(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】熱伝導性ポリウレタン組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 18/08 20060101AFI20241112BHJP
C08K 3/20 20060101ALI20241112BHJP
C08K 3/28 20060101ALI20241112BHJP
C08K 9/06 20060101ALI20241112BHJP
C08K 13/06 20060101ALI20241112BHJP
C08L 75/08 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
C08G18/08 038
C08K3/20
C08K3/28
C08K9/06
C08K13/06
C08L75/08
(21)【出願番号】P 2022576136
(86)(22)【出願日】2020-06-29
(86)【国際出願番号】 CN2020098835
(87)【国際公開番号】W WO2022000166
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】弁理士法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ユイ
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン、ダレン、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】モン、チンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】シン、チョン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ティンティン
(72)【発明者】
【氏名】フォン、シャオカン
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-500982(JP,A)
【文献】国際公開第2019/190107(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第111019587(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110684340(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110684170(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103819498(CN,A)
【文献】特開2012-007057(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108003625(CN,A)
【文献】国際公開第2019/230969(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/017637(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/190188(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/08
C08K 3/20
C08K 3/28
C08K 9/06
C08K 13/06
C08L 75/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート組成物とポリオール組成物を含む2成分硬化性組成物であって、
前記イソシアネート組成物が、ポリイソシアネートと熱伝導性充填剤組成物(C)とを含
み、
前記熱伝導性充填剤組成物が、
(c1)20μm以上の平均粒径を有する球状金属酸化物粒子と、
(c2)1μm超~10μmの平均粒径を有する表面処理された金属酸化物粒子であって、アルコキシシランによって処理されている、表面処理された金属酸化物粒子と、
(c3)1μm以下の平均粒径を有する金属酸化物粒子、40W/mK以上の熱伝導率を有し、かつ金属酸化物粒子以外である熱伝導性充填剤、又はこれらの混合物からなる群から選択される追加の熱伝導性充填剤と、
を含
み、
前記ポリオール組成物が、2.0超の平均官能価を有する1つ以上のポリエーテルポリオールを含み、
前記硬化性組成物中の熱伝導性充填剤の総濃度が、前記硬化性組成物の総重量に基づいて87重量%超である、2成分硬化性組成物。
【請求項2】
前記イソシアネート組成物中の熱伝導性充填剤の総濃度が、前記イソシアネート組成物の重量に基づいて87重量%超である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記表面処理された金属酸化物粒子(c2)が、アルキルトリアルコキシシラン、アルキルジアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルジアルコキシシラン、又はこれらの混合物によって処理されている、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記表面処理された金属酸化物粒子(c2)が、表面処理された酸化アルミニウム粒子である、請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記熱伝導性充填剤組成物(C)における前記球状金属酸化物粒子(c1)の前記表面処理された金属酸化物粒子(c2)に対する重量比が、2.0~4.0の範囲である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記追加の熱伝導性充填剤(c3)が、酸化亜鉛粒子、窒化ホウ素粒子、又はこれらの混合物を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリオール組成物が、以下の熱伝導性充填剤:前記球状金属酸化物粒子(c1)、前記表面処理された金属酸化物粒子(c2)、前記追加の熱伝導性充填剤(c3)、及び(c4)1μm超~20μm未満の平均粒径を有する未処理の金属酸化物粒子のうちの1つ以上を含む、請求項
1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記追加の熱伝導性充填剤(c3)としての酸化亜鉛粒子が、前記硬化性組成物の総重量に基づいて5.5重量%以上の総量で前記硬化性組成物中に存在する、請求項
1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記追加の熱伝導性充填剤(c3)としての窒化ホウ素粒子が、前記硬化性組成物の総重量に基づいて1.5重量%以上の総量で前記硬化性組成物中に存在する、請求項
1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記2成分硬化性組成物が、前記硬化性組成物の総重量に基づいて、6.5重量%~20重量%のアルキルトリアルコキシシラン、エポキシ官能性アルコキシシラン、又はこれらの混合物を更に含む、請求項
1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記ポリオール組成物の前記イソシアネート組成物に対する体積比が、0.95~1.05である、請求項
1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記ポリオール組成物中の全熱伝導性充填剤の、前記イソシアネート組成物中の全熱伝導性充填剤に対する重量比が、0.95~1.05の範囲である、請求項
1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記イソシアネート組成物が、芳香族ポリイソシアネートを含む、請求項1~
12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記熱伝導性充填剤組成物(C)の成分を前記ポリイソシアネートと混合することと
、ポリオール組成物と混合することと、を含む、請求項1~
13のいずれか一項に記載の組成物を調製するためのプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2成分熱伝導性ポリウレタン組成物及びその調製プロセスである。
【0002】
序論
ポリオール成分及びイソシアネート成分を含む2成分ポリウレタン(PU)接着剤又は填隙剤は、産業において重要になりつつあるが、熱伝導率が不十分であるなどの制約を依然として抱えている。例えば、電池パック用の填隙剤などのいくつかの用途は、ISO 22007-2に従って測定したときに少なくとも2.73ワット毎メートル毎ケルビン(W/mK)、好ましくは3.0W/mK以上の高い熱伝導率を必要とする。例えば、流動性及び製造設備を含む加工性を維持しながら熱伝導率を改善するための課題が存在する。
【0003】
従来の2成分PU接着剤に十分な量の熱伝導性充填剤を組み込むと、上記の熱伝導率要件に達することができるが、接着剤の2つの成分を一緒に混合した30分以内に測定したときに室温(摂氏23±2度(℃))で230パスカル秒(Pa.s)の製剤粘度を達成すると同時に、得られる高充填系の粘度も達成することは困難である。したがって、2成分PU組成物が、容易な加工性及び塗布のために低粘度を維持しながら、必要とされる高い熱伝導率に達することは困難である。
【0004】
更に、充填剤からの水分に対するイソシアネートの感受性が原因で、限定された種類及び量の充填剤しかイソシアネート部分に導入することができず、例えば、非晶質アルミナなどの典型的な熱伝導性充填剤を2成分ポリウレタン接着剤のイソシアネート成分に含めることができない。これらの問題は、2成分PU接着剤中に含めることができる熱伝導性充填剤の総量を制限するだけでなく、2つの成分について一貫した混合比、すなわち、0.95:1~1.05:1の体積混合比を提供することも困難にする。この混合比外の混合比(例えば、30:1)では、2つの成分の流量が不均等になり、その結果、性能不良が生じ、各成分を混合するための特別な設備設計が必要になる。既存の製造設備を使用して2成分PU組成物を生産できることが更に望ましい。
【0005】
熱伝導性充填剤を含むが、前述の問題なしに2液型ポリウレタン接着剤製剤に使用することができるイソシアネート組成物を見出すことが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、熱伝導性充填剤を含むが、前述の問題なしに2液型ポリウレタン接着剤製剤に使用することができるイソシアネート組成物を見出すという問題を解決する。
【0007】
本発明は、ポリイソシアネートと特定の熱伝導性充填剤組成物(C)とを含むイソシアネート組成物を含む新規組成物を提供する。本発明の組成物は、窒素雰囲気下50℃で24時間保管した後にイソシアネート組成物が50%以下の粘度変動しか有しないことによって示されるように、保管安定性である。本発明のイソシアネート組成物は、ポリオール組成物を更に含む2成分硬化性組成物として特に好適である。2成分硬化性組成物は、成分Aとしてのポリオール組成物及び成分Bとしてのイソシアネート組成物の2成分を含む。2成分硬化性組成物は、2つの成分を混合した後30分以内に測定したときに室温(23±2℃)で230パスカル秒(Pa・s)以下の粘度を有する。2成分硬化性組成物はまた、硬化した際、2.73ワット毎メートル毎ケルビン(W/mK)以上又は3.0W/mK以上の熱伝導率を有するポリウレタン材料を提供する。更に、硬化性組成物の成分A及び成分Bの体積混合比は、0.95:1から1.05:1の間で制御することができ、したがって、2成分硬化性組成物は、既存の製造設備を使用して調製することができる。上記特性は、以下の実施例の章に記載する試験方法に従って測定される。
【0008】
第1の態様では、本発明は、ポリイソシアネートを含むイソシアネート組成物と、熱伝導性充填剤組成物(C)とを含む組成物であって、当該熱伝導性充填剤組成物が、
(c1)20マイクロメートル(μm)以上の平均粒径を有する球状金属酸化物粒子と、
(c2)1μm超~10μmの平均粒径を有する表面処理された金属酸化物粒子であって、アルコキシシランによって処理されている、表面処理された金属酸化物粒子と、
(c3)1μm以下の平均粒径を有する金属酸化物粒子、40W/mK以上の熱伝導率を有し、かつ金属酸化物粒子以外である熱伝導性充填剤、又はこれらの混合物からなる群から選択される追加の熱伝導性充填剤と、を含む組成物を提供する。
【0009】
第2の態様では、本発明は、第1の態様の組成物を調製するためのプロセスを提供する。プロセスは、熱伝導性充填剤組成物(C)の成分をポリイソシアネートと混合することと、任意選択でポリオール組成物と混合することと、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0010】
「ポリオール」は、2つ以上のヒドロキシル(OH)基を含有する任意の化合物を指す。
【0011】
「熱伝導性充填剤」とは、ASTM D5470-17に従って測定したときに10W/mK以上の熱伝導性を示す任意の充填剤を指す。
【0012】
本明細書において「アスペクト比」とは、最小直径(Dmin)の最大直径(Dmax)に対する比(Dmin/Dmax)を指す。アスペクト比は、以下の実施例の章に記載する試験法に従って測定することができる。
【0013】
本発明の組成物は、1つ以上のポリイソシアネートを含むイソシアネート組成物と熱伝導性充填剤組成物(C)とを含む。「ポリイソシアネート」は、2つ以上のイソシアネート基を含有する任意の化合物を指す。ポリイソシアネートは、モノマージイソシアネート、ポリマーイソシアネート、イソシアネートプレポリマー、又はこれらの混合物を含み得る。ポリイソシアネートは、芳香族、脂肪族、芳香脂肪族(araliphatic)、若しくは脂環式ポリイソシアネート、又はこれらの混合物であり得る。好ましいポリイソシアネートは、芳香族ポリイソシアネートである。芳香族ポリイソシアネートとは、芳香族炭素原子に結合した少なくとも1つのイソシアネート基を有する化合物を指す。イソシアネート組成物中のポリイソシアネートは、2.0以上、2.1以上、2.2以上、又は更には2.3以上、そして同時に、4.0以下、3.8以下、3.5以下、3.2以下、3.0以下、2.8以下、又は更には2.7以下の平均イソシアネート官能価を有し得る。
【0014】
本発明のイソシアネート組成物は、1つ以上のモノマーポリイソシアネートを含み得る。好適なモノマージイソシアネートの例としては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、テトラメチレン-1,4-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサヒドロトリレンジイソシアネート、1-メトキシフェニル-2,4-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジフェニルジイソシアネート、及び3,3’-ジメチルジフェニルプロパン-4,4’-ジイソシアネート、これらの異性体、又はこれらの混合物が挙げられる。好ましいモノマージイソシアネートは、MDIである。
【0015】
本発明のイソシアネート組成物は、1つ以上のイソシアネート末端プレポリマーを含み得る。イソシアネート末端プレポリマーは、1つ以上のポリオールと化学量論的に過剰の1つ以上のポリイソシアネートとの反応によって調製される任意のプレポリマーであり得る。イソシアネート末端プレポリマーは、ポリエーテル骨格及びイソシアネート部分を含み得る。イソシアネート末端プレポリマーは、イソシアネート末端プレポリマーの総重量に基づいて、5重量%以上、6重量%以上、8重量%以上、又は更には10重量%以上、そして同時に30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、又は更には15重量%以下のイソシアネート含有量を有し得る。本明細書におけるイソシアネート(NCO)含有量は、ASTM D5155-19に従って測定する。イソシアネート末端プレポリマーを調製するために使用されるイソシアネートとしては、上述のモノマージイソシアネート、それらの異性体、それらのポリマー誘導体、又はそれらの混合物が挙げられる。好ましいイソシアネートは、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、そのポリマー誘導体、又はこれらの混合物である。イソシアネート末端プレポリマーを調製するために使用されるMDIは、4,4’-、2,4’-、若しくは2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、又はこれらの混合物であり得る。2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートと4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物を使用してもよい。イソシアネート末端プレポリマーを調製するために使用されるポリオールは、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブテンジオール、1,4-ブチンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチル-グリコール、ビス(ヒドロキシ-メチル)シクロヘキサン、例えば、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、2-メチルプロパン-1,3-ジオール、メチルペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレングリコール、又はこれらの混合物を含む、当技術分野で公知の任意のポリオールであり得る。好ましいポリオールは、上記ポリオール組成物の章に記載したポリエーテルポリオールである。
【0016】
本発明のイソシアネート組成物はまた、上記のモノマージイソシアネートのポリマー誘導体、例えば、ポリマーメチレンジフェニルジイソシアネート(「ポリマーMDI」)を含み得る。ポリマーMDIは、ジフェニルメタンジイソシアネートとポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネートとの混合物であり得る。本発明において有用なポリマーMDIは、1分子当たり2.5~3.5個のイソシアネート基を含有し、130~150又は132~140のイソシアネート当量を有し得る。好適な市販のポリマーMDI生成物としては、例えば、いずれもThe Dow Chemical Companyから入手可能なPAPI(商標)27及びPAPI32ポリマーMDI(PAPIは、The Dow Chemical Companyの商標である)を挙げることができる。
【0017】
本発明において有用な熱伝導性充填剤組成物(C)は、3つの異なる熱伝導性充填剤:(c1)、(c2)、及び(c3)を含む。
【0018】
(c1)熱伝導性充填剤は、球状金属酸化物粒子である。球状粒子とは、0.8以上、例えば、0.81以上、0.82以上、0.85以上、0.86以上、0.88以上、0.89以上、0.9以上、0.91以上、0.92以上、0.93以上、0.94以上、又は0.95超~1.0、好ましくは0.9超のアスペクト比を有する粒子を指す。球状金属酸化物粒子は、望ましくは、酸化アルミニウム粒子、酸化マグネシウム粒子、酸化亜鉛粒子、及びこれらの混合物から選択される。好ましい球状金属酸化物は、酸化アルミニウム粒子、酸化マグネシウム粒子、又はこれらの混合物である。球状金属酸化物粒子(c1)は、任意選択で、例えば、以下に記載する表面処理された金属酸化物粒子(c2)を調製するために使用されるものを含むアルキルトリアルコキシシランで表面処理されてもよい。
【0019】
本発明において有用な球状金属酸化物粒子(c1)は、20μm以上の平均粒径を有する。本発明における「平均粒径」は、以下の実施例の章に記載する試験方法に従って測定したときのD50粒径を指す。球状金属酸化物粒子(c1)は、20μm以上、22μm以上、25μm以上、28μm以上、30μm以上、32μm以上、又は更には35μm以上、そして同時に、典型的には60μm以下、58μm以下、55μm以下、52μm以下、50μm以下、48μm以下、45μm以下、42μm以下、又は更には40μm以下の平均粒径(D50)を有する。球状金属酸化物粒子(c1)は、イソシアネート組成物の重量に基づいて、20重量%以上、22重量%以上、25重量%以上、28重量%以上、30重量%以上、32重量%以上、35重量%以上、38重量%以上、40重量%以上、42重量%以上、45重量%以上、48重量%以上、50重量%以上、52重量%以上、55重量%以上、又は更には58重量%以上の量、そして同時に、典型的には、90重量%以下、88重量%以下、85重量%以下、82重量%以下、80重量%以下、78重量%以下、75重量%以下、72重量%以下、70重量%以下、又は更には68重量%以下の量でイソシアネート組成物中に存在し得る。
【0020】
(c2)熱伝導性充填剤は、1つ以上のアルコキシシランで表面処理された金属酸化物粒子、すなわち、1つ以上のアルコキシシランによって表面処理された金属酸化物粒子である。芳香族イソシアネートと混合した後の表面処理された金属酸化物粒子(c2)は、赤外スペクトルにおける1232cm-1のバンド(錯体における-C=Oの吸光度)の2300cm-1のバンド(イソシアネートにおける遊離-NCO基の吸光度)に対するピーク高さ比が、未処理金属酸化物と同じイソシアネートとの混合物の赤外スペクトルにおけるそのようなピーク高さ比に対して少なくとも50%低下することによって示される通り、NCO-O-金属酸化物錯体などの、イソシアネートにおけるNCO基と金属酸化物の表面上の官能基との反応及び/又は相互作用から生じる錯体を、未処理金属酸化物と同じイソシアネートとを混合することによって形成される同じ錯体の濃度より少なくとも50%低い濃度で含有していてよい。ピーク高さ比は、以下の実施例の章に記載する試験方法によって求められる。
【0021】
本発明において有用な表面処理された金属酸化物粒子(c2)は、10μm以下、9μm以下、8μm以下、7μm以下、6μm以下、5μm以下、4μm以下、3μm以下、又は更には2.5μm以下、そして同時に、1μm超、又は典型的には1.1μm以上、1.2μm以上、1.3μm以上、1.4μm以上、1.5μm以上、1.6μm以上、1.7μm以上、1.8μm以上、1.9μm以上、又は更には2.0μm以上の平均粒径(D50)を有する。表面処理された金属酸化物粒子(c2)は、典型的には非球状である。非球状粒子は、0.8未満、例えば、0.7以下、0.6以下、0.5以下、又は更には0.4以下のアスペクト比を有する粒子を指す。
【0022】
表面処理された金属酸化物粒子(c2)を形成するのに有用なアルコキシシランは、金属酸化物(未処理)上の官能基(例えば、-OH基)と反応して、-M-O-Si-C-(式中、Mは、金属酸化物における金属である)などの共有結合を形成することができるものである。表面処理された金属酸化物を形成するのに有用なアルコキシシラン(すなわち、金属酸化物を処理するために使用されるアルコキシシラン)としては、アルキルトリアルコキシシラン、アルキルジアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルジアルコキシシラン、又はこれらの混合物、好ましくは、アルキルトリアルコキシシランを挙げることができる。アルコキシシランは、R1Si(OR2)3又はR1R3Si(OR2)2(式中、R1は、1~12個の炭素原子、1~8個の炭素原子、又は1~4個の炭素原子を有するアルキル又はアルキレン基であってよく、各R2は、独立して、メチル、エチル、又はこれらの組み合わせであり、R3は、1~12個の炭素原子、1~8個の炭素原子、又は1~4個の炭素原子を有するアルキル基であってよい)の一般式を有し得る。表面処理された金属酸化物粒子(c2)の調製に用いられるアルコキシシランの具体例としては、メチルトリメトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリス(メトキシエトキシ)シラン、ペンチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、及びオクチルトリメトキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、及びビニルメチルジメトキシシラン;又はそれらの混合物が挙げられる。表面処理された金属酸化物粒子(c2)は、表面処理された酸化アルミニウム粒子、表面処理された酸化亜鉛粒子、又はこれらの混合物であり得る。表面処理された金属酸化物粒子(c2)は、イソシアネート組成物の重量に基づいて、10重量%以上、12重量%以上、15重量%以上、17重量%以上、19重量%以上、又は更には20重量%以上、そして同時に、40重量%以下、38重量%以下、35重量%以下、32重量%以下、30重量%以下、28重量%以下、又は更には25重量%以下の量でイソシアネート組成物中に存在し得る。
【0023】
(c3)熱伝導性充填剤は、以下の2種の熱伝導性充填剤のうちの1つ又は1つより多い組み合わせから選択される1つ以上の追加の熱伝導性充填剤である:(c3-a)1μm以下の平均粒径を有する金属酸化物粒子、及び(c3-b)金属酸化物粒子ではない(すなわち、金属酸化物粒子以外の)40W/mK以上の熱伝導率を有する熱伝導性充填剤。金属酸化物粒子(c3-a)は、1μm以下、0.9μm以下、0.8μm以下、0.7μm以下、0.6μm以下、0.5μm以下、0.4μm以下、0.3μm以下、又は更には0.25μm以下であると同時に、典型的には0.1μm以上、0.11μm以上、0.12μm以上、0.13μm以上、0.14μm以上、又は更には0.15μm以上の平均粒径(D50)を有する。熱伝導性充填剤(c3-b)は、金属窒化物粒子、非金属窒化物粒子、又はこれらの混合物から選択される粒子のうちの任意の1種又は1種より多い任意の組み合わせを含み得る。熱伝導性充填剤(c3-b)は、40W/mK以上、41W/mK以上、42W/mK以上、43W/mK以上、44W/mK以上、45W/mK以上、そして同時に、典型的には300W/mK以下、250W/mK以下、240W/mK以下、230W/mK以下、220W/mK以下、210W/mK以下、200W/mK以下、80W/mK以下、79W/mK以下、78W/mK以下、75W/mK以下、72W/mK以下、又は更には70W/mK以下の熱伝導性率を有する。好ましくは、熱伝導性充填剤(c3-b)の熱伝導率は、80W/mK未満である。熱伝導率は、以下の実施例の章に記載する試験法に従って測定することができる。熱伝導性充填剤(c3-b)は、1μm以上、2μm以上、3μm以上、4μm以上、5μm以上、6μm以上、7μm以上、8μm以上、9μm以上、又は更には10μm以上であると同時に、典型的には50μm以下、48μm以下、45μm以下、42μm以下、40μm以下、38μm以下、35μm以下、32μm以下、又は更には30μm以下の平均粒径(D50)を有し得る。追加の熱伝導性充填剤(c3)は、窒化アルミニウム(AlN)粒子、酸化亜鉛(ZnO)粒子、及び窒化ホウ素(BN)粒子から選択される粒子のうちの任意の1種又は1種より多い任意の組み合わせを含み得る。好ましい追加の熱伝導性充填剤(c3)は、酸化亜鉛粒子、窒化ホウ素粒子、又はこれらの混合物である。
【0024】
追加の熱伝導性充填剤(c3)は、イソシアネート組成物の重量に基づいて、1.5重量%以上、1.6重量%以上、1.7重量%以上、1.75重量%以上、2重量%以上、3重量%以上、4重量%以上、5重量%以上、5.5重量%以上、5.8重量%以上、6重量%以上、6.2重量%以上、6.5重量%以上、6.8重量%以上、又は更には7重量%以上の量でイソシアネート組成物中に存在し得、同時に、典型的には12重量%以下、11.5重量%以下、11重量%以下、10.5重量%以下、10重量%以下、9重量%以下、又は更には8重量%以下の量で存在する。例えば、酸化亜鉛粒子は、イソシアネート組成物の重量に基づいて、ゼロ以上、5.5重量%以上、5.8重量%以上、6重量%以上、6.2重量%以上、6.5重量%以上、6.8重量%以上、又は更には7重量%以上の量で存在し得、同時に、典型的には12重量%以下、11.5重量%以下、11重量%以下、10.5重量%以下、又は更には10重量%以下の量で存在する。窒化ホウ素粒子は、イソシアネート組成物の重量に基づいて、ゼロ以上、1.5重量%以上、1.6重量%以上、1.65重量%以上、1.7重量%以上、1.75重量%以上、1.8重量%以上、1.85重量%以上、1.9重量%以上、1.95重量%以上の量で存在し得、同時に、典型的には4重量%以下、3.5重量%以下、3.0重量%以下、2.5重量%以下、2.4重量%以下、2.2重量%以下、2.1重量%以下、又は更には2.0重量%以下の量で存在する。
【0025】
本発明において有用なイソシアネート組成物は、(c1)、(c2)、及び(c3)とは異なる熱伝導性充填剤(c4)を更に含んでいてもよい。熱伝導性充填剤(c4)は、1μm超~20μm未満、例えば、18μm以下、15μm以下、12μm以下、10μm以下、9μm以下、8μm以下、7μm以下、6μm以下、5μm以下、4μm以下、3μm以下、又は更には2.5μm以下、そして同時に1.0μm超、又は典型的には1.1μm以上、1.2μm以上、1.3μm以上、1.4μm以上、1.5μm以上、1.6μm以上、又は更には1.7μm以上の平均粒径(D50)を有する未処理の金属酸化物粒子である。「未処理」とは、充填剤が表面処理剤を含まないことを意味する。好ましくは、未処理の金属酸化物粒子(c4)は、10μm未満の平均粒径を有する。未処理の金属酸化物粒子(c4)は、球状粒子、非球状粒子、又はこれらの組み合わせであってよい。好ましくは、未処理の金属酸化物粒子(c4)は、未処理の酸化アルミニウム粒子であり、より好ましくは、非球状で未処理の酸化アルミニウム粒子である。イソシアネート組成物は、イソシアネート組成物の重量に基づいて、ゼロ~4重量%、例えば、3.8重量%以下、3.5重量%以下、3.2重量%以下、3重量%以下、2.5重量%以下、2重量%以下、1.5重量%以下、1重量%以下、又は更には0.5重量%以下の量で未処理の金属酸化物粒子(c4)を含み得る。好ましくは、イソシアネート組成物中の熱伝導性充填剤は、(c1)、(c2)、及び(c3)からなる。
【0026】
イソシアネート組成物中の熱伝導性充填剤の総濃度は、イソシアネート組成物の総重量に基づいて、87重量%超、例えば、87.5重量%以上、88重量%以上、88.5重量%以上、又は更には89重量%以上、そして同時に92重量%以下、91.5重量%以下、91重量%以下、90.5重量%以下、90重量%以下、又は更には89.5重量%以下であり得る。イソシアネート組成物は、特にイソシアネート組成物の87%超の総量の熱伝導性充填剤を含む場合、窒素雰囲気下50℃で24時間保管した後の粘度変動が50%以下又は45%以下であることによって示されるように、保管安定性である。イソシアネート組成物の赤外スペクトルは、0.17以下、0.16以下、0.15以下、0.14以下、0.13以下、又は更には0.12以下の、1232cm-1におけるバンドの2300cm-1におけるバンドに対するピーク高さ比を示し得る。ピーク高さ比を求めるためのバンドは、上記表面処理された金属酸化物粒子(c2)の章で定義した通りである。粘度変動及びピーク高さ比は、以下の実施例の章に記載する試験方法によって求められる。
【0027】
本発明の組成物は、ポリオール組成物を更に含む2成分硬化性組成物であってもよい。2成分硬化性組成物は、成分A(A部又はA側とも呼ばれる)としてのポリオール組成物と、成分B(B部又はB側とも呼ばれる)としてのイソシアネート組成物とを含む。本発明において有用なポリオール組成物は、1つ以上のポリエーテルポリオールを含む。ポリオール組成物中のポリエーテルポリオールは、2.0超(>2.0)の平均官能価を有し得る。平均官能価は、1分子当たりのヒドロキシル基の平均数、すなわち、OH基の総モル数をポリエーテルポリオールの総モル数で除したものを指す。ポリエーテルポリオールは、2.1以上、2.2以上、2.3以上、2.4以上、又は更には2.5以上、そして同時に4.0以下、3.9以下、3.8以下、3.7以下、3.6以下、3.5以下、3.4以下、3.2以下、3.1以下、3.0以下、2.9以下、2.8以下、又は更には2.7以下の平均官能価を有し得る。
【0028】
本発明において有用なポリエーテルポリオールは、ポリエーテルポリオールの骨格に1つ以上のアルキレンオキシド単位を含み得る。アルキレンオキシド単位は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、又はこれらの組み合わせであり得る。ポリエーテルポリオールは、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシエチレンポリオール、プロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマーポリオール、エチレンオキシドでキャッピングされたポリエーテルポリオール、又はこれらの混合物であり得る。ポリエーテルポリオールは、例えば、水、有機ジカルボン酸、例えば、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、テレフタル酸;又は多価アルコール(二価~五価アルコール又はジアルキレングリコールなど)、例えば、エタンジオール、1,2-及び1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、並びにスクロース、若しくはこれらのブレンド;第三級アミンもまた含有していてよい直鎖状及び環状アミン化合物、例えば、エタノールジアミン、トリエタノールジアミン、及びトルエンジアミンの種々の異性体、メチルジフェニルアミン、アミノエチルピペラジン、エチレンジアミン、N-メチル-1,2-エタンジアミン、N-メチル-1,3-プロパンジアミン、N,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N-ジメチルエタノールアミン、ジエチレントリアミン、ビス-3-アミノプロピルメチルアミン、アニリン、アミノエチルエタノールアミン、3,3-ジアミノ-N-メチルプロピルアミン、N,N-ジメチルジプロピレントリアミン、アミノプロピルイミダゾール、並びにこれらの混合物;あるいはこれらのうちの少なくとも2つの組み合わせで開始され得る。エチレンオキシドでキャッピングされたポリエーテルポリオールの調製は、当該技術分野において周知であり、一般に、ヒドロキシル又はアミン含有開始剤を使用してプロピレンオキシドを重合させ、続いて、エチレンオキシドでキャッピングすることを含む。
【0029】
本発明において有用なポリエーテルポリオールは、ASTM D4274-16に従って、サンプル1グラム当たり水酸化カリウム5~500ミリグラム(mg KOH/g)又は50~400mg KOH/gの平均ヒドロキシル価を有し得る。ポリエーテルポリオールは、140以上、200以上、300以上、400以上、又は更には500以上、そして同時に、8,000以下、4,000以下、3,000以下、2,000以下、又は更には1,000以下の平均当量を有し得る。当量は、反応部位あたりのポリオールの重量である。当量は、56000/(OH価(mg KOH/g))によって計算される。
【0030】
本発明において有用なポリエーテルポリオールは、グリセロールプロポキシル化ポリエーテルポリオール、プロピレングリコール開始ホモポリマーポリオール、又はこれらの混合物を含み得る。例としては、VORANOL(商標)CP450ポリオール(VORANOLは、The Dow Chemical Companyの商標である)及びVORANOL 1000LMポリオールが挙げられ、いずれもThe Dow Chemical Companyから入手可能である。
【0031】
本発明において有用なポリオール組成物は、ポリオール組成物中のポリオールの総重量に基づいて、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、45重量%以上、又は更には50重量%以上、そして同時に100重量%以下、90重量%以下、85重量%以下、80重量%以下、75重量%以下、70重量%以下、65重量%以下、又は更には60重量%以下の量のポリエーテルポリオールを含み得る。
【0032】
本発明において有用なポリオール組成物は、1つ以上のポリエステルポリオールを含み得る。ポリエステルポリオールは、芳香族ポリエステルポリオールであり得る。ポリエステルポリオールは、ポリカルボン酸又はその無水物と多価アルコールとの反応生成物であり得る。ポリカルボン酸又は無水物は、脂肪族、脂環式、芳香族、及び/又は複素環式であり得る。好適なポリカルボン酸及びその無水物の例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメル酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、グルタコン酸、α-ヒドロムコン酸、β-ヒドロムコン酸、α-ブチル-α-エチル-グルタル酸、α,β-ジエチルコハク酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘミメリト酸、及び1,4-シクロヘキサン-ジカルボン酸;これらの無水物、例えば無水フタル酸;又はそれらの混合物が含まれ得る。多価アルコールは、脂肪族又は芳香族であり得る。好適な多価アルコールの例としては、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、1,7-ヘプタンジオール、グリセロール、1,1,1-トリメチロールプロパン、1,1,1-トリメチロールエタン、ヘキサン-1,2,6-トリオール、α-メチルグルコシド、ペンタエリスリトール、キニトール、マンニトール、ソルビトール、スクロース、メチルグリコシド、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、又はこれらのブレンドが挙げられる。また、ビスフェノールA、ビス(4,4’-ヒドロキシフェニル)スルフィド、及びビス-(4,4’-ヒドロキシフェニル)スルホンとして一般的に既知の2,2-(4,4’-ヒドロキシフェニル)プロパンなどのフェノールに由来する化合物も含まれる。ポリエステルポリオールはまた、ハイブリッドポリエステルポリオール、例えば、ポリエステルポリオールとプロピレンオキシドなどのアルコキシル化剤との反応生成物を含んでいてもよい。好適なハイブリッドポリエステルポリオールの例としては、無水フタル酸と、ジエチレングリコールなどの多価アルコールと、プロピレンオキシドとの反応生成物が挙げられる。
【0033】
本発明において有用なポリオール組成物は、ポリオール組成物中のポリオールの総重量に基づいて、ゼロ以上、0.1重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、1.5重量%以上、2重量%以上、3重量%以上、4重量%以上、5重量%以上、又は更には6重量%以上、そして同時に、20重量%以下、18重量%以下、15重量%以下、12重量%以下、10重量%以下、又は更には8重量%以下の量のポリエステルポリオールを含み得る。
【0034】
本発明において有用なポリオール組成物は、例えばヒマシ油を含む、1つ以上の天然植物油ポリオール、その誘導体、又はこれらの混合物を含み得る。これらのポリオールは、ポリオール組成物中のポリオールの総重量に基づいて、ゼロ以上、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、又は更には20重量%以上、そして同時に、50重量%以下、45重量%以下、40重量%以下、35重量%以下、又は更には30重量%以下の量で存在し得る。
【0035】
本発明において有用なポリオール組成物は、2つのイソシアネート反応性基及び炭化水素骨格を有する1つ以上の鎖延長剤を含み得る。鎖延長剤は、典型的には、200グラム/モル(g/mol)以下、例えば、80~120g/molの分子量を有する。本明細書における「イソシアネート反応性基」は、-OH及び-SHなどの任意の活性水素含有部分を含む。骨格は、1つ以上のヘテロ原子を更に含み得る。骨格中のヘテロ原子は、酸素、硫黄、又はこれらの混合物であり得る。鎖延長剤としては、ジオール、特に9個以下の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖ジオールを挙げることができる。好適な鎖延長剤の例としては、エタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、又はこれらの混合物が挙げられる。鎖延長剤は、ポリオール組成物中のポリオールの総重量に基づいて、ゼロ以上、1重量%以上、2重量%以上、3重量%以上、又は更には5重量%以上、そして同時に20重量%以下、18重量%以下、15重量%以下、12重量%以下、又は更には10%以下の量で存在し得る。
【0036】
本発明において有用なポリオール組成物は、ポリアミン1つ当たり2つ以上のアミン、ポリアミン1つ当たり2~4つのアミン、又はポリアミン1つ当たり2~3つのアミンを有する1つ以上のポリオキシアルキレンポリアミン、例えば、Huntsman Corporationから入手可能なJEFFAMINEアミン末端ポリエーテルを含み得る。ポリオキシアルキレンポリアミンは、熱伝導性充填剤を除くポリオール組成物の総重量に基づいて、ゼロ以上、5重量%以上、又は更には10重量%以上、そして同時に40重量%以下、30重量%以下、又は更には20重量%以下の量で存在し得る。
【0037】
本発明において有用なポリオール組成物は、以下の熱伝導性充填剤:球状金属酸化物粒子(c1)、表面処理された金属酸化物粒子(c2)、追加の熱伝導性充填剤(c3)、及び未処理の金属酸化物粒子(c4)のうちのいずれか1つ又は任意の組み合わせを含み得る。ポリオール組成物は、(c1)、(c2)及び(c3)、並びに任意選択で(c4)を含み得る。あるいは、ポリオール組成物は、非球状で未処理の金属酸化物粒子などの(c1)、(c3)及び(c4)、並びに任意選択で(c2)を含み得る。ポリオール組成物中の熱伝導性充填剤は、イソシアネート組成物中の熱伝導性充填剤と同じであってもよく、異なっていてもよい。ポリオール組成物は、ポリオール組成物の重量に基づいて、ゼロ以上、20重量%以上、22重量%以上、25重量%以上、28重量%以上、30重量%以上、32重量%以上、35重量%以上、38重量%以上、40重量%以上、42重量%以上、45重量%以上、48重量%以上、50重量%以上、52重量%以上、55重量%以上、又は更に58重量%以上、そして同時に、90重量%以下、88重量%以下、85重量%以下、82重量%以下、80重量%以下、78重量%以下、75重量%以下、72重量%以下、70重量%以下、又は更に68重量%以下の量の球状金属酸化物粒子(c1)を含み得る。ポリオール組成物は、ポリオール組成物の重量に基づいて、ゼロ以上、5重量%以上、10重量%以上、12重量%以上、15重量%以上、17重量%以上、19重量%以上、又は更には20重量%以上、そして同時に40重量%以下、38重量%以下、35重量%以下、32重量%以下、30重量%以下、28重量%以下、又は更には25重量%以下の量の表面処理された金属酸化物粒子(c2)を含み得る。ポリオール組成物は、ポリオール組成物の重量に基づいて、1.5重量%以上、1.6重量%以上、1.7重量%以上、1.75重量%以上、2重量%以上、3重量%以上、4重量%以上、5重量%以上、5.5重量%以上、5.8重量%以上、6重量%以上、6.2重量%以上、6.5重量%以上、6.8重量%以上、又は更には7重量%以下の量の追加の熱伝導充填剤(c3)を含み得、同時に、典型的には12重量%以下、11.5重量%以下、11重量%以下、10.5重量%以下、10重量%以下、9重量%以下、又は更には8重量%以下の量で存在する。ポリオール組成物は、追加の熱伝導性充填剤(c3)として、ポリオール組成物の重量に基づいて、ゼロ以上、5.5重量%以上、5.8重量%以上、6重量%以上、6.2重量%以上、6.5重量%以上、6.8重量%以上、又は更には7重量%以上、そして同時に12重量%以下、11.5重量%以下、11重量%以下、10.5重量%以下、又は更には10重量%以下の量の酸化亜鉛粒子を含み得る。ポリオール組成物は、追加の熱伝導性充填剤(c3)として、ポリオール組成物の重量に基づいて、ゼロ以上、1.5重量%以上、1.6重量%以上、1.65重量%以上、1.7重量%以上、1.75重量%以上、1.8重量%以上、1.85重量%以上、1.9重量%以上、1.95重量%以上、そして同時に、4重量%以下、3.5重量%以下、3.0重量%以下、2.5重量%以下、2.4重量%以下、2.2重量%以下、2.1重量%以下、又は更には2.0重量%以下の量の窒化ホウ素粒子を含み得る。ポリオール組成物は、ポリオール組成物の重量に基づいて、ゼロ以上、5重量%以上、10重量%以上、12重量%以上、15重量%以上、又は更には20重量%以上、そして同時に40重量%以下、38重量%以下、35重量%以下、32重量%以下、又は更には30重量%以下の量の未処理の金属酸化物粒子(c4)を含み得る。
【0038】
本発明の2成分硬化性組成物は、2成分硬化性組成物の総重量に基づいて、87重量%超、例えば、87.5重量%以上、88重量%以上、88.5重量%以上、又は更には89重量%以上、そして同時に92重量%以下、91.5重量%以下、91重量%以下、90.5重量%以下、90重量%以下、又は更には89.5重量%以下の総量の熱伝導性充填剤を含む。例えば、2成分硬化性組成物は、2成分硬化性組成物の総重量に基づいて、20重量%以上、22重量%以上、25重量%以上、28重量%以上、30重量%以上、32重量%以上、35重量%以上、38重量%以上、40重量%以上、42重量%以上、45重量%以上、48重量%以上、50重量%以上、52重量%以上、55重量%以上、又は更に58重量%以上、そして同時に、90重量%以下、88重量%以下、85重量%以下、82重量%以下、80重量%以下、78重量%以下、75重量%以下、72重量%以下、70重量%以下、又は更に68重量%以下の総量の球状金属酸化物粒子(c1)を含み得る。2成分硬化性組成物は、2成分硬化性組成物の総重量に基づいて、10重量%以上、12重量%以上、15重量%以上、17重量%以上、19重量%以上、又は更には20重量%以上、そして同時に40重量%以下、38重量%以下、35重量%以下、32重量%以下、30重量%以下、28重量%以下、又は更には25重量%以下の総量の表面処理された金属酸化物粒子(c2)を含み得る。
【0039】
追加の熱伝導性充填剤(c3)は、上で定義したような所望の粘度及び満足な熱伝導率を提供するのに十分な量、例えば、2成分硬化性組成物の総重量に基づいて、1.5重量%以上、1.6重量%以上、1.7重量%以上、1.75重量%以上、2重量%以上、3重量%以上、4重量%以上、5重量%以上、5.5重量%以上、5.8重量%以上、6重量%以上、6.2重量%以上、6.5重量%以上、6.8重量%以上、又は更には7重量%以上の総量で、同時に、典型的には12重量%以下、11.5重量%以下、11重量%以下、10.5重量%以下、10重量%以下、9重量%以下、又は更には8重量%以下の総量で2成分硬化性組成物中に存在し得る。追加の熱伝導性充填剤(c3)が酸化亜鉛粒子を含む場合、2成分硬化性組成物中の酸化亜鉛粒子の総濃度は、2成分硬化性組成物の総重量に基づいて、5.5重量%以上、5.8重量%以上、6重量%以上、6.2重量%以上、6.5重量%以上、6.8重量%以上、又は更には7重量%以上、そして同時に12重量%以下、11.5重量%以下、11重量%以下、10.5重量%以下、又は更には10重量%以下であり得る。追加の熱伝導性充填剤(c3)が窒化ホウ素粒子を含む場合、2成分硬化性組成物中の窒化ホウ素粒子の総濃度は、2成分硬化性組成物の総重量に基づいて、1.5重量%以上、例えば、1.6重量%以上、1.65重量%以上、1.7重量%以上、1.75重量%以上、1.8重量%以上、1.85重量%以上、1.9重量%以上、1.95重量%以上、そして同時に、4重量%以下、3.5重量%以下、3.0重量%以下、2.5重量%以下、2.4重量%以下、2.2重量%以下、2.1重量%以下、又は2.0重量%以下であり得る。
【0040】
本発明の2成分硬化性組成物は、2成分硬化性組成物の重量に基づいて、ゼロ以上、5重量%以上、10重量%以上、12重量%以上、15重量%以上、又は更には20重量%以上、そして同時に40重量%以下、38重量%以下、35重量%以下、32重量%以下、又は更には30重量%以下の総量の未処理の金属酸化物粒子(c4)を含み得る。
【0041】
2成分硬化性組成物における、ポリオール組成物中の全熱伝導性充填剤の、イソシアネート組成物中の全熱伝導性充填剤に対する重量比は、ゼロ以上であってもよく、又は0.90~1.20の範囲、例えば、0.91以上、0.92以上、0.93以上、0.94以上、0.95以上、0.96以上、0.97以上、0.98以上、0.99以上、若しくは更には1.0以上、そして同時に、1.18以下、1.15以下、1.12以下、1.10以下、1.08以下、1.05以下、1.04以下、1.03以下、1.02以下、若しくは更には1.01以下であってもよい。硬化性組成物の2つの成分中の熱伝導性充填剤のこのような重量比により、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との体積比を0.95~1.05の範囲内で調製することが可能になり、2つの成分、つまりポリオール組成物及びイソシアネート組成物を混合するために従来の加工設備を使用することによって硬化性組成物を調製することが可能になる。したがって、硬化性組成物の各成分を調製するための混合装置は、従来の2成分硬化性ポリウレタン組成物が必要とする他の混合比に到達させるための特別な機器設計を伴うことなく、同じサイズであり得る。ポリオール組成物中の全充填剤の、イソシアネート組成物中の全充填剤に対する重量比は、上述の重量比、すなわち、硬化性組成物の2つの成分中の全熱伝導性充填剤の重量比と同じであり得る。
【0042】
驚くべきことに、2成分硬化性組成物における又はポリオール組成物及びイソシアネート組成物のそれぞれにおける20μm以上の平均粒径を有する熱伝導性充填剤の10μm以下の平均粒径を有する熱伝導性充填剤に対する重量比(「大きな充填剤の小さな充填剤に対する重量比」)が特定の範囲内であると、熱伝導率特性を損なうことなく、2成分硬化性組成物の流動性を著しく改善できることが見出された。例えば、硬化性組成物における又はポリオール組成物及びイソシアネート組成物のそれぞれにおける大きな(20マイクロメートル超)充填剤の小さな(10マイクロメートル以下)充填剤に対する重量比は、2.0以上、例えば、2.05以上、2.1以上、2.2以上、2.3以上、2.4以上、又は更には2.45以上であり、そして同時に、4.0以下、3.9以下、3.8以下、3.7以下、又は更には3.6以下であり得る。熱伝導性充填剤組成物(C)における球状金属酸化物粒子(c1)の表面処理された金属酸化物粒子(c2)に対する重量比は、大きな充填剤の小さな充填剤に対する重量比と同じ範囲、例えば、2.0~4.0の範囲であり得る。本明細書において著しく改善された流動性とは、以下の実施例の章に記載される試験方法に従って硬化性組成物の2つの成分を混合した後30分以内に測定したときに、室温で150Pa.s以下、例えば、室温で140Pa.s以下、130Pa.s以下、120Pa.s以下、110Pa.s以下、100Pa.s以下、90Pa.s以下、又は更には80Pa.s以下である粘度を指す。
【0043】
本発明の2成分硬化性組成物は、硬化性組成物の硬化強度を損なうことなく粘度を調整するのに有用な1つ以上のオルガノシランを含み得る。2成分硬化性組成物の硬化強度は、以下の実施例の章に記載される試験方法に従って求めたときに、0.5メガパスカル(MPa)以上、0.6MPa以上、又は更には0.7MPa以上であり得る。オルガノシランは、ポリオール組成物及び/又はイソシアネート組成物中に存在し得る。オルガノシランは、式RSi(OR2)3又はRR3Si(OR2)2(式中、Rは、有機基、好ましくは1~12個の炭素原子、1~8個の炭素原子、又は1~4個の炭素原子を有するアルキル基であって、任意選択で、例えば、メルカプト、エポキシ、アクリル、及びメタクリルなどの官能性有機基を含有し得るアルキル基;又はMe3SiO(SiMe2O)n--(式中、nは1~10又は1~4の整数であってよい)の構造を有するシリル末端ジメチルシロキサン基であってよく;各R2は、独立して、メチル、エチル、又はこれらの組み合わせであり、R3は、1~12個の炭素原子、1~8個の炭素原子、又は1~4個の炭素原子を有するアルキル基であってよい)を有するシランを含み得る。オルガノシランは、アルキルトリメトキシシランなどの1つ以上のアルキルトリアルコキシシラン、エポキシ官能性アルコキシシラン、又はこれらの混合物を含み得る。
【0044】
本発明において有用な好適なオルガノシランとしては、例えば、n-デシルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、及びメチルトリス(メトキシエトキシ)シランなどのアルキルトリアルコキシシラン;3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、及び3-メタクリルオキシプロピルジメチルメトキシシランなどの(メタ)アクリル官能性アルコキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、4-オキシラニルブチイトリルネトキシシラン(oxiranylbutyitrirnethoxy silane)、4-オキシラニルブチイトリエトキシシラン(oxiranylbutyitriethoxysilane)、4-オキシラニイブチルメチルジメトキシシラン(oxiranyibutylmethyldimethoxy silane)、8-オキシラニイオクチイトリメトキシシラン(oxiranyioctyitrimethoxysilane)、8-オキシラニルオクチルトリエトキシシラン、及び8-オキシラニルオクチルメチイジメトキシシラン(oxiranyloctylmethyidimethoxy silane)などのエポキシ官能性アルコキシシラン;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン及び3-メルカプトプロピルメチイジメトキシシラン(mercaptopropylmethyidimethoxy silane)等のメルカプト官能性アルコキシシラン;又はそれらの混合物が含まれ得る。好ましいオルガノシランとしては、n-デシルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0045】
本発明の2成分硬化性組成物は、2成分硬化性組成物の総重量に基づいて、ゼロ~20重量%、例えば、5重量%以上、6.5重量%以上、7重量%以上、8重量%以上、9重量%以上、10重量%以上、11重量%以上、又は更には12重量%以上、そして同時に、20重量%以下、19重量%以下、18重量%以下、17重量%以下、16重量%以下、15重量%以下、又は更には14重量%以下の量のオルガノシランを含み得る。
【0046】
本発明の2成分硬化性組成物は、イソシアネート官能基のイソシアネート反応性基との反応のための1つ以上の触媒を含み得る。触媒は、ポリオール組成物、イソシアネート組成物、又はその両方に存在し得る。触媒は、有機スズ化合物、金属アルカノエート、第三級アミン、及びジアザビシクロ化合物から選択されるいずれか1つ又は1つより多い任意の組み合わせであり得る。好適な有機スズ触媒の例としては、ジブチルスズオキシドなどのアルキルスズオキシド、オクタン酸第一スズなどのアルカン酸第一スズ、ジアルキルスズカルボキシレート、及びスズメルカプチドが挙げられる。好ましい有機スズ触媒は、ジアルキルスズジカルボキシレート又はジアルキルスズジメルカプチドである。好適な金属アルカノエートの例としては、オクタン酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、又はこれらの混合物が挙げられる。好適な第三級アミンの例としては、ジモルホリノジアルキルエーテル、ジ((ジアルキルモルホリノ)アルキル)エーテル、例えば、(ジ-(2-(3,5-ジメチル-モルホリノ)エチル)エーテル)、ビス-(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、トリエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルピペラジン、4-メトキシエチルモルホリン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、又はこれらの混合物が挙げられる。触媒は、2成分硬化性組成物の総重量に基づいて、0.006重量%~5.0重量%、0.01重量%~2.0重量%、又は0.02重量%~1.0重量%の量で存在し得る。
【0047】
上記の成分に加えて、本発明の2成分硬化性組成物は、以下の添加剤:熱伝導性充填剤以外の充填剤、顔料、接着促進剤、可塑剤、紫外線安定剤などの安定剤、難燃剤、及び酸化防止剤のうちの1つ以上を更に含み得る。これらの添加剤は、2成分硬化性組成物の総重量に基づいて、ゼロ~10重量%、0.1重量%~5重量%、又は0.5重量%~1重量%の総量でポリオール組成物及び/又はイソシアネート組成物中に存在し得る。
【0048】
本発明において有用な2成分硬化性組成物は、室温での低粘度、例えば、室温で230Pa.s以下、210Pa.s以下、200Pa.s以下、190Pa.s以下、180Pa.s以下、170Pa.s以下、160Pa.s以下、150Pa.s以下、又は更には140Pa.s以下の粘度によって示されるように、良好な加工性を有する。好ましくは、2成分硬化性組成物は、室温で150Pa.s以下の粘度を有する。本明細書における粘度は、実施例の章に記載される試験方法に従って、硬化性組成物のポリオール成分とポリイソシアネート成分(成分A及び成分B)とを混合した後30分以内に測定される。2成分硬化性組成物は、熱伝導性であり、硬化すると、高い熱伝導率を有するポリウレタン材料(すなわち、硬化組成物)を形成する。本発明における「高い熱伝導率」とは、以下の実施例の章に記載の試験方法に従って測定したときに、熱伝導率が2.73W/mK以上、好ましくは3.0W/mK以上であることを意味する。
【0049】
本発明はまた、ポリイソシアネートを熱伝導性充填剤(C)と混合することを含む、本発明の組成物を調製するためのプロセスに関する。
【0050】
本発明はまた、ポリオール組成物をイソシアネート組成物及び任意選択で上記の成分と混合して硬化性組成物を形成することを含む、2成分硬化性組成物を調製するためのプロセスを提供する。ポリオール組成物及びイソシアネート組成物は、イソシアネート基のイソシアネート反応性基に対するモル比が0.95:1~1.1:1、0.96:1~1.05:1、又は1:1~1.02:1の範囲になり得るように組み合わせ得る。同時に、硬化性組成物におけるポリオール組成物の、イソシアネート組成物に対する体積比は、0.95:1~1.05:1、0.96:1~1.04:1、0.97:1~1.03:1、0.98:1~1.02:1、若しくは0.99:1~1.01:1の範囲内、又は1:1の比で制御され得る。そのような体積比(すなわち、一貫した混合比)は、従来の2成分ポリウレタン組成物のための既存の加工設備を使用して2成分硬化性組成物を調製できることを示す。ポリオール組成物中の全熱伝導性充填剤の、イソシアネート組成物中の全熱伝導性充填剤に対する重量比は、上記の範囲内、好ましくは0.95~1.05の範囲内であってよい。
【0051】
硬化性組成物の2つの成分は、互いに反応性であり、塗布時に接触するか又は混合されたときに接着特性を有し、硬化反応を経験し、2つの成分の反応生成物は、特定の基材を一緒に結合させることができる硬化生成物である。2成分硬化性組成物は、填隙剤又は電気自動車用接着剤として有用である。2成分硬化性組成物は、収納、支持、又は骨組用のプラスチック金属又はガラスと、液晶プロジェクター、液晶テレビ、液晶ディスプレイ、又は他の液晶デバイス等の液晶表示素子との間の空間を充填するために;収納、支持、又は骨組用のプラスチック又はガラスと蛍光表示管との間の充填材料として;及びパワーバッテリーセルと収納、支持、又は骨組用のプラスチック金属又はガラスとの間の充填材料として特に好適である。上記の高い熱伝導率によって、本発明において有用な硬化性組成物は、エネルギー貯蔵デバイスのアセンブリなど、電気自動車用途の填隙剤又は接着剤として使用するのに特に好適なものとなる。
【0052】
本発明はまた、第1の基材を第2の基材に結合させる方法を提供する。この方法は、(i)イソシアネート組成物をポリオール組成物と混合して2成分硬化性組成物を形成することと、(ii)2成分硬化性組成物を基材のうちの少なくとも1つの表面に塗布することと、(iii)2つの基材を、それらの間に硬化性組成物が存在する状態で接触させることと、(iv)硬化性組成物を硬化させることと、を含む。本発明において有用な2つの基材は、同じであってもよく、異なっていてもよい。2つの基材のうちの1つは、プラスチック、金属、アロイ、ガラス、又は複合材料であり得る。本発明の組成物を塗布する前に、基材の表面を表面処理してもよい。コロナ放電及び化学エッチングを含む、プラスチックなどの基材の表面上に存在する極性基の数を増加させる任意の既知の表面処理手段を使用してよい。一般に、2成分硬化性組成物は、大気水分の存在下、周囲温度(例えば、23~35℃)で塗布される。硬化後の硬化性組成物は、基材間に耐久性のある結合を形成する。硬化性組成物の硬化は、周囲温度又は高温(例えば、最高80℃)で行うことができる。硬化性組成物の硬化は、対流熱、赤外線照射、誘導加熱、マイクロ波加熱を適用することによって、及び/又は湿度チャンバを使用することなどによって大気中の水分量を高めることによって、更に加速させてもよい。
【実施例】
【0053】
次に、本発明のいくつかの実施形態を以下の実施例において説明するが、全ての部及び百分率は、特に指定しない限り、重量による。実施例では、以下の材料を使用する。
Denka Company Limitedから入手可能なDAM-40K球状アルミナ(Al2O3)充填剤は、40μmのD50粒径、0.9超のアスペクト比、及び30w/mkの熱伝導率を有する。
Denka Company Limitedから入手可能な、シランによって処理されたDAM-40K表面処理球状アルミナ充填剤は、40μmのD50粒径、0.9超のアスペクト比、及び30W/mkの熱伝導率を有する。
Huber Companyから入手可能なMARTOXID(商標)TM2320アルコキシシラン前処理アルミナ充填剤は、2μmのD50粒径、0.8未満のアスペクト比、及び30W/mKの熱伝導率を有する(MARTOXIDは、Martinswerk GmbHの商標である)。
Alteo Co.から入手可能なP662SBアルミナ充填剤は、1.7μmのD50粒径、0.8未満のアスペクト比、及び30W/mkの熱伝導率を有する。
ALCAN Co.から入手可能な酸化亜鉛(ZnO)充填剤は、0.2μmのD50粒径及び45W/mKの熱伝導率を有する。
Zibo Jonye Tech Ceramic Co.から入手可能なBN PW-30窒化ホウ素(BN)充填剤は、20μmのD50粒径及び70W/mKの熱伝導率を有する。
Fisher Aldrichから入手可能なヒマシ油は、油系ポリオールである。
Fisher Aldrichから入手可能な1,4-ブタンジオール(BDO)を連鎖延長剤として使用する。
Stephanから入手可能なSTEPANPOL(商標)PDP-70ハイブリッドポリオールは、エステル変性二官能性ポリエーテルポリオール(OH価:70mgKOH/g)である(STEPANPOLは、Stepan Companyの商標である)。
分子ふるい3Åは、Graceから入手可能である。
【0054】
以下の材料は全てThe Dow Chemical Companyから入手可能である。
VORANOL(商標)CP450ポリオールは、官能価3及びOH価:380mg KOH/gを有するグリセリンプロポキシル化多官能性ポリエーテルポリオールである。
VORANOL 1000LMポリオールは、2.0mmol/gのOH含有量を有する二官能性ポリエーテルポリオールである。
DOWSIL(商標)Z-6040シランは、グリシドキシプロピルトリメトキシシランである。
DOWSIL Z-6210シランは、n-デシルトリメトキシシランである。
VORANOL 1045Kイソシアネートプレポリマー、ポリエーテル-MDIプレポリマー(NCO含有量:10~12重量%、官能価:2)。
ISONATE(商標)50 O,P’Pure MDI(MDI-50)は、ジフェニルメタンジイソシアネートである。
PAPI(商標)27イソシアネートは、当量137g/mol及び官能価2.7を有するポリマーMDIである。
DOWSIL、ISONATE、及びPAPIは全てThe Dow Chemical Companyの商標である。
【0055】
実施例において、並びに本明細書に記載される特性及び特徴を求める際には、以下の標準的な分析機器及び方法を使用する。
【0056】
熱伝導度
ISO 22007-2に従って熱伝導率を求める。2成分ポリウレタン組成物を50℃のオーブンで24時間硬化させて、硬化サンプルを形成した。3.189mmのKaptonセンサーを備えたHot Disk 5465(熱出力:350mW、時間:5秒、変動補正可能、微調整された分析を使用、及び50~150プロット)によって、硬化サンプルの熱伝導率を測定した。各サンプルを3回評価し、熱伝導率の平均値を算出した。
【0057】
充填剤の平均粒径及びアスペクト比
1,500個の粒子の粒径を平均することにより、Beckman Coulter製のレーザー回折粒径分析機(モデルLS 13 320)を使用して充填剤の平均粒径、すなわちD50粒径、及びアスペクト比を求める。
【0058】
2成分硬化性組成物の粘度試験
試験2成分硬化性組成物の2つの成分(すなわち、A部及びB部)を、FlackTek Inc.によって提供されるSpeedMixer DAC 600.2 VACを使用して(真空(20キロパスカル)下にて2,000回転/分(rpm)で)30秒間混合した。混合後30分以内に、得られた混合物の粘度を測定した。0.6mmのギャップを有する25ミリメートル(mm)の平行プレートを使用するARES G2を使用して、サンプルの粘度を求める。フロースイープは0.01~10s-1で行った。室温で1s-1での粘度を記録した。
【0059】
硬化強度試験
試験2成分ポリウレタン組成物を室温で少なくとも72時間硬化させた。得られた硬化サンプルを1A型試験片に切断し、国際標準化機構ISO527規格(本文書の優先日時点で最新のもの)に従って引張強度を評価した。
【0060】
密度及び体積比の測定
国際標準化機構ISO2811規格(本文書の優先日時点で最新のもの)に従って、37ミリリットル(mL)標準密度カップ(EPK Co.によって供給されるPhysiTest 14001)を使用して試験製剤の密度を測定した。空の密度カップの重量をW1としてグラムで記録した。次いで、試験製剤をカップに充填し、充填された重量をW2としてグラムで記録した。密度(g/mL)は以下の通り計算される。
密度=(W2-W1)/37。
A部のB部に対する体積比は、以下の式によって測定される。
体積比(A/B)=B部の密度/A部の密度。
【0061】
イソシアネート組成物の粘度変動及び反射フーリエ変換赤外(FTIR)分光法
イソシアネートの重量に基づいて20重量%~50重量%の充填剤添加量(filler loading)で、スピードミキサーを使用して2,000rpmで2分間、充填剤をPAPI 27ポリマーMDIと十分に混合することによって、充填剤を含むイソシアネート組成物を調製した。得られたイソシアネート組成物の粘度を測定し、「粘度(t0)」として記録した。次いで、イソシアネート組成物を窒素でパージし、50℃のオーブンで24時間保管し、イソシアネート組成物の粘度を測定したとき、「粘度(t24)」として記録し、続いて、4,000rpmで30分間遠心分離して上部の液体を除去した。得られた沈降物を反射FTIR(Perkin Elmer Spectrum 100)を用いて測定して、IR吸収スペクトルを得た。IRスペクトルにおける1232cm-1での吸光度のピーク高さの2300cm-1での吸光度のピーク高さに対する比を計算した。粘度(t0)/粘度(t24)によって粘度変動を求めた。0.6mmのギャップを有する25ミリメートル(mm)の平行プレートを使用するARES G2を使用して、サンプルの粘度を求める。フロースイープは0.01~10s-1で行った。室温で1s-1での粘度を記録した。
【0062】
実施例(Ex)1~10及び比較(Comp)例1~3のポリウレタン組成物
樹脂混合物Aの調製:表1-1に列挙する樹脂混合物A中の全ての材料をバイアル(「バイアルA」)に添加し、SpeedMixer(Flektex Inc)を使用して2,000rpmで3分間混合して、樹脂混合物Aを得た。次いで、バイアルAを密封した。
【0063】
樹脂混合物Bの調製:表1-2に列挙する樹脂混合物B中の全ての材料を別のバイアル(「バイアルB」)に添加し、SpeedMixerを使用して2,000rpmで3分間混合して、樹脂混合物Bを得た。次いで、バイアルBを密封した。
【0064】
表2-1及び表2-2に示すポリウレタン組成に従って、A部の熱伝導性充填剤を樹脂混合物Aに添加し、SpeedMixerを使用して2,000rpmで5分間真空下で混合して、A部を得た。次いで、バイアルAを密封した。B部の熱伝導性充填剤を樹脂混合物Bに添加し、SpeedMixerを使用して2,000rpmで5分間真空下で混合して、B部を得た。次いで、バイアルBを密封した。得られたA部及びB部を室温まで冷却し、次いで、別のバイアルにおいてSpeedMixerを用いて2,000rpmで2分間真空下で混合し、ポリウレタン組成物を得て、次いで、これをバイアル中に密封した。得られたポリウレタン組成物を、上記の試験方法に従って熱伝導率及び硬化強度特性について評価し、結果を表2-1及び表2-2に示す。
【0065】
表2-1に示されるように、実施例1~10のポリウレタン組成物は全て、望ましいことに、2.73W/mK以上の熱伝導率を提供すると同時に、低粘度(≦230Pa・s)を有していた。実施例1~10のうち、実施例1~6及び8~9のポリウレタン組成物は、(c1)/(c2)の充填剤重量比が0.975である実施例7又はBNの含有量がより低い実施例10と比較して、高い熱伝導率(≧3.0W/mK)及び低粘度(室温で≦150Pa.s)の更に良好なバランスを示した。更に、実施例1~10のポリウレタン組成物はまた、0.95~1.05の範囲のA部/B部の体積比を有し、従来のポリウレタン加工設備を使用して取り扱うことができる。対照的に、表2-2に示されるように、(ポリウレタン組成物の総重量に基づいて)87重量%の総充填剤添加量を有する比較例1のポリウレタン組成物は、熱伝導率がより劣っていた。ZnO及びBNを含まない比較例2のポリウレタン組成物は、熱伝導率がより劣っていた。TM2320前処理Al2O3の代わりにP662SB未処理Al2O3を使用した比較例3のポリウレタン組成物は、望ましくないことに、高粘度を示した。
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
充填剤を芳香族ポリイソシアネート(pMDI)と混合することによって、様々な添加量の様々な充填剤を有するイソシアネート組成物を調製し、上述の試験方法に従って、50℃で24時間保管した後の粘度変動及びIRスペクトルにおけるピーク変化について評価した。結果を表3に示す。IRスペクトルにおける2300cm-1でのピーク高さは、遊離NCO基の量に対応する。IRスペクトルにおける1232cm-1でのピーク高さは、NCO基と充填剤とによって形成される錯体の量に対応する。沈降物のみをIRスペクトル分析に使用したので、ピーク高さ比(1232cm-1/2300cm-1)は、充填剤によって吸収されたイソシアネート残基(未反応NCO基)中の充填剤と反応したイソシアネート基の割合を表す。表3に示すように、芳香族ポリイソシアネートと、BN、前処理Al2O3、及び/又はZnOを含む充填剤とを含むイソシアネート組成物1~6は全て、未処理Al2O3を含むイソシアネート組成物7と比較して、IRピーク比(1232cm-1/2300cm-1)(例えば、0.12以下)がより小さいことによって示される通り、より少ない粘度変動及び充填剤とポリイソシアネートとの間のより少ない反応を示した。
【0071】