(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】基板、パッケージ、センサ装置、および電子機器
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20241112BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20241112BHJP
H01L 23/02 20060101ALI20241112BHJP
H01L 23/08 20060101ALI20241112BHJP
G01N 27/12 20060101ALI20241112BHJP
H05K 1/18 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
H05K1/02 C
H05K3/46 H
H01L23/02 G
H01L23/08 C
G01N27/12 B
H05K3/46 Q
H05K1/18 Q
(21)【出願番号】P 2022569962
(86)(22)【出願日】2021-12-13
(86)【国際出願番号】 JP2021045724
(87)【国際公開番号】W WO2022131181
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2020210677
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】中本 孝太郎
【審査官】鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-048087(JP,A)
【文献】特開2015-200644(JP,A)
【文献】特開平09-021774(JP,A)
【文献】特表2014-519042(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0146752(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 3/46
H01L 23/02
H01L 23/08
G01N 27/12
H05K 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1貫通孔を有するセラミック絶縁層である第1層と、
前記第1層に対して積層され、少なくとも1つの第2貫通孔を有するセラミック絶縁層である第2層と、を含み、
前記第2層は、複数の前記第2貫通孔を有しており、
前記第1貫通孔の直径は、10~50μmであり、
前記第2貫通孔の直径は、前記第1貫通孔の直径よりも大きく、
100μm以上200μm以下であり、
前記複数の第1貫通孔の少なくとも一部は、前記第1層の平面視において前記第2貫通孔と重なる
とともに、1つの前記第2貫通孔に対して、1つの前記第1貫通孔のみが重なるように位置している基板。
【請求項2】
複数の第1貫通孔を有するセラミック絶縁層である第1層と、
前記第1層に対して積層され、少なくとも1つの第2貫通孔を有するセラミック絶縁層である第2層と、を含み、
前記第1貫通孔の直径は、10~50μmであり、
前記第2貫通孔の直径は、前記第1貫通孔の直径よりも大きく、
前記複数の第1貫通孔の少なくとも一部は、前記第1層の平面視において前記第2貫通孔と重なる位置にあり、
前記第2層の平面視において、1つの前記第2貫通孔に対して前記複数の第1貫通孔が重なっており、
前記複数の第1貫通孔は、前記第1層の平面視において、千鳥配列を有している、基板。
【請求項3】
前記第1層の厚さは、50~150μmである、請求項1
または2に記載の基板。
【請求項4】
前記第2層は、複数の前記第2貫通孔を有する、請求項
2または3に記載の基板。
【請求項5】
前記第1層を、当該第1層の表面に対して垂直な平面で切断したときの断面における前記第1貫通孔の内壁面がなす線分と、前記断面における前記第1層の表面がなす線分との角度のうち、小さい方の角度は、80°以上90°以下である請求項1から4のいずれか1項に記載の基板。
【請求項6】
前記第1貫通孔の一方の開口部の中心と、他方の開口部の中心とを結ぶ線は、前記第1層の表面に対して、90°±10°である、請求項1~5のいずれか1項に記載の基板。
【請求項7】
前記第1貫通孔は、前記第2層の平面視において、前記第2貫通孔の外縁から離隔した位置にある、請求項1~6のいずれか1項に記載の基板。
【請求項8】
前記第1層または前記第2層の表面において、前記第1貫通孔および前記第2貫通孔を取り囲むように位置する枠部と、
前記枠部の内部または表面に位置する配線導体と、を有する、請求項1~
7のいずれか1項に記載の基板。
【請求項9】
前記枠部が前記第1層の表面に位置し、
前記第2貫通孔の直径は、100μm以上200μm以下である、請求項
8に記載の基板。
【請求項10】
蓋体としての請求項1~
7のいずれか1項に記載の基板と、
センサ素子を収容する収容凹部および配線を有する配線基板と、を備えるパッケージであって、
前記第1層が、前記収容凹部の側にあり、
前記第2貫通孔の直径は、100μm以上200μm以下であり、
前記第1層の、前記収容凹部の側の面と、前記収容凹部とによって規定される体積をV、
前記第1貫通孔および前記第2貫通孔の体積の総和をV’としたときに、
V’/V≧0.05%である、パッケージ。
【請求項11】
請求項1から
9のいずれか1項に記載の基板と、センサ素子とを備えるセンサ装置。
【請求項12】
請求項
9に記載の基板と、センサ素子とを備え、
前記センサ素子は、前記枠部内で前記基板に搭載されており、
前記基板と前記センサ素子との間の空間の体積をV、
前記第1貫通孔および前記第2貫通孔の体積の総和をV’としたときに、
V’/V>0.3%である、センサ装置。
【請求項13】
請求項
10に記載のパッケージと、センサ素子とを備えるセンサ装置。
【請求項14】
前記センサ素子は、気体の性質を検知する気体センサ素子である、請求項
11から
13のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項15】
請求項
11から
14のいずれか1項に記載のセンサ装置を備える、電子機器。
【請求項16】
センサ素子を収容する収容凹部を有する第1基板と、
前記収容凹部を塞ぐ第2基板と、を備えるパッケージであって、
前記第2基板は、複数の第1貫通孔を有するセラミック絶縁層である第1層と、
前記第1層に対して積層され、少なくとも1つの第2貫通孔を有するセラミック絶縁層である第2層と、を含み、
前記第1貫通孔の直径は、10~50μmであり、
前記第2貫通孔の直径は、前記第1貫通孔の直径よりも大きく、
前記複数の第1貫通孔の少なくとも一部は、前記第1層の平面視において前記第2貫通孔と重なる位置にあり、
前記第2層が前記収容凹部側にあり、
前記第2層の平面視において、1つの前記第2貫通孔に対して前記複数の第1貫通孔が重なっており、
前記複数の第1貫通孔は、前記第1層の平面視において、千鳥配列を有している、パッケージ。
【請求項17】
センサ素子を収容する収容凹部を有する第1基板と、
前記収容凹部を塞ぐ第2基板と、を備えるパッケージであって、
前記第2基板は、複数の第1貫通孔を有するセラミック絶縁層である第1層と、
前記第1層に対して積層され、少なくとも1つの第2貫通孔を有するセラミック絶縁層である第2層と、を含み、
前記第1貫通孔の直径は、10~50μmであり、
前記第2貫通孔の直径は、前記第1貫通孔の直径よりも大きく、
前記複数の第1貫通孔の少なくとも一部は、前記第1層の平面視において前記第2貫通孔と重なる位置にあり、
前記第1層が前記収容凹部側にある、パッケージ。
【請求項18】
センサ素子が搭載される基板であって、
前記基板は、複数の第1貫通孔を有するセラミック絶縁層である第1層と、
前記第1層に対して積層され、少なくとも1つの第2貫通孔を有するセラミック絶縁層である第2層と、
前記第2層の表面において、前記第1貫通孔および前記第2貫通孔を取り囲むように位置する枠部と、
配線導体と、を有しており、
前記第1貫通孔の直径は、10~50μmであり、
前記第2貫通孔の直径は、前記第1貫通孔の直径よりも大きく、
前記複数の第1貫通孔の少なくとも一部は、前記第1層の平面視において前記第2貫通孔と重なる位置にある、基板。
【請求項19】
請求項16または17に記載のパッケージと、センサ素子とを備える、センサ装置。
【請求項20】
請求項18に記載の基板と、センサ素子とを備える、センサ装置。
【請求項21】
前記センサ素子は、前記基板に対してフリップチップ接続される、請求項20に記載のセンサ装置。
【請求項22】
前記基板と、前記センサ素子との間に、前記第1貫通孔と導通する空間の体積を低減する封止部材を備える、請求項20または21に記載のセンサ装置。
【請求項23】
前記センサ素子はガスセンサ素子であり、
前記ガスセンサ素子は、前記基板側に突出した感ガス部を備え、
前記感ガス部は、前記第2貫通孔内に収容されている、請求項20~22のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項24】
請求項19から23のいずれか1項に記載のセンサ装置を備える電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、素子を搭載する基板およびパッケージ、前記素子を搭載したセンサ装置、ならびに前記装置を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンなどのモバイルデバイスには、種々のセンサが搭載される。特に気体の性質を検知するセンサは、通気のための貫通孔を有するため、デバイスの筐体に防水シートを貼ることにより、防水性を向上させていた。しかしながら、防水シートとして通常用いられるシートは高価である。また、筐体内側に防水シートを貼る工程が必要となる。さらに、小型デバイスにおいては、防水シートを貼り付けることが、構造的に困難である場合もある。そのため、通気性に優れ、防水構造を有する基板およびセンサ装置が所望されている。
【0003】
特許文献1には、直径0.1mm~0.6mm、長さ1mm~5mmのマイクロチャネルを有する防水カバー体構造が開示されている。
【0004】
特許文献2には、シリコン(Si)などを用いて構成される板状の防水部材が開示されている。当該防水部材は、その上下面を貫通する複数の貫通孔を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国実用新案登録公報「第3201758号」
【文献】日本国公開特許公報「特開2019-124499号」
【発明の概要】
【0006】
本開示の一態様に係る基板は、複数の第1貫通孔を有するセラミック絶縁層である第1層と、前記第1層に対して積層され、少なくとも1つの第2貫通孔を有するセラミック絶縁層である第2層と、を含む。前記第1貫通孔の直径は、10~50μmであり、前記第2貫通孔の直径は、前記第1貫通孔の直径よりも大きく、前記複数の第1貫通孔の少なくとも一部は、前記第1層の平面視において前記第2貫通孔と重なる位置にある。
【0007】
本開示の一態様に係るパッケージは、蓋体としての前記基板と、センサ素子を収容する収容凹部および配線を有する配線基板と、を備える。前記第1層は、前記収容凹部の側にある。前記第2貫通孔の直径は、100μm以上200μm以下である。前記第1層の、前記収容凹部の側の面と、前記収容凹部とによって規定される体積をV、前記第1貫通孔および前記第2貫通孔の体積の総和をV’としたときに、V’/V≧0.05%である。
【0008】
本開示の一態様に係るセンサ装置は、前記基板と、センサ素子とを備える。
【0009】
本開示の一態様に係るセンサ装置は、前記パッケージと、センサ素子とを備える。
【0010】
本開示の一態様に係る電子機器は、前記センサ装置を備える。
【0011】
本開示の一態様に係るパッケージは、センサ素子を収容する収容凹部を有する第1基板と、前記収容凹部を塞ぐ第2基板と、を備える。前記第2基板は、複数の第1貫通孔を有するセラミック絶縁層である第1層と、前記第1層に対して積層され、少なくとも1つの第2貫通孔を有するセラミック絶縁層である第2層と、を含む。前記第1貫通孔の直径は、10~50μmである。前記第2貫通孔の直径は、前記第1貫通孔の直径よりも大きい。前記複数の第1貫通孔の少なくとも一部は、前記第1層の平面視において前記第2貫通孔と重なる位置にある。前記第2層は前記収容凹部側にある。
【0012】
本開示の一態様に係る基板は、センサ素子が搭載される。前記基板は、複数の第1貫通孔を有するセラミック絶縁層である第1層と、前記第1層に対して積層され、少なくとも1つの第2貫通孔を有するセラミック絶縁層である第2層と、前記第2層の表面において、前記第1貫通孔および前記第2貫通孔を取り囲むように位置する枠部と、配線導体と、を有している。前記第1貫通孔の直径は、10~50μmである。前記第2貫通孔の直径は、前記第1貫通孔の直径よりも大きい。前記複数の第1貫通孔の少なくとも一部は、前記第1層の平面視において前記第2貫通孔と重なる位置にある。
【0013】
本開示の一態様に係るセンサ装置は、前記基板と、センサ素子とを備える。
【0014】
本開示の一態様に係るセンサ装置は、前記パッケージと、センサ素子とを備える。
【0015】
本開示の一態様に係る電子機器は、前記センサ装置を備える。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の実施形態1に係る例示的な基板の断面図である。
【
図2】本開示の実施形態1に係る別の例示的な基板の断面図である。
【
図3】本開示の実施形態1に係る第1層に形成された第1貫通孔の断面を示す例示的なSEM写真である。
【
図4】本開示の実施形態1に係る第1層の概略断面図である。
【
図5】本開示の実施形態1に係る基板の要部の平面図と、前記基板の拡大断面図とを示している。
【
図7】第1層の概略断面図および第1貫通孔の平面図である。
【
図9】基板1を平面視したときの、第1貫通孔の配置例を示す平面概略図である。
【
図10】基板1を平面視したときの、第1貫通孔の配置例を示す平面概略図である。
【
図11】防水試験に用いた装置の概要を示す図である。
【
図12】防水試験に用いた評価サンプルの断面図である。
【
図13】本開示の実施形態2に係るガスセンサ装置の断面図である。
【
図14】本開示の実施形態2に係る別の例示的なガスセンサ装置の断面図である。
【
図15】本開示の実施形態2に係る別の例示的なガスセンサ装置の断面図である。
【
図16】本開示の実施形態2に係る別の例示的なガスセンサ装置の断面図である。
【
図17】本開示の実施形態2に係るパッケージの断面図である。
【
図18】本開示の実施形態2に係る別の例示的なガスセンサ装置の断面図である。
【
図19】本開示の実施形態2に係る別の例示的なガスセンサ装置の断面図である。
【
図20】本開示の実施形態2に係るセンサ装置の断面図である。
【
図21】本開示の実施形態2に係るセンサ装置の断面図である。
【
図22】本開示の実施形態3に係る例示的な基板の断面図である。
【
図23】本開示の実施形態3に係る基板の斜視図である。
【
図24】本開示の実施形態4に係るガスセンサ装置の断面図である。
【
図25】本開示の実施形態4に係る気圧センサ装置の断面図である。
【
図26】本開示の実施形態4に係るガスセンサ装置の断面図である。
【
図27】本開示の実施形態4に係る気圧センサ装置の断面図である。
【
図28】実施形態2に係るガスセンサ装置を備える電子機器の断面図である。
【
図29】実施形態4に係るガスセンサ装置を備える電子機器の断面図である。
【
図30】実施形態2に係るガスセンサ装置を備える電子機器の断面図である。
【
図31】実施形態4に係る気圧センサ装置を備える電子機器の断面図である。
【
図32】実施形態4に係るガスセンサ装置を備える電子機器の断面図である。
【
図33】実施形態4に係るガスセンサ装置を備える電子機器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔実施形態1〕
以下、本開示の一実施形態について、添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本開示の実施形態1に係る例示的な基板1を、基板1に垂直かつX軸方向に平行な面で切断したときの断面図である。図面において、X-Y平面は、基板1の上面または底面に平行な面であり、Z軸は、X-Y平面と垂直に交わる軸である。本明細書における基板の断面図は、特に明示しない限り
図1と同様の面で切断した時の断面図である。また、後述する基板を含むパッケージおよびセンサ装置の断面図についても、特に明示しない限り
図1と同様の面で切断した時の断面図である。
【0018】
図1に示すように、基板1は、複数の第1貫通孔101を有する第1層10と、少なくとも1つの第2貫通孔111を有する第2層11と、が積層された構成を有している。第1層10は、基板1の一方の外表面を構成する第1-1面102と、第2層11と対向する側の第1-2面103とを有する。第2層11は、基板1の他方の外表面を構成する第2-1面112と、第1層10と対向する側の第2-2面113とを有する。第1層10および第2層11は、それぞれ、例えば酸化アルミニウム質焼結体、ガラスセラミック焼結体、ムライト質焼結体または窒化アルミニウム質焼結体等のセラミック材料を含む絶縁材料からなる絶縁層である。基板1は、基板1を第2-1面112の側から平面視したときに、1つの第2貫通孔111に対して、複数の第1貫通孔101が重なっている。基板1は、例えば、平面視において長方形状、または正方形状などの四角形状である。
【0019】
基板1において、Z軸方向を厚み方向とすると、第1層10の厚さT1は、50μm以上150μm以下である。第1-1面102において、第1貫通孔101は例えば円形であり、その直径D1は、10μm以上50μm以下である。第1貫通孔の直径が深さ方向にわたって一定でない場合は、最も小さい径が10μm以上50μm以下である。例えば、第1-1面102と、第1-2面103とで第1貫通孔101の直径D1が異なる場合は、小さい方の径が10μm以上50μm以下である。第2層11の厚さT2は、50μm以上200μm以下である。第2-1面112において、第2貫通孔111は例えば円形であり、その直径D2は、第1貫通孔101の直径D1よりも大きい。第2貫通孔111の直径D2は例えば0.5mm以上2mm以下である。第1貫通孔101および第2貫通孔111の、基板1と平行な面(X-Y平面)における断面形状は、円形に限定されず、後述する
図10に示す例のような四角形などの多角形状であってもよい。このときの第1貫通孔101および第2貫通孔111の寸法は、例えば四角形の辺の長さが上記直径D1および直径D2に相当する。
【0020】
図1では、基板1が第1層10と、第2層11の2層からなる例を示しているが、2層に限定されない。基板1は、第1層10と、第2層11とが直接積層されていてもよいし、他の層を挟んで積層される態様であってもよい。
【0021】
基板1は、例えば酸化アルミニウム質焼結体を含む積層体(セラミック体)であり、次のようにして製作することができる。すなわち、まず、第1層10および第2層11となるセラミックグリーンシート(グリーンシート)を作製する。酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素等の原料粉末を適当な有機バインダおよび有機溶剤とともにシート状に成形して四角シート状の複数のセラミックグリーンシートを作製する。第1貫通孔101は、例えば、第1層10に相当するセラミックグリーンシートに金型等を用いて穿孔されることにより形成される。当該穿孔時の孔径は、焼成後の孔径が10μm以上50μm以下となるサイズである。第2貫通孔111は、例えば、第2層11に相当するセラミックグリーンシートに金型などを用いて形成される。第1貫通孔101および第2貫通孔111は、レーザを用いて形成されてもよい。次に、これらのセラミックグリーンシートを積層して積層体を作製する。その後、この積層体を1300~1600℃の温度で焼成することによって基板1を製作することができる。
【0022】
セラミックグリーンシートは、焼成により10%~20%程度収縮するため、グリーンシートに形成する孔は、焼成後の第1貫通孔101および第2貫通孔111の径よりも10%~20%程度大きい孔径とすることができる。また、焼成前のセラミックグリーンシートは軟らかい材料であるため、上記のような微細な孔加工が容易である。そのため、セラミック積層体から基板1を形成する場合には、一般的には金属基板や有機基板では難しいとされる、直径100μm以下のような微細な貫通孔の形成が容易である。また、セラミックグリーンシートに金型などを用いて微細な貫通孔を形成する方法は、シリコンなどを材料とする基板にエッチング加工によって貫通孔を形成する方法と比較して生産性が高い。すなわち、セラミックを用いることにより生産性を向上させることができる。
【0023】
また、セラミックグリーンシートは、厚みが薄いほど微細な貫通孔の形成が容易である。第1層10を構成するセラミックグリーンシートとして、厚みの薄いグリーンシートを用いることにより、微細な第1貫通孔101を容易に形成することができる。また、第2層11を構成するセラミックグリーンシートは、基板1に要求される強度に応じた厚さおよび層数とすることができる。すなわち、第2層11に、第2層11と同じ構成の絶縁層が1以上重なっていてもよい。基板1が微細な第1貫通孔101を有する第1層10とそれ以外の第2層102とが積層された積層体であることにより、微細貫通孔を有するとともに必要とされる基板厚みを確保することが容易となる。
【0024】
基板1は、微細な第1貫通孔101を有することにより、気体は通すが、水は通しにくい基板を実現できる。第1貫通孔101の直径D1が10μm以上50μm以下であることから、水が通りにくい構造を実現することができる。第1貫通孔101の直径D1が10μm以上であることから良好な通気性を実現することができる。直径D1が10μm以上の第1貫通孔101は、基板1の材料をセラミックとすることにより容易に形成することができる。また、第1貫通孔101の直径D1が10μm以上50μm以下であり、第1層10の厚さT1を50μm以上150μm以下とすることにより、IPX7レベル以上の防水性を有するとともに通気性に優れた基板を実現することができる。また、基板1の厚さ(T1+T2)に対して第1貫通孔101の深さ(=第1層の厚さT1)が浅い構成であるため、通気性を向上させることができる。一方、第2層11を積層させることにより、強度を確保することができる。
【0025】
さらに、基板1は、セラミック絶縁層の積層構造であるため、内部に収容する素子などを保護するための十分な強度を確保することができる。また、基板1の材料としてセラミックを用いることにより、金属または有機材料を用いる場合に比べ、水またはガスに対する腐食、劣化を低減することができる。さらに、基板1の材料としてセラミックを用いることにより、シリコンを用いた場合と比較して基板1は高い強度を有することができる。そのため、基板1を薄型化することができる。さらに、高い強度を有するため、貫通孔の数を増やすことができ、通気性を向上させることができる。
【0026】
(変形例1-1)
図2は、実施形態1に係る別の例示的な基板1Aの断面図である。基板1Aは、
図2に示すように、基板1Aを第2-1面112Aの側から平面視したときに、1つの第2貫通孔111Aに対して、1つの第1貫通孔101が重なっている点が上述の基板1と異なる。上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。他の変形例および実施形態についても同様である。
【0027】
具体的には、
図2に示す基板1Aは、複数の第1貫通孔101Aを有する第1層10Aと、複数の第2貫通孔111Aを有する第2層11Aと、が積層された構成を有している。第1層10Aは、基板1Aの一方の外表面を構成する第1-1面102Aと、第2層11Aと対向する側の第1-2面103Aとを有する。第2層11Aは、基板1Aの他方の外表面を構成する第2-1面112Aと、第1層10Aと対向する側の第2-2面113Aとを有する。第1層10Aおよび第2層11Aは、それぞれ上述の基板1の第1層10および第2層11と同様セラミック材料を含む絶縁材料からなる絶縁層である。
【0028】
基板1Aにおいて、第1層10Aおよび第2層11Aの厚さ、ならびに第1貫通孔101Aの直径D1は、上述の基板1と同様である。第2-1面112Aにおいて、第2貫通孔111Aは例えば円形であり、その直径D2は、100μm以上200μm以下である。
【0029】
第2層11Aを、パッケージの外側になるように配置することにより、微細な第1貫通孔101Aの外側に第1貫通孔101Aよりもひと回り大きい第2貫通孔111Aを有し得る。これにより、基板1Aの防水性をさらに向上させることができる。
【0030】
(第1貫通孔について)
第1貫通孔101について、
図3~
図10を用いて以下に詳述する。第1貫通孔101についての以下の記載は、上述した第1貫通孔101Aおよび以下に説明する全ての第1貫通孔についても同じ内容を言及することができることに留意されたい。
【0031】
基板1を用いて構成されるセンサ装置は、内部に搭載するセンサ素子への通気性を確保するために気体が通過するための貫通孔を有している。また、当該センサ素子を搭載する電子機器は、例えば、IPX7に相当するレベルの防水性が要求される。そのため、基板1が有する第1貫通孔101は、良好な通気性と、IPX7に相当するレベルの防水性能を実現できる構成であることが所望される。このような状況の下、本発明者らは、良好な通気性を確保するとともに、防水性を有する構造の基板について鋭意検討し、本開示の基板を実現した。
【0032】
図3は、第1層10に形成された第1貫通孔101を第1層10の表面に対して垂直な平面(X-Z面)で切断したときの断面を示す例示的なSEM写真である。
図3に示すように、第1貫通孔101は、第1層10に対して略垂直であり得る。また、第1貫通孔101は、第1-1面102側の第1開口部121および第1-2面103側の第2開口部122の径がほぼ等しい直線的な管形状である。より具体的には、
図3に示す断面において、第1貫通孔101の内壁面がなす線分と、第1層10の表面がなす線分との角度のうち小さい方の角度(θ
1)は、80°以上90°以下であってもよい。第1貫通孔101が上述のような構成であることにより、良好な通気性を実現することができる。
図3に示す例では、第1層10の厚さTは約100μmであり、第1貫通孔101の第1-1面102側の直径Dは約26μmである。
【0033】
次に、
図4~
図6を用いて、防水性を向上させるための第1貫通孔101の態様について説明する。
図4は、第1層10の概略断面図であり、第1貫通孔101の別の態様を示している。
図5は、第2-1面102側から基板1を見たときの平面図と、基板1のX-Z平面に平行な面における拡大断面図とを示している。当該平面図は、第2貫通孔111に対する第1貫通孔101の配置の一例を示している。
図6は、
図5に対する比較例を示している。
【0034】
図4に示すように、第1貫通孔101は、第1開口部121の大きさと、第2開口部122の大きさとが異なる態様であってもよい。
図4において、第1貫通孔101Bは、第1開口部121Bが、第2開口部122Bよりも小さい例を示している。第1貫通孔101Cは、第1開口部121Cが、第2開口部122Cよりも大きい例を示している。
【0035】
図4において、第1開口部121の側が、水が浸入してくる可能性がある側であると仮定する。このとき、第1貫通孔101Cのように第2開口部122の径に対して、第1開口部121の径が大きい場合、第1-1面102の側から第1貫通孔101Cの内部に水が比較的浸入し易くなることが考えられる。一方、第1貫通孔101Bのように第1開口部121の径に対して、第2開口部122の径が大きい場合、第1-1面102の側から第1貫通孔101Bの内部に浸入した水が第1-2面103へ流れ出やすくなることが考えられる。そして、第1開口部121と第2開口部122との径の差が大きいほど上述のような可能性が高まることが考えられる。
【0036】
以上のことから、第1貫通孔101は、第1貫通孔101の内壁面がなす線分と、第1層10の表面がなす線分との角度のうち小さい方の角度(θ1)は、80°以上90°以下であってもよい。また、第1開口部121および第2開口部122の径がほぼ等しい直線的な管形状であってもよい。また、第1層10の厚さT(すなわち第1貫通孔101の第1開口部121と第2開口部122との距離)は、第1開口部121の直径Dの2倍よりも大きくてもよい。当該構成により、基板1の防水性をより向上させることができる。また、第1貫通孔101が直線的な管形状であることで、孔間のピッチをより狭くすることが可能となる。これにより、基板1に形成する第1貫通孔101の数を増加させ、通気性を向上させることができる。
【0037】
第1貫通孔101の形成にあたり、シリコンを材料とする基板にエッチング加工によって孔形成する方法では、貫通孔にテーパーがつくため、第1開口部121および第2開口部122の径がほぼ等しい直線的な管形状を実現することは困難である。一方、本開示は、基板1がセラミック絶縁層であるため、セラミックグリーンシートに金型等を用いて穿孔する方法によって、直線的な管形状を有する第1貫通孔101を容易に形成することができる。
【0038】
第1貫通孔101の2つの開口部の大きさは多少の差が許容され得る。例えば開口部の大きさが小さい方の直径が、上述した10μm以上50μm以下である場合、所望の防水性能を得るためには、大きい方の直径は100μm以下とすることができる。さらには、大きい方の開口を水が浸入してくる可能性がある側とすることができる。すなわち、
図4における第1貫通孔101Cのように、第1開口部121の方が第2開口部122よりも大きいテーパー形状であってもよい。100μm以下の寸法であれば、第1開口部121もある程度の防水性を有する。また、第1貫通孔101内の空気の抵抗によって、浸入した水は第2開口部122まで到達しにくい。ある程度の水圧が加わると浸入した水が第2開口部122まで到達することが考えられるが、第2開口部122は十分に小さい径であるため、第2開口部122を超えて浸水する可能性を低減することができる。そのため、第1貫通孔101の2つの開口部の大きさが異なる場合には、第1開口部121の方が第2開口部122よりも大きい方が防水性に優れる。
【0039】
さらに、
図5に示すように、第1貫通孔101は、基板1を第2層11の第2-1面112側から平面視したときに、第2貫通孔111の内側面から離隔して形成されていてもよい。当該構成により、第1-1面102において、第1貫通孔101の周囲に水が拡がる部分を確保することができるため、表面張力により第1貫通孔101に水が浸入し難くなる。
図6に示す比較例では、貫通孔が第2貫通孔111の内側面から離隔していないために、第2貫通孔111の内側面を伝って貫通孔内部に水が浸入しやすくなる。第1貫通孔101を第2貫通孔111の内側面から離隔して形成することにより、第1貫通孔101に水が浸入する可能性をより低減することができる。
【0040】
さらに防水性能を向上させるために、第1層の第1-1面102もしくは第1-2面103または両面に、撥水機能を有するコーティング層を有していてもよい。撥水機能を有するコーティング層は、例えば、フッ素を含む処理液に基板1を浸漬して乾燥させることにより形成することができる。また、前記処理液への浸漬時に加圧または減圧することにより、第1貫通孔101内にも処理液を浸入させ、第1貫通孔101の内壁にコーティング層を形成してもよい。コーティング層を有することにより、第1貫通孔101に水が浸入し難くなるため、コーティング層を有していない場合と比較して、第1貫通孔101の孔径を大きくすることができる。これにより、通気性を向上させることができる。
【0041】
次に、
図4、
図7~
図10を参照して、基板1が良好な通気性を有するための第1貫通孔101の態様について説明する。
図7は、第1層10の概略断面図および第1貫通孔101を第1層10の第1-1面102側から見たときの平面図であり、第1貫通孔101の別の態様を示している。
図8は、第1層10の概略断面図であり、第1貫通孔101の別の態様を示している。
図9および
図10は、基板1を第2層11の第2-1面112側から平面視したときの、第1貫通孔101の配置例を示す平面概略図である。
【0042】
第1貫通孔101は、
図7に示す第1貫通孔101D、第1貫通孔101Eおよび第1貫通孔101Fのように、第1層10の第1-1面102または第1-2面103に対して傾斜している態様であってもよい。
図7において、第1貫通孔101Dは、第1開口部121の中心と、第2開口部122の中心とを結ぶ仮想中心線Lが、第1層10の第1-1面102または第1-2面103に対して90°+5°傾斜している(角度θ
2=95°)例である。第1貫通孔101Dの第2開口部122の直径をDとした場合、平面視で第1開口部121と第2開口部122とが重なる重複領域SDのX軸方向の長さは約0.85Dである。第1貫通孔101Eは、仮想中心線Lが、第1層10の第1-1面102または第1-2面103に対して90°+10°傾斜している(角度θ
2=100°)例である。第1貫通孔101Eの第2開口部122の直径をDとした場合、重複領域SEのX軸方向の長さは約0.66Dである。第1貫通孔101Fは、仮想中心線Lが、基板面に対して90°+15°傾斜している(角度θ
2=105°)例である。第1貫通孔101Fの第2開口部122の直径をDとした場合、重複領域SFのX軸方向の長さは約0.47Dである。
【0043】
第1貫通孔101が良好な通気性を有するためには、基板1を平面視したときに、貫通孔の第1開口部121と、第2開口部122とが重なる重複領域S(
図7のSD、SEおよびSF)の面積が大きい方がよい。所望の通気性を確保するためには、仮想中心線Lが、第1層10の第1-1面102または第1-2面103に対して90°±10°以下であってもよいし、90°±5°以下であってもよい。
【0044】
さらに、第1貫通孔101は、
図8に示す第1貫通孔101G、第1貫通孔101Hおよび第1貫通孔101Iのような態様であってもよい。
図8の第1貫通孔101Gは、第1開口部121Gおよび第2開口部122Gの孔径が異なり、さらに仮想中心線Lが第1層10の第1-1面102または第1-2面103に対して傾斜している例である。第1貫通孔101Hは、第1貫通孔101Hの内壁面123Hが湾曲面である例である。第1貫通孔101Iは、第1貫通孔101Iの内壁面123Iが屈曲面である例である。第1貫通孔101Hおよび第1貫通孔101Iのように、貫通孔の内壁面123は、ゆるい湾曲またはゆるい屈曲を有していてもよい。また、
図4に示す第1貫通孔101Bおよび第1貫通孔101Cのように、第1開口部121の大きさと、第2開口部122の大きさとが異なる態様であってもよい。
【0045】
一方、
図4に示す第1貫通孔101Bおよび
図8に示す第1貫通孔101Gにおいて、内壁の傾斜が大きい場合、通気性が低下することが考えられる。また、
図8に示す第1貫通孔101Hの内壁面123Hの湾曲および第1貫通孔101I貫通孔の内壁面123Iの屈曲の程度が大きい場合も通気性が低下することが考えられる。
【0046】
以上のことから、防水特性、通気性を考慮すると、第1貫通孔101は、第1開口部121の孔径と第2開口部122の孔径が同程度の大きさであり、第1層10に対して略垂直方向に延伸するストレートの円筒形状であってもよい。
【0047】
続いて、第1層10における第1貫通孔101の例示的な配置について
図9および
図10を用いて説明する。第1層10における第1貫通孔101の配置は、特に限定されない。搭載するセンサ素子の種類、特徴に応じて任意の配置が選択され得る。
図9の符号9001は、基板1を第2層11の第2-1面112側から平面視したときに、第1貫通孔101が千鳥配列を有する例を示している。
図9の符号9002は、第1貫通孔101が格子配列を有する例を示している。
【0048】
第1貫通孔101間の距離は、符号9001の千鳥配列および符号9002の格子配列共に等しい孔間距離DPを有している。一方、符号9001の千鳥配列と、符号9002の格子配列を比較すると、第2貫通孔111の孔内に含まれる第1貫通孔101の数は、符号9001の千鳥配列の方が多い。つまり、千鳥配列は、孔間距離DPの等しい格子配列と比較して、同じ面積の領域に同じ径の第1貫通孔101を多く配置することができる。良好な通気性を得るためには、第2貫通孔111の孔部の面積に対する第1貫通孔101の孔部の面積の総和の割合が高い方がよい。すなわち、第2貫通孔111の孔内に含まれる第1貫通孔101の数が多い方がよい。第1貫通孔101間の距離DPが等しいため、千鳥配列を採用することで第1貫通孔101の数が増えた場合であっても、基板1の強度に対する影響は低いと考えられる。以上のことから、通気性を考慮すると、第1貫通孔101の配列は、千鳥配列であってもよい。複数の第1貫通孔101を千鳥配列で配置することにより、基板1の通気性を向上させることができる。
【0049】
図10は、第1層10が、中央部分に第1貫通孔101を有していない例を示している。当該構成により、基板1の中央部直下にセンサ素子のセンシング部が配置される場合、第1貫通孔101を通過したダストまたは水滴が当該センシング部分に影響を及ぼす可能性を低減することができる。
【0050】
(実証試験1:防水試験1)
以下では、水深1mの水圧を30分間かけたときに浸水するか否かを、第1貫通孔101の直径D1と、貫通孔の厚みTsを種々変化させて調査した防水試験について
図11を用いて説明する。
図11は、防水試験に用いた装置の概要を示す図である。評価サンプル510の上面から水面までが1mの状態で、評価サンプル510を30分間没したときに浸水しない場合、IPX7レベルの防水性能を有していると判断することができる。
【0051】
図11は、防水試験に用いた装置を示す概略図である。
図11の符号1101は、防水試験に用いた装置の全体図を示している。サンプル瓶501と、円管502とを接続した装置の底部に評価サンプル510を設置し、容器内部に、評価サンプル510の上面から水面までの高さが1mとなるように水を満たした状態において、30分間の防水試験を実施した。評価サンプル510は、サンプル基板(上層503Aおよび下層503B)と、キャビティ基板504とが樹脂接着剤506によって接合されることにより構成されている。
図11の符号1102は、評価サンプル510のサンプル基板の上面図、符号1103は、評価サンプル510のサンプル基板の下面図を示している。符号1104は、符号1102のA-A線断面図を示している。当該サンプル基板は、2層からなり、水と接する上層503Aには、第1貫通孔101が形成されている。上層503Aの厚みが、すなわち貫通孔の厚みTsである。下層503Bには、第1貫通孔101と対応する箇所に第1貫通孔101よりも孔径の大きい第2貫通孔111が形成されている。
【0052】
符号1105は、キャビティ基板504の上面図であり、符号1106は、符号1105のB-B線断面図を示している。符号1107は、評価サンプル510の断面図を示している。
【0053】
評価サンプル510の上層503A、下層503Bおよびキャビティ基板504は、それぞれコーティングなしのアルミナ質焼結体を用いて製作した。また、上層503A、下層503Bおよびキャビティ基板504の表面粗さRaは、2.0μm未満であった。上層503A、下層503Bおよびキャビティ基板504の表面における水の濡れ角は、90°未満であった。
【0054】
30分の試験時間経過後、サンプル基板をキャビティ基板504から取り外し、キャビティ505内への浸水の有無を×10倍のマイクロスコープを用いて確認した。それぞれの実施例について、20個の評価サンプルを用いて評価した。また、比較例として孔径0.051mm、貫通孔厚み0.1mmの貫通孔について同様の評価サンプルを10個用いて試験した。
【0055】
表1は、各実施例についての、試験した評価サンプルの孔径と貫通孔厚みの対応表である。
【0056】
【表1】
表2は、表1に示した評価サンプルおよび比較例の、防水試験の結果を示す表である。表2の実施例1~9はそれぞれ表1の○印のいずれかに対応している。
【0057】
【表2】
表2に示すように、実施例1から実施例9のいずれの場合であっても、第1貫通孔101からの浸水は確認されなかった。すなわち、実施例1から実施例9はいずれも、IPX7レベルの防水性を満たしていることが実証された。比較例については、10個の評価サンプルのうち2個の評価サンプルにおいて浸水が確認された。
【0058】
(実証試験2:防水試験2)
以下では、第1貫通孔101と導通するパッケージ内の空間体積Vに対して、防水効果を有する第1貫通孔101の総体積V’が有する割合(V’/V)と、防水性能との関係について調査した防水試験2について
図12を用いて説明する。
図12は、防水試験2に用いた評価サンプル520の断面図である。
【0059】
防水試験2で用いた評価サンプル520は、防水試験1で用いた評価サンプル510と、下層503Bを有さない点が異なっている。その他の構成については評価サンプル510と同じ構成である。
【0060】
図12に示すように、評価サンプル520の第1貫通孔101の総体積をV’、上層503Aの下面と、キャビティ基板504の内面とで規定される空間体積をVとする。サンプルAとして、3.0mm×3.0mm×1.1mmサイズのキャビティ基板504に、平面視において2.8mm×2.8mmサイズの上層503Aを有する評価サンプル520を準備した。サンプルBとして、2.05mm×2.05mm×0.9mmサイズのキャビティ基板504に、平面視において1.9mm×1.9mmサイズの上層503Aを有する評価サンプル520を準備した。サンプルAおよびサンプルB共に、上層503Aの厚さは0.1mmである。また、上層503Aは、孔径0.034mmの第1貫通孔101を、16孔有している。
【0061】
サンプルAにおいてV’/Vを算出すると、V’/V=0.05%であった。一方サンプルBにおいて、V’/Vを算出すると、V’/V=0.12%であった。
【0062】
防水試験2においても、
図11の符号1101に示す装置を用いた。評価サンプル520の上面から水面までが1mの状態で、評価サンプル520を30分間没したときに浸水しない場合、IPX7レベルの防水性能を有していると判断することができる。また、同様にして評価サンプル520の上面から水面までが1.5mの状態で、評価サンプル520を30分間没したときに浸水しない場合には、IPX8レベルの防水性能を有していると判断することができる。
【0063】
表3は、サンプルAおよびサンプルBの、防水試験2の結果を示す表である。
【0064】
【表3】
30分の試験時間経過後、上層503Aをキャビティ基板504から取り外し、キャビティ内への浸水の有無を×10倍のマイクロスコープを用いて確認した。サンプルAについては20個、サンプルBについては10個の評価サンプルを用いて評価した。
【0065】
表3に示すように、サンプルAについては、1m-30分の試験については20個の評価サンプルにおいていずれの評価サンプルにおいても浸水は確認されず、IPX7レベルの防水性を満たしていることが実証された。しかしながら、1.5m-30分の試験においては20個の評価サンプルのうち11個の評価サンプルにおいて浸水が確認された。一方、サンプルBは、IPX7の要件を満たす1m-30分の試験およびIPX8の要件を満たす1.5m-30分の試験において、各10個の評価サンプルについていずれの評価サンプルにおいても浸水は確認されなかった。すなわち、サンプルBは、IPX7レベルおよびIPX8レベルの防水性を満たしていることが実証された。
【0066】
以上のことから、V’/Vが大きい方が、防水性が高いことが実証された。また、IPX8レベルの防水性が実証されたことから、V’/V>0.1%の条件を満たしてもよい。
【0067】
〔実施形態2〕
本開示の他の実施形態について、以下に説明する。説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。以降の実施形態においても同様である。
【0068】
本実施形態では、実施形態1に記載の基板1を含むパッケージ100にセンサ素子3の一例としてガスセンサ素子3G(センサ素子)を搭載したガスセンサ装置200(センサ装置)について説明する。実施形態2では、ガスセンサ素子3Gを搭載したガスセンサ装置200について説明するが、搭載するセンサ素子は、ガスセンサ素子3Gに限定されない。実施形態2に例示するガスセンサ装置200の構成は、センサ素子を搭載するパッケージに通気性が必要とされるセンサ素子を搭載したセンサ装置として適用され得る。当該センサ素子は、例えば気体の性質を検知する気体センサ素子であり、より具体的にはガスセンサ素子、気圧センサ素子または湿度センサ素子などが挙げられ得る。
【0069】
(ガスセンサ装置200の構成)
図13は、ガスセンサ装置200を、基板1の断面図である。ガスセンサ装置200は、パッケージ100と、ガスセンサ素子3Gとを備える。パッケージ100は、基板1(第2基板)と、センサ素子を収容する収容凹部21および配線導体22を有する配線基板2(第1基板)とを備える。基板1は、パッケージ100の蓋体である。ガスセンサ装置200(パッケージ100)は、例えば、平面視において長方形状、または正方形状などの四角形状であり得る。
【0070】
基板1は、実施形態1において説明したとおりである。
図13のガスセンサ装置200では、基板1は、第1-1面102がパッケージ100の外表面の一部を構成しており、第2-1面112がガスセンサ素子3Gと対向するように配置されている。
【0071】
配線基板2は、ガスセンサ素子3Gを搭載する基板である。配線基板2は、ガスセンサ素子3Gを搭載する基板としての機械的な強度の確保、および複数の配線導体22間の絶縁性の確保などの機能を有している。配線基板2の収容凹部21のサイズは、ガスセンサ素子3Gを収容できればよく、任意の形状および任意のサイズであり得る。また、収容凹部21の内側面の形状も特に限定されない。
図13に示されるように、収容凹部21の内側面は、階段形状であってもよい。また、配線基板2の底面に対して傾斜を有する傾斜面であってもよい。配線基板2は、内部および表面に配線導体22を有している。
【0072】
配線基板2は、例えば酸化アルミニウム質焼結体からなる複数の絶縁層が積層された積層体であってもよい。
【0073】
配線基板2の表面および内部には、配線導体22が設けられている。例えば、
図13に示すように、配線基板2は、配線導体22として、ガスセンサ素子3Gと接続するための接続パッド22Aと、外部電気回路と接続するための端子電極22Dとを含んでいる。接続パッド22Aと端子電極22Dとは、配線基板2の内部に設けられた貫通導体22B(図示せず)および内部配線層22C(図示せず)によって電気的に接続されている。貫通導体22Bは絶縁層を貫通し、内部配線層22Cは絶縁層間に配置されている。端子電極22Dは配線基板2の下面だけではなく、下面から側面にかけて、あるいは側面に設けられていてもよい。
【0074】
配線導体22は、例えば、タングステン、モリブデン、マンガン、銅、銀、パラジウム、金、白金、ニッケルもしくはコバルト等の金属、またはこれらの金属を含む合金を導体材料として主に含むものである。接続パッド22Aおよび端子電極22Dは、導体材料のメタライズ層またはめっき層等の金属層として配線基板2の表面に形成される。上記金属層は、1層でもよく、複数層でもよい。また、貫通導体22Bおよび内部配線層22Cは、導体材料のメタライズによって配線基板2の内部に形成される。
【0075】
配線導体22の接続パッド22A、内部配線層22Cおよび端子電極22Dは、例えば、タングステンのメタライズ層である場合には、以下のようにして形成される。すなわち、タングステンの粉末を有機溶剤および有機バインダと混合して作製した金属ペーストを、配線基板2となるセラミックグリーンシートの所定位置にスクリーン印刷法等の方法を用いて印刷し、焼成する方法により形成することができる。また、このうち、接続パッド22Aおよび端子電極22Dとなるメタライズ層の露出表面には、電解めっき法または無電解めっき法等を用いてニッケルまたは金等のめっき層がさらに被着されていてもよい。また、貫通導体22Bは、上記の金属ペーストの印刷に先駆けてセラミックグリーンシートの所定の位置に貫通孔を設け、上記金属ペーストをこの貫通孔に充填して焼成することにより形成されてもよい。
【0076】
基板1と、配線基板2とは、封止接合材7を介して接合され得る。封止接合材7としては、例えば樹脂接着剤、ガラス、はんだを含むろう材等が挙げられる。ろう材によって基板1と配線基板2とを接合する場合、配線基板2の上面および基板1における配線基板2の上面と対向する部分に接合用金属層6を設けていてもよい。接合用金属層6は、例えばめっき膜やメタライズ層などの金属膜により形成されていてもよい。
【0077】
ガスセンサ素子3Gは、例えば、基板型半導体式ガスセンサが用いられる。当該基板型半導体式ガスセンサは、支持基板32Gの表面に感ガス部31Gとなる半導体材料を薄膜ないし厚膜状に形成後、焼成して得られる。支持基板32Gの表面には、白金くし型電極(図示せず)が設けられており、電極間に配線された白金線を信号線としてセンサ出力を取り出す。感ガス部31Gの加熱は支持基板32G裏側の白金ヒータ(図示せず)によりおこなわれる。ガスセンサ素子3Gは、ヒーターが組み込まれたダイヤフラム構造のMEMS基板を支持基板とした、MEMSタイプの半導体式ガスセンサであってもよい。ガスセンサ素子3Gは、例えばガスセンサ素子3Gの下面が接合材33によって配線基板2の収容凹部21の底面に接合されて固定される。ガスセンサ素子3Gの上面に配置された電極(図示せず)と、配線基板2とは、接続部材5によって互いに電気的に接続される。
【0078】
感ガス部31Gは、検出するガスにより差はあるものの、一般的にはヒーターによって200~500℃程度に加熱された状態でガスを検出する。そのため、ガスセンサ素子3Gを収容するパッケージの材質は、高温に曝された場合であっても発ガスまたは腐食の可能性の低い材質であるべきである。セラミックは、種々のガスまたは水分による腐食が生じにくい。また、高温に曝された場合であってもセラミック自体からの発ガスは非常に少ない。このような観点から、セラミックは、ガスセンサ装置200のパッケージまたは基板の材質として非常に優れている。
【0079】
ガスセンサ装置200は、端子電極22Dと、外部電気回路とが電気的に接続されることにより、配線基板2(パッケージ100)に搭載されたガスセンサ素子3Gと外部電気回路とが電気的に接続される。すなわち、ガスセンサ素子3Gと外部電気回路とが、ボンディングワイヤなどの接続部材5および配線導体22を介して電気的に接続される。外部電気回路は、例えばスマートフォンなどの電子機器に実装されている実装基板(回路基板)が有する電気回路である。
【0080】
(パッケージ100について)
パッケージ100は、ガスセンサ素子3Gを収容する収容凹部21を有する配線基板2と、収容凹部21を塞ぐ基板1とを備える。基板1は、複数の第1貫通孔101を有するセラミック絶縁層である第1層10と、少なくとも1つの第2貫通孔111を有するセラミック絶縁層である第2層11とを含む。第1貫通孔101の直径は、10~50μmであり、第2貫通孔111の直径は、第1貫通孔101の直径よりも大きい。複数の第1貫通孔101の少なくとも一部は、第1層10の平面視において第2貫通孔111と重なる位置にあり、第2層11が収容凹部21側にある。
【0081】
上記構成により、通気性および防水性を有するパッケージを実現することができる。また、第1貫通孔101を通過した気体が、さらに第2貫通孔111を通過し、ガスセンサ素子3Gの感ガス部31Gに向けて進行しやすい。そのため、センサ感度を向上させることができる。
【0082】
パッケージ100において、第2貫通孔111の直径(または四角形の場合の1辺の長さ)は、ガスセンサ素子3Gの直径(または1辺の長さ)の1/2以上、直径(または1辺の長さ)の2倍以下であってもよい。例えば、ガスセンサ素子3Gの直径(または1辺)が1mmである場合、第2貫通孔111は、0.5mm以上2mm以下の直径を有する円形または1辺0.5mm以上2mm以下の角形を有していてもよい。これにより、第2貫通孔111によって形成される基板1の凹部にガスセンサ素子3Gの凸部(感ガス部31G)を収容することができるため、より薄型化できる。また、ガスセンサ素子3Gがワイヤボンディングによって接続される場合には、接続部材5(ボンディングワイヤ)のループの頂部を第2貫通孔111による凹部に収容することができる。このような場合もパッケージ100およびガスセンサ装置200を薄型化することができる。また、感ガス部31Gをパッケージ100の外表面に近い位置に配置することができる。さらに、感ガス部31Gで熱せられ上昇した空気が、第2貫通孔(基板の凹部)に集まりやすいため、熱せられた空気の排出が促進される。また、これに伴い、パッケージの外側の空気をより多く取り入れることができる。これにより、ガスのセンシング感度が向上する。
【0083】
(変形例2-1)
図14は、実施形態2に係る別の例示的なガスセンサ装置200Aの断面図である。ガスセンサ装置200Aは、パッケージ100Aと、ガスセンサ素子3Gとを備えている。パッケージ100Aは、実施形態1に係る基板1と、実施形態2に係る配線基板2とを備える。パッケージ100Aは、基板1の向きが上述した実施形態2のパッケージ100と異なっている。具体的には、
図14に示すように、ガスセンサ装置200Aでは、基板1において、第2-1面112がパッケージ100Aの外表面の一部を構成しており、第1-1面102がガスセンサ素子3Gと対向している。すなわち、変形例2-1のように、第1層10が収容凹部21側にあってもよい。それ以外については、
図13のガスセンサ装置200と同様である。
【0084】
上記構成により、デバイスの搬送または組立工程において、第1層10の表面が外部からの機械的な接触を受ける可能性が低減される。これにより、基板1において第1貫通孔101が形成されている薄板部が、外部からの機械的な接触によって破損する可能性を低減することができる。
【0085】
(変形例2-2)
図15は、実施形態2に係る別の例示的なガスセンサ装置200Bの断面図である。ガスセンサ装置200Bは、パッケージ100Bと、ガスセンサ素子3Gとを備えている。パッケージ100Bは、実施形態1の変形例1-1に係る基板1Aと、実施形態2に係る配線基板2とを備えている。
【0086】
第2貫通孔111Aは、微細な第1貫通孔101Aよりもひと回り大きい程度である。変形例2-1に示す例に対して、変形例2-2に示す例は、第2貫通孔111Aの大きさが小さいため、パッケージの強度を向上させることができる。また、変形例2-2に示す例は、強度に優れるため、より薄型化することが可能である。
【0087】
(変形例2-3)
図16は、実施形態2に係る別の例示的なガスセンサ装置200Cの断面図である。ガスセンサ装置200Cは、パッケージ100Cと、ガスセンサ素子3Gとを備えている。パッケージ100Cは、基板1Aの向きが上述の変形例2-2のパッケージ100Bと異なっている。具体的には、
図16に示すように、ガスセンサ装置200Cでは、基板1Aにおいて、第2-1面112Aがパッケージ100Aの外表面の一部を構成しており、第1-1面102Aがガスセンサ素子3Gと対向している。それ以外については、
図15のガスセンサ装置200Bと同様である。
【0088】
変形例2-3の構成では、第2-1面112Aが、パッケージ100Cの外表面の一部を構成しており、第1-1面102Aがパッケージ100Cの内表面の一部を構成している。10μm以上50μm以下の直径を有し、防水効果に優れる第1貫通孔101Aよりも外側に、100μm以上200μm以下の直径を有する第2貫通孔111Aを有することにより、段階的な防水構造となり、防水効果をより向上させることができる。微細な第1貫通孔101による防水は、主に水の表面張力によるものである。第2貫通孔111Aもまた上記のように微細であると、同様に表面張力による防水性を有する。そのため、第2貫通孔111Aと第1貫通孔101Aとの2段階の防水構造となる。水没直後の水深が浅い(水圧が低い)ときは第2貫通孔111Aによって水の浸入を防ぐことができる。水深が深くなり水圧が高くなると第1貫通孔101Aまで水が浸入するが、より微細で防水性の高い第1貫通孔101Aによって水の浸入を防ぐことができる。さらに、変形例2-3の構成は、変形例2-1および変形例2-2において述べた薄板部の破損の可能性の低減および強度の向上の効果も有している。
【0089】
図17は、パッケージ100Cの断面図である。
図17を用いて、パッケージ内の空間体積Vと、第1貫通孔101Aおよび第2貫通孔111Aの体積の総和V’との関係を説明する。
図17に示すように、パッケージ100Cにおいて、パッケージ内の空間体積Vは、第1-1面102Aと、収容凹部21とによって規定される。パッケージ内の空間が基板1Aの第1貫通孔101Aおよび第2貫通孔111A以外で外部と連通していない場合には、外部から浸入しようとする水は、第2貫通孔111Aからパッケージ内の空間にかけての空気を押し込んで浸入しなければならない。第2貫通孔111Aの径も微細であると、外部からの水は第2貫通孔111Aの開口を覆うため、第2貫通孔111A内の空気を押し込んで浸入することになる。さらに第1貫通孔101Aを通りパッケージ内の空間まで浸入するためには、第1貫通孔101A内の空気も押し込まなければならない。第1貫通孔101Aおよび第2貫通孔111Aはパッケージ内の空間と連通しており、パッケージ内の空間は第1貫通孔101Aおよび第2貫通孔111A以外で外部と連通していない。そのため、外部から浸入してくる水は、第2貫通孔111A、第1貫通孔101Aおよびパッケージ内の空間内の空気を圧縮しながら浸入することになる。第2貫通孔111Aおよび第1貫通孔101Aの体積の総和V’の空気を圧縮しなければ、外部からパッケージ内の空間へ水が浸入することはできない。このように、基板1Aによる防水は、水の表面張力に加えて浸入経路内の空気の圧縮に対する反発力によってなされるものとなる。水が圧縮しなければならない空気の体積は第2貫通孔111Aおよび第1貫通孔101Aの体積の総和V’である。この体積V’が大きいと水が浸入し難くなる。第2貫通孔111Aからパッケージ内の空間までの全体の体積に対する、圧縮しなければならない空気の体積V’がある程度大きいと、水がパッケージ内の空間まで浸入し難くなる。より具体的には、パッケージ内の空間の体積Vに対する第2貫通孔111Aおよび第1貫通孔101Aの体積の総和V’の割合が0.05%より大きいと効果的である。すなわち、V’/V≧0.05%の条件を満たすことにより、パッケージ100Cの外側から水が浸入する可能性を有意に低減させることができる。
【0090】
ここで、パッケージ100Cにガスセンサ素子3Gを搭載した場合について考える。
図18は、ガスセンサ装置200Cの断面図である。ガスセンサ素子3Gを、配線基板2に対して樹脂などで隙間なく搭載した場合、第1貫通孔101Aと導通するパッケージ内の空間体積Vは、
図18に示されるように第1-1面102Aと、収容凹部21と、ガスセンサ素子3Gの外表面とによって規定される。ガスセンサ素子3Gの体積の分だけパッケージ内の空間体積Vが減少するため、パッケージ内の空間の体積Vに対する第2貫通孔111Aおよび第1貫通孔101Aの体積の総和V’の割合は、上記の0.05%よりさらに大きいものとなる。より具体的には、この割合が0.3%より大きいとより効果的である。すなわち、
図18のようなガスセンサ装置200Cにおいては、V’/V>0.3%の条件を満たすことにより、ガスセンサ装置200Cの外側から水が浸入する可能性を有意に低減させることができる。
【0091】
(変形例2-4)
変形例2-4では、
図19を用いて、第1貫通孔101から水が浸入してしまった場合に、浸入した水がガスセンサ素子3Gに到達する可能性を低減する追加の構成について説明する。
【0092】
図19は、ガスセンサ装置200D、200E、200F、および200Gの断面図を示している。
図19の符号1901に示すガスセンサ装置200Dは、実施形態2に係るガスセンサ装置200(
図13)の第2-1面112において、第2貫通孔111の外縁部から離間した位置に当該外縁部に沿って枠状突起8を有している。枠状突起8は、メタライズ層またはセラミック層であってよい。枠状突起8は、セラミックのグリーンシートに、金属ペーストまたは基板のセラミックと同じセラミック材料を含むセラミックペーストを塗布して形成することができる。
図19の符号1901の図に示すように、枠状突起8を設けることにより水の浸入経路に段差を形成してもよい。これにより、第1貫通孔101および第2貫通孔111の内壁を伝って浸入した水が、ガスセンサ素子3Gの方に進行する可能性を低減することができる。
【0093】
図19の符号1902に示すガスセンサ装置200Eは、実施形態2に係るガスセンサ装置200(
図13)の基板1に対して、第2層11側にさらに第2層11’が積層されている点がガスセンサ装置200と異なる。第2層11’の第2貫通孔111’は、第2層11の第2貫通孔111よりも一回り小さい寸法を有している。換言すると、平面視透視で、第2層11’の第2貫通孔111’(の内壁)は、第2層11の第2貫通孔111の(内壁)内側に位置する。当該構成は、第2層が、基板1の外表面を構成する第2層11’と、当該第2層11’と第1層10との間の第2層11と、で構成されているということもできる。また、第2貫通孔は、第2層11’の第2貫通孔111’と、これよりも一回り大きい第2層11の第2貫通孔111とで構成された、厚み方向で寸法が異なっている貫通孔であるということもできる。
図19の符号1902の図に示すように、第2層11と第2層11’とを積層することにより、水の浸入経路に段差を形成してもよい。これにより、第1貫通孔101の内壁を伝って浸入した水が、ガスセンサ素子3Gの方に進行する可能性を低減することができる。第2層11’の第1層10側の面に第2貫通孔111’を取り囲む枠状突起を設けてもよい。これにより、基板1’の厚み方向の中間に位置する第2層11の第2貫通孔111内に浸入した水が、第2層11’の第2貫通孔111’へ浸入する可能性を低減することができる。この枠状突起は、ガスセンサ装置200Dの枠状突起8と同様の方法を用いて設けることができる。あるいは、この枠状突起は、第2層11’となるグリーンシートに第2貫通孔111’となる貫通孔を形成する際、または貫通孔を形成したグリーンシートを積層する際に、貫通孔の周囲を第1貫通孔101がある方向に変形させるなどして設けることもできる。
【0094】
図19の符号1903に示すガスセンサ装置200Fは、実施形態2に係るガスセンサ装置200(
図13)に対して、封止接合材7の形状が異なっている。すなわち、接合用金属層6および封止接合材7の内周が、収容凹部の外縁よりも外側に位置している。そのため、接合用金属層6および封止接合材7と、配線基板2と、の間に段差が形成されている。
図19の符号1903の図に示すように、封止接合材7および接合用金属層6によって水の浸入経路に段差を形成してもよい。これにより、第1貫通孔101および第2貫通孔111の内壁を伝って浸入した水が、ガスセンサ素子3Gの方に進行する可能性を低減することができる。
【0095】
図19の符号1904に示すガスセンサ装置200Gの配線基板2Aは、実施形態2に係るガスセンサ装置200(
図13)の配線基板2に対して、配線基板2の内壁面にさらに段差が設けられている点においてガスセンサ装置200と異なる。
図19の符号1904の図に示すように、配線基板2Aの内壁面に段差を形成することにより、第1貫通孔101および第2貫通孔111の内壁を伝って浸入した水が、ガスセンサ素子3Gの方に進行する可能性を低減することができる。
【0096】
(変形例2-5)
変形例2-5では、パッケージ内に複数のセンサ素子を搭載する例、ならびにASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのICチップおよび/またはコンデンサなどを搭載したセンサ装置について説明する。
【0097】
図20は、センサ装置200Hの断面図である。センサ装置200Hは、パッケージ100Dと、ガスセンサ素子3Gと、気圧センサ素子3Hとを備える。パッケージ100Dは、基板1Bと、収容凹部21および配線導体22を有する配線基板2Bとを備える。
【0098】
基板1Bの第2層11Bは、例えば、ガスセンサ素子3Gおよび気圧センサ素子3Hに対応する位置に第2貫通孔111を有している。第1層10Bは、第2-1面112B側から基板1Bを平面視したときに、各第2貫通孔111の内部に複数の第1貫通孔101を有している。基板1Bにおいて、第1-1面102Bはパッケージ100Dの外表面の一部を構成しており、第2-1面112Bはガスセンサ素子3Gおよび気圧センサ素子3Hと対向している。
【0099】
配線基板2Bのように、1つの収容凹部に複数のセンサ素子3を備えていてもよい。また複数のセンサ素子の間には仕切り壁を設けてもよい(
図21に示す例を参照)。
図20では、ガスセンサ素子3Gと、気圧センサ素子3Hとを備える例について説明したが、搭載されるセンサ素子の種類およびセンサ素子の数はこれらに限定されない。また、第1貫通孔101および第2貫通孔111の位置および数についても搭載されるセンサ素子に応じて適宜変更され得る。すなわち、基板1Bに代えて上述した基板1、基板1Aの構成を有する基板を用いてもよい。
【0100】
図21は、センサ装置200Iの断面図である。センサ装置200Iは、パッケージ100Eと、ガスセンサ素子3Gと、ASIC4Aと、コンデンサ4Bとを備える。パッケージ100Eは、基板1Cと、配線導体22を有する配線基板2Cとを備える。配線基板2Cは、ガスセンサ素子3Gと、ASIC4Aとおよびコンデンサ4Bとの間に仕切り壁23を有することにより、センサ素子を収容する第1収容凹部21Aと、ASIC4Aおよびコンデンサ4Bを収容する第2収容凹部21Bと、を有している。
【0101】
基板1Cの第2層11Cは、例えば、ガスセンサ素子3Gに対応する位置に第2貫通孔111を有している。ASIC4Aおよびコンデンサ4Bは、気体または液体などの流体の流入がない環境が望まれるため、基板1Cと、配線基板2Cと、仕切り壁23とによって気密封止されている。第1層10Cは、第2-1面112C側から基板1Cを平面視したときに、第2貫通孔111の内部に複数の第1貫通孔101を有している。基板1Cにおいて、第1-1面102Cはパッケージ100Eの外表面の一部を構成しており、第2-1面112Cはガスセンサ素子3Gと対向している。
【0102】
図21は、例示にすぎず、搭載されるセンサ素子および他の構成要素の種類および数はこれらに限定されない。また、第1貫通孔101および第2貫通孔111の位置および数についても搭載されるセンサ素子に応じて適宜変更され得る。すなわち、基板1Cに代えて上述した基板1、基板1A、基板1Bの構成を有する基板を用いてもよい。
【0103】
〔実施形態3〕
本実施形態では、実施形態1に係る基板1の別の実施形態について、
図22および
図23を用いて説明する。
図22は、実施形態3に係る例示的な基板1Dの断面図である。
図23の符号2301は、基板1Dを第1-1面102側から見た斜視図であり、符号2302は、基板1Dを枠部12の側から見た斜視図である。
【0104】
図22および
図23に示すように、基板1Dは、例えば、第1層10と、第2層11と、第2層の表面において、第1貫通孔101および第2貫通孔111を取り囲むように位置する枠部12と、配線導体22とを有している。すなわち、基板1Dは、センサ素子を搭載する配線基板としての機能を有している。
【0105】
枠部12は、第1層10および第2層11と同様に、例えば酸化アルミニウム質焼結体、ガラスセラミック焼結体、ムライト質焼結体または窒化アルミニウム質焼結体等のセラミック材料を含む絶縁層である。
【0106】
基板1Dは、枠部12によって規定される収容凹部21Dを有している。収容凹部21Dの形状およびサイズは、収容されるセンサ素子の形状およびサイズに応じて、任意の形状および任意のサイズであり得る。例えば、
図23の符号2302の図に示すように、収容凹部21Dは、直方体形状であってよい。また、枠部12の内側面の形状も特に限定されない。枠部12の内側面は、階段形状または第1層10および第2層11に対して傾斜を有する傾斜面であってもよい。
【0107】
枠部12は、内部および/または表面に配線導体22を有している。すなわち、基板1Dは、内部および表面に配線導体22を有している。例えば、
図22に示すように、基板1Dは、配線導体22として、センサ素子と接続するための接続パッド22Aと、外部電気回路と接続するための端子電極22Dとを含んでいる。これら接続パッド22Aと端子電極22Dとは、枠部12の内部に設けられた貫通導体22Bおよび内部配線層22C(図示せず)によって電気的に接続されている。貫通導体22Bは枠部12を貫通している。端子電極22Dは枠部12の上面だけではなく、上面から外側面にかけて、あるいは外側面に設けられていてもよい。
【0108】
上記構成により、枠部12によって形成される収容凹部の底面にセンサ素子を搭載することにより、通気性および防水性を備える基板を実現することができる。すなわち、微細貫通孔を有する蓋体とセンサ素子を搭載する配線基板との一体構造としてのパッケージを実現することができる。このようなパッケージは、蓋体と配線基板とが別体である場合と比較してより薄型のものとなる。
【0109】
実施形態3に係る基板1Dは、基板1Dにセンサ素子を搭載する搭載過程において、センサ素子が基板1Dに押し付けられるために強度が必要とされる。基板1Dは、セラミック絶縁層で構成されるため強度に優れる。そのため、基板1Dをより小型または薄型とすることができ、基板1Dを用いるセンサデバイスの小型化または薄型化に寄与する。さらに、枠部12についても、第1層10または第2層11に対して積層することにより、一体構造としての基板1Dを容易に製造することができる。
【0110】
また、基板1Dにおいて、第2貫通孔111の寸法は、搭載されるセンサ素子の寸法より一回り小さく、センサ素子で第2貫通孔111の開口を塞ぐことができる大きさとすることができる。例えば、第2貫通孔111の開口面積は、センサ素子の平面視の面積の9%以上64%以下とすることができる。
【0111】
(変形例3-1)
図22では、基板1Dは第1層10と、第2層11と、枠部12とを含む積層体としての例を示しているが、第1層10Aと、複数の第2貫通孔111を有する第2層11Aと、枠部12とを含む積層体であってもよい。
【0112】
また、
図22では、第1層10の第1-1面102が基板1Dの外表面の一部を構成し、第2層11の第2-1面112が収容凹部21Dの底面を構成している例を示している。しかしながら、第2層11の第2-1面112が基板1Dの外表面の一部を構成し、第1-1面102が収容凹部21Dの底面を構成してもよい。このことは、基板1Dが第1層10Aと、第2層11Aと、枠部12を含む場合であっても同様である。
【0113】
〔実施形態4〕
実施形態4では、実施形態3に記載の基板1Dにセンサ素子3の一例としてガスセンサ素子3Gを搭載したガスセンサ装置200Jについて説明する。
図24は、ガスセンサ装置200Jの断面図である。
図24は、ガスセンサ装置200Jが実装基板50に実装されている状態における断面を示している。実施形態4では、ガスセンサ素子3Gを搭載したガスセンサ装置200Jについて説明するが、搭載するセンサ素子は、ガスセンサ素子3Gに限定されない。実施形態4に例示するガスセンサ装置200Jの構成は、センサ素子を搭載するパッケージに通気性が必要とされるセンサ素子を搭載したセンサ装置として適用され得る。当該センサ素子3は、例えば気体の性質を検知するセンサであり、より具体的にはガスセンサ素子、気圧センサまたは湿度センサなどが挙げられ得る。また、センサ素子3はMEMS素子であってもよく、この場合にはより小型のセンサ装置とすることができる。
【0114】
(ガスセンサ装置200Jの構成)
ガスセンサ装置200Jは、基板1Dと、ガスセンサ素子3Gとを備える。
【0115】
基板1Dは、複数の第1貫通孔101を有するセラミック絶縁層である第1層10と、少なくとも1つの第2貫通孔111を有する第2層11と、枠部12と、配線導体22とを有している。第2層11は、第1層10に対して積層されている。枠部12は、第2層11の表面において、第1貫通孔101および第2貫通孔111を取り囲むように位置している。
【0116】
第1層10の第1-1面102において、第1貫通孔101は例えば円形であり、その直径D1は、10μm以上50μm以下である。第2層の第2-1面112において、第2貫通孔111は例えば円形であり、その直径D2は、第1貫通孔101の直径D1よりも大きい。また、基板1Dを第1層10の第1-1面102側から平面視したときに、複数の第1貫通孔101の少なくとも一部は、第2貫通孔111と重なる位置にある。換言すると、1つの第2貫通孔111に対して、複数の第1貫通孔101が重なっている。第2貫通孔111は四角形状であってもよい。
【0117】
ガスセンサ素子3Gは、基板1Dに対してフリップチップ接続されている。すなわち、ガスセンサ素子3Gは、支持基板32Gの表面に設けられている電極(図示せず)と、接続パッド22Aとを、例えば金バンプおよびはんだバンプ等の導電性接合材9によって接合することにより、基板1Dに接続されている。基板1Dと、ガスセンサ素子3Gとの間には、第1貫通孔101と導通する空間の体積を低減する封止部材13を備えている。封止部材13を備えることにより、感ガス部31Gが設けられているセンシング部の空間を、収容凹部21Dの他の空間から独立させることができる。当該センシング部が含まれる空間が小さくなることにより、センサ感度が向上する。また、センシング部が含まれる空間を空間的に独立させることで、第1貫通孔101と導通する空間体積Vが小さくなる。これにより、必然的にV’/Vの値が大きくなため、防水性能が向上する。
【0118】
封止部材13は、導電性接合材9によるガスセンサ素子3Gの基板1Dへの接合強度を補強するためのアンダーフィル材であってもよい。アンダーフィル材を、金バンプやはんだバンプ等の導電性接合材9の周囲だけでなく、ガスセンサ素子3G(支持基板32G)の全周にわたって配置して、ガスセンサ素子3Gと基板1Dとの間の空隙を埋めることで、第1貫通孔101と導通する空間の体積を低減する封止部材13とすることができる。
【0119】
図24では、ガスセンサ素子3Gが基板1Dに対してフリップチップ接続されているため、ボンディングワイヤ用のパッドおよびボンディングのループを収容する高さが必要なくなり、結果としてガスセンサ装置200Jをより小型化、薄型化することができる。感ガス部31Gは、第2貫通孔111の外側に位置しているが、導電性接合材9の厚みを調節することにより、感ガス部31Gが第2貫通孔111内に収容されていてもよい。当該構成により、ガスセンサ装置200Jをより小型化することができる。
【0120】
基板1Dにおいて、第2貫通孔111の寸法(直径または四角形の場合の1辺の長さ)は、ガスセンサ素子3Gの直径(または1辺の長さ)の30%以上、80%以下であってもよい。例えば、ガスセンサ素子3Gの直径(または1辺)が1mmである場合、第2貫通孔111は、0.3mm以上0.8mm以下の直径を有する円形または1辺0.3mm以上0.8mm以下の角形を有していてもよい。これにより、第2貫通孔111によって形成される基板1の凹部にガスセンサ素子3Gの凸部(感ガス部31G)を収容することができるため、より小型化できる。また、感ガス部31Gをパッケージ100の外表面に近い位置に配置することができる。さらに、感ガス部31Gによって熱せられ上昇した空気が、第2貫通孔111(基板の凹部)に集まりやすいため、熱せられた空気の排出が促進される。また、これに伴い、パッケージの外側の空気をより多く取り入れることができる。これにより、ガスのセンシング感度が向上する。
【0121】
(変形例4-1)
図25は、実施形態4に係る別の例示的な気圧センサ装置200Kの断面図である。気圧センサ装置200Kは、基板1Dと、気圧センサ素子3Hとを備えている。気圧センサ装置200Kは、搭載しているセンサ素子が気圧センサ素子3Hである点および気圧センサ素子3Hと基板1Dとの接続の態様が実施形態4のガスセンサ装置200Jと異なる。
【0122】
気圧センサ素子3Hは、気圧センサ素子3Hの表面に設けられた電極(図示せず)が接続部材5を介して接続パッド22Aと接続されている。
図25は、例として気圧センサ素子3Hを搭載した気圧センサ装置200Kを示しているが、同様の態様で搭載されるセンサ素子は気圧センサ素子3Hに限定されない。気圧センサ素子3Hのように、センサ素子の下面側からの通気によっても検知が可能なセンサ素子である場合、
図25に示すようなワイヤボンディング接続によって基板1Dと接続されてよい。
【0123】
(変形例4-2)
変形例4-2では、実施形態3(
図22参照)に係る別の例示的な基板1Eに、ガスセンサ素子3Gを搭載したガスセンサ装置200Lについて説明する。
図26は、ガスセンサ装置200Lの断面図である。
【0124】
ガスセンサ装置200Lは、基板1Eと、ガスセンサ素子3Gとを備える。基板1Eは、第2層11Aと、第1層10Aと、第1層1Aの表面において、複数の第2貫通孔111Aを有する第2層11Aと、第1貫通孔101および第2貫通孔111を取り囲むように位置する枠部12と、配線導体22とを有している。
【0125】
基板1Eは、枠部12によって規定される収容凹部21Eを有している。基板1Eは、防水効果に優れる第1貫通孔101Aよりも外側に、100μm以上200μm以下の直径を有する第2貫通孔111Aを有することにより、段階的な防水構造となり、防水効果をより向上させることができる。
【0126】
ガスセンサ素子3Gは、
図24のガスセンサ装置200Jと同様に、基板1Eに対してフリップチップ接続されている。また、基板1Eと、ガスセンサ素子3Gとの間には、第1貫通孔101と導通する空間の体積を低減する封止部材13を備えている。封止部材13を備えることにより、センシング部の空間を、収容凹部21Eの他の空間から独立させることができる。
【0127】
図26に示すように、第1貫通孔101Aと導通するパッケージ内の空間体積Vは、第1-1面102Aと、封止部材13と、ガスセンサ素子3Gの外表面とによって規定される。このとき、空間体積Vと第1貫通孔101Aおよび第2貫通孔111Aの体積の総和V’との関係が、V’/V>0.3%の条件を満たすことにより、ガスセンサ装置200Lの外側から水が浸入する可能性を有意に低減させることができる。ガスセンサ装置200Lは、
図13~
図16および
図18~
図19に示す例のガスセンサ装置200、200A~200Gに比較して、ガスセンサ素子3Gがフリップチップ接続されていることにより、空間体積Vがより小さくなり、V’/Vがより大きくなっている。
【0128】
ガスセンサ装置200Jおよび気圧センサ装置200Kは、枠部12を備える基板1Dまたは基板1Eを用いている。これらのセンサ装置においても、ASICなどのICチップおよび/またはコンデンサのような、センサ素子3(ガスセンサ素子3G、気圧センサ素子3H)以外の電子部品を搭載してもよい。この場合、電子部品は、枠部12の内寸を大きくしてセンサ素子3と同じ面に搭載してもよい。電子部品と基板との電気的接続はワイヤボンディングで接続してもよいし、フリップチップ接続、はんだや導電性接着剤による接続でもよい。また、枠部12の厚みを大きくしてセンサ素子3の上に搭載してもよい。この場合は、ワイヤボンディングで基板1Dまたは基板1Eと接続することができる。これらの搭載方法は、センサ装置の平面視の大きさあるいは厚みによって適宜選択することができる。
【0129】
例えば、後述する
図31に示す例のように、センサ素子の上にASIC等の電子部品を搭載すると、平面方向の小型化が可能となり、実装面積の小さいセンサ装置とすることができる。このとき、
図31に示す例のように、電子部品でセンサ素子の内部空間を塞ぐことができる。そのため、センサ素子と電子部品を樹脂封止することができる。
【0130】
図27は、変形例4-1において説明した気圧センサ装置200Mの断面図である。気圧センサ素子3Hのように、内部に空間が存在するセンサ素子をワイヤボンディング接続した場合、第1貫通孔101Aと導通するパッケージ内の空間体積Vは、以下のように定義される。すなわち、空間体積Vは、
図27に示されるように、第2貫通孔111の体積と、気圧センサ素子3Hの内部空間体積との総和となる。この場合、第1貫通孔101Aの体積の総和V’と、空間体積Vとの関係が、V’/V>0.3%の条件を満たすことにより、気圧センサ装置200Mの外側から水が浸入する可能性を有意に低減させることができる。気圧センサ装置200Mは、
図13~
図16および
図18~
図19に示すガスセンサ装置200、200A~200Gと同じワイヤボンディング接続ではあるが、気圧センサ素子3Hが第2貫通孔111を塞ぐように搭載されている。これにより、空間体積Vがより小さくなり、V’/Vがより大きくなっている。
【0131】
搭載されるセンサ素子が、平板部と枠部とで構成されるMEMS素子である場合のV’/Vについて、
図24~
図27を参照して、以下のことが言える。すなわち、
図26および
図27からわかるように、枠部と平板部とで囲まれたセンサ素子の内部空間を貫通孔と連通させて搭載する(
図27)よりも、内部空間を貫通孔とは反対側に向けて搭載する(
図26)方が、V’/Vが大きくなる。そのため、200Jと、200Kとでは、200Jの方がより防水性の高いものとなる。
【0132】
また、
図24と
図26とを比較した場合、貫通孔は、枠部12側に第1貫通孔101を有し、枠部12とは反対側に第1貫通孔より一回り大きい第2貫通孔111を有するガスセンサ装置200Lの方が、V’/Vが大きくなる。そのため、
図24のガスセンサ装置200Jと、
図26のガスセンサ装置200Lとを比較すると、ガスセンサ装置200Lの方が防水性の高いものとなる。
【0133】
第1貫通孔101および第2貫通孔111の形態、数または配置などによって貫通孔の体積のV’を増加させるよりも、センサ素子を搭載する向きによって空間体積Vを低減する方が、V’/Vの増加に対してより効果的である。
【0134】
上述した実施形態2~4についても、実施形態1において説明した第1貫通孔101および第2貫通孔102などの構成を適宜適用することができる。
【0135】
〔電子機器への実装例〕
以下、本開示の一態様におけるガスセンサ装置を実装した電子機器の一例について、
図28~
図33を用いて説明する。以下に説明する電子機器への実装例は例示である。本開示の一態様におけるガスセンサ装置が、その他の公知の実装態様にて電子機器に実装されていてもよい。また、以下に説明する電子機器に実装されているガスセンサ装置は一例であって、本開示で示した範囲で種々変更されてよいことは勿論である。
【0136】
本開示の一態様におけるガスセンサ装置を実装した電子機器の具体例としては、特に限定されないが、スマートフォン等の通信情報端末、時計、ゲーム機、イヤホン等が挙げられる。
【0137】
また、本開示の一態様における電子機器には、例えば、ガスセンサ装置に代替して、気圧センサ素子を有する気圧センサ装置または湿度センサ素子を有する湿度センサ装置等が実装されていてもよい。
【0138】
(実装例1)
図28は、ガスセンサ装置200(
図13参照)を備える電子機器301の断面図である。
図28では、電子機器301におけるガスセンサ装置200が搭載されている部分の付近について示している。電子機器の断面図において示している範囲は、繰り返して記載しないが以下の実装例においても同様である。
【0139】
図28に示すように、電子機器301は、ガスセンサ装置200と、実装基板50と、通気孔となる開口部61が形成された筐体60と、を有している。
【0140】
ガスセンサ装置200は、実装基板50に実装されている。例えば、はんだ等の導電性接合材によって、ガスセンサ装置200の端子電極22Dと実装基板50の外部電極54とが互いに接合されている。実装基板50は、例えば、プリント基板(PCB)であり、配線53および外部電極54を有している。
【0141】
電子機器301は、ガスセンサ装置200の基板1における複数の第1貫通孔101を有する部分の位置が、筐体60の開口部61の位置に合うように配置されている。換言すれば、電子機器301は、第1貫通孔101と開口部61とが互いに連通するように配置されて、ガスセンサ装置200が筐体60に搭載されている。ガスセンサ装置200と筐体60との間には、開口部61の外縁に沿うようにリング状のシール部材62が配置されている。シール部材62は、ガスセンサ装置200の基板1における第1層10と筐体60との間の防水性を確保するように、第1層10と筐体60とを接合している。シール部材62は、はんだ材であってもよく、Oリングまたはガスケットであってもよい。シール部材62の材質としては、ゴム質の樹脂、はんだ等の金属が挙げられる。
【0142】
(実装例2)
図29は、ガスセンサ装置200J1を備える電子機器302の断面図である。
図29に示すように、電子機器302は、ガスセンサ装置200J1と、実装基板51と、筐体60と、を有している。ガスセンサ装置200J1は、ガスセンサ装置200J(
図24参照)と同様の構成において、貫通導体22Bが枠部12ではなく、基板1の第1層10および第2層11を貫通している点で異なっている。ガスセンサ装置200J1は、蓋体72を備えており、ガスセンサ素子3Gは、蓋体72によって封止され、保護されている。また、ガスセンサ装置200J1は、第1層10の表面に、貫通導体22Bと接続する端子電極22Dを有している。ガスセンサ装置200J1は、封止部材13を備えていなくてもよい。
【0143】
実装基板51は、例えば、開口部52を有するプリント基板(PCB)であり、配線53および外部電極54を有している。
【0144】
電子機器302は、ガスセンサ装置200J1の基板1Dにおける複数の第1貫通孔101を有する部分の位置が、実装基板51の開口部52の位置に合うように配置されている。換言すれば、電子機器302は、第1貫通孔101と開口部52とが互いに連通するように配置されて、ガスセンサ装置200J1が実装基板51に実装されている。例えば、はんだ等の導電性接合材55によって、ガスセンサ装置200J1の端子電極22Dと、実装基板51の外部電極54とが互いに接合される。これにより、ガスセンサ装置200J1と、実装基板51の配線53とが電気的に接続される。実装基板51には、ガスセンサ装置200J1と対向する面に、開口部52の外周を取り囲むように封止リング56が形成されている。また、ガスセンサ装置200J1には、実装基板51と対向する位置に、封止リング56と同形状の封止リング24が形成されている。封止リング56と、封止リング24とは、封止接合材7によって接合されている。封止リング56および封止リング24は、それぞれ導体材料のメタライズ層またはめっき層等の金属層として形成される。
【0145】
電子機器302は、実装基板51の開口部52の位置が、筐体60の開口部61の位置に合うように配置されて、実装基板51が筐体60に搭載されている。実装基板51と筐体60との間には、開口部61の外縁に沿うようにリング状のシール部材62が配置されている。
【0146】
(実装例3)
図30は、ガスセンサ装置200を備える電子機器303の断面図である。
図30に示すように、電子機器303は、ガスセンサ装置200と、実装基板50と、筐体60と、ガスケット70と、を有している。ガスセンサ装置200は、実装基板50に実装されている。
【0147】
電子機器303は、ガスセンサ装置200の基板1における複数の第1貫通孔101を有する部分の位置が、筐体60の開口部61の位置に合うように配置されて、ガスケット70によってガスセンサ装置200が筐体60に接合されている。ガスケット70は、実装基板50から筐体60にわたって延びる、例えば内向きフランジの形状を有している。ガスケット70は、ガスセンサ装置200の周囲を覆うとともに、第1層10と筐体60との間の防水性を確保するように、ガスセンサ装置200の第1層10の一部を覆っている。ガスケット70の材質としては、ゴム質の樹脂等であってよく、特に限定されるものではない。
【0148】
(実装例4)
図31は、気圧センサ装置200L1を備える電子機器304の断面図である。
図31に示すように、電子機器304は、前述の実装例2における電子機器302と同様の構成において、気圧センサ装置200L1を備える点で異なっている。そして、気圧センサ装置200L1は、ガスセンサ装置200L(
図26参照)と比較して、以下構成が異なっている。(i)ガスセンサ素子3Gではなく、気圧センサ素子3Hを搭載している。(ii)気圧センサ装置200L1上にASIC4Aが搭載されている。(iii)気圧センサ装置200L1の収容凹部内に、封止体71が充填されている。
【0149】
封止材は、樹脂成形体であってもよく、その他の材質によって形成されていてもよい。例えば、樹脂等でコーティング(ポッティング)することにより、封止体71を形成することができる。封止体71が充填されるため、封止部材13は必ずしも必要ではない。
【0150】
さらに、気圧センサ装置200L1と実装基板50とは、導電性接合材55を介して実装基板50と接合している。この接合部分において、
図31に示されるように、気圧センサ装置200L1の周囲が、樹脂などの封止材14により封止されていてもよい。これにより、電子機器304の外部と通じる気圧センサ装置200L1の内部空間が、電子機器304の内部空間から独立する。
【0151】
(実装例5)
図32は、ガスセンサ装置200J(
図24参照)を備える電子機器305の断面図である。
図32に示すように、電子機器305は、前述の実装例3における電子機器303と同様の構成において、ガスセンサ装置200に代替してガスセンサ装置200Jを備える点で異なっている。そして、電子機器305は、はんだ等の導電性接合材55によって、ガスセンサ装置200Jの端子電極22Dと実装基板50の電極とが互いに接合されている。
【0152】
ガスケット70は、導電性接合材55を介して実装基板50と接合している。電子機器305は、ガスセンサ装置200Jが封止部材13を備えていなくてもよい。
【0153】
(実装例6)
図33は、ガスセンサ装置200J(
図24参照)を備える電子機器306の断面図である。
図33に示すように、電子機器306は、前述の実装例5における電子機器305と同様の構成において、ガスケット70に代替してシール部材62を備える点で異なっている。電子機器306は、ガスセンサ装置200Jと筐体60との間に、開口部61の外縁に沿うようにリング状のシール部材62が配置されている。
【符号の説明】
【0154】
1、1A、1B、1C、1D、1E・・・基板
2、2A、2B、2C・・・配線基板
3・・・センサ素子(3G:ガスセンサ素子、3H:気圧センサ素子)
12・・・枠部
13・・・封止部材
21、21D、21E・・・収容凹部
22・・・配線導体
31G・・・感ガス部
50、51・・・実装基板
60・・・筐体
100、100A、100B、100C、100D、100E・・・パッケージ
101、101A、101B、101C、101D、101E、101F、101G、101H、101I・・・第1貫通孔
111、111’、111A・・・第2貫通孔
200、200A、200B、200C、200D、200E、200F、200G、200J、200J1、200J2、200L・・・ガスセンサ装置(センサ装置)
200H、200I・・・センサ装置
200K・・・気圧センサ装置(センサ装置)
301、302、303、304、305、306・・・電子機器