(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】リンク切り替えのための制御方法及び制御装置
(51)【国際特許分類】
G01S 19/07 20100101AFI20241112BHJP
【FI】
G01S19/07
(21)【出願番号】P 2022573413
(86)(22)【出願日】2021-05-27
(86)【国際出願番号】 EP2021064217
(87)【国際公開番号】W WO2021239881
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-12-28
(31)【優先権主張番号】202010475755.2
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】グオタオ チェン
(72)【発明者】
【氏名】バオホン チェン
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-102076(JP,A)
【文献】特表2012-530443(JP,A)
【文献】特開2003-090873(JP,A)
【文献】国際公開第2010/025022(WO,A1)
【文献】特開2009-027227(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 19/00 - G01S 19/55
H04W 4/00 - H04W 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンク切り替えのための制御方法であって、
メインデータリンクから、符号化されたアプリケーションデータを含む現在の符号化された信号を受信するステップと、
信号品質を特定するために前記現在の符号化された信号を復号化するステップと、
前記メインデータリンクを介して送信された過去の符号化された信号を評価するステップと、
前記信号品質と前記過去の符号化された信号の評価結果とに基づいて、前記アプリケーションデータを受信するために補助データリンクに切り替えるかどうかを決定するステップと、
を含み
、
前記メインデータリンクは、衛星と通信するための衛星対地球リンクであり、前記補助データリンクは、基地局と通信するための無線通信リンクであり、前記アプリケーションデータは、測位衛星通信に関連するパラメータを補正するための補正データであり、前記基地局は、前記補正データを取得するためにリモートサーバと通信するように構成されており、前記衛星は、前記リモートサーバから取得した前記補正データを使用することによって、前記符号化された信号を生成するように構成されており、
前記無線通信リンクに切り替えられている場合、
前記無線通信リンクを介して、前記補正データを受信している間に、前記衛星対地球リンクのリンク品質が改善されたかどうかを定期的に観察するために、前記衛星対地球リンクから後続の符号化された信号の受信を継続し、前記後続の符号化された信号の信号品質を用いて、前記衛星対地球リンクを介して送信された前記過去の符号化された信号の評価結果を更新し、当該リンク品質が改善されて前記更新された評価結果が予め定められた閾値に達しているならば、前記無線通信リンクを中断し、前記衛星対地球リンクに切り替え戻し、前記更新された評価結果が予め定められた閾値に達していないならば、前記無線通信リンクを維持するステップをさらに含む、
制御方法。
【請求項2】
前記信号品質と前記過去の符号化された信号の評価結果とに基づいて、前記アプリケーションデータを受信するために補助データリンクに切り替えるかどうかを決定する前記ステップは、
前記信号品質が予め定められた基準に達していない場合、
前記評価結果が予め定められた閾値に達していないならば、前記アプリケーションデータを受信するために前記補助データリンクに切り替え、
前記評価結果が予め定められた閾値に達しているならば、前記メインデータリンクを維持し、次回の符号化された信号を取得し、
前記信号品質が予め定められた基準に達している場合、
前記復号化されたアプリケーションデータを適用するステップをさらに含む、
請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記過去の符号化された信号を評価する前記ステップは、予め定められた時間内において前記過去の符号化された信号の各々について信号品質をカウントし、予め定められた時間内において前記符号化された信号の適正な復号率を評価結果として使用するステップを含む、
請求項2に記載の制御方法。
【請求項4】
リンク切り替えのための制御装置であって、
メインデータリンクから、符号化されたアプリケーションデータを含む現在の符号化された信号を受信するように構成された受信機と、
補助データリンクによって前記アプリケーションデータを受信するように構成されたネットワークインタフェースと、
現在の信号品質を特定するために前記現在の符号化された信号を復号化し、前記メインデータリンクを介して送信された過去の符号化された信号を評価し、前記信号品質と前記過去の符号化された信号の評価結果とに基づいて、前記アプリケーションデータを受信するために前記ネットワークインタフェースによる前記補助データリンクに切り替えるかどうかを決定するように構成されたコントローラと、
を備えており
、
前記メインデータリンクは、衛星と通信するための衛星対地球リンクであり、前記補助データリンクは、基地局と通信するための無線通信リンクであり、前記アプリケーションデータは、測位衛星通信に関連するパラメータを補正するための補正データであり、前記基地局は、前記補正データを取得するためにリモートサーバと通信するように構成されており、前記衛星は、前記リモートサーバから取得した前記補正データを使用することによって、前記符号化された信号を生成するように構成されており、
前記コントローラは、
前記無線通信リンクに切り替えられている場合、
前記無線通信リンクを介して、前記補正データを受信している間に、前記衛星対地球リンクのリンク品質が改善されたかどうかを定期的に観察するために、前記衛星対地球リンクから後続の符号化された信号を受信するように前記受信機を制御し続け、前記評価結果の更新のために前記後続の符号化された信号の信号品質を使用し、当該リンク品質が改善されて前記更新された評価結果が予め定められた閾値に達しているならば、前記無線通信リンクを中断し、前記衛星対地球リンクに切り替え戻し、前記更新された評価結果が予め定められた閾値に達していないならば、前記無線通信リンクを維持するようにさらに構成されている、
制御装置。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記現在の信号品質が予め定められた基準に達していない場合、
前記評価結果が予め定められた閾値に達していないならば、前記アプリケーションデータを受信するために前記補助データリンクに切り替え、
前記評価結果が予め定められた閾値に達しているならば、前記メインデータリンクを維持し、前記受信機によって次回の符号化された信号を取得し、
前記信号品質が予め定められた基準に達している場合、
前記復号化されたアプリケーションデータを適用するようにさらに構成されている、
請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記コントローラは、予め定められた時間内において前記過去の符号化された信号の各々について信号品質をカウントし、前記予め定められた時間内の適正な復号率を評価結果として使用するようにさらに構成されている、
請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御装置は、予め定められた期間内において復号化された各信号の信号品質を示す指標値、又は、前記指標値に基づいて計算された評価結果を記憶するためのメモリをさらに備えている、
請求項4に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号伝送、特にマルチリンク切り替え技術に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
衛星測位技術の発展や地理的測位の需要増加に伴って、全地球航法衛星システム(GNSS)は、地上輸送やナビゲーションなど、益々多くの分野において展開されている。
図1は、衛星による移動車両の測位のための概略図を示す。
図1に示されているように、車両は、自車の現在の地理的位置を特定するために、衛星対地球リンクLpを介して測位衛星P
1、P
2及びP
3からの衛星信号を受信し、これらの衛星信号は、これらの測位衛星の位置や信号伝搬時間などの情報を含むが、受信中に、例えば電離層や対流圏の影響を受ける。従って、GNSSの測位精度を向上させるために、例えば、図に示されている静止衛星S
1が補正データ情報の放送のために使用され、ここで、補正データは、衛星クロック差、衛星軌道差、電離層及び対流圏に関するパラメータ、並びに、他のパラメータを示す。従って、車両は、静止衛星S
1によって放送された補正データを、衛星対地球リンクLsを介してさらに受信し、受信した補正データを、測位衛星P
1、P
2及びP
3から受信した衛星信号の補正のために使用し、それによって、車両の位置が、より正確に計算される。しかしながら、車両が走行する環境の影響に基づき、車両と衛星S
1との間の通信リンクは、いつでも強固であるとは限らず、あるいは途切れることさえあり、これは車両の測位効果に多大な影響を与えることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
発明の概要
本発明は、車両の測位効果を向上させることができるリンク切り替えのための制御方法及び制御装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様によれば、リンク切り替えのための制御方法が提供され、当該制御方法は、メインデータリンクから、符号化されたアプリケーションデータを含む現在の符号化された信号を受信するステップと、信号品質を特定するために現在の符号化された信号を復号化するステップと、メインデータリンクを介して送信された過去の符号化された信号を評価するステップと、信号品質と過去の符号化された信号の評価結果とに基づいて、アプリケーションデータを受信するために補助データリンクに切り替えるかどうかを決定するステップと、を含む。
【0005】
好適には、本発明に係る方法は、信号品質が予め定められた基準に達していない場合、評価結果が予め定められた閾値に達していないならば、アプリケーションデータを受信するために補助データリンクに切り替え、評価結果が予め定められた閾値に達しているならば、メインデータリンクを維持し、次回の符号化された信号を取得し、信号品質が予め定められた基準に達している場合、復号化されたアプリケーションデータを適用するステップをさらに含み得る。
【0006】
本発明の他の態様によれば、リンク切り替えのための制御装置が提供され、当該制御装置は、メインデータリンクから、符号化されたアプリケーションデータを含む現在の符号化された信号を受信するように構成された受信機と、補助データリンクによってアプリケーションデータを受信するように構成されたネットワークインタフェースと、現在の信号品質を特定するために現在の符号化された信号を復号化し、メインデータリンクを介して送信された過去の符号化された信号を評価し、信号品質と評価結果とに基づいて、アプリケーションデータを受信するためにネットワークインタフェースによる補助データリンクに切り替えるかどうかを決定するように構成されたコントローラと、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】従来技術における衛星測位システムのための概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態による適用シナリオにおける衛星測位補正データの獲得のための概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態によるリンク切り替え制御のための制御装置の概略図である。
【
図4】本発明の一実施形態による測位プロセスで実施されるリンク切り替え方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
特定の実施形態
以下においては、本発明の実施形態のための図面に関連して、本発明の実施形態によって提供される技術的解決手段が明確かつ完全に説明される。説明されるこれらの実施形態は、本発明の限定を意図するものではなく、単なる説明を意図しただけのものであることは明らかである。以下の実施形態においては、本発明のいくつかの実施形態の詳細な説明のために衛星測位技術が例として使用されるが、本発明が衛星測位におけるシナリオに限定されるものではないことは理解されよう。
【0009】
無線通信技術の発展、特に4G、5Gネットワークの普及と次世代通信技術の進歩とにより、自律運転などの極めて低遅延を必要とする用途の実現について技術的な保証を提供する極めて低遅延のリアルタイム通信が現実のものになっている。本発明は、正確には、衛星との不十分な衛星対地球リンク通信の影響に対抗するために、無線通信ネットワークを補助データリンクとして使用し、それによって、正確な測位のために必要なデータ、例えば、本実施形態においては、静止衛星からの補正データCorrection_Dataが、依然として適時に取得される場合がある。
【0010】
図2は、本発明による適用シナリオのための概略図を示す。図に示されているように、移動車両に搭載される測位用制御装置は、衛星Sから衛星対地球リンクLsを介して補正データを受信し、ここで、衛星対地球リンクLsは、例えば、Lバンド放送であってもよい。付加的に、制御装置は、無線通信ネットワーク(例えばインタネット)リンクLwによって基地局BSTと通信するようにさらに構成されるものとしてよいが、本実施形態によれば、制御装置と基地局BSTとの間の無線リンクは、通常は切断されており、通信リンクは、無線リソースの占有を回避するように必要なときにのみ確立される点に留意すべきである。車両が移動する場合、地理的要因や環境要因の影響に基づき、衛星対地球リンクLsのリンク品質が低下する場合がある。従って、衛星対地球リンクLs上において放送される衛星信号を評価することによって、車両内の制御装置は、無線ネットワークリンクLwに切り替え、基地局BSTにより、リモートサーバRSVからネットワークを介して補正データCorrection_Dataを受信することができる。通常、静止衛星Sによって放送される補正データは、アップリンク局、即ち、リモートサーバRSVから到来することを指摘しておくべきであろう。従って、車両が、リモートサーバRSVから無線ネットワークによって取得する補正データと、衛星Sが放送する補正データとは同一のデータである。
【0011】
図3は、本発明の一実施形態によるリンク切り替え制御のための制御装置の概略図を示す。本実施形態においては、制御装置は、測位が必要な任意のターゲット、例えば車両上の測位装置として搭載されるものとしてよい。本発明の概念及び解決手段の特徴を強調するために、その測位サービスを完了するための制御装置の他のすべてのコンポーネント又は構成部品が示されているわけではないが、当業者であれば、必要とされる他のコンポーネント又は構成部品を考慮することができる点は指摘しておくべきであろう。
【0012】
図3に示されているように、制御装置は、受信機100と、ネットワークインタフェース200と、コントローラ300とを備えている。受信機100は、衛星対地球リンクLsを介して衛星Sによって放送される補正データCorrection_Dataを受信するように構成されている。補正データCorrection_Dataは、通常、予め暗号化され符号化された信号の形態で衛星対地球リンクLsを介して放送されていることが理解されよう。説明を容易にするために、衛星からの放送信号は、以下においては、「SAT」と称する。衛星は、現在公知のGPS、Beidou、GLONASS及びGalileo測位システムのうちの1つ又は複数であってよく、衛星対地球リンクLsは、Lバンド又は当該技術分野において公知の任意の他のバンドを使用することができる。ネットワークインタフェース200は、現在公知の無線通信プロトコルにより、基地局BSTを介してリモートサーバRSVと通信することができる。通信プロトコルは、例えば、4G若しくは5G無線通信プロトコル、NB-IOT、又は、長距離広域ネットワーク(Long Range Wide-area network;LoRa)、Internet of Thingsプロトコルであるものとしてよい。
【0013】
本実施形態によれば、コントローラ300は、衛星対地球リンクLsをメインデータリンクとして使用し、受信機100によって衛星Sからの放送信号SATを受信する。コントローラ300は、放送信号SATを復号化し、補正データCorrection_Dataの復元を試みる。制御装置300は、補正データCorrection_Dataが良好に復元されたかどうかを特定することにより、衛星Sから受信した放送信号SATの信号品質Qを特定することができる。また、他の一般的な手法として、コントローラ300は、受信された放送信号SATに基づき衛星対地球リンクLsの搬送波対ノイズ(C/N)比を計算することもでき、これによって、信号品質Qを特定することができる。もちろん、本発明は、これに限定されるものではなく、従来技術において公知の任意の他のアルゴリズムが放送信号の信号品質の検出のために使用されるものとしてもよい。
【0014】
現在受信されている放送信号SATの信号品質Qを特定することに加えて、コントローラ300は、過去の期間において衛星対地球リンクLsを介して放送された過去の放送信号も評価する。従って、コントローラ300は、信号品質と過去の放送信号の評価結果(以下、記号λによって示される)とに基づいて、リモートサーバRSVによって提供される補正データCorrection_Dataを基地局BSTによって受信するように、基地局BSTによって提供される補助データリンクに切り替えるかどうかを決定することができる。前述したように、静止衛星Sによって放送される補正データCorrection_Dataも、リモートサーバRSVによって衛星Sに同期される。
【0015】
図4は、測位プロセス中にコントローラ300によって実施されるリンク切り替え方法のフローの特定の実施形態を示す。
図4に示されているように、ステップ410においては、コントローラ300は、受信機100によって衛星対地球リンクLsから現在の放送信号SAT
0を受信し、ここで、放送信号SAT
0は、符号化された補正データCorrection_Dataを含む。衛星対地球リンクは、受信装置の数に何らかの制限を課さず、良好なリアルタイム性能を実現するので、コントローラ300は、デフォルトとして、常に衛星対地球リンクLsを、放送信号SATを受信するためのメインリンクとして使用することを指摘しておくべきであろう。ステップ412においては、コントローラ300は、現在の放送信号の信号品質を特定するために放送信号SAT
0を復号化する。ここで、信号品質は、復元された補正データCorrection_Dataが適正に復号化されたかどうかを特定することによって、又は、リンクの搬送波対ノイズ(C/N)比に基づいて、特定されるものとしてよい。
【0016】
ステップ414においては、コントローラ300は、予め定められた期間内において衛星対地球リンクLsを介して放送された過去の放送信号ストリームの全体的な品質をさらに評価し、評価結果を記号λで表す。例えば、コントローラ300が、ちょうど経過した期間Tにおいて、衛星Sから衛星対地球リンクLsを介して放送信号をN回受信したと仮定する。衛星信号が受信され、適正に復号化されるたびに、成功指標値、例えば1が、今次で受信した信号品質Qに割り当てられ、適正に復号化できない衛星信号については、障害指標値、例えば0が、今次で受信した信号品質Qに割り当てられる。従って、過去の期間Tにおける衛星対地球リンクLsを介した過去の放送信号の受信の評価結果λは、以下の式、
【数1】
によって表され得る。
【0017】
この値λは、予め定められた期間T内において受信された放送信号SATの適正な復号率を表している。
【0018】
本発明の一実施例によれば、
図3に参照符号400で示されているようにメモリが、期間T内のN回の復号の信号品質指標値Qを格納するために制御装置内に配置されている。
【0019】
従って、ステップS414においては、コントローラ300は、過去の放送信号を評価する場合、メモリ内のN回の復号化の信号品質値(QN,QN-1,…Q1)を読み出して前記式(1)に従った計算を実行することにより、過去の放送信号の評価結果λを取得することができる。衛星放送信号SATの連続受信に伴い、メモリ400に格納されるN回の復号化の品質指標値Qも連続的に更新されることは理解されよう。他の例として、コントローラ300は、さらに、各復号化の品質指標値Qに基づいて評価結果λ値を直接計算してメモリに格納することができ、従って、コントローラ300は、必要なときに評価結果λを直接読み出すことができる。しかしながら、これは計算コストの増加と引き換えに行われるものであり、特に、衛星対地球リンクLsの品質が良好な場合には、そのような計算をいつも実行する必要はない。現在の復号化された信号SAT0の信号品質Q0を特定し、過去の放送信号の評価結果λを特定した後、コントローラ300は、現在の衛星対地球リンクLsが依然として利用可能かどうかを決定し、利用できなくなった場合、補正データCorrection_Dataを受信するために補助データリンクLwに切り替えることができる。
【0020】
具体的には、ステップ416においては、コントローラ300は、現在の放送信号SAT0の信号品質が予め定められた基準に達しているかどうかを特定する。例えば、補正データCorrection_Dataが放送信号SAT0から良好に復号化されて復元され得るかどうかを特定する。信号品質が予め定められた基準に達しているならば、本プロセスはステップS418に進み、当該ステップS418において、コントローラ300は、衛星対地球リンクLsを介した補正データの取得を継続する決定を行う。次いで、ステップ420においては、コントローラ300は、ステップ412で復元された補正データCorrection_Dataを適用する。この適用は、P1、P2及びP3などの測位衛星から受信した衛星信号に対して補正処理を行うこと、例えば、測位サービスを提供するために測位衛星P1、P2及びP3によって必要とされるより正確な位置パラメータを取得し、衛星クロック差、軌道差、大気電離層及び対流圏に関するパラメータ、並びに、他のパラメータを抽出することを含み、それによって、コントローラ300は、現在の地理的位置座標を計算するためにこれらのパラメータを使用することができ、これによってより正確な位置推定を達成することができる。さらに、ステップ416においては、コントローラ300は、メモリ400に、現在の復号化の成功指標値Q0=1を格納し、更新データ(QN-1,QN-2,…Q1,Q0)の形成のために最も古いデータQNを削除する。代替的に、他の例においては、式(1)に基づいてリンク品質λを再計算し、メモリ400を更新するために、メモリ400に元来格納されていたN-1個の指標値Qn-1,Qn-2,…Q1と現在の指標値Q0とが使用される。
【0021】
ステップ416において、コントローラ300は、復号化が失敗し、信号品質が予め定められた基準に達していないこと、例えば、測位データCorrection_Dataが現在の放送信号SAT0から良好に復元されることに失敗したことを特定するならば、本プロセスはステップS422に進む。ステップ422においては、ステップ414において特定された評価結果λが予め定められた条件を満たすかどうか、例えば、λが予め定められた閾値λTHR以上であるかどうかが特定される。この閾値λTHRは、例えば、90%であってよく、実際のニーズに従って具体的に設定されるものとしてよい。λが予め定められた閾値λTHR以上であるならば、それは、衛星対地球リンクLsを介して受信した放送信号が少なくとも過去の期間Tについては依然として信頼性が高く安定していたこと、及び、復号化に対する現在の失敗は偶発的な要因に基づくものであり得ることを示しており、従って、本プロセスは、ステップS424に進む。ステップ424においては、コントローラ300は、衛星対地球リンクLsを介した補正データCorrection_Dataの取得を継続する決定を行い、次の時点において衛星Sによって放送される信号SATを、衛星対地球リンクLsを介して取得する。従って、本プロセスは、ステップ410に戻り、そこでは、次の時点において衛星Sによって放送される補正データが受信され、上述した処理が繰り返される。
【0022】
ステップ422において、予め定められた期間内において受信された過去の放送信号の評価結果が予め定められた条件を満たしていないこと、例えば、λが予め定められた閾値λ
THRよりも小さいことが特定されるならば、直近の期間Tにおいて衛星対地球リンクLsのリンク品質が下がる可能性が特定され得るので、補正データCorrection_Dataを取得するために補助リンクLwに切り替えることが決定される。従って、本プロセスは、ステップ426に進み、そこでは、コントローラ300が、ネットワークインタフェース200によって基地局BSTへの無線通信リンクLwを確立し、基地局BSTによるリモートサーバRSVからの補正データCorrection_Dataを取得する。次いで、ステップ420においては、コントローラ300は、基地局からの補正データCorrection_Dataを適用し、例えば、測位に関連する処理を実行する。本発明によれば、補助リンクLwを介して補正データCorrection_Dataを受信しながらも、メインデータリンク、即ち、衛星対地球リンクLsのリンク品質が改善されたかどうかを定期的に観察し、改善されたならばメインデータリンクに切り替え戻す(スイッチバックする)ことが依然として必要である点に留意すべきである。従って、
図4に示されているように、本プロセスは、基地局BSTへの補助リンクLwが確立された後、コントローラ300が受信機100による衛星対地球リンクLsからの放送信号SATの受信を継続し、例えば、j番目の時点における現在の放送信号SAT
jを取得し、この信号SAT
jの信号品質が予め定められた基準を満たしているかどうかを判定するステップ428をさらに含む。例えば、補正データCorrection_Dataが信号SAT
jから依然として適正に復号化できないならば、コントローラ300は、無線通信リンクLwを介した基地局BSTからの後続の補正データCorrection_Dataの受信を継続する。しかしながら、SAT
jの信号品質が予め定められた基準を満たしていることが一度特定されると、コントローラ300は、衛星対地球リンクLsに切り替え戻す決定を行い、衛星対地球リンクLsを介して後続の補正データCorrection_Dataを受信し、ステップ410乃至428の実行を継続する。これにより、リソースの浪費を招く可能性のある無線通信リンクLwの長時間の占有を回避することが可能になる。
【0023】
他の実施形態においては、ステップ428において、衛星対地球リンクに切り替え戻すかどうかの決定は、衛星対地球リンクLsからの過去の放送信号の評価に基づいて行われるものとしてもよい。具体的には、現在の復号化の品質指標値Qj、例えば、1又は0が、信号SATjの信号品質に基づいて割り当てられ、次いで、メモリ400に格納された最新のN-1個の過去のデータが読み出され、式(1)に従って、過去の期間Tにおける過去の放送信号の評価結果λが特定される。この時点において特定された評価結果λが予め定められた閾値λTHR以上であるならば、衛星対地球リンクLsに戻す切り替えが行われ、そうでなければデータ受信が無線通信リンクLw上において継続される。ステップ428で実行された各復号化の信号品質の判定結果、即ち、Qj値又はQj値に基づいて更新された品質λは、過去の放送信号全体の品質の更新された評価を維持するためにメモリ400に対して更新されることを指摘しておくべきであろう。
【0024】
本発明によって実施される制御装置は、車両において、測位のために必要とされるデータがリアルタイムで取得され得るように構成されるものとしてよい。付加的に、本発明によって実施される制御装置やリンク切り替え方法は、複数のリンク間において切り替えの制御を実現するように他の端末、例えば測位センサに組み込んでもよい。
【0025】
本発明の例示的な実施形態を、
図4を参照して上記において説明してきたが、本方法のステップ及びそれらの実行順序は強制的なものではなく、実際のニーズに従って調整し得るものであり、あるいは、削除でさえあってもよいことは理解されよう。例えば、ステップS414は、ステップ422と組み合わせてよく、それによって、ステップ422において過去の放送信号が集中的に評価される。
【0026】
付加的に、先の実施形態は衛星測位システムに関連して説明してきたが、本開示を読んだ後は、本発明が衛星通信に限定されるのではなく、複数のデータリンクが同一のアプリケーションデータの受信のために利用可能であり、ここで、複数のデータリンクのうちのメインデータリンクが符号化されたアプリケーションデータを含む符号化された信号を受信するために使用され、メインデータリンクが利用不能になった場合、アプリケーションデータの受信を継続するために複数のデータリンクのうちの補助データリンクへの切り替えが行われるという他のシナリオにも同様に適用可能であることが理解されよう。補助データリンクへの切り替えが行われた後、メインデータリンクの状態の監視が継続され、メインデータリンクが利用可能になった場合、補助データリンクが切断され、アプリケーションデータの受信を継続するためにメインデータリンクに戻す切り替えが行われる。
【0027】
本発明は、図面及び好適な実施形態に関連して上記において図示されかつ詳細に説明されてきたが、本発明は、これらの開示された実施形態に限定されるものではなく、当業者であれば、先の詳細な開示に基づいて特徴部分の組合せ、置換、追加及び削除を含む任意の変更を行うことができ、そのようなすべての解決手段は、添付の特許請求の範囲によって定義される権利範囲内にすべて含まれるべきである。