IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -車両用灯具および照明方法 図1
  • -車両用灯具および照明方法 図2
  • -車両用灯具および照明方法 図3
  • -車両用灯具および照明方法 図4
  • -車両用灯具および照明方法 図5
  • -車両用灯具および照明方法 図6
  • -車両用灯具および照明方法 図7
  • -車両用灯具および照明方法 図8
  • -車両用灯具および照明方法 図9
  • -車両用灯具および照明方法 図10
  • -車両用灯具および照明方法 図11
  • -車両用灯具および照明方法 図12
  • -車両用灯具および照明方法 図13
  • -車両用灯具および照明方法 図14
  • -車両用灯具および照明方法 図15
  • -車両用灯具および照明方法 図16
  • -車両用灯具および照明方法 図17
  • -車両用灯具および照明方法 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】車両用灯具および照明方法
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/14 20060101AFI20241112BHJP
   B60Q 1/04 20060101ALI20241112BHJP
   H05B 45/10 20200101ALI20241112BHJP
   H05B 45/34 20200101ALI20241112BHJP
   H05B 45/345 20200101ALI20241112BHJP
   H05B 45/375 20200101ALI20241112BHJP
   H05B 47/105 20200101ALI20241112BHJP
   H05B 47/16 20200101ALI20241112BHJP
   H05B 47/165 20200101ALI20241112BHJP
   H05B 47/17 20200101ALI20241112BHJP
【FI】
B60Q1/14 H
B60Q1/04 E
B60Q1/14 F
H05B45/10
H05B45/34
H05B45/345
H05B45/375
H05B47/105
H05B47/16
H05B47/165
H05B47/17
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022570044
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(86)【国際出願番号】 JP2021046328
(87)【国際公開番号】W WO2022131303
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2024-09-19
(31)【優先権主張番号】P 2020210707
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】神谷 美紗子
(72)【発明者】
【氏名】小山 早苗
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-209002(JP,A)
【文献】特開2017-45592(JP,A)
【文献】特開2008-305759(JP,A)
【文献】特開2014-63092(JP,A)
【文献】特開2018-187979(JP,A)
【文献】国際公開第2017/150322(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/098138(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/14
B60Q 1/04
H05B 45/10
H05B 45/34
H05B 45/345
H05B 45/375
H05B 47/105
H05B 47/16
H05B 47/165
H05B 47/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体光源を含み、前記半導体光源の出射光にもとづく瞬時照射スポットを配光の水平方向に走査する走査型光源と、
前記走査型光源の走査と同期して、各走査位置における前記半導体光源の光量を多階調で調光可能な点灯回路と、
を備え、
前記点灯回路は、減光率に応じたデューティサイクルでパルス幅変調により前記半導体光源を点灯する第1モードと、前記減光率に応じたサイクル数にわたり、前記半導体光源を消灯する第2モードと、が切りかえ可能であることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
減光領域の幅が所定値より狭い場合に前記第2モードが選択されることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記走査型光源は、前記半導体光源に加えて、前記半導体光源の出射光を受け、所定の周期運動を繰り返すことによりその反射光を車両前方で走査する反射体をさらに含み、
前記点灯回路は、前記反射体の運動と同期して、パルス幅変調の制御波形を生成し、前記制御波形に応じて前記半導体光源に供給する駆動電流をスイッチングすることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
照明方法であって、
半導体光源の出射光にもとづく瞬時照射スポットを配光の水平方向に走査するステップと、
前記瞬時照射スポットの走査と同期して、各走査位置における前記半導体光源の光量を多階調で調光するステップと、
を備え、
前記調光するステップは、
減光領域の幅が所定値より広い場合に、減光率に応じたデューティサイクルでパルス幅変調により前記半導体光源を点灯するステップと、
減光領域の幅が前記所定値より狭い場合に、前記減光率に応じたサイクル数にわたり、前記半導体光源を消灯するステップと、
を含むことを特徴とする照明方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具は、一般にロービームとハイビームとを切りかえることが可能である。ロービームは、自車近傍を所定の照度で照明するものであって、対向車や先行車にグレアを与えないよう配光規定が定められており、主に市街地を走行する場合に用いられる。一方、ハイビームは、前方の広範囲および遠方を比較的高い照度で照明するものであり、主に対向車や先行車が少ない道路を高速走行する場合に用いられる。したがって、ハイビームはロービームと比較してより運転者による視認性に優れているが、車両前方に存在する車両の運転者や歩行者にグレアを与えてしまうという問題がある。
【0003】
近年、車両の周囲の状態にもとづいて、ハイビームの配光パターンを動的、適応的に制御するADB(Adaptive Driving Beam)技術が実用化されている。ADB技術は、車両の前方の先行車、対向車や歩行者の有無を検出し、車両に対応する領域を減光するなどして、車両に与えるグレアを低減するものである。
【0004】
ADB機能を実現する方式として、アクチュエータを制御するシャッター方式、ロータリー方式、LEDアレイ方式などが提案されている。シャッター方式やロータリー方式は、消灯領域(遮光領域)の幅を連続的に変化させることが可能であるが、消灯領域の数が1個に制限される。LEDアレイ方式は、消灯領域を複数個、設定することが可能であるが、消灯領域の幅が、LEDチップの照射幅に制約されるため、離散的となる。
【0005】
本出願人は、これらの問題点を解決可能なADB方式として、スキャン方式を提案している(特許文献2、3参照)。スキャン方式とは、回転するリフレクタ(ブレードミラー)に光を入射し、リフレクタの回転位置に応じた角度で入射光を反射して反射光を車両前方で走査しつつ、光源の点消灯を、リフレクタの回転位置に応じて変化させることで、車両前方に、所望の配光パターンを形成するものである。
【0006】
特許文献3に記載のスキャン方式では、1スキャンの間、光源に流す駆動電流の電流量を一定に保ちつつ、光源の点消灯(オン、オフ)を時分割で切り替える。そのため所定のエリアを遮光するグレアフリー機能の実現は容易であったが、照射領域の照度は実質的に一定に制約されていた。
【0007】
特許文献4には、スキャン方式の車両用灯具による具体的な配光の形成手法が開示される。この技術では、複数チャンネルの光源により配光が形成される。複数チャンネルの光源はそれぞれ、水平方向の一部の範囲を受け持っており、各光源のスキャン範囲は、他の光源のスキャン範囲と一部がオーバーラップしつつ、水平方向にシフトしたものとなっている。各光源の光量は、いわゆるDC調光(アナログ調光)によって制御され、応答速度の制約から1スキャン単位で可変である。この灯具では、各走査位置の照度を、複数の光源のオン、オフ、および光量の組み合わせにより制御でき、グレアフリー機能以外の多様な配光パターン(たとえば電子スイブルなど)に対応するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2008-205357号公報
【文献】特開2012-224317号公報
【文献】特開2010-6109号公報
【文献】特開2018-187979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献4の技術では、1つの配光を形成するために、多くのチャンネルの光源および点灯回路を必要としており、構造が複雑であり、また所望の配光を形成するための光源の制御も複雑であった。
【0010】
本開示は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、グレアフリー機能以外の多様な配光パターンを生成可能な車両用灯具の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示のある態様は、車両用灯具に関する。車両用灯具は、半導体光源を含み、半導体光源の出射光にもとづく瞬時照射スポットを配光の水平方向に走査する走査型光源と、走査型光源の走査と同期して、各走査位置における半導体光源の光量を多階調で調光可能な点灯回路と、を備える。点灯回路は、減光率に応じたデューティサイクルでパルス幅変調により半導体光源を点灯する第1モードと、減光率に応じたサイクル数にわたり、半導体光源を消灯する第2モードと、が切りかえ可能である。
【0012】
本開示の別の態様は、照明方法である。この方法は、半導体光源の出射光にもとづく瞬時照射スポットを配光の水平方向に走査するステップと、瞬時照射スポットの走査と同期して、各走査位置における半導体光源の光量を多階調で調光するステップと、を備える。調光するステップは、減光領域の幅が所定値より広い場合に、減光率に応じたデューティサイクルでパルス幅変調により半導体光源を点灯するステップと、減光領域の幅が所定値より狭い場合に、減光率に応じたサイクル数にわたり、半導体光源を消灯するステップと、を含む。
【0013】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明あるいは本開示の態様として有効である。さらに、この項目(課題を解決するための手段)の記載は、本発明の欠くべからざるすべての特徴を説明するものではなく、したがって、記載されるこれらの特徴のサブコンビネーションも、本発明たり得る。
【発明の効果】
【0014】
本開示のある態様によれば、スキャン方式の車両用灯具において、グレアフリー機能以外の多様な配光パターンを生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態1に係る車両用灯具を示す図である。
図2図2(a)、(b)は、車両用灯具よるグレアフリー配光の形成を説明する図である。
図3図3(a)、(b)は、車両用灯具よる部分減光配光の形成を説明する図である。
図4図4(a)、(b)は、車両用灯具による電子スイブルを説明する図である。
図5】比較技術に係る車両用灯具を示す図である。
図6】比較技術に係る車両用灯具による配光形成を説明する図である。
図7】点灯回路の構成例を示すブロック図である。
図8】LEDドライバの構成例を示す回路図である。
図9】LEDドライバの別の構成例を示す回路図である。
図10】LEDドライバのさらに別の構成例を示す回路図である。
図11】実施形態2に係る車両用灯具を示す図である。
図12図11の点灯回路の構成例を示すブロック図である。
図13図13(a)、(b)は、PWM調光による減光領域を含む配光パターンを示す図である。
図14図14は、実施形態3に係る車両用灯具のブロック図である。
図15図14の車両用灯具のサイクル数制御(第2モード)の動作を説明する図である。
図16図14の車両用灯具のサイクル数制御により形成される配光を示す図である。
図17】サイクル数制御におけるオフサイクル数と配光パターンの関係を示す図である。
図18図18(a)~(c)は、サイクル数制御による配光と、PWM制御による配光を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。またこの概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、実施形態の欠くべからざる構成要素を限定するものではない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0017】
一実施形態に係る車両用灯具は、半導体光源を含み、半導体光源の出射光にもとづく瞬時照射スポットを配光の水平方向に走査する走査型光源と、走査型光源の走査と同期して、各走査位置における半導体光源の光量を多階調で調光可能な点灯回路と、を備える。点灯回路は、減光率に応じたデューティサイクルでパルス幅変調により半導体光源を点灯する第1モードと、減光率に応じたサイクル数にわたり、半導体光源を消灯する第2モードと、が切りかえ可能である。
【0018】
この構成によれば、パルス幅変調を採用することで、1走査周期内において、走査位置に応じて、光源の光量を高速に変化させることができ、遮光部分に加えて、減光部分を作り出すことができる。したがって、1走査周期内で光量を一定とするDC調光(アナログ調光)と比べて、1個の光源で形成できる配光のバリエーションが増える。これにより、従来に比べて、光源および点灯回路の個数を減らすことができ、あるいは、制御を簡略化できる。
【0019】
走査とPWM調光の併用する場合、減光部分と非減光部分の境界において、照度が緩やかに変化する領域(以下、遷移領域と称する)が発生する。減光部分の幅が狭くなるほど、減光部分に対する遷移領域の割合が大きくなり、実効的な分解能が低下する。また、瞬時照射スポットの水平方向の強度分布が矩形もしくはそれに近い場合に、遷移領域において、照度が階段状に変化する。この場合に、第2モードを選択することにより、遷移領域の幅を狭めることができ、また遷移領域の照度を連続的に変化させることができる。
【0020】
一実施形態において、走査型光源は、半導体光源に加えて、半導体光源の出射光を受け、所定の周期運動を繰り返すことによりその反射光を車両前方で走査する反射体をさらに含んでもよい。点灯回路は、反射体の運動と同期して、パルス幅変調の制御波形を生成し、制御波形に応じて半導体光源に供給する駆動電流をスイッチングしてもよい。
【0021】
一実施形態において、点灯回路は、半導体光源と直列に設けられるシリーズスイッチと、シリーズスイッチと半導体光源の直列接続回路に接続される定電流ドライバと、を備えてもよい。点灯回路は、走査位置に応じたデューティサイクルで、シリーズスイッチをスイッチングしてもよい。
【0022】
従来技術(特許文献4)では、2個の半導体光源を直列に接続し、各半導体光源と並列にバイパススイッチを設ける構成が採られていた。この構成では、1個のバイパススイッチを走査周波数よりも十分高い周波数でスイッチングすると、他方の半導体光源にその影響が及ぶこととなる。これに対して、半導体光源ごとにシリーズスイッチによって個別に駆動することにより、あるチャンネルの駆動が、他のチャンネルに及ぼす影響を排除できる。
【0023】
一実施形態において、定電流ドライバは、スイッチングコンバータと、スイッチングコンバータの出力電流の検出値が、所定の目標値に近づくように、スイッチングコンバータを駆動するコンバータコントローラと、を含んでもよい。
【0024】
(実施形態)
以下、本開示を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、開示を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示の本質的なものであるとは限らない。
【0025】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0026】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0027】
また本明細書において、電圧信号、電流信号などの電気信号、あるいは抵抗、キャパシタなどの回路素子に付された符号は、必要に応じてそれぞれの電圧値、電流値、あるいは抵抗値、容量値を表すものとする。
【0028】
図1は、実施形態1に係る車両用灯具100Aを示す図である。図1の車両用灯具100Aは、スキャン方式のADB機能を有し、車両前方に多様な配光パターンを形成する。車両用灯具100Aは主として、走査型光源200A、点灯回路300Aおよび配光コントローラ400を備える。
【0029】
配光コントローラ400は、カメラやLiDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)などのセンサからの情報(センサ情報)S1、車速やステアリング角などの情報(車両情報)S2などを受け、配光パターンを決定する。配光コントローラ400は、ランプボディ内に収容されてもよいし、車両側に設けられてもよい。配光コントローラ400は、配光パターンを指示する情報(配光パターン情報)S3を車両用灯具100に送信する。配光コントローラ400を、ADB用ECU(Electronic Control Unit)とも称する。
【0030】
走査型光源200Aは、光源ユニット210A、走査光学系220、投影光学系230を備える。光源ユニット210Aは、1個の半導体光源212や図示しないヒートシンクを含む。半導体光源212には、LED(発光ダイオード)あるいはレーザダイオードなどを用いることができる。走査光学系220は、半導体光源212の出射光(ビーム)BMを車両前方で走査する。
【0031】
本実施形態において走査光学系220は、モータ222および1枚あるいは複数M枚(この例では2枚)のブレードミラー224_1,224_2を備える。M枚(M≧2)のブレードミラーは、360/M°、ずれた位置に取り付けられ、この例では、2枚のブレードミラーが180°ずれた位置に取り付けられている。
【0032】
半導体光源212の光軸は、その出射ビームBMが、M枚のブレードミラーのうちの1枚に照射されるように向けられている。
【0033】
ある時刻においてブレードミラー224への入射光BMは、ブレードミラー224の位置(ロータの回転角)に応じた反射角で反射し、車両前方の仮想鉛直スクリーン900上に瞬時照射スポットSPTを形成する。瞬時照射スポットSPTは、水平方向(H方向)に幅Δv、垂直方向(V方向)に幅Δhを有している。ブレードミラー224が回転することで反射角、すなわち反射ビームBMrの出射方向が変化し、瞬時照射スポットSPTの水平方向(H方向)の位置(走査位置)が移動する。この動作を高速に、たとえば50Hz以上で繰り返すことで車両前方には、配光パターンPTNが形成される。
【0034】
本実施形態において、ひとつのビームBMが形成する配光パターンPTNは、車両用灯具100Aの水平方向の全範囲-θMAX~+θMAXに広がっている。すなわち走査型光源200Aは、反射ビームBMrを、水平方向の全範囲にわたり走査する。たとえばθMAXは20~25°程度である。なお全範囲とは、スキャン照射可能な全範囲であり、スキャン以外の光源により照射される範囲は含まない。
【0035】
点灯回路300Aは、配光パターン情報S3が指示する配光パターンが得られるように、走査型光源200Aの走査と同期して、各走査位置における半導体光源212の光量、すなわちビームBMの強度を、パルス変調により多階調で調光する。本実施形態では、PWM(パルス幅変調)によって、半導体光源212に流れる駆動電流ILEDの平均量を変化させ、半導体光源212の光量を変化させる(PWM調光)。PWM周波数は、走査周波数よりも十分に高く定められ、たとえば数kHz~数百kHzとすることが望ましい。
【0036】
なお点灯回路300Aは、走査周期、またはそれより長い制御周期で、電流IOUTの電流量を変化させてもよい。つまりPWM調光とDC調光を併用してもよい。以上が車両用灯具100Aの構成である。続いてその動作を説明する。
【0037】
図2(a)、(b)は、車両用灯具100Aよるグレアフリー配光の形成を説明する図である。図2のグレアフリー配光910は、遮光部分912と、照射部分914,916を含んでいる。図2(a)は仮想鉛直スクリーン上の配光を、図2(b)は、図2(a)の配光に対応する車両用灯具100Aの動作波形を示す。なお本明細書において参照する波形図やタイムチャートの縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化され、あるいは誇張もしくは強調されている。
【0038】
たとえば点灯回路300Aは、照射部分914,916に対応する区間において、半導体光源212の駆動電流ILEDのデューティサイクルを非ゼロの値(この例では100%の一定値)とし、遮光部分912に対応する区間において、駆動電流ILEDのデューティサイクルを0%とする。
【0039】
図3(a)、(b)は、車両用灯具100Aよる部分減光配光の形成を説明する図である。図3(a)は仮想鉛直スクリーン上の配光の水平方向の照度分布を示し、図3(b)は、図3(a)の配光に対応する車両用灯具100Aの動作波形を示す。図3(a)に示す部分減光配光920は、2個の減光部分922,924と、3個の非減光部分926,927,928を含んでいる。
【0040】
たとえば点灯回路300Aは、非減光部分(照射部分)926,927,928に対応する区間において、半導体光源212の駆動電流ILEDのデューティサイクルを100%に固定し、減光部分922,924に対応する区間において、駆動電流ILEDのデューティサイクルをそれぞれ、50%、25%とする。この車両用灯具100Aによれば、単一の半導体光源に流れる駆動電流ILEDをPWM制御することにより、部分減光を実現できる。
【0041】
図4(a)、(b)は、車両用灯具100Aによる電子スイブルを説明する図である。図4(a)は、中央が最も明るい配光を、図4(b)は、右側が最も明るい配光を示す。この車両用灯具100Aによれば、単一の半導体光源に流れる駆動電流ILEDをPWM制御することにより、電子スイブル機能を実現できる。
【0042】
以上が車両用灯具100Aの動作である。車両用灯具100Aの利点は、比較技術との対比によって一層明確となる。そこで比較技術について説明する。図5は、比較技術に係る車両用灯具100Rを示す図である。
【0043】
比較技術に係る車両用灯具100Rにおいて、光源ユニット210Rは複数の半導体光源212_1~212_Nを備える。半導体光源212_1~212_Nそれぞれの出射ビームBM~BMはそれぞれ、仮想鉛直スクリーン900上の、水平方向の異なる範囲を走査され、出射ビームBM~BMの走査により、複数の個別配光パターンPTN~PTNが形成される。車両用灯具100Rが形成する配光は、複数の個別配光パターンPTN~PTNの重ね合わせである。
【0044】
点灯回路300Rは、複数の半導体光源212_1~212_Nそれぞれに、駆動電流ILED1~ILEDNを供給する。点灯回路300Rは、1周期内で、駆動電流ILED1~ILEDNそれぞれを、オン、オフすることが可能である。また点灯回路300Rは、DC調光によって、駆動電流ILED1~ILEDNそれぞれのオン期間における電流量を制御可能であるが、電流量は、1走査ごとにしか切りかえることができない。
【0045】
図6は、比較技術に係る車両用灯具100Rによる配光形成を説明する図である。ここではN=6チャンネルとする。複数の個別配光パターンPTN~PTNの照射幅が制御される。それらを重ね合わせることにより、この例では左前方が明るい配光パターンが形成される。
【0046】
実施形態1に戻る。実施形態1に係る車両用灯具100Aによれば、パルス変調を採用することで、1走査周期内において、走査位置に応じて、光源の光量を高速に変化させることができる。したがって、1走査周期内で光量を一定とする従来のアナログ調光と比べて、1個の光源で形成できる配光のバリエーションが増える。これにより、従来に比べて、光源および点灯回路の個数を減らすことができ、あるいは、制御を簡略化できる。
【0047】
本開示は、図1のブロック図や回路図として把握され、図3図4の波形図、あるいは上述の説明から導かれるさまざまな装置、回路に及ぶものであり、特定の構成に限定されるものではない。以下、本開示の範囲を狭めるためではなく、開示の本質や回路動作の理解を容易、明確化するために、より具体的な構成例を説明する。
【0048】
点灯回路300Aの具体的な構成例を説明する。図7は、点灯回路300Aの構成例を示すブロック図である。
【0049】
配光コントローラ400は、センサ情報S1や車両情報S2を受ける。配光コントローラ400は、センサ情報S1にもとづいて、車両前方の状況、具体的には対向車、先行車の有無、歩行者の有無等を検出する。また配光コントローラ400は、車両情報S2にもとづいて、現在の車速、操舵角などを検出する。配光コントローラ400はこれらの情報にもとづいて、車両前方に照射すべき配光パターンを決定し、配光パターンを指示する情報(配光パターン情報)S3を、点灯回路300Aに送信する。
【0050】
点灯回路300Aは、配光パターン情報S3にもとづいてブレードミラー224の回転と同期しながら、PWM調光により、半導体光源212の光量(輝度)を多階調で変化させる。たとえば点灯回路300Aは主として、位置検出器302、PWM信号生成部310、定電流ドライバ(以下、LEDドライバという)320を備える。
【0051】
位置検出器302は、ブレードミラー224の位置、言い換えれば現在のビームの走査位置を検出するために設けられる。位置検出器302は、ブレードミラー224の所定の基準箇所が所定位置を通過するタイミングを示す位置検出信号S4を生成する。たとえば基準箇所は、2枚のブレードミラー224の端部(区切れ目)であってもよいし、各ブレードミラーの中央であってもよく、任意の箇所とすることができる。
【0052】
ブレードミラー224を回転させるモータ222には、ホール素子が取り付けられていてもよい。この場合、ホール素子からのホール信号は、ロータの位置、すなわちブレードミラーの位置に応じた周期波形となる。位置検出器302は、ホール信号の極性が反転するタイミングを検出してもよく、具体的には一対のホール信号を比較するホールコンパレータで構成してもよい。
【0053】
位置検出器302によるブレードミラー224の位置検出方法は、ホール素子を利用したものに限定されない。たとえば位置検出器302は、モータ222のロータの位置を検出する光学式、あるいはその他の方式のロータリーエンコーダを利用して、位置検出信号S4を生成してもよい。あるいは位置検出器302は、ブレードミラー224の裏側に設けられたフォトセンサと、ブレードミラー224の表面側からフォトセンサに向かって光を照射する位置検出用の光源と、を含んでもよい。そしてブレードミラー224に、スリットあるいはピンホールを設けてもよい。これにより、スリットあるいはピンホールが、フォトセンサの上を通過するタイミングを検出できる。スリットは、2枚のブレードミラー224の間隙であってもよい。また位置検出用の光源は、赤外線光源を利用してもよいし、半導体光源212であってもよい。このように位置検出器302の構成にはさまざまなバリエーションが存在しうる。
【0054】
PWM信号生成部310は、ブレードミラー224の運動と同期して、パルス調光信号PWM_DIMを生成する。パルス調光信号PWM_DIMの1走査周期のデューティサイクルは、配光パターンにもとづいて規定される。たとえばモータ222の回転数が6000rpm(100Hz)であり、ブレードミラーが2枚である場合、走査周波数は、100Hz×2=200Hzとなり、走査周期は5msである。PWM信号生成部310は、マイクロコントローラ304とソフトウェアプログラムの組み合わせで実装してもよいし、ハードウェアのみで実装してもよい。マイクロコントローラ304およびLEDドライバ320は、一枚の基板上に搭載してもよいし、あるいは1つの筐体内に配置してもよい。
【0055】
パルス調光信号PWM_DIMの周波数は、200Hzより高く定められ、たとえば数kHz~数十kHzとすることができる。パルス調光信号PWM_DIMのデューティサイクルは、半導体光源212の光量を規定するものであり、デューティサイクルは、1PWM周期ごとに設定可能であってもよいし、複数のPWM周期ごとに設定可能であってもよい。
【0056】
LEDドライバ320は半導体光源212に駆動電流ILEDを供給する。駆動電流ILEDの電流量は、所定の目標値に安定化されており、LEDドライバ320は、パルス調光信号PWM_DIMに応じて、駆動電流ILEDをスイッチングする。
【0057】
図8は、LEDドライバ320の構成例(320A)を示す回路図である。LEDドライバ320Aは、降圧コンバータ322と、シリーズスイッチ323、ドライバ回路324を備える。シリーズスイッチ323と半導体光源212は直列に接続される。この例ではシリーズスイッチ323が半導体光源212のアノード側に挿入されるが、カソードと接地の間に挿入してもよい。
【0058】
降圧コンバータ322は、定電流出力のスイッチングコンバータであり、出力回路326およびコンバータコントローラ328を含む。出力回路326は、スイッチングトランジスタMH、同期整流トランジスタML、インダクタL1、出力キャパシタC1を含む。コンバータコントローラ328は、シリーズスイッチ323がオンの期間に降圧コンバータ322の出力電流IOUTが所定の目標量に近づくように、出力回路326のスイッチングトランジスタMHおよび同期整流トランジスタMLをスイッチング制御する。
【0059】
コンバータコントローラ328の制御方式は特に限定されず、エラーアンプを用いたアナログコントローラ、PID(比例・積分・微分)補償器を含むデジタルコントローラ、あるいはヒステリシス制御のコントローラであってもよい。
【0060】
ドライバ回路324は、パルス調光信号PWM_DIMに応じてシリーズスイッチ323を駆動する。このドライバ回路324は、コンバータコントローラ328と同じICに集積化されてもよい。
【0061】
コンバータコントローラ328は、パルス調光信号PWM_DIMが、シリーズスイッチ323のオフを指示するオフレベルであるとき、スイッチングトランジスタMHおよび同期整流トランジスタMLのスイッチングを停止する。
【0062】
図9は、LEDドライバ320の別の構成例(320B)を示す回路図である。LEDドライバ320Bは、降圧コンバータ322と、バイパススイッチSW2、ドライバ回路324を備える。降圧コンバータ322は図8と同様に、出力回路326と、コンバータコントローラ328を含んでもよい。降圧コンバータ322は、所定の目標量に安定化された出力電流IOUTを生成する。
【0063】
バイパススイッチSW2は、半導体光源212と並列に接続される。ドライバ回路324は、パルス調光信号PWM_DIMに応じて、バイパススイッチSW2を駆動する。バイパススイッチSW2のオフ期間、半導体光源212には出力電流IOUTが、駆動電流ILEDとして供給され、バイパススイッチSW2のオン期間、出力電流IOUTは、バイパススイッチSW2に流れるため、駆動電流ILEDはゼロとなる。
【0064】
図10は、LEDドライバ320のさらに別の構成例(320C)を示す回路図である。LEDドライバ320Cは、定電圧コンバータ327と定電流源329を含む。定電圧コンバータ327は、所定の電圧レベルに安定化された出力電圧VOUTを生成する。定電流源329は、半導体光源212と直列に接続される。定電流源329は、オン、オフが切りかえ可能であり、オン期間において、所定量に安定化された駆動電流ILEDを発生する(シンク)。定電流源329のオン、オフは、パルス調光信号PWM_DIMに応じて制御される。
【0065】
なお、LEDドライバ320の構成はここで例示したものに限定されない。
【0066】
(実施形態2)
図11は、実施形態2に係る車両用灯具100Bを示す図である。実施形態1との相違点を説明する。
【0067】
走査型光源200Bの光源ユニット210Bは、複数N個(N≧2)の半導体光源212_1~212_Nを備える。半導体光源212_1~212_Nの光軸は、それぞれの出射ビームBM~BMが、M枚のブレードミラーのうちの1枚に照射されるように向けられている。ここでは、半導体光源212_2の出射ビームBMの光線のみを代表として示す。
【0068】
ある時刻においてブレードミラー224への入射光BMは、ブレードミラー224の位置(ロータの回転角)に応じた反射角で反射し、車両前方の仮想鉛直スクリーン900上に瞬時照射スポットSPTを形成する。瞬時照射スポットSPTは、水平方向(H方向)、垂直方向(V方向)それぞれに所定の幅を有している。ブレードミラー224が回転することで反射角が変化し、破線で示すように反射ビームBMrの出射方向が変化し、瞬時照射スポットSPTの水平方向(H方向)の位置(走査位置)が移動する。この動作を高速に、たとえば50Hz以上で繰り返すことで車両前方には、個別配光パターンPTNが形成される。
【0069】
別のビームBM,BM~BMについても同様であり、i番目の反射ビームBMrの走査により、個別配光パターンPTNが形成される。
【0070】
たとえばビームBM~BMが形成する個別配光パターンPTN~PTNは、仮想鉛直スクリーン900上の異なる高さに形成される。複数の個別配光パターンPTN~PTNの合成により、車両用灯具100全体の配光パターンPTN_ALLが形成される。垂直方向に隣接する個別配光パターンPTN同士は、垂直方向にわずかにオーバーラップしていてもよい。
【0071】
実施形態2において、複数の個別配光パターンPTN~PTNの少なくともひとつは、車両用灯具100Bの水平方向の全範囲-θMAX~+θMAXに広がっている。すなわち、走査型光源200Bは、複数のビームBMr~BMrの少なくともひとつを、水平方向の全範囲にわたり走査する。図11の例では、すべての個別配光パターンPTN~PTNが、水平方向の全範囲-θMAX~+θMAXに広がっている。
【0072】
点灯回路300Bは、走査型光源200Bの走査と同期して、各走査位置における半導体光源212_1~212_Nそれぞれの光量、すなわちビームBM~BMの強度を、パルス変調により多階調で調光する。点灯回路300Bは、走査周期、またはそれより長い制御周期で、電流IOUTの電流量を変化させてもよい。つまりPWM調光とDC調光を併用してもよい。
【0073】
図12は、図11の点灯回路300Bの構成例を示すブロック図である。点灯回路300Bは、複数の半導体光源212_1~212_Nに対応する複数のLEDドライバ320_1~320_Nを備える。PWM信号生成部310は、目的とする配光が得られるように、複数のLEDドライバ320_1~320_Nに対するパルス調光信号PWM_DIM_1~PWM_DIM_Nを生成する。i番目(1≦i≦N)のLEDドライバ320は、対応する半導体光源212_iに対して、PWM変調された駆動電流ILEDiを供給する。LEDドライバ320の構成は、実施形態1と同様である。マイクロコントローラ304および複数のLEDドライバ320_1~320_Nは、一枚の基板上に搭載してもよいし、あるいは1つの筐体内に配置してもよい。
【0074】
この車両用灯具100Bによれば、実施形態1に比べて、高さ方向の分解能を高めることができる。
【0075】
実施形態2の変形例を説明する。上の説明では、複数の配光パターンPTN~PTNのすべてが、全範囲に広がっていたがその限りでなく、その中のいくつかは、全範囲ではなく、一部の範囲に広がっていてもよい。
【0076】
実施形態2では、配光全体を垂直方向に複数の領域に分割し、複数の領域に複数の個別配光パターンPTN~PTNを対応付けたがその限りでない。複数の個別配光パターンPTN~PTNのいくつかは、完全にオーバーラップしていてもよい。
【0077】
(実施形態3)
図13(a)、(b)は、PWM調光による減光領域を含む配光パターンを示す図である。縦軸は照度を、横軸は水平方向(H線方向)の位置(角度)θを示す。図13(a)の配光800は、非減光部分802と減光部分804を含み、減光部分804の減光率は50%である。図13(b)の上段には、減光部分804の周辺の拡大が示され、図13(b)の下段には、上段に対応するPWM調光のデューティサイクルの時間波形が示される。走査とPWM調光を組み合わせると、減光部分804と非減光部分802の境界に、照度が緩やかに変化する領域(遷移領域)806が発生する。この遷移領域806の幅は、瞬時照射スポットの幅と等しい。
【0078】
減光部分804の幅が狭くなるほど、減光部分804に対する遷移領域806の割合が大きくなり、実効的な分解能が低下する(第1の課題)。また、瞬時照射スポットの水平方向の強度分布が矩形もしくはそれに近い場合には、図13(b)に示すように、遷移領域806において照度が階段状に変化する(第2の課題)。なお、瞬時照射スポットは右向きに走査するものとし、各時刻tにおいて、前縁(リーディングエッジ、すなわち右端)が、位置θに存在するものとする。
【0079】
以下では、第1の課題、第2の課題の少なくとも一方を解決可能な調光制御(消灯サイクル数制御、あるいは単にサイクル数制御という)を説明する。
【0080】
図14は、実施形態3に係る車両用灯具100Jのブロック図である。車両用灯具100Jの基本的な構成は上述した通りである。本実施形態において、点灯回路300Jは、2つのモード(制御方式)が切りかえ可能である。第1モードは、PWMモード(デューティ制御)とも称され、上述したように、減光率に応じたデューティサイクルでパルス幅変調により半導体光源を点灯する。
【0081】
第2モードは、サイクル数制御モードとも称され、減光率(および遮光領域の幅)に応じたPWM制御のサイクル数(周期数)にわたり、半導体光源212を消灯する。
【0082】
以上が車両用灯具100Jの構成である。続いてその動作を説明する。はじめに第1モード(PWMモード)の動作を説明する。PWMモードは、上述した通りであり、図13(b)に示すように、遷移領域806の長さが長く、また遷移領域806における照度がステップ状に変化する。
【0083】
図15は、図14の車両用灯具100Jのサイクル数制御(第2モード)の動作を説明する図である。ここでは、デューティサイクル100%で走査中に、PWM周期の2サイクルにわたって消灯する場合について説明する。瞬時照射スポットSPTの幅はθSPOTであり、1PWM周期の間に、瞬時照射スポットSPTは0.25×θSPOT移動するものとする。言い換えると、PWMの4サイクルの間に、瞬時照射スポットは、自身の幅θSPOT移動する。
【0084】
時間tは、PWM周期で正規化されている。時刻t=0における瞬時照射スポットSPTのリーディングエッジの座標をθ=0ととる。配光の横軸の位置は、スポット幅θSPOTで正規化している。
【0085】
はじめの8サイクルの間、(t=0~8)、デューティサイクルは100%であり、続く2サイクルの間(t=8~10)、デューティサイクルは0%となり、10サイクル目以降(t>10)、デューティサイクルは100%に戻される。デューティサイクルが0%であるサイクル数をオフサイクル数という。
【0086】
この制御の結果、θ=1.5~2の範囲に、減光率50%の減光領域を形成することができる。
【0087】
図16は、図14の車両用灯具100Jのサイクル数制御により形成される配光を示す図である。ここでは、瞬時照射スポットの幅を0.93°、PWM周波数を20kHz、1PWM周期(1サイクル)の瞬時照射スポットの移動距離を0.12°とする。連続する2,4,6,8,10サイクルにわたり、消灯(デューティサイクル=0%)としたときの配光を示す。
【0088】
消灯サイクル数を、2,4,6,8,10と増やしていくと、減光領域における減光率を小さくすることができる。また、遷移領域806における照度が、連続的なスロープとなっており、PWMモードにおいて発生するステップ状の変化が抑制されている。
【0089】
図17は、サイクル数制御におけるオフサイクル数と配光パターンの関係を示す図である。瞬時照射スポットSPOTが、自身の幅θSPOTだけ移動するのに要するサイクル数をX、瞬時照射スポットをオフとするサイクル数をYとする。このとき減光率α、減光領域の幅W、片側の遷移領域の幅Zは以下のように一般化することができる。
α=(X-Y)/X
W=(X-Y)/X×θSPOT=α×θSPOT
Z=(1-α)×θSPOT
【0090】
つまり、サイクル数制御は、減光領域の幅Wが所定値、たとえば瞬時照射スポットの幅θSPOTより狭い場合の配光形成に適しているといえる。そこで点灯回路300Jは、減光領域の幅Wが所定値より狭い場合に、サイクル数制御を選択し、広い場合にPWM制御を選択するとよい。
【0091】
図18(a)~(c)は、サイクル数制御による配光と、PWM制御による配光を示す図である。図18(a)~(c)において、減光領域の減光率は75,50,25%である。サイクル数制御とPWM制御を比較すると、同じ減光領域の幅、減光率を仮定すると、サイクル数制御の方が、PWM制御よりも遷移領域の幅が短くできるという利点がある。
【0092】
実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにさまざまな変形例が存在すること、またそうした変形例も本開示または本発明の範囲に含まれることは当業者に理解されるところである。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本開示は、車両用灯具に関する。
【符号の説明】
【0094】
S1…センサ情報、S2…車両情報、S3…配光パターン情報、S4…位置検出信号、PWM_DIM…パルス調光信号、100…車両用灯具、200…走査型光源、210…光源ユニット、212…半導体光源、220…走査光学系、222…モータ、224…ブレードミラー、230…投影光学系、300…点灯回路、302…位置検出器、310…PWM信号生成部、320…LEDドライバ、400…配光コントローラ、900…仮想鉛直スクリーン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18