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特許7586903ホワイトエッチングクラックの形成を軽減するための有機金属塩組成物の使用
<図1>
  • 特許-ホワイトエッチングクラックの形成を軽減するための有機金属塩組成物の使用 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】ホワイトエッチングクラックの形成を軽減するための有機金属塩組成物の使用
(51)【国際特許分類】
   C10M 129/40 20060101AFI20241112BHJP
   C10M 163/00 20060101ALI20241112BHJP
   C10N 10/02 20060101ALN20241112BHJP
   C10N 10/16 20060101ALN20241112BHJP
   C10N 10/04 20060101ALN20241112BHJP
   C10N 10/10 20060101ALN20241112BHJP
   C10N 10/14 20060101ALN20241112BHJP
   C10N 10/12 20060101ALN20241112BHJP
   C10N 40/02 20060101ALN20241112BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20241112BHJP
   C10M 159/18 20060101ALN20241112BHJP
【FI】
C10M129/40
C10M163/00
C10N10:02
C10N10:16
C10N10:04
C10N10:10
C10N10:14
C10N10:12
C10N40:02
C10N30:00 Z
C10M159/18
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022519480
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-29
(86)【国際出願番号】 FI2020050622
(87)【国際公開番号】W WO2021058868
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-02-15
(31)【優先権主張番号】19397529.9
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】522120082
【氏名又は名称】アクチエボラグ・ナノル・テクノロジーズ・オサケユフティオ
【氏名又は名称原語表記】Ab Nanol Technologies Oy
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】フォン クノリング,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】レンピアイネン,サムリ
(72)【発明者】
【氏名】フォン ハールトマン,ゾフィア
(72)【発明者】
【氏名】バローズ,オーブリー
(72)【発明者】
【氏名】シェルゲ,マティアス
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-521208(JP,A)
【文献】特開昭63-304096(JP,A)
【文献】特開2003-106338(JP,A)
【文献】特開平11-140480(JP,A)
【文献】特開平10-121077(JP,A)
【文献】特開2007-069423(JP,A)
【文献】特開平10-121083(JP,A)
【文献】特開2007-262300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M
C10N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機金属塩組成物の使用であって、前記有機金属塩組成物が1以上の長鎖モノカルボン酸の銅塩を含んで成り、前記長鎖モノカルボン酸が不飽和の酸であり、ホワイトエッチングクラック(WEC)の形成を軽減するための前記有機金属塩組成物の使用。
【請求項2】
前記長鎖カルボン酸が、リノレン酸、リノール酸またはオレイン酸である、請求項1に記載の有機金属塩組成物の使用。
【請求項3】
前記長鎖カルボン酸が、オレイン酸である、請求項1に記載の有機金属塩組成物の使用。
【請求項4】
前記1以上の長鎖カルボン酸の銅塩が、オレイン酸銅である、請求項1に記載の有機金属塩組成物の使用。
【請求項5】
前記有機金属塩組成物が、1つまたは2つの異なる前記長鎖モノカルボン酸の銅塩を含んで成る、請求項1に記載の有機金属塩組成物の使用。
【請求項6】
前記有機金属塩組成物が、長鎖カルボン酸を炭酸銅と反応させる工程を用いて調製される、請求項1に記載の有機金属塩組成物の使用。
【請求項7】
カルボン酸:銅の炭酸塩の反応剤のモル比が1:1~20:1の範囲内である、請求項5に記載の有機金属塩組成物の使用。
【請求項8】
前記有機金属塩組成物が、さらなる添加剤成分と組み合わされる、請求項1~7のいずれか1項に記載の有機金属塩組成物の使用。
【請求項9】
前記有機金属塩組成物が、活性化した錯体と組み合わされており、前記活性化した錯体が、第1の金属成分と、第2の金属成分と、第1の金属成分を含んで成る粒子とを含んで成る、請求項1~8のいずれか1項に記載の有機金属塩組成物の使用。
【請求項10】
第1の金属成分が、金、銀、銅、パラジウム、スズ、コバルト、亜鉛、ビスマス、マンガンおよび/またはモリブデンを含んで成る、請求項9に記載の有機金属塩組成物の使用。
【請求項11】
第1の金属成分が、銅および/またはコバルトを含んで成る、請求項9に記載の有機金属塩組成物の使用。
【請求項12】
第1の金属成分が、銅を含んで成る、請求項9に記載の有機金属塩組成物の使用。
【請求項13】
第2の金属成分が、スズ、ビスマス、亜鉛および/またはモリブデンを含んで成る、請求項9に記載の有機金属塩組成物の使用。
【請求項14】
第2の金属成分が、スズ、ビスマスおよび/または亜鉛を含んで成る、請求項9に記載の有機金属塩組成物の使用。
【請求項15】
第2の金属成分が、スズを含んで成る、請求項9に記載の有機金属塩組成物の使用。
【請求項16】
活性化した錯体と組み合わされる、請求項1~15のいずれか1項に記載の有機金属塩組成物の使用。
【請求項17】
前記活性化した錯体が、第1の金属成分を含んで成る粒子を含んで成る、請求項~16のいずれか1項に記載の有機金属塩組成物の使用。
【請求項18】
潤滑添加剤組成物の一部としての請求項1~17のいずれか1項に記載の有機金属塩組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ホワイトエッチングクラック(WEC)の形成(又は発生)を軽減(又は減少又は緩和)するための潤滑添加剤(又は潤滑油添加剤又はルブリカント添加剤又はルブリカント・アディティブ)および/または潤滑添加剤組成物(又は潤滑油添加剤組成物又はルブリカント添加剤組成物又はルブリカント・アディティブ・コンポジション)としての有機金属塩組成物の使用に関する。
【0002】
本発明の塩組成物は、活性化した錯体(又は複合体又はコンプレックス)(又は活性化された錯体(又は複合体又はコンプレックス)又は活性化錯体(又は活性化複合体又は活性化コンプレックス)又はアクティベーテッド・コンプレックス)と組み合わせることで特に有用である。この活性化した錯体は、第1の金属成分と、第2の金属成分と、第1の金属成分を含んで成る粒子とを含んで成る。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
関連する技術の説明
脂肪酸から調製される有機金属塩は、しばしば、オイルおよびグリースに配合されて、特別な特性を有する潤滑用の組成物を提供する。この有機金属塩は、様々な金属元素をベースとすることができる。銅ベース(又は銅系)の添加剤(又はアディティブ)が好ましい。なぜなら、銅ベース(又は銅系)の添加剤は、このような潤滑剤において、有効性(又は効果又は効力)を有するからである。
【0004】
いくつかの種類の銅化合物(銅のジチオホスフェート、ジチオカルバメート、スルホネート、カルボキシレート、アセチルアセトンおよびフェネート、ならびに、銅のステアレート(又はステアリン酸塩)およびパルミテート(又はパルミチン酸塩)が挙げられる)では、顕著に低下した摩擦(又はフリクション(friction))および摩耗(又はウェア(wear))が示されている。
【0005】
銅系(又は銅ベース)の有機金属化合物は、多機能添加剤(又はマルチファンクショナル・アディティブ)として使用すると、最大限の効果を発揮することができ、液体のルブリカント(又は潤滑剤又は潤滑油)またはグリース、フューエル(又は燃料)、カッティング・フルード(又は切削液又は切削油)、ハイドロリック・フルード(又は作動液又は作動油)において、摩擦および摩耗を低減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開(WO)第2017/005967号
【文献】国際公開(WO)第2015/173421号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
摩擦および摩耗の低減に有用なこのような有機金属塩組成物は、国際公開(WO)第2017/005967号および米国特許(US)第10144896号に記載されている。しかし、全ての有機金属塩組成物が、上述の問題(例えば、風力タービンなどの重作業用機械設備(又はヘビー・デューティー・メカニカル・エクイップメント(heavy duty mechanical equipment))において故障を引き起こす問題)を防止(又は予防又は抑制)または軽減(又は減少又は緩和)させるわけではない。
【0008】
風力タービンは、非常に大きな力および高いトルクを受ける設備(又は機器)の例である。また、他の産業用の設備(又は機器)においても同様の力を経験してもよい。特に、このような設備(又は機器)のベアリング(又は軸受)は、上記の大きな力および高いトルクによって生じる負荷(又はロード)が増大し、高い応力(又はストレス)を経験してよい。このことによって、結局、予期しない早期の故障につながる可能性がある。
【0009】
このような広範囲にわたるトライボロジーによる故障は、金属の疲労によって引き起こされるものであり、表面下で3次元的に分岐するクラックの形成(又は発生)に起因するものである。かかるクラックは、ホワイト・エッチング微細構造(又はホワイト・エッチング・ミクロストラクチャ(white etching microstructures))によって縁取られている。そのため、ホワイト・エッチング・クラック(White Etching Cracks)(WEC)と呼ばれている。
【0010】
かかるクラックは、従来の他のタイプの微細構造の変化ならびに厳しい運転条件下(又は操作条件下)で生じる効果とは異なるものである。かかるクラックは、通常の摩耗に関連しては見出されていない。また、WECは、金属表面およびその表面下の両方に影響を与えるものである。従って、一般的な潤滑剤では、このような問題を解決することができない。
【0011】
しばしば、WECは、中程度の速度(又はスピード)および負荷(又はロード)で広がる(又は進行又は進展又は発達する)。そのため、最終的には、早期の故障につながる。かかる故障は、疲労寿命を評価するための標準的な手順を用いては予測することができない。このような問題は、設備(又は機器)の特定の製造業者や部品(又はコンポーネント)の設計における特定のもの(又は具体的なもの)ではない。WECは、様々な産業の用途(又は適用)で発生する。このとき、ベアリングの種類、潤滑剤(又は潤滑油又はルブリカント)および鋼(又はスチール)の等級(又はグレード)は様々である。これは、特に深刻な問題である。なぜなら、WECの原因が十分に解明(又は理解)されていないからである。また、実験室の試験装置(又はテスト・リグ)では、WECの形成(又は発生)を再現することが困難である。そのため、WECの形成(又は発生)のメカニズムまたは根本的な原因について、コンセンサスが得られていない。
【0012】
WECを引き起こすと思われる重要な要因(又はキー・ファクター)は、鋼(又はスチール)の表面でのトライボケミストリによる水素の透過(又はパーミエーション)(tribochemical hydrogen permeation)である。これによって、水素脆化(hydrogen embrittlement)がもたらされる。特に、高いスライディング・エネルギー条件において、水素脆化がもたらされる。潤滑剤(又は潤滑油又はルブリカント)の特定の種類の配合(又は処方)を用いると、WECがより多く発生する可能性があることが判明している。なぜなら、潤滑剤は、このような脆化を引き起こす可能性のある水素の供給源(又はソース)の1つであるからである。従って、先行技術の従来の潤滑剤(又は潤滑油又はルブリカント)および潤滑添加剤(又は潤滑油添加剤又はルブリカント添加剤)は、実際には、WECのリスクを増加させる可能性がある。例えば、高活性の硫黄-リンの化学(又はケミストリ)に基づく耐摩耗性の極圧添加剤は、このようなリスクの増加を引き起こす。この種の添加剤は、金属表面にダメージを与える可能性があり、実際には、マイクロ・ピッティング(micro-pitting)を促進してよく、早期のWECによる故障につながる可能性がある。したがって、WECの問題を解決するための効果的かつ耐久性のある技術的な対策が重要かつ緊急に必要である。
【0013】
可能性のある解決策、つまりWECを軽減するための方法として推奨されている解決策は、高粘度のポリアルファオレフィン・ベースストックを含んで成る潤滑剤(又は潤滑油又はルブリカント)を使用することである。概して、粘度は、潤滑剤(又は潤滑油又はルブリカント)の最も重要な特性の一つと考えられている。オイルの粘度が低すぎると、潤滑剤(又は潤滑油又はルブリカント)は、可動部品を分離するのに十分な膜(又はフィルム)を提供しない。粘度が高い潤滑剤(又は潤滑油又はルブリカント)は、流体力学的な潤滑を行う間において、せん断(又はシャーリング)に抵抗するか、あるいは、「潤滑剤の層が別の層から離れること(tearing away of one layer of lubricant from another)」に抵抗する。これによって、金属と金属との接触が最小になるのに役立つ。このことは、より丈夫で堅牢な潤滑膜(又は潤滑フィルム)が存在することに起因する。これは、特定の過酷な条件下(例えば、衝撃荷重(又はショック・ロード)や連続的な高荷重(又はヘビー・ローディング))で特に有利であってよい。ここでは、より高い粘度が、その正常な流体力学的な膜(又はフィルム)の状態において、潤滑し、なおかつ、より維持しやすくなると思われる。従って、このことによって、WECの問題を引き起こすクラックの進行が理論的に減少するはずである。しかし、高粘度の潤滑剤(又は潤滑油又はルブリカント)を過剰に使用することには、重大なマイナス面もある。かかる潤滑剤(又は潤滑油又はルブリカント)は、低温での特性がより低下し、なおかつ、流れ(又はフロー)に対する抵抗が増大する。過剰な粘性の潤滑剤(又は潤滑油又はルブリカント)は、フロー(又は流れ)が不十分であることから、潤滑不足を引き起こす可能性がある。これは、ポンプ効果(又はポンパビリティ)が乏しいことに起因するものである。このような問題は、低温の周囲条件下では特に深刻になり得る。実際には、金属と金属との直接的な接触および表面へのダメージのリスクが増大し得る。従って、WECの問題に対して改善された解決策が、いまだ求められている。
【0014】
さらに、潤滑添加剤および潤滑油配合の技術におけるすべての進歩にもかかわらず、より具体的な問題(重作業用機械設備(又はヘビー・デューティー・メカニカル・エクイップメント(heavy duty mechanical equipment))において故障を引き起こす問題)、例えば、上記のWECに対する保護(又は防止又はプロテクション)を提供する潤滑油添加剤が依然として必要とされている。
【0015】
発明の要旨
したがって、本発明の目的は、上記の欠点、特にWECの形成(又は発生)に関する欠点(又は不具合又はドローバック(drawbacks))を少なくとも軽減(又は減少又は緩和)することである。
【0016】
本発明の別の目的は、機械的な設備(又は機器)におけるホワイトエッチングクラックの形成(又は発生)を防止または少なくとも軽減(又は減少又は緩和)するのに有用な潤滑添加剤(又は潤滑油添加剤又はルブリカント添加剤又はルブリカント・アディティブ)および/または潤滑添加剤組成物(又は潤滑油添加剤組成物又はルブリカント添加剤組成物又はルブリカント・アディティブ・コンポジション)を提供することである。
【0017】
本発明のさらなる目的は、添加剤組成物(又はアディティブ・コンポジション)を提供することであり、当該添加剤組成物は、銅系(又は銅ベース)の有機金属塩を他の適切な成分(又はコンポーネント)と組み合わせて構成されるものであり、摩擦(又はフリクション)を低減するだけでなく、摩耗(又はウェア)の保護(又は防止又はプロテクション)を高めることもできるものである。
【0018】
本発明のさらなる目的は、高性能な潤滑剤(又は潤滑油又はルブリカント)を提供することであり、当該潤滑剤は、機械的なシステム(又はメカニカル・システム)の長寿命運転を確保することができる。これは、機械的な部品を接触疲労による損傷(又はダメージ)から保護(又は防止又はプロテクト)し、さらに、水素摩耗(又はハイドロジェン・ウェア(hydrogen wear))から摩擦面を保護(又は防止又はプロテクト)し、なおかつ、選択的な移動によって摩耗(又はウェア)および損傷(又はダメージ)の自己回復を可能にすることによるものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
これらの目的は、本明細書中に記載の潤滑組成物(又は潤滑剤組成物又は潤滑油組成物又はルブリカント組成物又はルブリカント・コンポジション)を用いて摩擦面を保護(又は防止又はプロテクト)することによって達成することができる。
【0020】
本発明は、独立請求項の特徴によって規定されている。いくつかの具体的な実施形態は、従属請求項において規定されている。
【0021】
本明細書中に記載される有機金属塩組成物が、既存の潤滑剤(又は潤滑油又はルブリカント)と比較して、優れた様式(又は方法又はマナー)によって、WECを軽減(又は減少又は緩和)させることは、驚くべきことであり、なおかつ、予想外のことであることが見出された。
【0022】
このタイプの有機金属塩は、他の成分と組み合わせることによって、摩擦(又はフリクション)を低減し、従来の摩耗(又はウェア)に対して向上した保護(又は防止又はプロテクション)を提供することが知られている。しかし、WECに対する技術的な解決策として、これまでに、このような添加剤(又はアディティブ)は、使用されたことが全くない。
【0023】
したがって、本発明は、潤滑添加剤(又は潤滑油添加剤又はルブリカント添加剤又はルブリカント・アディティブ)および/または潤滑添加剤組成物(又は潤滑油添加剤組成物又はルブリカント添加剤組成物又はルブリカント・アディティブ・コンポジション)として、ホワイトエッチングクラック(WEC)の形成(又は発生)を軽減(又は減少又は緩和)させるための有機金属塩組成物の使用に関する。
【0024】
使用される有機金属塩組成物は、潤滑添加剤組成物を製造するために、銅と、少なくとも1つの長鎖モノカルボン酸(典型的には、脂肪酸)とから誘導されるものである。かかる組成物によって、WECの形成(又は発生)を軽減(又は減少又は緩和)させる能力が向上している。この潤滑添加剤組成物は、他の適切な成分と配合することができる。それによって、WECの低減だけでなく、摩擦の低減をももたらす。
【0025】
低減されたWECを提供することに加えて、かかる潤滑添加剤組成物には、さらなる利点がある(例えば、向上した摩耗の保護(又は防止又はプロテクション)を可能にすること、オイル・ドレイン・インターバルのさらなる延長、メンテナンスの低減ならびに運転寿命の延長)。
【0026】
また、かかる潤滑添加剤組成物は、WECの形成(又は発生)を助長し得るリン系または硫黄系の化合物を大量に含んでいない。従って、本発明において、かかる添加剤組成物は、高活性のリン系または硫黄系の化合物に典型的な攻撃的かつ化学的なアタックを引き起こすことがない。また、潤滑される機械的な設備(又は機器)の摩擦面の状態を悪化させることもない。
【0027】
本明細書中に記載の有機金属塩組成物および潤滑組成物で達成されるさらなる利点は、それらが、様々な濃度および様々な条件において、4種類の全ての炭化水素ベースオイル(又は炭化水素基油)(グループI~IV)に対して、高い溶解度を有することである。これは、潤滑剤として使用される従来の有機金属塩に対する改良(又は改善)である。なぜなら、従来の有機金属塩は、典型的には、グループII~IVの炭化水素オイルには特に溶解しない(又は可溶性ではない)からである。
【0028】
高い溶解度とは、目視による評価に基づいて、組成物がベースオイルと十分に混和し、なおかつ、保存時に分離しないこと、あるいは沈殿物を形成しないこと、またはゲルを形成しないことを意味する。この評価は、典型的には、18℃~24℃の範囲内の温度で行われる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、水素の量を示すグラフである。この水素は、本発明に従う潤滑添加剤で処理されたスチール膜(又は鋼膜又はスチール・メンブレン)によって阻止(又はブロック)されている(参照(又は基準)として未処理の膜(又はメンブレン)を用いる)。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施形態
定義
本明細書の文脈において、用語「長鎖カルボン酸」は、炭素鎖の長さがC13~C22であるカルボン酸を包含することを意図している。鎖は、直鎖状であっても、分枝鎖状であってもよい。
同様に、「短鎖のカルボン酸」は、6個未満の炭素原子を有するモノカルボン酸を包含することを意図している。従って、分枝したモノカルボン酸は、4個または5個の炭素原子を有する。
従って、本明細書の文脈において、「中鎖のカルボン酸」は、6個~12個の炭素原子を有することが明らかとなっている。
【0031】
本発明は、有機金属塩組成物(又はオルガノメタリック・ソルト・コンポジション)の使用に関し、これらは、潤滑添加剤(又は潤滑油添加剤又はルブリカント添加剤又はルブリカント・アディティブ)および/または潤滑添加剤組成物(又は潤滑油添加剤組成物又はルブリカント添加剤組成物又はルブリカント・アディティブ・コンポジション)として、ホワイトエッチングクラック(white etching cracks)(WEC)の形成(又は発生)を軽減(又は減少又は緩和)させるためのものである。
【0032】
上記のホワイトエッチングクラックは、特に、非常に大きな力および高いトルクを受ける設備(又は機器)において発生する。例えば、産業用の設備(又は機器)、例えば、ペーパーミル、クラッシャーミルおよびリフティングギアが挙げられる。それだけでなく、船舶推進システムも挙げられる。しかし、風力タービンでは、このタイプの早期の故障が特に頻繁に経験することが分かっている。従って、本発明は、好ましくは、このようなタイプの設備(又は機器)、特に風力タービン、あるいは、より具体的には、そのベアリング(又は軸受)において用いられる。
【0033】
本発明において使用する有機金属塩組成物は、典型的には、1以上の長鎖モノカルボン酸から誘導される銅の塩である。必要に応じて、1以上の短鎖または中鎖の分岐したモノカルボン酸と組み合わせてよい。
【0034】
使用する場合、有機金属塩組成物において、短鎖または中鎖の分岐したカルボン酸の含有量は、好ましくは2~20重量%の範囲内である。
【0035】
本発明において使用する有機金属塩の調製は、概して、炭酸銅(又は銅炭酸塩又は銅カーボネート)と、上記の1以上の長鎖モノカルボン酸(例えば、オレイン酸)との反応を包含する。従って、中間体の塩(又は中間塩)を形成することを包含する。カルボン酸の割合(又はプロポーション)として広い範囲を採用してよい。そうすることで、カルボン酸:炭酸銅反応剤(又は銅炭酸塩反応剤又は銅の炭酸塩の反応剤又は銅カーボネート・リアクタント(copper carbonate reactant))のモル比は、好ましくは、1:1~20:1の範囲内となる。
【0036】
本発明の好ましい実施形態に従う炭酸銅(又は銅炭酸塩又は銅カーボネート)は、他の金属カーボネート(又は炭酸金属又は金属炭酸塩)と混合してよい。他の金属カーボネート(又は炭酸金属又は金属炭酸塩)は、典型的には、金属元素として、銀、金、パラジウム、コバルト、鉛、スズ、ビスマス、モリブデン、チタン、タングステンおよびニッケルのうち1つを含んで成るものである。より好ましくは、他の炭酸金属は、コバルトを含んで成る。
【0037】
長鎖モノカルボン酸は、有用であり、その構造の特定の共通のアスペクト(aspects)(又は局面又は側面)によって特徴付けることができる。本発明において用いられる中間体の有機金属塩(又は中間有機金属塩)は、より具体的には、C13~C22の範囲内のモノカルボン酸と炭酸銅(又は銅炭酸塩又は銅カーボネート)との反応に由来し得るものである。
【0038】
好ましくは、不飽和の酸を使用するべきである。例えば、リノレン酸、リノール酸およびオレイン酸が挙げられる。
【0039】
採用することができる他の酸の例として、飽和モノカルボン酸が挙げられる。例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸またはステアリン酸が挙げられる。また、飽和および不飽和の分枝したモノカルボン酸を使用することができる。例えば、イソステアリン酸が挙げられる。必要に応じて、ナフテン酸または合成カルボン酸(又は合成したカルボン酸)を使用してよい。
【0040】
本発明において使用する有機金属塩の調製では、まず、上記のように、中間体の塩を調製する。その後、必要に応じて、短鎖または中鎖のカルボン酸を添加してよい。これは、特に、室温で液体である塩の形成を促進するために行われる。上記の添加の前に、中間体の塩は、好ましくは、少なくとも約60℃の温度まで加熱され、塩が液体の形態(又は液状)になるまで加熱を続ける。次いで、激しく撹拌しながら、短鎖または中鎖のカルボン酸を添加してよい。
【0041】
短鎖または中鎖の分枝したモノカルボン酸を添加する場合、特定の環境下では、中鎖の酸を使用するために、これが有利になり得る。例えば、長鎖カルボン酸と、短鎖または中鎖のカルボン酸との好ましい組み合わせの1つは、オレイン酸と、2-エチルヘキサン酸との組み合わせである。これによって、組成物の溶解度において特に有益な効果がもたらされ、なおかつ、周囲の流動性の液体の特性が向上する。
【0042】
短鎖または中鎖の分枝したモノカルボン酸の割合(又はプロポーション)については、広い範囲を採用することができる。そのようにすることで、中間体である有機金属塩:短鎖または中鎖の分枝したモノカルボン酸の重量比は、2:1~50:1の範囲であってよい。5:1~20:1の比が好ましい。10:1~20:1の範囲が最も好ましい。
【0043】
本発明では、飽和した短鎖または中鎖の分枝したモノカルボン酸が好ましい。これらは、分枝したアルキル基を少なくとも1つ含むべきである。好ましくは、これらは、4個~11個の炭素原子、より好ましくは6個~10個の炭素原子、最も好ましくは8個の炭素原子を含んで成る。このような飽和の短鎖または中鎖の分枝したモノカルボン酸の例として、2-エチルヘキサン酸、2-メチル酪酸(又は2-メチルブタン酸)(2-methylbutyric acid)、2-エチルブタン酸(又は2-エチル酪酸)(2-ethylbutanoic acid)、2-メチルペンタン酸、3-メチルペンタン酸、4-メチルペンタン酸、2-メチルヘキサン酸、5-メチルヘキサン酸、4-メチルオクタン酸および4-メチルノナン酸が挙げられる。好ましい選択肢(又は代替)は、2-エチル酪酸および2-エチルヘキサン酸である。特に好ましい選択肢(又は代替)は、2-エチルヘキサン酸である。
【0044】
本発明に従う有機金属塩組成物は、活性化した錯体(又は複合体又はコンプレックス)(又は活性化された錯体(又は複合体又はコンプレックス)又は活性化錯体(又は活性化複合体又は活性化コンプレックス)又はアクティベーテッド・コンプレックス)と組み合わせることができる。この活性化した錯体は、第1金属成分と、第2金属成分と、第1金属成分を含んで成る粒子とを含んで成る。この組み合わせによって、向上したWECの軽減(又は減少又は緩和)が与えられることが見出された。特に、潤滑添加剤組成物を提供するために粒子(例えば、ナノ粒子)を系中(又はインサイチュ(in-situ)に添加する場合であって、なおかつ、かかる粒子が金属形態の第1の金属成分を含む場合において、向上したWECの軽減を与えることが見出された。第2の金属成分は、第1の金属成分に含まれる金属元素の還元に関与することができる。
【0045】
好ましくは、活性化した錯体の第1の金属成分として、金、銀、銅、パラジウム、スズ、コバルト、亜鉛、ビスマス、マンガンおよび/またはモリブデンが挙げられる。特に好ましくは、銅および/またはコバルトである。より好ましくは銅である。
【0046】
活性化した錯体の第2の金属成分として、好ましくは、スズ、ビスマス、亜鉛および/またはモリブデンが挙げられる。特に好ましくは、スズ、ビスマスおよび/または亜鉛である。より好ましくは、スズである。また、第2の金属成分は、粒子の形態で添加してもよい。従って、第2の金属成分を含む粒子に第1の金属成分(金属の形態)を含有させることが有利であってよい。
【0047】
しかし、好ましい実施形態によると、粒子(好ましくは、ナノ粒子)は、第1の金属成分(金属の形態)から形成されるものであり、必要に応じて、かかる粒子に第2の金属成分を添加する。
【0048】
活性化した錯体の粒子は、第1の金属成分を含んで成るものであり、直径が、1~10,000nmの範囲内、好ましくは5~1,000nmの範囲内、より好ましくは10~500nmの範囲内、特に好ましくは15~400nmの範囲内を示す。
【0049】
活性化した錯体は、好ましくは、配位子(又はリガンド)として機能する成分をさらに含んで成る。配位子は、界面活性剤または分散剤のいずれであってもよい。例えば、スクシンイミド、ポリエトキシル化された獣脂(又は牛脂)アミド(poylethoxylated tallow amide)およびジエタノールアミンが挙げられる。また、活性化した錯体は、好ましくは、粒子を含んで成る。この粒子は、第1の金属成分と、必要に応じて第2の金属成分とを含んで成る。金属元素の溶解度を向上させる少なくとも1つの化合物を添加してよい。例えば、ジエチレングリコールまたはエポキシ化されたジプロピレングリコールのエポキシ樹脂が挙げられる。さらに、少なくとも1つの還元剤を添加してもよい。例えば、ジフェニルアミンまたはヘキサデシルアミンが挙げられる。これらの好ましい成分は、典型的には、第1の金属成分の粒子に添加される。
【0050】
好ましくは、上記の潤滑添加剤組成物は、第1金属成分に由来する可溶性の金属化合物を含んで成る。好ましくは、この潤滑添加剤組成物は、金属メッキ(又はメタル・プレーティング)を形成することができる。
【0051】
活性化した錯体の製造において、還元剤、溶媒および/または共溶媒として、1以上のアルコールを有利に使用する。好ましくは、1個~20個の炭素原子を有するアルキル基を有するグリコール類(例えば、ジエチレングリコール)などのアルコールが挙げられる。さらに、1個~20個の炭素原子、好ましくは4個~12個の炭素原子を有するアルコール、例えば、オクタノールが有利に存在する。
【0052】
好ましくは、有機金属塩組成物:活性化した錯体の重量比は、10,000:1~1:1の範囲内である。本発明に従って使用することができる製品を提供するために、関連する活性化した錯体の調製ならびにその有機金属塩組成物との組み合わせについて、以下の実施例12において、さらに説明する。上記で言及した活性化した錯体を得るためのプロセスは、国際公開(WO)第2015/173421号において、さらに詳細に開示されている。この文献は、参照により本明細書中に組み込まれている(又は援用されている)。
【0053】
開示の本発明の実施形態が、本明細書に開示される特定の構造、プロセスの工程(又はステップ)または材料に限定されないことを理解するべきである。ただし、関連する分野の当業者によって認識され得るようなその均等物にまで範囲が拡張されることが理解されるべきである。また、本明細書で採用される用語は、特定の実施形態を説明する目的でのみ使用されるものであることが理解されるべきであり、それらに限定されることは意図されていないことを理解すべきである。
【0054】
本明細書を通じて、一実施形態(one embodiment)または実施形態(an embodiment)への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書の全体を通して様々な場所での「一実施形態において(in one embodiment)」または「実施形態において(in an embodiment)」という表現の記載(又は出現)は、必ずしも全てが同じ実施形態を指しているわけではない。また、例えば、約、実質的になどの用語を用いて数値について言及する場合、正確な数値も開示されている。
【0055】
本明細書で使用される通り、複数の項目(又はアイテム)、構造の要素(又は構成要素又は成分又はエレメント)、組成物の要素(又は構成要素又は成分又はエレメント)および/または材料は、便宜上、共通の列挙(又はリスト)で示されてよい。しかしながら、これらの列挙(又はリスト)は、この列挙(又はリスト)の各メンバーが別個の固有のメンバーとして、個別に識別されるように解釈されるべきである。さらに、本発明の様々な実施形態および実施例は、その様々な構成要素(又は成分又はコンポーネント)の選択肢(又は代替物)と共に本明細書中で言及されてよい。このような実施形態、実施例および選択肢(又は代替物)は、互いに事実上の等価なものとして解釈されるべきではないことを理解する。ただし、本発明の別個の自主的な記載(又は表現)として考慮されるべきである。
【0056】
さらに、記載の特徴、構造または特性は、1以上の実施形態において、任意の適切な様式(又は方法又はマナー)で組み合わせてよい。この説明では、本発明の実施形態の十分な理解を提供するために、多数の具体的な記載(又は詳細)が提供される。しかしながら、関連する分野の当業者であれば、1以上の具体的な記載(又は詳細)がなくても本発明は実施可能であることがわかる。
【0057】
上記の例は、1以上の特定の用途(又は適用)における本発明の原理を例示するものである。その一方で、実施の形態、利用および詳細における多数の変更(又は改変又は修飾又はモディフィケーション)を行うことができることは当業者に明らかである。その場合、発明の能力を発揮することがなく、また、本発明の原理および概念から逸脱することもない。従って、本発明が限定されることは意図されていない(ただし、以下に記載の特許請求の範囲の場合は除く)。
【0058】
以下の非限定的な実施例は、本発明の実施形態で得られる効果(又は利点)を単に例示することを意図している。
【実施例
【0059】
実施例
実施例1:本発明に従う修飾された有機金属塩(又は修飾有機金属塩)の調製
金属塩を脂肪酸と反応させることによって、本発明の修飾された有機金属塩(又は修飾有機金属塩)を調製することができる。そうすることで、その添加した金属塩の金属含有量によって、最終的な生成物の塩における金属濃度を8~9重量%の範囲内で提供するようになる。この反応は、典型的には、塩が液体の形態(又は液状)になるまで、少なくとも60℃の温度で進行する。その後、分枝した短鎖または中鎖のモノカルボン酸を添加する。このとき、広い範囲の割合(又はプロポーション)を用いる。例えば、混合物の全質量に対して、2~50%である。
【0060】
より正確な手順では、炭酸銅をオレイン酸と反応させて、オレイン酸銅を得た。そうすることで、最終的な塩における銅の濃度を8~9重量%の範囲内になるようにした。酸素がない環境で、150℃で16時間にわたって、この反応を行った。この反応の後、混合物の全質量に対して、7.5%の比で、2-エチルヘキサン酸を添加した。この添加によって、銅系(又は銅ベース)の有機金属塩組成物が得られる。この組成物は、室温で液体であり、10℃の融点を有するものである。対して、オレイン酸銅は、金属含有量が8~9%の範囲内であり、分枝した短鎖または中鎖のモノカルボン酸を含まないものであり、融点は55℃である。
【0061】
目視により融解温度を決定した。MP-AESを用いる分析によって金属含有量を確認した。
【0062】
実施例2:添加した短鎖分枝有機酸の量による融点への影響
オレイン酸銅(その金属含有量が8~9%の範囲内にあるもの)に2-エチルヘキサン酸(その量は、修飾された有機金属塩(又は修飾有機金属塩)の全質量に対して、11.25%であった)を添加することによって、本発明に従う修飾された有機金属塩(又は修飾有機金属塩)を調製した。11.25%の2-エチルヘキサン酸を添加したことによって、修飾有機金属塩の融解温度を4℃に低下させた。対して、実施例1の修飾有機金属塩は、7.5%の2-エチルヘキサン酸を含むものであり、その融点は10℃である。オレイン酸銅のみからなる有機金属塩は、その融点が55℃である。目視により融解温度を決定した。
【0063】
実施例3:添加した短鎖分枝有機酸の量による融点への影響
オレイン酸銅(その金属含有量が8~9%の範囲内にあるもの)に2-エチルヘキサン酸(その量は、修飾された有機金属塩(又は修飾有機金属塩)の全質量に対して、15%である)を添加することによって、本発明に従う修飾された有機金属塩(又は修飾有機金属塩)を調製した。15%の2-エチルヘキサン酸を添加することによって、修飾有機金属塩の融解温度を0℃未満に低下させた。対して、実施例2の修飾有機金属塩は、11.25%の2-エチルヘキサン酸を含むものであり、その融点は4℃である。実施例1の修飾有機金属塩は、7.5%の2-エチルヘキサン酸を含むものであり、その融点は10℃である。オレイン酸銅のみからなる有機金属塩は、その融点が55℃である。目視により融解温度を決定した。
【0064】
実施例4:金属カルボキシレート(又はカルボン酸金属又は金属カルボン酸塩)の金属含有量および分枝した短鎖または中鎖のモノカルボン酸の量による融点への影響
金属含有量ならびに短鎖または中鎖のモノカルボン酸の含有量が修飾有機金属塩の融解温度にどのように影響するかについて検討するために、本発明に従う修飾有機金属塩を調製した。本発明に従う修飾有機金属塩は、オレイン酸銅(その金属含有量が2~0%の範囲内であるもの)と2-エチルヘキサン酸(1~10%の範囲内)とを含んで成るものであった。目視により融解温度を決定した。表1に融解温度を列挙する。MP-AESを用いる分析によって金属含有量を確認した。
【0065】
【表1】
【0066】
実施例5:本発明に従う他の有機金属塩の調製
減圧下、150℃で16時間にわたって、金属カーボネート(又は炭酸金属又は金属炭酸塩)をオレイン酸と反応させることによって、金属カルボキシレート(又はカルボン酸金属又は金属カルボン酸塩)を調製した。使用した金属カーボネートは、次炭酸ビスマスおよび炭酸コバルトであった。金属オレエートの重量による金属含有量は5~10%であった。有機金属塩の融解温度が0℃以下になるまで、2-エチルヘキサン酸を添加した(有機金属塩の全質量に対して、5%,10%および15%)。融解温度は、表2に列挙する通りである。
【0067】
【表2】
【0068】
実施例6:本発明の有機金属塩組成物のグループIIベースオイル(Group II base oil)に対する溶解度
実施例1,2および3で調製した本発明の銅系(又は銅ベース)の修飾有機金属塩をグループIIベースオイルに0.3~3.0%の範囲内の濃度で配合した。サンプルを14週間にわたって追跡することによって、目視により溶解度を決定した。その結果を表3に示す。修飾有機金属塩について、サンプルの相分離または白濁(又はオパシティ(opacity))が観察されなかった場合、可溶性(soluble)であると判断した。
【0069】
【表3】
【0070】
オレイン酸銅のグループIIベースオイルに対する溶解度は0.3%未満である。本発明によると、2-エチルヘキサン酸をオレイン酸銅に添加することによって、上記のベースストックへの溶解度が向上した有機金属塩組成物が得られる。
【0071】
実施例7:グループIIIベースオイル(Group III base oil)に対する本発明の溶解度
実施例1,2および3で調製した本発明の銅系(又は銅ベース)の修飾有機金属塩をグループIIIベースオイルに0.3~3%の範囲内の濃度で配合した。サンプルを12週間にわたって追跡することによって、目視により溶解度を決定した。その結果を表4に示す。修飾有機金属塩について、サンプルの相分離または白濁が観察されなかった場合、可溶性(soluble)であると判断した。
【0072】
【表4】
【0073】
オレイン酸銅は、グループIIIベースオイルに対して不溶性である。本発明によると、2-エチルヘキサン酸をオレイン酸銅に添加することによって、上記のベースストックへの溶解度が向上した修飾有機金属塩が得られる。
【0074】
実施例8:グループIVベースオイル(Group IV base oil)に対する本発明の溶解度
実施例1,2および3で調製した本発明の銅系(又は銅ベース)の修飾有機金属塩をグループIIベースオイルに0.3~3.0%の範囲内の濃度で配合した。サンプルを14週間にわたって追跡することによって、目視にて溶解度を決定した。その結果を表5に示す。修飾有機金属塩について、サンプルの相分離または白濁が観察されなかった場合、可溶性(soluble)であると判断した。
【0075】
【表5】
【0076】
オレイン酸銅は、グループIVベースオイルに対して不溶性である。本発明によれば、オレイン酸銅に2-エチルヘキサン酸を添加することによって、上記のベースストックへの溶解度が向上した修飾有機金属塩が得られる。
【0077】
実施例9:分枝した長鎖モノカルボン酸をオレイン酸銅に添加することによる有機金属塩組成物の調製
融解温度が周囲温度未満である分枝した長鎖のモノカルボン酸を含む修飾有機金属塩を得る可能性を検討するために、修飾有機金属塩を調製した。この修飾有機金属塩は、金属含有量が8~9%の範囲内にあるオレイン酸銅にイソステアリン酸をこの修飾有機金属塩の全質量に対して1~7%,10%および15%の量で添加することによって調製した。激しい撹拌下で60℃に加熱したオレイン酸銅にイソステアリン酸を添加した。サンプルを15分間にわたって撹拌して均質性(又は均一性)を確保した。サンプルの温度が周囲温度に達すると、このサンプルは固化した。
【0078】
実施例10:有機金属塩組成物のトライボロジー効果
有機金属塩組成物のトライボロジー効果(又はトライボロジカル・エフェクト(tribological effects))を、ボール・オン・スリー・プレート・システム(ball-on-three-plates system)を用いたトライボロジー試験で実証した。60~70℃で激しく撹拌しながら、オレイン酸銅を8重量%の2-エチルヘキサン酸と混合することによって、本発明の有機金属塩組成物を調製した。0.3%,1%および3%の濃度で組成物をChevron Taro 30 DP 40に添加し、15分間にわたって撹拌しながら、60~70℃まで加熱した。均質(又は均一)なオイル混合物を周囲条件で冷却させた。Anton Paarの回転式のレオメータを用いるトライボロジー測定によって、このサンプルを試験した。
【0079】
確実にサンプルをフラット化して測定条件を一定にするためのランニング・イン・フェーズ(又は準備フェーズ(running-in phase))から測定を始める。これを1200rpmで30分間にわたって行う。ランニング・イン(又は準備)の後、次の10分間は「ストリーベック・フェーズ(Striebeck phase)」で摩擦(又はフリクション(friction))の挙動を測定する。測定レジームは、0rpmで開始し、10分間かけて3000rpmまで速度を上昇させる。測定を通して、法線力(normal force)は6Nであり、温度は100℃である。摩擦分析後に光学顕微鏡および画像処理ソフトウェアを用いてプレートの摩耗痕(又はウェア・スカー(wear scars))を分析することによって摩耗(又はウェア(wear))を測定する。
【0080】
実施例11および12において、摩擦(又はフリクション)および摩耗(又はウェア)の試験に関して、以下のパラメータを用いる。
【0081】
【数1】
【0082】
この試験の結果は、表6および表7に示す通りである。
【0083】
【表6】
【0084】
【表7】
【0085】
トライボロジー測定から、本発明の組成物が摩擦(又はフリクション)および摩耗(又はウェア)の挙動に有利な影響を与えることが明らかとなった。
【0086】
実施例11:潤滑添加剤組成物(又は潤滑油添加剤組成物又はルブリカント添加剤組成物又はルブリカント・アディティブ・コンポジション)のトライボロジー効果
潤滑添加剤組成物(又は潤滑油添加剤組成物又はルブリカント添加剤組成物又はルブリカント・アディティブ・コンポジション)のトライボロジー効果をボール・オン・スリー・プレート・システムでのトライボロジー試験で実証するために、還元性付加体(又は還元可能な付加体(reducible adduct))に活性化錯体(又は活性化した錯体)を添加した。国際特許出願第PCT/EP2015/060811号に記載の活性化錯体(又は活性化した錯体)を実施例9で調製した有機金属塩組成物に60~70℃で激しく混合しながら2.35重量%の割合で添加することによって、本発明の組成物を調製した。Chevron Taro 30 DP 40に本発明の組成物を0.3%,1%および3%の濃度で添加し、15分間にわたって撹拌しながら60~70℃まで加熱した。均質(又は均一)なオイル混合物を周囲条件で冷却させた。実施例9に記載した条件に従って、Anton Paarの回転式のレオメータを用いるトライボロジー測定によって、このサンプルを試験した。その結果を表8および表9に示す。
【0087】
【表8】
【0088】
【表9】
【0089】
トライボロジー測定から、本発明の組成物が摩擦(又はフリクション)および摩耗(又はウェア)の挙動に有利な影響を与えることが明らかとなった。
【0090】
実施例12:本発明に従う有機金属塩組成物と活性化錯体との組み合わせの調製
(a)銅系(又は銅ベース)の有機金属塩組成物
活性化錯体(又は活性化した錯体)の調製は、3工程(又は3ステップ又はスリー・ステップ)のプロセスを含む。
【0091】
第1工程(又は第1ステップ)は、塩化銅(II)の溶液の調製である。撹拌機および加熱機能を備えるガラスライニング容器にジエチレングリコール(約3.5kg)を入れた。これを約40℃に加熱し、撹拌しながら塩化銅(0.357kg)をゆっくりと加えて、この材料を確実に全体的に溶解させた。次いで、撹拌しながらゆっくりとC-5Aスクシンイミド(2.1kg)を加えた(ただし、加熱なし)。次に、ジフェニルアミン(1.72kg)を少量ずつ(又はスモールポーションで)添加した。混合物を撹拌して、この混合物を確実に均質化(又は均一化)した。最後に、DEG-1エポキシ樹脂(ジエチレングリコール1、1.86kg)を加えて徹底的に撹拌した。
【0092】
第2工程(又は第2ステップ)は、塩化スズ(IV)の溶液の調製である。撹拌機および加熱機能を備える別のガラスライニング容器において、約40℃で混合物を撹拌することによって、オクタノール(約9.8kg)に塩化スズ(IV)五水和物(4.2kg)を溶解させた。
【0093】
第3工程(又は第3ステップ)は、活性化錯体(又は活性化した錯体)の製造である。撹拌機および冷却機能を備える別のガラスライニング容器において、上記で調製した塩化スズ(IV)の溶液を、同じく上記で調製した塩化銅(II)の溶液に撹拌下で添加した。塩化スズ(IV)の溶液を少量ずつ(又はスモールポーションで)加え、温度を50℃未満に維持した。添加が完了した後、この混合物をさらに一定の期間にわたって撹拌し、この混合物を確実に均質化(又は均一化)した。
【0094】
撹拌機および加熱機能を備えるガラスライニング容器において、活性化錯体(又は活性化した錯体)(3グラム)を実施例1に従って調製した銅系(又は銅ベース)の有機金属塩組成物(125グラム)の溶液に添加した。混合物の温度を約60℃に維持し、さらに一定の期間にわたって撹拌し、この混合物を確実に均質化(又は均一化)した。
【0095】
(b)コバルト系(又はコバルトベース)の有機金属塩組成物
炭酸コバルトをオレイン酸と反応させることによって、本発明に従う修飾有機金属塩を調製した。そうすることで、金属カルボキシレート(又はカルボン酸金属又は金属カルボン酸塩)の金属含有量によって、最終的な塩における金属濃度が8~9重量%の範囲内になり、その後、2-エチルヘキサン酸をこの金属カルボキシレートに添加した。
【0096】
炭酸コバルト六水和物およびオレイン酸を酸素がない環境(又は無酸素状態)にて150℃で16時間にわたって反応させた。反応後、オレイン酸コバルトに2-エチルヘキサン酸を混合物の全質量に対して10%の割合で添加した。これにより、コバルト系(又はコバルトベース)の有機金属塩組成物を得た。この組成物は、室温で液体であり、その融点は15℃である。目視にて融点を決定した。金属含有量は、MP-AESを用いる分析によって確認した。
【0097】
上記の実施例12(a)のようにして活性化錯体(又は活性化した錯体)を調製した。
【0098】
撹拌機および加熱機能を備えるガラスライニング容器において、上記で製造した活性化錯体(又は活性化した錯体)(3グラム)をコバルト系の有機金属塩組成物(125グラム)に添加した。混合物の温度を約60℃に維持し、さらに一定の期間にわたって撹拌し、この混合物を確実に均質化(又は均一化)した。
【0099】
実施例13:WECを軽減(又は減少又は緩和)させるための本発明に従う有機金属塩組成物と活性化錯体との組み合わせのデモンストレーション
FE8-25 ピッティング・テスト(FE8-25 Pitting Test)
FAG FE8 ベアリング・テスト・リグ(FAG FE8 bearing test rig)を用いて、ホワイトエッチングクラックの形成(又は発生)を軽減(又は減少又は緩和)させるための潤滑添加剤の影響を評価した。テストの条件は、駆動速度(又はドライブスピード)750rpm、荷重(又はロード)60kN、温度100℃であった。テスト・ベアリングは、アキシアルの円筒ころ軸受(又はアキシアル・シリンドリカル・ローラー・ベアリング(axial cylindrical roller bearings))(F-562831)であった。潤滑剤のフロー循環(又はフロー・サーキュレーション)の速度は、0.125 l/minであった。潤滑添加剤を含まない低基準油(又はロー・リファレンス・オイル(low reference oil))は、典型的には、30~45時間以内にWECを発生(又は形成)させる。3重量%の潤滑添加剤を添加したテスト・オイルは、WECの形成(又は発生)がなく、運転時間は422時間に達した。このテストの結果は、潤滑添加剤の添加によって、WECの寿命性能(又はWECのライフタイム・パフォーマンス(WEC lifetime performance))において、10倍の向上がもたらされたことが実証されている。
【0100】
実施例14:スチール(又は鋼)への水素の透過および拡散を抑制するための本発明に従う有機金属塩組成物と活性化錯体との組み合わせのデモンストレーション
水素透過試験(Hydrogen Permeation Tests)
DIN EN ISO 17081の手順(電気化学的な技術による金属における水素の透過の測定ならびに水素の摂取および輸送の決定のための方法(Method of measurement of hydrogen permeation and determination of hydrogen uptake and transport in metals by an electrochemical technique))に従って、一連の透過試験を実施した。その目的は、銅有機金属塩系の潤滑添加剤が水素を阻止(又はブロック)する能力を決定することであった。透過セル(又は浸透セル又はパーミエーション・セル)は、2つの電気化学的なセルから構成されていた。第1のセル(チャージング・セル)には硫酸(HSO)が充填され、第2のセル(リコンビネーション・セル)には水酸化ナトリウム(NaOH)が充填されていた。チャージング・セルおよびリコンビネーション・セルは、透過サンプル(又はパーミエーション・サンプル)(スチール膜(又は鋼膜又はスチール・メンブレン))で分離されていた。チャージング・セルでは、電気分解によって水素原子が形成(又は発生)する。その一方で、リコンビネーション・セルでは、電流を測定する(これは、拡散した水素原子が再結合(又はリコンビネーション)して水素分子を形成(又は発生)することに起因する)。スチール・シリンダーを用いて60MPaの接触圧で擦る(又は摩擦させる)ことによって、透過サンプル(又は浸透サンプル)をコンディショニングした(又は条件付けた又は準備した)。
【0101】
スチール膜に水素を通過させると、その再結合によって電流が発生した。その電流を時間の関数として測定した。これを用いて、膜によって阻止(又はブロック)された水素の量を定量化した。潤滑添加剤で処理したスチール膜および未処理の膜(参照(又は基準))を用いて、試験を行った(図1参照)。未処理の膜は、潤滑添加剤で処理した場合と比べて、飽和濃度がより高いことを示し、なおかつ、飽和に達するまでの時間がより長いことを示した。これらの結果は、潤滑添加剤がスチール膜に透過(又は浸透)する水素の量を減少させることを実証している。未処理膜および処理膜は、ともに、処理したサンプルの飽和点に達するまで、同様の拡散の挙動を示した。
【0102】
また、潤滑添加剤が水素の発生(又は形成)を防ぐことができるかを決定するために減圧試験を行った。その結果、未処理のオイルも、潤滑添加剤を加えたオイルも、ともに、オイルの劣化(又は分解)によって、遊離水素を発生させることが示されている。このことから、潤滑添加剤は、水素の発生(又は形成)を抑制しないことが実証されている。水素を阻止(又はブロック)するメカニズムは、局所的な電気化学的なセル(これはスチール膜または銅のトライボフィルムを含んで成る)に起因し得るようなものであると推測される。その結果、スチールへの水素の拡散が少なくなり、結果として、潤滑添加剤で潤滑されたスチールの表面では、水素脆化(hydrogen embrittlement)が少ないことを示し、水素に関連する他の故障(又は失敗)のメカニズムも少ないことを示している。
【産業上の利用可能性】
【0103】
産業上の利用可能性
本発明は、ホワイトエッチングクラック(WEC)の形成(又は発生)を軽減(又は減少又は緩和)させるために使用することができる。WECは、重作業用機械設備(又はヘビー・デューティー・メカニカル・エクイップメント(heavy duty mechanical equipment))の過酷な運転条件下(又は作動条件下又は操作条件下)で発生するものである。本発明は、特に、このような設備(又は機器)のベアリング支持部(又はベアリング・サポート)でのWECの形成を(又は発生)を軽減(又は減少又は緩和)させるために使用され得るものである。
【0104】
本開示の有機金属塩組成物の使用は、特に、非常に大きな力および高いトルクを受けることが知られている風力タービンにおいて有益である。
【0105】
引用リスト
国際公開(WO)第2017/005967号
国際公開(WO)第2015/173421号
本明細書の開示内容は、以下の態様を含み得る。
(態様1)
有機金属塩組成物の使用であって、前記有機金属塩組成物が1以上の長鎖モノカルボン酸の銅塩を含んで成り、ホワイトエッチングクラック(WEC)の形成を軽減するための前記有機金属塩組成物の使用。
(態様2)
前記長鎖カルボン酸が不飽和の酸である、態様1に記載の有機金属塩組成物の使用。
(態様3)
前記長鎖カルボン酸が、リノレン酸、リノール酸またはオレイン酸、好ましくはオレイン酸である、態様1に記載の有機金属塩組成物の使用。
(態様4)
前記1以上の長鎖カルボン酸の銅塩が、オレイン酸銅である、態様1に記載の有機金属塩組成物の使用。
(態様5)
前記有機金属塩組成物が、1つまたは2つの異なる長鎖モノカルボン酸の塩を含んで成る、態様1に記載の有機金属塩組成物の使用。
(態様6)
前記有機金属塩組成物が、長鎖カルボン酸を炭酸銅と反応させる工程を用いて調製される、態様1に記載の有機金属塩組成物の使用。
(態様7)
カルボン酸:銅の炭酸塩の反応剤のモル比が1:1~20:1の範囲内である、態様5に記載の有機金属塩組成物の使用。
(態様8)
前記有機金属塩組成物が、潤滑添加剤組成物の一部を形成し、必要に応じて、さらなる添加剤成分と組み合わされる、態様1~7のいずれか1項に記載の有機金属塩組成物の使用。
(態様9)
前記有機金属塩組成物が、活性化した錯体と組み合わされており、前記活性化した錯体が、第1の金属成分と、第2の金属成分と、第1の金属成分を含んで成る粒子とを含んで成る、態様1~8のいずれか1項に記載の有機金属塩組成物の使用。
(態様10)
第1の金属成分が、金、銀、銅、パラジウム、スズ、コバルト、亜鉛、ビスマス、マンガンおよび/またはモリブデン、好ましくは銅および/またはコバルト、より好ましくは銅を含んで成る、態様9に記載の有機金属塩組成物の使用。
(態様11)
第2の金属成分が、スズ、ビスマス、亜鉛および/またはモリブデン、好ましくはスズ、ビスマスおよび/または亜鉛、より好ましくはスズを含んで成る、態様9に記載の有機金属塩組成物の使用。
(態様12)
潤滑添加剤組成物の一部として、必要に応じて、活性化した錯体と組み合わされており、前記活性化した錯体が、第1の金属成分を含んで成る粒子を含んで成る、態様1~11のいずれか1項に記載の有機金属塩組成物の使用。
図1