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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】光学ガラス、プリフォーム及び光学素子
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/068 20060101AFI20241112BHJP
   G02B 1/00 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
C03C3/068
G02B1/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023188630
(22)【出願日】2023-11-02
(62)【分割の表示】P 2017218657の分割
【原出願日】2017-11-13
(65)【公開番号】P2024003105
(43)【公開日】2024-01-11
【審査請求日】2023-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2016234368
(32)【優先日】2016-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000128784
【氏名又は名称】株式会社オハラ
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100160864
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 政治
(74)【代理人】
【識別番号】100158698
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 基樹
(72)【発明者】
【氏名】向川 勝之
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-084235(JP,A)
【文献】国際公開第2010/053214(WO,A1)
【文献】特開2007-022846(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0287906(US,A1)
【文献】特開2015-127281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 3/068
G02B 1/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物基準の質量%で、
La23成分を32.53%~38.0%
WO3成分を0~0.77%、
TiO2成分を20.0%超~45.0%、
BaO成分を5.0%~40.0%、
SiO2成分を0~6.21%、
23成分を6.95%~15.0%未満、
ZnO成分を0~2.27%、及び
Nb25成分を0~7.31%以下
含有し、
SiO2成分とB23成分の合計量が7.0%以上16.50%以下、Ln23成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Ybからなる群より選択される1種以上)の合計が32.53%以上40.0%未満、TiO2/(La23+Nb25+Gd23+Yb23)の質量比が0.501以上0.80以下、TiO2/(TiO2+BaO)の質量比が0.40以上0.90以下であり、
屈折率(nd)が1.998以上、アッベ数(νd)が30.0以下、部分分散比(θg,F)が0.605以上であり、分光透過率が5%を示す波長(λ5)が375nm以下である光学ガラス。
【請求項2】
酸化物基準の質量%で、
23成分 0~5.0%、
Yb23成分 0~5.0%、及び
Gd23成分 0~5.0
である請求項1記載の光学ガラス。
【請求項3】
酸化物基準の質量%で、
(La23+Nb25+Gd23+Yb23)の質量和が35.0%以上47.0%以下である請求項1又は2記載の光学ガラス。
【請求項4】
酸化物基準の質量%で、
Rn2O成分(式中、RnはLi、Na、Kからなる群より選択される1種以上)の質量和が15.0%以下である請求項1から3のいずれか記載の光学ガラス。
【請求項5】
酸化物基準の質量%で、
RO成分(式中、RはMg、Ca、Sr、Baからなる群より選択される1種以上)の質量和が7.0%以上35.0%以下である請求項1から4のいずれか記載の光学ガラス。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか記載の光学ガラスからなるプリフォーム材。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか記載の光学ガラスからなる光学素子。
【請求項8】
請求項7に記載の光学素子を備える光学機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ガラス、プリフォーム及び光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学系を使用する機器のデジタル化や画像・映像の高精細化が急速に進んでいる。特に画像・映像の高精細化は、デジタルカメラやビデオカメラ、プロジェクタ等の光学機器で顕著である。また同時に、これらの光学機器に内蔵される光学系ではレンズやプリズムなどの光学素子の数を削減することで軽量化、小型化を図っている。
【0003】
光学素子を作製する光学ガラスの中でも特に、光学系全体の軽量化及び小型化を図ることが可能な、1.90以上の高い屈折率(n)を有し、15以上30以下の低いアッベ数(ν)を有する高屈折率高分散ガラスの需要が非常に高まっている。このような高屈折率低分散ガラスとしては、特許文献1に代表されるようなガラス組成物が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-178571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたガラスは、高屈折率高分散するためにGeO2成分、Nb25成分及びTa25成分など材料単価が高い成分を多く含んでおり、生産コストが高くなるという問題点があった。そのため、高屈折率・高分散を有しながらも分光透過率が5%を示す波長(λ)が短く、生産コストが安い光学ガラスが求められていた。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、高屈折率及び分光透過率が5%を示す波長(λ)が短く、且つ生産コストの安い光学ガラスと、これを用いたプリフォーム及び光学素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意試験研究を重ねた結果、La23成分、TiO2成分及びBaO成分を併用しながらも、SiO2成分とB23成分の合計量やTiO2/(TiO2+BaO)の質量比を調整することによって、所望の高屈折率及び高分散を得られながらも、生産コストを抑えつつ、且つ分光透過率が5%を示す波長(λ)が短くなることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0008】
(1)酸化物基準の質量%で、
La23成分を0%超~45.0%、
TiO2成分を0%超~45.0%、及び
BaO成分を0%超~40.0%
含有し、
SiO2成分とB23成分の合計量が5.0%以上30.0%以下含有し、
TiO2/(TiO2+BaO)の質量比が0.10以上0.90以下であり、
屈折率(nd)が1.90以上、アッベ数(νd)が30.0以下であり、分光透過率が5%を示す波長(λ)が400nm以下である光学ガラス。
【0009】
(2)酸化物基準の質量%で、
SiO2成分 0~30.0%、及び
23成分 0~30.0%
である(1)記載の光学ガラス。
【0010】
(3)酸化物基準の質量%で、
ZnO成分 0~20.0%、
23成分 0~15.0%、
Nb25成分 0~25.0%、
Yb23成分 0~15.0%、及び
Gd23成分 0~15.0%
である(1)又は(2)記載の光学ガラス。
【0011】
(4)酸化物基準の質量%で、
(La23+Nb25+Gd23+Yb23)の質量和が0%超60.0%以下である(1)から(3)のいずれか記載の光学ガラス。
【0012】
(5)酸化物基準の質量%で、
Ln23成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Ybからなる群より選択される1種以上)の合計が0%超50.0%以下である(1)から(4)のいずれか記載の光学ガラス。
【0013】
(6)酸化物基準で
TiO2/BaOが0超3.00以下である(1)から(5)のいずれか記載の光学ガラス。
【0014】
(7)酸化物基準の質量%で、
Rn2O成分(式中、RnはLi、Na、Kからなる群より選択される1種以上)の質量和が15.0%以下である(1)から(6)のいずれか記載の光学ガラス。
【0015】
(8)酸化物基準の質量%で、
RO成分(式中、RはMg、Ca、Sr、Ba、Znからなる群より選択される1種以上)の質量和が0%超35.0%以下である(1)から(7)のいずれか記載の光学ガラス。
【0016】
(9)酸化物基準の質量%で、
ZrO2成分 0~20.0%、
Nb25成分 0~15.0%、
WO3成分 0~10.0%、
Ta25成分 0~10.0%、
MgO成分 0~15.0%、
CaO成分 0~15.0%、
SrO成分 0~15.0%、
Li2O成分 0~15.0%、
Na2O成分 0~15.0%、
2O成分 0~15.0%、
25成分 0~10.0%、
GeO2成分 0~10.0%、
Al23成分 0~15.0%、
Ga23成分 0~15.0%、
Bi23成分 0~10.0%、
TeO2成分 0~10.0%、
SnO2成分 0~3.0%、及び
Sb23成分 0~1.0%
を含有する(1)から(8)のいずれか記載の光学ガラス。
【0017】
(10) (1)から(9)のいずれか記載の光学ガラスからなるプリフォーム材。
【0018】
(11) (1)から(9)のいずれか記載の光学ガラスからなる光学素子。
【0019】
(12) (11)に記載の光学素子を備える光学機器。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、高屈折率及び高分散を有しながらも分光透過率が5%を示す波長(λ)が短く、且つ生産コストを低い光学ガラスと、これを用いたプリフォーム及び光学素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】部分分散比(θg,F)が縦軸でアッベ数(ν)が横軸の直交座標に表されるノーマルラインを示す図である。
図2】本願の実施例のガラスについての部分分散比(θg,F)とアッベ数(ν)の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の光学ガラスは、質量%で、La23成分を0%超~45.0%、TiO2成分を0%超~45.0%、及びBaO成分を0%超~40.0%含有し、SiO2成分とB23成分の合計量が5.0%以上30.0%以下であり、TiO2/(TiO2+BaO)の質量比が0.10以上0.90以下であり、屈折率(nd)が1.90以上、アッベ数(νd)が30.0以下、分光透過率が5%を示す波長(λ)が400nm以下である。
本発明によれば、La23成分、TiO2成分及びBaO成分を併用しながらも、各成分の含有量を調整することによって、ガラスにおいて高屈折率及び高分散化が図られながらも、ガラスの安定性が高められる。このため、高屈折率及び高分散を有しながらも分光透過率が5%を示す波長(λ)が短く、且つ生産コストの低い光学ガラスと、これを用いたプリフォーム及び光学素子を提供できる。
【0023】
[ガラス成分]
本発明の光学ガラスを構成する各成分の組成範囲を以下に述べる。本明細書中において、各成分の含有量は特に断りがない場合は、全て酸化物基準のガラス全質量に対する質量%で表示されるものとする。ここで、「酸化物基準」は、本発明のガラス構成成分の原料として使用される酸化物、複合塩、金属弗化物等が熔融時に全て分解されて酸化物に変化すると仮定した場合に、当該酸化物の総質量を100質量%として、ガラス中に含有される各成分を表記した組成である。
【0024】
<必須成分、任意成分について>
La23成分は、ガラスの屈折率を高め、分散を小さくする成分である。特に、La23成分を0%超含有することで、所望の高屈折率を得ることができる必須成分である。従って、La23成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは3.0%、さらに好ましくは15.0%、さらに好ましくは20.0%、さらに好ましくは25.0%、さらに好ましくは27.0%を下限とする。
一方、La23成分の含有量を45.0%以下にすることで、ガラスの耐失透性を高め、ガラスの比重の増加を抑えられ、且つ生産コストを低くすることができる。従って、La23成分の含有量は、好ましくは45.0%、より好ましくは40.0%、さらに好ましくは38.0%、さらに好ましくは37.0%を上限とする。
La23成分は、原料としてLa23、La(NO33・XH2O(Xは任意の整数)等を用いることができる。
【0025】
TiO2成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高め、アッベ数を低く調整し、部分分散比を高められ、且つ耐失透性を高められる必須成分である。そのため、TiO2成分の含有量は、好ましくは0%超、好ましくは5.0%、さらに好ましくは10.0%超、さらに好ましくは15.0%、さらに好ましくは18.0%、さらに好ましくは20.0%超を下限とする。
一方で、TiO2成分の含有量を45.0%以下にすることで、ガラスの着色を低減して可視光透過率を高められる。また、TiO2成分の過剰な含有による失透を抑えられる。従って、TiO2成分の含有量は、好ましくは45.0%、より好ましくは38.0%、さらに好ましくは32.0%、さらに好ましくは27.0%、さらに好ましくは25.0%を上限とする。
TiO2成分は、原料としてTiO2等を用いることができる。
【0026】
BaO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率や耐失透性を高められ、且つ、ガラス原料の熔融性を高められる必須成分である。従って、BaO成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは8.0%、さらに好ましくは10.0%を下限とする。
他方で、BaO成分の含有量を40.0%以下にすることで、ガラスの屈折率を低下し難くし、且つガラスの失透を低減することができる。従って、BaO成分の含有量は、好ましくは40.0%、より好ましくは35.0%、さらに好ましくは28.0%、さらに好ましくは23.0%、さらに好ましくは20.0%を上限とする。
BaO成分は、原料としてBaCO3、Ba(NO32等を用いることができる。
【0027】
23成分及びSiO2成分の含有量の和(質量和)は、5.0%以上30.0%以下が好ましい。
特に、この和を5.0%以上にすることで、B23成分やSiO2成分の欠乏による耐失透性の低下を抑えられる。従って、質量和(B23+SiO2)は、好ましくは5.0%、より好ましくは7.0%、さらに好ましくは9.0%を下限とする。
一方で、この和を30.0%以下にすることで、これらの成分の過剰な含有による屈折率の低下が抑えられるので、所望の高屈折率を得易くできる。従って、質量和(B23+SiO2)は、好ましくは30.0%、より好ましくは23.0%、さらに好ましくは18.0%、さらに好ましくは16.50%を上限とする。
【0028】
ここで、TiO2成分及びBaO成分の含有量の和に対する、TiO2成分の含有量の比率(質量比)は、0.1以上であることが好ましい。これにより、高い屈折率と高い分散を維持しながらも、高い部分分散比を得ることができる。従って、質量比TiO2/(TiO2+BaO)は、好ましくは0.10、より好ましくは0.30、さらに好ましくは0.40、さらに好ましくは0.45を下限とする。
一方で、この質量比を0.90以下にすることで、ガラスの着色を低減して可視光透過率を高められ、且つ失透を抑えられる。従って、質量比TiO2/(TiO2+BaO)は、好ましくは0.90、より好ましくは0.80、さらに好ましくは0.73、さらに好ましくは0.68を上限とする。
【0029】
SiO2成分は、0%超含有する場合に、耐失透性を高められる任意成分である。従って、SiO2成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.5%超、さらに好ましくは1.0%超、さらに好ましくは2.0%超を下限とする。
他方で、SiO2成分の含有量を30.0%以下にすることで、SiO2成分を熔融ガラス中に熔解し易くし、高温での熔解を回避することができる。SiO2成分の含有量は、好ましくは30.0%、より好ましくは23.0%、さらに好ましくは16.0%、さらに好ましくは11.0%、さらに好ましくは9.0%を上限とする。
SiO2成分は、原料としてSiO2、K2SiF6、Na2SiF6等を用いることができる。
【0030】
23成分は、0%超含有する場合に、ガラス内部で網目構造を形成し、安定なガラス形成を促して耐失透性を高められる任意成分である。従って、B23成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.5%超、さらに好ましくは1.0%超、さらに好ましくは2.0%超を下限とする。
他方で、B23成分の含有量を30.0%以下にすることで、屈折率の低下を抑えられ、アッベ数を小さくすることができ、且つ化学的耐久性の悪化を抑えられる。従って、B23成分の含有量は、好ましくは30.0%以下、より好ましくは20.0%、さらに好ましくは15.0%未満、さらに好ましくは12.0%、さらに好ましくは10.0%未満を上限とする。
23成分は、原料としてH3BO3、Na247、Na247・10H2O、BPO4等を用いることができる。
【0031】
ZnO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの熔融性を改善でき、ガラス転移点を低くでき、且つ失透を低減できる任意成分である。従って、ZnO成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.5%超、さらに好ましくは1.0%超、さらに好ましくは1.5%超を下限とする。
他方で、ZnO成分の含有量を20.0%以下にすることで、屈折率の低下や失透を低減できる。また、これにより熔融ガラスの粘性が高められるため、ガラスへの脈理の発生を低減できる。従って、ZnO成分の含有量は、好ましくは20.0%、より好ましくは15.0%、さらに好ましくは11.0%、さらに好ましくは8.0%を上限とする。
ZnO成分は、原料としてZnO、ZnF2等を用いることができる。
【0032】
23成分は、0%超含有する場合に、ガラスの材料コストの上昇を抑えられる任意成分である。
23成分の含有量を15.0%以下にすることで、ガラスの屈折率の低下を抑えられ、アッベ数を小さくすることができ、且つガラスの耐失透性を高められる。従って、Y23成分の含有量は、好ましくは15.0%、より好ましくは10.0%、さらに好ましくは5.0%を上限とする。
23成分は、原料としてY23、YF3等を用いることができる。
【0033】
Nb25成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高められ、且つ耐失透性を高められる任意成分である。そのため、Nb25成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは2.0%、さらに好ましくは4.0%を下限とする。
一方で、Nb25成分の含有量を25.0%以下にすることで、Nb25成分の過剰な含有によるガラスの耐失透性の低下や、可視光の透過率の低下を抑えることができ、且つガラスの材料コストの上昇を抑えことができる。従って、Nb25成分の含有量は、好ましくは25.0%、より好ましくは20.0%、さらに好ましくは16.0%、さらに好ましくは13.0%を上限とする。
Nb25成分は、原料としてNb25等を用いることができる。
【0034】
Yb23成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高めることができる任意
成分である。
一方で、Yb23成分の含有量を15.0%以下にすることで、ガラスの耐失透性を高め、アッベ数を小さくすることができる。従って、Yb23成分の含有量は、好ましくは15.0%、より好ましくは10.0%、さらに好ましくは5.0%を上限とする。
Yb23成分は、原料としてYb23等を用いることができる。
【0035】
Gd23成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高め、且つアッベ数を高められる任意成分である。
一方で、希土類元素の中でも特に高価なGd23成分を15.0%以下に低減することで、ガラスの材料コストが低減されるため、より安価な光学ガラスを作製できる。また、これによりガラスのアッベ数の必要以上の上昇を抑えられる。従って、Gd23成分の含有量は、それぞれ好ましくは15.0%、より好ましくは10.0%、さらに好ましくは5.0%を上限とする。
Gd23成分は、原料としてGd23、GdF3等を用いることができる。
【0036】
また、本発明の光学ガラスでは、La23成分、Nb25成分、Gd23成分及びYb23の含有量の和(質量和)は、60.0%以下であることが好ましい。これにより、これら高価な成分の含有量が低減されるため、ガラスの材料コストを抑えられ、且つアッベ数を小さくすることができる。従って質量和(La23+Nb25+Gd23+Yb23)は、好ましくは60.0%、より好ましくは57.0%、さらに好ましくは53.0%、さらに好ましくは49.0%、さらに好ましくは47.0%を上限とする。
一方で、0%超含有することで、所望の高屈折率を得ることができる。従って、好ましくは0%超、より好ましくは10.0%、さらに好ましくは20.0%、さらに好ましくは25.0%、さらに好ましくは30.0%、さらに好ましくは35.0%下限とする。
【0037】
Ln23成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Ybからなる群より選択される1種以上)の含有量の和(質量和)は、0%超~50.0%である。
特に、この質量和を0%超にすることで、ガラスの屈折率を高められるため、高屈折率ガラスを得易くできる。また、これにより着色を低減できる。従って、Ln23成分の含有量の質量和は、好ましくは0%超、より好ましくは1.0%、さらに好ましくは3.0%、さらに好ましくは5.0%を下限とする。
他方で、この質量和を50.0%以下にすることで、耐失透性を高められ、且つアッベ数を小さくすることができる。従って、Ln23成分の含有量の質量和は、好ましくは50.0%、より好ましくは40.0%未満、さらに好ましくは30.0%、さらに好ましくは25.0%を上限とする。
【0038】
ここで、La23成分、Nb25成分、Gd23成分及びYb23の含有量の和に対する、TiO2成分の含有量の比率(質量比)は、0超であることが好ましい。これにより、高い屈折率と高い分散を維持しながらも、高い部分分散比を得ることができ、且つ生産コストを安くすることができる。従って、質量比TiO2/(La23+Nb25+Gd23+Yb23)は、好ましくは0超、より好ましくは0.10、さらに好ましくは0.20、さらに好ましくは0.40を下限とする。
一方で、この質量比を2.00以下にすることで、ガラスの着色を低減して可視光透過率を高められ、且つ失透を抑えられる。従って、質量比TiO2/(La23+Nb25+Gd23+Yb23)は、好ましくは2.00、より好ましくは1.00、さらに好ましくは0.80、さらに好ましくは0.66を上限とする。
【0039】
ここで、BaO成分の含有量に対する、TiO2成分の含有量の比率(質量比)は、0超であることが好ましい。これにより、高い屈折率と高い分散を維持しながらも、高い部分分散比を得ることができる。質量比TiO2/BaOは、好ましくは0超、より好ましくは0.10、さらに好ましくは0.40、さらに好ましくは0.60を下限とする。
一方で、この質量比を3.00以下にすることで、ガラスの着色を低減して可視光透過率を高められ、且つ失透を抑えられる。従って、質量比TiO2/BaOは、好ましくは3.00、より好ましくは2.00、さらに好ましくは1.60を上限とする。
【0040】
ここで、BaO成分含有量の和に対する、TiO2成分及びWO3成分の含有量の和の比率(質量比)は、0超であることが好ましい。これにより、高い屈折率と高い分散を維持しながらも、高い部分分散比を得ることができ、且つ耐失透性を高められる。従って、質量比(TiO2+WO3)/BaOは、好ましくは0超、より好ましくは0.30、さらに好ましくは0.60、さらに好ましくは0.80、さらに好ましくは1.00を下限とする。
一方で、この質量比を3.00以下にすることで、ガラスの着色を低減して可視光透過率を高められ、且つ失透を抑えられる。従って、質量比(TiO2+WO3)/BaOは、好ましくは3.00、より好ましくは2.50、さらに好ましくは1.90を上限とする。
【0041】
TiO2成分及びNb25成分の含有量の和(質量和)は、0%超であることが好ましい。これにより、屈折率・分散を高くすることができ、且つ耐失透性を高めることができる。従って質量和(TiO2+Nb25)は、好ましくは0%超、より好ましくは10.0%超、さらに好ましくは15.0%超、さらに好ましくは20.0%超、さらに好ましくは25.0%超を下限とする。
一方で、60.0%以下含有することで、ガラスの着色を低減して可視光透過率を高められ、且つ失透を抑えられる。従って、好ましくは60.0%、より好ましくは50.0%、さらに好ましくは45.0%、さらに好ましくは40.0%、さらに好ましくは35.0%、さらに好ましくは33.0%を上限とする。
【0042】
Rn2O成分(式中、RnはLi、Na、K、Csからなる群より選択される1種以上)の合計量は、15.0%以下が好ましい。これにより、ガラスの屈折率の低下を抑え、且つ耐失透性を高められる。従って、Rn2O成分の質量和は、好ましくは15.0%、より好ましくは10.0%、さらに好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満を上限とする。
【0043】
RO成分(式中、RはMg、Ca、Sr、Baからなる群より選択される1種以上)の含有量の和(質量和)は、35.0%以下が好ましい。これにより、RO成分の過剰な含有による失透を低減でき、且つ屈折率の低下を抑えられる。従って、RO成分の含有量の質量和は、好ましくは35.0%、より好ましくは30.0%、さらに好ましくは27.0%、さらに好ましくは23.0%未満、さらに好ましくは20.0%を上限とする。
他方で、この和を0%超にすることで、ガラス原料の熔融性やガラスの安定性を高められる。従って、RO成分の合計含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは4.0%、さらに好ましくは7.0%、さらに好ましくは9.0%超を下限としてもよい。
【0044】
ZrO2成分は、0%超含有する場合に、ガラスの高屈折率化及び低分散化に寄与でき、且つガラスの耐失透性を高められる。そのため、ZrO2成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.5%、さらに好ましくは1.0%を下限としてもよい。
一方で、ZrO2成分を20.0%以下にすることで、ZrO2成分の過剰な含有によるガラスの耐失透性の低下やアッベ数の必要以上の上昇を抑えられる。従って、ZrO2成分の含有量は、好ましくは20.0%、より好ましくは16.0%、さらに好ましくは12.0%、さらに好ましくは9.0%、さらに好ましくは6.5%未満を上限とする。
ZrO2成分は、原料としてZrO2、ZrF4等を用いることができる。
【0045】
WO3成分は、0%超含有する場合に、他の高屈折率成分によるガラスの着色を低減しながら屈折率を高め、部分分散比を高め、且つガラスの耐失透性を高められる任意成分である。また、WO3成分は、ガラス転移点を低くできる成分でもある。そのため、WO3成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.1%、さらに好ましくは0.2%、さらに好ましくは0.3%を下限としてもよい。
一方で、WO3成分の含有量を10.0%以下にすることで、WO3成分によるガラスの着色を低減して可視光透過率を高めることができる。従って、WO3成分の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは3.0%を上限とする。
WO3成分は、原料としてWO3等を用いることができる。
【0046】
Ta25成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高め、且つ耐失透性を高められる任意成分である。
一方で、高価なTa25成分を10.0%以下に低減することで、ガラスの材料コストが低減されるため、より安価な光学ガラスを作製できる。また、Ta25成分の含有量を10.0%以下にすることで、原料の熔解温度が低くなり、原料の熔解に要するエネルギーが低減されるため、光学ガラスの製造コストをも低減できる。従って、Ta25成分の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは8.0%、さらに好ましくは5.0%を上限とする。特に、より安価な光学ガラスを作製する観点では、Ta25成分の含有量は、好ましくは4.0%、より好ましくは3.0%を上限とし、さらに好ましくは1.0%未満、最も好ましくは含有しない。
Ta25成分は、原料としてTa25等を用いることができる。
【0047】
MgO成分は、0%超含有する場合に、ガラス原料の熔融性やガラスの耐失透性を高められる任意成分である。
一方で、MgO成分の含有量を15.0%以下にすることで、これらの成分の過剰な含有による、屈折率の低下や耐失透性の低下を抑えられる。従って、MgO成分の含有量は、好ましくは15.0%、より好ましくは10.0%、さらに好ましくは5.0%を上限とする。
MgO成分は、原料としてMgCO3、MgF2等を用いることができる。
【0048】
CaO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率や耐失透性を高められ、且つ、ガラス原料の熔融性を高められる任意成分である。従って、CaO成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.5%、さらに好ましくは1.5%、さらに好ましくは3.0%を下限とする。
他方で、CaO成分の含有量を15.0%以下にすることで、ガラスの屈折率を低下し難くし、且つガラスの失透を低減することができる。従って、CaO成分の含有量は、好ましくは15.0%、より好ましくは10.0%、さらに好ましくは5.0%を上限とする。
CaO成分は、原料としてCaCO3、CaF2等を用いることができる。
【0049】
SrO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率や耐失透性を高められ、且つ、ガラス原料の熔融性を高められる任意成分である。従って、SrO成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.5%、さらに好ましくは1.5%、さらに好ましくは3.0%を下限とする。
他方で、SrO成分の含有量を15.0%以下にすることで、ガラスの屈折率を低下し難くし、且つガラスの失透を低減することができる。従って、SrO成分の含有量は、好ましくは15.0%、より好ましくは10.0%、さらに好ましくは5.0%を上限とする。
SrO成分は、原料としてSrCO3、SrF2等を用いることができる。
【0050】
Li2O成分、Na2O成分及びK2O成分は、少なくともいずれかを0%超含有する場合に、ガラスの熔融性を改善できる任意成分である。特に、K2O成分は、ガラスの部分分散比をより一層高める成分でもある。
他方で、Li2O成分、Na2O成分又はK2O成分の含有量を低減することで、ガラスの屈折率の低下を抑えられ、且つ失透を低減できる。特に、Li2O成分の含有量を低減することで、ガラスの部分分散比の低下を抑えられる。従って、Li2O成分、Na2O成分及びK2O成分のうち少なくともいずれかの含有量は、好ましくは15.0%、より好ましくは10.0%未満、さらに好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満を上限とする。
Li2O成分、Na2O成分及びK2O成分は、原料としてLi2CO3、LiNO3、LiF、Na2CO3、NaNO3、NaF、Na2SiF6、K2CO3、KNO3、KF、KHF2、K2SiF6等を用いることができる。
【0051】
25成分は、0%超含有する場合に、ガラスの耐失透性を高められる任意成分である。特に、P25成分の含有量を10.0%以下にすることで、ガラスの化学的耐久性、特に耐水性の低下を抑えられる。従って、P25成分の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは3.0%を上限とする。
25成分は、原料としてAl(PO33、Ca(PO32、Ba(PO32、BPO4、H3PO4等を用いることができる。
【0052】
GeO2成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高め、且つ耐失透性を向上できる任意成分である。しかしながら、GeO2は原料価格が高いため、その量が多いと材料コストが高くなることで、Gd23成分やTa25成分を低減することによるコスト低減の効果が減殺される。従って、GeO2成分の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは1.0%を上限とし、最も好ましくは含有しない。
GeO2成分は、原料としてGeO2等を用いることができる。
【0053】
Al23成分及びGa23成分は、0%超含有する場合に、ガラスの化学的耐久性を高め、且つガラスの耐失透性を高められる任意成分である。
一方で、Al23成分及びGa23成分の各々の含有量を15.0%以下にすることで、これらの過剰な含有によるガラスの耐失透性の低下を抑えられる。従って、Al23成分及びGa23成分の各々の含有量は、好ましくは15.0%、より好ましくは8.0%、さらに好ましくは3.0%を上限とする。
Al23成分及びGa23成分は、原料としてAl23、Al(OH)3、AlF3、Ga23、Ga(OH)3等を用いることができる。
【0054】
Bi23成分は、0%超含有する場合に、屈折率を高め、且つガラス転移点を下げられる任意成分である。
一方で、Bi23成分の含有量を10.0%以下にすることで、ガラスの耐失透性を高められ、且つ、ガラスの着色を低減して可視光透過率を高められる。従って、Bi23成分の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは3.0%を上限とする。
Bi23成分は、原料としてBi23等を用いることができる。
【0055】
TeO2成分は、0%超含有する場合に、屈折率を高め、且つガラス転移点を下げられる任意成分である。
しかしながら、TeO2は白金製の坩堝や、溶融ガラスと接する部分が白金で形成されている溶融槽でガラス原料を熔融する際、白金と合金化しうる問題がある。従って、TeO2成分の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは3.0%を上限とし、さらに好ましくは含有しない。
TeO2成分は、原料としてTeO2等を用いることができる。
【0056】
SnO2成分は、0%超含有する場合に、熔融ガラスの酸化を低減して熔融ガラスを清澄でき、且つガラスの光線透過率を悪化し難くできる任意成分である。
他方で、SnO2成分の含有量を3.0%以下にすることで、熔融ガラスの還元によるガラスの着色や、ガラスの失透を生じ難くできる。また、SnO2成分と熔解設備(特にPt等の貴金属)との合金化が低減されるため、熔解設備の長寿命化を図れる。従って、SnO2成分の含有量は、好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満、さらに好ましくは含有しない。
SnO2成分は、原料としてSnO、SnO2、SnF2、SnF4等を用いることができる。
【0057】
Sb23成分は、0%超含有する場合に、熔融ガラスを脱泡できる任意成分である。
他方で、Sb23成分の含有量を1.0%以下にすることで、過度の発泡を生じ難くでき、且つ、熔解設備(特にPt等の貴金属)との合金化を低減できる。従って、Sb23成分の含有量は、好ましくは1.0%以下、より好ましくは0.5%未満、さらに好ましくは0.3%未満、さらに好ましくは0.1%未満とする。
Sb23成分は、原料としてSb23、Sb25、Na22Sb27・5H2O等を用いることができる。
【0058】
なお、ガラスを清澄し脱泡する成分は、上記のSb23成分に限定されるものではなく、ガラス製造の分野における公知の清澄剤、脱泡剤或いはそれらの組み合わせを用いることができる。
【0059】
F成分は、0%超含有する場合に、ガラスのアッベ数を高め、ガラス転移点を低くし、且つ耐失透性を向上できる任意成分である。
しかし、F成分の含有量、すなわち上述した各金属元素の1種又は2種以上の酸化物の一部又は全部と置換した弗化物のFとしての合計量が10.0%を超えると、F成分の揮発量が多くなるため、安定した光学恒数が得られ難くなり、均質なガラスが得られ難くなる。また、アッベ数が必要以上に上昇する。
従って、F成分の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満、さらに好ましくは含有しない。
<含有すべきでない成分について>
次に、本発明の光学ガラスに含有すべきでない成分、及び含有することが好ましくない成分について説明する。
【0060】
本発明の光学ガラスには、他の成分を本願発明のガラスの特性を損なわない範囲で必要に応じ、添加することができる。ただし、GeO2成分はガラスの分散性を高めてしまうため、実質的に含まないことが好ましい。
【0061】
また、Ti、Zr、Nb、W、La、Gd、Y、Yb、Luを除く各遷移金属成分、例えばHf、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Mo、Ce、Nd等は、それぞれを単独又は複合して少量含有する場合でもガラスが着色し、可視域の特定の波長の光に対して吸収を生じる性質があるため、特に可視領域の波長を使用する光学ガラスにおいては、実質的に含まないことが好ましい。
【0062】
さらに、PbO等の鉛化合物及びAs23等のヒ素化合物、並びに、Th、Cd、Tl、Os、Be、Seの各成分は、近年有害な化学物質として使用を控える傾向にあり、ガラスの製造工程のみならず、加工工程、及び製品化後の処分に至るまで環境対策上の措置が必要とされる。従って、環境上の影響を重視する場合には、不可避な混入を除き、これらを実質的に含有しないことが好ましい。これにより、光学ガラスに環境を汚染する物質が実質的に含まれなくなる。そのため、特別な環境対策上の措置を講じなくとも、この光学ガラスを製造し、加工し、及び廃棄することができる。
【0063】
[製造方法]
本発明の光学ガラスは、例えば以下のように作製される。すなわち、上記原料を各成分が所定の含有量の範囲内になるように均一に混合し、作製した混合物を白金坩堝、石英坩堝又はアルミナ坩堝に投入して粗熔融した後、金坩堝、白金坩堝、白金合金坩堝又はイリジウム坩堝に入れて900~1400℃の温度範囲で1~5時間熔融し、攪拌均質化して泡切れ等を行った後、1300℃以下の温度に下げてから仕上げ攪拌を行って脈理を除去し、成形型を用いて成形することにより作製される。ここで、成形型を用いて成形されたガラスを得る手段としては、熔融ガラスを成形型の一端に流下するのと同時に、成形型の他端側から成形されたガラスを引き出す手段や、熔融ガラスを金型に鋳込んで徐冷する手段が挙げられる。
【0064】
[物性]
本発明の光学ガラスは、高屈折率及び高分散を有することが好ましい。特に、本発明の光学ガラスの屈折率(nd)は、好ましくは1.90、より好ましくは1.95、さらに好ましくは1.98を下限とする。この屈折率の上限は、好ましくは2.20、より好ましくは2.15、さらに好ましくは2.10であってもよい。また、本発明の光学ガラスのアッベ数(νd)は、好ましくは15.0、より好ましくは18.0、さらに好ましくは20.0を下限とし、好ましくは30.0、より好ましくは28.0、さらに好ましくは27.0を上限とする。
このような高屈折率を有することで、光学素子の薄型化を図っても大きな光の屈折量を得ることができる。また、このような高分散を有することで、例えば低分散(高いアッベ数)を有する光学素子と組み合わせた場合に、高い結像特性等を図ることができる。
従って、本発明の光学ガラスは、光学設計上有用であり、特に高い結像特性等を図りながらも、光学系の小型化を図ることができ、光学設計の自由度を広げることができる。
【0065】
本発明の光学ガラスは、可視光透過率、特に可視光のうち短波長側の光の透過率が高く、それにより着色が少ないことが好ましい。
特に、本発明の光学ガラスは、ガラスの透過率で表すと、厚み10mmのサンプルで分光透過率70%を示す波長(λ70)は、好ましくは500nm、より好ましくは490nm、さらに好ましくは480nmを上限とする。
また、本発明の光学ガラスにおける、厚み10mmのサンプルで分光透過率5%を示す最も短い波長(λ)は、好ましくは400nm、より好ましくは390nmを上限とする。これらにより、ガラスの吸収端が紫外領域の近傍になり、可視光に対するガラスの透明性が高められるため、この光学ガラスを、レンズ等の光を透過させる光学素子に好ましく用いることができる。
【0066】
本発明の光学ガラスは、高い部分分散比(θg,F)を有することが好ましい。より具体的には、本発明の光学ガラスの部分分散比(θg,F)は、好ましくは0.570、より好ましくは0.580、さらに好ましくは0.595、さらに好ましくは0.605、さらに好ましくは0.612を下限とする。
また、本発明の光学ガラスの部分分散比(θg,F)は、アッベ数(ν)との関係において、(-0.00162νd+0.645)≦(θg,F)≦(-0.00162νd+0.680)の関係を満たすことが好ましい。これにより、部分分散比(θg,F)の小さい光学ガラスが得られるため、光学ガラスを光学素子の色収差の低減等に役立てられる。
従って、本発明の光学ガラスの部分分散比(θg,F)は、好ましくは(-0.00162νd+0.645)、より好ましくは(-0.00162νd+0.650)を下限とする。
一方で、本発明の光学ガラスの部分分散比(θg,F)は、好ましくは(-0.00162νd+0.675)、より好ましくは(-0.00162νd+0.670)、を上限とする。
【0067】
上述の部分分散比(θg,F)とアッベ数(ν)の関係式は、部分分散比を縦軸に、アッベ数を横軸にした直交座標において、ノーマルラインと平行な直線を用いて表した。ノーマルラインは、従来公知のガラスの部分分散比(θg,F)とアッベ数(ν)の間にみられる直線的な関係を表したものであり、部分分散比(θg,F)を縦軸に、アッベ数(ν)を横軸に採用した直交座標上で、NSL7とPBM2の部分分散比及びアッベ数をプロットした2点を結ぶ直線で表される(図1参照)。そして、従来公知のガラスの部分分散比とアッベ数の関係は、概ねノーマルラインと重複する。
ここで、NSL7とPBM2は株式会社オハラ社製の光学ガラスであり、PBM2のアッベ数(ν)は36.3,部分分散比(θg,F)は0.5828、NSL7のアッベ数(ν)は60.5、部分分散比(θg,F)は0.5436である。
【0068】
[プリフォーム及び光学素子]
作製された光学ガラスから、例えば研磨加工の手段、又は、リヒートプレス成形や精密プレス成形等のモールドプレス成形の手段を用いて、ガラス成形体を作製することができる。すなわち、光学ガラスに対して研削及び研磨等の機械加工を行ってガラス成形体を作製したり、光学ガラスから作製したプリフォームに対してリヒートプレス成形を行った後で研磨加工を行ってガラス成形体を作製したり、研磨加工を行って作製したプリフォームや、公知の浮上成形等により成形されたプリフォームに対して精密プレス成形を行ってガラス成形体を作製したりすることができる。なお、ガラス成形体を作製する手段は、これらの手段に限定されない。
【0069】
このように、本発明の光学ガラスから形成したガラス成形体は、様々な光学素子及び光学設計に有用であるが、その中でも特に、レンズやプリズム等の光学素子に用いることが好ましい。ガラスの安定性が高められることで、径の大きなガラス成形体の形成が可能になるため、光学素子の大型化を図りながらも、カメラやプロジェクタ等の光学機器に用いたときに高精細で高精度な結像特性及び投影特性を実現できる。
【実施例
【0070】
本発明の実施例(No.1~No.52)のガラスの組成、並びに、これらのガラスの屈折率(n)、アッベ数(ν)、透過率(λ、λ70)及び部分分散比(θg,F)の値を表1~表10に示す。なお、以下の実施例はあくまで例示の目的であり、これらの実施例のみ限定されるものではない。
【0071】
実施例のガラスは、いずれも各成分の原料として各々相当する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、弗化物、水酸化物、メタ燐酸化合物等の通常の光学ガラスに使用される高純度原料を選定し、量して均一に混合した後、白金坩堝に投入し、1280~1340℃の温度範囲の電気炉で2.5時間にわたって、ガラス原料の熔解と、熔解したガラス原料への攪拌による泡切れを行った後、1180~1250℃に温度を下げてさらに攪拌均質化してから金型に鋳込み、徐冷してガラスを作製した。
【0072】
実施例のガラスの屈折率(n)及びアッベ数(ν)は、ヘリウムランプのd線(587.56nm)に対する測定値で示した。また、アッベ数(ν)は、上記d線の屈折率と、水素ランプのF線(486.13nm)に対する屈折率(n)、C線(656.27nm)に対する屈折率(n)の値を用いて、アッベ数(ν)=[(n-1)/(n-n)]の式から算出した。
部分分散比は、C線(波長656.27nm)における屈折率n、F線(波長486.13nm)における屈折率n、g線(波長435.835nm)における屈折率nを測定し、(θg、F)=(n-n)/(n-n)の式により算出した。
なお、本測定に用いたガラスは、徐冷降温速度を-25℃/hrとして、徐冷炉にて処理を行ったものを用いた。
【0073】
実施例のガラスの透過率は、日本光学硝子工業会規格JOGIS02-2003に準じて測定した。なお、本発明においては、ガラスの透過率を測定することで、ガラスの着色の有無と程度を求めた。具体的には、厚さ10±0.1mmの対面平行研磨品をJISZ8722に準じ、200~800nmの分光透過率を測定し、λ(透過率5%時の波長)及びλ70(透過率70%時の波長)を求めた。
なお、本測定に用いたガラスは、徐冷降温速度を-25℃/hrとして、徐冷炉にて処理を行ったものを用いた。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
【表4】
【0078】
【表5】
【0079】
【表6】
【0080】
【表7】
【0081】
【表8】
【0082】
【表9】
【0083】
【表10】
【0084】
表に示されるように、本発明の実施例の光学ガラスは、いずれも屈折率(n)が1.90以上であるとともに、この屈折率(n)は2.20以下、より詳細には2.10以下であり、所望の範囲内であった。
また、本発明の実施例の光学ガラスは、いずれもアッベ数(ν)が30.0以下、より具体的には28.0以下であるとともに、このアッベ数(ν)は15.0以上、より詳細には20.0以上であり、所望の範囲内であった。
【0085】
また、本発明の実施例の光学ガラスは、λ70(透過率70%時の波長)がいずれも500nm以下、より詳細には490nm以下であった。また、本発明の実施例の光学ガラスは、λ(透過率5%時の波長)がいずれも400nm以下、より詳細には390nm以下であった。
【0086】
また、本発明の実施例の光学ガラスは、いずれも部分分散比(θg,F)が(-0.00162νd+0.645)以上、より詳細には(-0.00162νd+0.650)以上であった。その反面で、本発明の実施例の光学ガラスの部分分散比(-0.00162νd+0.680)以下、より詳細には(-0.00162νd+0.670)以下であった。そのため、これらの部分分散比(θg,F)が所望の範囲内にあることがわかった。
【0087】
従って、本発明の実施例の光学ガラスは、屈折率及びアッベ数が所望の範囲内にありながらも安価に作製でき、且つ、着色が少ないことが明らかになった。
【0088】
さらに、本発明の実施例で得られた光学ガラスを用いて、リヒートプレス成形を行った後で研削及び研磨を行い、レンズ及びプリズムの形状に加工した。また、本発明の実施例の光学ガラスを用いて、精密プレス成形用プリフォームを形成し、この精密プレス成形用プリフォームを精密プレス成形加工した。いずれの場合も、加熱軟化後のガラスには乳白化及び失透等の問題は生じず、安定に様々なレンズ及びプリズムの形状に加工することができた。
【0089】
以上、本発明を例示の目的で詳細に説明したが、本実施例はあくまで例示の目的のみであって、本発明の思想及び範囲を逸脱することなく多くの改変を当業者により成し得ることが理解されよう。
図1
図2