(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】マイクロ流体デバイスのための導電性スペーサ
(51)【国際特許分類】
G01N 1/00 20060101AFI20241112BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
G01N1/00 101F
G01N37/00 101
(21)【出願番号】P 2022517835
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(86)【国際出願番号】 EP2020076189
(87)【国際公開番号】W WO2021053196
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-08-21
(32)【優先日】2019-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517144879
【氏名又は名称】シャープ ライフ サイエンス (イーユー) リミテッド
【住所又は居所原語表記】4 Furzeground Way,Stockley Park,Uxbridge,UB11 1EZ,United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】パリー-ジョーンズ、レスリー・アン
(72)【発明者】
【氏名】ウォルトン、エマ・ジェイン
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン、クリストファー・ジェームズ
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-018197(JP,A)
【文献】特開2013-142753(JP,A)
【文献】特開2015-108848(JP,A)
【文献】特開2007-132749(JP,A)
【文献】特開2018-171612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00
G01N 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流体デバイスであって、
第1基板および第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に流体チャンバを画定するために、前記第1基板を前記第2基板から離間するガスケットであって、前記ガスケットの内側エッジ面が前記流体チャンバの側面境界を画定する、ガスケットと、
前記流体チャンバに面する前記第1基板の表面上に設けられた複数の独立してアドレス指定可能なアレイ素子と、
前記流体チャンバに面する前記第2基板の表面上に配置された少なくとも1つの回路素子と、
流体試料を前記流体チャンバに導入するための少なくとも1つのポートと、を備え、
前記ガスケットは、
1つの方向にのみ、または1つの方向に少なくとも優先的に導電性を有するスペーサとしても機能し、前記流体チャンバに面する前記第2基板の表面上に配置された回路素子と、関連する端子との間に導電性経路を提供するように構成される、
マイクロ流体デバイス。
【請求項2】
前記端子が、前記第1基板上に設けられ、前記ガスケットが、少なくとも前記ガスケットの厚さ方向に延在する前記導電性経路を提供する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記ガスケットは、前記ガスケットの平面内にさらに延在する前記導電性経路を提供する、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記端子は、前記ガスケットの前記内側エッジ面から離れた位置で、前記ガスケット上に設けられ、前記ガスケットは、少なくとも前記ガスケットの平面内に延在する導電性経路を提供する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記ガスケットは、
異方性導電性材料のバルクで
形成される、請求項1~4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
複数の回路要素が、前記流体チャンバに面する前記第2基板の前記表面上に設けられ、前記ガスケットが、複数の独立した導電性経路を提供するように構成され、各導電性経路は、前記回路要素のそれぞれの1つと、それぞれの関連する端子との間にある、請求項1~4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記ガスケットは、前記第1基板および前記第2基板を越えて突出する突出部分を備え、前記導電性経路は、前記ガスケットの前記突出部分まで延在する、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
電気的導電層が、前記流体チャンバ層に面する前記第2基板の前記表面上に設けられ、前記回路素子が前記電気的導電層内に画定される、請求項6または7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記ガスケットが、前記ガスケットの前記内側エッジ面の一部に配置された導電性部材と、関連する端子との間に導電性経路をさらに提供する、請求項6、7、または8のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記ガスケットが、前記ガスケットの厚さ方向に電気的に導電性であり、前記厚さ方向と垂直な方向に実質的に導電性でない材料を備える、請求項6、7、または8のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記ガスケットの前記内側エッジ面は、前記少なくとも1つのポートを画定するように成形される、請求項1~10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のデバイスの前記流体チャンバに流体試料を導入することと
、
前記流体試料を、前記第2基板上に配置された前記回路素子または前記回路素子のうちの選択された1つに隣接するように移動するために、前記デバイスの前記第1基板上に設けられた前記アレイ素子を制御することと、
前記回路素子または前記選択された回路素子に関連付けられた前記端子に電圧を印加すること、
を備える、方法。
【請求項13】
前記流体試料をチャージするために、前記電圧を印加することを備える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
1つまたは複数のさらなる流体操作を前記チャージされた流体試料に行うことを備え、任意選択で、前記1つまたは複数のさらなる流体操作を前記チャージされた流体試料に行うことは、少なくとも1つの流体液滴を前記流体試料から分離することを備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
測定信号を前記流体試料に通すために、前記電圧を印加することを備える、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流体デバイスおよびマイクロ流体デバイスを使用する方法に関する。本発明の態様は、液滴がマイクロ流体デバイス内に移送されるとき、または、マイクロ流体デバイス内に移送された後のある時点において、流体の液滴をプリチャージすることに関する。本発明のさらなる態様は、マイクロ流体デバイス内の1つまたは複数の液滴の特性を調べるための導電性回路に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人の同時係属欧州特許出願第18182737.9号、欧州特許出願第18182772.6号、欧州特許出願第18194096.6号および欧州特許出願第18194098.2号は、サイドフィル構造およびマイクロ流体素子用の成形ハウジングを含むマイクロ流体システムの態様を開示しており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
特許文献1は、エレクトロウェッティングディスプレイパネルを駆動するための方法およびそれを実行するためのエレクトロウェッティングディスプレイ装置を開示している。
【0004】
非特許文献1は、「デジタルマイクロ流体のためのプリチャージング方法を使用した液滴輸送」を記載している。この著者らは、液滴と誘電体層の下に埋め込まれた電極との間に「プリチャージ」電圧を印加することによって、液滴が最初にチャージされることを記載している。次いで、2つの隣接する埋め込まれた電極間に「駆動」電圧を印加することによって、液滴が次の電極に駆動される。プリチャージの概念は、液滴に蓄積された電荷の極性によって証明された。液滴が正の電圧でプリチャージされる場合、それは負の電圧で駆動され、逆もまた同様である。Choiらはまた、「この論文において、本発明者らは、「液滴のプリチャージ」方法の使用を通して、単一プレート構造のデジタルマイクロ流体デバイスのための新しい液滴駆動スキームを提案する。」と記載している。Choiらは、その上に導電性回路を有するプレート要素間のギャップの距離を画定するガスケット(導電性ガスケットであり得る)が存在する封入マイクロ流体デバイスを開示していない。
【0005】
図1は、例示的に、模式的斜視図でアクティブマトリクス型の誘電体エレクトロウェッティング(Active Matrix Electrowetting-On-Dielectric;AM-EWOD)デバイス10の詳細を示した概観図である。AM-EWODデバイス10は、下部基板12上に配置された薄膜電子回路14を有する下部基板12を有し、参照電極(図示せず)が上部基板16に組み込まれている。下部基板12および上部基板16は、それらの間にチャネルまたはギャップ(「流体チャンバ」とも呼ばれる。)を画定する。電極構成は逆であってもよく、薄膜電子回路が上部基板に組み込まれ、参照電極が下部基板に組み込まれてもよい。薄膜電子回路14は、アレイ素子電極18を駆動するために配置される。複数のアレイ素子電極118は、X×Y個のアレイ素子を有する電極または素子アレイ120に配置され、ここで、XおよびYは任意の整数であり得る。「プレート要素」という用語は、基板と、その基板上に配置された任意の電極(複数可)および/または任意の薄膜電子回路などの様々なコンポーネントとの組み合わせを示すために使用され得る。
【0006】
液滴122は、任意の極性液体を含んでもよく、典型的には水性であり、スペーサ124によって分離された下部基板14と上部基板16との間に封入されるが、複数の液滴122が存在してもよいことが理解されよう。液滴122は、典型的には、無極性液体の層内に存在してもよく、無極性液体は、下部基板12と上部基板16との間のチャネルを概ね満たすオイル(図示せず)であってもよい。
【0007】
極性材料を含む液滴122、すなわち、AM-EWODデバイスの動作によって操作される液滴は、流体の外部「リザーバ(reservoir)」からAM-EWODチャネルに入力されなければならない。外部リザーバは、例えば、ピペットであってもよく、またはデバイスのハウジングに組み込まれた構造であってもよい。リザーバからの流体がAM-EWODに入ると、一般的には、オイルは置き換えられ、AM-EWODチャネルから除去されてもよい。
【0008】
液滴(122)は、ある種のプロトコルまたはテストを実施するために、自動化された方法で操作されてもよい。テストの場合、液滴がデバイスの内部に留まっている間に、液滴にテストを実施することが可能であり得る。液滴は、電気的および光学的方法を含むいくつかの方法で調査され得る。電気的調査の場合、電気的調査が実行されない場合よりも複雑なデバイス構成が必要となる場合がある。
【0009】
誘電体エレクトロウェッティング(Electrowetting-on-Dielectric:EWOD)デバイスのようなマイクロ流体デバイスは、液滴が、参照電極と完全なまたは密着した電気的接触の状態にあるときに、最も効果的に機能する。多くのデバイスにおいて、参照電極は、EWOD電極を含む他方の(より複雑な)基板に対向する単純な導電性基板によって提供され、これにより、デバイスの流体を物理的に収容し、デバイスのセルギャップを画定するためにも使用される。
【0010】
この参照電極は、最も理想的には、主EWOD基板に信号を供給する駆動電子回路基板と同じ駆動電子回路基板に接続され、その結果、(一般的にそうであるように)AC電圧が使用される場合、参照電極に印加される信号の周波数は、EWOD素子に印加される信号の周波数と一致する。これにより、EWOD基板から必要とされる最大電圧信号を半分にすることができ、EWODデバイスの基板上の駆動電子回路としてTFT電子回路を使用することが可能になる。
【0011】
主駆動電子回路から参照電極への接続は、外部的に(例えば、
図12(a)に概略的に示すように、オーバーラップした基板およびケーブルを使用することによって)達成することができるが、下部基板上に所望の参照電圧のパッドを含め、例えば、はんだペーストまたは他の導電性材料の小塊(a blob)を使用して、デバイスのセルギャップだけ隔てられた対向する(上部)基板上の参照電極への内部接続をすることによって、より適切に達成される。同様の技術は、液晶ディスプレイ(LCD)における電気的接続を提供するために使用される。このような内部接続が、
図12(b)に示されている。このような接続構造は、「トッププレートビア(top-plate via)」と称され得る。
【0012】
いくつかのデバイスでは、上部基板電極が、単一の参照電極よりも複雑であることが望ましいが、その結果、上部基板への複数の独立した電気的接続を行う必要がある。このために、
図12(a)の洗練されていないオーバーハング技術に戻るか、またはいくつかのトッププレートビアを作成するという技術的課題に直面するかのいずれかが必要となる。単純なはんだペースト塊で複数のトッププレートビアを作成することは、少数の電極について可能であり得るが、トッププレートへの必要とされる電気的接続の数が増加するにつれて、直ちに一層困難となる。極端な場合、トッププレートは、EWOD基板と同数またはおそらくそれ以上の別個の電気的接続、例えば数十または数百の電気的接続を必要とし、要求される接続のピッチが小さすぎて、複数のはんだペースト塊を使用することができないことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【非特許文献】
【0014】
【文献】Choi,K.,Im,M.,Choi,JM他、MicrofluidNanofluid (2012) 12:821(https://link.springer.com/article/10.1007/s10404-011-0921-3)
【発明の概要】
【0015】
本発明は、例えば誘電体エレクトロウェッティング(EWOD)デバイス、または、例えばより複雑な回路構成を可能にするアクティブマトリックス型の誘電体エレクトロウェッティング(AMEWOD)デバイスなどのマイクロ流体デバイスを提供する。トップおよびボトムプレート要素を固定されたギャップ距離で保持するために使用されるスペーサまたはガスケットは、また、流体チャンバに面する第2基板の表面上に配置された回路要素と、関連する端子との間の導電性経路を提供する。一態様では、ボトムプレート要素とトッププレート要素との間に導電性ブリッジを形成するガスケットが、トッププレート要素とボトムプレート要素とを固定されたギャップ距離で保持するためのスペーサとして使用される。さらなる実施形態では、複数の導電性回路要素を含むスペーサが提供され、このスペーサは、AMEWODデバイス内のデバイスの流体チャンバ内に存在する液滴のより複雑な電気測定の実施を容易にする。
【0016】
本発明の第1の態様は、マイクロ流体デバイスであって、第1基板および第2基板と、第1基板と第2基板との間に流体チャンバを画定するために第1基板を第2基板から離間させるガスケットであって、ガスケットの内側エッジ面が流体チャンバの側面境界を画定するガスケットと、流体チャンバに面する第1基板の表面上に提供される独立してアドレス指定可能な複数のアレイ要素と、流体チャンバに面する第2基板の表面上に配置される少なくとも1つの回路要素と、流体チャンバ内に流体試料を導入するための少なくとも1つのポートと、を備え、ガスケットは、流体チャンバに面する第2基板の表面上に配置される回路要素と、関連する端子との間に導電性経路を提供するように構成される、マイクロ流体デバイスを提供する。
【0017】
一実施形態では、端子は第1基板上に設けられ、ガスケットは、少なくともガスケットの厚さ方向に延在する導電性経路を提供する。
【0018】
一実施形態では、ガスケットは、ガスケットの平面内にさらに延在する導電性経路を提供する。
【0019】
一実施形態では、端子は、ガスケット上の、ガスケットの内側エッジ面から離れた位置に設けられ、ガスケットは、少なくともガスケットの平面内に延在する導電性経路を提供する。
【0020】
一実施形態では、ガスケットは、バルクで(in bulk)電気的に導電性である。
【0021】
一実施形態では、複数の回路要素は、流体チャンバに面する第2基板の表面上に設けられ、ガスケットは、複数の独立した導電性経路を提供するように構成され、各導電性経路は、回路要素のそれぞれ1つと、それぞれの関連する端子との間にある。
【0022】
ある実施形態では、ガスケットは、第1基板および第2基板を越えて突出する突出部分を備え、導電性経路は、ガスケットの突出部分に延在する。
【0023】
一実施形態では、電気的導電層が、流体チャンバ層に面する第2基板の表面上に設けられ、回路素子は電気的導電層内に画定される。
【0024】
一実施形態では、ガスケットはさらに、ガスケットの内側エッジ面の一部に配置された導電性部材と、関連する端子との間に導電性経路を提供する。
【0025】
一実施形態では、ガスケットは、異方性電気的導電率(an anisotropic electrical conductivity)を有する材料を含み、任意選択的に、ガスケットは、ガスケットの厚さ方向において電気的に導電性であり、厚さ方向に垂直な方向において実質的に導電性でない材料を含む(「厚さ方向」とは、以下で言及されるように、第1基板と第2基板との間の分離を画定する厚さ「h」を意味する)。
【0026】
一実施形態では、ガスケットの内側エッジ面は、少なくとも1つのポートを画定するように成形される。
【0027】
本発明の別の態様は、請求項1-11のいずれか一項に記載のデバイスの流体チャンバ内に流体試料を導入することと、第2基板上に配置された回路素子または回路素子のうちの選択された1つに隣接するように流体試料を移動させるために、デバイスの第1基板上に設けられたアレイ素子を制御することと、および、回路素子または選択された回路素子に関連する端子に電圧を印加することと、を含む方法を提供する。
【0028】
一実施形態では、方法は、電圧を印加し、それによって流体試料をチャージすることを備える。
【0029】
一実施形態では、方法は、チャージされた流体試料に対して1つまたは複数のさらなる流体操作を実施することを備える。チャージされた流体試料に対して1つまたは複数のさらなる流体操作を実施することは、例えば、流体試料から少なくとも1つの流体液滴を分離することを備え得る。
【0030】
一実施形態では、方法は、電圧を印加し、それによって測定信号を流体試料に通すことを備える。
【0031】
実施形態の説明においてさらに詳細に述べられるように、本発明の態様は、多くの利点を提供することができる。いくつかの実施形態では、(スペーサとしても機能する)ガスケットは、ガスケット内のある点において、ガスケットの導電率があらゆる方向において同じ値を有するという点で、等方的な(isotropic)ガスケット/スペーサであってもよい。この実施形態は、マイクロ流体デバイスにローディングした直後に液滴をプリチャージするために、スペーサを使用することを可能にし、したがって、液滴のより良好な分注(dispensing)を得ることができる。デバイスのアレイ要素に対するスペーサの位置を検出することも可能にし、したがって、デバイスが正しく製造されていることをチェックすることができる。
【0032】
他の実施形態では、ガスケット/スペーサは異方性スペーサである。一例では、スペーサは、例えば、(厚いACFフィルムを用いて潜在的に達成され得る)z導電性スペーサ(z-conducting spacer)のように、1つの方向にのみ、または1つの方向に少なくとも優先的に導電性を有するスペーサであってもよく、または、FPC製造方法を用いて作製されたガスケットのように、より複雑な回路であってもよい。等方性ガスケット/スペーサについて説明した利点は、異方性スペーサにも当てはまるが、異方性はさらなる利点を提供する。例えば、スペーサへのマルチポイント電気接続を提供することができ、トッププレート抵抗チェックを可能にする(これは、完全に等方的なスペーサでは行うことができない。なぜならば、スペーサを通る電流経路が存在し、そのような測定を不可能にするからである。なお、個々に等方的に導電性を有するが互いに絶縁された2つ以上の部分を有するスペーサを使用することで、そのような測定ができるかもしれない。)。さらなる利点は、トッププレート基板を介して、液滴への/からの複数対のセンシング信号を伝達することが可能であることである。
【0033】
さらなる実施形態では、ガスケット/スペーサは、異方性スペーサであり、センシング目的のために(すなわち、マイクロ流体デバイス内の液滴の位置および/または特性を検知するために)使用される。液滴への/からの信号は、トッププレート電極を介してではなく、スペーサを介して直接実行することができ、それによって、トッププレート上に適切な回路またはトラックを設ける必要がなくなる。
【0034】
さらなる実施形態では、ガスケット/スペーサはシールドスペーサ(shielding spacer)である。スペーサは、x-y平面内にパターニングを有さないが、デバイス内の液滴をシールドするために、マイクロ流体デバイスのエッジの周りに導電性シールドを提供する。これは、例えば、テープ、導電層、テープなどで形成された多層スペーサを使用して行われ得る。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、従来技術の誘電体エレクトロウェッティングデバイスを示す。
【
図2a-2g】
図2a-
図2gは、流体リザーバからの液滴のローディングおよびその後の液滴の分注を表す、本発明の一態様の上からの平面図を示し、試料は、上部基板のエッジに沿ってローディングされる。
【
図3a-3e】
図3a-
図3eは、流体リザーバからの液滴のローディングおよびその後の液滴の分注を表す、本発明の一態様の上からの平面図を示し、試料は、上部基板の表面の開口部を通してローディングされる。
【
図4a-4f】
図4a-
図4fは、本発明の一態様の上からの平面図を示し、追加の導電性回路が、上部基板上に設けられ、上部基板を通って下部基板上の対応する電極パッドまでトラックされる。
【
図5a-5e】
図5a-
図5eは、
図4に示されたものと同様の本発明の一態様の上からの平面図を示しているが、トラックが、上部基板を通る代わりに、デバイスのガスケット内で行われることが異なっている。
【
図6a-6b】
図6aおよび
図6bは、本発明のさらなる一態様の上からの平面図を示し、ガスケット内の導電性経路は、下部基板上の電極パッドに導かれるのではなく、デバイスから出て外部コネクタへと直接通じる。
【
図7a-7b】
図7a-
図7bは、本発明のさらなる一態様の上からの平面図を示し、異方性ガスケットが下部および上部基板の両方への電気的接触を提供する。
【
図8a-8d】
図8a-
図8dは、本発明のさらなる一態様の上からの平面図を示し、パターン化されたトップ基板は、デバイスのエッジから張り出し、そして電気的接触は、フレキシブルプリント回路要素を介して、トップ基板と機器との間でなされる。
【
図9a-9b】
図9a-
図9bは、本発明のさらなる一態様の上からの平面図を示し、液滴への/からの電気信号が、上部基板電極を介してではなく、ガスケットを介して直接伝送されるため、上部基板上に電極パターンが存在しない。
【
図10a】
図10aは、本発明のさらなる一態様の上からの平面図を示し、ガスケットは多層であり、デバイス内での液滴のプリチャージ、または、下部基板上の回路からの上部基板電極の電気的シールドのいずれか、あるいは両方を可能にする。
【
図10d】
図10dは、本発明のさらなる一態様の上からの平面図を示し、ガスケットは多層であり、デバイス内での液滴のプリチャージ、または、下部基板上の回路からの上部基板電極の電気的シールドのいずれか、あるいは両方を可能にする。
【
図11a-11b】
図11aおよび
図11bは、本発明のさらなる実施形態によるEWODデバイスの概略断面図である。
【
図12a-12b】
図12aおよび12bは、マイクロ流体デバイスの上部基板への電気接続を作製するための2つの公知の技術の概略図である。
【
図13】
図13は、本発明によるEWODデバイスの別の適用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図2a-
図2gは、本発明の一態様の上からの平面図を表し、等方性ガスケットが、AMEWODデバイスの上部プレートと下部プレートとの間にギャップを形成するために使用される。
図2aは、本発明の一態様による例示的なAMEWODデバイス(10)の上からの平面図を示し、液体試料は、上部基板のエッジに沿ってデバイスに導入される。AMEWODデバイス(10)は、下部基板(12)、ガスケット(14)、上部基板(16)、ポート(18、28)、エッジコネクタ(20)およびコンタクトパッド(22)を備える。明確にするために、
図2bはガスケット(14)および上部基板(16)のみを示し、
図2cは下部基板のみを示す。
図2cの線23は、デバイスのアクティブ領域の境界を示す。
【0037】
EWODデバイスの流体チャンバは、ガスケットの内側の開口またはボアに対応する。流体チャンバの境界は、下部基板、上部基板、およびガスケットの内側エッジ面によって画定される。
【0038】
エッジコネクタ(20)は、複数の接点(24)を備える。典型的には、AMEWODデバイス(10)は、液体試料(典型的には極性液体試料)を適用するための複数のポート(18)と、充填流体(図示せず)を適用するための単一のポート(28)とを備える。充填流体は、典型的には非極性流体であり、その非限定的な例としては、シリコーンオイル、フルオロシリコーンオイル、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、ペンタデカン、ヘキサデカンを含み、これらは一般にオイルと称され得る。
図2の態様によれば、ポート(18、28)は、ガスケット(14)のエッジプロファイル構成及び上部基板(16)のエッジ(16a)によって画定される。したがって、ポート(18、28)は、下部基板(12)と上部基板(16)との間に画定されたキャビティ(26)内に液体試料をロードすることを可能にし、そのギャップの高さは、ガスケット(14)の厚さによって画定される。したがって、液体試料が導入される開口は、ガスケットの内側エッジ面14aと、上部基板(16)の外側エッジ16aによって画定される。
【0039】
図2a-
図2cの実施形態では、
図2bに示すように、ガスケット14の内側エッジ面14aは、内側に(すなわち、流体チャンバの内部の方向に)向けられた突出部14bを含むエッジプロファイル構成を備え、AM-EWODデバイスが組み立てられたときに、突出部14bは上部基板16と重なり、一方、2つの隣接する突出部の間のガスケットの領域は上部基板16と重ならず、それによって、流体入力ポート18、28が形成される(あるいは、ガスケットは、内側エッジ14a内に画定された窪み14cを有するとして理解することができる。)。ガスケットの内側エッジ14aおよび上部基板のエッジ16aは、
図2aまたは
図2bに示される特定の配置に限定されない。ガスケットの内側エッジ14aおよび基板のエッジの少なくとも1つが直線ではなく、その結果、上部基板16と重ならないガスケットの少なくとも1つの領域が存在し、それによってポート18を形成しているのであれば、他の配置が使用されてもよい。
図2bは、流体チャンバの略矩形の外周を画定するガスケットの内側エッジ面14aを有する流体チャンバを、略矩形として示しているが、本発明は、原理的には、矩形の流体チャンバに限定されない。
【0040】
下部基板(12)、ガスケット(14)の内側エッジ面14a、および上部基板(16)は、それらの間にキャビティ(26)を画定し、このキャビティは、ガスケット(14)の厚さによって決定される高さh、ならびに内側エッジ長寸法によって画定される幅wおよび長さlを有する。ここで、高さhは、好ましくは、少なくとも約25μm、少なくとも約50μm、少なくとも約75μm、少なくとも約100μm、少なくとも約150μm、少なくとも約200μm、少なくとも約250μm、少なくとも約300μm、少なくとも約400μm、少なくとも約500μm、少なくとも約600μm、少なくとも約700μm、少なくとも約800μm、少なくとも約900μm、少なくとも約1000μmであり、幅wは、好ましくは、少なくとも約5mm、少なくとも約7.5mm、少なくとも約10mm、少なくとも約12.5mm、少なくとも約15mm、少なくとも約17.5mm、少なくとも約20mm、少なくとも約22.5mm、少なくとも約25mm、少なくとも約27.5mm、少なくとも約30mm、少なくとも約32.5mm、少なくとも約35mm、少なくとも約37.5mm、少なくとも約40mm、少なくとも約50mm、少なくとも約55mm、少なくとも約60mm、少なくとも約65mm、少なくとも約70mm、少なくとも約75mm、少なくとも約80mm、少なくとも約85mm、少なくとも約90mm、少なくとも約95mm、少なくとも約100mm、少なくとも約125mm、少なくとも約150mm、少なくとも約175mm、少なくとも約200mmである。長さlは、好ましくは、少なくとも約10mm、少なくとも約15mm、少なくとも約20μm、少なくとも約25mm、少なくとも約30mm、少なくとも約35mm、少なくとも約40mm、少なくとも約45mm、少なくとも約50mm、少なくとも約55mm、少なくとも約60mm、少なくとも約65mm、少なくとも約70mm、少なくとも約75mm、少なくとも約80mm、少なくとも約85mm、少なくとも約90mm、少なくとも約95mm、少なくとも約100mm、少なくとも約125mm、少なくとも約150mm、少なくとも約175mm、少なくとも約200mmである。使用にあたり、極性液体試料がデバイスに適用される前は、一般的には、キャビティ(26)はオイルで満たされる。
【0041】
この実施形態では、ガスケット14は、等方性で電気的に導電性のガスケット(14)である。ガスケットは、導電性材料から形成され、導電性材料の例としては、メタル、カーボン、またはメタルもしくはカーボン粒子を含む材料を含む。一般に、上部基板と下部基板とを電気的に接触させるために、ガスケット材料のバルク(bulk)をその表面に接続するための何らかの媒体が存在しなければならない。例えば、ガスケットは、SEM測定用の試料を実装するために使用されるような、テープの両面上に導電性接着剤を含む両面カーボンテープであってもよい。あるいは、ガスケットは、銀含有塗料または接着剤のような導電性接着剤またはペーストを介して上部および下部基板に電気的に接触する、非接着性の金属層から構成されてもよい。ガスケットは、電流がその厚さ全体にわたって自由に流れることができるように、一般的には、その構造組成に関して均一であり、特にその導電性成分の分布に関して均一である。等方性ガスケット(14)は、コンタクトパッド(22)と上部基板(16)上の少なくとも1つの導電性要素(図示せず)との間に導電性経路を形成する。
【0042】
下部基板(12)は、誘電体絶縁層によって被覆され、少なくとも1つの導電性要素が配置された第1の主表面と、疎水性層(図示せず)とを有する。少なくとも1つの導電性要素は、エッジコネクタ(20)の少なくとも1つの接点(24)に接続される(AM-EWODデバイスの場合、関連する要素電極をそれぞれ有する複数のアレイ要素は、典型的には下部基板上に設けられる。各アレイ要素は、エッジコネクタ20の1つまたは複数の接点に接続される。)。誘電体層及び疎水性層によって覆われていないコンタクトパッド(22)は、例えばPCB(プリント回路板)コネクタのようなエッジコネクタ(20)の接点(24)に、導電的に接続される。上部基板(16)は、少なくとも1つの導電性要素が配置される主表面を有し、疎水性材料の層(図示せず)によって覆われている。上部基板(16)上の少なくとも1つの導電性要素は、等方性ガスケット(14)と接触する位置では疎水性層を有していない。したがって、等方性ガスケット(14)は、コンタクトパッド(22)を介して、下部基板上のエッジコネクタ20の接点(24)と、上部基板(16)上の少なくとも1つの導電性要素との間で、導電性経路を形成する(
図2aに示すように、ガスケット14は、エッジコネクタ24の他のコネクタ20のいずれにも重ならない。)。導電性要素を有する下部基板(12)及び上部基板(16)のそれぞれの表面は、対向配置で保持され、ギャップ距離は、等方性ガスケット(14)によって画定される。これは、
図2aのデバイスの部分断面図である
図2dに示されている(誘電体層、絶縁層、及び接点24、エッジコネクタ20は、説明を容易にするために
図2dから省略されている)。
【0043】
例えば生理食塩水のような極性液体などの液体の液滴がキャビティ(26)内に存在する場合、液滴が、下部基板(12)および上部基板(16)上のそれぞれの導電性素子間にブリッジを形成すると、容量結合回路が形成される。したがって、このような液滴は、例えば米国特許出願公開第2018/0284423号(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、エレクトロウェッティングにより制御することができる。
図2e-
図2gは、
図2aのAM-EWODデバイスを示しており、予めポート(28)を介してオイルで少なくとも部分的に充填された流体チャンバ内26に、AMEWODデバイス(10)のポート(18または類似のもの)を通して液体試料(30)を導入した後の図である。液体試料(30)は、例えば、ピペットまたはシリンジ(図示せず)を使用して、ポート(18)を通して導入することができる。最初に(
図2e)、ポート(18)を通して液体試料(30)を適用した後、液体試料(30)は、エレクトロウェッティングによってキャビティ(26)内に移送され得る。マイクロプロセッサ(図示せず)は、スクリプトを用いて、エレクトロウェッティングによって極性液体の試料の移動を制御するように設計されたプロトコルを動作させるように構成され得る。
【0044】
液体試料(30)がキャビティ(26)に入ると、液体試料(30)はエレクトロウェッティングによって移動し、キャビティ(26)内で露出している等方性ガスケット(14)のエッジ要素(32)と接触することができる(
図2f)。液体試料(30)が、等方性ガスケット(14)のエッジ要素(32)と接触するとき、液体試料(30)にチャージ電圧を印加することができる。チャージ電圧は、下部基板(12)の導電性要素(例えば、アレイ要素電極)と等方性ガスケット(14)のエッジ要素(32)との間に印加することができる。液体試料(30)が、エッジ要素(32)と接触した後にチャージされると、液体試料(30)は、エレクトロウェッティングによってキャビティ(26)内の別の位置に移動することができる。参照により本明細書に組み込まれる、2017年7月27日に出願された米国特許出願第15/661609号を有する本出願人の同時係属出願は、流体リザーバをプリチャージするためのプリチャージ構造を有する誘電体エレクトロウェッティング(EWOD)デバイスを記載している。
【0045】
図2gは、エッジ要素(32)と接触して液体試料(30)のチャージが行われた後、液体試料(30)から個々の液滴(34)を分注するところを示している。エッジ要素(32)との接触を通じた液体試料(30)のチャージは、液体試料(30)と、キャビティ(26)を充填するために使用されるオイルとの間の界面における表面張力特性を変更することができる。スクリプトによって構成されたマイクロプロセッサ(図示せず)により、エレクトロウェッティングの「分注」シーケンスがAMEWODデバイス(10)に適用されるとき、液滴(34)が液体試料(30)から分離されるときの効率は、エッジ要素(32)との接触時にチャージされていない液体試料と比較して、改善される。液体試料をチャージすることの有益な効果は、液体試料の組成に基づいて変化し得る。
【0046】
変形例(図示せず)では、
図2bに示すガスケットは、デバイスの周囲に沿って電気的に連続ではなく、(例えば、非導電性接着剤を使用して)互いに絶縁された2つの導電性部分で構成されており、各部分は、下部基板上のトッププレートビア構造22のうちの1つに取り付けられている。この実施形態では、エッジコネクタから、1つのビアを通り、共通電極を通り、および、他方のビア22を通してエッジコネクタの別の端子に戻るような導通試験を遠隔で実行することも可能であり、結果として、トッププレートへの電気的接続を試験することができる。
【0047】
図3a-
図3eは、本発明のさらなる態様を示しており、液体試料は、上部基板の表面の1つまたは複数の開口部を通してAMEWODデバイス(10)に適用される。そのような態様では、1つまたは複数の開口部18は、上部基板(16)内に提供され、等方性ガスケット(14)の内周に沿ったエッジプロファイル構成に合わせて整列する。
図3aは、この実施形態によるデバイスの平面図であり、
図3bは、説明を容易にするために上部基板を別個に示す。この実施形態のガスケット14および下部基板は、それぞれ
図2bおよび
図2cのガスケット14および下部基板に概ね対応する。
【0048】
したがって、液体試料は、(
図2に示される態様のポート(18、28)と比較すると)上部基板(16)の開口部を通って、AMEWODデバイス(10)に入ることができる。
図2a-
図2cでは、上部基板(16)は、等方性ガスケット(14)の長さと幅よりも小さい長さと幅を有し、上部基板(16)のエッジは、キャビティ(26)を画定するガスケットの内側エッジの付近で、等方性ガスケット(14)のエッジプロファイル構成を二分するように構成されている。
図3に示される発明の態様によれば、上部基板(16)は、等方性ガスケット(14)の長さと幅に等しい、あるいは、実質的に等しい長さと幅を有する。
【0049】
図3aは、液体試料を導入する前の、本発明のさらなる態様によるAMEWODデバイス(10)の上からの平面図を示す。ポート(18、28)は、上部基板(16)の周囲に沿って配置され、それらは、等方性ガスケット(14)の隣接するエッジプロファイル構成の間にある領域と一致する。ポート(18、28)は、典型的には、基板に穴をあけることによって提供される。上部基板(16)に適用された疎水性コーティング(図示せず)は、組み立てられたデバイスにおいて、ガスケット(14)に相当する少なくとも1つの領域において除去され、それによって、(エッジコネクタのそれぞれの端子と接続されている)下部基板上の接点(22)から、等方性ガスケット(14)と接触している上部基板(16)の表面上の少なくとも1つの導電性要素までの導電性経路を形成する。
【0050】
図3c-
図3eは、上部基板(16)の表面の開口(18または類似のもの)を通ってAMEWODデバイス(10)に導入される液滴(30)の経過を示す。液滴(30)は、ポート(18)を通して適用されると、最初にEWODによってキャビティ(26)内に移動され(
図3c)、その後、液滴(30)は、等方性ガスケット(14)のエッジ要素(32)に接触するように移動される(
図3d)。エッジ要素(32)と接触している間に、液滴をチャージするために、電圧が液滴(30)に印加される。エッジ要素(32)との接触に続いて、液滴(30)がチャージされると、液滴(30)は、EWODによってキャビティ(26)内のさらなる位置に再び移動する(
図3e)。スクリプト(図示せず)を動作させるように構成されたマイクロプロセッサは、液滴(34)を液体試料(30)から分注させる。次いで、液滴(34)は、その意図された用途に従って、AMEWODデバイス(10)内のさらなる反応プロセスまたはスキームのために使用され得る。
【0051】
図2および
図3の実施形態では、ガスケット14は、バルク導電性材料から作製されているという点で「等方性」であり、したがって、ガスケット内のある点における導電率は、あらゆる方向において同じ値または実質的に同じ値を有する(典型的には、ガスケット全体にわたって均一または概ね均一であってもよい)。(材料の「バルク」特性は、「示強性(intensive property)」とも呼ばれ、材料の局所的な物理的特性であり、その値は、測定される材料の量に依存しない。)。他の実施形態では、ガスケットは等方性ではなく、ガスケットの導電率は、ある意味で異方性であり、例えば、導電率は、絶縁領域によって分離された独立した導電性経路を画定するために、ガスケットの体積にわたって変化してもよく、または、ガスケットは、一方向のみ、または、一方向に少なくとも優先的に導電する材料から作製されてもよい。
【0052】
図11aは、z方向(
図11aにおける垂直方向)に電導するが、x方向およびy方向に沿って電導しない材料で作製されたガスケットを有するマイクロ流体デバイスの断面図であり、これは「z電導スペーサ(z-conducting spacer)」として知られている。上部基板上には複数の電極があり、これらは、(
図11aでは「EWOD基板」として記載されている)下部基板上の対応する電極セットによってアドレス指定され、下部基板上のコネクタ(例えば、
図2および
図3のものと同様のエッジコネクタなど)のそれぞれの端子に接続される。ガスケットは、z方向に垂直な方向に最小の導電率を有し、z方向では複数の電極を短絡させる。したがって、ガスケットは、上部基板上の電極を下部基板上の対応する電極に電気的に接続するビア領域を提供し、一方、上部基板上の電極が下部基板上の他の電極から絶縁されることを確実にする。そのような異方性ガスケットは、異方性導電性フィルム(ACF)またはペースト(ACP)自体を使用するか(したがってガスケットは異方性導電性材料のバルクで形成される)、または、一方向のみの導電を可能にするようなガスケットの構造的特徴に併せて異方性導電性フィルム(ACF)またはペースト(ACP)を使用することによって、達成することができる。異方性ガスケットを作製する別の方法は、FPC(フラットプリント回路)を作製するために使用される従来の方法によることができ、この場合、ビアは銅から作製され、その間の絶縁部分はKapton(商標)から作製される。
【0053】
図11bは、2つの対向する基板上の電極の「x-y」位置が一致していない実施形態を示し、したがって、ガスケットは、z方向(ガスケットの厚さ方向)に延在するとともに、一方の基板上の電極と他方の基板上の電極との間に電気的接続を提供するためにガスケットの平面(x-y平面)内に延在する、導電性経路の「x-y」接続ルーティングを提供するために、より複雑な設計を必要とする。これは、例えば、下部基板上の電極から、上部基板上の対応する電極の下方にある下部基板上の点への電気的接続を提供する、FPCなどのパターン化された導電層を提供することによって達成することができる。上部基板上の電極への電気的接続は、ガスケットに設けられたビアによって、例えば、z方向に電導するが、x方向およびy方向には電導しない材料で形成されたガスケットを使用することによって、または、本明細書に記載された他の技法によって、完成される。
【0054】
本発明のさらに別の態様では、
図4a-
図4fにおいて、AMEWODデバイス(10)が、上から見た平面図で示されている。
図4aは、
図3に示されている態様と同様のAMEWODデバイス(10)を概略的に示しているが、いくつかの修正が加えられている。
図4bは、
図4aに示す破線に沿った
図4aのデバイスの断面図である。
図4aに示されるように、上部基板(16)は、等方性ガスケット(14)の外側寸法まで延在する。
【0055】
図4cには、上部基板(16)が、別個に図示されている。
図4aおよび
図4cに示されるように、上部基板は電極対(36, 38)の配列を備えており、電極対(36, 38)は、上部基板のエッジ付近に設けられていてもよい。
図4bに示されるように、導電層41は、上部基板16の表面上に置かれてもよく、この導電層は、電極対を画定するようにパターニングされてもよい。導電層の残りの部分は、共通電極などの連続的な導電性要素を提供するために使用されてもよい。
図4aおよび
図4cに示すように、電極対の電極は、ガスケットを越えて流体チャンバに飛び出ている。
図4aおよび
図4cは、流体チャンバの境界に対してほぼ垂直に延在する電極対の電極を示しているが、実施形態はこれに限定されない。電極対の電極は、上部基板のエッジに延在するおのおのの導電性トラックを備える(あるいは、おのおのの導電性トラックに接続される)。
図4aの図では、簡略化のために、2つの電極対(36、38)が示されているが、より少ない、またはより多い電極対(36、38)が提供されてもよいことが理解されるであろう。例えば、一対の電極は、ガスケット(14)の各エッジプロファイル要素(32)と対応するように提供されてもよい。複数の電極対(36、38)は、単一のエッジプロファイル要素(32)上に設けられてもよく、または順列(in permutations)で設けられてもよく、例えば、1つのエッジプロファイル要素が単一の電極対を含んでもよく、1つのエッジプロファイル要素が2つ以上の電極対を含んでもよく、さらに別のエッジプロファイル要素が電極対を有さなくてもよいことが、さらに理解されよう。さらに別の態様では、複数の個別の正端子の対として作用する、負端子などの共通端子が実装されてもよい。
【0056】
図4dに示すように、ガスケットには導電性部分22'が設けられており、この導電性部分22'は、デバイスが組み立てられたときに、上部基板上の導電性トラックのそれぞれと接触するとともに、下部基板上の対応する導電性トラックとも接触する(
図4eに別個に示されている)。したがって、電極対(36、38)の電極は、制御機器(図示せず)への接続のために、それぞれの導電性ブリッジ(22')を介して、下部基板(12)のエッジ上の延長エッジコネクタ(20')の接点に電気的に結合することができる。キャビティ(26)に近接する上部基板(16)は、本明細書で上述したような連続的な導電性要素を備えてもよいが、電極対の電極が、互いに絶縁され、かつ、連続的な導電性要素から電気的に絶縁されるように、電極対(36、38)の周囲の領域は、絶縁領域(40)を備え得る。
それぞれの各電極対(36、38)は、i)液滴の電流測定または電位差測定などの電気化学測定を行うこと、ii)液滴にチャージ電圧を印加すること、iii)液滴のインピーダンス特性を決定すること、を含む、様々な目的のために使用されることができるが、これらに限定されない。
図4fは、電極対(36、38)のそれぞれの各電極における液滴(42)の存在を示す。各液滴(42)の特性は、適切な測定プロセスによって適宜に決定されてもよいし、または、チャージ電圧がそのような液滴に印加されてもよい。
【0057】
Schlicht他は、「マイクロ流体受動ネットワークにおける液滴-界面-二重層の分析評価(Droplet-interface-bilayer assays in microfluidic passive networks)」(Scientific Reports, (2015) v5 pp9951)を記載している。本発明のさらなる態様では、液滴(42)のそれぞれの対が、接触し、その後に安定な液滴界面二重層(DIBs)を形成できるように、EWODによって操作されてもよい。次いで、そのような液滴の対は、EWODによって移動し、それぞれの各電極対(36、38)に接触することができる。それぞれの液滴がそれぞれの電極と接触し、DIBを形成した一対の液滴(42)が電極対(42)と接触した状態で保持されると、DIB界面を横切って回路が形成される。そして、電極対(36、38)は、DIB界面を横切って1つの液滴から別の液滴への溶質の移送をモニタするために使用され、固定電圧が電極対(36、38)の間に印加されたときに流れる電流の変化として検出される。
【0058】
代替実施形態では、上部基板上の(液滴と接触する)測定パッドと下部基板上の対応するパッドとの間において必要な導電性の電極経路は、(
図4のように)上部基板と下部基板との間で垂直に位置合わせされたパッドへの上部基板内のトラックとは対照的に、ガスケット内に設けられた導電性トラックを介して作製される。この実施形態は、
図5a-
図5eに図示されている。
図5aは、この実施形態によるEWODデバイスの上からの平面図であり、
図2に関して説明したように、上部基板(16)のエッジが、キャビティ(26)を画定するガスケットの内側エッジに沿って等方性ガスケット(14)のエッジプロファイル構成を二分するように、上部基板(16)が、等方性ガスケット(14)よりも小さい長さと幅の寸法を備える場合を示す。したがって、ポート(18)は、上部基板(16)のエッジおよび等方性ガスケット(14)のエッジ構造によって画定される。
【0059】
図5aに示される電極対(36、38)は、
図4に示される態様とは異なるように構成される。上部基板の平面図である
図5cに示されるように、上部基板(16)上に露出し、キャビティ(26)に延びる各電極対(36、38)の部分は、上部基板の平面図である
図5cに示されるように、それらが下部基板(12)に面する上部基板(16)の表面上に配置された導電層内に画定される限りにおいて、
図4のものと同様に作製される。しかしながら、ガスケットの平面図である
図5dに示されるように、電極対トラック(36'、38')は、ガスケット(14)内/上に設けられる。デバイスがアセンブルされるとき、ガスケット内/上に設けられた電極トラックは、上部基板(16)上の電極対(36、38)と電気的に接触し、導電性ブリッジ(22')を介して、下部基板(12)上の延長エッジコネクタ(20')の端子に電気的に接触する(必要であれば、それぞれの部分は互いに直接結合されてもよいが、それらの間に導電性経路が存在する限り、互いに物理的に結合される必要はない。)。下部基板は、
図5eに平面図で示されている(
図5eの内側の長方形は流体チャンバの境界を示す)。
図5bは、
図5aに示された破線に沿ったEWODデバイスの部分断面図であり、
図5bには、ガスケット内/上に設けられた電極トラックと、上部基板(16)上の電極対(36、38)と、下部基板上の延長エッジコネクタ(20')の端子との間の電気的接続も示されている。
【0060】
これまで説明してきた構造では、目標は、上部基板上の1つまたは複数の電極を下部基板上の対応する端子に接続することであり、これは、異なるタイプのガスケットを介して達成された。これを行う1つの理由は、単一の電気的接続が、デバイスを駆動する機器内の電子基板と下部基板との間に作製され、上部基板上のコンポーネントへの電気的接続は、下部基板上の端子からガスケットを介して行われ、機器への接続のための端子を上部基板上に設ける必要がないためである。この電気的接続は、フレキシブルプリント回路(FPC)コネクタ又はプリント回路板(PCB)コネクタを含む様々な方法で行うことができる。エッジコネクタ(20)内の接点(24)の数が非常に多く、それぞれの各接点(24)の幅及びそれらの間のスペースが狭くなりすぎる場合には、それぞれの各接点(24)と機器内の受信コネクタ(図示せず)との間の良好な電気的接触が損なわれることがある。そのような場合、1つまたは複数の追加のエッジコネクタ(図示せず)が、下部基板(12)の別のエッジ上(例えば、長いエッジ上)に提供され得る。
【0061】
また、上部基板上のコンポーネントへの電気的接続は、異方性ガスケット(14’)内の導電性経路を通して、直接になされてもよい。上部基板(16)から導電性パッド(22'、40)を介して下部基板(12)上に、そして、下部基板上のエッジコネクタ(20)までの回路を通すのではなく、代わりに、エッジコネクタ(図示せず)をガスケット(14')の外側エッジに沿って設けてもよい。ガスケット(14')から上部基板(16)への電気的接続を直接形成することの潜在的な利点は、下部基板(12)の外形寸法を最小限に抑えることができることである。さらに、基板層間の導電性経路破損のおそれが低減される。その場合、例えば、この実施形態によるEWODデバイスの平面図である
図6a、および、
図6aのEWODデバイスのガスケットの平面図である
図6bに示されるように、かなり単純なガスケットを使用することができる。EWODデバイスの上部基板は
図5cの上部基板に対応し、共通電極および1つまたは複数の電極対36、38が設けられる。ガスケットには導電性経路25が設けられており、デバイスが組み立てられると、共通電極および1つまたは複数の電極対36、38は、ガスケット内/上のそれぞれの導電性経路と電気的に接触する。ここで示されるガスケットは、主要部分について非導電性であってもよいが、例えば、1つの表面のみにプリント回路を有し、「z」方向に局所的な電気伝導度(conductance)を生成する「ビア」構造がなくてもよい。
【0062】
図6aのデバイスは、デバイスと機器との間の電気的インターフェースを提供するために、2つの独立したエッジコネクタ、または2つの部分を有するエッジコネクタを必要とし、一方のコネクタ(または部分)は、上部基板上に提供されるコンポーネントへの接続を行い、他方のコネクタ(または部分)は、下部基板上に提供される任意のコンポーネントへの電気的接続を行う。これは
図6aの線20aによって示されており、エッジコネクタ20に2つの部分があることを示している。一方の部分は、下部基板上のみのコンポーネントへの接続を行い、他方の部分は、導電性トラック36'および38'への接続を含む上部基板のみへの接続を行う(この実施形態では、下部基板は、一般に従来のもの、例えば、TFT下部基板であってもよい)。
【0063】
代替的な配置は、
図7aおよび
図7bに示されるように、下部基板および上部基板の両方への電気的接続を提供する単一のFPCコネクタを有しており、
図7aは、この実施形態によるEWODデバイスの平面図であり、
図7bは、ガスケット14'の平面図である。(上部基板からのトラックのみが示されており、下部基板上の導電性トラックは、エッジコネクタ20を除いて示されていない。)。ここで、異方性ガスケット14'は、下部基板(12)の境界を越えて延在する。このような異方性ガスケット(14')は、両側にプリント回路を有する絶縁層からなってもよい(それぞれ、一方の側のプリント回路は、下部基板への/からの信号を提供し、他方の側のプリント回路は、上部基板への/からの信号を提供する)。異方性ガスケット(14')の厚さは、エレクトロウェッティングデバイスのキャビティ(26)の高さを決定する。あるいは、外部電気接続は、エッジコネクタ20に引き戻されるのではなく、導電性トラック36'、38'を介してトッププレート電極36、38に直接行われてもよい。
【0064】
図8aは、本発明のさらなる実施形態によるEWODデバイスを示しており、ここでは、上部基板(16')(
図8bに示される)は、下部基板(12)の長いエッジを覆う、延長された長いエッジプロファイルを含む。電極対(36、38)は、エッチングされて、キャビティ(26)に面する上部基板(16)の主表面上に設けられた導電層(ITO層など)となっている。
図8aの場合には、上部基板(16')を下部基板(12)から分離するために使用されるガスケットは、それぞれの基板間に電気的ブリッジを形成しない。むしろ、FPCまたはPCBコネクタは、機器への接続のためにそれぞれの基板上の導電性トラックに直接結合され得る。
図8cは、この例ではFPC(60)のコネクタ(
図8dに示される)を備えた後のEWODデバイスを示し、コネクタは、上部基板(16')のそれぞれの要素に電気的に結合される導電性経路(36'、38'、40')を画定する。すなわち、コネクタ上の導電性経路36'、38'は、上部基板上のITO層に画定された電極対36、38の電極に接合され、残りの導電性経路(40')は、下部基板(12)上のTFT層の回路への対向電極または接地電極として作用する上部基板(16')上のITO層の主要部分への電気経路を形成する。
図7aの実施形態では、外部の電気的接続は、エッジコネクタ20に戻る接続ではなく、導電性トラックを介してトッププレート電極36、38に直接行われてもよい。
【0065】
本発明のさらなる態様では、
図9a-
図9bにおいて図示されるように、ディスクリートな導電性回路は、異方性ガスケット(14')内に備えられるが、キャビティ(26)に面する上部基板(16)の内面上には備えられない。そのような態様では、単一の導電層が、例えば、共通電極を形成するために、キャビティ(26)に面する上部基板(16)の表面全体にわたって備えられる。ガスケット14'は、導電性経路/パッド40を備えており、導電性経路/パッド40は、デバイスが組み立てられると、下部基板上のパッド22に接触し、上部基板の内面上の導電層にも接触する。異方性ガスケット(14')はまた、1つまたは複数の電極対(36"、38")を備え、その端は、液滴(42)の対によって接触され得る。この実施形態によるEWODのガスケットは、平面図で見たときに、
図5dのガスケットに概ね対応し得るが、導電性経路36'、38'は、デバイスが組み立てられるとき、上部基板の内面上の導電層には接触せず、代わりに、流体チャンバ内の流体液滴42に接触し得る(例えば、導電性経路36'、38'は、以下の
図10cに示されるように形成され得る)。
【0066】
いくつかの態様では、異方性ガスケット(14')は、複数の導電層が絶縁層を間に挟んで互いに上下に配置されるような積層構造中に、1以上の電極対(36''、38'')を備えてもよい。例えば、ガスケットは、多層状(multi-lamellar)であってもよく、これは、フレキシブルプリント回路に使用される一般的な構造である(一例として、https://kenvins.wordpress.com/2014/07/25/next-up-flexible-stackup-type-pcb/参照)。したがって、電極対のそれぞれは、キャビティ(26)のx平面またはz平面内で作動し得る。
図9aに示すように、導電性経路は、
図4及び
図5について説明した方法で、ガスケットを通って下部基板までを接続される。しかしながら、導電性経路は、例えば
図6について説明した方法で、外部コネクタに直接接続できることが理解されよう。
【0067】
図10a-
図10dに示されるように、異方性ガスケット(14')を利用する場合、導電性エッジ(50)が、下部基板(12)と上部基板(16)との間のギャップを画定するガスケットの内側エッジの周囲に提供されてもよい。導電性エッジ(50)は、
図2eおよび
図2fにて説明されるものと同様の方法で、それと接触する液体試料の電圧設定を達成するために使用されてもよい。延長エッジコネクタ(20')は、機器(図示せず)への接続のためにAMEWODデバイス(10)の端に電極対トラック(36'、38')を設けるために、エッジコネクタ(20)のいずれかの側に備えることができる。導電性エッジ(50)が、電極(36、38)に接触して、それらの間に短絡を形成しないことを確実にするために、導電性エッジが上部基板に接触しないことが必要であることに留意すべきである。同様の理由で、それが下部基板に接触することも不利であり得る。したがって、適切な構造は、外側層(the outer layers)が非導電性である少なくとも3つの層を含む層状ガスケットであってもよく、
図10aの破線に沿った
図10aのEWODの断面図である
図10bに示されている。(この実施形態によるEWODのガスケットは、平面図で見たときの
図5dのガスケットに概ね対応し得るが、電極対36、38が存在しているエッジプロファイル構成が、ガスケットの内側に向かってさらに突出している点で相違している)。
【0068】
本発明のさらなる態様では、先の実施形態のガスケット内の導電層は、
図10cの別の第2断面に示されるように、下部基板上の活性領域を取り囲む領域の全てまたは大部分を覆うように、
図10a-
図10bに示される範囲を超えて延在することができる。この構造は、AMEWODデバイス(10)のユーザまたは環境のいずれかからの静電放電が、キャビティ(26)に面する下部基板(12)の表面上に存在するセンシティブな薄膜トランジスタ(TFT)回路を損傷する可能性を低減するという利点を有し得る。ガスケットは、エッジコネクタ(20)上の接点(24)と接続するTFT回路の周りに導電性リングを効果的に提供する。導電性エッジ50は、下部基板と接触するガスケット内のさらなるトラック(図示せず)に接続され、したがって、デバイス上へのいかなる静電放電は、TFT層を通してではなく、ガスケットの周りで電導され得る。
【0069】
図10a-
図10dのさらなる変形例では、ガスケットは、TFT電子回路を取り囲む駆動電子回路によるEWOD基板に対する影響を制限するために、単に電気的遮蔽を提供してもよい。駆動電子回路は、デバイスの性能に悪い影響を与えうる。この場合、ガスケットは、
図10bまたは
図10cに示すような断面を有してもよく、すなわち、ガスケット内に導電層または導電性エッジ50が存在し、その結果、ガスケットは、その厚さ全体にわたって導電性ではない。
図10cの「サンドイッチ構造」では、例えば、2つの外側層51は非導電性接着剤の層であってもよく、内側導電層または導電性エッジ50のみが導電性である。内側導電層または導電性エッジ50は、接地されてもよく、他の参照電極に接続されてもよく、あるいは、フローティングのままでもよい。
【0070】
図13は、本発明のデバイスの他の応用例の概略図である。この例では、電極対の電極は、隣接する液滴への、および隣接する液滴からの電気信号を通過させることができるセンシング電極として使用される。
図13の方法は、例えば、一般的に
図4aに示すようなデバイスを使用して行うことができるが、電極対の電極間の間隔は、2つの液滴が対になっている2つの電極と接触するときに、
図13に示すように(
図4fに示すように分離されるのではなく)、2つの液滴が互いに接触するようになっている。電極対の電極を適切な駆動/測定電子回路に接続し、抵抗率(resistivity)のような液滴の特性をモニタすることができる。
【0071】
ある態様では、異方性ガスケット(14')を利用する場合、異方性導電性フィルム(ACF)(例えば、Minnesota Mining and Manufacturing Company(Minnesota USA)製の3M ACF 7303、またはHitachi製のHitachi AC-7106U-25など)を使用して、このようなガスケットを実現することができる。このような異方性材料は、非導電性担体中に分散された導電性粒子を備える。このようなACFフィルムが圧縮されると、層の厚さ方向では導電性となるが、長さと幅に沿って絶縁性のままとなる。
【0072】
ACF材料を使用するときに達成され得る限られた導電性経路に起因して、AMEWODデバイス(10)内のより複雑な回路の画定を可能にする異方性ガスケット(14')を実現するために、多層フレキシブル回路が使用されてもよい。(例えば、https://www.flexiblecircuit.com/products/multi-layer-flex/参照)。このような回路は、一般的に、絶縁体(Kapton(商標)などのポリイミドなど)の層、および、銅や金などの導体の層から作製される。
以下に、本願出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] マイクロ流体デバイスであって、
第1基板および第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に流体チャンバを画定するために、前記第1基板を前記第2基板から離間するガスケットであって、前記ガスケットの内側エッジ面が前記流体チャンバの側面境界を画定する、ガスケットと、
前記流体チャンバに面する前記第1基板の表面上に設けられた複数の独立してアドレス指定可能なアレイ素子と、
前記流体チャンバに面する前記第2基板の表面上に配置された少なくとも1つの回路素子と、
流体試料を前記流体チャンバに導入するための少なくとも1つのポートと、を備え、
前記ガスケットは、前記流体チャンバに面する前記第2基板の表面上に配置された回路素子と、関連する端子との間に導電性経路を提供するように構成される、
マイクロ流体デバイス。
[2] 前記端子が、前記第1基板上に設けられ、前記ガスケットが、少なくとも前記ガスケットの厚さ方向に延在する前記導電性経路を提供する、[1]に記載のデバイス。
[3] 前記ガスケットは、前記ガスケットの平面内にさらに延在する前記導電性経路を提供する、[2]に記載のデバイス。
[4] 前記端子は、前記ガスケットの前記内側エッジ面から離れた位置で、前記ガスケット上に設けられ、前記ガスケットは、少なくとも前記ガスケットの平面内に延在する導電性経路を提供する、[1]に記載のデバイス。
[5] 前記ガスケットは、バルクで電気的に導電性である、[1]~[4]のいずれか一項に記載のデバイス。
[6] 複数の回路要素が、前記流体チャンバに面する前記第2基板の前記表面上に設けられ、前記ガスケットが、複数の独立した導電性経路を提供するように構成され、各導電性経路は、前記回路要素のそれぞれの1つと、それぞれの関連する端子との間にある、[1]~[4]のいずれか一項に記載のデバイス。
[7] 前記ガスケットは、前記第1基板および前記第2基板を越えて突出する突出部分を備え、前記導電性経路は、前記ガスケットの前記突出部分まで延在する、[6]に記載のデバイス。
[8] 電気的導電層が、前記流体チャンバ層に面する前記第2基板の前記表面上に設けられ、前記回路素子が前記電気的導電層内に画定される、[6]または[7]に記載のデバイス。
[9] 前記ガスケットが、前記ガスケットの前記内側エッジ面の一部に配置された導電性部材と、関連する端子との間に導電性経路をさらに提供する、[6]、[7]、または[8]のいずれか一項に記載のデバイス。
[10] 前記ガスケットは、異方性電気的導電率を有する材料を備え、および、任意選択で、前記ガスケットが、前記ガスケットの厚さ方向に電気的に導電性であり、前記厚さ方向と垂直な方向に実質的に導電性でない材料を備える、[6]、[7]、または[8]のいずれか一項に記載のデバイス。
[11] 前記ガスケットの前記内側エッジ面は、前記少なくとも1つのポートを画定するように成形される、[1]~[10]のいずれか一項に記載のデバイス。
[12] [1]~[11]のいずれか一項に記載のデバイスの前記流体チャンバに流体試料を導入することと
前記流体試料を、前記第2基板上に配置された前記回路素子または前記回路素子のうちの選択された1つに隣接するように移動するために、前記デバイスの前記第1基板上に設けられた前記アレイ素子を制御することと、
前記回路素子または前記選択された回路素子に関連付けられた前記端子に電圧を印加すること、
を備える、方法。
[13] 前記流体試料をチャージするために、前記電圧を印加することを備える、[12]に記載の方法。
[14] 1つまたは複数のさらなる流体操作を前記チャージされた流体試料に行うことを備え、任意選択で、前記1つまたは複数のさらなる流体操作を前記チャージされた流体試料に行うことは、少なくとも1つの流体液滴を前記流体試料から分離することを備える、[13]に記載の方法。
[15] 測定信号を前記流体試料に通すために、前記電圧を印加することを備える、[12]に記載の方法。