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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】運動状態表示装置
(51)【国際特許分類】
   A63B 24/00 20060101AFI20241112BHJP
   A63B 21/005 20060101ALI20241112BHJP
   A63B 69/00 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
A63B24/00
A63B21/005
A63B69/00 505L
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023111988
(22)【出願日】2023-07-07
【審査請求日】2024-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】391064005
【氏名又は名称】株式会社アツミテック
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】石本 淳一
(72)【発明者】
【氏名】李 性▲みん▼
(72)【発明者】
【氏名】笠原 魁人
【審査官】宮本 昭彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-120638(JP,A)
【文献】特開2012-066068(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0214730(US,A1)
【文献】特開2003-024492(JP,A)
【文献】登録実用新案第3208433(JP,U)
【文献】実開平03-015555(JP,U)
【文献】特開2013-099523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 1/00 - 26/00
A63B 69/00 - 69/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の動作に伴い繰り出されるケーブルと、
前記ケーブルのストローク量を測定する測定手段と、
前記ケーブルに制動力を付与する磁気粘性流体装置と、
前記測定手段の出力値に基づいて算出した前記ケーブルのストローク量に対し前記制動力を制御して前記動作の負荷を変化させる制御ユニットと、
前記ケーブルが繰り出される繰り出し速度を時系列情報として表示する表示装置と、を備える、運動状態表示装置。
【請求項2】
使用者の動作に伴い繰り出されるケーブルと、
前記ケーブルのストローク量を測定する測定手段と、
前記ケーブルに制動力を付与する磁気粘性流体装置と、
前記測定手段の出力値に基づいて算出した前記ケーブルのストローク量に対し前記制動力を制御して前記動作の負荷を変化させる制御ユニットと、
前記ケーブルのスピード情報を時系列情報として表示する表示装置と、を備える、運動状態表示装置。
【請求項3】
使用者の動作に伴い繰り出されるケーブルと、
前記ケーブルのストローク量を測定する測定手段と、
前記ケーブルに制動力を付与する磁気粘性流体装置と、
前記測定手段の出力値に基づいて算出した前記ケーブルのストローク量に対し前記制動力を制御して前記動作の負荷を変化させる制御ユニットと、
前記ケーブルが繰り出されるスピードの実測波形を表示する表示装置と、を備える、運動状態表示装置。
【請求項4】
前記表示装置は、前記スピードの目標波形を表示する、請求項3に記載の運動状態表示装置。
【請求項5】
前記表示装置は、前記ストローク量に対する前記負荷の波形を表示する、請求項3又は4に記載の運動状態表示装置。
【請求項6】
使用者の動作に伴い繰り出されるケーブルと、
前記ケーブルのストローク量を測定する測定手段と、
前記ケーブルに制動力を付与する磁気粘性流体装置と、
前記測定手段の出力値に基づいて算出した前記ケーブルのストローク量に対し前記制動力を制御して前記動作の負荷を変化させる制御ユニットと、
前記ケーブルが繰り出される繰り出し速度を前記ケーブルのストローク量に対応させて表示する表示装置と、を備える、運動状態表示装置。
【請求項7】
使用者の動作に伴い繰り出されるケーブルと、
前記ケーブルのストローク量を測定する測定手段と、
前記ケーブルに制動力を付与する磁気粘性流体装置と、
前記測定手段の出力値に基づいて算出した前記ケーブルのストローク量に対し前記制動力を制御して前記動作の負荷を変化させる制御ユニットと、
前記ケーブルのスピード情報を前記ケーブルのストローク量に対応させて表示する表示装置と、を備える、運動状態表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動状態表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
筋力強化やリハビリテーションを行う場合、重りの重量を利用したトレーニング機器が使用されることが多い。このようなウエイトトレーニング用のトレーニング機器は、特定の筋肉や身体の部位を筋力訓練のターゲットとして、当該ターゲットに集中的に負荷をかける所定動作が行われるよう構成され、負荷の大きさを重りの重量で調整できるよう設計されているのが一般的である。
【0003】
一方、重りを使用することなく負荷の大きさを調整することができるトレーニング機器も知られている。例えば特許文献1及び2に開示された筋力訓練機器は、訓練者がハンドル状の操作部を回転させるよう構成され、操作に抗うように電磁的な回転抵抗を付与している。より具体的には、これらの従来技術は、訓練者によるハンドルの回転操作に連動して回転する回転体を電気粘性流体又は磁気粘流体の中に配置し、当該粘性流体に印加する電気又は磁気の大きさを制御することにより回転に対する粘性抵抗を制御することで使用者が受ける負荷を調整している。
【0004】
また、特許文献2の従来技術では、トレーニング機器におけるハンドル操作で回転する角度、角速度、トルク、及びそれらから算出されるパワーデータにより筋力特性を評価し、ディスプレイ等に出力する筋力特性評価方法が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-126122号公報
【文献】特許4956808号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のようなトレーニング機器による筋力特性評価方法では、訓練対象の筋肉や身体部位を絞った単純動作に負荷をかけるものであるため、必ずしもスポーツの実践的な動作に適した負荷のかけ方であるとは限らず、スポーツのパフォーマンス向上に適した運動状態の評価ができない虞があった。特に、上記した従来技術に係る筋力特性評価方法では、機器の構造により動作フォームが制限されるため、全身の筋肉を連動させるようなトレーニング状態とすることができない他、パフォーマンス向上を目的とした運動状態の評価には不向きであった。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、スポーツの実践的な動作に沿ったパフォーマンス評価を行うことができる運動状態表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
<本発明の第1の態様>
本発明の第1の態様は、使用者の動作に伴い繰り出されるケーブルと、前記ケーブルのストローク量を測定する測定手段と、前記ケーブルに制動力を付与する磁気粘性流体装置と、前記測定手段の出力値に基づいて算出した前記ケーブルのストローク量に対し前記制動力を制御して前記動作の負荷を変化させる制御ユニットと、前記ケーブルが繰り出される繰り出し速度を時系列情報として表示する表示装置と、を備える、運動状態表示装置である。
【0009】
本発明の第1の態様に係る運動状態表示装置は、使用者の動作に伴うケーブルのストローク量を算出すると共に、当該ケーブルの繰り出しに対する制動力をストローク量に応じて変化させることにより、動作の過程で負荷の大きさを変化させることができる。このとき、使用者は、装置の構造により三次元空間における動作が規制されるわけではなく、例えば全身の筋肉を連動させるような実際の動作の中で負荷を受けることになる。このため、運動状態表示装置によれば、実際の動作の過程における当該ケーブルの繰り出し速度の可視化を行うことができ、スポーツの実践的な動作に沿ったパフォーマンス評価を行うことができる。
【0010】
<本発明の第2の態様>
本発明の第2の態様は、使用者の動作に伴い繰り出されるケーブルと、前記ケーブルのストローク量を測定する測定手段と、前記ケーブルに制動力を付与する磁気粘性流体装置と、前記測定手段の出力値に基づいて算出した前記ケーブルのストローク量に対し前記制動力を制御して前記動作の負荷を変化させる制御ユニットと、前記ケーブルのスピードの情報を時系列情報として表示する表示装置と、を備える、運動状態表示装置である。
【0011】
本発明の第2の態様に係る運動状態表示装置は、使用者の動作に伴うケーブルのストローク量を算出すると共に、当該ケーブルの繰り出しに対する制動力をストローク量に応じて変化させることにより、動作の過程で負荷の大きさを変化させることができる。このとき、使用者は、装置の構造により三次元空間における動作が規制されるわけではなく、例えば全身の筋肉を連動させるような実際の動作の中で負荷を受けることになる。このため、運動状態表示装置によれば、実際の動作の過程における当該ケーブルのスピードの情報の可視化を行うことができ、スポーツの実践的な動作に沿ったパフォーマンス評価を行うことができる。
【0012】
<本発明の第の態様>
本発明の第の態様は、使用者の動作に伴い繰り出されるケーブルと、前記ケーブルのストローク量を測定する測定手段と、前記ケーブルに制動力を付与する磁気粘性流体装置と、前記測定手段の出力値に基づいて算出した前記ケーブルのストローク量に対し前記制動力を制御して前記動作の負荷を変化させる制御ユニットと、前記ケーブルが繰り出されるスピードの実測波形を表示する表示装置と、を備える、運動状態表示装置である。
【0013】
本発明の第の態様に係る運動状態表示装置は、使用者の動作に伴うケーブルのストローク量を算出すると共に、当該ケーブルの繰り出しに対する制動力をストローク量に応じて変化させることにより、動作の過程で負荷の大きさを変化させることができる。このとき、使用者は、装置の構造により三次元空間における動作が規制されるわけではなく、例えば全身の筋肉を連動させるような実際の動作の中で負荷を受けることになる。このため、運動状態表示装置によれば、実際の動作の過程におけるスピード変化の可視化を行うことができ、スポーツの実践的な動作に沿ったパフォーマンス評価を行うことができる。
【0014】
<本発明の第の態様>
本発明の第の態様は、上記した本発明の第の態様において、前記表示装置は、前記スピードの目標波形を表示する、運動状態表示装置である。
【0015】
本発明の第の態様に係る運動状態表示装置によれば、使用者は、実測波形と目標波形とをタイミングごとに比較して把握することができ、パフォーマンス向上に適した運動状態の評価を行うことができる。
【0016】
<本発明の第の態様>
本発明の第の態様は、上記した本発明の第3又は4の態様において、前記表示装置は、前記ストローク量に対する前記負荷の波形を表示する、運動状態表示装置である。
【0017】
本発明の第5の態様に係る運動状態表示装置によれば、スピードの実測波形と負荷の波形とが併せて表示されることにより、使用者は、例えば負荷のピークのタイミングにおいて動作の速度が過剰に低下していないかを可視化することができ、所望のトレーニングにとって適切な動作となっているかを評価することができる。
<本発明の第6の態様>
本発明の第6の態様は、使用者の動作に伴い繰り出されるケーブルと、前記ケーブルのストローク量を測定する測定手段と、前記ケーブルに制動力を付与する磁気粘性流体装置と、前記測定手段の出力値に基づいて算出した前記ケーブルのストローク量に対し前記制動力を制御して前記動作の負荷を変化させる制御ユニットと、前記ケーブルが繰り出される繰り出し速度を前記ケーブルのストローク量に対応させて表示する表示装置と、を備える、運動状態表示装置である。
<本発明の第7の態様>
本発明の第7の態様は、使用者の動作に伴い繰り出されるケーブルと、前記ケーブルのストローク量を測定する測定手段と、前記ケーブルに制動力を付与する磁気粘性流体装置と、前記測定手段の出力値に基づいて算出した前記ケーブルのストローク量に対し前記制動力を制御して前記動作の負荷を変化させる制御ユニットと、前記ケーブルのスピード情報を前記ケーブルのストローク量に対応させて表示する表示装置と、を備える、運動状態表示装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、スポーツの実践的な動作に沿ったパフォーマンス評価を行うことができる運動状態表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係る運動状態表示装置の使用例を示すイメージ図である。
図2】運動状態表示装置の内部構造を示す模式図である。
図3】一連の動作に対応する動作速度及び荷重曲線を示す波形図である。
図4】第2実施形態に係る運動状態表示装置の外観斜視図である。
図5】第3実施形態に係る運動状態表示システムの使用例を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。また、実施の形態の説明に用いる図面は、いずれも構成部材を模式的に示すものであって、理解を深めるべく部分的な強調、拡大、縮小、又は省略などを行なっており、構成部材の縮尺や形状等を正確に表すものとはなっていない場合がある。
【0021】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る運動状態表示装置1の使用例を示すイメージ図である。運動状態表示装置1は、各種スポーツにおける動作に合わせた実践的な負荷を発生させてパフォーマンス評価を行うことができる機器である。本実施形態においては野球のバッティング練習を行う場合の使用例を通して運動状態表示装置1について説明する。
【0022】
運動状態表示装置1は、外観として筐体2の前面に設けられた開口部3からケーブル4が繰り出されるよう構成され、ケーブル4の先端がバットBの芯の近傍位置に接続される。そして、運動状態表示装置1は、詳細を後述するように、使用者のバッティング動作に伴い繰り出されるケーブル4のストローク量に応じて、ケーブル4を引く力に対する抵抗力を付与することで、バットBのスイング過程でトレーニング負荷を変化させたときのスイング速度の波形を表示装置Dに表示する。なお、ケーブル4は、使用者の手首に接続しても良い。
【0023】
尚、運動状態表示装置1は、本実施形態においては、支柱Pの所定の位置に固定されているものとしているが、動作や使用者に合わせて固定位置を変更してもよく、使用形態によっては壁面、天井、又は床面に固定してもよい。
【0024】
図2は、運動状態表示装置1の内部構造を示す模式図である。筐体2の内部には、主に、リール5、回転軸6、ゼンマイバネ7、ロータリエンコーダ8、磁気粘性流体装置9、及び制御ユニット10を備える。
【0025】
リール5は、ケーブル4を巻き取るための円柱状の部材である。回転軸6は、リール5の軸心に固定されている。ゼンマイバネ7は、回転軸6に巻回された帯状金属からなり、内側端部が回転軸6に固定されると共に外側端部が例えば筐体2の内壁面に固定されることで、繰り出されたケーブル4をリール5が巻き取るよう付勢する。
【0026】
ロータリエンコーダ8は、筐体2に固定され、回転軸6を介してリール5の回転状態を検出する。ここで、回転状態は、例えば回転角度の時系列情報であり、ケーブル4が繰り出されるときのストローク量や繰り出し速度の算出に使用される。すなわち、本実施形態では、ケーブル4を巻き取るリール5、及びリール5の回転状態を検出するロータリエンコーダ8により、ケーブル4のストローク量を測定する「測定手段」が構成される。
【0027】
磁気粘性流体装置9は、印加する磁気の大きさを制御することにより、入力される回転力に対して粘性抵抗を作用させる公知のMRFデバイス(Magneto-Rheological Fluid)である。本実施形態においては、磁気粘性流体装置9は、回転軸6を介してリール5の回転に制動力を付与することにより、ケーブル4の繰り出しに負荷をかける。ケーブル4を繰り出す力が働かない状態では制動力が解除され、ゼンマイバネ7の付勢力によりケーブル4がリール5に巻き取られる。
【0028】
制御ユニット10は、例えば公知のマイコン制御回路からなり、ロータリエンコーダ8の出力値に基づいてケーブル4が繰り出される長さ、すなわちストローク量を算出する。また、制御ユニット10は、ケーブル4のストローク量と磁気粘性流体装置9の制動力との関係を示す荷重曲線(図3を参照)を記憶し、動作に伴い変化するストローク量に対して後述する荷重曲線に従った制動力を磁気粘性流体装置9に発生させる。
【0029】
図3は、一連の動作に対応する動作速度及び荷重曲線を示す波形図である。より具体的には、図3の上図は、本実施形態で例示するバッティング動作のフォーム変化を示しており、フォーム変化に対応してケーブル4のストローク量が変化する様子を表している。
【0030】
このとき、運動状態表示装置1の内部では、リール5に巻回されたケーブル4が使用者の動作に伴い繰り出されると共に、ロータリエンコーダ8でリール5の回転状態が検出される。また、制御ユニット10は、リール5の回転状態に基づいてケーブル4のストローク量を測定する(ストローク量測定工程)。更に、制御ユニット10は、算出されたストローク量に対してリール5に制動力を付与して動作の負荷を変化させるよう磁気粘性流体装置9を制御する(負荷変化工程)。
【0031】
そして、制御ユニット10は、ロータリエンコーダ8の出力値に基づいてケーブル4が繰り出されるスピードをストローク量と対応させて算出し、有線又は無線の通信手段(図示を省略)により表示装置Dに送信する。これにより、表示装置Dは、図3の下図における実線で示すように、ケーブル4が繰り出されるスピードの実測波形を表示する(表示工程)。
【0032】
上記した一連の工程を含む運動状態表示方法により、運動状態表示装置1の使用者は、自身の動作のパフォーマンスを表示装置Dで確認することができる。より具体的には、表示装置Dは、図3の下図に示すように、各瞬間のフォームに対応するストローク量[mm]に対し、ケーブル4のスピードがどのように変化するかを波形で可視化する。このため、使用者は、バッティング動作の過程において各タイミングのスイング速度を知ることができる。
【0033】
また、表示装置Dは、スイング速度の実測波形に加え、スピードの目標波形を重ねて表示することもできる。これにより、使用者は、実測波形と目標波形とを比較してパフォーマンス向上に適した運動状態の評価を行うことができる。例えばスイング動作に余計な力みがある場合、実測スピードが目標スピードと比較して立ち上がりのタイミングが早くなり(ΔS)、力が分散してピーク速度が十分に上昇しない(ΔV)という状態を確認することができる。
【0034】
更に、表示装置Dは、スイング速度の波形に加え、磁気粘性流体装置9に発生させる制動力の荷重W[kg]の変化を表す荷重曲線を重ねて表示することもできる。荷重曲線は、ストローク量に対して動作中の使用者が受ける負荷の波形であり、予め動作の種類や特性に合わせて設定される。本実施形態のようなバッティング動作の場合であれば、バットBの振り始めは荷重が低く、図中の(5)で示すインパクトのタイミングで最大負荷Wmaxとなるように波形が設定される。より具体的には、ここでは例えばストローク量=150[mm]となるタイミングで最大負荷Wmax=16[kg]となるような波形を設定しているものとしている。
【0035】
荷重曲線が重ねて表示されることにより、使用者は、例えば負荷のピークのタイミングにおいてスイング速度が過剰に低下していないか(SD)を可視化し、インパクトの瞬間の衝撃に負けないバッティングであるかを評価することができる。
【0036】
尚、荷重曲線は、動作ごとの理論値を基に事前測定を行いつつ設定され、想定する球速や球種等のパラメータによってインパクトポイントにおける最大負荷Wmaxの大きさやピーク位置などの特性を荷重曲線の波形変更として調整することができる。
【0037】
ここで、上記の荷重曲線は、特性の異なる複数のバリエーションの波形として制御ユニット10に記憶させることもでき、又は外部から適宜、荷重曲線データとして受信してもよい。そして、使用者は、自身の動作の過程に沿って負荷の大きさを変化させるよう荷重曲線を選択・調整することにより、目的に合った実践的な動作における運動状態の評価を行うことができる。
【0038】
以上のように、本実施形態における運動状態表示装置1は、ケーブル4のストローク量に基づいて負荷の大きさを変化させることにより、動作フォームが制限されることなく実際の負荷を再現することができる。このため、運動状態表示装置1によれば、スポーツの実践的な動作に沿ったパフォーマンス評価を行うことができる。
【0039】
<第2実施形態>
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る運動状態表示装置11は、上記した第1実施形態の運動状態表示装置1におけるケーブル4の繰り出し部分が第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態と異なる部分について説明することとし、第1実施形態と共通する構成要素については、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0040】
図4は、第2実施形態に係る運動状態表示装置11の外観斜視図である。運動状態表示装置11は、筐体2及びその内部構造が第1実施形態の運動状態表示装置1と略共通し、ケーブル4が繰り出されるケーブル角度θを検出するためのケーブル角度検出部20を筐体2の前面に備える。
【0041】
より具体的には、ケーブル角度検出部20は、本実施形態においてはケーブル4の鉛直方向に延びる角度を検出する機構であり、一対の支持部21、回転部22、突出部23、及び角度センサ24を含む。
【0042】
一対の支持部21は、一端が筐体2の前面に固定され、他端が回転部22に対する水平方向の回転軸となるよう延在する。回転部22は、筐体2の開口部3から延びるケーブル4を挿通する貫通孔が形成され、一対の支持部21に対して回転自在に接続されている。突出部23は、ケーブル角度検出部20に必須の構成ではないが、回転部22の回転変位がケーブル4の延出方向に追従し易くするための部材である。角度センサ24は、例えば上記のロータリエンコーダ8と同様のセンサを使用することができ、支持部21と回転部22との回転角度を検出する。
【0043】
このように、ケーブル角度検出部20は、開口部3から繰り出されるケーブル4の延出方向が使用者の動作に伴い変化した場合に、当該延出方向に追従して回転する回転部22の回転角度を角度センサ24が検出することにより、ケーブル角度θ(-90°<θ<90°)を検出することができる。ケーブル角度θは、運動状態表示装置11の運用期間中は常時、角度センサ24から制御ユニット10へ送信される。
【0044】
これにより、制御ユニット10は、ケーブル4のストローク量に加えて、鉛直方向におけるケーブル角度θを検出することができる。そのため、制御ユニット10は、各瞬間の使用者の動作の状態をより正確に認識することができ、ストローク量及びケーブル角度θに対して磁気粘性流体装置9の制動力を制御して負荷の大きさを変化させることができる。
【0045】
尚、ケーブル角度検出部20の構成はあくまでも一例であり、同様の機能を有する他の構成を採用することができる。また、本実施形態においては、ケーブル角度検出部20により鉛直方向のケーブル角度θを検出できる構成としているが、同様の構成を組み合わせることにより水平方向のケーブル角度φを併せて検出できるようにしてもよい。この場合、運動状態表示装置11は、ストローク量に加えてケーブル角度θ及びケーブル角度φを取得することにより、三次元空間におけるケーブル4の先端の位置を特定することができるため、動作の軌道に合わせてより詳細な負荷の制御を行うことができる。また、運動状態表示装置11は、三次元空間におけるスイング軌道に沿って実測スピードを検出することができる。
【0046】
<第3実施形態>
続いて、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態に係る運動状態表示システム12は、上記した第1実施形態の運動状態表示装置1を複数連係させて使用する点で第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態と異なる部分について説明することとし、第1実施形態と共通する構成要素については、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0047】
図5は、第3実施形態に係る運動状態表示システム12の使用例を示すイメージ図である。運動状態表示システム12は、いずれも第1実施形態の運動状態表示装置1からなる第1運動状態表示装置12a及び第2運動状態表示装置12bを含み、互いに離間して配置されている。また、第1運動状態表示装置12a及び第2運動状態表示装置12bのそれぞれのケーブル4の先端は、本実施形態ではバットBの芯の近傍位置に接続されている。
【0048】
ところで、バッティング動作に必要となる力は、破線で示すバットBのスイング軌道上において、破線矢印のように時々刻々変化する。このため、より実践的な動作に適した負荷も、スイング軌道に沿って方向が変化することになる。
【0049】
そこで、本実施形態における運動状態表示システム12では、第1運動状態表示装置12a及び第2運動状態表示装置12bの荷重曲線をそれぞれWa、Wbで示すように異なる波形に設定し、両者が協働して負荷の方向を変化させる。より具体的には、第1運動状態表示装置12a及び第2運動状態表示装置12bのそれぞれのケーブル4にかける荷重の各瞬間の合成ベクトルが負荷となるようにWa、Wbが設定される。尚、第1運動状態表示装置12a及び第2運動状態表示装置12bのストローク量の差により動作の軌道が算出されている。
【0050】
これにより、第3実施形態に係る運動状態表示システム12によれば、動作の軌道に合わせてケーブル4のストローク量に対する荷重の大きさを第1運動状態表示装置12aと第2運動状態表示装置12bとの間で連係させることにより、より実践的な動作に適した負荷で運動状態を表示することができる。
【0051】
尚、第1運動状態表示装置12a及び第2運動状態表示装置12bは、動作やその軌道に合わせての配置が適宜設定される。また、第1運動状態表示装置12a及び第2運動状態表示装置12bは、それぞれケーブル4の先端をバットBの互いに異なる位置に接続して複雑な負荷を生成してもよい。
【0052】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明は上記した各実施形態に限定されるものではない。例えば、上記の各実施形態では、野球のバッティング動作に使用する形態を例示したが、運動状態表示装置の設置位置及び荷重曲線を適切に設定することにより、野球のピッチング、テニスやゴルフのスイング、ボート競技のオールを漕ぐ操作、バレーボールのアタックといった異なる種目や動作に対しても使用することができる。例えば、ボート競技のオール操作の場合は、オールにおける使用者が握る部位から支点の先にケーブル4を接続し、オールを漕ぐ操作に対して抵抗力を付与する。また、リハビリテーション向けのトレーニング装置にも適用できる。
【0053】
また、上記の各実施形態においては、制御ユニット10がケーブル4のスピード等の情報を表示装置Dに送信して表示させる形態を例示したが、例えば使用者のスマートフォンやタブレット等の携帯端末、スマートウォッチ、スマートグラス、VRゴーグル、ARゴーグル等のウェアラブル端末に送信して表示させてもよい。
【0054】
また、上記の各実施形態では、ケーブル4のストローク量を測定する測定手段として、リール5及びロータリエンコーダ8を使用する形態を例示したが、使用者の動作に伴うケーブル4のストローク量が算出可能であれば他の方法を採用してもよい。例えば、運動状態表示装置1の筐体2に無線通信の親機を設けると共に、ケーブル4の先端側に無線通信の子機を設けることで、親機と子機との間の電波強度や信号伝搬時間の変化等を利用してケーブル4のストローク量を算出してもよい。
【0055】
また、運動状態表示装置1の筐体2において、リール5の回転状態の検出をロータリエンコーダ8に替えてカメラを使用して行なってもよい。この場合、例えば円状に等間隔にマーキングを施した円盤をリール5の回転軸6に設けると共に、カメラで撮影した当該マーキングの読み取り時間の間隔、回転数でケーブル4のストローク量を検知することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 運動状態表示装置
2 筐体
3 開口部
4 ケーブル
5 リール
6 回転軸
7 ゼンマイバネ
8 ロータリエンコーダ
9 磁気粘性流体装置
10 制御ユニット
B バット
P 支柱
D 表示装置
【要約】
【課題】スポーツの実践的な動作に沿ったパフォーマンス評価を行うことができる運動状態表示装置、及び運動状態表示方法を提供する。
【解決手段】運動状態表示装置1は、使用者の動作に伴い繰り出されるケーブル4と、ケーブル4を巻き取るリール5と、リール5の回転状態を検出するロータリエンコーダ8と、リール5に制動力を付与する磁気粘性流体装置9と、ロータリエンコーダ8の出力値に基づいて算出したケーブル4のストローク量に対し制動力を制御して動作の負荷を変化させる制御ユニット10と、ケーブル4が繰り出される繰り出し速度を表示する表示装置Dと、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5