するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
メッセンジャーRNA療法(MRT)は、様々な疾患の治療または予防にますます重要なアプローチとなっている。MRTは、療法を必要とする対象の体内でmRNAによってコードされるタンパク質の産生を提供するために、対象にメッセンジャーRNA(mRNA)を投与することを伴う。脂質ナノ粒子は、mRNAの効率的なインビボ送達のためにmRNAを封入するために使用され得る。
【0004】
脂質ナノ粒子を使用してmRNAの細胞内送達および/または発現を強化することができる、新規の方法および組成物の特定に多くの努力がなされており、これは、スケーラブルかつ費用効率の高い製造プロセスに適合され得る。同時に、mRNAの細胞内送達および/または発現に対するあらゆるそのような強化はまた、脂質媒介性mRNA送達に関連する組成物の安全性および忍容性を維持または改善することが重要である。
【0005】
1つ以上のカチオン性脂質、1つ以上のPEG修飾脂質、およびmRNAを封入する1つ以上のヘルパー脂質を含む多成分脂質ナノ粒子は、インビボでmRNAの送達および発現を達成するのに特に有効であることが見出されている。近年の研究の具体的な焦点は、mRNA送達のための新しいカチオン性脂質の発見である。多成分脂質ナノ粒子の他の成分は、ほとんどまたは全く注目されていない。mRNAの細胞内送達および/または発現を達成するために、脂質ナノ粒子のmRNA送達を改善する継続的な必要性がある。同時に、新しい脂質ナノ粒子製剤は、安全性および忍容性を維持または改善することが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
発明者らは驚くべきことに、mRNAを封入する多成分リポソームのヘルパー脂質成分を最適化することによって、インビボでのmRNAの送達および/または発現が、劇的に改善され得ることを発見した。具体的には、本発明は、1つ以上のカチオン性脂質、1つ以上のPEG修飾脂質、および1つ以上のヘルパー脂質を含むmRNA封入脂質ナノ粒子製剤中のヘルパー脂質としての1,2-ジエルコイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DEPE)の存在が、ヘルパー脂質のうちの1つとしてジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)を含む従来のリポソームと比較して、インビボでのmRNAの送達および/または発現を2倍超増加させることができる。DEPE含有脂質ナノ粒子は、安全性および忍容性(ALTおよびASTなどの肝毒性マーカーによって評価される)に関して、同等のDOPE含有脂質ナノ粒子であった。
【0007】
したがって、mRNAの送達を必要とする対象にそれを行うための脂質ナノ粒子を提供することが本発明の一態様であり、脂質ナノ粒子は、1つ以上のカチオン性脂質と、1つ以上のPEG修飾脂質と、mRNAを封入する1つ以上のヘルパー脂質とを含み、1つ以上のヘルパー脂質は、1,2-ジエルコイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DEPE)を含む。脂質ナノ粒子中のDEPEは、対象に投与されたときにmRNAの発現の強化を提供する。
【0008】
本発明の実施形態では、DEPE 1,2-ジエルコイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DEPE)は、以下の構造:
【化1】
または以下の構造によって構造的に表される:
【化2】
【0009】
本発明の実施形態では、mRNAの発現の強化は、異なる1つ以上のヘルパー脂質を含み、かつDEPEを含まないことを除いて同じ脂質成分および量を有する第2の脂質ナノ粒子由来の同じmRNAの発現と比較してより高い。ある特定の実施形態では、発現の強化は、第2の脂質ナノ粒子と比較して2倍以上増加する。いくつかの実施形態では、第2の脂質ナノ粒子中の異なる1つ以上のヘルパー脂質は、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DLOPE)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(POPE)、および/またはそれらの組み合わせを含む。
【0010】
ある特定の実施形態では、脂質ナノ粒子中のDEPEは、脂質ナノ粒子中の総脂質の少なくとも0.5モルパーセントの濃度、例えば、0.5モルパーセント~50モルパーセントの濃度、特に10モルパーセント~45モルパーセントの濃度で存在する。より典型的には、脂質ナノ粒子中のDEPEは、脂質ナノ粒子中の総脂質の25モルパーセント~35モルパーセントの濃度で存在する。
【0011】
ある特定の実施形態では、1つ以上のカチオン性脂質は、cKK-E12であるか、またはそれを含む。
【0012】
ある特定の実施形態では、1つ以上のカチオン性脂質は、ICE(イミダゾールコレステロールエステル)であるか、またはそれを含む。
【0013】
ある特定の実施形態では、1つ以上のカチオン性脂質は、以下の式のカチオン性脂質、
【化3】
またはその薬学的に許容される塩であるか、またはそれを含み、
式中、RおよびRが各々独立して、HまたはC-C脂肪族であり、mが各々独立して、1~4の値を有する整数であり、Aが各々独立して、共有結合またはアリーレンであり、Lが各々独立して、エステル、チオエステル、ジスルフィド、または無水物基であり、Lが各々独立して、C-C10脂肪族であり、Xが各々独立して、HまたはOHであり、Rが各々独立して、C-C20脂肪族である。特定の実施形態では、1つ以上のカチオン性脂質は、以下の化合物、
【化4】
またはその薬学的に許容される塩であるか、またはそれを含む。別の実施形態では、1つ以上のカチオン性脂質は、以下の化合物、
【化5】
またはその薬学的に許容される塩であるか、またはそれを含む。別の実施形態では、1つ以上のカチオン性脂質は、以下の化合物、
【化6】
【0014】
またはその薬学的に許容される塩であるか、またはそれを含む。ある特定の実施形態では、1つ以上のPEG修飾脂質は、C-C20の鎖長のアルキル鎖を有する脂質に共有結合した最大5kDaの鎖長のポリ(エチレン)グリコール鎖であるか、またはそれを含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、mRNAを封入し、かつヘルパー脂質としてDEPEを含む脂質ナノ粒子は、C-C20の鎖長のアルキル鎖を含むカチオン性脂質も含む。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、各々C-C16の鎖長の1~4個のアルキル鎖を含む。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、各々C10-C16の鎖長の1~4個のアルキル鎖を含む。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、各々C10-C14の鎖長の1~4個のアルキル鎖を含む。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、各々C10の鎖長の1~4個のアルキル鎖を含む。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、各々C12の鎖長の1~4個のアルキル鎖を含む。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、各々C16の鎖長の1~4個のアルキル鎖を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、mRNAを封入し、かつヘルパー脂質としてDEPEを含む脂質ナノ粒子は、各々C-C20の鎖長の1~4個の脂肪族鎖を含むカチオン性脂質も含む。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、各々C-C16の鎖長の1~4個の脂肪族鎖を含む。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、各々C10-C14の鎖長の1~4個の脂肪族鎖を含む。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、各々C10の鎖長の1~4個の脂肪族鎖を含む。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、各々C12の鎖長の1~4個の脂肪族鎖を含む。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、各々C16の鎖長の脂肪族鎖を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、mRNAを封入し、かつヘルパー脂質としてDEPEを含む脂質ナノ粒子は、リピドイドであるか、またはそれを含む1つ以上のカチオン性脂質も含む。いくつかの実施形態では、リピドイドは、4つの脂肪族鎖を含む。いくつかの実施形態では、4つのリピドイド脂肪族鎖は各々独立して、C-C20の鎖長である。いくつかの実施形態では、4つのリピドイド脂肪族鎖は各々独立して、C-C16の鎖長である。いくつかの実施形態では、4つのリピドイド脂肪族鎖は各々独立して、C10-C14の鎖長である。いくつかの実施形態では、4つのリピドイド脂肪族鎖は各々独立して、C10またはC12の鎖長である。いくつかの実施形態では、4つのリピドイド脂肪族鎖のすべてが、Cの鎖長である。いくつかの実施形態では、4つのリピドイド脂肪族鎖のすべてが、Cの鎖長である。いくつかの実施形態では、4つのリピドイド脂肪族鎖のすべてが、C10の鎖長である。いくつかの実施形態では、4つのリピドイド脂肪族鎖のすべてが、C12の鎖長である。いくつかの実施形態では、4つのリピドイド脂肪族鎖のすべてが、C14の鎖長である。いくつかの実施形態では、4つのリピドイド脂肪族鎖のすべてが、C16の鎖長である。いくつかの実施形態では、4つのリピドイド脂肪族鎖のすべてが、C18の鎖長である。いくつかの実施形態では、4つのリピドイド脂肪族鎖のすべてが、C20の鎖長である。いくつかの実施形態では、4つのリピドイド脂肪族鎖のうちの少なくとも2つが、Cの鎖長である。いくつかの実施形態では、4つのリピドイド脂肪族鎖のうちの少なくとも2つが、Cの鎖長である。いくつかの実施形態では、4つのリピドイド脂肪族鎖のうちの少なくとも2つが、C10の鎖長である。いくつかの実施形態では、4つのリピドイド脂肪族鎖のうちの少なくとも2つが、C12の鎖長である。いくつかの実施形態では、4つのリピドイド脂肪族鎖のうちの少なくとも2つが、C14の鎖長である。いくつかの実施形態では、4つのリピドイド脂肪族鎖のうちの少なくとも2つが、C16の鎖長である。いくつかの実施形態では、4つのリピドイド脂肪族鎖のうちの少なくとも2つが、C18の鎖長である。いくつかの実施形態では、4つのリピドイド脂肪族鎖のうちの少なくとも2つが、C20の鎖長である。
【0018】
いくつかの実施形態では、mRNAを封入し、かつヘルパー脂質としてDEPEを含む脂質ナノ粒子は、C-C20の鎖長のアルキル鎖を含むリピドイドも含む。いくつかの実施形態では、リピドイドは、各々C-C16の鎖長のアルキル鎖を含む。いくつかの実施形態では、リピドイドは、各々C10-C14の鎖長のアルキル鎖を含む。いくつかの実施形態では、リピドイドは、各々C10の鎖長のアルキル鎖を含む。いくつかの実施形態では、リピドイドは、各々C12の鎖長のアルキル鎖を含む。いくつかの実施形態では、リピドイドは、各々C16の鎖長のアルキル鎖を含む。
【0019】
ある特定の実施形態では、脂質ナノ粒子は、1つ以上のステロールをさらに含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のステロールは、コレステロールベースの脂質、例えば、コレステロールまたはPEG化コレステロールであるか、またはそれを含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、1つ以上のカチオン性脂質、1つ以上のPEG修飾脂質、1つ以上の非カチオン性脂質、およびmRNAを封入する1つ以上のコレステロールベースの脂質を含む。例えば、本発明の典型的な実施形態では、脂質ナノ粒子の脂質成分は、カチオン性脂質(例えば、cKK-E12、化合物1、化合物2、または化合物3)、PEG修飾脂質(例えば、DMG-PEG2K)、非カチオン性脂質(DEPE)、およびコレステロールベースの脂質(例えば、コレステロール)を含む4つのタイプの脂質を含む。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子中のカチオン性脂質:非カチオン性脂質:コレステロールベースの脂質:PEG修飾脂質の比率は、約30~60:25~35:20~30:1~15であり得る。
【0021】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子の脂質成分は、カチオン性脂質(例えば、ICE)、PEG修飾脂質(例えば、DMG-PEG2K)、および非カチオン性脂質(DEPE)を含む。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質:非カチオン性脂質:PEG修飾脂質の比率は、約50~60:45~30:5~10であり得る。
【0022】
本発明の脂質ナノ粒子によって送達されるmRNAは、インビボで治療用タンパク質に翻訳されるタンパク質をコードするmRNAである。ある特定の実施形態では、タンパク質をコードするmRNAは、ポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、治療用ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、治療用ポリペプチドは、抗体軽鎖または抗体重鎖である。いくつかの実施形態では、治療用ポリペプチドは、対象に存在しないまたは欠乏しているポリペプチドである。ある特定の実施形態では、タンパク質をコードするmRNAは、ペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、ペプチドは、抗原である。
【0023】
別の態様では、本発明は、mRNAの改善された送達を必要とする対象にそれを行うための方法を提供し、本方法は、対象に、1つ以上のカチオン性脂質と、1つ以上のPEG修飾脂質と、1つ以上のヘルパー脂質とを含むmRNAを封入する脂質ナノ粒子を投与することを含み、1つ以上のヘルパー脂質は、1,2-ジエルコイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DEPE)を含む。脂質ナノ粒子中のDEPEは、対象に投与されたときにmRNAの発現の強化を提供する。
【0024】
いくつかの実施形態では、mRNAは、インビボで治療用タンパク質またはペプチドに翻訳されるタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、タンパク質またはペプチドをコードするmRNAは、全身に送達される。いくつかの実施形態では、翻訳されたタンパク質またはペプチドは、投与後6時間以上の時点で肝臓中で検出可能である。いくつかの実施形態では、翻訳されたタンパク質またはペプチドは、投与後12時間以上の時点で肝臓中で検出可能である。いくつかの実施形態では、翻訳されたタンパク質またはペプチドは、投与後18時間以上の時点で肝臓中で検出可能である。いくつかの実施形態では、翻訳されたタンパク質またはペプチドは、投与後24時間以上の時点で肝臓中で検出可能である。いくつかの実施形態では、翻訳されたタンパク質またはペプチドは、投与後36時間以上の時点で肝臓中で検出可能である。いくつかの実施形態では、翻訳されたタンパク質またはペプチドは、投与後48時間以上の時点で肝臓中で検出可能である。いくつかの実施形態では、翻訳されたタンパク質またはペプチドは、投与後72時間以上の時点で肝臓中で検出可能である。いくつかの実施形態では、翻訳されたタンパク質またはペプチドは、投与後6時間以上の時点で血清中で検出可能である。いくつかの実施形態では、翻訳されたタンパク質またはペプチドは、投与後12時間以上の時点で血清中で検出可能である。いくつかの実施形態では、翻訳されたタンパク質またはペプチドは、投与後18時間以上の時点で血清中で検出可能である。いくつかの実施形態では、翻訳されたタンパク質またはペプチドは、投与後24時間以上の時点で血清中で検出可能である。いくつかの実施形態では、翻訳されたタンパク質またはペプチドは、投与後36時間以上の時点で血清中で検出可能である。いくつかの実施形態では、翻訳されたタンパク質またはペプチドは、投与後48時間以上の時点で血清中で検出可能である。いくつかの実施形態では、翻訳されたタンパク質またはペプチドは、投与後72時間以上の時点で肝臓中で検出可能である。
【0025】
さらなる態様では、本発明は、対象における疾患または障害を治療または予防する方法で使用するための、1つ以上のカチオン性脂質と、1つ以上のPEG修飾脂質と、1つ以上のヘルパー脂質(1つ以上のヘルパー脂質は、1,2-ジエルコイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DEPE)を含む)とを含むmRNAを封入する脂質ナノ粒子を提供し、mRNAは、対象における疾患または障害を治療または予防するのに好適なペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質をコードする。関連する態様では、本発明は、対象における疾患または障害を治療または予防するための薬剤の製造における、mRNAを封入する脂質ナノ粒子の使用に関し、脂質ナノ粒子は、1つ以上のカチオン性脂質と、1つ以上のPEG修飾脂質と、1つ以上のヘルパー脂質(前述の1つ以上のヘルパー脂質は、1,2-ジエルコイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DEPE)を含む)とを含み、mRNAは、対象における疾患または障害を治療または予防するのに好適なペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質をコードする。一実施形態では、mRNAは、対象に存在しないまたは欠乏しているポリペプチドまたはタンパク質をコードし、疾患または障害は、前述のポリペプチドまたはタンパク質の欠乏である。別の実施形態では、mRNAは、抗体軽鎖または抗体重鎖をコードし、対象は、前述の軽鎖または前述の重鎖を含む抗体を対象に投与することによって治療可能である疾患または障害に罹患している。さらなる実施形態では、mRNAは、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質をコードし、前述のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、疾患または障害を治療または予防するために、前述の対象に免疫応答を誘導することができる。
【0026】
発明者らはまた、DEPEをヘルパー脂質として使用することで、DOPEがヘルパー脂質のうちの1つとして使用される場合に安定したリポソームを形成しない多成分製剤を製剤化することが可能となることも見出した。したがって、なおさらなる態様では、本発明は、mRNAを封入する脂質ナノ粒子を調製するための方法を提供し、本方法は、(a)1つ以上のカチオン性脂質、1つ以上のPEG修飾脂質、および1つ以上のヘルパー脂質(前述の1つ以上のヘルパー脂質は、1,2-ジエルコイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DEPE)を含む)の混合物を提供することと、(b)工程(a)で提供された混合物から脂質ナノ粒子を形成することとを含み、本方法は、mRNAを脂質ナノ粒子に封入することをさらに含み、封入は、工程(b)での脂質ナノ粒子の形成前または形成後に行われ得る。mRNAを封入する得られた脂質ナノ粒子は安定している。一実施形態では、本発明に従って脂質ナノ粒子を調製するための方法は、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DLOPE)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(POPE)、およびそれらの組み合わせから選択される1つ以上のヘルパー脂質の使用を特に除外する。一実施形態では、DEPEは、10モルパーセント~50モルパーセントの濃度で混合物中に存在する。一実施形態では、混合物中の1つ以上のPEG修飾脂質は、C-C20の鎖長のアルキル鎖を有する脂質に共有結合した最大5kDaの鎖長のポリ(エチレン)グリコール鎖を含む。一実施形態では、1つ以上のカチオン性脂質、1つ以上のPEG修飾脂質、および1つ以上のヘルパー脂質の混合物は、コレステロールベースの脂質などの1つ以上のステロールをさらに含む。一実施形態では、コレステロールベースの脂質は、コレステロールおよび/またはPEG化コレステロールである。一実施形態では、mRNAは、治療用ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、mRNAは、予め形成された脂質ナノ粒子に封入される。いくつかの実施形態では、本発明に従って脂質ナノ粒子を調製するための方法は、mRNAの封入の前および/または後に、脂質ナノ粒子を接線流濾過(TFF)に供することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、トレハロース溶液中で脂質ナノ粒子を製剤化することをさらに含む。
【0027】
いかなる特定の理論によっても束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、DEPE誘導体、特に、変化する脂質鎖長または組成物を有するDEPE誘導体が、DEPEに関して本明細書に記載されるのと同じ利点を提供すると考えている。便宜上、本発明の前述の要約および詳細な説明は、DEPEのみに言及する。しかしながら、DEPEの脂質鎖に対するわずかな変化が、その優れた特性に影響を与えないこと、およびそのようなDEPE誘導体が、本発明内に明示的に含まれることが理解されるべきである。
【0028】
本発明の他の特徴、目的、および利点は、以下の発明を実施するための形態、図面、および特許請求の範囲において明らかになる。しかしながら、発明を実施するための形態、図面、および特許請求の範囲は、本発明の実施形態を指しているが、単に例示として与えられるものあり、限定するものでないことを理解されたい。本発明の範囲内の様々な変更および修正は、当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】DEPEおよび他のヘルパー脂質を含むmRNA LNPにおけるEPOタンパク質発現の例示的なグラフ表示を示す。
図2】DEPEおよび他のヘルパー脂質を含むmRNA LNPについての、血清ALTおよびASTの投与後レベルの例示的なグラフ表示を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下の実施形態およびその態様は、範囲を限定するのではなく、例示的であり、かつ説明に役立つよう意図されるシステム、組成物、および方法と併せて記載および図示されている。
【0031】
定義
本発明は、mRNA治療用組成物を生成するための脂質ナノ粒子(LNP)製剤に封入されたmRNAを製造するための改善されたプロセスを提供する。
【0032】
本発明がより容易に理解されるように、ある特定の用語が最初に以下に定義される。以下の用語および他の用語の追加の定義は、本明細書全体に記載される。
【0033】
アミノ酸:本明細書で使用される場合、用語「アミノ酸」は、その最も広い意味で、ポリペプチド鎖に組み込まれ得る任意の化合物および/または物質を指す。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、一般構造HN-C(H)(R)-COOHを有する。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、天然に存在するアミノ酸である。いくつかの実施形態では、アミノ酸は合成アミノ酸であり、いくつかの実施形態では、アミノ酸はD-アミノ酸であり、いくつかの実施形態では、アミノ酸はL-アミノ酸である。「標準アミノ酸」とは、天然に存在するペプチドに一般に見られる20個の標準L-アミノ酸のうちのいずれかを指す。「非標準アミノ酸」とは、それが合成的に調製されるか天然源から得られるかにかかわらず、標準アミノ酸以外の任意のアミノ酸を指す。本明細書で使用される場合、「合成アミノ酸」は、塩、アミノ酸誘導体(アミドなど)、および/または置換を含むが、これらに限定されない化学的に修飾されたアミノ酸を包含する。ペプチド中のカルボキシ末端アミノ酸および/またはアミノ末端アミノ酸を含むアミノ酸は、メチル化、アミド化、アセチル化、保護基、および/またはそれらの活性に悪影響を及ぼすことなくペプチドの循環半減期を変化させることができる他の化学基との置換によって修飾され得る。アミノ酸は、ジスルフィド結合に関与し得る。アミノ酸は、1つ以上の化学的実体(例えば、メチル基、酢酸基、アセチル基、リン酸基、ホルミル部分、イソプレノイド基、硫酸基、ポリエチレングリコール部分、脂質部分、炭水化物部分、ビオチン部分など)との会合などの1つまたは翻訳後修飾を含み得る。「アミノ酸」という用語は、「アミノ酸残基」と互換的に使用され、遊離アミノ酸および/またはペプチドのアミノ酸残基を指し得る。この用語が遊離アミノ酸を指すか、ペプチドの残基を指すかは、それが使用される文脈から明らかになるであろう。
【0034】
動物:本明細書で使用される場合、「動物」という用語は、動物界の任意のメンバーを指す。いくつかの実施形態では、「動物」とは、任意の発育段階のヒトを指す。いくつかの実施形態では、「動物」とは、任意の発育段階の非ヒト動物を指す。ある特定の実施形態では、非ヒト動物は、哺乳動物(例えば、齧歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長類、および/またはブタ)である。いくつかの実施形態では、動物には、哺乳動物、鳥、爬虫類、両生類、魚、昆虫、および/または寄生虫が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、動物は、トランスジェニック動物、遺伝子操作された動物、および/またはクローンであり得る。
【0035】
およそまたは約:本明細書で使用される場合、目的とする1つ以上の値に適用される「およそ」または「約」という用語は、明記された参照値と同様の値を指す。ある特定の実施形態では、「およそ」または「約」という用語は、別途明記されない限り、または別途文脈から明らかでない限り、明記された参照値のいずれかの方向(より大きいかまたは小さい)に、25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれ未満に含まれる値の範囲(かかる数が可能な値の100%を超える場合を除く)を指す。
【0036】
組み合わせること:本明細書で使用される場合、「組み合わせること」という用語は、混合またはブレンドと互換的に使用される。組み合わせることとは、同じ溶液中に、別個の特性を有する離散LNP粒子をまとめること、例えば、mRNA-LNPおよび空のLNP組成物を組み合わせて、mRNA-LNP組成物を得ることを指す。いくつかの実施形態では、2つのLNPを組み合わせせることは、組み合わせられる成分の特定の比率で実施される。いくつかの実施形態では、組み合わせることから得られた結果として生じる組成物は、その成分のいずれか一方または両方とは異なる特性を有する。
【0037】
送達:本明細書で使用される場合、「送達」という用語は、局所送達および全身送達の両方を包含する。例えば、mRNAの送達は、mRNAが標的組織に送達され、コードされたタンパク質またはペプチドが発現され、標的組織内で保持される状況(「局所分布」または「局所送達」とも称される)、およびmRNAが標的組織に送達され、コードされたタンパク質またはペプチドが発現され、患者の循環系(例えば、血清)に分泌され、全身に分布し、他の組織によって取り込まれる状況(「全身分布」または「全身送達」とも称される)を包含する。
【0038】
有効性:本明細書で使用される場合、「有効性」という用語、または文法的等価物は、関連するタンパク質またはペプチドをコードするmRNAの送達に関連する、生物学的に関連するエンドポイントの改善を指す。いくつかの実施形態では、生物学的エンドポイントは、投与後のある特定の時点での塩化アンモニウム負荷に対する保護である。
【0039】
封入:本明細書で使用される場合、「封入」という用語、または文法的等価物は、ナノ粒子内に個々のmRNA分子を閉じ込めるプロセスを指す。
【0040】
発現:本明細書で使用される場合、mRNAの「発現」は、ペプチド(例えば、抗原)、ポリペプチド、またはタンパク質(例えば、酵素)へのmRNAの翻訳を指し、また文脈によって示されるように、ペプチド、ポリペプチド、または完全に組み立てられたタンパク質(例えば、酵素)の翻訳後修飾も含み得る。本出願では、「発現」および「産生」という用語、ならびに文法的等価物は、互換的に使用される。
【0041】
改善する、増加する、または低減する:本明細書で使用される場合、「改善する」、「増加する」、もしくは「低減する」という用語、または文法的等価物は、本明細書に記載される治療の開始前の同じ個体における測定値、または本明細書に記載される治療の不在下での対照試料もしくは対象(または複数の対照試料もしくは対象)における測定値などの、ベースライン測定値に対する値を指す。「対照試料」は、試験物品を除き、試験試料と同じ条件に供された試料である。「対照対象」は、治療されている対象と同じ疾患形態に罹患しており、治療されている対象とほぼ同じ年齢である対象である。
【0042】
不純物:本明細書で使用される場合、用語「不純物」は、限定された量の液体、気体、または固体内の物質を指し、これは標的物質または化合物の化学組成とは異なる。不純物は、混入物とも呼ばれる。
【0043】
インビトロ:本明細書で使用される場合、「インビトロ」という用語は、多細胞生物内というよりむしろ、人工環境下で、例えば、試験管または反応容器内、細胞培養下などで生じる事象を指す。
【0044】
インビボ:本明細書で使用される場合、「インビボ」という用語は、ヒトおよび非ヒト動物などの多細胞生物内で生じる事象を指す。細胞ベースの系の文脈では、この用語は、(例えば、インビトロ系とは対照的に)生きている細胞内で生じる事象を指すために使用され得る。
【0045】
単離された:本明細書で使用される場合、用語「単離された」は、(1)(自然界および/または実験的環境にかかわらず)最初に産生されたときに会合していた成分のうちの少なくともいくつかから分離しており、かつ/または(2)人工的に産生、調製、および/もしくは製造された物質および/または実体を指す。単離された物質および/または実体は、それらが最初に会合していた他の成分の約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99%超から分離され得る。いくつかの実施形態では、単離された薬剤は、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99%超純粋である。本明細書で使用される場合、物質は、他の成分を実質的に含まない場合、「純粋」である。本明細書で使用される場合、単離された物質および/または実体の純度パーセントの計算は、賦形剤(例えば、緩衝液、溶媒、水など)を含むべきではない。
【0046】
局所分布または局所送達:本明細書において使用される場合、用語「局所分布」、「局所送達」、または文法的等価物は、組織特異的な送達または分布を指す。典型的には、局所分布または局所送達は、mRNAによってコードされるペプチドまたはタンパク質(例えば、酵素)が、細胞内でまたは患者の循環系への侵入を回避する限定された分泌物と共に、翻訳および発現されることを必要とする。
【0047】
メッセンジャーRNA(mRNA):本明細書で使用される場合、「メッセンジャーRNA(mRNA)」という用語は、少なくとも1つのペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質をコードするポリヌクレオチドを指す。本明細書で使用されるmRNAは、修飾されたRNAおよび修飾されていないRNAの両方を包含する。mRNAは、1つ以上のコード領域および非コード領域を含有し得る。mRNAは、天然供給源から精製され得、組換え発現系を使用して産生され得、任意に、精製、化学合成などが行われ得る。必要に応じて、例えば、化学的に合成された分子の場合、mRNAは、化学修飾された塩基または糖、骨格修飾などを有する類似体などのヌクレオシド類似体を含み得る。mRNA配列は、別段指示されない限り、5’から3’の方向に提示される。いくつかの実施形態では、mRNAは、天然ヌクレオシド(例えば、アデノシン、グアノシン、シチジン、ウリジン)、ヌクレオシド類似体(例えば、2-アミノアデノシン、2-チオチミジン、イノシン、ピロロ-ピリミジン、3-メチルアデノシン、5-メチルシチジン、C-5プロピニル-シチジン、C-5プロピニル-ウリジン、2-アミノアデノシン、C5-ブロモウリジン、C5-フルオロウリジン、C5-ヨードウリジン、C5-プロピニル-ウリジン、C5-プロピニル-シチジン、C5-メチルシチジン、2-アミノアデノシン、7-デアザアデノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソアデノシン、8-オキソグアノシン、O(6)-メチルグアニン、2-チオシチジン、プソイドウリジン、および5-メチルシチジン)、化学修飾された塩基、生物学的に修飾された塩基(例えば、メチル化塩基)、介在塩基(intercalated base)、修飾された糖(例えば、2’-フルオロリボース、リボース、2’-デオキシリボース、アラビノース、およびヘキソース)、および/もしくは修飾されたリン酸基(例えば、ホスホロチオエートおよび5’-N-ホスホルアミダイト結合)であるか、またはそれを含む。
【0048】
核酸:本明細書で使用される場合、「核酸」という用語は、その最も広範な意味で、ポリヌクレオチド鎖に組み込まれるか、または組み込まれ得る任意の化合物および/または物質を指す。いくつかの実施形態では、核酸は、ホスホジエステル結合を介してポリヌクレオチド鎖に組み込まれるか、または組み込まれ得る化合物および/または物質である。いくつかの実施形態では、「核酸」とは、個々の核酸残基(例えば、ヌクレオチドおよび/またはヌクレオシド)を指す。いくつかの実施形態では、「核酸」とは、個々の核酸残基を含むポリヌクレオチド鎖を指す。いくつかの実施形態では、「核酸」は、RNA、ならびに一本鎖および/もしくは二本鎖のDNAならびに/またはcDNAを包含する。さらに、「核酸」、「DNA」、「RNA」という用語、および/または類似の用語は、核酸類似体、すなわち、ホスホジエステル骨格以外を有する類似体を含む。
【0049】
患者:本明細書で使用される場合、「患者」または「対象」という用語は、例えば、実験、診断、予防、美容、および/または治療目的のために、提供される組成物が投与され得る任意の生物を指す。典型的な患者には、動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、および/またはヒトなどの哺乳動物)が含まれる。いくつかの実施形態では、患者は、ヒトである。ヒトには、出生前形態および出生後形態が含まれる。
【0050】
薬学的に許容される:本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、妥当な医学的判断の範囲内で、過度な毒性、炎症刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症を伴うことなく、合理的なベネフィット/リスクの比率に見合う、ヒトおよび動物の組織と接触した使用に好適な物質を指す。
【0051】
薬学的に許容される塩:薬学的に許容される塩は、当該技術分野で周知である。例えば、S.M.Bergeらは、J.Pharmaceutical Sciences(1977)66:1-19において薬学的に許容される塩を詳細に記載している。本発明の化合物の薬学的に許容される塩としては、好適な無機酸および有機酸ならびに無機塩基および有機塩基に由来するものが挙げられる。薬学的に許容される非毒性酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、および過塩素酸などの無機酸と形成されたアミノ基の塩、または酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、もしくはマロン酸などの有機酸と形成されたアミノ基の塩、またはイオン交換などの当該技術分野で使用されている他の方法を使用して形成されたアミノ基の塩である。他の薬学的に許容される塩としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。適切な塩基に由来する塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、およびN(C1-4アルキル)塩が挙げられる。代表的なアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩は、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどを含む。さらなる薬学的に許容される塩は、適切な場合、ハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、スルホン酸塩、およびアリールスルホン酸塩などの対イオンを使用して形成された非毒性アンモニウムカチオン、四級アンモニウムカチオン、およびアミンカチオンを含む。さらなる薬学的に許容される塩は、適切な求電子剤、例えば、四級化アルキル化アミノ塩を形成するためのハロゲン化アルキルを使用して、アミンの四級化から形成された塩を含む。
【0052】
効力:本明細書で使用される場合、用語「効力」または文法的等価物は、mRNAがコードするタンパク質もしくはペプチドの発現のレベル、および/または得られた生物学的効果を指す。
【0053】
塩:本明細書で使用される場合、用語「塩」は、酸と塩基との間の中和反応から生じるか、または生じ得るイオン化合物を指す。
【0054】
全身分布または全身送達:本明細書で使用される場合、「全身分布」、「全身送達」という用語、または文法的同義語は、全身または生物全体に影響する送達または分布機構またはアプローチを指す。典型的には、全身分布または全身送達は、身体の循環系、例えば、血流を介して成し遂げられる。「局所分布または送達」の定義と比較される。
【0055】
対象:本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、ヒトまたは任意の非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、または霊長類)を指す。ヒトには、出生前形態および出生後形態が含まれる。多くの実施形態では、対象は、ヒトである。対象は、患者であり得、疾患の診断または治療のために医療提供者を受診するヒトを指す。「対象」という用語は、本明細書で「個体」または「患者」と互換的に使用される。対象は、疾患または障害に罹患し得るか、またはそれに罹り易いが、疾患または障害の症状を呈する場合も呈さない場合もある。
【0056】
実質的に:本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、目的とする特徴または特性の全またはほぼ全範囲または程度を呈する質的状態を指す。生物学分野の当業者であれば、生物学的および化学的現象が、完了すること、および/または完了に至ること、または絶対的結果を達成もしくは回避することが、仮にあったとしてもめったにないことを理解するであろう。したがって、用語「実質的に」は、多くの生物学的および化学的現象に固有の完全性の潜在的な欠如を捕捉するために本明細書で使用される。
【0057】
標的組織:本明細書で使用される場合、「標的組織」という用語は、治療される疾患に影響される任意の組織を指す。いくつかの実施形態では、標的組織には、疾患に関連する病態、症状、または特徴を呈する組織が含まれる。
【0058】
治療指数:本明細書で使用される場合、「治療指数」とは、血液中の薬物が毒性となる濃度、およびそれが有効である濃度の比率である。治療指標が大きいほど、薬剤は安全である。
【0059】
治療すること:本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療」、または「治療すること」という用語は、特定の疾患、障害、および/もしくは状態の1つ以上の症状もしくは特徴を部分的にまたは完全に緩和する、改善する、軽減する、抑制する、予防する、その発症を遅延させる、その重症度を低減する、および/またはその発生率を低減するために使用される任意の方法を指す。治療は、疾患の兆候を呈せず、かつ/または疾患の初期の兆候のみを呈する対象に、その疾患に関連する病態を発症させるリスクを減少させる目的のために投与され得る。
【0060】
収率:本明細書で使用される場合、用語「収率」は、開始材料としての総mRNAと比較して、封入後に回収されたmRNAのパーセンテージを指す。いくつかの実施形態では、用語「回収」は、用語「収率」と互換的に使用される。
【0061】
脂肪族:本明細書で使用される場合、脂肪族という用語は、C1-40炭化水素を指し、飽和炭化水素および不飽和炭化水素の両方を含む。脂肪族は、直鎖状、分岐状、または環状であり得る。例えば、C-C20脂肪族には、C-C20アルキル(例えば、直鎖状または分岐状C-C20飽和アルキル)、C-C20アルケニル(例えば、直鎖状または分岐状C-C20ジエニル、直鎖状または分岐状C-C20トリエニル等)、およびC-C20アルキニル(例えば、直鎖状または分岐状C-C20アルキニル)が含まれ得る。C-C20脂肪族には、C-C20環状脂肪族(例えば、C-C20シクロアルキル、C-C20シクロアルケニル、またはC-C20シクロアルキニル)が含まれ得る。ある特定の実施形態では、脂肪族は、1つ以上の環状脂肪族および/または1つ以上のヘテロ原子、例えば、酸素、窒素、または硫黄を含み得、任意に、アルキル、ハロ、アルコキシル、ヒドロキシ、アミノ、アリール、エーテル、エステル、またはアミドなどの1つ以上の置換基で置換され得る。脂肪族基は、非置換であるか、または本明細書に記載の1つ以上の置換基で置換されている。例えば、脂肪族は、ハロゲン、-COR’、-COH、-COR’、-CN、-OH、-OR’、-OCOR’、-OCOR’、-NH、-NHR’、-N(R’)、-SR’、または-SOR’のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6つの独立して選択される置換基)で置換され得、式中、R’の各事例が独立して、C-C20脂肪族(例えば、C-C20アルキル、C-C15アルキル、C-C10アルキル、またはC-Cアルキル)である。複数の実施形態では、R’は独立して、非置換アルキル(例えば、非置換C-C20アルキル、C-C15アルキル、C-C10アルキル、またはC-Cアルキル)である。複数の実施形態では、R’は独立して、非置換C-Cアルキルである。複数の実施形態では、脂肪族は、非置換である。複数の実施形態では、脂肪族は、いずれのヘテロ原子も含まない。
【0062】
アルキル:本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、非環状直鎖状および分岐状炭化水素基を意味し、例えば、「C-C20アルキル」とは、1~20個の炭素を有するアルキル基を指す。アルキル基は、直鎖状または分岐状であり得る。アルキル基の例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、tert-ペンチルヘキシル、イソヘキシル等が挙げられるが、これらに限定されない。他のアルキル基は、本開示の利益を考慮して、当業者に容易に明らかである。アルキル基は、非置換であり得るか、または本明細書に記載の1つ以上の置換基で置換され得る。例えば、アルキル基は、ハロゲン、-COR’、-COH、-COR’、-CN、-OH、-OR’、-OCOR’、-OCOR’、-NH、-NHR’、-N(R’)、-SR’、または-SOR’のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6つの独立して選択される置換基)で置換され得、式中、R’の各事例が独立して、C-C20脂肪族(例えば、C-C20アルキル、C-C15アルキル、C-C10アルキル、またはC-Cアルキル)である。複数の実施形態では、R’は独立して、非置換アルキル(例えば、非置換C-C20アルキル、C-C15アルキル、C-C10アルキル、またはC-Cアルキル)である。複数の実施形態では、R’は独立して、非置換C-Cアルキルである。複数の実施形態では、アルキルは、(例えば、本明細書に記載の1、2、3、4、5、または6つの置換基で)置換されている。複数の実施形態では、アルキル基は、-OH基で置換され、本明細書で「ヒドロキシアルキル」基とも称され得、ここで、接頭辞は-OH基を示し、「アルキル」は本明細書に記載されるとおりである。
【0063】
アルケニル:本明細書で使用される場合、「アルケニル」とは、鎖に沿って任意の安定した点で生じ得る1つ以上の不飽和炭素-炭素二重結合を有する任意の直鎖状または分岐状炭化水素鎖を意味し、例えば、「C-C20アルケニル」とは、2~20個の炭素を有するアルケニル基を指す。例えば、アルケニル基には、プロプ-2-エニル、ブタ-2-エニル、ブタ-3-エニル、2-メチルプロプ-2-エニル、ヘキサ-2-エニル、ヘキサ-5-エニル、2,3-ジメチルブタ-2-エニル等が含まれる。複数の実施形態では、アルケニルは、1、2、または3つの炭素-炭素二重結合を含む。複数の実施形態では、アルケニルは、単一の炭素-炭素二重結合を含む。複数の実施形態では、複数の二重結合(例えば、2つまたは3つ)が共役している。アルケニル基は、非置換であり得るか、または本明細書に記載の1つ以上の置換基で置換され得る。例えば、アルケニル基は、ハロゲン、-COR’、-COH、-COR’、-CN、-OH、-OR’、-OCOR’、-OCOR’、-NH、-NHR’、-N(R’)、-SR’、または-SOR’のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6つの独立して選択される置換基)で置換され得、式中、R’の各事例が独立して、C-C20脂肪族(例えば、C-C20アルキル、C-C15アルキル、C-C10アルキル、またはC-Cアルキル)である。複数の実施形態では、R’は独立して、非置換アルキル(例えば、非置換C-C20アルキル、C-C15アルキル、C-C10アルキル、またはC-Cアルキル)である。複数の実施形態では、R’は独立して、非置換C-Cアルキルである。複数の実施形態では、アルケニルは、非置換である。複数の実施形態では、アルケニルは、(例えば、本明細書に記載の1、2、3、4、5、または6つの置換基で)置換されている。複数の実施形態では、アルケニル基は、-OH基で置換され、本明細書で「ヒドロキシアルケニル」基とも称され得、ここで、接頭辞は-OH基を示し、「アルケニル」は本明細書に記載されるとおりである。
【0064】
アルキニル:本明細書で使用される場合、「アルキニル」とは、鎖に沿って任意の安定した点で生じる1つ以上の炭素-炭素三重結合を有する直鎖状配置または分岐状配置のいずれかの任意の炭化水素鎖を意味し、例えば、「C-C20アルキニル」は、2~20個の炭素を有するアルキニル基を指す。アルキニル基の例には、プロプ-2-イニル、ブタ-2-イニル、ブタ-3-イニル、ペンタ-2-イニル、3-メチルペンタ-4-イニル、ヘキサ-2-イニル、ヘキサ-5-イニル等が挙げられる。複数の実施形態では、アルキニルは、1つの炭素-炭素三重結合を含む。アルキニル基は、非置換であり得るか、または本明細書に記載の1つ以上の置換基で置換され得る。例えば、アルキニル基は、ハロゲン、-COR’、-COH、-COR’、-CN、-OH、-OR’、-OCOR’、-OCOR’、-NH、-NHR’、-N(R’)、-SR’、または-SOR’のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6つの独立して選択される置換基)で置換され得、式中、R’の各事例が独立して、C-C20脂肪族(例えば、C-C20アルキル、C-C15アルキル、C-C10アルキル、またはC-Cアルキル)である。複数の実施形態では、R’は独立して、非置換アルキル(例えば、非置換C-C20アルキル、C-C15アルキル、C-C10アルキル、またはC-Cアルキル)である。複数の実施形態では、R’は独立して、非置換C-Cアルキルである。複数の実施形態では、アルキニルは、非置換である。複数の実施形態では、アルキニルは、(例えば、本明細書に記載の1、2、3、4、5、または6つの置換基で)置換されている。
【0065】
アリール:「アラルキル」の場合と同様に、単独でまたはより大きい部分の一部として使用される「アリール」という用語は、合計6~14個の環員を有する単環式、二環式、または三環式炭素環構造を意味し、前述の環構造は、分子の残りと単一の結合点を有し、その系内の少なくとも1つの環は芳香族であり、その系内の各環は4~7個の環員を含む。複数の実施形態では、アリール基は、6個の環炭素原子を有する(「Cアリール」、例えば、フェニル)。いくつかの実施形態では、アリール基は、10個の環炭素原子を有する(「C10アリール」、例えば、1-ナフチルおよび2-ナフチルなどのナフチル)。いくつかの実施形態では、アリール基は、14個の環炭素原子を有する(「C14アリール」、例えば、アントラシル(anthracyl))。「アリール」は環系も含み、この場合において上記に定義されるようにアリール環は1つ以上の炭素環基またはヘテロシクリル基と縮合され、この場合において結合ラジカルまたは結合点はアリール環上にあり、そうした例では、炭素原子数は続いてアリール環系の炭素数を指定する。アリールの例としては、フェニル、ナフチル、およびアントラセンが挙げられる。
【0066】
アリーレン:本明細書において使用される場合、「アリーレン」という用語は、二価のアリール基を指す(すなわち、分子に対し、2つの結合点を有する)。アリーレンの例としては、フェニレン(例えば、非置換フェニレンまたは置換フェニレン)が挙げられる。
【0067】
本発明の組成物
いくつかの実施形態では、本発明は、LNPおよびmRNAを含む組成物を提供し、これは、対象に投与されたとき、対象の耐性またはストレスレベルを変化させることなく、インビボで有意により高レベルのmRNA発現を誘導する。耐性またはストレスは、肝酵素アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)および/またはアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の上昇によって決定される。いくつかの実施形態では、特定の製剤は、とりわけ、製造プロセスの容易さ、例えば、共通の予め形成されたLNPストック溶液の利用などの、製造上の利点を提供する。
【0068】
本発明の観察は、工程(a)でmRNAを予め形成された空のLNPと混合することによって形成されたmRNA-LNPが、工程(b)で予め形成されたLNPとさらに組み合わせられて、mRNA-LNP組成物を形成した場合、得られた組成物の効力が、工程(a)のmRNA-LNPと比較して大幅に増加することを明らかにした。予め形成されたLNPが空であり(すなわち、mRNAを含まない)、mRNA-LNPと同じ脂質成分を含む場合でも、効力の増加が観察されるため、これは特に注目すべきである。さらに、予め形成されたLNPが、ポリヌクレオチドトランスフェクションの不十分な促進因子であることが知られている中性脂質のみを含む場合でも、mRNAコードタンパク質の発現の増加が観察される。
【0069】
したがって、インビボでの忍容性を損なうことなく、mRNA-LNP組成物の効力の増加が達成可能であるという事実は、治療設計の観点から本発明の方法の顕著な利点である。
【0070】
本発明のこの態様は、少なくとも2つの重要な利点を可能にする:(i)1用量当たり、mRNA治療用組成物中のより低い量のmRNAを提供すること、または投与頻度を減少させて同じ生物学的効果を達成し、それにより、組成物の治療指数を増加させること、および(ii)1つ以上の予め形成されたLNPがバルクで調製され、本発明に記載される所望の製剤を達成するための複数の混合および組み合わせ工程に利用可能にされ得る、容易、柔軟、拡張可能、かつ/またはハイスループットな製造プロセスを開発すること。
【0071】
本発明は、mRNAを予め形成された空のLNPと混合することによって調製されたmRNA-LNPが、予め形成されたLNPとさらに組み合わせられるプロセスを提供し、本発明の得られたmRNA-LNP組成物は、mRNAコードタンパク質のインビボ発現の増加をもたらす。いくつかの態様では、このプロセスは、(a)mRNA-LNPの形成を可能にする条件下で、予め形成された空のLNPをmRNAと混合することと、(b)工程(a)で形成されたmRNA-LNPを予め形成されたLNPと混み合わせ、それにより、mRNAを封入する脂質ナノ粒子を含む組成物を製造することとを含む製造プロセスである。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、少なくともカチオン性脂質、非カチオン性脂質、およびPEG修飾脂質を含む。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、カチオン性脂質を有するかまたは有しない、中性脂質を含み得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、mRNAは、タンパク質またはペプチドをコードする。
【0073】
いくつかの実施形態では、工程(b)で予め形成されたLNPは、空のLNPである。いくつかの実施形態では、工程(b)で予め形成されたLNPは、mRNAを含む。いくつかの実施形態では、工程(b)で予め形成されたLNPは、タンパク質またはペプチドをコードするmRNAを含む。いくつかの実施形態では、工程(b)で予め形成されたLNPは、工程(a)で形成されたmRNA-LNPと同じタンパク質またはポリペプチドをコードする同じmRNAを含む。いくつかの実施形態では、工程(b)で予め形成されたLNPは、工程(a)で形成されたmRNA-LNP中とは異なるタンパク質またはポリペプチドをコードする異なるmRNAを含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、工程(a)の空のLNPおよび工程(b)で予め形成されたLNPは、別個の不均質な脂質ナノ粒子である。例えば、工程(a)の空のLNPは、カチオン性脂質HGT-5003を含んでもよく、工程(b)で予め形成されたLNPは、カチオン性脂質ICEを含む。別の例では、工程(a)の空のLNPは、カチオン性脂質ICEを含んでもよく、工程(b)で予め形成されたLNPは、カチオン性脂質DOTAPを含む。さらに別の例では、工程(a)の空のLNPは、カチオン性脂質HGT-4001を含んでもよく、工程(b)で予め形成されたLNPは、カチオン性脂質ckk-E12を含む。LNPに好適な様々な脂質、およびそれらを生成するための方法は、以下のそれぞれのセクションに記載され、LNPを形成する脂質の任意の組み合わせが本明細書で企図される。
【0075】
一実施形態では、工程(b)で生成されたmRNA-LNP組成物は、第1の脂質ナノ粒子と第2の脂質ナノ粒子とを含み得、第1の脂質ナノ粒子と第2の脂質ナノ粒子は、同一の脂質組成物を有し、少なくとも一部の第1の脂質ナノ粒子は、mRNAを含む。一実施形態では、工程(b)で生成されたmRNA-LNP組成物は、第1の脂質ナノ粒子と第2の脂質ナノ粒子とを含み得、第1の脂質ナノ粒子と第2の脂質ナノ粒子は、別個の脂質組成物を有する。例えば、mRNA-LNP組成物は、カチオン性脂質ICEを含む第1の脂質ナノ粒子、およびカチオン性脂質DOTAPを含む第2の脂質ナノ粒子を含んでもよい。いくつかの実施形態では、工程(b)で生成されたmRNA-LNP組成物は、カチオン性脂質C12-200を含む第1の脂質ナノ粒子、およびカチオン性脂質DLinKC2DMAを含む第2の脂質ナノ粒子を含んでもよい。したがって、以下のそれぞれのセクションに記載されるLNPを生成するのに好適な様々な脂質の任意の組み合わせが、本明細書で企図される。
【0076】
いくつかの実施形態では、工程(a)の空のLNPまたは工程(b)の予め形成されたLNPのいずれかは、カチオン性脂質を含まない。いくつかの実施形態では、空のLNPまたは予め形成されたLNPのいずれかは、中性脂質および/またはPEG修飾脂質を含む。
【0077】
脂質ナノ粒子(LNP)
本発明はとりわけ、mRNA治療薬のための組成物を提供し、mRNAは、インビボでの効率的な細胞取り込みおよびプロセシングのための送達ビヒクルに封入される。本明細書で使用される場合、「送達ビヒクル」、「移入ビヒクル」、「ナノ粒子」という用語、または文法的同義語は、互換的に使用される。送達ビヒクルは、1つ以上の追加の核酸、担体、標的化リガンドもしくは安定化試薬と組み合わせて、または好適な賦形剤と混合されている薬理組成物中で製剤化されてもよい。薬物の製剤化および投与の技術は、”Remington’s Pharmaceutical Sciences,”Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,latest editionで知ることができる。特定の送達ビヒクルは、標的細胞への核酸のトランスフェクションを促進するその能力に基づいて選択される。
【0078】
いくつかの実施形態では、好適な送達ビヒクルは、リポソーム送達ビヒクルであり、例えば、脂質ナノ粒子(LNP)またはリポソームである。いくつかの実施形態では、リポソームは、1つ以上のカチオン性脂質を含む。いくつかの実施形態では、リポソームは、1つ以上のカチオン性脂質、1つ以上の非カチオン性脂質、1つ以上のコレステロールベースの脂質、および1つ以上のPEG修飾脂質を含む。いくつかの実施形態では、リポソームは、1つ以上のカチオン性脂質、1つ以上の非カチオン性脂質、および1つ以上のPEG修飾脂質を含む。いくつかの実施形態では、リポソームは、4つ以下の別個の脂質成分を含む。いくつかの実施形態では、リポソームは、3つ以下の別個の脂質成分を含む。いくつかの実施形態では、1つの別個の脂質成分は、ステロールベースのカチオン性脂質である。典型的な実施形態では、本発明のLNPは、mRNAを封入するリポソームである。好適なリポソームの脂質成分は、カチオン性脂質(例えば、cKK-E12、化合物1、化合物2、または化合物3)、非カチオン性脂質(DEPE)、コレステロールベースの脂質(例えば、コレステロール)、およびPEG修飾脂質(DMG-PEG2K)を含む。あるいは、好適なリポソームの脂質成分は、ステロールベースのカチオン性脂質(例えば、ICE)、非カチオン性脂質(DEPE)、およびPEG修飾脂質(例えば、DMG-PEG2K)を含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子中のDEPEは、DEPE含有脂質ナノ粒子と(脂質成分および個々の脂質成分のモル比に関して)組成物において他の点で同一であるDOPE含有脂質ナノ粒子と比較して、タンパク質またはペプチドをコードするmRNAの発現の強化を提供する。いくつかの実施形態では、DEPE含有脂質ナノ粒子によって送達されるmRNAコードタンパク質の発現は、DOPE含有脂質ナノ粒子と比較して少なくとも2倍強化される。mRNAの発現の強化は、例えば尾静脈注射によって、試験動物(例えば、マウス)に、DEPE含有脂質ナノ粒子、および異なるヘルパー脂質(例えば、DOPE)を有する同一に製剤化された脂質ナノ粒子を投与し、1つ以上の時点において(例えば、投与の4、6、8、12、18、または24時間後に)mRNAの発現を監視することによって決定され得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、mRNAは、インビボで治療用タンパク質に翻訳されるタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、タンパク質をコードするmRNAは、ポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、治療用ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、治療用ポリペプチドは、抗体軽鎖または抗体重鎖である。いくつかの実施形態では、治療用ポリペプチドは、mRNAが投与される対象に存在しないまたは欠乏している。いくつかの実施形態では、タンパク質をコードするmRNAは、ペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、ペプチドは、抗原である。
【0081】
いくつかの実施形態では、本発明のDEPE含有脂質ナノ粒子は、対象に投与されたときに安全かつ耐容性である。例えば、本発明のDEPE含有脂質ナノ粒子は、対象に投与されたときに、いかなる識別可能な肝毒性ももたらさない。肝毒性を評価するための好適なマーカーは、ALTおよびASTである。
【0082】
カチオン性脂質
本明細書で使用される場合、語句「カチオン性脂質」は、生理学的pHなどの選択されたpHで正味の正電荷を有する多数の脂質種のうちのいずれかを指す。
【0083】
本発明の組成物および方法に使用するための好適なカチオン性脂質としては、参照により本明細書に組み込まれる、国際特許公開第2010/144740号に記載のカチオン性脂質が挙げられる。ある特定の実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル 4-(ジメチルアミノ)ブタノエート:
【化7】
およびその薬学的に許容される塩を含む。
【0084】
本発明の組成物および方法に使用するための他の好適なカチオン性脂質としては、参照により本明細書に組み込まれる、国際特許公開第2013/149140号に記載のイオン化可能なカチオン性脂質が挙げられる。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の式のうちの1つのカチオン性脂質:
【化8】
またはその薬学的に許容可能な塩を含み、式中、RおよびRが各々独立して、水素、任意に置換される可変飽和または不飽和C-C20アルキル、および任意に置換される可変飽和または不飽和C-C20アシルからなる群から選択され、LおよびLが各々独立して、水素、任意に置換されるC-C30アルキル、任意に置換される可変不飽和C-C30アルケニル、および任意に置換されるC-C30アルキニルからなる群から選択され、mおよびoが各々独立して、ゼロおよび任意の正の整数(例えば、mは3)からなる群から選択され、nが、ゼロまたは任意の正の整数(例えば、nは1)である。ある特定の実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有する、カチオン性脂質(15Z,18Z)-N,N-ジメチル-6-(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-l-イル)テトラコサ-15,18-ジエン-1-アミン(「HGT5000」):
【化9】
およびその薬学的に許容される塩を含む。ある特定の実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質(15Z,18Z)-N,N-ジメチル-6-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)テトラコサ-4,15,18-トリエン-l-アミン(「HGT5001」):
【化10】
およびその薬学的に許容される塩を含む。ある特定の実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質および(15Z,18Z)-N,N-ジメチル-6-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)テトラコサ-5,15,18-トリエン-1-アミン(「HGT5002」):
【化11】
およびその薬学的に許容される塩を含む。
【0085】
本発明の組成物および方法に使用するための他の好適なカチオン性脂質としては、参照により本明細書に組み込まれる、国際特許公開第2010/053572号にアミノアルコールリピドイドとして記載のカチオン性脂質が挙げられる。ある特定の実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化12】
およびその薬学的に許容される塩を含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法で使用されるリピドイドは、市販のアミンをリポフィリカクリレート、アクリルアミド、またはエポキシドと反応させることによって合成される。いくつかの実施形態では、リピドイドは、アミン86(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン)およびアミン87(N-(3-アミノプロピル)ジエタンアミン)に由来する。リピドイドは、核酸送達試薬の潜在的な新しいクラスとしていくつかの利点を有する:(i)リピドイドを合成するために使用される化学が単純かつ経済的である、(ii)構造多様性のライブラリがすでに開発されている、(iii)送達系の構造と機能との間の相関が、リピドイドのライブラリのスクリーニングから蓄積された大きいデータセットから構築され得る。これらの反応の単純化は、アミンのタイプ、ならびにテール(または炭素アーム鎖)の鎖長およびタイプ(アクリルアミド/アクリレート/エポキシド)を変化させることによって、リピドイドの構造的に多様なライブラリを構築することを可能にした。
【0087】
いくつかの実施形態では、リピドイドは、約2~20個の炭素アーム鎖を含む。いくつかの実施形態では、リピドイドは、約5~18個の炭素アーム鎖を含む。いくつかの実施形態では、リピドイドは、約10~16個の炭素アーム鎖を含む。いくつかの実施形態では、リピドイドは、約10~14個の炭素アーム鎖を含む。いくつかの実施形態では、リピドイドは、約10~12個の炭素アーム鎖を含む。いくつかの実施形態では、リピドイドは、約10個の炭素アーム鎖を含む。いくつかの実施形態では、リピドイドは、約12個の炭素アーム鎖を含む。いくつかの実施形態では、リピドイドは、約14個の炭素アーム鎖を含む。いくつかの実施形態では、リピドイドは、約16個の炭素アーム鎖を含む。
【0088】
本発明の組成物および方法に使用するための他の好適なカチオン性脂質としては、参照により本明細書に組み込まれる、国際特許公開第2016/118725号に記載のカチオン性脂質が挙げられる。ある特定の実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化13】
およびその薬学的に許容される塩を含む。
【0089】
本発明の組成物および方法に使用するための他の好適なカチオン性脂質としては、参照により本明細書に組み込まれる、国際特許公開第2016/118724号に記載のカチオン性脂質が挙げられる。ある特定の実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化14】
およびその薬学的に許容される塩を含む。
【0090】
本発明の組成物および方法に使用するための他の好適なカチオン性脂質としては、14,25-ジトリデシル15,18,21,24-テトラアザ-オクタトリアコンタンの式を有するカチオン性脂質、およびその薬学的に許容される塩が挙げられる。
【0091】
本発明の組成物および方法に使用するための他の好適なカチオン性脂質としては、それらの各々が参照により本明細書に組み込まれる、国際特許公開第2013/063468号および同第2016/205691号に記載のカチオン性脂質が挙げられる。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の式のカチオン性脂質:
【化15】
またはその薬学的に許容される塩を含み、式中、Rの各事例が独立して、任意に置換されるC-C40アルケニルである。ある特定の実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化16】
およびその薬学的に許容される塩を含む。ある特定の実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化17】
およびその薬学的に許容される塩を含む。ある特定の実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化18】
およびその薬学的に許容される塩を含む。ある特定の実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化19】
およびその薬学的に許容される塩を含む。
【0092】
本発明の組成物および方法に使用するための他の好適なカチオン性脂質としては、参照により本明細書に組み込まれる、国際特許公開第2015/184256号に記載のカチオン性脂質が挙げられる。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の式のカチオン性脂質:
【化20】
またはその薬学的に許容される塩を含み、式中、Xが各々独立して、OまたはSであり、Yが各々独立して、OまたはSであり、mが各々独立して、0~20であり、nが各々独立して、1~6であり、Rが各々独立して、水素、任意に置換されるC1-50アルキル、任意に置換されるC2-50アルケニル、任意に置換されるC2-50アルキニル、任意に置換されるC3-10カルボシクリル、任意に置換される3~14員ヘテロシクリル、任意に置換されるC6-14アリール、任意に置換される5~14員ヘテロアリールまたはハロゲンであり、Rが各々独立して、水素、任意に置換されるC1-50アルキル、任意に置換されるC2-50アルケニル、任意に置換されるC2-50アルキニル、任意に置換されるC3-10カルボシクリル、任意に置換される3~14員ヘテロシクリル、任意に置換されるC6-14アリール、任意に置換される5~14員ヘテロアリール、またはハロゲンである。ある特定の実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質、「ターゲット23」:
【化21】
およびその薬学的に許容される塩を含む。
【0093】
本発明の組成物および方法に使用するための他の好適なカチオン性脂質としては、参照により本明細書に組み込まれる、国際特許公開第2016/004202号に記載のカチオン性脂質が挙げられる。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化22】
またはその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化23】
またはその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化24】
またはその薬学的に許容される塩を含む。
【0094】
本発明の組成物および方法に使用するための他の好適なカチオン性脂質としては、参照により本明細書に組み込まれる、米国仮特許出願第62/758,179号に記載のカチオン性脂質が挙げられる。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の式のカチオン性脂質:
【化25】
またはその薬学的に許容される塩を含み、式中、RおよびRが各々独立して、HまたはC-C脂肪族であり、mが各々独立して、1~4の値を有する整数であり、Aが各々独立して、共有結合またはアリーレンであり、Lが各々独立して、エステル、チオエステル、ジスルフィド、または無水物基であり、Lが各々独立して、C-C10脂肪族であり、Xが各々独立して、HまたはOHであり、Rが各々独立して、C-C20脂肪族である。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の式のカチオン性脂質:
【化26】
またはその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の式のカチオン性脂質:
【化27】
またはその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の式のカチオン性脂質:
【化28】
またはその薬学的に許容される塩を含む。
【0095】
本発明の組成物および方法に使用するための他の好適なカチオン性脂質としては、参照により本明細書に組み込まれる、J.McClellan,M.C.King,Cell 2010,141,210-217およびWhitehead et al.,Nature Communications(2014)5:4277に記載のカチオン性脂質が挙げられる。ある特定の実施形態では、本発明の組成物および方法のカチオン性脂質は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化29】
およびその薬学的に許容される塩を含む。
【0096】
本発明の組成物および方法に使用するための他の好適なカチオン性脂質としては、参照により本明細書に組み込まれる、国際特許公開第2015/199952号に記載のカチオン性脂質が挙げられる。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化30】
およびその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化31】
およびその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化32】
およびその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化33】
およびその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化34】
およびその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化35】
およびその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化36】
およびその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化37】
およびその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化38】
およびその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化39】
およびその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化40】
およびその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化41】
およびその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化42】
およびその薬学的に許容される塩を含む。
【0097】
本発明の組成物および方法に使用するための他の好適なカチオン性脂質としては、参照により本明細書に組み込まれる、国際特許公開第2017/004143号に記載のカチオン性脂質が挙げられる。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化43】
およびその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化44】
およびその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化45】
およびその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化46】
およびその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化47】
およびその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化48】
およびその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化49】
およびその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化50】
およびその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化51】
およびその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化52】
およびその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化53】
およびその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化54】
およびその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化55】
およびその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化56】
およびその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化57】
およびその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化58】
およびその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化59】
およびその薬学的に許容される塩を含む。
【0098】
本発明の組成物および方法に使用するための他の好適なカチオン性脂質としては、参照により本明細書に組み込まれる、国際特許公開第2017/075531号に記載のカチオン性脂質が挙げられる。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の式のカチオン性脂質:
【化60】
またはその薬学的に許容される塩を含み、式中、LまたはLの一方が、-O(C=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)-、-O-、-S(O)、-S-S-、-C(=O)S-、-SC(=O)-、-NRC(=O)-、-C(=O)NR-、NRC(=O)NR-、-OC(=O)NR-、または-NRC(=O)O-であり、LまたはLの他方が、-O(C=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)-、-O-、-S(O)、-S-S-、-C(=O)S-、SC(=O)-、-NRC(=O)-、-C(=O)NR-、NRC(=O)NR-、-OC(=O)NR-、もしくは-NRC(=O)O-、または直接結合であり、GおよびGが各々独立して、非置換C-C12アルキレンまたはC-C12アルケニレンであり、Gが、C-C24アルキレン、C-C24アルケニレン、C-Cシクロアルキレン、C-Cシクロアルケニレンであり、Rが、HまたはC-C12アルキルであり、RおよびRが各々独立して、C-C24アルキルまたはC-C24アルケニルであり、Rが、H、OR、CN、-C(=O)OR、-OC(=O)R、または-NRC(=O)Rであり、Rが、C-C12アルキルであり、Rが、HまたはC-Cアルキルであり、xが、0、1、または2である。
【0099】
本発明の組成物および方法に使用するための他の好適なカチオン性脂質としては、参照により本明細書に組み込まれる、国際特許公開第2017/117528号に記載のカチオン性脂質が挙げられる。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化61】
およびその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化62】
およびその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化63】
およびその薬学的に許容される塩を含む。
【0100】
本発明の組成物および方法に使用するための他の好適なカチオン性脂質としては、参照により本明細書に組み込まれる、国際特許公開第2017/049245号に記載のカチオン性脂質が挙げられる。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法のカチオン性脂質は、以下の式のうちの1つの化合物:
【化64】
ならびにその薬学的に許容される塩を含む。これら4つの式のうちのいずれか1つにおいて、Rは、独立して、-(CHQおよび-(CHCHQRから選択され、Qは、-OR、-OH、-O(CHN(R)、-OC(O)R、-CX、-CN、-N(R)C(O)R、-N(H)C(O)R、-N(R)S(O)R、-N(H)S(O)R、-N(R)C(O)N(R)、-N(H)C(O)N(R)、-N(H)C(O)N(H)(R)、-N(R)C(S)N(R)、-N(H)C(S)N(R)、-N(H)C(S)N(H)(R)、および複素環からなる群から選択され、nは、1、2、または3である。ある特定の実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化65】
およびその薬学的に許容される塩を含む。ある特定の実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化66】
およびその薬学的に許容される塩を含む。ある特定の実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化67】
およびその薬学的に許容される塩を含む。ある特定の実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化68】
およびその薬学的に許容される塩を含む。
【0101】
本発明の組成物および方法に使用するための他の好適なカチオン性脂質としては、それらの各々が参照により本明細書に組み込まれる、国際特許公開第2017/173054号および同第2015/095340号に記載のカチオン性脂質が挙げられる。ある特定の実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化69】
およびその薬学的に許容される塩を含む。ある特定の実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化70】
およびその薬学的に許容される塩を含む。ある特定の実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化71】
およびその薬学的に許容される塩を含む。ある特定の実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質:
【化72】
およびその薬学的に許容される塩を含む。
【0102】
本発明の組成物および方法に使用するための他の好適なカチオン性脂質としては、参照により本明細書に組み込まれる、国際特許公開第2012/170889号に記載の切断可能なカチオン性脂質が挙げられる。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の式のカチオン性脂質を含み、
【化73】
式中、Rは、イミダゾール、グアニジニウム、アミノ、イミン、エナミン、任意に置換されるアルキルアミノ(例えば、ジメチルアミノなどのアルキルアミノ)、およびピリジルからなる群から選択され、式中、Rは、以下の2つの式のうちの1つからなる群から選択され、
【化74】
式中、RおよびRが各々独立して、任意に置換される可変飽和または不飽和C-C20アルキルおよび任意に置換される可変飽和または不飽和C-C20アシルからなる群から選択され、nが、0または任意の正の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれ以上)である。ある特定の実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質「HGT4001」:
【化75】
およびその薬学的に許容される塩を含む。ある特定の実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質「HGT4002」:
【化76】
およびその薬学的に許容される塩を含む。ある特定の実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質「HGT4003」:
【化77】
およびその薬学的に許容される塩を含む。ある特定の実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質「HGT4004」:
【化78】
およびその薬学的に許容される塩を含む。ある特定の実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有するカチオン性脂質「HGT4005」:
【化79】
およびその薬学的に許容される塩を含む。
【0103】
本発明の組成物および方法に使用するための他の好適なカチオン性脂質としては、2018年5月16日に出願され、参照により本明細書に組み込まれる、米国仮出願第62/672,194号に記載の切断可能なカチオン性脂質が挙げられる。ある特定の実施形態では、本発明の組成物および方法は、一般式のうちのいずれか、または米国仮出願第62/672,194号に記載の構造(1a)~(21a)および(1b)~(21b)ならびに(22)~(237)のうちのいずれかである、カチオン性脂質を含む。ある特定の実施形態では、本発明の組成物および方法は、式(I’)による構造を有するカチオン性脂質であって、
【化80】
式中、
が独立して、-H、-L-R、または-L5A-L5B-B’であり、
、L、およびLが各々独立して、共有結合、-C(O)-、-C(O)O-、-C(O)S-、または-C(O)NR-であり、
4AおよびL5Aが各々独立して、-C(O)-、-C(O)O-、または-C(O)NR-であり、
4BおよびL5Bが各々独立して、C-C20アルキレン、C-C20アルケニレン、またはC-C20アルキニレンであり、
BおよびB’が各々、NRまたは5~10員窒素含有ヘテロアリールであり、
、R、およびRが各々独立して、C-C30アルキル、C-C30アルケニル、またはC-C30アルキニルであり、
およびRが各々独立して、水素、C-C10アルキル、C-C10アルケニル、またはC-C10アルキニルであり、
が各々独立して、水素、C-C20アルキル、C-C20アルケニル、またはC-C20アルキニルである、カチオン性脂質を含む。
ある特定の実施形態では、本発明の組成物および方法は、以下の化合物構造を有する62/672,194の化合物(139)であるカチオン性脂質を含む:
【化81】
【0104】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、カチオン性脂質、N-[l-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(「DOTMA」)を含む。(参照により本明細書に援用される、(Feigner et al.(Proc.Nat’l Acad.Sci.84,7413(1987);米国特許第4,897,355号)。本発明の組成物および方法のために好適な他のカチオン性脂質は、例えば、5-カルボキシスペルミルグリシンジオクタデシルアミド(carboxyspermylglycinedioctadecylamide)(「DOGS」)、2,3-ジオレイルオキシ-N-[2(スペルミン-カルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-l-プロパンアミニウム(「DOSPA」)(Behr et al.Proc.Nat.’l Acad.Sci.86,6982(1989);米国特許第5,171,678号、米国特許第5,334,761号)、l,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン(「DODAP」)、l,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(「DOTAP」)を含む。
【0105】
本発明の組成物および方法に好適な追加の例示的なカチオン性脂質はまた、l,2-ジステアリルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(「DSDMA」);1,2-ジオレイルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(「DODMA」)、1,2-ジリノレイロキシオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(「DLinDMA」)、l,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(「DLenDMA」)、N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(「DODAC」)、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(「DDAB」)、N-(l,2-ジミリチルチルオキシプロップ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(「DMRIE」)、3-ジメチルアミノ-2-(コレスト-5-エン-3-ベータ-オキシブタン-4-オキシ)-l-(シス,シス-9,12-オクタデカジエンオキシ)プロパン(「CLinDMA」);2-[5’-(コレスト-5-エン-3-ベータ-オキシ)-3’-オキサペントキシ)-3-ジメチl-l-(シス,シス-9’,l-2’-オクタデカジエンオキシ)プロパン(「CpLinDMA」);N,N-ジメチル-3,4-ジオレイルオキシベンジルアミン(「DMOBA」);1,2-N,N’-ジオレイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン(「DOcarbDAP」);2,3-ジリノレオイロイルオキシ-N,N-ジメチルプロピルアミン(「DLinDAP」)、l,2-N,N’-ジリノレイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン(「DLincarbDAP」);l,2-ジリノレイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン(「DLinCDAP」);2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[l,3]-ジオキソラン(「DLin-K-DMA」);2-((8-[(3P)-コレスト-5-エン-3-イルオキシ]オクチル)オキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-1-アミン(「オクチル-CLinDMA」);(2R)-2-((8-[(3ベータ)-コレスト-5-エン-3-イルオキシ]オクチル)オキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-1-アミン(「オクチル-CLinDMA(2R)」);(2S)-2-((8-[(3P)-コレスト-5-エン-3-イルオキシ]オクチル)オキシ)-N、fsl-ジメチ3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-1-アミン(「オクチル-CLinDMA(2S)」);2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[l,3]-ジオキソラン(「DLin-K-XTC2-DMA」)、および2-(2,2-ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,l2-ジエン-1-イル)-l,3-ジオキソラン-4-イル)-N,N-ジメチルエタンアミン(「DLin-KC2-DMA」)を含む(本明細書に参照によって援用される国際公開第2010/042877号参照;Semple et al.,Nature Biotech.28:172-176(2010))。(Heyes,J.,et al.,J Controlled Release 107:276-287(2005);Morrissey,DV.,et al.,Nat.Biotechnol.23(8):1003-1007(2005);国際特許公開第2005/121348号)。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質のうちの1つ以上は、イミダゾール部分、ジアルキルアミノ部分、またはグアニジニウム部分のうちの少なくとも1つを含む。
【0106】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法に好適な1つ以上のカチオン性脂質としては、2,2-ジリノレイ1-4-ジメチルアミノエチ1-[1,3]-ジオキソラン(「XTC」)、(3aR,5s,6aS)-N,N-ジメチル-2,2-ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)テトラヒドロ-3aH-シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール-5-アミン(「ALNY-100」)、および/または4,7,13-トリス(3-オキソ-3-(ウンデシルアミノ)プロピル)-N1,N16-ジウンデシル-4,7,10,13-テトラアザヘキサデカン-1,16-ジアミド(「NC98-5」)が挙げられる。
【0107】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、組成物中の総脂質含有量、例えば、脂質ナノ粒子の重量で測定して、少なくとも約5%、10%、20%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、または70%を構成する1つ以上のカチオン性脂質を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、組成物中の総脂質含有量、例えば、脂質ナノ粒子のモル%で測定して、少なくとも約5%、10%、20%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、または70%を構成する1つ以上のカチオン性脂質を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、組成物中の総脂質含有量、例えば、脂質ナノ粒子の重量で測定して、約30~70%(例えば、約30~65%、約30~60%、約30~55%、約30~50%、約30~45%、約30~40%、約35~50%、約35~45%、または約35~40%)を構成する1つ以上のカチオン性脂質を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、組成物中の総脂質含有量、例えば、脂質ナノ粒子のモル%で測定して、約30~70%(例えば、約30~65%、約30~60%、約30~55%、約30~50%、約30~45%、約30~40%、約35~50%、約35~45%、または約35~40%)を構成する1つ以上のカチオン性脂質を含む
【0108】
いくつかの実施形態では、ステロール系カチオン性脂質が、本明細書に記載のカチオン性脂質の代わりに、または本明細書に記載のカチオン性脂質に加えて使用されてもよい。好適なステロール系カチオン性脂質は、ジアルキルアミノ含有ステロール系カチオン性脂質、イミダゾール含有ステロール系カチオン性脂質、およびグアニジニウム含有ステロール系カチオン性脂質である。例えば、ある特定の実施形態は、イミダゾールを含む1つ以上のステロール系カチオン性脂質、例えば、以下の構造(I)により示される、イミダゾールコレステロールエステルまたは「ICE」脂質(3S,10R,13R,17R)-10,13-ジメチル-17-((R)-6-メチルヘプタン-2-イル)-2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル 3-(1H-イミダゾール-4-イル)プロパノエートを含む、組成物を対象とする。ある特定の実施形態では、機能性タンパク質をコードするRNA(例えば、mRNA)の送達のための脂質ナノ粒子は、1つ以上のイミダゾール系カチオン性脂質、例えば、以下の構造により示される、イミダゾールコレステロールエステルまたは「ICE」脂質(3S,10R,13R,17R)-10,13-ジメチル-17-((R)-6-メチルヘプタン-2-イル)-2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル 3-(1H-イミダゾール-4-イル)プロパノエートを含み得る。
【化82】
【0109】
いくつかの実施形態では、リポソーム中のカチオン性脂質の割合は、10%超、20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、または70%超であり得る。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、リポソームの約30~50重量%(例えば、約30~45重量%、約30~40重量%、約35~50重量%、約35~45重量%、または約35~40重量%)を構成する。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質(例えば、ICE脂質)は、モル比でリポソームの約30%、約35%、約40%、約45%、または約50%を構成する。
【0110】
非カチオン性脂質
本明細書で使用される場合、「非カチオン性脂質」という語句は、本明細書において「ヘルパー脂質」とも称される、任意の中性脂質、両性イオン性脂質、またはアニオン性脂質を指す。本明細書で使用される場合、語句「カチオン性脂質」は、生理学的pHなどの選択されたpHで正味の負電荷を運ぶ多数の脂質種のいずれかを指す。
【0111】
本発明は、1,2-ジエルコイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DEPE)を含む1つ以上の非カチオン性ヘルパー脂質を含む、mRNA-LNPに関する。いくつかの実施形態では、DEPEは、mRNA-LNP中の唯一の非カチオン性ヘルパー脂質である。他の実施形態では、mRNA-LNPのヘルパー脂質部分は、DEPEおよびコレステロールを含む。
【0112】
いかなる特定の理論によっても束縛されることを望むものではないが、その脂質鎖長または組成においてDEPEとは異なる特定のDEPE誘導体も、本発明内に含まれる。例えば、本発明者らは、10~20の炭素鎖長のアルキル鎖またはアルケン鎖が、mRNA-LNPの形成に特に好適であることを見出した。いくつかの実施形態では、16~20の炭素鎖長のアルキル鎖またはアルケン鎖を有するDEPE誘導体が特に好ましい。あるいは、例えば10、12、または14個の炭素を有するものなど、10~14の炭素鎖長のアルキル鎖またはアルケン鎖を有するDEPE誘導体が本発明の実施に特に好適であり得る。
【0113】
mRNA-LNPに含まれ得る他の非カチオン性脂質またはヘルパー脂質としては、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(POPE)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-l-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジル-エタノールアミン(DSPE)、ホスファチジルセリン、スフィンゴ脂質、セレブロシド、ガングリオシド、16-O-モノメチルPE、16-O-ジメチルPE、18-1-トランスPE、l-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジエタノールアミン(SOPE)、またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0114】
いくつかの実施形態では、こうした非カチオン性脂質は、単独で使用され得るが、好ましくは他の脂質、例えば、カチオン性脂質と組み合わせて使用される。いくつかの実施形態では、非カチオン性脂質は、リポソームに存在する総脂質の約5%~約90%、または約10%~約70%のモル比を含み得る。いくつかの実施形態では、非カチオン性脂質は、中性脂質、すなわち、組成物が製剤化および/または投与される条件下で正味の電荷を保有しない脂質である。いくつかの実施形態では、リポソーム中の非カチオン性脂質の割合は、5%超、10%超、20%超、30%超、または40%超であり得る。
【0115】
コレステロールベースの脂質
いくつかの実施形態では、組成物(例えば、リポソーム組成物)は、1つ以上のコレステロールベースの脂質を含む。例えば、本発明を実施するための好適なコレステロールベースの脂質は、コレステロールである。他の好適なコレステロールベースの脂質としては、例えば、DC-Chol(N,N-ジメチル-N-エチルカルボキシアミドコレステロール)、1,4-ビス(3-N-オレイルアミノ-プロピル)ピペラジン(Gao,et al.Biochem.Biophys.Res.Comm.179,280(1991)、Wolf et al.BioTechniques 23,139(1997)、米国特許第5,744,335号)、またはイミダゾールコレステロールエステル(ICE)が挙げられる。
【0116】
いくつかの実施形態では、コレステロールベースの脂質は、リポソーム中に存在する総脂質の約1%~約30%、または約5%~約20%のモル比(モル%)で存在し得る。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子中のコレステロールベースの脂質のパーセンテージは、約5モル%超、約10モル%超、約20モル%超、約30モル%超、または約40モル%超であり得る。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子中のコレステロールベースの脂質のパーセンテージは、約5モル%以下、約10モル%以下、約20モル%以下、約30モル%以下、または約40モル%以下であり得る。
【0117】
いくつかの実施形態では、コレステロールベースの脂質は、リポソーム中に存在する総脂質の約1%~約30%、または約5%~約20%の重量比(重量%)で存在し得る。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子中のコレステロールベースの脂質のパーセンテージは、約5重量%超、約10重量%超、約20重量%超、約30重量%超、または約40重量%超であり得る。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子中のコレステロールベースの脂質のパーセンテージは、約5重量%以下、約10重量%以下、約20重量%以下、約30重量%以下、または約40重量%以下であり得る。
【0118】
PEG化脂質
いくつかの実施形態では、好適な脂質溶液は、本明細書においてPEG修飾脂質とも称される1つ以上のPEG化脂質を含む。本発明を実施するのに好適なPEG修飾またはPEG化脂質は、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(DMG-PEG2K)である。例えば、ポリエチレングリコール(PEG)修飾リン脂質、およびN-オクタノイル-スフィンゴシン-l-[スクシニル(メトキシポリエチレングリコール)-2000](C8 PEG-2000セラミド)を含む誘導体化セラミド(PEG-CER)などの誘導体化脂質の使用も、本発明によって企図される。企図されるPEG修飾脂質は、C-C20の鎖長のアルキル鎖を有する脂質に共有結合した最大2kDa、最大3kDa、最大4kDa、または最大5kDaの鎖長のポリエチレングリコール鎖を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、PEG修飾脂質またはPEG化脂質は、PEG化コレステロールまたはPEG-2Kである。いくつかの実施形態では、特に有用な交換可能な脂質は、より短いアシル鎖(例えば、C14またはC18)を有するPEGセラミドである。こうした成分の付加は、複合体の凝集を阻止することができ、また循環寿命を増加させ、脂質-核酸組成物の標的組織への送達を増加させるための手段を提供することができる(Klibanov et al.(1990)FEBS Letters,268(1):235-237)。あるいは、これらの成分はインビボで製剤の外へと速やかに交換されるように選択され得る(米国特許第5,885,613号を参照のこと)。特定の有用な交換可能な脂質は、より短いアシル鎖(例えば、C14またはC18)を有するPEG-セラミドである。本発明のPEG修飾リン脂質および誘導体化された脂質は、リポソーム移入ビヒクルに存在する総脂質の約0%~約20%、約0.5%~約20%、約1%~約15%、約4%~約10%、または約2%のモル比を含み得る。
【0119】
PEG修飾リン脂質および誘導体化脂質は、重量またはモルで、好適な脂質溶液中の総脂質の約0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、または5%以下を構成し得る。いくつかの実施形態では、PEG修飾脂質は、重量またはモル濃度で、好適な脂質溶液中の総脂質の約5%以下を構成し得る。いくつかの実施形態では、PEG修飾脂質は、重量またはモル濃度で、好適な脂質溶液中の総脂質の約4%以下を構成し得る。いくつかの実施形態では、PEG修飾脂質は、典型的には、重量またはモル濃度で、好適な脂質溶液中の総脂質の3%以下を構成する。いくつかの実施形態では、PEG修飾脂質は、典型的には、重量またはモル濃度で、好適な脂質溶液中の総脂質の2%以下を構成する。いくつかの実施形態では、PEG修飾脂質は、典型的には、重量またはモル濃度で、好適な脂質溶液中の総脂質の1%以下を構成する。いくつかの実施形態では、PEG修飾脂質は、重量またはモル濃度で、好適な脂質溶液中の総脂質の約1~5%、約1~4%、約1~3%、または約1~2%を構成する。いくつかの実施形態では、PEG修飾脂質は、重量またはモル濃度で、好適な脂質溶液中の総脂質の0.01-3%(例えば、約0.01~2.5%、0.01~2%、0.01~1.5%、0.01~1%)を構成する。
【0120】
モル脂質比
様々な実施形態によれば、脂質ナノ粒子を含むカチオン性脂質、非カチオン性脂質、および/またはPEG修飾脂質の選択、ならびにかかる脂質の互いに対する相対モル割合の選択は、選択される脂質の特徴、対象とする標的細胞の性質、送達されるmRNAの特徴に基づく。さらなる考慮すべき事項には、例えば、アルキル鎖の飽和度、ならびに選択された脂質のサイズ、電荷、pH、pKa、融合性、および忍容性が含まれる。したがって、モル比はそれらに応じて調節され得る。
【0121】
予め形成された脂質ナノ粒子を調製するために使用され得、かつそれらに含まれる脂質、すなわち、カチオン性脂質、非カチオン性脂質、PEG修飾脂質、および任意にコレステロールの様々な組み合わせが、文献および本明細書に記載される。例えば、好適な脂質溶液は、cKK-E12、DEPE、コレステロール、およびDMG-PEG2K、C12-200、DEPE、コレステロール、およびDMG-PEG2K、HGT5000、DEPE、コレステロール、およびDMG-PEG2K、HGT5001、DEPE、コレステロール、およびDMG-PEG2K、cKK-E12、DPPC、コレステロール、およびDMG-PEG2K、C12-200、DPPC、コレステロール、およびDMG-PEG2K、HGT5000、DPPC、chol、およびDMG-PEG2K、HGT5001、DPPC、コレステロール、およびDMG-PEG2K、またはICE、DEPE、およびDMG-PEG2Kを含有し得る。脂質のさらなる組み合わせは、当該技術分野、例えば、「Novel ICE-based Lipid Nanoparticle Formulation for Delivery of mRNA」と題する、WO 2018/089790として公開された、2017年11月10日に出願されたPCT/US17/61100、「PolyAnionic Delivery of Nucleic Acids」と題する、WO 2018/165257として公開された、2018年3月7日に出願されたPCT/US18/21292、「Poly (Phosphoesters) for Delivery of Nucleic Acids」と題する、2018年6月11日に出願されたPCT/US18/36920、「Thioester Cationic Lipids」と題する、2018年5月24日に出願された米国仮出願第62/676,147号、「Cationic Lipids Comprising a Steroidal Moiety」と題する、2018年5月30日に出願された米国仮出願第62/677,821号、「Macrocyclic Lipids」と題する、2018年5月30日に出願された米国仮出願第62/677,809号、「Vitamin K Cationic Lipids」と題する、2018年5月30日に出願された米国仮出願第62/677,818号、「Vitamin D Cationic Lipids」と題する、2018年5月30日に出願された米国仮出願第62/677,828号、「Vitamin A Cationic Lipids」と題する、2018年5月30日に出願された米国仮出願第62/677,851号、「Vitamin E Cationic Lipids」と題する、2018年5月30日に出願された米国仮出願第62/677,855号に記載され、それらの開示は、参照によりそれらの完全な範囲が本明細書に含まれる。
【0122】
様々な実施形態では、カチオン性脂質(例えば、cKK-E12、化合物1、化合物2、もしくは化合物3、C12-200、ICE、および/またはHGT4003)は、モル比でリポソームの約30~60%(例えば、約30~55%、約30~50%、約30~45%、約30~40%、約35~50%、約35~45%、または約35~40%)を構成する。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質(例えば、cKK-E12、化合物1、化合物2、もしくは化合物3、C12-200、ICE、および/またはHGT4003)の割合は、モル比でリポソームの約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、または約60%以上である。
【0123】
いくつかの実施形態では、カチオン性脂質:非カチオン性脂質:コレステロールベースの脂質:PEG修飾脂質の比率は、それぞれ、約30~60:25~35:20~30:1~15であり得る。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質:非カチオン性脂質:コレステロールベースの脂質:PEG修飾脂質の比率は、それぞれ、およそ40:30:20:10である。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質:非カチオン性脂質:コレステロールベースの脂質:PEG修飾脂質の比率は、それぞれ、およそ40:30:25:5である。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質:非カチオン性脂質:コレステロールベースの脂質:PEG修飾脂質の比率は、それぞれ、およそ40:32:25:3である。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質:非カチオン性脂質:コレステロールベースの脂質:PEG修飾脂質の比率は、およそ50:25:20:5である。いくつかの実施形態では、ステロール脂質:非カチオン性脂質:PEG修飾脂質の比率は、50:45:5である。いくつかの実施形態では、ステロール脂質:非カチオン性脂質:PEG修飾脂質の比率は、50:40:10である。いくつかの実施形態では、ステロール脂質:非カチオン性脂質:PEG修飾脂質の比率は、55:40:5である。いくつかの実施形態では、ステロール脂質:非カチオン性脂質:PEG修飾脂質の比率は、55:35:10である。いくつかの実施形態では、ステロール脂質:非カチオン性脂質:PEG修飾脂質の比率は、60:35:5である。いくつかの実施形態では、ステロール脂質:非カチオン性脂質:PEG修飾脂質の比率は、60:30:10である。
【0124】
いくつかの実施形態では、本発明に好適なリポソームは、ICEとDEPEとを、1:1超のICE:DEPEのモル比で含む。いくつかの実施形態では、ICE:DEPEのモル比は、2.5:1未満である。いくつかの実施形態では、ICE:DEPEのモル比は、1:1~2.5:1である。いくつかの実施形態では、ICE:DEPEのモル比は、およそ1.5:1である。いくつかの実施形態では、ICE:DEPEのモル比は、およそ1.7:1である。いくつかの実施形態では、ICE:DEPEのモル比は、およそ2:1である。いくつかの実施形態では、本発明に好適なリポソームは、ICEとDMG-PEG-2Kとを、10:1超のICE:DMG-PEG-2Kのモル比で含む。いくつかの実施形態では、ICE:DMG-PEG-2Kのモル比は、16:1未満である。いくつかの実施形態では、ICE:DMG-PEG-2Kのモル比は、およそ12:1である。いくつかの実施形態では、ICE:DMG-PEG-2Kのモル比は、およそ14:1である。いくつかの実施形態では、本発明に好適なリポソームは、DEPEとDMG-PEG-2Kとを、5:1超のDEPE:DMG-PEG-2Kのモル比で含む。いくつかの実施形態では、DEPE:DMG-PEG-2Kのモル比は、11:1未満である。いくつかの実施形態では、DEPE:DMG-PEG-2Kのモル比は、およそ7:1である。いくつかの実施形態では、DEPE:DMG-PEG-2Kのモル比は、およそ10:1である。
【0125】
いくつかの実施形態では、本発明に好適なリポソームは、ICEと、DEPEと、DMG-PEG-2Kとを、50:45:5のICE:DEPE:DMG-PEG-2Kのモル比で含む。いくつかの実施形態では、本発明に好適なリポソームは、ICEと、DEPEと、DMG-PEG-2Kとを、50:40:10のICE:DEPE:DMG-PEG-2Kのモル比で含む。いくつかの実施形態では、本発明に好適なリポソームは、ICEと、DEPEと、DMG-PEG-2Kとを、55:40:5のICE:DEPE:DMG-PEG-2Kのモル比で含む。いくつかの実施形態では、本発明に好適なリポソームは、ICEと、DEPEと、DMG-PEG-2Kとを、55:35:10のICE:DEPE:DMG-PEG-2Kのモル比で含む。いくつかの実施形態では、本発明に好適なリポソームは、ICEと、DEPEと、DMG-PEG-2Kとを、60:35:5のICE:DEPE:DMG-PEG-2Kのモル比で含む。いくつかの実施形態では、本発明に好適なリポソームは、ICEと、DEPEと、DMG-PEG-2Kとを、60:30:10のICE:DEPE:DMG-PEG-2Kのモル比で含む。
【0126】
ポリマー
いくつかの実施形態では、好適な送達ビヒクルは、担体としてポリマーを使用して、単独でまたは本明細書に記載される様々な脂質を含む他の担体と組み合わせて製剤化される。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書で使用されるリポソーム送達ビヒクルは、ポリマーを含むナノ粒子も包含する。好適なポリマーとして、例えば、ポリアクリレート類、ポリアルキシアノアクリレート類、ポリラクチド、ポリラクチド-ポリグリコリドコポリマー類、ポリカプロラクトン類、デキストラン、アルブミン、ゼラチン、アルギネート、コラーゲン、キトサン、シクロデキストリン類、プロタミン、PEG化プロタミン、PLL、PEG化PLL、およびポリエチレンイミン(PEI)が挙げられ得る。PEIを含む場合、PEIは10~40kDaの範囲の分子量を有する分岐状PEI、例えば、25kDaの分岐状PEI(Sigma#408727)であり得る。
【0127】
メッセンジャーRNA(mRNA)
本発明は、任意のmRNAを封入するために使用され得る。mRNAは、典型的には、DNAからリボソームに情報を運ぶRNAの種類と考えられている。典型的には、真核生物において、mRNAプロセシングは、5’末端上に「キャップ」を、3’末端上に「尾部」を付加することを含む。典型的なキャップは、7-メチルグアノシンキャップであり、これは、最初に転写されたヌクレオチドへの5’-5’-三リン酸結合を介して連結されたグアノシンである。キャップの存在は、大半の真核細胞に見られるヌクレアーゼへの耐性を提供するのに重要である。尾部の付加は、典型的にはポリアデニル化事象であり、これによりポリアデニリル部分がmRNA分子の3’末端に付加される。この「尾部」の存在は、エキソヌクレアーゼ分解からmRNAを保護する役割を果たす。メッセンジャーRNAは、タンパク質を構成する一連のアミノ酸にリボソームによって翻訳される。
【0128】
mRNAは、様々な既知の方法のうちのいずれかによって合成され得る。例えば、本発明によるmRNAは、インビトロ転写(IVT)を介して合成され得る。簡潔には、IVTは、典型的には、プロモーター、リボヌクレオチド三リン酸のプール、DTTおよびマグネシウムイオンを含み得る緩衝系、ならびに適切なRNAポリメラーゼ(例えば、T3、T7、またはSP6 RNAポリメラーゼ)、DNase I、ピロホスファターゼ、および/またはRNAse阻害剤を含有する線状もしくは環状DNA鋳型を用いて実施される。正確な条件は、具体的な用途によって変動するであろう。
【0129】
いくつかの実施形態では、インビトロで合成されたmRNAは、mRNA合成中に使用された様々な酵素および他の試薬を含む望ましくない不純物を除去するために、製剤および封入前に精製され得る。
【0130】
本発明を使用して、様々な長さのmRNAを製剤および封入し得る。いくつかの実施形態では、本発明を使用して、長さ約1kb、1.5kb、2kb、2.5kb、3kb、3.5kb、4kb、4.5kb、5kb 6kb、7kb、8kb、9kb、10kb、11kb、12kb、13kb、14kb、15kb、または20kb以上のインビトロで合成されたmRNAを製剤および封入し得る。いくつかの実施形態では、本発明を使用して、長さ約1~20kb、約1~15kb、約1~10kb、約5~20kb、約5~15kb、約5~12kb、約5~10kb、約8~20kb、または約8~15kbの範囲のインビトロで合成されたmRNAを製剤および封入し得る。
【0131】
本発明を使用して、修飾されていないmRNA、または典型的に安定性を強化する1つ以上の修飾を含むmRNAを製剤および封入し得る。いくつかの実施形態では、修飾は、修飾ヌクレオチド、修飾糖リン酸骨格、ならびに5’および/または3’非翻訳領域から選択される。
【0132】
いくつかの実施形態では、mRNAの修飾は、RNAのヌクレオチドの修飾を含み得る。本発明による修飾されたmRNAは、例えば、骨格修飾、糖修飾、または塩基修飾を含み得る。いくつかの実施形態では、mRNAは、プリン類(アデニン(A)、グアニン(G))もしくはピリミジン類(チミン(T)、シトシン(C)、ウラシル(U))を含むがこれらに限定されない、天然に存在するヌクレオチドおよび/またはヌクレオチド類似体(修飾ヌクレオチド)、ならびに、例えば、1-メチルアデニン、2-メチルアデニン、2-メチルチオ-N-6-イソペンテニル-アデニン、N6-メチル-アデニン、N6-イソペンテニル-アデニン、2-チオ-シトシン、3-メチル-シトシン、4-アセチル-シトシン、5-メチル-シトシン、2,6-ジアミノプリン、1-メチル-グアニン、2-メチル-グアニン、2,2-ジメチル-グアニン、7-メチル-グアニン、イノシン、1-メチル-イノシン、シュードウラシル(5-ウラシル)、ジヒドロウラシル、2-チオ-ウラシル、4-チオ-ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオ-ウラシル、5-(カルボキシヒドロキシメチル)-ウラシル、5-フルオロ-ウラシル、5-ブロモ-ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-ウラシル、5-メチル-2-チオ-ウラシル、5-メチル-ウラシル、N-ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、5-メチルアミノメチル-ウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオ-ウラシル、5’-メトキシカルボニルメチル-ウラシル、5-メトキシ-ウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、1-メチル-シュードウラシル、ケオシン(queosine)、ベータ-D-マンノシル-ケオシン、ワイブトキソシン、ならびにホスホロアミデート、ホスホロチオエート、ペプチドヌクレオチド、メチルホスホネート、7-デアザグアノシン、5-メチルシトシン、シュードウリジン、5-メチルシチジン、およびイノシンなどの、プリン類およびピリミジン類の修飾ヌクレオチド類似体または誘導体として合成され得る。そのような類似体の調製は、例えば、米国特許第4,373,071号、米国特許第4,401,796号、米国特許第4,415,732号、米国特許第4,458,066号、米国特許第4,500,707号、米国特許第4,668,777号、米国特許第4,973,679号、米国特許第5,047,524号、米国特許第5,132,418号、米国特許第5,153,319号、米国特許第5,262,530号、および同第5,700,642号から当業者に既知であり、その開示は、参照によりその全範囲が本明細書に含まれる。
【0133】
典型的には、mRNA合成は、5’末端上に「キャップ」を、3’末端上に「尾部」を付加することを含む。キャップの存在は、大半の真核細胞に見られるヌクレアーゼへの耐性を提供するのに重要である。「尾部」の存在は、mRNAをエキソヌクレアーゼ分解から保護する役割を果たす。
【0134】
したがって、いくつかの実施形態では、mRNAは、5’キャップ構造を含む。5’キャップは、典型的には、以下のように付加される。最初に、RNA末端ホスファターゼが、5’ヌクレオチドから末端リン酸基のうちの1つを除去し、2つの末端リン酸を残す。次いで、グアノシン三リン酸(GTP)が、グアニリルトランスフェラーゼを介して末端リン酸に付加され、5’5’5三リン酸結合をもたらす。次いで、グアニンの7-窒素が、メチルトランスフェラーゼによってメチル化される。2’-O-メチル化はまた、7-メチルグアノシン三リン酸残基の後の第1の塩基および/または第2の塩基で生じ得る。キャップ構造の例としては、m7GpppNp-RNA、m7GpppNmp-RNA、およびm7GpppNmpNmp-RNA(式中、mは、2’-Oメチル残基を指す)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0135】
いくつかの実施形態では、mRNAは、5’および/または3’非翻訳領域を含む。いくつかの実施形態では、5’非翻訳領域は、mRNAの安定性または翻訳に影響を及ぼす1つ以上の要素、例えば、鉄応答性要素を含む。いくつかの実施形態では、5’非翻訳領域は、約50~500ヌクレオチド長であり得る。
【0136】
いくつかの実施形態では、3’非翻訳領域は、ポリアデニル化シグナル、細胞におけるmRNAの位置安定性に影響するタンパク質の結合部位、またはmiRNAの1つ以上の結合部位のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、3’非翻訳領域は、50~500ヌクレオチド長以上であり得る。
【0137】
インビトロ転写反応からもたらされたmRNAが、いくつかの実施形態で望ましい場合があるが、細菌、真菌、植物、および/または動物から産生されたmRNAを含むmRNAの他の供給源が、本発明の範囲内であることが企図されている。
【0138】
本発明は、多様なタンパク質をコードするmRNAを製剤および封入するために使用され得る。本発明に好適なmRNAの非限定的な例としては、脊髄運動ニューロン1(SMN)、アルファ-ガラクトシダーゼ(GLA)、アルギニノコハク酸シンテターゼ(ASS1)、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)、第IX因子(FIX)、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)、エリスロポエチン(EPO)、嚢胞性線維症膜貫通型コンダクタンス受容体(CFTR)およびホタルルシフェラーゼ(FFL)をコードするmRNAが挙げられる。本明細書に開示される例示的なmRNA配列を以下に挙げる:
【0139】
脂質ナノ粒子(LNP)の形成
mRNAを封入する脂質ナノ粒子を調製するための方法も提供され、本方法は、(a)1つ以上のカチオン性脂質、1つ以上のPEG修飾脂質、および1つ以上のヘルパー脂質(前述の1つ以上のヘルパー脂質は、1,2-ジエルコイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DEPE)を含む)の混合物を提供することと、(b)工程(a)で提供された混合物から脂質ナノ粒子を形成することとを含み、本方法は、mRNAを脂質ナノ粒子に封入することをさらに含み、封入は、工程(b)での脂質ナノ粒子の形成前または形成後に行われ得る。mRNAを封入する得られた脂質ナノ粒子は、安定している(例えば、凍結融解の前および後でmRNAの同じ封入を維持するか、または凍結融解の前および後でmRNAの同じ封入の10%以内を維持する)。一実施形態では、本発明に従って脂質ナノ粒子を調製するための方法は、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DLOPE)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(POPE)、およびそれらの組み合わせから選択される1つ以上のヘルパー脂質の使用を特に除外する。
【0140】
様々な封入プロセスが、公開済みの米国特許出願第2011/0244026号、公開済みの米国特許出願第2016/0038432号、公開済みの米国特許出願第2018/0153822号、公開済みの米国特許出願第2018/0125989号、および2019年7月23日に出願された米国仮特許出願第62/877,597号に記載され、本発明を実施するために使用され得、それらのすべてが参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で使用される場合、プロセスAとは、US 2016/0038432に記載されるように、最初に脂質を脂質ナノ粒子へと予め形成することなく、mRNAを脂質の混合物と混合することによってmRNAを封入する従来的な方法を指す。本明細書で使用される場合、プロセスBまたは「再混合」は、US 2018/0153822に記載されるように、予め形成された脂質ナノ粒子をmRNAと混合することによって、メッセンジャーRNA(mRNA)を封入するプロセスを指す。「ステップダウン再混合」または「ステップアップ再混合」は、米国仮特許出願第63/021,319号に記載されるように、「再混合」プロセスを基礎とする改善されたプロセスである。「ステップダウン再混合」は、予め形成された空の脂質ナノ粒子の懸濁液を、順次添加されるmRNAの溶液のバッチと混合することを伴う。mRNA溶液バッチの各添加は、カチオン性脂質:mRNA(「N/P」)の異なるモル比(高いN/P比から始まる)を有する中間体混合物をもたらし、最終製剤中でより低いN/P比まで減少する。「ステップアップ再混合」では、カチオン性脂質:mRNAの等モル比から始まって、予め形成された空の脂質ナノ粒子の懸濁液がmRNA溶液にバッチで添加される。例えば、4(カチオン性脂質):1(mRNA)の比に達するまで、4つのバッチの予め形成された空の脂質ナノ粒子が添加される。
【0141】
一実施形態では、DEPEは、10モルパーセント~50モルパーセントの濃度で混合物中に存在する。より典型的には、混合物中のDEPEは、混合物中の総脂質の25モルパーセント~35モルパーセントの濃度で存在する。一実施形態では、混合物中の1つ以上のPEG修飾脂質は、C-C20の鎖長のアルキル鎖を有する脂質に共有結合した最大5kDaの鎖長のポリ(エチレン)グリコール鎖を含む。一実施形態では、1つ以上のカチオン性脂質、1つ以上のPEG修飾脂質、および1つ以上のヘルパー脂質の混合物は、コレステロールベースの脂質などの1つ以上のステロールをさらに含む。一実施形態では、コレステロールベースの脂質は、コレステロールおよび/またはPEG化コレステロールである。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質:ヘルパー脂質:コレステロールベースの脂質:PEG修飾脂質の比率は、それぞれ、約30~60:25~35:20~30:1~15であり得る。
【0142】
いくつかの実施形態では、空の予め形成された脂質ナノ粒子は、エタノール中に溶解した脂質を水溶液と混合することによって形成される(脂質溶液)。いくつかの実施形態では、脂質は、1つ以上のカチオン性脂質、1つ以上の非カチオン性脂質、および1つ以上のPEG脂質を含む。いくつかの実施形態では、脂質は、1つ以上のコレステロール脂質も含む。いくつかの実施形態では、脂質は、エタノールストック溶液中に存在する。予め形成された脂質ナノ粒子は、それらの脂質の混合によって形成される。一般に、いくつかの実施形態では、溶解した脂質を含有する脂質溶液および水性または緩衝溶液は、脂質がmRNAなしのナノ粒子(すなわち、空の予め形成された脂質ナノ粒子)を形成することができるように、溶液に混合される。
【0143】
脂質溶液
本発明によれば、脂質溶液は、mRNAの封入のために脂質ナノ粒子を形成するのに好適な脂質の混合物を含有する。いくつかの実施形態では、好適な脂質溶液はエタノール系である。例えば、好適な脂質溶液は、純エタノール(すなわち、100%エタノール)に溶解された所望の脂質の混合物を含有してもよい。別の実施形態では、好適な脂質溶液はイソプロピルアルコール系である。別の実施形態では、好適な脂質溶液はジメチルスルホキシド系である。別の実施形態では、好適な脂質溶液は、エタノール、イソプロピルアルコール、およびジメチルスルホキシドを含むがこれらに限定されない好適な溶媒の混合物である。
【0144】
好適な脂質溶液は、様々な濃度で所望の脂質の混合物を含有してもよい。例えば、好適な脂質溶液は、約0.01mg/mL、0.02mg/mL、0.03mg/mL、0.04mg/mL、0.05mg/mL、0.06mg/mL、0.07mg/mL、0.08mg/mL、0.09mg/mL、約0.1mg/mL、0.5mg/mL、1.0mg/mL、2.0mg/mL、3.0mg/mL、4.0mg/mL、5.0mg/mL、6.0mg/mL、7.0mg/mL、8.0mg/mL、9.0mg/mL、10mg/mL、15mg/mL、20mg/mL、30mg/mL、40mg/mL、50mg/mL、または100mg/mLの総濃度の所望の脂質の混合物を含有してもよい。いくつかの実施形態では、好適な脂質溶液は、約0.1~100mg/mL、0.5~90mg/mL、1.0~80mg/mL、1.0~70mg/mL、1.0~60mg/mL、1.0~50mg/mL、1.0~40mg/mL、1.0~30mg/mL、1.0~20mg/mL、1.0~15mg/mL、1.0~10mg/mL、1.0~9mg/mL、1.0~8mg/mL、1.0~7mg/mL、1.0~6mg/mL、または1.0~5mg/mLの範囲の総濃度の所望の脂質を含有してもよい。いくつかの実施形態では、好適な脂質溶液は、最高約100mg/mL、90mg/mL、80mg/mL、70mg/mL、60mg/mL、50mg/mL、40mg/mL、30mg/mL、20mg/mL、または10mg/mLの総濃度の所望の脂質の混合物を含有してもよい。
【0145】
任意の所望の脂質は、mRNAの封入に好適な任意の比率で混合され得る。いくつかの実施形態では、好適な脂質溶液は、カチオン性脂質、ヘルパー脂質(例えば、非カチオン性脂質および/もしくはコレステロール脂質)ならびに/またはPEG化脂質を含む所望の脂質の混合物を含有する。いくつかの実施形態では、好適な脂質溶液は、1つ以上のカチオン性脂質、1つ以上のヘルパー脂質(例えば、非カチオン性脂質および/またはコレステロール脂質)ならびに1つ以上のPEG化脂質を含む所望の脂質の混合物を含有する。いくつかの実施形態では、好適な脂質溶液は、1つ以上の中性脂質、1つ以上のヘルパー脂質、および1つ以上のPEG化脂質を含む所望の脂質の混合物を含有する。
【0146】
いくつかの実施形態では、本発明のナノ粒子製剤を作製する際に使用される空の(すなわち、mRNAのない)予め形成された脂質ナノ粒子製剤は、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、または約50%トレハロース溶液中に安定して凍結され得る。いくつかの実施形態では、空の脂質ナノ粒子にmRNAを添加すると、下流の精製または処理を必要としない最終製剤が得られ、凍結形態で安定的に保存され得る。
【0147】
mRNA-LNPの形成
本明細書で使用される場合、mRNA装填脂質ナノ粒子(mRNA-LNP)の形成のためのプロセスは、「mRNA封入化」という用語またはその文法的変形と互換的に使用される。いくつかの実施形態では、mRNA-LNPは、mRNA溶液を脂質ナノ粒子と混合することによって形成され、mRNA溶液および/または脂質溶液は、混合前に周囲温度よりも高い所定温度に加熱される(2015年7月2日に出願された「Encapsulation of messenger RNA」と題する米国特許出願公開第14/790,562号、および2014年7月2日に出願された米国仮特許出願第62/020,163号を参照されたく、これらの開示は、それらの全体が本明細書に組み込まれる)。
【0148】
典型的には、任意の所望の脂質が、mRNA-LNPの形成に好適な任意の比率で混合され得る。いくつかの実施形態では、好適な脂質溶液は、カチオン性脂質、ヘルパー脂質(例えば、非カチオン性脂質および/もしくはコレステロール脂質)ならびに/またはPEG化脂質を含む所望の脂質の混合物を含有する。いくつかの実施形態では、好適な脂質溶液は、1つ以上のカチオン性脂質、1つ以上のヘルパー脂質(例えば、非カチオン性脂質および/またはコレステロール脂質)ならびに1つ以上のPEG化脂質を含む所望の脂質の混合物を含有する。いくつかの実施形態では、好適な脂質溶液は、1つ以上の中性脂質、1つ以上のヘルパー脂質、および1つ以上のPEG化脂質を含む所望の脂質の混合物を含有する。
【0149】
いくつかの実施形態では、mRNA溶液および予め形成された脂質ナノ粒子溶液は、mRNAが脂質ナノ粒子に封入されるように、溶液に混合される。こうした溶液は、製剤または封入溶液とも呼ばれる。予め形成された脂質ナノ粒子をmRNAと混合することによってmRNAを封入するためのプロセスは、WO2018/089801として公開され、かつ米国特許出願第15/809,68号と同時に出願された、2017年11月10日にPCT/US17/61113として出願された以前の発明にすでに記載されており、両方とも、「Improved Process of Preparing mRNA-Loaded Lipid Nanoparticles」と題されている。その出願の内容全体が、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0150】
好適な製剤または封入溶液は、エタノールなどの溶媒を含む。例えば、好適な製剤または封入溶液は、約10%エタノール、約15%エタノール、約20%エタノール、約25%エタノール、約30%エタノール、約35%エタノール、または約40%エタノールを含む。いくつかの実施形態では、好適な製剤または封入溶液は、イソプロピルアルコールなどの溶媒を含む。例えば、好適な製剤または封入溶液は、約10%イソプロピルアルコール、約15%イソプロピルアルコール、約20%イソプロピルアルコール、約25%イソプロピルアルコール、約30%イソプロピルアルコール、約35%イソプロピルアルコール、または約40%イソプロピルアルコールを含む。
【0151】
いくつかの実施形態では、好適な製剤または封入溶液は、ジメチルスルホキシドなどの溶媒を含む。例えば、好適な製剤または封入溶液は、約10%ジメチルスルホキシド、約15%ジメチルスルホキシド、約20%ジメチルスルホキシド、約25%ジメチルスルホキシド、約30%ジメチルスルホキシド、約35%ジメチルスルホキシド、または約40%ジメチルスルホキシドを含む。
【0152】
いくつかの実施形態では、好適な製剤または封入溶液は、緩衝剤または塩も含み得る。例示的な緩衝剤は、HEPES、硫酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸カリウム、およびリン酸ナトリウムを含み得る。例示的な塩は、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、および塩化カリウムを含み得る。いくつかの実施形態では、この新規のナノ粒子製剤を作製する際に使用される空の予め形成された脂質ナノ粒子製剤は、10%トレハロース溶液中で安定して凍結され得る。
【0153】
いくつかの実施形態では、エタノール、クエン酸緩衝液、および他の不安定化剤は、mRNAの添加中に存在せず、そのため製剤は、いかなるさらなる下流処理も必要としない。いくつかの実施形態では、この新規のプロセスによって調製される脂質ナノ粒子製剤は、トレハロース溶液中に予め形成された脂質ナノ粒子を含む。不安定化剤の欠如およびトレヘロース溶液の安定性は、製剤のスケールアップおよびmRNAを封入した脂質ナノ粒子の生成の容易さを増加させる。
【0154】
mRNA溶液
mRNAは、mRNAが脂質ナノ粒子に封入され得るように、脂質溶液と混合されるべき溶液中で提供され得る。好適なmRNA溶液は、1mg/mL未満の様々な濃度で封入されるべきmRNAを含有する任意の水溶液であり得る。例えば、好適なmRNA溶液は、約0.01mg/mL、0.02mg/mL、0.03mg/mL、0.04mg/mL、0.05mg/mL、0.06mg/mL、0.07mg/mL、0.08mg/mL、0.09mg/mL、0.1mg/mL、0.15mg/mL、0.2mg/mL、0.3mg/mL、0.4mg/mL、0.5mg/mL、0.6mg/mL、0.7mg/mL、0.8mg/mL、0.9mg/mL、または1.0mg/mLの濃度またはそれ未満でmRNAを含有してもよい。
【0155】
典型的には、好適なmRNA溶液は、緩衝剤および/または塩も含み得る。一般に、緩衝剤は、HEPES、硫酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸カリウムおよびリン酸ナトリウムを含み得る。いくつかの実施形態では、緩衝剤の好適な濃度は、約0.1mM~100mM、0.5mM~90mM、1.0mM~80mM、2mM~70mM、3mM~60mM、4mM~50mM、5mM~40mM、6mM~30mM、7mM~20mM、8mM~15mM、または9~12mMの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、緩衝剤の好適な濃度は、約0.1mM、0.5mM、1mM、2mM、4mM、6mM、8mM、10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、または50mM以上である。
【0156】
例示的な塩は、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、および塩化カリウムを含み得る。いくつかの実施形態では、mRNA溶液中の塩の好適な濃度は、約1mM~500mM、5mM~400mM、10mM~350mM、15mM~300mM、20mM~250mM、30mM~200mM、40mM~190mM、50mM~180mM、50mM~170mM、50mM~160mM、50mM~150mM、または50mM~100mMの範囲であり得る。好適なmRNA溶液中の塩濃度は、約1mM、5mM、10mM、20mM、30mM、40mM、50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、または100mM以上である。
【0157】
いくつかの実施形態では、好適なmRNA溶液は、約3.5~6.5、3.5~6.0、3.5~5.5、3.5~5.0、3.5~4.5、4.0~5.5、4.0~5.0、4.0~4.9、4.0~4.8、4.0~4.7、4.0~4.6、または4.0~4.5の範囲のpHを有してもよい。いくつかの実施形態では、好適なmRNA溶液は、約3.5、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.2、5.4、5.6、5.8、6.0、6.1、6.3、および6.5以下のpHを有してもよい。
【0158】
本発明に好適なmRNA溶液を調製するために、様々な方法を使用してもよい。いくつかの実施形態では、mRNAは、本明細書に記載される緩衝溶液中に直接溶解されてもよい。いくつかの実施形態では、mRNA溶液は、封入のために脂質溶液と混合する前に、mRNAストック溶液を緩衝溶液と混合することにより生成され得る。いくつかの実施形態では、mRNA溶液は、封入のために脂質溶液と混合する直前に、mRNAストック溶液を緩衝溶液と混合することにより生成され得る。いくつかの実施形態では、好適なmRNAストック溶液は、約0.2mg/mL、0.4mg/mL、0.5mg/mL、0.6mg/mL、0.8mg/mL、1.0mg/mL、1.2mg/mL、1.4mg/mL、1.5mg/mL、または1.6mg/mL、2.0mg/mL、2.5mg/mL、3.0mg/mL、3.5mg/mL、4.0mg/mL、4.5mg/mL、または5.0mg/mL以上の濃度で水中にmRNAを含有してもよい。
【0159】
いくつかの実施形態では、mRNAストック溶液は、ポンプを使用して緩衝液と混合される。例示的ポンプとしては、ギアポンプ、蠕動ポンプ、および遠心ポンプが挙げられるがこれらに限定されない。
【0160】
典型的には、緩衝溶液は、mRNAストック溶液のものよりも速い速度で混合される。例えば、緩衝溶液は、mRNAストック溶液の速度よりも少なくとも1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍または20倍の速度で混合されてもよい。いくつかの実施形態では、本発明に従うプロセスは、クエン酸緩衝液をmRNAストック溶液と混合することによってmRNA溶液を最初に生成する工程を含む。ある特定の実施形態では、好適なクエン酸緩衝液は、約10Mmのクエン酸塩、約150MmのNaCl、約4.5のpHを含む。いくつかの実施形態では、好適なmRNAストック溶液は、約1mg/mL、約10mg/mL、約50mg/mL、または約100mg/mL以上の濃度でmRNAを含有する。
【0161】
いくつかの実施形態では、クエン酸緩衝液は、約100~300mL/分、300~600mL/分、600~1200mL/分、1200~2400mL/分、2400~3600mL/分、3600~4800mL/分、または4800~6000mL/分の範囲の流量で混合される。いくつかの実施形態では、クエン酸緩衝液は、約220mL/分、約600mL/分、約1200mL/分、約2400mL/分、約3600mL/分、約4800mL/分、または約6000mL/分の流量で混合される。
【0162】
いくつかの実施形態では、mRNAストック溶液は、約10~30mL/分、約30~60mL/分、約60~120mL/分、約120~240mL/分、約240~360mL/分、約360~480mL/分、または約480~600mL/分の範囲の流量で混合される。いくつかの実施形態では、mRNAストック溶液は、約20mL/分、約40mL/分、約60mL/分、約80mL/分、約100mL/分、約200mL/分、約300mL/分、約400mL/分、約500mL/分、または約600mL/分の流量で混合される。
【0163】
いくつかの実施形態では、緩衝溶液は、約100~6000mL/分(例えば、約100~300mL/分、300~600mL/分、600~1200mL/分、1200~2400mL/分、2400~3600mL/分、3600~4800mL/分、4800~6000mL/分、または60~420mL/分)の流量で混合される。いくつかの実施形態では、緩衝溶液は、約60mL/分、100mL/分、140mL/分、180mL/分、220mL/分、260mL/分、300mL/分、340mL/分、380mL/分、420mL/分、480mL/分、540mL/分、600mL/分、1200mL/分、2400mL/分、3600mL/分、4800mL/分、または6000mL/分以上の流量で混合される。
【0164】
いくつかの実施形態では、mRNAストック溶液は、約10~600mL/分(例えば、約5~50mL/分、約10~30mL/分、約30~60mL/分、約60~120mL/分、約120~240mL/分、約240~360mL/分、約360~480mL/分、または約480~600mL/分)の範囲の流量で混合される。いくつかの実施形態では、mRNAストック溶液は、約5mL/分、10mL/分、15mL/分、20mL/分、25mL/分、30mL/分、35mL/分、40mL/分、45mL/分、50mL/分、60mL/分、80mL/分、100mL/分、200mL/分、300mL/分、400mL/分、500mL/分、または600mL/分以上の流量で混合される。
【0165】
いくつかの実施形態では、予め形成された脂質ナノ粒子およびmRNAは、ポンプシステムを使用して混合される。いくつかの実施形態では、ポンプシステムは、パルスレスフローポンプを含む。いくつかの実施形態では、ポンプシステムは、ギアポンプである。いくつかの実施形態では、好適なポンプは、蠕動ポンプである。いくつかの実施形態では、好適なポンプは、遠心ポンプである。いくつかの実施形態では、ポンプシステムを使用するプロセスは、大規模で実施される。例えば、いくつかの実施形態では、プロセスは、本明細書に記載されるポンプを使用して、少なくとも約1mg、5mg、10mg、50mg、100mg、500mg、または1000mgのmRNAの溶液を、予め形成された脂質ナノ粒子の溶液と混合して、脂質ナノ粒子に封入されたmRNAを生成することを含む。いくつかの実施形態では、mRNAを予め形成された脂質ナノ粒子と混合するプロセスは、少なくとも約1mg、5mg、10mg、50mg、100mg、500mg、または1000mgの封入されたmRNAを含有する、本発明による組成物を提供する。
【0166】
いくつかの実施形態では、予め形成された脂質ナノ粒子を含む溶液は、約25~75mL/分、約75~200mL/分、約200~350mL/分、約350~500mL/分、約500~650mL/分、約650~850mL/分、または約850~1000mL/分の範囲の流量で混合される。いくつかの実施形態では、予め形成された脂質ナノ粒子を含む溶液は、約50mL/分、約100mL/分、約150mL/分、約200mL/分、約250mL/分、約300mL/分、約350mL/分、約400mL/分、約450mL/分、約500mL/分、約550mL/分、約600mL/分、約650mL/分、約700mL/分、約750mL/分、約800mL/分、約850mL/分、約900mL/分、約950mL/分、または約1000mL/分の流量で混合される。
【0167】
いくつかの実施形態では、mRNAは、約25~75mL/分、約75~200mL/分、約200~350mL/分、約350~500mL/分、約500~650mL/分、約650~850mL/分、または約850~1000mL/分の範囲の流量で、溶液中で混合される。いくつかの実施形態では、mRNAは、約50mL/分、約100mL/分、約150mL/分、約200mL/分、約250mL/分、約300mL/分、約350mL/分、約400mL/分、約450mL/分、約500mL/分、約550mL/分、約600mL/分、約650mL/分、約700mL/分、約750mL/分、約800mL/分、約850mL/分、約900mL/分、約950mL/分、または約1000mL/分の流量で、溶液中で混合される。
【0168】
いくつかの実施形態では、mRNAを封入する脂質ナノ粒子を、予め形成された脂質粒子と組み合わせる工程は、ポンプシステムを使用して実施される。そのような組み合わせは、ポンプを使用して実施され得る。いくつかの実施形態では、mRNAを封入した脂質ナノ粒子は、予め形成された脂質ナノ粒子と混合され、約25~75mL/分mRNA、約75~200mL/分、約200~350mL/分、約350~500mL/分、約500~650mL/分、約650~850mL/分、または約850~1000mL/分の範囲の流量で混合される。いくつかの実施形態では、mRNAは、約50mL/分、約100mL/分、約150mL/分、約200mL/分、約250mL/分、約300mL/分、約350mL/分、約400mL/分、約450mL/分、約500mL/分、約550mL/分、約600mL/分、約650mL/分、約700mL/分、約750mL/分、約800mL/分、約850mL/分、約900mL/分、約950mL/分、または約1000mL/分の流量で、溶液中で混合される。
【0169】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子およびmRNAの混合は、ポンプなしで実施される。
【0170】
いくつかの実施形態では、本発明によるプロセスは、1つ以上の溶液を周囲温度よりも高い温度に加熱する(またはその温度に維持する)(すなわち、熱源からの熱を溶液に適用する)工程を含み、1つ以上の溶液は、予め形成された脂質ナノ粒子を含む溶液、mRNAを含む溶液、および脂質ナノ粒子により封入されたmRNAを含む混合溶液である。いくつかの実施形態では、プロセスは、混合工程の前に、mRNA溶液および予め形成された脂質ナノ粒子溶液の一方または両方を加熱する工程を含む。いくつかの実施形態では、プロセスは、混合工程中、予め形成された脂質ナノ粒子を含む溶液、mRNAを含む溶液、および脂質ナノ粒子により封入されたmRNAを含む溶液のうちの1つ以上1つ以上を加熱することを含む。いくつかの実施形態では、プロセスは、混合工程の後、脂質ナノ粒子により封入されたmRNAを加熱する工程を含む。いくつかの実施形態では、溶液の1つ以上が加熱される(または溶液の1つ以上が維持される)温度は、約30℃、37℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、もしくは70℃であるか、またはそれより高い。いくつかの実施形態では、溶液の1つ以上が加熱される温度は、約25~70℃、約30~70℃、約35~70℃、約40~70℃、約45~70℃、約50~70℃、または約60~70℃の範囲である。いくつかの実施形態では、溶液の1つ以上が加熱される周囲温度よりも高い温度は、約65℃である。
【0171】
いくつかの実施形態では、本発明によるプロセスは、予め形成された脂質ナノ粒子を含む溶液、mRNAを含む溶液、および脂質ナノ粒子により封入されたmRNAを含む混合溶液のうちの1つ以上を周囲温度で維持する(すなわち、熱源からの熱を溶液に適用しない)ことを含む。いくつかの実施形態では、プロセスは、混合工程の前に、mRNA溶液および予め形成された脂質ナノ粒子溶液の一方または両方を周囲温度で維持する工程を含む。いくつかの実施形態では、プロセスは、混合工程中に、予め形成された脂質ナノ粒子を含む溶液、mRNAを含む溶液、および脂質ナノ粒子により封入されたmRNAを含む溶液の1つ以上1つ以上を周囲温度で維持することを含む。いくつかの実施形態では、プロセスは、混合工程の後、脂質ナノ粒子により封入されたmRNAを周囲温度で維持する工程を含む。いくつかの実施形態では、溶液のうちの1つ以上が維持される周囲温度は、約35℃、30℃、25℃、20℃、または16℃以下である。いくつかの実施形態では、溶液のうちの1つ以上が維持される周囲温度は、約15~35℃、約15~30℃、約15~25℃、約15~20℃、約20~35℃、約25~35℃、約30~35℃、約20~30℃、約25~30℃、または約20~25℃の範囲である。いくつかの実施形態では、溶液のうちの1つ以上が維持される周囲温度は、20~25℃である。
【0172】
いくつかの実施形態では、本発明によるプロセスは、予め形成された脂質ナノ粒子を含む溶液およびmRNAを含む溶液を混合して、mRNAを封入する脂質ナノ粒子を形成する工程を周囲温度で実施することを含む。
【0173】
いくつかの実施形態では、精製されたナノ粒子の約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%は、サイズ約150nm未満(例えば、約145nm未満、約140nm未満、約135nm未満、約130nm未満、約125nm未満、約120nm未満、約115nm未満、約110nm未満、約105nm未満、約100nm未満、約95nm未満、約90nm未満、約85nm未満、約80nm未満、約75nm未満、約70nm未満、約65nm未満、約60nm未満、約55nm、または約50nm)を有する。いくつかの実施形態では、精製されたナノ粒子の実質的にすべては、150nm未満(例えば、約145nm、約140nm、約135nm、約130nm、約125nm、約120nm、約115nm、約110nm、約105nm、約100nm、約95nm、約90nm、約85nm、約80nm、約75nm、約70nm、約65nm、約60nm、約55nm、または約50nm)のサイズを有する。いくつかの実施形態では、精製されたナノ粒子の約70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%より多くは、50~150nmの範囲のサイズを有する。いくつかの実施形態では、精製されたナノ粒子の実質的にすべては、50~150nmの範囲のサイズを有する。いくつかの実施形態では、精製されたナノ粒子の約70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%より多くは、80~150nmの範囲のサイズを有する。いくつかの実施形態では、精製されたナノ粒子の実質的にすべては、80~150nmの範囲のサイズを有する。
【0174】
いくつかの実施形態では、本発明によるプロセスは、約90%、95%、96%、97%、98%、または99%を超える封入率をもたらす。いくつかの実施形態では、本発明に従うプロセスは、mRNAの60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%を超える回収をもたらす。
【0175】
いくつかの実施形態では、mRNAを封入する脂質ナノ粒子は、プロセスの工程(b)で予め形成された脂質粒子と20:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、または1:20の比率で組み合わせられる。脂質ナノ粒子を組み合わせるプロセスは、脂質ナノ粒子をmRNAと混合することについての上述のとおりである。いくつかの実施形態では、mRNAを封入する脂質ナノ粒子は、プロセスの工程(b)で予め形成された脂質粒子と20:1の比率で組み合わせられる。いくつかの実施形態では、mRNAを封入する脂質ナノ粒子は、プロセスの工程(b)で予め形成された脂質粒子と19:1の比率で組み合わせられる。いくつかの実施形態では、mRNAを封入する脂質ナノ粒子は、プロセスの工程(b)で予め形成された脂質粒子と15:1の比率で組み合わせられる。いくつかの実施形態では、mRNAを封入する脂質ナノ粒子は、プロセスの工程(b)で予め形成された脂質粒子と10:1の比率で組み合わせられる。いくつかの実施形態では、mRNAを封入する脂質ナノ粒子は、プロセスの工程(b)で予め形成された脂質粒子と9:1の比率で組み合わせられる。いくつかの実施形態では、mRNAを封入する脂質ナノ粒子は、プロセスの工程(b)で予め形成された脂質粒子と8:1の比率で組み合わせられる。いくつかの実施形態では、mRNAを封入する脂質ナノ粒子は、プロセスの工程(b)で予め形成された脂質粒子と7:1の比率で組み合わせられる。いくつかの実施形態では、mRNAを封入する脂質ナノ粒子は、プロセスの工程(b)で予め形成された脂質粒子と6:1の比率で組み合わせられる。いくつかの実施形態では、mRNAを封入する脂質ナノ粒子は、プロセスの工程(b)で予め形成された脂質粒子と5:1の比率で組み合わせられる。いくつかの実施形態では、mRNAを封入する脂質ナノ粒子は、プロセスの工程(b)で予め形成された脂質粒子と4:1の比率で組み合わせられる。いくつかの実施形態では、mRNAを封入する脂質ナノ粒子は、プロセスの工程(b)で予め形成された脂質粒子と3:1の比率で組み合わせられる。いくつかの実施形態では、mRNAを封入する脂質ナノ粒子は、プロセスの工程(b)で予め形成された脂質粒子と2:1の比率で組み合わせられる。いくつかの実施形態では、mRNAを封入する脂質ナノ粒子は、プロセスの工程(b)で予め形成された脂質粒子と1:1の比率で組み合わせられる。いくつかの実施形態では、mRNAを封入する脂質ナノ粒子は、プロセスの工程(b)で予め形成された脂質粒子と1:2の比率で組み合わせられる。いくつかの実施形態では、mRNAを封入する脂質ナノ粒子は、プロセスの工程(b)で予め形成された脂質粒子と1:3の比率で組み合わせられる。いくつかの実施形態では、mRNAを封入する脂質ナノ粒子は、プロセスの工程(b)で予め形成された脂質粒子と1:4の比率で組み合わせられる。いくつかの実施形態では、mRNAを封入する脂質ナノ粒子は、プロセスの工程(b)で予め形成された脂質粒子と1:5の比率で組み合わせられる。いくつかの実施形態では、mRNAを封入する脂質ナノ粒子は、プロセスの工程(b)で予め形成された脂質粒子と1:6の比率で組み合わせられる。いくつかの実施形態では、mRNAを封入する脂質ナノ粒子は、プロセスの工程(b)で予め形成された脂質粒子と1:7の比率で組み合わせられる。いくつかの実施形態では、mRNAを封入する脂質ナノ粒子は、プロセスの工程(b)で予め形成された脂質粒子と1:8の比率で組み合わせられる。いくつかの実施形態では、mRNAを封入する脂質ナノ粒子は、プロセスの工程(b)で予め形成された脂質粒子と1:9の比率で組み合わせられる。いくつかの実施形態では、mRNAを封入する脂質ナノ粒子は、プロセスの工程(b)で予め形成された脂質粒子と1:10の比率で組み合わせられる。いくつかの実施形態では、mRNAを封入する脂質ナノ粒子は、プロセスの工程(b)で予め形成された脂質粒子と1:12の比率で組み合わせられる。いくつかの実施形態では、mRNAを封入する脂質ナノ粒子は、プロセスの工程(b)で予め形成された脂質粒子と1:15の比率で組み合わせられる。いくつかの実施形態では、mRNAを封入する脂質ナノ粒子は、プロセスの工程(b)で予め形成された脂質粒子と1:20の比率で組み合わせられる。
【0176】
精製
いくつかの実施形態では、空の予め形成された脂質ナノ粒子またはmRNA-LNPは、精製および/または濃縮される。様々な精製方法を使用してもよい。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、接線流濾過(TFF)プロセスによって精製される。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、重力ベースの全量濾過(NFF)によって精製される。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、任意の他の好適な濾過プロセスによって精製される。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、遠心分離によって精製される。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、クロマトグラフィー方法によって精製される。
【0177】
医薬製剤および治療的使用
mRNA-LNPを含む組成物は、例えば、PBSなどの所望の緩衝液中で製剤化されてもよい。
【0178】
本発明によるプロセスは、より高い効力および有効性のmRNA-LNP組成物をもたらし、それにより、より低い用量を可能にし、それにより、治療指数を正の方向にシフトさせる。いくつかの実施形態では、本発明によるプロセスは、小さい粒径(例えば、150nm未満)を有する均質なmRNA-LNPをもたらす。
【0179】
したがって、本発明は、本明細書に記載されるmRNA-LNPを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、組成物中の精製されたナノ粒子の大部分、すなわち、精製されたナノ粒子の約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%超は、約150nm未満(例えば、約145nm、約140nm、約135nm、約130nm、約125nm、約120nm、約115nm、約110nm、約105nm、約100nm、約95nm、約90nm、約85nm、または約80nm)のサイズを有する。いくつかの実施形態では、mRNA-LNPの実質的にすべてが、約150nm未満(例えば、約145nm、約140nm、約135nm、約130nm、約125nm、約120nm、約115nm、約110nm、約105nm、約100nm、約95nm、約90nm、約85nm、または約80nm)のサイズを有する。100nm未満のサイズを有する脂質ナノ粒子は、肝臓の小孔を通って浸透し、肝細胞へのアクセスを得ることができるため、特に好適である。同様に、約100nm以下のサイズを有する脂質ナノ粒子は、容易に噴霧され、噴霧を使用して対象に投与されたときに肺内に深く浸透することができる。
【0180】
さらに、細い粒径範囲を有するより均質なナノ粒子が、本発明のプロセスによって達成される。例えば、本発明によって提供される組成物中のナノ粒子の約70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%超が、約75~150nm(例えば、約75~145nm、約75~140nm、約75~135nm、約75~130nm、約75~125nm、約75~120nm、約75~115nm、約75~110nm、約75~105nm、約75~100nm、約75~95nm、約75~90nm、または75~85nm)の範囲のサイズを有する。いくつかの実施形態では、精製されたナノ粒子の実質的にすべてが、約75~150nm(例えば、約75~145nm、約75~140nm、約75~135nm、約75~130nm、約75~125nm、約75~120nm、約75~115nm、約75~110nm、約75~105nm、約75~100nm、約75~95nm、約75~90nm、または75~85nm)の範囲のサイズを有する。
【0181】
いくつかの実施形態では、本発明により提供される組成物中のナノ粒子の、分子のサイズの分散性、または分子のサイズの不均一性の測定値(PDI)は、約0.23未満(例えば、約0.23、0.22、0.21、0.20、0.19、0.18、0.17、0.16、0.15、0.14、0.13、0.12、0.11、0.10、0.09、または0.08未満)である。特定の実施形態では、PDIは約0.16未満である。
【0182】
いくつかの実施形態では、本発明による組成物には、少なくとも約1mg、5mg、10mg、100mg、500mg、または1000mgの封入されたmRNAが含まれる。いくつかの実施形態では、本発明に従うプロセスは、mRNAの60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%を超える回収をもたらす。
【0183】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物中のmRNAは、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%超の完全性を保持する。いくつかの実施形態では、mRNAは、100%の完全性を有する。
【0184】
いくつかの実施形態では、本発明による組成物は、特定の用量の組成物を対象に投与するために製剤化される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるmRNA脂質ナノ粒子の組成物は、約5mg/kgのmRNA、または5mg/kg未満のmRNA(すなわち、4mg/kg未満のmRNA、3mg/kg未満、2mg/kg未満、1.0mg/kg、0.6mg/kg、0.5mg/kg、0.3mg/kg、0.016mg/kg、0.05mg/kg、および0.016mg/kgのmRNA)の用量濃度で製剤化される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるmRNA脂質ナノ粒子の組成物は、4mg/kg未満のmRNA脂質ナノ粒子の用量濃度で製剤化される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるmRNA脂質ナノ粒子の組成物は、3mg/kg未満のmRNA脂質ナノ粒子の用量濃度で製剤化される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるmRNA脂質ナノ粒子の組成物は、2mg/kg未満のmRNA脂質ナノ粒子の用量濃度で製剤化される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるmRNA脂質ナノ粒子の組成物は、1mg/kg未満のmRNA脂質ナノ粒子の用量濃度で製剤化される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるmRNA脂質ナノ粒子の組成物は、0.6mg/kg未満のmRNA脂質ナノ粒子の用量濃度で製剤化される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるmRNA脂質ナノ粒子の組成物は、0.5mg/kg未満のmRNA脂質ナノ粒子の用量濃度で製剤化される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるmRNA脂質ナノ粒子の組成物は、0.3mg/kg未満のmRNA脂質ナノ粒子の用量濃度で製剤化される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるmRNA脂質ナノ粒子の組成物は、0.2mg/kg未満のmRNA脂質ナノ粒子の用量濃度で製剤化される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるmRNA脂質ナノ粒子の組成物は、0.1mg/kg未満のmRNA脂質ナノ粒子の用量濃度で製剤化される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるmRNA脂質ナノ粒子の組成物は、0.0.08mg/kg未満のmRNA脂質ナノ粒子の用量濃度で製剤化される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるmRNA脂質ナノ粒子の組成物は、0.06mg/kg未満のmRNA脂質ナノ粒子の用量濃度で製剤化される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるmRNA脂質ナノ粒子の組成物は、0.0.05mg/kg未満のmRNA脂質ナノ粒子の用量濃度で製剤化される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるmRNA脂質ナノ粒子の組成物は、0.01mg/kg未満のmRNA脂質ナノ粒子の用量濃度で製剤化される。
【0185】
ある特定の実施形態では、治療効果をもたらすために必要なmRNAの量は、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、95%、または99%低減される。ある特定の実施形態では、治療効果をもたらすために必要なポリヌクレオチドの量は、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、12倍、15倍、20倍、または25倍以上低減される。
【0186】
したがって、ある特定の実施形態では、本発明は、ヒト対象への送達またはその治療に使用するためのペプチドまたはポリペプチドをコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、精製されたmRNAを含む治療用組成物は、対象の肺または肺細胞における送達に使用される。ある特定の実施形態では、本発明は、対象に欠乏し得るまたは非機能性であり得る内因性タンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、対象に欠乏し得るまたは非機能性であり得る内因性タンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。
【0187】
ある特定の実施形態では、本発明は、対象の肺または肺細胞への送達またはその治療に使用するためのペプチドまたはポリペプチドをコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子、CFTRをコードするmRNAを製造するための方法において有用である。CFTR mRNAは、嚢胞性線維症を治療するための治療用組成物として、必要とする対象の肺に送達される。
【0188】
ある特定の実施形態では、本発明は、対象の肝臓または肝臓細胞への送達またはその治療に使用するためのペプチドまたはポリペプチドをコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。そのようなペプチドおよびポリペプチドとしては、尿素サイクル障害に関連するもの、リソソーム貯蔵障害に関連するもの、グリコーゲン貯蔵障害に関連するもの、アミノ酸代謝障害に関連するもの、脂質代謝もしくは線維性障害に関連するもの、メチルマロン酸血症に関連するもの、または濃縮された全長mRNAの肝臓もしくは肝臓細胞への送達もしくはそれを用いた治療が治療上の利益を提供する任意の他の代謝性障害に関連するものを挙げることができる。
【0189】
ある特定の実施形態では、本発明は、尿素サイクル障害に関連するタンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)タンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、アルギニノコハク酸シンテターゼ1タンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、カルバモイルリン酸シンテターゼIタンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、アルギニノコハク酸リアーゼタンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、アルギナーゼタンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。
【0190】
ある特定の実施形態では、本発明は、リソソーム貯蔵障害に関連するタンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、アルファガラクトシダーゼタンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、グルコセレブロシダーゼタンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、イズロン酸-2-スルファターゼタンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、イズロニダーゼタンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、N-アセチル-アルファ-D-グルコサミニダーゼタンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、ヘパランN-スルファターゼタンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、ガラクトサミン-6スルファターゼタンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、ベータ-ガラクトシダーゼタンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、リソソームリパーゼタンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、アリールスルファターゼB(N-アセチルガラクトサミン-4-スルファターゼ)タンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、転写因子EB(TFEB)をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。
【0191】
ある特定の実施形態では、本発明は、グリコーゲン貯蔵障害に関連するタンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、酸アルファ-グルコシダーゼタンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、グルコース-6-ホスファターゼ(G6PC)タンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、肝臓グリコーゲンホスホリラーゼタンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、筋ホスホグリセリン酸ムターゼタンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、グリコーゲン脱分岐酵素をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。
【0192】
ある特定の実施形態では、本発明は、アミノ酸代謝に関連するタンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ酵素をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、グルタリル-CoAデヒドロゲナーゼ酵素をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、プロピオニル-CoAカルボキシラーゼ酵素をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、オキサラーゼ(oxalase)アラニン-グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ酵素をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。
【0193】
ある特定の実施形態では、本発明は、脂質代謝または線維性障害に関連するタンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、mTOR阻害剤をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、ATPaseリン脂質輸送8B1(ATP8B1)タンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、1つ以上のNF-カッパB阻害剤、例えば、I-カッパBアルファ、インターフェロン関連発生制御因子1(IFRD1)、およびサーチュイン1(SIRT1)のうちの1つ以上をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、PPAR-ガンマタンパク質または活性バリアントをコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。
【0194】
ある特定の実施形態では、本発明は、メチルマロン酸血症に関連するタンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。例えば、ある特定の実施形態では、本発明は、メチルマロニルCoAムターゼタンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、メチルマロニルCoAエピメラーゼタンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。
【0195】
ある特定の実施形態では、本発明は、肝臓への送達またはその治療が治療的利益を提供することができる精製されたmRNAを含む治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、ATP7Bタンパク質、別名、ウィルソン病タンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、ポルフォビリノーゲンデアミナーゼ酵素をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、第VIII因子、第IX因子、第VII因子、および第X因子などの1つまたは凝固酵素をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、ヒトヘモクロマトーシス(HFE)タンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。
【0196】
ある特定の実施形態では、本発明は、対象の心血管状態もしくは心血管細胞への送達またはその治療に使用するためのペプチドまたはポリペプチドをコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、血管内皮成長因子Aタンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、リラクシンタンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、骨形成タンパク質-9タンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、骨形成タンパク質-2受容体タンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。
【0197】
ある特定の実施形態では、本発明は、対象の筋肉または筋肉細胞への送達またはその治療に使用するためのペプチドまたはポリペプチドをコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、ジストロフィンタンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、フラタキシンタンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、対象の心筋または心筋細胞への送達またはその治療に使用するためのペプチドまたはポリペプチドをコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、筋肉組織または筋肉細胞におけるカリウムチャネルおよびナトリウムチャネルの一方または両方を調節するタンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、筋肉組織または筋肉細胞におけるKv7.1チャネルを調節するタンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、筋肉組織または筋肉細胞におけるNav1.5チャネルを調節するタンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。
【0198】
ある特定の実施形態では、本発明は、対象の神経系または神経系細胞への送達またはその治療に使用するためのペプチドまたはポリペプチドをコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。例えば、ある特定の実施形態では、本発明は、生存運動ニューロン1タンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。例えば、ある特定の実施形態では、本発明は、生存運動ニューロン2タンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、フラタキシンタンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、ATP結合カセットサブファミリーDメンバー1(ABCD1)タンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、CLN3タンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。
【0199】
ある特定の実施形態では、本発明は、対象の血液もしくは骨髄または血液もしくは骨髄細胞への送達またはその治療に使用するためのペプチドまたはポリペプチドをコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、ベータ-グロビンタンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある実施形態では、本発明は、ブルトンチロシンキナーゼタンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、1つまたは複数の凝固酵素、例えば、第VIII因子、第IX因子、第VII因子、および第X因子をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。
【0200】
ある特定の実施形態では、本発明は、対象の腎臓または腎臓細胞への送達またはその治療に使用するためのペプチドまたはポリペプチドをコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、IV型コラーゲンアルファ5鎖(COL4A5)タンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。
【0201】
ある特定の実施形態では、本発明は、対象の眼または眼細胞への送達またはその治療に使用するためのペプチドまたはポリペプチドをコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、ATP結合カセットサブファミリーAメンバー4(ABCA4)タンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、レチノスキシンタンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、網膜色素上皮特異的65kDa(RPE65)タンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、290kDa中心体タンパク質(CEP290)をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。
【0202】
ある特定の実施形態では、本発明は、対象または対象の細胞用のワクチンの送達またはそれを用いた治療に使用するためのペプチドまたはポリペプチドをコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。例えば、ある特定の実施形態では、本発明は、ウイルスなどの感染病原体由来の抗原をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、インフルエンザウイルス由来の抗原をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、呼吸器合胞体ウイルス由来の抗原をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、狂犬病ウイルス由来の抗原をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、サイトメガロウイルス由来の抗原をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、ロタウイルス由来の抗原をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、またはC型肝炎ウイルスなどの肝炎ウイルス由来の抗原をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、ヒトパピローマウイルス由来の抗原をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、単純ヘルペスウイルス1型または単純ヘルペスウイルス2型などの単純ヘルペスウイルス由来の抗原をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、ヒト免疫不全ウイルス1型またはヒト免疫不全ウイルス2型などのヒト免疫不全ウイルス由来の抗原をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、ヒトメタニューモウイルス由来の抗原をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、ヒトパラインフルエンザウイルス1型、ヒトパラインフルエンザウイルス2型、またはヒトパラインフルエンザウイルス3型などのヒトパラインフルエンザウイルス由来の抗原をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、マラリアウイルス由来の抗原をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、ジカウイルス由来の抗原をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、チクングニア由来の抗原をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。
【0203】
ある特定の実施形態では、本発明は、対象のがんに関連する抗原または対象のがん細胞から特定された抗原をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、対象自身のがん細胞から決定された抗原をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための、すなわち、個別化がんワクチンを提供するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、変異KRAS遺伝子から発現した抗原をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。
【0204】
ある特定の実施形態では、本発明は、抗体をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、抗体は、二重特異性抗体であり得る。ある特定の実施形態では、抗体は、融合タンパク質の一部であり得る。いくつかの実施形態では、プロセスの工程(b)における2つの別個のmRNA-LNPは、抗体の軽鎖および重鎖をコードするmRNAを含む。いくつかの実施形態では、本発明のmRNA-LNP組成物は、異なる脂質組成物を含み、かつ抗体の軽鎖または重鎖をコードするmRNAを封入する、非同一性LNPの組み合わせを含み得る。ある特定の実施形態では、本発明は、OX40に対する抗体をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、VEGFに対する抗体をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、組織壊死因子アルファに対する抗体をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、CD3に対する抗体をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、CD19に対する抗体をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。
【0205】
ある特定の実施形態では、本発明は、免疫調節剤をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、インターロイキン12をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、インターロイキン23をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、インターロイキン36ガンマをコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、1つ以上のインターフェロン遺伝子刺激因子(STING)タンパク質の構成的に活性なバリアントをコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。
【0206】
ある特定の実施形態では、本発明は、エンドヌクレアーゼをコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、Cas 9タンパク質などのRNAガイドDNAエンドヌクレアーゼタンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、メガヌクレアーゼタンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼタンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。ある実施形態では、本発明は、ジンクフィンガーヌクレアーゼタンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。
【0207】
ある特定の実施形態では、本発明は、眼疾患を治療するためのペプチドまたはタンパク質をコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、レチノスキシンをコードする精製されたmRNAを含む、治療用組成物を生成するために使用される。
【実施例
【0208】
本発明のある特定の化合物、組成物、および方法について、ある特定の実施形態に従って具体的に説明してきたが、以下の実施例は、本発明を単に説明するという役割を果たすものであり、それを制限することを意図するものではない。本発明のある特定の化合物、組成物、および方法について、ある特定の実施形態に従って具体的に説明してきたが、以下の実施例は、本発明を単に説明するという役割を果たすものであり、それを制限することを意図するものではない。
【0209】
以下の実施例に記載されるmRNA-LNP試験物品は、別段の指定がない限り、1つ以上のカチオン性脂質、1つ以上のヘルパー脂質(例えば、DEPEまたはDOPEなどの非カチオン性脂質)、1つ以上のPEG化脂質、および任意にmRNAを封入するように設計されたコレステロールなどの1つ以上のステロールを用いる、異なる比の多成分脂質混合物中に封入されたmRNAを含有する。
【0210】
実施例1.mRNAの調製
mRNAのインビトロ転写
別段の記載がない限り、T7ポリメラーゼまたはSP6ポリメラーゼのいずれかを使用して、インビトロ転写(IVT)を介してmRNAを合成した。簡潔に述べると、SP6ポリメラーゼIVT反応では、転写されたmRNAの各グラムについて、RNAポリメラーゼ特異的プロモーター、SP6 RNAポリメラーゼ、RNase阻害剤、ピロホスファターゼ、5mMのNTP、10mMのDTT、および反応緩衝液(10×-250mMのトリス-HCl、pH7.5、20mMのスピルミジン、50mMのNaCl)と、20mgの線状化二本鎖DNAプラスミドを含有する反応物を、RNaseを含まない水で調製し、次いで、37Cで、60分間でインキュベートした。次に、反応をDNase IおよびDNase I緩衝液(10x-100mMのトリス-HCl、5mMのMgClおよび25mMのCaCl、pH7.6)の添加によりクエンチして、精製のための調製において二本鎖DNA鋳型の消化を促進した。
【0211】
mRNAの5’キャッピング
別段の記載がない限り、IVT転写mRNAは、IVT反応の一部としてキャップ構造を含めるか、またはその後の酵素的工程で、その5’末端でキャップされた。IVT反応の一部としてのキャッピングについては、キャップ類似体を、新生RNA鎖の最初の「塩基」として組み込むことができる。キャップ類似体は、Cap0、Cap1、Cap2、m6、または非天然キャップであってもよい。あるいは、キャップのないかつ精製されたインビトロ転写(IVT)mRNAは、IVT後に酵素的に修飾されて、例えば、グアニル酸トランスフェラーゼを使用する5’N-メチルグアニル酸キャップ0構造の付加により、およびFechter,P.;Brownlee,G.G.“Recognition of mRNA cap structures by viral and cellular proteins”J.Gen.Virology2005,86,1239-1249に記載されているように、2’O-メチルトランスフェラーゼを使用してCap1構造をもたらす最後から2番目のヌクレオチドの2’O位置でのメチル基の付加により、キャップを含むことができる。
【0212】
mRNAの3’テーリング
別段の記載がない限り、IVT転写されたmRNAは、その3’末端で、線状化プラスミドにテール鋳型を含めることによってテーリングされ、これは、IVT反応の一部として、またはその後の酵素的工程でmRNAをテーリングする。IVT反応の一部としてのテーリングについては、ポリAテールまたは類似の適切なテールが、IVTプロセスの一部としてmRNA上に形成されるように、ポリTまたは類似のテーリング機能をpDNA鋳型に組み込むことが行われる。あるいは、ポリAテールは、IVT反応の後に、例えば、ポリAポリメラーゼを使用して、IVT産生mRNAの3’末端に酵素的に付加することができる。
【0213】
実施例2.脂質ナノ粒子(LNP)の調製およびmRNAの封入
LNP調製、およびカチオン性脂質として化合物3を含むLNP中のmRNAの封入を、プロセスBに従って実施した。プロセスBは、米国特許出願公開第US2018/153822号にさらに記載されており、これは、あらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる。上述のように、LNP調製物は、実施例1に記載されるように得られた1つ以上のカチオン性脂質、1つ以上のヘルパー脂質(例えば、DEPEまたはDOPEなどの非カチオン性脂質)、1つ以上のPEG化脂質、およびmRNAを封入するよう設計されたコレステロールなどの1つ以上のステロールを含む多成分脂質混合物であった。
【0214】
本明細書で使用される場合、プロセスAは、LNPが脂質の多成分混合物から形成され、mRNAが単一工程でLNPを形成するものに封入される従来的なプロセスを指す。
【0215】
プロセスBは、予め形成されたLNPをmRNAと混合することによってmRNAを封入するプロセスを指す。予め形成されたLNPを、mRNAの非存在下で、エタノールなどの溶媒中に溶解された多成分脂質混合物を、クエン酸緩衝液で瞬間的に混合することによって最初に調製した。これらの2つの流れの混合により、空の脂質ナノ粒子が形成され、これは、自己集合プロセスであった。得られた製剤は、アルコールを含有するクエン酸緩衝液中の空の脂質ナノ粒子をもたらし、これを、緩衝液交換(例えば、接線流濾過(TFF)によって)して、10%重量/体積のトレハロース溶液緩衝液中に空の脂質ナノ粒子をもたらした。次いで、水溶液中の空の脂質ナノ粒子およびmRNAを混合して、脂質ナノ粒子内に封入されたmRNAを形成した。
【0216】
具体的には、空の脂質ナノ粒子を調製するために、表2-1に記載される比で、カチオン性脂質としての化合物3、PEG修飾脂質としてのDMG-PEG2K、およびコレステロールと共に、DEPEまたはDOPEのいずれかをヘルパー脂質として使用した。
【表2-1】
【0217】
驚くべきことに、カチオン性脂質として化合物3を含むこれらの多成分脂質混合物を、非カチオン性ヘルパー脂質としてDOPEを使用して製剤化することはできなかったが、DOPEの代わりに非カチオン性ヘルパー脂質としてDEPEを使用したときに、安定したリポソームを形成したことが見出された。
【0218】
実施例3.DEPEを含むLNPにおけるmRNAのインビボ生成の強化
本実施例は、ヘルパー脂質としてDEPEを含むLNPを使用した、LNPにより封入されたmRNAの予想外の効力の増加を示す。
【0219】
EPOをコードするmRNAを、実施例1に記載されるように合成した。実施例2に記載されるプロセスBを使用して、mRNAを、異なるヘルパー脂質を含んだが、他の点では同じであったLNPに封入した(以下の表3-1を参照されたい)。具体的には、各mRNAにより封入されたLNPは、異なるヘルパー脂質を含んだが、同じカチオン性脂質(化合物1)、同じPEG修飾脂質(DMG-PEG2K)、同じステロール化合物(コレステロール)、それらの脂質の同じモル比、同じmRNA(EPO mRNA)、同じN/P比=4(すなわち、カチオン性脂質:mRNAのモル比)、同じmRNA濃度(0.2mg/mL)を含み、同じプロセス(プロセスB)に従って調製された。得られるmRNA-LNPの特徴を表3-1に示す。
【表3-1】
【0220】
異なるヘルパー脂質を含むLNPに封入されたmRNAを含む4つの試験物品(表3-1の1~4)の各々を、5mL/kgの用量体積の1mg/kgのmRNAの用量で、尾静脈注射によってマウスに静脈内投与した(n=5、CD-1マウスの6~8週齢)。投与後6時間で、尾部小片によって中間の全血を採取した。投与後24時間で、すべての動物を安楽死させ、続いて、開胸および最終採血を行った。血清試料中のヒトエリスロポエチン(hEPO)レベルを、ELISAキット(R&D systemカタログ番号DEP00)によって、製造業者の指示に従って決定した。さらに、血清ALTおよびASTレベルを、標準的な技術に従ってELISAによって測定した。EPOタンパク質発現およびALT/AST結果を、表3-2に示し、それぞれ図1および図2にグラフ表示する。
【表3-2】
【0221】
表3-2および図1に示されるように、ヘルパー脂質としてDEPEを含むmRNA LNPは、他のヘルパー脂質を含むが、他の点では同じであったmRNA LNPからのタンパク質発現と比較して、顕著に高いインビボタンパク質発現をもたらした。具体的には、投与後6時間で、DEPEを含むmRNA LNPは、同じ時点で、DEPE以外のヘルパー脂質、例えば、DOPE、DLOPE、またはPOPEを含むmRNA LNPからのタンパク質発現の100%超、すなわち2倍超に強化されたインビボタンパク質発現をもたらした。同様に、投与後24時間で、DEPEを含むmRNA LNPは、同じ時点で、DEPE以外のヘルパー脂質、例えば、DOPE、DLOPE、またはPOPEを含むmRNA LNPからのタンパク質発現の100%超、すなわち2倍超に強化されたインビボタンパク質発現をもたらした。
【0222】
さらに、表3-2および図2にも示されるように、投与後24時間でのALTおよびASTレベルは、ヘルパー脂質に関係なく、すべてのmRNA LNPについて実質的に類似しており、ヘルパー脂質としてDEPEを含むmRNA LNPが、DEPE以外のヘルパー脂質、例えば、DOPE、DLOPE、またはPOPEを含むmRNA LNPと類似の安全性および忍容性を有し、同時に、顕著により強力であることを示した。
【0223】
実施例4.ヘルパー脂質としてDEPEまたはDOPEを使用した脂質ナノ粒子(LNP)の調製
本実施例は、mRNA封入脂質ナノ粒子(mRNA-LNP)製剤中でヘルパー脂質としてDEPEを使用することが、ヘルパー脂質として(DOPE)を含む従来のリポソームと比較して、インビボでのmRNAからのタンパク質発現の最大2倍超の増加をもたらすことができることを示す。また、ヘルパー脂質としてDEPEを含むmRNA-LNPが、ヘルパー脂質としてDOPEを含む同じmRNA-LNPと比較して、封入効率の増加をもらしたことも観察された。特に、異なるカチオン性脂質を含む多種多様なmRNA-LNPにわたって、この強化された発現およびこの強化された封入効率が観察された。
【0224】
これらの研究では、OTCをコードするmRNAを、ヘルパー脂質としてDEPEまたはDOPE、および表4に列挙される様々なカチオン性脂質を含むLNPに封入した。表4に記載される各カチオン性脂質は、各脂質の記載における終わりの2桁の数字によって示されるように、C10、C12、C14、またはC16の鎖長の4個のアルキル鎖を含んだ。カチオン性脂質:DMG-PEG2K:コレステロール:ヘルパー脂質のモル比は、約40:3:25:32であった。研究のインビボ部分について、各製剤化されたmRNA-LNPの1mg/kgを、尾静脈注射を介してマウスに送達した。24時間で、マウスを屠殺し、OTCをコードするmRNAのインビボ発現を、各マウスからの肝臓ホモジネートから評価した。平均タンパク質発現を以下の表に提供する。
【表4】
【0225】
表4は、DOPEと比較して、ヘルパー脂質としてDEPEを使用したときに、封入効率がより高かったことを示す。さらに、驚くべきことに、カチオン性脂質として特定のリピドイドを含む多成分脂質混合物は、DOPEを使用しても製剤化することができなかったが、DEPEをヘルパー脂質として使用したときに安定したリポソームを形成したことを観察した。表4はまた、ヘルパー脂質としてDEPEを含むmRNA LNPが、DOPEヘルパー脂質を含むが、他の点では同じであったmRNA LNPからのタンパク質発現と比較して、顕著に高いインビボタンパク質発現を示したことを実証する。これは、様々なカチオン性脂質をLNP中で使用した場合に当てはまった。
【0226】
実施例5.他のヘルパー脂質と比較した、ヘルパー脂質としてDEPEを使用することによるインビボタンパク質発現の強化
本実施例は、mRNA封入脂質ナノ粒子(mRNA-LNP)製剤中でヘルパー脂質としてDEPEを使用することが、mRNA-LNPを調製するために使用される様々な封入プロセスにわたって、他のタイプのヘルパー脂質を使用する脂質ナノ粒子と比較して、インビボでのmRNAの発現を増加させることができることを示す。
【0227】
これらの研究では、OTCをコードするmRNAを、表5-1、表5-2、表5-3、および表5-4に示されるモル脂質比で、PEG修飾脂質としてDMG-PEG-2000、カチオン性脂質としてcDD-TE-4-E12、コレステロール、およびDEPEを含むいくつかの異なるヘルパー脂質のうちの1つを含むLNP(N/P=4)で封入した。各mRNA-LNP製剤を、4つの異なる封入プロセスのうちの1つ:表5-1に記載される製剤については従来のプロセス、表5-2に記載される製剤については再混合プロセス、表5-3に記載される製剤についてはステップアップ再混合プロセス、または表5-4に記載される製剤についてはステップダウン再混合プロセスを使用することによって調製した。mRNA-LNPを、LNPサイズ、多分散性、および封入パーセントについて評価し、各々の結果を以下の表に示す。研究のインビボ部分について、各製剤化されたmRNA-LNPの1mg/kgを、尾静脈注射を介してマウス(n=5)に送達した。24時間で、マウスを屠殺し、OTCをコードするmRNAのインビボ発現を、各マウスからの肝臓ホモジネートから評価した。平均タンパク質発現を以下の表に示す。
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5-4】
【0228】
表5-1、表5-2、表5-3、および表5-4は各々、LNPに封入され、マウスの群に送達されたmRNAによる24時間後のタンパク質発現のレベルを示す。示されるように、ヘルパー脂質DOPEまたはDEPEを用いて調製されたLNPのみが、異なる封入プロセスにわたってタンパク質発現に関して効力をもたらした。特に、mRNA-LNPを調製するために使用される封入プロセスに関係なく、DEPEを、ヘルパー脂質を使用してLNPを調製したときに、インビボタンパク質発現が最高であった。
【0229】
当業者であれば理解することができるように、ヘルパー脂質としてDEPEを含むmRNA LNPのこの有意に増加した効力、しかし同様の安全性および有効性は、治療剤としてのmRNAの送達に有意な利点をもたらす。
【0230】
等価物
当業者は、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態の多くの均等物を認識するか、または日常的な実験作業を越えない手法を使用して確認できるであろう。本発明の範囲は、上記の記載を限定することを意図しないが、むしろ以下の特許請求の範囲に記述されるとおりである。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
mRNAの送達を必要とする対象にそれを行うための脂質ナノ粒子であって、前記脂質ナノ粒子が、1つ以上のカチオン性脂質と、1つ以上のPEG修飾脂質と、前記mRNAを封入する1つ以上のヘルパー脂質と、を含み、前記1つ以上のヘルパー脂質が、1,2-ジエルコイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DEPE)を含む、脂質ナノ粒子。
(項目2)
前記対象への前記脂質ナノ粒子の投与が、異なる1つ以上のヘルパー脂質を含み、かつDEPEを含まないことを除いて同じ脂質成分および量を有する第2の脂質ナノ粒子中の同じmRNAの発現と比較して、前記mRNAの発現の強化をもたらす、項目1に記載の脂質ナノ粒子。
(項目3)
前記異なる1つ以上のヘルパー脂質が、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DLOPE)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(POPE)、および/またはそれらの組み合わせを含む、項目2に記載の脂質ナノ粒子。
(項目4)
発現が前記第2の脂質ナノ粒子と比較して少なくとも2倍強化される、項目2または3に記載の脂質ナノ粒子。
(項目5)
前記脂質ナノ粒子中の前記DEPEが、10モルパーセント~50モルパーセントの濃度で存在する、項目1~4のいずれかに記載の脂質ナノ粒子。
(項目6)
前記1つ以上のカチオン性脂質が、各々C 10 -C 16 の鎖長の1~4つのアルキル鎖であるか、またはそれらを含む、項目1~5のいずれかに記載の脂質ナノ粒子。
(項目7)
前記1つ以上のカチオン性脂質が、4つの脂肪族鎖を含むリピドイドである、項目1~5のいずれかに記載の脂質ナノ粒子。
(項目8)
前記1つ以上のカチオン性脂質が、以下の式のカチオン性脂質、
【化83】

またはその薬学的に許容される塩であるか、またはそれを含み、
式中、R およびR が各々独立して、HまたはC -C 脂肪族であり、mが各々独立して、1~4の値を有する整数であり、Aが各々独立して、共有結合またはアリーレンであり、L が各々独立して、エステル、チオエステル、ジスルフィド、または無水物基であり、L が各々独立して、C -C 10 脂肪族であり、X が各々独立して、HまたはOHであり、R が各々独立して、C -C 20 脂肪族である、項目7に記載の脂質ナノ粒子。
(項目9)
が各々独立して、C -C 16 脂肪族である、項目8に記載の脂質ナノ粒子。
(項目10)
前記1つ以上のPEG修飾脂質が、C -C 20 の鎖長のアルキル鎖を有する脂質に共有結合した最大5kDaの鎖長のポリ(エチレン)グリコール鎖を含む、項目1~9のいずれかに記載の脂質ナノ粒子。
(項目11)
1つ以上のステロールをさらに含む、項目1~10のいずれかに記載の脂質ナノ粒子。
(項目12)
前記1つ以上のステロールがコレステロールベースの脂質を含む、項目11に記載の脂質ナノ粒子。
(項目13)
前記コレステロールベースの脂質がコレステロールおよび/またはPEG化コレステロールである、項目12に記載の脂質ナノ粒子。
(項目14)
前記mRNAが、インビボで治療用タンパク質またはペプチドに翻訳されるタンパク質をコードするmRNAである、項目1~13のいずれかに記載の脂質ナノ粒子。
(項目15)
前記タンパク質またはペプチドをコードする前記mRNAが全身に送達され、前記翻訳されたタンパク質またはペプチドが投与後24時間以上の時点で肝臓または血清中で検出可能である、項目14に記載の脂質ナノ粒子。
(項目16)
前記ポリペプチドが治療用ポリペプチドである、項目15に記載の脂質ナノ粒子。
(項目17)
前記治療用ポリペプチドが、(a)抗体軽鎖もしくは抗体重鎖であるか、または(b)前記対象に存在しないまたは欠乏しているポリペプチドである、項目16に記載の脂質ナノ粒子。
(項目18)
タンパク質をコードする前記mRNAがペプチドをコードする、項目14に記載の脂質ナノ粒子。
(項目19)
前記ペプチドが抗原である、項目18に記載の脂質ナノ粒子。
(項目20)
mRNAの送達を必要とする対象にそれを行うための方法であって、前記対象に、1つ以上のカチオン性脂質と、1つ以上のPEG修飾脂質と、前記mRNAを封入する1つ以上のヘルパー脂質と、を含む脂質ナノ粒子を投与することを含み、前記1つ以上のヘルパー脂質が、1,2-ジエルコイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DEPE)を含む、方法。
(項目21)
前記対象への前記脂質ナノ粒子の投与が、異なる1つ以上のヘルパー脂質を含み、かつDEPEを含まないことを除いて同じ脂質成分および量を有する第2の脂質ナノ粒子由来の同じmRNAの発現と比較して、前記mRNAの発現の強化をもたらす、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記異なる1つ以上のヘルパー脂質が、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DLOPE)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(POPE)、および/またはそれらの組み合わせを含む、項目21に記載の方法。
(項目23)
発現が前記第2の脂質ナノ粒子と比較して少なくとも2倍強化される、項目21または22に記載の脂質ナノ粒子。
(項目24)
前記脂質ナノ粒子中の前記DEPEが、10モルパーセント~50モルパーセントの濃度で存在する、項目20~23のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
(項目25)
前記1つ以上のカチオン性脂質が、cKK-E12であるか、またはそれを含む、項目20~24のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記1つ以上のカチオン性脂質が、ICE(イミダゾールコレステロールエステル)であるか、またはそれを含む、項目20~24のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記1つ以上のカチオン性脂質が、以下の式のカチオン性脂質、
【化84】

またはその薬学的に許容される塩であるか、またはそれを含み、
式中、R およびR が各々独立して、HまたはC -C 脂肪族であり、mが各々独立して、1~4の値を有する整数であり、Aが各々独立して、共有結合またはアリーレンであり、L が各々独立して、エステル、チオエステル、ジスルフィド、または無水物基であり、L が各々独立して、C -C 10 脂肪族であり、X が各々独立して、HまたはOHであり、R が各々独立して、C -C 20 脂肪族である、項目20~24のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記1つ以上のカチオン性脂質が、化合物1であるか、またはそれを含む、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記1つ以上のPEG修飾脂質が、C -C 20 の鎖長のアルキル鎖を有する脂質に共有結合した最大5kDaの鎖長のポリ(エチレン)グリコール鎖であるか、またはそれを含む、項目20~28のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
1つ以上のステロールをさらに含む、項目20~29のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
前記1つ以上のステロールがコレステロールベースの脂質を含む、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記コレステロールベースの脂質がコレステロールおよび/またはPEG化コレステロールである、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記mRNAが、インビボで治療用タンパク質に翻訳されるタンパク質をコードするmRNAである、項目21~32のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
タンパク質をコードする前記mRNAがポリペプチドである、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記ポリペプチドが治療用ポリペプチドである、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記治療用ポリペプチドが、(a)抗体軽鎖もしくは抗体重鎖、または(b)前記対象に存在しないまたは欠乏しているポリペプチドである、項目35に記載の方法。
(項目37)
タンパク質をコードする前記mRNAがペプチドである、項目33に記載の方法。
(項目38)
前記ペプチドが抗原である、項目37に記載の方法。
(項目39)
mRNAを封入する脂質ナノ粒子を調製するための方法であって、
(a)1つ以上のカチオン性脂質、1つ以上のPEG修飾脂質、および1つ以上のヘルパー脂質の混合物を提供することであって、前記1つ以上のヘルパー脂質が、1,2-ジエルコイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DEPE)を含む、提供することと、
(b)工程(a)で提供された前記混合物から脂質ナノ粒子を形成することと、を含み、
前記方法が、前記mRNAを前記脂質ナノ粒子に封入することをさらに含み、封入が、工程(b)での前記脂質ナノ粒子の形成前または形成後に行われる、方法。
(項目40)
前記mRNAを封入する前記脂質ナノ粒子が安定している、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記1つ以上のヘルパー脂質が、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DLOPE)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(POPE)、および/またはそれらの組み合わせのうちのいずれか1つを含まない、項目39または40に記載の方法。
(項目42)
前記DEPEが、10モルパーセント~50モルパーセントの濃度で混合物中に存在する、項目39~41のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
前記混合物中の前記1つ以上のPEG修飾脂質が、C -C 20 の鎖長のアルキル鎖を有する脂質に共有結合した最大5kDaの鎖長のポリ(エチレン)グリコール鎖を含む、項目39~42のいずれか一項に記載の方法。
(項目44)
前記混合物が1つ以上のステロールをさらに含む、項目39~43のいずれか一項に記載の方法。
(項目45)
前記1つ以上のステロールがコレステロールベースの脂質を含む、項目44に記載の方法。
(項目46)
前記コレステロールベースの脂質がコレステロールおよび/またはPEG化コレステロールである、項目45に記載の方法。
(項目47)
前記mRNAが、治療用ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質をコードする、項目39~46のいずれか一項に記載の方法。
(項目48)
前記mRNAが、予め形成された脂質ナノ粒子中に封入される、項目39~47のいずれか一項に記載の方法。
(項目49)
前記方法が、前記mRNAの封入前および/または封入後に、前記脂質ナノ粒子を接線流濾過(TFF)に供することをさらに含む、項目39~48のいずれか一項に記載の方法。
(項目50)
前記方法が、前記脂質ナノ粒子をトレハロース溶液中で製剤化することをさらに含む、項目39~49のいずれか一項に記載の方法。
図1
図2