(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】ボール回収システム
(51)【国際特許分類】
A63B 47/02 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
A63B47/02 B
(21)【出願番号】P 2022564965
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(86)【国際出願番号】 JP2020044363
(87)【国際公開番号】W WO2022113303
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100196221
【氏名又は名称】上潟口 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 英毅
(72)【発明者】
【氏名】中野 賢二
【審査官】赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0204717(US,A1)
【文献】特開平03-045276(JP,A)
【文献】登録実用新案第3039280(JP,U)
【文献】米国特許第05332350(US,A)
【文献】特開昭48-086631(JP,A)
【文献】特開2020-174955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 47/00-47/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面上のボールを回収するボール回収システム(1,1A)であって、
床面上を移動し、ボールを拾い上げるピッカー(2)と、
ボール集合空間(51,51A)、前記ボール集合空間(51,51A)よりも上方に位置する天面(71a,74a)、及び、前記ピッカー(2)が床面から前記天面(71a,74a)まで移動するために登坂する登坂傾斜面(72a,75a)を有し、前記天面(71a,74a)において前記ピッカー(2)が排出したボールを前記ボール集合空間(51,51A)に集合させるピット(5,5A)と、を備え、
前記ボール集合空間(51,51A)には、上部が開放された少なくとも1つのバスケット(BS)が配置され、ボールは、前記バスケット(BS)内に落下して貯留され、
前記ボール集合空間(51,51A)は、水平方向における一端部に開放部(52,52A)が形成されており、前記開放部(52,52A)を介して前記ボール集合空間(51,51A)から前記バスケット(BS)を取り出し可能に構成され
、
前記ボール集合空間(51,51A)に複数の前記バスケット(BS)が配置され、
前記ピット(5,5A)は、前記ピッカー(2)が排出したボールをガイドして前記複数のバスケット(BS)に分配する分配構造(8,8A)を有していることを特徴とする、ボール回収システム。
【請求項2】
前記ピット(5,5A)は、前記ピッカー(2)が前記天面(71a,74a)から床面まで移動するために降坂する降坂傾斜面(73a,75a)を有し、
前記登坂傾斜面(72a,75a)、前記天面(71a,74a)、及び前記降坂傾斜面(73a,75a)は、上面視で第1方向に沿うように配置され、
前記開放部(52,52A)は、前記ボール集合空間(51,51A)の、上面視で前記第1方向と交差する第2方向における端部に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のボール回収システム。
【請求項3】
前記ピット(5,5A)は、前記天面(71a,74a)を形成する板状部材(71,74)と、鉛直方向に延びる複数の柱部材(61)を有し前記板状部材(71,74)を下方から支持する支持体(6,6A)と、を有し、
前記ボール集合空間(51,51A)及び前記開放部(52,52A)は、前記複数の柱部材(61)の間に形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のボール回収システム。
【請求項4】
水平面に対して傾斜し、前記ピッカー(2)から排出されたボールを転動させる傾斜面が、前記天面(74a)及び前記分配構造(8,8A)の少なくとも一方に設けられていることを特徴とする、請求項
1から3のいずれか一項に記載のボール回収システム。
【請求項5】
前記天面(71a,74a)は、上面視で前記ボール集合空間(51,51A)の少なくとも一部を覆うように構成されていることを特徴とする、請求項1から
4のいずれか一項に記載のボール回収システム。
【請求項6】
前記ピッカー(2)は、ボールを転動させて前記ボール集合空間(51,51A)を指向させるピッカー傾斜面(45a)を有していることを特徴とする、請求項1から
5のいずれか一項に記載のボール回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面上のボールを回収するボール回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフ練習場等において、床面上に散在している多数のボールを次回の使用のために回収するシステムが知られている。例えば、特許文献1は、ピッカー及びピットを備えるシステムを開示している。ピッカーは、床面上を移動しながらボールを拾い上げ、ピッカーの筐体内に収容する。
【0003】
ピッカーは、次に、ピットに移動し、ピットのプラットホームにおいて筐体内からボールを排出する。ピッカーから排出されたボールは、プラットホームの下方のコンテナに集合する。作業者は、コンテナからボールを取り出すとともに、使用者がボールを使用している場所まで移送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2005/0204717号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載のシステムでは、作業者は、凹部であるコンテナからボールを取り出すために、ボールを持ち上げる必要がなる。したがって、多数のボールを同時に取り出そうとすると、その重量のため、作業負荷が大きなものになる。このように、従来のシステムは、ピットからボールを取り出す際の作業負荷に関して改善の余地を残していた。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、ピットからボールを取り出す際の作業負荷を軽減できるボール回収システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、本発明は、床面上のボールを回収するボール回収システムであって、床面上を移動し、ボールを拾い上げるピッカーと、ボール集合空間、ボール集合空間よりも上方に位置する天面、及び、ピッカーが床面から天面まで移動するために登坂する登坂傾斜面を有し、天面においてピッカーが排出したボールをボール集合空間に集合させるピットと、を備え、ボール集合空間には、上部が開放された少なくとも1つのバスケットが配置され、ボールは、バスケット内に落下して貯留され、ボール集合空間は、水平方向における一端部に開放部が形成されており、開放部を介してボール集合空間からバスケットを取り出し可能に構成されている。
【0008】
このように構成されたボール回収システムによれば、作業者は、ボールを貯留しているバスケットを移動させることにより、ボール集合空間からバスケットごとボールを取り出すことができる。これにより、バスケットを用いることなくボールをピットから取り出す他の形態と比較して、作業負荷を軽減することが可能になる。
【0009】
尚、本明細書において「床面」とは、ボールが散在する面を意味し、屋内に存在するものに限られない。したがって、本発明に係るボール回収システムは、屋内の床面上に散在するボールの回収に用いてもよいし、屋外の地面上に散在するボールの回収に用いてもよい。
【0010】
上記ボール回収システムにおいて、ピットは、ピッカーが天面から床面まで移動するために降坂する降坂傾斜面を有し、登坂傾斜面、天面、及び降坂傾斜面は、上面視で第1方向に沿うように配置され、開放部は、ボール集合空間の、上面視で第1方向と交差する第2方向における端部に形成されていてもよい。
【0011】
このように構成されたボール回収システムによれば、ピッカーを第1方向に沿って移動させることにより、登坂傾斜面を登坂させるとともに、降坂傾斜面を降坂させることが可能となる。また、バスケットを第2方向に移動させることにより、ボール集合空間からバスケットごとボールを取り出すことができる。すなわち、上記構成によれば、ピッカーの移動経路と、バスケットの取出経路とを確保することが可能になる。
【0012】
上記ボール回収システムにおいて、ピットは、天面を形成する板状部材と、鉛直方向に延びる複数の柱部材を有し板状部材を下方から支持する支持体と、を有し、ボール集合空間及び開放部は、複数の柱部材の間に形成されていてもよい。
【0013】
このように構成されたボール回収システムによれば、板状部材及び支持体という簡易な構成を用いてピットを構成しながら、天面、ボール集合空間、及び開放部を形成することが可能になる。
【0014】
上記ボール回収システムにおいて、ボール集合空間に複数のバスケットが配置されていてもよい。
【0015】
このように構成されたボール回収システムによれば、ボール集合空間からのバスケットの取り出しを複数回に分けて行うことが可能になる。これにより、大きな力を作用させることなく、多数のボールを貯留して重量が大きくなったバスケットの取出作業を行うことが可能になる。ボール集合空間から取り出された複数のバスケットは、台車やトラック等を用いて一度に移送してもよい。
【0016】
上記ボール回収システムにおいて、ピットは、ピッカーが排出したボールをガイドして複数のバスケットに分配する分配構造を有していてもよい。
【0017】
このように構成されたボール回収システムによれば、一部のバスケットに偏ってボールが貯留されることを防止できる。これにより、ボールを貯留している各バスケットの重量を均一にし、その結果、大きな力を作用させることなく、それらの取出作業を行うことが可能になる。
【0018】
上記ボール回収システムにおいて、水平面に対して傾斜し、ピッカーから排出されたボールを転動させる傾斜面が、天面及び分配構造の少なくとも一方に設けられていてもよい。
【0019】
このように構成されたボール回収システムによれば、ピッカーがボールを排出する位置を厳密に定めなくても、傾斜面でボールに指向性を与えることにより、ボールを導くことができる。
【0020】
上記ボール回収システムにおいて、天面は、上面視でボール集合空間の少なくとも一部を覆うように構成されていてもよい。
【0021】
このように構成されたボール回収システムによれば、天面においてボールを排出するピッカーと、ボール集合空間とを近接配置することが可能になる。この結果、ピッカーから排出されたボールを確実にボール集合空間に集合させることが可能になる。
【0022】
上記ボール回収システムにおいて、ピッカーは、ボールを転動させてボール集合空間を指向させるピッカー傾斜面を有していてもよい。
【0023】
このように構成されたボール回収システムによれば、簡易な構成で、ピッカーから排出されたボールを確実にボール集合空間に集合させることが可能になる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ピットからボールを取り出す際の作業負荷を軽減できるボール回収システムを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】一実施形態に係るボール回収システムの側面図である。
【
図6】他の実施形態に係るボール回収システムの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、一実施形態に係るボール回収システム1(以下「システム1」という。)の側面図である。システム1は、プレーヤがボールBLをショットするゴルフ練習場に適用され、その床面F上に散在している多数のボールBLを回収する。システム1は、ピッカー2と、ピット5と、を備えている。
【0027】
尚、説明の理解を容易にするため、以下の説明では、水平方向であって後述する登坂傾斜面72a、天面71a、及び降坂傾斜面73aが上面視で沿うように配置される方向をX方向とし、鉛直上方向をZ方向とし、X方向及びZ方向と直交する方向をY方向とする直交座標を用いて説明する。X方向は、本発明に係る「第1方向」の一例であり、Y方向は、本発明に係る「第2方向」の一例である。
図3以降においても、同様の座標が示されている。
【0028】
<ピッカー>
図1及び
図2を参照しながら、ピッカー2の構成について説明する。
図2は、ピッカー2の本体の断面図である。
図1に示されるように、ピッカー2は、本体21と、本体21を覆うカバー22と、を有している。
図2は、中央部で切断された状態のピッカー2を模式的に示している。本体21は、移動機体3と、回収輪41と、解放部材43と、タンク45と、を備えている。
【0029】
移動機体3は、フレーム31と、一対の後輪32と、一対の前輪33と、を備えている。後輪32はフレーム31の後部に設けられ、駆動部34により駆動させられる。また、前輪33はフレーム31の前部に設けられ、調整部37によりその向きが調整される。駆動部34は、電源である蓄電池35と、モータ36とを備える。尚、2つの後輪32が、いずれも、矢印R1で示される方向に回転した場合に移動機体3が移動する方向を「前」と称し、矢印R2で示される方向に回転した場合に移動機体3が移動する方向を「後」と称している。
【0030】
回収輪41は、後輪32と前輪33との間に配置されている。回収輪41は、多数の円形ディスクの集合体である。当該多数の円形ディスクは、いずれも同一構成であり、
図2の紙面奥行方向に等間隔で整列するように配置されている。隣接する円形ディスクの間には、複数のポケット41aが形成されている。複数のポケット41aは、円形ディスクの周方向に沿って互いに隣り合うように配置されている。
【0031】
解放部材43は、フレーム31に固定されている。解放部材43は、後述するように、回収輪41のポケット41aからボールBLを強制的に解放させる。
【0032】
タンク45は、解放部材43よりも後方においてフレーム31に固定されている。タンク45は、ピッカー2が拾い上げたボールBLを収容する空間を形成しており、その底面45aは傾斜している。詳細には、ピッカー2が載置される床面Fが水平面である場合、底面45aは、水平面Hに対して角度θ1だけ下方に傾斜している。底面45aは、本発明に係る「ピッカー傾斜面」の一例である。タンク45内の空間の後端部は後板47により区画されている。
【0033】
<ピット>
次に、
図1、
図3及び
図4を参照しながら、ピット5の構成について説明する。
図3は、ピット5の斜視図であり、
図4は、ピット5の平面図である。ピット5は、床面Fの一画、又は、床面Fの近傍に配置され、支持体6と、天板71と、傾斜板72,73と、分配構造8と、充電器9と、を備えている。説明の理解を容易にするため、
図3は、天板71の一部の表示を省略しており、
図4は、天板71の下方の構成の一部を破線で示している。
【0034】
支持体6は、柱部材61と、梁部材62と、をそれぞれ4本ずつ有している。さらに、支持体6は、一対の傾斜柱部材63と、一対の傾斜柱部材64と、を有している。柱部材61、梁部材62、及び傾斜柱部材63,64は、いずれも金属材料により形成され、直線的に延びる円筒形状の部材である。
【0035】
図1及び
図3に示されるように、4本の柱部材61は、水平方向に互いに間隔を空け、床面F上で鉛直方向に延びるように配置されている。
【0036】
梁部材62は、一対の第1梁部材621と、第1梁部材621よりも長い一対の第2梁部材622と、を有している。第1梁部材621及び第2梁部材622は、柱部材61,61間で略水平方向に延びるように配置されており、それぞれの両端部は、継手620を介して柱部材61,61の上端部に接続されている。
図4に示されるように、一対の第1梁部材621はX方向において互いに対向し、一対の第2梁部材622はY方向において互いに対向するように配置されている。このような第1梁部材621及び第2梁部材622の配置により、梁部材62は、全体として平面視で略長方形を呈している。
【0037】
図1及び
図4に示されるように、傾斜柱部材63は、梁部材62よりも-X方向側に配置され、傾斜柱部材64は、梁部材62よりもX方向側に配置されている。傾斜柱部材63,64は、その上端部が第1梁部材621に接続され、下端部が床面F上に載置されることにより、第1梁部材621と床面Fとの間で傾斜するように配置されている。
【0038】
天板71は、本発明に係る「板状部材」の一例であり、薄板形状を呈している。天板71は、その天面71aにピッカー2を載置し得るように、所定の剛性を発揮する材料により形成されている。
図3及び
図4に示されるように、天面71aの中央部には矩形の開口71bが開設されており、開口71bは、天板71を厚さ方向に貫通している。天板71は、支持体6により下方から支持され、床面Fとの間に隙間を形成し、天面71aが略水平となるように配置されている。
【0039】
図1及び
図3に示されるように、天板71の下方には、ボール集合空間51が形成されている。ボール集合空間51は、床面F、梁部材62、及び4本の柱部材61により大まかに区画された、略直方体形状の空間である。天面71aは上面視でボール集合空間51の全体を覆っている。
図3に示されるように、ボール集合空間51は、そのY方向側端部に開放部52が形成されている。
【0040】
傾斜板72,73は、薄板形状を呈している。傾斜板72は、一対の傾斜柱部材63により下方から支持され、傾斜板73は、一対の傾斜柱部材64により下方から支持されている。これにより、傾斜板72は、床面Fと天面71aの-X方向側端部との間で傾斜する登坂傾斜面72aを形成し、傾斜板73は、天面71aのX方向側端部と床面Fとの間で傾斜する降坂傾斜面73aを形成している。
【0041】
図3及び
図4に示されるように、分配構造8は、溝部材81と、4本の第1パイプ部材841と、4本の第2パイプ部材842と、を有している。
【0042】
溝部材81は、水平面に対して傾斜した2つの内側面82を有し、それらの間に上端から下端にかけて幅が漸次縮小する溝を形成している。内側面82は、本発明に係る「傾斜面」の一例である。各内側面82には、径の大きさが互いに略同一の円形状の貫通孔831,832,833が形成されている。貫通孔831は、内側面82の中央部に形成され、貫通孔832は、貫通孔831よりもY方向側及び-Y方向側に形成されている。貫通孔833は、貫通孔832よりもY方向側及び-Y方向側に形成されている。溝部材81は、その溝が天板71の開口71bの下方に位置するように、天板71に対して固定されている。
【0043】
第1パイプ部材841及び第2パイプ部材842は、円筒形状の可撓性部材である。第1パイプ部材841及び第2パイプ部材842の径の大きさは、貫通孔831,832,833の径の大きさと略同一である。第2パイプ部材842は第1パイプ部材841よりも長い。第1パイプ部材841の一端部は貫通孔831に接続され、第2パイプ部材842の一端部は貫通孔832に接続されている。第1パイプ部材841及び第2パイプ部材842は、それらの開放端部にかけて概ねX方向に沿って延びるように配置されている。
【0044】
充電器9は、天板71の側方に配置されている。充電器9は、天板71側に突出する電極91を有している。
【0045】
<ボールの回収>
次に、
図1乃至
図5を参照しながら、システム1によるボールBLの回収について説明する。
図5は、システム1の側面図であり、天面71aの近傍を拡大して示している。
【0046】
図4に示されるように、ピット5のボール集合空間51には、12個(X方向に6個、Y方向に2列)のバスケットBSが配置される。バスケットBSは、硬質樹脂により形成された汎用的な箱体であり、その上部は開放されている。X方向におけるボール集合空間51の中央部寄りにはバスケットBS1が配置され、バスケットBS1よりも外方にはバスケットBS2,BS3が配置されている。バスケットBS1は、貫通孔833の近傍に配置されている。また、バスケットBS2は、第1パイプ部材841の開放端部の近傍に配置され、バスケットBS3は、第2パイプ部材842の開放端部の近傍に配置されている。
【0047】
図2に示される蓄電池35から電力の供給を受けてモータ36がトルクを発生させると、後輪32が回転駆動し、ピッカー2がゴルフ練習場の床面F上を移動する。ピッカー2は、所定の制御プログラムに従って動作し、その移動方向は、調整部37が前輪33の向きを調整することにより変更される。ピッカー2は、衛星測位システムの衛星から測位信号(例えばGPS信号)を受信する等して自身の位置情報を取得しつつ、ボールBLの回収が必要な領域全体を移動するように、所定のプログラムに従って自動制御される。
【0048】
ピッカー2の回収輪41は、ピッカー2の前進に伴って床面F上を転動するように構成されている。これにより、床面F上のボールBLが回収輪41のポケット41aに進入して保持され、床面F上からボールBLが拾い上げられる。
【0049】
ポケット41aで保持されたボールBLは、回収輪41の転動に伴って上方に移送され、解放部材43に押し当てられる。ボールBLは、解放部材43により押圧されてポケット41aから排出され、タンク45内に落下する。これにより、タンク45内にボールBLが貯留される。タンク45内のボールBLの数が所定値に達した場合や、蓄電池35に貯えられている電力が所定量を下回った場合、ピッカー2はピット5に向かって移動する。
【0050】
ピッカー2は、前進してX方向に移動し、ピット5の登坂傾斜面72aを登坂することにより、床面Fから天面71aに移動する。ピッカー2は、天板71の開口71bの上方で静止し、
図2に破線で示されるように、タンク45の底面45aを下方に平行移動させる。これにより、底面45aと後板47との間に隙間が形成され、タンク45内のボールBLが当該隙間から排出される。上述したように底面45aは傾斜しているため、タンク45内のボールBLは、底面45a上を転動して-X方向を指向する。このため、ピッカー2から排出されたボールBLも同様に-X方向を指向する。
【0051】
ピッカー2のタンク45から排出されたボールBLは、天板71の開口71bを介して分配構造8の溝部材81内に落下する。上述したように、溝部材81の2つの内側面82は水平面に対して傾斜している。したがって、溝部材81内に落下したボールBLは、この内側面82の傾斜により転動して指向性を与えられ、貫通孔831,832,833のいずれか1つに進入する。
【0052】
貫通孔831に進入したボールBLは、第1パイプ部材841によりガイドされながら移動し、貫通孔832に進入したボールBLは、第2パイプ部材842によりガイドされながら移動する。これらのボールBLは、
図4に矢印A41,A42で示され、
図5に矢印A51,A52で示されるように、第1パイプ部材841、第2パイプ部材842の開放端から排出され、バスケットBS2,BS3内に落下する。貫通孔833に進入したボールBLは、
図4に矢印A43で示され、
図5に矢印A53で示されるように、バスケットBS1内に落下する。すなわち、分配構造8によるバスケットBS1,BS2,BS3へのボールBLの分配が行われ、バスケットBS1,BS2,BS3内にボールBLが貯留される。
【0053】
また、ピッカー2がピット5の天面71aにおいて静止すると、ピッカー2の側面に設けられている電極(不図示)が、充電器9の電極91と接続される。これにより、充電器9からピッカー2の蓄電池35に電力が供給され、蓄電池35の充電が行われる。
【0054】
ボールBLの排出や蓄電池35の充電が完了すると、ピッカー2は前進してX方向に移動し、ピット5の降坂傾斜面73aを降坂することにより、天面71aから床面Fに移動する。床面Fに至ったピッカー2は、他のボールBLを回収するために、さらに床面F上を移動する。
【0055】
ゴルフ練習場の作業者は、
図3に矢印A3で示されるように、バスケットBSをY方向に移動させることにより、開放部52を介してボール集合空間51からバスケットBSごとボールBLを取り出す。作業者は、このバスケットBSを車両の荷台等に載せ、プレーヤがボールBLをショットしている場所まで移送し、再度ショットできるようにプレーヤに供給する。
【0056】
<作用効果>
次に、システム1に基づく作用効果について説明する。
【0057】
このように構成されたシステム1によれば、作業者は、ボールBLを貯留しているバスケットBSを水平方向に移動させることにより、ボール集合空間51からバスケットBSごとボールBLを取り出すことができる。これにより、ボールBLを垂直方向に持ち上げてピットから取り出す他の形態と比較して、作業負荷を軽減することが可能になる。特に、手作業でボールBLを持ち上げる場合には、システム1により、その作業負荷をより軽減される。
【0058】
また、ピット5は、ピッカー2が天面71aから床面Fまで移動するために降坂する降坂傾斜面73aを有している。登坂傾斜面72a、天面71a、及び降坂傾斜面73aは、上面視でX方向に沿うように配置されている。開放部52は、ボール集合空間51の、Y方向における端部に形成されている。
【0059】
このように構成されたシステム1によれば、ピッカー2をX方向に沿って移動させることにより、登坂傾斜面72aを登坂させるとともに、降坂傾斜面73aを降坂させることが可能となる。つまり、ピッカー2に大きな方向転換を行わせることなく、一方向に沿って移動させるだけで、登坂及び降坂させることが可能になる。また、バスケットBSをY方向に移動させることにより、ボール集合空間51から水平方向にバスケットBSごとボールBLを取り出すことができる。すなわち、上記構成によれば、ピッカー2の移動経路と、バスケットBSの取出経路とを確保することが可能になる。降坂傾斜面73aに障害物が存在している場合等は、ピッカー2に、登坂傾斜面72aを降坂させてもよい。
【0060】
また、ピット5は、天面71aを形成する天板71と、鉛直方向に延びる複数の柱部材61を有し天板71を下方から支持する支持体6と、を有している。ボール集合空間51及び開放部52は、複数の柱部材61の間に形成されている。
【0061】
このように構成されたシステム1によれば、板状部材である天板71及び支持体6という簡易な構成を用いてピット5を構成しながら、天面71a、ボール集合空間51、及び開放部52を形成することが可能になる。
【0062】
また、ボール集合空間51に複数のバスケットBSが配置されている。
【0063】
このように構成されたシステム1によれば、ボール集合空間51からのバスケットBSの取り出しを複数回に分けて行うことが可能になる。これにより、大きな力を作用させることなく、多数のボールBLを貯留して重量が大きくなったバスケットBSの取出作業を行うことが可能になる。ボール集合空間51から取り出された複数のバスケットBSは、台車やトラック等を用いて一度に移送してもよい。
【0064】
また、ピット5は、ピッカー2が排出したボールBLをガイドして複数のバスケットBSに分配する分配構造8を有している。
【0065】
このように構成されたシステム1によれば、一部のバスケットBSに偏ってボールBLが貯留されることを防止できる。これにより、ボールBLを貯留している各バスケットBSの重量を均一にし、その結果、大きな力を作用させることなく、それらの取出作業を行うことが可能になる。
【0066】
また、天面71aは、上面視でボール集合空間51の少なくとも一部を覆うように構成されている。
【0067】
このように構成されたシステム1によれば、天面71aにおいてボールBLを排出するピッカー2と、ボール集合空間51とを近接配置することが可能になる。この結果、ピッカー2から排出されたボールBLを確実にボール集合空間51に集合させることが可能になる。
【0068】
次に、
図6及び
図7を参照しながら、他の実施形態に係るボール回収システム1A(以下「システム1A」という。)について説明する。
図6は、システム1Aの側面図であり、
図7は、ピット5Aの斜視図である。システム1Aの構成のうち、上述したシステム1の構成と同一ものには同一の符号を付し、説明を適宜省略する。
【0069】
尚、説明の理解を容易にするため、以下の説明では、水平方向であって後述する登降坂傾斜面75a及び天面74aが上面視で沿うように配置される方向をX方向とし、鉛直上方向をZ方向とし、X方向及びZ方向と直交する方向をY方向とする直交座標を用いて説明する。X方向は、本発明に係る「第1方向」の一例であり、Y方向は、本発明に係る「第2方向」の一例である。
【0070】
<ピット>
システム1Aのピット5Aは、支持体6Aと、天板74と、傾斜板75と、分配構造8Aと、を備えている。
【0071】
図6に示されるように、支持体6Aの第2梁部材622Aは屈曲しており、X方向側端部を含む一部は、水平面Hに対して角度θ2だけ傾斜している。具体的には、第2梁部材622Aの当該一部は、-X方向側の部位ほど下方に位置するように傾斜している。
【0072】
天板74は、本発明に係る「板状部材」の一例であり、薄板形状を呈している。天板74は、その天面74aにピッカー2を載置し得るように、所定の剛性を発揮する材料により形成されている。
図7に示されるように、天面74aのうち-X方向側端部の近傍には矩形の開口74bが開設されており、開口74bは、天板74を厚さ方向に貫通している。天板74は、第2梁部材622Aのうち傾斜している一部により下方から支持されることにより、床面Fとの間に隙間を形成し、天面74aが水平面Hに対して角度θ2だけ傾斜するように配置されている。天面74aは、本発明に係る「傾斜面」の一例である。
【0073】
天板74の下方には、ボール集合空間51Aが形成されている。ボール集合空間51は、床面F、第2梁部材622A、及び4本の柱部材61により大まかに区画された、略直方体形状の空間である。天面74aは上面視でボール集合空間51の一部を覆っている。
図7に示されるように、ボール集合空間51Aは、そのY方向側端部に開放部52Aが形成されている。
【0074】
傾斜板75は、薄板形状を呈している。傾斜板75は、一対の傾斜柱部材64により下方から支持されている。これにより、傾斜板75は、天面74aのX方向側端部と床面Fとの間で傾斜する登降坂傾斜面75aを形成している。登降坂傾斜面75aは、本発明に係る「登坂傾斜面」の一例であるとともに、「降坂傾斜面」の一例である。
【0075】
分配構造8Aでは、溝部材81の2つの内側面82のうち、-X方向側の内側面82のみに、貫通孔831,832,833が形成されている。第1パイプ部材841の一端部が貫通孔831に接続され、第2パイプ部材842の一端部が貫通孔832に接続されている。第1パイプ部材841及び第2パイプ部材842は、それらの開放端部にかけて概ねX方向に沿って延びるように配置されている。
【0076】
<ボールの回収>
次に、システム1AによるボールBLの回収について説明する。
【0077】
タンク45(
図2参照)内のボールBLの数が所定値に達した場合、ピッカー2はピット5Aに向かって移動する。ピッカー2は、後退して-X方向に移動し、ピット5Aの登降坂傾斜面75aを登坂することにより、床面Fから天面74aに移動する。ピッカー2は、さらに、天板74の開口74bの近傍で静止し、ボールBLを排出する。このとき、蓄電池35に所定量以上の電力が蓄えられている場合でも、蓄電池35の充電を行ってもよい。
【0078】
ピッカー2のタンク45から排出されたボールBLは、天面74a上に落下し、天面74a上を転動し、天板74の開口74bを介して分配構造8Aの溝部材81内に落下する。ボールBLは、溝部材81内から、貫通孔831,832,833のいずれか1つに進入し、バスケットBS1,BS2,BS3のいずれかの内部に落下する。すなわち、分配構造8AによるバスケットBS1,BS2,BS3へのボールBLの分配が行われ、バスケットBS1,BS2,BS3内にボールBLが貯留される。
【0079】
上述したように天面74aは水平面Hに対して角度θ2だけ傾斜しているため、ピッカー2のタンク45から排出されたボールBLは、その傾斜に沿って-X方向に転動する。したがって、
図7に示されるように、分配構造8Aからの距離が異なる点P1,P2,P3のいずれにボールBLが落下しても、矢印A71,A72,A73で示されるように、ボールBLは分配構造8Aを指向する。
【0080】
ボールBLの排出が完了すると、ピッカー2は前進してX方向に移動し、ピット5Aの登降坂傾斜面75aを降坂することにより、天面74aから床面Fに移動する。床面Fに至ったピッカー2は、他のボールBLを回収するために、さらに床面F上を移動する。ゴルフ練習場の作業者は、
図7に矢印A74で示されるように、バスケットBSをY方向に沿って移動させることにより、開放部52Aを介してボール集合空間51AからバスケットBSごとボールBLを取り出す。
【0081】
<作用効果>
次に、システム1Aに基づく作用効果について説明する。
【0082】
天面74aは、水平面Hに対して傾斜しており、ピッカー2が排出したボールBLを傾斜に沿って転動させて分配構造8Aを指向させるように形成されている。
【0083】
このように構成されたシステム1によれば、天面74aにおいてピッカー2がボールBLを排出する位置を厳密に定めなくても、天面74aの傾斜でボールBLに指向性を与えることにより、ボールBLを分配構造8Aに導くことができる。
【0084】
以上説明した実施形態や変形例は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。
【0085】
例えば、上述したシステム1では、登坂傾斜面72aと降坂傾斜面73aの水平面Hに対する角度は略同一であるが、本発明はこの形態に限定されない。各角度は、例えばシステム1が適用される場所等に応じて、ピッカー2が容易に登坂又は降坂できるよう、互いに異なるものであってもよい。
【0086】
また、上述したシステム1,1Aでは、ボールBLは、分配構造8,8Aにより各バスケットBSに分配されるが、本発明はこの形態に限定されない。例えば、システム1においては、分配構造8を用いることなく、天板71の開口71bを介して、ボール集合空間51のバスケットBS内にボールBLを落下させてもよい。また、システム1Aにおいては、分配構造8Aを用いることなく、天板74の開口74bを介して、又は、天板74aの-X方向側端部から、ボール集合空間51AのバスケットBS内にボールBLを落下させてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1,1A ボール回収システム
2 ピッカー
45a 底面(ピッカー傾斜面)
5,5A ピット
51,51A ボール集合空間
52,52A 開放部
6,6A 支持体
61 柱部材
71,74 天板(板状部材)
71a,74a 天面
72a 登坂傾斜面
73a 降坂傾斜面
75a 登降坂傾斜面(登坂傾斜面、降坂傾斜面)
8,8A 分配構造
BL ボール
BS バスケット
F 床面