(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】ポリエステル成形体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 63/85 20060101AFI20241112BHJP
C08G 63/183 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
C08G63/85
C08G63/183
(21)【出願番号】P 2023512233
(86)(22)【出願日】2021-08-18
(86)【国際出願番号】 KR2021010935
(87)【国際公開番号】W WO2022039484
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2023-02-17
(31)【優先権主張番号】10-2020-0103817
(32)【優先日】2020-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】319001455
【氏名又は名称】ヒョスン ティエヌシー コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,チョン キ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ミ ソ
(72)【発明者】
【氏名】キム,モ ソン
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-086622(JP,A)
【文献】特開2008-001847(JP,A)
【文献】特開2004-224895(JP,A)
【文献】特開2005-029581(JP,A)
【文献】特開平09-208679(JP,A)
【文献】特表2012-520357(JP,A)
【文献】特開2009-242444(JP,A)
【文献】特開昭57-190020(JP,A)
【文献】特表2010-507716(JP,A)
【文献】特開2018-090673(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0128157(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0088292(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-0193303(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00-91
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機
第1錫化合物(Inorganic
stannous tin compound)を重合触媒として使用して製造されるポリエステルを溶融して成形した、ポリエステル成形体
であって、
前記ポリエステル成形体は、無機第1錫化合物の残渣を10ppm乃至200ppm含み、前記無機錫化合物触媒は、ピロリン酸第1錫、リン酸第1錫、酒石酸第1錫、酢酸第1錫、ステアリン酸第1錫、オレイン酸第1錫、グルコン酸第1錫、クエン酸第1錫、エトキシド第1錫、アセチルアセネート第1錫、及びグリコール酸第1錫からなる群より選択される無機第1錫化合物である、ポリエステル成形体。
【請求項2】
前記ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、及びポリテトラメチレンテレフタレートからなる群より選択される一種以上である、
請求項1に記載のポリエステル成形体。
【請求項3】
無機
第1錫化合物(inorganic
stannous tin compound)を重合触媒として使用して製造されるポリエステルからなるポリエステル樹脂組成物を溶融して成形する、
ポリエステル成形体の製造方法
であって、前記方法は、
前記ポリエステルを重合する際には、ポリエステルに対して、無機錫化合物触媒を10ppm乃至200ppm添加し、
前記無機第1錫化合物としては、ピロリン酸第1錫、リン酸第1錫、酒石酸第1錫、酢酸第1錫、ステアリン酸第1錫、オレイン酸第1錫、グルコン酸第1錫、クエン酸第1錫、エトキシド第1錫、アセチルアセネート第1錫、及びグリコール酸第1錫からなる群より選択される無機第1錫化合物を用いる、
ポリエステル成形体の製造方法。
【請求項4】
前記方法は、
ポリエステル樹脂組成物を溶融するステップと、
溶融したポリエステル樹脂組成物をモールドに充填するステップと、
前記モールドに充填したポリエステル樹脂組成物を冷却して離型するステップと、を含む、
請求項
3に記載のポリエステル成形体の製造方法。
のポリエステル成形体の製造方法。
【請求項5】
前記成形ステップは、圧縮成形、移送成形、積層成形、射出成形、圧出成形、ブロー成形、カレンダー成形、ガス成形、インサートモールド、または真空成形の方法によって行われる、
請求項
3に記載のポリエステル成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエステル成形体及びその製造方法に関し、より詳しくは、アンチモン系触媒の残留による問題を解消した環境にやさしいポリエステル成形体その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリエステルは機械的特性及び化学的特性に優れ、多用途への応用、例えば、飲料充填用容器、自動車成形品などの分野に応用されている。しかし、ポリエステルの重縮合過程でアセトアルデヒドとホルムアルデヒドが付加物質として生成され、それを含む製品を介して飲用したら有害な恐れがある。
【0003】
特に、飲料水のボトル内に存在するアセトアルデヒドは外に徐々に流出されて内容物と共に混合され、摂取する製品の風味と香りに否定的な影響を及ぼす。また、ボトル内に存在するホルムアルデヒドは、極微量でも生体内でがんのような疾病を誘発するため、先進国では厳しく規制している毒性物質に当たる。
【0004】
よって、ポリエステルの重縮合過程で形成されるアセトアルデヒドとホルムアルデヒドのようなアルデヒド系物質の生成を抑制するために多くの研究が行われている。
【0005】
また、使用後のポリエステル成形体を焼却処分する場合は、追加処理が必要な灰分の生成源になる金属の含有量が少ないことが好ましい。
【0006】
また、使用後のポリエステル樹脂を解重合してモノマーを回収しリサイクルする場合においても、回収モノマー中の不純物の原因になる金属の含有量が少ないことが好ましい。よって、ポリエステル成形体の材料となるポリエステル樹脂に含有される金属、特に重金属の含有量を低減する技術の開発が切実に求められている。
【0007】
アンチモン系触媒は飲料水のボトルのような成形体を製造するために使用されるポリエステルを重縮合する代表的な物質である。しかし、アンチモン系触媒で作られたポリエステル食品容器の場合、重縮合過程で大量のアセトアルデヒドとホルムアルデヒドが付加物質として生成される。
【0008】
一例として、特許文献1はポリエステル成形体のポリエステル樹脂をアンチモン化合物触媒下で重合し製造する技術を開示している。しかし、アンチモン系触媒で作られた飲料水のボトルのような成形体の場合、重合過程で大量のアンチモンを使用しなければならず、金属自体の毒性のため長期間使用しアンチモンが流出されて生体内に流入したら、胎児の成長阻害、発がん性などのような疾病の誘発と環境問題を引き起こしている(Anal.Bioanal.Chem.2006,385,821)。
【0009】
また、アンチモン触媒は金属質量当たりの重合活性が高くないため、ポリエステル樹脂を工業的に満足できる生産速度で製造しようとする場合は比較的高濃度で使用する必要がある。その結果、これらの化合物を利用して製造されたポリエステル樹脂にはアンチモンが金属原子として50ppm~300ppm含有されている。
【0010】
また、ポリエステル重合反応に使用する際、投入量対比約10~15%水準で触媒還元物が発生するようになってポリエステル成形体のカラーのL値を低くするという問題を引き起こすこともある。
【0011】
チタンまたはアルミニウム系触媒のような非アンチモン(antimony-free)系触媒に適用しようとする試みにもかかわらず、重複合の途中または製品の成形過程におけるアセトアルデヒドとホルムアルデヒドの生成問題は依然として深刻な問題として残っている。
【0012】
特許文献2は、ゲルマニウム系触媒、チタン系触媒、及びこれらの混合物からなる群より選択される金属系触媒を含むポリエチレンテレフタレートからなる表面層、及びアンチモン系触媒を含むポリエチレンテレフタレートからなる背面層を含む多層構造のポリエステル樹脂成形体を開示している。
【0013】
しかし、チタン触媒は金属質量当たりの重縮合活性が高い一方、好ましくないポリエステルの分解反応を引き起こす傾向も強く、重縮合反応工程での樹脂の着色や、溶融成形工程における低分子化合物の副生または分子量の低下などによる樹脂品質の悪化を引き起こす恐れがある。
【0014】
その結果、これらのチタン化合物を重縮合触媒として使用して製造したポリエステル樹脂は安定性が低く、溶融成形の際の熱分解によるアセトアルデヒドの生成や分子量の低下が従来のアンチモン化合物を重縮合触媒として使用して製造したポリエステル樹脂に比べ大きいため、飲料の充填容器などの成形体の素材としての使用が困難である。
【0015】
一方、ゲルマニウム化合物触媒自体は高い活性を有するが、ゲルマニウム触媒は重合に使用される量が多ければ触媒の高い価格のため商業化への適用が難しいという限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】韓国特許公開 第2001-0043209号
【文献】韓国特許公開 第2010-0020223号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は上述したような従来技術の問題点を解決するためのものであって、本発明の一目的は、ポリエステルの重縮合過程や、製品の成形過程でアセトアルデヒドとホルムアルデヒドの発生量を最大限抑制して内容物の味と香りに影響を及ぼさず、人体にも毒性がない環境にやさしいポリエステル成形体を提供することである。
【0018】
本発明の他の目的は、異物が少なく、強伸度、耐熱性、及び形態安定性に優れたポリエステル成形体を提供することである。
【0019】
本発明のまた他の目的は、アセトアルデヒドとホルムアルデヒドの含量を低減したポリエステル樹脂成形体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上述した技術的課題を解決するための本発明の一つの様相は、
重合触媒として無機錫化合物を使用して製造されるポリエステルを溶融して成形したポリエステル成形体に関する。
【0021】
前記無機錫化合物は、無機第1錫化合物(stannous tin compound)または無機第2錫化合物(stannic tin compound)である。
【0022】
前記無機第1錫化合物の非制限的な例としては、酸化第1錫、ピロリン酸第1錫、リン酸第1錫、酒石酸第1錫、酢酸第1錫、シュウ酸第1錫、ステアリン酸第1錫、オレイン酸第1錫、グルコン酸第1錫、クエン酸第1錫、2-エチルヘキサノン酸第1錫、エトキシド第1錫、アセチルアセネート第1錫、及びグリコール酸第1錫を含む。
【0023】
前記無機第2錫化合物の非制限的な例としては、酸化第2錫、ピロリン酸第2錫、リン酸第2錫、酒石酸第2錫、酢酸第2錫、シュウ酸第2錫、ステアリン酸第2錫、オレイン酸第2錫、グルコン酸第2錫、クエン酸第2錫、2-エチルヘキサノン酸第2錫、エトキシド第2錫、アセチルアセネート第2錫、及びグリコール酸第2錫を含む。
前記無機錫化合物は、多種類を複合化してもよく、従来知られている触媒と混合して使用する。
【0024】
前記ポリエステル成形体は、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートの単独または2種以上を含み、そのうち無機錫化合物の残渣を10ppm乃至200ppm含む。
【0025】
上述した技術的課題を解決するための本発明の他の様相は、無機錫化合物(Inorganic tin compound)触媒の存在下で重合されたポリエステル重合物を溶融して成形することを特徴とするポリエステル成形体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、人体及び環境に有害な重金属を含まない触媒を使用することで、環境汚染及び人体に有害な成分を含まないポリエステル成形体を提供することができ、成形体の焼却またはリサイクル過程でも環境への負担を減少することができる。
【0027】
本発明のポリエステル成形体は、アルデヒド系化合物が低減されて飲食の貯蔵容器として使用される際に味と香りに影響を及ぼさず、人体内の毒性がない環境にやさしい容器として使用されることができる。
【0028】
本発明のポリエステル成形体は、優れた耐熱性、寸法安定性、及び成形加工性を提供する効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、本発明についてより詳細に説明する。
【0030】
本発明を説明するに当たって、関連する公知技術に関する具体的な説明が本発明の要旨を不明確にする恐れがあると判断される場合、その詳細な説明を省略する。本願明細書において、ある部分がある構成要素(成分)を「含む」という際、これは特に反対する記載がない限り、他の構成要素(成分)を除くのではなく、他の構成要素を更に含むことを意味する。
【0031】
本発明の一実施例のポリエステル成形体は、重合触媒として無機錫化合物を使用して製造されるポリエステルを溶融して成形したものであることを特徴とする。
無機錫化合物触媒は単独に使用してもよく、2種以上を組み合わせるか、または従来知られている触媒と複合して使用してもよい。
【0032】
有機錫化合物触媒は本発明で使用している無機錫化合物に比べ強力な環境規制対象物質であるため、本発明では除外する。
【0033】
本発明で使用される無機錫化合物の場合、従来使用されているアンチモン(Sb)触媒に比べ標準還元電位(redox potential energy)値が低く、ポリエステル重合反応及び成形工程の際に容易に還元されないという著しい利点がある。本発明で使用された無機錫化合物触媒は、重合反応の途中に容易に還元されて活性が低下するか、還元物のため重合反応器内に触媒の残渣物が残るという問題点がなく、成形工程の際の圧出器のフィルタ圧力の上昇、及びノズル異物の発生が少ないため、工程性が向上されるという結果が得られる。
【0034】
【0035】
標準還元電位は、その値が大きいほど還元性が大きく、小さいほど還元性が低くなることを意味する。ポリエステルの重合で従来主に使用されていたアンチモン(Sb)は、触媒活性を有する酸化数3または5の状態で標準還元電位が正(+)の値で還元力を有する。それに対し、本発明で使用された無機錫化合物触媒(Inorganic tin compound)触媒は、酸化数2状態で還元されることが非自発的な状態なるため(R.P.Eが負の値)触媒活性を維持し、ポリエステル重合及び圧出工程の際、発生する還元物(触媒残渣物)を減らすことができる。
【0036】
前記無機錫化合物は、特にシュウ酸錫、酢酸錫、またはグリコール酸錫であることが好ましい。
【0037】
前記無機錫化合物触媒は、無機第1錫化合物または無機第2錫化合物である。
【0038】
前記無機第1錫化合物は、酸化第1錫、ピロリン酸第1錫、リン酸第1錫、酒石酸第1錫、酢酸第1錫、シュウ酸第1錫、ステアリン酸第1錫、オレイン酸第1錫、グルコン酸第1錫、クエン酸第1錫、2-エチルヘキサノン酸第1錫、エトキシド第1錫、アセチルアセネート第1錫、及びグリコール酸第1錫からなる群より選択されるものである。
【0039】
前記無機第2錫化合物は、酸化第2錫、ピロリン酸第2錫、リン酸第2錫、酒石酸第2錫、酢酸第2錫、シュウ酸第2錫、ステアリン酸第2錫、オレイン酸第2錫、グルコン酸第2錫、クエン酸第2錫、2-エチルヘキサノン酸第2錫、エトキシド第2錫、アセチルアセネート第2錫、及びグリコール酸第2錫からなる群より選択されるものである。
【0040】
本発明で使用される無機錫化合物触媒は、ポリエステル重合の際にいずれのステップでも投入可能である。例えば、エステル化反応ステップ前のスラリ製造の際(EG/TPA混合物)にのみ投入するか、エステル化反応ステップにのみ投入するか、エステル化反応ステップの重縮合ステップにのみ投入するか、エステル化反応ステップ前のスラリ製造の際、エステル化反応ステップ、及び重縮合ステップのいずれにも投入される。
【0041】
但し、ジカルボン酸成分及びグリコール成分をエステル化反応させた後、反応物を重縮合してポリエステルを製造する場合、前記無機錫化合物触媒はエステル化反応物の重縮合ステップで添加することが好ましい。
【0042】
前記無機錫化合物触媒は、触媒自体をポリエステル重合工程に粉末で添加するか、または触媒溶液の状態に投入する方式と、触媒をエチレングリコール溶液に調製して投入する方式のいずれも使用可能である。但し、触媒をエチレングリコール溶液に調製して投入する際、好ましくは、エチレングリコール溶液と前記無機錫化合物を反応させてグリコール酸錫の形に調製して投入する。
【0043】
通常のポリエステル重合触媒として使用されるアンチモン系触媒は触媒活性が低く、ポリエステルを基準に50ppm乃至500ppm(Sb元素量基準)を使用している。それに対し、本発明で新規に適用される無機錫化合物触媒の場合、10ppm乃至200ppm、好ましくは10ppm乃至100ppm(Sn元素量)の少量でも同等な重縮合反応性を十分に確保することができる。
【0044】
このような低い触媒含量によってポリエステルの触媒異物が改善され、触媒還元物による成形工程における異物の発生が低いため、成形工程の異物が改善されるという効果が得られる。また、触媒を高濃度で使用する場合はポリエステル重合物の黒化(greyish)現象が現れることがあるが、本発明では低い触媒含量のためポリエステル重合物及び成形体の色相(Color L)が改善される著しい効果が得られる。
【0045】
また、本発明の触媒を提供すれば、ポリエステルの耐熱性が改善されてポリエステル分解物から発生するアセトアルデヒドの含量を下げることができ、低い重合温度で重縮合反応を行って環状オリゴマーの含量も改善することができる。
【0046】
本発明の触媒はアンチモン系触媒とは異なって、金属自体の毒性が相対的に低くいため人と環境に問題を引き起こす可能性が低く、少ない量でも短い反応時間内で高い活性を示す。また、本発明の触媒を利用して製造されるポリエステルは粘度、色相のような物理的性質が優秀である。
【0047】
本発明のポリエステル成形体に使用するポリエステルは、ホモポリエステルであるか共重合ポリエステルである。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールを重縮合して得られることが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。
【0048】
脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。好ましくは、ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、及びポリテトラメチレンテレフタレートである。
【0049】
一方、共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸などの一種または2種以上が挙げられ、グリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコールなどの一種または2種以上が挙げられる。
【0050】
どちらでも本発明においてポリエステルとしては、通常60モル%以上、好ましくは80モル%以上がエチレンテレフタレート単位であるポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
【0051】
本発明のポリエステル樹脂成形体の製造方法では、製造される樹脂成形体の色相を向上させるために調色剤を追加に添加する。前記調色剤の例としては、酢酸コバルト、コバルトアセチルアセトネート、コバルトベンゾイルアセトネート、水酸化コバルト、臭化コバルト、塩化コバルト、ヨウ化コバルト、フッ化コバルト、シアン化コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト、セレン化コバルト、りん酸コバルト、酸化コバルト、チオシアン酸コバルト、またはプロピオン酸コバルトなどのコバルトを含む化合物が挙げられるが、これに限らず、本コバルト系無機調色剤以外にも非コバルト系列の有機調色剤(Blue、Red系列)を使用して色相を改善してもよい。
【0052】
前記調色剤の添加量は、前記最終ポリエステル樹脂を基準にしたコバルト元素の含量が約150ppm以下、例えば、約10乃至約150ppm、好ましくは約10乃至約100ppmの量で添加する。コバルト化合物はそれ自体がある程度の触媒活性を有すると知られているが、触媒効果を発揮し得る程度の過量を添加したらポリエステル内の残留金属が増加し、毒性の誘発及び明るさの低下が起こる恐れがある。
【0053】
よって、前記範囲で添加すればポリエステル内にアセトアルデヒド及びホルムアルデヒドのような付加物質を極微量で生成し、着色を最小化することができる。但し、本発明では環境にやさしいポリエステル成形体を提供するために、調色剤として非コバルト系列の有機調色剤を使用している。
【0054】
本発明では有機調色剤として、Clariant社製のBlue(Polysynthren Blue RLS)及びRed(Polysynthren Red GFP)を使用する。
【0055】
本発明のポリエステル成形体は、アセトアルデヒドとホルムアルデヒドの含量が低減されて飲食の貯蔵容器として使用される際に味と香りに影響を及ぼさず、人体内の毒性がない環境にやさしい容器として使用されることができる。詳しくは、前記ポリエステル樹脂成形体は、飲料水のボトル、食品の包装材、繊維性プラスチックなどに使用されるが、好ましくは飲料水のボトルとして使用される。
【0056】
本発明の他の様相は、ポリエステル成形体の製造方法に関する。本発明の方法では、無機錫化合物触媒を使用して製造されるポリエステルからなるポリエステル樹脂組成物を溶融圧出して成形体を製造する。
【0057】
成形体を製造するためのポリエステル樹脂組成物のポリエステル重合物を製造する際には、無機錫化合物を重合触媒として利用してジカルボン酸成分とグリコール成分を重合する。
【0058】
ジカルボン酸成分及びグリコール成分を重合するステップは、前記ジカルボン酸成分とグリコール成分をエステル化反応するステップと、前記エステル化反応の反応物を重縮合するステップとを含む。前記エステル化反応ステップでは、エステル交換反応によって低重合体を得た後、有機高分子粒子、また各種添加物を加え、重縮合触媒として無機錫化合物を加えて重縮合反応を実施して、高分子量のポリエステルを得る。
【0059】
より詳しくは、まずジカルボン酸成分とグリコール成分をエステル反応させる。
【0060】
本発明の一実施例によると、前記ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、シュウ酸、マロン酸、アゼラ酸、フマル酸、ピメリン酸、スベリン酸、イソフタル酸、ドデカンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,2-ノルボルナンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロブタンジカルボン酸、1,4-シクロブタンジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、5-カリウムスルホイソフタル酸、5-リチウムスルホイソフタル酸、または2-ナトリウムスルホテレフタル酸などが挙げられるが、特にこれに限らない。
【0061】
上述したジカルボン酸以外に、本発明の目的を阻害しない範囲内で、前記で例示していない他のジカルボン酸を使用してもよい。本発明の一実施例によると、前記ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を使用する。
【0062】
本発明の一実施例によると、前記グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1.5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3-プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、プロパンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチルシクロブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジエタノール、1,10-デカメチレングリコール、1,12-ドデカンジオール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシメチレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、またはグリセロールなどが挙げられるが、特にこれに限らず、その他に本発明の目的を阻害しない範囲内で他のグリコールを使用してもよい。
【0063】
好ましくは、前記グリコール成分としてエチレングリコールを使用する。
【0064】
本発明の一例によると、前記ジカルボン酸成分及びグリコール成分をエステル化反応するステップは、ましくは、約200℃乃至約300℃の温度で約1乃至6時間の間反応することで行われる。次に、前記エステル化反応の反応物を重縮合する。前記エステル化反応の反応物を重縮合するステップは、約200℃乃至約300℃の温度及び約0.1乃至約1torrの減圧条件で、約1時間乃至約3時間の間反応することで行われる。
【0065】
本発明の無機錫化合物触媒は、エステル化反応前のスラリ製造の際、またはエステル化反応に、そして、エステル化反応後の重縮合ステップの前に投入される。
【0066】
但し、本発明の無機錫化合物触媒をエステル化反応に投入したらエステル化反応が改善される効果があるが、重縮合時間の改善効果が少なく、エステル化反応のうち副反応物であるジエチレングリコール(DEG)の含量が多少増加するという問題が発生する恐れがあるため、本発明では前記エステル化反応後の反応物を重縮合するステップに投入することが好ましい。このようにすることで、従来の触媒を使用する場合より、重縮合時間を大幅に短縮して生産性を上げることができる。
【0067】
本発明におけるポリエステル成形体製造用のポリエステル樹脂の重合過程において、前記無機錫化合物触媒の場合、最終的に生産されるポリエステルの質量に対して前記無機錫化合物触媒に含まれた錫元素の含量を基準に約200ppm以下、例えば、約10乃至約200ppm、好ましくは、約10ppm乃至100ppmを使用する。
【0068】
本発明において、ポリエステルの重縮合反応の際、無機錫化合物触媒の量が10ppmより少なければ重合反応速度が遅くなって重合効率が低下し、200ppmより多ければ必要以上の無機錫化合物が異物として作用して成形工程の作業性を低下する恐れがある。
【0069】
ポリエステル成形体内の錫元素の含量は、好ましくは200ppm以下、より好ましくは10~100ppmである。前記錫元素の含量が200ppmを超過すれば、ポリエステルを溶融圧出する工程でオリゴマーが副生し、低オリゴマーで高透明性を有する成形体が得られないことがある。
【0070】
本発明によると、無機錫化合物を使用することで触媒を少量使用しても重合物反応を行うことができる。また、短い反応時間で高い粘度の生成物を収得することができる。このように触媒の使用量を減らすことができるため、重合後に生成されるポリエステル集合物の黒化現象を減らし、従来の低い粘度を上げることができるため、商業的に非常に有利である。本発明によるポリエステル成形体は、他の種類の金属触媒を使用して製造したポリエステル成形体よりカラーL(Color-L)値が優秀な特徴を有する。
【0071】
本発明において、ポリエステル成形体を製造するためのポリエステル樹脂は、成形体の適切な物理的特性と成形性を確保するために、固有粘度が0.70dl/g乃至1.3dl/gの範囲を有するが、より好ましくは0.70dl/g乃至0.85dl/gの固有粘度を有することがよい。
【0072】
ポリエステルの固有粘度が0.70dl/gより小さければ、ポリエステル成形体の引張強度が低下する恐れがある。逆に、ポリエステルの固有粘度が1.3dl/gより大きければ、ポリエステル成形体を製造する際に生産性が低下する恐れがある。
【0073】
固有粘度の単位はいずれもdl/gであるが、ASTM D4603-96によって30℃で0.5質量%濃度のPET系樹脂の60/40(質量比)フェノール/1,1,2,2-四塩化エタン溶液の固有粘度を測定したものである。
【0074】
本発明の重合器によって製造されたポリエステル樹脂は、固化してペレット化した後で再溶融して成形に利用するか、溶融状態のまま固化せずに成形機に移送して成形に利用してもよい。
【0075】
ここで、溶融状態とは樹脂に熱を加えることで樹脂が溶融して流動する状態を意味するが、このような溶融状態の樹脂は大体粘度が50万Pa・s以下である。
【0076】
本発明でポリエステル成形体を製造する場合、まず無機錫化合物触媒で製造されたポリエステルを含むポリエステル樹脂組成物を溶融した後、溶融したポリエステル樹脂組成物をモールドに充填し、モールドに充填したポリエステル樹脂組成物を冷却した後、離型して製造する。
【0077】
本発明において、ポリエステル成形体の成形ステップは、圧縮成形、移送成形、積層成形、射出成形、圧出成形、ブロー成形、カレンダー成形、ガス成形、インサートモールド、または真空成形の方法によって行われる。このような成形ステップで使用可能な方法や装置は、プラスチック成形品の製造に使用できると知られているものであれば特に制限なく使用される。
【0078】
例えば、前記製造されたポリエステル樹脂からプラスチック飲料水のボトルを製造する場合はブロー成形の方法を使用する。
【0079】
前記ポリエステル樹脂を成形するステップは、前記成形されたポリエステル樹脂を利用して樹脂成形体のプリフォーム(preform)を形成するステップを更に含む。このような樹脂成形体のプリフォームを形成するステップでは、前記形成されたポリエステル樹脂を乾燥して水分を除去し、水分が除去されたポリエステル樹脂を射出または圧出して最終製品に適合したプリフォームとして製造する。そして、このようなプリフォームを上述した成形方法に適用することで最終製品が提供される。
【0080】
本発明において、無機錫化合物触媒を利用して製造されたポリエステル樹脂は、アルデヒド系化合物を3ppm未満に含む。より好ましくは、ポリエステル樹脂の質量に対して2ppm未満の低いアセトアルデヒドと1ppm未満のホルムアルデヒドを含む。
【0081】
本発明のポリエステル成形体は、アセトアルデヒドとホルムアルデヒドの含量が低減されて飲食の貯蔵容器として使用される際に味と香りに影響を及ぼさず、人体内の毒性がない環境にやさしい容器である。具体的な例としては、飲料水のボトル、食品の包装材、繊維性プラスチックなどが挙げられる。
【0082】
以下、本発明による実施例を参照して、本発明をより詳細に説明する。但し、このような実施例は発明の例示として提示されたものに過ぎず、それによって本発明の権利範囲が限定されることはない。
【0083】
実施例
実施例1
触媒溶液の製造
下記表2に記載の無機錫化合物触媒5gを総質量が2kgになるようにエチレングリコールに希釈し、撹拌速度400rpmで撹拌して、無機錫化合物触媒をエチレングリコールに0.25%の濃度で調製した。次に、反応温度160~180℃で2時間還流可能な反応器で反応させ、無機錫化合物触媒を生成した。
【0084】
ポリエステル樹脂の製造
テレフタル酸(TPA)7.8kgとエチレングリコール(EG)3.3kgでスラリを調製(EG/TPAモル比=1.13)し、エステル化反応器にセミ-バッチ方式で投入して、窒素雰囲気の常圧反応で反応温度が265℃になるまで反応し、ポリエステルオリゴマーを製造した。この際、エステル化反応温度はスラリ投入温度253℃、最終エステル化反応終了温度は265℃で、反応時間は3時間30分程度であった。
【0085】
エステル化反応器で作られたPETオリゴマーを重縮合反応器に移送し、酸化錫触媒を最終収得されるPETを基準に200ppm入れ、約2時間30分にかけて高真空減圧下、反応温度が288℃に至るまで重縮合を行って、生チップ(raw chip)として製造した。次に、前記生チップを約250℃の温度及び真空下で0.76dl/gの固有粘度を有するように固相重合した。
【0086】
ポリエステル成形体の製造
ボトル製造モデル(機器:Erontier)を利用してプリフォームに加えられる温度は70~80℃に、圧力は窒素圧(5~8Kgf/cm2)の一定強度水準に固定して製造したプリフォームを機器に入れた後、レーンに沿ってプリフォームが自動的に回りながら熱を受けた。この際、プリフォームが回る速度は8.4秒であり、プリフォームは3ステップに空気圧力(1次:11、2次:40、3次:7Kgf/cm2)が金型内で加えられた。
【0087】
金型内でプリフォームは加えられる圧力によってボトルの底の厚さが決定され、同時に吹き込まれる空気の強度によって全体的な表面の厚さが決定されてボトルを製造した。
【0088】
実施例2~50
触媒として下記表2に示した無機錫化合物を使用して製造されたポリエステルチップを使用したことを除いては、実施例1と同じく実施してポリエステル成形体を製造した。
【0089】
比較例1
触媒を使用していないことを除いては、実施例1と同じく実施してポリエステル成形体を製造した。
【0090】
比較例2
アンチモン40gを総質量が2kgになるようにエチレングリコールに溶解し、400rpmで撹拌して触媒溶液を製造した。還流可能な反応器で反応温度180~190℃で2時間反応させ、アンチモングリコレート溶液を生成した。収得されたアンチモン触媒溶液を使用して重合されたポリエステルを使用したことを除いては、実施例1と同じく実施してポリエステル成形体を製造した。
【0091】
比較例2~9
触媒として下記表1に示したアンチモン触媒を使用して製造されたポリエステル重合物を使用したことを除いては、実施例1と同じく実施してポリエステル成形体を製造した。
【0092】
比較例10
チタン化合物40gを総質量が2kgになるようにエチレングリコールに溶解し、400rpmで撹拌して触媒溶液を製造した。還流可能な反応器で反応温度180~190℃で2時間反応させ、チタングリコレート溶液を生成した。収得されたチタン触媒溶液を使用して重合されたポリエステルを使用したことを除いては、実施例1と同じく実施してポリエステル成形体を製造した。
【0093】
比較例11~17
触媒として下記表1に示したチタン化合物触媒を使用して製造されたポリエステル重合物を使用したことを除いては、実施例1と同じく実施してポリエステル成形体を製造した。
【0094】
比較例18~47
触媒として下記表2に示した無機錫化合物を1ppm、8ppm、または500ppm使用して製造されたポリエステル重合物を使用したことを除いては、実施例1と同じく実施してポリエステル成形体を製造した。
【0095】
試験例
前記実施例1~50及び比較例1~47によって製造されたポリエステル成形体に対する物性を以下の方法で評価し、その結果を下記表1乃至表2に示した。
【0096】
(1)固有粘度
ASTM D 4603によってフェノールと1,1,2,2-テトラクロロエタンを6:4の質量比に混合した試薬(生チップ90℃、SSP130℃)に試料0.1gを濃度が0.4g/100mlになるように90分間溶解した後、ウベローデ(Ubbelohde)粘度計に移して30℃恒温槽で10分間維持し、粘度計と吸引装置(aspirator)を利用して溶液の落下秒数を求めた。溶媒の落下秒数も同じ方法で求めた後、数式1及び2によってR.V.(相対粘度)及びI.V.(固有粘度)値を計算した。
【0097】
[数1]
R.V.=試料の落下秒数/溶媒の落下秒数
【0098】
[数2]
I.V.=1/4×[(R.V.-1)/C]+3/4×(lnR.V./C)
【0099】
前記式において、Cは溶液中の試料の濃度(g/100ml)を示す。
【0100】
(2)カルボキシ末端基(CEG)の濃度
ASTM D 7409によって試料を0-cresolを利用して溶解した後、酸塩基中和滴定を利用して分析した。詳しくは、0.2g前後の試料を取り、ここにベンジルアルコール10mlを加えた。
【0101】
200℃のヒーティングブロック(heating block)で10分間加熱し溶解した後、水浴で1分間冷却した。ここにクロロホルム10mlとフェノールレッド、フェノールフタレイン指示薬を数滴加えて、0.02N KOH(or NaOH)を利用して滴定した。滴定量を数式3によってカルボキシ末端基(CEG)濃度を計算する。カルボキシ基の数はカルボキシミリ当量/重合体kg(meq/kg)として表される。
【0102】
[数3]
CEG=(A-B)×0.02×1000/W
A:試料に消費されたml、B:ブランク、W:試料の質量
【0103】
(3)ポリマーとアセトアルデヒド(A.A.)含有量(ppm)
ASTM F 2013によって冷凍破砕されたポリエステル試料をヘッドスペースサンプラーバイアルに入れて密封した後、160℃で2時間熱抽出し、ガスクロマトグラフィGC(Agilent 7890)で分析した。
【0104】
(4)色相の測定(Color L)
色差計(BYK Gardner社製Color view-9000)を利用して、D65光源、10°条件でのColor L値を測定した。分光光度計で測定されるL値は、試料の反射率を測定した後、CIE 1976 CIE Lab色差式から計算される測色値である。
【0105】
(5)成形体内のミネラルウォーターのアセトアルデヒド(A.A.)の含量(ppb)分析
測定対象となるポリエステル成形品内に飲用水を入れ、DNPH(2,4-ジニトロフェニルヒドラジン)誘導体化によってHPLC/UV-VISを利用して飲用水内のアセトアルデヒドの極微量(ppb水準)の含量分析を実施した。
【0106】
DNPH誘導体化液は0.2gの2,4-ジニトロフェニルヒドラジン/100mlアセトニトリルで調製しており、誘導体化の反応手順は、測定対象となる溶液を4mlバイアルに2mlサンプルを取った後、DNPH誘導体化液100μLを加えて撹拌を実施する。撹拌が終わったサンプルに45%H3PO4を100μL加えて、30分間超音波(Sonication)を加えて誘導体化した。誘導体化が完了されたサンプル溶液をHPLC/UV-VIS(Waters LC Module 1 plus)を利用して分析評価した。
【0107】
分析に使用されたカラムはKromasil KR100-10C18(25cm*4.6mm)で、機器使用の溶媒条件はCH3CN/Water=2/1であった。
【0108】
UV-VIS検出波長を356nmで評価し、測定対象のアセトアルデヒドの含量を測定した。
【0109】
【0110】
【0111】
前記表1及び表2を参照すると、実施例1~50の場合、生成されたポリエステル容器の物理的性質がアンチモン触媒を使用したポリエステル樹脂を利用した比較例2~7に比べ同等以上に優秀なことを確認した。
【0112】
また、実施例1~50で製造されたポリエステル容器の場合、容器内に入っている飲用水中のアセトアルデヒドの含量が著しく減少しており、色相が良好なことを確認した。それによって、前記実施例のポリエステル樹脂成形体は、極微量のアセトアルデヒドを含むことで飲料の味と香りに影響を及ぼさず、人体毒性のない環境にやさしい容器を製造することができることを確認した。
【0113】
それに対し、比較例1~47のボトルは容器内に入っている飲用水中からアセトアルデヒドが、相対的に多量が検出されており、それを利用した飲食の貯蔵容器としての使用は環境と人体共に有害であると考えられ、色相もよくないことを確認した。
【0114】
これまで本発明はたとえ限定された実施例によって説明されたが、本発明はそれによって限定されず、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に本発明の技術思想と多様な修正及び変形が可能なことはもちろんである。よって、本発明の真の保護範囲は以下に記載の特許請求の範囲及びそれと均等な範囲に決められるべきである。