(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】次世代シーケンシングライブラリーの標的捕捉中の、ポイズンプライマーを使用した非標的ライブラリー分子の標的化された枯渇
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6813 20180101AFI20241112BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALI20241112BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALI20241112BHJP
C40B 40/06 20060101ALI20241112BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20241112BHJP
【FI】
C12Q1/6813 Z ZNA
C12Q1/6844 Z
C12Q1/6876 Z
C40B40/06
C12N15/09 Z
(21)【出願番号】P 2023500275
(86)(22)【出願日】2021-07-07
(86)【国際出願番号】 EP2021068782
(87)【国際公開番号】W WO2022008578
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-02-15
(32)【優先日】2020-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(73)【特許権者】
【識別番号】511109814
【氏名又は名称】カパ バイオシステムズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196243
【氏名又は名称】運 敬太
(72)【発明者】
【氏名】ダンネバウム,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ゴドウィン,ブライアン・クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ペンクラー,デビッド・ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】スラッバート,エティエンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ファン・デル・メルベ,ルーベン・ゲルハルト
【審査官】林 康子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/121842(WO,A1)
【文献】特表2016-515384(JP,A)
【文献】特開2011-087534(JP,A)
【文献】特開2008-161165(JP,A)
【文献】特開2020-191833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/68
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸分子のライブラリー中の少なくとも1つの標的核酸分子を濃縮する方法であって、
(a)第1の標的捕捉プライマーを前記核酸分子のライブラリー中の第1の標的核酸分子にハイブリダイズさせることであって、ここで、前記第1の標的捕捉プライマーが捕捉部分を含むものである、
(b)第1のポイズンプライマーを前記核酸分子のライブラリー中の第1の非標的核酸分子にハイブリダイズさせることであって、ここで、前記第1のポイズンプライマーが捕捉部分を含まないものである、
(c)ハイブリダイズした前記第1の標的捕捉プライマーとハイブリダイズした前記第1のポイズンプライマーの両方を伸長することであって、ここで、前記ハイブリダイズした第1の標的捕捉プライマーの前記伸長が、前記第1の標的核酸分子と伸長された前記第1の標的捕捉プライマーとを含む第1の標的捕捉プライマー伸長複合体を提供するものである、及び、
(d)前記核酸分子のライブラリー中で、前記核酸分子のライブラリーに対して前記第1の標的核酸分子を濃縮すること、
を含み、
ここで、前記第1のポイズンプライマーが前記第1の非標的核酸分子に相補的な配列を含み、前記第1のポイズンプライマーのTmが50℃~68℃であり、前記第1の標的捕捉プライマーのTmが前記第1のポイズンプライマーのTmより少なくとも1℃高いものであり、前記第1のポイズンプライマーの濃度が前記第1の標的捕捉プライマーの濃度と同じであるか、または少なくとも2倍である、
前記方法。
【請求項2】
前記第1の標的捕捉プライマー及び前記第1のポイズンプライマーが、プライマーのプールとして前記ライブラリーに添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ハイブリダイズした第1のポイズンプライマーの前記伸長が、前記第1の標的捕捉プライマーが前記第1の非標的核酸分子にハイブリダイズするのを妨げる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ハイブリダイズした第1のポイズンプライマーの前記伸長が、前記第1の非標的核酸分子にハイブリダイズした第1の標的プライマーを置換する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記核酸分子のライブラリー中の前記核酸分子のそれぞれが、第1のアダプターを含む第1の末端及び第2のアダプターを含む第2の末端を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の標的核酸分子を第1の増幅プライマー及び第2の増幅プライマーによって増幅することをさらに含み、前記第1の増幅プライマーが前記第1のアダプターに相補的な3’末端を含み、前記第2の増幅プライマーが前記第2のアダプターに相補的な3’末端を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記核酸分子のライブラリーに対する前記第1の標的核酸分子を濃縮することが、(i)前記第1の標的捕捉プライマー伸長複合体を捕捉すること、(i)捕捉されていない非標的核酸分子を除去すること、及び(ii)捕捉された前記第1の標的捕捉プライマー伸長複合体から前記第1の標的核酸分子を放出させることを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の標的捕捉プライマー伸長複合体の前記捕捉が、前記第1の標的捕捉プライマー伸長複合体を官能化基質と接触させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の標的捕捉プライマー伸長複合体の前記捕捉が、(i)ユニバーサル捕捉オリゴヌクレオチドを前記第1の標的捕捉プライマー伸長複合体の前記捕捉部分にハイブリダイズさせてユニバーサル捕捉オリゴヌクレオチド複合体を形成することであって、ここで、前記ユニバーサル捕捉オリゴヌクレオチドが、(a)一対の特異的結合実体の第1のメンバー及び(b)前記捕捉部分の捕捉配列の少なくとも一部に相補的なヌクレオチド配列を含むものであり、(ii)前記ユニバーサル捕捉オリゴヌクレオチド複合体を官能化基質と接触させることであって、ここで、前記官能化基質が前記一対の特異的結合実体の第2のメンバーを含むものである、を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記捕捉されていない非標的核酸分子の前記除去が、前記捕捉されていない非標的核酸分子を洗い流すことを含む、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
捕捉された前記第1の標的捕捉プライマー伸長複合体の前記放出が、(i)放出プライマーを前記第1の標的核酸分子にハイブリダイズさせることと、(b)ハイブリダイズした前記放出プライマーを伸長させることと、を含み、
ここで、前記放出プライマーが前記第1の標的核酸分子の一部にハイブリダイズするものであり、前記放出プライマーのTmが前記第1のポイズンプライマーと同様のT
mを有する、
請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の標的捕捉プライマーが、前記第1のポイズンプライマーの融解温度よりも高い融解温度を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記核酸分子のライブラリーが、複数の標的核酸分子及び複数の非標的核酸分子を含み、ここで、前記複数の標的核酸分子が、前記複数の非標的核酸分子と比較して低存在量である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
(a)核酸分子のライブラリー中の標的核酸分子に相補的であり、捕捉部分を含む第1の標的捕捉プライマーと、
(b)前記核酸分子のライブラリー中の非標的核酸分子に相補的であり、捕捉部分を含まない第1のポイズンプライマーと
を含む、キットであって、
ここで、前記第1のポイズンプライマーが前記非標的核酸分子に相補的な配列を含み、前記第1のポイズンプライマーのTmが50℃~68℃であり、前記第1の標的捕捉プライマーのTmが前記第1のポイズンプライマーのTmより少なくとも1℃高いものであり、前記第1のポイズンプライマーの濃度が前記第1の標的捕捉プライマーの濃度と同じであるか、または少なくとも2倍である、
前記キット。
【請求項15】
(a)複数の標的核酸分子及び複数の非標的核酸分子を含む核酸ライブラリーであって、ここで、前記標的核酸分子が、前記複数の非標的核酸分子と比較して低存在量である、前記核酸ライブラリーと、
(b)核酸分子のライブラリー中の第1の標的核酸分子に相補的であり、捕捉部分を含む第1の標的捕捉プライマーと、
(c)前記核酸分子のライブラリー中の第1の非標的核酸分子に相補的であり、捕捉部分を含まない第1のポイズンプライマーと、
(d)第1のポリメラーゼと
を含む、組成物であって、
ここで、前記第1のポイズンプライマーが前記第1の非標的核酸分子に相補的な配列を含み、前記第1のポイズンプライマーのTmが50℃~68℃であり、前記第1の標的捕捉プライマーのTmが前記第1のポイズンプライマーのTmより少なくとも1℃高いものであり、前記第1のポイズンプライマーの濃度が前記第1の標的捕捉プライマーの濃度と同じであるか、または少なくとも2倍である、
前記組成物。
【請求項16】
前記第1の非標的核酸分子が、rRNA、またはrRNA由来cDNA分子である、
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記非標的核酸分子が、rRNA、またはrRNA由来cDNA分子である、請求項14に記載のキット。
【請求項18】
前記第1の非標的核酸分子が、rRNA、またはrRNA由来cDNA分子である、請求項15に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
開示の背景
多くの核酸濃縮技術では、最初に核酸分子の「ショットガンライブラリー」を提供することが有用であり得、それにより、試料に由来するより長い核酸配列は、ショート・リード・シーケンシング技術(すなわち、約50~500ヌクレオチド)と適合するより小さな断片に細分される。ショットガンライブラリーを調製するために、高分子量核酸鎖(典型的には、cDNA又はゲノムDNA)をランダム断片に剪断し、共通末端配列(すなわち、アダプター)のライゲーションによって任意に修飾し、下流のプロセス及び分析のためにサイズ選択する。例えば、ショットガンライブラリー内の核酸のサブセットを選択的に捕捉することが有用であり得る。
【0002】
現在、2つの一般的なカテゴリーの捕捉技術:ハイブリダイゼーションに基づく捕捉及び増幅に基づく捕捉が存在する。ハイブリダイゼーションに基づく捕捉方法は、元のライブラリー断片のサブセットのみを複製及び回収するのとは対照的に、元のショットガンライブラリー断片全体の回収を可能にするという利点を提供する。しかしながら、ハイブリダイゼーションに基づく捕捉に関連するオンターゲット率は、一般に、増幅に基づく方法と比較して低い。特に、より低いオンターゲット率は、オフターゲット捕捉産物をシーケンシングする必要があるため、シーケンシング能力の浪費をもたらす。さらに、ハイブリダイゼーションに基づく捕捉方法に関連するワークフローは、増幅に基づくアプローチと比較して長いターンアラウンド時間で複雑になり得る。対照的に、アンカリングされたマルチプレックスPCR法などの増幅に基づくアプローチは、ハイブリダイゼーションに基づく方法と比較して、単純なワークフロー、より速いターンアラウンド時間及びより高いオンターゲット率の利点を提供するが、いくつかの欠点が残っている。例えば、増幅後にライブラリー断片に組み込まれた標的捕捉プライマー配列は、シーケンシング能力の浪費をもたらす。さらに、鋳型は標的特異的プライマー結合部位で必ず切断されるので、ライブラリー断片は必ずしも元のショットガンライブラリーを表すものではない。
【0003】
いくつかの実施形態では、ショットガン標的捕捉技術は、ビオチン化プライマーのハイブリダイゼーション及び伸長を含む。いくつかの実施形態では、これに続いて、ストレプトアビジン結合磁気ビーズを使用して標的濃縮する。いくつかの実施形態では、結合した標的ライブラリー断片を、非ビオチン化標的放出プライマーを使用してストレプトアビジンから放出するか、又はストレプトアビジンビーズから直接増幅することができる(例えば、米国特許出願公開第2020/0032244号及び同第2018/0016630号を参照。これらの開示は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)。しかし、いくつかの実施形態では、標的捕捉プライマーはミスプライムする場合があり、したがって、望ましくないライブラリー分子を捕捉し濃縮する場合があり、それが下流で増幅されシーケンシングされ得る。これは、(i)望ましくない分子の存在量が標的分子の存在量をはるかに超える場青(cDNAライブラリーは典型的には約95%のrRNA及び約5%のmRNA由来分子を含むので、例えばcDNAライブラリー中のリボソームRNA(rRNA)由来分子の存在量が高いこと)、及び/又は(ii)野生型転写物と比較して特定の融合転写物の存在量が少ないために検出が困難になる場合に、問題となり得ると考えられる。
【0004】
望ましくないライブラリー分子の枯渇は、次世代シーケンシングライブラリーを調製及び分析する際に繰り返されるテーマである。例えば、rRNAは、哺乳動物の組織又は細胞株試料から抽出された全RNAの少なくとも90%を含む。大規模並列処理シーケンシング技術を用いた情報価値のある転写プロファイリングは、成熟ポリ-アデニル化転写物の濃縮又はrRNA画分の標的枯渇のいずれかを必要とする。リボソーム枯渇は、非常に豊富なrRNA種の除去による、機能的に関連するコード転写物と非コード転写物の効率的な検出を可能にするトランスクリプトミクス
の重要な段階である。cDNA合成の前に行われるようなリボソーム枯渇は、時間がかかり、かつ/又は高価であると考えられる。
【発明の概要】
【0005】
開示の簡単な概要
ショットガン捕捉のハイブリダイゼーション及び伸長工程中のミスプライミング事象を減少させることが望ましい。時間と費用がかかるrRNA枯渇法の使用を避けることも望ましい。いくつかの実施形態では、本開示は、任意のハイブリダイゼーション及び伸長工程中に標的捕捉プライマーと共にポイズンプライマーが含まれる改変ショットガン標的捕捉アプローチを提供する。標的捕捉プライマーと比較して捕捉部分を含まないポイズンプライマーを含めることにより、標的濃縮中にしばしば観察されるミスプライミング及びオフターゲット効果を防止又は低減することができると考えられる。標的捕捉プライマーと共にポイズンプライマーを導入する本開示の方法は、捕捉及び濃縮工程中のrRNA枯渇を依然として促進しながら、時間のかかるrRNA除去方法、例えばリボソーム枯渇の必要性を回避するとさらに考えられる。さらに、本開示の方法は、所望の標的核酸配列を検出するのに必要なシーケンシングの深度を減少させることができると考えられる。
【0006】
本開示の一態様は、核酸分子のライブラリー中の少なくとも1つの標的核酸分子を濃縮する方法であって、第1の標的捕捉プライマーを核酸分子のライブラリー中の第1の標的核酸分子にハイブリダイズさせることであって、第1の標的捕捉プライマーが捕捉部分を含む、第1の標的捕捉プライマーをハイブリダイズさせることと、第1のポイズンプライマーを核酸分子のライブラリー中の第1の非標的核酸分子にハイブリダイズさせることであって、第1のポイズンプライマーが捕捉部分を含まない、第1のポイズンプライマーをハイブリダイズさせることと、ハイブリダイズした第1の標的捕捉プライマーとハイブリダイズした第1のポイズンプライマーの両方を伸長することであって、ハイブリダイズした第1の標的捕捉プライマーの伸長が、第1の標的核酸分子と伸長された第1の標的捕捉プライマーとを含む第1の標的捕捉プライマー伸長複合体を提供する、ハイブリダイズした第1の標的捕捉プライマーとハイブリダイズした第1のポイズンプライマーの両方を伸長することと、核酸分子のライブラリー中で、核酸分子のライブラリーに対して第1の標的核酸分子を濃縮することと、を含む方法である。いくつかの実施形態では、第1の標的捕捉プライマー及び第1のポイズンプライマーは、プライマーのプールとしてライブラリーに添加される。いくつかの実施形態では、核酸分子のライブラリー中の核酸分子のそれぞれは、第1のアダプターを含む第1の末端及び第2のアダプターを含む第2の末端を含む いくつかの実施形態では、方法は、リボソーム枯渇工程を行うことを含まない。
【0007】
いくつかの実施形態では、ハイブリダイズした第1のポイズンプライマーの伸長は、第1の標的捕捉プライマーが第1の非標的核酸分子にハイブリダイズすることを防止又は軽減し、すなわち、ハイブリダイズした第1のポイズンプライマーの伸長は、ミスプライミングを防止又は軽減する。他の実施形態では、ハイブリダイズした第1のポイズンプライマーの伸長は、第1の非標的核酸分子にハイブリダイズした第1の標的プライマーを移動させる、すなわち、第1のハイブリダイズしたポイズンプライマーの伸長は、第1の非標的核酸分子にミスプライムした第1の標的プライマーを置換する。
【0008】
いくつかの実施形態では、本方法は、第1の標的核酸分子を第1の増幅プライマー及び第2の増幅プライマーによって増幅することをさらに含み、第1の増幅プライマーは第1のアダプターに相補的な3’末端を含み、第2の増幅プライマーは第2のアダプターに相補的な3’末端を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、増幅された標的核酸分子をシーケンシングすることをさらに含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、核酸分子のライブラリーに対して第1の標的核酸分子の濃縮は、(i)第1の標的捕捉プライマー伸長複合体を捕捉すること、(i)捕捉されていない非標的核酸分子を除去すること、及び(ii)捕捉された第1の標的捕捉プライマー伸長複合体から第1の標的核酸分子を放出させることを含む。いくつかの実施形態では、第1の標的捕捉プライマー伸長複合体の捕捉は、第1の標的捕捉プライマー伸長複合体を官能化基質と接触させることを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、第1の標的捕捉プライマーの捕捉部分は、一対の特異的結合実体の第1のメンバーを含み、官能化基質は、一対の特異的結合実体の第2のメンバーを含む。いくつかの実施形態では、一対の特異的結合実体の第1のメンバーは、ビオチン、抗原性分子、酵素基質、受容体リガンド、多糖、チオール化分子及びアミン末端分子からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、一対の特異的結合実体の第2のメンバーは、ストレプトアビジン、抗体、酵素、受容体、レクチン、金粒子及びNHS活性化部分からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、第1の標的捕捉プライマーの捕捉部分はビオチンを含む。いくつかの実施形態では、官能基化表面はストレプトアビジンを含む。いくつかの実施形態では、官能化基質は、一対の特異的結合実体の第2のメンバーで官能化された表面を有するビーズを含む。いくつかの実施形態では、官能化基質は、複数のストレプトアビジン分子を含む表面を有するビーズを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、第1の標的捕捉プライマーは、核酸分子のライブラリー中の第1の標的核酸分子に第1の標的捕捉プライマーをハイブリダイズさせる前に、捕捉部分を介して基質に結合される。いくつかの実施形態では、第1の標的捕捉プライマーの第1の標的核酸分子へのハイブリダイズ及び/又はハイブリダイズした第1の標的捕捉プライマーの伸長により、第1の標的核酸分子を基質に捕捉する。
【0012】
いくつかの実施形態では、第1の標的捕捉プライマー伸長複合体の捕捉は、以下を含む:(i)ユニバーサル捕捉オリゴヌクレオチドを第1の標的捕捉プライマー伸長複合体の捕捉部分にハイブリダイズさせてユニバーサル捕捉オリゴヌクレオチド複合体を形成することであって、ユニバーサル捕捉オリゴヌクレオチドが、(a)一対の特異的結合実体の第1のメンバー及び(b)捕捉部分の捕捉配列の少なくとも一部に相補的なヌクレオチド配列を含む、ユニバーサル捕捉オリゴヌクレオチド複合体を形成することと、(ii)ユニバーサル捕捉複合体を官能化基質と接触させることであって、官能化基質が一対の特異的結合実体の第2のメンバーを含む、ユニバーサル捕捉複合体を官能化基質と接触させること。
【0013】
いくつかの実施形態では、捕捉されていない核酸分子の除去は、捕捉されていない非標的核酸分子を洗い流すことを含む。いくつかの実施形態では、捕捉された第1の標的捕捉プライマー伸長複合体の放出は、以下:(i)第1の標的核酸分子に放出プライマーをハイブリダイズさせることと、(b)ハイブリダイズした放出プライマーを伸長させることと、を含む。いくつかの実施形態では、ハイブリダイズした第1の標的捕捉プライマーは、第1のポリメラーゼによって伸長され、ハイブリダイズした放出プライマーは、第2のポリメラーゼによって伸長される。いくつかの実施形態では、第1のポリメラーゼと第2のポリメラーゼは異なる。いくつかの実施形態では、第1の標的捕捉プライマーは、第1のポイズンプライマーの融解温度よりも高い融解温度を有する。
【0014】
いくつかの実施形態では、核酸分子のライブラリーは、複数の標的核酸分子及び複数の非標的核酸分子を含み、複数の標的核酸分子は、複数の非標的核酸分子と比較して低存在量である。いくつかの実施形態では、複数の標的核酸分子は、核酸分子のライブラリー中の核酸分子の約10%未満を含む。いくつかの実施形態では、複数の標的核酸分子は、核酸分子のライブラリー中の核酸分子の約5%未満を含む。いくつかの実施形態では、複数の標的核酸分子は、mRNA由来核酸分子を含む。いくつかの実施形態では、複数の標的核酸分子は、融合転写物を含む。
【0015】
本開示の別の態様は、核酸分子のライブラリー中の標的核酸分子に相補的であり、捕捉部分を含む第1の標的捕捉プライマーと、核酸分子のライブラリー中の非標的核酸分子に相補的であり、捕捉部分を含まない第1のポイズンプライマーとを含む、キットである。いくつかの実施形態では、第1の標的捕捉プライマーは、約55℃~約65℃の範囲のTmを有する。いくつかの実施形態では、第1のポイズンプライマーは、約65℃~約68℃.の範囲のTmを有する。いくつかの実施形態では、キットは、少なくとも1つのポリメラーゼをさらに含む。いくつかの実施形態では、キットは、少なくとも2つの異なるポリメラーゼをさらに含む。いくつかの実施形態では、キットは、複数のヌクレオチドをさらに含む。いくつかの実施形態では、キットは、1又は複数の緩衝液及び/又は洗浄液をさらに含む。いくつかの実施形態では、キットは、官能化表面を有するビーズをさらに含む。いくつかの実施形態では、キットは、1又は複数の放出プライマーをさらに含む。いくつかの実施形態では、キットは、第1及び第2の増幅プライマーをさらに含む。
【0016】
本開示の別の態様は、複数の標的核酸分子及び複数の非標的核酸分子を含む核酸分子ライブラリーであって、複数の標的核酸分子が複数の非標的核酸分子と比較して低存在量である、核酸分子ライブラリーと、核酸分子のライブラリー中の第1の標的核酸分子に相補的であり、捕捉部分を含む第1の標的捕捉プライマーと、核酸分子のライブラリー中の第1の非標的核酸分子に相補的であり、捕捉部分を含まない第1のポイズンプライマーと、第1のポリメラーゼと、を含む組成物である。いくつかの実施形態では、組成物は、第1のポリメラーゼとは異なる第2のポリメラーゼをさらに含む。いくつかの実施形態では、組成物は、官能化基質をさらに含む。いくつかの実施形態では、組成物は、1又は複数のアダプター分子をさらに含む。いくつかの実施形態では、組成物は、1又は複数の放出プライマーをさらに含む。いくつかの実施形態では、組成物は、第1及び第2の増幅プライマーをさらに含む。
【0017】
本開示の別の態様は、複数の標的核酸分子及び複数の非標的核酸分子を含む核酸分子ライブラリーと、核酸分子のライブラリー中の第1の標的核酸分子の一部にハイブリダイズした第1の標的捕捉プライマーであって、官能化基質に結合した捕捉部分を含む第1の標的捕捉プライマーと、核酸分子のライブラリー中の第1の非標的核酸分子の一部にハイブリダイズした第1のポイズンプライマーであって、捕捉部分を含まない第1のポイズンプライマーと、を含む組成物である。いくつかの実施形態では、複数の標的核酸分子は、複数の非標的核酸分子と比較して低存在量である。
【0018】
いくつかの実施形態では、捕捉部分は、一対の特異的結合実体の第1のメンバーを含む。いくつかの実施形態では、官能化基質は、一対の特異的結合実体の第2のメンバーで官能化された表面を有するビーズである。いくつかの実施形態では、一対の特異的結合実体の第1のメンバーは、ビオチン、抗原性分子、酵素基質、受容体リガンド、多糖、チオール化分子及びアミン末端分子からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、一対の特異的結合実体の第2のメンバーは、ストレプトアビジン、抗体、酵素、受容体、レクチン、金粒子及びNHS活性化部分からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、第1の標的捕捉プライマーの捕捉部分はビオチンを含む。いくつかの実施形態では、官能基化表面はストレプトアビジンを含む。
【0019】
本開示の別の態様は、標的核酸分子が濃縮された組成物であり、組成物は、以下によって調製される:(i)第1の標的捕捉プライマーを核酸分子のライブラリー中の第1の標的核酸分子にハイブリダイズさせることであって、核酸分子のライブラリーが複数の標的核酸分子及び複数の非標的核酸分子を含み、複数の標的核酸分子が複数の非標的核酸分子と比較して低存在量であり、第1の標的捕捉プライマーが捕捉部分を含む、第1の標的捕捉プライマーをハイブリダイズさせることと、(ii)第1のポイズンプライマーを核酸分子のライブラリー中の第1の非標的核酸分子にハイブリダイズさせることであって、第1のポイズンプライマーが捕捉部分を含まない、第1のポイズンプライマーをハイブリダイズさせることと、(iii)ハイブリダイズした第1の標的捕捉プライマーとハイブリダイズした第1のポイズンプライマーの両方を伸長することであって、ハイブリダイズした第1の標的捕捉プライマーの伸長が、第1の標的核酸分子と伸長された第1の標的捕捉プライマーとを含む第1の標的捕捉プライマー伸長複合体を提供する、ハイブリダイズした第1の標的捕捉プライマーとハイブリダイズした第1のポイズンプライマーの両方を伸長することと、(iv)核酸分子のライブラリー中で、核酸分子のライブラリーに対して第1の標的核酸分子を濃縮すること。
【0020】
いくつかの実施形態では、組成物は、低存在量の融合転写物が濃縮されている。いくつかの実施形態では、組成物は、mRNA由来分子が濃縮されている。いくつかの実施形態では、標的核酸分子が濃縮された組成物は、リボソーム枯渇工程を行わずに調製される。
【0021】
いくつかの実施形態では、第1の標的捕捉プライマー及び第1のポイズンプライマーは、プライマーのプールとしてライブラリーに添加される。いくつかの実施形態では、核酸分子のライブラリー中の核酸分子のそれぞれは、第1のアダプターを含む第1の末端及び第2のアダプターを含む第2の末端を含む
【0022】
いくつかの実施形態では、本方法は、第1の標的核酸分子を第1の増幅プライマー及び第2の増幅プライマーによって増幅することをさらに含み、第1の増幅プライマーは第1のアダプターに相補的な3’末端を含み、第2の増幅プライマーは第2のアダプターに相補的な3’末端を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、増幅された標的核酸分子をシーケンシングすることをさらに含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、核酸分子のライブラリーに対して第1の標的核酸分子の濃縮は、(i)第1の標的捕捉プライマー伸長複合体を捕捉すること、(i)捕捉されていない非標的核酸分子を除去すること、及び(ii)捕捉された第1の標的捕捉プライマー伸長複合体から第1の標的核酸分子を放出させることを含む。いくつかの実施形態では、第1の標的捕捉プライマー伸長複合体の捕捉は、第1の標的捕捉プライマー伸長複合体を官能化基質と接触させることを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、第1の標的捕捉プライマーの捕捉部分は、一対の特異的結合実体の第1のメンバーを含み、官能化基質は、一対の特異的結合実体の第2のメンバーを含む。いくつかの実施形態では、一対の特異的結合実体の第1のメンバーは、ビオチン、抗原性分子、酵素基質、受容体リガンド、多糖、チオール化分子及びアミン末端分子からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、一対の特異的結合実体の第2のメンバーは、ストレプトアビジン、抗体、酵素、受容体、レクチン、金粒子及びNHS活性化部分からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、第1の標的捕捉プライマーの捕捉部分はビオチンを含む。いくつかの実施形態では、官能基化表面はストレプトアビジンを含む。いくつかの実施形態では、官能化基質は、一対の特異的結合実体の第2のメンバーで官能化された表面を有するビーズを含む。いくつかの実施形態では、官能化基質は、複数のストレプトアビジン分子を含む表面を有するビーズを含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、第1の標的捕捉プライマーは、核酸分子のライブラリー中の第1の標的核酸分子に第1の標的捕捉プライマーをハイブリダイズさせる前に、捕捉部分を介して基質に結合される。いくつかの実施形態では、第1の標的捕捉プライマーの第1の標的核酸分子へのハイブリダイズ及び/又はハイブリダイズした第1の標的捕捉プライマーの伸長により、第1の標的核酸分子を基質に捕捉する。
【0026】
いくつかの実施形態では、第1の標的捕捉プライマー伸長複合体の捕捉は、以下:(i)ユニバーサル捕捉オリゴヌクレオチドを第1の標的捕捉プライマー伸長複合体の捕捉部分にハイブリダイズさせてユニバーサル捕捉オリゴヌクレオチド複合体を形成することであって、ユニバーサル捕捉オリゴヌクレオチドが、(a)一対の特異的結合実体の第1のメンバー及び(b)捕捉部分の捕捉配列の少なくとも一部に相補的なヌクレオチド配列を含む、ユニバーサル捕捉オリゴヌクレオチド複合体を形成することと、(ii)ユニバーサル捕捉複合体を官能化基質と接触させることであって、官能化基質が一対の特異的結合実体の第2のメンバーを含む、ユニバーサル捕捉複合体を官能化基質と接触させることと、を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、捕捉されていない核酸分子の除去は、捕捉されていない非標的核酸分子を洗い流すことを含む。いくつかの実施形態では、捕捉された第1の標的捕捉プライマー伸長複合体の放出は、以下:(i)第1の標的核酸分子に放出プライマーをハイブリダイズさせることと、(b)ハイブリダイズした放出プライマーを伸長させることと、を含む。いくつかの実施形態では、ハイブリダイズした第1の標的捕捉プライマーは、第1のポリメラーゼによって伸長され、ハイブリダイズした放出プライマーは、第2のポリメラーゼによって伸長される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本開示の特徴の一般的な理解のために、図面を参照する。図面では、同一の要素を特定するために、全体を通して同様の参照符号が使用されている。本特許又は出願ファイルには、カラーで作成された少なくとも1つの図面が含まれている。カラー図面(複数可)を含む本特許又は特許出願公開のコピーは、申請に応じて、必要な手数料を支払うことにより、特許庁から提供されることになる。
【0029】
【
図1A】核酸ライブラリーからの非標的核酸分子の標的化された枯渇を達成するための標的捕捉プライマーと組み合わせたポイズンプライマーの使用の概要を提供する。いくつかの実施形態では、非標的核酸分子は、rRNA由来cDNA分子である。
【
図1B】バックグラウンド分子のライブラリーを枯渇させることによる次世代シーケンシング捕捉ライブラリーからの標的核酸分子の濃縮を達成するための標的捕捉プライマーと組み合わせたポイズンプライマーの使用の概要を提供する。いくつかの実施形態では、標的核酸分子は融合転写物である。
【
図2A】本開示の一実施形態による、調製された核酸ライブラリー内の標的核酸分子を濃縮する方法の概要を示す。
【
図2B】本開示の一実施形態による、調製された核酸ライブラリー内の標的核酸分子を濃縮する方法を示す。
【
図2C】本開示の一実施形態による、標的核酸分子の少なくとも一部と、伸長されたハイブリダイズした標的捕捉プライマーとを含む形成された複合体から標的核酸分子を遊離させる方法を示す。
【
図3A】本開示の一実施形態による、非標的核酸分子に沿ったポイズンプライマーのハイブリダイゼーション及び伸長が、標的捕捉プライマーの非標的核酸へのミスプライミングの発生を防止又は低減する、プライマー伸長標的濃縮の方法を示す。
【
図3B】ユニバーサル捕捉オリゴヌクレオチドを利用する標的核酸分子捕捉の代替方法を示す。
【
図4】本開示の一実施形態による、非標的核酸分子に沿ったポイズンプライマーのハイブリダイゼーション及び伸長が、ミスプライミングされた標的捕捉プライマーから標的捕捉部分を切断する、プライマー伸長標的濃縮の方法を示す。
【
図5】本開示の一実施形態による、標的核酸分子に対するハイブリダイゼーションの前に、標的捕捉プライマーが捕捉部分を介して基質に結合される、
図3Aに示される方法の代替実施形態を示す。
【
図6】本開示の一実施形態による、標的核酸分子に対するハイブリダイゼーションの前に、標的捕捉プライマーが捕捉部分を介して基質に結合される、
図4に示される方法の代替実施形態を示す。
図6は、捕捉部分を介して基質に結合した標的捕捉プライマーが非標的核酸分子に対してミスプライミングされ得、基質に結合した捕捉部分がハイブリダイズしたポイズンプライマーの伸長によって遊離され得ることをさらに示す。
【
図7】本開示の一実施形態による、標的核酸分子の増幅及び/又はシーケンシングの前に、伸長されたハイブリダイズした標的捕捉プライマーを標的核酸分子から放出する方法を示す。
【
図8】sgPETEが、ライブラリー調製及び捕捉へのインプットとして10ngのUHR RNAを使用したシーケンシングリードにおいて平均約45%のrRNAリードを示した実験の結果を示す。1μMのポイズンプライマーをsgPETE捕捉反応に含めた場合、rRNAリードの平均数は約25%低かった。リボ枯渇試料では、ポイズンプライマーの包含はオフターゲット・リードの有意な増加をもたらさなかった。
【
図9A】350万にサブサンプリングされたシーケンシングリードの内訳を示す。ポイズンプライマーを用いて、対照試料中に233万(±17万)個の融合標的リード及び105万(±8万)個の融合リードを含めた。
【
図9B】対照試料が同様の数の融合標的を検出するのに必要な理論的なシーケンシングの深度及びリードの内訳を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
詳細な説明
反対に明確に示されない限り、複数の工程又は行為を含む本明細書において特許請求の範囲に記載される任意の方法において、方法の工程又は行為の順序は、必ずしも方法の工程又は行為が記載される順序に限定されないことも理解されたい。
【0031】
定義
【0032】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。同様に、「又は」という単語は、文脈が別途明確に指示しない限り、「及び」を含むことを意図している。「含む」という用語は、「A又はBを含む」がA、B、又はA及びBを含むことを意味するように、包括的に定義される。
【0033】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、「又は」は、上記で定義された「及び/又は」と同じ意味を有することを理解されたい。例えば、リスト内の項目を区切る場合、「又は」又は「及び/又は」は、包括的であると解釈されるものとし、例えば、要素の数又はリストの少なくとも1つを含むが、複数、及び任意に、追加のリストに記載されていない項目を含むと解釈される。「のうちの1つのみ」又は「のうちの正確に1つ」、又は特許請求の範囲で使用される場合、「からなる」など、反対に明確に示される用語のみは、数又は要素のリストのうちの正確に1つの要素を含むことを指す。一般に、ここで使用される「又は」という用語は、「いずれか」、「のうちの1つ」、「のうちの1つのみ」又は「のうちの正確に1つ」など、排他性の用語が先行する場合にのみ、排他的な代替案(例えば、「一方又は他方であるが双方ではない」)を示すものとしてのみ解釈されるものとする。「から本質的に構成される」は、特許請求の範囲で使用される場合、特許法の分野で使用される通常の意味を有するものとする。
【0034】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」などの用語は、交換可能に使用され、同じ意味を有する。同様に、「含む(comprises)」、「含む(includes)」、「有する(has)」などは、交換可能に使用され、同じ意味を有する。具体的には、各用語は、「含む(comprising)」という一般的な米国特許法の定義と一致して定義されているため、「少なくとも以下」を意味するオープンな用語として解釈され、また、追加の特徴、制限、態様などを除外しないように解釈される。したがって、例えば、「構成要素a、b、及びcを有するデバイス」は、デバイスが少なくとも構成要素a、b、及びcを含むことを意味する。同様に、語句:「工程a、b、及びcを含む方法」は、方法が少なくとも工程a、b、及びcを含むことを意味する。さらに、工程及びプロセスは、ここにおいて特定の順序で概説され得るが、当業者は、順序付けの工程及びプロセスが変化し得ることを認識するであろう。
【0035】
本明細書の明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、1つ以上の要素のリストに関連する「少なくとも1つ」という句は、要素のリストの任意の1つ以上の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味すると理解されるべきであるが、必ずしも要素のリスト内に具体的にリスト化されているありとあらゆる要素の少なくとも1つを含まなくてもなく、要素のリスト内の要素の任意の組み合わせを除外するものではない。この定義はまた、「少なくとも1つ」という句が参照する要素のリスト内で具体的に特定される要素以外の要素が、具体的に特定されるそれらの要素に関連するかどうかにかかわらず、任意に存在し得ることを可能にする。したがって、非限定的な例として、「A及びBの少なくとも1つ」(又は、同等に、「A又はBの少なくとも1つ」、又は同等に「A及び/又はBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、少なくとも1つ、任意に1つを超えるAを含み、Bが存在しない(及び任意に、B以外の要素を含む)を指すことができ、別の実施形態では、少なくとも1つ、任意に1つを超えるBを含み、Aが存在しない(及び任意に、A以外の要素を含む)を指すことができ、さらに別の実施形態では、少なくとも1つ、任意に1つを超えるAを含み、少なくとも1つ、任意に1つを超えるBを含む(及び任意に、他の要素を含む)を指すことができるなどである。
【0036】
本明細書全体を通して「一実施形態」又は「実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造又は特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して種々の場所における「一実施形態において」又は「実施形態において」という句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指すとは限らない。さらにまた、特定の特徴、構造、又は特性は、1つ又は複数の実施形態において、任意の適切な方法で組み合わせられることができる。
【0037】
「アダプター」という用語は、別の配列に追加の特性をもたらすために該配列に付加することができるヌクレオチド配列を指す。アダプターは、一本鎖若しくは二本鎖であり得るか、又は一本鎖部分及び二本鎖部分の両方を有していてもよい。
【0038】
本明細書で使用される場合、「増幅」は、コピー数が増加するプロセスを指す。増幅は、複製が経時的に繰り返し起こり、鋳型の複数のコピーを形成するプロセスであり得る。増幅は、増幅が進行するにつれてコピー数の指数関数的又は線形的な増加をもたらし得る。例示的な増幅戦略には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ループ媒介等温増幅(LAMP)、ローリングサークル複製(RCA)、カスケードRCA、核酸に基づく増幅(NASBA)などが含まれる。また、増幅は、線形又は環状鋳型を利用することができる。増幅は、熱サイクル又は等温などを用いて任意の適切な温度条件下で行うことができる。さらに、増幅は、増幅混合物(又は試薬混合物)中で行うことができ、これは、混合物中に核酸標的がある場合は、核酸標的を増幅することができる任意の組成物である。PCR増幅は、連続した複製ラウンドを達成するための加熱及び冷却の反復サイクル(すなわち、熱サイクル)に依存する。PCRは、より高い変性温度及びより低いアニーリング/伸長温度などの2つ以上の温度設定点間、又はとりわけ、より高い変性温度、より低いアニーリング温度、及び中間伸長温度などの3つ以上の温度設定点間の熱サイクルによって行うことができる。PCRは、Taq DNAポリメラーゼなどの耐熱性ポリメラーゼを用いて行うことができる。PCRは一般に、連続サイクルにわたって産物アンプリコンの量の指数関数的増加をもたらす。
【0039】
本明細書で使用される場合、「相補的」という用語は、一般に、2つのヌクレオチド間の正確な対形成能を指す。「相補的」という用語は、適切な温度及びイオン緩衝条件で2つのヌクレオチドの塩基間に好ましい熱力学的安定性及び特異的対形成を形成する能力を指す。相補性は、アデニン、チミン(RNAにおいてはウラシル)、グアニン及びシトシンの核酸塩基間の異なる相互作用によって達成され、ここで、アデニンはチミン又はウラシルと対になっており、グアニンはシトシンと対になっている。例えば、核酸の所与の位置のヌクレオチドが別の核酸のヌクレオチドと水素結合することができる場合、その2つの核酸は、その位置で互いに相補的であると考えられる。2つの一本鎖核酸分子間の相補性は、ヌクレオチドの一部のみが結合する「部分的」であってもよく、又は一本鎖分子間に全相補性が存在する場合は完全であってもよい。第1のヌクレオチド配列は、第1のヌクレオチド配列が第2のヌクレオチド配列に相補的である場合、第2の配列の「相補体(complement)」であると言うことができる。第1のヌクレオチド配列は、第1のヌクレオチド配列が第2の配列の逆である(すなわち、ヌクレオチドの順序が逆である)配列に相補的である場合、第2の配列の「逆相補体」であると言うことができる。
【0040】
本明細書で使用される場合、「相補DNA」又は「cDNA」という用語は、RNAからコピーされるDNAを指す。いくつかの実施形態では、cDNAは、逆転写酵素(RNA依存性DNAポリメラーゼ)の作用によってRNA鋳型上で産生されるDNAである。mRNAからコピーされたcDNAは、ゲノムDNAに特徴的な様々な非コード配列を含まない。
【0041】
本明細書で使用される場合、本明細書で使用される「cDNAライブラリー」という用語は、細胞又は組織型で発現されるメッセンジャーRNAを表すcDNAの集合体を指す。
【0042】
本明細書で使用される場合、「コンジュゲート」という用語は、より大きな構築物に共有結合している2つ以上の分子(及び/又はナノ粒子などの材料)を指す。いくつかの実施形態において、コンジュゲートは、1つ又は複数の他の分子、例えば1つ又は複数の他の生体分子に共有結合された1つ以上の生体分子(ペプチド、タンパク質、酵素、糖、多糖類、脂質、糖タンパク質、及びリポタンパク質など)を含む。
【0043】
本明細書で使用される場合、「濃縮」という用語は、処理前の試料中に最初に存在する分子の総量に対する試料中の分子、例えば核酸分子の集団の相対的存在量を増加させるプロセスを指す。したがって、濃縮工程は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応などの増幅方法が行うように、目的の核酸配列のコピー数を直接増加させるのではなく、割合又は分数の増加を提供する。
【0044】
本明細書で使用される場合、「流体」という用語は、水、溶媒、緩衝液、溶液(例えば、極性溶媒、非極性溶媒)、洗液又は洗浄液、及び/又は混合物を含む任意の液体又は液体組成物を指す。流体は、水性又は非水性であってもよい。いくつかの実施形態では、洗浄液は、スライドの検体を有する表面上への洗浄液の拡散を容易にするための界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、酸性溶液は、脱イオン水、酸(例えば、酢酸)、及び溶媒を含む。いくつかの実施形態では、アルカリ溶液は、脱イオン水、塩基、及び溶媒を含む。いくつかの実施形態では、移送溶液は、1つ以上のグリコールエーテル、例えば1つ以上のプロピレン系グリコールエーテル(例えば、プロピレングリコールエーテル、ジ(プロピレングリコール)エーテル及びトリ(プロピレングリコール)エーテル、エチレン系グリコールエーテル(例えば、エチレングリコールエーテル、ジ(エチレングリコール)エーテル及びトリ(エチレングリコール)エーテル)及びそれらの官能性類似体を含む。
【0045】
緩衝剤の非限定的な例は、クエン酸、リン酸二水素カリウム、ホウ酸、ジエチルバルビツール酸、ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)、ジメチルアルシン酸、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン(TRIS)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(TAPS)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン(ビシン)、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン(トリシン)、4-2-ヒドロキシエチル-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、2-{[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ}エタンスルホン酸(TES)、及びそれらの組み合わせを含む。他の実施形態では、緩衝液は、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン(TRIS)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(TAPS)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン(ビシン)、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン(トリシン)、4-2-ヒドロキシエチル-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、2-{[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ}エタンスルホン酸(TES)、又はそれらの組み合わせから構成されることができる。追加の洗浄溶液、移送溶液、酸性溶液、及びアルカリ性溶液は、米国特許出願公開第2016/0282374号に記載されており、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0046】
本明細書で使用される場合、「ハイブリダイズする」という用語は、それらのヌクレオチド配列と一致する異なる核酸分子間の塩基対合を指す。
【0047】
本明細書で使用される場合、「次世代シーケンシング(NGS)」という語句は、従来のサンガー及びキャピラリー電気泳動に基づくアプローチと比較してハイスループットシーケンシングを有するシーケンシング技術を指し、シーケンシングプロセスは並行して実行され、例えば一度に数千又は数百万の比較的小さな配列リードを生成する。次世代シーケンシング技術のいくつかの例には、合成によるシーケンシング、ライゲーションによるシーケンシング、及びハイブリダイゼーションによるシーケンシングが含まれるが、これらに限定されない。これらの技術は、より短いリード(約25~約500bpのどこか)を生成するが、比較的短い時間で数十万又は数百万ものリードを生成する。「次世代シーケンシング」という用語は、Illumina、Life Technologies及びHelicos Biosciencesによって現在採用されている、いわゆる並列化された、合成によるシーケンシング(sequencing-by-synthesis)又はライゲーションによるシーケンシング(sequencing-by-ligation)のプラットフォームを指す。次世代シーケンシング法には、電子検出を用いたナノポアシーケンシング法(Oxford Nanopore及びRoche Diagnostics)も含まれ得る。
【0048】
本明細書で使用される場合、「核酸」又は「ポリヌクレオチド」(本明細書で互換的に使用される)という用語は、デオキシリボヌクレオチド若しくはリボヌクレオチドのいずれか、又はそれらの類似体の、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。ポリヌクレオチドは、任意の三次元構造を有してもよく、既知又は未知の任意の機能を果たしてもよい。具体的に限定されない限り、この用語は、参照核酸と同様の結合特性を有し、天然に存在するヌクレオチドと同様の様式で代謝される天然ヌクレオチドの既知の類似体を含む核酸又はポリヌクレオチドを包含する。ポリヌクレオチドの非限定的な例としては、遺伝子又は遺伝子断片のコード領域又は非コード領域、系統解析から定義される遺伝子座(単数又は複数)、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、合成ポリヌクレオチド、組換えポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ及びプライマーが挙げられる。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド及びヌクレオチド類縁体等の修飾されたヌクレオチドを含んでもよい。存在する場合には、ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリマーのアセンブリの前に付与されても、又は後に付与されてもよい。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって中断され得る。ポリヌクレオチドは、標識成分とのコンジュゲーションなどによってさらに修飾されてもよい。特に示されない限り、特定の核酸配列はまた、暗に、それらの保存的に修飾されたバリアント(例えば、縮重コドン置換体)、対立遺伝子、オルソログ、SNP及び、相補的配列、同様に、明示された配列を包含する。具体的には、縮重コドン置換体は、1つ以上の選択された(又は、全ての)コドンの第3の位置が、混合基及び/又はデオキシイノシン残基と置換された配列を生成することによって達成され得る(Batzerら、Nucleic Acid Res.19:5081(1991)、Ohtsukaら、J.Biol.Chem.260:2605-2608(1985)、及びRossoliniら、Mol.Cell.Probes8:91-98(1994))。
【0049】
ここで使用される場合、「オリゴヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチド又はヌクレオシドモノマー単位のオリゴマーを指し、ここで、オリゴマーは、任意に、非ヌクレオチドモノマー単位、及び/又はオリゴマーの内部及び/又は外部位置に結合した他の化学基を含む。オリゴマーは天然又は合成であり得、天然に存在するオリゴヌクレオチド、又は天然に存在しない(又は修飾された)塩基、糖部分、ホスホジエステル-アナログ結合、及び/又は代替のモノマー単位キラリティー及び異性体構造を有するヌクレオシドを含むオリゴマーを含み得る(例えば、5’-から2’-への結合、L-ヌクレオシド、α-アノマーヌクレオシド、β-アノマーヌクレオシド、ロック核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA))。
【0050】
本明細書で使用される場合、任意の2つの異なる反応基(試薬及び粒子の任意の2つの反応基など)の間の「反応」は、2つの反応基(又は2つの反応性官能基)の間に共有結合が形成されることを意味し得るか、又は、2つの反応基(又は2つの反応性官能基)が互いに会合し、互いに相互作用し、互いにハイブリダイズし、互いに水素結合することなどを意味し得る。いくつかの実施形態では、「反応」は、結合事象、例えば、反応性官能基間の結合事象又は一対の特異的結合実体の第1及び第2のメンバー間の結合事象を含む。
【0051】
本明細書で使用される場合、「ポリメラーゼ」という用語は、ポリヌクレオチドの、鋳型に向けられた合成を行う酵素を指す。DNAポリメラーゼは、新たに形成される鎖の3’末端にのみ遊離ヌクレオチドを付加することができる。これにより、新たに形成される鎖が5’-3’方向に伸長する。既知のDNAポリメラーゼは、新しい鎖を開始することができない(デノボ)。DNAポリメラーゼは、既存の3’-OH基にのみヌクレオチドを付加することができ、したがって、最初のヌクレオチドを付加することができるプライマーを必要とする。ポリメラーゼの非限定的な例としては、原核生物DNAポリメラーゼ(例えば、Pol I、Pol II、Pol III、Pol IV及びPol V)、真核生物DNAポリメラーゼ、古細菌DNAポリメラーゼ、テロメラーゼ、逆転写酵素及びRNAポリメラーゼが挙げられる。逆転写酵素は、RNA鋳型からDNAを合成するRNA依存性DNAポリメラーゼである。逆転写酵素ファミリーは、DNAポリメラーゼの機能性と、DNAと塩基対合したRNAを分解するRNaseHの機能性の両方を含む。RNAポリメラーゼは、遺伝子転写のプロセスでDNAを鋳型としてRNAを合成する酵素である。RNAポリメラーゼは、RNA転写物の3’末端でリボヌクレオチドを重合する。
【0052】
いくつかの実施形態では、以下からのポリメラーゼをポリメラーゼ媒介プライマー伸長、末端修飾(例えば、末端トランスフェラーゼ、分解又はポリッシュ)又は増幅反応に使用することができる:古細菌(例えば、Thermococcus litoralis(Vent、GenBank:AAA72101)、Pyrococcus furiosus(Pfu、GenBank:D12983、BAA02362)、Pyrococcus woesii、Pyrococcus GB-D(Deep Vent、GenBank:AAA67131)、Thermococcus kodakaraensis KODI(KOD、GenBank:BD175553、BAA06142;Thermococcus sp.KOD株(Pfx、GenBank:AAE68738))、Thermococcus gorgonarius(Tgo、Pdb:4699806)、Sulfolobus solataricus(GenBank:NC002754、P26811)、Aeropyrum pernix(GenBank:BAA81109)、Archaeglobus fulgidus(GenBank:029753)、Pyrobaculum aerophilum(GenBank:AAL63952)、Pyrodictium occultum(GenBank:BAA07579、BAA07580)、Thermococcus 9 degree Nm(GenBank:AAA88769、Q56366)、Thermococcus fumicolans(GenBank:CAA93738、P74918)、Thermococcus hydrothermalis(GenBank:CAC18555)、Thermococcus sp.GE8(GenBank:CAC12850)、Thermococcus sp.JDF-3(GenBank:AX135456;WO0132887)、Thermococcus sp.TY(GenBank:CAA73475)、Pyrococcus abyssi(GenBank:P77916)、Pyrococcus glycovorans(GenBank:CAC12849)、Pyrococcus horikoshii(GenBank:NP 143776)、Pyrococcus sp.GE23(GenBank:CAA90887)、Pyrococcus sp.ST700(GenBank:CAC 12847)、Thermococcus pacificus(GenBank:AX411312.1)、Thermococcus zilligii(GenBank:DQ3366890)、Thermococcus aggregans、Thermococcus barossii、Thermococcus celer(GenBank:DD259850.1)、Thermococcus profundus(GenBank:E14137)、Thermococcus siculi(GenBank:DD259857.1)、Thermococcus thioreducens、Thermococcus onnurineus NA1、Sulfolobus acidocaldarium、Sulfolobus tokodaii、Pyrobaculum calidifontis、Pyrobaculum islandicum(GenBank:AAF27815)、Methanococcus jannaschii(GenBank:Q58295)、Desulforococcus種TOK、Desulforococcus、Pyrolobus、Pyrodictium、Staphylothermus、Vulcanisaetta、Methanococcus(GenBank:P52025)及び他の古細菌Bポリメラーゼ、例えばGenBank AAC62712、P956901、BAAA07579))、好熱性細菌Thermus種(例えば、flavus、ruber、thermophilus、lacteus、rubens、aquaticus)、Bacillus stearothermophilus、Thermotoga maritima、Methanothermus fervidus、KODポリメラーゼ、TNA1ポリメラーゼ、Thermococcus sp.9 degrees N-7、T4、T7、phi29、Pyrococcus furiosus、P.abyssi、T.gorgonarius、T.litoralis、T.zilligii、T.sp.GT、P.sp.GB-D、KOD、Pfu、T.gorgonarius、T.zilligii、T.litoralis及びThermococcus sp.9N-7ポリメラーゼ。
【0053】
本明細書で使用される場合、用語「熱安定性ポリメラーゼ」とは、熱に対して安定であり、耐熱性であり、かつ、二本鎖核酸の変性を行うのに必要な時間にわたり高温に曝された場合に、続いてポリヌクレオチド伸長反応を行うのに充分な活性を保持し、不可逆的に変性(不活性化)されない、酵素を指す。核酸変性に必要な加熱条件は当技術分野で公知であり、例えば、米国特許第4,683,202号、同第4,683,195号及び同第4,965,188号に例示されており、これらは参照により本明細書に組み込まれている。本明細書で使用される場合、熱安定性ポリメラーゼは、ポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)、プライマー伸長反応、又は末端修飾(例えば、末端トランスフェラーゼ、分解又はポリッシュ)反応などの温度サイクル反応での使用に適している。本明細書の目的のための不可逆的変性とは、酵素活性の永続的かつ完全な喪失を指す。熱安定性ポリメラーゼでは、酵素活性は、鋳型核酸ストランドに相補的であるポリヌクレオチド伸長産物を形成するために適切な方式での、ヌクレオチドの組合せの触媒作用を指す。好熱性細菌由来の耐熱性DNAポリメラーゼとしては、例えば、Thermotoga maritima、Thermus aquaticus、Thermus thermophilus、Thermus flavus、Thermus filiformis、Thermus種sps17、Thermus種Z05、Thermus caldophilus、Bacillus caldotenax、Thermotoga neopolitana、Thermosipho africanus由来のDNAポリメラーゼ、及び上に開示される他の耐熱性DNAポリメラーゼが挙げられる。
【0054】
いくつかの場合では、核酸(例えば、DNA又はRNA)ポリメラーゼは、改変された天然に存在するA型ポリメラーゼであり得る。本発明のさらなる実施形態は、一般に、例えばプライマー伸長、末端修飾(例えば、末端トランスフェラーゼ、分解又は研磨(polishing))又は増幅反応における修飾A型ポリメラーゼが、メイオサーマス(Meiothermus)属、サーマトガ(Thermotoga)属又はテルモミクロビウム(Thermomicrobium)属の任意の種から選択され得る方法に関する。本発明の別の実施形態は、一般に、ポリメラーゼが、例えばプライマー伸長、末端修飾(例えば、末端トランスフェラーゼ、分解又は研磨)又は増幅反応において、サーマス・アクアチクス(Thermusaquaticus)(Taq)、サーマス・サーモフィラス(Thermusthermophilus)、サーマス・カルドフィラス(Thermuscaldophilus)又はサーマス・フィリフォルミス(Thermusfiliformis)のいずれかから単離され得る方法に関する。本発明のさらなる実施形態は、一般に、改変されたタイプAポリメラーゼが、例えばプライマー伸長、末端修飾(例えば、末端トランスフェラーゼ、分解又は研磨)又は増幅反応において、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、スファエロバクター・サーモフィルス(Sphaerobacter thermophilus)、ディクチオグロムス・サーモフィルム(Dictoglomus thermophilum)又はエシェリキア・コリ(Escherichia coli)から単離され得る方法を包含する。別の実施形態では、本発明は、一般に、例えばプライマー伸長、末端修飾(例えば、末端トランスフェラーゼ、分解又は研磨)又は増幅反応における改変されたA型ポリメラーゼが変異Taq-E507Kポリメラーゼであり得る方法に関する。本発明の別の実施形態は、一般に、熱安定性ポリメラーゼを使用して標的核酸の増幅を行い得る方法に関する。
【0055】
本明細書で使用される場合、「プライマー」という用語は、一本鎖鋳型核酸分子の特定の領域に結合し、プライマーの3’末端から伸長し、鋳型分子の配列に相補的なポリメラーゼ媒介酵素反応を介して核酸合成を開始するオリゴヌクレオチドを指す。PCR増幅プライマーは、「フォワード」及び「リバース」プライマーと呼ぶことができ、その一方は核酸鎖に相補的であり、他方はその鎖の相補体に相補的である。典型的には、プライマーは約100個未満のヌクレオチドを含み、好ましくは約30個未満のヌクレオチドを含む。例示的なプライマーは、約5~約25ヌクレオチドの範囲である。プライマーは、例えば、RNA及び/又はDNA塩基、並びに天然に存在しない塩基を含むことができる。新たに形成される鎖(娘鎖)の方向性は、DNAポリメラーゼが鋳型鎖に沿って移動する方向とは反対である。いくつかの場合では、標的捕捉プライマーは、ハイブリダイゼーション条件下で標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズする。そのようなハイブリダイゼーション条件には、等温増幅緩衝液(20mM Tris-HCl、10mM(NH4)2SO4)、50mM KCl、2mM MgSO4、0.1% TWEEN(登録商標)20、pH8.8、25℃)中、約40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、又は70℃の温度でのハイブリダイゼーションが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0056】
本明細書で使用される場合、「配列」という用語は、核酸分子に関して使用される場合、核酸分子中のヌクレオチド(又は塩基)の順序を指す。異なる種のヌクレオチドが核酸分子中に存在する場合、配列は、核酸分子中のそれぞれの位置におけるヌクレオチド(又は塩基)の種の特定を含む。配列は、核酸分子の全部又は一部の特性である。この用語は、タンパク質ポリマーのアミノ酸モノマー単位等の他のポリマー中のモノマー単位の順序及び位置同一性を説明するために同様に使用することができる。
【0057】
本明細書で使用される場合、「シーケンシング」という用語は、核酸分子中の塩基の順序及び位置の決定を指す。より詳細には、「シーケンシング」という用語は、DNAオリゴヌクレオチド中のヌクレオチド塩基、アデニン、グアニン、シトシン及びチミンの順序を決定するための生化学的方法を指す。シーケンシングは、この用語が本明細書で使用される場合、限定されないが、並列シーケンシング又は当業者に公知の任意の他のシーケンシング法、例えば、鎖終結法、迅速DNAシーケンシング法、ワンダリング-スポット分析、Maxam-Gilbertシーケンシング、色素ターミネーターシーケンシング、又は任意の他の最新の自動DNAシーケンシング装置を使用することを含み得る。
【0058】
本明細書で使用される場合、「基質」という用語は、捕捉部分と相互作用することができる任意の材料を指す。いくつかの実施形態では、基質は固体支持体である。いくつかの実施形態では、固体支持体は、核酸分子が(例えば、共有結合的又は非共有結合的に)固定され得るプラスチック、セラミック、金属、又はポリマー材料(例えば、ヒドロゲル)からなる任意の種類の固体、多孔質、又は中空球、ボール、ベアリング、シリンダ、キャピラリー、チャネル、又は他の同様の構成を包含し得る。いくつかの実施形態では、固体支持体は、球形(例えば、ミクロスフェア)であり得るか、又は立方体、直方体、角錐形、円筒形、円錐形、長円形、若しくは円盤形などの非球形若しくは不規則な形状を有し得る離散粒子を含み得る。いくつかの実施形態では、固体支持体は、シリカチップ、微粒子、ナノ粒子、プレート、アレイ、キャピラリー、ガラス繊維フィルタなどの平坦な支持体、ガラス表面、金属表面(鋼、金銀、アルミニウム、ケイ素及び銅)、ガラス支持体、プラスチック支持体、シリコン支持体、チップ、フィルタ、膜、マイクロウェルプレート、スライド、マルチウェルプレート若しくは膜(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリビニリデンジフルオリドから形成される)を含むプラスチック材料、及び/又はウェハ、コーム、ピン若しくは針(例えば、組み合わせ合成又は分析に適したピンのアレイ)、又はウェハ(例えば、シリコンウェハ)などの平坦な表面のピット若しくはナノリットルウェルのアレイ内のビーズ、フィルタ底部を有する若しくは有さないピットを有するウェハを含むことができる。いくつかの実施形態では、固体支持体は、溶液中に懸濁することができる溶液相支持体(例えば、ガラスビーズ、磁気ビーズ、又は別の同様の粒子)又は固相支持体(例えば、シリコンウェハ、ガラススライドなど)であり得る。溶液相支持体の非限定的な例としては、INVITROGEN製のDYNABEADS磁気ビーズなどの超常磁性球状ポリマー粒子、又は米国特許第656,568号、同6,274,386号、同7,371,830号、同6,870,047号、同6,255,477号、同6,746,874号及び同6,258,531号に記載されているような磁性ガラス粒子が挙げられ、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0059】
本明細書で使用される場合、「特異的結合実体」という用語は、特異的結合対のメンバーを指す。特異的結合対は、他の分子への結合を実質的に排除して互いに結合することを特徴とする分子の対である(例えば、特異的結合対は、生物学的試料中の他の分子との結合対の2つのメンバーのいずれかの結合定数よりも少なくとも103M-1大きい、104M-1大きい又は105M-1大きい結合定数を有することができる)。特異的結合部分の例は、特異的結合タンパク質(例えば、抗体、レクチン、ストレプトアビジンなどのアビジン、及びプロテインA)を含む。特異的結合部分はまた、そのような特異的結合タンパク質によって特異的に結合される分子(又はその部分)を含むことができる。
【0060】
本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、関心対象の特徴又は特性の全体的又はほぼ全体的な程度又は度合いを呈する定性的な条件を意味する。いくつかの実施形態では、「実質的に」は、約5%以内を意味する。いくつかの実施形態では、「実質的に」は、約10%以内を意味する。いくつかの実施形態では、「実質的に」は、約15%以内を意味する。いくつかの実施形態では、「実質的に」は、約20%以内を意味する。
【0061】
本明細書で使用される場合、「標的」又は「標的配列」という用語は、目的の核酸分子配列、例えば、オリゴヌクレオチドプローブにハイブリダイズする核酸分子配列を指す。
【0062】
本明細書で使用される場合、「ユニバーサルプライマー」という用語は、共有された相補的ユニバーサルプライマー結合部位を有する標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズし、その増幅を支援することができるプライマーを指す。同様に、「ユニバーサルプライマー対」という用語は、共有された相補的フォワード及びリバースユニバーサルプライマー結合部位を有する標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズし、そのPCR増幅を支援することができるフォワード及びリバースプライマー対を指す。そのようなユニバーサルプライマー(複数可)及びユニバーサルプライマー結合部位(複数可)は、目的の標的ポリヌクレオチド領域の単一又は二重プライマー媒介ユニバーサル増幅(例えばユニバーサルPCR)を可能にすることができる。本明細書で提供される見出しは、便宜上のみものであり、開示される実施形態の範囲又は意味を解釈するものではない。
【0063】
概要
【0064】
本開示は、一方向プライマー伸長による標的濃縮の組成物、キット、及び方法に関し、組成物、キット、及び方法は、ポイズンプライマーと標的捕捉プライマーの両方を利用する。本開示の一態様は、複数の標的核酸分子、例えば、約1~約10000個の標的核酸分子、又は約1~約5000個の標的核酸分子、又は約1~約1000個の標的核酸分子を濃縮する方法であって、ポイズンプライマーと標的捕捉プライマーの両方を利用する方法である。
【0065】
本開示はまた、本明細書に記載の方法のいずれか1つを使用して調製された標的濃縮試料などの標的濃縮試料を増幅する方法に関する。さらに、本開示はまた、本明細書に記載の方法のいずれか1つを使用して調製された標的濃縮試料などの標的濃縮試料を使用してシーケンシングする方法に関する。本開示の方法は、ハイスループット一分子シーケンシングプロトコルを含むシーケンシングプロトコルの一部として使用することができる。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、シーケンシングされる濃縮された標的核酸分子のライブラリーを生成する。ライブラリー中の濃縮された標的核酸分子は、米国特許出願公開第2020/0032244号、並びに米国特許第7,393,665号、同第8,168,385号、同第8,481,292号、同第8,685,678号及び同第8,722,368号に記載されているように、分子同定及び試料同定のためのバーコードを任意に組み込んでいてもよく、これらの開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0066】
いくつかの実施形態では、本開示は、ポイズンプライマーと標的捕捉プライマーの両方を利用する一方向デュアルプローブプライマー伸長に基づく濃縮のための一般的なアプローチを記載する。いくつかの実施形態では、本方法は、第1の標的捕捉プライマーを核酸分子のライブラリー中の第1の標的核酸分子にハイブリダイズさせることであって、第1の標的捕捉プライマーが捕捉部分を含む、第1の標的捕捉プライマーをハイブリダイズさせることと、第1のポイズンプライマーを核酸分子のライブラリー中の第1の1つの非標的核酸分子にハイブリダイズさせることであって、第1のポイズンプライマーが捕捉部分を含まない、第1のポイズンプライマーをハイブリダイズさせることと、ハイブリダイズした第1の標的捕捉プライマーとハイブリダイズした第1のポイズンプライマーの両方を伸長することであって、ハイブリダイズした第1の標的捕捉プライマーの伸長が、第1の標的核酸分子と伸長された第1の標的捕捉プライマーとを含む第1の標的捕捉プライマー伸長複合体を提供する、ハイブリダイズした第1の標的捕捉プライマーとハイブリダイズした第1のポイズンプライマーの両方を伸長することと、核酸分子のライブラリー中で、核酸分子のライブラリーに対して第1の標的核酸分子を濃縮することと、を含む。いくつかの実施形態では、導入されたポイズンプライマーは、非標的核酸分子(「非標的核酸分子」)にハイブリダイズして伸長し、標的捕捉プライマーと非標的核酸分子とのミスプライミングを防止又は低減する。他の実施形態では、ポイズンプライマーは、非標的核酸分子にミスプライミング及びハイブリダイズした標的捕捉プライマーの上流にハイブリダイズし、次いで、ミスプライミング及びハイブリダイズした標的捕捉プライマーから捕捉部分を伸長及び置換する。これらの2つの作用機序は、ミスプライミングされた非標的核酸分子の下流濃縮を防止又は低減し得ると考えられる。
【0067】
有利には、本開示の組成物、キット及び方法は、低存在量の標的核酸分子(例えばmRNA;融合転写物)及び高存在量の非標的核酸分子(例えばrRNA;野生型転写物)を含む核酸ライブラリー中の低存在量の標的核酸分子の濃縮を可能にする。いくつかの実施形態では、ポイズンプライマーを利用して、次世代シーケンシングライブラリーからの、望ましくない分子、すなわち非標的核酸分子の標的化された枯渇を達成する。これには、rRNA由来cDNA分子、及び望ましくなく捕捉され、その後下流で増幅される他の非標的分子が含まれ得る(例えば、
図1Aを参照)。さらに、cDNAライブラリーの文脈において、本開示の組成物、キット及び方法は、費用及び時間がかかるリボソーム枯渇工程を必要とせずに、低存在量の標的分子の濃縮を促進する。他の実施形態では、ポイズンプライマーを利用して、バックグラウンド分子のライブラリーを枯渇させることによって次世代シーケンシング捕捉ライブラリーからの所望の分子の濃縮を達成する。例えば、この実施形態は、新規融合転写物を探索する場合の野生型転写物の枯渇を含む(例えば、
図1Bを参照)。
【0068】
図2Aを参照すると、いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、複数の核酸分子を含む核酸ライブラリーを得ることを含む(工程101)。いくつかの実施形態では、得られた核酸ライブラリー内の核酸分子は、DNA分子、RNA分子、ゲノムDNA分子、cDNA分子、mRNA分子、rRNA分子、mtDNA、siRNA分子、又はそれらの任意の組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、複数の核酸分子は、一本鎖ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、複数の核酸分子は、哺乳動物対象に由来する組織試料などの組織試料に由来する。他の実施形態では、複数の核酸分子は、哺乳動物対象に由来する細胞学試料などの細胞学試料に由来する。
【0069】
いくつかの実施形態では、得られた核酸ライブラリーは、複数の標的核酸分子及び/又は複数の非標的核酸分子を含む。いくつかの実施形態では、非標的核酸分子は、核酸ライブラリー内の標的核酸分子と比較して高存在量である。いくつかの実施形態では、非標的核酸分子は、得られた核酸ライブラリー中の核酸分子の少なくとも約70%に相当する。他の実施形態では、非標的核酸分子は、得られた核酸ライブラリー中の核酸分子の少なくとも約75%に相当する。さらに他の実施形態では、非標的核酸分子は、得られた核酸ライブラリー中の核酸分子の少なくとも約80%に相当する。さらなる実施形態では、非標的核酸分子は、得られた核酸ライブラリー中の核酸分子の少なくとも約85%に相当する。なおさらなる実施形態では、非標的核酸分子は、得られた核酸ライブラリー中の核酸分子の少なくとも約90%に相当する。なおさらなる実施形態では、非標的核酸分子は、得られた核酸ライブラリー中の核酸分子の少なくとも約95%に相当する。いくつかの実施形態では、非標的核酸分子は、得られた核酸ライブラリー中の核酸分子の少なくとも約96%に相当する。いくつかの実施形態では、非標的核酸分子は、得られた核酸ライブラリー中の核酸分子の少なくとも約97%に相当する。いくつかの実施形態では、非標的核酸分子は、得られた核酸ライブラリー中の核酸分子の少なくとも約98%に相当する。いくつかの実施形態では、非標的核酸分子は、得られた核酸ライブラリー中の核酸分子の少なくとも約99%に相当する。
【0070】
いくつかの実施形態では、得られた核酸ライブラリーは、mRNA由来分子及び少なくとも約90%のrRNAを含むcDNAライブラリーである。いくつかの実施形態では、得られた核酸ライブラリーは、mRNA由来分子及び少なくとも約92%のrRNAを含むcDNAライブラリーである。他の実施形態では、得られた核酸ライブラリーは、mRNA由来分子及び少なくとも約94%のrRNAを含むcDNAライブラリーである。さらに他の実施形態では、得られた核酸ライブラリーは、mRNA由来分子及び少なくとも約95%のrRNAを含むcDNAライブラリーである。さらなる実施形態では、得られた核酸ライブラリーは、mRNA由来分子及び少なくとも約96%のrRNAを含むcDNAライブラリーである。さらなる実施形態では、得られた核酸ライブラリーは、mRNA由来分子及び少なくとも約97%のrRNAを含むcDNAライブラリーである。さらなる実施形態では、得られた核酸ライブラリーは、mRNA由来分子及び少なくとも約98%のrRNAを含むcDNAライブラリーである。さらなる実施形態では、得られた核酸ライブラリーは、mRNA由来分子及び少なくとも約99%のrRNAを含むcDNAライブラリーである。いくつかの実施形態では、cDNAライブラリーは、rRNA及びmRNA由来分子を含み、cDNAライブラリーは、リボソーム枯渇法で以前に処理されていない生物学的試料に由来する。いくつかの実施形態では、リボソーム枯渇工程を実施する必要なく、mRNA由来分子を濃縮することが望ましい。
【0071】
いくつかの実施形態では、得られた核酸ライブラリーは、融合転写物及び野生型転写物を含む。いくつかの実施形態では、融合転写物は、野生型転写物と比較して低存在量である。いくつかの実施形態では、得られた核酸ライブラリーにおける融合転写物対野生型転写物の比は少なくとも約1:3である。他の実施形態では、得られた核酸ライブラリーにおける融合転写物対野生型転写物の比は少なくとも約1:4である。他の実施形態では、得られた核酸ライブラリーにおける融合転写物対野生型転写物の比は少なくとも約1:5である。他の実施形態では、得られた核酸ライブラリーにおける融合転写物対野生型転写物の比は少なくとも約1:10である。他の実施形態では、得られた核酸ライブラリーにおける融合転写物対野生型転写物の比は少なくとも約1:20である。他の実施形態では、得られた核酸ライブラリーにおける融合転写物対野生型転写物の比は少なくとも約1:50である。他の実施形態では、得られた核酸ライブラリーにおける融合転写物対野生型転写物の比は少なくとも約1:100である。
【0072】
いくつかの実施形態では、得られた核酸ライブラリーは、1つ又は複数の腫瘍試料に由来し、標的核酸分子は、低存在量の融合転写物を含む。検出のための融合転写物の非限定的な例としては、EML4-ALK、ETV6-NTRK3及びALK-RET融合癌遺伝子が挙げられる。他の実施形態では、得られた核酸ライブラリーは、発現されたハウスキーピング遺伝子を含み、発現されたハウスキーピング遺伝子は、得られた核酸ライブラリー内の非標的核酸分子と比較して低存在量である。ハウスキーピング遺伝子の非限定的な例としては、VCP、RAB7A及びCHMP2Aが挙げられる。
【0073】
いくつかの実施形態では、核酸断片は、最初に生物学的試料、例えば組織試料及び/又は細胞学試料から調製される。DNAシーケンシングライブラリーは、ゲノム分析のためのゲノムDNAから、又はトランスクリプトーム分析のためのRNA若しくはmRNAから調製されたcDNAから構築することができ、これらの核酸を抽出することができる任意の生物種のDNA又はcDNAから構築することができる。いくつかの実施形態では、得られた試料を断片に剪断して核酸断片の集団を得る。いくつかの実施形態では、得られたゲノム試料の剪断は、機械的断片化(例えば、噴霧又は音波処理)及び/又は酵素的断片化(例えば、制限エンドヌクレアーゼ)を用いて達成される。いくつかの実施形態では、生成された核酸断片は、ランダムなサイズである。いくつかの実施形態では、生成された核酸断片は、約1000塩基対未満の長さを有する。他の実施形態では、生成された核酸断片は、長さが約100~約1000塩基対の範囲の配列サイズを有する配列断片を含む。さらに他の実施形態では、生成された核酸断片は、長さが約500~約750塩基対の範囲の配列サイズを有する配列断片を含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、次いで、ライゲーション反応を介して核酸分子の集団にアダプターを付加する。いくつかの実施形態では、アダプターは、1つ又は複数のバーコード配列を含む。アダプターを核酸分子にライゲーションする方法は、米国特許出願公開第2017/0037459号、同第2018/0334709号、同第2018/0016630号及びPCT公開番号WO2017021449に記載されており、これらの開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0075】
核酸ライブラリーの断片化及び調製(工程101)に続いて、プライマープールを核酸ライブラリー又は核酸ライブラリー及びハイブリダイゼーションを達成するための他の成分(例えば、緩衝液など)を含む反応混合物に導入する。それらの導入後、プライマープール中の1つ又は複数のポイズンプライマー及び1つ又は複数の標的捕捉プライマーは、それぞれ1つ又は複数の非標的及び/又は標的核酸分子に少なくとも部分的にハイブリダイズする(工程102及び103)。
【0076】
いくつかの実施形態では、プライマープールは、1つ又は複数のポイズンプライマー及び1つ又は複数の標的捕捉プライマーを含む。いくつかの実施形態では、プライマープールは、約1~約1000個の異なるポイズンプライマーを含む。いくつかの実施形態では、プライマープールは、約50~約750個の異なるポイズンプライマーを含む。他の実施形態では、プライマープールは、約100~約500個の異なるポイズンプライマーを含む。いくつかの実施形態では、プライマープールは、約50~約2500個の異なる標的捕捉プライマーを含む。他の実施形態では、プライマープールは、約150~約1000個の異なる標的捕捉プライマーを含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数の標的捕捉プライマーは、標的特異的であり、したがって、所望の標的遺伝子、エクソン、及び/又は他の目的のゲノム領域を含む核酸ライブラリー内の相補的核酸分子(本明細書において以降「標的核酸分子」と呼ぶ)のサブセットにハイブリダイズするように設計される。いくつかの実施形態では、標的捕捉プライマーは、Roche SeqCap EZ Probes(Roche Sequencing and Life Sciences,Indianapolis,INDから入手可能)のプールを含む。いくつかの実施形態では、標的捕捉プライマーは、ThermoFisherから入手可能なAmpliseqプライマーのプールを含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、標的捕捉プライマーは、リボ核酸、デオキシリボ核酸、又は当技術分野で公知の他の核酸類似体からなり得る。いくつかの実施形態では、標的捕捉プライマーは、1つ又は複数の非天然ヌクレオチド、例えば、ロックド核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、グリコール核酸(GNA)としてのガンマ-PNA、及びトレオース核酸(TNA)を含み得る。いくつかの実施形態では、標的捕捉プライマーは、約20ヌクレオチド~約100ヌクレオチドの範囲の長さを有する。他の実施形態では、標的捕捉プライマーは、約40ヌクレオチド~約80ヌクレオチドの範囲の長さを有する。さらに他の実施形態では、標的捕捉プライマーは、約50ヌクレオチド~約75ヌクレオチドの範囲の長さを有する。
【0079】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数の標的捕捉プライマーのそれぞれは、(i)捕捉部分、(ii)核酸ライブラリー中の1つ又は複数の標的核酸分子の配列に実質的に相補的な配列を含むコンジュゲートである。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の標的捕捉プライマーのそれぞれは、ハイブリダイゼーション及び/又は伸長後に、本明細書に記載されるように(例えば、
図3A及び
図4を参照)、捕捉部分を介して官能化基質に結合することができる。他の実施形態では、標的捕捉プライマーは、本明細書に記載のハイブリダイゼーション(例えば、
図5及び
図6を参照)の前に、捕捉部分を介して官能化基質に結合される。
【0080】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数の標的捕捉プライマーのそれぞれの捕捉部分は、別の実体(例えば、官能化基質にコンジュゲートされた第2の部分)の第2の部分(例えば、第2の反応性官能基)と反応性である第1の部分(例えば、第1の反応性官能基)を含む。いくつかの実施形態では、第1の部分は、一対の特異的結合実体の第1のメンバーであり、第2の部分は、同じ対の特異的結合実体の第2のメンバーである。いくつかの実施形態では、第1の部分と第2の部分との間の「反応」は、2つの部分の2つの反応基又は2つの反応性官能基の間に共有結合が形成されることを意味し得るか、又は、2つの部分の2つの反応基又は2つの反応性官能基が互いに会合し、互いに相互作用し、互いにハイブリダイズし、互いに水素結合することなどを意味し得る。したがって、いくつかの実施形態では、「反応」は、ハプテンと抗ハプテン抗体との結合、又はビオチンとストレプトアビジンとの結合などの結合事象を含む。いくつかの実施形態では、標的捕捉プライマーの各々は、同じ捕捉部分、例えばビオチンを含む。他の実施形態では、標的捕捉プライマーの異なるサブセットは、異なる捕捉部分を含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、捕捉部分は、アビジン又はストレプトアビジンを含む官能化基質に結合するビオチンを含み得る。他の実施形態では、捕捉部分は、金粒子を含む官能化基質に結合するチオール化分子を含み得る。さらに他の実施形態では、捕捉部分は、NHS活性化基質に結合するアミン末端分子を含み得る。
【0082】
いくつかの実施形態では、捕捉部分は、固定化された抗体を含み、固定化された抗体は、官能化基質に結合した抗原性分子などの特定の抗原性分子を含むか又はそれにコンジュゲートした分子に結合するために使用され得る。他の実施形態では、捕捉部分は、固定化された抗体、例えば官能化基質に結合した抗体に結合するために使用され得る抗原性分子を含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、捕捉部分は、特定の酵素基質を含むか又はそれにコンジュゲートされた分子に結合するために使用され得る酵素を含む。他の実施形態では、捕捉部分は、官能化基質に結合した酵素などの酵素に結合するために使用され得る、酵素のための基質を含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、捕捉部分は、官能化基質に結合した受容体リガンドなどの特定の受容体リガンドを含むか又はそれにコンジュゲートした分子に結合するために使用され得る受容体を含む。他の実施形態では、捕捉部分は、官能化基質に結合した受容体などの受容体を含む分子に結合するために使用され得る1つ又は複数の受容体リガンドを含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、捕捉部分は、官能化基質に結合した多糖などの特定の多糖を含むか又はそれにコンジュゲートした分子に結合するために使用され得るレクチンを含む。他の実施形態では、捕捉部分は、官能化基質に結合した1つ又は複数のレクチンなどの1つ又は複数のレクチンを含むか又はそれにコンジュゲートした分子に結合するために使用され得る1つ又は複数のポリサッカライドを含む。
【0086】
なおさらなる実施形態では、捕捉部分は、相補的な塩基配列を含むか又はそれにコンジュゲートされた分子に結合するために使用され得る1つ又は複数の核酸配列を含む。他の実施形態では、捕捉部分は、小分子、ペプチド、タンパク質、細胞などの標的分析物に特異的に結合し得るテザリングされたDNA/RNAアプタマーを含み得る。
【0087】
1つ又は複数のポイズンプライマーのそれぞれは、所望の遺伝子、エクソン、及び/又は他の目的のゲノム領域を含まない核酸ライブラリー内の相補的核酸分子(本明細書において以降「非標的核酸分子」と呼ぶ)の第2のサブセットにハイブリダイズするように設計される。標的捕捉プライマーとは異なり、本開示のポイズンプライマーは、いかなる捕捉部分にもコンジュゲートされておらず、したがって、いかなる官能化基質とも反応することができない。
【0088】
いくつかの実施形態では、ポイズンプライマーは、リボ核酸、デオキシリボ核酸、又は当技術分野で公知の他の核酸類似体からなり得る。いくつかの実施形態では、ポイズンプライマーは、1つ又は複数の非天然ヌクレオチド、例えば、ロックド核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、グリコール核酸(GNA)としてのガンマ-PNA、及びトレオース核酸(TNA)を含み得る。いくつかの実施形態では、ポイズンプライマーは、約20ヌクレオチド~約100ヌクレオチドの範囲の長さを有する。他の実施形態では、ポイズンプライマーは、約40ヌクレオチド~約80ヌクレオチドの範囲の長さを有する。さらに他の実施形態では、ポイズンプライマーは、約50ヌクレオチド~約75ヌクレオチドの範囲の長さを有する。
【0089】
いくつかの実施形態では、ポイズンプライマーは、標的捕捉プライマーと比較して低い融解温度(Tm)を有する。いくつかの実施形態では、ポイズンプライマーのTmは、標的捕捉プライマーのTmよりも少なくとも約2%低い。他の実施形態では、ポイズンプライマーのTmは、標的捕捉プライマーのTmよりも少なくとも約5%低い。さらに他の実施形態では、ポイズンプライマーのTmは、標的捕捉プライマーのTmよりも少なくとも約10%低い。さらなる実施形態では、ポイズンプライマーのTmは、標的捕捉プライマーのTmよりも少なくとも約15%低い。なおさらなる実施形態では、ポイズンプライマーのTmは、標的捕捉プライマーのTmよりも少なくとも約20%低い。
【0090】
いくつかの実施形態では、第1の標的捕捉プライマーは、第1のポイズンプライマーの融解温度より少なくとも約1℃高い融解温度を有する。他の実施形態では、第1の標的捕捉プライマーは、第1のポイズンプライマーの融解温度より少なくとも約2℃低い融解温度を有する。さらに他の実施形態では、第1の標的捕捉プライマーは、第1のポイズンプライマーの融解温度より少なくとも約3℃高い融解温度を有する。さらなる実施形態では、第1の標的捕捉プライマーは、第1のポイズンプライマーの融解温度より少なくとも約4℃高い融解温度を有する。なおさらなる実施形態では、第1の標的捕捉プライマーは、第1のポイズンプライマーの融解温度より少なくとも約5℃高い融解温度を有する。さらなる実施形態では、第1の標的捕捉プライマーは、第1のポイズンプライマーの融解温度より少なくとも約6℃高い融解温度を有する。さらなる実施形態では、第1の標的捕捉プライマーは、第1のポイズンプライマーの融解温度より少なくとも約7℃高い融解温度を有する。さらなる実施形態では、第1の標的捕捉プライマーは、第1のポイズンプライマーの融解温度より少なくとも約8℃高い融解温度を有する。さらなる実施形態では、第1の標的捕捉プライマーは、第1のポイズンプライマーの融解温度より少なくとも約9℃高い融解温度を有する。さらなる実施形態では、第1の標的捕捉プライマーは、第1のポイズンプライマーの融解温度より少なくとも約10℃高い融解温度を有する。
【0091】
いくつかの実施形態では、ポイズンプライマーのTmは、少なくとも約50℃である。いくつかの実施形態では、ポイズンプライマーのTmは、少なくとも約55℃である。いくつかの実施形態では、ポイズンプライマーのTmは、少なくとも約60℃である。いくつかの実施形態では、ポイズンプライマーのTmは、少なくとも約65℃である。いくつかの実施形態では、ポイズンプライマーのTmは、少なくとも約70℃である。いくつかの実施形態では、ポイズンプライマーのTmは、少なくとも約75℃である。いくつかの実施形態では、ポイズンプライマーのTmは、少なくとも約80℃である。
【0092】
いくつかの実施形態では、標的捕捉プライマーの濃度とポイズンプライマーの濃度はほぼ同じである。他の実施形態では、標的捕捉プライマーの濃度とポイズンプライマーの濃度とは異なる。いくつかの実施形態では、ポイズンプライマーの濃度は、標的捕捉プライマーの濃度の少なくとも2倍である。他の実施形態では、ポイズンプライマーの濃度は、標的捕捉プライマーの濃度の少なくとも5倍である。他の実施形態では、ポイズンプライマーの濃度は、標的捕捉プライマーの濃度の少なくとも10倍である。他の実施形態では、ポイズンプライマーの濃度は、標的捕捉プライマーの濃度の少なくとも20倍である。他の実施形態では、ポイズンプライマーの濃度は、標的捕捉プライマーの濃度の少なくとも50倍である。他の実施形態では、ポイズンプライマーの濃度は、標的捕捉プライマーの濃度の少なくとも100倍である。他の実施形態では、ポイズンプライマーの濃度は、標的捕捉プライマーの濃度の少なくとも200倍である。他の実施形態では、ポイズンプライマーの濃度は、標的捕捉プライマーの濃度の少なくとも500倍である。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の標的捕捉プライマーは、ミスプライム、すなわち標的核酸分子とは対照的に非標的核酸分子にハイブリダイズし得る。ミスプライミング事象を本明細書の
図3A及び
図4~
図6に示す。1つ又は複数のポイズンプライマーの導入、ハイブリダイゼーション及び/又は伸長は、ミスプライミング事象を防止及び/又は緩和すると考えられる。さらに、ミスプライミングが起こる場合、ハイブリダイズしたポイズンプライマーの伸長は、その後の非標的核酸分子の捕捉及び/又は濃縮を防止及び/又は緩和し得ると考えられる。
【0093】
1つ又は複数の標的捕捉プライマーと1つ又は複数の標的核酸分子とのハイブリダイゼーション(工程102)及び1つ又は複数のポイズンプライマーと1つ又は複数の非標的核酸分子とのハイブリダイゼーション(工程103)に続いて、1つ又は複数のハイブリダイズした標的捕捉プライマー及び1つ又は複数のハイブリダイズしたポイズンプライマーのそれぞれが伸長されて(工程104)、1つ又は複数の伸長した標的捕捉プライマー複合体及び/又は1つ又は複数の伸長したポイズンプライマー複合体を形成する。標的捕捉プライマーがミスプライムされる場合、ミスプライムされてハイブリダイズした標的捕捉プライマーは、本明細書中にさらに例示されるように、非標的核酸分子に沿って伸長される(例えば、
図3A及び
図4~
図6を参照)。
【0094】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数のハイブリダイズした標的捕捉プライマーは、第1のポリメラーゼの使用によって伸長され、したがって、それぞれが伸長した標的捕捉プライマーにハイブリダイズした標的核酸分子を含む1つ又は複数の二本鎖産物を形成する。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の伸長した標的捕捉プライマー複合体のそれぞれは、伸長した標的捕捉プライマー(それ自体が捕捉部分を含むハイブリダイズした標的捕捉プライマーを含む)及び標的捕捉プライマーがハイブリダイズした標的核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、伸長した標的捕捉プライマーは、標的捕捉プライマーがハイブリダイズした標的核酸分子の少なくとも一部の逆相補体を含む。
【0095】
1つ又は複数の標的捕捉プライマーがミスプライミングされている場合、それらのミスプライミングされた標的捕捉プライマーはまた、第1のポリメラーゼを使用して伸長され得る。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のミスプライムされたハイブリダイズした(非標的核酸分子にハイブリダイズした)標的捕捉プライマーは、第1のポリメラーゼの使用によって伸長され、したがって、それぞれが伸長した標的捕捉プライマーにハイブリダイズした非標的核酸分子を含む1つ又は複数の二本鎖産物を形成する。
【0096】
同様に、1つ又は複数のハイブリダイズしたポイズンプライマーは、第2のポリメラーゼの使用によって伸長され、したがって、それぞれが伸長したポイズンプライマーにハイブリダイズした非標的核酸分子を含む1つ又は複数の二本鎖産物を形成する。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の伸長されたポイズンプライマー複合体のそれぞれは、伸長した標的捕捉プライマーと、ポイズンプライマーがハイブリダイズした非標的核酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、伸長されたポイズンプライマーは、ポイズンプライマーがハイブリダイズした非標的核酸分子の少なくとも一部の逆相補体を含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数のハイブリダイズした標的捕捉プライマーを伸長するために使用される第1のポリメラーゼは、1つ又は複数のハイブリダイズしたポイズンプライマーを伸長するために使用される第2のポリメラーゼと同じである。他の実施形態では、1つ又は複数のハイブリダイズした標的捕捉プライマーを伸長するために使用される第1のポリメラーゼは、1つ又は複数のハイブリダイズしたポイズンプライマーを伸長するために使用される第2のポリメラーゼとは異なる。分析される核酸分子の種類に応じて、ポリメラーゼは、DNA依存性DNAポリメラーゼ(「DNAポリメラーゼ」)又はRNA依存性DNAポリメラーゼ(「逆転写酵素」)であり得る。適切なポリメラーゼは、Taq又はTaq由来ポリメラーゼ(例えば、KAPA BIOSYSTEMS製のKAPA 2Gポリメラーゼ)、又はBファミリーDNAポリメラーゼ(例えば、KAPA BIOSYSTEMS製のKAPA HIFIポリメラーゼ)から選択される。
【0098】
いくつかの実施形態では、ハイブリダイゼーション及び伸長プロセス(工程102、103、104)は、同時に行われる。他の実施形態では、ハイブリダイゼーション及び伸長プロセス(工程102、103、104)は、連続的に行われる。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のハイブリダイズした標的捕捉プライマー及び1つ又は複数のハイブリダイズしたポイズンプライマーの伸長の長さは、添加された第1及び/又は第2のポリメラーゼを不活性化するなどの技術によって能動的に、又は制限反応物の消費などによって反応が完了することを可能にすることによって受動的に制御され得る。そのような方法は、米国特許出願公開第2020/0032244号にさらに記載されており、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0099】
再び
図2Aを参照すると、ハイブリダイズした標的捕捉プライマー及びハイブリダイズしたポイズンプライマーの両方を伸長した後(工程104)、核酸ライブラリーは、1つ又は複数の標的核酸分子の存在について濃縮される。いくつかの実施形態では、濃縮は、標的核酸分子ではない核酸分子のライブラリーの他のメンバーの枯渇(すなわち、除去)によって1つ又は複数の標的核酸分子の濃度を増加させることを含む。いくつかの実施形態では、濃縮は、1つ又は複数の放出プライマー伸長複合体を形成する工程を含む。
【0100】
標的核酸分子濃縮の1つの方法を
図2Bに示す。例えば、工程201において、1つ又は複数の標的捕捉プライマー伸長複合体が捕捉される。1つ又は複数の標的捕捉プライマー伸長複合体の捕捉は、本明細書に開示されるような様々な方法で達成され得、上記のハイブリダイゼーション及び/又は伸長工程のいずれかの前に、それと同時に、又はそれに続いて達成され得る。
【0101】
いくつかの実施形態では、捕捉することは、ハイブリダイゼーション及び/又は伸長の工程の後に、標的捕捉プライマー伸長複合体を適切に官能化された基質(例えば、ビーズ)と接触させて、各標的捕捉プライマー伸長複合体の捕捉部分が官能化基質の対応する部分と反応し、それにより、1つ又は複数の標的捕捉プライマー伸長複合体を官能化基質に結合させることを含む。例えば、標的捕捉プライマー伸長複合体は、ストレプトアビジンを含む官能化基質に結合するビオチンを含む捕捉部分を含み得る。ハイブリダイゼーションの工程の前(すなわち工程102の前)に捕捉部分が官能化基質(例えばビーズ)に結合される実施形態では、各標的捕捉プライマーとその対応する標的核酸とのハイブリダイゼーションによって捕捉が達成される。標的捕捉プライマー伸長複合体を捕捉する他の方法は、本明細書にさらに記載され、米国特許出願公開第2020/0032244号にも記載されており、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0102】
いくつかの実施形態では、官能化基質は、適切に官能化された表面を有するビーズを含む(基質は、上記の部分のいずれかで官能化されていてもよい)。いくつかの実施形態では、ビーズは、カラム又はマイクロ流体デバイス内に含まれる。いくつかの実施形態では、ビーズは磁性ビーズである。他の実施形態では、ビーズは非磁性ビーズである。
【0103】
1つ又は複数の標的捕捉プライマー伸長複合体の捕捉に続いて、非標的核酸分子並びに任意の他の未使用の反応成分(例えば、ヌクレオチド、プライマー分子、酵素、緩衝液など)が除去されるように、1つ又は複数の精製プロセスが行われる(工程202)。例えば、非標的核酸分子は、官能化基質(例えば、適切に官能化された表面を有する複数のビーズを含むカラム)を含むカラムに洗浄流体及び/又は緩衝液を流すことによって除去され得る。いくつかの実施形態では、洗浄は少なくとも1回行われる。他の実施形態では、洗浄は少なくとも2回行われる。さらに他の実施形態では、洗浄は少なくとも3回行われる。当業者は、洗浄流体及び/又は緩衝液が官能化基質を収容するカラムを通って流れるとき、官能化基質(例えばビーズ)に結合した1つ又は複数の標的捕捉プライマー伸長複合体は官能化基質に結合したままであり、一方、結合していない非標的核酸分子は洗い流され、1つ又は複数の標的核酸分子が濃縮された反応混合物が得られることを理解するであろう。
【0104】
いくつかの実施形態では、標的核酸分子は、濃縮後に任意に増幅され得る。いくつかの実施形態では、捕捉された標的核酸分子は、官能化された表面に結合している間に直接増幅される。そのような方法は、米国特許第10,240,192号、同第10,160995号、及び同第7,842,457号に記載されており、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。他の実施形態では、増幅工程の前に、捕捉された標的捕捉プライマー伸長複合体から1つ又は複数の標的核酸分子が放出される(工程203)。
【0105】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数の標的核酸分子の放出は、
図2Cに示されるワークフローに従う。例えば、いくつかの実施形態では、1つ又は複数の放出プライマーを1つ又は複数の標的核酸分子にハイブリダイズさせる(工程211)。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の放出プライマーは、1つ又は複数の標的核酸分子の一部に、及び第1のアダプターと第2のアダプターとの間にハイブリダイズするように設計される。他の実施形態では、1つ又は複数の放出プライマーは、1つ又は複数の標的捕捉プライマー伸長複合体に対して上流にある標的核酸分子の部分にハイブリダイズするように設計される。いくつかの実施形態では、プライマー設計アルゴリズムは、捕捉プライマーに可能な限り近いプライマーを選ぶように設計される。いくつかの例では、捕捉プライマーと放出プライマーとの間にギャップはない。いくつかの実施形態では、放出プライマーは、ポイズンプライマーと同様に、捕捉部分を有さない。しかしながら、それは捕捉プライマーと同様のTmを有する。
【0106】
次に、ポリメラーゼを使用して1つ又は複数のハイブリダイズした放出プライマーを伸長し、それによって1つ又は複数の伸長したハイブリダイズした放出プライマーを形成する(工程212)。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のハイブリダイズした放出プライマーのポリメラーゼによる伸長は、1つ又は複数の標的捕捉プライマー伸長複合体から1つ又は複数の標的伸長標的捕捉プライマーを遊離させる。いくつかの場合では、ポリメラーゼは鎖置換活性を示す。いくつかの場合では、ポリメラーゼは、二本鎖核酸分子の一本鎖を消化する5’-3’エキソヌクレアーゼ活性(本明細書では5’-3’二本鎖エキソヌクレアーゼ活性と呼ぶ)又は二本鎖エキソヌクレアーゼ活性を示す。いくつかの場合では、ポリメラーゼは、鎖置換及び5’-3’二本鎖エキソヌクレアーゼ活性の両方を示す。いくつかの場合では、鎖置換、5’-3’二本鎖エキソヌクレアーゼ活性、又はそれらの組み合わせは、標的核酸分子(例えば、提供された試料由来の元の標的核酸分子)を溶液中に置換することができる。
【0107】
例えば、いくつかの実施形態では、伸長した標的捕捉プライマーにハイブリダイズした標的核酸分子を含有する第1の二本鎖産物は、例えば、伸長した標的捕捉プライマーの捕捉部分を介したリガンド(例えば、ビオチン又はその誘導体)の親和性捕捉によって、官能化基質に固定化される。そのような実施形態では、ハイブリダイズした放出プライマーを伸長させるポリメラーゼの鎖置換活性は、標的核酸分子を試料から溶液中に置換する。あるいは、5’-3’エキソヌクレアーゼ活性は、親和性捕捉によって固定化されて標的核酸分子にハイブリダイズされた伸長した標的捕捉プライマーを分解することができ、5’-3’エキソヌクレアーゼ活性はそれによって標的ヌクレオチドを溶液中に放出する。形成された標的捕捉プライマー伸長複合体から標的核酸分子を遊離させるさらなる方法は、米国 特許出願公開第2018/0016630号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0108】
次いで、放出された1つ又は複数の標的核酸分子は、1つ又は複数の下流プロセス、例えばシーケンシング、増幅、さらなるカップリングなどで使用され得る。再び
図2Aを参照すると、いくつかの実施形態では、1つ又は複数の標的核酸分子が濃縮された核酸ライブラリーは、任意に増幅される(工程106)。いくつかの実施形態では、任意の増幅工程(106)は、線形増幅又は指数関数的増幅(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR))のうちの1つを含む。本明細書で使用される場合、「PCR」は、DNAの相補鎖の同時プライマー伸長による特定のDNA配列のインビトロ増幅のための反応を指す。本明細書で使用される場合、PCRは、RT-PCR、リアルタイムPCR、ネステッドPCR、定量的PCR、多重化PCR、デジタルPCR、デジタル液滴PCR、及びアセンブリPCRを含むがこれらに限定されない反応の誘導体形態を包含する。濃縮後の標的核酸分子の増幅は、非PCRベースの方法を含み得る。非PCRベースの方法の非限定的な例としては、核酸配列ベースの増幅(NASBA)、転写媒介増幅(TMA)、全トランスクリプトーム増幅(WTA)、全ゲノム増幅(WGA)、多置換増幅(MDA)、鎖置換増幅(SDA)、リアルタイムSDA、ローリングサークル増幅、及び/又はサークル間(circle-to-circle)増幅が挙げられる。
【0109】
一般に、増幅(工程106)は、ポリメラーゼ、第1の増幅プライマー及び第2の増幅プライマーを用いて標的核酸分子を増幅することを含む。いくつかの実施形態では、第1及び第2の増幅プライマーは、工程101において核酸分子のライブラリー中の1つ又は複数の標的核酸分子に組み込まれたアダプターの配列に相補的であるように設計される。例えば、第1の増幅プライマーは、第1のアダプターに相補的な3’末端を有し得、第2の増幅プライマーは、第2のアダプターに相補的な3’末端を有し得る。いくつかの実施形態では、増幅プライマーは、増幅される標的核酸分子内に存在する任意の配列(例えば、遺伝子/標的特異的プライマー、ユニバーサルプライマーなど)を含んでもよく、一方又は両方の鎖(すなわち、増幅反応の鋳型に対応する二本鎖核酸分子の上鎖及び下鎖の両方)の合成を支持することができる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の増幅プライマーはユニバーサルプライマーである。さらなる増幅方法は、米国特許出願公開第2020/0032244号及び第2018/0016630号に記載されており、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0110】
いくつかの実施形態では、シーケンシングは、当業者に公知の任意の方法(
図2Aの工程107を参照)に従って任意に実施され得る。いくつかの実施形態では、シーケンシング方法は、サンガーシーケンシング及び色素ターミネーターシーケンシング、並びにパイロシーケンシング、ナノポアシーケンシング、マイクロポアベースのシーケンシング、ナノボールシーケンシング、MPSS、SOLiD、Illumina、Ion Torrent、Starlite、SMRT、tSMS、合成によるシーケンシング、ライゲーションによるシーケンシング、質量分析シーケンシング、ポリメラーゼシーケンシング、RNAポリメラーゼ(RNAP)シーケンシング、顕微鏡ベースのシーケンシング、マイクロ流体サンガーシーケンシング、顕微鏡ベースのシーケンシング、RNAPシーケンシングなどの次世代シーケンシング技術を含む。シーケンシングの装置及び方法は、例えば、PCT公開番号WO2014144478、WO2015058093、WO2014106076及びWO2013068528に開示されており、これらの開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0111】
いくつかの実施形態では、シーケンシング(工程107)は、合成技術によるシーケンシングを使用するなど、いくつかの異なる方法によって行うことができる。先行技術による合成によるシーケンシングは、シーケンシング反応中に特定のデオキシヌクレオシド三リン酸が取り込まれたときの副産物の生成を監視する任意のシーケンシング法として定義される(Hyman,1988,Anal.Biochem.174:423-436;Rhonaghi et al.,1998,Science 281:363-365)。合成反応によるシーケンシングの1つの顕著な実施形態は、ピロリン酸シーケンシング法である。この場合、ヌクレオチド取り込み中のピロリン酸の生成は、化学発光シグナルの生成をもたらす酵素カスケードによって監視される。合成による配列の一例である454 Genome Sequencer System(Roche Applied Scienceカタログ番号04 760 085 001)は、ピロリン酸シーケンシング技術に基づいている。454 GS20又は454 FLX装置でシーケンシングする場合、平均ゲノムDNA断片サイズは、製品文献に記載されているように、それぞれ200又は600bpの範囲内である。
【0112】
いくつかの実施形態では、合成反応によるシーケンシングは、代替的に、ターミネーター色素タイプのシーケンシング反応に基づくことができる。この場合、組み込まれた色素デオキシヌクレオトリホスフェート(ddNTP)ビルディングブロックは、検出可能な標識を含み、これは、好ましくは新生DNA鎖のさらなる伸長を防止する蛍光標識である。次いで、例えば3’-5’エキソヌクレアーゼ又はプルーフリーディング活性を含むDNAポリメラーゼを使用することによって、ddNTPビルディングブロックを鋳型/プライマー伸長ハイブリッドに組み込まれた際に、標識が除去されて検出される。
【0113】
いくつかの実施形態では、また、ゲノムシーケンサーワークフロー(Roche Applied Scienceカタログ04 896 548 001)の場合、第1の工程において、(クローン)増幅がエマルジョンPCRによって行われる。したがって、増幅の工程がエマルジョンPCR法によって行われることも本開示の範囲内である。次いで、クローン増幅された標的核酸分子を担持するビーズは、製造業者のプロトコルに従ってピコタイタープレートに任意に移され、配列決定のためにピロリン酸シーケンシング反応に供され得る。
【0114】
いくつかの実施形態では、シーケンシングは、Illumina,Inc.によって提供されるもの(「Illumina Sequencing Method」)などの次世代シーケンシング法を使用して行われる。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、Illuminaの次世代シーケンシング技術は、クローン増幅及び合成によるシーケンシング(SBS)化学を使用して、迅速で正確なシーケンシングを可能にする。このプロセスは、DNA塩基を核酸鎖に組み込みながら同時に同定する。各塩基は、成長中の鎖に付加されると固有の蛍光シグナルを放出し、これを用いてDNA配列の順序を決定する。
【0115】
上記のように、標的捕捉プライマーが不注意に「ミスプライミング」する、すなわち非標的配列に結合するのを防ぐことが望ましい。ポイズンプライマーが最初から「ミスプライミング」を防止又は低減する能力を、
図3Aの第1の非限定的な実施形態に示す。ミスプライミングされた非標的分子の捕捉を防止又は低減するポイズンプライマーの能力は、
図4の第2の非限定的な実施形態に示されている。一般に、これらの2つの実施形態のそれぞれは、標的核酸分子の溶液中プライマー媒介捕捉を含むプライマー伸長標的濃縮、続いて核酸分子のライブラリー中に存在する他の核酸分子に対する捕捉された標的核酸分子の濃縮の方法を例示する。
【0116】
図3Aは、伸長されたポイズンプライマーが標的捕捉プライマーのミスプライミングの発生を防止又は低減する、標的核酸分子濃縮の方法を示す。この実施形態では、ハイブリダイズしたポイズンプライマーの伸長が、標的捕捉プライマーが非標的核酸分子にハイブリダイズするのを妨げる。最初に
図3Aのパネル301を参照すると、核酸分子のライブラリーが最初に調製され、核酸分子のライブラリーは、1つ又は複数の標的核酸分子323及び1つ又は複数の非標的核酸分子333を含む。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の標的核酸分子323は、核酸分子ライブラリー中の1つ又は複数の非標的核酸分子と比較して低存在量である。例えば、いくつかの実施形態では、1つ又は複数の標的核酸分子は、核酸分子ライブラリー中の核酸分子の約10%未満に相当し得る。他の実施形態では、1つ又は複数の標的核酸分子は、核酸分子ライブラリー中の核酸分子の約5%未満に相当し得る。いくつかの実施形態では、アダプター(321、322、331、332)は、1つ又は複数の標的核酸分子323及び1つ又は複数の非標的核酸分子333の両端にライゲーションされる。
【0117】
パネル301は標的核酸分子323を示し、標的核酸分子は、第1のアダプター301を含む第1の末端と、第2のアダプター322を含む第2の末端とを含む。パネル301は非標的核酸分子333をさらに示し、非標的核酸分子は、第1のアダプター331を含む第1の末端と、第2のアダプター333を含む第2の末端とを含む。第1のアダプター321及び331は、それぞれ標的核酸分子及び非標的核酸分子の5’末端に位置する。第2のアダプター322及び332は、それぞれ標的核酸分子及び非標的核酸分子の3’末端に位置する。いくつかの実施形態では、第1のアダプター321及び331は同じである。同様に、いくつかの実施形態では、第2のアダプター331及び332は同じである。
【0118】
核酸ライブラリーの調製後、1つ又は複数の標的捕捉プライマー324及び1つ又は複数のポイズンプライマー334を、それぞれ標的核酸分子323及び非標的核酸分子333にハイブリダイズさせる(パネル302参照)。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の標的捕捉プライマー324はそれぞれ、標的核酸分子323の少なくとも一部に相補的な標的捕捉領域325と、捕捉部分326とを含む。捕捉部分は、上記の部分のいずれかを含み得る。いくつかの実施形態では、捕捉部分はビオチンである。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のポイズンプライマー334は、非標的核酸分子333の少なくとも一部に相補的な非標的特異的領域を含む。特に、1つ又は複数のポイズンプライマー334は捕捉部分を含まないため、濃縮工程中に捕捉することはできない。
【0119】
図3Aのパネル303に示すように、1つ又は複数のハイブリダイズした標的捕捉プライマー及び1つ又は複数のポイズンプライマーのそれぞれが伸長される。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のハイブリダイズした標的捕捉プライマー324を第1のポリメラーゼ(図示せず)によって伸長し、それによって1つ又は複数の標的捕捉プライマー伸長複合体328を生成する。1つ又は複数の標的捕捉プライマー伸長複合体328はそれぞれ、標的核酸分子323及び伸長した標的捕捉プライマー327を含む(破線はハイブリダイズした標的捕捉プライマー324の伸長部分を示す)。パネル303にさらに示すように、1つ又は複数のハイブリダイズしたポイズンプライマー334を第2のポリメラーゼ(図示せず)によって伸長することにより、1つ又は複数の伸長したポイズンプライマー335を生成する(ここでも破線は、ハイブリダイズしたポイズンプライマー334の伸長部分を示す)。
【0120】
当業者は、ポイズンプライマーの伸長が、いくつかの実施形態では、標的捕捉プライマーが非標的鎖にミスプライミングするのを防止又は軽減することを理解する(
図3Aのパネル303を
図4のパネル402及び403と比較されたい)。言い換えれば、二本鎖ポリ核酸の形成は、標的捕捉プライマーが非標的核酸分子に結合するのを防止又は緩和し、したがってミスプライミングを防止又は緩和する。
【0121】
次に、標的捕捉プライマー伸長複合体328を官能化基質329上に捕捉する(
図3Aのパネル304を参照されたい)。いくつかの実施形態では、官能化基質は、溶液相支持体(例えば、ビーズ又は別の同様の粒子)又は固相支持体(例えば、シリコンウェハ、ガラススライドなど)を含む。磁性ガラス粒子及びそれを使用する装置の例は、米国特許第656,568号、第6,274,386号、第7,371,830号、第6,870,047号、第6,255,477号、第6,746,874号及び第6,258,531号に記載されており、これらの開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。パネル304に示される実施形態では、標的捕捉プライマー伸長複合体328は、捕捉部分326を介して官能化基質329上に捕捉される。いくつかの実施形態では、捕捉部分326はビオチンを含み、官能化基質はストレプトアビジンを含む。標的捕捉の代替方法は、本明細書でさらに説明される(例えば、
図5の実施形態を参照)。
【0122】
いくつかの実施形態では、
図3Bを参照すると、捕捉は、ユニバーサル捕捉オリゴヌクレオチド351を標的捕捉プライマー324にハイブリダイズさせることを含む。この特定の実施形態では、標的捕捉プライマー324は、捕捉配列、すなわちユニバーサル核酸配列350を含む部分を含む(パネル310参照)。導入されたユニバーサル捕捉オリゴヌクレオチド351は、標的捕捉プライマー324のユニバーサル捕捉配列350と相補的な核酸配列を有する部分を含み、さらに捕捉部分351を含む。
図3Aのパネル304に示される実施形態と同様に、捕捉は、官能化基質329を導入することをさらに含み、官能化基質329は、捕捉部分351と反応又は結合することができる部分を含む。
【0123】
捕捉後、標的捕捉プライマー伸長複合体328は、核酸ライブラリーに存在する核酸分子に対して濃縮される。いくつかの実施形態では、濃縮は、官能化基質上に捕捉されていない核酸分子を除去することを含む。いくつかの実施形態では、捕捉されなかった核酸分子は、溶液相支持体を含むカラムに1又は複数の洗浄溶液及び/又は緩衝溶液を流すことによって除去され得る。パネル301及び305を比較することによって、当業者は、1つ又は複数の標的捕捉プライマー伸長複合体の捕捉及び捕捉されていない核酸分子の除去後、初期反応混合物は、1つ又は複数の捕捉された標的核酸分子が濃縮されていることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、捕捉された標的核酸分子は、官能化された表面に結合している間に直接増幅される。他の実施形態では、本明細書にさらに記載されるように(
図7参照)、標的捕捉プライマー伸長複合体328は、標的核酸分子がさらなる下流のプロセス操作(例えば、増幅及び/又はシーケンシング)で利用され得るように官能化基質329から放出され得る。
【0124】
図4は、伸長されたポイズンプライマーが、標的捕捉プライマーによってミスプライミングされた非標的核酸分子の捕捉を防止する、標的核酸濃縮の方法を示す。本明細書に記載されるように、非標的核酸分子にハイブリダイズしたポイズンプライマーの伸長は、形成された標的捕捉プライマー伸長複合体から捕捉部分を切断する。最初に
図4のパネル401を参照すると、核酸分子のライブラリーが最初に調製され、核酸分子のライブラリーは、1つ又は複数の標的核酸分子423及び1つ又は複数の非標的核酸分子433を含む。いくつかの実施形態では、アダプター(421、422、431、432)は、1つ又は複数の標的核酸分子423及び1つ又は複数の非標的核酸分子433の両端にライゲーションされる。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の標的核酸分子423は、核酸分子ライブラリー中の1つ又は複数の非標的核酸分子と比較して低存在量である。例えば、いくつかの実施形態では、1つ又は複数の標的核酸分子は、核酸分子ライブラリー中の核酸分子の約10%未満に相当し得る。他の実施形態では、1つ又は複数の標的核酸分子は、核酸分子ライブラリー中の核酸分子の約5%未満に相当し得る。パネル401は標的核酸分子423を示し、標的核酸分子は、第1のアダプター401を含む第1の末端と、第2のアダプター422を含む第2の末端とを含む。
【0125】
パネル401は非標的核酸分子433をさらに示し、非標的核酸分子は、第1のアダプター431を含む第1の末端と、第2のアダプター433を含む第2の末端とを含む。第1のアダプター421及び431は、それぞれ標的核酸分子及び非標的核酸分子の5’末端に位置する。第2のアダプター422及び432は、それぞれ標的核酸分子及び非標的核酸分子の3’末端に位置する。いくつかの実施形態では、第1のアダプター421及び431は同じである。同様に、いくつかの実施形態では、第2のアダプター431及び432は同じである。
【0126】
核酸ライブラリーの調製後、1つ又は複数の標的捕捉プライマー424及び1つ又は複数のポイズンプライマー434を、それぞれ標的核酸分子423及び非標的核酸分子433にハイブリダイズさせる(
図4のパネル402を参照)。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の標的捕捉プライマー424はそれぞれ、標的核酸分子423の少なくとも一部に相補的な標的捕捉領域425と、捕捉部分426(例えばビオチン)とを含む。
【0127】
図4のパネル402には、標的捕捉プライマー424の非標的核酸分子配列433へのミスプライミングも示されている。言い換えれば、いくつかの実施形態では、捕捉部分426を含む標的捕捉プライマー424は、非標的核酸分子433にハイブリダイズし得る、すなわち、標的捕捉プライマーは「ミスプライミング」される。したがって、非標的核酸分子は、ハイブリダイズしたポイズンプライマーと、ハイブリダイズしたミスプライム標的捕捉プライマーの両方を含み得る。
【0128】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数のポイズンプライマー434は、非標的核酸分子433の少なくとも一部に相補的な非標的特異的領域を含む。特に、1つ又は複数のポイズンプライマー434は捕捉部分を含まないため、下流のプロセスで捕捉することはできない。
【0129】
図4のパネル403に示すように、ミスプライミングされたものを含む1つ又は複数のハイブリダイズした標的捕捉プライマー及び1つ又は複数のポイズンプライマーのそれぞれが伸長される。いくつかの実施形態では、標的核酸分子にハイブリダイズした1つ又は複数の標的捕捉プライマー424を第1のポリメラーゼ(図示せず)によって伸長し、それによって1つ又は複数の標的捕捉プライマー伸長複合体428を生成する。1つ又は複数の標的捕捉プライマー伸長複合体428はそれぞれ、標的核酸分子423及び伸長した標的捕捉プライマー427を含む(破線はハイブリダイズした標的捕捉プライマー424の伸長部分を示す)。いくつかの実施形態では、非標的核酸分子にハイブリダイズした標的捕捉プライマーもまた、第1のポリメラーゼ(図示せず)によって伸長され、それにより、1つ又は複数のミスプライム伸長複合体430を生成する。パネル403にさらに示すように、1つ又は複数のハイブリダイズしたポイズンプライマー434を第2のポリメラーゼ(図示せず)によって伸長することにより、1つ又は複数の伸長したポイズンプライマー435を生成する(ここでも破線は、ハイブリダイズしたポイズンプライマー434の伸長部分を示す)。
【0130】
図4のパネル404にさらに示されるように、ポイズンプライマーが伸長し続けると、伸長したポイズンプライマーは標的捕捉プライマーから捕捉部分426をクリップし、したがって標的捕捉プライマー伸長複合体から捕捉部分を放出する。当業者は、ハイブリダイズしたポイズンプライマーの伸長により、非標的核酸分子の捕捉の発生が防止又は低減されることを理解するであろう。
【0131】
次に、標的捕捉プライマー伸長複合体428を官能化基質429で捕捉する(
図4のパネル405を参照されたい)。いくつかの実施形態では、官能化基質は、溶液相支持体(例えば、ビーズ又は別の同様の粒子)又は固相支持体(例えば、シリコンウェハ、ガラススライドなど)である。上述のように、米国特許第656,568号、同第6,274,386号、同第7,371,830号、同第6,870,047号、同第6,255,477号、同第6,746,874号及び同第6,258,531号に記載されているものを使用する磁性ガラス粒子及びデバイスのいずれも利用することができる。パネル405に示される実施形態では、標的捕捉プライマー伸長複合体428は、捕捉部分426を介して官能化基質429上に捕捉される。標的捕捉の代替方法は、本明細書で説明される(例えば、
図6の実施形態を参照)。
【0132】
捕捉後、標的捕捉プライマー伸長複合体428は、核酸ライブラリーに存在する核酸分子に対して濃縮される。いくつかの実施形態では、濃縮は、官能化基質上に捕捉されていない核酸分子を除去することを含み、例えば、捕捉されなかった核酸分子は、溶液相支持体を含むカラムに1又は複数の洗浄溶液及び/又は緩衝溶液を流すことによって除去され得る。パネル401及び406を比較することによって、当業者は、1つ又は複数の標的捕捉プライマー伸長複合体の捕捉及び捕捉されていない核酸分子の除去後、初期反応混合物は、1つ又は複数の捕捉された標的核酸分子が濃縮されていることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、捕捉された標的核酸分子は、官能化された表面に結合している間に直接増幅される。他の実施形態では、本明細書にさらに記載されるように(
図7参照)、標的捕捉プライマー伸長複合体428は、標的核酸分子がさらなる下流のプロセス操作(例えば、増幅及び/又はシーケンシング)で利用され得るように官能化基質429から放出され得る。
【0133】
本明細書で述べるように、標的捕捉プライマーの捕捉部分は、標的捕捉プライマーの標的核酸分子へのハイブリダイゼーションの前に官能化基質に結合され得る。
図5は、標的核酸分子323へのハイブリダイゼーションの前に、標的捕捉プライマー324が捕捉部分326を介して官能化基質329に結合される代替のワークフローを示す。いくつかの実施形態では、官能化基質329に結合した標的捕捉プライマー324は、標的核酸分子323にハイブリダイズする(パネル502参照)。同時に、ポイズンプライマー334が非標的核酸分子333にハイブリダイズする(パネル502参照)。
図3Aに示される実施形態と同様に、ハイブリダイズした標的捕捉プライマー324及びハイブリダイズしたポイズンプライマー334の両方が伸長される。いくつかの実施形態では、ポイズンプライマーの伸長は、標的捕捉プライマーの非標的核酸分子333へのミスプライミングを防止又は低減する。パネル503に示されるように、標的捕捉プライマー伸長複合体328は、捕捉部分326を介して官能化基質329に結合され、したがって別個の捕捉工程は必要とされない(
図3Aのパネル304と比較されたい)。いくつかの実施形態では、濃縮は、官能化基質上に捕捉されていない核酸分子を除去することを含み、例えば、捕捉されなかった核酸分子は、溶液相支持体を含むカラムに1又は複数の洗浄溶液及び/又は緩衝溶液を流すことによって除去され得る。本明細書にさらに記載されるように、標的捕捉プライマー伸長複合体328は、標的核酸分子がさらなる下流のプロセス操作(例えば、シーケンシング)で利用され得るように官能化基質329から放出され得る。
【0134】
図6は、標的核酸分子423へのハイブリダイゼーションの前に、標的捕捉プライマー424が捕捉部分426を介して官能化基質429に結合される別の代替のワークフローを示す。いくつかの実施形態では、官能化基質429に結合した標的捕捉プライマー424は、標的核酸分子423にハイブリダイズする(パネル602参照)。同時に、ポイズンプライマー434が非標的核酸分子433にハイブリダイズする(パネル502参照)。パネル602には、標的捕捉プライマー424(捕捉部分426を介して官能化基質429にも結合している)の非標的核酸分子433へのミスプライミングも示されている。
図4に示される実施形態と同様に、ハイブリダイズした標的捕捉プライマー424及びハイブリダイズしたポイズンプライマー434の両方が伸長される(パネル603参照)。
図6のパネル604に示されるように、ポイズンプライマー434が伸長し続けると、伸長したポイズンプライマーは標的捕捉プライマーから捕捉部分426及び結合した官能化基質429をクリップし、したがって標的捕捉プライマー伸長複合体428から捕捉部分を放出する。
【0135】
パネル604に示されるように、標的捕捉プライマー伸長複合体428は、捕捉部分426を介して官能化基質429に結合され、したがって別個の捕捉工程は必要とされない(
図4のパネル405と比較されたい)。いくつかの実施形態では、濃縮は、官能化基質上に捕捉されていない核酸分子を除去することを含み、例えば、捕捉されなかった核酸分子は、溶液相支持体を含むカラムに1又は複数の洗浄溶液及び/又は緩衝溶液を流すことによって除去され得る。本明細書にさらに記載されるように、標的捕捉プライマー伸長複合体428は、標的核酸分子がさらなる下流のプロセス操作(例えば、シーケンシング)で利用され得るように官能化基質429から放出され得る。
【0136】
上記のように、いくつかの実施形態では、標的捕捉プライマー伸長複合体が官能化基質から放出され得、したがって、標的核酸分子が増幅及び/又はシーケンシングされ得る。
図7は、捕捉部分726を介して官能化基質729に結合した標的捕捉プライム伸長複合体728を示す(
図7のパネル701を参照)。いくつかの実施形態では、放出プライマー730が標的核酸分子723にハイブリダイズする(パネル702参照)。いくつかの実施形態では、放出プライマー730は、標的核酸分子723に相補的であり、標的捕捉プライマー伸長複合体728に対して5’位置で標的核酸分子723にハイブリダイズする。パネル702に示されるように、標的捕捉プライマー伸長複合体728(官能化基質729に付着している)及び放出プライマー730の両方が標的核酸分子723にハイブリダイズする。
【0137】
図7のパネル703を参照すると、ハイブリダイズした放出プライマー730は、第3のポリメラーゼ(図示せず)によって伸長され、それによって伸長した放出プライマー731を提供する。いくつかの実施形態では、ハイブリダイズした放出プライマー730の伸長は、伸長した標的捕捉プライマー727を標的捕捉プライマー伸長複合体728から遊離させる。いくつかの実施形態では、伸長した標的捕捉プライマー727は、固体支持体218に付着したままである。
【0138】
図2Eに示すように、標的核酸分子723は、第4のポリメラーゼ(図示せず)、第1の増幅プライマー735及び第2の増幅プライマー736により増幅される。第1の増幅プライマー735は第1のアダプター721と相補的な3’末端を含み、第2の増幅プライマー736は第2のアダプター722と相補的な3’末端を含む。いくつかの実施形態では、第1及び第2の増幅プライマーはユニバーサルプライマーである。
【実施例】
【0139】
実施例
試験材料としてユニバーサルヒト参照UHR(Agilent)RNAを25ng投入質量で使用して、原理の証明を実施した。Kapa RNA HyperPrepを用いてcDNAライブラリーを調製した。rRNA枯渇ライブラリーを、Kapa Ribo-Eraseを使用して陽性対照として調製した。ポイズンプライマーを、参照GRCh38を使用してヒトrRNA由来cDNAの両方の鎖に対して設計した。rRNAポイズンプライマーは、54℃~58℃のT
mで設計された98個のプライマー(配列番号1~98)からなった。クエリ「Homo sapiens’’[Organism] AND ’’ribosomal rna’’[All Fields] AND biomol_rrna[PROP]」を用いてNCBIヌクレオチドアーカイブ(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore)を検索して、すべてのヒトrRNA遺伝子を同定した。配列類似性を調べるためにclustalWを使用してヌクレオチド配列をアライメントした。配列類似性に基づいて、リストを代表的なrRNAに減らした(表1)。列挙されたrRNA配列について、長さ16~31bpのすべての可能な推定プライマーを作成した。プライマー配列を、blat(https://github.com/dib-lab/ged-docs/wiki/BLAT)を使用してヒト参照ゲノムGRCh38にアラインメントした。マッピング位置の数及び熱融点(>54℃)に基づいて、好ましいPCR増幅特性のために推定プライマーをフィルタにかけた。プライマーは、プライマー間をほとんど又は全く重複させずに、正鎖及び負鎖の両方の各rRNA標的にまたがるように選択した。ポイズンプライマーを捕捉プライマーとともに捕捉反応に含めた。標的捕捉プライマーは、55℃の平均T
mを有する既知の遺伝子融合を検出するように設計された152個のプライマーからなった。標的捕捉プライマーには、その後の放出反応においてストレプトアビジンから捕捉断片を放出するように設計された152個のプライマー(「放出プライマー」)が付随した。捕捉伸長へのインプットには、1μMのポイズンプライマーとの反応及び対照としてのポイズンプライマーなしの反応が含まれた。捕捉伸長反応は以下を含んでいた:1μgのcDNA、Kapa 2Gマルチプレックス混合物(5×)、10 μLのブロッキングオリゴ(37.3μM)、2μLのCapture Primer Pool(1.64nM/プライマー)及び2μLのポイズンプライマープール(5 nM/プライマー)、並びに16μLのddH
2O。捕捉伸長反応は、以下の熱サイクルを用いて行った:95℃で2分間、80℃で1秒間、60℃まで10分間で2%勾配、65℃で2分間、4℃で保持。伸長産物を、1×結合緩衝液(100mM NaCl、10mM Tris-HCl、2% SDS)中でストレプトアビジン磁気ビーズと共にインキュベートすることによって捕捉した。ビーズを洗浄緩衝液を用いて洗浄した。放出プライマーをビーズ捕捉標的に55℃で30分間ハイブリダイズさせた。sgPETE放出混合物を使用して50℃で2分間、放出プライマー伸長を行った。15増幅サイクルを使用してKapa HiFi ReadyMixを使用して最終放出反応を増幅した。ポイズンプライマー枯渇の成功を、2×150bpリードワークフローを使用してIllumina Nextseq 500に対するシーケンシングによって評価した。各試料に対する逆多重化されたリードの数は、398万から1010万の範囲であった。バイオインフォマティクス分析のために、すべての試料に使用されたリードの数を350万リードにサブサンプリングした。fastpを使用してフィルタリングされた品質フィルタリングされたシーケンシングリードを、デフォルト設定を使用してUMIツールを使用して重複排除した。rRNAリードにマッピングするシーケンシングリードを、BWM MEMを使用してマッピングした。残りの非rRNAリードを、STARアライナを使用してRNA参照(reverence)Hg38にマッピングした。
図8を参照すると、UHR対照試料は、インプットとしてrRNA枯渇なしのcDNAを有し、捕捉反応にポイズンプライマーは添加されなかった。UHR no RiboErase 1μM試料は、インプットとしてrRNA枯渇なしのcDNAを有し、捕捉反応に1μMポイズンプライマーを含有していた。ポイズンプライマーを含有する試料は、シーケンシングされているオフターゲットrRNA断片の存在量の減少を示し、平均44.83%(±1.97%)の対照試料と比較して、平均19.47%(±4.17%)であった。ポイズンプライマーが捕捉反応に含まれる場合、所望の標的の数も増加した。350万個のリードのサブサンプルでは、ポイズンプライマーが含まれている場合、233万(±17万)個の融合標的リードが検出され、対照試料では105万(±8万)個のシーケンシングリードが検出された(
図9A)。このように、ポイズンプライマーを含めることで、全体のシーケンシング深度が同じでも、融合ターゲットのリード深度がより高くなった。この例では、対照試料は、ポイズンプライマー処理(
図9B)と同じ融合標的のリード深度に達するために理論的に771万リードを必要とする。オフターゲットのマッピングされていないリードの%は、Ribo-Erase処理試料と、ポイズンプライマーを含むRibo-Erase処理試料との間で、有意に異ならなかった。したがって、ポイズンプライマーを含めることは、Ribo-Erase処理試料について観察されたようにシーケンシング・メトリックに悪影響を及ぼさなかった(
図8)。
【0140】
本明細書中で言及される及び/又は出願データシートにおいてリスト化される全ての米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、及び非特許刊行物は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。実施形態の態様は、必要に応じて、様々な特許、出願、及び刊行物の概念を使用してさらに別の実施形態を提供するように変更されることができる。
【0141】
本開示は、いくつかの例示的な実施形態を参照して説明されてきたが、本開示の原理の精神及び範囲内に含まれるであろう多くの他の変更及び実施形態が当業者によって考案されることができることを理解されたい。より具体的には、合理的な変形及び変更は、本開示の精神から逸脱することなく、前述の開示、図面、及び添付の特許請求の範囲内の主題の組み合わせ構成の構成部品及び/又は配置において可能である。構成部品及び/又は配置の変形及び変更に加えて、代替の使用法も当業者にとって明らかであろう。
【配列表】