IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッドの特許一覧

特許7586967時計の設定及び巻上げの動作を最適化する方法、並びに最適化方法を実施するデバイス
<>
  • 特許-時計の設定及び巻上げの動作を最適化する方法、並びに最適化方法を実施するデバイス 図1
  • 特許-時計の設定及び巻上げの動作を最適化する方法、並びに最適化方法を実施するデバイス 図2
  • 特許-時計の設定及び巻上げの動作を最適化する方法、並びに最適化方法を実施するデバイス 図3
  • 特許-時計の設定及び巻上げの動作を最適化する方法、並びに最適化方法を実施するデバイス 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】時計の設定及び巻上げの動作を最適化する方法、並びに最適化方法を実施するデバイス
(51)【国際特許分類】
   G04D 7/00 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
G04D7/00 Z
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023103962
(22)【出願日】2023-06-26
(65)【公開番号】P2024059069
(43)【公開日】2024-04-30
【審査請求日】2023-06-26
(31)【優先権主張番号】22201985.3
(32)【優先日】2022-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム・ファーヴル
【審査官】藤澤 和浩
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03537233(EP,A1)
【文献】特開2020-85910(JP,A)
【文献】特開2018-200309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04D 7/00-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーボ制御デバイスの固定基準を有するジグ又は台(3)上に配設された時計又は前記時計の計時器ムーブメントの設定及び巻上げの動作を最適化する方法であって、前記サーボ制御デバイスは、前記方法を実施するため、前記時計又は前記計時器ムーブメントを運動させる手段を有し、前記方法は、最初に、前記計若しくは前記計時器ムーブメントの動作の測定を行うステップ、次に、振動信号を生成する前記デバイスの前記ジグ上で前記計若しくは前記計時器ムーブメントを穏やかに振とうする動作を起動するステップ、又は逆に、前記時計若しくは前記計時器ムーブメントの動作の測定を行う前に、最初に、前記時計若しくは前記計時器ムーブメント穏やか振とうする動作起動るステップ、同調する状態で前記穏やかな振とうを再開するステップ、又は前記測定を行うステップ及び前記振とうする動作を起動するステップの終了時に実施される同期ステップで構成されるステップを含む、方法において、
前記穏やかな振とう振動信号は、各連続振動期間において、平均速度で回転する前記デバイスの前記台の、前記平均回転速度を示す直線に対する回転速度記号の変更を含み、前記振動信号は、各振動期間にわたり、動速度のプラス部及びマイナス部を含み、前記振動信号の前記プラス部の絶対値の振幅は、前記マイナス部の絶対値の振幅とは異なることを特徴とする、方法。
【請求項2】
行われる前記測定は、音響測定又は振動測定であることを特徴とする、請求項1に記載の時計又は前記時計の計時器ムーブメントの設定及び巻上げの動作を最適化する方法。
【請求項3】
各連続振動期間の間、前記振動信号の前記プラス部の絶対値の最大振幅は、前記マイナス部の絶対値の最大振幅とは異なることを特徴とする、請求項1に記載の時計又は前記時計の計時器ムーブメントの設定及び巻上げの動作を最適化する方法。
【請求項4】
前記方法の第1の段階において、十分な継続時間で安定化休止が実施され、活動中の前記時計又は前記計時器ムーブメントの共振器が、巻上げ機構によって生成される励振とは無関係な振幅を有するようにし、前記方法の第2の段階において、数秒間の音響又は振動測定期間があり、穏やかな振とうモードの第3の段階は、ゼロに等しい稼働誤差を得るように、前記時計の基準振動子に対する同期を探索する特定の予めプログラムされた時間の間に実施されることを特徴とする、請求項1に記載の時計又は前記時計の計時器ムーブメントの設定及び巻上げの動作を最適化する方法。
【請求項5】
前記サーボ制御デバイスの動作中、第1の段階において、前記巻上げ機構の穏やかな振とう動作が実施され、穏やかな振とうで前記巻上げ機構によって制御される前記時計のてんぷに関連する前記穏やかな振とうの第1の振動信号及び第2の振動信号を生成し、第2の段階において、前記穏やかな振とう動作を停止し、所与の期間の間に音響又は振動測定を実施し、前記第2の振動信号は、依然として有効であり、第3の段階において、前記穏やかな振とう動作が起動される一方で、前記第2の振動信号と同調することを特徴とする、請求項1に記載の時計又は前記時計の計時器ムーブメントの設定及び巻上げの動作を最適化する方法。
【請求項6】
前記第2の段階における安定化の継続時間は、約30秒である一方で、前記音響又は振動測定の継続時間は、約4秒であることを特徴とする、請求項5に記載の時計又は前記時計の計時器ムーブメントの設定及び巻上げの動作を最適化する方法。
【請求項7】
請求項1に記載の最適化方法を実施する制御デバイスにおいて、前記デバイスは、駆動手段を備え、前記駆動手段は、第1に、中心回転軸上で、時計又は計時器ムーブメントが上に配設される巻上げ機構(4)の台又はジグ(3)を回転させることを目的とし、第2に、穏やかな振とう動作で、前記台又は前記ジグ(3)上で前記時計又は前記計時器ムーブメントを別の回転軸上で回転させることを目的とし、前記別の回転軸は、前記中心回転軸に平行であるか、又は前記中心回転軸と一致しなければならず、穏やかな振とう動作おいて、低振幅往復運動は、前記の回転軸回りに行われ、振動速度信号を生成することを目的とし、前記振動速度信号は、プラスの速度部及びマイナスの速度部を有する各期間毎の回転速度記号の変更を有するとを特徴とする、制御デバイス。
【請求項8】
前記台又は前記ジグ(3)に直交する前記中心回転軸での前記巻上げ機構(4)の前記台又は前記ジグ(3)の回転は、規定の平均速度で実施されるように構成されることを特徴とする、請求項7に記載の御デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に開ループ・システムにおいて時計の設定及び巻上げの動作を最適化する方法に関する。
【0002】
本発明は、最適化方法を実施する制御デバイスにも関する。
【背景技術】
【0003】
様々な種類のスマート巻上げ機構が公知であり、これらは、2つのカテゴリの巻上げ機構に分類し得る。第1に、巻上げ機構は、ビジョンによって時計の時間を読み取るスマート巻上げ機構とし得る。本ケースでは、閉ループ・サーボ制御装置が実装され、これにより、100%の固有誤差が修正される状態で、長期間、時計を完全に遅れずにすることを可能にする。第2に、巻上げ機構は、脱進機のノイズを聴くマイクロフォンのみを有するスマート巻上げ機構とし得る。この場合、開ループ・サーボ制御装置が実施され、時計は、長期間のずれを有する。
【0004】
上記で挙げた第1のカテゴリのスマート巻上げ機構は、完全な結果をもたらすが、時間の読取りのためのビジョンの使用に部分的に関係する特定の複雑さ及び高い費用という欠点を伴う。
【0005】
上記で挙げた第2のカテゴリのスマート巻上げ機構は、より単純であまり高額ではないが、一方で、長期間でのずれがあり、問題となることがある。この第2のカテゴリのスマート巻上げ機構における設定方法は、以下の段階から構成される:
-例えば、30秒の安定化休止。
-約5秒の音響測定期間。
-音響測定の結果に応じて、巻上げ機構は、予めプログラムされた一定の巻数を巻き上げる。この場合、この一定の巻数は、100回の巻数とすることができ、段階1に再度進む前に数分間継続し得る。
【0006】
特許文献1は、公称振動数で振動を生成するように構成された振動子により、時計の稼働を設定する方法を記載している。サーボ制御装置システムは、ある励振振動数で励振振動を生成する親振動子を備え、この励振振動数は、公称振動数と等しいか、又はこの公称振動数の整数倍に等しい。時計は、移行段階の間、再度、親振動子によって生成される励振振動又は変調運動を受け、移行段階の後、時計の振動子は、励振振動数で安定化する。そのような時計が固定される支持体を運動させるように構成された機械式又は自動式時計の巻上げ機構は、サーボ制御装置内に組み込まれる。
【0007】
稼働誤差は、特に、香箱の緩みによりずれるが、非網羅的に、環境、温度、湿度等の変動、様々な車上の摩耗、及び経時的な潤滑剤の劣化によってもずれる。
【0008】
状態誤差を制御する問題は、稼働誤差の制御の問題に追加される。
【0009】
自動巻上げ機構は、機械式又は自動式又は手動式時計を巻き上げるように設計されているが、振動質量体を運動させるか又は竜頭を回転させて、香箱を再度回転させるものであるにすぎず、時計の稼働又は状態のどちらも修正しない。ユーザが時計をそのような巻上げ機構のまま長時間放置した場合、表示される時間は、連続的かつ制御不可能な状態でずれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】欧州特許第3410235号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明は、時計の穏やかな振とう(gentle shaking)と定義される(フランス語の用語では「dorlotage(甘やかし)」と定義される)わずかな運動を伴う揺動によって、維持又は設定する動作と、機械式エネルギー源、即ち、時計の香箱に対する従来の巻き上げ動作による、一般的には機械式の、時計の時計仕掛の運動とを組み合わせることを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このことを行うため、少なくとも1つの機械式又は自動式又は手動式時計の設定及び巻上げを最適化する方法は、独立請求項1で規定される特徴により提案される。
【0013】
このことを行うため、最適化方法を実施するサーボ制御デバイスも、独立請求項7の特徴により提案される。
【0014】
最適化方法の1つの利点は、設定及び巻上げが開ループ・システム内で実施されることにある。主に、微調整は、いわゆる穏やかな振とう動作によって行われ、穏やかな振とう動作は、可変振動速度で時計を運動させることから構成され、可変振動速度は、各振動にわたり、時計の平均巻上げ速度と組み合わせた穏やかな振とう速度のプラス速度、その後のマイナス速度を伴う。
【0015】
前記最適化方法の1つの利点は、サーボ制御デバイス内で活動中の機械式若しくは自動式時計又は計時器ムーブメントの存在の検出が提供されることにある。サーボ制御デバイス内で活動中の時計又は計時器ムーブメントの存在をそのように検出した後、音響又は振動測定ステップがある。この測定は、デバイス内の時計若しくは時計の計時器ムーブメントの種類の検出、又はデバイス内で活動中の時計若しくは計時器ムーブメントの稼働誤差の検出を可能にする。測定ステップ時、又はこの測定ステップの直後、デバイスの台又はジグ上に配設された時計又は時計の計時器ムーブメントの運動の設定動作がある。時計又は計時器ムーブメントが上に配設される台又はジグは、好ましくは規定の平均速度で、台又はジグに直交する中心軸に対して回転可能である。
【0016】
最適化方法の更なる利点は、穏やかな振とう活動時、デバイスの台又はジグ上に置かれる時計又は計時器ムーブメントが、ある回転軸回りに低振幅往復運動を行うことにあり、この回転軸は、巻上げ機構の中心回転軸に平行であるか又はこの回転軸と一致する。台又はジグの平均回転速度は、直線として基準をなし、時計又は計時器ムーブメントは、この直線の付近で、例えば、正弦曲線状に振動する。したがって、穏やかな振とう段階における振動信号は、各周期において、プラス部及びマイナス部を有する回転速度記号の変更を含む。プラス部の絶対値の好ましい最大振幅は、マイナス部の絶対値の好ましい最大振幅とは異ならなければならず、これにより、活動中の時計又は計時器ムーブメントの時間にずれがないことを保証することになる。
【0017】
有利には、音響又は振動測定の場合、サーボ制御デバイス内の時計の種類を決定し得る。というのは、時計ごとの拍子が、例えば、3から6Hzまで様々であるためである。
【0018】
機械式若しくは自動式時計又はその計時器ムーブメントの設定及び巻上げを最適化する方法の目的、利点及び特徴は、図面を参照する以下の非限定的な説明においてより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明による、時計又は計時器ムーブメントの稼働を最適化又は調節するデバイス及びデバイスの運動の概略図であり、デバイスは、基準振動子と、ジグ又は台を駆動する励振振動数でドライバを作動する振動数変換器とを含み、ジグ又は台は、通常の振動子を含む時計又は計時器ムーブメントを支持する。
図2】本発明による時計の動作を最適化する方法による、時計の、最初の瞬間から急傾斜まで稼働誤差が変化するグラフである。Y軸では、分の目盛りの付いたX軸上の時間の関数として、わずかな運動(一日あたり数秒)の時間計測速度を示し、最初の瞬間から急傾斜までは、サーボ制御デバイスの起動、及び励振振動数におけるジグ又は台の振動に対応し、前記傾斜の後、移行又は同期段階が続き、時計の時間のゼロ誤差を達成、維持する。
図3】本発明による、いわゆる穏やかな振とう信号と、特に香箱等の機械式エネルギー源の振動質量体による従来の巻上げとを組み合わせたグラフである。
図4】本発明による、機械式又は自動式時計に対する設定及び巻上げの様々な段階のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の説明では、機械式若しくは自動式時計又はその計時器ムーブメントの動作を最適化する方法を説明する。従来技術で周知である自動式若しくは機械式時計又はその計時器ムーブメントの動作を最適化する方法を実施するデバイスの全ての構成要素は、最適化方法の様々なステップに関連して簡単に説明するにすぎない。
【0021】
本発明は、主に、特許文献1に記載の好ましくは機械式又は自動式時計の稼働を調節し、状態を修正するデバイス及び方法に基づき、当該文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0022】
図1は、本発明の最適化方法の全てのステップを実施するため、腕時計2又は計時器ムーブメントが上に置かれる又は固着されるデバイスの全ての必須の構成要素を正確に示す。本発明の最適化方法に関し、特に、時計の香箱等の機械式エネルギー源である従来の振動質量体の巻上げと比較して低い振幅の振動運動動作と、この巻上げとの組合せを提供する。この低振幅での振動運動動作は、計時器ムーブメントの穏やかな振とうという用語で定義され、即ち、計時器ムーブメントを維持、設定する。したがって、穏やかな振とうというこの用語は、説明全体にわたって、特許請求の範囲の特徴として繰り返される。
【0023】
したがって、本発明の目的は、開ループで、ビジョンを実行せずに、動作中、即ち活動中の計時器ムーブメントの設定又はサーボ制御を行うことにある。前記機械式時計2は、香箱(エネルギー源リザーブ)の巻上げ動作のために従来の振動質量体によって巻き上げ得る。したがって、上記のように、例えば、香箱の従来の巻上げ動作に加えて、機械式又は自動式時計の穏やかな振とう動作の実施を提供する。後に説明するように、ジグ又は台3上に置かれた時計2の穏やかな振とう及び巻上げにより、ムーブメント内部の振動子の動作振動数は、穏やかな振とう活動及び巻上げ動作のかなり長期間にわたり、かなり正確に、より低い価格で維持し得る。
【0024】
図1は、上記で挙げた従来技術の特許文献1で部分的に既に説明されている。サーボ制御デバイスは、基準振動子6と、必要な場合、例えば、励振振動数NEでドライバ4を作動させる振動数変換器5とを含む。
【0025】
このドライバ4は、特に、サーボ制御される時計2を支持するジグ又は台3に対する基準軸回りの往復運動をムーブメントに与え、好ましくは、時計2の通常の振動子1の振動車の軸は、基準軸に平行であるか又は基準軸と一致する。
【0026】
振動角度αは、周期的である時間の関数である。特に、振動角度αは、式α(t)=A・sin(2π・NE)であるか、又は同様のものである。振動角度αは、正方形、鋸歯又は他のサイクルに従うこともできる。以下で説明する穏やかな振とう動作は、時間に依存し周期的であるこの振動角度に言及する。
【0027】
そのようなサーボ制御デバイスは、公称振動数N0に関係するこの特定の励振振動数NEを選択することによって、時計2の稼働の調節を可能にする。また、以下に示すように、この同じデバイスは、励振振動数NEでなく、修正振動数NCで使用してもよい。
【0028】
より詳細には、このサーボ制御デバイスは、駆動手段を含み、駆動手段は、親振動子の励振振動を制御するように構成され、このサーボ制御デバイスが含む時計の稼働誤差EMを測定する手段と接続される。
【0029】
一般論的に、本明細書で説明する駆動手段、主要駆動手段及び中心駆動手段は、コンピュータ、計算器、プログラム可能自動装置、集積回路、又は本用途に適合するあらゆる他の人工知能手段から構成し得る。
【0030】
特定の実装形態では、このサーボ制御デバイスは、機械式又は自動式時計2のための自動巻上げ器又はドライバ4を含み、腕時計又は計時器ムーブメント等を受け入れる少なくとも1つのジグ又は台3は、この自動巻上げ器又はドライバ4に固着される。サーボ制御デバイスは、このジグにおいて、親振動子によって生成される励振振動に時計全体をさらすように構成される励振手段を含む、及び/又はこの親振動子によって生成される変調運動若しくは中心軸回りの回転運動に時計全体をさらすように構成される駆動手段を含む。
【0031】
好ましくは、サーボ制御デバイスは、前述の駆動手段を備えることができ、駆動手段は、第1に、台又はジグ3の平面に全体的に直交する中心回転軸上で巻上げ機構4の台を回転させ、第2に、穏やかな振とう動作で、別の回転軸上で時計又は時計の計時器ムーブメントを台又はジグ3上で回転させ得る。この別の回転軸は、中心回転軸に平行であるか又は中心回転軸と一致しなければならない。中心回転軸上の巻上げ機構4の台3の回転は、規定の平均速度で実施される一方で、穏やかな振とう動作において、低振幅往復運動は、振動速度信号を生成させるように別の回転軸回りに行われる。したがって、穏やかな振とう段階における振動信号は、各周期において、プラス部及びマイナス部を有する回転速度記号の変更を含む。
【0032】
より詳細には、この方法を実施するため、安定化の前及び/又は後、稼働誤差に対する少なくとも1つの測定が行われる。またより詳細には、この目的で設けられた表示又は発行手段上に、測定された稼働誤差値の表示又は発行が実施される。
【0033】
稼働の調節は一時的であり、時計がサーボ制御デバイスの主振動子によって生成される励振振動の影響下に留まる限りの、一時的なサーボ制御の事例であることは理解されよう。
【0034】
この第1の展開により、速い稼働及び遅い稼働の両方を補償可能にすることに留意することが重要である。この理由は、一部の時計が、速く稼働するように設計された設定で工場から来る一方で、他の時計が、ヌル値が中央に置かれた設定を有するためであり、このことは、これらの時計が十分に等しく、速く稼働又は遅く稼働する場合があることを意味する。したがって、速く稼働する時計を遅らせるか、又は遅く稼働する時計を進めることが可能である。既に正確に設定されている時計の稼働を劣化させないことは、注目すべきである。
【0035】
このサーボ制御は、ムーブメントの最適な巻上げに加えて、順に又は同時に行い得る。
【0036】
本発明の最適化方法を説明するため、図2を参照されたい。図2は、時計の、稼働誤差EMの変化のグラフを示し、Y軸上では、分の目盛りの付いたX軸上の時間の関数として、わずかな運動(一日あたり数秒)の時間計測速度を示す。この最適化方法は、最初の瞬間から急傾斜まで行うことができ、最初の瞬間から急傾斜までは、サーボ制御デバイスの穏やかな振とうの起動、及び規定の励振振動数におけるジグ又は台の振動に対応する。前記傾斜の後、移行又は同期段階が続き、本発明による時計の動作最適化方法により、時計の時間のゼロ誤差を達成及び維持する。
【0037】
本発明は、開ループ・サーボ制御装置の使用を推奨し、機械式時計の振動数を維持する費用を低減させる。この点について、以下のステップ(いくつかの段階)を考慮に入れることができる:
-時計の共振器が、巻上げ機構が生成する励振とは無関係な振幅を有するように、十分な継続時間の安定化休止。この安定化休止は、約30秒の命令の持続時間とし得る。
-穏やかな振とうの起動の瞬間又は穏やかな振とうの起動直前に気付くような、好ましくは、数秒、例えば、約5秒の音響又は振動測定とし得る測定期間。
-測定結果に従って、
a.巻上げ機構は、数分間継続し得る、予めプログラムされた一定の巻数(例えば、100回の巻数)を巻き上げ、次に、再度、段階1に進む。この段階1は、従来技術特許文献1内に記載されるデバイスで行われるものである。
b.又は、巻上げ機構は、予めプログラムされた一定時間の間、典型的には1時間、穏やかな振とうモードに進み、穏やかな振とうモードを継続し、次に、再度、段階1又は段階2に進み得る。段階3bにおいて、時計の基準振動子に対する同期があり、ゼロに等しい稼働誤差を得ることができる。
【0038】
本発明の最適化方法の場合、上記段階3bは、時計が同期の後にずれないように実施される。したがって、本発明の最適化方法によれば、穏やかな振とう動作において、デバイスの台の固定基準枠に対して絶対回転速度記号の変更を有する必要がある。このことは、正弦曲線若しくは鋸歯形状である、又は周期的長方形形状若しくは別の形状のパルスによる穏やかな振とうの速度信号が、各振動周期の一部にわたり、デバイスの台又はジグの固定基準枠に対して速度記号の変更を有さなければならないことを意味する。この速度記号の変更は、例えば、一連の2段前進及び例えば1段後退が、経時的に各振動周期で行われるかのように描くことができる。
【0039】
したがって、この速度記号の変更は、穏やかな振とう動作によって正確な振動数を維持するのに必要であり、計時器ムーブメントの振動数は、例えば同期動作に追従する。同期動作は、音響又は振動測定段階の信号の急傾斜段階の終了時に描かれる。
【0040】
当然、本発明の最適化方法によれば、少なくとも段階2及び3がなければならないことに留意されたい。このことは、デバイスの台又はジグ上の時計又は時計の計時器ムーブメントの運動を聴く振動測定又は超音波測定の場合にも当てはまり得るように、限定ではないが、ここでは音響測定信号として指定される測定信号を有する必要があることを意味する。この測定は、穏やかな振とう及び時計の巻上げの開始から行われるか、又は穏やかな振とう及び時計の巻上げの起動直前に行われる。別の種類の測定の事例があってもよい。
【0041】
図3において、本発明による、いわゆる穏やかな振とう信号と、特に香箱等の機械式エネルギー源である振動質量体による従来の巻上げとを組み合わせたグラフが示される。この図3において、穏やかな振とう信号は、周期的正弦曲線形状である。時計の巻上げ機構の平均速度、即ち、機械式時計の場合、香箱を巻き上げる振動質量体の平均速度との組合せが示される。
【0042】
巻上げ機構は、活動中の機械式若しくは自動式時計又は計時器ムーブメントが上に組み付けられる台又はジグを中心軸回りに回転させる。更に、別の回転軸回りで、時計又は計時器ムーブメントに対する穏やかな振とう動作があり、別の回転軸は、巻上げ機構の中心軸に平行であるか又は中心軸と一致する。この穏やかな振とう動作は、事実上、低振幅往復運動動作であり、巻上げ機構の平均速度を基準とする穏やかな振とう振動信号を生成する。
【0043】
各振動周期の間の穏やかな振とう振動信号の特定の部分は、信号のプラスの側pにある一方で、穏やかな振とう振動信号の他の部分は、マイナスの側nにある。当然、各振動周期における、穏やかな振とう信号の記号に対するこの変更により、経時的な時間のずれを伴わずに、通常、実時間に対する差がゼロに等しい状態で時計を維持し得る。
【0044】
時計が再度上記した第1の段階に入るとしても、穏やかな振とう段階に再度入る瞬間、全ての時間データは、保存されている。即ち、厳密な時間の設定及び維持は、例えば、コンピュータ、計算器、プログラム可能自動装置、又は時計若しくは時計の計時器ムーブメントが上に置かれるデバイスを動作させる他のコンピュータ手段、のメモリ内に記憶されている。この本質的な利点は、これまで従来技術には発見も記載もされておらず、これにより、図1を参照しながら説明するサーボ制御デバイス上に置かれたあらゆる時計に対する厳密な時間の正確な設定及び維持を保証可能にする。
【0045】
従来技術のデバイスにおいて、わずかな運動による維持及び設定動作は、本発明の方法の場合のように、振動信号の速度記号の変更をこれまで呈していないことに留意されたい。また、特に、各振動速度における、穏やかな振とう動作の振動信号に対するこの速度記号の変更により、時計は、経時的な時間のずれを伴わずに、常に厳密な時間を有する。
【0046】
当然、穏やかな振とう動作の振動信号が、巻上げ機構の平均速度の値で振動する際、各連続振動周期上でマイナスの速度値に進み、次に、プラスの値に戻るように振動信号が十分な振幅を有することを提供する必要もある。更に、振動信号のプラス部の絶対値の振幅は、マイナス部の絶対値の振幅と異ならなければならない。主に、プラス部及びマイナス部の絶対値の最大振幅は、常に異ならなければならない。この場合、長期間にわたる経時的な時間のずれがないだけでなく、時計は、長期間にわたり厳密な時間のままであり、費用を低減させる。
【0047】
図4は、本発明の最適化方法の機械式又は自動式時計に対する設定及び巻上げの様々な段階のグラフを示す。
【0048】
図4は、主に改良形態の事例であり、この改良形態は、図2に本質的に示されるように、第1の段階の後、時間的に生じるものに追従する。最初の段階において上記したように、まず、安定化段階において音響測定等の測定があっても、音響測定を行う前に穏やかな振とう段階の起動が直接的にあってもよい。この段階の後、時間差が最小に低減された後、同期段階とし得る。
【0049】
しかし、実際には、安定化段階及び測定段階を常に有する必要があり、測定段階の間、巻上げ機構は、時計の香箱がどのような負荷の状態にあるかについて測定を可能にするため、穏やかな振とうを行わないことに留意されたい。しかし、穏やかな振とう(巻上げ及び穏やかな振とう)を再開する場合、最適な様式で、即ち、穏やかな振とうが行われない経過時間を正確に計数することによって再開し、てんぷと同調する状態で穏やかな振とうを再開することが可能である。このように、稼働が損なわれている場合の時計と巻上げ機構との長期間の再同期が回避される。
【0050】
したがって、この図4では、第1の振動信号の状態で巻上げ機構に対する穏やかな振とう動作がある第1の段階(段階1)が示され、第2の振動信号は、第1の信号の下に示され、穏やかな振とうで巻上げ機構によってサーボ制御されるてんぷに関係する。
【0051】
第1の段階に追従する第2の段階(段階2)において、第1の信号の状態での穏やかな振とうの停止がもたらされ、所与の期間にわたり、この場合では音響又は振動測定を行うことを可能にする。この所与の期間は、例えば、安定化のための約30秒、及び測定の約4秒とし得る。この第2の段階において、第1の信号での穏やかな振とうの停止と穏やかな振とうの新たな起動との間の時間は、計算される。
【0052】
第2の段階において、第1の信号の下の第2の信号は、停止させる必要なく時計が動作を継続すること、したがって、前記時計が固有の稼働を再開することに関係する。
【0053】
第1の信号に関する第3の段階において、段階2の継続時間が考慮されるために同調し、もはや不規則ではない穏やかな振とうの再開があり、時計は、同期され、時間のずれがないとみなされる。この第3の段階において、第2の信号は、巻上げ機構によってサーボ制御されるてんぷに関連する。
【0054】
図4を参照しながら説明する全ての段階は、繰り返し得る一方で、第1の信号について、巻上げ機構が穏やかな振とうを行う段階、その後、穏やかな振とうを停止して音響測定を行う段階の両方を交互に行う。第1の信号に関する各穏やかな振とう段階において、第1の信号は、周期的であり、概して正弦曲線形状であり、図2を参照しながら説明したように、各振動期間において第1の信号のマイナス部及び第1の信号のプラス部を伴うことに留意されたい。第1の穏やかな振とう信号において、穏やかな振とう段階の回転速度にマイナス部とプラス部とが交互にあることによって、時計が、本発明による最適化方法の実施のためにサーボ制御デバイスに配設されている限り、時計によって表示される時間の厳密な精度の保証をかなり長期間にわたり可能にする。
【0055】
最適化方法のいくつかの変形実施形態は、提示される特許請求の範囲の文脈から逸脱することなく設計し得る。
【符号の説明】
【0056】
1 振動子
2 時計
3 ジグ又は台
4 巻上げ機構
5 振動数変換器
6 基準振動子
図1
図2
図3
図4