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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】通信制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 24/04 20090101AFI20241112BHJP
   H04W 16/26 20090101ALI20241112BHJP
   H04W 36/16 20090101ALI20241112BHJP
   H04W 92/20 20090101ALI20241112BHJP
【FI】
H04W24/04
H04W16/26
H04W36/16
H04W92/20 110
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022573993
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(86)【国際出願番号】 JP2021047568
(87)【国際公開番号】W WO2022149470
(87)【国際公開日】2022-07-14
【審査請求日】2023-07-03
(31)【優先権主張番号】63/134,275
(32)【優先日】2021-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(72)【発明者】
【氏名】藤代 真人
(72)【発明者】
【氏名】チャン ヘンリー
【審査官】青木 健
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0267795(US,A1)
【文献】国際公開第2020/196201(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/202447(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 - 99/00
H04B 7/24 - 7/26
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルラ通信システムで用いる通信制御方法であって、
中継ノードが、前記中継ノードの親ノードからフロー制御フィードバックメッセージ又は障害発生通知メッセージを受信することと、
前記中継ノードが、前記フロー制御フィードバックメッセージ又は前記障害発生通知メッセージを受信後、一定期間経過したことに応じて、条件付きハンドオーバを実行することと、を有し、
前記実行することは、前記中継ノードが、前記親ノードから前記フロー制御フィードバックメッセージを受信し、さらに、前記親ノードから前記障害発生通知メッセージを受信したことに応じて、一定期間経過することなく、前記条件付きハンドオーバを実行することを含む、通信制御方法。
【請求項2】
前記障害発生通知メッセージは、前記中継ノードと前記親ノードとの間のバックホールリンクの無線リンク障害を検知したことを示すメッセージ、及び前記バックホールリンクの無線リンク障害からの回復を試行中であることを示すメッセージのうち少なくとも一方を含む、請求項1記載の通信制御方法。
【請求項3】
中継ノードであって、
前記中継ノードの親ノードからフロー制御フィードバックメッセージ又は障害発生通知メッセージを受信する受信部と、
前記フロー制御フィードバックメッセージ又は前記障害発生通知メッセージを受信後、一定期間経過したことに応じて、条件付きハンドオーバを実行する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記親ノードから前記フロー制御フィードバックメッセージを受信し、さらに、前記親ノードから前記障害発生通知メッセージを受信したことに応じて、一定期間経過することなく、前記条件付きハンドオーバを実行する
中継ノード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セルラ通信システムに用いる通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セルラ通信システムの標準化プロジェクトである3GPP(Third Generation Partnership Project)において、IAB(Integrated Access and Backhaul)ノードと呼ばれる新たな中継ノードの導入が検討されている(例えば、「3GPP TS 38.300 V16.3.0(2020-09)」参照)。1又は複数の中継ノードが、基地局とユーザ装置との間の通信に介在し、この通信に対する中継を行う。
【発明の概要】
【0003】
第1の態様に係る通信制御方法は、セルラ通信システムで用いる通信制御方法である。前記通信制御方法は、中継ノードが、前記中継ノードの親ノードからフロー制御フィードバックメッセージ又は障害発生通知メッセージを受信することを有する。また、前記通信制御方法は、前記中継ノードが、前記フロー制御フィードバックメッセージ又は前記障害発生通知メッセージを受信後、一定期間経過したことに応じて、条件付きハンドオーバを実行することを有する。
【0004】
第2の態様に係る通信制御方法は、セルラ通信システムで用いる通信制御方法である。前記通信制御方法は、中継ノードが、当該中継ノードの親ノードへ、データパケットの転送を試みることと、前記中継ノードが、一定期間、前記データパケットの転送ができなかった場合、条件付きハンドオーバを実行することとを有する。
【0005】
第3の態様に係る通信制御方法は、セルラ通信システムで用いる通信制御方法である。前記通信制御方法は、配下に第1の中継ノードを有するドナー基地局が、前記第1の中継ノードに対して、条件付きハンドオーバに関する設定を行うことと、前記第1の中継ノードが、前記設定に基づいて、条件付きハンドオーバを実行することとを有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、一実施形態に係るセルラ通信システムの構成例を表す図である。
図2図2は、IABノードと親ノード(Parent nodes)と子ノード(Child nodes)との関係を表す図である。
図3図3は、一実施形態に係るgNB(基地局)の構成例を表す図である。
図4図4は、一実施形態に係るIABノード(中継ノード)の構成例を表す図である。
図5図5は、一実施形態に係るUE(ユーザ装置)の構成例を表す図である。
図6図6は、IAB-MTのRRC接続及びNAS接続に関するプロトコルスタックの例を表す図である。
図7図7は、F1-Uプロトコルに関するプロトコルスタックの例を表す図である。
図8図8は、F1-Cプロトコルに関するプロトコルスタックの例を表す図である。
図9図9は、条件付きハンドオーバが行われる例を表す図である。
図10図10は、条件付きハンドオーバが行われる例を表す図である。
図11図11は、第1実施形態に係る動作例を表す図である。
図12図12は、第2実施形態に係る動作例を表す図である。
図13図13は、第3実施形態に係る動作例を表す図である。
図14図14は、第4実施形態に係る動作例を表す図である。
図15図15は、候補セルが複数ある場合の例を表す図である。
図16図16は、第5実施形態に係る動作例を表す図である。
図17図17は、第6実施形態に係る動作例を表す図である。
図18図18は、BH RLF通知のタイプを表す図である。
図19図19は、拡張されたBH RLFインジケーションの送信オプションを表す図である。
図20図20は、CHOの実行に関する図である。
図21図21は、子孫ノードへの再確立を回避するための特定させた解決策を表す図である。
図22図22は、hop-by-hop ARQにおけるULデータのロスレス配信のメカニズムの比較を表す図である。
図23図23は、ULステータス配信の導入のオプションを表す図である。
図24図24は、ドナー間IABノードの遷移で発生する可能性のあるRAN2シグナリングを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図面を参照しながら、実施形態に係るセルラ通信システムについて説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。
【0008】
(セルラ通信システムの構成)
まず、一実施形態に係るセルラ通信システムの構成例について説明する。一実施形態に係るセルラ通信システム1は3GPPの5Gシステムである。具体的には、セルラ通信システム1における無線アクセス方式は、5Gの無線アクセス方式であるNR(New Radio)である。但し、セルラ通信システムには、LTE(Long Term Evolution)が少なくとも部分的に適用されてもよい。また、セルラ通信システム1は、6Gなど、将来のセルラ通信システムも適用されてよい。
【0009】
図1は、一実施形態に係るセルラ通信システム1の構成例を表す図である。
【0010】
図1に示すように、セルラ通信システム1は、5Gコアネットワーク(5GC)10と、ユーザ装置(UE:User Equipment)100、基地局装置(以下、「基地局」と称する場合がある。)200-1,200-2、及びIABノード300-1,300-2を有する。基地局200は、gNBと呼ばれる場合がある。
【0011】
以下において、基地局200がNR基地局である一例について主として説明するが、基地局200がLTE基地局(すなわち、eNB)であってもよい。
【0012】
なお、以下において、基地局200-1,200-2をgNB200(又は基地局200)、IABノード300-1,300-2をIABノード300とそれぞれ称する場合がある。
【0013】
5GC10は、AMF(Access and Mobility Management Function)11及びUPF(User Plane Function)12を有する。AMF11は、UE100に対する各種モビリティ制御等を行う装置である。AMF11は、NAS(Non-Access Stratum)シグナリングを用いてUE100と通信することにより、UE100が在圏するエリアの情報を管理する。UPF12は、ユーザデータの転送制御等を行う装置である。
【0014】
各gNB200は、固定の無線通信ノードであって、1又は複数のセルを管理する。セルは、無線通信エリアの最小単位を示す用語として用いられる。セルは、UE100との無線通信を行う機能又はリソースを示す用語として用いられることがある。また、セルは、gNB200など、基地局と区別しないで用いられる場合がある。1つのセルは1つのキャリア周波数に属する。
【0015】
各gNB200は、NGインターフェイスと呼ばれるインターフェイスを介して5GC10と相互に接続される。図1において、5GC10に接続された2つのgNB200-1及びgNB200-2を例示している。
【0016】
各gNB200は、集約ユニット(CU:Central Unit)と分散ユニット(DU:Distributed Unit)とに分割されていてもよい。CU及びDUは、F1インターフェイスと呼ばれるインターフェイスを介して相互に接続される。F1プロトコルは、CUとDUとの間の通信プロトコルであって、制御プレーンのプロトコルであるF1-CプロトコルとユーザプレーンのプロトコルであるF1-Uプロトコルとがある。
【0017】
セルラ通信システム1は、バックホールにNRを用いてNRアクセスの無線中継を可能とするIABをサポートする。ドナーgNB(又はIABノード。以下、「IABノード」と称する場合がある。)200-1は、ネットワーク側のNRバックホールの終端ノードであり、IABをサポートする追加機能を備えたドナー基地局である。バックホールは、複数のホップ(すなわち、複数のIABノード300)を介するマルチホップが可能である。
【0018】
図1において、IABノード300-1がIABドナー200-1と無線で接続し、IABノード300-2がIABノード300-1と無線で接続し、F1プロトコルが2つのバックホールホップで伝送される一例を示している。
【0019】
UE100は、セルとの無線通信を行う移動可能な無線通信装置である。UE100は、gNB200又はIABノード300との無線通信を行う装置であればどのような装置であってもよい。例えば、UE100は、携帯電話端末、タブレット端末、ノートPC、センサ若しくはセンサに設けられる装置、及び/又は車両若しくは車両に設けられる装置である。UE100は、アクセスリンクを介してIABノード300又はgNB200に無線で接続する。図1は、UE100がIABノード300-2と無線で接続される一例を示している。UE100は、IABノード300-2及びIABノード300-1を介してIABドナー200-1と間接的に通信する。
【0020】
図2は、IABノード300と親ノード(Parent nodes)と子ノード(Child nodes)との関係を表す図である。
【0021】
図2に示すように、各IABノード300は、基地局機能部に相当するIAB-DUとユーザ装置機能部に相当するIAB-MT(Mobile Termination)とを有する。
【0022】
IAB-MTのNR Uu無線インターフェイス上の隣接ノード(すなわち、上位ノード)は、親ノードと呼ばれる。親ノードは、親IABノード又はIABドナー200のDUである。IAB-MTと親ノードとの間の無線リンクは、バックホールリンク(BHリンク)と呼ばれる。図2において、IABノード300の親ノードがIABノード300-P1及び300-P2である一例を示している。なお、親ノードへ向かう方向は、アップストリーム(upstream)と呼ばれる。UE100から見て、UE100の上位ノードは親ノードに該当し得る。
【0023】
IAB-DUのNRアクセスインターフェイス上の隣接ノード(すなわち、下位ノード)は、子ノードと呼ばれる。IAB-DUは、gNB200と同様に、セルを管理する。IAB-DUは、UE100及び下位のIABノードへのNR Uu無線インターフェイスを終端する。IAB-DUは、IABドナー200-1のCUへのF1プロトコルをサポートする。図2において、IABノード300の子ノードがIABノード300-C1~300-C3である一例を示しているが、IABノード300の子ノードにUE100が含まれてもよい。なお、子ノードへ向かう方向は、ダウンストリーム(downstream)と呼ばれる。
【0024】
また、1つ又は複数のホップを介して、IABドナー200に接続されている全てのIABノード300は、IABドナー200をルートとする有向非巡回グラフ(DAG:Directed Acyclic Graph)トポロジ(以下、「トポロジ」と称する場合がある。)を形成する。このトポロジにおいて、図2に示すように、IAB-DUのインターフェイス上の隣り合うノードが子ノード、IAB-MTのインターフェイス上の隣り合うノードが親ノードとなる。IABドナー200は、例えば、IABトポロジのリソース、トポロジ、ルート管理などを集中的に行う。
【0025】
(基地局の構成)
次に、実施形態に係る基地局であるgNB200の構成について説明する。図3は、gNB200の構成例を表す図である。図3に示すように、gNB200は、無線通信部210と、ネットワーク通信部220と、制御部230とを有する。
【0026】
無線通信部210は、UE100との無線通信及びIABノード300との無線通信を行う。無線通信部210は、受信部211及び送信部212を有する。受信部211は、制御部230の制御下で各種の受信を行う。受信部211はアンテナを含み、アンテナが受信する無線信号をベースバンド信号(受信信号)に変換(ダウンコンバート)して制御部230に出力する。送信部212は、制御部230の制御下で各種の送信を行う。送信部212はアンテナを含み、制御部230が出力するベースバンド信号(送信信号)を無線信号に変換(アップコンバート)してアンテナから送信する。
【0027】
ネットワーク通信部220は、5GC10との有線通信(又は無線通信)及び隣接する他のgNB200との有線通信(又は無線通信)を行う。ネットワーク通信部220は、受信部221及び送信部222を有する。受信部221は、制御部230の制御下で各種の受信を行う。受信部221は、外部から信号を受信して受信信号を制御部230に出力する。送信部222は、制御部230の制御下で各種の送信を行う。送信部222は、制御部230が出力する送信信号を外部に送信する。
【0028】
制御部230は、gNB200における各種の制御を行う。制御部230は、少なくとも1つのメモリと、メモリと電気的に接続された少なくとも1つのプロセッサとを含む。メモリは、プロセッサにより実行されるプログラム、及びプロセッサによる処理に用いられる情報を記憶する。プロセッサは、ベースバンドプロセッサとCPU(Central Processing Unit)とを含んでもよい。ベースバンドプロセッサは、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号等を行う。CPUは、メモリに記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行う。プロセッサは、後述する各レイヤの処理を行う。また、制御部230は、以下に示す各実施例において、gNB200おける各処理を行うようにしてもよい。
【0029】
(中継ノードの構成)
次に、実施形態に係る中継ノード(又は中継ノード装置。以下、「中継ノード」と称する場合がある。)であるIABノード300の構成について説明する。図4は、IABノード300の構成例を表す図である。図4に示すように、IABノード300は、無線通信部310と、制御部320とを有する。IABノード300は、無線通信部310を複数有していてもよい。
【0030】
無線通信部310は、gNB200との無線通信(BHリンク)及びUE100との無線通信(アクセスリンク)を行う。BHリンク通信用の無線通信部310とアクセスリンク通信用の無線通信部310とが別々に設けられていてもよい。
【0031】
無線通信部310は、受信部311及び送信部312を有する。受信部311は、制御部320の制御下で各種の受信を行う。受信部311はアンテナを含み、アンテナが受信する無線信号をベースバンド信号(受信信号)に変換(ダウンコンバート)して制御部320に出力する。送信部312は、制御部320の制御下で各種の送信を行う。送信部312はアンテナを含み、制御部320が出力するベースバンド信号(送信信号)を無線信号に変換(アップコンバート)してアンテナから送信する。
【0032】
制御部320は、IABノード300における各種の制御を行う。制御部320は、少なくとも1つのメモリと、メモリと電気的に接続された少なくとも1つのプロセッサとを含む。メモリは、プロセッサにより実行されるプログラム、及びプロセッサによる処理に用いられる情報を記憶する。プロセッサは、ベースバンドプロセッサ及びCPUを含んでもよい。ベースバンドプロセッサは、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号等を行う。CPUは、メモリに記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行う。プロセッサは、後述する各レイヤの処理を行う。また、制御部320は、以下に示す各実施例において、IABノード300における各処理を行うようにしてもよい。
【0033】
(ユーザ装置の構成)
次に、実施形態に係るユーザ装置であるUE100の構成について説明する。図5は、UE100の構成例を表す図である。図5に示すように、UE100は、無線通信部110と、制御部120とを有する。
【0034】
無線通信部110は、アクセスリンクにおける無線通信、すなわち、gNB200との無線通信及びIABノード300との無線通信を行う。また、無線通信部110は、サイドリンクにおける無線通信、すなわち、他のUE100との無線通信を行ってもよい。無線通信部110は、受信部111及び送信部112を有する。受信部111は、制御部120の制御下で各種の受信を行う。受信部111はアンテナを含み、アンテナが受信する無線信号をベースバンド信号(受信信号)に変換(ダウンコンバート)して制御部120に出力する。送信部112は、制御部120の制御下で各種の送信を行う。送信部112はアンテナを含み、制御部120が出力するベースバンド信号(送信信号)を無線信号に変換(アップコンバート)してアンテナから送信する。
【0035】
制御部120は、UE100における各種の制御を行う。制御部120は、少なくとも1つのメモリと、メモリと電気的に接続された少なくとも1つのプロセッサとを含む。メモリは、プロセッサにより実行されるプログラム、及びプロセッサによる処理に用いられる情報を記憶する。プロセッサは、ベースバンドプロセッサ及びCPUを含んでもよい。ベースバンドプロセッサは、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号等を行う。CPUは、メモリに記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行う。プロセッサは、後述する各レイヤの処理を行う。また、制御部130は、以下に示す各実施例において、UE100における各処理を行うようにしてもよい。
【0036】
(プロトコルスタックの構成)
次に、実施形態に係るプロトコルスタックの構成について説明する。図6は、IAB-MTのRRC接続及びNAS接続に関するプロトコルスタックの例を表す図である。
【0037】
図6に示すように、IABノード300-2のIAB-MTは、物理(PHY)レイヤと、MAC(Medium Access Control)レイヤと、RLC(Radio Link Controll)レイヤと、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)レイヤと、RRC(Radio Resource Control)レイヤと、NAS(Non-Access Stratum)レイヤとを有する。
【0038】
PHYレイヤは、符号化・復号、変調・復調、アンテナマッピング・デマッピング、及びリソースマッピング・デマッピングを行う。IABノード300-2のIAB-MTのPHYレイヤとIABノード300-1のIAB-DUのPHYレイヤとの間では、物理チャネルを介してデータ及び制御情報が伝送される。
【0039】
MACレイヤは、データの優先制御、ハイブリッドARQ(HARQ:Hybrid Automatic Repeat reQuest)による再送処理、及びランダムアクセスプロシージャ等を行う。IABノード300-2のIAB-MTのMACレイヤとIABノード300-1のIAB-DUのMACレイヤとの間では、トランスポートチャネルを介してデータ及び制御情報が伝送される。IAB-DUのMACレイヤはスケジューラを含む。スケジューラは、上下リンクのトランスポートフォーマット(トランスポートブロックサイズ、変調・符号化方式(MCS))及び割当リソースブロックを決定する。
【0040】
RLCレイヤは、MACレイヤ及びPHYレイヤの機能を利用してデータを受信側のRLCレイヤに伝送する。IABノード300-2のIAB-MTのRLCレイヤとIABノード300-1のIAB-DUのRLCレイヤとの間では、論理チャネルを介してデータ及び制御情報が伝送される。
【0041】
PDCPレイヤは、ヘッダ圧縮・伸張、及び暗号化・復号化を行う。IABノード300-2のIAB-MTのPDCPレイヤとIABドナー200のPDCPレイヤとの間では、無線ベアラを介してデータ及び制御情報が伝送される。
【0042】
RRCレイヤは、無線ベアラの確立、再確立及び解放に応じて、論理チャネル、トランスポートチャネル、及び物理チャネルを制御する。IABノード300-2のIAB-MTのRRCレイヤとIABドナー200のRRCレイヤとの間では、各種設定のためのRRCシグナリングが伝送される。IABドナー200とのRRC接続がある場合、IAB-MTはRRCコネクティッド状態である。IABドナー200とのRRC接続がない場合、IAB-MTはRRCアイドル状態である。
【0043】
RRCレイヤの上位に位置するNASレイヤは、セッション管理及びモビリティ管理等を行う。IABノード300-2のIAB-MTのNASレイヤとAMF11との間では、NASシグナリングが伝送される。
【0044】
図7は、F1-Uプロトコルに関するプロトコルスタックを表す図である。図8は、F1-Cプロトコルに関するプロトコルスタックを表す図である。ここでは、IABドナー200がCU及びDUに分割されている一例を示す。
【0045】
図7に示すように、IABノード300-2のIAB-MT、IABノード300-1のIAB-DU、IABノード300-1のIAB-MT、及びIABドナー200のDUの各々は、RLCレイヤの上位レイヤとしてBAP(Backhaul Adaptation Protocol)レイヤを有する。BAPレイヤは、ルーティング処理及びベアラマッピング・デマッピング処理を行うレイヤである。バックホールでは、IPレイヤがBAPレイヤを介して伝送されることにより、複数のホップでのルーティングが可能になる。
【0046】
各バックホールリンクにおいて、BAPレイヤのPDU(Protocol Data Unit)は、バックホールRLCチャネル(BH NR RLCチャネル)によって伝送される。各BHリンクで複数のバックホールRLCチャネルを構成する。これにより、トラフィックの優先順位付け及びQoS(Quality of Service)制御が可能である。BAP PDUとバックホールRLCチャネルとの対応付けは、各IABノード300のBAPレイヤ及びIABドナー200のBAPレイヤによって実行される。
【0047】
なお、IABドナー200のCUは、IABノード300とIABドナー200のDUへのF1インターフェイスを終端する、IABドナー200のgNB-CU機能である。また、IABドナー200のDUは、IAB BAPサブレイヤをホストし、IABノード300へワイヤレスバックホールを提供する、IABドナー200のgNB-DU機能である。
【0048】
図8に示すように、F1-Cプロトコルのプロトコルスタックは、図7に示すGTP-Uレイヤ及びUDPレイヤに代えて、F1APレイヤ及びSCTP(Stream Control Transmission Protocol)レイヤを有する。
【0049】
なお、以下においては、IABのIAB-DUとIAB-MTで行われる処理又は動作について、単に「IAB」の処理又は動作として説明する場合がある。例えば、IABノード300-1のIAB-DUが、IABノード300-2のIAB-MTへBAPレイヤのメッセージを送信することを、IABノード300-1がIABノード300-2へ、当該メッセージを送信するものとして説明する。また、IABドナー200のDU又はCUの処理又は動作についても、単に「IABドナー」の処理又は動作として説明する場合がある。
【0050】
また、アップストリーム方向とアップリンク(UL)方向とを区別しないで用いる場合がある。さらに、ダウンストリーム方向とダウンリンク(DL)方向とを区別しないで用いる場合がある。
【0051】
(第1実施形態)
セルラ通信システム1において、条件付きハンドオーバが行われる場合がある。条件付きハンドオーバ(CHO:Conditional Handover)は、1つ以上の実行条件(又はトリガ条件)が満たされたときに実行されるハンドオーバである。ここで、条件付きハンドオーバについて説明する。
【0052】
(条件付きハンドオーバ)
一般的なハンドオーバにおいては、UE100がサービングセル及び/又は隣接セルの無線状態の測定値をgNB200に報告し、この報告に基づいてgNB200が隣接セルへのハンドオーバを決定し、ハンドオーバ指示をUE100に送信する。このため、サービングセルの無線状態が急激に劣化したような場合、一般的なハンドオーバは、ハンドオーバが実行される前に通信が途絶する場合がある。
【0053】
これに対し、条件付きハンドオーバは、予め設定されたトリガ条件が満たされると、当該トリガ条件に対応する候補セルへのハンドオーバを自律的に実行可能である。このため、一般的なハンドオーバにおける通信途絶などの問題を解決できる。
【0054】
条件付きハンドオーバの実行条件には、1つ以上のトリガ条件を含む。条件付きハンドオーバの設定は、候補セル及びトリガ条件を含む。条件付きハンドオーバの設定は、候補セル及びトリガ条件の複数の組み合わせを複数含んでもよい。条件付きハンドオーバの設定は、例えば、IABドナー200のCUからIABノード300のIAB-DUとUE100へのユニキャストのシグナリング(例えば、RRC Reconfigurationメッセージなど)により行われる。
【0055】
図9は、条件付きハンドオーバが行われる例を表す図である。図9に示すように、IABノード300-Tは、その親ノードであるIABノード300-P1に対して、RRCコネクティッド状態にある。そして、IABノード300-TのIAB-MTが、トリガ条件を満たすと判断した場合、サービングセル(又はサービングセルを管理するIABノード300-P1)から、ターゲットセル(又はターゲットセルを管理するIABノード300-P2)へ、条件付きハンドオーバを実行する。
【0056】
なお、図10に示すように、IABノード300-Tのダウンストリーム方向においては、子ノード300-C1からフロー制御フィードバックメッセージを受信すると、ローカルリルーティングが行われ、パスの切り替えが行われる。なお、フロー制御フィードバックメッセージの詳細は後述する。
【0057】
なお、以下では、セルと当該セルを管理するIABノード300とを区別しないで用いる場合がある。したがって、サービングセルからターゲットセルへのハンドオーバと、サービングセルを管理するIABノード300-P1から、ターゲットセルを管理するIABノード300-P2へのハンドオーバは、同じ意味で用いられる場合がある。
【0058】
IABノード300-Tにおいて、トリガ条件が満たされる場合、すぐに条件付きハンドオーバを実行すると、状況が改善したにも関わらず、当該ハンドオーバを実行してしまう場合がある。このような条件付きハンドオーバは無駄なハンドオーバとなってしまう。このような無駄なハンドオーバにより、トポロジ全体が最適でない状態となる場合がある。
【0059】
そこで、第1実施形態では、トリガ条件を満たす場合にすぐに条件付きハンドオーバを実行するのではなく、所定メッセージを受信後、一定期間経過後に、条件付きハンドオーバを実行する。すなわち、第1実施形態におけるトリガ条件は、「所定メッセージを受信後、一定期間経過したこと」である。
【0060】
具体的には、第1に、中継ノード(例えば、IABノード300-T)が、中継ノードの親ノードからフロー制御フィードバック(flow control feedback)メッセージ又は障害発生通知メッセージを受信する。第2に、中継ノードが、前記フロー制御フィードバックメッセージ又は前記障害発生通知メッセージを受信後、一定期間経過したことに応じて、条件付きハンドオーバを実行する。
【0061】
すなわち、「所定メッセージ」は、「フロー制御フィードバック(flow control feedback)メッセージ又は障害発生通知メッセージ」のことである。
【0062】
第1実施形態では、IABノード300-Tにおいて、所定メッセージを受信した後、一定期間経過後に行われるため、状況が改善した場合に条件付きハンドオーバを行わないようにすることも可能である。従って、第1実施形態では、無駄な条件付きハンドオーバの実行が抑制され、トポロジ全体も最適な状態を維持させることが可能となる。
【0063】
ここで、「フロー制御フィードバックメッセージ」は、フロー制御の際に用いられるメッセージである。また、「障害発生通知メッセージ」は、BHリンクで障害が発生した際に用いられる通知メッセージである。ここで、2つのメッセージについて説明する。
【0064】
(フロー制御フィードバックメッセージ)
セルラ通信システム1では、フロー制御が行われる場合がある。フロー制御により、IABノード300とIABドナー200においてパケットドロップに関連した輻輳(congestion)(又は混雑。以下、「混雑」という場合がある。)を回避することができる。
【0065】
3GPPにおけるダウンストリーム方向のフロー制御は、BAPサブレイヤでサポートされる。IABノード300のIAB-MTは、バッファサイズが一定量を超えた場合、又は、フロー制御ポーリングを受信した場合、各ingress(流入)BH RLCチャネルにおいて利用可能なバッファサイズに関するフィードバック情報を、親ノードへ送信する。このフィードバック情報を含むメッセージが、フロー制御フィードバックメッセージである。
【0066】
アップストリーム方向のフロー制御は、3GPPでは、とくに規定されていない。この場合3GPPでは、実装依存により、MACレイヤ上のULスケジューリングによって(又はUL grantによって)行われる、とされる。第1実施形態では、図9に示すように、親ノード300-P1のIAB-DUが、その子ノードであるIABノード300-TのIAB-MTへ、フロー制御フィードバックメッセージを送信することが可能である。
【0067】
フロー制御フィードバックメッセージは、BAPレイヤメッセージ、例えば、BAP Control PDUに含まれてもよい。又は、フロー制御フィードバックメッセージは、MAC CE又はRRCメッセージを用いて送信されてもよい。
【0068】
ただし、図9において、IABノード300-Tに代えてUE100である場合を仮定する。UE100は、BAPレイヤをサポートしていない。そこで、IABノード300-P1は、フロー制御フィードバックメッセージを、システム情報ブロックタイプ1(SIB1:System Information Block Type1)に含めてUE100へ送信したり、MAC CEを用いてUE100へ送信したりする。これにより、IABノード300-P1は、UE100へ、フロー制御フィードバックメッセージを送信することが可能となる。
【0069】
(障害発生通知メッセージ)
図9に示すように、IABノード300-P1は、その上位IABノードとの間でバックホール(BH#1)リンクを確立している。IABノード300-P1のIAB-MTは、RRCコネクティッド状態である。
【0070】
そして、IABノード300-P1のIAB-MTが、BH#1リンクの無線リンク障害(BH RLF:Backhaul Radio Link Failure)を検出したと仮定する。例えば、IABノード300-P1のIAB-MTは、一定条件で同期外れ状態(out-of-sync)を検出した場合などにより、BH RLFを検出する。IABノード300-P1のIAB-DUは、BH RLFを検出すると、IABノード300-T(又はUE100)へ、Type1 Indication(RLF detected)を通知できる。Type1 Indicationは、BH RLFを検知したことを示す障害発生通知の一例である。また、IABノード300-P1のIAB-DUは、BH RLFからの回復動作を検知すると、IABノード300-TのIAB-MT(又はUE100)へ、Type2 Indication(Trying to recover)を通知できる。Type2 Indicationは、BH RLFからの回復を試行中であることを示す障害発生通知の一例である。さらに、IABノード300-P1のIAB-DUは、Type1 IndicationとType2 Indicationとを区別しないときは、IABノード300-TのIAB-MT(又はUE100)へ、Type1/2 Indicationを送信できる。Type1/2 Indicationも、障害発生通知の一例である。
【0071】
このような障害発生通知を含むメッセージが、障害発生通知メッセージとなる。障害発生通知メッセージも、BAPレイヤメッセージ、例えば、BAP Control PDUに含まれてもよい。ただし、図9において、IABノード300-Tに代えてUE100である場合を仮定する。この場合も、IABノード300-P1は、障害発生通知メッセージを、SIB1に含めてUE100へ送信したり、MAC CEを用いてUE100へ送信したりすることで、UE100へ送信することが可能となる。
【0072】
なお、通知の種類として、Type3 Indication(RLF recovered)とType4 Indication(Recovery failure)とがある。Type3 Indicationは、IABノード300-TがBH RLFから回復したことを示す回復通知である。また、Type4 Indicationは、IABノード300-TがBH RLFからの回復に失敗したことを示す回復失敗通知の一例である。
【0073】
(動作例)
次に、第1実施形態に係る動作例について説明する。
【0074】
図11は、第1実施形態に係る動作例を表す図である。
【0075】
IABノード300-Tは、ステップS10において処理を開始すると、ステップS11において、IABドナー200によって、条件付きハンドオーバの設定が行われる。
【0076】
ステップS12において、IABノード300-Tは、親ノード300-P1からフロー制御フィードバックメッセージ又は障害発生通知メッセージを受信後、一定期間を測定する。障害発生通知メッセージは、BH RLFのType1 Indication、Type2 Indication、又はType1/2 Indicationである。一定期間は、フロー制御フィードバックメッセージ又は障害発生通知メッセージの受信時から開始される。この場合、IABノード300-Tは、タイマを起動して、そのカウント値がタイマ値になったとき、一定期間が満了したと判断する。タイマ値は、事前に、IABドナー200又は親ノード300-P1からIABノード300-Tに設定されてもよい。もしくは、タイマ値は、フロー制御フィードバックメッセージ又は障害発生通知メッセージに含まれてもよい。この一定期間については、フロー制御フィードバックメッセージを受信した回数を用いてもよい。すなわち、IABノード300-Tは、親ノード300-P1又は子ノード300-C1からフロー制御フィードバックメッセージを受信すると、カウンタをインクリメントする。IABノード300-Tは、当該カウンタ値が閾値に達した場合に一定期間が経過したと判断する。当該閾値は、IABドナー200又は親ノード300-P1により事前に設定されてもよいし、フロー制御フィードバックメッセージに含まれてもよい。又は、これらタイマによる判断とカウンタによる判断とを組み合わせてもよい。つまり、IABノード300-Tは、フロー制御フィードバックメッセージを最初に受信した場合にタイマを起動し、カウンタをインクリメントする。当該タイマが満了する前に、当該カウンタ値が閾値に達した場合に、IABノード300-Tは、一定期間が経過したと判断する。当該タイマが満了した場合、IABノード300-Tは、当該カウンタ値をリセット(つまり、ゼロに設定)する。
【0077】
ステップS13において、IABノード300-Tは、一定期間経過したことに応じて、条件付きハンドオーバを実行する。図9の例では、IABノード300-Tは、ターゲットセルを管理するIABノード300-P2へ条件付きハンドオーバを実行する。
【0078】
ステップS14において、IABノード300-Tは、一連の処理を終了する。
【0079】
なお、第1実施形態において、一定期間が測定されることに代えて、親ノード300-P1又は子ノード300-C1からの希望に応じて、条件付きハンドオーバの実行判断が行われてもよい。例えば、親ノード300-P1又は子ノード300-C1は、フロー制御フィードバックメッセージに、条件付きハンドオーバを実施すべきか否かを示す識別子を含める。IABノード300-Tは、当該識別子により、条件付きハンドオーバを実施するか否かを決定する。これにより、親ノード300-P1もしくは子ノード300-C1は、混雑状況に応じて、IABノード300-Tの条件付きハンドオーバを制御することができる。
【0080】
また、ステップS13において、一定期間が経過するよりも前に、所定のメッセージを受信した場合、IABノード300-Tは、条件付きハンドオーバを実行しないようにすることも可能である。所定のメッセージとしては、フロー制御離脱(flow control leaving feedback)メッセージがある。フロー制御離脱メッセージは、例えば、混雑状況となってフロー制御フィードバックメッセージを送信した親ノード300-P1が、混雑状況から改善して通常の状態に戻ったことを通知するために用いられるメッセージである。また、所定のメッセージとしては、BH RLFのType3 Indicationがある。このような所定のメッセージを受信したIABノード300-Tは、タイマを停止してもよい。
【0081】
(第2実施形態)
第2実施形態は、IABノード300が一定期間データパケットを転送することができない場合、条件付きハンドオーバを実行する例である。
【0082】
具体的には、第1に、中継ノード(例えば、IABノード300)が、当該中継ノードの親ノードへ、データパケットの転送を試みる。第2に、中継ノードが、一定期間、データパケットの転送ができなかった場合、条件付きハンドオーバを実行する。
【0083】
第2実施形態では、条件付きハンドオーバのトリガ条件は、「一定期間、親ノードへデータパケットの転送ができなかったこと」となる。
【0084】
図9の例では、IABノード300-TのIAB-MTが親ノード300-P1のIAB-DUへデータパケットの転送を試みる。そして、IABノード300-TのIAB-MTは、一定期間、その転送ができなかった場合、ターゲットセルを管理するIABノード300-P2へ、条件付きハンドオーバを実行する。
【0085】
このように、IABノード300において、一定期間、データパケットの転送ができなかった場合に条件付きハンドオーバを実行する。例えば、IABノード300は、サービングセルを管理するIABノードに見切りを付けて、他のIABノードへ条件付きハンドオーバを実行することができる。そのため、第2実施形態では、データパケット転送の遅延を削減させることが可能となる。
【0086】
次に、第2実施形態に係る動作例について説明する。
【0087】
図12は、第2実施形態に係る動作例を表す図である。
【0088】
IABノード300-Tは、ステップS20において、処理を開始すると、ステップS21において、IABドナー200によって、条件つきハンドオーバの設定が行われる。
【0089】
ステップS22において、IABノード300-Tは、親ノード300-P1へ、データパケットの転送を試みる。
【0090】
ステップS23において、IABノード300-Tは、一定期間、データパケットの転送ができなかった場合、条件付きハンドオーバを実行する。ここで、「一定期間、データパケットの転送ができなかった場合」として、例えば、以下がある。
【0091】
(A1)「一定期間、データパケットの転送ができなかった場合」とは、IABノード300-Tが、親ノード300-P1へ、スケジューリング要求(SR:Scheduling Request)を一定回数送信しても、親ノード300-P1から、UL grantを受信しなかった場合である。
【0092】
(A2)又は、「一定期間、データパケットの転送ができなかった場合」とは、IABノード300-Tが、親ノード300-P1へ、SR又はバッファステータスレポート(BSR:Buffer Status Report)を送信後、一定時間、UL grantを受信しなかった場合である。
【0093】
(A3)又は、「一定期間、データパケットの転送ができなかった場合」とは、IABノード300-Tが、親ノード300-P1に対するHARQ又はRLCの再送回数が一定回数に達した場合である。ただし、この場合、HARQ又はRLCの再送回数が一定回数に達した時に、BH RLFとなる前であることが望ましい。特に、RLCの再送の場合、当該一定回数の閾値は、RLCの再送失敗によるBH RLFを判定するための閾値よりも小さいことが望ましい。
【0094】
(A4)又は、「一定期間、データパケットの転送ができなかった場合」とは、IABノード300-Tが、子ノード300-C1からデータパケットを受信後、一定時間、当該データパケットを、親ノード300-P1へ転送できなかった(つまり滞留した)場合である。
【0095】
(A5)又は、「一定期間、データパケットの転送ができなかった場合」とは、IABノード300-Tが、親ノード300-P1に対する無線異常(radio problem)を検知後(当該無線異常が回復することなく)、一定時間が経過した場合である。ただし、この場合、当該一定時間の閾値は、無線異常によるBH RLFを判定するための閾値よりも小さい(短い)ことが望ましい。
【0096】
(A6)又は、「一定期間、データパケットの転送ができなかった場合」とは、IABノード300-Tが、親ノード300-P1に対する無線測定報告(measurement report)をトリガした後に(当該無線測定報告を送信することなく)、一定時間が経過した場合である。ただし、この場合、当該一定時間の閾値は、無線測定報告によるBH RLFを判定するための閾値よりも小さい(短い)ことが望ましい。
【0097】
(A7)又は、「一定期間、データパケットの転送ができなかった場合」とは、IABノード300-Tによる、親ノード300-P1へのランダムアクセスプリアンブルの送信(再送)が(当該ランダムアクセスプリアンブル送信が成功することなく)、一定回数に達した場合である。ただし、この場合、当該一定回数の閾値は、ランダムアクセスプロシージャ失敗によるBH RLFを判定するための閾値よりも小さいことが望ましい。
【0098】
(A8)又は、「一定期間、データパケットの転送ができなかった場合」とは、IABノード300-Tが、親ノード300-P1に対するListen-Before-Talk(LBT)が一定時間内に一定回数に達した場合である。ただし、この場合、当該一定回数の閾値は、連続LBT失敗(consistent LBT failure)によるBH RLFを判定するための閾値よりも小さいことが望ましい。また、当該一定時間は連続LBT失敗(consistent LBT failure)によるBH RLFを判定するための閾値より大きく(長く)てもよい。
【0099】
なお、上記(A1)から(A8)における「一定回数」と「一定時間」は、親ノード300-P1又はIABドナー200により、設定されてもよい。また、IABノード300-Tは、内部のタイマを用いて、「一定時間」を計測してもよい。さらに、「一定回数」、「一定時間」、及びタイマは、BH RLCチャネル毎、LCG(Logical Channel Group)毎、送信元(source)及び/又は宛先(destination)毎、又はルーティングID毎に、別々に存在又は計測されてもよい。
【0100】
ステップS24において、IABノード300-Tは、一連の処理を終了する。
【0101】
(第3実施形態)
第3実施形態は、IABノード300が、その親ノードからフロー制御フィードバックメッセージを受信し、さらに、障害発生通知メッセージを受信した場合に、条件付きハンドオーバを実行する例である。
【0102】
具体的には、中継ノード(例えば、IABノード300)が、親ノードからフロー制御フィードバックメッセージを受信し、さらに、親ノードから障害発生通知メッセージを受信したことに応じて、一定期間経過することなく、条件付きハンドオーバを実行する。
【0103】
第3実施形態では、条件付きハンドオーバのトリガ条件は、「親ノードからフロー制御フィードバックメッセージを受信し、さらに、親ノードから障害発生通知メッセージを受信したこと」となる。
【0104】
これにより、例えば、IABノード300は、フロー制御メッセージを送信した親ノードとは別の親ノードへハンドオーバすることになるため、親ノードにおける「混雑」状況を改善させることができる。また、例えば、IABノード300は、「混雑」状況となっている親ノードであって、BH RLFが発生する親ノードとは別の親ノードへハンドオーバするため、アップストリーム方向におけるデータパケット転送の遅延を少なくさせることも可能となる。
【0105】
次に、第3実施形態に係る動作例について説明する。
【0106】
図13は第3実施形態に係る動作例を表す図である。
【0107】
IABノード300は、ステップS30において、処理を開始すると、ステップS31において、IABドナー200から条件付きハンドオーバの設定を受ける。
【0108】
ステップS32において、IABノード300は、親ノードからフロー制御フィードバックメッセージを受信する。IABノード300は、フロー制御フィードバックメッセージを受信すると、ローカルリルーティング(local rerouting)を実行する。ここで、「ローカルリルーティング」について説明する。
【0109】
(ローカルリルーティング)
3GPPにおいてはバックホールリンクでのBH RLFが発生した場合に、ローカルリルーティングが行われ、代替パス(alternative path)を介してデータパケットが転送される、とされている。一般には、IABドナー200が、各IABノード300に対して、ルーティング設定を行う。各IABノード300は、ルーティング設定に従って、複数の中継ノードからデータパケットを転送する中継ノードを選択する。ローカルリルーティングは、例えば、このようなルーティング設定を無視して、代替パスを選択して、当該代替パスへデータパケットを転送することである。ローカルリルーティングによって、第1のIABノードから、代替パス上の第2のIABノードへデータパケットが転送されるため、例えば、データパケット転送の遅延を少なくさせることが可能となる。
【0110】
第3実施形態では、図9の例では、親ノード300-P1が、そのバッファサイズが一定量を超えた場合、フロー制御フィードバックメッセージをIABノード300-Tへ送信することが可能である。IABノード300-Tは、当該メッセージの受信により、親ノード300-P1において、「混雑」の発生を把握することができる。そして、IABノード300-Tは、親ノード300-P1において「混雑」している状況を確認すると、ローカルリルーティングを実行する。図9の例では、IABノード300-Tは、ローカルリルーティングにより、親ノード300-P2へのパスを代替パスとして選択する。IABノード300-Tは、代替パスへデータパケットを転送する。これにより、例えば、親ノード300-P1における「混雑」を解消させることが可能である。図13のステップS32は、「IABノード300がローカルリルーティングを実施する状況にあると判断する」、としてもよい。
ステップS33において、IABノード300は、親ノードから、Type1 Indication、Type2 Indication、又はType1/2 Indicationを受信する。IABノード300は、ステップS32を合わせて、親ノードからフロー制御フィードバックメッセージを受信し、さらに、障害発生通知メッセージを受信したことを、ステップS33において確認している。
【0111】
なお、ステップS33は、「IABノード300がローカルリルーティングを行っている状況で、同一の親ノードから障害発生通知メッセージを受信する」、としてもよい。「同一の親ノード」は、例えば、IABノード300が代替パスを選択する直前のパス(又はメインパス)上にある親ノードのことである。図9の例では、親ノード300-P1がフロー制御フィードバックメッセージを送信するため、親ノード300-P1が「同一の親ノード」となる。
【0112】
ステップS34において、IABノード300は、条件付きハンドオーバを実行(又はトリガ)する。図9の例では、IABノード300-Tは、親ノード300-P2へ、条件付きハンドオーバを実行することになる。
【0113】
図13に戻り、ステップS35において、IABノード300は、一連の処理を終了する。
【0114】
(第4実施形態)
第4実施形態は、条件付きハンドオーバにおける複数のトリガ条件のうち、IABノード300においてどのトリガ条件を用いるのかを、IABドナー200が設定する例である。具体的には、ドナー基地局(例えば、IABドナー200)が、第1の中継ノード(例えば、IABノード300)に対して、条件付きハンドオーバに関する複数のトリガ条件のうち、第1の中継ノードが用いるべき1以上のトリガ条件を設定する。これにより、例えば、中継ノードに応じたトリガ条件を設定することが可能となる。
【0115】
図14は第4実施形態に係る動作例を表す図である。
【0116】
IABドナー200は、ステップS40において、処理を開始すると、ステップS41において、IABノード300に対して、条件付きハンドオーバにおける複数のトリガ条件の中から、当該IABノード300が用いるべき1以上のトリガ条件を設定する。例えば、IABドナー200のCUが、IABノード300のIAB-MT又はIAB-DUへ、RRCメッセージ又はF1-APメッセージなどを利用して、トリガ条件を設定する。トリガ条件としては、例えば、以下がある。
【0117】
(B1)BH RLFのType4 Indicationを受信したこと。
【0118】
(B2)BH RLFのType1/2 Indicationを受信したこと。
【0119】
(B3)親ノードからフロー制御フィードバックメッセージを受信したこと。
【0120】
(B4)一定期間、データパケットを転送することができなかったこと(第2実施形態)。
【0121】
(B5)上記(B1)から(B4)に関連する閾値、タイマ値、回数上限値。
【0122】
トリガ条件は、上記(B1)から(B5)の1つ又は複数である。トリガ条件としては、複数の場合も許容されるため、トリガ条件として、「BH RLFのType1/2 Indicationを受信したこと」(B2)+「親ノードからフロー制御フィードバックメッセージを受信したこと」(B3)が設定されてもよい。また、(B2)については、Type1/2 Indicationに代えて、Type1 Indication又はType2 Indicationであってもよい。
【0123】
ステップS42において、IABノード300は、設定されたトリガ条件を満たす場合に、条件付きハンドオーバを実行(又はトリガ)する。
【0124】
ステップS43において、IABノード300は、一連の処理を終了する。
【0125】
(第5実施形態)
例えば、図15に示すように、IABノード300-Tの親ノード300-P1が、IABノード300-Tへ、BH RLFのType1/2 Indicationを送信し、IABノード300-Tが条件付きハンドオーバをトリガしたと仮定する。そして、条件付きハンドオーバの候補セルとして、候補セル#1と候補セル#2があると仮定する。
【0126】
このように、複数の候補セル#1,#2がある場合、IABノード300-Tが、どの候補セルを選択するのかが問題となるケースがある。例えば、IABノード300-Tが、各候補セル#1,#2における無線状況が最も良いセル、例えば、候補セル#1を選択すると仮定する。
【0127】
しかし、IABノード300-Tから親ノード300-P2を介してターゲット(図15の例ではIABドナー200)までに至るホップ数は、候補セル#2を管理する親ノード300-P3を介してターゲットまでに至るホップ数よりも多くなる場合がある。この場合、前者の方が、後者よりも、ホップ数が多くなることによって、データパケット転送の遅延が大きくなる。
【0128】
従って、候補セル#1,#2が複数ある場合に、無線状況が最も良い候補セルを選択することが、必ずしも、最適なルートを選択したことにはならない場合がある。
【0129】
そこで、第5実施形態では、IABドナー200が条件付きハンドオーバの候補セルに優先順位を設定する。具体的には、第1に、ドナー基地局(例えばIABドナー200)が、第1の中継ノード(例えばIABノード300-T)に対して、候補セル毎の優先順位を設定する。第2に、第1の中継ノードが、最も優先順位の高い候補セルをターゲットセルとして選択し、当該ターゲットセルに対して条件付きハンドオーバを実行する。これにより、例えば、データパケット転送の遅延を少なくした最適なルートの選択が可能となる。
【0130】
図16は第5実施形態に係る動作例を表す図である。
【0131】
IABドナー200は、ステップS50において、処理を開始すると、ステップS51において、IABノード300-Tへ条件付きハンドオーバの設定を行う。IABドナー200のCUは、IABノード300-TのIAB-DU(又はUE100)へ、候補セルとトリガ条件に加え、候補セル毎の優先順位を含むRRC再設定(Reconfiguration)メッセージを送信することで、設定が行われてもよい。例えば、図15の例では、候補セル#1の優先順位は「1」、候補セル#2の優先順位は「2」などである。なお、RRC再設定メッセージに代えて、F1-APメッセージ及び/又はMAC CEを利用して、優先順位を含む設定が行われてもよい。
【0132】
なお、条件付きハンドオーバのトリガ条件は、BH RLFのType1/2 Indicationを受信すること以外にも、第1実施形態で説明したトリガ条件でもよいし、第2実施形態又は第3実施形態で説明したトリガ条件でもよい。あるいは、トリガ条件は、イベントA3又はイベントA5であってもよい。イベントA3は、隣接セルの無線状態がサービングセルの無線状態よりも所定量(所定オフセット)以上良好であるというイベントである。また、イベントA5は、サービングセルの無線状態が第1閾値よりも劣化し、且つ、隣接セルの無線状態が第2閾値よりも良好であるというイベントである。
【0133】
図16に戻り、ステップS52において、IABノード300-Tは、Type1/2 Indicationを受信する等、トリガ条件を満たすと、条件付きハンドオーバの設定に従って、条件付きハンドオーバを実行(又はトリガ)する。IABノード300-Tは、複数の候補セル#1,#2がトリガされた場合、設定された優先順位に基づいて、最も優先順位の高いセルをターゲットセルとして選択する。最も優先順位の高いセルが複数存在する場合、どのセルを選択するかは、IABノード300-Tの実装依存でもよい。例えば、最も優先順位の高いセルが複数存在する場合、IABノード300-Tは、最も無線品質の良いセルをターゲットセルとして選択してもよい。IABノード300-Tは、選択したターゲットセルに対して、条件付きハンドオーバの設定を適用する。
【0134】
ステップS53において、IABノード300-Tは、適用した条件付きハンドオーバの設定に従って、ターゲットセルへのアクセスを開始する。
【0135】
ステップS54において、IABノード300-Tは、一連の処理を終了する。
【0136】
第5実施形態において、IABドナー200は、条件付きハンドオーバの設定として、さらに、最低無線品質閾値を、IABノード300-Tに設定してもよい。最低無線品質閾値は、例えば、RSRP(Reference Signal Received Power)、RSRQ(Reference Signal Received Quality)、及び/又はSINR(Signal to Interference plus Noise Ratio)などにより表された無線品質に対する閾値である。この場合、ステップS52において、IABノード300-Tは、複数の候補セルがトリガされた場合、最低無線品質閾値を上回る候補セルを抽出し、抽出した候補セルのうち最も優先順位の高いセルを選択する。このように、最低無線品質閾値が設定されることで、最低無線品質を満たすターゲットセルが選択されることになる。そのため、IABノード300-Tからターゲットセル(例えば、親ノード300-P2)に対するデータパケット転送の確実性が確保される。
【0137】
(第6実施形態)
第5実施形態では、複数の候補セルからターゲットセルを選択する例について説明した。例えば、IABノード300が選択したターゲットセルにおいて、BH RLFが発生していると、IABノード300からIABドナー200へ、RRCメッセージなどが届かない等により、条件付きハンドオーバ自体が失敗する場合がある。
【0138】
そこで、第6実施形態は、条件付きハンドオーバの候補セルにおいてBH RLFが発生している場合、IABノード300は、当該候補セルを、候補セルから外して、ターゲットセルとして選択しないようにする。
【0139】
具体的には、第1の中継ノード(例えば、IABノード300-T)が、候補セル(例えば、候補セル#1)を管理する第2の中継ノード(例えば、IABノード300-P1)と当該第2の中継ノードの親ノードとの間のバックホールリンクが正常な場合、候補セルをターゲットセルとして選択してターゲットセルに対して条件付きハンドオーバを実行する。正常でない場合、第1の中継ノードが、他の候補セルを選択する。これにより、例えば、条件付きハンドオーバが失敗する可能性を低くすることが可能となる。
【0140】
図17は第6実施形態における動作例を表す図である。
【0141】
IABドナー200は、ステップS60において、処理を開始すると、ステップS61において、IABノードに対して条件付きハンドオーバの設定を行う。条件付きハンドオーバの設定については、ターゲットセルのBH RLFを確認するか否かを指定する指定情報が含まれてもよい。当該指定情報は、第5実施形態と同様に、RRC再設定メッセージ又はF1-APメッセージなどに、候補セル及びトリガ条件とともに含まれてもよい。
【0142】
ステップS62において、IABノード300は、Type1/2 Indicationを受信する等、トリガ条件を満たすと、条件付きハンドオーバを実行(又はトリガ)する。第6実施形態においても、複数の候補セルがトリガされると仮定する。そして、IABノード300のIAB-MTは、例えば、以下のようにしてターゲットセルを選択する。
【0143】
すなわち、IABノード300は、最初に、ターゲットセルを仮選択する。例えば、図15の例では、IABノード300-Tは、候補セル#1(又は親ノード300-P2)をターゲットセルとして仮選択する。ターゲットセルの仮選択は、第5実施形態と同様に、優先順位に基づいて選択されてもよい。ターゲットセルの仮選択は、最低無線品質閾値を上回る候補セルの中から優先順位に基づいて選択されてもよい。
【0144】
そして、IABノード300-Tは、仮選択したターゲットセルのBHリンクが正常か否か(又はBH RLFが発生していないか否か)を確認する。具体的には、IABノード300-Tは、親ノード300-P2がType1/2 Indicationを送信したか否かにより確認を行う。つまり、親ノード300-P2と、当該親ノード300-P2のさらに親ノードとの間のBHリンクでBH RLFが発生しているか否かを確認する。
【0145】
例えば、IABノード300-Tは、受信したBAP Control PDUを確認することで、親ノード300-P2においてType1/2 Indicationを送信したか否かを確認してもよい。また、例えば、IABノード300-Tが親ノード300-P2に問い合わせることで、Type1/2 Indicationを送信したか否かを確認してもよい。IABノード300-Tに代えて、UE100である場合は、U100は、報知されたSIB1に含まれるType1/2 Indicationを確認することで、Type1/2 Indicationを送信したか否かを確認する。これらは、いずれも、Type1/2 Indicationに代えて、Type1 Indication又はType2 Indicationでもよい。なお、仮選択したターゲットセルのBH RLFが正常か否かは、親ノード300-P2がIAB Support IEを送信したか否かを、IABノード300-Tが確認することで判断してもよい。
【0146】
そして、IABノード300-Tは、仮選択したターゲットセルのBHリンクが正常であると判断した場合、当該セルをターゲットセルとして選択する。例えば、図15の例において、IABノード300-Tは、仮選択した親ノード300-P2のBHリンクが正常である場合、親ノード300-P2(又は親ノード300-P2が管理する候補セル#1)をターゲットセルとして選択する。
【0147】
他方、IABノード300-Tは、仮選択したターゲットセルのBHリンクが正常でないと判断した場合、別の候補セルを、ターゲットセルとして仮選択する。例えば、図15の例において、IABノード300-Tは、親ノード300-P2のBHリンクが正常でない場合、候補セル#2(又は親ノード300-P3)を仮選択し、仮選択したターゲットセルにおいて、BH RLFが発生しているか否かを確認する。確認方法は、上述した例と同一である。また、仮選択するターゲットセルが複数ある場合は、候補セル毎の優先順位に従って選択されてもよい。
【0148】
図17に戻り、ステップS63において、IABノード300は、条件付きハンドオーバの設定に従って、ターゲットセルへのアクセスを開始する。
【0149】
ステップS64において、IABノード300は、一連の処理を終了する。
【0150】
(その他の実施形態)
上述した第1実施形態から第6実施形態において、IABノード300-Tに代えて、UE100であってもよい。例えば、第1実施形態でも説明したように、UE100は、親ノード300-P1からSIB1などを利用して、フロー制御フィードバックメッセージ又は障害発生メッセージを受信できる。したがって、UE100では、第1実施形態から第6実施形態で説明したトリガ条件を満たす場合に、条件付きハンドオーバを実行することが可能となる。また、第3実施形態で説明した、UE100において設定されるべきトリガ条件も、RRCメッセージ又はF1-APメッセージを利用することで、設定することが可能である。
【0151】
UE100、gNB200、又はIABノード300が行う各処理をコンピュータに実行させるプログラムが提供されてもよい。プログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、コンピュータにプログラムをインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROMやDVD-ROM等の記録媒体であってもよい。
【0152】
また、UE100、gNB200、又はIABノード300が行う各処理を実行する回路を集積化し、UE100、gNB200、又はIABノード300の少なくとも一部を半導体集積回路(チップセット、SoC)として構成してもよい。
【0153】
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明したが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。また、矛盾しない範囲で、各実施例の全部又は一部を組み合わせることも可能である。
【0154】
本願は、米国仮出願第63/134275号(2021年1月6日出願)の優先権を主張し、その内容の全てが本願明細書に組み込まれている。
【0155】
(付記)
(導入)
NR eIAB(Enhancements to Integrated Access AND Backhaul)に関する改訂されたワークアイテムが承認された。いくつかの目的は次の通りである。
【0156】
トポロジ適応の拡張
・シグナリング負荷を軽減するための機能拡張を含む、堅牢性及び負荷分散を強化するためのインタードナーIABノード移動のための手順の仕様。
・IABノード移動及びBH RLF回復によるサービス中断削減のための拡張機能の仕様。
・CP/UP分離のサポートを含む、トポロジの冗長性に対する拡張の仕様。
トポロジ、ルーティング、及びトランスポートの機能拡張
・トポロジ全体の公平性、マルチホップ遅延、及び輻輳緩和を改善するための拡張機能の仕様。
【0157】
トポロジ適応の拡張に関して、次の合意に達した。
【0158】
・(例えば、急速なシャドウイングのための)堅牢性、異なるIABノード間、IABドナーDUとIABドナーCUとの間のロードバランシング、及びシグナリング負荷の削減を改善させるトポロジ適応の拡張を検討。
・RAN2は、BH RLF後のサービス中断の削減に焦点を当てて、RLFインジケーション/ハンドリングの拡張について議論する。
・CHO及びCHOの潜在的なIAB固有の拡張機能は検討中である。
・DAPS及びDAPSの潜在的なIAB固有の拡張機能は、現時点では除外されていない(ただし、PDCPがないため、DAPSをサポートする方法が明確ではない)。
・メッセージのバンドリングについては、RAN2は、少なくとも、トポロジ適応手順についてRAN3でさらに進展が見られるのを待つ。
・RAN2は、セントラルルート決定に対する利点を含むローカルリルーティング、及びトポロジ全体の目標に対処する方法について議論する。
【0159】
この付記では、Rel-17 eIABのトポロジ適応拡張のさまざまなトピックについて議論する。
【0160】
(議論)
(BH RLFインジケーションの拡張)
Rel-16のEメールディスカッションでは、図18に示すような4種類のBH RLF通知が議論された。最後に、タイプ4の「回復失敗」のみがRel-16のBH RLFインジケーションとして規定され、これにより、子IAB-MTは親のBHリンク上のRLFを認識し、RLF回復手順を開始できる。
【0161】
所見1:Rel-16では、タイプ4の「回復障害」のみがBH RLFインジケーションとして規定された。
【0162】
RAN2は、「(例えば、急速なシャドウイングのための)堅牢性を改善させるトポロジ適応の拡張を検討」に合意した。これは、無線状態がより動的に変化すると想定されるため、BH RLFは、Rel-16の場合と比較してRel-17でより頻繁に発生することを意味する。
【0163】
所見2:Rel-17では、急速なシャドウイングなど、無線状態がより動的に変更されるため、Rel-16の展開と比較して、BH RLFがより頻繁に発生する。
【0164】
Rel-16における課題は、子IABノードが親のRLF回復中にアップストリームデータを転送できないこと、又はデータが転送されたとしても、親がBH RLFのためにデータを転送できないことである。そのため、どのような場合でもデータがIABドナーに到達できず、サービスが中断される。
【0165】
所見3:Rel-16のBH RLFインジケーション(タイプ4)を使用すると、親のRLF回復の進行中に、IABノードでデータ転送が中断される。
【0166】
したがって、遅延を削減するための適切なアクションを実行するために、子IABノードに親のBH RLFをできるだけ早く通知すべきである。これは、「RAN2は、BH RLF後のサービス中断の削減に焦点を当てて、RLFインジケーション/ハンドリングの拡張について議論する」というRAN2の合意に沿ったものある。したがって、RAN2は、タイプ2の「回復を試みている」というBH RLFインジケーションを導入すべきである。なお、タイプ1及びタイプ2は同じ意味である。
【0167】
提案1:RAN2は、BH RLFインジケーションのタイプ2の「回復を試みている」が導入されていることに合意すべきである。BAP Control PDU、SIB1、又はその両方を介して送信されるかは更なる検討が必要である。
【0168】
提案1のようにタイプ2のインジケーションを導入する場合、親のBH RLFが回復した場合に子IAB-MTにも通知すべきであるから、タイプ3の「BHリンクが回復」を導入することは非常に明快である。但し、RAN2は、「シグナリング負荷の削減を改善させるトポロジ適応の拡張を検討」に合意しているから、そのような明示的なインジケーションが本当に必要かどうかを検討すべきである。タイプ3のインジケーションがすべての子IABノードに(例えば、BAP Control PDUを介して)専用の方法で送信される場合、大きなオーバーヘッドが発生する可能性がある。
【0169】
例えば、タイプ2のインジケーションがSIB1を介して送信される場合、図19のオプション2に示されているように、BHリンクがRLFの下にない(即ち、「回復される」)と、インジケーションはブロードキャストされなくなる。従って、ダウンストリームIABノード及びUEは、SIB1にタイプ2のインジケーションがないことに基づいてBHリンクが回復したかどうかを認識する。もちろん、タイプ3のインジケーションがBAP Control PDUを介して送信される場合、ダウンストリームIABノードがBHリンク回復をすばやく知ることができるという利点がある。しかしながら、UEはBAPレイヤを持たないため、その回復を知れないということが不利な点である。従って、RAN2は、タイプ3のインジケーションが本当に必要かを検討すべきである。
【0170】
提案2:提案1に合意できる場合、RAN2は、BH RLFがなくなったときの明示的なBH RLFインジケーション、即ち、タイプ3の「BHリンク回復」が導入されるべきかについて検討すべきである。
【0171】
提案1及び/又は提案2に合意できる場合、インジケーションを受信したIAB-MTの動作をBHリンクが回復している間について検討すべきである。IAB-MTは、タイプ2のインジケーションを受信するとSRを削減/停止し、タイプ3のインジケーションを受信する(即ち、親IABノードでBH RLFがなくなる)と動作を再開することが提案された。これは、親ノードがBHリンクを回復しようとするときに望ましいIAB-MTの動作の1つである。全てのRBを中断するなど、他のIAB-MTの動作も可能であると想定される。
【0172】
提案3:RAN2は、IAB-MTがタイプ2のインジケーションを受信した後、スケジューリング要求を削減/停止し、親ノードでBH RLFがなくなった場合に、スケジューリング要求を再開することに合意すべきである。
【0173】
「RAN2は、BH RLF後のサービス中断の削減に焦点を当てて、RLFインジケーション/ハンドリングの拡張について議論する」という合意を考慮すると、むしろ、IAB-MTがサービスの中断を削減するためにどのように動作するかについて議論すべきである。ローカルリルーティング及び条件付きハンドオーバ(CHO)の機能拡張は、BH RLFインジケーションと組み合わせると解決策の候補と見なされ得るが、これらはまだ検討中である。私たちの見解では、ローカルリルーティング及びCHOの共通の側面は、ある種のトリガ条件を必要とすることである。そのため、タイプ2インジケーションがそのような目的で機能する可能性がある。したがって、RAN2は、提案3に加えて、親がBH RLFから回復しようとしているときの他のIAB-MTの動作について議論すべきである。
【0174】
提案4:RAN2は、タイプ2のBH RLFインジケーションを受信した場合の他のIAB-MTの動作について議論すべきである。更なる検討が必要であるが、例えば、ローカルリルーティング及び/条件付きハンドオーバをトリガするなど。
【0175】
(条件付きハンドオーバの拡張)
条件付きハンドオーバ(CHO)は、モビリティの堅牢性を改善させるためにRel-16で導入される。私たちの理解では、CHOは指定されたRel-16 IABに使用できる。RAN2は、「CHO及びCHOの潜在的なIAB固有の拡張機能は検討中である」に合意した。したがって、Rel-16 CHOベースラインに加えて、eIABのCHO拡張機能を検討する価値がある。Rel-16 CHOでは、図20に示すように、対応するCHOイベント(A3/A5)が満たされたとき、又は選択されたセルがRRC再確立のためのセル選択の結果としてCHO候補であるときに実行される。
【0176】
CHOイベントA3/A5は、IABノードがBHリンクでBH RLFを経験したときに満たすことができる。一方、これらのトリガ条件は、IAB固有のRLF、つまりBH RLFインジケーション(タイプ4)の受信によるRLFでは、IABノード自体のBHリンクの無線状態は良好であるため、満たすことができない。この場合、望ましい動作の1つは、IABノードがBH RLFインジケーションを受信したときにCHOを実行することである。
【0177】
所見4:Rel-16 CHOは、親のBH RLF回復が進行中であり、失敗したとしても、IAB-MTと親との間のBHリンクがまだ良好であるため、IAB-MTでCHOイベントA3/A5によって自動的にトリガ/実行されない。
【0178】
したがって、Rel-17 eIABのトポロジ適応を改善するために、CHOの追加のトリガ条件について議論する価値がある。少なくとも既存のBH RLFインジケーション(つまり、タイプ4)は、新しいトリガの有望な候補であると考えるが、導入された場合、タイプ2インジケーションの受信時にCHOも実行すべきかについてさらに議論され得る。
【0179】
提案5:RAN2は、少なくともIABノードがBH RLFインジケーション(タイプ4)を受信した場合に、CHOの追加のトリガ条件が規定されているかどうかを議論すべきである。追加のトリガ条件が導入された場合、タイプ2に適用できるかどうかは更なる検討が必要である。
【0180】
提案5が合意される場合、CHOイベントA3/A5に依存しないが、BH RLFインジケーションによる一種の「強制」トリガであるため、すべてのCHO候補(つまり、候補セル)が同時にCHOをトリガされ得るという問題が発生する可能性がある。
【0181】
現在の仕様では、「条件付き再設定の実行で複数のNRセルがトリガされる場合、どれを選択するかはUEの実装次第である。例えば、UEは、ビーム及びビーム品質を考慮して、実行のためにトリガされたセルの1つを選択する。」とされている。これは主にUEを対象としている。
【0182】
所見5:Rel-16 CHOでは、複数の候補セルがCHO実行をトリガする場合、どのセルを選択するかはUEの実装次第である。
【0183】
トポロジ全体の目的がIABドナーによって適切に処理されるため、IAB-MTに関しては、IAB-MTがローカル無線品質などに応じて実装によってトリガされたセルの1つを選択する場合、常に最良とは限らない。したがって、RAN2は、提案5のような追加のトリガ条件のためにIABドナー制御のCHOの実行を確認する方法について議論すべきである。例えば、IABドナーは、CHO設定におけるCHO候補に関連付けられた優先度情報を設定してもよい。IAB-MTは、特定の無線品質(S-criterionなど)を満たすすべてのトリガされたCHO候補から最も優先度の高いセルを選択すべきである。
【0184】
提案6:RAN2は、BH RLFインジケーションの受信により、すべての候補セルがCHOをトリガする場合に、追加の拡張機能としてIABドナー制御のCHO実行が必要かどうかを検討すべきである。
【0185】
(ローカルリルーティングの拡張)
Rel-16では、以下の記載のように、ローカルリルーティングはBH RLFが発生した場合にのみ許可される。
NOTE:例えば、RLC-AMエンティティが確認応答を受信するまで、BAPエンティティの送信部分でのデータバッファリングは実装次第である。BH RLFの場合、BAPエンティティの送信部分は、BH RLFの前に下位レイヤによって受け入れられていないBAPデータPDUを代替パスにリルーティングしてもよい。
【0186】
これは、BH RLFによる堅牢性及びサービスの中断を改善するためにローカルリルーティングが有益であることを示している。したがって、Rel-17は、RAN2が合意した、負荷分散、シグナリングの削減、堅牢性及び/又はサービスの中断を改善する他のケースにローカルリルーティングを適用することを目的とすべきである。(堅牢性/サービスの中断を改善するために)提案4のようにBH RLFインジケーションを受信することによって、及び/又は(負荷分散/輻輳緩和のために)フロー制御フィードバックを受信することによってなど、BH RLF以外のローカルリルーティングを開始/停止するための追加条件を検討する価値がある。つまり、一般的に、親及び/又は子は、条件によってはIABノードのローカルリルーティングをトリガできるべきである。
【0187】
所見6:Rel-16では、ローカルリルーティングはBH RLFの場合にのみ許可される。これにより、堅牢性とサービスの中断が改善される。
【0188】
提案7:RAN2は、ローカルリルーティングを開始/停止する追加の条件が導入されるかを議論すべきである。これにより、提案1のようにBH RLFインジケーションを受信することによって、及び/又はフロー制御フィードバックを受信することによってなど、他のIABノードがトリガできるようになる。
【0189】
合意される場合、Rel-17における他の場合、すなわち、BH RLFに限らず、「RAN2は、セントラルルート決定に対する利点を含むローカルリルーティング、及びトポロジ全体の目標に対処する方法について議論する。」したがって、Rel-16の課題は、トポロジ全体の客観的な観点から検討すべきである。言うまでもなく、IABドナーは、IABトポロジ全般について完全な知識及び完全な制御を持っているため、トポロジ全体の目的を処理する。
【0190】
Rel-16のローカルリルーティングでは、宛先が同じである限り、代替パスとしてパスが選択されるのはIABノードの実装次第である。これは、ローカルリルーティングがローカルの決定に基づいており、IABドナーの観点からは制御できないことを意味する。これは、特に、多くのローカルの決定が発生してIABトポロジに蓄積される場合、トポロジ全体の目的と一致しない可能性がある。
【0191】
所見7:Rel-16のローカルリルーティングでは、代替パスとしてどのパスが選択されるかはIAB-MTの実装次第である。
【0192】
したがって、ローカルリルーティングがBH RLFの場合を超えて拡張される場合、IABドナーの可制御性はより重要になるはずである。IABノードはローカルリルーティングを実行するときに代替パスを選択する必要があるから、IABドナーが代替パスを設定できることは明快である。代替パスのモデリングは、代替パスが同じルーティングIDを持っているかどうかなど、更なる検討が必要である。
【0193】
提案8:RAN2は、IABドナーがRel-16のルーティング設定に加えて代替パスをIABノードに設定できるかどうかを検討すべきである。
【0194】
IABドナーの可制御性の他の側面として、IABドナーはローカルリルーティングを認識すべきであって、ローカルリルーティングとトポロジ全体の目的の共存のために、IABノードでローカルリルーティングを開始/停止してもよいことを考慮すべきである。例えば、IABドナーは、どのIABノードが現在ローカルリルーティングを実行しているかの認識に基づいて、トポロジ全体の目的がまだ達成されているかどうかを検討してもよい。IABドナーがトポロジ全体の目的を達成できないことに気付いた場合、IABドナーはIABノードにローカルリルーティングを開始/停止するように指示するか、IABドナーがIABトポロジ全体のルーティング設定を変更してもよい。
【0195】
ローカルリルーティングにより、トポロジ全体の目的をどのように処理するかは、完全にIABドナーの実装次第であるが、IABドナーは、IABノードのローカル決定の情報及び制御性を必要とするかもしれない。
【0196】
提案9:RAN2は、ローカルリルーティングの開始/停止時にIABノードがIABドナーに通知する必要があるかどうかを議論すべきである。
【0197】
提案10:RAN2は、IABドナーがIABノードにローカルリルーティングを開始/停止するように指示できるかどうかについて議論すべきである。
【0198】
(BH RLF回復及びセル(再)選択の拡張)
RRC再確立手順では、IAB-MTは、適切なセルを見つけるために、最初にセル選択手順を実行する。このセル選択手順では、IAB-MTが子孫ノードを選択する可能性があるなど、潜在的な課題がRel-16で指摘された。従って、それはEメールディスカッションで議論された。
【0199】
図21に示すように、考えられる5つの解決策について、ラポーターの見解とともに議論及び要約した。
【0200】
結論は、「Rel-16ではこのトピックに関してこれ以上のアクションは取らない」であった。これは、RAN2が「オプション4:BH接続がない場合、RRC再確立は失敗するため、何も必要ない」に合意したことを意味する。オプション4は、失敗(T301の満了)を待ち、最終的にアイドルに移動する必要があるため、BH RLF回復にさらに時間が必要である場合でも、Rel-16の展開シナリオでは受け入れ可能であった。
【0201】
所見8:Rel-16では、IABノードが子孫ノードに対してRRC再確立要求を試行した場合、IABノードはその失敗を待ち、最終的にアイドルに移動する必要がある。
【0202】
Rel-17では、所見2の観点から、セル(再)選択及びRRC再確立がさらに頻繁に発生する可能性がある。従って、準最適な動作、即ち、所見8に従う動作は、IABトポロジの安定性及びサービス継続性の観点からパフォーマンスが大幅に低下を引き起こすであろう。従って、BH RLF回復中のIAB-MTの動作を最適化するために、上記のメールディスカッションのラポーターが述べているように、「このトピックについては、Rel-17で再度議論され得る」。
【0203】
提案11:RAN2は、不適切なノード(例えば、子孫ノード)への再確立を回避するために、セル(再)選択の最適化が検討されることに合意すべきである。
【0204】
上記のオプション4を除いて特定された解決策の中で、共通概念は、セル選択の目的で、IAB-MTは許可リストまたはブロックリストのいずれかの種類で提供されることであると見なされ得る。例えば、「インタードナーIABノードの移動」によって、トポロジ変更がRel-17で頻繁に発生する可能性があることを考えると、許可リストとブロックリストには、トポロジ及びIABノードの位置に応じて長所と短所とがある。
【0205】
例えば、IABドナーの近くのIABノード、即ち、DAGトポロジの最上位の観点からは、候補ノードの数が少なく、場合によってはIABドナーDUのみであるため、許可リストを提供する方が合理的である。
【0206】
しかしながら、IABドナーから遠く離れたIABノード、即ち、DAGトポロジの最下位からの観点である別の例では、許可リストに膨大な数の候補ノードを含める必要があるかもしれない。代わりに、ブロックリストは、例えば、懸念されるIABノードのダウンストリームIABノードのみを含み、場合によっては少数の子IABノードのみを含むため、オーバーヘッドを削減するため、より適切な場合がある。
【0207】
許可リストの懸念事項の1つは、Rel-17の「インタードナーIABノードの移動」の性質上、異なる/隣接するIABトポロジに属する候補のIABノードを含める必要がある場合があり、リストのサイズが大きくなる可能性があることである。一方で、ダウンストリームIABノードは同じIABトポロジに属していることは言うまでもないため、ブロックリストにはそのような懸念はない。
【0208】
所見9:許可リスト及びブロックリストには、IABノードのトポロジ及び位置に応じて長所と短所とがある。
【0209】
従って、セル選択の目的で子IABノードに情報を提供する場合、IABドナー(又は親IABノード)が許可リスト又はブロックリストのどちらかを使用するかを選択できることが望ましい場合がある。なお、当該情報がセル再選択の目的で再利用することが有益であるかどうかも検討されるべきである。
【0210】
提案12:RAN2は、子孫ノードへの再確立を回避するために、セル選択の目的でIAB-MTに許可リスト又はブロックリスト(即ち、選択構造)が提供されることに合意すべきである。これらのリストをセル再選択手順にも使用できるかは更なる検討が必要である。
【0211】
提案12に合意できる場合、情報(即ち、許可リスト又はブロックリスト)がどのように提供されるかをさらに検討すべきである。オプション1は、CHO設定を想定しており、いくつかの拡張が必要になる可能性がある。オプション2は、追加のインジケーションを想定しており、例えば、タイプ2のBH RLFインジケーションなどである。オプション3は、既存設定にはないトポロジ全体の情報を提供することを想定している。オプション5は、OAMによる設定を想定しているが、ラポーターが指摘したように、これは疑わしい。
【0212】
Rel-17の想定(即ち、所見2)、即ち、トポロジ変更が生じたら、親IABノード又はIABドナーが子IABノードにリストを提供すべきであることを再度考慮すると、許可リスト/ブロックリストは動的に提供される必要がある。従って、オプション5、即ち、OAMは除外すべきである。どの方法、即ち、オプション1、2、又は3のうちのどの方法を拡張のベースラインにするかは、更なる検討が必要である。
【0213】
提案13:RAN2は、トポロジが変更されるたびに、許可リスト/ブロックリストが親IABノード又はIABドナーによって動的に提供されることに合意すべきである。詳細は更なる検討が必要である。
【0214】
(ロスレス配信の拡張)
Rel-15の研究段階では、マルチホップRLC ARQの課題が、TRのセクション8.2.3で議論され、キャプチャされた。Rel-16では、プロトコルスタックは分離されていないRLC層を有するIABに対して定義された。つまり、Rel-16では、end-to-end ARQは除外され、hop-by-hop ARQが採用された。
【0215】
hop-by-hop ARQに関しては、end-to-endの信頼性、即ち、ULパケットでのロスレス配信における課題が特定された。図22に示すように、3つの解決策が特定され、評価された。
【0216】
Rel-16では、第1の解決策である「PDCPプロトコル/手順の変更」はRel-15 UEに影響を与えるため、採用されなかった。
【0217】
第2の解決策である「中間IABノードでバッファリングされたPDCP PDUのリルーティング」は、BAPレイヤでの実装選択としてサポートされた。さらに、BAPレイヤは、「例えば、RLC-AMエンティティが確認応答を受信するまで、BAPエンティティの送信部分でのデータバッファリングすることは、実装依存」で実行してもよい。これらのBAP実装は、Rel-16展開シナリオの「ほとんど」の場合、即ち、固定IABノードを使用した場合、パケット損失を回避するために考慮されたが、例えば、図36のように完全ではなかった。
【0218】
第3の解決策である「ULステータス配信の導入」は、図36に引用されている評価結果を考慮して、ULデータのロスレス配信を保証するための有望な解決策であった。アイデアは、UEへのRLC ARQを遅延させ、UEでのPDCPデータ回復が必要なときに開始されるようにすることであった。しかしながら、固定IABノードが想定されていたため、トポロジ変更によりULパケットがドロップされることはまれであると見なされていたため、Rel-16では規定されなかった。
【0219】
Rel-17の想定を考えると、即ち、提案1の観点から、Rel-17で頻繁に発生するトポロジ変更中にULパケットを損失することがもはやまれではないため、第3の解決策をさらに検討すべきである。従って、RAN2は、TRでキャプチャされた結果に加えて、L2マルチホップネットワーク内でロスレス配信を保証するための拡張メカニズムについて議論すべきである。
【0220】
提案14:RAN2は、TR38.874で特定される解決策、即ち、何らかの形式の「ULステータス配信」に基づいてトポロジ変更が頻繁に発生する可能性がある条件下で、ロスレス配信を保証するメカニズムを導入することに合意すべきである。
【0221】
第3の解決策、即ち、「ULステータス配信の導入」の詳細については、図23に示すように、EメールディスカッションでC-1及びC-2の2つのオプションについて議論した。
【0222】
上記のC-1に関して、マルチホップL2ネットワークを介したend-to-endのシグナリング転送のために、IABドナーからの「確認」をBAP又はRRCで規定する必要があると想定される。従って、このオプションを規定するためには、比較的高い標準的な取り組みが必要になるであろう。
【0223】
上記のC-2に関して、IABトポロジで十分に機能する場合、OAMがこのオプションを使用して全てのIABノードを設定すると想定される必要があっても、RLC ACKをUE(又はダウンストリームIABノード)に送信する場合、最終的にIAB-DU実装に依存するため、Rel-16 IABノードに対しても実際に実装可能である。さらに、hop-by-hopフィードバックを想定し、追加のControl PDUを想定しないため、C-1よりも簡単である。従って、C-2は、ULパケットのロスレス配信のためのRel-17の拡張ベースラインであるべきである。
【0224】
所見10:「ULステータス配信の導入」の解決策であるC-2は、Rel-17の拡張ベースラインとなる可能性があり、これは、Rel-16に対しても実装可能である。
【0225】
但し、Rel-17は、ULパケット損失を引き起こす動的なトポロジ変更を想定すべきであるため、Rel-17の拡張はC-2を標準のサポート機能としてサポートするであろう。少なくともステージ2の仕様では、C-2に基づく全体的なメカニズムを説明すべきである。それ以外の場合、3GPP標準では、IABノードのハンドオーバ中にロスレス配信が保証されない。さらに、ステージ3ではRLC及び/又はBAPなどの小さな変更が予想されるが、IABノードの内部動作と見なされるため、詳細を規定しない可能性もある。
【0226】
提案15:RAN2は、ステージ2でULパケットをロスレス配信するためのRLC ARQメカニズムを規定することに合意すべきである。これは、親IABノードからACKを受信する前に、子ノード/UEへのACKの送信を遅らせる(即ち、C-2)。ステージ3で規定するかどうか/どのように規定するかは更なる検討が必要である。
【0227】
(ドナー間のIABノードの移動)
IABノード統合手順はRel-16に導入されており、これは、IABノードの初期統合に使用される。つまり、まだサービス外の段階にある。
【0228】
Rel-17は、インタードナーIABノードの移動を指定することを目的としており、これは、堅牢な操作を提供し、モバイルIABノードに適用される予定である。Rel-16とは対照的に、Rel-17のインタードナーIABノードの移動は稼働中のフェーズで実行されるため、1つのIABノードのインタードナーIABノードの移動により、トポロジ全体に影響が生じ、サービスの中断を引き起こす。言い換えると、Rel-17のインタードナーIABノードの移動では、IABトポロジ内のすべてのIABノードが他のIABドナーに移動する方法、具体的には、同期を伴うRRC再設定(つまり、ハンドオーバコマンド)がこれらの影響を受けるIABノードにどのように提供されるか、を検討する必要がある。
【0229】
図24に示すように、子ノード(IABノード♯2)が親ノード(IABノード♯1)を介してソースIABドナーに接続されていると仮定すると、一組のシグナリングの問題が考えられる。
【0230】
・ケース1:親が最初に移動された場合、子とソースドナー間のRRCシグナリングパスが解放される。そのため、子ノードをどのように移動できるかは不明である。
・ケース2:子が最初に移動された場合、親ノードを介したターゲットドナーへのRRCシグナリングパスはまだ確立されていない。そのため、子ノードがターゲットドナーにどのようにアクセスするか(つまり、RRC再設定を完了してターゲットドナーに送信する方法)は不明である。
【0231】
ケース1の場合、CHOは、子ノードのいくつかの拡張機能を使用して再利用されてもよい。つまり、親ノードが移動されるときに、子ノードでCHOが実行される。
ケース2の場合、子ノードのRRC再設定のターゲットドナーへの送信は、例えば、その親ノードによって遅延されてもよい。
【0232】
どちらの場合も、子ノードが最初に解放され、Rel-16手順を使用して再統合されることが1つのオプションである可能性がある。ただし、重大なサービスの中断を考慮すると、Rel-17のために望ましい解決策ではない可能性がある。
【0233】
インタードナーIABノードの移動の全体的な手順はRAN3で検討されているが、RAN2は、マルチホップネットワークで複数のIABノードを再設定する方法に対するRAN2の影響について検討する必要がある。
【0234】
提案16:RAN2は、インタードナーIABノード移動のためにマルチホップIABノードを再設定する方法について検討する必要がある。
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