(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】外部から植込み可能な左心耳隔離クリップおよび左心耳植込みシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/122 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
A61B17/122
(21)【出願番号】P 2023105883
(22)【出願日】2023-06-28
(62)【分割の表示】P 2020562078の分割
【原出願日】2019-01-25
【審査請求日】2023-06-28
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507020152
【氏名又は名称】メドトロニック,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(72)【発明者】
【氏名】ダーヴィル,デレク ディー
(72)【発明者】
【氏名】パルマー,マシュー エー.
(72)【発明者】
【氏名】カートリッジ,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ベールズ,トーマス オー.ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】マクブレイヤー,エム.シーン
(72)【発明者】
【氏名】ピーターセン,エリック
(72)【発明者】
【氏名】ボンド,タイラー
(72)【発明者】
【氏名】ベールズ,ウィリアム ティー.
(72)【発明者】
【氏名】カーク,マイケル ウォルター
【審査官】鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0035631(US,A1)
【文献】特表2017-503535(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0242788(US,A1)
【文献】特表2013-502303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/122
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から植込み可能な左心耳(LAA)隔離クリップであって、
互いに隔離された第1および第2のクリップ支柱と、
付勢装置と、を備え、
前記クリップ支柱の各々は、
前記クリップ支柱がLAAに植え込まれたときに心臓の心房に面するよう構成され、心臓に近い側である心臓近位側と、
心臓近位側とは反対側に位置し、且つ、前記クリップ支柱がLAA上に植え込まれたときに心臓の心房から離れる反対側に面するよう構成され、心臓から遠い側である心臓遠位側と、
LAA組織接触面と、
前記付勢装置によって付勢される付勢端部と、
前記付勢端部とは反対側の開放端部と、を含み、
前記第1および第2のクリップ支柱は、互いに向かって前記LAA組織接触面と対面するよう配置され、それにより、
前記クリップ支柱の前記付勢端部は、付勢クリップ端部を画定し、
前記クリップ支柱の前記開放端部は、前記付勢クリップ端部とは反対側の開放クリップ端部を画定し、
前記付勢装置は、
前記第1のクリップ支柱を前記第2のクリップ支柱に接続する第1の付勢部分であって、前記第1および第2のクリップ支柱の前記心臓近位側の外面上に配置され、且つ、前記付勢クリップ端部の近接する前記第1および第2のクリップ支柱の前記心臓近位側の外面に沿って前記第1のクリップ支柱から前記第2のクリップ支柱に向けて横切る第1の付勢部分と、
前記第1のクリップ支柱を前記第2のクリップ支柱に接続する第2の付勢部分であって、前記第1および第2のクリップ支柱の前記心臓遠位側の外面上に配置され、且つ、前記付勢クリップ端部に隣接する前記第1および第2のクリップ支柱の前記心臓遠位側の外面に沿って前記第1のクリップ支柱から前記第2のクリップ支柱に向けて横切る第2の付勢部分と、を含む、クリップ。
【請求項2】
前記第1の付勢部分は、前記第2の付勢部分から隔離され、且つ、前記第2の付勢部分とは異なる、請求項1に記載のクリップ。
【請求項3】
前記第1の付勢部分は、
第1の付勢ばねと、
前記第1のクリップ支柱および前記第2のクリップ支柱にそれぞれ接続される第1の固定部分と、を含み、
前記第1の付勢ばねは、前記第1および第2のクリップ支柱が少なくとも互いに接近したり離反したりする運動を許容するよう構成され、
前記第2の付勢部分は、
第2の付勢ばねと、
前記第1のクリップ支柱および前記第2のクリップ支柱にそれぞれ接続される第1の固定部分と、を含み、
前記第2の付勢ばねは、前記第1および第2のクリップ支柱が少なくとも互いに接近したり離反したりする運動を許容するよう構成されている、請求項2に記載のクリップ。
【請求項4】
前記第1および第2の付勢部分は、前記第1および前記第2のクリップ支柱のヨー運動を許容するように構成される、請求項1に記載のクリップ。
【請求項5】
前記第1および第2の付勢部分は、前記第2のクリップ支柱のヨー運動から独立して、前記第1のクリップ支柱のヨー運動を許容するように構成される、請求項1に記載のクリップ。
【請求項6】
前記第1の付勢部分は、前記第1のクリップ支柱を前記第2のクリップ支柱に接続して、支柱平面内における前記第1および前記第2のクリップ支柱の移動を阻止し、
前記第2の付勢部分は、支柱平面内における前記第1および前記第2のクリップ支柱の移動を阻止する、請求項1に記載のクリップ。
【請求項7】
前記第1の付勢部分は、前記第1のクリップ支柱の付勢端部と開放端部との間の、前記第1のクリップ支柱の中間部分に接続され、
前記第2の付勢部分は、前記第2のクリップ支柱の付勢端部と開放端部との間の、前記第2のクリップ支柱の中間部分に接続される、請求項1に記載のクリップ。
【請求項8】
前記第1のクリップ支
柱の前記心臓近位側は、前記第1のクリップ支
柱の前記LAA組織接触面に角度を持って移行し、
前記第1のクリップ支
柱の前記心臓遠位側は、前記第1のクリップ支
柱の前記LAA組織接触面に角度を持って移行し、
前記第2のクリップ支
柱の前記心臓近位側は、前記第2のクリップ支
柱の前記LAA組織接触面に角度を持って移行し、
前記第2のクリップ支
柱の前記心臓遠位側は、前記第2のクリップ支
柱の組織接触面に角度を持って移行し、
前記第1の付勢部分は、
前記第1および第2のクリップ支柱に接続される第1の固定部分と、
前記クリップ支柱が支柱平面に沿って移動するにつれて、前記心臓近位側の面の上にまたは当該面から距離を置いて保たれるよう構成された第1のばね部分と、を含み、
前記第2の付勢部分は、
前記第1および第2のクリップ支柱に接続される第2の固定部分と、
前記クリップ支柱が支柱平面に沿って移動するにつれて、前記心臓遠位側の面の上にまたは当該面から距離を置いて保たれるよう構成された第2のばね部分と、を含む、請求項1に記載のクリップ。
【請求項9】
前記第1および第2のクリップ支柱と、前記付勢装置とは
、30フレンチよりも大きくない内径を有する腹腔鏡内に嵌め込まれる最大外幅を有するクリップを形成する、請求項1に記載のクリップ。
【請求項10】
前記第1および前記第2のクリップ支柱は、最大長手方向長さを有し、
前記第1の付勢部分は、前記最大長手方向長さよりも短い長手方向長さを有し、
前記第2の付勢部分は、前記最大長手方向長さよりも短い長手方向長さを有する、請求項1に記載のクリップ。
【請求項11】
前記第1および前記第2の付勢部分は、ねじりばね、板ばね、および線ばねのうちの少なくとも1つを含むばねである、請求項1に記載のクリップ。
【請求項12】
前記第1のクリップ支柱は、第1の長手方向軸を有し、
前記第2のクリップ支柱は、第2の長手方向軸を有し、
前記第1および第2の付勢部分は、前記第1および前記第2のクリップ支柱が支柱平面内で移動したときに、前記第1および前記第2のクリップ支柱が前記第1の長手方向軸および第2の長手方向軸の各々の回りで回転を受けないように、力を釣り合わせる、請求項1に記載のクリップ。
【請求項13】
前記第1のクリップ支柱は、第1の長手方向軸を有し、
前記第2のクリップ支柱は、第2の長手方向軸を有し、
前記第1および第2の付勢部分は、前記第1および前記第2のクリップ支柱が支柱平面内で移動したときに、前記第1および前記第2のクリップ支柱がトルクを持たないように、力を釣り合わせる、請求項1に記載のクリップ。
【請求項14】
前記第1および第2のクリップ支柱は、互いに向かって前記LAA組織接触面と対面するように配置され、それにより、
前記クリップ支柱の付勢端部は、隣接し、且つ、
前記クリップ支柱の開口端部は、隣接する、請求項1に記載のクリップ。
【請求項15】
前記第1および第2のクリップ支柱は、前記LAA組織接触面と対向する面を含む、請求項1に記載のクリップ。
【請求項16】
左心耳(LAA)植込みシステムであって、
請求項1に記載のクリップと、
供給装置と、を備え、
前記供給装置は、
前記第1および前記第2のクリップ支柱の付勢端部に取り外し可能に接続され、且つ、前記第1および第2のクリップ支柱を支柱平面において移動させるよう構成されている、植込みシステム。
【請求項17】
左心耳(LAA)植込みシステムであって、
請求項1に記載のクリップと、
供給装置と、を備え、
前記供給装置は、
前記第1および第2のクリップ支柱の付勢端部に取り外し可能に接続され、且つ、前記第1および第2のクリップ支柱を支柱平面において独立に移動させるよう構成されている、植込みシステム。
【請求項18】
左心耳(LAA)植込みシステムであって、
請求項1に記載のクリップと、
供給装置と、を備え、
前記第1のクリップ支柱の付勢端部は、第1の近位開口を画定し、
前記第2のクリップ支柱の付勢端部は、第2の近位開口を画定し、
前記供給装置は、
前記第1および前記第2のクリップ支柱の付勢端部に取り外し可能に接続され、且つ、前記第1および前記第2のクリップ支柱を支柱平面において移動させるよう構成されている、植込みシステム。
【請求項19】
左心耳(LAA)植込みシステムであって、
請求項1に記載のクリップと、
供給装置と、を備え、
前記第1のクリップ支柱の付勢端部は、第1の近位開口を画定し、
前記第2のクリップ支柱の付勢端部は、第2の近位開口を画定し、
前記供給装置は、
前記第1および前記第2のクリップ支柱の付勢端部のみに取り外し可能に接続され、且つ、前記第1および前記第2のクリップ支柱を支柱平面において移動させるよう構成されている、植込みシステム。
【請求項20】
外部から植込み可能な左心耳(LAA)隔離クリップであって、
互いに隔離された第1および第2のクリップ支柱と、
第1の付勢装置と、
第2の付勢装置と、を備え、
前記クリップ支柱の各々は、
前記クリップ支柱がLAAに植え込まれたときに心臓の心房に面するよう構成され、心臓に近い側である心臓近位側と、
心臓近位側とは反対側に位置し、且つ、前記クリップ支柱がLAA上に植え込まれたときに心臓の心房から離れる反対側に面するよう構成され、心臓から遠い側である心臓遠位側と、
LAA組織接触面と、
前記第1の付勢装置又は前記第2の付勢装置によって付勢される付勢端部と、
前記付勢端部とは反対側の開放端部と、を含み、
前記第1および第2のクリップ支柱は、互いに向かって前記LAA組織接触面と対面するよう配置され、それにより、
前記クリップ支柱の前記付勢端部は、付勢クリップ端部を画定し、
前記クリップ支柱の前記開放端部は、前記付勢クリップ端部とは反対側の開放クリップ端部を画定し、
前記第1の付勢装置は、
前記第1のクリップ支柱を前記第2のクリップ支柱に接続し、
また、第1の付勢部分であって、前記第1および第2のクリップ支柱の前記心臓近位側の外面上に配置され、且つ、前記付勢クリップ端部の近接する前記第1および第2のクリップ支柱の前記心臓近位側の外面に沿って前記第1のクリップ支柱から前記第2のクリップ支柱に向けて横切る第1の付勢部分を有し、
前記第2の付勢装置は、
前記第1の付勢装置とは、異なり、
前記第1のクリップ支柱を前記第2のクリップ支柱に接続し、
また、第2の付勢部分であって、前記第1および第2のクリップ支柱の前記心臓遠位側の外面上に配置され、且つ、前記付勢クリップ端部に隣接する前記第1および第2のクリップ支柱の前記心臓遠位側の外面に沿って前記第1のクリップ支柱から前記第2のクリップ支柱に向けて横切る第2の付勢部分を有する、クリップ。
【請求項21】
外部から植込み可能な左心耳(LAA)隔離クリップであって、
互いに隔離された第1および第2のクリップ支柱と、
付勢装置と、を備え、
前記クリップ支柱の各々は、
前記クリップ支柱がLAAに植え込まれたときに心臓の心房に面するよう構成され、心臓に近い面である心臓近位面と、
心臓近位面とは反対側に位置し、且つ、前記クリップ支柱がLAA上に植え込まれたときに心臓の心房から離れる反対側に面するよう構成され、心臓から遠い面である心臓遠位面と、
LAA組織接触面と、
前記付勢装置によって付勢される付勢端部と、
前記付勢端部とは反対側の開放端部と、を含み、
前記第1および第2のクリップ支柱は、互いに向かって前記LAA組織接触面と対面するよう配置され、それにより、
前記クリップ支柱の前記付勢端部は、付勢クリップ端部を画定し、
前記クリップ支柱の前記開放端部は、前記付勢クリップ端部とは反対側の開放クリップ端部を画定し、
前記付勢装置は、
前記第1のクリップ支柱を前記第2のクリップ支柱に接続する第1の付勢部分であって、前記第1および第2のクリップ支柱の前記心臓近位側の外面上に配置され、且つ、前記付勢クリップ端部の近接する前記第1および第2のクリップ支柱の前記心臓近位面の外面に沿って前記第1のクリップ支柱から前記第2のクリップ支柱に向けて横切る第1の付勢部分と、
前記第1の付勢部分とは異なり、前記第1のクリップ支柱を前記第2のクリップ支柱に接続する第2の付勢部分であって、前記第1および第2のクリップ支柱の前記心臓遠位面の外面上に配置され、且つ、前記付勢クリップ端部に隣接し且つ前記クリップ支柱の移動経路に隣接する前記心臓遠位面の外面に沿って前記第1のクリップ支柱から前記第2のクリップ支柱に向けて横切る第2の付勢部分と、を含む、クリップ。
【請求項22】
外部から植込み可能な左心耳(LAA)隔離クリップであって、
互いに隔離された第1および第2のクリップ支柱と、
付勢装置と、を備え、
前記クリップ支柱の各々は、
前記クリップ支柱がLAAに植え込まれたときに心臓の心房に面するよう構成され、心臓に近い面である心臓近位面と、
心臓近位面とは反対側に位置し、且つ、前記クリップ支柱がLAA上に植え込まれたときに心臓の心房から離れる反対側に面するよう構成され、心臓から遠い面である心臓遠位面と、
LAA組織接触面と、
前記付勢装置によって付勢される付勢端部と、
前記付勢端部とは反対側の開放端部と、を含み、
前記第1および第2のクリップ支柱は、互いに向かって前記クリップ支柱の前記LAA組織接触面と対面するよう配置され、それにより、
前記クリップ支柱の前記付勢端部は、付勢クリップ端部を画定し、
前記クリップ支柱の前記開放端部は、前記付勢クリップ端部とは反対側の開放クリップ端部を画定し、
前記第1および第2のクリップ支柱は、対向するLAA組織接触面の間の容積を画定し、前記LAA組織接触面の一方からLAA組織接触面の他方までの領域は、第1の側と、前記第1の側の反対の第2の側とを有する支柱平面を画定し、
前記付勢装置は、
前記第1のクリップ支柱を前記第2のクリップ支柱に接続する第1の付勢部分であって、前記第1および第2のクリップ支柱
の心臓近位側の外面上に配置され、且つ、前記付勢クリップ端部の近接する前記第1および第2のクリップ支柱の前記心臓近位
側の外面に沿って前記第1のクリップ支柱から前記第2のクリップ支柱に向けて横切る第1の付勢部分と、
前記第1の付勢部分とは異なり、前記第1のクリップ支柱を前記第2のクリップ支柱に接続する第2の付勢部分であって、前記第1および第2のクリップ支柱の前記心臓遠位面の外面上に配置され、且つ、前記付勢クリップ端部に隣接し且つ前記支柱平面の前記第2の側に隣接する前記心臓遠位面の外面に沿って前記第1のクリップ支柱から前記第2のクリップ支柱に向けて横切る第2の付勢部分と、を含む、クリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明のシステム、装置および方法は、一般に、中空組織構造の流体通路を外部から閉塞するための外科的アプローチの分野に含まれる。具体的には、本発明は、心臓の左心耳(left atrial appendage:LAA)を外部からクリップして、LAAを心臓の左心房から除外して、LAAと左心房との間の流体通路を効果的に閉鎖するための装置、システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、米国では、最も一般的なタイプの心不整脈は心房細動(AF)である。これは、心臓の上室における無秩序で急速な電気活動として特徴付けられる。心房細動の発症につながるいくつかの原因および危険因子として、高血圧、急性および慢性リウマチ性心疾患、ならびに甲状腺機能亢進症が挙げられる。このような心臓のリズムの異常により、心房繊維の収縮が非同期的(調和していないまたは一致していない)になるため、心臓のポンプ機能が完全に停止してしまう可能性がある。そのため、心房細動で起こる最も危険な状態の1つとして、心房内の血流の乱れやうっ血が挙げられる。これは、血栓の形成につながり、患者の心臓発作や塞栓性脳卒中が起きる可能性が高くなる。LAAの解剖学的位置および生理学的特性により、心房細動に起因する血栓の多くは、LAAで発生する。LAAは、僧帽弁と左肺静脈の根との間の左心房の側壁に接続された、有茎性で指形の袋状になっている空洞である。このように、LAAは、正常且つ協調的なペースで血液を心室に押し込むために心臓が収縮していないときに、停滞した血液が有害に溜まったり蓄積されたりしやすい場所である。その結果、血栓が容易に形成されてLAA内で蓄積され、それ自体の上にさらに蓄積されて、LAAから心房内に伝播する可能性がある。したがって、LAAが血栓の形成の素因となるので、心房細動患者のLAA内に形成された血栓を封じ込めたり除去したりすれば、その患者の脳卒中の発生率を大幅に削減することができる。
【0003】
血液希釈剤、抗凝固薬および抗血小板薬を含む薬理学的治療はよく知られており、血栓の形成のリスクを低減するために日常的に使用されている。しかしながら、これらの薬物は、過度の出血、頭痛、めまい、疲労および禁忌症を含む有害で苦痛な副作用や合併症を伴うことが多く、患者のコンプライアンスと耐性を高めることは非常に困難である。そのため、有効性を高め、危険で慢性的な副作用を制限し、患者のクオリティ・オブ・ライフを向上させる代替薬の開発には強い関心が寄せられている。
【0004】
また、LAA内での血栓の形成のリスクを低減または完全に排除する別のアプローチは、LAAと左心房との間の血流を効果的に遮断または実質的に制限する開心術、開胸術、胸腔鏡下手術、または外科的な経皮的インターベンションによるものである。心血管系の一部としてのLAAの正確な役割は、完全に明らかになっていない。左心室収縮期や左心房圧が高いその他の期間に、一種の減圧室として機能するのに適していると考えられている。しかしながら、LAAは、必要な機能を果たしているようには見えず、心臓の解剖学的構造および機能にとって、生理的に重要ではないと考えられている。そのため、LAAへの流体連通を外科的に遮断することや、LAAを心臓から完全に除去する(すなわち取り除く)ことは、LAAにおける血栓の形成を劇的に減少させるための有望で実現可能なアプローチである。
【0005】
既存の外科的アプローチの各々は、関連する利点および欠点を有する。例えば、LAAを完全に取り除くと、そこに将来血栓が形成されるリスクをすべて排除することができる。しかしながら、手術中に既に存在している血栓が外れて血管内に流れる可能性がある。また、LAAを取り除くと、心臓に大きな傷ができる。これは、多量の出血を防ぐために、慎重に制御し、専門的に挟み、絶対的な精度で縫合する必要がある。さらに、LAAを取り除くことは、明らかに劇的な解剖学的な変化をもたらす。LAAの血行力学的およびホルモンの役割は、現在も継続的な研究と理解が必要であるため、その除去は、慎重に検討する必要がある。
【0006】
その他の外科的アプローチは、解剖学的構造のいずれかを取り除くことなく、LAAと左心房との間の流体通路を封鎖、遮断または閉鎖することを目的としている。例えば、外科医がLAAを(例えば直接心房内縫合または外部からの結紮を介して)外科的に縫合またはステープルして通路を効果的に閉鎖することで、LAAは、左心房から分離された盲管にまで減少する場合がある。さらなる一例において、生体適合性バリア装置が、LAA入り口の左心房の内側から植え込まれて、(血管カテーテルのような)経皮的留置装置(delivery device)を使用して通路内に固定(anchored)されてもよい。このような装置の一例として、ボストン・サイエンティフィック社によるWATCHMAN(商標)左心耳閉鎖装置が挙げられる。これらの処置の中には、低侵襲的技術(例えば開胸術や胸腔鏡下手術)を用いて実施することができるものもあるが、心臓組織に穴を開けたり心臓内部に進入したりするため、かなりのリスクが残る。さらに、これらの処置の有効性は、ステープル、縫合糸、植込みまたは他の閉塞装置の正確な配置に依存するため、外科医の超精密さを必要とする。また、一部の生体適合性材料が最終的に壊れたり血栓の形成を促進したりする可能性があるため、心室に残された異物である装置は、血栓発生部位になる可能性がある。したがって、実際に心臓組織の穴を必要としない、LAAを閉塞または分離するための異なる外科的アプローチを開発することが求められている。
【0007】
そのような処置の一例として、LAAの外面への隔離クリップの恒久的な外科的取り付けが挙げられる。具体的には、隔離クリップは、心臓に進入することなく、LAAと心房との間の内部流体通路を効果的に閉塞するのに十分な挟圧または締め付け圧を加えるように、LAAの基部の周りでその周囲に配置される。そのため、心臓で生じる制御不能な出血やその他の外傷が発生する可能性を大幅に削減することができる。また、隔離クリップの要素が心血管系に導入されないため、将来的に血栓の形成が促進される部位を意図せずに発生させるリスクを最小限に抑えることができる。それでもなお、既存の隔離クリップの設計、ならびに隔離クリップを取り付けるために現在用いられているシステム、処置および留置装置には、いくつかの固有の制限がある。
【0008】
背景として、LAAを隔離するために採用されている現在の既存の隔離クリップは、一般的に1つまたは複数のばね部材によって共に付勢される、互いに対向する1対の細長い締め付け部材から形成される。LAAに隔離クリップを取り付ける前に、留置装置が隔離クリップと係合し、1つまたは複数のばね部材による閉鎖方向のばね付勢力に対する反力を加える。これにより、締め付け部材が互いから離れて、その間に内部空間が形成される。取り付け時に、LAAは、隔離クリップの内部空間に配置されて、互いに対向する締め付け部材の間で受容される。LAAに対して隔離クリップが所望の位置にあると外科医が判断すると、クリップの留置装置は、1つまたは複数のばね部材に加えられた反力を解放して隔離クリップから外れる。その結果、締め付け部材は、その内向きにばね付勢された状態に戻り、グリップのようにLAAを緊密に取り囲み、LAAの外面に対して締め付け作用を生じさせる。このような装置の一例として、AtriCure社によるATRICLIP(登録商標)左心耳隔離システムが挙げられる。
【0009】
現在、隔離クリップは、開放端式または閉鎖ループ式のいずれかであるように設計されている。閉鎖ループ式隔離クリップは、一般的に、ループを形成するために両端でばね部材によって接続された平行且つ互いに対向する1対の締め付け部材から構成される。対照的に、開放端式隔離クリップは、必要な締め付け作用を生成するために締め付け部材を互いに向けて旋回するように付勢するばね部材またはばね付勢されたヒンジのような部材によって、一端だけで互いに接続された互いに対向する1対の締め付け部材を含む。
【0010】
したがって、LAAを隔離するための隔離クリップアプローチの有効性および安全性を確保するため、およびLAAやその他の周囲の構造物を切断または損傷させないようにしながらLAAに出入りする血流を十分且つ恒久的に閉鎖するために、隔離クリップは、LAAと心臓の残りの部分に対して正確に且つ十分な圧力を有するように配置される必要がある。そのため、外科医は、隔離クリップの位置決めを巧みに制御し、クリップが十分に閉じられて所望の位置に固定されていることを確認する必要がある。これは、大変困難な作業である。隔離クリップがLAA上に設置されると、介在する組織が乾燥するか収縮して変化する。ここで、LAAを適切に密封するために、異なるより大きな締め付け力が必要である。
【0011】
既存の隔離クリップの設計(特に閉鎖ループ式の設計)におけるさらなる制限として、互いに対向する締め付け部材の間の内部開口部の距離が、1つまたは複数のばね部材によって付勢されたばね付勢力によって制限されることが挙げられる。ここで、ばね付勢力は、1つまたは複数のばね部材が撓むことができる度合いに依存する。その結果、患者のLAAが比較的大きい場合、外科医が隔離クリップを取り付けるのに苦労する可能性がある。
【0012】
開放端式LAA隔離クリップは、LAAへの側方からの接近のみを必要とする。そのため、心臓への接近が制限されている状態であっても、比較的低侵襲的な処置で配置することができるので、閉鎖端式のクリップよりも好ましい場合がある。しかしながら、開放端式クリップの欠点として、LAAの全幅にわたってクリップが完全に配置されたかどうかを外科医が判断しにくい場合が多いことが挙げられる。クリップを配置するために側方アプローチが用いられるため、LAAの遠位端は、通常、外科医には見えない。ここで、外科医は、クリップの遠位端の位置を推定し、クリップがLAAを完全に横切ると外科医が確信したときに、クリップを解放する必要がある。外科医の推定が誤っていて、締め付けられた状態で開放端式クリップがLAAを部分的にしか横切っていない場合、LAAの隔離は、部分的にのみ達成される。このような植込みは、合併症を引き起こす可能性が高く、部分的な隔離を修正するためのさらなる手術が必要となる。
【0013】
そのため、当該技術分野において、クリップが締め付けられて植え込まれた状態で解放される前に、クリップがLAAを完全に横切って配置されていることを外科医に明確に示すことができる開放端式LAA隔離クリップ用のアプリケーター装置が求められている。
【0014】
さらに、上述したように、隔離クリップの取り付け中にLAAをその内部空間に入れ込むために、LAAが適切に配向されて安定した位置で保持される必要がある。したがって、典型的には、クリップ留置装置とは別の外科手術用鉗子(grasper)のような器具がLAAを所定の位置に移動するために使用される。実際、LAAのすべての閉塞、隔離および除去処置において、LAAを正しい位置に配向するためにのみ専用の器具を個別に使用する必要がある。その結果、隔離クリップによる処置において、外科医は、同時にクリップ留置装置と安定化装置を同時に操作する(または同時に直接心臓を安定化する)必要があり、これにより、外科医の両手がふさがることになる。これは、外科医の可動性と自由度を制限して、疲労に繋がる可能性がある。重要なことに、LAAの単純な移動を慎重に行わないと、わずかなミスだけでLAAが破れたりそれを貫いたりする可能性がある。これは、生命を脅かす出血の危険性を即座に生じさせる。そのため、当該技術分野において、隔離クリップとLAAとの間の相互作用の精度を単純化して向上させ、且つLAA用とは別の把持装置または押下(nudging)装置の必要性および/または関与を最小化または排除する隔離クリップおよび留置装置システムが求められている。
【0015】
また、当該技術分野において、その形状、材料特性、公差および表面積の特徴が、クリップが配置されたときのクリップの締め付け部材とLAAおよび左心房の両方との間の表面間の相互作用を改善させるとともに、外科的処置の間だけでなく、植え込まれたクリップの寿命にわたって、組織に損傷を引き起こすことなく、LAAに対する隔離クリップの把持力を向上させる隔離クリップが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
このように、上述した先行技術のシステム、設計およびプロセスの課題を克服する必要性がある。
【0017】
本明細書に記載のシステム、装置および方法は、一般的なタイプの既知の装置および方法の上述した欠点を克服する、左心房からLAAの内部を流体的に切り離すための、左心耳の外面をクリップする装置、システムおよび方法を提供する。より具体的には、本明細書に記載のシステム、装置および方法は、隔離クリップの外科的取り付けの間に、自然且つ本能的にLAAをクリップ内部の開口部まで移動、付勢および/または前進させるように作用する、且つ場合によっては物理学的原則に従ってそれ自体への取り付け方法と協調するように作用する構造的特徴を有するLAA隔離クリップを提供する。これらの特徴は、本明細書において「自己移動的(self-motivating)」と呼ぶ。このような自己移動的な隔離クリップは、隔離クリップに対してLAAを移動するためのクリップ留置装置とは別の安定化器具の必要性を有利に最小限にするか、その必要性を取り除く。これにより、片手でノータッチの処置が可能になる。
【0018】
さらに、本明細書に記載のシステム、装置および方法は、外科医に、加えられた締め付け圧の度合いに関してより高い精度および制御を与え、且つクリップの互いに対向する締め付け部材の末端部を接続するためにばね部材を採用したことによる従来の制約から解放される閉鎖ループ式隔離クリップを提供する。
【0019】
さらに、本明細書に記載のシステム、装置および方法は、ジョー(jaw)に基づく外科手術用器具のための組織交差センサーを提供する。これにより、ジョーの遠位端が外科的環境によって不明瞭であるか遮蔽されている場合、外科医は、その遠位端の位置決めに関して、より高い精度および制御を得ることができる。外科手術用器具のセンサーは、LAA隔離クリップのような隔離装置の配置および展開を容易にする。隔離クリップアプリケーターおよびシステムは、クリップが、締め付けられた状態で解放される前に、閉鎖される解剖学的構造にわたって完全に横切るように位置決めされたときに、明確な視覚的および/または可聴の表示を生成する。
【0020】
一実施形態において、留置装置は、近位端および遠位端を有するシャフトと、シャフトの近位端に接続された1つまたは複数の制御部を収容するハンドルと、シャフトの遠位端に接続されたアプリケーターヘッドと、を備える。アプリケーターヘッドは、開放端式隔離クリップを受容するように適合された互いに対向する2つのジョーを備える。ジョーは、シャフトに取り付けられたアプリケーターヘッドの近位端またはその近傍に位置する旋回組立体によって、閉位置と開位置との間で旋回する。ジョーの旋回動作は、ハンドル上の1つまたは複数の制御部によって制御される。各ジョーの先端には、保持部材またはカップ部材が設けられる。カップ部材は、ジョーが閉じられているときに、互いに接触するようにまたは非常に近接するように構成される。ジョーは、閉位置にあるときに、隔離クリップを取り付けるのに十分な空間を確保するように構成される。ジョーがクリップに密接に適合し、ジョーが閉じられているときにカップ部材が近接するようにするために、各ジョーの中央部は、柔軟なばね状部材を備えてもよい。
【0021】
留置装置の「受動的」実施形態において、アプリケーターヘッドは、2種類の異なるタイプの光ファイバーワイヤを備える。最初のタイプは、「集光型」の光ファイバーワイヤである。このタイプの光ファイバーワイヤは、その全長に沿ってワイヤに当たる周囲の光を集めて、その光を誘導してワイヤの両端から出すように設計される。受動的実施形態で使用される2つ目のタイプの光ファイバーワイヤは、伝送型の光ファイバーワイヤである。このタイプの光ファイバーワイヤは、一方の端部で光を集光し、その光を伝送して反対側の端部から出すように設計される。
【0022】
留置装置の受動的実施形態において、アプリケーターヘッドの互いに対向するジョーの一方には、可能な限り多くのワイヤが長さ方向で装置の使用中に周囲の光に露出するように配置された集光型の光ファイバーワイヤが設けられる。その位置は、ジョーの周りにワイヤを巻くか巻き付けるか、ジョーの表面にワイヤを接着するか、他の方法で取り付けることで得ることができる。この集光型のワイヤの一端または両端は、第1のジョーの先端に配置されたカップ部材に受容および捕捉される。カップは、捕捉された集光型のワイヤの一端または両端が、第2の対向ジョーのカップ部材に直接対向する位置に配置されるように構成される。集光型のワイヤの役割は、可能な限り多くの周囲の光を取り込んで、その光を第1の対向ジョーの遠位端に出力用として転送して第2の対向ジョーに向けることである。
【0023】
受動的実施形態における第2の対向ジョーは、伝送型の光ファイバーワイヤを具備する。ワイヤの一方の端部は、第2の対向ジョーのカップ部材によって保持される。伝送型のワイヤの端部は、互いに対向するジョーが閉位置にあるときに、その端部が第1の対向ジョーの集光型のワイヤの端部に非常に近接するように配置される。伝送型のワイヤの反対側の端部は、第2の対向ジョーに沿って、保持されながらも装置のユーザーに見える位置まで配線される。このワイヤの反対側の端部から放射される光の視認性を高めるために、レンズ、プリズムまたはその他の光学的増強装置を終端点に取り付けることができる。代替的に、伝送型のワイヤの反対側の端部は、照明を感知したときに、LEDや警告音(horn)のような電子的な可聴または視覚的表示を作動させる電子光センサー(光電セル、光トランジスタまたは光ダイオード)で終端することができる。
【0024】
留置装置の第2の例示的な「能動的」実施形態は、互いに対向する両方のジョーの上の伝送型の光ファイバーワイヤのみを採用する。第1の対向ジョーのワイヤは、先端のカップ部材と能動的な光源(例えばLED、レーザまたは赤外線エミッタ)との間に延在する。第2の対向ジョーのワイヤの構成は、受動的実施形態のものと同じである。この例示的な実施形態は、第1のジョーによって集光された周囲の光に頼ることなく、能動的に生成された光に頼る。代替的に、能動的実施形態は、追加のバリエーションや改良を含むことができる。例えば、光ファイバーワイヤによって生成および伝送された光の種類は、血液などの体液を介した伝送を最大化するように選択された周波数または色にすることができる。これにより、光ファイバーワイヤの端部が血液によって汚染された際に、正確な表示を確保することができる。不明確な表示を回避するために、光の周波数は、胸腔鏡下処置で使用される従来の光源によって生成される波長以外の波長であるように選択される。また、第2の対向ジョーが受光した光が、実際に生成された光であり、周囲光ではないことを確実にするために、生成された光は、既知のパルス周波数で符号化されてもよい。このような例示的な構成は、センサーが受光した光が予想されるパルス周波数のものであるときのみ表示を作動させることで誤った表示を回避することができる電子センサーを使用する。
【0025】
アプリケーター装置は、当該技術分野において既知のまたは本明細書に記載の、多数の異なる設計を有する開放端式隔離クリップと組み合わされて使用することができる。隔離クリップは、クリップの開放端がジョーの先端の方向に遠位側を向く状態で、互いに対向する2つのジョーの間に配置される。隔離クリップの平行な締め付け部材の各々は、隣接するジョーに解放可能に固定される。このようにして、互いに対向するジョーを引き離すように装置のハンドル上の制御部が作動されると、隔離クリップは、強制的に開かれる。互いに対向するジョーを閉じるように制御部が作動されると、隔離クリップ内のばねは、クリップの周囲でジョーが閉じられるように、ジョーを付勢してクリップを閉じる。
【0026】
隔離クリップは、いくつかの異なる方法でジョーに解放可能に固定される。例示的な一実施形態は、クリップ上の締め付け部材から延在して、互いに対向するジョーの各々の上に配置された解放ケーブルの周りに巻き付く縫合糸を利用する。クリップが正しく配置されたことを操作者が確認したときに、解放ケーブルが引っ張られてアプリケーターヘッドから取り除かれる。これにより、隔離クリップが装置から解放される。解放ケーブルが引っ張れられると、クリップは、恒久的に取り付けられる。例示的な代替実施形態において、光ファイバーワイヤは、解放ケーブルと同じ機能を果たすことができる。すなわち、縫合糸が光ファイバーワイヤに巻き付けられ、クリップが正しく配置されたときに光ファイバーワイヤが引き抜かれることで、クリップが解放される。
【0027】
操作において、能動的装置が使用されているか受動的装置が使用されているかに関わらず、外科医は、ハンドル上の適切な制御部を作動させてジョーとクリップとを開いて、クリップの取り付けを開始する。次いで、クリップの開放端は、側方アプローチを用いてLAAを横切るように配置される。外科医は、クリップが閉じられた際にクリップがLAAに完全にまたがるように十分に挿入されていると確信したときに、ハンドル制御部を作動させて、クリップを閉じてLAAを締め付ける。外科医がクリップの挿入距離を正しく推定した場合、互いに対向するジョーの先端は、(LAAのような)構造物がない状態で互いに非常に近接する。このような配向によって、第1の対向ジョーで生成された光が、第2の対向ジョーの光ファイバーケーブルによって集光され、可聴または視覚的表示が第2のジョーの反対側の端部で作動する。このようなフィードバックを受け取ると、外科医は、適切に位置決めされた可能性が高いと理解して、クリップをアプリケーターヘッドから解放することができる。このようにして、LAAを横切るようにクリップを恒久的に取り付けることができる。その一方で、ハンドル制御部を解放してLAAの周りのクリップおよびジョーが閉じられたときに外科医が視覚的または可聴表示を受け取らなかった場合、これは、光が第2の対向ジョーに到達することをLAAや別の構造物などが妨げていることを外科医に示す。そこで、外科医は、クリップを再び開いて可聴または視覚的表示が受け取られるまで、クリップを正しく配置するように試みることができる。
【0028】
上述した例示的な実施形態は、光ファイバーネットワークを介して伝送される光に依存する。しかしながら、当業者であれば、光以外の媒体を用いて同様の実施形態を実現することができることを理解するであろう。例えば、無線周波数波、ホール効果センサー、超音波、導電率センサーおよび静電容量センサーなどが代替の感知手段として機能することができる。
【0029】
また、本明細書に記載のシステム、装置および方法は、アプリケーターや隔離装置に限定さるものではない。ジョー組立体が作動される前に構造物を通過するような任意の装置が、本明細書に記載のセンサーの利点を得ることができる。このような装置には、ステープル装置、鉗子または締め付け装置、電気焼灼シーラーまたは超音波シーラーなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
例示的な代替実施形態において、光ファイバーネットワークは、必ずしも互いに対向するジョーに配置される必要はない。光ファイバーネットワークは、クリップ自体の中に完全にまたは部分的に埋め込まれていてもよい。このような例示的な実施形態において、光ファイバーネットワークは、アプリケーター装置の引き出し時にクリップから容易に取り外されるように適合させることができる。
【0031】
図示する本発明の実施形態において、光ファイバーワイヤの端部は、ファスナーの端部と整列されてファスナー上の平面上にある。しかしながら、例示的な代替実施形態において、光ファイバーワイヤの端部は、ファスナーの端部の内側に整列されていてもよく、ファスナーの端部を越えて延在していてもよい。同様に、代替実施形態において、光ファイバーワイヤの端部は、ファスナーの上、下、または中央部を通るように配置することができる。これらの相対的な位置の任意の組み合わせが使用されてもよい。
【0032】
一部の例示的な実施形態において、カップ部材としての保持部材は、ジョーが閉じられたときにそれらを案内する構造的特徴を有することができる。ジョー内の柔軟な部材によって、ファスナー内で締め付けられた組織がファスナーを開いている途中の状態に保持している場合であっても、カップ部材は、互いに接触するか、互いに非常に近接することができる。
【0033】
上述したように、表示灯は、装置の操作者が見ることができる任意の位置に配置され得る。これには、ハンドル、ジョー、シャフト、または複数の表示が使用されるそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されるものではない。表示自体は、視覚的表示(表示灯など)や、可聴表示(警笛やブザーなど)、または触覚的であり得る。
【0034】
本明細書に記載のシステム、装置および方法の一部の例示的な実施形態は、適切に位置決めされたことに関する明確な表示を受け取るまで、ファスナーの解放を防止するロックアウト機構を具備することができる。
【0035】
一部の例示的な実施形態において、互いに接触したときに流体を排除するために、カップやドームのような特徴を含むことができる。
【0036】
既知の装置の制限は、開放端式隔離クリップのための例示的なアプリケーターによって克服される。これは、クリップの遠位端が、クリップが締め付けられた状態になるようにクリップが解放される前に閉塞される解剖学的構造を完全に横切っていることに関する明確な表示を、外科医に提供する。これにより、締め付け時に完全な隔離を実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0037】
上述した目的および他の目的の観点から、外部から植込み可能な左心耳(LAA)隔離クリップが提供される。クリップは、互いに対向する第1および第2のクリップ支柱を含むクリップ組立体を備える。各クリップ支柱は、組織接触面と、第1および第2の付勢面と、を有する。クリップは、第1のクリップ支柱を第2のクリップ支柱に接続して組織接触面を通過する支柱平面内で第1および第2のクリップ支柱を整列させる付勢組立体をさらに備える。付勢組立体は、第1のクリップ支柱の第1の付勢面と第2のクリップ支柱の第1の付勢面とに接続された少なくとも1つの第1の付勢ばねと、第1のクリップ支柱の第2の付勢面と第2のクリップ支柱の第2の付勢面とに接続された少なくとも1つの第2の付勢ばねと、を有する。少なくとも1つの第1の付勢ばねおよび少なくとも1つの第2の付勢ばねは、支柱平面内での第1および第2のクリップ支柱の移動を許容するように構成される。
【0038】
別の特徴によれば、第1のクリップ支柱は、第1の近位端と第1の遠位端とを有し、第2のクリップ支柱は、第2の近位端と第2の遠位端とを有し、少なくとも1つの第1の付勢ばねは、第1の近位端と第1の遠位端との間の第1のクリップ支柱の第1の付勢面における中間位置と、第2の近位端と第2の遠位端との間の第2のクリップ支柱の第1の付勢面における中間位置と、に接続され、少なくとも1つの第2の付勢ばねは、第1の近位端と第1の遠位端との間の第1のクリップ支柱の第2の付勢面における中間位置と、第2の近位端と第2の遠位端との間の第2のクリップ支柱の第2の付勢面における中間位置と、に接続される。
【0039】
さらなる特徴によれば、第1のクリップ支柱の第1の付勢面は、第1の上側であり、第1のクリップ支柱の第2の付勢面は、第1の下側であり、第2のクリップ支柱の第1の付勢面は、第2の上側であり、第2のクリップ支柱の第2の付勢面は、第2の下側であり、第1のクリップ支柱の組織接触面は、第1の長手方向中心線を有する第1のLAA接触面を備え、第2のクリップ支柱の組織接触面は、第2の長手方向中心線を有する第2のLAA接触面を備え、支柱平面は、第1および第2の長手方向中心線を通過する。
【0040】
追加的な特徴によれば、クリップは、内径を有する腹腔鏡ポート内に嵌め込まれるような大きさを有し、クリップ組立体および付勢組立体は、組み合わされるとポートの内径よりも小さい最大外幅を有する。
【0041】
追加的な特徴によれば、第1および第2のクリップ支柱は、最大長手方向長さを有し、少なくとも1つの第1の付勢ばねは、最大長手方向長さよりも短い長手方向長さを有し、少なくとも1つの第2の付勢ばねは、最大長手方向長さよりも短い長手方向長さを有する。
【0042】
さらに別の特徴によれば、クリップは、内径を有する腹腔鏡ポート内に嵌め込まれるような大きさを有し、クリップ組立体および付勢組立体は、組み合わされるとポートの内径よりも小さい最大外幅を有し、第1および第2のクリップ支柱は、最大長手方向長さを有し、少なくとも1つの第1の付勢ばねは、最大長手方向長さよりも短い長手方向長さを有し、少なくとも1つの第2の付勢ばねは、最大長手方向長さよりも短い長手方向長さを有する。
【0043】
さらなる特徴によれば、付勢組立体は、支柱平面内での第1および第2のクリップ支柱のヨー(yaw)運動を許容するように構成される。
【0044】
さらなる追加的な特徴によれば、付勢組立体は、支柱平面内での第2のクリップ支柱のヨー運動から独立して、支柱平面内での第1のクリップ支柱のヨー運動を許容するように構成される。
【0045】
さらなる追加的な特徴によれば、第1のクリップ支柱の第1の付勢面は、第1の上側であり、第2のクリップ支柱の第1の付勢面は、第2の上側であり、第1の上側および第2の上側は、組み合わされると外側上部境界を画定し、第1の付勢ばねは、外側上部境界内に留まる。
【0046】
また、別の特徴によれば、第1のクリップ支柱の第2の付勢面は、第1の下側であり、第2のクリップ支柱の第2の付勢面は、第2の下側であり、第1の下側および第2の下側は、組み合わされると外側下部境界を画定し、第2の付勢ばねは、外側下部境界内に留まる。
【0047】
また、さらなる特徴によれば、第1のクリップ支柱は、第1の長手方向軸を有し、第2のクリップ支柱は、第2の長手方向軸を有し、少なくとも1つの第1の付勢ばねおよび少なくとも1つの第2の付勢ばねは、第1および第2の支柱が支柱平面内で移動したときに、第1および第2のクリップ支柱がそれぞれの第1および第2の長手方向軸の周りで実質的に回転しないように、力を釣り合わせる。
【0048】
また、追加的な特徴によれば、第1のクリップ支柱は、第1の長手方向軸を有し、第2のクリップ支柱は、第2の長手方向軸を有し、少なくとも1つの第1の付勢ばねおよび少なくとも1つの第2の付勢ばねは、第1および第2の支柱が支柱平面内で移動したときに、第1および第2のクリップ支柱が実質的にトルクを持たないように、力を釣り合わせる。
【0049】
また、追加的な特徴によれば、第1のクリップ支柱は、第1の近位端を有し、第2のクリップ支柱は、第2の近位端を有し、クリップは、第1および第2の近位端に取り外し可能に接続され且つ支柱平面内で第1および第2のクリップ支柱を移動させるように構成された留置装置をさらに備える。
【0050】
また、別の特徴によれば、第1のクリップ支柱は、第1の近位端を有し、第2のクリップ支柱は、第2の近位端を有し、クリップは、第1および第2の近位端に取り外し可能に接続され且つ支柱平面内で第1および第2のクリップ支柱を個別に移動させるように構成された留置装置をさらに備える。
【0051】
また、さらなる特徴によれば、第1のクリップ支柱は、第1の近位側開口部が設けられた第1の近位端を有し、第2のクリップ支柱は、第2の近位側開口部が設けられた第2の近位端を有し、クリップは、第1および第2の近位側開口部を介して第1および第2の近位端に取り外し可能に接続された留置装置をさらに備え、留置装置は、支柱平面内で第1および第2のクリップ支柱を移動させるように構成される。
【0052】
併存する特徴によれば、第1のクリップ支柱は、第1の近位側開口部が設けられた第1の近位端を有し、第2のクリップ支柱は、第2の近位側開口部が設けられた第2の近位端を有し、クリップは、第1および第2の近位側開口部を介して第1および第2の近位端のみに取り外し可能に接続された留置装置をさらに備え、留置装置は、支柱平面内で第1および第2のクリップ支柱を移動させるように構成される。
【0053】
上述した目的および他の目的の観点から、外部から植え込み可能な左心耳(LAA)隔離クリップが提供される。クリップは、クリップ組立体を備える。クリップ組立体は、第1のLAA接触面、第1の回転軸、第1の端部および第1の端部の反対側の第2の端部を有する第1のクリップ支柱と、第2のLAA接触面、第1の回転軸に実質的に平行な第2の回転軸、第1の端部およびこの第1の端部の反対側の第2の端部を有する第2のクリップ支柱と、を備える。クリップは、第1のクリップ支柱を第2のクリップ支柱に接続する付勢組立体をさらに備える。付勢組立体は、第1のクリップ支柱の第1の端部と第2のクリップ支柱の第1の端部とに接続された少なくとも1つの第1の付勢ばねと、第1のクリップ支柱の第2の端部と第2のクリップ支柱の第2の端部とに接続された少なくとも1つの第2の付勢ばねと、を備える。少なくとも1つの第1の付勢ばねと少なくとも1つの第2の付勢ばねとの間の接続部は、第1の回転軸の周りでの第1のクリップ支柱の回転を許容するように、および第2の回転軸の周りでの第2のクリップ支柱の回転を許容するように構成される。
【0054】
別の特徴によれば、第1のLAA接触面は、第1の所与の粗さを有し、第1のクリップ支柱は、第1のLAA接触面に隣接する第1の低摩擦面を備え、第1の低摩擦面は、第1の所与の粗さよりも実質的に滑らかな表面粗さを有し、第2のLAA接触面は、第2の所与の粗さを有し、第2のクリップ支柱は、第2のLAA接触面に隣接する第2の低摩擦面を備え、第2の低摩擦面は、第2の所与の粗さよりも実質的に滑らかな表面粗さを有する。
【0055】
さらなる特徴によれば、第1の低摩擦面および第2の低摩擦面は、実質的に滑らかである。
【0056】
追加的な特徴によれば、第1の低摩擦面および第2の低摩擦面は、親水性コーティングを備える。
【0057】
追加的な特徴によれば、第1の所与の粗さは、凹凸(texture)から構成される。
【0058】
さらに別の特徴によれば、第2の所与の粗さは、凹凸から構成される。
【0059】
また、さらなる特徴によれば、第1および第2のLAA接触面の少なくとも一方は、所与の粗さを有し、第1および第2のクリップ支柱の少なくとも一方は、該所与の粗さを有する第1および第2のLAA接触面の少なくとも一方に隣接する低摩擦面を備え、低摩擦面は、実質的に滑らかである。
【0060】
また、追加的な特徴によれば、低摩擦面は、親水性コーティングを備える。
【0061】
また、追加的な特徴によれば、第1のクリップ支柱は、第1のLAA接触面に隣接する第1の移動面(motivator surface)を備え、第1の移動面は、自己移動部(self-motivator)を有し、第2のクリップ支柱は、第2のLAA接触面に隣接する第2の移動面を備え、第2の移動面は、自己移動部を有する。
【0062】
また、別の特徴によれば、少なくとも1つの第1の付勢ばねと少なくとも1つの第2の付勢ばねとの間の接続部は、第1の回転軸の周りでの第1のクリップ支柱の回転を許容するように、および第2の回転軸の周りでの第2のクリップ支柱の回転を許容するように構成され、これにより、第1の移動面は、第1の配向において第2の移動面に対向し、第1のLAA接触面は、第2の配向において第2のLAA接触面に対向する。
【0063】
また、さらなる特徴によれば、第2の配向は、第1の配向に対して角度を付けられている。
【0064】
また、追加的な特徴によれば、少なくとも1つの第1の付勢ばねと少なくとも1つの第2の付勢ばねとの間の接続部は、第1の回転軸の周りでの第1のクリップ支柱の回転を許容するように、および第2の回転軸の周りでの第2のクリップ支柱の回転を許容するように構成され、これにより、第1のLAA接触面は、第1の配向において第2のLAA接触面に平行であり、第1のLAA接触面は、第1の配向に対して角度を付けられて第2の配向において第2のLAA接触面に平行である。
【0065】
また、追加的な特徴によれば、角度は、実質的に90度である。
【0066】
また、別の特徴によれば、第1のLAA接触面は、所与の形状を有し、第2のLAA接触面は、所与の形状とは鏡面対称の形状を有する。
【0067】
併存する特徴によれば、第1および第2のクリップ支柱、少なくとも1つの第1の付勢ばねおよび少なくとも1つの第2の付勢ばねは、LAAを受容するような大きさを有する開口部を画定し、付勢組立体は、第1および第2のクリップ支柱の回転を付勢して、LAAの内側から血流を実質的に排除するのに十分な内向きの力で、LAAの両側の上でLAAと第1および第2のLAA接触面とを接触させるように構成される。
【0068】
本システム、本装置および本方法は、左心房からLAAの内部を効果的に閉鎖するために、LAAの外面の周りをクリップする装置、システムおよび方法を包含するものとして図示され且つ本明細書に記載される。しかしながら、これらは図示する詳細に限定されるものではなく、本発明の精神および特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な変形および構造的変更を行うことができる。また、本システム、本装置および本方法に関連する詳細が不明確にならないように、例示的な実施形態における既知の要素は、詳細には説明されないか、その説明自体を省略する。
【0069】
本システム、本装置および本方法の特徴的な追加の利点およびその他の特徴は、以下の詳細な説明に記載され、この詳細な説明から明らかになるか、例示的な実施形態の実現によって得ることができるであろう。また、本システム、本装置および本方法のさらなる利点は、添付の特許請求の範囲に特に記載された機器、方法またはそれらの組み合わせのいずれかによって実現されてもよい。
【0070】
本システム、本装置および本方法に特徴的であると考えられるその他の特徴は、添付の特許請求の範囲に記載される。必要に応じて、本システム、本装置および本方法の詳細な実施形態が、本明細書に記載される。しかしながら、これらの実施形態は、様々な形態で包含され得る例示的なシステム、装置および方法に過ぎないことに留意されたい。そのため、本明細書に記載される特定の構造的および機能的な詳細は、限定的なものとして解釈されるべきではなく、特許請求の範囲の基礎として、また、実質的に適切に詳細な構造のシステム、装置および方法を様々に採用することを当業者に教示するための代表的な基礎として解釈されるべきであることに留意されたい。さらに、本明細書で使用される用語および表現は、限定を意図するものではなく、本システム、本装置および本方法を理解できるような説明を提供することを意図している。本明細書は、新規とみなされる本発明のシステム、装置および方法を定義する特許請求の範囲で締めくくられる。ただし、本システム、本装置および本方法は、同様の参照符号を示す添付の図面を参照して以下の説明を考慮することで、よりよく理解されると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
使用される同様の参照符号が同一または機能的に同様の要素を示し、また、縮尺に忠実に示されていない、且つ以下の詳細な説明と共に組み込まれて本明細書の一部を構成する添付の図面は、さらなる様々な実施形態を示すため、および本システム、本装置および本方法に従う様々な原理および利点を説明するために役立つ。本システム、本装置および本方法の実施形態の利点は、その例示的な実施形態の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。これらの説明は、添付の図面と共に考慮されるものである。
【
図1】拡張された且つ開かれた状態(open orientation)における左心耳外科手術用植込みクリップの例示的な実施形態の斜視図である。
【
図2】
図1のクリップの遠位端の拡大立面図である。
【
図5】中間で収縮された植込み前の状態における
図1のクリップの斜視図である。
【
図6】
図5のクリップの遠位端の拡大立面図である。
【
図8】中間で収縮された且つ回転途中の植込み前の状態における
図1のクリップの斜視図である。
【
図9】収縮された且つ完全に回転された植込み時の状態における
図1のクリップの斜視図である。
【
図10】
図9のクリップの遠位端の拡大立面図である。
【
図13】制御ハンドルの植込み制御組立体の一部の遠位端に取り付けられた、拡張された且つ開かれた状態における左心耳外科手術用植込みクリップの別の例示的な実施形態の部分上面図である。
【
図14】
図13のクリップおよび制御組立体の部分拡大右側立面図である。
【
図15】
図13のクリップおよび制御組立体の部分斜視図である。
【
図16】
図13のクリップおよび制御組立体の部分拡大水平断面図である。
【
図17】
図13の支柱付勢サブ組立体の一部および制御組立体の一部の部分斜視図である。
【
図18】
図13のクリップおよび制御組立体の遠位側立面図である。
【
図19】中間で収縮された且つ回転途中の植込み前の状態におけるクリップ支柱を示す、
図13のクリップおよび制御組立体の一部の部分拡大斜視図である。
【
図20】中間で収縮された且つ回転されていない植込み前の状態におけるクリップ支柱を示す、
図13のクリップおよび制御組立体の部分上面図である。
【
図21】
図20のクリップおよび制御組立体の部分斜視図である。
【
図22】
図20のクリップおよび制御組立体の部分拡大右側立面図である。
【
図23】中間で収縮された且つ回転途中の植込み前の状態におけるクリップ支柱を示す、
図19のクリップおよび制御組立体の部分斜視図である。
【
図24】収縮された且つ完全に回転された植込み時の状態におけるクリップ支柱を示す、
図13のクリップおよび制御組立体の部分拡大右側立面図である。
【
図25】
図24のクリップおよび制御組立体の部分上面図である。
【
図26】
図24のクリップおよび制御組立体の部分遠位側立面図である。
【
図27】
図24のクリップおよび制御組立体の部分斜視図である。
【
図28】
図24のクリップおよび制御組立体の部分水平断面図である。
【
図29】網(web)を有する
図5のクリップの遠位端の拡大立面図である。
【
図30】網部を有する
図5のクリップの遠位端の拡大立面図である。
【
図31】左心耳外科手術用植込みクリップのさらなる例示的な実施形態の部分模式図および拡大断面図である。
【
図32】収縮された且つ回転された状態における左心耳外科手術用植込みクリップの別の例示的な実施形態の斜視図である。
【
図38】
図32のクリップの斜視図および部分的に長手方向の断面図である。
【
図40】
図32のクリップの遠位端の部分拡大斜視図および部分的に長手方向の断面図である。
【
図41】
図32のクリップの遠位端の部分拡大斜視図および部分的に長手方向の断面図である。
【
図42】クリップ留置装置のクリップ取り付けヘッドの例示的な実施形態における、
図32のクリップの部分上面図である。
【
図43】収縮された且つ回転された状態における左心耳外科手術用植込みクリップの別の例示的な実施形態の斜視図である。
【
図45】粗面部の例示的な実施形態と接触する組織を示す、
図43のクリップの斜視図および部分的に長手方向の断面図である。
【
図46】粗面部の別の例示的な実施形態と接触する組織を示す、
図43のクリップの斜視図および部分的に長手方向の断面図である。
【
図48】
図43のクリップの付勢部材のばね部材部分を製造するための2プレート金型の例示的な実施形態の部分斜視図である。
【
図50】
図48の金型の一部およびばね部材部分の部分斜視図である。
【
図51】
図50の金型部分およびばね部材部分の部分隠面斜視図である。
【
図52】左心耳を含むヒトの心臓の部分模式図である。
【
図53】閉じられた状態における左心耳外科手術用植込みクリップの別の例示的な実施形態の上面図または下面図である。
【
図57】クリップ留置装置の例示的な実施形態のクリップ接触端の分解部分模式図を含む、中間で拡大された状態における
図53のクリップの上面図または下面図である。
【
図61】拡大された状態における
図53のクリップの上面図または下面図である。
【
図65】閉じられた状態におけるクリップおよび留置装置を有するクリップ留置装置の例示的な実施形態の一部に設置された、
図53のクリップの上面図または下面図である。
【
図66】第1の拡大された状態における
図65のクリップおよびクリップ留置装置の上面図または下面図である。
【
図67】第2の拡大された状態における
図65のクリップおよびクリップ留置装置の上面図または下面図である。
【
図68】第3の拡大された状態における
図65のクリップおよびクリップ留置装置の上面図または下面図である。
【
図69】近位側で開かれた状態における
図53のクリップの例示的な実施形態の上面図または下面図である。
【
図73】遠位側で開かれた且つ中間で拡大された状態における
図57のクリップ留置装置のクリップ接触端の分解部分模式図を含む、遠位側で開かれた且つ中間で拡大された状態における
図53のクリップの上面図または下面図である。
【
図77】クリップカバーの例示的な実施形態の模式図を含む、
図60のクリップの開放端側拡大立面図である。
【
図78】遠位側で開かれた且つ中間で拡大された状態における、およびクリップ支柱カバーの例示的な実施形態を有する、
図53のクリップの上面図である。
【
図81】
図78のクリップおよびカバーの開放端側立面図である。
【
図83】拡張された状態における視覚的フラグの例示的な実施形態の遠位端の部分斜視図である。
【
図84】連結された状態における
図84のフラグの斜視図である。
【
図85】視覚的フラグ装置の例示的な実施形態の斜視図である。
【
図86】クリップが完全に閉じられた状態における左心耳外科手術用植込みクリップに取り外し可能に取り付けられたクリップ接触端を開閉する留置装置の例示的な実施形態の側方立面図である。
【
図87】クリップの遠位端が閉じられた状態における
図86の留置装置の側方立面図である。
【
図88】中間でクリップが開かれた且つ平行な状態における
図86の留置装置の側方立面図である。
【
図89】クリップが開かれた且つ遠位端が拡張された状態における
図86の留置装置の側方立面図である。
【
図90】留置装置の例示的な実施形態のクリップ接触端を開閉する機構の模式図である。
【
図91】シャフトの一部が取り除かれ、且つ旋回ピンが取り除かれ、且つクリップの付勢装置が取り除かれ、且つクリップが完全に開かれた状態における左心耳外科手術用植込みクリップに取り外し可能に取り付けられたクリップ接触端を開閉する留置装置の遠位端の例示的な実施形態の部分斜視図である。
【
図92】ロックワイヤが取り除かれた、
図91の留置装置およびクリップのクレビス(clevis)部の部分拡大斜視図および水平断面図である。
【
図93】クリップが完全に閉じられた状態における、クレビスおよびシャフトの上半分が取り除かれた、
図91の留置装置およびクリップの部分斜視図である。
【
図94】
図93の留置装置およびクリップの部分側方立面図である。
【
図95】
図93の留置装置およびクリップの部分上面図である。
【
図96】クリップの遠位端が閉じられた状態における、クレビスおよびシャフトの上半分が取り除かれた、
図91の留置装置およびクリップの部分斜視図である。
【
図97】
図96の留置装置およびクリップの部分側方立面図である。
【
図98】
図96の留置装置およびクリップの部分上面図である。
【
図99】クリップが完全に開かれた状態における、クレビスおよびシャフトの上半分が取り除かれた、
図91の留置装置およびクリップの部分斜視図である。
【
図102】クリップが完全に開かれた状態における、上側ジョーが取り除かれた、
図99の留置装置およびクリップの部分斜視図である。
【
図104】クリップが完全に閉じられた状態における、
図91のクリップの斜視図である。
【
図108】変換(convertible)バンドの例示的な実施形態を有する、
図104のクリップの側方立面図である。
【
図109】完全に開かれた状態における、支柱間で延在する変換バンドを有する、
図108のクリップの斜視図である。
【
図112】組織閉塞クリップを設置するための閉端センサーを有する、且つジョーが開かれた状態における、且つジョーが開かれたことをセンサーが感知できる状態にある、且つクリップがジョー内に装填された開かれた状態における、且つクレビス、シャフトおよびハンドルが図示されていない、エンドエフェクター・ジョーの例示的な実施形態の遠位側斜視図である。
【
図113】遠位端から見た
図112のエンドエフェクター・ジョーおよびクリップの斜視図である。
【
図114】近位端側から見た
図112のエンドエフェクター・ジョーおよびクリップの斜視図である。
【
図115】
図112のエンドエフェクター・ジョーおよびクリップの遠位側立面図である。
【
図118】ジョーが閉じられた状態における、且つクリップが組織を閉塞した状態における、且つジョーが閉じられたことをセンサーが感知できる状態にある、近位端側から見た
図112のエンドエフェクター・ジョーおよびクリップの斜視図である。
【
図119】遠位端側から見た
図118のエンドエフェクター・ジョーおよびクリップの斜視図である。
【
図120】
図118のエンドエフェクター・ジョーおよびクリップの右側立面図である。
【
図123】遠位端の上方から見た
図118のエンドエフェクター・ジョーおよびクリップの斜視図である。
【
図124】
図118のエンドエフェクター・ジョーおよびクリップの遠位側部分の部分拡大下面図である。
【
図125】シャフト、クレビスおよびジョーが組織閉塞クリップを設置するための閉端センサーを有する、且つジョーが開かれた状態における、且つジョーが開かれたことをセンサーが感知できる状態にある、且つクリップが開かれた状態でジョー内に装填された保護布スリーブを有する、且つクレビスが連結ジョイントにおいてシャフトの遠位端に連結される、且つハンドルが図示されていない、エンドエフェクターの例示的な実施形態の部分斜視図である。
【
図126】遠位端の上方から見た
図125のエンドエフェクター、クリップ、クレビスおよびシャフトの斜視図である。
【
図127】ジョーが閉じられた状態における、且つクリップが組織を閉塞した状態における、且つジョーが閉じられたことをセンサーが感知できる状態における、
図125のエンドエフェクター、クリップおよびクレビスの下面斜視図である。
【
図128】左側の上方から見た
図125のエンドエフェクター、クリップ、クレビスおよびシャフトの上面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
必要に応じて、本システム、本装置および本方法の詳細な実施形態が本明細書に記載される。しかしながら、記載される実施形態は、様々な形態で包含され得る例示的なシステム、装置および方法に過ぎないことに留意されたい。そのため、本明細書に記載される特定の構造的および機能的な詳細は、限定的なものとして解釈されるべきではなく、特許請求の範囲の基礎として解釈されるべきであり、実質的に詳細な構造においてシステム、装置および方法に様々に採用されることを当業者に教示するための代表的な基礎として解釈されるべきである。さらに、本明細書で使用される用語および表現は、限定を意図するものではなく、本システム、本装置および本方法を理解できるような説明を提供することを意図している。本明細書は、新規とみなされるシステム、装置および方法の特徴を定義する特許請求の範囲で締めくくられる。ただし、本システム、本装置および本方法は、同様の参照符号を示す添付の図面を参照して以下の説明を考慮することで、よりよく理解されると考えられる。
【0073】
以下の詳細な説明において、本明細書の一部を構成し、実現可能な実施形態を示す添付の図面を参照する。他の実施形態が利用されてもよく、特許請求の範囲から逸脱することなく、構造的および論理的な変更が行われてもよいことに留意されたい。そのため、以下の詳細な説明は、限定的なものとして解釈されるべきではなく、その実施形態の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその等価物によって定義される。
【0074】
また、代替実施形態が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく実現されてもよい。また、本システム、本システム、本装置および本方法に関連する詳細が不明確にならないように、本装置および本方法の例示的な実施形態の既知の要素は、詳細には説明されないか、その説明自体を省略する。
【0075】
本システム、本装置および本方法を記載および説明する前に、本明細書において使用される用語は、特定の実施形態を説明するためにのみ使用され、限定的なものではないことに留意されたい。「備える(comprises、comprising)」またはその他の変化形は、要素のリストを備えるプロセス、方法、成形品または装置が、それらの要素のみを含むのではなく、明示的に記載されていないその他の要素、またはそのようなプロセス、方法、成形品または装置に固有のその他の要素を、非排他的に包含できることを意図している。「~を備える(comprises ... a)」の前に記載された要素は、さらなる制約なしに、その要素を構成するプロセス、方法、成形品または装置において追加的に同一の要素が存在することを排除するものではない。本明細書において使用される「含む(including)」および/または「有する(having)」という用語は、備える(すなわちオープンランゲージ)として定義される。本明細書において使用される不定冠詞(a、an)は、1つまたは複数として定義される。本明細書において使用される「複数(plurality)」という用語は、
2つ以上として定義される。本明細書において使用される「別の(another)」という用語は、少なくとも2つ以上として定義される。本明細書は、「実施形態(embodiment、embodiments)」という用語を、1つの実施形態、複数の同様の実施形態、または複数の異なる実施形態として使用する場合がある。
【0076】
「結合(coupled)」および「接続(connected)」という用語ならびにそれらの派生用語が使用される場合がある。これらの用語は、互いに同義語として意図されていないことに留意されたい。むしろ、特定の実施形態において、「接続」は、2つ以上の要素が互いに物理的または電気的に直接接触していることを示すために使用される場合がある。「結合」は、2つ以上の要素が物理的または電気的に直接接触(例えば直接結合)していることを意味する場合もある。ただし、「結合」は、2つ以上の要素が互いに直接接触していないが、互いに協働または相互作用(例えば間接的な結合)することを意味する場合がある。
【0077】
本説明の目的のために、「A/B」の形態の表現、または「Aおよび/またはB」の形態の表現、または「AおよびBの少なくとも一方」の形態の表現は、(A)、(B)、または(AおよびB)を意味する。ここで、AおよびBは、特定の物体または属性を示す不定要素である。使用される場合、この表現は、「および/または」という表現に類似する、AまたはB、またはAとBの両方を選択することを意図することをここに定義する。このような表現の中に2つ以上の不定要素が存在する場合、この表現は、不定要素のうちの1つだけ、不定要素のうちのいずれか1つ、不定要素のいずれかの組み合わせ、およびすべての不定要素を含むものとしてここに定義する。例えば、「A、BおよびCのうちの少なくとも1つ」の形態の表現は、(A)、(B)、(C)、(AおよびB)、(AおよびC)、(BおよびC)、または(A、BおよびC)を意味する。
【0078】
第1および第2、上部および下部などの関係性を有する用語は、ある物(entity)または行動と別の物または別の行動とを区別するためにのみ使用される場合がある。この場合、そのような物の間または行動の間の実際の関係または順序を必ずしも必要としたり示したりするものではない。本明細書は、上/下、後ろ/前、上部/下部、および近位/遠位のような、視点に基づく説明が使用される場合がある。このような説明は、単に説明を容易にするために使用され、記載された実施形態への適用を制限することを意図していない。実施形態の理解に役立つように、様々な動作が、複数の個別の動作として順番に記載される場合がある。しかしながら、説明の順番は、これらの動作がこの順序に依存することを意味すると解釈されるべきではない。
【0079】
本明細書において使用される「約(about、approximately)」という用語は、明示的に記載されているか否かにかかわらず、すべての数値に適用される。これらの用語は、当業者であれば、一般的に引用された値と同等(すなわち同じ機能または結果を有する)であると想定できる数値の範囲を指す。多くの場合、これらの用語には、最も近い有効数に四捨五入された数値が含まれる。本明細書において使用される「実質的(substantial、substantially)」という用語は、様々な部分を互いに比較したときに、その比較された部分が、当業者であれば同じと想定できる寸法に等しいか、または十分に近いものであることを意味する。本明細書において使用される「実質的」は、単一の寸法に限定されるものではなく、具体的には、比較される部分の値の範囲を含む。値の上下の範囲(例えば「+/-」または以上/未満またはより大きい/より小さい)は、当業者であれば、記載された部分に対する許容可能な公差内であることが分かるような変動を含む。
【0080】
本明細書に記載のシステム、装置および方法の実施形態は、本明細書に記載の装置、システムおよび方法の機能の一部、大部分またはすべてを、特定の非プロセッサー回路およびその他の要素と組み合わせて実現するように、1つまたは複数のプロセッサーを制御する1つまたは複数の従来型プロセッサーおよび固有のプログラム命令で構成されてもよいことに留意されたい。非プロセッサー回路には、信号ドライバー、クロック回路、電源回路、ならびにユーザー入力および出力要素が含まれてもよいが、これらに限定されるものではない。代替的に、一部の機能またはすべての機能は、格納されたプログラム命令を持たないステートマシンによって、または、各機能または特定の機能の組み合わせがカスタムロジックとして実装される1つまたは複数のASIC(application specific integrated circuits)またはFPGA(field-programmable gate arrays)によって実現され得る。むろん、これらのアプローチの組み合わせも使用され得る。このように、これらの機能のための方法および手段が、本明細書に記載される。
【0081】
本明細書において使用される「プログラム」、「ソフトウェア」、「ソフトウェアアプリケーション」などの用語は、コンピューターシステムまたはプログラム可能な装置上で実行されるように設計された一連の指示として定義される。「プログラム」、「ソフトウェア」、「アプリケーション」、「コンピュータープログラム」または「ソフトウェアアプリケーション」には、サブルーチン、関数、プロシージャー、オブジェクトメソッド、オブジェクトの実装、実行可能なアプリケーション、アプレット、サーブレット、ソースコード、オブジェクトコード、任意のコンピューター言語ロジック、共有ライブラリ/ダイナミックロードライブラリ、および/またはコンピューターシステム上で実行するように設計されたその他の命令のシーケンスが含まれてもよい。
【0082】
本明細書において、本システム、本装置および本方法の様々な実施形態が記載される。様々な実施形態の多くでは、特徴が類似している。そのため、冗長な説明を避けるために、これらの類似した特徴は一部でその説明を省略する。しかしながら、初めて現れた特徴の記載が、繰り返し記載されることなく、後に記載された類似の特徴にも適用されて、そこに組み込まれることに留意されたい。
【0083】
ここで、例示的な実施形態を説明する。まず、図を詳細に参照すると、特に
図1~
図12を参照すると、外部から植え込み可能且つばね付勢される左心耳隔離クリップ100の第1の例示的な実施形態が示されている。隔離クリップ100は、クリップ組立体102と、付勢組立体104と、を備える。クリップ組立体102は、本明細書において第1のクリップ支柱110および第2のクリップ支柱120として示す対向する2つのクリップ支柱から構成される。例示的な本実施形態において、第1および第2のクリップ支柱110,120の各々は、実質的に六角柱の形状を有する。この形状の詳細については、以下でさらに詳述する。また、例示的な実施形態において、第1および第2のクリップ支柱110,120は、互いに鏡面対称である。各クリップ支柱110,120の本体は、チタン、ステンレス鋼、クロム・コバルト合金、ニッケル・チタン合金、セラミック、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、ポリメチルメタクリレートおよびエポキシなどの任意の適切な生体適合性材料から形成される。また、各クリップ支柱本体110,120は、体内の組織を損傷させる可能性がある鋭利な縁部や角部がクリップ100内に形成されないようにまたはそれを有さないように形成される。したがって、その例示的な実施形態において、クリップ支柱本体の縁部および角部の各々は、実質的に滑らかな外形を形成するように、丸みを帯び、および/または湾曲し、および/または面取りされている。各クリップ支柱本体の内部は、中空、部分的に中空、または完全に中実であるように形成されてもよい。
【0084】
上述したように、第1および第2のクリップ支柱110,120の各々は、6つの側部を有する。具体的には、各クリップ支柱110,120は、第1の側部112,122と、第2の側部114,124と、第3の側部116,126と、第4の側部118,128と、互いに反対側の2つの端部119a~119b,129a~129bと、を備える。これらの列挙された側部の相対的な位置に関して読者を補助するために、一部の図面における本発明の隔離クリップの実施形態の様々な視点において、x-y軸が適用されており、内向き、外向き、上向き、下向きなどの方向が、図示および説明のためだけにこれらの図面に使用される。まず、
図1~
図4に示す隔離クリップ100の構成を参照すると、
図1~
図4は、拡大された状態における隔離クリップ100を示す。ここで、クリップ100の自立状態における隔離クリップ100の内部開口部の径が拡張されて、内部開口部172(直径B)がより広くまたはより拡大される。この拡大された構成において、各クリップ支柱110,120の第1の側部112,122は、第1の側部112,122が互いを面しておよび実質的に直接対向して配置されるように、内部開口部172に向けて内向き(x軸に沿って)になる。各クリップ支柱110,120の第2の側部114,124は、一方のクリップ支柱110,120の対応する第1の側部112,122に対して実質的に90度の角度で配置されており、y軸に沿って上向きになる。さらに、各クリップ支柱110,120の第4の側部118,128は、一方のクリップ支柱110,120の対応する第1の側部112,122に対して実質的に90度の角度で配置されており、第1の側部112,122とは反対方向、すなわちy軸に沿って下向きになる。各クリップ支柱110,120の第3の側部116,126は、対応する第2の側部114,124と共に共通の縁部を形成し、対応する第4の側部118,128と共に共通の縁部を形成し、隔離クリップ100の内部開口部172から離れる方向にx軸に沿って外向きになるように、対応する第1の側部112,122の反対側に位置する。最後に、各クリップ支柱110,120の端部119a~119b,129a~129bの各対は、互いに反対側の2つの端部を備える。各端部119a~119b,129a~129bは、x軸およびy軸の両方に垂直な方向(すなわちz軸に沿った方向)に面する。
【0085】
図2に最もよく示すように、例示的な本実施形態において、各クリップ支柱110,120の第1の側部112,122は、隣接する第2の側部114,124に繋がるわずかに丸みを帯びた上縁部182と、隣接する第4の側部118,128に繋がるより顕著に丸みを帯びた下縁部180と、を有する、実質的に平坦な長方形の表面を画定する。対照的に、各クリップ支柱110,120の第3の側部116,126は、実質的に平坦な長方形の表面ではない。むしろ、
図3に最もよく示すように、第3の側部116,126は、x軸に沿って内向きに弧を描くように(すなわちクリップ100の内部開口部172に向けて)曲げられてまたは湾曲して凹面を形成する。ここで、曲げられたまたは湾曲している部分の角度または鋭さは、第3の側部116,126の中心に近づくにつれて増加する。そのため、第1の側部112,122は、クリップ支柱110,120の「平らな側」として特徴付けられてもよく、第3の側部116,126は、クリップ支柱110,120の「凹んでいる側」として特徴付けられてもよい。第3の側部116,126の凹面形状の特定の利点については、以下でさらに詳述する。
【0086】
隔離クリップ100の付勢組立体104は、クリップ支柱110,120をブリッジ状に互いに接続するように作用してLAAを捕捉するための完全なクリップ組立体100を形成し、第1および第2のクリップ支柱110,120の相対的な位置を互いに対して配向する。具体的には、付勢組立体104は、隔離クリップ100の植込みプロセスを通して、第1および第2のクリップ支柱110,120にばね付勢力を連続的に加えて、一方のクリップ支柱110,120を他方のクリップ支柱110,120に向かうように付勢するか、クリップ支柱110,120の両方をx軸に沿って内向きに付勢する。植込みプロセスは、(
図1~
図4に示すように)クリップの拡大された捕捉状態におけるLAAの初期捕捉から、(
図5~
図7に示すように)クリップの中間捕捉状態における継続的且つ可逆的な設置、さらに(
図8の形態から
図9~
図12の形態でその進行状態を示すように)クリップの植込み状態および閉じられた状態におけるLAAの最終捕捉までの段階を含む。ここで、隔離クリップ100は、図示しないクリップ留置装置から解放されて、クリップの内部開口部172でのLAAの最終位置において、最後のクリープおよび締め付け運動が実施される。
【0087】
図1~
図12に示す例示的な実施形態において、付勢組立体104は、互いに反対側に位置するばね部材150から構成される。各ばね部材150は、隔離クリップ100の2つの端部119,129にそれぞれ配置される。例示的な実施形態で示すように、各ばね部材150は、外側(または上側)ばね152および内側(または下側)ばね154を含むばねのセットを備える。しかしながら、例示的な代替実施形態において、各ばね部材150は、単一のばねのみを備える。各ばね152,154は、実質的に半円形または「馬蹄形」の形状を有し、内側ばね154の曲率半径は、外側ばね152の曲率半径よりも小さい(本明細書において使用される「半径」という用語は、広義には、円形および非円形の両方、すなわち真円ではない曲率の経路を指す)。各ばね部材150は、隔離クリップ100の2つの遠位端の一方に位置する、互いに隣接するクリップ支柱端部の対(119a,129aの対、または119b,129bの対)に取り付けられて、クリップ支柱110,120を互いに接続して、隔離クリップ100によって画定される境界を構成する。具体的には、一方の内側ばね154の2つの端部158の各々は、ばね154が外れないように、取り付け点164において、対応するクリップ支柱端部119a,129aの一方に、長手方向に固定された状態で回転可能に接続される。取り付け点164は、第3の側部116,126よりも、対応するクリップ支柱110,120の第1の側部112,122に近いクリップ支柱端部119a,129aの位置にある。同様に、外側ばね152の2つの端部156の各々は、取り付け点162において、対応するクリップ支柱端部119a,129aの一方に、長手方向に固定された状態で回転可能に接続される。取り付け点164とは異なり、取り付け点162は、第1の側部112,122よりも、対応するクリップ支柱110,120の第3の側部116,126に近い。したがって、このように2つのクリップ支柱110,120に固定されると、外側および内側ばね152,154は、実質的に同心円状に共に配置され、クリップ支柱110,120からy軸に沿って上向きに延在する。同様に、隔離クリップ100の遠位側で反対側の他方の端部において、第2のばね部材150の外側および内側ばね152,154は、隣接する1対のクリップ支柱端部119b,129bに同心円状に回転可能且つ長手方向に固定されるように接続される。各クリップ支柱端部119a~119b,129a~129bにおける2つの取り付け点162,164は、付勢組立体104およびクリップ構造全体にかなりの安定性を提供する。
【0088】
例示的な本構成において、外側および内側ばね152,154の内向きの回転により、ばね部材150は、第1および第2のクリップ支柱110,120を互いに向けて付勢するばね付勢力を本質的および継続的に加える。ばね部材150によって所与の時間で加えられるばね付勢力の量は、フックの法則に従って、各ばね152,154の内部ばね定数kと、各ばね152,154がその平衡点に対して伸ばされた距離とに依存する。ばね152,154の材料がニッケル・チタン(Ni-Ti)合金(例えばニチノール)のように超弾性の場合、ばねの力は、フックの法則に従わず、変位に伴って直線的に増加することなく、ほぼ一定になることに留意されたい。本明細書においてばね定数について記載されている場合、それは材料の特定の特性で置き換えられる。
【0089】
外側および内側ばね152,154の各々は、所望のばね定数kを有する適切な生体適合性材料から形成される。ここで、各ばね152,154は、同一の材料から形成されてもよい。代替的に、ばね152,154がそれぞれの材料特性に差異を有することが有益である場合、異なる材料が様々なばね152,154を構成してもよい。これらの材料の一例として、クロム・コバルト合金、ステンレス鋼、チタン合金、およびNi-Tiのような超弾性合金が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、外側ばね152と内側ばね154との間に変動する剛性を有することが有益である場合、外側ばね152は、内側ばね154とは異なるように構成および成形されてもよい。
【0090】
さらに、上述したように、上側および下側ばね152,154とクリップ支柱110,120との間の各接続部には、取り付け点162,164での回転自由度が存在する。この回転自由度によって、各クリップ支柱110,120は、ばね部材150に対してy軸に沿って上向きに回転することができる。これにより、例えば実質的に下向きの移動圧力が外部からクリップ支柱110,120の外側部分(例えば第2の側部114,124の外側縁部184)に加えられたとき、または実質的に上向きの移動圧力が外部からクリップ支柱110,120の内側部分(例えば縁部180)に加えられたとき、そのトルク力は、外側および内側ばね152,154の曲率によって規定されるように、各クリップ支柱110,120を、ばね部材150に対して(
図8に示すようにz軸の周りで)時計回りまたは反時計回りに回転または旋回させる。これにより、
図5から
図8から
図9への移行で示すように、隔離クリップ100の構成が大きく変化する。以下でさらに詳述するように、クリップ支柱110,120のこの回転能または旋回能は、LAAをクリップ内部172にさらに移動させるのを補助し、LAAに取り付けられたときに隔離クリップ100によって加えられた把持力を強化する。
【0091】
したがって、ばね152,154の各端部156,158と対応するクリップ支柱110,120との間の接続部は、ばね部材150に対する所望の回転自由度をクリップ支柱110,120に提供しながら、ばね部材150を保持する適切な回転可能な接続部を備えてもよい。例えば、例示的な一実施形態において、各取り付け点162,164は、クリップ支柱110,120の長手方向で、対応するクリップ支柱端部119a~119b,129a~129bにおいて途中までの距離または深さまで開けられ且つ対応するばね端部156,158の一部と嵌合するようにそれを受容する穴、溝またはチャネル(図示せず)(止まり穴であり得る)を有する。ばね端部156,158および/またはばね端部156,158を受容するクリップ支柱端部119a~119b,129a~129bの穴、溝またはチャネルは、穴、溝またはチャネルと、そこに挿入されたばね端部156,158との相互作用がねじり効果を生じるように成形または構成されてもよい。例示的な一実施形態において、各取り付け点162,164は、クリップ支柱本体内で途中までの距離で延在する細長い穴から構成されてもよい。細長い穴は、ばね152,154の直径よりも大きい直径を有し、ばね端部156,158が固定される内部底面で終端する。例えば、内部底面は、対応するばね端部156,158の一方の直径よりもわずかに小さい直径を有する補助的穴(これも止まり穴であり得る)を有してもよい。これにより、ばね端部156,158は、補助的穴内に押し込まれて固定される。別の実施例において、穴の内部底面は、対応するばね端部156,158を受容するための拡大された補助的開口部または窓部に開口してもよい。ここで、ばね端部156,158は、圧着されたまたは折り曲げられた遠位端を有するように構成される。これにより、ばね端部156,158が対応するクリップ支柱110,120の本体に挿入されたときに、遠位端が補助的開口部または窓部内で協働するように係合または引っ掛けられる(その例を以下でさらに詳述する)。代替的に、ばね端部156,158が穴に挿入される際の補助的開口部または窓部とばね端部156,158の遠位端との間の摩擦は、遠位端を圧着されたまたは折り曲げられた構成に能動的に強制または変形させて、ばね端部156,158を固定位置に固定する(その一例を以下でさらに詳述する)。
【0092】
上述した隔離クリップ100の構成を用いて、LAAと左心房との間の内部流体通路を効果的に閉鎖するために、心臓の左心房からLAAを隔離するクリップ100の植込み処置の例示的な実施形態を説明する。
図9~
図12に示すように、隔離クリップ100の自立状態または静止状態において、第1および第2のクリップ支柱110,120は、付勢組立体104によって加えられたばね付勢力によって、互いに近接するように、または互いに表面接触するように配置される。したがって、この自立状態または静止状態において、互いに対向するクリップ支柱110,120の間には、比較的小さい内部開口部172が存在する。その幅を、矢印Aで示す。そのため、LAAを安全に係合させ、隔離クリップ100の植込み中にその周囲(girth)を完全に取り囲むように、クリップ支柱110,120は、制御されるように互いに引き離される。これにより、クリップ支柱110,120の間の内部開口部172が広げられ、隔離クリップ100が(
図1~
図4に示すように)拡大された状態で配置される。したがって、クリップ留置装置(ここでは図示せず)は、患者の体内で位置決めされる前に、および植込みプロセスを通して、自立している隔離クリップ100に係合するために使用される。これにより、クリップ100をLAAの手術部位に確実に搬送することができ、植込みプロセス中にクリップ支柱110,120の相対的な位置を変更することができる。このように、隔離クリップ100との使用に適合する例示的なクリップ留置装置は、植込みプロセス中にクリップ100を適切な位置に一時的に係合させて保持するように構成され、また、植込みプロセスが完了した後にクリップ100から切り離されるように構成される。さらに、クリップ留置装置は、付勢組立体104のばね付勢力に対する反力を加えるように構成される。これにより、クリップ支柱110,120の互いに対する位置決めを正確に制御することができ、また、植込みプロセス中に隔離クリップ100によってLAAに加えられる圧縮力の量を制御することができる。このような適切なクリップ留置装置の例示的な一実施形態において、その主要構成要素は、制御ハンドルと、細長いシャフトと、LAAクリップ取り付けヘッドと、を備える。使用時には、制御ハンドルは、外科医によって操作されるように、近位側の方向(すなわち外科医の方向)に配向される。さらに、シャフトは、制御ハンドルとクリップ取り付けヘッドとの間の中間接続部を形成する。これにより、制御ハンドルがシャフトの近位端に配置され、クリップ取り付けヘッドがシャフトの遠位端に配置される(遠位端は、外科医から最も遠い位置である)。クリップ取り付けヘッドは、第1および第2のクリップ支柱110,120の両方を選択的に係合させて保持するように構成され、クリップの付勢組立体104のばね付勢力に調整可能な反力を加えることで、クリップ支柱110,120を例えば
図1に示すような拡大された状態になるように制御可能に引き離して、クリップ100の拡張された内部開口部172を形成する。その幅は、矢印Bによって画定される。この能力において、クリップ取り付けヘッドは、一方のクリップ支柱110,120のみを他方のクリップ支柱110,120とは逆向きに変位させるように構成されてもよく、または、クリップ取り付けヘッドは、所望の引き離しをもたらすために、第1および第2のクリップ支柱110,120の両方を相互に反対の方向に変位させるように構成されてもよい。クリップ支柱110,120を移動させるクリップ取り付けヘッドの操作が、制御ハンドルにある1つまたは複数の制御部を使用する外科医によって作動されるように、制御ハンドル、シャフトおよびクリップ取り付けヘッドは、操作可能に接続される。したがって、植込み処置における最初のステップとして、隔離クリップ100は、(例えばクリップ100をクリップ取り付けヘッドに結び付けるための一連のコード(例えば外科手術用縫合糸)を使用して)クリップ取り付けヘッドに取り外し可能に係合され、隔離クリップ100を患者の胸腔内に進行させる前に、クリップ100を
図1~
図4に示す拡大された状態に配置し、クリップの内部開口部172を所望の拡大された直径Bまで広げることで、クリップ100をLAAに取り付けるための準備が整う。
【0093】
次に、外科医は、クリップ留置装置を用いて、(拡大された状態の)隔離クリップ100を胸腔内およびLAAの位置に挿入する。この時点で、LAAに接近するための様々な外科的方法が採用されてもよく、この例示的な隔離処置が、LAAに接近するための特定の技術として限定されるものではないことに留意されたい。例えば、外科医が心臓に直接到達できるように、胸部の中央と肋骨に大きい切開部を形成する従来の開胸術または開心術によって、LAAに接近してもよい。代替的に、左開胸術を実施して、クリップ留置装置が胸壁を通して挿入されるように、隣接する2つの肋骨の間の肋間空間に小さな切開部が形成されてもよい。さらなる代替実施形態において、胸腔鏡下処置を実施して、クリップ留置装置を含む複数の器具(例えばカメラ)を挿入するための複数のより小さい切開部(「ポート」とも呼ぶ)が形成されてもよい。隔離クリップ100がLAAの適切な範囲内に入ると、外科医は、拡大されたクリップ100の中央開口部172に(
図1および
図2の破線矢印の方向に)、LAAを慎重に進める。これにより、LAAの基部が第1および第2のクリップ支柱110,120の第1の側部112,122の間に配置され、第1および第2のクリップ支柱110,120の第4の側部118,128が、可能な限り、LAAのいずれかの側の心臓の外面の形状(topography)と表面接触するように(または第4の側部118,128のパッドのような表面の一部が心臓と表面間接触するように)置かれる。この段階で、LAAの初期捕捉が完了する。
【0094】
小さい切開部が形成される比較的低侵襲的な外科的アプローチ(例えば開胸術または胸腔鏡下手術)を介してLAAに接近する場合、クリップ留置装置の例示的な代替実施形態は、小さい切開部を介したクリップ100の操作を容易にするために、隔離クリップ100が拡大されていない形態で、LAAの部位へのクリップ100の挿入を許容するように構成されてもよい。このような実施形態において、隔離クリップ100は、クリップが胸腔内に進行した後に、拡大された状態で配置される。
【0095】
次のステップにおいて、外科医は、クリップ留置装置を作動させて、クリップ支柱110,120の第1の側部112,122によって加えられたLAAに対する締め付け力が、LAAの内部に出入りする血流を効果的に抑制するのに十分な程度に、LAAの基部の周りで隔離クリップ100を制御可能に閉じる。本明細書において、これを「LAA隔離」と呼ぶ。
図5~
図7は、その中間捕捉状態における隔離クリップ100の構成を示す。
図6に最もよく示すように、ここで、第1および第2のクリップ支柱110,120は、互いに近接する互いに近接して配置されて、その結果、内部開口部172は、矢印Cで減少された直径を有する。この例示的な実施形態に関して、隔離クリップ100のこの閉鎖をもたらす、本明細書において1つが「受動的(passive)」と呼ばれ、もう1つが「能動的(active)」と呼ばれる2つの潜在的な機構が想定される。「受動的」機構は、外科医がクリップ留置装置の制御部を作動させて、クリップ100を拡大された状態にするために、上述したように、ばね部材150のばね付勢力に対抗するようにクリップ取り付けヘッドによって加えられた反力の量を、制御されたペースで解放または緩和させることを含む。反力を解放することで、クリップ支柱110,120の一方または両方は、その(またはそれらの)固有の静止しているばね付勢状態に戻ることができる。これにより、クリップ支柱110,120の一方または両方は、
図6の破線矢印に示すように内向きに(すなわちx軸に沿って)、反対側のクリップ支柱110,120に向けて移動することができる。これは、以下でさらに詳述するように、勢いを生じさせて、クリップ支柱110,120の一方または両方を(例えば
図9および
図10に示すように)最終的な植込み位置まで回転させる。「能動的」機構に関しては、このアプローチは、外科医が反力を解放させることを含むのみならず、クリップ取り付けヘッドをさらに作動させて、クリップ支柱110,120の一方または両方(および/またはばね部材150の一方または両方)に、ある程度の圧力を直接加え、クリップ支柱110,120の一方または両方に、例えば
図6の破線矢印で示す方向に追加の力を加えることをさらに含む。
【0096】
植込みプロセスのこの段階で、現在の中間位置がLAAの内部に出入りする血流を閉鎖するのに最適且つ効果的であるかを外科医が判断できる位置に、隔離クリップ100がある。外科医が隔離クリップ100の現在の位置を好まない場合、外科医は、クリップ留置装置を作動させ、クリップ100を拡大された状態またはわずかに拡大された状態に戻してクリップ100をLAAから制御可能に切り離し、その後、初回とは別の位置または異なる量の締め付け力で、LAAの周りでクリップ100を再係合して閉じることができる。クリップ留置装置を用いて、満足のいく位置が得られるまで、このプロセスが必要なだけ繰り返されてもよい。
【0097】
隔離クリップ100が所望のLAA隔離位置にあると外科医が判断すると、外科医は、クリップ留置装置を作動させて隔離クリップ100を
図9~
図12に示すような最終的な植込み状態に配置する。この最終的な植込み状態は、LAAをさらに確実に隔離クリップ100の内部開口部127に引き込むクリープおよび締め付け運動をもたらす。これにより、恒久的な植込みクリップの寿命の間、LAAに対するクリップの把持力の長期的な強度と安定性が強化される。
図8に示すように、この隔離クリップ100の最終的な植込み状態は、第1および第2のクリップ支柱110,120の各々が、各ばね部材150に対して実質的に90度回転していることを特徴とする。
図9~
図12に示すように、この変形された構成によって、各クリップ支柱110,120の第1の側部112,122がy軸に沿って上向きになり、各クリップ支柱110,120の第2の側部114,124がx軸に沿って外向きになり、各クリップ支柱110,120の第3の側部116,126の各々がLAAの基部を取り囲む心臓の形状に当接するクリップ100の表面を有するように、各クリップ支柱110,120の第3の側部116,126がy軸に沿って下向きなり、各クリップ支柱110,120の第4の側部118,128の各々がLAAの外面と表面接触するように密着して押し付けられるように、各クリップ支柱110,120の第4の側部118,128がx軸に沿って互いに内向きに対向する。この構成において、第4の側部118,128は、距離Aだけ互いから離れている。ここで、距離Aは、ばね部材150のばね付勢力と、LAAの厚さとによって決定される。
【0098】
上述したように、90度回転を生成するために、各クリップ支柱110,120にトルク力を加えて、ばね部材150に対するクリップ支柱110,120の角変位を引き起こす必要がある。この例示的な実施形態に関して、トルク力の供給源が複数想定される。上述したように、一実施例において、クリップ取り付けヘッドによって加えられた反力の量を緩和するための外科医によるクリップ留置装置の作動によって、ばね部材150の固有のばね付勢力が支配的な力作用になることができる。これにより、ばね部材150は、可能な限り最大の範囲で内向きにコイル状になる。その結果、クリップ支柱110,120の第1の側部112,122,180の内部領域と、介在するLAAとの間に生じる表面間の相互作用によって、クリップ支柱110,120は、ばね部材150の曲率に決定されるように、時計回りまたは反時計回りに自動的且つ強制的に回転される(
図8の破線矢印を参照)。例示的な代替構成において、より能動的アプローチが使用される。ここでは、外科医は、クリップ取り付けヘッドを作動させ、各クリップ支柱110,120および/または各ばね部材150をクリップ取り付けヘッドに直接接触させて、各クリップ支柱110,120を所望の方向に90度、強制的に回転させる。したがって、(クリップ取り付けヘッドを含む)クリップ留置装置は、植込みプロセス全体を通してクリップ支柱110,120の相対的な位置に強制的に移動または追従させることができるように、隔離クリップ100の拡大された中間捕捉状態および最終的な植込み状態に適合するように構成される。さらに、クリップ支柱110,120を回転させるために使用される機構に関係なく、第1および第2のクリップ支柱110,120の間の最適な空隙(すなわち距離A)が実質的に一定に維持されることを確実にするために、ばね部材150が90度回転中にある程度収縮することが必要であることに留意されたい。ここで、空隙が、その間に捕捉されたLAAを効果的に保持および閉塞することができる。
【0099】
したがって、クリップ支柱110,120の90度回転は、LAAが隔離クリップ100の内部開口部172内にさらに「押し上げられる」巻き上げ型(girding-type)の動きを生成する。これにより、植込みプロセスの中間捕捉段階において左心房とLAAの基部との間の接合部で形成されたLAAの残留管や空所を除去することができ、より密でより安定した把持力を得ることができる。実際、クリップ支柱110,120のこの90度「ロール」は、隔離クリップ100をLAAに沿って1mm以上下向きに効果的に配置することができる。接合部におけるすべての空所を除去することは、そこに血栓が形成されないことを確実にするために重要である。
【0100】
上記が最終的な植込み段階であるが、外科医は、クリップ100の閉鎖をやめて、クリップ100を拡大された状態に戻し、上述した閉鎖および回転ステップを繰り返すことで、隔離クリップ100の位置を引き続き調整することができる。言い換えると、クリップ留置装置が最終的な植込み状態で支柱110,120を互いに対向するように配置した後に、外科医は、隔離クリップの植込みプロセスを完全に逆転させることができる。外科医が位置決めに満足した後に、クリップ留置装置のクリップ取り付けヘッドが隔離クリップ100から恒久的切り離される。例えば、クリップ取り付けヘッドに隔離クリップ100を一時的に取り付けるために1種または複数種の縫合糸が使用された場合、縫合糸は、この段階で切断される。
【0101】
巻き上げ効果に加えて、クリップ支柱110,120の90度回転のさらなる利点は、結果として得られるクリップ支柱110,120の第3の側部116,126の位置である。上述したように(および
図9~
図11に示すように)、回転の終了時および植込みクリップの残りの寿命の間、第3の側部116,126は、LAAの基部を取り囲む心臓の非平面的且つ不規則な形状に当接する隔離クリップ100の一部を有する。したがって、恒久的に心臓の表面に当接するのは、クリップ100の「凹んでいる側」である。平らな表面とは対照的に、凹面形状は、より正確に心臓の自然な湾曲に適合する。これにより、クリップ100は、快適に、しっかりと、邪魔にならない保護された位置に固定され得る。さらに、クリップ100が上述したようにおよび図示するように凹面ではなく真っ直ぐな面を有する場合、左心房の非平面的な表面に当接するように配置されたとき、心房表面とクリップ表面との間の距離は、クリップ100の遠位端でより大きくなる。これは、「縫合端皮膚変形(dog ears)」として知られる状態をもたらす場合がある。この状態では、心房と連通しているLAAの小さなポケットが残る。このようなポケットは、塞栓をもたらす場合がある血栓の成長を促す部位を示す。このように、第3の側部116,126の湾曲した形状は、この状態を有利に排除する。
【0102】
別の
図1~
図12の例示的な実施形態による隔離クリップ100の別の重要な特徴は、クリップ支柱110,120の第4の側部118,128に関する。上述したように、第4の側部118,128は、クリップ100が完全に植え込まれたときにLAAと恒久的に表面接触する隔離クリップ100の表面である。そのため、隔離クリップ100とLAAとの間の健康的且つ永続的な相互作用を促進するために、LAA接触面140は、第4の側部118,128の一方または両方の表面のすべてまたは一部に適用されるか、それらと一体形成されてもよい。例示的な把持構成において、LAA接触面140は、緩やかで摩耗しない、且つLAA上の隔離クリップ100の把持力が時間の経過とともに弱まることがないように、過剰に滑らかではない接触面を提供する。そのため、このような把持構成において、LAA接触面140は、比較的滑りにくい任意の適切な生体適合性材料から構成される。例えば、隔離クリップ100が滑ってLAAから外れてしまうことに抵抗するように、LAA接触面140は、LAAに対する牽引力を強化する織ポリエステル、シリコーンゴム、PTFE、延伸PTFE、ウレタンまたはその他の弾性素材を含むクッション性のあるパッド材料から構成されてもよい。別の把持例において、一方または両方の第4の側部118,128のLAA接触面140は、それと接触するように配置されたときにLAA組織に有害ではない、わずかに隆起した表面凹凸部を有する。
【0103】
上記は、隔離クリップ100のクリップ組立体102の例示的なクリップ支柱本体の説明であるが、クリップの機能の態様を改善するためのクリップ組立体102の様々な改良例が、クリップ支柱本体に適用されてもよく、クリップ支柱本体と一体形成されてもよい。例えば、
図1~
図12に示す例示的な実施形態において、「自己移動部」または牽引要素130は、クリップ支柱110,120の第1の側部112,122のそれぞれの表面の一部または(図示するように)実質的に全体に適用される。上述したように、クリップ支柱110,120の第1の側部112,122は、クリップ100の取り付け中に、LAAを最初に捕捉してクリップ支柱110,120の間の内部開口部127にLAAを移動させる隔離クリップ100の表面である。自己移動部または牽引要素130は、隔離クリップ100の取り付け中に、外科医および/またはクリップ留置装置の外部からの動きまたはLAA(またはより一般的には心臓)の拍動運動と協調または協働する、任意の構造的構成要素から構成される。これにより、クリップ100の内部開口部172内に自然に且つ慎重にLAAが前進するように働きかけることができ、その後、LAAがクリップ100から抜け出すのを抑制するように作用することができる。そのため、従来技術の装置および方法とは異なり、自己移動部または牽引要素130は、別個の器具(例えば外科手術用鉗子)をほとんどまたはまったく使用することなく、LAAを所望の位置に移動するために、隔離クリップ装置自体の1つまたは複数の構成要素を利用する。これらの原理に従って動作する自己移動部130または牽引要素のいくつかの例示的な実施形態は後述する。例示的な代替実施形態において、要素130は、親水性コーティングのような滑りやすい材料のコーティングである。滑りやすいコーティングによって、隔離クリップ100の互いに対向する表面は、例えばクリップの取り付け中にLAAの上を容易に滑動することができる。
【0104】
図1~
図12の例示的な実施形態には、自己移動部または牽引要素130が示されている。自己移動部または牽引要素130は、隔離クリップ100の内部開口部127の方向に延在する1つまたは複数のエラストマー性フィンガー132(または突起部)を備える。より正確には、
図2に最もよく示すように、隔離クリップ100が拡大された状態にあるときに、フィンガー132は、x軸に対して正の角度(すなわちθ>0度)で配向され、すなわち、クリップ100の内部127でLAAを受容する方向と同じ方向に配向される(
図2の破線矢印を参照)。その結果、LAAが隔離クリップ100の第1および第2のクリップ支柱110,120の間で受容されるときに、フィンガー132は、LAAと接触し、LAAの拍動的な動きおよび/または外科医によるクリップ留置装置の前後方向の動きと組み合わされて、
図2の破線矢印の方向にLAAをクリップ100内に自然に徐々に移動させると同時に、破線矢印と反対の方向にLAAがクリップ100から後退しないようにする。重要なことに、
図1~
図12の例示的な実施形態において、自己移動部または牽引要素130は、上述した下側の丸みを帯びた縁部を維持するために、各第1の側部112,122の縁部180,182上に延在する。
【0105】
別の例示的な実施形態において、自己移動部または牽引要素130は、玩具であるHEXBUG(登録商標)が動作する方法と同様に、振動力を受けたときに前方に移動するインパルスに反応するように構成された、図示しない複数の小さな足部構造体の形態であってもよい。これらの足部は、ナノスケールまたはマイクロスケールであってもよく、隔離クリップ100の第1の側部112,122の表面全体またはその一部に沿って適用されてもよい。植込みプロセス中にLAAと接触するときに、LAAの拍動運動は、クリップ100に必要な振動を引き起こすのに十分であってもよい。代替的に、足部を完全に作動させて内部のLAAの移動を引き起こすために、外部から振動力を隔離クリップ100に伝達する必要がある場合もある。このような例示的な実施形態において、クリップ留置装置は、クリップ取り付けヘッド内に振動を生成させる小型モーターを内部に備える。これにより、振動は、クリップ100に直接伝達される。足部が作動された後に、LAAがクリップ100の内部開口部172に進入している間に、足部とLAAとの間で表面接触が生じると、足部の前方向への衝撃力により、LAAがクリップの内部開口部172内に継続的に取り込まれる。
【0106】
隔離クリップ100の図示しないさらなる例示的な実施形態において、自己移動部または牽引要素130は、密にまとめられると、結果として生じるファンデルワールス力による一方向の摩擦材料を形成する他の微小粒子から構成されてもよい。これにより、隔離クリップ100の内部開口部172に受容される方向にLAAが配向されると、粒子は、植込みプロセス中にLAAと表面接触したときに、LAAを内部開口部172内にさらに進行させるか誘導する。これらの粒子は、合成材料から構成されるが、自然に存在する例をモデルとして構成されてもよい。例えば、ヤモリの足のパッドに見られる極小の微細な毛や繊維(すなわち剛毛部およびヘラ部(spatulea))は、摩擦接着性の特性を示し、これは、本目的のために有用に模倣することができる。自然に存在する別の例は、鮫の皮に見られる歯質である。その他の技術には、(カーボンナノチューブの配列から構成された)ナノチューブフォレストや他の小さな一方向性の微細構造(例えば複数の三角形状またはピラミッド型の構造を含む傾斜した山脈部)が含まれる。
【0107】
隔離クリップ100の別の図示しない例示的な実施形態において、自己移動部または牽引要素130は、一連のローラーから構成されてもよい。ローラーは、植込みプロセス中にLAAと表面接触すると、拍動するLAAとローラーとの間の摩擦から生じるスリップトルクにより、LAAをクリップの内部開口部172内に誘導するコンベアのような駆動力を生成する。ローラーは、様々な構成で配置されてもよい。例えば、ローラーは、単一の細長いシャフトに沿って配置されてもよい。代替構成において、シャフトは、一列に配置された複数の短いシャフトに分割されてもよく、複数の列を形成するために平行に配置されてもよい。様々な例示的な実施形態において、ローラーは、任意の方向に自由に回転することができ、または一方向のみに回転するように制限することができる。一方向の実施形態において、LAAへのクリップ100の取り付けは、LAAがクリップ100の外に向けて後退することをローラーが防止することで強化される。対照的に、ローラーが自由に回転する実施形態において、クリップ100を再配置する必要がある場合に、ローラーは、LAAに過度の牽引力が加わる危険性を低減する。
【0108】
図1~
図12の例示的な実施形態による隔離クリップ100は複数の利点を有するが、付勢組立体104の形状には、いくつかの制限がある。第1に、隔離クリップ100を配置するために、互換性のあるクリップ留置装置は、隔離クリップ100の十分な部分を包囲して、クリップ支柱110,120の一方または両方の動きを制御することができる強固な外枠を備える必要がある。第2に、ばね部材150の内向きに回転する構成により、付勢組立体104は、クリップ支柱110,120が互いに離れることができる距離を制限する。第3に、クリップ留置装置の強固な外枠は、隔離クリップ100がそれ自体を開くことができる程度に関係なく、隔離クリップ100を開くことができる範囲を制限する。第4に、付勢組立体104は、クリップ支柱110,120を引き離して隔離クリップ100を広げるために、常に増加する反力を必要とする。第5に、クリップ支柱110,120は、LAAが隔離クリップ100内で捕捉されたときにLAAの動きの2つの方向を制限するが、ばね部材150が位置する遠位端を有するLAAの他の対向する2つの側部は、クリップ100のLAA接触面に収容されないか、その平面上で閉じられない。これは、不利益に、LAA組織の遠位側が、ばね部材150の位置にあるクリップ100から漏れ出すこと、すなわちクリップによって効果的に締め付けられないことに繋がる可能性がある。
【0109】
隔離クリップ100のばね部材150の領域からLAAが漏れ出すことを改善または実質的に防止するために、伸縮可能なバリア構造が(1つまたは2つのばね152,154をそれぞれ有することができる)ばね部材150の一方または両方に適用されてもよい。これにより、長手方向にLAAがばね部材150から外に漏れ出すのをバリケードすることができる。
図29および
図30は、ばね部材150の本体の一部に適用された(伸縮可能であったり、張りがあったり、異なる伸縮性を有する部分を有したりすることができる)網の2つの例示的な実施形態を示す。網は、例えばばね152,154の円弧によって形成された開放スパンの一部を覆う。したがって、網は、ばね部材150の領域において、LAAが隔離クリップ100から外ににじみ出ることを実質的に防止するために作用する。
図29に示す実施形態において、網は、ばね152,154の上部を覆い且つばね152,154の本体の一部に沿って下向きに延在するブーツ190の形態を有し、これにより、2つのばね152,154が実質的に同一平面上にあるときに、外側ばね152の形状に適合する。別の実施例において、
図30は、バンド192の形態を有し、ばね152,154の本体の中間領域の周りに配置された網の実施形態を示す。この実施例における網は、ばね部材150上に伸縮可能な網を確実に維持するために十分な弾力性を提供しながら、伸縮可能な網がばね部材150の拡大された状態への移行を過度に制限しないように、必要とされる伸縮能力を提供する弾性素材から構成される。
【0110】
ばね部材150の外面が周囲の身体組織に外傷を与えて、組織の内成長を引き起こすことを防止するために、特定のセーフガードが採用されてもよい。例えば、ばね部材150の外面は、全体的にまたは部分的に、適切な滑り剤(slickening agent)でコーティングされてもよい。別の実施例において、ばね部材150は、全体的にまたは部分的に、適切な特性を有する材料から構成された、上述した伸縮可能な網などの可撓性鈍化部材によって封入されてもよい。そのような材料の一例として、シリコーン、ePTFEおよびウレタンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。例示的な実施形態において、可撓性鈍化部材は、1つまたは複数のばね152,154を固定するように取り囲む細長い管状部材から構成される。さらに、管状部材は、一連の円形または環状の管状部分から構成されてもよい。代替的に、管状部材は、複数のルーメンによって囲まれた中央ルーメン(central lumen)から構成されてもよい。
【0111】
図1~
図12およびそれらに対応する隔離クリップ100の第1の例示的な実施形態の上記説明は、各ばね部材150が2つの同心円状の「馬蹄形」のばね152,154を備えることを示しているが、ばね部材150は、このような特定のタイプ、形状または構成に限定されるものではないことに留意されたい。ばね部材150は、対向するクリップ支柱110,120に必要なばね付勢力を提供する任意のばね状構造の形態であってもよい。これにより、隔離クリップ100がLAAを捕捉して確実に植え込まれたままになるのに十分な力で、クリップ支柱110,120の一方または両方は、対向するクリップ支柱110,120に向けて付勢される。例えば、各ばね部材150は、単一の「馬蹄形」ばねのみから構成されてもよい。
図32~
図50は、ばね付勢された隔離クリップのさらなる例示的な実施形態を示す。これは、以下でさらに詳述する。
図31は、拡大された状態(すなわち
図1~
図4に示す構成)における、ばね付勢された隔離クリップ100aの例示的な実施形態の部分図を示す。ここでは、隔離クリップ110aの左側のみを示す。本実施形態において、クリップ100aは、互いに対向する第1および第2のクリップ支柱110a,120aを備える。第1および第2のクリップ支柱110a,120aは、
図1~
図12に示す実施形態を参照して上述したように、ばね部材150aによって互いに接続される。ただし、各ばね部材150aは、ばね端部160,162で終端する単一の非限定的なばね構造体を備え、各端部160,162において、各クリップ支柱110a,120aと回転可能に且つ長手方向に固定された接続部を形成する。より具体的には、各クリップ支柱110a,120aのそれぞれの端部164,166の中央領域には、クリップ支柱本体内に部分的に(実質的にその中心線に沿って)延在し且つそれぞれのばね端部160,162の一方に係合するようにそれを受容する、円筒状のチャネル168に開口する開口部164a,166aが形成される。さらに、各チャネル168は、底面170で終端する。ばね端部160,162をクリップ支柱110a,120aに対して回転可能に固定するために、ばね端部160,162は、対応するチャネル168内に進入する際に、チャネル168の内面の少なくとも一部に沿って巻かれた90度の螺旋溝またはトラック(図示せず)を横断する。T字曲がり部または圧着部160a,162aが各ばね端部160,162の先端に形成され、これにより、ばね端部160,162は、螺旋溝に係合するように配向される。また、各チャネル168の形状は、例えば、チャネル168の長さに沿ってその内径が1つまたは複数の変化を有するようにさらに変更されてもよい。例えば、
図31の実施形態において、チャネル168の内径は、底面170に近づくと、わずかに減少する。したがって、曲げられたまたは圧着されたばね端部160,162と、チャネル168の内部形状および螺旋溝またはトラックとの間の相互作用の結果として、クリップ支柱110a,120aの中心にばね付勢力を加えることで力の釣り合いが得られる。これにより、各ばね部材150aを所定の位置に長手方向に固定し、クリップ100aの最終的な植込み状態(すなわち
図9~
図12に示す構成)までクリップ支柱110a,120aをばね部材150aの周りで自由に回転させるねじり効果が発生する。
【0112】
次に、
図13~
図28を参照すると、外部から植え込み可能な左心耳隔離クリップ200の第2の例示的な実施形態が示されている。隔離クリップ200は、クリップ組立体202と、付勢組立体204と、を備える。隔離クリップ200は、多数の利点を有する。第1に、隔離クリップ200を配置するために、隔離クリップ200を包囲するフレームを有する強固な外側ヘッドを必要としない。第2に、付勢組立体204は、クリップ支柱210,220が互いに離れることができる距離を制限しない。これは、隔離クリップ200を開くことができる量に制限がないことを意味する。第3に、付勢組立体204は、隔離クリップ200が開閉されたときに、クリップ支柱210,220にほとんどまたはまったく力を加えない。第4に、クリップ支柱210,220および制御コード(制御線)252,262は、隔離クリップ200において捕捉されたときに、LAAの動きを4つの方向のすべてに制限する。クリップ200は、コードによって引っ張られていると言うことができる。
【0113】
クリップ組立体102は、遠位側クリップ支柱210および近位側クリップ支柱220の互いに対向する2つのクリップ支柱を備える。
図13~
図28に示す例示的な実施形態において、クリップ支柱210,220は、実質的に長方形の形状を有し、互いに鏡面対称である。各支柱210,220は、自己移動部230を備える第1の側部212,222と、第2の側部214,224と、第3の側部216,226と、LAA接触面240を備える第4の側部218,228と、互いに反対側の第5および第6の端部219a,219b,229a,229bと、を有する。
【0114】
付勢組立体204は、第1の且つ遠位側の支柱付勢サブ組立体250と、第2の且つ近位側の支柱付勢サブ組立体260と、を備える。
【0115】
遠位側支柱付勢サブ組立体250は、遠位側制御コード252と、第1の遠位端アンカー254と、遠位側張力装置256と、を備える。遠位側制御コード252は、第1の遠位端アンカー254で終端し、クリップ留置装置300の近位側ハンドルで開始する。遠位側制御コード252の末端部および第1の遠位端アンカー254は、遠位側クリップ支柱210によって画定された第1のアンカー中空部217a内に移動可能に存在する。遠位側制御コード252は、第1のアンカー中空部217aから通路215aを通って延在し、例示的な本実施形態において、
図14に示すように第4の側部218で遠位側クリップ支柱210を出る。代替実施形態において、遠位側制御コード252は、以下で詳述するように、第5の側部219aで遠位側クリップ支柱210から出ることができる。次いで、遠位側制御コード252は、2つの制御支柱210,220の互いに対向する表面によって形成された空隙270をわたって延在する。(本明細書において定義される空隙270は、互いに対向する2つの自己移動部230の間の空間に限定されるものではない。
図24~
図28に示すようにおよび以下でさらに詳述するように、2つの制御支柱210,220も、植込みプロセスの後のステップにおいて、回転して互いに対向する第4の側部218,228を形成する。このように、空隙270は、隔離クリップの植込みプロセス中の任意の時点で、隔離クリップ200の内部272の互いに対向する2つの側部を構成するように、広義に定義される。)。
図13において、空隙270は、拡張された開口位置として示されている。例示的な実施形態において、この拡張された開口位置は、最大拡張位置であり得る。しかしながら、図示する拡張された開口位置は、中間的な拡張された位置であり得る。以下でさらに詳述するように、空隙270の距離は、留置装置300によって制御されるため、空隙の距離の唯一の制限は、遠位側および近位側制御コード252,262の長さ、ならびに拡張軸320の長さである。このように、隔離クリップ200は、図示するよりもはるかに大きくクリップ支柱210,220を開く能力を提供する。
【0116】
遠位側制御コード252は、空隙270をわたった後に、近位側クリップ支柱220の第4の側部228に入り、近位側クリップ支柱220によって画定されたチャネル227を通過する。図示する例示的な実施形態において、チャネル227は、近位側クリップ支柱220の第2の側部224によって画定された出口225において近位側クリップ支柱220を出る。遠位側制御コード252は、第2の側部224で近位側クリップ支柱220を出る。ここで、出口225には、
図19を参照して後述するコード捕捉組立体280が設けられる。次いで、遠位側制御コード252は、留置システム300の近位側基部310に入る。近位側基部310は、
図13および
図20において破線で示されている。遠位側制御コード252は、近位側基部310を通ってまたは近位側基部310において延在し、留置装置300の近位側ハンドルに位置する図示しないコード制御装置まで導かれる。コード制御装置は、留置装置300に対する遠位側制御コード252の遠位側(内から外)および近位側(外から内)の動きを制御する。
【0117】
図示しない例示的な代替実施形態において、チャネル227は、近位側クリップ支柱220の第5の端部229aによって画定された出口225において、近位側クリップ支柱220を出る。第5の端部229aで出ることの有益な違いは、遠位側制御コード252が第1の遠位端アンカー254と近位側基部310との間で2回曲がり、近位側制御コード262が第2の遠位端アンカー264と近位側基部310との間で2回曲がることである。このように、遠位側および近位側張力装置256,266の両方に付与された力は、釣り合っている。第2の側部224の出口225には、コード捕捉組立体280が設けられる。次いで、上記と同様に、遠位側制御コード252は、留置システム300の近位側基部310に入る。遠位側制御コード252は、近位側基部310を通ってまたは近位側基部310において延在し、留置装置300の近位側ハンドルに位置する図示しないコード制御装置まで導かれる。コード制御装置は、留置装置300に対する遠位側制御コード252の遠位側(内から外)および近位側(外から内)の動きを制御する。
【0118】
図示しない別の例示的な代替実施形態において、チャネル227は、近位側支柱移動軸350と同軸であり、近位側支柱移動軸350は、中空である。この構成において、出口225は、近位側支柱回転受容部352に対向する近位側支柱移動軸350の開放中空端部である。そのため、遠位側制御コード252は、出口225で近位側クリップ支柱220を出て、近位側クリップ支柱220の第5の端部229aに取り外し可能に取り付けられた近位側支柱移動軸350の長手方向の範囲全体にわたって配置される。遠位側制御コード252の他の特徴は、本明細書の他の実施形態で記載されるため、ここではその説明を省略する。
【0119】
遠位側張力装置256は、遠位側制御コード252の末端部に、少なくとも第1のアンカー中空部217aと第1の遠位端アンカー254とによって画定された距離274にわたって固定されないような能力を提供する(例えば
図16を参照)。例示的な実施形態において、遠位側張力装置256は、対向するアンカーポイントを有するばねである。ここで、ばねの第1のアンカーポイントは、第1の遠位端アンカー254に位置し、ばねの第2のアンカーポイントは、遠位側クリップ支柱210のアンカー中空部217a内の壁に位置する。これらのアンカーポイントは、ばねが遠位側張力装置256であるときに、遠位側張力装置256が遠位側制御コード252に提供する距離274を画定する。第1の遠位端アンカー254が球体であり、遠位側張力装置256がばねであると、第1の遠位端アンカー254を接続するばねの端部は、球体を自動的に中心となす円の形態を有する。配置される長さにわたって実質的に一定である遠位側張力装置の別の例示的な実施形態は、「ネゲーター」ばねを含む。例示的な実施形態において、ネゲーターばねは、ステンレス鋼、超弾性合金またはエラストマー性ばねから形成されたばねである。
【0120】
遠位側張力装置256は、使用される付勢力のタイプに依存する所定の力の限界に基づいて、第1の遠位端アンカー254の移動を可能にする。言い換えると、付勢装置がばねである場合、そのばねの動きおよび必要とされる力は、フックの法則に従う必要がある。ばねは、アンカー中空部271a内で付勢されていなくてもよく、事前に付勢されていてもよい。後者の場合、遠位側張力装置256が第1の遠位端アンカー254をアンカー中空部217a内でさらに移動させる前に、所与の量の力を克服する必要がある。遠位側制御コード252に加えられた力が所与の量の力よりも小さい場合、第1の遠位端アンカー254は、事前に取り付けられた位置から移動しない。加えられた力が所与の量を超えると、第1の遠位端アンカー254は、アンカー中空部217a内の移動限界まで移動する。事前付勢されたばねを使用することで、張力装置の移動範囲にわたる張力の量は、ばねが事前に付勢されていない場合よりも一定になる。ネゲーターばねの場合、加えられた力は、ばねの変位の範囲にわたって実質的に一定である。その結果、締め付け要素の間の組織の厚さとは無関係に、組織に一定量の圧迫を与えることができる。
【0121】
遠位側支柱付勢サブ組立体250と同様に、近位側支柱付勢サブ組立体260は、近位側制御コード262と、第2の遠位端アンカー264と、近位側張力装置266と、を備える。近位側制御コード262は、第2の遠位端アンカー264で終端し、クリップ留置装置300の近位側ハンドルで開始する。近位側制御コード262の末端部および第2の遠位端アンカー264は、
図16に示すように遠位側クリップ支柱210によって画定された第2のアンカー中空部217b内に移動可能に存在する。近位側制御コード262は、第2のアンカー中空部217bから通路215bを通って延在し、例示的な実施形態において、
図18に示すように第4の側部218で遠位側クリップ支柱210を出る。代替実施形態において、近位側制御コード262は、第5の側部219aで遠位側クリップ支柱210を出ることができる。次いで、近位側制御コード262は、2つの制御支柱210,220の互いに対向する表面によって形成された空隙270をわたって延在する。近位側制御コード262は、空隙270をわたった後に、近位側クリップ支柱220の第4の側部228に入り、近位側クリップ支柱220によって画定されたチャネル227を通過する。チャネル227は、第4の側部228に直交する近位側クリップ支柱220の本体に入り、次いで、特に
図16に示す例示的な実施形態において、第4の側部228に平行に回転して、近位側クリップ支柱220の長手方向の範囲を横断する。例示的な実施形態において、チャネル227は、近位側クリップ支柱220の第2の側部224によって画定された出口223(例えば
図19を参照)で終了する。(上記のように、且つ詳細は省略するが、出口223は、第5の端部229aによって画定され得る。)近位側制御コード262は、第2の側部224で近位側クリップ支柱220を出る。ここで、出口223には、
図19を参照して以下でさらに詳述するコード捕捉組立体280が設けられる。次いで、近位側制御コード262は、留置システム300の近位側基部310に入る。近位側制御コード262は、近位側基部310を通って、または近位側基部310の外で、または近位側基部310に隣接して、または近位側基部310において延在し、留置装置300の近位側ハンドルに配置された図示しないコード制御装置まで導かれる。コード制御装置は、留置装置300に対する近位側制御コード262の遠位側(内から外)および近位側(外から内)の動きを制御する。
【0122】
近位側張力装置266は、近位側制御コード262の末端部に、少なくとも第2のアンカー中空部217bと第2の遠位端アンカー264とによって画定された距離275にわたって固定されないような能力を提供する(例えば
図16を参照)。例示的な実施形態において、近位側張力装置266は、対向するアンカーポイントを有するばねである。ここで、ばねの第1のアンカーポイントは、第2の遠位端アンカー264に位置し、ばねの第2のアンカーポイントは、遠位側クリップ支柱210のアンカー中空部217b内の壁に位置する。これらのアンカーポイントは、ばねが近位側張力装置266であるときに、近位側張力装置266が近位側制御コード262に提供する距離275を画定する。第2の遠位端アンカー264が球体であり、近位側張力装置266がばねであると、第2の遠位端アンカー264を接続するばねの端部は、球体を自動的に中心となす円の形態を有する。近位側張力装置266は、上述しているためにその説明を省略する所定の力の限界に基づいて、第2の遠位端アンカー264の移動を可能にする。
【0123】
図17は、遠位側および近位側制御コード252,262が、遠位側および近位側クリップ支柱210,220の様々なチャネルおよび中空部を通過するときの形状、およびそれらが出口223,225でどのように出るかを示す。例示的な本実施形態において、それは、第2の側部224からである。制御コード252,262は、出口223,225を通過するときに重ねられ、任意の配向で重ねられ得る。言い換えると、遠位側制御コード252のための出口225は、近位側制御コード262のための出口223の遠位に位置することができ、または出口223の近位に位置することができる。
図19において、出口223,225は、制御コード252,262が第2の側部224に出る実施形態に係るコード捕捉組立体280に示されている。制御コード252,262は、コード捕捉組立体280を出て、近位側基部310に操作可能に接続する。例示的な実施形態において、近位側基部310は、制御コード252,262が導かれる1つまたは2つの制御コード経路を有する。これらの経路は、滑らかであり、その中での制御コード252,262の自由な滑動を可能にする。制御コード252,262は、留置装置300のハンドルに近接して延在する。留置装置300には、隔離クリップ200の植込み処置を実施するために必要に応じて制御コード252,262を移動させるコード制御組立体が配置される。その制御は、以下でさらに詳述する。
【0124】
図13~
図28は、隔離クリップ200のための留置装置300の遠位側部分の例示的な一実施形態を示す。この例示的な遠位側部分は、近位側基部310と、拡張軸320と、遠位側基部330と、遠位側支柱移動軸340と、近位側支柱移動軸350と、を備える。
【0125】
近位側基部310は、拡張軸320が通過する本体を有する(また、拡張軸は、近位側基部310の本体に隣接して、または近位側基部310の外側で、または近位側基部310において通過することができる)。拡張軸320は、近位側基部310の本体に対して1つの位置に留まるように半径方向に固定されるが、本体に対して長手方向に自由に遠位方向に伸び、近位方向に後退する。図示しない例示的な代替実施形態において、安定化バーが、遠位側基部330から近位側基部310までおよびその内側まで近接するように延在する。例示的な一実施形態において、安定化バーは、遠位側基部330に固定され、近位側基部310の遠位面の穴(貫通している穴または止まり穴であり得る)に入る長手方向の範囲を有する。穴は、安定化バーの断面と実質的に類似する断面を有する。このようにして、遠位側基部330に作用する力は、環境からであろうと、留置装置300のハンドルから伝達されたものであろうと、そこに加えられたときに、近位側および遠位側基部310,320の間に位置する拡張軸320の範囲328にのみ伝達されるものではない。
【0126】
遠位側支柱回転装置322は、拡張軸320の遠位端に固定され、遠位側基部330内に配置される(また、遠位側支柱回転装置322は、遠位側基部330に隣接して、または遠位側基部330の外側に、または遠位側基部330において配置され得る)。遠位側回転装置アンカー332は、拡張軸320を遠位側基部330に接続して、遠位側基部330に対する遠位側支柱回転装置322の自由な回転を許容しながら、遠位側基部330に対する遠位側支柱回転装置322の長手方向移動を防止する。遠位側回転装置アンカー332は、破線で模式的に示されている。例示的な実施形態において、遠位側支柱回転装置322は、例えば
図13および
図14に示すマイタ歯車である。そのため、このマイタ歯車は、遠位側基部330内で回転するが、遠位側基部330に対して拡張軸320の軸方向に移動しない。例示的な実施形態において、遠位側回転装置アンカー332は、所与の円周を有する円筒状の止まり穴であり、遠位側支柱回転装置322は、その所与の円周に対応する外形を含むボス(突出部)を有する。したがって、遠位側支柱回転装置322は、穴の中で自由に回転することができるが、穴のさらに奥に移動することができない。
【0127】
(近位側基部310において破線で模式的に示す)近位側回転アンカー312は、近位側基部310内の拡張軸320の軸に対して近位側支柱回転装置326を長手方向に固定するが(また、近位側支柱回転装置326は、近位側基部310に隣接して、または近位側基部310の外側に、または近位側基部310において配置され得る)、拡張軸320の任意の回転に伴って近位側支柱回転装置326が自由に回転することを許容する。例示的な実施形態において、近位側回転アンカー312は、近位側支柱回転装置326の回転運動を許容するが、近位側基部310内での近位側支柱回転装置326の軸方向の運動を抑制するように構成される。例えば、このアンカー312は、スラスト軸受組立体(thrust bearing assembly)であり得る。スラスト軸受組立体では、近位側支柱回転装置326のハブが、近位側回転アンカー312内の環状の凹部と係合するスラストリングを含む。例示的な実施形態において、近位側支柱回転装置326は、マイタ歯車であり。そのため、このマイタ歯車は、拡張軸320の任意の回転と同調して近位側基部310内で回転するが、近位側基部310に対して拡張軸320の軸に沿って移動しない。近位側支柱回転装置326の接続部のための例示的な一実施形態は、多角形の断面を有する拡張軸320の遠位側範囲328を形成し、近位側支柱回転装置326に、拡張軸320の多角形断面の形状に対応する断面を有する中央中空部を提供する。この範囲328は、
図14に示されている。このように、拡張軸320は、その回転軸に沿って近位側支柱回転装置326を通って自由に移動することができるが、拡張軸320の回転は、近位側支柱回転装置326の対応する回転をもたらす。
【0128】
図15~
図19によりよく示すように、遠位側クリップ支柱210の回転は、遠位側支柱移動軸340と共に生じる。遠位側支柱移動軸340は、第5の端部219aに回転可能に固定される基部を有する。遠位側支柱移動軸340の基部に対向するように、遠位側支柱回転受容部342が設けられる。遠位側支柱回転受容部342は、遠位側支柱回転装置322に接続し、遠位側支柱回転装置322の回転に対応して回転する。例示的な実施形態において、遠位側支柱回転受容部342は、マイタ歯車である。したがって、遠位側支柱回転装置322のマイタ歯車の回転が、遠位側支柱移動軸340の軸の周りでの遠位側クリップ支柱210の対応する回転を引き起こす。
【0129】
遠位側支柱移動軸340が遠位側クリップ支柱210に恒久的に固定された場合、遠位側クリップ支柱210は、(少なくとも第5の端部219aから横方向に伸ばさずには)患者の体内に配置することができない。そのため、遠位側支柱移動軸340は、遠位側クリップ支柱210に取り外し可能に接続される。例えば
図13、
図15、
図16および
図20に示す第1の例示的な実施形態において、この取り外し可能な接続部は、遠位側支柱移動軸340の基部が滑動可能に挿入される止まり軸穴213によって形成される。遠位側支柱移動軸340を止まり軸穴213内に留めるために、遠位側クリップ支柱210に形成されたピン通路211が、手榴弾ピン状のピン(grenade pin)360を受容する。手榴弾ピン状のピン360がピン通路211内にある限り、遠位側支柱移動軸340は、止まり軸穴213内に回転可能におよび軸方向に固定される。手榴弾ピン状のピン360が引き抜かれると、遠位側支柱移動軸340は、遠位側支柱移動軸340に加えられたわずかな外向きの力によって、止まり軸穴213から容易に滑り出す。この力を適切なタイミングで伝達するために、遠位側支柱回転受容部342は、遠位側基部330内に回転自在に配置されるが、遠位側基部330に対して軸方向にその位置で捕捉される。そのため、手榴弾ピン状のピン360がピン通路211から引き抜かれたときに、遠位側支柱移動軸340を外向きに引っ張るように作用する留置装置300に加えられたあらゆる力によって、遠位側支柱移動軸340が止まり軸穴213から取り外され、遠位側クリップ支柱210が留置装置300から切り離される(遠位側制御コード252を除いて、この切り離しについては後述する)。
【0130】
例えば
図18、
図19、
図21、
図23および
図25~
図27に示す第2の例示的な実施形態において、この取り外し可能な接続部は、遠位側または近位側支柱移動軸340,350のねじ付き基部344,354がそれぞれ螺合可能に挿入されるねじ付き軸穴213,221aによって形成される。遠位側および近位側支柱移動軸340,350を遠位側および近位側クリップ支柱210,220から取り外すことが望ましい場合、遠位側および近位側クリップ支柱210,220に対する遠位側および近位側支柱移動軸340,350の適切な回転がそれぞれに生じる。例えば、制御コード252,262が固定されると、クリップ支柱200,220は、互いに相対的に回転することができない。この状態において、拡張軸320は、遠位側および近位側支柱移動軸340,350の螺合を解除する方向に回転される。遠位側および近位側支柱移動軸340,350が対応するねじ付き軸穴213,221aから取り出されたときに、クリップ支柱210,220から離れた留置装置300の簡単な動きにより、遠位側および近位側支柱移動軸340,350が隔離クリップ200から取り外される(制御コード252,262を除いて、この取り外しについては後述する)。
【0131】
図15~
図19に良好に示すように、近位側クリップ支柱220の回転は、近位側支柱移動軸350と共に生じる。近位側支柱移動軸350は、第5の端部229aに回転可能に固定された基部を有する。近位側支柱移動軸350の基部に対向するように、近位側支柱回転受容部352が設けられる。近位側支柱回転受容部352は、近位側支柱回転装置326に接続し、近位側支柱回転装置326の回転に対応して回転する。例示的な実施形態において、近位側支柱回転受容部352は、マイタ歯車である。したがって、近位側支柱回転装置326のマイタ歯車の回転が、近位側支柱移動軸350の軸の周りでの近位側クリップ支柱220の対応する回転を引き起こす。
【0132】
近位側支柱移動軸350が近位側クリップ支柱220に恒久的に固定された場合、近位側クリップ支柱220は、(少なくとも第5の端部219aから横方向に伸ばさずには)患者の体内に配置することができない。そのため、近位側支柱移動軸350は、近位側クリップ支柱220に取り外し可能に接続される。例えば
図13、
図15、
図16および
図20に示す第1の例示的な実施形態において、この取り外し可能な接続部は、近位側支柱移動軸350の基部が滑動可能に挿入される止まり軸穴221aによって形成される。近位側支柱移動軸350を止まり軸穴221a内に留めるために、近位側クリップ支柱220に形成されたピン通路211が、手榴弾ピン状のピン360を受容する。手榴弾ピン状のピン360がピン通路211内にある限り、近位側支柱移動軸350は、止まり軸穴221a内に回転可能におよび軸方向に固定される。手榴弾ピン状のピン360が引き抜かれると、近位側支柱移動軸350は、近位側支柱移動軸350に加えられたわずかな外向きの力によって、止まり軸穴221aから容易に滑り出す。この力を適切なタイミングで伝達するために、近位側支柱回転受容部352は、近位側基部310内に回転自在に配置されるが、近位側基部310に対して軸方向にその位置で捕捉される。そのため、手榴弾ピン状のピン360がピン通路211から引き抜かれたときに、近位側支柱移動軸350を外向きに引っ張るように作用する留置装置300に加えられたあらゆる力によって、近位側支柱移動軸350が止まり軸穴221aから取り外され、近位側クリップ支柱220が留置装置300から切り離される(近位側制御コード262を除いて、この切り離しについては後述する)。
【0133】
例えば
図18、
図19、
図21、
図23および
図25~
図27に示す第2の例示的な実施形態において、この取り外し可能な接続部は、近位側支柱移動軸350のねじ付き基部344が螺合可能に挿入されるねじ付き軸穴223によって形成される。近位側支柱移動軸340の残りの部分は、上述した遠位側支柱移動軸340と同様であるため、その説明を省略する。
【0134】
コード捕捉組立体280は、遠位側および近位側制御コード252,262が近位側クリップ支柱220を出る出口223,225に配置される。コード捕捉組立体280は、隔離クリップ200が植込みプロセスにあるときに制御コード252,262の自由で妨げられない動きを可能にする構造を有する。クリップ支柱210,220が植込み位置にあり、植え込まれる準備が整ったときに、制御コード252,262が所定の位置に固定される。
図13、
図15、
図20および
図21に示す例示的な実施形態において、および特に
図19および
図28において、コード捕捉組立体280は、隔離クリップ200が植込みプロセスにあるときに、開かれた状態に保持されるばね付きのヒンジ式扉である。隔離クリップ200が恒久的に植え込まれる準備が整ったときに、扉のばねが解放されて、扉を制御コード252,262に締め付け、遠位側および近位側張力装置256,266に加えられた現在の事前付勢された力と共に、その位置に恒久的にコードを保持する。
【0135】
遠位側および近位側制御コード252,262が所望の位置で保持された状態で、近位側基部310にあるコードカッター314(
図13に破線で模式的に示す)が、制御コード252,262を切断する。
【0136】
上述したように、遠位側および近位側支柱移動軸340,350は、遠位側および近位側クリップ支柱210,220に取り外し可能に接続される。手榴弾ピン状のピン360が使用される例示的な実施形態において、ピンリムーバー362が手榴弾ピン状のピン360の各々に接続される。
図13において、ピンリムーバー362は、一点鎖線で模式的に示されている。コードカッター314が制御コード252,262を切断する前、または切断した後、または切断したと同時に、留置システム300のハンドルにおける制御部が作動され、ピンリムーバー362が、遠位側および近位側クリップ支柱210,220の各々から手榴弾ピン状のピン360を引っ張り出すように作用する。手榴弾ピン状のピン360は、近位側基部310とは別にハンドルまで後退させることができる。または、手榴弾ピン状のピン360は、留置システムの引き出しと患者からの引き出しのために近位側基部310までまたは近位側基部310の対応する凹部内に引き込まれることができる。
【0137】
上述した構成において、留置システム300は、近位側クリップ支柱220に対する遠位側クリップ支柱210の動き、遠位側および近位側クリップ支柱210,220の両方の回転、ならびに制御コード252,262の伸長および引き出しを含む、隔離クリップ200の植込みを実施するための制御を効果的に行うことができる。これに関連して、図面、特に
図13および
図20~
図24を参照して、これらの制御を効果的に行うためのプロセスを説明する。
【0138】
最初のステップにおいて、隔離クリップ200は、LAA隔離のために、開状態(拡大された状態または拡張された状態とも呼ぶ)でLAAの部位に運ばれる。この状態は、
図13~
図18に示されている。次いで、外科医は、
図15の矢印Aの方向に、LAAを隔離クリップ200の内部272に入れ、第4の側部218を、LAAのいずれかの側の心臓の外面に可能な限り当接させる。心臓およびLAAの拍動運動によって、LAAを隔離クリップ200の内部272に対してより良好な位置に移動させなければ、LAAを最良の配向で隔離することができないのは確実である。このため、外科医は、別個の移動部(例えば鉗子や鋭利でない(キットナー)解剖器具)を使用して外科医の他方の手でLAAを移動させる必要がある。これにより、過去の処置において、外科医は両手を使用する必要がある。上述したように、この移動は、脆いLAAへの損傷を発生させる可能性があり、実際に発生して悲惨な結果を招くため、望ましくない。次のステップにおいて、遠位側クリップ支柱210を近位側クリップ支柱220に向けて移動することで、例示的な本実施形態において、留置装置300が作動されて、隔離クリップ200がLAAの周りで閉じられる。この動きは、2つの同時動作で発生する。一方の動作は、近位側方向における遠位側クリップ支柱210の動きに関する。特に
図20を参照すると、留置装置300は、拡張軸320を近位側方向(矢印Bで示す)に移動する。近位側基部310、近位側回転アンカー312および近位側支柱回転装置326は、留置装置300に長手方向に固定されるので、拡張軸320が近位側に移動すると、所定の位置に留まる。また、近位側クリップ支柱220も、近位側支柱移動軸340に取り付けられている限り、所定の位置に留まる。遠位側回転装置アンカー332によって、拡張軸320および遠位側支柱回転装置322は回転することができるが、拡張軸320の近位側の動きが、遠位側基部330と、遠位側回転装置アンカー332と、遠位側支柱回転装置322と、遠位側支柱移動軸340とを備える組立体を、拡張軸320の対応する動きに伴って、近位側に移動させる。そのため、この動きによって、遠位側クリップ支柱210は、拡張された状態(例えば
図15)から、
図20~
図22に示すような格納状態または閉じられた状態へと移行する。遠位側クリップ支柱210の動きは、
図20の矢印Cで示す拡張軸320の動きと同等である。これらの図に示すように、遠位側クリップ支柱210も、近位側クリップ支柱220も、回転していない。他方の第2の同時動作は、遠位側および近位側制御コード252,262の動きに関する。制御コード252,262が空隙270をわたっているので、遠位側クリップ支柱210が近位側クリップ支柱220に向けて移動すると、制御コード252,262は、移動しない限り曲がったり束になったりしてしまう。したがって、留置装置300は、遠位側クリップ支柱210の動きが生じると、制御コード252,262に弛み(slack)を集める。
図13に示すように、制御コード252,262は、遠位側クリップ支柱224から出て、近位側基部310に接続する。これらの制御コード252,262は、留置装置300のハンドルまで延在する。弛みの除去は、手動または自動で行われる。手動プロセスにおいて、外科医が留置装置300を操作して拡張軸320を回転させて遠位側クリップ支柱210を近位側に移動させたときに、外科医は、制御コード252,262の近位端を手に持ち、隔離クリップ200が閉じるにつれて制御コード252,262を手動で引っ張ることができる。代替的に、自動モードの例示的な一実施形態において、拡張軸320の回転は、制御コード252,262の近位端に接続されたスピンドルに接続され且つ回転が生じると制御コード252,262を巻き上げたり送り出したりするトランスミッションに関連付けることができる。トランスミッションは、拡張軸320の長手方向の動きと、制御コード252,262の巻き上げまたは送り出しとを一致させるように構成され得る。例えば、拡張軸320の2cmの近位側の動き(すなわち遠位側クリップ支柱214の2cmの近位側の動き)に対して、スピンドルは、制御コード252,262の長さを2cm巻き取る。同様に、拡張軸320の1cmの遠位側の動き(すなわち遠位側クリップ支柱214の1cmの遠位側の動き)に対して、スピンドルは、制御コード252,262の長さを1cm送り出す。
【0139】
ここで、現在の中間植込み位置が最適/望ましいかを外科医が判断できる位置に、隔離クリップ200がある。外科医がLAA隔離の現在の状態を好まない場合、外科医は、拡張軸320を伸ばしてクリップ支柱210,220を引き離し、このLAA隔離プロセスのステップを繰り返す。LAA隔離の現在の状態が望ましいかを判断している間に、クリップ支柱210,220の自己移動部230は、自動的に作動する。移動部フィンガー232は、遠位側および近位側クリップ支柱210,220が閉じられる動きによって画定される平面234において、角度を付けられて配向される。特に
図22に示すように、移動部フィンガー232は、平面234に対して正の角度で配向される。正の角度とは、
図22に示す平面234から上向きに、LAAが隔離クリップ200の内部272を通って延在する方向(矢印D)に延びていると定義される。そのため、この構成において、移動部フィンガー232は、ラチェットのように作用して、矢印Dの方向へのLAAの動きを許容しながら、矢印Dに逆方向へのLAAの動きを禁止または遅らせる。この構成に関して重要なのは、外科医が別個の器具を使用することなく、移動部フィンガー232が自動的に作用して、LAAを隔離クリップ200の内部272にさらに移動させることである。振動式パーツフィーダー(およびHEXBUGや電気フットボール(electric football)のような玩具)で知られるように、構造体の本体の振動は、本体全体の方向性のある動きを引き起こすことができる。LAAは本質的に心拍で振動するので、LAAは、移動部フィンガー232によって自然に且つ自動的にさらに内部272に入り込み、有意に、移動部フィンガー232の正の角度によって、内部272から出ることが妨げられる。これは、自己移動部230,232の存在によって、LAA隔離が強化されることを意味する。心拍に加えて、外科医は、留置装置300を持つ手を振ることで、留置装置300を手動で振動させて、LAAをさらに内部272に移動させることができる。
【0140】
この自己移動的動作は、留置装置300のハンドルにバイブレーターを組み込むことで、さらに強化することができる。バイブレーターが作動して近位側基部310および近位側基部310までまたはその一部まで延在するシャフトを含む留置装置300全体を振動させると、隔離クリップ200が振動する。この振動によって、移動部フィンガーは、LAAをさらに内部272に能動的に移動させる。例示的な振動の振幅は、一方の自己移動部230の移動部フィンガー232の間の離間距離に比例する。例えば、一方の支柱210,220の複数のフィンガー232のピッチ(離間距離)が1mmの場合、約0.1mm~約2.0mm程度の動きは、LAAの表面に対してフィンガーを横方向に変位させる。フィンガーのピッチが0.1mmの場合、約0.01mm~約0.2mmの振動がそのような動きに影響を与える。
【0141】
植込みプロセスにおいて、留置装置300が
図20~
図22に示すLAAの初期捕捉状態に支柱210,220を互いに対向するように配置した後に、外科医は、隔離クリップの植込みプロセスを逆転させることができる。隔離クリップ200が所望のLAA隔離位置にあると外科医が判断すると、外科医は、留置装置300を作動させて、遠位側および近位側クリップ支柱210,220を
図24~
図28に示すような最終的な植込み位置まで回転させる(
図22から
図23、
図23から
図24の進行状態を参照)。クリップ支柱210,220の回転は、拡張軸320の回転によって引き起こされる。遠位側支柱回転装置322、近位側支柱回転装置326、遠位側支柱回転受容部342および近位側支柱回転受容部352がすべて同じ数の歯部を有するマイタ歯車である例示的な実施形態において、拡張軸320の回転は、クリップ支柱210,220の直接的且つ対応する回転を引き起こす。遠位側クリップ支柱210は、
図21~
図24の図において時計回りに回転し、近位側クリップ支柱220は、同じ図において反時計回りに回転する。遠位側および近位側クリップ支柱210,220は単に回転することができる一方で、互いのさらなる相対的な動きを伴わずに回転した場合、2つの自己移動部230が遠位側および近位側支柱移動軸340,350の回転軸から離れた位置にあるため、2つの自己移動部230の間の隔離距離236が増大する。そのため、クリップ支柱210,220が(例えば
図22の図から
図24の図に)回転するにつれて隔離距離236を実質的に一定に保つために、2つのクリップ支柱210,220は、互いに向けて移動する。これは、拡張軸320が、
図22に示す支柱回転受容部342,352の離間距離238から、
図24に示すより小さい離間距離238へと近位側に移動することを意味する。遠位側クリップ支柱210を近位側クリップ支柱220に向けてさらに移動させることで、制御コード252,262の長さを短くすることができる。したがって、支柱の回転ステップにおいて、留置装置300内のスピンドルは、制御コード252,262のさらなる弛みを取って、張りがある状態に保つ。
【0142】
クリップ支柱210,220の最終的な植込み位置への回転は、LAAをさらに隔離クリップ200の内部272に引き込むクリープおよび締め付け運動をもたらす。クリップが心房の外壁に密着するようにすることで、締め付けられていないLAAの量を最小に抑えることができるため、このクリープおよび締め付け運動は有益である。これにより、残留管または「縫合端皮膚変形」を最小限に抑えることができる。隔離クリップが最終的な植込み位置にあっても、外科医は、隔離クリップの植込みプロセスを、部分的にまたは完全に逆転させることができる。
【0143】
図24~
図28に示す最終的な植込み位置において、自己移動部230は、クリップ支柱210,220の間で圧迫されたLAAの部分に当接しない。代わりに、クリップ支柱210,220の第4の側部218が互いに対向した状態で、LAA接触面240は、介在するLAAの圧迫された対向する側部と接触する主要な表面である。LAAに接触する隔離クリップ200のすべての表面が非外傷性であることが望ましい。したがって、LAA接触面240の後続縁部に隣接する自己移動部230の先行する縁部は、滑らかな移行を提供する表面を有する。特に、それらは同じ高さを有し、自己移動部230は、対向するLAA接触面240のそれぞれの湾曲部に続く。同様に、LAA接触面240に対向する第3の側部216,226の縁部および/または角部は、湾曲しており、且つ/または面取りされている。
【0144】
隔離クリップ200の最終的な植込み位置において、クリップの解放シーケンスを開始することができる。まず、制御コード252,262が締め付けられて、遠位側クリップ支柱210内に位置する遠位側支柱付勢サブ組立体250および近位側支柱付勢サブ組立体260が事前付勢される。この事前付勢は、手動で行うことができる。例えば、手動操作において、外科医は、制御コード252,262(または制御コード252,262に接続されたハンドルのレバー)を引っ張って、第1および第2の遠位端アンカー254,264を移動させる。制御コード252,262に加えられた力の量は、ハンドルに設けられた窓部内にバーとして表示することができる。所望の事前付勢力は、例えば最初の線が2つ目の線と整列するときに生じる。代替的に、事前付勢は、自動的に発生することができる。例えば、マイクロコントローラーによって制御された電動モーターによって、スピンドルが制御コード252,262を巻き上げて、制御コード252,262に付与された力を測定することができる。この力の測定は、例えば、ハンドル内のばねばかり(spring scale)の動きによって、またはスイッチや電子トランスデューサーによって行うことができ、その力の量が検出されたときに、モーターの作動を停止させることができる。遠位側および近位側支柱付勢サブ組立体250,260が例えば
図16に示すばね構成にある事前に付勢された状態において、第1および第2の遠位端アンカー254,264は、
図28に示すような付勢された位置に引っ張られ得る。このような位置において、捕捉されたLAAによる膨張力(例えば腫れによる)は、第1および第2の遠位端アンカー254,264の追加的な動きによって取り込まれ、捕捉されたLAAの乾燥および/または収縮は、ばねの拡張ならびに第1および第2の遠位端アンカー254,264の戻り運動によって説明することができる。
【0145】
張力装置256,266の構成によって、隔離クリップ200がLAAに取り付けられた後、例えばLAAの組織が乾燥および/または変形した後に、隔離クリップ200は、クリップ支柱210,220に加えられた力の変化を補う能力を有することができる。より具体的には、植込み中に、外科医は、LAAの両側に隔離クリップ200を固定する。次いで、外科医または留置装置300は、遠位側および近位側制御コード254,264を引っ張る。これにより、遠位側および近位側張力装置256,266は、LAAを所望の程度に圧迫する。次いで、制御コード254,264は、張力装置256,266が圧縮された状態でコード捕捉組立体280内に固定される。これは、本質的に、LAAに加えられる力を事前に付勢する。クリップ支柱210,220の間で組織が膨張する場合、張力装置256,266は、その膨張した組織に加えられる力を減少させるように作用する。同様に、組織がクリップ支柱210,220の間で収縮した場合、張力装置256,266は、収縮した組織への力を増加させる。このようにして、張力装置256,266は、変位の範囲内でLAAの収縮または膨張に対応する。
【0146】
ここで、隔離クリップ200の外部からの制御コード252,262の移動を防止するために、制御コード252,262が固定される準備が整う。したがって、次のステップにおいて、コードカッター314が制御コード252,262を切断する。コードの切断の後またはその間に、支柱移動軸340,350が取り除かれる。手榴弾ピン状のピン360を有する実施形態において、ピンリムーバー362が作動されて手榴弾ピン状のピン360が引き抜かれ、遠位側および近位側基部330,310が植え込まれた隔離クリップ200から離れるように移動される。そのため、支柱移動軸340,350は、クリップ支柱210,220から離れて出るように引き離されて、隔離クリップ200をLAAに植え込まれた状態で残す。代替的に、支柱移動軸340,350がクリップ支柱210,220に螺合する実施形態において、拡張軸320が回転されて支柱移動軸340,350の螺合を解除する。クリップ支柱210,220とのさらなる接続がない状態で、遠位側および近位側基部330,310は、植え込まれた隔離クリップ200から離れて、隔離クリップ200をLAAに植え込まれた状態で残す。
【0147】
図32~
図42を参照すると、外部から植え込み可能な左心耳隔離クリップ400の第3の例示的な実施形態が示されている。左心耳隔離クリップ400は、
図1~
図12の例示的な実施形態と同様に、ばね付勢機構に従って動作する。本実施形態において、隔離クリップ400は、クリップ組立体402と、付勢組立体404と、を備える。さらに、クリップ組立体402は、本明細書において第1のクリップ支柱410および第2のクリップ支柱420と呼ぶ、互いに対向する2つのクリップ支柱を備える。また、付勢組立体404は、一般的には、2つの回転部分450に移行する2つの真っ直ぐで平行な同一平面上にある細長い部分406を形成するために、2つの部分408a,408b(
図48~
図51を参照)として成形された単一の閉回路付勢部材408(
図39において個別に示す)から構成される。各回転部分450は、他の回転部分に対向するクリップ400の遠位端に配置され、細長い部分406の平面から上向きに(y軸に沿って)、且つ実質的に垂直に延在する。
図37~
図39に示す下面からの、分離され且つ露出された図に最もよく示すように、付勢部材部分408a,408bの各細長い部分406は、細長い部分406から外向きに(x軸に沿って)逸れて上向き(y軸に沿って)の上昇を開始する湾曲部分452において、対応する回転部分450に劇的に移行する。この湾曲部分452は、長方形の「レース場の形状」を有する回転部分450に繋がるか、上向きに捻れている。ここで、各回転部分450は、平坦な中間部分456によって回転部分450の尖部で相互接続された2つの内向き湾曲部454を有することを特徴とする(ただし、後述するように、中間部分456は湾曲していると有利である)。回転部分450のこの配向および構成、ならびに各回転部分450の形状は、細長い部分406を互いに向けて付勢する事前付勢されたばねの付勢力を生成する。レース場の形状の他の有利な側面は、例えば
図1の実施形態のばねよりも広い開口部と低い高さであることである。また、レース場の形状によって、クリップ400は、開くための負荷をより低くすることを可能にしながら、LAAの表面に加えられる実質的に同じクリップ力を有することも可能にする。付勢部材408は、所望のばね定数kを有する適切な生体適合性材料から構成される。これらの材料の一例として、クロム・コバルト合金、ステンレス鋼、チタン合金、およびNi-Tiのような超弾性合金が挙げられるが、これらに限定されるものではない。有益である場合、付勢部材408の長さに沿って剛性にばらつきが存在するように、付勢部材408の異なる部分には、異なる材料が含まれてもよい。
図1~
図12に示す隔離クリップ100の例示的な実施形態の「馬蹄形」のばね部材150と比較すると、例示的な実施形態の「レース場の形状」を有する回転部分450は、より低い外形を有する。これにより、より進入しにくいクリップ構造をもたらすことができ、LAA組織が漏れ出すことやそこから出ること許す開放空間をより小さくすることができる。さらに比較すると、「レース場の形状」を有する回転部分450は、より広いスパンおよびより長い距離を有する。これにより、隔離クリップ400を拡大された状態(以下で詳述する)に配置するときに、利用可能な屈曲能力を増加させることができる。その結果、隔離クリップ400は、その初期捕捉中に、LAAに対してより広い構成をもつことができる。さらに、凹部ポケット472を提供することで、遠位端419,429の最も遠位側の範囲の前で湾曲部分452を開始および終了させることができるため、回転部分450は、遠位端419,429から長手方向に離れた位置には配置されず、クリップ支柱410,420の第1の側部412,422の上に配置され得る。簡単に言えば、隔離クリップ400の植込みは、隔離クリップ400を初期の拡大された状態にして隔離クリップ400の内部開口部を拡大するために、ユーザーによって制御されたクリップ留置装置が付勢部材408の本質的に提供されたばね付勢力に反力を加える、
図1~
図12の例示的な実施形態に関して上述した処置を実質的に模倣する。外科医は、クリップ留置装置を用いて、加えられた反力を制御可能に解放することと連動して、隔離クリップ400がクリップの内部開口部にLAAを移動させるように、および中間捕捉状態の間にLAAの基部が囲まれるように、および付勢部材408の固有のばね付勢力が付勢部材408の細長い部分406の一方または両方が他方に向けて付勢する最終的な植込み状態にあるように、拡大されたクリップ400をLAAの周りに配置して、LAAに確実な把持力を形成する。
図32~
図41は、固有のばね付勢力に対する外部からの反力がクリップ400に加えられていない、隔離クリップ400の自立状態(または静止状態)を示すことに留意されたい。
図42は、図示しないクリップ留置装置のクリップ取り付けヘッド480の例示的な実施形態に係合される隔離クリップ400を示す。ここで、隔離クリップ400は、まだ拡大されておらず、静止状態にある。
【0148】
また、このタイプの他の従来技術における隔離装置または閉塞装置と比較して、本実施形態の付勢部材408の形状および構造は、隔離クリップ400が一旦取り付けられると、LAAの流体経路を閉鎖するためおよび隔離クリップ400を恒久的に所定の位置に固定するために必要な十分な量の把持力を提供することを確実にしながら、有利には、隔離クリップ400を拡大された状態に配置するのに必要な反力の量をより遅くまたはより緩やかに上昇させると考えられる。
【0149】
ここで、隔離クリップ400のクリップ組立体402を参照すると、第1および第2のクリップ支柱410,420の本体は、チタン、ステンレス鋼、クロム・コバルト合金、ニッケル・チタン合金、セラミック、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、ポリメチルメタクリレートおよびエポキシを含む適切な生体適合性材料のうちの1種または複数種から構成される。さらに、上述した隔離クリップの実施形態のように、クリップ支柱410,420の本体は、患者の体内の組織を損傷させる可能性がある鋭利な縁部や角部が形成されないように構成される。クリップ支柱本体の縁部および角部の各々は、丸みを帯びている、および/または湾曲している、および/または面取りされている。これにより、滑らかなまたは鋭利でない表面を形成することができる。第1および第2のクリップ支柱410,420の構成および輪郭に関して、各クリップ支柱410,420は、互いに鏡面対称である。さらに、各クリップ支柱410,420は、全体として六角柱であると言える。しかしながら、各クリップ支柱410,420は、重要な形状および構造的特徴を有する。広義には、各クリップ支柱410,420は、第1の側部412,422と、第2の側部414,424と、第3の側部416,426と、第4の側部418,428と、互いに反対側の2つの端部419a~419b,429a~429bと、を備える。クリップ支柱410,420を付勢部材408に接続して完全な隔離クリップ400を形成するために、各クリップ支柱410,420は、クリップ支柱本体の中央領域を通る長手方向の円筒状の貫通孔またはチャネル460を有するように構成される。ここで、付勢部材408の2つの細長い部分406の各々は、貫通孔またはチャネル460を横断する。これにより、クリップ支柱410,420は、付勢部材408の対応する細長い部分406の一方に回転自在に取り付けられる。貫通孔またはチャネル460は、クリップ400が静止状態にあるときの隔離クリップ400の下側を示す
図37に最も明確に示されている(
図38の断面も参照)。図示するように、クリップ支柱410,420の第3の側部416,426の凹部領域は、付勢部材408の細長い部分406の領域が見えるように、貫通孔またはチャネル460の一部を部分的に露出している。さらに、
図38、
図40および
図41は、図を明確に示すために、第1のクリップ支柱410の断面が見えるように第1のクリップ支柱410の長手方向部分を省略した隔離クリップ400を示す。この断面図から、貫通孔またはチャネル460を、付勢部材408の対応する細長い部分406が通る状態で見ることができる。このように、付勢部材408の細長い部分406を収容するために、貫通孔またはチャネル460の直径は、細長い部分406の直径よりも大きい。クリップ支柱410,420がz軸に沿って細長い部分406の上で長手方向に滑動しないように、各細長い部材406は、(例えば長手方向の中間点またはクリップ支柱410,420の長手方向中間点において)固定バンド409を備える。これにより、クリップ支柱410,420を付勢部材408に対して所定の位置で保持して安定化することができる。例示的な実施形態において、固定バンド409は、圧着スリーブである。固定バンド409がクリップ支柱410,420の長手方向の中間点にある場合、付勢部材408の2つの部分408a,408bは、
図48~
図51に示すように同一のものとすることができる。固定バンド409の例示的な実施形態は、貫通孔またはチャネル460の直径よりも大きい直径を有し、対向する部分408a,408bの端部が位置する貫通孔またはチャネル460の中間点に対応するように配置された拡幅(widening)切り欠き部407内に捕捉される。これにより、固定バンド409は、2つのばね部材部分408a,408bをクリップ支柱410,420に固定することができる。クリップ支柱410,420は、切り欠き部407内の固定バンド409の長手方向の動き(そこに遊びがある場合)または付勢部材408の回転部分450(切り欠き部407の遊びが回転部分450の曲がりよりも大きい場合)の間の長手方向の動きのいずれかによって、その長手方向の動きが制限される。したがって、各クリップ支柱410,420が付勢部材408の対応する細長い部分406の一方の周りに取り付けられた状態で、2つの平行な細長い部分406の間の距離が、貫通孔またはチャネル460と第3の側部416,426との間の距離よりも小さい場合、クリップ支柱410,420は、付勢部材408の固有のばね付勢力によって、他方のクリップ支柱410,420に向けて付勢される。
【0150】
上述したように、各クリップ支柱410,420は、対応する細長い部分406の一方に取り付けられる。これにより、隔離クリップを拡大された状態にしてクリップ支柱410,420を引き離すことなく、クリップ支柱410,420に加えられた外部からの力に応答して、クリップ支柱410,420は、細長い部分に対して自由に回転することができる。クリップ支柱本体の貫通孔またはチャネル460を考慮して、この回転自由度は、付勢部材408によって生成された事前付勢されたばねの付勢力に関わらず、可能になる。隔離クリップおよびクリップ留置装置の上述した例示的な実施形態ならびに対応する植込み方法に関連して上述したように、隔離クリップの最終的な植込み段階の間のクリップ支柱の回転は、LAAをクリップ内部にさらに移動させることを補助し、LAAに取り付けられたときに隔離クリップが生じさせた把持力を強化する。隔離クリップ400の全体的な植込み処置の例示的な実施形態の説明は、後述する。開始ステップにおいて、隔離クリップ400との使用に適合するクリップ留置装置が、クリップ400を一時的に係合および保持するように構成される。
図42には、隔離クリップ400に一時的に係合する適切なクリップ留置装置のクリップ取り付けヘッド480の例示的な実施形態が示されている。ここで、クリップ取り付けヘッド480は、クリップ取り付けヘッド480とクリップ留置装置の図示しない制御ハンドルとを相互接続する図示しない細長いシャフトの遠位端に配置される。本実施形態において、クリップ取り付けヘッド480は、ブリッジ488によって相互接続された互いに対向する2つのアーム486a,486bを備えるC字形の形態を有する。ここで、各クリップ支柱410,420は、1つまたは複数のコード482,484(例えば縫合糸)によって、隣接するクリップ取り付けアーム486aおよび486bにそれぞれ固定される。1つまたは複数のコード482,484は、各クリップ支柱端部419a~419b,429a~429bの下部に形成された目のような穴(eye)490を通されるかねじ込まれる。目のような穴490の位置について重要なことは、コード482,484が、クリップ支柱410,420の間に介在するあらゆる組織から隔離されており、LAAまたはクリップ支柱410,420によって挟み込まれたり接触されたりしないことである。
図32、
図33、
図36および
図41は、目のような穴490を最も明確に示す。ここで、目のような穴490の各々は、1つまたは複数のコード482,484が通ることができる開口部を有する。さらに、目のような穴490のそれぞれの出入口の周囲は、角度を付けられているか丸みを帯びている。これにより、コード482,484を損傷(破損など)させたり、コードがクリップ支柱410,420の動きを制御するために操作されたときにコードに過度の緊張や張力を引き起こしたりする可能性がある鋭利なまたは劇的な縁部の形成を避けることができる。また、目のような穴490の存在を許容するため、およびコード482,484のために十分なクリアランスを提供するために、(
図34、
図36および
図37に最もよく示すように)目のような穴490に近接して、クリップ支柱410,420の各第3の側部416,426の2つの遠位端において、三角形の切り欠き部495が形成される。再び
図42を参照すると、1つまたは複数のコード482は、第1のクリップ支柱410の2つのクリップ支柱端部419a,419bのそれぞれの目のような穴490の周りで巻かれ、張りがあるように引っ張られる。これにより、第1のクリップ支柱410が隣接するクリップ取り付けアーム486aに対して確実に保持される。コード482の緊張状態を保つために、各コード482の両端部は、例えばコード482を取り付け点485でそれぞれ固定する縫合糸圧着機構によって、取り付け点485でクリップ取り付けアーム486aに取り付けられるか接続される。したがって、コード482は、有益には、「保持」コードであってもよい。また、第2のクリップ支柱420に関して、1つまたは複数のコード484は、同様に、第2のクリップ支柱420の2つのクリップ支柱端部429a,429bの対応する目のような穴490にねじ込まれるかその周りで巻かれるが、隔離クリップ400を拡大された状態にするときに、クリップ留置装置の操作者によってコード484が選択的に引っ張られて解放され、クリップ400の固有のばね付勢力に対抗する力で第2のクリップ支柱420を静止した第1のクリップ支柱410からクリップ取り付けアーム486bに向かう方向に引き離すことができるように、および隔離クリップ400を中間捕捉状態および最終的な植込み状態にするときに、加えられた反力を制御可能に解放して、隔離クリップ400のばね付勢力を生じさせて第2のクリップ支柱420が静止した第1のクリップ支柱410に近接するように付勢位置に配置されるように、ある程度の弛みが残されている。したがって、
図42に示すように、各コード484は、クリップ取り付けアーム486bを通され、クリップ取り付けアーム486bを出て、近位側方向にクリップ留置装置を通って延在して、クリップ留置装置の制御ハンドル(図示せず)に操作可能に接続される。これにより、外科医は、制御ハンドルでコード484を選択的に引っ張ったり解放したりすることができる。このように、コード484は、コード482によって提供される「保持」機能と区別されるように、コード484を「引張」コードとして有益に特徴付けることができる。コード引張機構に関して、クリップ取り付けアーム486a~486bに対する目のような穴490の位置決めは、有利には、コード482,484の反力(または張力)を、隔離クリップ400の固有のばね付勢力と一致させることに留意されたい。これは、反力機構の効率を改善し、コード482,484がクリップ支柱410,420の回転自由度を妨害したり妨げたりすることを防ぎ、隔離クリップ400とLAA組織との間の相互作用に巻き込まれることを潜在的に防止する。
【0151】
したがって、隔離クリップ400がクリップ取り付けヘッド480に取り外し可能に係合された後に、クリップ400を拡大された状態に制御可能に移行させ、一方または両方のクリップ支柱110,120を他方のクリップ支柱110,120とは逆方向に変位させてクリップ400の内部開口部を広げることで、クリップ400をLAAに取り付けるための準備が整う。クリップ取り付けヘッド480のコード引張機構の上述した実施例において、この拡大された状態は、第2のクリップ支柱420を隣接するクリップ取り付けアーム486bの方向に引っ張るように引張コード484を引っ張ることで得られてもよい。クリップ留置装置の構成のタイプに応じて、隔離クリップ400の拡大は、上述した外科的手段によって、外科医がクリップ留置装置を患者の胸腔内に進入させる前に、または進入させた後に実施されてもよい。これに関連して、制御装置の細長いシャフトは、
図42に示す配向において上向きに延在することに留意されたい。この方向は、アーム486a,486bの長手方向の範囲から90度である。図示しない代替実施形態において、細長いシャフトは、アーム486a,486bが延在する方向とは逆方向に、ブリッジ488からクリップ取り付けアーム486a,486bに対して平行に延在することができる。この平行な配向によって、
図42に示す90度の配向にあるときよりも狭い範囲の留置装置を形成することができる。
【0152】
図示されていないが、隔離クリップ400が拡大された状態にあると、クリップ400の4つの側部412,422,414,424,416,426,418および428の各々は、
図33に示す位置から実質的に90度回転される。具体的には、2つの第1の側部412,422が互いを面して実質的に互いに対向するように、各クリップ支柱410,420の第1の側部412,422は、クリップ400の内部に向けて内向き(x軸に沿って)になる。各クリップ支柱410,420の第2の側部414,424は、一方のクリップ支柱410,420の第1の側部412,422に対して実質的に90度の角度で配置されており、y軸に沿って上向きになる。さらに、各クリップ支柱410,420の第4の側部418,428も、一方のクリップ支柱410,420の第1の側部412,422に対して実質的に90度の角度で配置されているが、第1の側部412,422とは逆方向、すなわちy軸に沿って下向きになる。また、各クリップ支柱410,420の第3の側部416,426は、対応する第2の側部414,424と共に共通の縁部を形成し、対応する第4の側部418,428と共に共通の縁部を形成し、隔離クリップ400の内部から離れる方向に(すなわちクリップ取り付けヘッド480に取り付けられたときのクリップ取り付けアーム486a,486bに向けて)x軸に沿って外向きになるように、対応する第1の側部412,422に対向して配置される。
図1~
図12の例示的な実施形態と同様に、各第3の側部416,426は、凹面を形成するために、x軸に沿って内向きに(すなわちクリップ400の内部に向けて)弧を描く曲げ部または湾曲部を示す。最後に、各クリップ支柱410,420のクリップ支柱端部419a~419b,429a~429bの各対は、クリップ400の互いに反対側の2つの端部を備える。ここで、各端部419a~419b,429a~429bは、x軸およびy軸の両方に垂直な(すなわちz軸に沿った)方向を向いている。
【0153】
付勢組立体404およびクリップ組立体402は、各クリップ支柱410,420が付勢部材408に対して自由に回転できるように構成されるが、LAAに対して隔離クリップ400を制御するためおよび効果的に取り付けるために、操作範囲または回転自由度は、例えば実質的に90度に制限されるべきであることに留意されたい。このように、隔離クリップ400の例示的な実施形態において、各クリップ支柱端部419a~419b,429a~429bの中央部には、(
図36に最もよく示すように)ポケット472に凹む肩部(shoulder)470が形成される。凹んだポケット472の後部は、貫通孔またはチャネル460に繋がる。したがって、付勢部材408の各回転部分450の湾曲部分452は、ポケット472に挿入され、貫通孔またはチャネル460を入る。これにより、各回転部分450は、対応するクリップ支柱端部419a~419b,429a~429bと実質的に同一平面になるように、有利に配置される。隔離クリップ400が拡大された構成になされて各クリップ支柱410,420の第2の側部414,424がy軸に対して実質的に90度の角度で上向きにされると、肩部470の形状は、回転部分450のそれぞれの湾曲部分452に対応するのみならず、湾曲部分452と当接して、クリップ支柱410,420がこの点を越えて回転しないように構成される(すなわち各クリップ支柱410,420の第2の側部414,424は、x軸に対してθ>0度を形成することができない)。
【0154】
植込み方法の次のステップでは、外科医が(拡大された状態の)隔離クリップ400を胸腔内およびLAAの位置に挿入した後に、外科医は、拡大された隔離クリップ400の中央開口部(図示せず)に(
図33の破線矢印の方向に)LAAを慎重に進める。これにより、LAAの基部が第1および第2のクリップ支柱410,420の第1の側部412,422の間に配置され、第1および第2のクリップ支柱410,420の第4の側部418,428が、可能な限り、LAAのいずれかの側の心臓の外面の形状と表面接触するように置かれる。この段階で、LAAの初期捕捉が完了する。
【0155】
その後、外科医は、クリップ留置装置を作動させて、クリップ支柱410,420の第1の側部412,422によって加えられたLAAに対する締め付け力が、LAAの内部に出入りする血流を効果的に抑制するのに十分な程度に、LAAの基部の周りで隔離クリップ400を制御可能に閉じる。クリップ取り付けヘッド480のコード引張機構の上述した例示的な実施形態において、この中間捕捉状態は、引張コード484を解放して、付勢部材408の固有のばね付勢力に対抗するようにクリップ留置装置によって加えられた反力の量を解放または緩和させることで得られる。反力を解放することで、クリップ支柱410,420の一方または両方は、その(またはそれらの)固有のばね付勢状態に受動的に戻ることができる。これにより、クリップ支柱410,420の一方または両方は、内向きに、反対側のクリップ支柱410,420に向けて移動することができる。植込みプロセスのこの段階で、外科医は、隔離クリップ400の位置を確認して、現在の中間位置が最適且つ効果的であるか、またはこれらの初期ステップを繰り返してクリップ400を再配置するべきかを判断することができる。
【0156】
隔離クリップ400が所望のLAA隔離位置にあると外科医が判断したときに、外科医は、クリップ留置装置を作動させて隔離クリップ400を
図32~
図41に全体として示すような最終的な植込み状態に配置する。
図33により詳細に示すように、この隔離クリップ400の最終的な植込み状態は、第1および第2のクリップ支柱410,420の各々が、付勢部材408の各回転部分450に対して実質的に90度回転していることを特徴とする。
図32~
図41に示すように、この変形によって、各クリップ支柱410,420の第1の側部412,422がy軸に沿って上向きになり、各クリップ支柱410,420の第2の側部414,424がx軸に沿って外向きになり、各第3の側部416,426がLAAの基部を取り囲む心臓の形状に当接するクリップ表面を有するように、第3の側部416,426がy軸に沿って下向きになり、第4の側部418,428がLAAの外面と表面接触するように押し付けられるように、第4の側部418,428がx軸に沿って互いに内向きになる。(
図32~
図41に示す第4の側部418,428の表面は、接触するように示されているが、この配向は、LAAのような組織が間に配置されていないときに適用されないことに留意されたい。この場合、本明細書に記載および示すように、2つの表面は離間している。)
【0157】
上述したように、回転部分450に対するクリップ支柱410,420の90度回転を生成するために、各クリップ支柱410,420にトルク力を加えて角変位を引き起こす必要がある。例示的な本実施形態に関して、このトルク力は、クリップ留置装置のコード484によって加えられた反力の解放を開始するための、外科医による制御ハンドルの一部の作動によって生成される。コード484に加えられた力が解放されるにつれて、クリップ支柱410,420は、互いに近づく。第1の側部412,422の第1の外形構造によって、クリップ支柱410,420は、必要に応じて、平坦状態から垂直状態に回転する。この第1の外形構造は、
図33および
図36に明確に示されている。特に、第1の側部412,422は、第3の側部416,426のように同一平面上にない。代わりに、第1の側部412,422は、水平線に対して角度を付けられている。各表面は、角部412a,422aから自己移動部430に向けて(または自己移動部がない場合は第4の側部418,428に向けて)表面が伸びるにつれて、内向き/下向きにそれぞれ角度を付けられている。クリップ支柱410,420は、水平状態において図示されていないが、クリップ支柱410,420が互いに近づいて最終的に接触したときに、2つの縁部412a,422aは、クリップ支柱412,420が接触する最初の位置である。第1の側部412,422は、角度を付けられているため、これらの表面の形状によって、所望の方向に、第1のクリップ支柱410が反時計回りに回転され、第2のクリップ支柱420が時計回りに回転されて、最終的なLAAの植込み移動が開始される。第2の外形特徴は、クリップ支柱410,420のこの回転運動を補助する。特に、貫通孔内に存在する細長い部分406に対する目のような穴490の形状によって、クリップ支柱410は、(例えば
図29および
図30に示すように)平坦状態から、例えば
図34~
図37に示す設置状態に回転することができる。より具体的には、目のような穴490の中心点は、
図33の距離Dで示すように、細長い部分406の中心点よりも下にある。引張コード484がクリップ支柱410を引っ張ると、クリップ支柱410は、細長い部分406の中心点の周りで旋回して、クリップ支柱410を90度の角度で移動させる。コード482は、アーム486aに固定され、クリップ支柱420の目のような穴490を通過する。したがって、コード484によってクリップ支柱410に付与された引張力は、クリップ支柱420の対応する90度回転を引き起こす。これは、目のような穴490と、クリップ支柱420を通る細長い部分406とに対して同じ2つの中心点を有する。クリップ400の閉鎖は、逆の動きを引き起こす。具体的には、外科医がクリップ支柱410,420を互いに接近させてクリップ400を閉じると、その間に介在するLAA組織と最初に接触するのは、各クリップ支柱410,420の第1の側部412,422である。コード484に加えられた力が減少するにつれて、細長い部分の軸の周りで付与される力のモーメントアームが目のような穴490で生じるため、クリップ支柱410,420は、細長い部分406の周りで旋回する以外に回転する手段がない。したがって、クリップ支柱410,420は、互いに向けて(クリップ支柱410は反時計回りに、クリップ支柱420は時計回りに)90度回転し、同時に、自己移動部430は、LAA組織を把持して、LAAを、
図33の破線矢印の方向に、クリップ支柱410,420の間にある空間に進入させる。
【0158】
また、付勢組立体404は、
図43~
図47に示すように回転部分450の中間部分456に窪みまたは谷部458を含むことで、LAA組織の周りおよびその上でのクリップ支柱410,420の回転を補助する。付勢部材408がクリップ取り付けヘッド480に取り付けられて2つのクリップ支柱410,420が引き離されると、中間部分456は、谷部458が真っ直ぐになるように伸ばされる(これは、
図32~
図42に模式的に図示されているが、実際には、クリップ400の使用時には、谷部458は完全に真っ直ぐになるわけではない)。谷部458が真っ直ぐになって浅くなるにつれて、谷部458の曲げ部は、互いに対向する回転部分の各々に力を付与する。その力は、クリップ支柱420では時計回りであり、クリップ支柱410では反時計回りである。これは、クリップ支柱410,420を水平方向の取り付け位置から垂直方向の取り付け位置に移動するために必要な力である。これらの回転力は、目のような穴490の形状および細長い部分406の旋回軸によって引き起こされるクリップ支柱410,420の自然な動きを補い且つ増強し、LAA組織がその間で締め付けられるように、第4の側部418,428が互いに離れているほど、特に効果的である。さらに、回転部分450の中央開口部に突出する下降した湾曲部は、LAA組織を取り囲むような位置に、谷部458の材料を配置する。これは、中央開口部を通るLAA組織の長手方向の押し出しをさらに抑制する。
【0159】
巻き上げ効果に加えて、クリップ支柱410,420の90度回転のさらなる利点は、1度の植込み処置の間に隔離クリップ400が拡大された状態または初期捕捉状態、中間捕捉状態、および最終的な植込み状態に移行する際に、有利には、LAA組織の表面を、クリップ支柱410,420の様々な表面のタイプに連続して露出させることができる能力である。より具体的には、LAAと接触するクリップ支柱410,420の各表面領域は、特定の表面タイプを有するように巧妙に構成されてもよい。この表面タイプは、LAAと、クリップ400の特定の表面領域との間で生じる表面間の相互作用の機能、およびその相互作用のタイミングに好適である。例えば、上述した隔離クリップ400の例示的な実施形態において、そのLAA接触面(すなわち第1の側部412,422、第4の側部418,428、およびそれらの間の共通の縁部432)は、異なるタイプの表面凹凸を有するように構成されており、隔離クリップ400が最終的な植込み状態に進み、クリップ支柱410,420が実質的に90度の回転に進むにつれて、各クリップ支柱410,420の第1の側部412,422、丸みを帯びた共通の縁部432および第4の側部418,428が順次LAAと接触するときに、LAAでは、クリップ支柱410,420との摩擦接触の度合いが増加する。このように、クリップ支柱410,420の回転運動と組み合わされるこの増加する摩擦レベルは、クリップ400の内部にLAAを移動させ且つ誘導するようにさらに補助し、その後、LAAの周りで確実な把持力を形成する。第1の側部412,422がクリップ400の中間捕捉状態の間にLAAと最初に表面接触するクリップ支柱410,420の表面領域であり、最終的な植込み状態の間にクリップ支柱410,420の回転が開始される場合、第1の側部412,422は、実質的に平坦であるように成形されても仕上げられてもよい。ここで第1の側部412,422は、LAAと軽く係合してクリップ支柱410,420の回転への実質的に摩擦のない進入を生成する超低摩擦面を有する。各クリップ支柱410,420の回転が継続すると、クリップ支柱410,420の第1の側部412,422は、LAAの側方表面から上方に離れる。これにより、LAAは、次にクリップ支柱410,420の第1の側部412,422と第4の側部418,428との間にある丸みを帯びた共通の縁部432と接触する。したがって、上述したように、植込みプロセスのこの時点では、内向きに進入するクリップ支柱410,420の押し出し状の動きは、LAAをクリップ400の内部開口部にさらに移動させる。このように、より粗い表面凹凸に成形することで、または丸みを帯びた共通の縁部432をより荒い表面を有するように仕上げることで、摩擦力を増加させることができる。または、
図32~
図41に示すように、クリップ支柱410,420の動きがクリップ400の内部にLAAを移動させているこの正確な瞬間に、結果として生じた高摩擦面にLAAが露出するように、「自己移動部」または牽引要素430は、共通の縁部432に有益に取り付けられてもよい。このような「自己移動部」または牽引要素の特徴は、
図1~
図12の例示的な実施形態における要素130に関して上述している。代替的に、共通の縁部432は、超低摩擦面を有するように、実質的に平坦であり得る。上述したように、クリップ支柱410,420の回転が完了すると、LAAは、クリップ支柱410,420の互いに対向する第4の側部418,428の間で確実に把持されて、クリップ400は、最終的な植込み状態に置かれる。第4の側部418,428は、実質的に平坦な超低摩擦面を有することができる。代替的に、LAA上でのクリップ400の把持力を強化するために、第4の側部418,428の一方または両方に高摩擦面を適用することで、クリップ支柱410,420の第4の側部418,428によって生成された摩擦力をさらに増加させることができる。代替的に、クリップ支柱410,420の第4の側部418,428の一方または両方の表面は、高摩擦面を有するように成形されても仕上げられてもよい。
図45は、クリップ支柱410,420の第4の側部418,428の一方または両方に適用され得る、または第4の側部418,428の一方または両方と一体成形され得る特定の表面凹凸の例示的な一実施形態を示す。ここで、図を明確に示して、第2のクリップ支柱420の第4の側部428の表面をよりよく可視化するために、第1のクリップ支柱410を省略する。本実施形態において、表面凹凸は、角度を付けられて配向された小さな溝付きまたはチャネル状のローレット(knurls)442から構成される。ローレット442は、LAAとクリップ支柱410,420の第4の側部418,428との間の摩擦を増加させて、クリップ400からのLAAの後退する動きを阻止する。さらに、
図46は、第4の側部418,428の一方または両方に適用されるか第4の側部418,428の一方または両方と一体成形されたときに、LAAとの摩擦接触を増加させる特定の表面凹凸の別の例示的な実施形態を示す。ここでも、第4の側部428の表面をよりよく可視化するために、第1のクリップ支柱410を省略する。本実施形態において、表面凹凸は、摩擦力を増加させて、LAAの後退する動きを阻止するために配向されたピラミッド型のローレット444から構成される。
図47は、ローレット444をより詳細に示す。このように、クリップ400のLAA接触領域の間で表面タイプを変化させることで、クリップ400の機能に有利な1回の植込み処置において、LAAを異なるタイミングで異なる摩擦表面に露出することができる。例えば、この実施形態において、LAAとクリップ400との間の表面間の相互作用は、1回の植込み処置を介して、「滑りやすい」接触状態から「把持力のある」接触状態へと移行する。
【0160】
クリップ支柱410,420のこの90度回転は、最終的な植込み段階であるが、外科医は、クリップ100の閉鎖をやめて、クリップ400を拡大された状態に戻し、上述した閉鎖および回転ステップを必要に応じて繰り返すことで、隔離クリップ400の位置を引き続き調整することができる。外科医がクリップ400の位置決めに満足した後に、クリップ留置装置のクリップ取り付けヘッド480が隔離クリップ400から恒久的に切り離される。例えば、
図42のクリップ取り付けヘッド480のコード引張機構と共に上述した例示的な実施形態において、各クリップ取り付けアーム486a~486bは、内部コード破断機構500を有するように構成されてもよい。内部コード破断機構500によって、外科医は、選択的にコード482,484を切断することができる。一実施例において、各クリップ取り付けアーム486a~486bは、1つまたは複数の切り欠き部が画定されるスライド(図示せず)を有するように構成されてもよい。切り欠き部は、例えばフォトエッチング処理によって形成された縁部(図示せず)を有する。切り欠き部は、コード484,482の破断が望ましいときに、外科医がスライドを移動させて切り欠き部の縁部とコード482,484とを接触させることができるように配置される。
【0161】
図48~
図51は、2つのばね部材部分408a,408bを形成するための例示的な実施形態を示す。ばね部材部分408a,408bは、2プレート金型510,512によって形成される。2つの部分は、互いにヒンジ止めされる。ばね部材部分408a,408bを作製するために、金型部分は平坦であり、ばね部材部分408a,408bを形成するワイヤが、金型の筋に載置される。第1の金型部分510は、細長い部分506と、移行部分452の一部と、を有する。第2の金型部分512は、移行部分452の残りの部分と、回転部分450と、谷部458を有する中間部分456を含む。第2の金型部分512が
図48および
図49に示す位置に回転され、組立体が加熱され、ばね部材部分408a,408bのワイヤが、例えば
図44に示す形状に置かれる。
図50および
図51は、第1の金型部分510を除いて、ばね部材部分408a,408bおよび第2の金型部分512を示す。
【0162】
図52における心臓10の前面図は、LAA20が左心房12の外面14から離れる方向に突出および当接してフラップを形成する状態を示す。多くの場合、外面14に当接するLAA20によって形成されたこのフラップは緩んでおり、外科医は、鋭利でないキットナー解剖器具を使用してLAA20を移動させて、LAAを直立させる。このような位置において、隔離クリップ(例えばクリップ100,200,400)の内部(例えば172,272)は、LAA20の最も外側の地点の上に配置され、隔離クリップが下方に下がって、LAA20のすべての側部を取り囲む。これにより、外科医は、LAAの基部22にあるLAAの両方の側に対してクリップの隔離側部(例えば110,120)を配置することができる。しかしながら、いくつかの場合、LAA20は、左心房12に対向するLAAの側部24の一部を左心房12の外面14に保持する癒着を有する。このような場合、LAA20のフラップは、1つまたは複数の領域に固定されるため、外科医が左心房12の外面14からLAA20を離すように移動させることができない。より具体的には、LAAの右側基部(
図52の左側)は、外科医が移動させることができるように開放されているが、反対側の左側基部(
図52の右側)は、LAAの左側によって覆われている(LAAが他の方向に成長した場合は、逆になる)。癒着が存在する場合には、LAA20をまだ十分に移動させて、LAA20と左心房12の外面14との間にロッド状の装置を挿入し、LAAの下方(前方から後方)にLAA20の基部22の左側に沿って(肺動脈に隣接する)LAA20の反対側へと通過させることができると考えられる。これは、隔離クリップが、クリップ(例えばクリップ100,200,400)の遠位端において閉じられたループを有する場合、外科医は、その特定のクリップを使用するために、LAAを心臓の表面から物理的に分離する必要があることを意味する。この分離は、多くの問題を引き起こす。そのうちの1つは、致命的な結果をもたらす左心房の亀裂を引き起こす可能性があることである。そのため、このような場合、開放遠位端を有する隔離クリップを使用してLAA20に接近することが望ましい。開放端式隔離クリップによって、外科医は、左心房12の外面14からLAA20の癒着部分を引き剥がすことなく、LAA20の左側と左心房12との間にクリップの支柱の一方を差し込むことができる。
【0163】
図53~
図82は、開放遠位端を有するLAA隔離クリップ600を示す。
図53~
図56は、静止状態または定常状態における隔離クリップ600を示し、
図57~
図60は、中間で拡大された状態または伸長された状態における隔離クリップ600を示し、
図61~
図64は、完全に拡大されたまたは伸長された状態における隔離クリップ600を示す。
【0164】
隔離クリップ600は、組み合わされると中央長手方向軸601を画定する第1および第2のクリップ支柱610,620を備える(
図61を参照)。例示的な実施形態において、クリップ支柱610,620は、中空のチューブである(ただし、クリップ支柱610,620の構成は、異なる形状を有することができる。)。チューブの長さは、約15mm~約70mmの範囲であり、より具体的には約25mm~約60mmの範囲であり、特に約35mm~約50mmの範囲である。図示する例示的な実施形態において、外面は、滑らか且つ円筒状である。ただし、外面は、他の形状を有することができ、本明細書に記載するように、他の表面構造および/または処理および/または凹凸を有することができる。チューブは、プラスチック(例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK))製のカバーで覆われてもよく、またはチューブ610,620およびブロック612,622の特徴をすべて統合するように、完全にPEEKから作製されてもよい。望ましい実施形態において、付勢装置632とPEEKとの間の接続部は、隔離クリップ600の安定性のために回転可能に接地されている。これは、圧着または溶接によって、または折り曲げられた部分(例えば90度のL字または完全に180度のフック)のようなチューブ610,620の特徴的部分と係合する付勢部材の形状を介して行うことができる。付勢部材は、中間部材を介して圧着または溶接によって互いに取り付けられ得る。または、2つの付勢部材は、より複雑な成形プロセスを用いて、単一の材料から作製され得る。例示的な実施形態において、第1および第2の付勢アンカーまたは付勢装置コネクター612,622は、各クリップ支柱610,620にそれぞれ取り付けられる。各付勢アンカー612,622は、(例えば溶接、ろう付けまたははんだ付けによって、または接着剤を用いて、またはピンまたはリベットを用いて機械的に)対応するクリップ支柱610,620に固定され得る。または、付勢アンカー612,622は、クリップ支柱610,620とそれぞれ一体成形されてもよい。図示する例示的な実施形態において、各付勢アンカー612,622は、クリップ支柱610,620に溶接され、実質的にクリップ支柱610,620の外形に対応する内部形状を有する切り欠き部を含むレース場のような断面形状を有する。これは、少なくとも、2つの部分が共に接続されている位置に存在する形状について当てはまる。代替実施形態において、付勢アンカー612,622がクリップ支柱610,620に接続されていない位置において、クリップ支柱610,620は、クリップ支柱610,620に沿って異なる外形を有することができる。例えば、付勢アンカー612,622におけるまたはその下のクリップ支柱610,620の外形は、円形または楕円形であり得、付勢アンカー612,622から離れた位置のクリップ支柱610,620の外形は、六角形または八角形であり得る。
【0165】
2つのクリップ支柱610,620は、付勢装置630を介して互いに接続される。付勢装置630は、第1の付勢アンカー612において第1のクリップ支柱610に固定され、第2の付勢アンカー622において第2のクリップ支柱620に固定される。ここで、付勢装置630は、付勢アンカー612,622を介してクリップ支柱610,620に間接的に接続されるように図示および記載されるが、代替実施形態において、付勢装置630は、クリップ支柱610,620に直接接続されてもよく、クリップ支柱610,620と一体となっていてもよい。操作において、付勢装置630は、クリップ支柱610,620を互いに向けて移動させる力(例えば付勢力)を加える。図示する例示的な実施形態において、付勢装置630は、2つのクリップ支柱610,620を互いに接触させて明確な力で互いに押し付けるのに十分な力を提供する。さらに、(例示的な実施形態に示すように)付勢部材のアンカーへの強固な接続により、各支柱は、平行以外の角度になることを防止することができる。このように、クリップ支柱610,620を互いに引き離すために、所与の力(例えば0.75ポンド/3.34ニュートン)が必要とされる。さらに、支柱の一方の端部のみを引き離し始めるためにも、力が必要である。支柱の一方の端部のみを広げるための力は、支柱の長さと付勢部材によって加えられた力の適用点に基づく単純な計算可能な力よりも大きい場合がある。例えば、付勢部材が支柱の長さ方向の中心に作用し、支柱の一方の端部のみが開かれる場合、その一方の端部のみを開く力は、付勢部材の力の半分になる。しかしながら、支柱への付勢部材の強固な接続は、一方の端部を開くために、付勢部材が、法線方向に中心軸から直線的に離れるだけでなく、角度の変化を経るため、変形にはより多くの力が必要とされる。すなわち、一方の端部を広げるための力は、単純に計算された値よりも大きくなることを意味する。別の例示的な実施形態において、付勢装置630は、2つのクリップ支柱610,620を互いに隣接するように保ちながら、互いに隣接するか互いに接触しているときに、2つのクリップ支柱610,620に力を加えない定常状態を有する。同様に、クリップ支柱610,620が互いに隣接するか接触している状態から引き離されるようにクリップ支柱610,620を移動させるために、力(例えば0.75ポンド/3.34ニュートン)が必要である。さらなる例示的な実施形態において、付勢装置630は、クリップ支柱610,620が所与の距離(例えば1mm)だけ互いから引き離される定常状態を有する。このように、定常状態にあるときには、2つのクリップ支柱610,620には力が付与されないが、この定常状態から引き離された状態に移動させるために、力(例えば0.75ポンド/3.34ニュートン)が必要である。この状態において、クリップ支柱610,620を互いに向けて移動させて2つのクリップ支柱610,620を互いに接触させるために、力(例えば0.75ポンド/3.34ニュートン)が必要である。
【0166】
付勢装置630は、クリップ支柱610,620が互いから離れて移動されたときに、中央長手方向軸601に向かう方向の反力がクリップ支柱610,620に加えられるような任意の形状を有することができる。
図53~
図64に示す例示的な実施形態において、付勢装置630は、2つのU字形のばねクリップ632のセットである。代替的に、付勢装置630は、単一のばねであり得る。単一のばねは、クリップ支柱610,620の上方に配置されたばねクリップ632の1つであり得、クリップ支柱610,620の下方に配置されたばねクリップ632の1つであり得、クリップ支柱610,620と同一平面に配置されたばねクリップ632の1つであり得る。付勢装置630がクリップ支柱610,620と同一平面にある場合、このような構成は、クリップ支柱610,620の動きを制限することに留意されたい。付勢装置630がクリップ支柱610,620の上方、下方、または上方および下方の両方にある場合、この制限は存在しない。付勢装置630が上方および/または下方にある場合、クリップ支柱610,620の近位端は、角度を付けられ、付勢装置630による動きを防止しないようにすることができる。これは、ユーザーに、個別にまたは共にクリップ支柱610,620を移動させる有利な能力を提供するので、重要である。例えば、クリップ支柱610,620の近位端は、互いに離れるように移動させることができ(これにより、遠位端は互いに接近した位置に配置される)、または互いに接近するように移動させることができ(これにより、遠位端はさらに離れた位置に配置される)、またはクリップ支柱610,620の一方が角度を付けられ、クリップ支柱620,610の他方が一直線上に残すことができる。これにより、一方のクリップ支柱610,620の一方の遠位端が、他方のクリップ支柱620,610の他方の遠位端に接近したり、他方のクリップ支柱620,610の他方の遠位端から離れたりすることができる。そのため、付勢装置630は、クリップ支柱610,620の所望のあらゆる動きを妨害しないと言うことができる。これに関連して、クリップ支柱610,620の近位側の閉鎖における互いに対する変位の最大幅は、付勢装置630によって制限されたり干渉されたりすることはない。
【0167】
各付勢アンカー612,622は、止まり穴または貫通孔614,624のセットを有する。止まり穴または貫通孔614,624内には、ばねクリップ632の対応する端部634が固定される。ばねクリップ632は、定常状態の形状に予め設定される(例えばニチノールから形成される場合は熱処理される)。2つのクリップ支柱610,620が定常状態で力を加えて共に押し付けられる実施形態において、ばねクリップ632は、(クリップ支柱610,620が引き離されたときに)
図53、
図55および
図56に示すものとは異なる形状を有する。より具体的には、ばねクリップ632の端部634のそれぞれの対は、例えば
図53に示す形状よりも互いに接近するように予め設定される。比較のために、クリップ支柱610,620が定常状態で互いに接触しながら力を加えて互いに押し付けられていない例示的な実施形態において、ばねクリップ632の予め設定された形状は、
図53に示す形状と略同じである。
【0168】
付勢装置630がクリップ支柱610,620を互いに接続した状態で、隔離クリップ600は、開放端602および閉鎖端604を画定する。開放端602は、2つのクリップ支柱610,620の間にLAAが進入(例えば
図59の矢印Aを参照)するためにクリップ支柱610,620の遠位端の間の領域が開放されているので、開放端と呼ばれ、閉鎖端604は、互いに引き離されたときにばねクリップ632が一方のクリップ支柱610から他方のクリップ支柱620までの距離を横断するため、クリップ支柱610,620の近位端の間の領域が端部からの進入を妨げているので(例えば
図59の矢印A’を参照)、閉鎖端と呼ばれる。
図56、
図60および
図64の図は、クリップ600の様々な拡大された状態における、クリップ600の開放端602を見下ろしている。
【0169】
クリップ600は、断面積が非常に小さいので、胸腔鏡下処置での使用に有益なサイズを有する。この断面積を画定するクリップ600の最大の特徴は、付勢装置630の幅である。例えば
図53に示す定常状態において、クリップ600が嵌め込まれ得る最小のポートサイズを画定する最大の断面直径は、クリップ600の縮小された状態にあるときのばねクリップ632の幅Wである。特に、典型的なLAAを閉塞するのに十分な長さを有するクリップ600の場合、ばねクリップ632の最小の断面幅Wは、約8mm~約9.9mmの範囲である。このように、クリップ植込み処置の間に、クリップ600は、LAAに留置するための10mmの胸腔鏡ポート(30フレンチ)内に嵌め込まれ得る。
【0170】
LAAクリップ植込み処置全体を通してこの最小断面を保つために、クリップ630のための留置装置650は、クリップ支柱610,620を対応する内部中空部616,626から把持するように構成される。留置装置650の遠位側クリップ接触端652は、
図57に模式的に示されている。ここで、留置装置650は、クリップ600を中間で拡大された位置で開かれている。
図57~
図60は、中間で拡大された位置におけるクリップ600の様々な図である。これらの端部652は、クリップ支柱610,620に挿入されて、クリップ600の動きを一時的に固定および挿入を一時的に制御する。
図65~
図68には、留置装置650の例示的な実施形態が示されている。留置装置650のクリップ接触端652を開閉する機構の様々な例示的な実施形態は、後述する。
【0171】
留置装置650のクリップ接触端652と協働するために、クリップ支柱610,620は、例えば
図56に示すように、完全に中空であるか、クリップ支柱610,620は、各クリップ支柱610,620の閉鎖端604から開始し、クリップ支柱610,620内を通過して、2つのクリップ支柱610,620の間の制御された離間と互いに対するクリップ支柱610,620のヨーの制御を可能にするのに十分な内部距離まである図示しない止まり穴を有する。これは、以下でさらに詳述する。留置装置650は、クリップ600の外部からではなく、クリップ600の内部からクリップ600に接近して制御することで、留置装置650の断面積の大きさをクリップ600の断面直径よりも小さくすることができる。これは、クリップ600の使用時には、ポートの幅が、留置装置の直径ではなく、クリップ600の最大の断面直径まで最小化されることを意味する。
図65~
図68の例示的な実施形態におけるクリップ接触端652の一方に接近するおよび/または接続される各アームは、クリップ支柱610,620のそれぞれの幅よりも太いものとして図示されていることに留意されたい。ポートの大きさが約30フレンチである胸腔鏡下の処置における使用では、これらのアームは、様々な大きさを有することができ、(例えば合計30フレンチ未満の外径を有するように)クリップ支柱610,620の外径よりもわずかに大きくすることができ、(例えば合計30フレンチ未満の外径を有するように)各クリップ支柱610,620と同じ直径にすることができ、および/または(例えば合計30フレンチよりもはるかに小さい外径を有するように)各クリップ支柱610,620よりも狭くすることができる。
【0172】
図65~
図68の進行状態に示すように、クリップ600は、最も小さく圧縮された状態から開始して、開放端602がLAAを跨ぎ、LAAの両側の基部に沿ってクリップ支柱610,620を滑動するのに十分な大きさまで、留置装置650によって拡大される。クリップ600の植込み処置を実施するために、留置装置650のクリップ接触端652は、クリップ支柱610,620の近位端における穴/貫通孔614,624に挿入され、留置装置600は、幅Wが最小となる最小のポート取り付け配向位置からクリップ600を開くように準備が整っている。図示しない胸腔鏡ポートが患者の体内に取り付けられて、患者のLAAへの接近を可能にする。外科医は、(例えば適切な大きさを有するカメラが置かれた別の胸腔鏡ポートを介して)可視化された状態で、胸腔鏡ポートを介して、LAA20まで、およびLAA20に隣接するようにクリップ600を挿入する。キットナー解剖器具(または別の把持/移動器具)を使用して、LAAが持ち上げられる(持ち上げ動作を妨げる癒着がない場合)か、LAA20の下方の経路が開かれる(癒着がクリップ支柱610,620の一方の、LAAの下方への進入を許容する場合)。その前、またはその間、またはその後に、2つのクリップ支柱610,620は、LAA20の基部を包囲するのに十分な距離を有するように、互いに引き離される。外科医は、留置装置650を伸ばし、クリップ600を基部に沿って移動させて、LAA20の基部の一方の側に第1のクリップ支柱610を配置し、基部の他方の側に第2のクリップ支柱620を配置する。外科医は、クリップ600を操作して、LAAの周りで可能な限り低い位置に、クリップ支柱610,620を配置する。クリップ600の所望の植込み位置が得られたときに、外科医は、留置装置650を操作して、可能な限り完全に左心房12の内部からLAA20の内部を閉鎖するように、クリップ600を定常状態の配向に向けて戻す。この状態において、LAAの基部は、クリップ支柱610,620の間に存在する。ここで、クリップ支柱610,620は、外向きに伸長された付勢装置630によって付与された力を用いて、その間のLAAを圧迫する。外科医は、(例えば経食道心エコー検査(TEE)で左心房12を通る血流を可視化することでおよび/または心臓心調律を調べることで)クリップ600が正しい植込み位置にあるかを判定する。その位置が望ましくない場合、外科医は、留置装置650を使用してクリップ600を再拡大して、LAA20の周りでクリップ600を再配置する。クリップ600が所望の植込み状態にあると、留置装置650は、クリップ600の閉鎖端604から引き離されて、胸腔鏡ポートから後退する。
【0173】
留置装置650のクリップ接触端652とクリップ支柱610,620との間の接続部は、様々な形態を有することができる。例示的な実施形態において、留置装置650は、少なくとも一方のクリップ支柱610,620と少なくとも一方のクリップ接触端652とに係合する(例えば手榴弾ピンの形状に類似する)解放ピンまたはワイヤによって、クリップ600の閉鎖端604から引き離される。引き離されると、クリップ支柱610,620からクリップ接触端652を自由に取り外すことができ、留置装置650を患者から取り除くことができる。このような解放機構の他の例示的な実施形態には、いくつかの例を挙げると、キャッチフック、歯止め(pawls)、輪縄(lassos)、保持フィンガー、ボールディテント(ball detents)、クリップ支柱610,620の内部中空部616,626内のクリップ接触端652の拡大機構、返し部(barbs)、クリップ支柱610,620とクリップ接触端652との間の接触機構の電子的切除または切断、およびクリップ支柱610,620とクリップ接触端652との間の接触機構の機械的切除または切断が含まれる。
【0174】
例示的な実施形態において、クリップ600が植え込まれたときに互いに対向してLAAと接触するクリップ支柱610,620の表面に関して、これらの表面の一方または両方は、本明細書に記載されるように、LAA上でクリップ支柱を保持する自己移動部または牽引要素を有する。クリップ支柱610,620の1つまたは複数の外面には、凹凸状の機構が設けられ得る。例えば、凹凸の形成は、表面仕上げ、刻み付き、または類似の処理で形成され得る。好ましくは、凹凸は、長手方向の溝および/またはクリップ支柱610,620の長手方向の範囲に対して角度を付けられた溝であり得る。このような凹凸状の機構は、植込み中または植込み後に、LAAの側部からLAAの上にクリップ600を滑動させることと、LAAがクリップ支柱610,620の間で締め付けられたときに、対向するクリップ支柱610,620の間から出るLAAの動きに抵抗することを補助する。
【0175】
図示するクリップ600の実施形態において、クリップ支柱610,620の動きは、実質的に平行である。言い換えると、クリップ支柱610,620は、接近しているときに平行であり、離れているときも平行であり、その間で移動されたときも平行である。留置装置650は、植込み処置の間の任意の時点で、クリップ支柱610,620を非平行に移動させるように構成され得る。例えば、
図69~
図72に示すように、
図53~
図56に示す平行な静止位置から
図61~
図64に示す平行な拡大された位置に移動する間、一方のクリップ支柱610,620は、他方に対して角度をつけることができる。
図69~
図72は、クリップ600の開放端602におけるクリップ支柱610,620の端部が、クリップ600の閉鎖端604におけるクリップ支柱610,620よりも互いに近接する構成を示す。対照的に、
図73~
図76は、クリップ600の閉鎖端604におけるクリップ支柱610,620の端部が、クリップ600の開放端602におけるクリップ支柱610,620の端部よりも近接する構成を示す。これらの図のセットは、中央長手方向軸に対して実施的に類似した角度で配置されたクリップ支柱610,620を示す。しかしながら、第1および第2のクリップ支柱610,620の各々は、必要に応じて、ヨー方向に個別に移動され得る。留置装置650は、クリップ600を開く間および閉じる間に、各クリップ支柱610,620、ならびに各遠位端および各近位端を個別に制御して、任意の角度の組み合わせでクリップ支柱610,620を配置する。例えば、癒着部を迂回するために一方の側に角度をつける必要がある場合、そのクリップ支柱610,620に角度を付けて、他方のクリップ支柱620,610を平行状態に残すことができる。留置装置650による制御下でのそのような移動の自由度によって、クリップ600は、LAA20の両側でそれぞれ最適な角度でLAA20に接近することができる。
【0176】
本明細書において、付勢アンカー612,622は、クリップ支柱610,620の中心からずれた位置にあるように示されている。この例示的な配向によって、ばねクリップ632の遠位側の脚部(legs)をより長くすることができる。ばねクリップ632の脚部が長くなると、クリップ600が完全に開かれたときに生じる使用可能なクリップの長さの短縮が少なくなることに留意されたい。また、より長い長さは、ばねクリップ632の歪みを低減するのに役立ち、その長さによって、より大きく、より硬いばねクリップ632を使用することができる。
【0177】
例示的な実施形態において、クリップ支柱610,620は、PEEKから形成される。また、クリップ支柱610,620は、例えばステンレス鋼、アルミニウム、チタン、ニッケル・チタン(Ni-Ti)合金(例えばニチノール)、およびポリカーボネートから形成され得る。
【0178】
例示的な実施形態において、付勢アンカー612,622は、例えばステンレス鋼、アルミニウム、チタン、ニッケル・チタン(Ni-Ti)合金(例えばニチノール)、およびポリカーボネートのいずれかから形成され得る。
【0179】
例示的な実施形態において、付勢装置630は、例えばステンレス鋼、アルミニウム、チタン、ニッケル・チタン(Ni-Ti)合金(例えばニチノール)、およびポリカーボネートのいずれかから形成され得る。
【0180】
例示的な実施形態において、クリップ600の一部またはすべては、クリップ600と心臓の構造体と隣接する解剖学的構造体との間の非外傷性接触に対応することができ、クリップ600の表面の間での挟み込みを低減させることができる柔らかくされた材料(例えばシリコーンまたはポリウレタン)で覆われ得る。
図77に示す例示的な実施形態において、(破線で模式的に示す)保護カバー640は、付勢装置630のクリップ支柱610,620、付勢アンカー612,622およびばねクリップ632のうちのいずれか1つまたはすべてをシールドする。カバー640は、留置装置650によるクリップ600の移動のために、クリップ支柱610,620の少なくとも近位端において開かれている。クリップ支柱610,620に隣接するばねクリップ632の一部は、クリップ支柱610,620の外面に対して移動することに留意されたい。この移動は、
図53、
図57および
図61におけるばねクリップ632の進行状態で見ることができる。このような構造体が移動すると、ばねクリップ632とクリップ支柱610,620との間に挟み込み領域またはシザー領域(scissor region)が存在する。したがって、この領域にカバー640を配置することで、ばねクリップ632とクリップ支柱610,620との間で生じる挟み込みやシザーによる危険性を低減または取り除くことができる。例示的な実施形態において、カバー640は、マルチルーメン押出成形品であり得る。マルチルーメン押出成形品は、クリップ600またはばねクリップ632およびクリップ支柱610,620の近位端のみを覆うことができる。
【0181】
図78~
図82は、カバー640の別の例示的な実施形態を示す。本実施形態において、カバー640は、クリップ支柱610,620の少なくとも内部/中央表面、上面および下面(上下は、
図81におけるクリップ600の配向を参照)で、クリップ支柱610,620を取り囲む内部642を有する。カバー640は、付勢アンカー612,622(存在する場合)を取り囲む中間切り欠き部644を有する。これにより、対応する付勢アンカー612,622に隣接するカバー640の外面が、付勢アンカー612,622の外面613と共に実質的に滑らかな移行部を形成することができる。例えば、付勢アンカー612,622に隣接するカバー640の外面は、付勢アンカー612,622の外面613,623と実質的に同一平面にある。上述したように、付勢装置630がクリップ支柱610,620の上方(および/または下方)に位置するばねクリップ632の形態の場合、付勢アンカー612,622にそれぞれ隣接する各ばねクリップ632の遠位側部分において、挟み込み領域が形成される。この挟み込み領域を最小化するために、カバー640は、
図82において拡大して示す保護メサ部(mesa)646を備える。このメサ部646は、ばねクリップ632が接地される付勢アンカー612,622に向けて遠位側に延在する上面を有する。図示する例示的な実施形態において、この上面は、メサ646からカバー640の(開放端602における)遠位端までのカバー640の上面と実質的に同一である。また、メサ646は、各ばねクリップ632にそれぞれ隣接する垂直壁を備える。壁は、壁および付勢アンカー612,622に隣接するばねクリップ632の一部と一致する形状を画定する。この形状は、ばねクリップ632が伸長されてクリップ600の実質的に開状態、例えば
図61に示すような状態になった際に、ばねクリップ632の内部/中央表面の形状に実質的に対応する。例示的な実施形態において、壁の形状は、クリップ600が開かれた際の開限機構(limit stop)である。開限機構として、壁は、ばねクリップ632が特定の点を越えて長手方向軸601に向けて内向きに折り曲がることを防止する。ばねクリップ632は、付勢アンカー612,622から突出する。そのため、ばねクリップ632が過度に折り曲げられると、クリップとアンカーとの接合部においてばねクリップ632が破損する可能性がある。開限機構として壁を設けることで、クリップとアンカーとの接合部においてばねクリップ632がさらに折り曲げられることを防止し、継続して折り曲げられると、ばねクリップ632は、壁の近位端に位置するまたは壁の近位端に隣接する中間点において折り曲げられる/屈曲する。他の例示的な実施形態と同様に、カバー640の様々な表面は、LAAと係合するために、例えば互いに対向する内側の互いに対向する面上に、凹凸状または自己移動的な機能を有することができる。
【0182】
外科医がクリップ600を持ってLAA20に接近して、クリップ支柱610,620がLAA20の両側に沿って通過すると、外科医は、LAA20の遠位側を見ることができない場合がある。そのため、外科医は、クリップ支柱610,620の(開放端620における)遠位端がLAA20の遠位側を完全に通過していない配向において、クリップ600をLAA20上に配置する場合がある。クリップ支柱610,620の遠位端がLAAを通過したことを確認するために、視覚的フラグ660が、クリップ600と留置システム650の少なくとも1つに関連付けられる。一般に、フラグ660は、クリップ600の(開放端602における)遠位端に位置する構造体であり、これは、一方のクリップ支柱610,620から他方のクリップ支柱620,610に向けて旋回する(または連結する、折り曲がる、折り畳まれる)ことができる。この旋回運動によって、外科医は、フラグ660の端部を見て、LAA20の遠位端を通過した位置にクリップ660の遠位側開放端602があることを確認することができる。フラグ660が作動されてLAA20の反対側を外科医が見ることができない場合、外科医は、クリップ支柱610,620の遠位端が、LAA20の遠位側においてまたは遠位側を越えた位置で固定されていないまたはしていないと結論づけることができる。これは、外科医がLAA20上のクリップ600を再配置する必要があることを意味する。このフラグ660は、留置装置650の一部であり得、クリップ600の一部(例えば一方のクリップ支柱610,620の一部)であり得、またはクリップ600および留置装置650とはまったく別の装置であり得る。
【0183】
図83および
図84には、フラグ660の例示的な実施形態が示されている。シャフト662の端部には、旋回接続部666を介してシャフト662に接続されたフィンガー664が設けられる。図示しないフィンガーコントローラーは、シャフト662を介してフィンガー664に取り付けられ、
図83に示す整列位置と
図84に示す旋回位置との間でフィンガー664を選択的に移動する。フラグ660がクリップ600の一部である例示的な実施形態において、クリップ支柱610,620の一方がシャフト662であり、旋回接続部がクリップ支柱610,620の遠位端に位置する。クリップ植込み処置の間にクリップ支柱610,620がLAAのいずれかの側に配置される場合、外科医は、フィンガーコントローラーを作動させて、フィンガー664の起点に対向するLAAの側部からフィンガー664を見ることができるかを判断する。フィンガー664を見ることができる場合、LAA20の適切な植込み距離が確認される。
【0184】
別の例示的な実施形態において、フラグ660は、留置装置650の一部である。本明細書に記載するように、クリップ支柱610,620の少なくとも一方は、近位端から遠位端まで中空であり得る。シャフト662およびフィンガー664は、クリップ支柱610,620のルーメン内に嵌め込まれるような大きさを有することができる。クリップ支柱610,620がLAAのいずれかの側に配置された状態でクリップ600がLAA20に固定されると、シャフト662は、クリップ支柱610,620の遠位端からフィンガー664を伸ばすために、ルーメンを介して挿入される。外科医は、フィンガーコントローラーを作動させて、フィンガー664の起点に対向するLAA20の側部からフィンガー664を見ることができるかを判断する。フィンガー664を見ることができる場合、LAA20の適切な植込み距離が確認される。フィンガー664を見ることができない場合、LAA20上の植込み距離が適切ではなく、LAA20上のクリップ600をさらに再配置する必要がある。フィンガー664がクリップ600から離れている例示的な本実施形態は、いくつかの変形例であり得る。まず、シャフト662は、留置装置650自体のクリップ接触端652の1つであり得、フィンガー664は、このクリップ接触端652の端部に存在することができる。フィンガー664は、留置装置650をクリップ支柱610,620内にさらに移動させることによって伸ばされる。代替的に、シャフト662は、
図85に示すフラグ装置670のような、留置装置650とは別個の器具であり得る。クリップ支柱610,620がLAAのいずれかの側部に配置された状態でクリップ600がLAA20に固定されると、留置装置650が取り除かれ、フラグ装置670のシャフト672が一方のクリップ支柱610,620のルーメンを介して挿入されて、クリップ支柱610,620の遠位端からフィンガー674を伸ばすことができる。上記と同様に、外科医は、フィンガーコントローラーを作動させて、フィンガー674の起点に対向するLAA20の側部からフィンガー674を見ることができるかを判断する。フィンガー674を見ることができる場合、LAA20上の適切な植込み距離が確認される。フィンガー674を見ることができない場合、LAA20上の植込み距離が適切でなく、留置装置650を再接続してクリップ600を移動させて、LAA20上のクリップ600をさらに再配置する必要がある。代替的に、シャフト662は、留置装置650自体のクリップ接触端652の1つであり得、フィンガー664は、シャフト662とは別個に、クリップ支柱610,620の内部中空部616,626内に存在することができる。フィンガー664を作動させるために、シャフト662は、フィンガー664がクリップ支柱610,620の遠位端602を出るまで、クリップ支柱610,620内を遠位側に進み、ここで、フィンガー664は、自由に回転するか、連結する。代替的に、フィンガーは、(シリコーンやポリウレタンのような)柔らかい材料から形成され、クリップ支柱の上またはクリップ支柱の周りに配置され、クリップ支柱610,620を介してまたはクリップ支柱610,620の周りで作動され得る。この柔らかいフィンガーは、非外傷性であり、植込みの後にクリップ支柱610,620の上に留まることができ、または留置装置650に取り付けられたまま、留置装置650がクリップ600から引き離された後に、取り外されることができる。
【0185】
図86~
図89には、留置装置650のクリップ接触端652を開閉する機構の例示的な実施形態が示されている。
図86から
図89までの進行状態は、クリップ600の開放における複数の段階を示す。クリップ600は、
図86の閉じられた構成でLAAまで進入する。LAAに隣接するとき、外科医は、支点862で旋回可能に取り付けられたハンドル860を絞る。クリップ接触端652は、多軸旋回組立体870によって各ハンドル860の遠位端にそれぞれ取り付けられる。多軸旋回組立体870の例示的な本実施形態において、各ハンドル860は、2つの接続ロッド872を有する。各遠位側接続ロッド872は、各ハンドル860の遠位端にある穴に挿入される。遠位側ロッド872と穴とが、旋回部を形成する。対照的に、各近位側接続ロッド872は、ハンドル860の遠位端および穴の近位側にあるスロット864内に挿入される。各スロット864は、クリップ接触端652の長手方向の範囲(
図86において左右方向)に直交(
図86において上下方向)する距離にわたって延在する。例示的な実施形態における各接続ロッド872は、それぞれの遠位側穴または近位側スロット874を介して直交方向に延在する。スロット874の長さは、接続ロッド872の直径よりも長い。このように、近位側接続ロッド872は、距離にわたってスロット874に沿っておよびスロット874内で滑動する。各多軸旋回組立体870の2つの接続ロッド872は、プレート876。プレート876の遠位端は、クリップ接続端部652の近位端に固定される。このように、クリップ600および多軸旋回組立体870は、旋回角を越えて遠位側穴内の遠位側接続ロッド872の周りで旋回することができる。その後、この旋回角は、クリップ600の近位側でクリップ600が開くことができる後部開口角度を形成し、それを画定する。これは、
図87の図に示されている。
【0186】
図86~
図89の配向において、遠位側穴は、プレート876の後ろに完全に隠れており、
図87~
図89において、近位側スロット874は、わずかに見えるようになっている。ハンドル860および多軸旋回組立体870の構成によって、
図86~
図89の進行状態に示すように、支柱610,620は、特定の方法で開くことを可能にする。具体的には、ハンドル860が互いに向けて移動し始めると、力が自動的に、近位側接続ロッド872を近位側スロット874の外側端部に向けて外向きに滑動させる。これは、クリップ600の近位側が、クリップ600の遠位側が開く前に開くことを意味する。その配向は、
図87に示されている。ハンドル860がさらに近接するように移動されると、支柱610,620はさらに離れるように移動され、力が自動的に、近位側接続ロッド872を近位側スロット874内で滑動させる。このように、支柱610,620は、2つのハンドル860の中間閉位置における平行状態に移動する。この状態は、
図88に示す。最後に、クリップ600の完全な開位置までハンドル860がさらに近接するように移動されると、支柱610,620は、さらに離れるように移動され、力が自動的に、近位側接続ロッド872を近位側スロット874の外側端部に留まらせる。ここで、支柱610,620は、支柱610,620の遠位端が支柱610,620の近位端よりも離れている位置で、角度を付けられた状態に移動する。この後者の状態は、
図89に示されている。ハンドル860の逆方向の動きの間、この進行は、逆になる。ここでは、クリップが平行状態に移動してから、クリップ設置状態で互いに接触する支柱610,620の反対側の近位端が互いに接触する前に、支柱610,620の遠位端が閉じられて、互いに接触する配向に移動する。
【0187】
クリップ600がLAAで閉じられると、支柱610,620の遠位端が最初に互いに接触するので、上記進行は好ましい。このような配向は、複数の利点を有する。そのうちの1つは、外科医がクリップ600を取り付ける際に、LAAが遠位側から近位側に向けて閉じられることである。この閉鎖方向は、ジョーが締め付け圧を加え始める前に、LAAがジョー内で完全に捕捉されることを確実にする。
図87に示す閉鎖ループの中間ステップを構成する間に、左心耳がジョー内に存在するのに十分な空間が存在するので、操作者は、左心耳の周囲を完全に視認することができる。これは、「スイカの種蒔き(watermelon seeding)」とも呼ばれる、閉鎖圧が組織を開放端から強制的に押し出すのを防ぐのにさらに役立つ。この閉鎖方向は、クリップ植込みの間に外科医がLAAのスパン全体を見ることができなくても、LAAが完全に閉鎖されていることを確実にする。以下でさらに詳述するように、クリップ600は、遠位端がLAAの遠位側を過ぎて閉鎖されている状態で、その状態が保証されていることを外科医に知らせる(または保証する)ための構造体を有するように形成され得る。
【0188】
図90は、多軸旋回組立体880の別の例示的な実施形態を示す。この図において、クリップ開放構造または組立体の一方の側が示されている。図を明確に示すために、他方の側は、図示されていない。クリップ接続端部652がクリップ600内に挿入されると、この多軸旋回組立体880によって、クリップ600は、
図86~
図90に示す進行状態のように開かれる。
【0189】
図86~
図89に示す留置装置650のハンドル860の構成は、開放された外科的処置で使用することができるものである。このような処置において、心嚢(pericardial sac)は外科医に開放されている。そのため、外科医が留置装置650を操作するために比較的大きな領域を有するので、ハンドル860は、支点に近接することができ、互いに(例えばプライヤーの形態で)離れて間隔を開けることができる。対照的に、
図91~
図103は、縮小され、比較的低侵襲的な外科的アプローチ(例えば開胸術または胸腔鏡下手術)で使用されるように構成され得る留置装置900を示す。留置装置900は、腹腔鏡下で使用することができる大きさの、左心耳隔離クリップ600を開閉するように構成されたエンドエフェクター910を有する。ただし、
図91~
図103に示すエンドエフェクター910の例示的な構成は、首部914と、側方フランジ916と、を備える固定クレビス912を有する。そのため、このエンドエフェクターは、開胸術で使用される。このエンドエフェクター910を腹腔鏡下処置で使用するものに変換するために、クレビス912の固定折り曲げ部は、図示しない連結装置またはジョイント(受動的でも能動的でのあり得る)で置き換えられる。シャフト902と同様に、連結装置は、腹腔鏡ポート内で使用するのに十分な直径を有する。したがって、留置装置900(および連結装置)のシャフト902は、約10mm(30フレンチ)よりも小さい外径を有する。固定クレビスおよび連結の変形例は、
図91~
図103に示す固定エンドエフェクター910の例示的な実施形態を参照して記載されている。また、
図91~
図103は、クリップ600とは異なるいくつかの特徴を有する左心耳隔離クリップ1000の別の例示的な実施形態を示す。ただし、クリップ600のすべての特徴は、クリップ1000で使用することができ、クリップ1000のすべての特徴は、クリップ600で使用することができる。
【0190】
1対のジョー920が、クレビス912の遠位端に旋回可能に接続される。各ジョー920は、図を明確に示すために図示しないジョー旋回軸を取り囲む旋回穴を有する。ジョー旋回軸は、クレビス912の各側方フランジ916に固定される。したがって、ジョー920は、クレビス912に対して、ジョー旋回軸の周りで旋回することができる。各ジョー920は、対応する1つのクリップ接触端652に接続された遠位端を有する。
図91~
図103に示す実施形態において、クリップ接触端652は、旋回可能な支柱ピン930を備える。上述した多軸旋回組立体とは対照的に、支柱ピン930は、単一のピン旋回部932を介して多軸運動を提供する。支柱610,620,1010,1020が互いに対して角度をつけることを可能にする支柱ピン930の自由な「小刻みに動く(wiggling)」動きは、ジョー920のスロット922内に配置された支柱ピン930の縁部934の1つが、支柱ピン930の長手方向の範囲(この長手方向の範囲は、各支柱610,620,1010,1020の長手方向の範囲と平行であるか、同一線上にある)に対して角度をつけるようにすることで、達成される。このように、支柱ピン930がそれぞれの旋回部932においてジョー920に接続されると、支柱ピン930は、ジョー920のスロット922内でわずかに移動するのではなく、ジョー920の遠位端に対して実質的に角度をつけて移動することができる。この角度は、
図92の拡大図に示されている。この断面において、各支柱ピン930は、スロット922に対して最大の角度で、縁部934に対向するスロット922の側壁に縁部934が当接および沿うような位置に配置される。そのため、
図92の図において図の上部にある支柱ピン930は、さらに時計回りの方向に旋回部932の周りで回転することはできないが、少なくとも上側支柱ピン930の側壁936がスロット922の内壁924に当たるまで、反時計回りに回転することができる。同様に、
図92の下部にある支柱ピン930は、さらに反時計回りの方向に旋回部932の周りで回転することはできないが、少なくとも
図92の下側支柱ピン930の側壁936がスロット922の内壁924に当たるまで、時計回りに回転することができる。支柱ピン930のこの自由な回転能によって、クリップ1000は、
図86~
図89に示すそれぞれの配向をとることができる。
【0191】
クリップ1000の支柱1010,1020には、支柱1010,1020の近位端から内向きに延在する止まり穴1012,1022が設けられる(代替的に、止まり穴は、別の例示的な実施形態において支柱1010,1020まで延在することができる。)。支柱ピン930の遠位端938は、(植込みのために解放する準備が整うまで一時的に)穴1012,1022内に突出して、支柱1010,1020をそれぞれそこに固定する。例示的な実施形態において、遠位端938および穴1012,1022は、円筒形である。例示的な代替実施形態において、穴1012,1022および遠位端938の外面は、多角形の断面形状を有する。この形状は、支柱1012,1022が遠位端938の周りで回転することを防止する。
【0192】
支柱1012,1022を支柱ピン930の遠位端938に(回転可能におよび長手方向に)固定するために、支柱ピン930は、横方向ガイド931を有する。横方向ガイド931は、ロックルーメン933の入り口または開始点を画定する。ロックルーメン933は、横方向ガイド931の外側縁部から角度を付けられて、支柱1012,1022の近位側の第1の側壁を通って、支柱ピン930の遠位端938の一部または全部を通るトンネルを構成する。例示的な代替構成において、ロックルーメン933は、第1の側壁に対向する第2の側壁の全部または一部を通ってトンネルを継続することができる(その継続状態は図示されていない)。第1および第2の支柱ロックチューブ940,942は、留置装置900の図示しない近位側制御端部からシャフト902を通って、クレビス912を通って、ジョー920に沿って延在し、ロックルーメン933の開始点を画定する横方向ガイド931の側方開口部に進入して固定される。これらの支柱ロックチューブ940,942は、図示しないロックワイヤのためのガイドとして作用し、ロック状態において、支柱ロックチューブ940,942を通って、横方向ガイド931のロックルーメン933を通って、遠位端938のロックルーメン933内に入り込んで固定される。このような構成において、ロックワイヤは、支柱1012,1022が支柱ピン930に対して回転可能にまたは長手方向に移動することを防止する。支柱1012,1022を支柱ピン930からロック解除して留置装置900の全体からクリップ1000をロック解除するために、留置装置900の近位側ハンドルにある図示しないアクチュエーターが作動されて、ロックワイヤを後退させる。これにより、ロックワイヤの遠位端は、少なくとも、遠位端938および支柱1012,1022におけるロックルーメン933の一部から外にロックワイヤの遠位端が出る程度に、ロックルーメン933の近位側に移動する。したがって、ロックワイヤの遠位端が少なくとも横方向ガイド931内のロックルーメン933の一部の中にあると、留置装置900の近位側の動きによって、LAAに取り付けられたクリップ1000が容易に且つ滑らかに滑動して遠位端938から離れて、LAA上に植え込まれる。
【0193】
別の例示的な実施形態において、支柱1012,1022を留置装置900に固定するロックワイヤは、クリップ支柱1012,1022に熱圧着されるか、機械的に圧着されるか、またはその他の方法でクリップ支柱1012,1022内において変形されて、ロックワイヤの取り外しに対する抵抗を提供する。これにより、ロックワイヤがクリップ支柱1012,1022を支柱ピン930上に保持することができる。クリップ支柱1012,1022とロックワイヤとの間の機械的抵抗の降伏力を超えてロックワイヤを引っ張ると、クリップ支柱1012,1022が支柱ピン930から解放されて、クリップが留置装置900から自由に解放され得る。
【0194】
ジョー920の開閉、すなわちクリップ1000の開閉は、
図93~
図101の進行状態を参照して説明する。ジョー制御ワイヤ944は、留置装置900の近位側ハンドルからシャフト902を通って、プーリー904の周りを通って延在し、遠位側ワイヤ端部においてジョー制御環(collar)946に固定される。プーリー904は、図示しないプーリー軸を介してクレビス912に接続され、プーリー軸の周りで回転する。これにより、ジョー制御ワイヤ944は、プーリー904の周りで移動することができる。ジョー制御ワイヤ944の端部にある環946は、
図92において破線で模式的にのみ示すジョー制御ピン948を取り囲み、例えば圧入、溶接、はんだ付け、またはろう付けによって、ジョー制御ピン948に固定される。ジョー制御ピン948は、各ジョー920の旋回制御スロット926内で滑動できるような大きさおよび形状を有する。また、ジョー制御ピン948は、
図91に示すように、側方フランジ916内のクレビス912の各側部に存在するピンガイドスロット913と滑動できるような大きさおよび形状を有する(
図93~101においてピンガイドスロット913は図示されておらず、クレビス912の上半分は、図を明確に示すために取り除かれている)。ピンガイドスロット913は、クリップ1000の中央長手方向軸1002に平行に、および例示的な本実施形態において、
図91に示すように同一線上になるように配向される。ジョー制御ピン948の両側の端部は、側方フランジ916のピンガイドスロット913内でそれぞれ滑動し、例示的な実施形態において、フランジ916の外側を過ぎてピンガイドスロット913から外に延在しない。これにより、クレビス912の大きさを可能な限り小さくすることができる。したがって、近位側または遠位側方向におけるジョー制御ワイヤ944の動きによって、ジョー制御ピン948は、中央長手方向軸1002に沿って近位側または遠位側にそれぞれ移動することができる。ジョー制御環946の動きに対応するこの動きは、
図94、
図97および
図100に示すジョー制御環946の位置によって見ることができる。クレビス912内のピンガイドスロット913とは対照的に、ジョー920の旋回制御スロット926は、
図95に示すように中央長手方向軸1002に対して特定の角度bを有して配置される。このように、クレビス912がシャフト902に固定されてジョー920がジョー旋回軸を介してクレビス912に旋回可能に接続された状態で、
図93~
図95に示すようにジョー制御ピン948がピンガイドスロット913の遠位端に位置すると、クリップ1000は、完全に閉じられた状態にある。対照的に、
図99~
図101に示すようにジョー制御ピン948がピンガイドスロット913の近位端に位置すると、クリップ1000は、完全に開かれた状態にある。ピンガイドスロット913の遠位端からピンガイドスロット913の近位端に向けたジョー制御ピン948の動きによって、クリップ1000は、完全に閉じられた状態から、部分的に閉じられた状態(近位端が開かれているが遠位端が閉じられている状態)、部分的に開かれた状態(支柱が引き離されて互いに平行になる可能性がある状態)、および完全に開かれた状態(支柱が引き離されてクリップ1000の遠位端が近位端よりもさらに開かれた状態で互いに対して角度を付けられた状態)へと選択的に開かれる。
【0195】
例示的な本構成によって、開胸術においてクリップ1000をLAA上に植え込むための例示的な処置を実施することができる。本処置を説明するにあたり、LAAに関連する用語を簡略化する。LAAは、心臓に対抗する中間長軸は、心臓の近傍側(juxta-cardiaside)と呼ばれる。LAAのこの側を簡略化して、本明細書において内側と呼ぶ。LAAの横軸は、自由軸と呼ばれ、その側は自由壁である。LAAのこの側を簡略化して、本明細書において外側と呼ぶ。
【0196】
エンドエフェクター910は、LAAまで移動される。外科医は、エンドエフェクター910を、
図93~
図95の閉じられた状態または
図99~
図101の完全に開かれた状態で、LAAに移動することができる。後者の状態において、外科医は、クリップ1000をLAAの周りで移動する前にクリップ1000を開く必要がない。前者の状態において、外科医は、留置装置900のハンドルにあるジョー開放組立体を作動させて、クリップ1000を(例えば
図99~
図101の状態に)開く。これは、ジョー制御ワイヤ944を引っ張ってジョー920を開き、支柱1010,1020を互いに離れるように移動させる。LAAの内側を左心房から離れるように移動させることができる場合、外科医は、移動部を使用してLAAを持ち上げ、支柱1010をLAAの内側の上に配置して、支柱1020をLAAの外側の上に配置する。1つまたは複数の癒着がLAAの動きを妨げる場合、外科医は、一方の支柱1010,1020(例えば支柱1010)をLAAの内側の下方に滑り込ませる。これにより、支柱1010をLAAの基部における内側の上に配置して、支柱1020をLAAの基部におけるLAAの外側の上に配置することができる。支柱1010,1020がLAAの基部に配置されると、外科医は、クリップ1000の閉鎖機構を作動させる。これは、ジョー制御ワイヤ944を遠位側に移動させて、ジョー制御ピン948を遠位側に移動させる。ジョー制御ピン948の動きによって、ジョー930は、
図96~
図98に示すように閉じられる。支柱ピン930は、(
図92に示すように)最も外側の開かれた状態の旋回部に旋回されるため、このジョー920の閉鎖によって、支柱1010,1010の遠位端は、互いに近づいて最初に接触する(この状態を
図96~
図98に示す)。理想的には、閉鎖時に、支柱1010,1020の遠位端は、LAAの基部の遠位側の範囲を越えて配置される。そのため、クリップ1000は、LAAの基部を完全にわたって、クリップ1000の内部空間960内で囲まれる。外科医は、留置装置900の作動を継続して、クリップ1000をさらに閉じる。この作動によって、ジョー制御ピン948は、ピンガイドスロット913の遠位端に移動する。この状態を
図93~
図95に示す。この段階で、外科医は、LAAの基部上でクリップ1000を閉じて、例えばTEEを用いてクリップ1000の植込みが満足のいくものであるかどうかを判断することができる。植込みが満足のいくものでない場合、外科医は、クリップ1000を開いて、クリップ1000をLAAの基部上に再配置する。植込みが満足のいくものである場合、本明細書において記載したように、外科医は、ロックワイヤがロックルーメン933から後退するように、留置装置900のクリップ解放組立体を作動させる。支柱1010,1020からロックワイヤが後退して出ると、留置装置900のわずかな動きによって、クリップ1000が支柱ピン930すなわちエンドエフェクター910から滑り落ちる。
【0197】
図104~
図108は、支柱1010,1020の上下に付勢装置1030を有するクリップ1000を示す。例示的な本実施形態において、第1および第2の付勢アンカーまたは付勢装置コネクター1014,1024は、支柱1010,1020と一体成形される。付勢装置1030は、第1および第2の付勢アンカー1014,1024によって、支柱1010,1020に固定される。例示的な実施形態において、上側および下側の付勢装置1030の端部は、支柱1010,1020の近位端に対向するポートの形態を有する付勢アンカー1014,1024に圧入されるか取り付けられる。
図107に示すように、付勢アンカー1014,1024は、前側部分と後側部分とから構成され、付勢装置1030は、前側部分を通って、前側部分と後側部分との間を横断して、後側部分の中まで延在する。付勢装置1030は、支柱1010,1020の前側部分および後側部分のいずれか一方または両方に固定され得る。付勢アンカー1014,1024の前側部分と後側部分との間のスパンは、本実施例において、バンドアンカー1040が前側部分および後側部分をわたる上側および下側の付勢装置1030に取り付けられる接続空間を画定する。そのため、本構成において、バンドアンカー1040は、上側および下側の付勢装置1030の一部に一時的または恒久的に接続されるC字形クリップの形態を有することができる。バンド捕捉通路1011が、支柱1010,1020の外面に形成される。バンド捕捉通路1011は、近位側バンドアンカーウェル1013と、中間バンドロック通路1015と、遠位側バンド通路1017と、末端バンド通路1019と、を有する。近位側バンドアンカーウェル1013は、中間バンドロック通路1015内に移行し、中間バンドロック通路1015よりも大きい幅を有する。遠位側バンド通路1017は、中間バンドロック通路1015からバンド捕捉通路1011に続き、例示的な実施形態において、近位側バンドアンカーウェル1013と略同じ幅を有する。このように、中間バンドロック通路1015は、そのすぐ近位側および遠位側のバンド捕捉通路1011の部分よりも狭くなっている。遠位側バンド通路1017は、遠位側バンド通路1017に対して角度を付けられて、特に、略直交する末端バンド通路1019に続いており、これにより、外面から内向きに約90度且つ支柱1010,1020の内面まで完全に延在する折り曲げ部が形成される。
【0198】
付勢装置1030の別の例示的な実施形態は、クリップ支柱に加えられる内向きの(クリップ閉鎖)力を増大させる。このような実施形態において、ばね1030の外形は、端脚部が互いに交差して部分的な「8の字」の形状を形成するように変更される。このような構成は、端脚部が交差する範囲に比例する、クリップ支柱の間の事前付勢力を提供する。このような構成において、上側および下側ばね1030の間のトルクの釣り合いを維持するために、一方のばねは、左から右に交差させた脚部を有し、他方のばねは、右から左に交差させた脚部を有する。この鏡面対称にばねを配置することで、クリップ支柱をねじれさせる、クリップ支柱に誘発されたトルクが相殺される。力の均衡点をクリップ支柱の長手方向軸の中心に移動させるために、ばね1030の脚部をさらにU字部分に対してさらに角度をつけて、クリップ支柱の一方または他方の端部に付勢力を加えることができる。
【0199】
図108~
図111に示す変換バンド1050は、バンド捕捉通路1011内で延在する。バンド1050は、以下でさらに詳述するように、クリップ1000を閉鎖端式のクリップ(近位端および遠位端の両方が閉じられてループが形成される)から開放端式のバンド(近位端のみが閉じられて略U字を形成される)に変換するために使用されるので、変換バンドと呼ばれる。バンド1050は、一方の端部から他方の端部まで、第1の拡大されたバンド端部1052と、第1の縮小されたバンドロック部分1054と、中間バンド部分1056と、第2の縮小されたバンドロック部分1054と、第2の拡大されたバンド端部1052と、を有する。近位側バンドアンカーウェル1013は、第1の拡大された遠位側バンド端部1052を保持するように構成および形成される。第1の縮小されたバンドロック部分1054は、第1の縮小されたバンドロック部分1054を保持するように構成および形成される。遠位側バンド通路1017および末端バンド通路1019は、中間バンド部分1056を保持して、遠位側バンド通路1017および末端バンド通路1019の接合部によって形成された角部の周りでバンド1050を折り曲げるように構成および形成される。バンド捕捉通路1021は、バンド捕捉通路1011の鏡面対称であるため、その説明を省略する。バンド捕捉通路1021は、バンド捕捉通路1011が第1の縮小されたバンドロック部分1054および第1の拡大されたバンド端部1052を保持するのと同様に、第2の縮小されたバンドロック部分1054および第2の拡大されたバンド端部1052を保持する。代替的に、バンドアンカー1040は、返し部(barbs)や歯部(teeth)のような突起部を有することができる。突起部は、バンド1050に向けて延在し、取り付けられるときにバンドを突き抜けるか挟み込む。これには、バンド1050をすべて均一な直径にすることができ、作製および取り付けをようにするという利点がある。
【0200】
バンド1050は、少なくとも部分的に弾性を有する材料から形成される。そのため、留置装置900がクリップ100を拡大させると、クリップ1000の遠位端の間の拡大されたスパンに対応するように、少なくとも中間バンド部分1056が伸長される。クリップ1000が存在する場合、クリップ1000は、
図109に示すように両端が閉じられている。バンド1050は、LAAの上で植え込まれたときに、支柱1010,1020の遠位端に内向きの付勢力を付与することができる。この配向において、クリップ1000は、LAAの周りに完全なリングを形成する。LAAをこの閉じられた状態で挿入できない場合、2つの支柱1010,1020の間でバンド1050を切断することができる。伸長された場合、バンド1050の2つの切断された端部は、遠位側および末端バンド通路1017,1019に入る。
【0201】
本明細書において記載するクリップは、クリップ組立体(例えば610~620,1010~1020)と、付勢組立体(例えば632,1030)と、を提供する。クリップ組立体は、互いに対向する第1および第2のクリップ支柱(例えば610~620,1010~1020)を備える。各クリップ支柱は、例示的な実施形態においてLAAに対向する側部である組織接触面を有する。各クリップ支柱は、第1および第2の付勢面を有する。付勢組立体は、第1のクリップ支柱と第2のクリップ支柱とを接続して、第1および第2のクリップ支柱を、組織接触面を通過する支柱平面に整列させる。付勢組立体は、1つまたは複数の第1の付勢ばね(例えば632,1030)を備え、第1の付勢ばねの一方の側は、第1のクリップ支柱の第1の付勢面に接続され、他方の側は、第2のクリップ支柱の第1の付勢面に接続される。また、付勢組立体は、1つまたは複数の第2の付勢ばね(例えば632,1030)を備え、第2の付勢ばねの一方の側は、第1のクリップ支柱の第2の付勢面に接続され、他方の側は、第2のクリップ支柱の第2の付勢面に接続される。このようにして、第1および第2の付勢ばねによって、第1および第2のクリップ支柱は、例えば
図86から
図89、ならびに
図91から
図93、
図96および
図99に示す進行状態で見られるヨー運動を伴って、支柱平面内で移動することができる。換言すると、付勢組立体は、支柱平面内での第1および第2のクリップ支柱のヨー運動を許容するように構成される。支柱平面内での第1のクリップ支柱のヨー運動は、支柱平面内での第2のクリップ支柱のヨー運動から独立していてもよい。
【0202】
付勢組立体の位置によって、第1および第2の付勢ばねは、第1および第2の支柱が支柱平面内で移動したときに、第1および第2のクリップ支柱がそれぞれの長手方向軸の周りで実質的に回転しないように、力を釣り合わせる。第1および第2の付勢ばねは、第1および第2の支柱が支柱平面内で移動したときに、第1および第2のクリップ支柱が実質的にトルクを持たないように、力を釣り合わせる。
【0203】
第1のクリップ支柱は、第1の近位端と第1の遠位端とを有し、第2のクリップ支柱は、第2の近位端と第2の遠位端とを有する。例示的な実施形態において、第1の付勢ばねは、第1の近位端と第1の遠位端との間の第1のクリップ支柱の第1の付勢面における中間位置と、第2の近位端と第2の遠位端との間の第2のクリップ支柱の第1の付勢面における中間位置と、に接続される。同様に、第2の付勢ばねは、第1の近位端と第1の遠位端との間の第1のクリップ支柱の第2の付勢面における中間位置と、第2の近位端と第2の遠位端との間の第2のクリップ支柱の第2の付勢面における中間位置と、に接続される。
【0204】
第1のクリップ支柱の第1の付勢面は、第1の上側であり得、第1のクリップ支柱の第2の付勢面は、第1の下側であり得、第2のクリップ支柱の第1の付勢面は、第2の上側であり得、第2のクリップ支柱の第2の付勢面は、第2の下側であり得る。第1のクリップ支柱の組織接触面は、第1の長手方向中心線を有する第1のLAA接触面であり得、第2のクリップ支柱の組織接触面は、第2の長手方向中心線を有する第2のLAA接触面であり得、支柱平面は、第1および第2の長手方向中心線を通過する。
【0205】
本明細書に記載するクリップは、例えば内径を有する腹腔鏡ポート内に嵌め込まれるような大きさを有する。これに関連して、クリップ組立体および付勢組立体は、組み合わされるとポートの内径よりも小さい最大外幅を有する。
【0206】
第1および第2のクリップ支柱は、最大長手方向長さを有し、第1および第2の付勢ばねは、例えば
図88および
図106に示すように、最大長手方向長さよりも短い長手方向長さを有する。これらの図面に示すように(例えば
図86~
図89)、支柱の第1の上側および第2の上側は、組み合わされると外側上部境界を画定し、第1の付勢ばねは、実質的に外側上部境界内に留まる。同様に、第1の下側および第2の下側は、組み合わされると外側下部境界を画定し、第2の付勢ばねは、実質的に外側下部境界内に留まる。例えば、
図86~
図89に示すように、留置装置(860,862,870)は、支柱の第1および第2の近位端に取り外し可能に接続され、支柱平面内で第1および第2のクリップ支柱を移動させる。第1および第2のクリップ支柱は、支柱平面内で個別に移動する。
図86~
図89および
図92に示すように、留置装置は、第1および第2の近位側開口部を介して近位端に取り外し可能に接続される。例示的な実施形態において、留置装置は、第1および第2の近位側開口部を介して第1および第2の近位端のみに取り外し可能に接続される。
【0207】
図112~
図128は、ジョーに基づく外科手術用器具のための組織交差センサーの様々な態様を含む、エンドエフェクターを有する外科手術用器具の例示的な実施形態を示す。これは、ジョーの遠位端が外科的環境(例えば視野および/または組織)によって不明瞭または遮断されている場合、外科医に、その遠位端の配置に関して、組織閉塞クリップ(例えばLAA隔離クリップ)を保持および位置決めするためのジョーの実施形態を用いたより高い制度および制御を提供する。センサーは、閉じられた近位端および開かれた遠位端を有するLAA隔離クリップにとって特に有益である。これは、LAA隔離クリップがLAAの長さを完全に横断すること、および閉じられたときに、LAA隔離クリップの遠位側の端部から排出され、クリップが最終的に植え込まれたときにクリップ内に組み込まれなくなる組織がないということを、センサーが外科医に知らせるためである(組織の排出は、歯磨き粉チューブの動作に似た状態であり、閉鎖時にLAAの少なくとも一部がクリップの遠位端から押し出される)。
【0208】
図112~
図124は、そこに充填されたLAA隔離クリップ1200の例示的な実施形態を有するジョー1100の例示的な実施形態における外科的エンドエフェクター(例えばアプリケーターヘッド)を示す。
図112~
図116は、開かれた状態におけるジョー1100およびクリップ1200を示し、
図117~
図124は、閉じられた状態におけるジョー1100およびクリップ1200を示す。隔離クリップアプリケーター1300の遠位端は、
図116において破線で示されており、旋回組立体1310においてジョーの近位端に接続される。旋回組立体1310は、ジョー1100に旋回可能に取り付けられて、且つシャフト1314の遠位端に(固定されるようにまたは連結されるように)取り付けられたクレビス1312が含まれる。アプリケーター1300のその他の近位側構成要素には、図示しないハンドルが含まれる。図示するように、対向する第1および第2のジョー1110,1120は、個別に旋回組立体1310に接続されて、互いに相対的に旋回することができる。旋回組立体1310は、ハンドル上の図示しない制御部によって作動される。
【0209】
各ジョー1110,1120は、近位側ジョー基部1112,1122と、遠位側カップ部材1114,1124と、近位側ジョー基部1112,1122をカップ部材1114,1124にそれぞれ接続する、可撓性の中間ジョー部材1116,1126と、を備える。各ジョー1110,1120には、光ファイバー組立体の一部が取り付けられる。光ファイバー組立体は、一方のジョー1110の上の第1の光ファイバー1130と、他方のジョー1120の上の第2の光ファイバー1132と、を備える(光ファイバーは、例えばケーブル、ワイヤ、チューブ、および/または線(ライン)とも呼ばれる)。光ファイバー組立体の例示的な受動的実施形態において、第1の光ファイバー1130は、集光型の光ファイバーであり、第2の光ファイバー1132は、伝送型の光ファイバーであり、第1のジョー1110および第2のジョー1120の上面にそれぞれ取り付けられる。例示的な代替実施形態において、光ファイバー1130,1132は、ジョー1110,1120のチャネルを通って配線され得、またはジョー1110,1120のいずれかの表面に取り付けられ得る。特定の例示的な一実施形態において、集光型のワイヤは、周囲の光に曝される長さを最大化するために第1のジョー1120の周りにコイル状に巻かれている。このように、ワイヤからの光出力の量を増加させることができる。
【0210】
集光型のワイヤ1130および伝送型のワイヤ1132の遠位側または末端は、カップ部材1114,1124によってそれぞれ受容され、ジョー1110,1120が閉じられたときに互いに近接するように配置される。特に有益な実施形態において、光ファイバー1130,1132の遠位端は、互いに平行な遠位側表面を有し、互いに同軸に整列しており、ジョーが閉じられたときに非常に近接しているか、互いに接触する。この最適な対抗状態は、
図121および
図123に最もよく示されている。これらの図は、閉位置または状態におけるエンドエフェクターの上面図および斜視図をそれぞれ示している。カップ部材1114,1124および光ファイバー1130,1132の遠位端は、光がジョーの一方の側から他方の側に伝送するために直接接触する必要はないことに留意されたい。光ファイバー1130,1132に使用されるワイヤのタイプに応じて、光は、遠位端の間に空隙がある場合でも伝送される。この空隙は、約1mm~約3mmの範囲であり得るか、それ以上であり得る。図示する実施形態において、光ファイバー1130,1132は、カップ部材1114,1124のそれぞれの上面に沿って配線および終端され、光ファイバー1130,1132の遠位端は、2つのカップ部材1114,1124の内面上の対向する対称位置で終端する。代替実施形態において、光ファイバー1130,1132は、カップ部材1114,1124の中央部にある開口を介して、またはカップ部材1114,1124の下面に沿って、配線される。さらなる例示的な実施形態において、個別に配線された光ファイバーワイヤの複数のセットが(例えばジョーの上面および下面の両方を介して、または任意の経路の組み合わせで)使用され得る。
【0211】
近位側ジョー基部1112,1122は、クリップ解放制御ワイヤ1140をハンドルから中間ジョー部材1116,1126まで(その後、遠位側カップ部材1114,1124で終了するように)それぞれ案内する制御経路1113,1123を含む。また、近位側ジョー基部1112,1122は、クリップ固定口1111,1121を含む。クリップ1200の締め付け部材1222,1224は、近位側クリップ解放装置1410によって、対応する一方の近位側ジョー基部1112,1122に取り外し可能に固定される。例示的な実施形態において、ジョー基部1112,1122のための近位側クリップ解放装置1410は、締め付け部材1222,1224に巻き付けられ、クリップ固定口1111,1121の上側部分を通過し、(固定口1111,1121に沿って垂直に通過する)クリップ解放ワイヤ1400の周りおよび外側を通って、クリップ固定口1111,1121の下部を通って戻り、例えば1つまたは複数の結び目を結ぶことで、縫合糸1410の別の端部に固定される縫合糸である。縫合糸1410は、例えば
図125~
図128に示されている。このように、クリップ解放制御ワイヤ1400が遠位側に引っ張られてクリップ解放制御ワイヤ1400の遠位端がクリップ固定口1111,1121を越えて近位側に後退すると、近位側クリップ解放装置1410は、もはや締め付け部材1222,1224を近位側ジョー基部1112,1122で保持しない。
図112~
図128に示すように、ジョー1110,1120の各側部のクリップ解放制御ワイヤ1400は、各カップ部材1114,1124にそれぞれ取り付けられたワイヤ端部ブロック1430で終端する。このワイヤ端部ブロック1430は、クリップ1200の展開が望まれるまで、クリップ解放制御ワイヤの末端を保持する。ワイヤ端部ブロック1430におけるクリップ解放制御ワイヤ1400の保持は、例えば圧入を介して、または摩擦継手を用いて、様々な方法で行うことができる。
【0212】
比較的硬い近位側ジョー基部1112,1122とは対照的に、中間ジョー部材1116,1126は比較的柔軟であり、この柔軟性によって、各カップ部材1114,1124は、ジョー1100が開位置と閉位置との間で移動された際に、近位側ジョー基部1112,1122に対して内向きおよび外向きに移動することができる近位側ジョー基部1112,1122と同様に、中間ジョー部材1116,1126は、クリップ固定口1117,1127をそれぞれ有する。クリップ1200の締め付け部材1222,1224は、遠位側クリップ解放装置1440によって、対応する一方の中間ジョー部材1116,1126に取り外し可能に固定される。例示的な実施形態において、遠位側クリップ解放装置1440は、締め付け部材1222,1224に巻き付けられ、クリップ固定口1117,1127の上側部分を通過し、(固定口1117,1127に沿って垂直に通過する)クリップ解放ワイヤ1400の周りおよび外側を通って、クリップ固定口1117,1127の下部を通って戻り、例えば1つまたは複数の結び目を結ぶことで、縫合糸1440の別の端部に固定される縫合糸である。この遠位側縫合糸1440は、例えば
図125~
図128に示されている。このように、クリップ解放制御ワイヤ1400が遠位側に引っ張られて遠位端がクリップ固定口1117,1127を越えて近位側に後退すると、クリップ解放装置1440は、もはや締め付け部材1222,1224を中間ジョー部材1116,1126で保持しない。
【0213】
図124に拡大して示すように、遠位側カップ部材1114,1124は、天井部1115,1125と、カップ部材1114,1124の遠位端において天井部1115,1125に実質的に垂直な遠位側壁1118,1128と、天井部1115,1125および遠位側壁1118,1128の両方に実質的に垂直な側壁1119,1129と、を有する。各カップ部材1114,1124のこれら3つの壁は、クリップ1200の締め付け部材1222,1224の遠位端がジョー1100に取り付けられた状態で存在するカップをそれぞれ形成する。
【0214】
図125~
図128は、例えばクリップ解放制御ワイヤ1400の周りでの縫合糸1410,1440の巻き付けによる、アプリケーターヘッドへのLAA隔離クリップ1200の取り付けを示す。ジョー1100からクリップ1200を切り離すために、クリップ解放制御ワイヤ1400は、例えばハンドルにあるプルタブを介して近位側に引っ張られて、ワイヤ端部ブロック1430から外される。次いで、クリップ解放制御ワイヤ1400は、ジョー1100の大部分またはすべてから取り外されて、縫合糸1410,1440が解放され、クリップ1200がジョー1100から切り離される。
【0215】
例示的な実施形態において、光ファイバー1130,1132の末端は、隔離クリップ1200の平行な締め付け部材1222,1224のそれぞれの末端のわずかに近位側または遠位側に配置される。締め付け部材の先端に対する光ファイバーの相対的な位置は、クリップの端部と検出された組織との間にどの程度の重なりが必要かを決定する。例えば、重なりのより大きな安全マージンが生じるように、クリップの長さが光ファイバーを越えて遠位側に延在することが望ましい場合がある。例示的な実施形態において、光ファイバー1130,1132は、クリップ1200の締め付け部材1222,1224のそれぞれの内面を越えて内向きに延在して、組織がその間に配置されたときに、締め付け部材122,1224の距離に対応する。厚さは、一般的に約3mm±1mmであるが、距離は、4mm~6mmに対応することができる。これは、締め付け後のLAAの厚さとして典型的である。このような内向きの伸長によって、光ファイバー1130,1132の両端は、実質的に直行している。
【0216】
遠位側先端センサーを有する隔離クリップのためのアプリケーターの例示的な実施形態において、アプリケーターは、1つまたは複数の制御部を収容するハンドルと、アプリケーターヘッドと、近位端および遠位端を有する細長いシャフトと、を備える。近位端は、ハンドルに結合され、遠位端は、アプリケーターヘッドに結合される。アプリケーターヘッドは、近位端および遠位端をそれぞれ有する第1および第2の細長いジョー部材を備える。第1および第2の細長いジョー部材の近位端は、旋回可能に接続される。旋回接続部は、互いに接続されても、個別にクレビスに接続されてもよい。第1および第2の細長いジョー部材の各々は、その遠位端においてカップ部材を備える。柔軟な部材が、ジョー部材の遠位端をカップ部材の近位端に接続する。例示的な受動的且つ光学的な実施形態において、第1の光ファイバーワイヤは、第1の細長いジョー部材の上に配置される。第1の光ファイバーワイヤは、2つの端部と長さとを有し、その長さに沿って光を集光し、その端部を介して集光された光を出力する。第1の光ファイバーワイヤの少なくとも一方の端部は、第1の細長いジョー部材のカップ部材に配置されるか、その中に配置される。第2の光ファイバーワイヤは、第2の細長いジョー部材の上に配置される。第2の光ファイバーワイヤは、2つの端部を有し、一方の端部で光を集光し、他方の端部で集光した光を出力するように適合される。第2の光ファイバーワイヤの集光端は、第2の細長いジョー部材のカップ部材に配置されるか、その中に配置される。第2の光ファイバーワイヤの出力端は、アプリケーターの操作者によって視認されるか、クレビス、シャフトまたはハンドルのいずれかにある光センサーに伝送され、光を自動的に検出し、ジョーおよび/またはカップ部材が整列されて遮られていないことをユーザーに示す位置に、第2の細長いジョー部材のカップ部材から近位側に配置される。第1および第2の細長いジョー部材は、ハンドル上の制御部の作動によって、閉位置と開位置との間で操作可能に旋回する。第1および第2の細長いジョー部材が閉位置に旋回すると、第1の光ファイバーワイヤの少なくとも一方の端部と第2の光ファイバーワイヤの集光端が近接するように配置される。第1および第2の細長いジョー部材が閉位置に旋回すると、第1の光ファイバーワイヤによって集光された光は、第2の光ファイバーワイヤに伝送されて、第2の光ファイバーワイヤの出力端で出力される。例示的な構成において、集光型の光ファイバーは、緑色であるため、ファイバーの外面に沿って入射した光は、ファイバー内を通過して、その字句に沿って誘導される。材料の色に基づいて、集光および伝送されるのは、緑色の光である。対照的に、伝送型の光ファイバーは、透明であるため、2つの光ファイバーを一緒にすると、緑色の光が緑色のファイバーの端部を出て、端部が整列して組織によって遮られていない場合、透明なファイバーに入る。この光は、透明なファイバーを通って伝送され、操作者/外科医によって見ることができるように、ファイバーの近位端から光る。操作者が透明なファイバーから出てくる緑色の光を確認できた場合、ファイバーの反対側の伝送端を遮っているものがなにもないこと、およびファスナーが締め付けるべき組織を完全に越えて伸ばされていることが確実である。代替的に、両方の光ファイバーは、透明であり得、留置装置に沿ってまたは留置装置のハンドルに達するまで延在することができる。任意の所与の周波数の光を伝送型のファイバーに入射することができる。これは、定常であっても特定のパターンでパルス状であってもよい。光ファイバーがエンドエフェクターの遠位端で十分に整列すると、受光型のファイバーは、伝送された光を検出部が配置されたシャフト/ハンドルに戻す。検出部は、光を見て、その光が既知の伝送信号であるかどうかを判断する。伝送された光の明確な判断が確認されると、ファスナーが組織を横切って適切に植え込まれていることを意味する。ここで、例えばLEDおよび/または音および/または触覚フィードバックなどのユーザーインターフェースが、それをユーザーに通知する。
【0217】
本明細書の例示的な実施形態が示すように、
図1~
図51のクリップ支柱110,120,210,220,410,420の断面は、実質的に長方形である。これは、ほんの一例であり、クリップ支柱110,120,210,220,410,420の断面は、円形、楕円形、または多角形であり得る。したがって、4つの側部を説明するために使用される第1、第2、第3および第4は、単に例示的なものであり、限定的と捉えられない。断面が円形または楕円形である実施形態において、列挙された断面は、第1、第2、第3および第4の四分位部、部分、または側部であり得る。
【0218】
本明細書において、LAA接触パッドは、様々な材料から形成されると記載されている。例示的な代替実施形態において、クリップ支柱210,220は、滑り止め表面を提供する且つ組織の内成長を促進する織りスリーブによって完全に囲まれ得る。スリーブは、例えば編組されたダクロン(登録商標)から形成され得る。布地のパッドの別の代替案として、滑らかな表面または凹凸状の表面、またはエラストマー性(例えばポリウレタンまたはポリジメチルシロキサン)の滑らかなパッドまたは凹凸状のパッドによって覆われた表面であり得る。これは、上述した自己移動部の材料から形成されるか、LAAに対する牽引力を強化する機能を有する。
【0219】
本明細書における「コード(cord)」という用語は、例えば制御コード252,262に対して使用される。この用語は、広義に使用されるものであり、特定の材料または断面に限定されるものではない。コードは、本明細書に記載された構造および特徴を備えることができる長手方向に延在するあらゆる材料を意味する。本明細書において定義するように、コードという用語は、単一のコードに限定されるものではない。コードは、複数のコードであり得る。そのため、コード(cord)および複数のコード(cords)は、置き換え可能に使用される。また、コードは、特定のタイプの材料に限定されるものではない。材料は、一例を挙げると、天然繊維、人工繊維、または合成繊維、プラスチックおよび/または金属から形成され得る。また、コードは、特定の構造に限定されるものではない。その材料は、一例を挙げると、ねじられたストランド、中央コアを有するねじられたストランド、単一のストランドまたはワイヤから作製され得る。本明細書に記載された例示的な一実施形態において、外科手術用縫合糸が参照および使用されるが、外科手術用縫合糸に限定されるものではない。
【0220】
本明細書に記載された様々な態様において、穴は、「止まり」穴と呼ぶ場合がある。このような記載がある場合、例示的な代替実施形態において、いくつかの穴は、貫通した穴であり得る。
【0221】
本発明のプロセスおよびシステムの様々な個別の特徴は、本明細書において例示的な一実施形態でのみ記載される場合があることに留意されたい。単一の例示的な実施形態に関して本明細書で説明するための特定の選択は、特定の特徴が、記載された実施形態にのみ適用可能であると限定するものではない。本明細書に記載されるすべての特徴が、本明細書に記載される他の例示的な実施形態のいずれかまたはすべてに、任意の組み合わせまたはグループまたは構成で等しく適用、追加、または交換可能である。特に、本明細書において特定の特徴を図示、定義、または説明するために単一の参照符号を使用することは、その特徴を別の図面または説明の別の特徴に関連付けるまたは同等にすることができないことを意味するものではない。さらに、図面で2つ以上の参照符号が使用される場合、これは、それらの実施形態または特徴のみに限定されるものと解釈されるべきではない。これらは、同様の特徴に同等に適用可能であるか、参照符号が使用されないか、別の参照符号が省略される。
【0222】
上述した説明および添付の図面は、本システム、本装置および本方法の原理、例示的な実施形態、および操作モードを示す。しかしながら、本システム、本装置および本方法は、上述した特定の実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。当業者であれば、上述した実施形態の追加の変形例を理解し、上述した実施形態は限定的ではなく、例示的であるとみなすであろう。したがって、当業者であれば、添付の特許請求の範囲に記載されたシステム、装置および方法の範囲から逸脱することなく、それらの実施形態の変形例を作製することができることに留意されたい。