(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】投与量をキャプチャ可能な使い捨て本体と再利用可能なキャップを備える注射器
(51)【国際特許分類】
A61M 5/31 20060101AFI20241112BHJP
A61M 5/315 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
A61M5/31 520
A61M5/315 510
(21)【出願番号】P 2022513262
(86)(22)【出願日】2020-08-25
(86)【国際出願番号】 US2020047756
(87)【国際公開番号】W WO2021041385
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-06-16
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェイ.リチャード ギョリー
【審査官】黒田 暁子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0213856(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0136185(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/31
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バレルと、
ストッパと、
プランジャーロッドの動きによって前記ストッパが前記バレル内で変位するように前記ストッパに接続されたプランジャーロッドと、
前記プランジャーロッドに接続するように構成されたスマートキャップであって、
前記プランジャーロッドの直線運動を回転運動に変換するように構成されたロータリーエンコーダを備え、前記プランジャーロッドの動きを感知するよう構成されたセンサ、
前記バレルに取り付けられた針が、ユーザの皮膚に刺さった時を感知するように構成された加速度計、
可視インジケータおよび可聴インジケータのうちの1つを備えるインジケータ、
通信モジュール、ならびに、
電源
を備えるスマートキャップと
を備える
スマート注射器であって、
前記スマートキャップは、前記針が前記ユーザの皮膚に刺さった後の経過した時間を測定するように構成されたタイマーをさらに含み、
マイクロコントローラは、前記針が前記ユーザの皮膚に刺さった後の経過した時間、前記プランジャーロッドの前記動き、および前記加速度計からのデータのうちの一つ以上に基づいて前記注射器によって実行される注射の状態の表示を出力するように前記インジケータを制御するように構成された
スマート注射器。
【請求項2】
前記通信モジュールは、ブルートゥース(登録商標)チップを備える、請求項1に記載のスマート注射器。
【請求項3】
前記プランジャーロッドは、前記ストッパに接続された第1の端部と、前記第1の端部とは反対側でねじ山を有する第2の端部とを備え、
前記スマートキャップは、前記プランジャーロッドの第2の端部に螺合されるように構成された、
請求項1に記載のスマート注射器。
【請求項4】
前記バレル、前記ストッパ、および前記プランジャーロッドは使い捨てである、請求項1に記載のスマート注射器。
【請求項5】
前記注射の状態は、前記針が前記ユーザの皮膚に刺さった後、所定の時間が経過したことを示す表示
を含む、請求項
1に記載のスマート注射器。
【請求項6】
注射器のプランジャーロッドに取り付けられるように構成された本体と、
前記プランジャーロッドの直線運動を回転運動に変換するように構成されたロータリーエンコーダを備え、前記プランジャーロッドの動きを感知するよう構成されたセンサと、
加速度計と、
可視インジケータおよび可聴インジケータのうちの1つを備えるインジケータと、
通信モジュールと、
電源と
を備える
スマートキャップであって、
前記加速度計は、前記注射器に取り付けられた針が、ユーザの皮膚に刺さった時を感知するように構成されており、
前記スマートキャップは、
前記針が前記ユーザの皮膚に刺さった後の経過した時間を測定するように構成されたタイマーをさらに含み、
マイクロコントローラは、前記針が前記ユーザの皮膚に刺さった後の経過した時間、前記プランジャーロッドの前記動き、および前記加速度計からのデータのうちの一つ以上に基づいて前記注射器によって実行される注射の状態の表示を出力するように前記インジケータを制御するように構成された
スマートキャップ。
【請求項7】
前記通信モジュールは、ブルートゥース(登録商標)チップを備える、請求項
6に記載のスマートキャップ。
【請求項8】
前記スマートキャップは、前記プランジャーロッドの端部に螺合されるように構成された、請求項
6に記載のスマートキャップ。
【請求項9】
スマートキャップを注射器のプランジャーロッドおよびシリンジのバレルに取り付けることによって、前記スマートキャップの電源をオンすることと、
前記スマートキャップに配置されたセンサを介して、前記プランジャーロッドの動きを感知することであって、前記センサは前記プランジャーロッドの直線運動を回転運動に変換するように構成されたロータリーエンコーダを備える、ことと、
前記スマートキャップ内のマイクロコントローラが前記スマートキャップ内の加速度計から受信したデータに基づいて前記バレルに取り付けられた針が、ユーザの皮膚に刺さった時刻を決定することと、
前記スマートキャップ内のタイマーが前記針が前記ユーザの皮膚に刺さった時刻後の経過時間を決定することと、
インジケータが
前記針が前記ユーザの皮膚に刺さった時刻後の経過時間、前記プランジャーロッドの前記動き、および前記加速度計からのデータのうちの一つ以上に基づいて前記注射器によって実行される注射の状態の表示をユーザに出力することとを
含む注射情報を取得する方法。
【請求項10】
前記センサによって出力された前記プランジャーロッドの動きのデータを使用して、患者に投与された投与量を計算することと、
前記患者に投与された前記投与量のデータを保存することとを
さらに含む請求項9に記載の注射情報を取得する方法。
【請求項11】
前記センサによって出力された、前記プランジャーロッドの動きのデータを、前記スマートキャップから外部デバイスに送信することをさらに含み、
前記投与量を計算することおよび前記データを保存することは、前記外部デバイスで実行される、
請求項
10に記載の注射情報を取得する方法。
【請求項12】
前記投与量の注射の時刻を取得することと、
前記投与量の注射の時刻のデータを保存することとを
さらに含む請求項
10に記載の注射情報を取得する方法。
【請求項13】
前記注射の時刻を取得することは、前記スマートキャップ内の前記加速度計が前記投与量の注射を感知することと、前記スマートキャップ内の
前記マイクロコントローラが
前記バレルに取り付けられた前記針が、前記ユーザの皮膚に刺さった時刻に基づいて前記注射の時刻を取得することとを含む、請求項
12に記載の注射情報を取得する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
例示的な実施形態と一致する装置および方法は、流体を移送する(すなわち、投与または吸引する)ための注射器、より具体的には、薬物投与情報を感知および提供するスマートプランジャーキャップを含む注射器に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
この出願は、2019年8月30日に米国特許商標庁に提出された米国仮出願62/894,031からの優先権を主張し、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
現在使用されているほとんどの注射器は、使い捨てまたは一回使用タイプである。
図1に示される典型的な使い捨て注射器100は、主にプラスチックでできており、いくつかの重要な構成要素を有する。最も大きく、最も多くの材料を含むものは、プラスチックバレル10である。バレル10へのスケール印刷12は、ユーザによる適切な投薬を保証するために必要とされる重要で費用のかかる組み立て工程である。バレル10の内側には、気密シールを生成し、薬液または他の流体をバレルに出し入れするために使用されるゴム製ストッパ20がある。プラスチック製プランジャーロッド25は、ゴム製ストッパ20とインタフェースし、ユーザの制御下でゴム製ストッパを前後に動かす。金属製の針30またはカニューレは、通常、バレルの遠位端に取り付けられて、流体の体内への注入または体からの除去を可能にするが、必ずしもそうであるとは限らない。たとえば、遠位端にオスのルアーコネクタを備えたシリンジをカテーテルまたはIVラインのメスのルアーコネクタに取り付けて、針やカニューレを使用せずに液体を注入または吸引することができる。
【0004】
多数の注射器が比較的短時間に、病院および医療環境、ならびに、患者による特定の状態の管理のために使用され得る。たとえば、糖尿病の管理では、液状インスリンを1日に数回ユーザに投与するために、使い捨てのプラスチック注射器をよく使用する。このような使い捨て注射器(single-use syringes)は、通常、ユーザがバイアルからインスリンの適切な投与量を決定するために参照する印刷された目盛り番号が付いた透明なポリマーバレルと、ユーザへの不快感を最小限に抑えて投与量を皮膚内に注入するファインゲージの金属針(通常は長さ約6~12mm)とを備えている。針は、Luer-Lok(登録商標)、またはルアースリップ接続を使用してバレルに取り外し可能に接続し得るか、注射器の製造中にバレルに恒久的に取り付けるか「固定」し得る。インスリン注射器は、通常1ml以下(0.3ml、0.5ml、1.0mlのバレルサイズが一般的)の容量を持ち、特定の種類のインスリン(たとえば、U-100またはU-500インスリン)の単位を表すバレルに形成された目盛りを備えている。インスリン注射器は、また、注射器の再利用を防ぐため、もしくは使用済みの針を保護するため、またはその両方のための安全機能を備え得る。インスリン注射器は1回しか使用されず、ユーザは通常1日ごとに数本を必要とするため、それらは、複数の注射器が入った箱または袋で販売されるのが一般的である。
【0005】
上記のタイプのインスリン注射器に関しては、耐久性のある(再利用可能な)構成要素はない。注射器と針は1回の使用後にすべて廃棄され、構成要素は再利用されない。使い捨て注射器(a single-use syringe)の廃棄は、無菌性を確保し、血液感染症の蔓延を防ぐのに有利であるが、一回だけ使用するために、必要な注射器の構成要素と組み立て工程をすべて提供する費用は、必要以上に高くなる。廃棄された注射器は、他の種類の医療廃棄物と混合することができず、代わりに専用の鋭利物廃棄容器に入れる必要があるため、病院や他の医療施設でも廃棄負担が発生する。したがって、使い捨て注射器の衛生上の利点を維持しながら、1回限りの使用に伴う費用や廃棄の負担を軽減した注射器の必要性が存在する。
【0006】
あるタイプの薬物の注射の効果的な投与は、特に糖尿病患者によって使用されるインスリンの場合、投与したすべての投与量の記録を保持することを必要とする。在宅注射の患者に対して教育が提供されているが、ほとんどの患者は、日常的に適切に指示に従うことがいぜんとして困難であると感じている。さらに、注射と注射された投与量の記録を取得するための唯一の手段は、それを手作業で書き留めることである。ヘルスケア従事者は、臨床環境で投与量関連の情報を記録することができるが、この情報をキャプチャ(capturing)することに関連するかなりのオーバーヘッド(overhead)が存在する。また、特定の注射時間と投与量を測定して記録することも困難である。特定の患者はまた、注射器のバレルの目盛りのマーキングを読み取ること、または指示に従うことが困難であるために、注射器にまさしく特定の量の薬剤を引き込むこと、および/または注射された薬剤の特定の量を決定することが難しいと感じ得る。
【0007】
投与された投与量および処方された投薬レジメンの順守に関するより正確な情報をユーザに提供することができる改良された注射器の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0008】
例示的な実施形態は、少なくとも上記の問題および/または不利な点、ならびに上記に記載されていないその他の不利な点に対処し得る。また、例示的な実施形態は、上記の不利な点を克服する必要はなく、上記の問題のいずれも克服できない場合がある。
【0009】
1つまたはそれ以上の例示的な実施形態は、薬物投与情報を感知および出力するように構成された使い捨て本体および再利用可能なスマートキャップを備えたスマート注射器を提供し得る。
【0010】
例示的な実施形態の一態様によれば、バレル;ストッパ;プランジャーロッドの移動によりストッパをバレル内で変位させるようにストッパに接続されたプランジャーロッド;およびプランジャーロッドに接続されるように構成されたスマートキャップ;から構成されるスマート注射器が提供される。スマートキャップは、プランジャーロッドの動きを感知するように構成されたセンサ、可視インジケータおよび可聴インジケータのうちの1つを含むインジケータ、通信モジュール、ならびに電源を備え得る。
【0011】
通信モジュールは、ブルートゥース(登録商標)チップであり得る。
【0012】
プランジャーロッドは、ストッパに接続された第1の端部と、第1の端部とは反対側でねじ山を有する第2の端部とからなり、スマートキャップは、プランジャーロッドの第2の端部に螺合されるように構成され得る。
【0013】
バレル、ストッパ、およびプランジャーロッドは、使い捨てであり得る。
【0014】
スマートキャップは、バレルに取り付けられた針が、ユーザの皮膚に刺さった時を感知するように構成された加速度計、および針がユーザの皮膚に刺さった後の経過時間を測定するよう構成されたタイマーの一つまたはそれ以上をさらに備え得る。マイクロコントローラは、針がユーザの皮膚に刺さった後、所定の時間が経過したことを示す表示を出力するようにインジケータを制御するように構成され得る。
【0015】
別の例示的な実施形態の一形態によれば、注射器のプランジャーロッドに取り付けられるように構成された本体と、プランジャーロッドの動きを感知するように構成されたセンサと、可視インジケータおよび可聴インジケータの一つを備えるインジケータと、通信モジュールと、電源とを備える、スマートキャップが提供される。
【0016】
通信モジュールは、ブルートゥース(登録商標)チップであり得る。
【0017】
スマートキャップは、プランジャーロッドの端部に螺合されるように構成され得る。
【0018】
スマートキャップは、さらに加速度計を備え得る。
【0019】
別の例示的な実施形態の一態様によれば、注射情報を取得する方法が提供され、この方法は、スマートキャップをプランジャーロッドおよび注射器のバレルに取り付けることによってスマートキャップの電源を入れること;スマートキャップに配置されたセンサを介して、プランジャーロッドの動きを感知すること;センサによって出力されたプランジャーロッドの動きのデータを使用して、患者に投与される投与量を計算すること;患者に投与された投与量のデータを保存すること、を含む。
【0020】
この方法は、センサによって出力されたプランジャーロッドの動きのデータをスマートキャップから外部デバイスに送信することをさらに含み得、投与量の計算とデータの保存は外部デバイスによって実行され得る。
【0021】
この方法は、スマートキャップ内のマイクロコントローラがスマートキャップ内の加速度計から受信したデータに基づいて投与量の注射の時刻を決定すること;スマートキャップ内のタイマーが注射の時刻後の経過時間を決定すること;およびインジケータが注射の時刻後、所定の時間が経過したことに基づいてユーザに表示を出力すること、をさらに含み得る。
【0022】
この方法は、投与量の注射の時刻を取得すること;および投与量の注射の時刻のデータを保存することをさらに含み得る。
【0023】
注射の時間を取得することは、スマートキャップ内の加速度計が投与量の注射を感知すること、およびスマートキャップ内のマイクロコントローラが加速度計から出力されたデータに基づいて注射の時刻を取得することを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
上記および/または他の態様は、添付の図面と併せて、以下の例示的な実施形態の説明から、明らかになり、より容易に理解されるであろう。
【0025】
【
図1】
図1は、関連技術における使い捨て注射器を示す図である。
【
図2A】
図2Aは、例示的な実施形態におけるスマート注射器を示す図である。
【
図2B】
図2Bは、例示的な実施形態におけるスマート注射器を示す図である。
【
図3】
図3は、例示的な実施形態におけるスマート注射器システムを示す図である。
【
図4】
図4は、例示的な実施形態における、スマートキャップの電子構成要素の概略図である。
【
図5】
図5は、例示的な実施形態における、動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、添付の図面に示されている例示的な実施形態を詳細に参照する。同様の参照番号は、全体を通じて同様の要素を指す。これに関して、例示的な実施形態は、異なる形態を有し得、本明細書に記載された説明に限定して解釈され得ない。
【0027】
用語「include(含む)」、「including(含む)」、「comprise(備える)」、および/または「comprising(備える)」は、本明細書で使用されるとき、述べられる特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/またはそれらのグループの存在または追加を排除しないことが理解されよう。
【0028】
用語「第1」、「第2」、「第3」などは、本明細書では様々な要素、構成要素、領域、層および/またはセクションを説明するために使用され得るが、これらの要素、構成要素、レイヤーおよび/またはセクションは、これらの用語によって限定され得ないことがさらに理解されよう。これらの用語は、1つの要素、構成要素、領域、レイヤー、またはセクションを別の要素、構成要素、領域、レイヤー、またはセクションと区別するためにのみ使用される。
【0029】
本明細書で使用される場合、「および/または」という用語は、関連する列挙された項目の1つまたはそれ以上の任意およびすべての組み合わせを含む。「少なくとも1つ」などの表現は、要素のリストの前にある場合、要素のリスト全体を変更し、リストの個々の要素は変更しない。くわえて、本明細書に記載の「ユニット」、「-er(-or)」、および「モジュール」などの用語は、少なくとも1つの機能または動作を実行するための要素を指し、ハードウェア、ソフトウェア、またはハードウェアとソフトウェアの組み合わせで実装され得る。
【0030】
特定のシステム構成要素を参照するために、さまざまな用語が使用される。異なる会社が異なる名前で構成要素を参照し得る-本明細書は、名前は異なるが機能は異ならない構成要素を区別することを意図していない。
【0031】
これらの例示的な実施形態が属する技術分野の当業者にとって明らかであるこれらの例示的な実施形態の事項は、本明細書では詳細に説明されない場合がある。
【0032】
図1に関して上述したように、関連技術の使い捨て注射器100は、その上に目盛り印刷12を有するプラスチックバレル10と、それに取り付けられた針30とを含む。バレル10内に配置されたゴム製ストッパ20は、プランジャーロッド25に取り付けられている。プランジャーロッド25の遠位端25aへの圧力は、バレル10内の流体に圧力をかけ、流体が体内に注入されることを可能にする。
【0033】
図2Aおよび
図2Bは、例示的な実施形態におけるスマート注射器を示す図である。スマート注射器200は、その中にストッパ220を有するバレル210と、それに取り付けられた、または取り付け可能な針230とを含む。針230は、バレル210に取り外し可能に接続され得るか、または製造中に恒久的に取り付けられ得る。バレル210は、その上に印刷されたスケール印刷212を有し得、またはスケール印刷は省略され得る。プランジャーロッド225は、ストッパ220に取り付けられている。スマートシリンジ200はまた、スマートキャップ250およびプランジャーエンドキャップ257を含む。無菌化のため、少なくともバレル210、ニードル230、ストッパ220、およびプランジャーロッド225は使い捨てであり得る。スマートキャップ250とプランジャーエンドキャップ257は再利用可能である。使用するために、スマートキャップ250/プランジャーエンドキャップ257の組み合わせを、プランジャーロッド225のねじ山付き端部226に螺合し得る。一緒に組み立てられると、プランジャーロッド225は、スマートキャップ250内で、以下に説明されるセンサと係合される。スマートキャップ250のバレル210および/またはプランジャーロッド225への取り付けは、
図4とともに後述するように、電源468からスマートキャップ250の他の電子要素への電力の供給を可能にするマイクロスイッチ466と係合し得る。さらに詳細に後述するように、電源468はまた、ブルートゥース(登録商標)モジュールに電力を供給し、最初の電力供給時に、可視256/460および/または可聴462インジケータを駆動して最初の状態を示すように構成することができる。
【0034】
スマートキャップは、バイアルから注射器に投与量を吸引することを可能にするダイヤル機構(図示せず)などの機構を含み得る。そのようなダイヤル機構は、注射器200を、ペン注射器のように振る舞い、使用される装置に変換することを可能にし得る。このようなダイヤル機構では、プランジャがエンドキャップ257を介して押し下げられると、投与量が投与され、機構がリセットされる。代替的に、1つまたは複数の例示的な実施形態では、ダイヤル機構は省略され得る。
【0035】
注射が完了すると、スマートキャップ250およびエンドキャップ257はプランジャーロッド225およびバレル210から切り離され得、スマートキャップ250およびエンドキャップ257は再利用のために保存されるが、プランジャーロッド225、バレル210、ストッパ220、および針230は廃棄し得る。
【0036】
スマートキャップ250は、注射中のプランジャーロッド225の位置を決定するためのセンサ446を含み得る。例えば、センサ446は、当業者であれば理解できるように、直線運動を回転角度に、またはその逆に変換する光学的または機械的ロータリーエンコーダなどのロータリーエンコーダを介して、プランジャーロッド225の直線運動を記録デバイスの回転運動に変換することができる。
【0037】
針230によって皮膚が貫通された時を決定する加速度計456も含まれ得、注射時のプランジャーロッド225の位置の決定を可能にする。タイマーおよび可聴462および/または可視256/460インジケータは、注射のための十分な時間を確保できるように患者を助けるために、および/または1つもしくはそれ以上の状態の表示を提供するために含まれ得る。一般的に、注射と、投与量が皮膚の表面に漏れないように適切に配置されるまでとの間には遅延期間があることから、ユーザは、投与量を注射してすぐに皮膚から針を抜くべきではない。注射の時刻は、加速度計456を介して検出し得、タイマー457は、可聴462および/または可視256/460インジケータを介して針を引き抜く時間をユーザにアラートし得る。可視インジケータは、LED、数値カウンタ、および/または別のタイプの表示画面などの1つまたはそれ以上のライトを備え得る。マイクロコントローラは、可視インジケータを制御して、投与量の量、時刻、タイマー、および投与量の数のうちの1つまたは複数を表示し得る。
【0038】
バレル210のサイズが既知である場合にのみ、特定の投与量がプランジャーロッド225の位置によって決定され得ることは明らかである。したがって、スマートキャップ250は、単一サイズのバレル210のみに取り付けるように構成され得る。あるいは、スマートキャップ250および/または接続されたデバイス350(以下で説明する)は、当業者によって理解されるように、任意の様々な手段によってバレルのサイズを知らされ得る。
【0039】
図3は、スマートキャップ250および別の接続された外部デバイス350を含むスマートシリンジシステム300を示している。外部デバイス350は、例えば、図示のようなスマートフォン、またはラップトップ、タブレット、パーソナルコンピュータ、もしくは他のプロセッシングデバイスであり得る。スマートキャップ250および外部デバイス350は、例えばブルートゥース(登録商標)によって無線接続されるか、または有線接続を介して接続され得る。2つの通信プラットフォームは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせが異なり得る。デバイス間のデータ転送は、スマートキャップと外部デバイス間でデータ転送がいつどのように行われるかによって異なり得る。例えば、スマートキャップ250は、リアルタイム(すなわち、注射中)または以前に切断されたデバイスが最終的にペアリングもしくは他の方法で接続された時などの注射後の任意の時点で、薬物投与状態(例えば、完了もしくは途中)または他の送達情報(例えば、速度、タイミングなど)に関するデータを転送し得る。通信接続は、有線または無線であり得る。さまざまなワイヤレス接続方法には、限定されるものではないが、ブルートゥース(登録商標)、WiFi(登録商標)、および近距離無線通信(NFC)が含まれ、これらは、必要な場合には、デバイスのペアリング、およびデバイスを近接させる必要性に影響を与え得る。当業者によって理解されるように、デバイスの互いに対する適切な近接性は、使用される接続方法に依存する。データ転送のタイミングは、2つの通信プラットフォームおよび/または少なくともスマートキャップが時間記録機能を有するか否かに少なくとも部分的に依存し得る。
【0040】
例示的な実施形態の一態様によれば、外部デバイスは、スマートキャップ250に接続して協働するための投与情報アプリを備えたスマートフォン350であり得る。ユーザは、たとえば標準のブルートゥース(登録商標)テクノロジー方法を使用して、スマートフォンをスマートキャップと同期のためにペアリングし得る。
【0041】
図3を引き続き参照すると、スマートキャップ250とスマートフォンとの間のデータ同期は、例えば、投与データを取得するために、注射のたびに発生し得る。スマートフォン350は、有利には、時間記録機能を提供し得る(例えば、注射中または注射直後に提供されるデータは、スマートフォンの時計を使用してタイムスタンプとともにスマートフォン350のメモリデバイスに格納される)。スマートフォン350と配信デバイスとの間のブルートゥース(登録商標)接続により、スマートキャップ250は、スマートフォン350の約10メートル以内で、投与データをスマートフォンに転送するよう動作可能である。データ転送のためにスマートフォン350とペアリングし、スマートフォンのメモリと時間記録機能を使用することで、スマートキャップ250の電子部品を最小化し、複雑さを軽減して製造コストを削減することができる。
【0042】
図4は、スマートキャップ250内の電子部品400の概略図である。スマートキャップ250はまた、1つまたはそれ以上の例示的な実施形態によれば、他の状態モニタリングおよび情報報告機能を実行し得る。スマートキャップ250の構成要素は、内部時刻クロックを備えたマイクロコントローラ450、センサ446、マイクロコントローラ450によって使用されるプログラミングおよびデータを記憶するためのメモリ452、プランジャーロッド255が対象となり得る動きまたは外乱の量を測定するための加速度計456、接続されたデバイスと通信するための通信モジュール458、ならびにプランジャーロッド225のスマートキャップ250への、およびスマートキャップ250の注射器100のバレルへの、初期接続を感知するマイクロスイッチ466を含む。通信モジュールは、有線コネクタ(例えば、USBもしくはミニUSBインタフェース)または、例えばブルートゥース(登録商標)、WiFi(登録商標)もしくはNFC技術を介して通信するための無線インタフェースを備え得る。例えば、スマートキャップ250は、ブルートゥース(登録商標)チップ、例えば、同期および他のブルートゥース(登録商標)を操作するためのオンボードプロセッサおよびメモリを有するTICC2541などのブルートゥース(登録商標)低エネルギーLEチップを含み得る。
【0043】
スマートキャップ250は、異なる色の発光ダイオード(LED)などの1つまたはそれ以上の複数の可視インジケータ256/460と、ビーパー(beepers)、ブザー、スピーカーまたは振動デバイスなどの1つまたはそれ以上の可聴および/または触覚インジケータ462と、1つまたはそれ以上のプッシュボタン464とを、さらに含み得る。電源468は、例えば、交換可能または再充電可能な直流(DC)バッテリーと適切な電圧調整回路の形態で、マイクロコントローラ450および電力を必要とする
図4の他の構成要素のいずれかに電力を供給する。
【0044】
図5は、例示的な実施形態によるユーザおよびスマートキャップによって実行される操作のフローチャートである。上述したように、スマートキャップ250のプランジャーロッド225およびバレル210への取り付け(ブロック501)により、マイクロスイッチ466が閉じられ、電源468からの電力がスマートキャップ250に供給される。可視インジケータ256/460および可聴インジケータ462の一方または両方は、スマートキャップ250が電源をオンされているが、外部デバイスにまだ接続されていないことを示し得る(ブロック502)。マイクロコントローラ450は、スマートキャップ250の電源のオンが、ブルートゥース(登録商標)または他の接続モジュール458に電力を供給して、外部デバイス350(ブロック503)とペアリングするためのアドバタイズを開始するように構成される。ペアリングが発生しない場合、スマートキャップ250の電源がオフになる(ブロック504)。
【0045】
スマートキャップ250の接続モジュール458と外部デバイス350との間のペアリングが成功した場合、可視インジケータ256/460および可聴インジケータ462の一方または両方は、デバイスが接続されていることを示し得る(ブロック505)。投与量を得るために、すなわち注射器200のバレル210を充填するためにユーザがプランジャーロッド225を引き戻すと、センサ446は、プランジャーロッド225のこの動きを感知し、インジケータ256/460および/または462は、充填表示をユーザに提供する(ブロック506)。次に、ユーザは投与量を注射することができ、センサ446および加速度計456による投与量の注射の検出時に、インジケータは、注射表示をユーザに提供し得る(ブロック507)。タイマー457はまた、注射の時刻をマイクロコントローラ450に送信することができ、センサ446は、注射中のプランジャーロッド225の動きを感知し、この情報をマイクロコントローラ450に送信し得る。タイマー457および/またはセンサからの情報は、メモリ452に記録され、外部デバイス350に送信され得る(ブロック508)。注射中および/または注射後、外部デバイス350は、例えば、注射の時刻、経時的な流量、および総投与量を決定し、その情報を格納するために受信データを処理するようにアプリによって構成することができる(ブロック509)。スマートキャップ250のマイクロコントローラ450または外部デバイス350のいずれかが、投与量の時刻および体積を決定し得、例えば、経時的な投与量のレートを外部デバイス350に格納することができる。注射が完了した後、ユーザはスマートキャップ250をプランジャーロッド225およびシリンジのバレル210から分離し(ブロック510)、スマートキャップ250の電源がオフになる(ブロック511)。
【0046】
インジケータ256/460および462をさらに参照すると、可視インジケータ256/460は、1つまたはそれ以上の状態を示すために1つまたはそれ以上のLEDを含み得る。可聴インジケータは、たとえば、1つまたはそれ以上の状態を示すために、トーンまたは事前に録音された音声などの音を出力し得る。例えば、インジケータ256/460および462の一方または両方は、以下の状態のうちの1つまたはそれ以上を示し得る。(1)スマートキャップ250に電力が供給され、アドバタイズしている(例えば、両方の動作が同時に起こることを可能とし、制限時間が経過した場合、デバイスの電源はオフにされ得る);(2)スマートキャップ250は外部デバイス350とペアリングしている;(3)インスリンまたは他の医薬が注射器200に引き込まれている;(4)注射が進行中である;および/または(5)ユーザが注射部位から針を抜き得る。この最後の表示は、ユーザに追加の利点を提供し得る。上述したように、一般的な注射器のユーザは、処方された投与量を投与し、次に10までカウントするように指示される。これは、非常に主観的で、誤りの可能性が高い投与表示のみを提供する。対照的に、スマートキャップ250は、注射が進行中であることを感知し、注射部位から針を安全に取り外すことができるときにユーザに警告するカウントダウンタイマーを作動させるように構成されている。単一のLEDまたは単一のトーンを使用して、前述の5つの状態すべてなど、複数の状態を示すことができる。たとえば、RGBLEDは、デバイスの状態に対応する異なる色を表示することができ、注射状態に応じて、LEDは点滅し得、および/またはトーンは異なるパターンで鳴り得る。
【0047】
上記したように、例示的な実施形態の一態様によれば、データは、スマートキャップ250のメモリ452に格納され得るだけでなく、外部デバイス350に送信され得る。したがって、注射および感知動作のリアルタイム期間よりも遅い時間に、データは、スマートキャップ250に格納し、外部デバイス350に送信することができる。したがって、データ取り込み時にスマートキャップ250と外部機器350とがペアリングされていなくても、データが失われることはない。
【0048】
本明細書に記載の例示的な実施形態は、説明的な意味でのみ考えられ、限定の目的ではないと理解され得る。各例示的な実施形態内の特徴または態様の説明は、他の例示的な実施形態における他の同様の特徴または態様に利用可能であると見なし得る。
【0049】
例示的な実施形態が図を参照して説明されてきたが、以下の特許請求の範囲によって定義される精神および範囲から逸脱することなく、形態および詳細の様々な変更がその中で行われ得ることが当業者によって理解されるであろう。