(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】圧縮機、および冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
F04C 29/02 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
F04C29/02 311A
(21)【出願番号】P 2022557381
(86)(22)【出願日】2021-10-05
(86)【国際出願番号】 JP2021036763
(87)【国際公開番号】W WO2022080179
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2020172962
(32)【優先日】2020-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】日本キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】志田 勝吾
(72)【発明者】
【氏名】平山 卓也
【審査官】西山 智宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/155938(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/161965(WO,A1)
【文献】特開昭62-218680(JP,A)
【文献】特開平01-277695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C23/00-29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる中心線を有する円筒形状の密閉容器と、
前記密閉容器内に導入される冷媒を圧縮する圧縮機構部と、
主軸部、中間軸部、および副軸部を有し、前記中心線に沿って設けられる回転軸と、
前記圧縮機構部に前記回転軸を介して連結し、前記圧縮機構部を駆動する電動機部と、
前記密閉容器内に貯留される潤滑油を前記圧縮機構部へ給油する給油機構部と、を備え、
前記圧縮機構部は、
前記主軸部を回転可能に支持する主軸受と、
前記副軸部を回転可能に支持する副軸受と、
円形のシリンダー室を有して前記主軸受と前記副軸受との間に3つ以上積層して配置される環状のシリンダーと、
各前記シリンダー室に配置されるローリングピストンと、
各前記シリンダーに配置され、前記シリンダーの半径方向に往復運動するベーンと、
隣り合う前記シリンダー間を仕切る複数の仕切板と、を備え、
前記複数の仕切板のうちの1つの仕切板は、前記中間軸部を回転可能に支持する軸受として機能する中間軸受を含み、
前記中間軸受は、前記回転軸を挿し通す内周面に、上下方向に延び前記潤滑油を流通させる第一給油溝を有し、
前記ベーンは、上下方向へ一直線に並んで配置され、かつ前記ローリングピストンに接触して前記シリンダー室を前記冷媒が吸い込まれる空間と前記冷媒が圧縮される空間との2つの空間に分け、
前記第一給油溝は、各前記ローリングピストンの回転にともない各前記シリンダーに生じる圧縮負荷が最大となる
箇所以外に配置され
、
前記回転軸は、前記副軸部の外周面に設けられて上下方向に延び前記潤滑油を流通させる第二給油溝と、前記副軸受から突出する突出部分とを有し、
前記圧縮機構部は、前記突出部分に設けられるバランサーを備え、
てい
る圧縮機。
【請求項2】
前記圧縮機構部は、上下方向に積層される前記シリンダーのうち上方に配置された前記シリンダーから下方に配置された前記シリンダーへと順次駆動して前記冷媒を圧縮する請求項
1に記載の圧縮機。
【請求項3】
請求項1
または2に記載される圧縮機と、
放熱器と、
膨張装置と、
吸熱器と、
前記圧縮機、前記放熱器、前記膨張装置、および前記吸熱器を接続して前記冷媒を流通させる冷媒配管と、を備える冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機、および冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑油が貯留される縦置き円筒状の密閉容器を有する圧縮機筐体と、密閉容器の下部に配置される圧縮機構部と、密閉容器の上部に配置されて圧縮機構部を駆動する電動機部としてのモーターと、回転軸と、を備えるロータリー圧縮機が知られている。回転軸は、圧縮機筐体の上下に延びる中心線に沿って設けられている。圧縮機構部は、回転軸を介してモーターに連結されている。
【0003】
圧縮機構部は、環状のシリンダーと、シリンダーの上側を閉塞する上端板と、シリンダーの下側を閉塞する下端板と、上端板に設けられた主軸受と、下端板に設けられた副軸受と、を備えている。また、圧縮機構部は、回転軸の偏心部に嵌め合わされ、シリンダーの内周面に沿って公転する環状のピストンを備えている。ピストンは、シリンダー内のシリンダー室に配置されている。回転軸の主軸部は、主軸受に回転可能に支持され、回転軸の副軸部は、副軸受に回転可能に支持されている。
【0004】
副軸受の軸穴の内周面には、潤滑油を軸穴の下端から上端へ供給する螺旋状の給油溝が設けられている。給油溝は、回転軸の回転方向に対して傾斜し、かつ、回転軸の回転方向において下端から上端に向かって延びている。
【0005】
従来のロータリー圧縮機は、回転軸の回転によって、圧縮機筐体内に貯留された潤滑油を副軸受の軸穴の下端から上端へ延びる給油溝に沿って吸い上げる。吸い上げられた潤滑油は、回転軸と副軸受との摺動部位を潤滑する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のロータリー圧縮機は、圧縮時にガス負荷(圧縮負荷)が生じる。このガス負荷のピークが生じる方向は、例えば回転軸の偏心部の偏心方向に対して定まる。とりわけ、多気筒型のロータリー圧縮機の場合、回転軸の複数の偏心部の偏心方向は、気筒の数に応じて異なる方向を向く。具体的には、3気筒のロータリー圧縮機の回転軸の3つの偏心部の偏心方向は、例えば120°毎に三つの方向へ向く。このため、3気筒のロータリー圧縮機のガス負荷のピークとなる位置は、回転軸の外周面において3箇所となる。
【0008】
また、多気筒型のロータリー圧縮機は、主軸受と副軸受との間に仕切板を備えている。この仕切板は、回転軸の偏心部を回転可能に支持する中間軸受として機能する。このため、例えば3気筒のロータリー圧縮機の中間軸受に生じるガス負荷のピークとなる位置は、3つの圧縮室において、それぞれどの位置に生じるかで決まる。
【0009】
さらに、中間軸受と回転軸との摺動部位に給油溝を有する多気筒型のロータリー圧縮機の場合、回転軸の回転によって給油溝が配置された部位にガス負荷のピークとなる位置が重なる。この場合、給油溝を介して供給される潤滑油の油膜が形成され難くなり、潤滑信頼性が低下する。そのため、多気筒型のロータリー圧縮機では、中間軸受と回転軸との摺動部分を潤滑にすることが難しい。
【0010】
さらにまた、多気筒型のロータリー圧縮機は、圧縮機構部の圧縮運転時におけるアンバランスを低減するべく、回転軸の副軸受から突出した部位に設けられるバランサーを備えている場合がある。しかしながら、副軸受は、回転軸の回転によりバランサーの遠心力による負荷を内周面の全周に亘って受ける。このため、副軸受の内周面に給油溝を設けた場合、この遠心力による負荷が給油溝と重なることがあり、油膜が形成され難くなる。そのため、多気筒型のロータリー圧縮機では、副軸受の内周面に設けた給油溝によって回転軸と副軸受との摺動部分を潤滑にすることが難しい。
【0011】
そこで、本発明は、回転軸と軸受との摺動部分を安定的に潤滑可能な潤滑構造を有する圧縮機および冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の課題を解決するため本発明の実施形態に係る圧縮機は、上下方向に延びる中心線を有する円筒形状の密閉容器と、前記密閉容器内に導入される冷媒を圧縮する圧縮機構部と、主軸部、中間軸部、および副軸部を有し、前記中心線に沿って設けられる回転軸と、前記圧縮機構部に前記回転軸を介して連結し、前記圧縮機構部を駆動する電動機部と、前記密閉容器内に貯留される潤滑油を前記圧縮機構部へ給油する給油機構部と、を備え、前記圧縮機構部は、前記主軸部を回転可能に支持する主軸受と、前記副軸部を回転可能に支持する副軸受と、円形のシリンダー室を有して前記主軸受と前記副軸受との間に3つ以上積層して配置される環状のシリンダーと、各前記シリンダー室に配置されるローリングピストンと、各前記シリンダーに配置され、前記シリンダーの半径方向に往復運動するベーンと、隣り合う前記シリンダー間を仕切る複数の仕切板と、を備え、前記複数の仕切板のうちの1つの仕切板は、前記中間軸部を回転可能に支持する軸受として機能する中間軸受を含み、前記中間軸受は、前記回転軸を挿し通す内周面に、上下方向に延び前記潤滑油を流通させる第一給油溝を有し、前記ベーンは、上下方向へ一直線に並んで配置され、かつ前記ローリングピストンに接触して前記シリンダー室を前記冷媒が吸い込まれる空間と前記冷媒が圧縮される空間との2つの空間に分け、前記第一給油溝は、各前記ローリングピストンの回転にともない各前記シリンダーに生じる圧縮負荷が最大となる範囲以外に配置され、前記回転軸は、前記副軸部の外周面に設けられて上下方向に延び前記潤滑油を流通させる第二給油溝と、前記副軸受から突出する突出部分とを有し、前記圧縮機構部は、前記突出部分に設けられるバランサーを備えている。
【0014】
本発明の実施形態に係る圧縮機の前記圧縮機構部は、上下方向に積層される前記シリンダーのうち上方に配置された前記シリンダーから下方に配置された前記シリンダーへと順次駆動して前記冷媒を圧縮することが好ましい。
【0015】
また、本発明の実施形態に係る冷凍サイクル装置は、前記圧縮機と、放熱器と、膨張装置と、吸熱器と、前記圧縮機、前記放熱器、前記膨張装置、および前記吸熱器を接続して冷媒を流通させる冷媒配管と、を備えている。
【発明の効果】
【0016】
そこで、本発明は、回転軸と軸受との摺動部分を安定的に潤滑可能な潤滑構造を有する圧縮機および冷凍サイクル装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る冷凍サイクル装置および圧縮機を概略的に示す説明図。
【
図2】実施形態に係る圧縮機の圧縮機構部を示す横断面図。
【
図3】実施形態に係る圧縮機の中間軸受を示す横断面図。
【
図4】実施形態に係る圧縮機の副軸受を示す横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る圧縮機、および冷凍サイクル装置の実施形態について
図1から
図4を参照して説明する。なお、複数の図面中、同じまたは相当する構成には同一の符号が付されている。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る冷凍サイクル装置および圧縮機の概略的な図である。なお、
図1において、圧縮機は縦断面で示されている。
【0020】
図2は、本発明の実施形態に係る圧縮機の圧縮機構部における下方から見た横断面図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係る冷凍サイクル装置1は、例えば空気調和機である。冷凍サイクル装置1は、密閉型の回転圧縮機2(以下、単に「圧縮機2」と言う。)と、放熱器3(radiator)と、膨張装置5と、吸熱器6(heat absorber)と、アキュムレーター7と、冷媒配管8と、を備えている。冷媒配管8は、圧縮機2と放熱器3と膨張装置5と吸熱器6とアキュムレーター7とを順次に接続して冷媒を流通させる。放熱器3は、凝縮器(condenser)とも呼ばれる。吸熱器6は蒸発器(evaporator)とも呼ばれる。
【0022】
圧縮機2は、冷媒配管8を通じて吸熱器6を通過した冷媒を吸い込み、圧縮し、冷媒配管8を通じて高温高圧の冷媒を放熱器3へ吐き出す。
【0023】
圧縮機2は、縦置きされる円筒状の密閉容器11と、密閉容器11内の上半部に収容されるオープン巻線型電動機部12(以下、単に「電動機部12」と言う。)と、密閉容器11内の下半部に収容される圧縮機構部13と、電動機部12の回転駆動力を圧縮機構部13へ伝達する回転軸15と、回転軸15を回転自在に支持する主軸受16と、主軸受16と協働して回転軸15を回転自在に支持する副軸受17と、密閉容器11内に貯留される潤滑油21(冷凍機油)を圧縮機構部13へ給油する給油機構22と、を備えている。
【0024】
縦置きされる密閉容器11の中心線は、上下方向へ延びている。密閉容器11は、上下方向に延びる円筒形状の胴部11aと、胴部の上端部を塞ぐ鏡板11bと、胴部の下端部を塞ぐ鏡板11cと、を備えている。
【0025】
密閉容器11の上側の鏡板11bには、冷媒を密閉容器11外へ吐出する吐出管8aが接続されている。吐出管8aは冷媒配管8に繋がれている。また、密閉容器11の上側の鏡板11bには、電動機部12へ供給される電力を密閉容器11の外側から内側へ導く一対の密封端子25、26と、一対の端子台27、28と、が設けられている。それぞれの端子台27、28は、それぞれの密封端子25、26に設けられている。それぞれの端子台27、28には、それぞれの密封端子25、26に電気的に接続されて電力を供給する複数の電力線29が固定される。電力線29は、いわゆるリード線である。
【0026】
電動機部12は、圧縮機構部13を回転させる駆動力を発生させる。電動機部12は、圧縮機構部13よりも上方に配置されている。電動機部12は密閉容器11の内面に固定される筒状の固定子31と、固定子31の内側に配置されて圧縮機構部13の回転駆動力を発生させる回転子32と、固定子31から引き出されて一対の密封端子25、26に電気的に接続される複数の口出線33と、を備えている。
【0027】
回転子32は、磁石収容孔(図示省略)を有する回転子鉄心35と、磁石収容孔に収容される永久磁石(図示省略)と、を備えている。回転子32は、回転軸15に固定されている。回転子32および回転軸15の回転中心線Cは、固定子31の中心線に実質的に一致している。また、回転子32および回転軸15の回転中心線Cは、密閉容器11の中心線に実質的に一致している。
【0028】
複数の口出線33は、密封端子25、26を通じて固定子31に電力を供給する電力線であり、いわゆるリード線である。口出線33は、電動機部12の種類に応じて複数配線される。本実施形態では6本の口出線33が配線されている。
【0029】
なお、電動機部12は、オープン巻線型の他に、複数系統、例えば、二系統の三相巻線を備える電動機部であっても良い。
【0030】
回転軸15は、電動機部12と圧縮機構部13とを連結している。回転軸15は、電動機部12が発生させる回転駆動力を圧縮機構部13に伝達する。回転軸15は、回転子32に回転一体であって、回転子32より下方へ延びている。
【0031】
回転軸15の中間部分に位置する主軸部15aは、電動機部12と圧縮機構部13とを繋ぎ、主軸受16によって回転可能に支持されている。回転軸15の下端部分に位置する副軸部15bは、副軸受17によって回転可能に支持されている。主軸受16および副軸受17は、圧縮機構部13の一部でもある。換言すると、回転軸15は、圧縮機構部13を貫通して配置されている。
【0032】
また、回転軸15は、主軸受16に支持されている主軸部15aと副軸受17に支持されている副軸部15bとの間に、複数、例えば3つの偏心部36を備えている。それぞれの偏心部36は、回転軸15の回転中心線Cに不一致な中心を有する円盤、あるいは円柱である。回転軸15の副軸受17から突出する突出部分には、バランサー38が設けられている。
【0033】
圧縮機構部13は、密閉容器11内に導入される冷媒を圧縮する。電動機部12が回転軸15を回転駆動することによって、圧縮機構部13は、冷媒配管8からガス状の冷媒を吸込んで圧縮し、圧縮された高温高圧の冷媒を密閉容器11内に吐出する。
【0034】
圧縮機構部13は、多気筒型、例えば3気筒のロータリー式である。圧縮機構部13は、
図1および
図2に示すように、それぞれが円形のシリンダー室41を有する複数のシリンダー42と、それぞれのシリンダー室41内に配置される複数の環状のローラー43と、各シリンダー42においてシリンダー室41の径方向に配置されたベーン44と、を備えている。ローラー43は、回転軸15の偏心部36に嵌め合わされている。
【0035】
なお、回転軸15は、圧縮機2の平面視において反時計回りに回転するものとする。すなわち、回転軸15が回転しているとき、回転軸15の下方から見た
図2に示される偏心部36は、回転中心線C(
図1参照)を軸に、実線矢印Rで示す反時計回りに回転する。
【0036】
ローラー43は、電動機部12と接合された回転軸15の回転(
図2中、実線矢印Rで示す)によりシリンダー42の内壁に接しながらシリンダー42の中心軸と回転軸15とに対して偏心回転する。このとき、
図2中の実線矢印で示す方向がローラー43の偏心方向Xとなる。ローラー43は、ローリングピストンとも呼ばれる。ベーン44は、圧縮機構部13において、上下方向へ一直線に並んで配置されている。換言すると、ベーン44は、シリンダー42の周方向において略同一の位置に配置されている。また、ベーン44は、不図示のベーンスプリングによってローラー43に押し付けられながらシリンダー室41の径方向に往復運動する。このため、ベーン44は、この径方向においてシリンダー42とローラー43との間の空間を2つに区画する。
【0037】
ここで、電動機部12に最も近いシリンダー42を第一シリンダー42Aとし、電動機部12から最も遠いシリンダー42を第三シリンダー42Cとし、第一シリンダー42Aと第三シリンダー42Cとの間に配置されるシリンダー42を第二シリンダー42Bとする。なお、以下では、これら第一シリンダー42A、第二シリンダー42Bおよび第三シリンダー42Cを総称してシリンダー42と称する場合がある。
【0038】
圧縮機構部13は、第一シリンダー42Aの上面を塞ぐ主軸受16と、第一シリンダー42Aの下面および第二シリンダー42Bの上面を塞ぐ第一仕切板45Aと、第二シリンダー42Bの下面および第三シリンダー42Cの上面を塞ぐ第二仕切板45Bと、第三シリンダー42Cの下面を塞ぐ副軸受17と、を備えている。
【0039】
換言すると、第一シリンダー42Aの上面は、主軸受16によって閉鎖されている。第一シリンダー42Aの下面は、第一仕切板45Aによって閉鎖されている。第二シリンダー42Bの上面は、第一仕切板45Aによって閉鎖されている。第二シリンダー42Bの下面は、第二仕切板45Bによって閉鎖されている。第三シリンダー42Cの上面は、第二仕切板45Bによって閉鎖されている。第三シリンダー42Cの下面は、副軸受17によって閉鎖されている。
【0040】
つまり、第一シリンダー42Aは、主軸受16と第一仕切板45Aとの間に挟み込まれている。第二シリンダー42Bは、第一仕切板45Aと第二仕切板45Bとの間に挟み込まれている。第三シリンダー42Cは、第二仕切板45Bと副軸受17との間に挟み込まれている。
【0041】
主軸受16および第一仕切板45Aは、ボルトなどの締結部材46によって第二シリンダー42Bに一括して固定されている。つまり、主軸受16および第一仕切板45Aは、締結部材46によって第二シリンダー42Bに共締めされている。主軸受16には、第一シリンダー42Aのシリンダー室41内で圧縮された冷媒を吐出する第一吐出弁機構51Aと、第一吐出弁機構51Aに覆い被さる第一吐出マフラー52(主マフラー)と、が設けられている。第一吐出弁機構51Aは、圧縮機構部13の圧縮作用にともない第一シリンダー42Aのシリンダー室41内の圧力と第一吐出マフラー52内の圧力との圧力差が所定値に達したときに吐出ポート(図示省略)を開放して、圧縮された冷媒を第一吐出マフラー52内に吐出する。
【0042】
第一吐出マフラー52は、シリンダー42で圧縮される冷媒が吐出される空間を仕切っている。第一吐出マフラー52は、第一吐出マフラー52の内外を繋ぐ吐出孔(図示省略)を有している。第一吐出マフラー52内に吐出した圧縮冷媒は、吐出孔を通じて密閉容器11内へ吐出する。
【0043】
第二仕切板45Bには、第二シリンダー42Bのシリンダー室41内で圧縮された冷媒を吐出する第二吐出弁機構51B、および吐出室53が設けられている。主軸受16、第一シリンダー42A、第一仕切板45A、および第二シリンダー42Bは、第二仕切板45Bの吐出室53を第一吐出マフラー52内に繋げる第一孔(図示省略)を有している。第二吐出弁機構51Bは、圧縮機構部13の圧縮作用にともない第二シリンダー42Bのシリンダー室41内の圧力と吐出室53内の圧力との圧力差が所定値に達したときに吐出ポート(図示省略)を開放して、圧縮された冷媒を吐出室53内に吐出する。吐出室53内に吐出した冷媒は、第一孔を通って第一吐出マフラー52内に吐出する。第一孔を通って第一吐出マフラー52内に吐出した冷媒は、第一シリンダー42Aで圧縮された冷媒に合流する。なお、詳細は後述するが、本実施形態の場合、第二仕切板45Bは、仕切板部45Baと、回転軸15の中間軸部15Aを回転可能に支持する軸受として機能する中間軸受45Bbと、を含んで構成されている。
【0044】
副軸受17、第三シリンダー42C、および第二仕切板45Bは、ボルトなどの締結部材55によって第二シリンダー42Bに一括して固定されている。つまり、副軸受17、第三シリンダー42C、および第二仕切板45Bは、締結部材55によって第二シリンダー42Bに共締めされている。副軸受17には、第三シリンダー42Cのシリンダー室41内で圧縮された冷媒を吐出する第三吐出弁機構51Cと、第三吐出弁機構51Cに覆い被さる第二吐出マフラー56(副マフラー)と、が設けられている。第二吐出マフラー56は、第三シリンダー42Cで圧縮される冷媒が吐出される空間を仕切っている。主軸受16、第一シリンダー42A、第一仕切板45A、第二シリンダー42B、第二仕切板45B、および第三シリンダー42Cは、第二吐出マフラー56内の空間を第一吐出マフラー52内に繋げる第二孔57を有している。第三吐出弁機構51Cは、圧縮機構部13の圧縮作用にともない第三シリンダー42Cのシリンダー室41内の圧力と第二吐出マフラー56内の圧力との圧力差が所定値に達したときに吐出ポート(図示省略)を開放して、圧縮された冷媒を第二吐出マフラー56内に吐出する。第二吐出マフラー56内に吐出した冷媒は、第二孔57を通って第一吐出マフラー52内に吐出する。第一吐出マフラー52内に吐出した冷媒は、第一シリンダー42Aで圧縮された冷媒、および第二シリンダー42Bで圧縮された冷媒に合流する。
【0045】
このような圧縮工程では、各偏心部36の外周面では、ガスから受ける圧縮負荷が最大となる最大圧縮負荷が概ね偏心方向Xに対して直交する方向、具体的には、概ね偏心方向Xから回転方向側に90度進んだ方向に生じる。そのため、各シリンダー42における偏心部36の外周面においては、
図2の実線矢印P1で示す範囲に最大圧縮負荷が生じる。
【0046】
なお、第一孔は、第二孔57の一部であっても良い。また、第二仕切板45Bの吐出室53は、第二吐出マフラー56内に繋がれていても良い。つまり、第一孔は、第二吐出マフラー56内に繋がれていても良い。
【0047】
第一シリンダー42Aは、密閉容器11に複数箇所で溶接、例えばスポット溶接によって固定されたフレーム58にボルトなどの締結部材59で固定されている。つまり、フレーム58は、第一シリンダー42Aを介して電動機部12の回転子32、圧縮機構部13、および回転軸15を密閉容器11に支えている。なお、電動機部12の回転子32、圧縮機構部13、および回転軸15の密閉容器11の高さ方向における重心は、フレーム58の厚み(圧縮機2の高さ方向における寸法)の範囲に位置していることが好ましい。
【0048】
バランサー38は、副軸受17を覆う第二吐出マフラー56内に収容されている。バランサー38は、例えば、回転軸15の回転中心線C方向に平行な中心線を有する円板や、回転軸15の回転中心線Cを要とする扇形板である。バランサー38は、バランサー38の中心線から離れて偏心した位置に設けられて、バランサー38を貫通する貫通孔38aを有している。バランサー38の貫通孔38aには、回転軸15の下端部が圧入されている。貫通孔38aの偏心量は、圧縮運転時の圧縮機構部13の回転体のアンバランスを低減できるよう調整される。
【0049】
ところで、回転子32の上方に突出する回転軸15の上端部にバランサーを設ける場合には、このバランサーと回転軸15を支える軸受(主軸受16)との距離は、回転子32の軸方向寸法に依存する。このため、この距離に比べると、本実施形態のように副軸受17から突出する回転軸15の下端部にバランサー38を設ける場合には、バランサー38と回転軸15を支える軸受(副軸受17)との距離が極めて短縮される。そのため、本実施形態のようにバランサー38を配置することで、回転軸15および回転子32の撓みが抑制される。
【0050】
複数の吸込管61は、密閉容器11を貫いて、それぞれのシリンダー42のシリンダー室41に接続されている。それぞれのシリンダー42は、それぞれの吸込管61に繋がってシリンダー室41に到達する吸込孔を有している。第一吸込管61Aは、第一シリンダー42Aのシリンダー室41に繋がれている。第二吸込管61Bは、第二シリンダー42Bのシリンダー室41に繋がれている。第三吸込管61Cは、第三シリンダー42Cのシリンダー室41に繋がれている。なお、複数の吸込管61の数は、本実施形態のように複数のシリンダー42と同数であっても良いし、2つのシリンダー42で共有されていて、複数のシリンダー42より少数であっても良い。例えば、第二吸込管61Bは、第二仕切板45Bに繋がれていても良い。第二仕切板45Bには、第二仕切板45Bに繋がれ、かつ第二シリンダー42Bのシリンダー室41、および第三シリンダー42Cのシリンダー室41に分岐して2つのシリンダー室41に繋がる冷媒通路(図示省略)が設けられる。
【0051】
密閉容器11の下部は潤滑油21で満たされている。そして、圧縮機構部13の大部分は、密閉容器11内の潤滑油21中に浸されている。
【0052】
給油機構22は、密閉容器11内の潤滑油21を汲み上げて、圧縮機構部13の摺動部に供給する。給油機構22は、密閉容器11内の潤滑油21を汲み上げるポンプ65と、ポンプ65で汲み上げた潤滑油21を圧縮機構部13の摺動部へ送り込む油路66と、を含んでいる。
【0053】
ここで、「圧縮機構部13の摺動部」とは、例えば、偏心部36とローラー43との隙間、主軸受16と回転軸15との隙間、中間軸受45Bbと回転軸15との隙間、および、副軸受17と回転軸15との隙間を含んでいる。
【0054】
ポンプ65は、例えば、スクリューポンプ(アルキメディアン・スクリュー、アルキメデスの螺旋)である。スクリューポンプの吸込口は、密閉容器11に貯留されている潤滑油21に浸っている。
【0055】
ここで、第二吐出マフラー56は、回転軸15の下端部を第二吐出マフラー56外に露出させる給油機構挿通孔68を有している。回転軸15の下端部は、給油機構挿通孔68を通じて密閉容器11内の潤滑油21に浸されている。また、回転軸15は、回転軸15の下端部に開口し、回転軸15の上端部へ向かって延びるポンプ配置穴69を有している。
【0056】
そして、ポンプ65は、回転軸15のポンプ配置穴69内に配置されて、回転軸15の回転中心線Cに沿って螺旋状に延びるローター71を備えている。ローター71は、回転軸15に回転一体化されている。ローター71は、回転軸15とともに回転することで、回転軸15の下端部の開口から回転軸15のポンプ配置穴69内へ潤滑油21を連続的に汲み上げる。
【0057】
なお、ポンプ65は、密閉容器11内に設けられて回転軸15のポンプ配置穴69内に潤滑油21を連続的に供給できるものであれば、ローター71に限られない。ポンプ65は、回転軸15の回転駆動力を利用して駆動されるターボ形ポンプであっても良いし、容積ポンプであっても良い。この場合には、ポンプ配置穴69は、油路66の一部の役割を担う。
【0058】
油路66は、回転軸15に回転一体のポンプ65によって回転軸15のポンプ配置穴69に汲み上げられた潤滑油21を圧縮機構部13の摺動部へ送り潤滑する。
【0059】
油路66は、ポンプ配置穴69内の潤滑油21を第一シリンダー42Aに収容されている偏心部36とローラー43との隙間に給油する第一シリンダー給油孔73Aと、ポンプ配置穴69内の潤滑油21を第二シリンダー42Bに収容されている偏心部36とローラー43との隙間に給油する第二シリンダー給油孔73Bと、ポンプ配置穴69内の潤滑油21を第三シリンダー42Cに収容されている偏心部36とローラー43との隙間に給油する第三シリンダー給油孔73Cと、を有している。
【0060】
また、油路66は、ポンプ配置穴69内の潤滑油21を主軸受16と回転軸15との隙間に給油する主軸受給油孔75Aと、ポンプ配置穴69内の潤滑油21を副軸受17と回転軸15との隙間に給油する副軸受給油孔75Bと、を有している。
【0061】
アキュムレーター7は、吸熱器6でガス化しきれなかった液状の冷媒が圧縮機2に吸い込まれることを防ぐ。
【0062】
次いで、回転軸15と中間軸受45Bbとの潤滑構造について説明する。
【0063】
図3は、本発明の実施形態に係る圧縮機の中間軸受の横断面を
図1におけるA-A視野で示す拡大図である。
【0064】
図1および
図3に示すように、圧縮機構部13において、中間軸受45Bbは、回転軸15を挿し通す内周面45Bcに、上下方向、すなわち第二シリンダー42B側から第三シリンダー42C側へ向かって延びる第一給油溝81を有している。
【0065】
第一給油溝81は、内周面45Bcから中間軸受45Bbの外周面側へ向かって窪み、上方側で第二シリンダー給油孔73Bと連通し、第二シリンダー42Bに達している。また、第一給油溝81は、下方側で仕切板部45Baに達し、仕切板部45Baを介して第三シリンダー給油孔73Cと連通している。潤滑油21は、第一給油溝81を通って、回転軸15の中間軸部15Aと中間軸受45Bbとの摺動部分に供給される。
【0066】
具体的に、このような構成の回転軸15の中間軸部15Aと中間軸受45Bbとの潤滑構造では、回転軸15に回転一体のポンプ65によって回転軸15のポンプ配置穴69に汲み上げられ、かつ第二シリンダー給油孔73Bおよび第三シリンダー給油孔73Cから流れ出す潤滑油21を、中間軸部15Aの第一給油溝81に流入させて、中間軸部15Aと中間軸受45Bbとの隙間を潤滑にする。
【0067】
ここで、シリンダー42でガスを圧縮する際に生じる負荷について説明する。圧縮機構部13は、シリンダー42、ローラー43、およびベーン44によって2つに区画された空間においてガスを圧縮する。シリンダー42において発生する最大圧縮負荷は、ベーン44の位置に対応した位置に生じる。具体的には、各シリンダー42と偏心部36の間に発生する最大圧縮負荷は、ベーン44の位置より反回転方向側の位置に生じる。また、3つのシリンダー42のベーン44は、上下方向へ同一直線上に配置されている。このため、各シリンダー42において発生する最大圧縮負荷は、圧縮機構部13の上下方向の同一直線上に生じ、つまり、シリンダー42の同一の方向の範囲に生じる。
【0068】
シリンダー42の最大圧縮負荷の反力として、中間軸受45Bbの内周面45Bcに最大負荷が生じる。中間軸受45Bbの内周面45Bcの最大負荷は、例えば、シリンダー42の最大圧縮負荷が生じる位置(
図2の実線矢印P1)の対向位置、つまりシリンダー42の最大圧縮負荷が生じる位置から油路66を介して離隔する位置(
図3の実線矢印P3)に生じる。また、中間軸受45Bbの内周面45Bcの最大負荷の反作用として、回転軸15の中間軸部15Aの外周面にも最大負荷が生じる。中間軸部15Aの外周面における最大負荷は、中間軸受45Bbの内周面45Bcの最大負荷と重なる位置(
図3の実線矢印P2)に生じる。
【0069】
シリンダー42でガスを圧縮する際には、回転軸15が回転している。そのため、回転軸15の下方から見た
図3に示すように、回転軸15の中間軸部15Aの外周面は、回転中心線C(
図1参照)を軸に、対向する中間軸受45Bbの内周面45Bcを実線矢印Rで示す反時計回りに横切るように移動する。また、本実施形態の圧縮機2は、圧縮機構部13が3気筒のロータリー式であるため、回転軸15の偏心方向Xが気筒数に応じた角度(すなわち、120°)で等間隔に向けられている。これらにより、中間軸部15Aの外周面における最大負荷は、第一シリンダー42A、第二シリンダー42B、および第三シリンダー42Cのそれぞれの偏心部36に応じた位置(
図3の矢印P2で示す3箇所)において順々に生じる。
【0070】
そのため、第一給油溝81を仮に中間軸部15Aの外周面に設けた場合、回転軸15の回転に伴って第一給油溝81は、最大負荷となる中間軸受45Bbの内周面45Bcにおける実線矢印P3の範囲を横切る。つまり、第一給油溝81を仮に中間軸部15Aの外周面に設けた場合には、第1給油溝81は、圧縮負荷を受け易い。また、圧縮機構部13が多気筒ロータリー式である場合、中間軸部15Aの外周面において最大負荷を受ける範囲(
図3の矢印P2)が多くなり、第一給油溝81はさらに圧縮負荷を受けやすい。このように、第一給油溝81を中間軸部15Aの外周面に配置した場合、回転軸15と中間軸受45Bbとの摺動部分の潤滑信頼性が低下することとなる。
【0071】
そこで、本実施形態では、中間軸受45Bbの内周面45Bc、より具体的には、各シリンダー42による圧縮負荷が最大となる実線矢印P3の範囲以外に、第一給油溝81を配置している。
【0072】
回転軸15と中間軸受45Bbとの潤滑構造は、第一給油溝81の流路断面積、第一給油溝81の流路長さ、第一給油溝81とその上流側の油路66とを繋ぐ第二シリンダー給油孔73Bの断面積、第一給油溝81とその下流側の油路66とを繋ぐ第三シリンダー給油孔73Cの断面積、の少なくともいずれかを適宜に設定することで、回転軸15と中間軸受45Bbとの摺動部分における給油量が調整される。
【0073】
次に、回転軸15と副軸受17との潤滑構造について説明する。
【0074】
図4は、本発明の実施形態に係る圧縮機の副軸受を
図1におけるB-B視野で示す横断面図である。
【0075】
図4に示すように、本実施形態に係る圧縮機2の回転軸15(
図1参照)の副軸受17によって支持されている副軸部15bの外周面には、回転軸15の回転方向の逆方向かつ第三シリンダー42Cへ向かって延びる第二給油溝82が設けられている。つまり、第二給油溝82は、副軸受17の内周面78を臨んでいる。第二給油溝82は、回転軸15の回転中心線Cへ向かって窪み、副軸受給油孔75Bに繋がり、かつ副軸受給油孔75Bとの接続部分から延びて第三シリンダー42Cに達している。第二給油溝82は、副軸部15bの外周面に沿って螺旋状に延びている。平面視において反時計回りに回転軸15を回転させる圧縮機2では、第二給油溝82は、副軸受給油孔75Bとの接続部分から第三シリンダー42Cへ向かって時計回りの螺旋を描いている。潤滑油21は、第二給油溝82を通って、回転軸15の副軸部15bと副軸受17との摺動部分に供給される。
【0076】
ここで、回転軸15の回転に伴って副軸部15bは、
図4中に示す実線矢印P4の範囲で最大圧縮負荷を受ける。また、副軸受17は、第三シリンダー42Cからの圧縮負荷のみを受けるため、圧縮負荷の最大となる位置は
図4中に示す実線矢印P5の範囲で最大圧縮負荷を受けることとなる。加えて、副軸受17は、バランサー38による遠心力により、内周面78の全周に亘って負荷を受けることとなる。そのため、副軸受17側(すなわち、副軸受17の内周面78)に給油溝を設ける場合、給油溝に対して遠心力による負荷が作用し、摺動部分に油膜の形成が困難となる。
【0077】
そこで、本実施形態の圧縮機2では、副軸部15bの外周面に第二給油溝82を設けている。なお、副軸受17の実線矢印P5の範囲では、回転軸15の副軸部15bにおける最大圧縮負荷となるP4部分が通過する際に圧縮負荷が最大値となり、第二給油溝82が通過する際に圧縮負荷が最大値より低下している。つまり、副軸受17の実線矢印P5の範囲では、回転軸15の回転に伴って圧縮負荷が高くなったり、低くなったりと変動する。これに対し、副軸受17の内周面78は、全周に亘って副軸部15bにおける最大圧縮負荷となるP4部分が通過する。よって、副軸受17の実線矢印P5の範囲における圧縮負荷が低いときに通過可能な副軸部15bの外周面に第二給油溝82を設けることが好ましい。
【0078】
また、このような圧縮機構部13では、回転軸15の偏心部36が配置された偏心方向に応じてバランサー38を配置する方向が定まる。そのため、上方に位置する第一シリンダー42Aから順次下方に位置する第三シリンダー42Cへと圧縮工程を行う場合と、下方に位置する第三シリンダー42Cから順次上方に位置する第一シリンダー42Aへと圧縮工程を行う場合とで、バランサー38による遠心力の生じる方向が異なってくる。本実施形態の場合、前者(上方から下方への圧縮)が
図4に実線矢印M1で示す方向となり、後者(下方から上方への圧縮)が同図に実線矢印M2で示す方向となる。そして、副軸部15bは、第二給油溝82の位置と、遠心力の方向M1およびM2とが、相対的な位置を変えないまま回転軸15の駆動に伴って回転する。このとき、圧縮負荷が最大となる位置と、遠心力の方向とが近い程、その反対側となる方向に第二給油溝82を設けることで、これら圧縮負荷および遠心力による影響を回避できる傾向にある。したがって、圧縮機構部13では、上方に位置する第一シリンダー42Aから順次下方に位置する第三シリンダー42Cへと圧縮工程を行うことが好ましい。
【0079】
このような構成の回転軸15と副軸受17との潤滑構造は、回転軸15に回転一体のポンプ65によって回転軸15のポンプ配置穴69に汲み上げられ、かつ副軸受給油孔75Bから流れ出す潤滑油21を、回転軸15の第二給油溝82に流入させる。回転軸15の第二給油溝82に流れ込んだ潤滑油21は、回転軸15の回転に伴って副軸受給油孔75Bから第三シリンダー42Cへ向かって流れ、回転軸15と副軸受17との隙間を潤滑する。
【0080】
回転軸15と副軸受17との潤滑構造は、第二給油溝82の流路断面積、第二給油溝82の流路長さ、回転軸15の回転中心線Cに対する第二給油溝82の傾き、第二給油溝82とその上流側の油路66とを繋ぐ副軸受給油孔75Bの断面積の少なくともいずれかを適宜に設定することで、回転軸15と副軸受17との摺動部分における給油量が調整される。
【0081】
なお、第一給油溝81、第二給油溝82の流路断面積は、第一給油溝81、第二給油溝82の溝の深さと溝幅との組み合わせで設定される。
【0082】
さらに、本実施形態に係る第二給油溝82の長さは、回転軸15の外周面を周回するより短い。つまり、第二給油溝82は、回転軸15を1周していない。そのため、圧縮機2、および冷凍サイクル装置1は、第二給油溝82を容易に加工できる。なお、回転軸15の第二給油溝82には、ポンプ65が汲み上げた潤滑油21が常時供給される。
【0083】
第二給油溝82は、第三シリンダー42Cのローラー43の内側に開放されている。すなわち、第二給油溝82は、副軸受17の下端側の開口から流れ出る潤滑油21の量を抑えつつ、潤滑油21を第三シリンダー42Cのローラー43の内側へ流出させる。
【0084】
以上説明したように、本実施形態に係る圧縮機2、および冷凍サイクル装置1は、複数の仕切板45A、45Bのうち一つの仕切板45Bに設けられて回転軸15の中間軸部15Aを回転可能に支持する軸受として機能する中間軸受45Bbを有している。中間軸受45Bbは、回転軸15の中間軸部15Aを挿し通す内周面45Bcに、上下方向に延び潤滑油21を流通させる第一給油溝81を有する。
【0085】
そのため、圧縮機2、および冷凍サイクル装置1は、従来の圧縮機のように回転軸15の回転によって圧縮負荷の最大値となる部位(実線矢印P2、P3)に重なることなく第一給油溝81を設けている。この第一給油溝81に流れ込む潤滑油21は、回転軸15と中間軸受45Bbとの隙間の全体を確実に潤滑できる。
【0086】
また、本実施形態に係る圧縮機2、および冷凍サイクル装置1は、複数のシリンダー42にそれぞれ設けられて上下方向へ一直線に並んで配置されたベーンと、回転軸15の副軸部15bの外周面に設けられて上下方向に延び潤滑油21を流通させる第二給油溝82と、副軸受17から突出する回転軸15の突出部分に設けられるバランサー38と、を備えている。
【0087】
圧縮機2、および冷凍サイクル装置1は、副軸受17から突出する回転軸15の突出部分、すなわち第二吐出マフラー56内にバランサー38を配置することで、回転軸15の撓みを抑制し、かつ圧縮機構部13の回転体のアンバランスを容易に調整できる。
【0088】
さらに、副軸受17の実線矢印P5の範囲における圧縮負荷が低いときに通過可能な副軸部15bの外周面に第二給油溝82を設けることで、副軸部15bが遠心力と一定の間隔を保って回転するので、第二給油溝82が圧縮負荷の最大値となる位置と重なることを回避できる。よって、第二給油溝82に流れ込む潤滑油21で回転軸15と副軸受17との隙間に油膜を形成し、当該隙間の全体を確実に潤滑することができる。
【0089】
このように、圧縮機2、および冷凍サイクル装置1は、第一給油溝81、第二給油溝82によって、回転軸15と各軸受(中間軸受45Bb、副軸受17)との隙間の全体を確実に潤滑することができる。
【0090】
さらに、圧縮機構部13は、上下方向に積層されるシリンダー42のうちの上方に配置された第一シリンダー42Aから下方に配置された第三シリンダー42Cへと順次駆動して冷媒を圧縮することが好ましい。副軸部15bは、第二給油溝82の位置と、遠心力の方向M1およびM2とが、相対的な位置を変えないまま回転軸15の駆動に伴って回転する。このとき、圧縮負荷が最大となる位置と、遠心力の方向とが近い程、その反対側となる方向に第二給油溝82を設けることで、これら圧縮負荷および遠心力による影響を回避できる。
【0091】
さらに、圧縮機2、および冷凍サイクル装置1は、三気筒以上の圧縮機構部13を備えている。そのため、圧縮機2、および冷凍サイクル装置1は、圧縮機構部13の回転体のアンバランスの調整が、より深刻化する三気筒以上の圧縮機構部13であっても、回転軸15と、中間軸受45Bbおよび副軸受17との隙間を潤滑することができる。
【0092】
したがって、本実施形態に係る冷凍サイクル装置1、および圧縮機2によれば、回転軸15と、中間軸受45Bbおよび副軸受17との摺動部分を安定的に潤滑可能な潤滑構造を備えることができる。
【0093】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0094】
1…冷凍サイクル装置、2…回転圧縮機、3…放熱器、5…膨張装置、6…吸熱器、7…アキュムレーター、8…冷媒配管、8a…吐出管、11…密閉容器、11a…胴部、11b…鏡板、11c…鏡板、12…オープン巻線型電動機部、13…圧縮機構部、15…回転軸、15a…主軸部、15b…副軸部、15A…中間軸部、16…主軸受、17…副軸受、21…潤滑油、22…給油機構、25、26…密封端子、27、28…端子台、29…電力線、31…固定子、32…回転子、33…口出線、35…回転子鉄心、36…偏心部、38…バランサー、38a…貫通孔、41…シリンダー室、42…シリンダー、42A…第一シリンダー、42B…第二シリンダー、42C…第三シリンダー、43…ローラー、44…ベーン、45A…第一仕切板、45B…第二仕切板、45Ba…仕切板部、45Bb…中間軸受、46…締結部材、51A…第一吐出弁機構、51B…第二吐出弁機構、51C…第三吐出弁機構、52…第一吐出マフラー、53…吐出室、55…締結部材、56…第二吐出マフラー、57…第二孔、58…フレーム、59…締結部材、61…吸込管、61A…第一吸込管、61B…第二吸込管、61C…第三吸込管、65…ポンプ、66…油路、68…給油機構挿通孔、69…ポンプ配置穴、71…ローター、73A…第一シリンダー給油孔、73B…第二シリンダー給油孔、73C…第三シリンダー給油孔、75A…主軸受給油孔、75B…副軸受給油孔、78…副軸受の内周面、81…第一給油溝、82…第二給油溝。