(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】電気手術強化穿刺を備えたEUSアクセス装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/34 20060101AFI20241112BHJP
A61B 18/14 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
A61B17/34
A61B18/14
(21)【出願番号】P 2023183507
(22)【出願日】2023-10-25
(62)【分割の表示】P 2022513522の分割
【原出願日】2020-11-24
【審査請求日】2023-10-25
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】スコット、セレナ
(72)【発明者】
【氏名】ベニング、クリストファー エイ.
(72)【発明者】
【氏名】キャラハン、デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン、カトリーナ
【審査官】近藤 裕之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0211176(US,A1)
【文献】特開平7-265329(JP,A)
【文献】米国特許第7077842(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0374281(US,A1)
【文献】米国特許第5403311(US,A)
【文献】特表2010-523171(JP,A)
【文献】特開2019-111336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/34
A61B 18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセス装置であって、
内部を貫通して延びるルーメンを含み、且つ内視鏡シャフト内を通過して生体内の標的組織まで延びるサイズおよび形状を有するカテーテル
であって、鋭利でない遠位端を含み、前記鋭利でない遠位端は、前記鋭利でない遠位端から近位側に延びる前記カテーテルの部分に対してJ字型の曲線を呈するように付勢されている、カテーテルと、
前記カテーテルの
前記ルーメン内を通過
するサイズおよび形状を有し、前記カテーテルの
前記鋭利でない遠位端から
選択されたセットバックだけ遠位側に
向かって外側に延びるように構成された穿刺具
であって、前記穿刺具は、前記穿刺具が前記カテーテルの前記鋭利でない遠位端から遠位側に延伸されたときに、前記カテーテルの前記鋭利でない遠位端を直線状に伸ばすのに十分な剛性を有しており、前記アクセス装置は、前記カテーテルの前記鋭利でない遠位端および前記穿刺具の遠位端のいずれかに形成された第1の電極を含み、前記第1の電極は、前記標的組織の穿刺を容易にするために、前記カテーテルの前記鋭利でない遠位端および前記穿刺具の前記遠位端のいずれかに接触する組織にエネルギーを付与するように構成されている、穿刺具と
、
を含む、
アクセス装置。
【請求項2】
前記穿刺具が前記カテーテルから除去され、前記鋭利でない遠位端が前記J字型の曲線に戻ったときに、ユーザが前記カテーテルの前記鋭利でない遠位端の遠位開口部を前記標的組織内の所望の方向に指向可能であるように、前記カテーテルの前記鋭利でない遠位端は、前記カテーテルの長手方向軸を中心として回動可能である、請求項1に記載のアクセス装置。
【請求項3】
前記アクセス装置が前記標的組織を穿刺するときに、前記カテーテルの前記遠位端が前記穿刺具とともに前記標的組織内に進行され得るように、前記穿刺具は、前記カテーテルに結合されている、請求項1または2に記載のアクセス装置。
【請求項4】
前記第1の電極は、前記カテーテルの前記鋭利でない遠位端に形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のアクセス装置。
【請求項5】
前記カテーテルの前記遠位端とハンドルの遠位端との間の前記カテーテルの近位部は、非導電性材料で形成されており、前記第1の電極をユーザがアクセス可能なアクチュエータに接続する導線をさらに備える、請求項4に記載のアクセス装置。
【請求項6】
組織の穿刺を容易にするために、前記穿刺具の前記遠位端に接触する組織にエネルギーを付与するように構成された、前記穿刺具の前記遠位端に形成された第2の電極をさらに備える、請求項4に記載のアクセス装置。
【請求項7】
前記穿刺具から前記カテーテルを電気的に絶縁する絶縁層をさらに備える、請求項5に記載のアクセス装置。
【請求項8】
前記カテーテルの外側に沿って長手方向に摺動可能な電気手術シースであって、前記標的組織において前記アクセス装置によって形成されたアクセス孔を拡張するように構成された電気手術先端部を有する電気手術シースをさらに備える、請求項6に記載のアクセス装置。
【請求項9】
長さ調整部と、
前記穿刺具および前記カテーテルを前記アクセス装置のシースから遠位側に向かって外側に進行させるように構成された穿刺アクチュエータと、
前記カテーテル上で前記シースを遠位側に進行させて、前記シースの前記電気手術先端部を介して前記標的組織にエネルギーを付与するために、前記穿刺アクチュエータ上に摺動可能に取り付けられた電気手術スレッドと、
穿刺アクチュエータロックと、
前記カテーテルに対して所望の位置に前記シースの位置をロックするための電気手術スレッドロックと、
電気エネルギー源に接続するように構成された、前記電気手術スレッド上の第1のジェネレータ接続部と、
を含むハンドルをさらに備える、請求項8に記載のアクセス装置。
【請求項10】
前記ハンドルは、前記電気エネルギー源に接続するように構成された、前記穿刺アクチュエータ上の第2のジェネレータ接続部をさらに含む、請求項9に記載のアクセス装置。
【請求項11】
電気エネルギー源に接続するように構成された、前記ハンドル上の第3のジェネレータ接続部をさらに備え、前記第3のジェネレータ接続部は、前記第2の電極に電気的に接続されている、請求項9に記載のアクセス装置。
【請求項12】
内部を貫通して延びるルーメンを含み、且つ内視鏡シャフト内を通過して生体内の標的組織まで延びるようなサイズおよび形状を有する
アクセス装置のカテーテル
であって、J字型の曲線を呈するように付勢された鋭利でない遠位端を有するカテーテルと、
前記カテーテルの
前記ルーメン内を通過して前記カテーテルの遠位端から遠位
側に
向かって外側に延びるようなサイズおよび形状を有する穿刺具と、
前記カテーテル
および前記穿刺具の
いずれかの遠位端に形成された第1の電極であって、前記第1の電極は、前記アクセス装置のハンドル上のアクチュエータを介して通電可能であるとともに、前記アクセス装置による組織の穿刺を容易にするために、前記穿刺具の前記遠位端および前記カテーテルの前記鋭利でない遠位端のいずれかに接触する組織を穿刺するように構成されている第1の電極と
、
を備える、システム。
【請求項13】
前記カテーテルの外側に沿って長手方向に摺動可能な電気手術シースであって、前記標的組織において前記アクセス装置によって形成されたアクセス孔を拡張するように構成された電気手術先端部を有する電気手術シースをさらに備える、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記穿刺具が前記カテーテルの前記鋭利でない遠位端から除去されたときに、前記カテーテルの前記鋭利でない遠位端の遠位開口部を前記標的組織内の所望の方向に指向するように、前記カテーテルの前記遠位端は、前記カテーテルの長手方向軸を中心として回動可能である、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
第1および第2のジェネレータ接続部を含むハンドルをさらに備え、前記第1のジェネレータ接続部は、電気エネルギー源を前記第1の電極に接続するように構成されており、前記第2のジェネレータ接続部は、電気エネルギー源を前記電気手術シースの前記電気手術先端部に接続するように構成されている、請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膵胆道系などの生体構造にアクセスするための超音波内視鏡(EUS:endoscopic ultrasound)アクセス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
膵胆道系および膵仮性嚢胞などの生体構造にアクセスするために、たとえば超音波ガイド下で超音波内視鏡(EUS)アクセス手技が使用される。ステントを挿入して閉塞をバイパスする手技などの膵胆道アクセス手術は、標的の生体構造が極めて狭いという点で他の種類のアクセス手技とは異なる。EUSアクセス装置の多くは胆道の手術のための操作性が不十分であり、十分な操作性を有する場合であっても、別の困難に直面する場合がある。たとえば、細長い鋭利部を備えた装置は、最初の穿刺孔を容易に形成することができるが、たとえば胆管の反対側または他の非標的組織を貫通するまで鋭利部が過度に延びるリスクがある。
【0003】
さらに、最初の穿刺時に鋭利部の外径に沿ってアクセスカニューレを載せ置く場合、長い鋭利部は、鋭利部を除去した後胆管へのアクセスを維持するためにアクセスカニューレを穿刺孔内で遠位方向に十分な距離に亘って運べない可能性がある。別例では、より太くより短い鋭利部を備えた装置は、不慮の穿刺のリスクを低減し得るが、たとえば、標的組織を穿刺するために必要な力が増すことによって、最初の穿刺がより困難になる場合がある。さらなる別例では、鋭利でないアクセスカニューレは、鋭利な先端部に従って穿刺孔内に入ることができない場合がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、カテーテル内を貫通して延びるルーメンを含み、且つ内視鏡シャフト内を通過して生体内の標的組織まで延びるようなサイズおよび形状に構成されたカテーテルと、カテーテルのルーメン内を通過してカテーテルの遠位端から遠位方向に延びるようなサイズおよび形状に構成された穿刺具とを含む装置に関し、カテーテル及び穿刺具のうちの少なくとも一方は、その上に形成された電極を含み、電極は、穿刺具がカテーテルの遠位端から遠位方向に延びるとき、装置が標的組織を穿刺する際に電極が通電されるように、装置のハンドルから通電し得る。
【0005】
一実施形態では、カテーテルの遠位端は、拘束されていないとき、J字型の曲線を呈するように付勢されている。
一実施形態では、遠位端は、標的組織内の所望の方向に遠位端の遠位開口部を指向するために、カテーテルの長手方向軸を中心として回動可能である。
【0006】
一実施形態では、穿刺具が標的組織を穿刺する際に、カテーテルの遠位端は穿刺具に従って標的組織に入る。
一実施形態では、装置は、カテーテルの外側に沿って長手方向に摺動可能な電気手術シースをさらに含み、電気手術シースは、標的組織において穿刺具によって形成されたアクセス孔を拡張するための電気手術先端部を有する。
【0007】
一実施形態では、穿刺具がカテーテルの遠位端内に延伸したとき、カテーテルの遠位端は直線状にされる。
一実施形態では、電極はカテーテルの遠位端に形成される。
【0008】
一実施形態では、カテーテルの遠位端とハンドルの遠位端との間のカテーテルの近位部は、非導電性材料から形成されており、電極をハンドルに接続する導線をさらに含む。
一実施形態では、装置は、穿刺具の遠位端に形成された電極をさらに含む。
【0009】
一実施形態では、電極は、穿刺具の遠位端に形成される。
一実施形態では、装置は、電極の近位端から穿刺具の近位端まで穿刺具に沿って延びる絶縁層をさらに含む。
【0010】
一実施形態では、ハンドルは、長さ調整部と、鋭利部ハブと、穿刺具とカテーテルとを装置のシースから外方に遠位方向に進める穿刺アクチュエータと、カテーテル上で遠位方向にシースを進めて、シース上に形成された電極を用いて標的組織にエネルギーを付与するために、穿刺アクチュエータ上に摺動可能に取り付けられた電気手術スレッドと、穿刺アクチュエータロックと、カテーテルに対して所望の位置にシースの位置をロックするための電気手術スレッドロックと、電気エネルギー源に接続するように構成された、電気手術スレッド上の第1のジェネレータ接続部と、をさらに含む。
【0011】
一実施形態では、ハンドルは、電気エネルギー源に接続するように構成された、穿刺アクチュエータ上に設けられた第2のジェネレータ接続部および、電気エネルギー源に接続するように構成された、鋭利部ハブ上に設けられた第3のジェネレータ接続部のうちの少なくとも一方をさらに含む。
【0012】
本発明は、カテーテル内を貫通して延びるルーメンを含み、且つ内視鏡シャフト内を通過して生体内の標的組織まで延びるようなサイズおよび形状に構成されたカテーテルと、カテーテルのルーメン内を通過してカテーテルの遠位端から外方に遠位方向に延びるようなサイズおよび形状に構成された穿刺具と、カテーテル及び穿刺具のうちの少なくともいずれか一方が、その上に形成された電極を含み、電極は、穿刺具がカテーテルの遠位端から外方に遠位方向に延びるとき、装置が標的組織を穿刺する際に電極が通電されるように、装置のハンドルから通電可能であることと、カテーテルの外側に沿って長手方向に摺動可能な電気手術シースであって、標的組織において穿刺具によって形成されたアクセス孔を拡張するための電気手術先端部を有する電気手術シースと、を含むシステムにも関する。
【0013】
一実施形態では、遠位端は、標的組織内の所望の方向に遠位端の遠位開口部を指向するために、カテーテルの長手方向軸を中心として回動可能である。
さらに、本発明は、カテーテルのルーメン内を通過して穿刺具を延ばす工程であって、カテーテルは内視鏡シャフト内を通過して生体内の標的組織まで延伸するようなサイズ及び形状に構成されており、カテーテル及び穿刺具のうちの少なくとも一方がその上に形成された電極を含む、前記カテーテルのルーメン内を通過して穿刺具を延ばす工程と、電極を通電する工程と、穿刺具で標的組織を穿刺する工程と、標的組織内で穿刺具によって形成されたアクセス孔内を通過して遠位方向にカテーテルを進める工程と、カテーテルの遠位端を超えてルーメン内を通過して近位方向に穿刺具を後退させる工程と、を備える方法に関する。
【0014】
一実施形態では、方法は、カテーテルの外側に沿って電気手術シースを摺動する工程であって、電気手術シースが電気手術先端部を有する、前記カテーテルの外側に沿って電気手術シースを摺動する工程と、電気手術先端部をアクセス孔の周囲の組織に接触するように配置する工程と、アクセス孔を拡張する為に電流を付与する工程とをさらに備える。
【0015】
一実施形態では、方法は、カテーテルに対して所望の部位に電気手術シースをロックする工程をさらに含む。
一実施形態では、方法は、標的組織内の所望の方向にカテーテルの遠位端の遠位開口部を指向するために、カテーテルの長手方向軸を中心としてカテーテルの遠位端を回動させる工程をさらに含む。
【0016】
一実施形態では、電極はカテーテルの遠位端に形成される。方法は、穿刺具で標的組織を穿刺するのに先立ち、穿刺具の遠位端に形成された電極に通電する工程をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2a】長い鋭利部を備えた内視鏡アクセス装置を示す図。
【
図2b】短い鋭利部を備えた内視鏡アクセス装置を示す図。
【
図2c】鋭利部と、J先端部との間で過度なずれが形成された内視鏡アクセス装置を示す図。
【
図3】EUSアクセス手技において高温穿刺のために通電され得る、露出した金属端部を有するマイクロカテーテルの遠位先端部を示す図。
【
図4】EUSアクセス手技において高温穿刺のために通電され得る、露出した金属端部を有する鋭利部を示す図。
【
図5】EUSアクセス手技を制御するためのハンドルを示す図。
【
図6】EUSアクセス手技において高温穿刺のために通電され得る、鋭利でない端部を有する、穿刺吸引(FNA:fine needle aspiration)針を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、同様の要素に同一の参照番号が付されている以下の説明および添付の図面を参照することによってさらに理解できる。例示的な実施形態は、効果的な穿刺と、穿刺力が低くかつ標的組織へのアクセスが失われるリスクが低いJ先端部の配置と、のための高温鋭利部およびJ先端部のうちの少なくともいずれか一方を有するEUSアクセス装置を説明する。本明細書において、用語「高温」とは、電気手術的に作動している要素を指す。高温の要素は、作動しているとき、標的組織の電気抵抗により標的組織を加熱、沸騰させて標的組織が切開されて拡張されるように、標的組織に電流を流す際、標的組織を比較的非加熱にしつつ組織に電流を流すように設計される。本明細書では、用語「低温」は、電気手術的に作動していない要素を指す。
【0019】
図1a~
図1bは、拘束されていないときに常態姿勢であるJ字型(J先端部)を呈する可撓性遠位先端部104を有するマイクロカテーテル102(すなわちアクセスカニューレ)を含む例示的なEUSアクセス装置100を示す。尖端部(すなわち鋭利部)を有する穿刺要素106は、鋭利部106を使用して標的組織を穿刺して鋭利部106およびJ先端部104が標的の生体構造内にともに進められるように鋭利部106がJ先端部の遠位端から所望の距離だけ遠位側に延びるまで、可撓性のJ先端部104が鋭利部106の剛性によって直線状をなすように、マイクロカテーテル102のルーメン内を通過して進められる。
【0020】
鋭利部106がJ先端部104内に挿入されたとき、鋭利部106の遠位先端部がJ先端部104の遠位端を超えて遠位側に突出する距離108を、「セットバック」と呼ぶ。所望のとおりにJ先端部104および鋭利部106を標的の生体構造内に進めた後、
図1bに示すように、J先端部104から近位方向に鋭利部106を引き出してJ先端部104を解放して、その湾曲したJ字型に戻す。次に、マイクロカテーテル102のルーメン内を通って、J先端部104の遠位端から標的生体構造内にガイドワイヤを挿入する。ガイドワイヤをマイクロカテーテル102に挿入する前、挿入する間、または挿入した後に、J先端部104を回動させて、標的の生体構造内でJ先端部104の遠位開口部を所望の方向に指向し得る。
【0021】
たとえば、標的の生体構造が胆管の場合、マイクロカテーテル102のルーメンの遠位開口部が、胆管の上流、または胆管の小腸への出口に向かって下流に面するようにJ先端部104を回動させ得る。J先端部104が所望の方向に向けられたとき、ガイドワイヤは、マイクロカテーテル102内を通過して、J先端部104の遠位端で開口部を出て、胆管に沿って所望の距離だけ所望の方向にJ先端部104の外方に延びる。この時点で、電気手術先端部112を有する可撓性電気手術シース110を、マイクロカテーテル102およびJ先端部104上に進めて、マイクロカテーテル102が小腸を出る孔および、マイクロカテーテル102が標的の胆管に入る孔を拡張し得る。電気手術先端部は、アクセス孔(瘻孔)を、たとえば1.7mm~3.7mm(5~11フレンチ(Fr))まで拡張し得る。電気手術先端部の電極は、先端部が、さらなる手術(たとえば閉塞をバイパスするためにその内部にステントを配置する)のために孔を切開して拡張して標的の生体構造へのアクセスを容易にするために、孔への入口および孔内に配置されたときに作動させ得る。
【0022】
鋭利部106は、一般に、生体構造内を通ってより大きい直径のJ先端部104が押し込まれ得るように、生体構造に開始孔を形成するために用いられ、鋭利部106を除去したとき、J先端部104は、標的の生体構造内の穿刺孔を通って堅固に挿入される。しかしながら、この操作を行うとき、様々な問題が生じ得る。
【0023】
たとえば、細く長い鋭利部201を有するアクセス装置200は、
図2aに示すように、組織203を容易に穿刺することができ、つまり、孔を形成するために必要な穿刺力を低減できる。しかしながら、鋭利部201の遠位先端部とJ先端部202の遠位端との間のセットバックが長い場合には、J先端部202が穿刺孔に堅固に挿入される前に、鋭利部を組織203内にさらに押し込む必要がある。したがって、細く長い鋭利部201を使用する場合は、鋭利部201を遠位方向に押し込みすぎて、最初に穿刺した組織203に対して遠位側の組織204を不注意に穿刺するリスクがある。逆に、長い鋭利部201が、J先端部202を堅固に固定するほど十分な距離だけ押し込まれていない場合には、鋭利部201を除去したとき、J先端部202が穿刺孔から後退して穿刺孔から脱落する可能性がある。
【0024】
別例では、より太くより短い鋭利部211を有するアクセス装置210は、
図2bに示すように、最初に穿刺した組織213に対して遠位側の組織214を不慮に穿刺するリスク、またはJ先端部212が穿刺孔から脱落するリスクを低減し得る。しかしながら、このような太い鋭利部211を含む装置で標的組織を穿刺するために必要な力は、細く長い鋭利部で必要される力と比較して増加する。
【0025】
さらに別例では、アクセス装置220は、
図2cに示すように、鋭利部221を組織223を貫通して進めたとき、生体構造の壁に当たるJ先端部222を有するため、鋭利な先端部221とJ先端部222との間にずれが生じてJ先端部222を組織壁に押し付けたとき、組織223を遠位方向に押す(すなわちテンティングする)可能性がある。鋭利でない、または先細りが乏しいJ先端部を使用した場合に、テンティングが生じ得る。端部がより鋭利なJ先端部を使用した場合には、ガイドワイヤを指向するために管内でJ先端部を回動させたときに周辺組織を損傷するリスクがある。
【0026】
例示的な実施形態は、上記問題に対処する、高温穿刺のための1つ以上の通電された要素を有するEUSアクセス装置について説明する。エルベ社(Erbe)のジェネレータなどの電気手術用ジェネレータを用いて、装置にRF切開用電流を付与して、穿刺用先端部を低い穿刺力で組織内に容易に通過させることができる。装置は、
図1a~
図1bで説明した装置とほぼ同様であるが、以下に示す変更を有する。
【0027】
図3は、EUSアクセス手技において高温穿刺のために通電され得る、露出した金属端部302を有するマイクロカテーテルの遠位先端部300(J先端部)を(直線状形態で)示す。所望のとおりにガイドワイヤを指向するためにJ先端部300が(湾曲した形態で)管内で回動される際の周辺組織への外傷を最小限にするために、金属端部302は鋭利でない。当業者には理解されるように、遠位先端部300には、任意の鋭利部を使用してもよい。しかしながら、必要な穿刺力を増加させずに、より短い鋭利部を使用してもよい。上記のように、短い鋭利部を有する、低温の鋭利でないJ先端部を使用するためには、増加した穿刺力を必要とする。しかしながら、高温の鋭利でないJ先端部は、比較的低い穿刺力で穿刺することが示されている。この実施形態では、高温の鋭利でないJ先端部は、おおよそ0.5mmの最小セットバックを有する。
【0028】
マイクロカテーテルが全て金属製の場合、露出した金属端部302を除いたマイクロカテーテル全体は、非標的組織(すなわち標的部位以外の組織)の加熱または切開を防止するために絶縁される。露出した金属端部302は、たとえば、切開時に標的部位への熱的損傷を最小限にするために、長さが約1mm未満であってもよい。高温のJ先端部300の露出した金属端部302は、ハンドルに配線してもよく、マイクロカテーテルの残りの部分は、別の電気絶縁性コーティングの必要性のない、異なる非導電性材料で形成されてもよい。
【0029】
図4は、EUSアクセス手技において高温穿刺のために通電し得る、露出した金属端部402を有する鋭利部400を示す。露出した金属端部402は、短く尖った先端部であってもよいし、または比較的鋭利でないものであってもよい。金属端部402が尖っている場合、鋭利部400は、低温穿刺用に使用し得る。しかしながら、試みた低温穿刺ができなかった場合に、使用者は、高温穿刺のために、露出した金属端部402に通電する選択肢を有する。
【0030】
高温のJ先端部300と同様に、露出した金属端部402がその長手方向に沿って(露出した金属端部402を除いて)まだ絶縁されているとき、高温鋭利部400は、同一の導電性材料(たとえば金属)の可撓性シャフトを有していてもよい。鋭利部400とともに使用されるアクセスカニューレが、高温のJ先端部を有することを意図されていない場合、J先端部は、J先端部を通って鋭利部400からの電気の伝導を防止するために絶縁されていてもよい。代替的には、J先端部は絶縁されずに、アクセス装置は、高温鋭利部および高温J先端部の両方を有していてもよい。この場合、両方の先端部に効果的に通電するために、J先端部または鋭利部の一方だけを電気手術ジェネレータに接続する(ワイヤまたは別の方法で)必要がある。
【0031】
高温鋭利部は、鋭利でない低温J先端部が瘻孔内を貫通できるように十分に切開するが、両方の先端部に通電することによって穿刺力をさらに減少させ得る。しかしながら、通電するためにJ先端部および鋭利部のうちの一方または両方を選択することは、治療の性質によって異なってもよい。たとえば、高温J先端部は、低温J先端部よりも大きな瘻孔を作成することが示されている。ステントを埋め込むのに先立ち、瘻孔を電気手術拡張器でさらに大きくする必要があることを考慮すれば、より大きな瘻孔は、ステントインプラントなどの手術に影響を及ぼさないであろう。しかしながら、より小さい孔が所望される手術(ランデブー手技など)のために、鋭利部およびJ先端部の両方に通電するよりも、通電した鋭利部と低温J先端部とを用いることが好ましい場合がある。
【0032】
代替的な実施形態では、鋭利部の代わりに、高温の、鋭利でないスタイレットを使用してもよい。スタイレットは、尖った遠位端を有する鋭利部とは対称的に、鋭利でない遠位端を有する。この実施形態では、スタイレットおよびJ先端部は、スタイレット先端部が管の中に通されたとき、アクセスカニューレもまた管の中に通されることを確実にするために、非常に短いセットバック(たとえば2mm)を有していてもよい。この実施形態は、先端部が管の反対側まで延びて不注意に反対側を穿刺するリスクが低いため、より小さな組織を標的化することを可能にする。
【0033】
上記実施形態は、内視鏡下手術を制御するためのハンドルを有する装置を用いて、内視鏡によって実施されてもよい。
図5は、EUSアクセス手術を制御するためのハンドル500を示す。ハンドル500は、近位鋭利部ハブ502から、内視鏡シャフトの近位端のカップリングに取り付ける遠位カラー504まで延びる。鋭利部ハブ502は、鋭利部ハブ502を引っ張って装置から鋭利部を抜き出すことができるように鋭利部に接続されている。鋭利部ハブ502は、電気エネルギー源が装置に接続される、ジェネレータ接続部520を含む。ハンドル500は、内視鏡に連結されたときに電気手術シースの長さが内視鏡の遠位端を超えて遠位側に所望の距離まで延びるように使用者がハンドル500の長さを調整することができる、長さ調整部506を含む(すなわち、長さ調整部を使用して内視鏡からの装置の延伸を達成し得る)。ハンドル500は、穿刺アクチュエータロック510によってロック解除されたとき、J先端部および鋭利部がシース(たとえば
図1で示す電気手術シース110)から遠位方向に進められ、J先端部および鋭利部が所望の深度まで標的組織を貫通することができるように、ハンドル500の基部512上を摺動可能な穿刺アクチュエータ508をさらに含む。穿刺アクチュエータ508は、電気エネルギー源が装置に接続されるジェネレータ接続部522を含む。
【0034】
ハンドル500は、J先端部上でシースを遠位方向に進めて、シースの遠位端で電気手術先端部(
図1に示す電気手術先端部112)を標的組織に接触させて、先端部からエネルギーを付与することにより組織を処置する(たとえば、胃腸管の壁を貫通して形成された開口部及び標的膵胆道系の中への進入開口部の周囲の組織を切開し拡張する)ために、穿刺アクチュエータ508上に摺動可能に取り付けられた電気スレッド514をさらに備える。電気手術スレッド514は、電気エネルギー源が装置に接続されるジェネレータ接続部516を含む。電気手術スレッド514は、電気手術スレッドロック518によって穿刺アクチュエータ508上の所望の位置に維持される。穿刺アクチュエータロック510と同様に、電気手術スレッドロック518は、対応するロックが押し下げられて基部512との接続が解除されて、穿刺アクチュエータ508または電気手術スレッド514が基部512上を摺動可能になるまで基部512上のギヤ付き表面に係合する突出部を含む。
【0035】
ジェネレータ接続部516は、電気手術スレッド514に伝達される電気エネルギーへのカップリングを形成する。ジェネレータ接続部520,522は、上記方法で、それぞれ、鋭利部の金属端部402およびJ先端部マイクロカテーテルの金属端部302のそれぞれにエネルギーを付与する。基部512は、その上に、鋭利部/J先端部の穿刺深度および電気手術シース長さのより優れた制御を提供する深度指示器を備えていてもよい。上記のように、穿刺の理想的な深度は、様々な手術および様々な鋭利部/J先端部の構成によって異なり得る。したがって、ハンドル500は、様々な穿刺深度を有する様々なアクセス装置に適合可能な正確な穿刺深度制御性を有している。
【0036】
図6は、EUSアクセス手術における高温穿刺のために通電され得る、鋭利でない端部602を有する穿刺吸引(FNA)針600を示す。FNA針600は、FNA針の中を通ってガイドワイヤが延びるためのルーメンを有する。鋭利な針とは対称的に、鋭利でない針は、ガイドワイヤを削るリスクがより低くガイドワイヤの指向性を容易にする。鋭利でない端部602は、鋭利でないにもかかわらず、通電したときに生体構造を穿刺することができる。
【0037】
上記通電した穿刺要素はそれぞれ、内視鏡ハンドルから延びる電気手術プラグ、または内視鏡ハンドルに組み込まれた電気手術プラグによって作動させ得る。高温の先端部要素は、内視鏡治療時に任意の時に作動させ得る。したがって、臨床医は、たとえば低温の鋭利な先端部を用いて手術を開始し、低温穿刺ができなかった場合には、高温の先端部を作動させて高温穿刺を行う。
【0038】
当業者には、発明概念から逸脱することなく上記の実施形態に変更を加えてもよいことは理解されるであろう。実施形態の1つに関連する構造的要素および方法を他の実施形態に組み込むことができることもさらに理解されるべきである。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されず、むしろ、変更も、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲に含まれることは理解される。