(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】衝撃に耐えるように構成している、電子機器を制御するための制御モジュール
(51)【国際特許分類】
G04G 21/00 20100101AFI20241112BHJP
G04B 43/00 20060101ALI20241112BHJP
G04B 3/04 20060101ALI20241112BHJP
H01H 13/14 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
G04G21/00 304B
G04B43/00 Z
G04B3/04 G
H01H13/14 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023182971
(22)【出願日】2023-10-25
【審査請求日】2023-10-25
(32)【優先日】2022-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・パラスキヴェスク
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-11480(JP,A)
【文献】特開昭61-260510(JP,A)
【文献】実開昭61-202089(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0023142(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04G 21/00
G04B 43/00
G04B 3/04
G04B 37/10
H01H 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストライカー要素(111)を備えるプッシャー(11)と、接続状態とアイドル状態になるように構成しているスイッチ(12)とを備える電子機器の制御モジュール(10)であって、
前記ストライカー要素(111)は、前記プッシャー(11)が作用されたときに前記スイッチ(12)を接続状態又はアイドル状態に動かすように構成しており、
前記制御モジュール(10)は、さらに、弾性的に変形することによって、前記ストライカー要素(111)が前記スイッチ(12)を接続状態又はアイドル状態に動かすときに関与する力の一部を、少なくとも前記力が所定のしきい値よりも大きいときに、吸収するように構成しているショックアブソーバ(116)を備え、
前記ショックアブソーバ(116)は、前記プッシャー(11)の運動方向の延長線上にて、計時器用ムーブメントの構造(21)と前記スイッチ(12)の間に配置されるように意図されており、
前記スイッチ(12)には、フレーム(120)があり、このフレーム(120)に当接するように前記ショックアブソーバ(116)が配置されて、前記ストライカー要素(111)と前記ショックアブソーバ(116)の間に前記スイッチ(12)が配置されるように構成している
ことを特徴とする制御モジュール(10)。
【請求項2】
前記ショックアブソーバ(116)は、ディスクの形態である
ことを特徴とする請求項1に記載の制御モジュール(10)。
【請求項3】
前記スイッチ(12)は、接続端子(122、123)と弾性ブレード(121)を備え、前記接続端子(122、123)と前記弾性ブレード(121)はともに前記フレーム(120)に固定されており、
前記弾性ブレード(121)は、前記スイッチ(12)が接続状態のときには、前記接続端子(122、123)間を接触させる接続位置に動かされており、また、前記スイッチがアイドル状態のときには、前記接続端子(122、123)間の接触を防ぐアイドル位置に動かされており、
前記ショックアブソーバ(116)は、少なくとも1つの前記接続端子(122、123)に対向するように配置されて、前記接続端子(122、123)が前記ショックアブソーバ(116)と前記ストライカー要素(111)の間に配置されるようにされる
ことを特徴とする請求項1に記載の制御モジュール(10)。
【請求項4】
前記プッシャー(11)には、プッシャー頭部(110)があり、前記プッシャー頭部(110)に、ガイドチューブ(113)内にて摺動可能に係合するプッシャーロッド(112)が接続され、
前記プッシャー(11)には、前記ストライカー要素(111)が固定される自由端があり、
前記プッシャー(11)は、前記プッシャー頭部(110)と前記ガイドチューブ(113)の間に配置されて前記プッシャー(11)をアイドル位置の方へと動かすばね(114)を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の制御モジュール(10)。
【請求項5】
前記ストライカー要素(111)には、前記プッシャー(11)の運動方向に直交する方向に延在している半径方向の寸法を有する、実質的に円筒状の形である本体があり、
前記半径方向の寸法は、前記ストライカー要素(111)が配置される前記ガイドチューブ(113)の端の外径よりも小さい
ことを特徴とする請求項4に記載の制御モジュール(10)。
【請求項6】
電子式の計時器用ムーブメントが収容されるケースを備える携行型時計であって、
前記携行型時計は、請求項1に記載の制御モジュール(10)を備え、
前記プッシャー(11)は、前記ケースにあるミドル部(20)を通して係合し、
前記スイッチ(12)は、前記計時器用ムーブメントの構造(21)に固定される
ことを特徴とする携行型時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の分野に関し、特に、電子機器の機能を制御するためのメンバーに関する。
【0002】
特に、本発明は、衝撃に耐えるように構成している電子機器を制御するための制御モジュールに関する。
【0003】
有利なことに、本発明は、特に、携行型の電子機器、例えば、電子式の携行型時計(例、腕時計、懐中時計)に適している。
【背景技術】
【0004】
電子機器を制御するためのメンバーは、一般的には、機能を実行するための命令の送信などために電流を流すことを可能にしたり防いだりするように構成しているスイッチからなる。
【0005】
特に、電流を流すことを可能にしたり防いだりするために、スイッチは、アイドル位置と接続位置になるように設計されており、ユーザーの操作によってこれらの位置のうちの少なくとも1つに動かされる。
【0006】
特に、弾性ブレードを覆うフレキシブルな膜を備えるスイッチが知られており、この弾性ブレードは、ユーザーが作用したときには、すなわち、力が与えられたときには、接続端子どうしを接続し、休み状態であるときには端子間の接続を防ぐように構成している。
【0007】
電子機器は、多くの場合、ユーザーによって操作されて、ストライカーを利用して、スイッチのフレキシブルな膜と接触して、弾性ブレードを接続位置にするように変形させるように構成しているプッシャーを備える。
【0008】
電子装置がプッシャーにおいて衝撃を受けると、弾性ブレードは、与えられた力の影響によって塑性変形してしまうことがあり、このために、不可逆的な損傷を受けてしまうリスクがある。
【0009】
この問題を避けるための1つの手法として、ストライカーの接触面の寸法を大きくして、伝達される力を最大限分散させて、弾性ブレードが受ける圧力を減らすことを伴うものがある。
【0010】
しかし、この手法は、計時器の分野のようなマイクロ電子やマイクロメカニカル分野などにおいて、寸法が重要な設計上の制約となるアプリケーションにおいては利用できない場合がある。
【0011】
また、製造上の制約などのために、この手法を実行することができない場合がある。
【0012】
別の手法として、フレキシブルな膜に付加的な厚みを与えるものがあり、この膜は、一般的に、シリコーンによって作られており、この付加的な厚みは、衝撃を受けたときに弾性的に変形して力を吸収するように設計されている。
【0013】
しかし、このような付加的な厚みは、例えば、スイス時計工業規格NIHS 91-30で規定されているように5000Gの減速に対応する衝撃が発生させるような大きい力を吸収するためには適していない。なぜなら、この場合、フレキシブルな膜が、受けた力の影響によって大きく変形してしまい、その力を弾性ブレードと端子に伝達し、それらが塑性変形してしまうからである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、前記課題に対処するために、ストライカー要素を備えるプッシャーと、接続状態とアイドル状態になるように構成しているスイッチとを備える電子機器の制御モジュールに関し、前記ストライカー要素は、前記プッシャーが作用されたときに前記スイッチを接続状態又はアイドル状態に動かすように構成しており、前記制御モジュールは、さらに、弾性的に変形することによって、前記ストライカー要素が前記スイッチを接続状態又はアイドル状態に動かすときに関与する力の一部を、少なくとも前記力が所定のしきい値よりも大きいときに、吸収するように構成しているショックアブソーバを備える。
【0015】
したがって、本発明において、スイッチとして、有利なことに、標準的な市販のコンポーネントを用いることができる。
【0016】
特定の実装形態において、本発明は、さらに、単独で、又は任意の技術的に可能な組み合わせに従って、以下の特徴のうちの1つ又は複数を備えることができる。
【0017】
特定の実装形態において、前記ショックアブソーバは、ディスクの形態である。
【0018】
特定の実装形態において、前記ショックアブソーバは、前記プッシャーの運動方向の延長線上にて、計時器用ムーブメントの構造と前記スイッチの間に配置されるように意図されている。
【0019】
特定の実装形態において、前記スイッチには、フレームがあり、このフレームに当接するように前記ショックアブソーバが配置されて、前記ストライカー要素と前記ショックアブソーバの間に前記スイッチが配置されるように構成している。
【0020】
特定の実装形態において、前記スイッチは、接続端子と弾性ブレードを備え、前記接続端子と前記弾性ブレードはともに前記フレームに固定されており、前記弾性ブレードは、前記スイッチが接続状態のときには、前記接続端子間を接触させる接続位置に動かされており、また、前記スイッチがアイドル状態のときには、前記接続端子間の接触を防ぐアイドル位置に動かされており、前記ショックアブソーバは、少なくとも1つの前記接続端子に対向するように配置されて、前記接続端子が前記ショックアブソーバと前記ストライカー要素の間に配置されるようにされる。
【0021】
特定の実装形態において、前記プッシャーには、プッシャー頭部があり、前記プッシャー頭部に、ガイドチューブ内にて摺動可能に係合するプッシャーロッドが接続され、前記プッシャーには、前記ストライカー要素が固定される自由端があり、前記プッシャーは、前記プッシャー頭部と前記ガイドチューブの間に配置されて前記プッシャーをアイドル位置の方へと動かすばねを備える。
【0022】
特定の実装形態において、前記ストライカー要素には、前記プッシャーの運動方向に直交する方向に延在している半径方向の寸法を有する、実質的に円筒状の形である本体があり、前記半径方向の寸法は、前記ストライカー要素が配置される前記ガイドチューブの端の外径よりも小さい。
【0023】
別の態様において、本発明は、電子式の計時器用ムーブメントが収容されるケースを備える携行型時計に関し、前記携行型時計は、前記制御モジュールを備え、前記プッシャーは、前記ケースにあるミドル部を通して係合し、前記スイッチは、前記計時器用ムーブメントの構造に固定される。
【0024】
添付の図面を参照しながら例として与えられる以下の詳細な説明を読むことによって、本発明の他の特徴及び利点が明確になる。なお、図面は必ずしも縮尺が一致するように描かれているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明によってカバーされていない例示的な形態に係る制御モジュールを備える、電子式の計時器用ムーブメントが収容されている携行型時計のミドル部の概略断面図と制御モジュールのスイッチの詳細断面図を示している。
【
図2】本発明の例示的な実施形態に係る制御モジュールを備える、電子式の計時器用ムーブメントが収容されている携行型時計のミドル部の断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図2に示しており本明細書において説明する本発明の例示的な実施形態において、本発明は、計時器の分野に適用されている。特に、本発明は、制御モジュール10に関し、ここでは、この制御モジュール10は、携行型時計のケース内に収容される電子式の計時器用ムーブメントに配置され、このケースには、ミドル部20があり、ユーザーなどの要求に応じて機能を制御するように意図されている。
【0027】
図1及び2に示しているように、制御モジュール10は、ユーザーによって作用されるように意図されておりA-A方向に並進運動することができるプッシャー11を備える。図面に示している特定の例において、プッシャー11は、ユーザーがアクセスできるように、ミドル部20を通して係合する。代わりに、プッシャーは、回転可能であることができ、あるいはより一般的には、任意のタイプの運動を行うことができる。
【0028】
また、制御モジュール10は、ユーザーがプッシャー11に作用してアクチュエートされるように意図されたスイッチ12を備える。特に、スイッチ12は、接続状態とアイドル状態になるように構成しており、プッシャー11は、前記スイッチ12をアクチュエートしたときに、前記スイッチ12を動かして前記状態のうちの一方又は他方にするように構成している。
【0029】
本発明によってカバーされない例示的な形態についての
図1の詳細図において概略的に示しているように、スイッチ12には、導電性材料によって作られた弾性ブレード121と、接続端子122及び123とが固定されるフレーム120があることができる。
図1の詳細図にてわかるように、スイッチ12は、プッシャー11の運動方向上に配置される、すなわち、方向A-Aと整列して配置される、「中央端子」122と呼ばれる接続端子と、1つ又は複数の周部端子123とを備えることができる。好ましくは、弾性ブレード121は、ユーザーがプッシャー11に作用したときに、中央端子122と周部端子123の間を接触させる接続位置となるように構成している。
【0030】
特に、ユーザーがプッシャー11に作用しているときには、プッシャー11は、弾性ブレード121に圧力を与えて、弾性ブレード121を変形させて不安定な平坦位置にし、この平坦位置においては、弾性ブレード121は中央端子122と周部端子123のすべてと接触している。また、弾性ブレード121は、ユーザーがプッシャー11に作用していないときには、安定したアイドル位置となるように構成しており、このアイドル位置においては、弾性ブレード121は、中央端子122と周部端子123の間の接触を防ぐ。
図1の詳細図に示しているように、弾性ブレード121は、このアイドル位置にあるときには、曲がっていることができ、これによって、弾性を有するように予応力が与えられる。
【0031】
また、スイッチ12は、弾性ブレード121を覆うフレキシブルな膜124を備えることができ、プッシャー11が作用されているときに、そのフレキシブルな膜124にプッシャー11が支えられることが意図されている。しかし、このフレキシブルな膜124は、本発明にとって必須ではない。
【0032】
プッシャー11は、ミドル部20の外側まで延在しユーザーによって操作されるように意図されたプッシャー頭部110がある。また、プッシャー11は、ミドル部20の貫通開口内にて固定されるガイドチューブ113内にて摺動可能に係合されるプッシャーロッド112を利用してプッシャー頭部110に接続されるストライカー要素111を備える。例えば、ストライカー要素111は、プッシャーロッド112にねじ込まれたり、当業者の能力の範囲内で任意の適切な手段によって固定されたりする。
【0033】
ガイドチューブ113には、第1の端にて、ミドル部20における貫通開口に係合することに関与する第1の部分があり、第2の端にて、第1の部分の外径よりも大きい外径を有する第2の部分があって、これによって、第1の部分と肩部を形成する。
図1に示しているように、ガイドチューブ113は、この肩部を利用してミドル部20に当接するように構成している。プッシャー11は、圧縮状態ではたらくばね114を備え、このばね114は、プッシュ頭部110とガイドチューブ113の肩部の間に配置されてプッシャー11をアイドル位置に動かす。
【0034】
図1に示しているように、プッシャー11がそのアイドル位置となっているときに、ストライカー要素111は、ガイドチューブ113の第1の端に当接して休む。
【0035】
ストライカー要素111には、方向A-Aに直交する方向に半径方向の寸法が延在している実質的に円筒状の形の本体があり、この半径方向の寸法は、有利なことに、ガイドチューブ113の第1の部分の外径よりも小さい。この特徴のおかげで、プッシャーロッド112に対するストライカー要素111の組み付けが容易になる。なぜなら、プッシャー11が携行型時計のミドル部20に固定される前、すなわち、プッシャー11が前記ミドル部20における貫通開口に係合する前に、ストライカー要素111を装着することができるからである。
【0036】
図1に示しているこの例示的な形態において、ストライカー要素111の本体には、ユーザーがプッシャー11に作用したときに弾性ブレード121に圧力を直接的又は間接的に与えて、接続位置となるまで弾性ブレード121を変形させるように意図された当接面がある。
【0037】
有利なことに、制御モジュール10は、プッシャー11がスイッチ12をアクチュエートするときに関与する力の一部を、少なくとも前記力が所定のしきい値よりも大きいときに、弾性変形することによって吸収するように構成しているショックアブソーバ116を備える。したがって、ショックアブソーバ116は、エラストマーのような弾性変形可能な材料によって形成され、又は圧縮ばねのような弾性変形可能な構造を有する。
【0038】
図1に示している例示的な形態において、ショックアブソーバ116は、ストライカーがスイッチ12を接続状態又はアイドル状態に動かすときに、スイッチを圧縮するように支持面上に配置される。特に、プッシャー11が作用されたときに、ショックアブソーバ116は、スイッチ12に圧力を与えて、スイッチ12を接続状態又はアイドル状態に動かす。この例示的な実施形態において、ショックアブソーバ116は、好ましくは、関与する力のわずかではない部分を吸収しつつ、これらの力の別の部分をスイッチ12に伝達してスイッチ12に状態を変化させるための適切な厚みを有するディスクの形態である。
【0039】
図2に示している本発明の例示的な実施形態において、ショックアブソーバ116は、方向A-Aの延長線上にて、計時器用ムーブメントの構造21とスイッチ12の間に配置される。したがって、スイッチ12は、ショックアブソーバ116とプッシャー11の間に配置される。すなわち、ショックアブソーバ116は、プッシャー11に対向している側がスイッチ12の前側と考えると、スイッチ12に対向するようにスイッチ12の後ろ側に配置される。
【0040】
したがって、スイッチ12が過度の力を受けた場合、ショックアブソーバ116において局所的に動かす又は変形して、スイッチ12によって伝達される力の一部を吸収するようにすることによって、これらの力の一部を伝達することができる。
【0041】
本発明について、携行型時計によって形成される電子機器に対する本発明のアプリケーションに関連して説明した。しかし、当然、本発明は、このアプリケーションに限定されず、有利なことに、携行可能かどうかにかかわらず、他の任意の電子機器とともに用いることができる。
【0042】
一般的には、上において検討した実装形態や実施形態は、例として説明しており、したがって、他の変異形態も可能である。
【符号の説明】
【0043】
10 制御モジュール
11 プッシャー
12 スイッチ
20 ミドル部
21 構造
110 プッシャー頭部
111 ストライカー要素
112 プッシャーロッド
113 ガイドチューブ
114 ばね
116 ショックアブソーバ
120 フレーム
121 弾性ブレード
122 中央端子
123 周部端子