(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】オレフィン重合触媒用遷移金属化合物およびこれを含むオレフィン重合用触媒
(51)【国際特許分類】
C07F 19/00 20060101AFI20241112BHJP
C08F 4/6592 20060101ALI20241112BHJP
C07F 17/00 20060101ALN20241112BHJP
C07F 7/00 20060101ALN20241112BHJP
【FI】
C07F19/00 CSP
C08F4/6592
C07F17/00
C07F7/00 A
C07F7/00 Z
(21)【出願番号】P 2023063802
(22)【出願日】2023-04-11
(62)【分割の表示】P 2021526494の分割
【原出願日】2019-11-11
【審査請求日】2023-04-11
(31)【優先権主張番号】10-2018-0143289
(32)【優先日】2018-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520161344
【氏名又は名称】ハンファ ソリューションズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】バク ソンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ウク
(72)【発明者】
【氏名】ピアオ ランファ
(72)【発明者】
【氏名】イ ヒョンスン
【審査官】小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/151790(WO,A1)
【文献】Qian, Yanlong et al.,New substituted titanocene, zirconocene and hafnocene dichlorides,Transition Metal Chemistry (London),1996年,21(5),393-397
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される遷移金属化合物であって、
【化1】
前記化学式1において、nはそれぞれ独立して1~20の整数であり、
Mはチタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)またはハフニウム(Hf)であり、
Xは、それぞれ独立してハロゲン、C
1-20アルキル、C
2-20アルケニル、C
2-20アルキニル、C
6-20アリール、C
1-20アルキルC
6-20アリール、C
6-20アリールC
1-20アルキル、C
1-20アルキルアミド、またはC
6-20アリールアミドであり、
R
1~R
4およびR
5~R
8はそれぞれ独立して、水素、置換または非置換のC
1-20アルキル、置換または非置換のC
2-20アルケニル、置換または非置換のC
6-20アリール、置換または非置換のC
1-20アルキルC
6-20アリール、置換または非置換のC
6-20アリールC
1-20アルキル、置換または非置換のC
1-20ヘテロアルキル、置換または非置換のC
3-20ヘテロアリール、置換または非置換のC
1-20アルキルアミド、置換または非置換のC
6-20アリールアミド、または置換または非置換のC
1-20シリルであり、
R
9~R
11およびR
12~R
14はそれぞれ独立して、置換または非置換のC
1-20アルキル、置換または非置換のC
2-20アルケニル、置換または非置換のC
6-20アリール、置換または非置換のC
1-20アルキルC
6-20アリール、置換または非置換のC
6-20アリールC
1-20アルキル、置換または非置換のC
1-20ヘテロアルキル、置換または非置換のC
3-20ヘテロアリール、置換または非置換のC
1-20アルキルアミド、置換または非置換のC
6-20アリールアミド、または置換または非置換のC
1-20シリルであり、
R
1~R
4およびR
5~R
8は、それぞれ独立して、隣接する基が結合して置換または非置換の飽和または不飽和C
4-20環を形成し得、
前記化学式1で表される化合物が、下記化学式1-
9~1-
11で表される化合物のいずれか1つである、遷移金属化合物:
【化2】
前記化学式1-9~1-11において、Meはメチル基であり、Buはブチル基である。
【請求項2】
請求項
1に記載の遷移金属化合物と、助触媒化合物とを含む、オレフィン重合用触媒。
【請求項3】
助触媒化合物が下記化学式2で表される化合物、化学式3で表される化合物および化学式4で表される化合物からなる群より選択される1つ以上である、請求項
2に記載のオレフィン重合用触媒:
【化3】
[化学式4]
[L-H]
+[Z(A)
4]
-または[L]
+[Z(A)
4]
-
前記化学式2において、nは2以上の整数であり、R
aはハロゲン原子、C
1-20炭化水素基またはハロゲンで置換されたC
1-20炭化水素基であり、
前記化学式3において、Dはアルミニウム(Al)またはボロン(B)であり、R
b、R
cおよびR
dはそれぞれ独立して、ハロゲン原子、C
1-20炭化水素基、ハロゲンで置換されたC
1-20炭化水素基、またはC
1-20アルコキシ基であり、
前記化学式4において、Lは中性または陽イオン性ルイス塩基であり、[LH]
+および[L]
+はブレンステッド酸であり、Zは13族元素であり、Aはそれぞれ独立して置換または非置換のC
6-20アリール基か、置換または非置換のC
1-20アルキル基である。
【請求項4】
前記化学式2で表される化合物が、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、およびブチルアルミノキサンからなる群より選択される少なくとも一つである、請求項
3に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項5】
前記化学式3で表される化合物が、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-s-ブチルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリイソペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、メチルジエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ-p-トリルアルミニウム、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、トリメチルボロン、トリエチルボロン、トリイソブチルボロン、トリプロピルボロン、およびトリブチルボロンからなる群より選択される少なくとも一つである、請求項
3に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項6】
前記化学式4で表される化合物が、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルボレート、ジエチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボレート、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリメチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリエチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、ジエチルアンモニウムテトラペンタテトラフェニルアルミニウム、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、およびトリフェニルカルベニウムテトラペンタフルオロフェニルボレートからなる群より選択される少なくとも一つである、請求項
3に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項7】
前記遷移金属化合物、助触媒化合物、またはそのいずれも担持する担体をさらに含む、請求項
2に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項8】
前記担体が、シリカ、アルミナ、および酸化マグネシウム(マグネシア)からなる群より選択される少なくとも一つを含む、請求項
7に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項9】
前記担体に担持される遷移金属化合物の量が担体1gを基準に0.001mmol~1mmolであり、前記担体に担持される助触媒化合物の量が担体1gを基準に2mmol~15mmolである、請求項
7に記載のオレフィン重合用触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン重合触媒用遷移金属化合物およびこれを含むオレフィン重合用触媒に関するものである。具体的に、本発明は、シクロペンタジエニル基にアリルトリメチルシラン置換体が導入されたオレフィン重合触媒用遷移金属化合物およびこれを含むオレフィン重合用触媒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オレフィンを重合するために利用される触媒の一つであるメタロセン触媒は、遷移金属または遷移金属ハロゲン化合物にシクロペンタジエニル(cyclopentadienyl)、インデニル(indenyl)、シクロヘプタジエニル(cycloheptadienyl)などのリガンドが配位結合された化合物であり、サンドイッチ構造を基本的な形態として有する。
【0003】
オレフィンを重合するために使用される他の触媒であるチーグラー・ナッタ(Ziegler-Natta)触媒が、活性点である金属成分が不活性の固体表面に分散され活性点の性質が均一ではないのに対し、メタロセン触媒は一定の構造を有する1つの化合物であるため、すべての活性点が同一の重合特性を有する単一活性点触媒(single-site catalyst)として知られている。このようなメタロセン触媒で重合された高分子は、分子量分布が狭く共単量体の分布が均一であり、チーグラー・ナッタ触媒に比べて共重合活性度が高い。
【0004】
しかし、活性が高く、共重合性がさらに向上し、高分子量の樹脂を調製することができるオレフィン重合用メタロセン触媒が依然として求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、活性が高く、優れた物性を有する樹脂を調製することができ、新規の構造を有するオレフィン重合触媒用遷移金属化合物およびこれを含むオレフィン重合用メタロセン触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するための本発明の一具体例により、下記化学式1で表される遷移金属化合物が提供される。
【0007】
【0008】
前記化学式1において、nはそれぞれ独立して1~20の整数であり、
Mはチタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)またはハフニウム(Hf)であり、
Xは、それぞれ独立して、ハロゲン、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C6-20アリール、C1-20アルキルC6-20アリール、C6-20アリールC1-20アルキル、C1-20アルキルアミド、またはC6-20アリールアミドであり、
R1~R4およびR5~R8はそれぞれ独立して、水素、置換または非置換のC1-20アルキル、置換または非置換のC2-20アルケニル、置換または非置換のC6-20アリール、置換または非置換のC1-20アルキルC6-20アリール、置換または非置換のC6-20アリールC1-20アルキル、置換または非置換のC1-20ヘテロアルキル、置換または非置換のC3-20ヘテロアリール、置換または非置換のC1-20アルキルアミド、置換または非置換のC6-20アリールアミド、または置換または非置換のC1-20シリルであり、
R9~R11およびR12~R14はそれぞれ独立して、置換または非置換のC1-20アルキル、置換または非置換のC2-20アルケニル、置換または非置換のC6-20アリール、置換または非置換のC1-20アルキルC6-20アリール、置換または非置換のC6-20アリールC1-20アルキル、置換または非置換のC1-20ヘテロアルキル、置換または非置換のC3-20ヘテロアリール、置換または非置換のC1-20アルキルアミド、置換または非置換のC6-20アリールアミド、または置換または非置換のC1-20シリルであり、
R1~R4およびR5~R8は、それぞれ独立して、隣接する基が結合して置換または非置換の飽和または不飽和C4-20環を形成し得る。
【0009】
具体的に、前記化学式1において、nはそれぞれ1または2であり、Mは、ジルコニウムまたはハフニウムであり、Xはそれぞれ、ハロゲンもしくは置換または非置換のC1-20アルキルであり、R1~R4およびR5~R8はそれぞれ水素であり、R9~R11およびR12~R14はそれぞれ置換または非置換のC1-20アルキルもしくは置換または非置換のC6-20アリールである。
【0010】
好ましくは、前記化学式1で表される化合物が、下記化学式1-1~1-8で表される化合物のいずれか1つであり得る。
【0011】
【0012】
前記化学式1-1~1-8において、Mはジルコニウムまたはハフニウムであり、Xはそれぞれ、ハロゲンもしくは置換または非置換のC1-20アルキルであり、Meはメチル基であり、Phはフェニル基である。
【0013】
より好ましくは、前記化学式1で表される化合物が、下記化学式1-9~1-11で表される化合物のいずれか1つであり得る。
【0014】
【化3】
前記化学式1-9~1-11において、Meはメチル基であり、Buはブチル基である。
【0015】
本発明の他の具体例により、前記遷移金属化合物と、助触媒化合物とを含むオレフィン重合用触媒が提供される。
【0016】
具体的に、助触媒化合物は、下記化学式2で表される化合物、化学式3で表される化合物および化学式4で表される化合物からなる群より選択される1つ以上であり得る。
【0017】
【化4】
[化学式4]
[L-H]
+[Z(A)
4]
-または[L]
+[Z(A)
4]
-
【0018】
前記化学式2において、nは2以上の整数であり、Raはハロゲン原子、C1-20炭化水素基またはハロゲンで置換されたC1-20炭化水素基である。
【0019】
前記化学式3において、Dはアルミニウム(Al)またはボロン(B)であり、Rb、RcおよびRdはそれぞれ独立して、ハロゲン原子、C1-20炭化水素基、ハロゲンで置換されたC1-20炭化水素基、またはC1-20アルコキシ基である。
【0020】
前記化学式4において、Lは中性または陽イオン性ルイス塩基であり、[LH]+および[L]+はブレンステッド酸であり、Zは13族元素であり、Aはそれぞれ独立して置換または非置換のC6-20アリール基か、置換または非置換のC1-20アルキル基である。
【0021】
具体的に、前記化学式2で表される化合物は、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、およびブチルアルミノキサンからなる群より選択される少なくとも一つである。
【0022】
また、化学式3で表される化合物は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-s-ブチルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリイソペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、メチルジエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ-p-トリルアルミニウム、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、トリメチルボロン、トリエチルボロン、トリイソブチルボロン、トリプロピルボロン、およびトリブチルボロンからなる群より選択される少なくとも一つである。
【0023】
また、前記化学式4で表される化合物は、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルボレート、ジエチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボレート、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリメチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリエチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、ジエチルアンモニウムテトラペンタテトラフェニルアルミニウム、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、およびトリフェニルカルベニウムテトラペンタフルオロフェニルボレートからなる群より選択される少なくとも一つである。
【0024】
好ましくは、オレフィン重合用触媒が、遷移金属化合物を担持する担体をさらに含む。具体的に、担体が、遷移金属化合物と助触媒化合物とのいずれも担持し得る。
【0025】
具体的に、前記担体は、シリカ、アルミナおよび酸化マグネシウム(マグネシア)からなる群より選択される少なくとも一つを含み得る。
【0026】
ここで、担体に担持される遷移金属化合物の量が担体1gを基準に0.001mmol~1mmolであり、担体に担持される助触媒化合物の量が担体1gを基準に2mmol~15mmolある。
【発明の効果】
【0027】
本発明の具体例によるオレフィン重合触媒用遷移金属化合物およびこれを含むオレフィン重合用メタロセン触媒は、特異な立体構造を有するため、重合体の物性調節が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
【0029】
[オレフィン重合触媒用遷移金属化合物]
本発明の一具体例により、下記化学式1で表される遷移金属化合物が提供される。
【0030】
【化5】
前記化学式1において、nはそれぞれ独立して1~20の整数、好ましくは1~10の整数、より好ましくは1~5の整数である。具体的に、nはそれぞれ1または2であり得る。
【0031】
Mは、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)またはハフニウム(Hf)である。具体的に、Mは、ジルコニウムまたはハフニウムであり得る。
【0032】
Xは、それぞれ独立して、ハロゲン、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C6-20アリール、C1-20アルキルC6-20アリール、C6-20アリールC1-20アルキル、C1-20アルキルアミド、またはC6-20アリールアミドである。具体的に、Xはそれぞれ、ハロゲンもしくは置換または非置換のC1-20アルキルであり得る。より具体的に、Xはそれぞれ、塩素またはブチル基であり得る。
【0033】
R1~R4およびR5~R8は、それぞれ独立して、水素、置換または非置換のC1-20アルキル、置換または非置換のC2-20アルケニル、置換または非置換のC6-20アリール、置換または非置換のC1-20アルキルC6-20アリール、置換または非置換のC6-20アリールC1-20アルキル、置換または非置換のC1-20ヘテロアルキル、置換または非置換のC3-20ヘテロアリール、置換または非置換のC1-20アルキルアミド、置換または非置換のC6-20アリールアミド、または置換または非置換のC1-20シリルである。また、R1~R4およびR5~R8は、それぞれ独立して、隣接する基が結合して置換または非置換の飽和または不飽和C4-20環を形成し得る。具体的に、R1~R4およびR5~R8はそれぞれ水素であり得る。
【0034】
R9~R11およびR12~R14は、それぞれ独立して、置換または非置換のC1-20アルキル、置換または非置換のC2-20アルケニル、置換または非置換のC6-20アリール、置換または非置換のC1-20アルキルC6-20アリール、置換または非置換のC6-20アリールC1-20アルキル、置換または非置換のC1-20ヘテロアルキル、置換または非置換のC3-20ヘテロアリール、置換または非置換のC1-20アルキルアミド、置換または非置換のC6-20アリールアミド、または置換または非置換のC1-20シリルである。
【0035】
具体的に、R9~R11およびR12~R14はそれぞれ、置換または非置換のC1-20アルキルもしくは置換または非置換のC6-20アリールであり得る。より具体的に、R9~R11およびR12~R14はそれぞれ、メチル基またはフェニル基であり得る。
【0036】
本発明の好ましい具体例において、前記化学式1で表される化合物が、下記化学式1-1~1-8で表される化合物のいずれか1つであり得る。
【0037】
【0038】
前記化学式1-1~1-8において、Mはジルコニウムまたはハフニウムであり、Xはそれぞれハロゲンもしくは置換または非置換のC1-20アルキル、好ましくは塩素またはブチル基であり、Meはメチル基であり、Phはフェニル基である。
【0039】
本発明のより好ましい具体例において、前記化学式1で表される化合物が、下記化学式1-9~1-11で表される化合物のいずれか1つであり得る。
【0040】
【化7】
前記化学式1-9~1-11において、Meはメチル基であり、Buはブチル基である。
【0041】
[オレフィン重合用触媒]
本発明の他の具体例により、下記化学式1で表される遷移金属化合物と、助触媒化合物とを含むオレフィン重合用触媒が提供される。
【0042】
【0043】
前記化学式1で、n、M、X、R1~R4およびR5~R8、並びにR9~R11およびR12~R14は、前記遷移金属化合物の項目において説明した通りである。
【0044】
本発明の好ましい具体例において、前記化学式1で表される化合物が、下記化学式1-1~1-8で表される化合物のいずれか1つであり得る。
【0045】
【0046】
前記化学式1-1~1-8において、M、X、Me、およびPhは、前記遷移金属化合物の項目において説明した通りである。
【0047】
本発明のより好ましい具体例において、前記化学式1で表される化合物が、下記化学式1-9~1-11で表される化合物のいずれか1つであり得る。
【0048】
【0049】
一方、助触媒化合物は、下記化学式2で表される化合物、化学式3で表される化合物および化学式4で表される化合物のうち一つ以上を含み得る。
【0050】
【0051】
前記化学式2において、nは2以上の整数であり、Raはハロゲン原子、C1-20炭化水素、またはハロゲンで置換されたC1-20炭化水素であり得る。具体的に、Raは、メチル、エチル、n-ブチル、またはイソブチルであり得る。
【0052】
【0053】
前記化学式3において、Dはアルミニウム(Al)またはボロン(B)であり、Rb、RcおよびRdはそれぞれ独立して、ハロゲン原子、C1-20炭化水素基、ハロゲンで置換されたC1-20炭化水素基、またはC1-20アルコキシ基である。具体的に、Dがアルミニウム(Al)のとき、Rb、RcおよびRdはそれぞれ独立してメチルまたはイソブチルであり、Dがボロン(B)のとき、Rb、RcおよびRdはそれぞれペンタフルオロフェニルであり得る。
【0054】
[化学式4]
[L-H]+[Z(A)4]-または[L]+[Z(A)4]-
【0055】
前記化学式4において、Lは中性または陽イオン性ルイス塩基であり、[L‐H]+および[L]+はブレンステッド酸であり、Zは13族元素であり、Aはそれぞれ独立して、置換または非置換のC6-20アリール基であるか、置換または非置換のC1-20アルキル基である。具体的に、[LH]+はジメチルアニリニウム陽イオンであり、[Z(A)4]-は[B(C6F5)4]-であり、[L]+は[(C6H5)3C]+であり得る。
【0056】
具体的に、前記化学式2で表される化合物の例としては、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、ブチルアルミノキサンなどが挙げられ、メチルアルミノキサンが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0057】
前記化学式3で表される化合物の例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-s-ブチルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリイソペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、メチルジエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ-p-トリルアルミニウム、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、トリメチルボロン、トリエチルボロン、トリイソブチルボロン、トリプロピルボロン、トリブチルボロンなどが挙げられ、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、およびトリイソブチルアルミニウムが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0058】
前記化学式4で表される化合物の例としては、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルボレート、ジエチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボレート、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリメチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリエチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、ジエチルアンモニウムテトラペンタテトラフェニルアルミニウム、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、およびトリフェニルカルベニウムテトラペンタフルオロフェニルボレートなどが挙げられる。
【0059】
本発明の好ましい具体例において、オレフィン重合用触媒が遷移金属化合物を担持する担体をさらに含み得る。具体的に、担体が、遷移金属化合物と助触媒化合物とのいずれも担持し得る。
【0060】
この際、担体は、表面にヒドロキシ基を含有する物質を含んでも良く、好ましくは、乾燥され表面に水分が除去された、反応性の大きいヒドロキシ基とシロキサン基とを有する物質が使用され得る。例えば、担体は、シリカ、アルミナ、および酸化マグネシウム(マグネシア)からなる群より選択される少なくとも一つを含み得る。具体的に、高温で乾燥されたシリカ、シリカ-アルミナ、およびシリカ-マグネシアなどが担体として使用され得、これらは通常、Na2O、K2CO3、BaSO4、およびMg(NO3)2などの酸化物、炭酸塩、硫酸塩、および硝酸塩成分を含有し得る。また、これらは、炭素、ゼオライト、塩化マグネシウムなどをも含み得る。ただし、担体は、これらに限定されるものではなく、遷移金属化合物と助触媒化合物を担持し得るものであれば特に制限されない。
【0061】
オレフィン重合用触媒に使用され得る遷移金属化合物および/または助触媒化合物を担持する方法として、物理的な吸着方法または化学的吸着方法が用いられ得る。
【0062】
例えば、物理的な吸着方法は、遷移金属化合物が溶解された溶液を担体に接触させた後乾燥する方法、遷移金属化合物と助触媒化合物とが溶解された溶液を担体に接触させた後乾燥する方法、または遷移金属化合物この溶解された溶液を担体に接触させた後乾燥して、遷移金属化合物が担持された担体を調製し、これとは別に助触媒化合物が溶解された溶液を担体に接触させた後乾燥して、助触媒化合物が担持された担体を調製した後、これらを混合する方法等であり得る。
【0063】
化学的吸着方法は、担体の表面に助触媒化合物を先に担持させた後、助触媒化合物に遷移金属化合物を担持させる方法、または担体表面の官能基(例えば、シリカの場合、シリカ表面のヒドロキシ基(-OH)と触媒化合物とを共有結合させる方法等であり得る。
【0064】
担体に担持される遷移金属化合物の量は、担体1gを基準に0.001mmol~1mmolであり得る。遷移金属化合物と担体との比が前記範囲を満足すれば、適切な担持触媒活性を示し、触媒の活性維持および経済性の面から有利である。
【0065】
担体に担持される助触媒化合物の量は、担体1gを基準に2mmol~15mmolであり得る。助触媒化合物と担体との比が前記範囲を満足すれば、触媒の活性維持および経済性の面から有利である。
【0066】
担体は、1種または2種以上が使用され得る。例えば、1種の担体に遷移金属化合物と助触媒化合物とがいずれも担持されても良く、2種以上の担体に遷移金属化合物と助触媒化合物とがそれぞれ担持されても良い。また、遷移金属化合物と助触媒化合物とのいずれか一方のみが担体に担持されても良い。
【0067】
[オレフィンの重合]
本発明の具体例によるオレフィン重合用触媒の存在下でオレフィン系単量体を重合してオレフィン系重合体を調製し得る。
【0068】
なお、オレフィン系重合体は、オレフィン系単量体の単独重合体(homopolymer)またはオレフィン系単量体と共単量体との共重合体(copolymer)であり得る。
【0069】
オレフィン系単量体は、C2-20α-オレフィン(α-olefin)、C4-20ディオレフィン(diolefin)、C3-20シクロオレフィン(cycloolefin)、およびC4-20シクロジオレフィン(cyclodiolefin)からなる群より選択される少なくとも一つである。
【0070】
例えば、オレフィン系単量体は、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、または1-ヘキサデセン等であり、オレフィン系重合体は、前記例示のオレフィン系単量体を1種のみ含む単独重合体であるか、または2種以上を含む共重合体であり得る。
【0071】
例示的な実施例において、オレフィン系重合体は、エチレンとC3-20α-オレフィンとが共重合された共重合体でも良く、エチレンと1-ヘキセンとが共重合された共重合体が好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0072】
この場合、エチレンの含有量は55重量%~99.9重量%が好ましく、90重量%~99.9重量%がより好ましい。α-オレフィン系共単量体の含有量は0.1重量%~45重量%が好ましく、0.1重量%~10重量%がより好ましい。
【0073】
本発明の具体例によるオレフィン系重合体は、例えば、フリーラジカル(free radical)、陽イオン(cationic)、配位(coordination)、縮合(condensation)、添加(addition)などの重合反応によって重合され得るが、これらに限定されるものではない。
【0074】
好ましい実施例として、オレフィン系重合体は、気相重合法、溶液重合法またはスラリー重合法などにより調製され得る。オレフィン系重合体が溶液重合法またはスラリー重合法により調製される場合、使用され得る溶媒の例として、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ノナン、デカン、およびこれらの異性体のようなC5-12脂肪族炭化水素溶媒;トルエン、ベンゼンのような芳香族炭化水素溶媒;ジクロロメタン、クロロベンゼンのような塩素原子で置換された炭化水素溶媒;およびこれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
(実施例)
以下、実施例により、本発明をより具体的に説明する。ただし、以下の実施例は、本発明を例示するためのみのものであり、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
【0076】
(調製例1:ビス[(2-トリメチルシリルメチルアリル)シクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド(bis [(2-trimethylsilylmethylallyl)cyclopentadienyl] zirconium dichloride;化学式1-9)の調製)
[2-(トリメチルシリルメチル)-2-プロペン-1-オール(2-(trimethylsilylmethyl)-2-propen-1-ol)の調製]
2-(トリメチルシリルメチル)アリルアセテート(2-(trimethylsilylmethyl)allyl acetate)(2.69g、14.4mmol)をメタノール(methanol;22ml)に溶かした溶液に、炭酸カリウム(K2CO3)水溶液(6.6M、14.4mmol)をゆっくり投入した。投入完了後、これを常温にて4時間撹拌した。撹拌後、これに水を入れて反応を終了させた。ジエチルエーテル(diethyl ether)を使用して有機層を抽出した後、硫酸マグネシウム(MgSO4)により残りの水を除去した。真空下ですべての溶媒を除去して、淡いベージュのオイル化合物1.51g(72%)を得た。
1 H-NMR (CDCl3, 300 MHz): δ 4.90-4.88 (m, 1H), 4.66 (s, 1H), 3.97 (s, 2H), 1.53 (s, 2H), 0.03 (s, 9H)。
【0077】
[2-(トリメチルシリルメチル)メタンスルホネート(2-(trimethylsilylmethyl)methanesulfonate)の調製]
2-(トリメチルシリルメチル)-2-プロペン-1-オール(1.51g、10.5mmol)とトリエチルアミン(triethylamine)(1.91g、18.8mmol)とをジクロロメタン(dichloromethane)(30ml)で希釈した溶液に、メタンスルホニルクロリド(methanesulfonyl chloride)(1.8g、15.7mmol)を0℃にてゆっくり添加した。その後、0℃にて3時間撹拌した。0℃にて炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)水溶液を入れて反応を終了させた後、ジクロロメタンで抽出して有機層を分離した。硫酸ナトリウム(Na2SO4)により残りの水を除去した後、真空下ですべての溶媒を除去して、黄色のオイル化合物1.9g(82%)を得た。
1H-NMR (CDCl3, 300 MHz): δ 5.03 (d, 1H), 4.84 (s, 1H), 4.56 (s, 2H), 3.02 (s, 3H), 1.60 (s, 2H), 0.06 (s, 9H)。
【0078】
[2-(トリメチルシリルメチル)アリルブロマイド(2-(trimethylsilylmethyl)allyl bromide)の調製]
2-(トリメチルシリルメチル)メタンスルホネート(1.9g、8.54mmol)をテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)(20ml)で希釈した溶液に、リチウムブロマイド(lithium bromide)をテトラヒドロフラン(15ml)に分散させた溶液を常温にてゆっくり添加した後、110℃にて4時間撹拌した。0℃にて蒸留水を入れて反応を終了させた後、ジエチルエーテルで抽出して有機層を分離した。硫酸ナトリウムにより残りの水を除去した後、真空下ですべての溶媒を除去して、黄色のオイル化合物1.12g(65%)を得た。
1H-NMR (CDCl3, 300 MHz): δ 5.04 (s, 1H), 4.74 (d, 1H), 3.90 (d, 2H), 1.72 (d, 2H), 0.05 (s, 9H)。
【0079】
[[2-(シクロペンタジエニルメチル)アリル]トリメチルシラン([2-(cyclopentadienylmethyl)allyl] trimethylsilane)の調製]
2-(トリメチルシリルメチル)アリルブロマイド(1.12g、5.41mmol)をテトラヒドロフラン(20ml)で希釈した溶液に、シクロペンタジエニルナトリウム(sodium cyclopentadienide)(3.04g、6.49mmol、2M in THF)を-30℃にてゆっくり滴下し、温度を徐々に常温に上げて12時間撹拌した。0℃にて蒸留水を添加して反応を終了させた後、ジエチルエーテルで抽出して有機層を分離した。硫酸マグネシウムにより残りの水を除去した後、カラムクロマトグラフィー(hexane)で分離して淡いベージュのオイル化合物620mg(60%)を得た。
1H-NMR (CDCl3, 300 MHz): δ 6.42-6.02 (m, 4H), 4.60-4.55 (m, 2H), 3.06-2.97 (m, 2H), 2.87-2.85 (m, 2H), 1.54 (s, 2H), 0.03 (d, 9H)。
【0080】
[[2-(トリメチルシリルメチル)アリル]シクロペンタジエニルリチウム([2-(trimethylsilylmethyl)allyl]cyclopentadienyl lithium)の調製]
[2-(シクロペンタジエニルメチル)アリル]トリメチルシラン(620mg、3.22mmol)をテトラヒドロフラン(10ml)で希釈した溶液に、n-ブチルリチウム(n-BuLi)(1.44g、2.93mmol、1.6Mヘキサン溶液)を-30℃にてゆっくりと添加した後、温度を徐々に常温に上げて12時間撹拌した。反応溶液の溶媒を真空下で乾燥した後、ヘキサンを入れて15分間撹拌した。生成された固体をろ過した後、真空下で乾燥して淡い黄色の固体化合物528mg(83%)を得た。
【0081】
[ビス[(2-トリメチルシリルメチルアリル)シクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド(bis [(2-trimethylsilylmethylallyl)cyclopentadienyl] zirconium dichloride)の調製]
[2-(トリメチルシリルメチル)アリル]シクロペンタジエニルリチウム(250mg、1.26mmol)をトルエン(toluene;3ml)で希釈した溶液に、塩化ジルコニウム(ZrCl4)(147mg、0.63mmol)をトルエン(2ml)に分散させた溶液を-30℃にてゆっくり添加した後、温度を徐々に常温に上げて12時間撹拌した。反応が終了したら反応溶液をろ過した後、ろ液の溶媒を真空下で乾燥した。生成された固体をヘキサンで洗浄し乾燥して、淡いベージュの固体化合物107mg(31%)を得た。
1H-NMR (CDCl3, 300 MHz): δ 6.31 (t, 2H), 6.22 (t, 2H), 4.55 (s, 1H), 4.44 (s, 1H), 3.26 (s, 2H), 1.52 (s, 2H), 0.05 (s, 9H)。
【0082】
(調製例2:ビス[(2-トリメチルシリルメチルアリル)シクロペンタジエニル]ハフニウムジクロリド(bis[(2-trimethylsilylmethylallyl)cyclopentadienyl]hafnium dichloride;化学式1-10)の調製)
調製例1と同様の方法により得られた[2-(トリメチルシリルメチル)アリル]シクロペンタジエニルリチウム(280mg、1.41mmol)をトルエン(3ml)で希釈した溶液に、塩化ハフニウム(HfCl4)(226mg、0.71mmol)をトルエン(2ml)に分散させた溶液を-30℃にてゆっくり添加した後、温度を徐々に常温に上げて12時間撹拌した。反応が終了したら反応溶液をろ過した後、ろ液の溶媒を真空下で乾燥した。生成された固体をヘキサンで洗浄し乾燥して、白色の固体化合物180mg(41%)を得た。
1H-NMR (CDCl3, 300 MHz): δ 6.21 (t, 2H), 6.12 (t, 2H), 4.54 (d, 2H), 4.44 (d, 1H), 3.28 (s, 2H), 1.52 (s, 2H), 0.05 (s, 9H)。
【0083】
(調製例3:ビス[(2-トリメチルシリルメチルアリル)シクロペンタジエニル]ハフニウムジブチル(bis[(2-trimethylsilylmethylallyl)cyclopentadienyl] hafnium dibutyl;化学式1-11)の調製)
調製例2と同様の方法により得られたビス[(2-トリメチルシリルメチルアリル)シクロペンタジエニル]ハフニウムジクロリド(40mg、0.06mmol)をトルエン(1ml)で希釈した溶液に、n-ブチルリチウム(55mg、0.13mmol)を-30℃にてゆっくり添加した後、温度を徐々に常温に上げて12時間撹拌した。反応が終了したら反応溶液をろ過した後、ろ液の溶媒を真空下で乾燥して、黄色の液体化合物34mg(80%)を得た。
1H-NMR (CDCl3, 300 MHz): δ 5.83 (t, 2H), 5.78 (t, 2H), 4.55 (d, 2H), 3.03 (s, 1H), 2.35 (s, 2H), 1.56 (s, 2H), 1.27-1.26 (m, 2H), 1.13-1.06 (m, 2H), 0.81 (t, 3H), 0.05 (s, 9H)。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の具体例により、活性が高く、優れた物性を有する樹脂を調製することができ、新規の構造を有するオレフィン重合触媒用遷移金属化合物およびこれを含むオレフィン重合用メタロセン触媒が提供され得る。