(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】コンタクトレンズ
(51)【国際特許分類】
G02C 7/04 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
G02C7/04
(21)【出願番号】P 2022543444
(86)(22)【出願日】2021-01-12
(86)【国際出願番号】 IT2021050007
(87)【国際公開番号】W WO2021144820
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2023-10-30
(31)【優先権主張番号】102020000000571
(32)【優先日】2020-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】522283181
【氏名又は名称】レオナルド ビジョン エッセ.エッレ.エッレ.
【氏名又は名称原語表記】LEONARDO VISION S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ページ、レオナルド
【審査官】南川 泰裕
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05044742(US,A)
【文献】特表2006-515688(JP,A)
【文献】特開2007-047803(JP,A)
【文献】特表2004-510199(JP,A)
【文献】特開2013-148900(JP,A)
【文献】特表2005-500554(JP,A)
【文献】米国特許第03468602(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非親水性材料で形成されるコンタクトレンズ(10)であって、使用中に目に向かって対向するよう配置されるとともに角膜上皮に接触して前記レンズ(10)を角膜表面か
ら持ち上げるよう構成される複数の微小突起(13)を含
み、
前記微小突起(13)は、円筒形状、円錐台形状、楕円形状、放物面形状、または角柱形状を有するとともに、ベース(14)およびトップ(15)を有し、
前記ベース(14)は、前記微小突起(13)が前記レンズ(10)と単一体となるように一体化されるように前記レンズ(10)に接続されており、
前記トップ(15)は、前記目に対する接触面を構成し、
前記ベース(14)から前記トップ(15)までの距離を示す前記微小突起(13)の高さ(H1、H2、H3、H4)は、5μmから25μmの間に含まれることを特徴とする、コンタクトレンズ(10)。
【請求項2】
前記微小突起(13)は円筒形状または円錐台形状を有し、前記トップ(15)
が構成する前記接触面は凸形状
を有し、前記接触面は、30μmから13000μmの間に含まれ、好ましくは約500μmに等しい曲率半径(Rb3、Rb4)を有する曲面に一致することを特徴とする、請求項
1に記載のコンタクトレンズ(10)。
【請求項3】
前記複数の微小突起(13)は円筒形状
の微小突起(13)
を含み、
円筒形状の前記微小突起(13)は、5μmから250μmの間に含まれるベース直径(D3)を有することを特徴とする、請求項
1に記載のコンタクトレンズ(10)。
【請求項4】
前記複数の微小突起(13)は円錐台形状
の微小突起(13)
を含み、
円錐台形状の前記微小突起(13)は、7μmから255μmの間に含まれるベース直径(D4)を有することを特徴とする、請求項
1に記載のコンタクトレンズ(10)。
【請求項5】
前記微小突起(13)は円筒形状または円錐台形状を有し、
一方が他方に隣接しかつ
円筒形状または円錐台形状を有する2つの微小突起(13)は、それらの中心間の径方向距離として示されるピッチ(p2)を有し、前記ピッチ(p2)は30μmから500μmの間に含まれることを特徴とする、請求項
1に記載のコンタクトレンズ(10)。
【請求項6】
平滑かつ使用中に前記目に向かって対向するとともに前記コンタクトレンズ(10)の外径(De)よりも小さい視覚直径(Dv)内に延在する内部領域(11)と、前記内部領域(11)の外側に配置されるとともに前記視覚直径(Dv)と前記外径(De)との間に延在する環状形状の周辺領域(12)と、を備えることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ(10)。
【請求項7】
前記複数の微小突起(13)は、前記周辺領域(12)にのみ対応して形成されることを特徴とする、請求項6に記載のコンタクトレンズ(10)。
【請求項8】
前記複数の微小突起(13)は、例えば前記レンズの中心から径方向に離間する複数の行によって構成される幾何学的パターンに従って、前記周辺領域(12)の内面全体にわたって均一的に分散され、前記複数の微小突起(13)の全体は、前記周辺領域(12)の展開に対応する面積の少なくとも20%、好ましくは前記面積の35%から50%の間に含まれる部分を占めることを特徴とする、請求項
6又は7に記載のコンタクトレンズ(10)。
【請求項9】
前記周辺領域(12)内に、3μmから20μmの間に含まれ好ましくは10μmに等しい直径を有するとともに近傍に配置された異なる微小突起(13)の間に介在するような位置で前記レンズの表面に形成される複数の孔(16)を備えることを特徴とする、請求項
6乃至
8のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ(10)。
【請求項10】
10°から60°の間に含まれる、中/低の表面接触角を有することを特徴とする、請求項1乃至
9のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載される実施形態は、近視、遠視、乱視、および老眼等の最も一般的な視力障害を補うことを意図したコンタクトレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、コンタクトレンズには様々な種類があり、実質的に以下の2つに分類されることが知られている。
ソフトコンタクトレンズ、および
ガス透過性ハードコンタクトレンズ(RGP)。
【0003】
ソフトコンタクトレンズは、最も一般的で、角膜に容易に適合する。ソフトコンタクトレンズは、任意の状態での使用位置で安定性を維持するとともに、その構造内に36体積%から65体積%の間で変化する水性成分が存在する特徴を有する。
【0004】
ソフトコンタクトレンズは親水性材料の存在により涙液膜を吸収することが可能なので、「スポンジ効果」を生み出すとともに、レンズの表面からレンズの裏面への酸素の透過を促進することで、角膜に酸素を供給する。
【0005】
一方、ソフトコンタクトレンズが涙液膜によって充分かつ継続的に濡れていない場合は、乾燥する傾向があるので、角膜の乾燥および酸素供給不良の作用を引き起こす。
別の欠点は、ソフトコンタクトレンズの乾燥によって、材料の柔らかさが失われるとともに、レンズ自体の基部の半径の値が減少する(狭くなる)ため、装着感が大幅に低下することである。
【0006】
また、ソフトコンタクトレンズの親水性は、レンズ自体の内部に細菌、ウイルス、およびさまざまな汚れが残留することを伴うので、これが様々な深刻な目の感染症を引き起こしかねない。
【0007】
要するに、ソフトコンタクトレンズは、ほとんど全ての視覚屈折異常を補うことができるが、良好または優れた涙の場合に使用されることが特に望ましいとともに、慎重な洗浄を必要とする。
【0008】
コンタクトレンズの他方の分類は、ガス透過性ハードレンズ(RGP)に代表され、ソフトレンズほどは柔軟性がないので、装着時にも常に形を維持する特徴を有する。
この特徴により、角膜の形状が不規則である場合でも優れた視覚品質が得られる。
【0009】
RGPコンタクトレンズは、ソフトコンタクトレンズに特徴的な「スポンジ効果」を持たない疎水性材料を含むとともに、RGPコンタクトレンズの裏面と角膜の表面との間に保持された涙液膜が、角膜に対して優れた酸素供給を行うことを可能にする。
【0010】
さらに、装着時のRGPコンタクトレンズは、角膜上皮と完全に接触するのではなく、涙液膜の層によって生成される面に浮くので、全体としては目の生理的環境にとってより好ましい。
【0011】
さらに、濡れ性が低いRGPコンタクトレンズは、表面に堆積した異物を吸収せず、通過させないことにより、感染の危険性を低減するので、衛生的な観点で優れている。
ただし、RGPコンタクトレンズの主な欠点は、硬い材料で形成されているため、ソフトコンタクトレンズと比較して、特に最初に使用するときに、許容性と快適さが低下することに繋がる。
【0012】
要するに、RGPコンタクトレンズは、ほとんど全ての視覚屈折異常を補うことができるとともに、不規則な形状の角膜の場合や中程度の涙の場合でも使用されることが望ましいが、あまり快適ではない。
【0013】
いくつかの解決策が提案されてきた。例えば、特許文献1は、レンズと目との間の涙液膜の量を増加させるために涙液膜を収容する目的で空洞を形成する円盤状突起が内面に設けられたコンタクトレンズを記載している。
【0014】
特許文献2は、大量の涙液膜を保持するために、目に対向する表面にミリメートルサイズの環状突起が設けられたコンタクトレンズを示している。しかし、これらの環状突起は、涙液膜の通常の分布を変化させる。
【0015】
特許文献3は、内面にナノ突起を有するレンズを記載しており、その目的はシリコーンハイドロゲルレンズの潤滑性を高めることである。
特許文献4は、内面に半球状の突起を有する、水中で使用するレンズを示している。レンズは、目が微生物に感染する可能性を低減するために、レンズによって覆われた目の表面に微生物が捕捉されるのを防ぐ能力を有する。したがって、特許文献4のレンズは、特に水中環境で長時間着用することが可能である。
【0016】
上記の解決策は、この分野の必要性を完全には満たしていない。
したがって、先行技術の欠点の少なくとも1つを克服できるコンタクトレンズを完成させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】米国特許第5044742号明細書
【文献】英国特許第1173515号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/153588号明細書
【文献】米国特許第7878650号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
特に、本発明の1つの目的は、角膜の形状に適合することでいかなる状態においても許容性および使用の快適性を改善するよう、現在知られるソフトコンタクトレンズと同様のコンタクトレンズを提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、装着時に、周知のRGPコンタクトレンズで起こることに似ているがより良い方法で、涙を自然な状態に保つように、涙液膜が吸収されることなく(「スポンジ効果」なしで)角膜とレンズとの間に作られる隙間内に常に留まることを可能にする非親水性コンタクトレンズを提供することである。
【0020】
さらに別の目的は、装着時に、少なくとも眼球運動またはまぶたのまばたきの間、涙液膜が角膜とレンズとの間を自由に移動できるようにするコンタクトレンズを提供することである。
【0021】
本発明の1つの目的はまた、付着する可能性のある外部物質に表面を通過させないことにより、感染の危険性を大幅に低減するとともに通常のメンテナンスを単純化するコンタクトレンズを提供することである。
【0022】
最後に、本発明の1つの目的は、製造コストが周知のコンタクトレンズの製造コストより低くはないにしても同等であるコンタクトレンズを提供することである。
つまり、本発明の1つの目的は、現在市販のコンタクトレンズ、すなわち上述のソフトコンタクトレンズおよびガス透過性ハードコンタクトレンズ(RGP)の全ての利点を組み合わせることができるとともに、相対的な欠点を有することなく現在のレンズによって引き起こされる問題を大幅に軽減する、コンタクトレンズを提供することである。
【0023】
出願人は、先行技術の欠点を克服すとともに、これらならびに他の目的および利点を得るために、本発明を考案し、試験し、実施した。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、独立請求項に特徴が記載される。従属請求項は、本発明の他の特徴または主たる発明思想の変形例を記載する。
上記の目的に従って、非親水性材料で形成される、全体として凹形状を有するコンタクトレンズは、内部領域およびその完全に外側の凹状周辺領域が構成される、外接する完全に平滑な内面を含む。これらの領域は両方とも、使用中に目に向かって対向する。
【0025】
コンタクトレンズは、角膜表面から数マイクロメートル、例えば7ミクロンから10ミクロンの間に含まれるだけレンズを持ち上げることを可能にする、使用中に目に向かって対向する複数の微小突起を含む。
【0026】
レンズのいくつかの実施形態によれば、微小突起は、上記のように周辺領域の範囲内にのみ配置される。
これらの微小突起は、レンズに接合されたベースによって形成される。ベースは、特にレンズの内面から離れて、角膜上皮との接触を維持するよう適合されたトップに向かって高さ方向に延在する。
【0027】
1つの変形例によれば、コンタクトレンズは、周辺領域内に、微小突起が点在する複数の孔を備えてよい。
有利には、コンタクトレンズは、現在の先行技術に含まれるレンズと比較して厚みが薄い。
【0028】
微小突起の存在、および/または孔の存在の可能性、厚みの薄さ、および非親水性材料で形成されることによって、先行技術の限界を克服するとともに存在する欠陥を解消することが可能である。
【0029】
特に、角膜への自然で生理学的な水分および酸素供給を変化させず、いかなる使用条件においても高レベルの快適性を有しながら、目の感染の危険性が大幅に低いとともに、簡単な定期メンテナンスのコンタクトレンズが得られる。
【0030】
さらに、製造コストは、先行技術に属するコンタクトレンズの製造コストと同等である。
さらに、本発明のコンタクトレンズは、10°から60°の間に含まれる、中/低の表面接触角を有する。有利には、この表面接触角により、一方では流体が微小突起の間に構成される空間を通って容易に移動可能なレンズを得ることを可能にするとともに、他方ではレンズとまぶたとの間の摩擦を最小限に抑えることができることにより、ユーザが非常に快適に使用できるレンズを提供する。
【0031】
本発明のこれらならびに他の態様、特徴、および利点は、添付の図面を参照して非限定的な例として記載されるいくつかの実施形態の以下の記載から明らかになるであろう。
理解を容易にするために、可能な限り同じ参照番号を使用して、図面内の同一の共通要素を特定している。一実施形態の要素および特徴は、さらなる説明なしに他の実施形態に適宜組み込むことが可能であることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本明細書に記載の実施形態によるコンタクトレンズの凹部の平面図。
【
図1a】
図1のコンタクトレンズの周辺領域の一部の拡大詳細図。
【
図2a】可能な実施形態による、
図1aに示される細部Aの拡大斜視図。
【
図2b】可能な実施形態による、
図1aに示される細部Aの拡大斜視図。
【
図2c】可能な実施形態による、
図1aに示される細部Aの拡大斜視図。
【
図3a】可能な実施形態による、コンタクトレンズの詳細図。
【
図3b】可能な実施形態による、コンタクトレンズの詳細図。
【
図3c】可能な実施形態による、コンタクトレンズの詳細図。
【
図3d】可能な実施形態による、コンタクトレンズの詳細図。
【
図4】
図3cの詳細を、異なる可能な構成で示す模式図。
【
図5】異なる実施形態によるコンタクトレンズの詳細を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
ここで、本発明の可能な実施形態を詳細に参照し、1つまたは複数の実施例を添付の図面に示す。各実施例は、本発明の説明のために記載され、本発明を限定するものとして理解されるべきではない。例えば、一実施形態の一部である限り、図示または記載された1つまたは複数の特徴は、さらなる実施形態を構成するよう、他の実施形態においてまたは関連して変更または採用されてよい。本発明は、そのような可能な変更例および変形例を全て含むものと理解される。
【0034】
これらの実施形態を記載するにあたって、添付の図面を用いた以下の説明で記載されるように、本説明がその適用において構成要素の構成および配置の詳細に限定されないことも明確にされる。本明細書は、他の実施形態を提供することができるとともに、様々な他の方法で取得または実行することができる。また、本明細書で使用される表現と用語は説明のみを目的としており、限定的であるとは見なすことはできないことが明確にされる。
【0035】
添付の図面は、参照番号10で示されるコンタクトレンズのいくつかの実施形態を記載するために使用される。
図1を参照すると、本発明によるコンタクトレンズ10は、コンタクトレンズ10の外径Deよりも小さい視覚直径Dv内に延在する内部領域11を含む。この内部領域11は平滑であり、使用中に目に対向する。
【0036】
有利には、以下に記載されかつ添付の図面に示される全ての実施形態において、コンタクトレンズ10は、先行技術において例えばポリ(アクリル酸メチル)(PMA)等として周知の、非親水性の生体適合ポリマー材料の組み合わせにより製造される。
【0037】
コンタクトレンズ10は、全体として凹形状を有し、したがって、内部領域11もまた、これと同様な凹形状を有する。
本明細書およびこの記載を通して、「平滑」という用語は、この内部領域11の表面の仕上げを示すよう意図されている。一方では高度な平滑さを有し、目に接触するのに適した表面の仕上げを有している。他方では、内部領域の表面から目に向かって突出する突起が完全に欠けている。
【0038】
視覚直径Dvは、コンタクトレンズ10の、目に対向する凹面上の瞳孔の最大拡張に関連する輪郭の広がりの最大の大きさで特定されることが好ましい。
人間の目を参照すると、好ましい実施形態によれば、内部領域11は、直径Deの円周と同心である直径Dvの円周で特定される。
【0039】
視覚直径Dvは、8mmに等しい最大値を示すとともに、通常好ましい値は4.5mmから5mmの間である。コンタクトレンズ10の外径Deは、9mmから13mmの間に含まれる。
【0040】
さらに、コンタクトレンズ10は、内部領域11の完全に外側でありしたがって視覚直径Dvの完全に外側に、最大では外径Deまで延在する周辺領域12を備える。環状形状のこの周辺領域12は、視覚直径Dvと外径Deとの間に延在し、内部領域11から自然に連続するよう構成される。したがって、周辺領域12も概して凹形状を有する。
【0041】
図2aの拡大図に示される1つの変形例によれば、コンタクトレンズ10は、使用中に目に向かって対向するよう配置された複数の微小突起13を単独で備える。
本明細書に記載されるいくつかの実施形態によれば、「ピラー」または「マイクロピラー」とも呼ばれるこれらの微小突起13は、周辺領域12に形成される。
【0042】
好ましい実施形態によれば、微小突起13は、周辺領域12の内面全体に設けられるとともに、視覚直径Dvから外径Deまで配置される。
好ましくは、微小突起13は、例えば、コンタクトレンズ10の中心から径方向に離間する複数の行によって構成される幾何学的パターンに従って、周辺領域12の内面全体にわたって均一的に分散される。
【0043】
微小突起13は、有利には、コンタクトレンズ10の周辺領域12に接続されたベース14と、目の角膜に当接しかつ接触を維持するよう構成および適合されたトップ15とを備える。微小突起13はコンタクトレンズ10と単一品として同じ材料から形成されているので、有利には、微小突起13はコンタクトレンズ10と単一体となるように一体化される。
【0044】
いくつかの好ましい実施形態によれば、特に
図3a、
図3b、
図3c、および
図3dを参照すると、微小突起13は、非限定的に、球面キャップ構造(
図3a)、半球形状による構造(
図3b)、円筒形状による構造(
図3c)、または円錐台形状による構造(
図3d)を有する。
【0045】
他の可能ではあるが優先的でない実施形態では、微小突起13は、楕円形状、放物面形状、または角柱形状を有して、例えば、直方体、角錐台、または多面体として一般に形成される。
【0046】
なお、図示の例では、微小突起は対称構造を有しているが、非対称構造を有する微小突起を設けることもできる。これは、微小突起が有することが可能などのような形状にも当てはまる。
【0047】
いずれの場合でも、微小突起13は、平坦または凸状の外面を有する、すなわち空洞を有さないことが好ましい。特に、目との接触面として機能するトップ15の少なくとも表面は、平坦または凸状である。
【0048】
したがって、微小突起13は、図に示すように、マイクロピラー構造を有する。微小突起13は、涙液膜の一部を保持する中央の空洞を有するような、例えば、環状形状を有していない。
【0049】
いくつかの実施形態によれば、純粋に非限定的な例として、コンタクトレンズ10上に配置された微小突起13の幾何学的形状に関して、いくつかの参照となる製造値が以下に与えられる。
【0050】
各微小突起13の高さH1、H2、H3、およびH4は、非限定的に、5μmから25μmの間に含まれ、好ましくかつ有利には、涙液膜の最大厚さは8.5μmから9.5μmの間に含まれることを考慮すると、約10μmに等しい。
【0051】
さらに、各微小突起13のベース直径D1、D2、D3、およびD4は、非限定的に、5μmから255μmの間に含まれる。
特に、半球形状(
図3b)および円筒形状(
図3c)に関して、ベース直径D2およびD3は、非限定的に、5μmから250μmの間に含まれ、好ましくは約50μmに等しい。最後に、円錐台形状(
図3d)を参照すると、ベース直径D4は、非限定的に、7μmから255μmの間に含まれ、好ましくは約54μmに等しい。
【0052】
加えて、特に
図3cおよび
図3dを参照すると、円筒形状および円錐台形状を有する微小突起に関連して、トップ15はそれぞれ、丸みを帯びた、または凸状の、目に対する接触面を構成する。換言すれば、曲面は、微小突起のトップ15に対応して特定され、その曲率半径Rb3、Rb4は、非限定的に、30μmから13000μmの間に含まれ、好ましくは約500μmに等しい。
【0053】
トップ15の形状は、トップ15をベース14に接続する斜面sm3、sm4の存在によっても特徴付けられる。非限定的な例として、斜面sm3、sm4は、微小突起13のベース14に平行な平面に対して、10°から50°の間に含まれる傾斜角を有し、好ましくは約25°に等しい。
【0054】
いくつかの実施形態によれば、各微小突起13は、そこから延在する(
図4を参照すると円筒形状の微小突起が非限定的な例として示されている)コンタクトレンズ10の周辺領域12の表面に対して微小突起13自体の傾斜角αをその向きに従って構成する縦軸を有する。特に、この傾斜角αは、非限定的に、α1=80°からα2=100°の間に含まれ、好ましくは、微小突起13の軸がコンタクトレンズ10の周辺領域12の表面に垂直である状態である90°に等しい。
図4におけるこれら3つ構成も参照にすると、左から右に、角度α=90°、α1=80°、α2=100°がそれぞれ示されている。
【0055】
いくつかの実施形態によれば、全体として、上記のように幾何学的に特徴付けられる微小突起13は、好ましくは、視覚直径Dvと外径Deとの間に含まれる環状クラウンに延在する、コンタクトレンズ10の周辺領域12の展開に対応する面積の6%から50%を占める。より好ましくは、微小突起13は、レンズの周辺領域12の展開に対応する面積の少なくとも約20%、特にこの面積の35%から50%の間に含まれる部分を占める。
【0056】
さらに、微小突起13は、好ましくは、円形状および/または楕円状の向きに従い均等かつ適切に分散されて、周辺領域12内に配置される。
図5を参照すると、1つの例示的な実施形態によれば、一方が他方に隣接しかつ円筒形状および/または円錐台形状を有する2つの微小突起13は、30μmから500μmの間に含まれ、好ましくは100μmに等しいピッチp2を有する。
【0057】
図5の実施形態を参照に、上述の「ステップ」という表現は、
図5では、微小突起13の中心間の径方向距離を示す。
再び
図5を参照すると、球面キャップ形状およびピッチp1を有する微小突起13の構成、ならびに半球形状およびピッチp2を有する微小突起13の構成は、微小突起13と角膜との間の接触面が正確であるだけであり、これにより移動中のコンタクトレンズ10の安定性は最適ではないので、可能ではあるが優先的でない実施形態を示す。さらに、微小突起13が球面キャップ形状を有する場合、コンタクトレンズ10と角膜との間の視覚直径Dvの外側の領域に作り出される空間は大幅に制限されるので、涙液膜の最適な循環を損なう。
【0058】
有利には、レンズ製造のための材料は、先行技術において周知のものから選択され、生体適合性があり、非親水性であり、より好ましくは、角膜上皮、涙液膜、レンズ表面、および微小突起の壁の間に安定した結合力を生み出すために、中/低の表面接触角、すなわち中/高の濡れ性値を有する。このようにして、涙液膜は、角膜と水晶体の間の空間に均一的にかつ安定して分布することが可能である。
【0059】
最終的には、コンタクトレンズ装着者に高い快適さを保証することが可能な好ましい実施形態は、円筒形状(
図3c)および円錘台形状(
図3d)を有する微小突起13を有するコンタクトレンズ10によって非限定的に表される。実際には、これらの2つの解決策によって、涙液交換と、微小突起13のトップ15に形成された接触面によるコンタクトレンズの優れた安定性との理想的な条件が有利に得られる。
【0060】
上記の円筒形状および円錐台形状の微小突起13の形状、大きさ、および配置により、各コンタクトレンズ10は、非限定的に、300から65000の間、好ましくは5000から20000の間、より好ましくは8000から15000の間に含まれる総数の微小突起13を含んでよい。
【0061】
図1aおよび
図2bを参照して記載される別の実施形態によれば、コンタクトレンズ10は、視覚直径Dvの外側の周辺領域12に、複数の微小突起13、および近傍に配置された異なる微小突起13である例えば
図2bでは4つの微小突起13の間に介在するような位置でレンズの表面に形成される複数の孔16、つまり微小孔を備える。
図1および
図1aにおける拡大図に示されるコンタクトレンズ10は、微小突起13および孔16を備える。しかしながら、
図1はまた、
図2aの拡大図に示される孔16のない変形例によるコンタクトレンズ10を示すことも明らかである。理由は、孔の大きさや数は、たとえレンズに孔がなくても、レンズの全体的な外観を変更しないようなものだからである。
【0062】
図2cの拡大図に模式的に示されている、本特許出願の保護範囲に含まれない別の実施形態によれば、微小突起13がないとともに、内部に複数の微小孔16のみが設けられるコンタクトレンズ10を提供することが可能である。
【0063】
他の好ましい実施形態によれば、孔16は、視覚直径Dvから外径Deまで、周辺領域12の内側に配置される。
他の好ましい実施形態によれば、孔16は、非限定的に、例えば、レンズの中心から始まる放射状パターンで、または円形状および/または楕円状の向きに従い、均等かつ適切に分散される。
【0064】
孔16は、レンズ10の内面をレンズ10の外面と連通させる貫通孔であり、まぶたおよび涙液膜が接触するよう意図されている。
有利には、これらの孔16の存在により、涙液の循環および交換効果の増加、ならびに目の角膜への酸素供給の増加が得られる。
【0065】
いくつかの実施形態によれば、孔16の直径は、非限定的に、3μmから20μmの間に含まれ、好ましくは約10μmに等しい。
その結果、微小突起13を有する各コンタクトレンズ10は、非限定的に、100から1000の間、好ましくは400から600の間に含まれる総数の孔を含んでよい。
【0066】
有利には、微小突起13および/または孔16を有するコンタクトレンズ10は、非親水性であると同時に角膜表面への適応性および中/低の表面接触角という優れた特徴を有する、生体適合性材料で製造される。特に、ソフトコンタクトレンズ(100μmから200μmの厚さ)およびRGPコンタクトレンズ(170μmから250μmの厚さ)より薄い、60μmから150μmの間に含まれる厚さのコンタクトレンズ10が得られる。
【0067】
したがって、本発明による微小突起13および/または孔16を有するコンタクトレンズ10を製造するために使用される材料の特性により、優れた許容性を有しつつ快適に装着でき衛生的なコンタクトレンズ10を得ることが可能である。
【0068】
実際には、微小突起13の存在により、目の自然な涙の約85%が維持される。同時に、微小突起13を有するコンタクトレンズ10を製造するための非親水性材料は、レンズを親水化しないので、いわゆる「スポンジ効果」を排除するとともに、表面を通る汚れの通過を防止する。最終的には、感染の危険性を大幅に低減するとともに、簡単な定期的メンテナンスを必要とするコンタクトレンズ10が得られる。
【0069】
その結果、本発明による微小突起13を有するコンタクトレンズ10により、患者が視力障害を補う補助としてのコンタクトレンズをしばしば中止する原因となる問題(例えば、快適さの程度の低下および感染の危険性)を解消することが可能である。
【0070】
特許請求の範囲によって定義される本発明の分野および範囲から逸脱することなく、上記のコンタクトレンズに部分的な変更および/または追加がされてよいことは明らかである。
【0071】
本発明をいくつかの特定の例を参照して記載してきたが、当業者は、他の多くの同等の形態のコンタクトレンズに確実に到達できることも明らかである。したがって、特許請求の範囲に記載された特徴は全て、特許請求の範囲によって定義される保護の範囲内に含まれる。
【0072】
以下の特許請求の範囲では、括弧内の参照記号は読みやすさのみを目的とする。したがって、参照記号は、特定の請求項で主張される保護の範囲に関する限定的な要素と見なされるべきではない。