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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】剥離容器の製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/06 20060101AFI20241112BHJP
   B29C 49/42 20060101ALI20241112BHJP
   B29C 49/22 20060101ALI20241112BHJP
   B29C 33/42 20060101ALI20241112BHJP
   B29C 45/37 20060101ALI20241112BHJP
   B29C 45/16 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
B29C49/06
B29C49/42
B29C49/22
B29C33/42
B29C45/37
B29C45/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022566934
(86)(22)【出願日】2021-11-30
(86)【国際出願番号】 JP2021043880
(87)【国際公開番号】W WO2022118840
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-06-26
(31)【優先権主張番号】P 2020199827
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】大池 俊輝
(72)【発明者】
【氏名】土屋 要一
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 保夫
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-338220(JP,A)
【文献】特開2007-326586(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0092711(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/06
B29C 49/42
B29C 49/22
B29C 33/42
B29C 45/37
B29C 45/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1射出金型を適用し、有底筒状のプリフォームの外層を第1の樹脂材料で射出成形する第1射出成形工程と、
第2射出金型を適用し、前記第1の樹脂材料とは異なる第2の樹脂材料を前記外層の内周側に射出して、前記外層の内側に内層が積層された多層のプリフォームを製造する第2射出成形工程と、
多層の前記プリフォームを射出成形時の保有熱を有する状態でブロー成形し、前記内層の充填物の排出に伴い前記内層が収縮する剥離容器を製造するブロー成形工程と、を有する剥離容器の製造方法であって、
前記第1射出成形工程では、前記第1射出金型に設けられた第1の突起部により、前記外層の少なくとも一部に第1の凹部を形成し、
前記第2射出成形工程では、前記第2射出金型に設けられた第2の突起部を前記第1の凹部に挿通させることで、前記外層を貫通するとともに前記内層の表面が露出する第2の凹部を前記プリフォームに形成し、
前記第2の突起部と前記第2の樹脂材料の接触により、前記第2の突起部を通過した前記第2の樹脂材料の流速および温度の少なくとも一方を変化させて、前記第2の凹部の対応位置を起点として周方向の他の部位よりも強度の高い領域を前記内層に形成する
剥離容器の製造方法。
【請求項2】
前記領域は、前記第2の凹部の対応位置から前記内層の径方向外側に向けて延びる
請求項1に記載の剥離容器の製造方法。
【請求項3】
前記ブロー成形工程では、前記第2の凹部の対応位置で前記外層に空気導入孔が形成される
請求項1または請求項2に記載の剥離容器の製造方法。
【請求項4】
第1射出金型を適用し、有底筒状のプリフォームの外層を第1の樹脂材料で射出成形する第1射出成形部と、
第2射出金型を適用し、前記第1の樹脂材料とは異なる第2の樹脂材料を前記外層の内周側に射出して、前記外層の内側に内層が積層された多層のプリフォームを製造する第2射出成形部と、
多層の前記プリフォームを射出成形時の保有熱を有する状態でブロー成形し、前記内層の充填物の排出に伴い前記内層が収縮する剥離容器を製造するブロー成形部と、を有し、
前記第1射出成形部では、前記第1射出金型に設けられた第1の突起部により、前記外層の少なくとも一部に第1の凹部を形成し、
前記第2射出成形部では、前記第2射出金型に設けられた第2の突起部を前記第1の凹部に挿通させることで、前記外層を貫通するとともに前記内層の表面が露出する第2の凹部を前記プリフォームに形成し、
前記第2の突起部と前記第2の樹脂材料の接触により、前記第2の突起部を通過した前記第2の樹脂材料の流速および温度の少なくとも一方を変化させて、前記第2の凹部の対応位置を起点として周方向の他の部位よりも強度の高い領域を前記内層に形成する
剥離容器の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離容器の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、二層構造を有する剥離容器の内層や、段ボール等の外箱に内挿されるバックインボックス(BIB)容器などのように、内容物の排出に応じて収縮する樹脂製容器がブロー成形で製造されている。
【0003】
この種の容器では、容器胴部の強度を周方向で規則的に相違させて、内容物の排出に伴う収縮変形が適切かつ規則的となるように誘導する構造を有するものが知られている。上記の構造は、例えば、特許文献1、2のように肉厚分布や温度分布を周方向で規則的に変化させたプリフォームをブロー成形することや、特許文献3のように胴部に収縮誘導用の凹凸を有する金型を用いてブロー成形をすることで製造できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-142186号公報
【文献】特許第3255485号公報
【文献】特許第4588200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の手法で容器に収縮を誘導する構造を形成する場合、収縮誘導用の構造部分が目立ちやすい。例えば容器全体が透明である場合には、収縮誘導用の構造部分が目立つと容器の美観に影響を及ぼす。
【0006】
そこで、本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、容器における収縮誘導用の構造部分を目立ちにくく形成できる剥離容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様である剥離容器の製造方法は、第1射出金型を適用し、有底筒状のプリフォームの外層を第1の樹脂材料で射出成形する第1射出成形工程と、第2射出金型を適用し、第1の樹脂材料とは異なる第2の樹脂材料を外層の内周側に射出して、外層の内側に内層が積層された多層のプリフォームを製造する第2射出成形工程と、多層のプリフォームを射出成形時の保有熱を有する状態でブロー成形し、内層の充填物の排出に伴い内層が収縮する剥離容器を製造するブロー成形工程と、を有する。第1射出成形工程では、第1射出金型に設けられた第1の突起部により、外層の少なくとも一部に第1の凹部を形成する。第2射出成形工程では、第2射出金型に設けられた第2の突起部を第1の凹部に挿通させることで、外層を貫通するとともに内層の表面が露出する第2の凹部をプリフォームに形成する。第2の突起部と第2の樹脂材料の接触により、第2の突起部を通過した第2の樹脂材料の流速および温度の少なくとも一方を変化させて、第2の凹部の対応位置を起点として周方向の他の部位よりも強度の高い領域を内層に形成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、容器における収縮誘導用の構造部分を目立ちにくく形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(a)は本実施形態のプリフォームの縦断面図であり、(b)はプリフォームの底面図である。
図2】(a)は本実施形態の剥離容器の正面図であり、(b)は本実施形態の剥離容器の底面図である。
図3】本実施形態の剥離容器の縦断面図である。
図4】内層が収縮した状態の剥離容器の一例を示す底面近傍の横断面図である。
図5】本実施形態のブロー成形装置の構成を模式的に示す図である。
図6】本実施形態のプリフォームの製造工程を示す図である。
図7】第1射出成形部での第1層の底部近傍を示す図である。
図8】第2射出成形部でのプリフォームの底部近傍を示す図である。
図9】剥離容器の製造方法の工程を示すフローチャートである。
図10】本実施形態の変形例における射出成形部の底部近傍を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態では、内容物の排出に応じて収縮可能な樹脂製容器(以下、単に容器とも称する)の一例として、剥離容器について説明する。
【0011】
実施形態では説明を分かり易くするため、本発明の主要部以外の構造や要素については、簡略化または省略して説明する。また、図面において、同じ要素には同じ符号を付す。なお、図面に示す各要素の形状、寸法などは模式的に示したもので、実際の形状、寸法などを示すものではない。
【0012】
<プリフォームの構成例>
まず、図1を参照して、本実施形態に係る剥離容器用のプリフォームの構成例を説明する。図1(a)は本実施形態のプリフォーム10の縦断面図であり、図1(b)はプリフォーム10の底面図である。
【0013】
プリフォーム10の全体形状は、一端側が開口され、他端側が閉塞された有底円筒形状である。プリフォーム10は、円筒状に形成された胴部14と、胴部14の他端側を閉塞する底部15と、胴部14の一端側の開口に形成された首部13とを備えている。
【0014】
プリフォーム10は、第1層(外層)11の内側に第2層(内層)12が積層された二層構造を有している。この第1層11と第2層12は、後述のように2段階の射出成形によりそれぞれ異なる熱可塑性の樹脂材料で形成される。一例として、第1層11は、成形性や透明性に優れた性質を有する合成樹脂で構成される。一方、第2層12は、容器の内容物を安定的に保管して劣化(酸化)を抑制できる性質(例えば、水分バリア性、ガスバリア性、耐熱性、耐薬品性)を有する合成樹脂で構成される。また、第1層11の樹脂材料には、第2層12の樹脂材料よりも融点が高いものが選択される。
【0015】
なお、第1層11の樹脂材料は、第2層12の樹脂材料よりも融点が高いものであれば、上記の関係を満たしていなくてもよい。例えば、第1層11の樹脂材料として、第2層12の樹脂材料よりも水分バリア性、ガスバリア性、耐熱性、耐薬品性のいずれかが高い樹脂材料を適用してもよい。
【0016】
以下、第1層11の樹脂材料を第1の樹脂材料とも称し、第2層12の樹脂材料を第2の樹脂材料とも称する。
第1の樹脂材料と第2の樹脂材料の組み合わせは、剥離容器の仕様に応じて適宜選択できる。具体的な材料の種類としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PCTA(ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、Tritan(トライタン(登録商標):イーストマンケミカル社製のコポリエステル)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PC(ポリカーボネート)、PES(ポリエーテルスルホン)、PPSU(ポリフェニルスルホン)、PS(ポリスチレン)、COP/COC(環状オレフィン系ポリマー)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル:アクリル)、PLA(ポリ乳酸)などが挙げられる。
【0017】
一例として、第1の樹脂材料は、PET(ポリエチレンテレフタレート)であり、第2の樹脂材料は、PP(ポリプロピレン)である。PPの融点は160~170℃程度であり、PETの融点はPPの融点よりも高く、245~260℃程度である。
【0018】
また、プリフォーム10の胴部14において、第2層12の厚さt2に対する第1層11の厚さt1の比(t1/t2)は1.5以上であることが好ましい。当該厚さの比は、成形される剥離容器の透明性を確保する観点から3.0以下であることが好ましい。
【0019】
また、プリフォーム10の底部15において、第1層11の底部の中心には第1層11を貫通して開口部16が形成されている。第1層11の開口部16は、第2層12によって内側から塞がれている。
【0020】
また、プリフォーム10の底部15には、剥離容器に空気導入孔を形成するための複数の凹部17が底部の中心を基準に放射状の配置で形成されている。凹部17は、略円形状であって、開口部16から径方向に間隔をおいて形成される。凹部17は、例えば、プリフォーム10の底部15の中心を基準として回転対称をなすように2つ以上、好ましくは4つ形成されている。本実施形態では凹部17が4つ形成されている例を示している。
【0021】
プリフォーム10の厚さ方向における凹部17の深さは、少なくとも凹部17が第1層11を貫通して、第2層12の表面が凹部17内に露出する寸法に設定されている。なお、二層構造のプリフォーム10に形成される凹部17は、第2の凹部の一例である。
【0022】
また、第2層12には、凹部17を起点として径方向外側に向けて延びる筋状の第1領域19が複数形成される。第1領域19は、それぞれプリフォーム10の底部15の中心を基準として回転対称をなすように周方向に2つ以上、好ましくは4つ形成される。第1領域19は、プリフォーム10の周方向の他の領域(第2領域とも称する)と比べると、樹脂の密度の高さおよび/または樹脂の配向などの物性が相違し、周方向や内径方向に変形しにくい特性を有する。例えば、第1領域19では樹脂の密度が第2領域よりも高い。また、第1領域19では、底部15から首部13に向かう長手方向へ樹脂の配向が指向性を有するのに対し、第2領域では樹脂の配向が第1領域19と比べて上記の長手方向と交差する方向にばらつく。
なお、第2層12における第1領域19は、目視では第2領域と外観上区別しにくいが、例えば光弾性法による歪計測などの手法で識別が可能である。
【0023】
<剥離容器の構成例>
次に、図2図3図4を参照して、本実施形態に係る樹脂製の剥離容器20の構成例を説明する。図2(a)、(b)は、本実施形態の剥離容器20の正面図および底面図である。図3は、本実施形態の剥離容器20の縦断面図である。また、図4は、内層が収縮した状態の剥離容器20の一例を示す底面近傍の横断面図である。
【0024】
剥離容器20は、プリフォーム10を延伸ブロー成形することで得られるボトル形状の樹脂製容器であり、例えば、例えば醤油などの調味液が収容される。なお、剥離容器20の用途は、化粧品の化粧液など、他の内容物を収容するものでもよい。
【0025】
図3に示すように、剥離容器20は、プリフォーム10と同様に、第1層11の内側に袋状の第2層12が積層された二層構造を有している。剥離容器20の胴部22において、第2層12の厚さt12に対する第1層11の厚さt11の比(t11/t12)は、プリフォーム10の胴部14における厚さの比(t1/t2)とほぼ同様である。
【0026】
図2(a)に示すように、剥離容器20は、上端に開口を有する首部21と、首部21から連続する円筒状の胴部22と、胴部22から連続する底部23とを有している。なお、胴部22は、一端が首部21に接続されて他端に向けて径方向に拡がる肩部22aと、他端が底部23に接続される本体部22cと、肩部22aの他端および本体部22cの一端にそれぞれ接続され、肩部22aと本体部22cを繋ぐくびれ部22bを含む形状であってもよい。なお、剥離容器20の横断面は軸方向のいずれの位置でも略円形状である。
【0027】
剥離容器20の製造においては、プリフォーム10の胴部14および底部15が延伸ブローで膨らむことで、剥離容器20の胴部22および底部23に賦形される。また、延伸ブローの際には、プリフォーム10の凹部17が延伸されることで、図2(b)に示すように、剥離容器20の底部23には第1層11を貫通する4つの空気導入孔24が形成される。
【0028】
また、剥離容器20の底部23において、第1層11の底部の中心には、プリフォーム10と同様に第1層11を貫通する開口部25が形成されている。開口部25には第2層12の材料が開口部25を塞いで充填され、剥離容器20の底部23の開口部25近傍においては第1層11の外側に第2層12が露出した状態となっている。剥離容器20の開口部25において第2層12が第1層11の外側に露出することで第2層12が第1層11に部分的に固定され、第1層11に対する第2層12の位置ずれが抑止される。
【0029】
さらに、剥離容器20の第2層12には、プリフォーム10の第1領域19が延伸されて形成された筋状の高強度部26が形成される。高強度部26は、空気導入孔24の位置から径方向外側に向けて延び、底部23の開口部25を基準として回転対称をなすように周方向に4つ形成される。
【0030】
剥離容器20の高強度部26は、プリフォーム10の場合と同様に、第2層12の周方向の他の領域(易変形部27とも称する)と比べると、樹脂の密度の高さおよび/または樹脂の配向などの物性が相違し、周方向に変形しにくい特性を有する。なお、高強度部26は、目視では易変形部27と外観上区別しにくいが、例えば光弾性法による歪計測などの手法で識別が可能である。
【0031】
剥離容器20においては、第2層12の内側の空間に内容物が充填される。剥離容器20では、第2層12から内容物が排出される際に空気導入孔24から第1層11と第2層12の間に徐々に空気が流入し、第1層11と第2層12が剥離していく。これにより、第2層12の内容物を空気に触れさせずに容器内で内容物の占める容積を空気に置き換えることができ、第2層12に充填された内容物を容器外に排出できる。
【0032】
剥離容器20では、第2層12に充填された内容物が排出されるにつれて、第2層12は内側に収縮してゆく。第2層12の高強度部26は易変形部27と比べて周方向に変形しにくいので、図4に示すように、第2層12が収縮するときには易変形部27が高強度部26よりも先に内側に収縮する。これにより、径方向に延びる高強度部26に沿って易変形部27が密着するように折り畳まれ、高強度部26によって第2層12の収縮変形が適切かつ規則的となるように誘導される。
【0033】
また、容器からの排液に伴う収縮では、第2層12は首部に近い上側の易変形部27から先に変形し、第2層12の底部側は内容物の荷重によって第1層11の底部に貼りついた状態となりやすい。そして、第2層12が収縮してゆくと、図4に示すように、第2層12の底部は、筋状の高強度部26の端部または底部中心と空気導入孔24の延長線の一部を角として、これらの角を結ぶ稜線28の位置で折り畳まれてゆく。その結果、第2層12の底部は円形状から多角形状に近づくように変形する。例えば、図4のように、空気導入孔24が4つの場合、第2層12の底部形状は矩形状となる。このように、第2層12では、底部側の稜線28の部分と筋状の高強度部26が柱状(梁状)となることで、他の部分が折り畳まれやすくなる。なお、容器からの排液に伴う収縮では、空気導入孔24からの給気により、第2層12には底部に近い下側または胴部側の易変形部27から先に変形が生じてもよい。また、排液に伴う収縮の初期段階において、第2層12の底部側の少なくとも易変形部27が第1層11の底部から剥離してもよい。
【0034】
<剥離容器の製造装置の説明>
図5は、本実施形態のブロー成形装置30の構成を模式的に示す図である。本実施形態のブロー成形装置30は、剥離容器20の製造装置の一例であって、プリフォーム10を室温まで冷却せずに射出成形時の保有熱(内部熱量)を活用して剥離容器20をブロー成形するホットパリソン方式(1ステージ方式とも称する)を採用する。
【0035】
ブロー成形装置30は、第1射出成形部31と、第2射出成形部32と、温度調整部33と、ブロー成形部34と、取り出し部35と、搬送機構36とを備える。第1射出成形部31、第2射出成形部32、温度調整部33、ブロー成形部34および取り出し部35は、搬送機構36を中心として所定角度(例えば72度)ずつ回転した位置に配置されている。なお、第1射出成形部31と第2射出成形部32との間に、プリフォーム10の第1層11を補助的に加熱または冷却するため、さらに温度調整部を追加してもよい。また、第1射出成形部31と第2射出成形部32には、搬送機構36の上方に不図示のコア型昇降機構が設けられている。
【0036】
(搬送機構36)
搬送機構36は、図5の紙面垂直方向の軸を中心に回転するように移動する移送板(不図示)を備える。移送板には、プリフォーム10の首部13(または剥離容器20の首部21)を保持するネック型36a(図5では不図示)が、所定角度ごとにそれぞれ1以上配置されている。搬送機構36は、移送板を所定角度分ずつ移動させることで、ネック型36aで保持されたプリフォーム10(または剥離容器20)を、第1射出成形部31、第2射出成形部32、温度調整部33、ブロー成形部34、取り出し部35の順に搬送する。なお、搬送機構36は、移送板を昇降させることもでき、第1射出成形部31や第2射出成形部32における型閉じや型開き(離型)に係る動作も行う。
【0037】
(第1射出成形部31)
第1射出成形部31は、キャビティ型40、コア型41、ホットランナー型42を備え、プリフォーム10の第1層11を製造する。キャビティ型40は、開口側(上方側)の第1のキャビティ型40Aと底面側(下方側)の第2のキャビティ型40Bから構成される。第1射出成形部31には、ホットランナー型42に第1の樹脂材料を供給する第1射出装置37が接続されている。キャビティ型40とホットランナー型42は、一体化した状態で、ブロー成形装置30の機台に固定されている。コア型41は、コア型昇降機構に固定されている。
【0038】
図6(a)、(b)は、本実施形態のプリフォーム10の第1層11を成形する第1射出成形部31を示す。図7は、第1射出成形部31での第1層11の底部近傍を示す図である。
【0039】
キャビティ型40は、第1層11の外周の形状を規定する。第1のキャビティ型40Aは、キャビティ型40の開口側に臨む金型であって、第1層11の胴部外周の形状を規定する。第2のキャビティ型40Bは、キャビティ型40の底面側に臨む金型であって、第1層11の底部外周の形状を規定する。また、ホットランナー型42は、第1射出装置37から第1の樹脂材料を導入する樹脂供給部42aを有する。コア型41は、第1層11の内周側の形状を規定する金型であって、キャビティ型40の内周側に上側から挿入される。なお、第1のキャビティ型40Aと第2のキャビティ型40Bは、一体的に形成されていてもよい。
【0040】
図6(a)、(b)に示すように、第1射出成形部31においては、上記のキャビティ型40、コア型41と、搬送機構36のネック型36aとを型閉じして第1層11の型空間を形成する。そして、上記の型空間の底部からホットランナー型42を介して第1の樹脂材料を流し込むことで、第1射出成形部31においてプリフォーム10の第1層11が製造される。
【0041】
第1層11の底部外周に臨む第2のキャビティ型40Bの上面側には、放射状の配置でリブ形状の第1の突起部44が複数設けられている。第1の突起部44は、樹脂供給部42aの位置する底部中央から径方向に間隔を空けて配置され、底部中央を基準として回転対称をなすように2つ以上、好ましくは4つ形成されている。図7(a)に示すように、第1層11の底部外周面からの第1の突起部44の突出量h1は、第1層11の厚さとほぼ同じ寸法である。そのため、第1射出成形部31を型閉じしたときには、第1の突起部44の先端はコア型41の表面に臨む。これにより、第1射出成形部31の射出成形においては、第1の突起部44により、プリフォーム10の凹部17に対応する位置に円形の凹部11aが第1層11に形成される。第1層11の凹部11aは、第1層11を貫通していてもよく、コア型41と第1の突起部44に挟まれて形成された薄膜を有するものであってもよい。なお、第1射出成形部31で形成された第1層11の凹部11aを、第1の凹部とも称する。
【0042】
また、図6(b)に示すように、ホットランナー型42の樹脂供給部42aには、コア型41に近接する位置まで軸方向に移動可能なバルブピン43が設けられる。バルブピン43は、第1の樹脂材料が型空間に充填されるまではホットランナー型42の内部に収容され、第1の樹脂材料が型空間に充填された後にコア型41に近接する位置まで突出する。このような射出成形時のバルブピン43の移動により、第1層11の底部中央に、樹脂材料の肉厚が周辺部よりも薄い薄膜部18を形成することができる。
【0043】
また、第1射出成形部31の型開きをしたときにも、搬送機構36のネック型36aは開放されずにそのままプリフォーム10の第1層11を保持して搬送する。第1射出成形部31で同時に成形されるプリフォーム10の数(すなわち、ブロー成形装置30で同時に成形できる剥離容器20の数)は、適宜設定できる。
【0044】
(第2射出成形部32)
第2射出成形部32は、キャビティ型50、コア型51、ホットランナー型52を備え、第1層11の内周側に第2層12を射出成形する。キャビティ型50は、開口側(上方側)の第1のキャビティ型50Aと底面側(下方側)の第2のキャビティ型50Bから構成される。第2射出成形部32には、ホットランナー型52に第2の樹脂材料を供給する第2射出装置38が接続されている。なお、第1のキャビティ型50Aと第2のキャビティ型50Bは、一体的に形成されていてもよい。
【0045】
図6(c)は、プリフォーム10の第2層12を成形する第2射出成形部32を示す。図8(a)、(b)は、第2射出成形部32でのプリフォーム10の底部近傍を示す図である。
【0046】
キャビティ型50は、第1層11を収容する金型である。第1のキャビティ型50Aは、キャビティ型50の開口側に臨む金型であって、第1層11の胴部を収容する。第2のキャビティ型50Bは、キャビティ型50の底面側に臨む金型であって、第1層11の底部を収容する。また、ホットランナー型52は、第2射出装置38から第2の樹脂材料を導入する樹脂供給部52aを有する。コア型51は、第2層12の内周側の形状を規定する金型であって、キャビティ型50の内周側に上側から挿入される。
【0047】
図6(c)に示すように、第2射出成形部32は、第1射出成形部31で射出成形されたプリフォーム10の第1層11を収容する。第2射出成形部32を型閉じした状態では、第1層11の内周側と、コア型51の表面との間に型空間が形成される。第2射出成形部32においては、上記の型空間の底部からホットランナー型52を介して第2の樹脂材料を流し込むことで、第1層11の内周側に第2層12が積層されたプリフォーム10が形成される。
【0048】
また、第1層11の底部外周に臨む第2のキャビティ型50Bの上面側には、第1射出成形部31の第1の突起部44と対応する所定位置に、プリフォーム10の凹部17の形状に対応した円形状の第2の突起部54が設けられている。第2の突起部54は、第2射出成形部32に第1層11が収容されたときに、第1層11の凹部11aに挿通される。
【0049】
ここで、図8(a)は、周方向において第2の突起部54の位置での縦断面を示す。図8(b)は、周方向において第2の突起部のない位置での縦断面を示す。
【0050】
図8(a)に示すように、第1層11の底部外周面からの第2の突起部54の突出量h2は、第1層11の厚さよりも大きい寸法である。つまり、第2の突起部54の突出量h2は、第1の突起部44の突出量h1よりも大きい(h2>h1)。そのため、第2射出成形部32を型閉じしたときには、第2の突起部54の先端は第1層11の凹部11aを貫通して第1層11の内周側まで突出する。第2射出成形部32の第2のキャビティ型50Bに第2の突起部54を設けることで、プリフォーム10の底部15に凹部17を形成することができる。
なお、特に限定するものではないが、第1の突起部44の突出量h1と第2の突起部54の突出量h2との差(第1層からの第2の突起部54の突出量)は、プリフォーム10の底部厚さの1/4以下から1/5以下とすることが好ましい。
【0051】
第2の突起部54の突出量h2は、プリフォーム10の厚さよりも小さく設定されている。つまり、第2射出成形部32での射出成形では、コア型51と第2の突起部54の間に第2の樹脂材料が流れ込むので、第2の突起部54により第2層12を貫通する孔は形成されない。
【0052】
第2射出成形部32において、第2の樹脂材料は第1層11とコア型51の間に充填されるが、図8(a)に示す第2の突起部54の位置では、第2の樹脂材料は第1層11の凹部11aを貫通した第2の突起部54とも接触する。また、第2射出成形部32において、図8(a)に示す第2の突起部54とコア型51の表面との間隔L1は、図8(b)に示す第1層11の内周面とコア型51の表面との間隔L2よりも小さい。
【0053】
(温度調整部33)
温度調整部33は、図示しない温度調整用の金型ユニット(温調ポットや温調コア)を備える。温度調整部33は、第2射出成形部32から搬送されるプリフォーム10を所定温度に保たれた金型ユニットに収容することで均温化や偏温除去を行い、プリフォーム10の温度を最終ブローに適した温度(例えば約90℃~105℃)に調整する。また、温度調整部33は、射出成形後の高温状態のプリフォーム10を冷却する機能も担う。
【0054】
(ブロー成形部34)
ブロー成形部34は、温度調整部33で温度調整されたプリフォーム10に対してブロー成形を行い、剥離容器20を製造する。
ブロー成形部34は、剥離容器20の形状に対応した一対の割型であるブローキャビティ型と、底型と、延伸ロッドおよびエア導入部材(いずれも不図示)を備える。ブロー成形部34は、プリフォーム10を延伸しながらブロー成形する。これにより、プリフォーム10がブローキャビティ型の形状に賦形されて剥離容器20を製造することができる。
【0055】
(取り出し部35)
取り出し部35は、ブロー成形部34で製造された剥離容器20の首部21をネック型36aから開放し、剥離容器20をブロー成形装置30の外部へ取り出すように構成されている。
【0056】
<容器の製造方法の説明>
次に、本実施形態のブロー成形装置30による剥離容器20の製造方法について説明する。図9は、剥離容器20の製造方法の工程を示すフローチャートである。
【0057】
(ステップS101:第1射出成形工程)
まず、図6(a)に示すように、第1射出成形部31において、キャビティ型40、コア型41と、ネック型36aで形成された型空間に第1射出装置37から第1の樹脂材料が射出され、プリフォーム10の第1層11が成形される。このとき、図7に示すように、第1の突起部44により、第1層11の底部には凹部11aが形成される。
【0058】
第1射出成形部31においては、図6(b)に示すように、プリフォーム10の第1層11が成形された後、コア型41に近接する位置までバルブピン43を突出させる工程が行われる。これにより、図7に示すように、第1層11の底部中央には、肉厚が周辺部よりも薄い薄膜部18が形成される。
【0059】
その後、第1射出成形部31を型開きし、第1層11を離型させる。第1射出成形部31が型開きされると、搬送機構36の移送板が所定角度分回転するように移動し、ネック型36aに保持されたプリフォーム10の第1層11が、射出成形時の保有熱を含んだ状態で第2射出成形部32に搬送される。
【0060】
(ステップS102:第2射出成形工程)
続いて、第2射出成形部32にプリフォーム10の第1層11が収容され、第2層12の射出成形が行われる。
【0061】
第2射出成形部32においては、図6(c)に示すように、第1層11の内周側と、第1層11の内周に臨むコア型51の表面との間に型空間が形成され、上記の型空間内にホットランナー型52から第2の樹脂材料を充填する。なお、第1層11の底部には薄膜部18が形成されているが、第2の樹脂材料の射出圧で薄膜部18が破断されて底部に開口部16ができ、上記の開口部16から第2の樹脂材料が第1層11の内周側に導かれる。
【0062】
ここで、第2射出成形部32で充填する第2の樹脂材料の温度は、第1の樹脂材料の融点よりも低い温度に設定される。また、第2射出成形部32で第2の樹脂材料を充填するときの第1層11の表面温度は、第2の樹脂材料の融点以下の温度に冷却されている。
【0063】
第2射出成形部32では、第1層11の外周側にはキャビティ型50が臨み、キャビティ型50によって第1層11の形状が外周側から保持される。このため、第2の樹脂材料が第1層11と接触しても第1層11の熱変形を抑制できる。
【0064】
また、第2射出成形部32では、第2の突起部54が第1層11の凹部11aを貫通して塞いでいるので、プリフォーム10の凹部17が第2の樹脂材料で塞がれることはない。また、第2射出成形部32における第2の突起部54は第1層の内周側まで先端が突出するので、第2の突起部54により形成されるプリフォーム10の凹部17は、第1層11を貫通して第2層12の表面が凹部17内に露出する形状となる。
【0065】
また、第2射出成形部32では、コア型51と第2の突起部54の間を通過して第2の樹脂材料が径方向外側に流れることで、第2層12に筋状の第1領域19が形成される。
【0066】
まず、第2射出成形部32において、図8(b)に示すように、第2の樹脂材料は第1層11とコア型51の表面の間に充填され、第2の樹脂材料は、コア型51との接触による冷却が行われる。これに対し、図8(a)に示す第2の突起部54の位置では、第2の樹脂材料はコア型51と第2の突起部54の間を流れ、コア型51と第2の突起部54との接触による冷却が行われる。そのため、第2の突起部54の位置では、第2の突起部54によって第2の樹脂材料が他の位置よりも強く冷却されるので、第2の樹脂材料の粘度が上がって第1領域19での樹脂の密度は高くなる。
【0067】
また、第2射出成形部32において、図8(a)に示す第2の突起部54とコア型51の表面との間隔L1は、図8(b)に示す第1層11とコア型51の表面との間隔L2よりも小さい。そのため、第2の突起部54とコア型51の間を通過する樹脂の流速は、第1層11とコア型51の間を通過する樹脂の流速よりも速くなる。これにより、第2射出成形部32の周方向において第2の樹脂材料は第2の突起部54の位置から充填され、第1領域19での樹脂の流れは、底部15から首部13に向かう長手方向に沿うものとなる。そのため、第1領域19での樹脂の配向は上記の長手方向に沿った指向性を有する。
【0068】
これに対し、第2層12の第2領域では第1領域19よりも遅れて樹脂が流入するので、第2領域での樹脂の流れには第1領域19から樹脂が周方向に広がる流れが加わる。そのため、第2領域では樹脂の配向は第1領域19と比べてばらつくものとなる。
【0069】
このように、第2層12の第1領域19は、第2領域よりも樹脂の密度が高くなるとともに、樹脂の配向がプリフォーム10の長手方向に沿うように指向性を有するので、周方向に変形しにくい特性を有する。
【0070】
以上のようにして、第1射出成形工程および第2射出成形工程により、第1層11の内周側に第2層12が積層されたプリフォーム10が製造される。
その後、第2射出成形部32が型開きされると、搬送機構36の移送板が所定角度分回転するように移動し、ネック型36aに保持されたプリフォーム10が、射出成形時の保有熱を含んだ状態で温度調整部33に搬送される。
【0071】
(ステップS103:温度調整工程)
続いて、温度調整部33において、温度調整用の金型ユニットにプリフォーム10が収容され、プリフォーム10の温度を最終ブローに適した温度に近づけるための温度調整が行われる。その後、搬送機構36の移送板が所定角度分回転するように移動し、ネック型36aに保持された温度調整後のプリフォーム10が、ブロー成形部34に搬送される。
【0072】
(ステップS104:ブロー成形工程)
続いて、ブロー成形部34において、剥離容器20のブロー成形が行われる。
まず、ブローキャビティ型を型閉じしてプリフォーム10を型空間に収容し、エア導入部材(ブローコア)を下降させることで、プリフォーム10の首部13にエア導入部材が当接される。そして、延伸ロッドを降下させてプリフォーム10の底部15を内面から抑えて、必要に応じて縦軸延伸を行いつつ、エア導入部材からブローエアを供給することで、プリフォーム10を横軸延伸する。これにより、プリフォーム10は、ブローキャビティ型の型空間に密着するように膨出して賦形され、剥離容器20にブロー成形される。
なお、ブロー成形の際には、プリフォーム10の第1領域19が延伸されることで剥離容器20の第2層12には、筋状の高強度部26が形成される。
【0073】
(ステップS105:容器取り出し工程)
ブロー成形が終了すると、ブローキャビティ型が型開きされる。これにより、ブロー成形部34から剥離容器20が移動可能となる。
続いて、搬送機構36の移送板が所定角度分回転するように移動し、剥離容器20が取り出し部35に搬送される。取り出し部35において、剥離容器20の首部21がネック型36aから開放され、剥離容器20がブロー成形装置30の外部へ取り出される。
【0074】
以上で、剥離容器の製造方法における1つのサイクルが終了する。その後、搬送機構36の移送板を所定角度分回転するように移動させることで、上記のS101からS105の各工程が繰り返される。なお、ブロー成形装置30の運転時には、1工程ずつの時間差を有する5組分の剥離容器20の製造が並列に実行される。
【0075】
また、ブロー成形装置30の構造上、第1射出成形工程、第2射出成形工程、温度調整工程、ブロー成形工程および容器取り出し工程の待機時間はそれぞれ同じ長さになる。同様に、各工程間の搬送時間もそれぞれ同じ長さになる。
【0076】
以下、本実施形態における容器の製造方法の効果を述べる。
本実施形態では、第1射出成形工程でプリフォーム10の第1層11(外層)を成形し、第2射出成形工程で第1層11の開口部16から第1層11の内側に第2層12(内層)を射出成形して二層構造のプリフォーム10が製造される。本実施形態によれば、融点の高い樹脂材料で外層を先に形成し、その後に外層よりも融点の低い樹脂材料で内層を形成できる。つまり、外層が射出成形時の保有熱を有する状態のまま内層の射出成形を連続的に行って、剥離容器20の仕様に適した二層構造のプリフォーム10を製造できる。本実施形態では、外層および内層がいずれも射出成形時の保有熱を有する状態で二層構造のプリフォーム10が離型されるので、ホットパリソン式のブロー成形法で剥離容器20を製造するときに好適なプリフォーム10を得ることができる。
【0077】
また、本実施形態では、第1射出成形工程において第1の突起部44で第1層11に凹部11aを形成する。そして、第2射出成形工程において第1層11の凹部11aに第1の突起部44よりも突出量の大きい第2の突起部54を貫通させて、プリフォーム10の底部15に凹部17を形成する。これにより、剥離容器20において、第1層11を貫通し第2層12の表面まで至る空気導入孔24を確実に形成できる。
【0078】
また、第2射出成形工程では、底部の周方向において第2の突起部54が部分的に形成された射出金型を用いて、第2の突起部54を通過した樹脂の流速および温度を変化させる。これにより、プリフォーム10の第2層12には、第2の突起部54によって形成された凹部17を起点として、周方向の他の部位よりも強度の高い第1領域19が形成される。
【0079】
そして、本実施形態では、射出成形時の保有熱を有する状態で、上記の二層構造のプリフォーム10を延伸ブロー成形して剥離容器20を製造する。このとき、プリフォーム10の第1領域19が延伸されることで、剥離容器20の第2層12には筋状の高強度部26が形成される。剥離容器20の第2層12の収縮では、径方向に延びる高強度部26に沿って易変形部27が密着するように折り畳まれ、高強度部26によって第2層12の収縮変形が適切かつ規則的となるように誘導される。
【0080】
また、プリフォーム10の第1領域19は、第2の突起部54によって樹脂の流速および温度を変化させて形成されるので、第2領域との外観上の相違がほとんどない。剥離容器20の第2層12における高強度部26についても同様である。そのため、本実施形態では、収縮誘導用の構造部分を目立ちにくく形成でき、剥離容器20の美観と機能性を向上させることができる。
【0081】
また、本実施形態では、空気導入孔24を形成するための第2の突起部54を利用して、容器の収縮誘導用の構造部分のもととなる第1領域19を第2層12に形成する。これにより、内容物の充填される第2層12の内面側を平坦に保ちつつ、収縮誘導用の構造部分を第2層12に作りこむことができるので、ブロー成形された剥離容器20において残量が少ないときの排液性を高めることができる。
【0082】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
【0083】
上記実施形態では、キャビティ型の底部にリブ状の突起を形成することで、プリフォーム10の底部15に円形の凹部17を形成する例を説明した。しかし、キャビティ型の底部に形成する突起の形状は上記に限定されず任意の形状であってもよい。また、キャビティ型の底部に形成される突起の数は、例えば単数でもよく、4以外の複数であってもよい。
【0084】
また、本発明のブロー成形装置30やブロー成形方法は、6ステーション式のブロー成形装置やブロー成形方法として実施されてもよい。すなわち、第1射出成形部31と第2射出成形部32の間(第1射出成形工程と第2射出成形工程の間)に、さらに温度調整部(温度調整工程)が追加で設けられていてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、2層構造の剥離容器の内層に収縮誘導用の高強度部を形成する場合について説明した。しかし、本発明は、内容物の排出に伴い収縮可能な単層の容器(BIB容器など)の製造でも適用できる。この場合のブロー成形装置は、射出成形部が1つ(いわゆる4ステーション型)となる。
【0086】
単層の容器に対応するプリフォーム10Aは、以下のように製造される。
例えば、図10に示すように、射出成形部の第2のキャビティ型40Bの底部において、コア型41とは接触しない高さの突起部44を周方向に部分的に形成する。図10の場合、周方向の全域で樹脂はコア型41と第2のキャビティ型40Bに接触するが、突起部44を通過する部分では樹脂の流速が速くなる。これにより、プリフォーム10Aの突起部44に対応する位置では、上述のように樹脂の配向に指向性を持たせることができる。
【0087】
以上のようにして、単層のプリフォーム10Aにおいても、上記実施形態と同様に、突起部44の対応位置から延びる筋状の第1領域19を形成できる。かかるプリフォーム10Aをブロー生成することで、単層の容器においても、上述した剥離容器20の第2層12と同様の高強度部26を形成できる。
【0088】
なお、上記実施形態の剥離容器20の高強度部26は、容器の底部23(あるいは容器の底部23から胴部22の下側領域まで)に部分的に形成されるものでもよい。例えば、容器の胴部22の上側領域(容器の肩部22aなど)には高強度部26が形成されていなくてもよい。上記の態様の場合、容器の底部側では易変形部27が高強度部26で周方向に分断される一方、高強度部26のない容器の胴部22の上側領域では第2層12が全周にわたって易変形部27となる。なお、上記の態様の場合、プリフォーム10の第2層12に形成される第1領域19も、底部側から胴部に向けて部分的に形成され、首部側には形成されない状態となる。
【0089】
加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0090】
10、10A…プリフォーム、11…第1層、11a…凹部、12…第2層、16…開口部、17…凹部、19…第1領域、20…剥離容器、24…空気導入孔、26…高強度部、27…易変形部、30…ブロー成形装置、31…第1射出成形部、32…第2射出成形部、34…ブロー成形部、37…第1射出装置、38…第2射出装置、40B,50B…キャビティ型、44…第1の突起部、54…第2の突起部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10