IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ メタウォーター株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-水処理システム、制御装置及び制御方法 図1
  • 特許-水処理システム、制御装置及び制御方法 図2
  • 特許-水処理システム、制御装置及び制御方法 図3
  • 特許-水処理システム、制御装置及び制御方法 図4
  • 特許-水処理システム、制御装置及び制御方法 図5
  • 特許-水処理システム、制御装置及び制御方法 図6
  • 特許-水処理システム、制御装置及び制御方法 図7
  • 特許-水処理システム、制御装置及び制御方法 図8
  • 特許-水処理システム、制御装置及び制御方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】水処理システム、制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/12 20230101AFI20241112BHJP
【FI】
C02F3/12 J
C02F3/12 M
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023042406
(22)【出願日】2023-03-16
(62)【分割の表示】P 2021130238の分割
【原出願日】2017-03-30
(65)【公開番号】P2023063543
(43)【公開日】2023-05-09
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】中 大輔
(72)【発明者】
【氏名】坪井 伸貴
(72)【発明者】
【氏名】井上 将志
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-129088(JP,A)
【文献】特開昭58-027692(JP,A)
【文献】特開2015-182036(JP,A)
【文献】特開昭61-157397(JP,A)
【文献】特開昭60-125297(JP,A)
【文献】特開昭61-129092(JP,A)
【文献】実開昭61-143697(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00-3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水に生物処理を行う複数の反応槽と、
複数の前記反応槽に接続される管である送風管と、
前記送風管を介して、前記生物処理を行うための空気を複数の前記反応槽に供給する送風ユニットと、
前記反応槽への空気供給量を制御する空気供給量制御部と、
前記送風管内の圧力が目標菅内圧となるように、送風ユニットからの空気の供給を制御する送風制御部と、
前記反応槽内の被処理水の状態を測定する水質測定部と、を有し、
前記送風制御部は、
前記水質測定部の測定結果に基づいて、当該反応槽で前記生物処理を行うための必要空気量を取得し、
当該必要空気量が供給された場合における前記送風管内の圧力損失に基づいて、複数の前記反応槽の目標管内圧を取得し、
複数の前記反応槽の目標管内圧に基づいて前記送風管内の前記目標管内圧を設定し、前記送風ユニットからの空気の供給を制御する、
処理システム。
【請求項2】
被処理水に生物処理を行う複数の反応槽と、複数の前記反応槽に接続される管である送風管と、前記送風管を介して、前記生物処理を行うための空気を複数の前記反応槽に供給する送風ユニットと、前記反応槽内の被処理水の状態を測定する水質測定部と、を有する水処理システムの制御装置であって、
前記送風管内の圧力が目標菅内圧となるように、前記送風ユニットからの空気の供給を制御する送風制御部を有し、
前記送風制御部は、
前記水質測定部の測定結果に基づいて、当該反応槽で前記生物処理を行うための必要空気量を取得し、
当該必要空気量が供給された場合における前記送風管内の圧力損失に基づいて、複数の前記反応槽の目標管内圧を取得し、
複数の前記反応槽の目標管内圧に基づいて前記送風管内の前記目標管内圧を設定し、前記送風ユニットからの空気の供給を制御する、
制御装置。
【請求項3】
被処理水に生物処理を行う複数の反応槽と、複数の前記反応槽に接続される管である送風管と、前記送風管を介して、前記生物処理を行うための空気を複数の前記反応槽に供給する送風ユニットと、前記反応槽内の被処理水の状態を測定する水質測定部と、を有する水処理システムの制御方法であって、
前記送風管内の圧力が目標菅内圧となるように、前記送風ユニットからの空気の供給を制御する送風制御ステップを含み、
前記送風制御ステップにおいては、
前記水質測定部の測定結果に基づいて、当該反応槽で前記生物処理を行うための必要空気量を取得し、
当該必要空気量が供給された場合における前記送風管内の圧力損失に基づいて、複数の前記反応槽の目標管内圧を取得し、
複数の前記反応槽の目標管内圧に基づいて前記送風管内の前記目標管内圧を設定し、前記送風ユニットからの空気の供給を制御する、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃水処理システム、廃水処理装置の空気供給量制御装置、廃水処理装置の空気供給量制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生活排水または工場排水等の廃水を処理する廃水処理システムとして、標準活性汚泥法をはじめ、様々な処理法が実用化されている。廃水処理システムにおいては、反応槽内に処理対象の廃水を流入させつつ、この反応槽内に存在する好気性微生物に対して空気を供給する曝気処理を行う。これによって、反応槽内の廃水中に含まれる有機物は、好気性微生物の生物処理によって分解され、安定した処理水質が得られる。
【0003】
反応槽内での曝気処理用の空気は、送風管を介して送風機から供給される。例えば特許文献1に示されるように、送風機は、反応槽内での生物処理に必要な空気量となるように、供給する空気量を制御する。また、送風機は、送風管内での圧力が一定になるように空気を供給する場合がある。送風管内の圧力を一定にする場合、送風管内の圧力は、反応槽内での生物処理を確実に行うために、必要な量の空気を供給しきれるような値に設定される。そのため、送風管内の圧力は、反応槽に流入した廃水の負荷(例えば生物処理対象であるアンモニア性窒素の濃度及びBOD等)が最も大きい場合を想定し、その想定した最大負荷においても生物処理が十分できるような値に設定される。また、特許文献2には、複数の曝気槽のうち、必要空気量を最大とする曝気槽への空気導入弁の開度が最大となるように、送風管内圧を決定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-47780号公報
【文献】特開昭56-129088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、最大負荷を想定して送風管内の圧力を設定した場合、反応槽内の負荷が最大負荷よりも低い場合、必要以上の空気を供給してしまうことになる。この場合、送風管内に設けた弁で反応槽内への空気量を制限するが、送風機自体は最大負荷を想定した圧力となるよう空気供給しているため、その送風に要するエネルギーの一部が無駄になる。すなわち、送風管内の圧力を一定にするよう制御した場合、送風に要するエネルギー消費が、実際に必要な送風に要するエネルギーより高くなる。また、複数の曝気槽に送風する場合、それぞれの曝気槽に接続される配管ごとに、圧力損失の度合いが異なる。従って、特許文献2のように、1つの曝気槽の必要空気量から管内圧を設定した場合、その管内圧では他の曝気槽へ適切な空気量を供給できなくなるおそれがある。例えば、1つの曝気槽の必要風量から設定した管内圧では、圧力損失の度合いが大きい他の曝気槽へ必要な量の空気を供給できなくなるおそれがある。このように、廃水処理システムにおいて、送風に要するエネルギー消費を抑制しつつ、各槽に適切に空気を供給することが求められている。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、送風に要するエネルギー消費を抑制しつつ、各槽に適切に空気を供給する廃水処理システム、空気供給量制御装置及び空気供給量制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示の廃水処理システムは、廃水に生物処理を行う複数の反応槽と、複数の前記反応槽に接続される管である送風管と、前記送風管を介して、複数の前記反応槽に前記生物処理を行うための空気を供給する送風ユニットと、前記反応槽への空気供給量を制御する空気供給量制御部と、を有し、前記空気供給量制御部は、前記反応槽に設けられて、前記反応槽内の廃水の状態を測定する水質測定部と、前記水質測定部の測定結果に基づき、前記反応槽内の廃水を所定の目標水質にするための必要空気量を前記各反応槽毎に取得する必要空気量取得部と、前記必要空気量の空気を前記送風管内に供給した場合における前記送風管内の圧力損失により損失される空気の圧力である送風管損失圧力を算出し、前記送風管損失圧力に基づき前記送風管内の目標管内圧を算出し、前記必要空気量の変化に応じて、算出する前記目標管内圧を変化させる目標管内圧算出部と、前記送風管内における圧力が前記目標管内圧となるように、前記送風ユニットからの空気供給を制御する送風制御部と、を有する。
【0008】
前記目標管内圧算出部は、前記送風管損失圧力と、前記反応槽内に設けられて前記送風管からの空気を反応槽内に散気する散気部の圧力損失による損失圧力と、前記反応槽内の廃水の水頭圧とを合計して、前記目標管内圧がその合計値以上となるように、前記目標管内圧を算出することが好ましい。
【0009】
前記送風管は、前記送風ユニットに接続される母管と、前記母管から分岐して複数の前記反応槽にそれぞれ接続される複数の支管と、前記支管に設けられた導入弁と、複数の前記支管のそれぞれに供給される空気量を検出空気量として測定する支管空気量測定部と、を有し、前記空気供給量制御部は、前記支管のそれぞれにおいて、前記検出空気量が前記必要空気量となるように、前記導入弁の開度を調整する導入空気制御部を有することが好ましい。
【0010】
前記空気供給量制御部は、前記空気供給量制御部は、前記支管毎の前記検出空気量の合計値である総検出空気量が、前記必要空気量の前記反応槽毎の合計値である総必要空気量と異なる場合に、前記必要空気量と前記検出空気量の差分である差分空気量を反応槽毎に算出する差分空気量算出部を更に有し、前記目標管内圧算出部は、前記差分空気量の空気を前記送風管内に供給した場合における前記送風管内の圧力損失による損失圧力に基づき、前記目標管内圧を補正し、前記送風制御部は、前記送風管内における圧力が補正した前記目標管内圧となるように、前記送風ユニットからの空気供給を制御することが好ましい。
【0011】
前記必要空気量取得部は、前記反応槽に供給される空気量とその量の空気が供給された場合の前記反応槽内の水質の変化量との関係である水質空気量関係を記憶する関係記憶部と、前記水質空気量関係と、前記水質測定部による水質測定結果と、前記目標水質とに基づき、前記廃水の水質を前記目標水質に変化させるために必要な空気量を、前記必要空気量として算出する必要空気量算出部と、を有することが好ましい。
【0012】
前記関係記憶部は、前記廃水の水質の変化が前記反応槽内に供給される空気量の変化に対して遅れる一次遅れ系として、前記水質空気量関係を記憶し、前記必要空気量算出部は、前記水質測定部による所定の時間の経過毎の前記水質測定結果に基づき、前記必要空気量を更新することが好ましい。
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示の空気供給量制御装置は、廃水に生物処理を行う複数の反応槽と、複数の前記反応槽に接続される管である送風管と、前記送風管を介して、複数の前記反応槽に前記生物処理を行うための空気を供給する送風ユニットと、を有する廃水処理装置の空気供給量を制御する空気供給量制御装置であって、前記反応槽に設けられて、前記反応槽内の廃水の状態を測定する水質測定部と、前記水質測定部の測定結果に基づき、前記反応槽の廃水が所定の目標水質となるための必要空気量を前記反応槽毎に取得する必要空気量取得部と、前記必要空気量の空気を前記送風管内に供給した場合における前記送風管内の圧力損失により損失される空気の圧力である送風管損失圧力を算出し、前記送風管損失圧力に基づき前記送風管内の目標管内圧を算出し、前記必要空気量の変化に応じて、算出する前記目標管内圧を変化させる目標管内圧算出部と、前記送風管内における圧力が前記目標管内圧となるように、前記送風ユニットからの空気供給を制御する送風制御部と、を有する。
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示の空気供給量制御方法は、廃水に生物処理を行う複数の反応槽と、複数の前記反応槽に接続される管である送風管と、前記送風管を介して、複数の前記反応槽に前記生物処理を行うための空気を供給する送風ユニットと、を有する廃水処理装置の空気供給量を制御する空気供給量制御方法であって、前記反応槽内の廃水の状態を測定する測定ステップと、前記廃水の状態の測定結果に基づき、前記反応槽の廃水が所定の目標水質となるための必要空気量を前記反応槽毎に取得する必要空気量取得ステップと、前記必要空気量の空気を前記送風管内に供給した場合における前記送風管内の圧力損失により損失される空気の圧力である送風管損失圧力を算出し、前記送風管損失圧力に基づき前記送風管内の目標管内圧を算出し、前記必要空気量の変化に応じて、算出する前記目標管内圧を変化させる目標管内圧算出ステップと、前記送風管内における圧力が前記目標管内圧となるように、前記送風ユニットからの空気供給を制御する送風制御ステップと、を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、送風に要するエネルギー消費を抑制しつつ、各槽に適切に空気を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、第1実施形態に係る廃水処理システムの模式図である。
図2図2は、第1実施形態に係る制御部の構成を示すブロック図である。
図3図3は、水質空気量関係を説明するためのグラフである。
図4図4は、必要空気量と目標管内圧との関係の例を示すグラフである。
図5図5は、送風管内の圧力を目標管内圧として必要空気量を各反応槽に供給するための制御フローを説明するフローチャートである。
図6図6は、送風機制御部による送風機の制御を説明するフローチャートである。
図7図7は、送風機による送風機の制御を説明するグラフである。
図8図8は、第2実施形態に係る制御部の構成を示すブロック図である。
図9図9は、第2実施形態に係る管内圧の補正フローを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る廃水処理システムの好適な実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0018】
(第1実施形態)
(廃水処理システムの構成)
図1は、第1実施形態に係る廃水処理システムの模式図である。図1に示すように、第1実施形態に係る廃水処理システム1は、反応槽10A、10B、10C、送風ユニット20、送風管30、及び空気供給量制御部40を有する。廃水処理システム1は、空気供給量制御部40で反応槽10内に供給する空気量を制御しつつ、送風ユニット20からの空気を送風管30で反応槽10内に供給し、反応槽10内の活性汚泥により、内部の廃水Wの生物処理を行う。
【0019】
反応槽10A、10B、10Cは、内部に散気部12を有し、活性汚泥が貯留される槽である。反応槽10A、10B、10Cは、図示しない沈殿池から廃水Wが流入する。廃水Wは、図示しない沈殿池によって原水から一部の固形物が分離された後の水である。ここでいう原水とは、家庭や工場などから排出された排水及び下水である。散気部12は、送風ユニット20から供給された空気で、貯留した活性汚泥を曝気する。反応槽10A、10B、10Cは、曝気された活性汚泥によって廃水Wに生物処理を行い、生物処理を行った後の廃水Wである処理水を、図示しない固液分離槽に排出する。この図示しない固液分離槽では、処理水についてさらに固液分離処理を行い、その固液分離処理後の水を、例えば消毒処理後に外部環境に排出する。
【0020】
反応槽10A、10B、10Cは、それぞれ並列に設けられている。すなわち、反応槽10A、10B、10Cには、沈殿池からそれぞれ並列に廃水Wが供給される。ただし、反応槽10A、10B、10Cは、互いに直列に配置されていてもよい。すなわち、反応槽10Aに反応槽10Bが接続され、反応槽10Aで生物処理した後の廃水Wを反応槽10Bに導入し、反応槽10B内で再度生物処理を行ってもよい。また、反応槽10A、10B、10Cは、合計3つの好気槽であるが、その数も任意である。また、反応槽10A、10B、10Cには、嫌気槽や無酸素槽が直列に接続されていてもよい。以下、反応槽10A、10B、10Cを互いに区別しない場合は、反応槽10と記載する。
【0021】
図1に示すように、送風ユニット20は、複数の送風機である送風機22A、22B、22C、22Dを有する。送風機22A、22B、22C、22Dは、互いに同様の機能を有するブロアである。送風機22A、22B、22C、22Dは、インレットベーンを介して外部から空気を導入し、回転する羽根部によって導入した空気を排気する。送風機22A、22B、22C、22Dは、インレットベーンの開度が調整可能になっており、羽根部の回転数も調整可能になっている。送風機22A、22B、22C、22Dは、羽根部から空気を吐出する側が、互いに並列に送風管30に接続されており、それぞれが吐出した空気を送風管30に吐出する。以下、送風機22A、22B、22C、22Dを互いに区別しない場合は、送風機22と記載する。なお、送風ユニット20が有する送風機22の数は、任意である。
【0022】
送風管30は、内部に空気を導通する管である。送風管30は、導入管31と、母管32と、支管34A、34B、34Cと、導入弁36とを有する。導入管31は、一方の端部が分岐してそれぞれ送風機22に接続されており、送風機22から空気が供給される。導入管31は、他方の端部が母管32に接続されており、各送風機22からの空気を合流させて、合流させた空気Aを母管32に導通する。母管32は、一本の管である。母管32は、空気Aの流れの上流側、すなわち送風機22側から、支管34C、34B、34Aがこの順で接続されている。
【0023】
支管34Aは、母管32の接続部と反対側が反応槽10Aの散気部12に接続されており、母管32からの空気Aの一部を反応槽10Aに供給する。支管34Bは、母管32の接続部と反対側が反応槽10Bの散気部12に接続されており、母管32からの空気Aの一部を反応槽10Bに供給する。支管34Cは、母管32の接続部と反対側が反応槽10Cの散気部12に接続されており、母管32からの空気Aの一部を反応槽10Cに供給する。導入弁36は、支管34A、34B、34Cに取り付けられている。導入弁36は、空気供給量制御部40によって開閉操作される弁であり、その開度調整によって、各反応槽10への空気供給量を調整する。以下、支管34A、34B、34Cを互いに区別しない場合は、支管34と記載する。
【0024】
空気供給量制御装置としての空気供給量制御部40は、制御部42と、水質測定部としての硝酸計43及びアンモニア計44と、吸気測定部46と、母管内圧測定部47と、支管空気量測定部48とを有する。制御部42は、硝酸計43、アンモニア計44、吸気測定部46、母管内圧測定部47、及び支管空気量測定部48の測定結果に基づき、各反応槽10内への空気供給量を制御する制御装置である。制御部42の詳細は後述する。なお、空気供給量制御部40は、複数の反応槽10への空気供給量を制御するものであるが、1つの反応槽10毎にそれぞれ1つずつ設けられて、1つの反応槽10への空気供給量を制御してもよい。
【0025】
硝酸計43は、各反応槽10内に設けられており、反応槽10内の廃水Wの硝酸濃度を測定するセンサである。廃水Wの硝酸とは、本実施形態においては、硝酸(HNO3)、亜硝酸(HNO2)、硝酸性窒素(NO3-N)、亜硝酸性窒素(NO2-N)、硝酸性窒素と亜硝酸性窒素との集合、および硝酸と亜硝酸とをともに示すNOを含む概念である。すなわち、本実施形態における硝酸濃度は、硝酸、亜硝酸、硝酸性窒素、亜硝酸性窒素、硝酸性窒素と亜硝酸性窒素との集合、および硝酸と亜硝酸とをともに示すNOの、いずれの濃度であってもよい。
【0026】
アンモニア計44は、各反応槽10内に設けられており、反応槽10内の廃水Wのアンモニア濃度を測定するセンサである。廃水Wのアンモニア濃度とは、本実施形態においては、アンモニアおよびアンモニア性窒素を含む概念である。すなわち、本実施形態におけるアンモニア濃度は、アンモニア(NH3)およびアンモニア性窒素(NH4-N)のいずれの濃度であってもよい。すなわち、硝酸計43及びアンモニア計44は、反応槽10内の廃水Wの状態を計測するといえる。なお、水質測定部、すなわち硝酸計43及びアンモニア計44は、反応槽10毎に1つずつ設けられているが、複数の反応槽10に1つの水質測定部が設けられている構成であってもよい。
【0027】
吸気測定部46は、各送風機22の吸気側に設けられており、送風機22が吸気する空気量を測定する。母管内圧測定部47は、母管32に取付けられ、母管32内の圧力、すなわち各送風機22が供給した空気の圧力を測定する。より詳しくは、母管内圧測定部47は、支管34Cよりも空気Aの流れの上流側、すなわち全ての支管34との接続部よりも空気Aの流れの上流側に設けられている。支管空気量測定部48は、各支管34に設けられ、各支管34から反応槽10に供給される空気量を測定する。より詳しくは、支管空気量測定部48は、導入弁36よりも空気の流れの上流側、すなわち支管34において導入弁36と母管34との間に設けられている。支管空気量測定部48は、支管34に供給される空気量、より具体的には、支管34内における導入弁36より上流側の空気量を、検出空気量として測定する。すなわち、支管空気量測定部48は、支管34から導入弁36を介して反応槽10に供給される空気量を、検出空気量として測定する。
【0028】
(反応槽内での水処理)
次に、反応槽10内での廃水Wの生物処理について説明する。反応槽10内では、好気性条件下で活性汚泥中の好気性微生物である硝化菌により、硝化反応、すなわち、被処理水中のアンモニア性窒素(NH4-N)が、下記の反応式(1)~(3)のように、亜硝酸性窒素(NO-N)や硝酸性窒素(NO-N)に硝化される。
【0029】
NH+O+2e-+2H→NHOH+HO …(1)
NHOH+HO→NO -+5H+4e …(2)
NO -+0.5O→NO - …(3)
【0030】
一方、反応槽10における被処理水中の酸素量が少ない領域においては、酸素量が少ないことから脱窒菌による脱窒反応(嫌気反応)が発生する。この脱窒反応を生じる領域(脱窒反応領域)に充分な炭素源を供給すれば、脱窒反応も充分に進行させることができる。その結果、反応槽10において部分的に、脱窒反応が行われる領域が発生する。これにより、下記の反応式(4)~(10)のように、硝化が不充分であることによって発生した亜酸化窒素(N2O)ガスを分解したり、亜酸化窒素を発生させることなく亜硝酸を還元したりして、窒素と二酸化炭素とに分解させて、窒素除去を行うことができる。
【0031】
NO +3H+2e → 0.5NO+1.5HO …(4)
NO +H+2(H) → 0.5NO+1.5HO …(5)
NO +H+5(H) → 0.5N+3HO …(6)
NO +2H → NO +HO …(7)
NO +H+(H) → NO+HO …(8)
NO+(H) → 0.5NO+0.5HO …(9)
O+2(H) → N+HO …(10)
【0032】
硝酸計43は、反応槽10内の廃水Wの硝酸濃度を測定することで、脱窒反応の進行度、すなわち硝酸の分解度合いを検出する。アンモニア計44は、反応槽10内の廃水Wのアンモニア濃度を測定することで、硝化反応の進行度、すなわちアンモニアの分解度合いを検出する。空気供給量制御部40は、この硝酸計43とアンモニア計44との測定結果に基づき、反応槽10に供給する空気量を制御する。例えば、空気供給量制御部40は、硝酸濃度が所定の数値範囲内より高い場合、脱窒反応が不足しているとして、反応槽10に供給する空気量を低下させ、硝酸濃度が所定の数値範囲内より低い場合、脱窒反応が進み過ぎて硝化反応が不足しているとして、反応槽10に供給する空気量を増加させる。同様に、空気供給量制御部40は、アンモニア濃度が所定の数値範囲内より高い場合、硝化反応が不足しているとして、反応槽10に供給する空気量を増加させ、アンモニア濃度が所定の数値範囲内より低い場合、硝化反応が進み過ぎて脱窒反応が不足しているとして、反応槽10に供給する空気量を低下させる。言い換えれば、硝酸計43は、硝化反応の進行度合いに対する脱窒反応の相対的な進行度合いを検出する。
【0033】
硝酸計43による脱窒反応の進行度合いの確認の例について、補足的に説明する。本実施形態において、反応槽10では、活性汚泥濃度が一定となるように運転され、1つの硝化菌による硝化反応の速度と、1つの脱窒菌による脱窒速度は、常温下においてほぼ一定である。また、廃水Wは、水質、すなわちアンモニア濃度が、所定の設計水質により、所定濃度以内に保たれ、ほぼ一定となっている。また、反応槽10内への廃水Wの流入量は、変動している。そして、硝化反応と脱窒反応とが平行して起こる反応槽10内では、好気領域と嫌気領域とに区分されている。好気領域は、酸素リッチの領域であり、主に硝化反応が進行する領域である。嫌気領域は、無酸素又は酸素濃度が低い領域であり、主に脱窒反応が進行する領域である。例えば硝酸計43が設けられた位置での硝化量(硝化された量)と脱窒量(脱窒された量)とは、この好気領域と嫌気領域との比率に対応する。そして、硝酸濃度は、硝化量から脱窒量を差し引いた値に対応する。硝酸計43は、硝酸濃度を検出することで、反応槽10内の上流から硝酸計43が設けられた位置までにおける、好気領域と嫌気領域との容積の差分を検出する。そして、反応槽10内の上流から硝酸計43が設けられた位置までの全容積は、反応槽10のサイズにより既知である。従って、硝酸計43は、硝酸濃度を検出することで、脱窒量、すなわち脱窒反応の進行度合いを検出することができる。なお、本実施形態では、脱窒反応の進行度合いを硝酸計43で検出していたが、脱窒反応の進行度合いを確認できるものであれば硝酸計43に限られず、例えば一対の溶存酸素濃度計、一対のORP計、一対のアンモニア計などであってもよい。
【0034】
硝酸計43は、アンモニア計44よりも、反応槽10内における廃水Wの上流側、すなわち廃水が供給される側(図示しない沈殿池側)に配置される。反応槽10内は、廃水Wの上流側から下流側に向かって、すなわち廃水Wが供給される側(図示しない沈殿池側)から生物処理後の処理水が排出される側(図示しない固形分離槽側)に向かって、上流側処理領域と下流側処理領域とに区分される。上流側領域と下流側領域は、硝化処理及び脱窒処理との進行度合いが互いに異なる領域である。上流側領域は、廃水Wの上流側の領域であり、硝化処理と脱窒処理とが、例えばほぼ同一の所定比率で進行する領域である。下流側領域は、上流側領域よりも廃水Wの下流側の領域であり、上流側領域と同様に硝化処理と脱窒処理とが行われている。ただし、下流側領域の硝化処理の進行速度は、上流側領域の硝化処理の進行速度、及び下流側領域の脱窒処理の進行速度より高い。硝酸計43は、この上流側領域と下流側領域との間(例えば廃水Wの上流側から下流側に沿った場合の中央位置)に設けられ、アンモニア計44は、硝酸計43より下流側の下流側領域に配置される。
【0035】
以上のように、空気供給量制御部40は、硝酸計43とアンモニア計44との検出結果に基づき、反応槽10内での空気量を制御して、反応槽10内で硝化処理と脱窒処理との両方の生物処理を含む同時硝化脱窒制御を実行する。ただし、空気供給量制御部40は、反応槽10内で同時硝化脱窒処理を行わなくてもよい。例えば、空気供給量制御部40は、硝酸計43及びアンモニア計44のいずれか一方を有していてもよく、その測定結果に基づき反応槽10内での空気量を制御してもよい。また、例えば、空気供給量制御部40は、硝酸計43及びアンモニア計44の代わりに、水質測定部として、反応槽10内の廃水Wの溶存酸素量を測定する溶存酸素計を有していてもよい。この場合、空気供給量制御部40は、溶存酸素計が測定した廃水W中の溶存酸素量に基づき、溶存酸素量が一定の値となるように反応槽10に供給する空気量を制御する(溶存酸素量制御)。この溶存酸素量制御の場合、反応槽10に対し直列に嫌気槽や無酸素槽を接続し、反応槽10で硝化処理した後の廃水Wを脱窒処理してもよい。
【0036】
また、空気供給量制御部40は、硝酸計43及びアンモニア計44の代わりに、水質測定部として、反応槽10内の廃水Wの流入量を計測する流量計を有していてもよい。この場合、空気供給量制御部40は、流量計が測定した反応槽10内への廃水W中の流入量に基づき、その量の廃水Wを目標濃度とするために反応槽10に供給する空気量を制御する(流入水量制御)。この流入量制御の場合、反応槽10に対し直列に嫌気槽や無酸素槽を接続し、反応槽10で硝化処理した後の廃水Wを脱窒処理してもよい。このように、廃水処理システム1は、水質測定部の測定結果に基づき反応槽10に供給する空気量を制御するものであれば、以上説明した同時硝化脱窒制御、溶存酸素量制御、流入水量制御以外の任意の空気量制御を行ってもよい。また、廃水処理システム1は、異なる処理を行う系列(例えば、同時硝化脱窒制御を行う系列と溶存酸素量制御を行う系列)を区分して、反応槽10毎に各処理のいずれか(例えば、同時硝化脱窒制御を行う系列と溶存酸素量制御を行う系列とのいずれか)を行わせてもよい。
【0037】
(制御部の構成)
次に、空気供給量制御部40が有する制御部42について説明する。図2は、第1実施形態に係る制御部の構成を示すブロック図である。制御部42は、例えばコンピュータなどの演算装置である。図2に示すように、制御部42は、水質測定結果取得部70と、検出空気量取得部71と、必要空気量取得部72と、目標管内圧算出部74と、送風制御部76と、導入空気制御部78とを有する。
【0038】
水質測定結果取得部70は、硝酸計43及びアンモニア計44から、反応槽10内の廃水Wの状態、すなわち廃水Wの硝酸濃度及びアンモニア濃度の測定結果を取得する。なお、水質計測部が溶存酸素計である場合、水質測定結果取得部70は、廃水Wの状態として、反応槽10内の溶存酸素量を取得する。また、水質計測部が流量計である場合、水質測定結果取得部70は、廃水Wの状態として、反応槽10内に流入した廃水Wの量を取得する。すなわち、反応槽10内の廃水Wの状態とは、水質計測部が計測した計測対象である。言い換えれば、水質計測部は、廃水Wの状態として、反応槽10内の廃水Wの硝酸濃度、アンモニア濃度、溶存酸素量、及び流入量の少なくともいずれか一つを計測するということができる。
【0039】
検出空気量取得部71は、支管空気量測定部48から、各支管34の検出空気量の値、すなわち、各支管34の導入弁36から反応槽10へ供給されている空気量の値を取得する。
【0040】
必要空気量取得部72は、水質測定結果取得部70が取得した廃水Wの状態の測定結果に基づき、反応槽10内の廃水Wの水質を所定の目標水質にするための必要空気量を、反応槽10毎に取得する。必要空気量の取得方法については後述する。
【0041】
目標管内圧算出部74は、必要空気量の値に基づき、目標管内圧を算出する。目標管内圧は、各反応槽10に必要空気量を供給するために必要な送風管内における空気の圧力である。目標管内圧の算出方法については、後述する。
【0042】
送風制御部76は、送風管30内における圧力が、目標管内圧算出部74が算出した目標管内圧となるように、送風ユニット20からの空気供給を制御する。具体的には、送風制御部76は、母管内圧測定部47が測定した母管32内の空気圧の値を取得しつつ、母管32内の空気圧が目標管内圧となるように、送風ユニット20からの空気供給量を制御する。
【0043】
導入空気制御部78は、検出空気量取得部71から、各支管空気量測定部48が測定した各支管34に供給される空気量の値を取得する。さらに詳しくは、導入空気制御部78は、各支管34の検出空気量の値、すなわち、各支管34の導入弁36から反応槽10へ供給されている空気量の値を取得する。導入空気制御部78は、必要空気量と、取得した検出空気量とに基づき、支管34から反応槽10への空気供給量が必要空気量となるように、各導入弁36の開度を調整する。すなわち、導入空気制御部78は、検出空気量が必要空気量に一致するように、各導入弁36の開度を調整する。導入弁36の開度調整方法については、後述する。
【0044】
(必要空気量の取得)
以下に、必要空気量取得部72による必要空気量の取得方法について説明する。必要空気量取得部72は、関係記憶部82と、必要空気量算出部84とを有する。なお、以下でいう水質とは、廃水Wに含まれる所定の成分の濃度、又は量のことをいい、本実施形態の例では廃水Wの硝酸濃度及びアンモニア濃度である。また、水質は、例えば廃水Wの溶存酸素量であってもよい。
【0045】
関係記憶部82は、水質空気量関係を記憶する。水質空気量関係とは、反応槽10に供給される空気量と、その量の空気が供給された場合の反応槽10内の水質の変化量との関係である。関係記憶部82は、反応槽10内の水質の変化が、反応槽10に供給される空気量の変化に対して遅れる一次遅れ系として、水質空気量関係を記憶している。以下、具体的に説明する。
【0046】
図3は、水質空気量関係を説明するためのグラフである。図3は、反応槽10に空気を供給した場合における、アンモニア濃度の変化量の一例を示すグラフである。図3の横軸は時間を示し、縦軸の左側は反応槽10に供給する供給空気量を示し、縦軸の右側は反応槽10内の廃水Wのアンモニア濃度を示す。図3の線分L1は、時間毎の供給空気量を示す。線分L2は、線分L1のように供給空気量が変化した場合に、水質空気量関係に従ってアンモニア濃度が変化した場合の時間毎のアンモニア濃度を示している。
【0047】
線分L1に示すように、図3の例では、時刻tにおいて、供給空気量をMからMに増加させている。線分L2に示すように、水質空気量関係に従った場合、アンモニア濃度は、時刻tから遅れた時刻tまでは濃度Pのままであり、時刻tからアンモニア濃度が低下し始め、時刻tまで一定の速度でアンモニア濃度が低下し、時刻tからアンモニア濃度の低下速度が低下し、時刻tにおいて濃度Pに達して、濃度Pのまま収束する。ここで、供給空気量をMからMに変化させた場合の供給空気量の変化値を、単位あたりの供給空気の変化量(例えば空気の変化量が1m)とする。そして、この場合におけるアンモニア濃度PからPへの濃度の変化量、すなわち供給空気量を単位量だけ変化させた場合の収束後の水質の変化量を、Kとする。そして、時刻tからtまでの間の時間、すなわちむだ時間をLsとする。そして、時刻tからtまでの間の時間、すなわち一次遅れ時間をTsとする。そして、アンモニア濃度の、供給空気量と時間とに関する伝達関数をyとすると、水質空気量関係は、次の式(11)に示すものとなる。
【0048】
y=(K・e-Ls)/(1+Ts) ・・・(11)
【0049】
関係記憶部82は、予め計測されたK、Ls、Tsの値を上記式(11)に当てはめた水質空気量関係を記憶している。関係記憶部82は、例えば、時刻tからtまでの間の時間の検出結果に基づき、その検出した時間の所定の割合(ここでは63%)を、時刻tからtまでの間の時間であるTsとして記憶する。この例ではアンモニア濃度と供給空気量との関係について説明したが、それぞれK、Ls、Tsの値を予め計測していれば、水質空気量関係は、硝酸濃度と供給空気量との関係、溶存酸素量と供給空気量との関係など、各水質と供給空気量との関係に対しても適用できる。本実施形態における関係記憶部82は、アンモニア濃度と供給空気量との関係、及び硝酸濃度と供給空気量との関係のそれぞれについて、異なる水質空気量関係を記憶している。
【0050】
図2に示す必要空気量算出部84は、関係記憶部82から、水質空気量関係を読み出す。そして、必要空気量算出部84は、予め定められた反応槽10内の廃水Wの目標水質、ここでは目標のアンモニア濃度と目標の硝酸濃度との値である目標濃度を取得する。この目標濃度は、予め設定された一定の数値範囲である。例えば、硝酸濃度における目標濃度は、5.0mg以下の予め定められた数値範囲である。また、例えば、アンモニア濃度における目標濃度は、1.0mg/L以上5.0mg/L以下、より好適には1.0mg/L以上2.0mg/L以下である。必要空気量算出部84は、水質空気量関係と、目標濃度と、水質測定結果取得部70が取得した現在の廃水Wの硝酸濃度及びアンモニア濃度とに基づき、反応槽10の必要空気量を算出する。必要空気量算出部84は、廃水Wの硝酸濃度がその目標濃度となり、かつ、廃水Wのアンモニア濃度がその目標濃度となるように、反応槽10の必要空気量を算出する。必要空気量とは、反応槽の水質を所定の目標水質にするために、すなわち反応槽内の廃水Wのアンモニア濃度と硝酸濃度との双方を、目標濃度とするために必要(かつ十分)な空気量であり、絶対値として算出されるものである。
【0051】
具体的には、必要空気量算出部84は、目標濃度と水質測定結果取得部70が算出した濃度との差分である差分濃度を算出し、廃水Wのアンモニア濃度がその目標濃度側に差分濃度だけ変化し、かつ、廃水Wの硝酸濃度がその目標濃度側に差分濃度だけ変化するように、必要空気量を算出する。従って、必要空気量は、差分濃度の値に従って変化するということができる。例えば、アンモニア濃度を考慮した場合、必要空気量算出部84は、算出したアンモニア濃度が目標濃度より低い場合、差分濃度が大きくなるほど、すなわち現在のアンモニア濃度が小さくなるほど、硝化処理が進みすぎているとして、必要空気量を低くする。必要空気量算出部84は、算出したアンモニア濃度が目標濃度より高い場合、差分濃度が大きくなるほど、すなわち現在のアンモニア濃度が高くなるほど、硝化処理が十分でないとして、必要空気量を高くする。また、硝酸濃度を考慮した場合、必要空気量算出部84は、算出した硝酸濃度が目標濃度より低い場合、差分濃度が大きくなるほど、すなわち現在の硝酸濃度が小さくなるほど、硝化処理が十分でないとして、必要空気量を高くする。必要空気量算出部84は、算出した硝酸濃度が目標濃度より高い場合、差分濃度が大きくなるほど、すなわち現在の硝酸濃度が高くなるほど、脱窒処理が十分でないとして、必要空気量を低くする。
【0052】
必要空気量算出部84は、反応槽10の全てについて、必要空気量を算出する。また、必要空気量算出部84は、反応槽10の全てについて算出した必要空気量を合計して、その合計値を総必要空気量として算出してもよい。必要空気量は、現在の反応槽10内の廃水Wの状態、すなわち硝酸濃度及びアンモニア濃度に基づき変化するため、総必要空気量も、同様に現在の反応槽10内の廃水Wの状態に基づき変化する。
【0053】
なお、上述の溶存酸素量制御を行う場合、必要空気量算出部84は、溶存酸素量と供給空気量との関係を示す水質空気量関係を読み出し、水質測定結果取得部70が取得した現在の廃水Wの溶存酸素量に基づき、廃水Wが所定の目標水質(目標溶存酸素量)となるように、反応槽10の必要空気量を算出する。また、上述の流入水量制御を行う場合、必要空気量算出部84は、目標水質とするための必要空気量を、反応槽10への廃水Wの流入量に応じて算出する。必要空気量算出部84は、目標水質とするための必要空気量が、反応槽10への廃水Wの流入量に応じた関係を有するとして、その関係を記憶しておき、水質測定結果取得部70が取得した廃水Wの流入量に基づき、必要空気量を算出する。
【0054】
(目標管内圧の算出)
次に、目標管内圧算出部74による目標管内圧の算出方法について説明する。目標管内圧算出部74は、必要空気量算出部84から必要空気量の値を取得し、必要空気量の値に基づき、送風管損失圧力を算出する。送風管損失圧力は、必要空気量の空気を送風管30内に供給した場合に、送風管30内の圧力損失により損失される空気の圧力である。すなわち、送風管損失圧力は、必要空気量の空気を送風管30内に供給した場合の送風管30内の圧力損失と同一の値である。そして、目標管内圧算出部74は、この送風管損失圧力に基づき、目標管内圧を算出する。この目標管内圧は、必要空気量の値に応じて変化する。言い換えれば、目標管内圧算出部74は、必要空気量の変化に応じて、算出する目標管内圧を変化させる。
【0055】
以下、より詳細に説明する。管の圧力損失Hは、一般的に、以下の式(12)、(13)から算出される。
【0056】
H=4・f・(l/d)・(γ・v/2) ・・・(12)
H=f・(γ・v/2) ・・・(13)
【0057】
式(12)は、管が直管の場合における圧力損失Hの算出式である。式(13)は、管が直管以外の異形管である場合における圧力損失Hの算出式である。f、fは、損失係数であり、予め定められた定数である。f、fは、例えば管の圧力損失を予め計測し、その計測結果に基づき予め算出される。lは、直管の配管長(m)であり、dは、直管の内径(m)であり、これらも配管の形状により予め定められた定数である。γは、空気密度(kg/m)であり、予め定められた定数である。vは、流れる空気の流速(m/s)である。すなわち、式(12)、(13)において、変数は、流速vである。従って、管の圧力損失Hは、流速vに応じて変化する。また、流速vは、以下の式(14)のように、空気の流量Qに比例する(ベルヌーイの定理)。式(14)のAは、流路面積であり、こちらも配管の形状により予め定められた定数となる。
【0058】
Q=A・v ・・・(14)
【0059】
従って、管の圧力損失Hは、空気の流量Qによって算出可能である。本実施形態においては、圧力損失Hは、送風管損失圧力に相当し、流量Qは、必要空気量に相当する。目標管内圧算出部74は、式(14)に基づき、必要空気量分の空気を母管32及び支管34に供給した場合の、空気の流速vを算出する。ここでの流速vは、母管32及び支管34における流速である。そして、目標管内圧算出部74は、式(12)、(13)で示したように、配管の圧力損失の算出の上で、流速v以外の項を予め設定した値とし、流速vとこの設定した値とに基づき、送風管損失圧力Hを算出する。送風管損失圧力Hは、流速v、すなわち必要空気量の変化に比例して、値が変化する。
【0060】
目標管内圧算出部74は、支管34毎に、送風管損失圧力Hを算出する。すなわち、本実施形態の例では、目標管内圧算出部74は、送風管損失圧力Hとして、支管34Aの送風管損失圧力HPAと、支管34Bの送風管損失圧力HPBと、支管34Cの送風管損失圧力HPCとを算出する。
【0061】
送風管損失圧力HPAは、送風ユニット20から反応槽10Aに至る送風管30の経路に、反応槽10Aについて算出された必要空気量の空気を供給した場合の圧力損失である。より詳しくは、送風管損失圧力HPAは、母管32の入口(母管32と導入管31との接続部)から母管32の出口(母管32と支管34Aとの接続部)までの経路に総必要空気量を供給し、支管34Aの入口(母管32と支管34Aとの接続部)から支管34Aの出口(支管34Aと散気部12との接続部)までの経路に反応槽10Aについて算出された必要空気量を供給した場合における、母管32の入口から支管34Aの出口までの経路の圧力損失である。
【0062】
送風管損失圧力HPBは、送風ユニット20から反応槽10Bに至る送風管30の経路に、反応槽10Bについて算出された必要空気量の空気を供給した場合の圧力損失である。より詳しくは、送風管損失圧力HPBは、母管32の入口(母管32と導入管31との接続部)から母管32の出口(母管32と支管34Bとの接続部)までの経路に総必要空気量を供給し、支管34Bの入口(母管32と支管34Bとの接続部)から支管34Bの出口(支管34Bと散気部12との接続部)までの経路に反応槽10Bについて算出された必要空気量の空気を供給した場合における、母管32の入口から支管34Bの出口までの経路の圧力損失である。
【0063】
送風管損失圧力HPCは、送風ユニット20から反応槽10Cに至る送風管30の経路に、反応槽10Cについて算出された必要空気量の空気を供給した場合の圧力損失である。より詳しくは、送風管損失圧力HPCは、母管32の入口(母管32と導入管31との接続部)から母管32の出口(母管32と支管34Cとの接続部)までの経路に総必要空気量を供給し、支管34Cの入口(母管32と支管34Cとの接続部)から支管34Cの出口(支管34Cと散気部12との接続部)までの経路に反応槽10Cについて算出された必要空気量の空気を供給した場合における、母管32の入口から支管34Cの出口までの経路の圧力損失である。ただし、送風管損失圧力HPA、送風管損失圧力HPB、及び送風管損失圧力HPCでの経路は、それぞれ、導入管31の入口(送風機22が接続されている箇所)から、支管34A、34B、34Cの出口までの経路の圧力損失であってもよい。
【0064】
そして、目標管内圧算出部74は、次の式(15)に基づき、目標管内圧Pを算出する。
【0065】
=h+H+H+H+H ・・・(15)
【0066】
ここで、hは、反応槽10内の廃水Wの水頭圧である。Hは、送風機22に設けられた図示しない空気ろ過機による圧力損失(通過抵抗)によって損失される空気の圧力である。Hは、支管空気量測定部48による圧力損失(通過抵抗)によって損失される空気の圧力である。Hは、散気部12による圧力損失(通過抵抗)によって損失される空気の圧力である。すなわち、目標管内圧算出部74は、送風管損失圧力Hと水頭圧hと空気ろ過機損失圧力Hと支管空気量測定部損失圧力Hと散気部損失圧力Hとを合計して、その合計値を目標管内圧Pとして算出する。ただし、例えば、目標管内圧算出部74は、送風管損失圧力Hと水頭圧hと支管空気量測定部損失圧力Hと散気部損失圧力Hとを合計して、目標管内圧Pがその合計値以上となるように、目標管内圧Pを算出してもよい。
【0067】
なお、水頭圧hは、反応槽10の容積から予め設定された値であってもよい。また、反応槽10にセンサを設け、このセンサにより反応槽10内の廃水Wの水位又は水量を検出して、目標管内圧算出部74が、この検出値により水頭圧hを算出してもよい。空気ろ過機損失圧力H、支管空気量測定部損失圧力H、及び散気部損失圧力Hは、例えば設計値や予め計測された値である。すなわち、目標管内圧算出部74は、空気ろ過機損失圧力H、支管空気量測定部損失圧力H、散気部損失圧力Hを、予め定められた定数とし、予め計測された値が存在すれば、その計測値を使用する。目標管内圧算出部74は、このようにH以外の項を定数や算出値として予め定めた値として、送風管損失圧力Hとこの予め定めた値とを合計して、その合計値を目標管内圧Pとして算出しているということができる。
【0068】
さらに詳しくは、目標管内圧算出部74は、反応槽10毎に目標管内圧を算出し、そのうちで最大となる目標管内圧を、目標管内圧Pとする。本実施形態の例では、目標管内圧算出部74は、目標管内圧PYA、目標管内圧PYB、及び目標管内圧PYCを算出する。目標管内圧PYは、送風管損失圧力HPAと、反応槽10Aの水頭圧hと、空気ろ過機損失圧力Hと、支管34A内の支管空気量測定部48の支管空気量測定部損失圧力Hと、反応槽10A内の散気部12の散気部損失圧力Hとの合計値である。同様に、目標管内圧PYは、送風管損失圧力HPBと、反応槽10Bの水頭圧hと、空気ろ過機損失圧力Hと、支管34B内の支管空気量測定部48の支管空気量測定部損失圧力Hと、反応槽10B内の散気部12の散気部損失圧力Hとの合計値である。同様に、目標管内圧PYは、送風管損失圧力HPCと、反応槽10Cの水頭圧hと、空気ろ過機損失圧力Hと、支管34C内の支管空気量測定部48の支管空気量測定部損失圧力Hと、反応槽10C内の散気部12の散気部損失圧力Hとの合計値である。目標管内圧算出部74は、これら目標管内圧PYA、目標管内圧PYB、及び目標管内圧PYCのうちの最大値を、目標管内圧Pとして決定する。また、目標管内圧算出部74は、この決定した目標管内圧Prに対し、予め定められた所定のマージンを加算し、その加算した値を実際の目標管内圧Pとしてもよい。
【0069】
ただし、目標管内圧算出部74は、送風管損失圧力H以外の値、すなわち水頭圧hと空気ろ過機損失圧力Hと支管空気量測定部損失圧力Hと散気部損失圧力Hとの合計値を、各反応槽10毎に共通する値(予め定めた値J)として、目標管内圧PYA、目標管内圧PYB、及び目標管内圧PYCを算出してもよい。すなわち、目標管内圧算出部74は、送風管損失圧力HPAと予め定めた値Jとを合計して目標管内圧PYAを算出し、送風管損失圧力HPBと予め定めた値Jとを合計して目標管内圧PYBを算出し、送風管損失圧力HPCと予め定めた値Jとを合計して目標管内圧PYCを算出し、それらのうちの最大値を目標管内圧Pとして決定してもよい。また、目標管内圧算出部74は、送風管損失圧力H及び水頭圧h以外の値を予め定めた値J1として、反応槽10Aの水頭圧hと送風管損失圧力HPAと予め定めた値J1との合計値を、目標管内圧PYAとして算出してもよい。この場合、目標管内圧PYB、目標管内圧PYCも同様に算出する。
【0070】
このように、目標管内圧算出部74は、支管34毎(各反応槽10への経路毎)に送風管損失圧力HPA、PB、PCを算出し、その送風管損失圧力HPA、PB、PCに基づき、支管34毎に目標管内圧PYA、YB、YCを算出する。目標管内圧算出部74は、支管34毎に算出された目標管内圧PYA、YB、YCのうちの最大値を、目標管内圧Pとする。
【0071】
図4は、必要空気量と目標管内圧との関係の例を示すグラフである。以上のように、目標管内圧算出部74は、必要空気量の空気を送風管30に供給した場合の送風管30の送風管損失圧力Hを算出し、その送風管損失圧力Hに基づき目標管内圧Pを算出する。送風管損失圧力Hは、必要空気量の値に応じて変化する。従って、図4に示すように、目標管内圧Pも、必要空気量の値に応じて変化する。図4に示すように、目標管内圧Pは、必要空気量の値に二次元曲線的に比例して変化する。
【0072】
そして、図2に示す送風制御部76は、送風管30内における圧力が、目標管内圧算出部74が算出した目標管内圧Pとなるように、送風ユニット20からの空気供給を制御する。これにより、送風管30(母管32)内の圧力は、目標管内圧Pに保たれ、また、目標管内圧Pの算出値の変化に応じて、その変化に追従する。なお、ここでの送風管30内における圧力とは、この圧力を測定する位置、すなわち母管内圧測定部47が送風管30の圧力を測定する位置における圧力である。また、目標管内圧Pは、この圧力を測定する位置における目標管内圧である。
【0073】
(導入弁の開度調整)
次に、導入空気制御部78による導入弁36の開度調整について説明する。導入空気制御部78は、各支管34の検出空気量の値、すなわち、各支管34の導入弁36から反応槽10へ供給されている空気量の値を取得する。導入空気制御部78は、必要空気量と、取得した検出空気量とに基づき、支管34から反応槽10への空気供給量が必要空気量となるように、各導入弁36の開度を調整する。すなわち、導入空気制御部78は、支管34での空気量が必要空気量より大きい場合、導入弁36の開度を低くし(開口面積を小さくし)、反応槽10へ流入する空気量が大きくなり過ぎないようにする。また、導入空気制御部78は、必要空気量が変動して必要空気量が増加した場合、導入弁36の開度を高くし(開口面積を大きくし)、必要空気量が減少した場合、導入弁36の開度を低くする。
【0074】
本実施形態においては、送風管30の圧力を目標管内圧Pとなるように制御している。従って、母管32には、総必要空気量分以上の空気が供給されている。導入空気制御部78は、各支管34の導入弁36の開度を調整することで、各支管34に必要空気量分だけの空気が供給されるように、母管32の空気を各支管34に分配している。従って、例えば支管34毎の長さや形状などが異なり、支管34毎に圧力損失が異なる場合にも、支管34毎に導入弁36の開度を調整しているため、各支管34に適切に必要空気量を供給することができる。なお、本実施形態においては、送風制御部76が送風管30内の管内圧を必要空気量に応じて変化させ、必要空気量に追従した空気量となるように空気を供給している。従って、導入空気制御部78は、目標管内圧を一定にした場合よりも、導入弁36の開度の調整量が低くなる。言い換えれば、送風管30には、常に必要最低限に近い分だけの空気量が供給されているため、導入空気制御部78は、導入弁36の開度が低くなりすぎない範囲内で、導入弁36の開度を制御することができる。
【0075】
以上説明した、送風管30内の圧力を目標管内圧として必要空気量を各反応槽10に供給するための制御フローを、フローチャートで説明する。図5は、送風管内の圧力を目標管内圧して必要空気量を各反応槽10に供給するための制御フローを説明するフローチャートである。図5に示すように、空気供給量制御部40は、最初に、硝酸計43及びアンモニア計44により、各反応槽10内の廃水Wの硝酸濃度及びアンモニア濃度を計測する(ステップS10)。
【0076】
硝酸濃度及びアンモニア濃度を計測した後、空気供給量制御部40は、必要空気量算出部84により、水質空気量関係と計測した濃度と目標濃度とに基づき、各反応槽10の必要空気量を算出する(ステップS12)。具体的には、必要空気量算出部84は、関係記憶部82からアンモニア濃度と供給空気量との関係、及び硝酸濃度と供給空気量との関係のそれぞれについて、水質空気量関係を読み出す。必要空気量算出部84は、アンモニア濃度と硝酸濃度とのそれぞれについての目標濃度の値を取得する。廃水Wの硝酸濃度がその目標濃度となり、かつ、廃水Wのアンモニア濃度がその目標濃度となるように、反応槽10の必要空気量を算出する。必要空気量算出部84は、全ての反応槽10について、必要空気量を算出する。
【0077】
必要空気量を算出した後、空気供給量制御部40は、目標管内圧算出部74により、必要空気量から送風管損失圧力Hを算出し(ステップS16)、送風管損失圧力Hに基づき目標管内圧Pを算出する(ステップS18)。目標管内圧算出部74は、送風管30に必要空気量を供給した場合における送風管30の圧力損失を、送風管損失圧力Hとして算出する。そして、目標管内圧算出部74は、送風管損失圧力Hと予め定めた値Jとを合計して、その合計値を目標管内圧Pとして算出する。より詳しくは、目標管内圧算出部74は、各反応槽10への経路毎に、目標管内圧PYA、目標管内圧PYB、及び目標管内圧PYCを算出し、そのうちの最大値を、目標管内圧Pとする。
【0078】
目標管内圧Pを算出した後、空気供給量制御部40は、送風制御部76により、送風管30内が目標管内圧Pとなるように、送風機22の空気供給を制御する(ステップS20)。送風制御部76は、送風機22の運転する台数、送風機22のインレットベーンの開度、及び羽根部の回転数を制御して、送風機22から吐き出す空気量を調整して、母管32内の空気圧を目標管内圧とする。具体的な送風制御部76の制御フローは後述する。
【0079】
また、必要空気量を算出した後、空気供給量制御部40は、導入空気制御部78により、各反応槽10に必要空気量分の空気が供給されるように、導入弁36の開度を調整する(ステップS22)。ステップS20及びステップS22の後、ステップS24に移り、処理を終了しない場合(ステップS24;No)、ステップS10に戻り、同様の処理を繰り返す。すなわち、空気供給量制御部40は、所定の時間毎に各反応槽10内の廃水Wの硝酸濃度及びアンモニア濃度を計測し、その計測結果に基づき必要空気量及び目標管内圧を更新して、その更新した目標管内圧になるように、送風機22から吐出される空気量を逐次制御する。また、空気供給量制御部40は、更新された必要空気量分の空気が反応槽10に供給されるように、導入弁36の開度を逐次制御する。また、ステップS24で処理を終了する場合(ステップS24;Yes)、この処理を終了する。
【0080】
なお、上述の溶存酸素量制御の場合、ステップS10で反応槽10内の溶存酸素量を算出し、ステップS12で溶存酸素量が目標量(目標水質)となるように必要空気量を算出する。その他の処理は、上記説明と同様である。
【0081】
(送風制御部による送風機の制御)
次に、送風制御部76による送風機22の制御について説明する。図6は、送風機制御部による送風機の制御を説明するフローチャートである。図7は、送風機による送風機の制御を説明するグラフである。図6に示すように、送風制御部76は、最初に、目標管内圧算出部74から目標管内圧の値を取得する(ステップS30)。
【0082】
送風制御部76は、送風機22の最大出力における管内圧が、目標管内圧以上であるかを判断する(ステップS32)。送風機22の最大出力とは、現在の送風機22の運転台数において、全ての送風機22の出力を最大とした場合の出力である。さらに言えば、送風機22のインレットベーンの開度を最大にし、かつ、羽根部の回転数を最大にした場合の出力が、最大出力となる。図7の横軸は、送風機22の出力値であり、縦軸は送風管30の管内圧である。図7に示すように、送風機22が一台稼働している場合の管内圧は、最大出力において管内圧Prになる。送風機22が二台稼働している場合の管内圧は、例えば定格出力において管内圧Prまで上昇し、さらに最大出力に上げるに従って、管内圧Prまで上昇する。送風機22が三台稼働している場合の管内圧は、例えば定格出力において管内圧Prまで上昇し、さらに最大出力に上げるに従って、管内圧Prまで上昇する。送風機22が四台稼働している場合の管内圧は、例えば定格出力において管内圧Prまで上昇し、最大出力に上げるに従ってさらに上昇する。図7の例では、目標管内圧が、管内圧Prと管内圧Prとの間の値であった場合を説明している。また、余裕管内圧は、目標管内圧より大きい値であり、図7の例では、管内圧Prと管内圧Prとの間の値であった場合を説明している。
【0083】
最大出力における管内圧が、目標管内圧以上でない(ステップS32;No)、すなわち目標管内圧より低い場合、送風制御部76は、送風機22の稼働台数を増加させる(ステップS34)。図7の例では、送風機22を二台稼働している場合の最大出力における管内圧は、目標管内圧より低くなり、この場合、送風制御部76は、稼働台数を三台にする。稼働台数を増加させたら、ステップS32に戻り、増加した稼働台数における送風機22の最大出力が、目標管内圧以上であるかを判断する。
【0084】
最大出力における管内圧が、目標管内圧以上である場合(ステップS32;Yes)、送風制御部76は、送風機22の最大出力における管内圧が、余裕管内圧以下であるかを判断する(ステップS36)。最大出力における管内圧が余裕管内圧以下である場合(ステップS36;Yes)、送風制御部76は、稼働台数をそのままにして、目標管内圧となるように、稼働している送風機22の出力を制御する(ステップS38)。図7の例では、送風機22を三台稼働している場合の最大出力における管内圧は、目標管内圧以上であり、余裕管内圧以下である。図7の例では、送風機22を三台稼働している場合、インレットベーンの開度と羽根部の回転数を制御することで出力を定格出力より小さくして、管内圧が目標管内圧となるようにする。
【0085】
最大出力における管内圧が余裕管内圧以下でない(ステップS36;No)、すなわち管内圧が余裕管内圧より高い場合、送風機22の稼働台数を減少させる(ステップS40)。図7の例では、送風機22を四台稼働している場合の最大出力における管内圧は、余裕管内圧より低くなり、この場合、送風制御部76は、稼働台数を三台にする。稼働台数を減少させたら、ステップS38に移り、目標管内圧となるように、稼働している送風機22の出力を制御する。ステップS38の後はステップS42に進み、処理を終了しない場合(ステップS42;No)、ステップS30に戻り、更新された目標管内圧の情報を取得し、その目標管内圧になるように、同様の処理を繰り返す。また、処理を終了する場合(ステップS42;Yes)、この処理を終了する。
【0086】
以上説明したように、本実施形態に係る廃水処理システム1は、廃水Wに生物処理を行う複数の反応槽10と、複数の反応槽10に接続される管である送風管30と、送風管30を介して、複数の反応槽10に生物処理を行うための空気を供給する送風ユニット20と、反応槽10への空気供給量を制御する空気供給量制御部40と、を有する。空気供給量制御部40は、水質測定部(本実施形態では硝酸計43及びアンモニア計44)、必要空気量取得部72、目標管内圧算出部74、及び送風制御部76を有する。水質測定部は、反応槽10に設けられて、反応槽10内の廃水Wの状態(本実施形態では廃水Wの硝酸濃度及びアンモニア濃度)を測定する。必要空気量取得部72は、水質測定部の測定結果に基づき、反応槽10内の廃水Wを所定の目標水質(本実施形態では目標濃度)にするための必要空気量を反応槽10毎に取得する。目標管内圧算出部74は、必要空気量の空気を送風管30内に供給した場合における送風管内の圧力損失により損失される空気の圧力である送風管損失圧力Hを算出する。目標管内圧算出部74は、送風管損失圧力Hに基づき、送風管30内の目標管内圧Pを算出する。目標管内圧算出部74は、必要空気量の変化に応じて、算出する目標管内圧Pを変化させる。
【0087】
この廃水処理システム1は、現在の廃水Wの状態を測定し、廃水Wを目標水質にするために必要な必要空気量を算出し、その必要空気量の空気を供給した場合の送風管30の送風管損失圧力Hを算出する。廃水処理システム1は、送風管30内の圧力が、送風管損失圧力Hに基づき算出した目標管内圧Pとなるように、送風ユニット20を制御している。そして、廃水処理システム1は、必要空気量、すなわち現在の水質に応じて、目標管内圧Pを変化させている。すなわち、廃水処理システム1は、現在の水質に基づき、送風ユニット20に対し、生物処理のために必要最小限の空気を供給するように管内圧を制御している。従って、廃水処理システム1は、生物処理に不要な空気を供給することを抑制して、送風に要するエネルギー消費を抑制することができる。廃水処理システム1においては、送風ユニット20によって送風を行うことが消費電力の多くを占めているため、この送風圧を抑制することで、消費電力の削減を効果的に行うことができる。また、廃水処理システム1は、全ての反応槽10への必要空気量に基づき目標管内圧Pを算出し、さらに言えば、複数の搬送槽10に接続されている配管の圧力損失に基づき目標管内圧Pを算出している。従って、廃水処理システム1は、各反応槽10に接続されている配管の圧力損失の度合いが異なる場合にも、それぞれの反応槽10に対して、必要な空気量を適切に供給することが可能となる。以上のように、本実施形態に係る廃水処理システム1は、送風に要するエネルギー消費を抑制しつつ、各反応槽10に適切に空気を供給することができる。
【0088】
また、目標管内圧算出部74は、送風管損失圧力Hと、反応槽10内に設けられて送風管30からの空気を反応槽10内に散気する散気部12の圧力損失(散気部損失圧力H)と、反応槽10内の廃水の水頭圧hとを合計して、目標管内圧Pがその合計値以上となるように、目標管内圧Pを算出する。この目標管内圧算出部74は、目標管内圧Pを、送風管損失圧力Hと散気部損失圧力Hと水頭圧hとの合計値以上となるように設定している。従って、この廃水処理システム1は、送風管30や散気部12の圧力損失や、廃水Wによる水頭圧があった場合にも、必要な空気量を適切に供給することが可能となる。
【0089】
また、送風管30は、送風ユニット20に接続される母管32と、母管32から分岐して複数の反応槽10にそれぞれ接続される複数の支管34と、支管34に設けられた導入弁36と、複数の支管34のそれぞれに供給される空気量を検出空気量として測定する支管空気量測定部48と、を有する。空気供給量制御部40は、支管34のそれぞれにおいて、検出空気量が必要空気量となるように、導入弁36の開度を調整する導入空気制御部78を有する。本実施形態においては、送風管30の圧力を目標管内圧Pとすることで、母管32に総必要空気量の空気が適切に供給できるようにしている。さらに、導入空気制御部78は、各支管34の導入弁36の開度を調整することで、各支管34に必要空気量分だけの空気が供給されるように、母管32の空気を各支管34に分配している。従って、この廃水処理システム1は、支管34毎に圧力損失が異なる場合にも、各支管34に適切に必要空気量を供給することができる。
【0090】
また、送風制御部76は、送風機22の稼働台数、インレットベーンの開度、及び羽根部の回転数の少なくともいずれか一つを制御する。従って、この廃水処理システム1は、送風管30の管内圧を適切に目標管内圧とすることができる。
【0091】
また、水質測定部は、反応槽10内の廃水Wの状態として、反応槽10内の廃水Wの硝酸性窒素濃度、アンモニア性窒素濃度、溶存酸素量、及び反応槽内への廃水の流入量の少なくともいずれか一つを測定する。従って、この廃水処理システム1は、適切に必要空気量を算出することができる。
【0092】
また、水質測定部は、反応槽10内の廃水Wの水質として、廃水Wの硝酸性窒素濃度、アンモニア性窒素濃度及び溶存酸素量の少なくともいずれか一つを測定し、必要空気量取得部72は、廃水Wの水質が目標水質となるように、必要空気量を算出する。この廃水処理システム1は、水質を測定し、その水質が目標の値となるように必要空気量を算出するため、必要空気量をより正確に算出することができる。なお、廃水処理システム1は、同時硝化脱窒処理を行ってもよい。同時硝化脱窒処理は、好気処理である硝化処理及び嫌気処理である脱窒処理を同じ槽内で行うため、消費酸素量の変動が大きく、必要空気量の変動も大きくなる。必要空気量の変動が大きくなるということは、必要空気量が低くなることが多くなるため、エネルギー消費の抑制をより大きく行うことができる。
【0093】
また、必要空気量取得部72は、関係記憶部82と必要空気量算出部84とを有する。関係記憶部82は、反応槽10に供給される空気量とその量の空気が供給された場合の廃水Wの水質(ここでは硝酸濃度及びアンモニア濃度)の変化量との関係である水質空気量関係を記憶する。必要空気量算出部84は、水質空気量関係と、水質測定部による水質測定結果と目標水質(ここでは目標濃度)とに基づき、廃水Wの水質を目標水質に変化させるために必要な空気量を、必要空気量として算出する。必要空気量算出部84は、水質空気量関係に基づき必要空気量を算出するため、より正確に必要空気量を算出することができる。
【0094】
また、関係記憶部82は、廃水Wの水質の変化が反応槽10内に供給される空気量の変化に対して遅れる一次遅れ系として、水質空気量関係を記憶する。必要空気量算出部84は、所定の時間の経過毎の水質測定結果に基づき、必要空気量を更新する。この廃水処理システム1は、一次遅れ系として必要空気量を算出しているため、時間毎の水質変化量を予測することができる。さらに、廃水処理システム1は、必要空気量の算出を繰り返して、算出結果を更新するため、最新の測定結果に基づき、空気供給量の制御をより正確に行うことができる。すなわち、廃水処理システム1は、フィードフォワード制御を行うことで、空気供給量の制御をより正確に行うことができる。
【0095】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る廃水処理システム1は、空気供給量制御部40Aが差分空気量算出部79Aを有し、差分空気量算出部79Aが算出した差分空気量に基づき、送風管30の管内圧を補正する点で、第1実施形態とは異なる。第2実施形態において第1実施形態と構成が共通する箇所は、説明を省略する。
【0096】
図8は、第2実施形態に係る制御部の構成を示すブロック図である。図8に示すように、第2実施形態に係る制御部42Aは、差分空気量算出部79Aを有する。差分空気量算出部79Aは、必要空気量取得部72から、総必要空気量の値を取得する。総必要空気量は、各反応槽10について算出した必要空気量の全てを合計した値である。また、差分空気量算出部79Aは、検出空気量取得部71から、各支管34の検出空気量、すなわち、支管空気量測定部48が測定した支管34に供給される実際の空気量の値を取得する。これにより、差分空気量算出部79Aは、各支管34の検出空気量の合計値である総検出空気量を取得している。
【0097】
ここで、目標管内圧算出部74は、必要空気量に基づき目標管内圧Pを設定している。従って、母管32には、全ての反応槽10に必要空気量を供給可能な圧力の空気が供給されている。また、導入空気制御部78は、導入弁36の開度を調整することで、母管32の空気を各支管34に分配している。従って、通常であれば、各支管34には、必要空気量の分だけの空気が供給され、各支管34の検出空気量は、各支管34の必要空気量となっている。そして、総検出空気量は、総必要空気量と一致している。
【0098】
しかし、例えば支管34の劣化や、散気部12の空気の排出口の目詰りなどで、目標管内圧Pの算出の際に用いた各部の圧力損失の値(予め定めた定数)が、実際の値とは異なった値となるおそれがある。このような場合、実際に反応槽10に必要空気量を供給するための管内圧が、算出した目標管内圧Pより大きくなる場合がある。すなわち、実際に供給されている空気量の合計値である総検出空気量が、総必要空気量より小さくなる。この場合、反応槽10に必要な空気を適切に供給できなくなるおそれがある。さらに、実際に反応槽10に必要空気量を供給するための管内圧が、算出した目標管内圧Pより小さくなる場合もある。この場合、実際に供給されている総検出空気量が、総必要空気量より大きくなる。このように、実際に反応槽10に必要空気量を供給するための管内圧が、算出した目標管内圧Pと異なる場合、総必要空気量と総検出空気量とが異なる値となるおそれがある。
【0099】
差分空気量算出部79Aは、総必要空気量と総検出空気量とが異なる場合、差分空気量を算出する。差分空気量とは、必要空気量と検出空気量との差分値である。差分空気量算出部79Aは、全ての反応槽10について、差分空気量を算出する。総必要空気量と総検出空気量とが異なる場合、少なくとも1つの反応槽10に対する必要空気量と検出空気量とは異なっている。第2実施形態に係る目標管内圧算出部74は、この差分空気量に基づき、差分送風管損失圧力を算出する。差分送風管損失圧力とは、この差分空気量の空気を送風管30に供給した場合における送風管30内の圧力損失によって損失される空気の圧力である。目標管内圧算出部74は、第1実施形態で説明した送風管損失圧力Hの算出方法と同じ方法で、差分送風管損失圧力を算出する。すなわち、目標管内圧算出部74は、送風管損失圧力Hの算出に用いた必要空気量をこの差分空気量に置き換え、さらに、送風管損失圧力Hの算出に用いた総必要空気量を総差分空気量に置き換えて、差分送風管損失圧力を算出する。なお、総差分空気量とは、差分空気量の合計値、すなわち総必要空気量と総検出空気量と差分値である。そして、目標管内圧算出部74は、差分送風管損失圧力に基づき、差分管内圧を算出する。目標管内圧算出部74は、第1実施形態で説明した目標管内圧Pの算出方法と同じ方法で、差分管内圧を算出する。すなわち、目標管内圧算出部74は、目標管内圧Pの算出に用いた送風管損失圧力Hを、この差分送風管損失圧力に置き換えて、差分管内圧を算出する。目標管内圧算出部74は、反応槽10A、10B、10Cへの経路毎に差分管内圧を算出し、それらの差分管内圧の最大値を、実際の最大値として決定する。
【0100】
目標管内圧算出部74は、この差分管内圧に基づき、目標管内圧Pを補正する。具体的には、目標管内圧算出部74は、総検出空気量が総必要空気量より小さい場合、目標管内圧Pに差分管内圧を加えた値を、補正目標管内圧として算出する。また、目標管内圧算出部74は、総検出空気量が総必要空気量より大きい場合、目標管内圧Pから差分管内圧を差し引いた値を、補正目標管内圧として算出する。送風制御部76は、送風管30内における圧力が、補正目標管内圧となるように、送風ユニット20からの空気供給を制御する。これにより、送風管30内の圧力を、実際に反応槽10に必要空気量を供給するための管内圧に近づけることができ、総検出空気量を総必要空気量と一致させることが可能となる。導入空気制御部78は、導入弁36の開度を再度調整することで、支管34への空気量を調整し、各支管34の検出空気量を必要空気量に一致させる。これにより、例えば劣化などにより圧力損失に変動が生じた場合も、反応槽10に必要な空気を適切に供給することが可能となる。例えば、1つの支管34での検出空気量が必要空気量に足りていない場合、この支管34に接続されている導入弁の開度や、別の支管34に接続されている導入弁36の開度を調整して、他の支管34に供給されている空気を、空気が足りていない支管34に補填することも考えられる。しかし、その支管34において検出空気量が必要空気量に足りていない場合、圧損によりその支管34での圧力が不足している場合が考えられる。従って、この場合、例え導入弁36を調整しても圧力が上がらず、支管34に空気を補填することができないおそれがある。それに対し、本実施形態では、圧損を加味して管内圧を上昇させているため、導入弁36を調整しても空気を補填できない場合であっても、適切に必要な空気を補填することができる。
【0101】
以上説明した第2実施形態における送風管30の管内圧の補正フローを、フローチャートに基づき説明する。図9は、第2実施形態に係る管内圧の補正フローを説明するフローチャートである。図9は、図5に示す処理を実行しており、送風管30(母管32)が、目標管内圧Pとなった後の処理である。そして、差分空気量算出部79Aは、検出空気量取得部71から総検出空気量の値を取得し、必要空気量取得部72から、総必要空気量の値を取得している。図9に示すように、空気供給量制御部40Aは、差分空気量算出部79Aにより、総検出空気量が総必要空気量と異なるかを判断する(ステップS50)。差分空気量算出部79Aは、総検出空気量と総必要空気量との差が所定の閾値以上である場合に、総検出空気量が総必要空気量と異なると判断し、総検出空気量と総必要空気量との差が所定の閾値より低い場合に、総検出空気量が総必要空気量と同じであると判断してもよい。総検出空気量が総必要空気量と異ならない場合(ステップS50;No)、ステップS62に移動する。
【0102】
総検出空気量が総必要空気量と異なる場合(ステップS50;Yes)、空気供給量制御部40Aは、差分空気量算出部79Aにより、差分空気量を算出し(ステップS52)、目標管内圧算出部74により、差分空気量から差分送風管損失圧力を算出し(ステップS54)、差分送風管損失圧力から差分管内圧を算出する(ステップS56)。差分管内圧を算出した後、空気供給量制御部40Aは、目標管内圧算出部74により、差分管内圧と目標管内圧とから補正目標管内圧を算出する(ステップS58)。すなわち、目標管内圧算出部74は、差分管内圧で目標管内圧を補正して、補正した値を補正目標管内圧とする。補正目標管内圧を算出した後、空気供給量制御部40Aは、送風制御部76により、送風管30(母管32)内における圧力が、補正目標管内圧となるように、送風ユニット20からの空気供給を制御する(ステップS60)。その後、ステップS62に移動し、処理を終了する場合(ステップS62;Yes)、本処理を終了し、処理を終了しない場合(ステップS62;No)、ステップS50に戻り処理を繰り返す。
【0103】
以上説明したように、第2実施形態に係る空気供給量制御部40Aは、差分空気量算出部79Aを有する。差分空気量算出部79Aは、総検出空気量が総必要空気量と異なる場合に、必要空気量と検出空気量の差分である差分空気量を、反応槽10毎に算出する。第2実施形態に係る目標管内圧算出部74は、差分空気量の空気を送風管30内に供給した場合における送風管30内の圧力損失(差分送風管損失圧力)に基づき、目標管内圧Pを補正する。第2実施形態に係る送風制御部76は、送風管30内における圧力が補正した目標管内圧P(補正目標管内圧)となるように、送風ユニット20からの空気供給を制御する。
【0104】
第2実施形態に係る廃水処理システム1は、総検出空気量が総必要空気量と異なる場合に、差分送風管損失圧力に基づき、目標管内圧Pを補正し、送風管30内の圧力を、その補正した目標管内圧P(補正目標管内圧)に補正する。従って、第2実施形態に係る廃水処理システム1は、例えば劣化などにより圧力損失に変動が生じた場合も、反応槽10に必要な空気を適切に供給することが可能となる。
【0105】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これら実施形態等の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態等の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0106】
1 廃水処理システム
10 反応槽
12 散気部
20 送風ユニット
22 送風機
30 送風管
31 導入管
32 母管
34 支管
40 空気供給量制御部
42 制御部
43 硝酸計
44 アンモニア計
46 吸気測定部
47 母管内圧測定部
48 支管空気量測定部
70 水質測定結果取得部
72 必要空気量取得部
74 目標管内圧算出部
76 送風制御部
78 導入空気制御部
82 関係記憶部
84 必要空気量算出部
W 廃水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9