(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】発音デバイス
(51)【国際特許分類】
H04R 9/00 20060101AFI20241112BHJP
H04R 1/24 20060101ALI20241112BHJP
H04R 9/06 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
H04R9/00 F
H04R1/24 A
H04R9/06 A
(21)【出願番号】P 2022575683
(86)(22)【出願日】2022-09-21
(86)【国際出願番号】 CN2022120190
(87)【国際公開番号】W WO2024045236
(87)【国際公開日】2024-03-07
【審査請求日】2023-02-28
(31)【優先権主張番号】202222293073.7
(32)【優先日】2022-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517409583
【氏名又は名称】エーエーシー マイクロテック(チャンヂョウ)カンパニー リミテッド
【住所又は居所原語表記】No.3 changcao road, Hi-TECH Industrial Zone, Wujin District, Changzhou City, Jiangsu Province, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100199819
【氏名又は名称】大行 尚哉
(74)【代理人】
【識別番号】100087859
【氏名又は名称】渡辺 秀治
(72)【発明者】
【氏名】任璋
(72)【発明者】
【氏名】鐘志威
【審査官】齊田 寛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-162228(JP,A)
【文献】特開平7-264694(JP,A)
【文献】中国実用新案第216391399(CN,U)
【文献】中国実用新案第212812019(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/24
H04R 9/00
H04R 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム、第1振動システム、磁気回路システム、蓋体、第2振動システム、支持リング及びインサートを含み、
前記第1振動システムは、前記フレームに固定される第1振動板と、前記第1振動板を振動させて音を発生させるように駆動する第1ボイスコイルと、を含み、
前記磁気回路システムは前記フレームに固定され、前記磁気回路システムの前記第1振動システムに近い側には、第1磁気ギャップと第2磁気ギャップが間隔をあけて設置されており、前記第1磁気ギャップは前記第2磁気ギャップを取り囲むように設けられ、前記第1ボイスコイルは、前記第1磁気ギャップ内に挿設され、
前記蓋体は第1振動板に固定され、前記フレーム、前記第1振動システム、前記磁気回路システム及び前記蓋体は共に発音インナーキャビティを取り囲んで形成し、
前記第2振動システムは前記発音インナーキャビティ内に位置し、前記第2振動システムは、前記磁気回路システムの前記第1振動板に近い側に支持される第2振動板と、前記第2振動板を振動させて音を発生させるように駆動する第2ボイスコイルと、を含み、前記第2ボイスコイルは前記第2磁気ギャップ内に挿設され、
前記支持リングは、前記発音インナーキャビティ内に位置し、かつ前記第1振動板、前記第2振動板及び前記磁気回路システムに固定され、前記支持リングは、支持リング本体と、前記支持リング本体を貫通する連通孔と、を含み、前記連通孔は、前記発音インナーキャビティに連通し、前記第2振動板の外周側は、前記連通孔内に固定され、前記第1振動板の振動で発生した気流は、前記支持リングの前記連通孔を貫通して前記第2振動板を推し、
前記インサートは前記第2振動板の下方に位置し、前記インサートには、それを貫通する圧抜き孔が設けられており、前記第2振動板の振動で発生した気流は前記圧抜き孔から外部に伝送される、
ことを特徴とする発音デバイス。
【請求項2】
前記連通孔は、前記支持リング本体の一方側に対向して貫通するように形成される第1連通孔と、前記支持リング本体の他方側に対向して貫通するように形成される第2連通孔と、を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の発音デバイス。
【請求項3】
前記磁気回路システムは、前記フレームに固定されるヨークと、前記ヨークから前記第2振動システムに向かって突出して延びる延出部と、前記ヨークに固定され、かつ前記延出部を取り囲んで前記延出部と間隔をあけて前記第2磁気ギャップを形成する第1副磁石鋼と、前記ヨークに固定され、かつ前記第1副磁石鋼を取り囲んで前記第1副磁石鋼と間隔をあけて前記第1磁気ギャップを形成する第2副磁石鋼と、を含み、前記第2振動板の外周縁は前記支持リングに支持固定される、
ことを特徴とする請求項1に記載の発音デバイス。
【請求項4】
前記第1振動板は、環状を呈する第1サラウンドと、前記第1サラウンドの内側に間隔をあけて設置されかつ環状を呈する第2サラウンドと、前記第1サラウンドと前記第2サラウンドとを接続するボビンと、前記ボビンに固定されかつ環状を呈する第1ドームと、を含み、第1サラウンドの外周側は前記フレームに固定され、前記第2サラウンドの内周側は前記支持リングの上面に固定され、前記第1ボイスコイルは前記ボビンの前記磁気回路システムに近い側に固定され、前記蓋体は前記第2サラウンドの内周側を前記支持リングに圧着し、かつ、前記蓋体と前記第2振動板とは前記第2振動板の振動方向に沿って正対して間隔をあけており、前記第1ボイスコイルを第1磁気ギャップ内に吊り下げるように、前記ボビンの他端は前記第1ボイスコイルに接続される、
ことを特徴とする請求項3に記載の発音デバイス。
【請求項5】
前記第1振動システムは、前記フレームに固定される補助振動板をさらに含み、前記補助振動板は前記ボビンに接続される、
ことを特徴とする請求項4に記載の発音デバイス。
【請求項6】
前記第2振動板は、その振動方向に沿って前記延出部と間隔をあけている第2振動部と、前記第2振動部の周縁から外へ延びて環状を呈する第3サラウンドと、前記第3サラウンドの外周側から延びて前記支持リングに固定される固定部と、を含み、前記第2ボイスコイルは前記第2振動部の前記磁気回路システムに近い側に固定される、
ことを特徴とする請求項4に記載の発音デバイス。
【請求項7】
前記磁気回路システムは、前記第1副磁石鋼の第1振動システムに近い側に固定される第1磁極芯と、前記第2副磁石鋼の前記第1振動システムに近い側に固定される第2磁極芯と、をさらに含む、
ことを特徴とする請求項4に記載の発音デバイス。
【請求項8】
前記磁気回路システムは、前記第2振動板の振動方向に沿って前記延出部と前記ヨークを貫通する取り付け穴をさらに含む、
ことを特徴とする請求項3に記載の発音デバイス。
【請求項9】
前記インサートは、前記取り付け穴内に収容されるインサート本体と、前記インサート本体のトップから外へ折り曲がって延びるインサート支持壁と、前記インサート本体のボトムから前記発音インナーキャビティの外部に延びる導電性端子と、を含み、前記インサート支持壁は前記延出部のトップに支持固定され、前記第1ボイスコイル及び前記第2ボイスコイルは、それぞれ前記インサート本体に電気的に接続される、
ことを特徴とする請求項8に記載の発音デバイス。
【請求項10】
前記フレームと前記ヨークとの間にリーク孔が形成され、前記発音デバイスは、前記ヨークの外周側に固定されるハウジングをさらに含み、前記ハウジングは前記フレームに延びて固定される、
ことを特徴とする請求項3に記載の発音デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気音響変換分野に関し、特に、携帯電子製品に適用される発音デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
発音デバイスは携帯電話などのモバイル端末の主要素子の一つであり、主に電気信号を音声信号に変換するために用いられる。
【0003】
従来技術では、発音デバイスは、フレームと、前記フレームに固定される振動システムと、磁気ギャップを有する磁気回路システムと、を含み、前記振動システムは前記フレームに固定されて振動発音するための振動板と、前記磁気ギャップに挿設されて前記振動板の振動を駆動するボイスコイルと、を含む。
【0004】
しかしながら、従来技術では、発音デバイスにおける振動発音向けの振動板が1つであり、単一の振動板に対してシングルボイスコイル構造を使っている。小さなキャビティの応用環境の場合、従来のシングルボイスコイル構造では低周波数をアップするには大電力駆動が必要で、高電圧PAおよび高すぎるボイスコイル温度のリスクに制限されて実現が困難であり、ボイスコイル駆動の電力が集中し、PA電圧の出力制限および高すぎるボイスコイル温度などのリスクを招き、低周波数性能をアップすることができず、ユーザー体験の効果がよくない。
【0005】
従って、上記技術的課題を解決するために、新たな発音デバイスを提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ボイスコイルの作動安全性が良好であり、低周波性能の向上を容易にし、ユーザー体験が良好である発音デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明には、発音デバイスが提供され、前記発音デバイスは、フレーム、第1振動システム、磁気回路システム、蓋体、第2振動システム、支持リング及びインサートを含み、前記第1振動システムは、前記フレームに固定される第1振動板と、前記第1振動板を振動させて音を発生させるように駆動する第1ボイスコイルと、を含み、前記磁気回路システムは前記フレームに固定され、前記磁気回路システムの前記第1振動システムに近い側には、第1磁気ギャップと第2磁気ギャップが間隔をあけて設置されており、前記第1磁気ギャップは前記第2磁気ギャップを取り囲むように設けられ、前記第1ボイスコイルは、前記第1磁気ギャップ内に挿設され、前記蓋体は第1振動板に固定され、前記フレーム、前記第1振動システム、前記磁気回路システム及び前記蓋体は共に発音インナーキャビティを取り囲んで形成し、前記第2振動システムは前記発音インナーキャビティ内に位置し、前記第2振動システムは、前記磁気回路システムの前記第1振動板に近い側に支持される第2振動板と、前記第2振動板を振動させて音を発生させるように駆動する第2ボイスコイルと、を含み、前記第2ボイスコイルは前記第2磁気ギャップ内に挿設され、前記支持リングは、前記発音インナーキャビティ内に位置し、かつ前記第1振動板、前記第2振動板及び前記磁気回路システムにそれぞれ固定され、前記支持リングは、支持リング本体と、前記支持リング本体を貫通する連通孔と、を含み、前記連通孔は、前記発音インナーキャビティに連通し、前記第2振動板の外周側は、前記連通孔内に固定され、前記第1振動板の振動で発生した気流は、前記支持リングの前記連通孔を貫通して前記第2振動板を推し、前記インサートは前記第2振動板の下方に位置し、前記インサートには、それを貫通する圧抜き孔が設けられており、前記第2振動板の振動で発生した気流は前記圧抜き孔から外部に伝送される。
【0008】
好ましくは、前記連通孔は、前記支持リング本体の一方側に対向して貫通するように形成される第1連通孔と、前記支持リング本体の他方側に対向して貫通するように形成される第2連通孔と、を含む。
【0009】
好ましくは、前記磁気回路システムは、前記フレームに固定されるヨークと、前記ヨークから前記第2振動システムに向かって突出して延びる延出部と、前記ヨークに固定され、かつ前記延出部を取り囲んで前記延出部と間隔をあけて前記第2磁気ギャップを形成する第1副磁石鋼と、前記ヨークに固定され、かつ前記第1副磁石鋼を取り囲んで前記第1副磁石鋼と間隔をあけて前記第1磁気ギャップを形成する第2副磁石鋼と、を含み、前記第2振動板の外周縁は前記支持リングに支持固定される。
【0010】
好ましくは、前記第1振動板は、環状を呈する第1サラウンドと、前記第1サラウンドの内側に間隔をあけて設置されかつ環状を呈する第2サラウンドと、前記第1サラウンドと前記第2サラウンドとを接続するボビンと、前記ボビンに固定されかつ環状を呈する第1ドームと、を含み、第1サラウンドの外周側は前記フレームに固定され、前記第2サラウンドの内周側は前記支持リングの上面に固定され、前記第1ボイスコイルは前記ボビンの前記磁気回路システムに近い側に固定され、前記蓋体は前記第2サラウンドの内周側を前記支持リングに圧着し、かつ、前記蓋体と前記第2振動板とは前記第2振動板の振動方向に沿って正対して間隔をあけており、前記第1ボイスコイルを第1磁気ギャップ内に吊り下げるように、前記ボビンの他端は前記第1ボイスコイルに接続される。
【0011】
好ましくは、前記第1振動システムは、前記フレームに固定される補助振動板をさらに含み、前記補助振動板は前記ボビンに接続される。
【0012】
好ましくは、前記第2振動板は、その振動方向に沿って前記延出部と間隔をあけている第2振動部と、前記第2振動部の周縁から外へ延びて環状を呈する第3サラウンドと、前記第3サラウンドの外周側から延びて前記支持リングに固定される固定部と、を含み、前記第2ボイスコイルは前記第2振動部の前記磁気回路システムに近い側に固定される。
【0013】
好ましくは、前記磁気回路システムは、前記第1副磁石鋼の第1振動システムに近い側に固定される第1磁極芯と、前記第2副磁石鋼の前記第1振動システムに近い側に固定される第2磁極芯と、をさらに含む。
【0014】
好ましくは、前記磁気回路システムは、前記第2振動板の振動方向に沿って前記延出部と前記ヨークを貫通する取り付け穴をさらに含み、前記発音デバイスは、前記取り付け穴内に組み立てられるインサートをさらに含み、前記インサートは、前記第1ボイスコイルに駆動信号を提供するために、前記第1ボイスコイルと電気的に接続される。
【0015】
好ましくは、前記インサートは、前記取り付け穴内に収容されるインサート本体と、前記インサート本体のトップから外へ折り曲がって延びるインサート支持壁と、前記インサート本体のボトムから前記発音インナーキャビティの外部に延びる導電性端子と、を含み、前記インサート支持壁は前記延出部のトップに支持固定され、前記第1ボイスコイル及び前記第2ボイスコイルは、それぞれ前記インサート本体に電気的に接続される。
【0016】
好ましくは、前記フレームと前記ヨークとの間にリーク孔が形成され、前記発音デバイスは、前記ヨークの外周側に固定されるハウジングをさらに含み、前記ハウジングは前記フレームに延びて固定される。
【発明の効果】
【0017】
従来技術と比べて、本発明に係る発音デバイスにおいて、1つの磁気回路システムによって、外側及び内側のダブル振動システム同方向振動のプッシュプル式構造の設置を実現し、これによって、低周波数の周波数応答を向上させる。磁気回路システムをフレームに固定し、磁気回路システムの第1振動システムに近い側に第1磁気ギャップと第2磁気ギャップが間隔をあけて設置され、第1磁気ギャップは第2磁気ギャップを取り囲むように設置され、第1ボイスコイルが第1磁気ギャップ内に挿設され、フレーム、第1振動システム、磁気回路システムと蓋体は共に発音インナーキャビティを取り囲んで形成し、磁気回路システムの第1振動板に近い側に固定支持される第2振動板と、第2振動板を振動させて音を発生させるように駆動する第2ボイスコイルとを含む第2振動システムを発音インナーキャビティ内に位置させ、第2ボイスコイルが第2磁気ギャップ内に挿設され、支持リングを第1振動システムと第2振動システムとの間に設け、支持リングは支持リング本体と支持リング本体を貫通する連通孔とを含み、連通孔が発音インナーキャビティに連通し、第2振動板の外周側が連通孔内に固定され、第1振動板の振動により発生した気流が支持リングの連通孔を通して第2振動板を推し、インサートは第2振動板の下方に位置し、インサートにはそれを貫通する圧抜き孔が設けられ、第2振動板の振動により発生した気流は圧抜き孔から外部に伝送される。このようにプッシュプル構造のダブルボイスコイル駆動を利用することで、パワーを分散させ、PA電圧出力制限及び高すぎるボイスコイル温度のリスクを解消し、低周波数性能の向上を実現することができ、ユーザー体験が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の実施例における技術案をよりも明確に説明するために、以下、実施例の説明に必要な図面を簡単に説明し、明らかに、以下説明された図面は、本発明のいくつかの実施例に過ぎず、当業者であれば、進歩的な労働をしなくても、これらの図面に基づいて他の図面を取得することができ、そのうち、
【
図1】
図1は、本発明に係る発音デバイスを示す斜視構成図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る発音デバイスの立体構造の分解図である。
【
図4】
図4は、本発明に係る支持リングの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例における図面を参照しながら本発明の実施例における技術案を明確かつ完全に説明する。明らかに、記載された実施例は、全ての実施例ではなく、本発明の一部の実施例に過ぎない。当業者が本発明における実施例に基づいて進歩的な労働をしない前提に得られた他の全ての実施例は、本発明の保護範囲に含まれるものとする。
【0020】
図1~4に示すように、本発明は、フレーム1、第1振動システム2、磁気回路システム3、第2振動システム4、インサート5、支持リング37及び蓋体38を含む発音デバイス100を提供する。
【0021】
フレーム1は第1振動システム2、第2振動システム4、磁気回路システム3、インサート5を支持固定することに用いられる。
【0022】
前記第1振動システム2は、前記フレーム1に固定される第1振動板21と、前記第1振動板21を振動させて音を発生させるように駆動する第1ボイスコイル22と、を含む。
【0023】
前記磁気回路システム3は前記フレーム1に固定され、前記磁気回路システム3の前記第1振動システム2に近い側には、第1磁気ギャップ6と第2磁気ギャップ7が間隔をあけて設置されており、前記第1磁気ギャップ6は前記第2磁気ギャップ7を取り囲むように設けられ、前記第1ボイスコイル22は、前記第1磁気ギャップ6内に挿設される。
【0024】
蓋体38は第1振動板21に固定され、前記フレーム1、前記第1振動システム2、前記磁気回路システム3及び蓋体38は共に発音インナーキャビティ10を取り囲んで形成する。選択できるように、蓋体38は第1振動板21の内周側を被覆するように設けられる。
【0025】
前記第2振動システム4は前記発音インナーキャビティ10内に位置し、前記第2振動システム4は、前記磁気回路システム3の前記第1振動板21に近い側に支持される第2振動板41と、前記第2振動板41を振動させて音を発生させるように駆動する第2ボイスコイル42と、を含み、前記第2ボイスコイル42は前記第2磁気ギャップ7内に挿設される。前記第1振動システム2と前記第2振動システム4との振動方向は同じであり、前記第1振動システム2の第1振動板21の振幅は前記第2振動システム4の前記第2振動板41の振幅よりも大きい。前記第1ボイスコイル22の断面積は第2ボイスコイル42の断面積よりも大きい。これにより、前記第1ボイスコイル22の駆動力が第2ボイスコイル42の駆動力よりも大きくなり、ダブルボイスコイルの同方向駆動構造を形成し、プッシュプル構造のダブルボイスコイル駆動を実現することで、パワーを分散させることができる。
【0026】
前記支持リング37は、前記発音インナーキャビティ10内に位置し、かつ前記第1振動板21、前記第2振動板41及び前記磁気回路システム3にそれぞれ固定され、前記支持リング37は、支持リング本体371と、前記支持リング本体371を貫通する連通孔373と、を含み、前記連通孔373は、前記発音インナーキャビティ10に連通し、前記第2振動板41の外周側は、前記連通孔373内に固定され、前記第1振動板21の振動で発生した気流は、前記支持リング37の前記連通孔373を貫通して前記第2振動板41を推す。前記インサート5は前記第2振動板41の下方に位置し、前記インサート5には、それを貫通する圧抜き孔52が設けられており、前記第2振動板41の振動で発生した気流は前記圧抜き孔52から外部に伝送される。発音インナーキャビティ10の空気が順次第1磁気ギャップ6、連通孔373から蓋体38と第1振動板21との間のキャビティ内に伝送することを容易にするために、第1振動板21に被覆される蓋体38によって、その振動方向の逆方向に沿って第2振動板41を推すことを阻止し、第2振動板41の振動で発生した気流は前記圧抜き孔52から外部に伝送されることができる。このように、プッシュプル構造のダブルボイスコイル駆動を利用してパワーを分散させ、PA電圧出力制限と高すぎるボイスコイルのリスクを解消し、低周波数性能の向上を実現することができ、ユーザー体験の効果が良好である。
【0027】
本実施形態では、支持リング37は、前記支持リング本体371から前記第2振動板41に近い方向へ突出して延びるボス372をさらに含み、前記第2振動板41の外周側は前記ボス372に支持固定される。第2振動板41の外周側を前記ボス372上に置いて前記連通孔373に固定することで、第2振動板41の固定効果が良好になる。
【0028】
本実施形態では、前記連通孔373は、前記支持リング本体371の一方側に対向して貫通するように形成される第1連通孔3731と、前記支持リング本体371の他方側に対向して貫通するように形成される第2連通孔3732と、を含む。具体的には、第1連通孔3731は2つがあり、第2連通孔3732は2つがある。支持リング本体371は、矩形構造を呈し、その対向する短辺にそれぞれ2つの第1連通孔3731が間隔をあけて設置され、その対向する長辺にそれぞれ2つの第2連通孔3732が間隔をあけて設置される。発声キャビティの空気を、第1連通孔3731、第2連通孔3732を経て蓋体38、第2振動板41の間に流させるために、2つの第1連通孔3731と2つの第2連通孔3732を発音インナーキャビティ10に連通させることにより、ダブル振動同方向のプッシュプル構造を実現する。パワーを分散させ、PA電圧出力制限と高すぎるボイスコイル温度のリスクを解消するとともに、低周波数性能の向上を実現することができ、ユーザー体験が良好である。
【0029】
本実施形態では、前記磁気回路システム3は、フレーム1に固定されるヨーク31と、前記ヨーク31から前記第2振動システム4に向かって突出して延びる延出部32と、前記ヨーク31に固定され、かつ前記延出部32を取り囲んで前記延出部32と間隔をあけて前記第2磁気ギャップ7を形成する第1副磁石鋼33と、前記ヨーク31に固定され、かつ前記第1副磁石鋼33を取り囲んで前記第1副磁石鋼33と間隔をあけて前記第1磁気ギャップ6を形成する第2副磁石鋼34と、を含み、前記第2振動板41の外周縁は前記支持リング37に支持固定される。延出部32と第1副磁石鋼33、第2副磁石鋼34との間に発生した磁界がそれぞれ第2ボイスコイル42と第1ボイスコイル22に作用することで、ボイスコイルの発音性能を高めることができる。
【0030】
本実施形態では、前記第1振動板21は、前記フレーム1に固定されかつ環状を呈する第1サラウンド211と、前記第1サラウンド211の内側に間隔をあけて設置されかつ環状を呈する第2サラウンド212と、前記第1サラウンド211と前記第2サラウンド212とを接続するボビン213と、前記ボビン213に固定されかつ環状を呈する第1ドーム214と、を含み、第1サラウンド211の外周側は前記フレーム1に固定され、前記第2サラウンド212の内周側は前記支持リング37の上面に固定され、前記第1ボイスコイル22は前記ボビン213の前記磁気回路システム3に近い側に固定され、前記蓋体38は前記第2サラウンド212の内周側を前記支持リング37に圧着し、かつ、前記蓋体38と前記第2振動板41とは前記第2振動板41の振動方向に沿って正対して間隔をあけている。第1サラウンド211をフレーム1に固定し、かつ、第2サラウンド212、ボビン213及び第1サラウンド211を固定接続することで、第1振動板21の振動性能を高めることができる。前記第1ボイスコイル22を第1磁気ギャップ6内に吊り下げるように、前記ボビン213の他端は前記第1ボイスコイル22に接続される。ボビン213によってボビン213と第1ボイスコイル22の固定効果を強め、振動過程を安定化させ、第1ボイスコイル22の脱落を避けることができる。
【0031】
本実施形態では、前記第1振動システム2は、前記フレーム1に固定される補助振動板23をさらに含み、前記補助振動板23は前記ボビン213に接続される。フレーム1の両端に第1振動板21と合わせるための補助振動板23を設置することで、第1振動板21の振動性能を向上させることができる。
【0032】
本実施形態では、前記第2振動板41は、その振動方向に沿って延出部32と間隔をあけている第2振動部412と、前記第2振動部412の周縁から外へ延びて環状を呈する第3サラウンド411と、前記第3サラウンド411の外周側から延びて前記支持リング37に固定される固定部413と、を含み、前記第2ボイスコイル42は前記第2振動部412の前記磁気回路システム3に近い側に固定される。前記第2振動板41が前記蓋体38と正対して設置させることで、プッシュプル構造のダブルボイスコイル駆動を実現し、パワーを分散させ、PA電圧出力制限及び高すぎるボイスコイル温度のリスクを解消すると同時に、低周波数性能の向上を実現することができる。
【0033】
本実施形態では、前記磁気回路システム3は、前記第1副磁石鋼33の第1振動システム2に近い側に固定される第1磁極芯35と、前記第2副磁石鋼34の前記第1振動システム2に近い側に固定される第2磁極芯36と、をさらに含む。第1磁極芯35と第2磁極芯36は、それぞれ第1副磁石鋼33と第2副磁石鋼34の磁性を増加させることに用いられる。前記支持リング本体371は前記第1磁極芯35に支持される。
【0034】
本実施形態では、前記磁気回路システム3は、前記第2振動板41の振動方向に沿って前記延出部32と前記ヨーク31を貫通する取り付け穴39をさらに含み、前記発音デバイス100は、前記取り付け穴39内に組み立てられるインサート5をさらに含み、前記インサート5は、前記第1ボイスコイル22に駆動信号を提供するために、前記第1ボイスコイル22と電気的に接続される。取り付け穴39にインサート5を組み立てることで、固定効果が高い。選択できるように、インサート5は第1振動板21と補助振動板23の間に設けられてもよい。
【0035】
好ましくは、延出部32は、ヨーク31から第2振動システム4に向かって延びて環状突起(図示せず)を形成し、環状突起の中央には取り付け穴39が貫通して形成されており、取り付け穴39はインサート5を置くために用いられる。選択できるように、必ずしも取り付け穴39で導電する必要もなく、つまり、延出部32は中が詰まっているものであってもよく、磁性能力が高い。
【0036】
本実施形態では、前記インサート5は、前記取り付け穴39内に収容されるインサート本体51と、前記インサート本体51のトップから外へ折り曲がって延びるインサート支持壁53と、前記インサート本体51のボトムから前記発音インナーキャビティ10の外部に延びる導電性端子54と、を含む。前記インサート支持壁53は前記延出部32のトップに支持固定され、これによって、インサート支持壁53と延出部32との固定を良好にし、インサート本体51の延出部32内での取り付けが安定になる。第1ボイスコイル22と第2ボイスコイル42にそれぞれ電気エネルギー駆動を容易に提供するために、前記第1ボイスコイル22及び前記第2ボイスコイル42は、それぞれ前記インサート本体51に電気的に接続される。好ましくは、前記圧抜き孔52は前記インサート本体51を貫通することで形成され、圧抜き効果が良好である。
【0037】
本実施形態では、前記フレーム1と前記ヨーク31との間にリーク孔8が形成され、前記発音デバイス100は、前記ヨーク31の外周側に固定されるハウジング9をさらに含み、前記ハウジング9は前記フレーム1に延びて固定される。発音デバイスの圧抜きを容易にし、音響性能がより優れている。
【0038】
従来技術と比べて、本発明に係る発音デバイスにおいて、1つの磁気回路システムによって、外側及び内側のダブル振動システム同方向振動のプッシュプル式構造の設置を実現し、これによって、低周波数の周波数応答を向上させる。磁気回路システムをフレームに固定し、磁気回路システムの第1振動システムに近い側に第1磁気ギャップと第2磁気ギャップが間隔をあけて設置され、第1磁気ギャップは第2磁気ギャップを取り囲むように設置され、第1ボイスコイルが第1磁気ギャップ内に挿設され、フレーム、第1振動システム、磁気回路システムと蓋体は共に発音インナーキャビティを取り囲んで形成し、磁気回路システムの第1振動板に近い側に固定支持される第2振動板と、第2振動板を振動させて音を発生させるように駆動する第2ボイスコイルとを含む第2振動システムを発音インナーキャビティ内に位置させ、第2ボイスコイルが第2磁気ギャップ内に挿設され、支持リングを第1振動システムと第2振動システムとの間に設け、支持リングは支持リング本体と支持リング本体を貫通する連通孔とを含み、連通孔が発音インナーキャビティに連通し、第2振動板の外周側が連通孔内に固定され、第1振動板の振動により発生した気流が支持リングの連通孔を通して第2振動板を推し、インサートは第2振動板の下方に位置し、インサートにはそれを貫通する圧抜き孔が設けられ、第2振動板の振動により発生した気流は圧抜き孔から外部に伝送される。このようにプッシュプル構造のダブルボイスコイル駆動を利用することで、パワーを分散させ、PA電圧出力制限及び高すぎるボイスコイル温度のリスクを解消し、低周波数性能の向上を実現することができ、ユーザー体験が良好である。
【0039】
以上は、本発明の実施形態に過ぎない。当業者にとって、本発明の創造思想から逸脱することなく、改良を行うこともできるが、これらの改良はいずれも本発明の保護範囲に含まれるとここで指摘すべきである。