IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スリーディー システムズ インコーポレーテッドの特許一覧

特許7587032最適化されたガスフローディレクタ構造を有する大面積造形平面を備える3次元プリントエンジン
<>
  • 特許-最適化されたガスフローディレクタ構造を有する大面積造形平面を備える3次元プリントエンジン 図1
  • 特許-最適化されたガスフローディレクタ構造を有する大面積造形平面を備える3次元プリントエンジン 図2
  • 特許-最適化されたガスフローディレクタ構造を有する大面積造形平面を備える3次元プリントエンジン 図3
  • 特許-最適化されたガスフローディレクタ構造を有する大面積造形平面を備える3次元プリントエンジン 図4
  • 特許-最適化されたガスフローディレクタ構造を有する大面積造形平面を備える3次元プリントエンジン 図5
  • 特許-最適化されたガスフローディレクタ構造を有する大面積造形平面を備える3次元プリントエンジン 図6
  • 特許-最適化されたガスフローディレクタ構造を有する大面積造形平面を備える3次元プリントエンジン 図7
  • 特許-最適化されたガスフローディレクタ構造を有する大面積造形平面を備える3次元プリントエンジン 図8
  • 特許-最適化されたガスフローディレクタ構造を有する大面積造形平面を備える3次元プリントエンジン 図9
  • 特許-最適化されたガスフローディレクタ構造を有する大面積造形平面を備える3次元プリントエンジン 図10
  • 特許-最適化されたガスフローディレクタ構造を有する大面積造形平面を備える3次元プリントエンジン 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】最適化されたガスフローディレクタ構造を有する大面積造形平面を備える3次元プリントエンジン
(51)【国際特許分類】
   B22F 12/70 20210101AFI20241112BHJP
   B22F 10/322 20210101ALI20241112BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20241112BHJP
   B22F 12/55 20210101ALI20241112BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20241112BHJP
   B29C 64/364 20170101ALI20241112BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20241112BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20241112BHJP
【FI】
B22F12/70
B22F10/322
B22F10/28
B22F12/55
B29C64/153
B29C64/364
B33Y10/00
B33Y30/00
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2023520058
(86)(22)【出願日】2021-09-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-24
(86)【国際出願番号】 US2021052295
(87)【国際公開番号】W WO2022072305
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-05-02
(31)【優先権主張番号】63/086,837
(32)【優先日】2020-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597013711
【氏名又は名称】スリーディー システムズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】ドヴァル,ジョゼ ジュリオ
【審査官】河口 展明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0126460(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0270138(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0232429(US,A1)
【文献】特開2019-081933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 10/00-12/90
B22F 3/105、3/16
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3D物品を作製するための3次元(3D)プリントエンジンであって、以下:
造形チャンバを横方向に画定する複数の壁;
垂直位置決め装置に連結され側面積を画定する造形プレートを含む、造形ボックス;
粉末ディスペンサ;
前記造形プレートの側面積内の造形平面上を走査し、かつ粉末溶融のために概して固定高さにある、複数のエネルギービームを生成するように構成されたビームシステム;
前記造形プレートと前記複数の壁との間に配置され、上面を有する、周辺プレート;
前記造形チャンバの入口端部においてガスフロー流を放出し、前記造形平面および前記周辺プレートの上面の少なくとも一部を通過させる、ガス入口;
前記造形チャンバの出口端部に設けられ、前記ガス入口からガスフロー流を受け取る、ガス出口;
前記周辺プレートの上面に取り付けられ、その上方に延在する3つ以上の突出構造であって、前記ガスフロー流のフローフィールドを成形して、前記造形平面の上方でより均一な速度のガスフロー速度を提供する、3つ以上の突出構造;
前記ガス入口から前記ガス出口へ通過するシート状ガス流を放出する、前記ガス入口に設けられたスナウト;
前記ガス入口およびガス出口に連結されるガス処理システム;および
コントローラ
を備え、
前記コントローラが、以下:
1)前記垂直位置決めシステムを動作させ、新しい粉末の層を受け取るために前記造形プレートを位置決めする;
2)前記粉末ディスペンサを動作させ、新しい粉末の層を前記造形プレートまたは以前に分配された粉末の層の上に分配し、前記新しい粉末の層は、前記造形平面に近接した上面を有する;
3)前記ガス処理システムを動作させ、ガスフロー流を提供する;
4)前記ビームシステムを動作させ、前記新しい粉末の層を選択的に溶融させる;および
5)工程(1)~(4)を繰り返して3D物品の作製を完了する
ように構成される、3Dプリントエンジン。
【請求項2】
前記造形プレートの側面積が、少なくとも約0.5平方メートルであることを特徴とする、請求項1に記載の3Dプリントエンジン。
【請求項3】
前記造形プレートの側面積が、少なくとも約0.7平方メートルであることを特徴とする、請求項1に記載の3Dプリントエンジン。
【請求項4】
前記周辺プレートが、前記造形平面を横方向に取り囲むことを特徴とする、請求項1に記載の3Dプリントエンジン。
【請求項5】
前記周辺プレートの上面が、前記造形平面に概ね平行であることを特徴とする、請求項1に記載の3Dプリントエンジン。
【請求項6】
前記周辺プレートの上面が、前記造形平面に対して概ね同一平面上にあることを特徴とする、請求項1に記載の3Dプリントエンジン。
【請求項7】
前記ガス入口が、第1の流入速度でガスを放出するノズルの下側列および第2の流入速度でガスを放出するノズルの上側列を含み、前記第2の流入速度は、前記第1の流入速度よりも高く、前記造形平面にわたって前記ノズルの下側列からのフロー流を巻き込むことを特徴とする、請求項1に記載の3Dプリントエンジン。
【請求項8】
前記周辺プレートの上面が、前記造形プレートと前記ガス入口との間に横方向に配置される入口表面を含み、前記3つ以上の突出構造は、前記入口表面の上方に延在するフィンのアレイを含み、全体的なフロー方向Xに沿って見たときに、三角形、矩形、多角形、および曲線のうちの1つである、垂直プロファイルを個々に有することを特徴とする、請求項1に記載の3Dプリントエンジン。
【請求項9】
前記周辺プレートの上面が、側壁と前記造形平面との間にあり、全体的なフロー方向Xに関して前記造形平面と重なり合う2つの中間表面を含み、前記3つ以上の突出構造は、前記中間表面の上方に延在するフィンのアレイを含み、全体的なフロー方向Xに沿って見たときに、三角形、矩形、多角形、および曲線のうちの1つである、垂直プロファイルを個々に有することを特徴とする、請求項8に記載の3Dプリントエンジン。
【請求項10】
前記3つ以上の突出構造が、ガス流の全体的な流れ方向Xに対して対向する鋭角を画定する2つのフィンを個々に有する垂直フィンの複数の対を含むことを特徴とする、請求項1に記載の3Dプリントエンジン。
【請求項11】
前記3つ以上の突出構造が、ガス流の全体的な流れ方向Xに対して鋭角を画定する垂直短軸および横軸を個々に有する複数のフィンを含むことを特徴とする、請求項1に記載の3Dプリントエンジン。
【請求項12】
前記3つ以上の突出構造が、複数の三角形フィンを含み、該三角形フィンは、前記周辺プレートの上面の下側エッジ、前縁、および後縁を含み、風下側エッジは最短エッジであることを特徴とする、請求項1に記載の3Dプリントエンジン。
【請求項13】
前記周辺プレートの上面が、前記造形プレートと前記ガス入口との間に横方向に配置された入口表面を含み、前記3つ以上の突出構造は、前記入口表面の上方に突出し、前記ガス流の全体的な流れ方向Xに対して斜角を画定する長軸を有する、第1の垂直ダイバータ壁を含むことを特徴とする、請求項1に記載の3Dプリントエンジン。
【請求項14】
前記3つ以上の突出構造が、前記入口表面の上方に突出し、前記ガス流の全体的な流れ方向Xと概ね位置合わせされた長軸を有する、第2の垂直ダイバータ壁を含むことを特徴とする、請求項13に記載の3Dプリントエンジン。
【請求項15】
前記周辺プレートの上面が、前記造形プレートと前記ガス出口との間に横方向に配置された出口表面を含み、前記3つ以上の突出構造は、前記入口表面の上方に突出し、前記ガス流の全体的な流れ方向Xにほぼ垂直な軸Yに沿った長軸を有する、ダム壁を含むことを特徴とする、請求項1に記載の3Dプリントエンジン。
【請求項16】
前記ダム壁が、前記造形チャンバの幅の一部に個々に広がり、軸Yに沿ってそれらの間にギャップを有する、2つのダム壁を含むことを特徴とする、請求項15に記載の3Dプリントエンジン。
【請求項17】
前記ダム壁がYに沿って不均等な長さを有し、前記ギャップは、Yに対して中心にないことを特徴とする、請求項16に記載の3Dプリントエンジン。
【請求項18】
前記粉末ディスペンサが、該粉末ディスペンサがドッキング位置にあるときに前記造形チャンバを横方向に画定する前記複数の壁の一部を形成する壁部分を含むことを特徴とする、請求項1に記載の3Dプリントエンジン。
【請求項19】
3次元(3D)物品を作製する方法であって、
以下:
造形チャンバを横方向に画定する複数の壁;
垂直位置決め装置に連結され側面積を画定する造形プレートを含む、造形ボックス;
粉末ディスペンサ;
前記造形プレートの側面積内の造形平面上を走査し、かつ粉末溶融のために概して固定高さにある、複数のエネルギービームを生成するように構成されたビームシステム;
前記造形プレートと前記複数の壁との間に配置され、上面を有する、周辺プレート;
前記造形チャンバの入口端部においてガスフロー流を放出し、前記造形平面および前記周辺プレートの上面の少なくとも一部を通過させる、ガス入口;
前記造形チャンバの出口端部に設けられ、前記ガス入口からガスフロー流を受け取る、ガス出口;
前記周辺プレートの上面に取り付けられ、その上方に延在する3つ以上の突出構造であって、前記ガスフロー流のフローフィールドを成形して、前記造形平面の上方でより均一な速度のガスフロー速度を提供する、3つ以上の突出構造;
前記ガス入口から前記ガス出口へ通過するシート状ガス流を放出する、前記ガス入口に設けられたスナウト;および
前記ガス入口およびガス出口に連結されるガス処理システム
を備える3Dプリントエンジンを提供する工程;
前記垂直位置決めシステムを動作させ、新しい粉末の層を受け取るために前記造形プレートを位置決めする工程;
前記粉末ディスペンサを動作させ、新しい粉末の層を前記造形プレートまたは以前に分配された粉末の層の上に分配する工程であって、前記新しい粉末の層は、前記造形平面に近接した上面を有する、工程;
前記ガス処理システムを動作させ、前記ガス入口からガスフロー流を放出する工程;
前記3つ以上の突出構造で前記ガスフロー流を成形し、前記ガスフロー流のフローフィールドを成形して、前記造形平面の上方でより均一な速度のガスフロー速度を提供する工程;
前記ビームシステムを動作させ、前記新しい粉末の層を選択的に溶融させる工程;および
工程(1)~(4)を繰り返して3D物品の作製を完了する工程
を含む、方法。
【請求項20】
前記ガス入口でガスフロー流を放出する工程が、第1の速度V1でノズルの下側アレイから下側ガス流を放出する工程、および、前記第1の速度V1より大きい第2の速度V2でノズルの上側アレイから上側ガス流を放出することにより前記下側ガス流を巻き込む工程を含むことを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
政府権利の陳述
本発明は、米国陸軍研究所(U.S.Army Research Laboratory)によって授与された許可番号W911NF-18-9-000.3および国立製造科学センター(National Center for Manufacturing Sciences)(NCMS)によって授与されたAMMPコンソーシアムメンバー許可番号201935の下で政府の支援を受けて行われた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0002】
関連出願の相互参照
本非仮特許出願は、米国特許出願第119(e)号の利益の下で参照により本明細書に組み込まれる、2020年10月2日に出願されたJose Dovalによる「Three-Dimensional Print Engine with Large Area Build Plane Having Optimized Gas Flow Director Structure」と題された米国仮特許出願第63/086,837号に対する優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0003】
本開示は、金属粉末材料を選択的に溶融することによって3次元(3D)物品を層ごとに製造するための装置および方法に関する。より詳細には、本開示は、非常に大きいが高品質の3D物品を提供するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0004】
3次元(3D)プリントシステムは、プロトタイピングおよび製造などの目的のために急速に使用が増加している。1つのタイプの3次元プリンタは、層ごとのプロセスを利用して、粉末金属材料から3次元製造物品を形成する。粉末材料の各層は、造形平面上に分配され、次いで、レーザ、電子、または粒子ビームなどのエネルギービームを使用して選択的に溶融される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非常に大きく欠陥のない3D物品を迅速に作製することが望まれている。そのような大型の3D物品の迅速な作製は、非常に大きな造形平面にわたって平行に動作する複数のレーザを必要とする。粉末の層が選択的に溶融されると、金属が蒸発する際に「プルーム(plume)」クラウドが生成される。プルームクラウドがエネルギービームを部分的に遮断し得る、または、クラウドからの凝縮物がレーザ窓を妨害し得ることによって、粉末溶融の完全性にばらつきが生じる。その結果、製品に欠陥が生じ得る。
【0006】
典型的な解決策は、粉末の層の上に不活性ガスを通過させ、プルームを一掃することであった。非常に大きい造形平面面積では、造形平面にわたってガスフロー速度ベクトルが変動することに起因して様々な結果が生じ得、これによって、プルームを除去することができないかまたは粉末粒子が乱される。粉末粒子を乱すことなく、プルームを効果的に除去するために必要なガスフロー分布を提供するシステムが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様では、3次元(3D)プリントエンジンは、3D物品を作製するためのものであり、以下を含む:(A)造形チャンバを横方向に画定する複数の壁、(B)垂直位置決め装置に連結された造形プレートを含む造形ボックスであって、造形プレートが側面積を画定する、造形ボックス、(C)粉末ディスペンサ、(D)造形プレートの側面積内の造形平面上を走査し、かつ粉末溶融のために概して固定高さにある、複数のエネルギービームを生成するように構成されたビームシステム、(E)造形プレートと複数の壁との間に配置され、上面を有する、周辺プレート、(F)造形チャンバの入口端部においてガスフロー流を放出し、造形平面および周辺プレートの上面の少なくとも一部を通過させる、ガス入口、(G)造形チャンバの出口端部に設けられ、ガス入口からガスフロー流を受け取る、ガス出口、(H)周辺プレートの上面に取り付けられ、その上方に延在する複数の突出構造であって、ガスフロー流のフローフィールドを成形して、造形平面の上方でより均一な速度のガスフロー速度を提供する、複数の突出構造、(I)ガス入口およびガス出口に連結されるガス処理システム、および(J)コントローラ。コントローラは、ソフトウェア命令を記憶する非一時的または不揮発性の情報記憶デバイスに連結されたプロセッサを含む。ソフトウェア命令を実行することによって、コントローラは、以下を実行するように構成される:(1)垂直位置決めシステムを動作させ、新しい粉末の層を受け取るために造形プレートを位置決めする、(2)粉末ディスペンサを動作させ、新しい粉末の層を造形プレートまたは以前に分配された粉末の層の上に分配し、新しい粉末の層は、造形平面に近接した上面を有する、(3)ガス処理システムを動作させ、ガスフロー流を提供する、(4)ビームシステムを動作させ、粉末ディスペンサによって分配された粉末の層を選択的に溶融させる、および、工程(1)~(4)を繰り返して3D物品の作製を完了する。
【0008】
ガスフロー速度の均一性が改善されることにより、従来可能であったよりも大きい造形平面にわたって、金属粒子を乱すことなくプルームを効果的に除去することが可能になる。これにより、ビームシステムが複数のエネルギービームを同時に利用する場合でさえ、少なくとも0.5平方メートル、少なくとも0.7平方メートル、または約1平方メートルである造形平面が均一に欠陥のない結果で可能になる。ビームシステムは、金属粉末の層を選択的に溶融するために、5つ以上、7つ以上、または9つ以上のエネルギービームを同時に利用することができる。図示の実施形態では、造形平面へのビーム衝突は、Yに対して互い違いにされ、別のレーザに対する1つのレーザとのプルームの干渉を最小限にする。この例示的な実施形態では、9つのレーザを有するシステムの場合、2つまたは3つのレーザは、プルームの発生および干渉を低減するために非アクティブである。
【0009】
以下の実装形態では、横軸XおよびYならびに垂直軸Zを含む、3つの相互に垂直な軸が使用される。横軸は概ね水平であり、垂直軸Zは概ね重力軸と一直線上にある。ガス入口とガス出口との間で、ガスフローストリームは、概して+X方向の速度を有する。これは、概して当てはまるが(平均速度は主に+X方向である)、層流パターン、乱流パターン、および/またはフロー中の渦に起因して変化する局所的なフローパターンが存在し得る。方向Yは、クロスフロー方向と呼ばれる。Yは、ガスフローストリームの全体的なフロー方向および速度に対して垂直であり得るが、Y成分を生成する局所的な形状、乱流、または同調の欠如に起因して、局所的なフローが存在し得る。
【0010】
一実装形態では、周辺プレートは、造形プレートを横方向に取り囲む。周辺プレートの上面は、造形平面と概ね平行または同一平面とすることができる。周辺プレートの上面は、入口表面、中間表面、および出口表面を含む、異なる表面またはセクションを含むか、またはそれらに分割されることができる。(1)入口表面は、造形プレートとガス入口との間でXに対して横方向に配置される。複数の突出構造は、1つまたは2つのダイバータ、および、入口表面から上方に突出するフィンのアレイを含むことができる。(2)2つの中間表面は、横方向側壁と造形平面との間にあり、Xに関して造形平面と重なり合う。2つの中間表面は、入口表面と出口表面との間にある。複数の突出構造は、中間表面から上方に突出する複数または2つのアレイのフィンを含むことができる。(3)出口表面は、造形プレートとガス出口との間でXに対して横方向に配置される。複数の突出構造は、出口表面から上方に突出する1つまたは2つのダムを含むことができる。
【0011】
別の実装形態では、突出構造は、ダイバータ、フィン、およびダムのうちの1つまたは複数を含む。突出構造は、厚さを画定する短軸を有する。厚さは、概して、横方向に画定される。突出構造は、中間垂直軸と、主横軸とを有することができる。ダイバータについて、長軸は、Xに対して一直線上にあるか、または鋭角を画定する。短軸(厚さ)は、概して、主にYに沿って画定される。フィンについて、長軸は、概して、Xに対して一直線上にあるか、または鋭角を画定する。ダイバータと同様に、短軸(厚さ)は、概して、主にYに沿って画定される。ダムについて、長軸は、Yに対して一直線上にあるか、または鋭角を画定する。短軸(厚さ)は、概して、主にXに沿って画定される。
【0012】
さらに別の実装形態では、突出構造は、周辺プレートの上面の上方に距離Hだけ延在する。ガスフローが周辺プレートの上面および造形平面上を通過するとき、境界層は、その速度プロファイルが周辺プレートの上面によって影響を受けるガスフローの高さhとして画定される。好ましくは、突出構造の影響を最大にするために、Hは少なくともhに等しいか、またはHはhより大きい。例示的な実施形態では、Hは10~15ミリメートルまたは約13ミリメートルである。
【0013】
さらなる実装形態では、ガス入口は、ノズルの下側列およびノズルの上側列を含むノズルの2つの列を有する出口スナウトを含む。ノズルの下側列は、第1の速度V1でガスを放出し、ノズルの上側列は、第2の速度V2でガスを放出する。第2の速度V2は、第1の速度V1よりも大きい。ノズルの上側列からのより高速のフローは、ノズルの下側列からのより低速のガス流のフローを巻き込み、より低速のガス流のフローを造形平面上に維持する。理想的なモデルでは、より低速のガス流は、ガス入口からガス入口まで造形平面に近接して+X方向に沿って流れる。実際には、Y成分およびZ成分を含み得る流路全体にわたって変化し得る局所的な速度成分が存在する。
【0014】
さらなる実装形態では、複数の突出構造は、複数のフィンを含む。フィンは、Xに平行な垂直面に沿って投影された規定の形状を有することができる。規定の形状は、三角形、長方形、平行四辺形、台形、多角形、不規則な形状、または湾曲したエッジを有する形状のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0015】
別の実装形態では、複数の突出構造は複数のフィンを含む。1つまたは複数のフィンは、周辺プレートの上面の表面からZに沿って測定される高さHだけ上方に延在することができる。高さHは、フィンが周辺プレートの上面上のガスフローの境界層を完全に貫通して延在するのに充分である。
【0016】
さらに別の実装形態では、複数の突出構造は、複数の垂直フィンを含む。垂直フィンは、周辺プレートの上面の側方エッジを含む3つのエッジを有する三角形の形状を有することができる。三角形の形状はまた、X軸に対して前縁および後縁を有する。後縁は、三角形の最短エッジである。前縁は、X軸に対して鋭角を画定することができ、後縁は、ほぼ垂直とすることができる。複数の垂直フィンは、X軸に対して対向する鋭角を画定する2つのフィンを個々に有する垂直フィンの対を含むことができる。より詳細には、一対のフィンの側縁部は、X軸に対して対向する鋭角を画定する。特定の実施形態では、フィンは、約10~15ミリメートルの範囲または約13ミリメートルである高さHを有するが、Hの他の値も可能である。側方エッジの長さは、Hの約2倍とすることができる。フィンが直角三角形を画定する場合、後縁はHの長さを有することができ、側方エッジは約2Hの長さを有することができる。
【0017】
さらなる実装形態では、周辺プレートの上面は、造形プレートとガス入口との間に横方向に配置された矩形の入口表面を含むことができる。複数の突出構造は、少なくとも1つのダイバータ壁を含むことができる。ダイバータ壁は、X軸に対して鋭角を画定する主横軸を有する第1のダイバータ壁を含むことができる。ダイバータ壁は、X軸に実質的に平行である長軸を有する第2のダイバータ壁を含むことができる。ダイバータ壁は、第1のダイバータ壁および第2のダイバータ壁を含む2つのダイバータ壁を含むことができ、これらのダイバータ壁は、Yに対して横方向に離間され、Xに平行な造形平面の対向するエッジとほぼ横方向に位置合わせされる。ダイバータ壁は垂直であり、高さHを有する。高さHは、約10~15mmの範囲内または約13mmであり得る。
【0018】
さらなる実装形態では、造形プレートの上面は、造形プレートとガス出口との間に横方向に配置された出口表面を含む。複数の突出構造は、ダム壁を含む。ダム壁は、Yに概ね平行な長軸を有する。ダム壁は、Y軸に関して造形平面に重なるギャップを間に有する2つの位置合わせされたダム壁を含むことができる。2つの位置合わせされたダム壁は、第1のダム壁および第2のダム壁を含む。第1のダム壁は、第1のダム壁と第2のダム壁との間のギャップがY軸に対して中心にならないように、第2のダム壁より長くすることができる。
【0019】
別の実装形態では、粉末ディスペンサは、粉末ディスペンサがドッキング位置にあるときに造形チャンバを横方向に画定する複数の壁の一部を形成する壁部分を含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】3次元(3D)物品を製造するための付加製造システムの一実施形態の概略ブロック図
図2】3Dプリントエンジンの概略図であって、図示の実施形態では、3Dプリントエンジンは、金属粉末層の層ごとの溶融溶解によって3D物品を作製する図
図3】3Dプリントエンジンの一部の等角断面図
図4】3Dプリントエンジンの一部の側断面図
図5図4の図の一部である側断面図
図6】造形チャンバの概略平面図
図7】3Dプリントエンジンの一部の等角断面図であり、図3の一部分である図
図8図7の一部の第1の詳細図
図9図7の一部の第2の詳細図
図10】2対のフィンの上面図
図11】3Dプリントエンジンを動作させるための方法を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、3次元(3D)物品3を製造するための付加製造(AM)システム2の一実施形態の概略ブロック図である。AMシステム2は、プリントエンジン4と、冷却ステーション6と、バルク粉末除去装置8と、微粉末除去装置10と、搬送装置12と、ガス処理システム14と、コントローラ16とを含む。様々な構成要素4~14は、それらの内部機能を制御するための別個の「下位レベル」コントローラを個々に有することができる。いくつかの実施形態では、コントローラは、中央コントローラとして機能することができる。以下の説明では、コントローラ16は、構成要素4~14の外部または内部に存在し得る全てのコントローラを含むと考えられる。コントローラ16は、AMシステム2の内部にあってもよく、AMシステム2の外部にあってもよく、またはAMシステム2の内部および外部の両方にある部分を含んでもよい。
【0022】
搬送装置12は、製造されている3D物品3の作製、冷却、および粉末除去を含む手順で、様々な構成要素4~10を介して造形ボックス18を搬送するためのものである。ガス処理システム14は、構成要素4~10の環境を制御するためのものである。一実施形態では、ガス処理システムは、構成要素4~10を排気し、次いで、造形ボックス18を非酸化性環境内に維持するために、アルゴンまたは窒素などの非酸化性ガスでそれらを再充填するように構成される。いくつかの実施形態では、ガス処理システム14は、構成要素4~10の個々の構成要素に個別に専用のいくつかのシステムとすることができる。例示的な実施形態では、プリントエンジン4は排気され、ガスで再充填されるが、構成要素6~10は排気されず、非酸化性ガスでパージされる。ガス処理システム14のさらに他の変形形態が可能である。
【0023】
コントローラ16は、ソフトウェア命令を記憶する非一時的または不揮発性の情報記憶デバイスに連結されたプロセッサを含む。プロセッサによって実行されると、ソフトウェア命令は、システム2のいずれかまたは全ての部分を動作させる。例示的な実施形態では、作製、冷却、脱粉末、および他の機能は、コントローラ16によって完全に自動化された方法で実行することができる。
【0024】
コントローラ16は、以下のような工程を実行するように構成される:(1)ガス処理システム14を動作させ、構成要素4~10を排気および/または再充填する、(2)プリントエンジン4を動作させ、造形ボックス18内に3D物品を作製する、(3)搬送装置12を動作させ、造形ボックス18(現在は3D物品および未溶融粉末を含む)を冷却ステーション6に搬送する、(4)適切な冷却時間の後、搬送装置12を動作させ、造形ボックス18をバルク粉末除去装置8に搬送する、(5)バルク粉末除去装置8を動作させ、造形ボックス18から未溶融粉末の大部分を除去する、(6)搬送装置12を動作させ、造形ボックス18を微粉末除去装置10に搬送する。微粉末除去装置10において、残留する未溶融粉末は、自動的にまたは手動で除去される。その間ずっと、コントローラ16は、ガス処理システム14を動作させ、必要に応じて構成要素4~10内の非酸化性ガス環境を維持する。
【0025】
AMシステム2は、検査ステーションまたは造形ボックス18からの3D物品100の取り出しを容易にするためのステーションなどの他の構成要素を有することができる。追加の構成要素は、手動で動作させることができ、またはコントローラ16の制御内にすることができる。
【0026】
図2は、3D物品3を作製するための3Dプリントエンジン4の一実施形態の概略図である。図2の説明においておよび以降の図について、互いに直交する軸X、Y、およびZを用いることができる。軸XおよびYは、概して水平である横軸である。軸Zは、重力基準と概ね位置合わせされた垂直軸である。「概して」とは、設計によってそうであることを意図するが、製造または他の公差により変化し得る。
【0027】
造形ボックス18(図1)は、造形プレート22を収容する粉末ビン20を含む。造形プレート22は上面24を有し、垂直位置決めシステム26に機械的に連結される。造形ボックス18は、分配された金属粉末27を収容するように構成される。造形ボックス18は、ハウジングまたはシャーシ30によって囲まれたチャンバ28内に収容される。
【0028】
垂直位置決めシステム26は、コントローラ16の制御下で上面24を位置決めするように構成される。例示的な実施形態では、垂直位置決めシステム26は、垂直に固定されたナットに連結される親ネジを含む。ナットはモータに連結される。ナットがモータによって回転されると、ナットの内側ネジ山が親ネジの外側ネジ山に係合し、親ネジの先端が造形プレート22を上昇または下降させる。もちろん、これは垂直位置決めシステムの一例に過ぎない。別の例では、親ネジを垂直に固定することができ、ナットは、親ネジの電動回転下で上昇および下降させることができる。ナットは、レバーまたは垂直フォロワロッドに結合することができ、これは、造形プレート22に機械的に結合される。次いで、親ネジの電動回転により、レバーまたはフォロワロッドが造形プレート22を上昇および下降させる。垂直位置決めシステム26の他の例も可能である。
【0029】
金属粉末ディスペンサ32は、造形プレート22の上面24上に、または以前に分配された金属粉末の層27上に金属粉末の層27を分配するように構成される。粉末の層27がちょうど分配されるとき、それは、好ましくは造形平面31と一致または同一平面上にある上面29を有する。いくつかの動作上の実装形態では、上面29は、造形平面31のわずかに下に配置され得る。
【0030】
図示の実施形態では、第2の粉末ディスペンサ34は、追加の粉末を分配するように構成される。粉末ディスペンサ32および34は、それぞれ粉末供給部36および38から粉末を受け取るように構成される。追加の粉末は、異なる金属粉末、同じ金属粉末、または支持材料であってもよい。プリントエンジン4は、複数の異なる材料を分配できるように、3つ以上の粉末ディスペンサを含むことができる。
【0031】
プリントエンジン4は、分配された金属粉末の層を選択的に溶融するためのエネルギービーム42を生成するように構成されたビームシステム40を含む。例示的な実施形態では、ビームシステム40は、少なくとも100ワット、少なくとも500ワット、約1000ワット、少なくとも1000ワット、または別の光出力レベルの光出力を個々に有する放射ビームを生成するための複数の高出力レーザを含む。ビームシステム40は、金属粉末の層27の上面29と略一致する造形平面31を横切って放射ビームを個別に操向するための光学系を含むことができる。代替的な実施形態では、ビームシステム40は、電子ビーム、粒子ビーム、または異なるビームタイプのハイブリッド混合を生成することができる。
【0032】
造形平面31は、ビームシステム40によってアドレス指定可能な最大側面積によって横方向に画定され、ビームシステム40の焦点によって垂直に画定される。最大側面積は、ソフトウェアおよび/またはハードウェアの制限によって制限され得る。造形平面31の側面積は、造形プレート22の側面積内にある。好ましくは、造形プレート31と粉末ビン20との間に横方向に画定された境界領域があり、未溶融粉末27の除去を容易にする。
【0033】
例示的な実施形態では、造形平面31は、少なくとも約0.5平方メートルまたは少なくとも約0.7平方メートルである側面積を有する。より大きな面積が可能である。図示の開示では、造形平面31は、約1平方メートルの面積を有し、プリントエンジン4は、造形プロセス中に最大4トン以上の金属を処理することができる。これは、金属粉末を選択的に分配および溶融するための比類なく大きな面積である。
【0034】
図3は、プリントエンジン4の一実施形態の一部の等角断面図である。チャンバ28(図2)内には造形チャンバ43がある。造形チャンバ43は、造形チャンバ43を横方向に画定する複数の境界壁44、上部天井46、および床48(図4も参照)によって囲まれる略平行六面体の形状を有する。壁44および天井46は、ガスフローへの悪影響を回避するように概して平滑な表面であり、金属およびガラスなどの様々な材料から形成することができる。
【0035】
天井46の上方には、ビームシステム40がある。図示の実施形態では、ビームシステム40は、約1000ワットの放射出力を個々に放出する9つの高出力レーザのアレイを含む。
【0036】
床48は、造形平面31と、造形プレート22と壁44との間に横方向に配置された周辺プレート52の上面50とによって画定される。上面50は、造形平面31と概ね平行または同一平面上にある。図示の実施形態では、上面50は、4つの側面の全てにおいて造形プレート22を横方向に囲む。
【0037】
ガス処理システム14(図2)は、ガス入口54およびガス出口56に連結される。ガス入口54は、横軸Xに沿ってガス入口54からガス出口56へ通過するシート状ガス流60を放出するスナウト58を有する。ガス流60は、エネルギービーム42が粉末27に衝突し溶融する結果として生成されるヒューム(fume)を巻き込んで抽出するように機能する。造形平面31の直上のガス流60の速度を制御する必要がある。速度が高すぎる場合、ガス流60は粉末27の粒子を巻き込む可能性があり、これは望ましくない。速度が低すぎると、プルームを充分に除去できないことがある。滑らかな壁44および天井46、ならびに造形チャンバ43の全体的な平行六面体形状は、より均一な速度プロファイルを容易にする。理解されるように、他の特徴も速度プロファイルを改善する。
【0038】
図4は、プリントエンジン4の側面断面図である。切り口は、ガス流60の全体的な移動に対して概ね垂直であるYZ平面に沿っている。ガス流60は、Xに正確に平行ではない渦および他の速度変動を有し得る。金属粉末ディスペンサ32も示されている。図示の位置および構成では、粉末ディスペンサ装置32は、側壁44の後方に「停止(parked)」された構成および位置にある。
【0039】
図5は、ディスペンサ32をより良く説明するために図4から取られた詳細である。ディスペンサ32は、分配チップ62と、ガントリ64と、壁部分66とを含む。図示の停止位置では、ディスペンサ32は、粉末供給部36からの金属粉末27で充填されている。製造中、ガスフロー流60が流れている間、およびビームシステム40が動作している間、壁部分66は、側壁44(図4)の一部を形成するように位置決めされる。壁部分66が側壁44の一部を形成するとき、ディスペンサ32は「ドック(dock)」67に配置される。粉末27の分配中、ガントリ66は、ノズルチップ62を造形プレート22上で移動させる。粉末27の新しい層が分配された後、ディスペンサ32はドック67に戻り、再び壁部分66が側壁44の一部を形成する。
【0040】
図6は、床48を見下ろした造形チャンバ43の概略図である。ガス流60(図3)は、概して、ガス入口54からガス出口56まで横方向+X方向に沿って流れる。しかし、これは概して「平均フローベクトル」方向Xである。造形チャンバ43内の任意の位置において、局所的なフローベクトルは、YおよびZの成分を有するベクトル方向を有することができる。局所的なフローベクトルは、乱流の-X成分さえ有し得る。造形チャンバ43内の個々の位置におけるガスフロー速度の大きさおよび方向を定義するベクトル「フローフィールド(flow field)」を定義することができる。平均フローはまた、ガス入口54およびガス出口56の正確な幾何学形状に基づいてYまたはZの成分を有することができるが、優勢な平均フロー方向は+Xである。このため、Yは横方向の横断方向またはクロスフロー方向と呼ぶことができ、Zは垂直のクロスフロー方向と呼ぶことができる。
【0041】
ガスの境界層は、表面50の上を直接流れる。境界層は、流動ガスの一部として定義され、これは、ベクトルフローフィールドが表面50によって直接影響を受けるガスの層である。境界層の上方には、好ましくは層流が存在するが、多少の乱流および旋回ガスが存在し得る。
【0042】
ガス流の重要な態様は、ビームシステム40が動作する造形平面31の真上にある境界層である。理想的には、ガスフロー速度は、造形平面31にわたって制御可能かつ均一である。しかしながら、実際にはばらつきがある。ガスフロー速度は、所与のY値に対してXに沿って減少する傾向がある。ガスフロー速度はまた、Yに沿って変化する傾向があり、Yに関してフローストリームの中心に向かって速度が高くなる。
【0043】
造形平面31に沿ったガスフロー速度の均一性を改善するために、ガスフローディレクタ構造98の革新的な組み合わせが実施されている。ガスフローディレクタ構造98は、スナウト58設計ならびに複数の突出構造70を含む。突出構造70は、概して、表面50から上方に突出する。理想的には、突出構造70は、表面50の上方に垂直に突出し、最大効果を有するために境界層の高さを超える。スナウト58設計および突出構造70の効果は、ガスのフローフィールドを成形し、そうでなければ可能であろう造形平面31にわたるはるかに均一な速度を提供することである。
【0044】
例示的な実施形態では、突出構造70は、表面50から垂直に突出し、高さHがすべて約13ミリメートルである。しかしながら、異なる実施形態では、突出構造は、高さが約10ミリメートルから約20ミリメートルまで変化し得るか、または10ミリメートル未満、または20ミリメートル超の高さを有し得る。プリントエンジン4の図示される実施形態では、高さHの値は、有意な効果を有し、粉末ディスペンサ32の動きを妨げないように、約10から15ミリメートルまで変動することができる。しかし、他の設計は、より大きな範囲のHをもたらし得る。ガスフローを最適に制御するために、Hは、表面50の上方の境界層の高さよりも大きい。
【0045】
図示される実施形態では、突出構造70は、フィン72、ダイバータ74、およびダム壁76の対を含む。表面50は、Xに関してスナウト58と造形平面31との間に横方向に位置する表面50の矩形部分である入口表面78を含む。ダイバータ74およびフィン72のアレイは、入口表面78上に配置される。表面50は、側壁44と造形平面31との間にある2つの矩形の中間表面80を含む。中間表面80は、Xに関して造形平面31と重なる。フィン72の一部は、中間表面80上に配置される。最後に、表面50は、Xに関して造形平面31と出口56との間に横方向にある出口表面82を含む。ダム壁76は、出口表面82上に位置する。突出構造70は、以下でより詳細に説明される。
【0046】
図7は、スナウト58およびフィン72を含む、ガス入口54から造形平面31までのフローディレクタ構造98の一部を示す、図3の詳細図である。図8は、ガス入口54およびスナウト58の一部に焦点を当てた、図7の詳細図である。ガス入口54は、スナウト58に形成されたノズルまたはオリフィスまたは開口部86の下側アレイに結合された下側マニホールド84を含む。ノズル86は、第1の直径D1を有し、これは、表面50および造形平面31に近接して移動する第1の速度V1で下側ガス流88を放出する。ガス入口54は、ノズルまたはオリフィスまたは開口部92の上側アレイに連結された上側マニホールド90を含む。ノズル92は、第2の直径D2を有し、これは、V1より大きい第2の速度V2で上側ガス流94を放出する。より高い速度V2でガス流94を有することは、表面50および造形平面31にわたってより低いガス流88のフローを巻き込み維持するのに役立つ。図示の実施形態では、D1は約11ミリメートルであり、D2は約7ミリメートルである。より一般的には、D1>D2である。
【0047】
図示の実施形態では、ノズル86は、16ミリメートルの中心間間隔と、造形平面31および表面50の上方31.5ミリメートルの中心とを有する。ノズル92は、11ミリメートルの中心間間隔と、造形平面31および表面50の上方49.5ミリメートルの中心とを有する。ノズル86および92は、横軸Yに沿って造形チャンバ43の幅のほぼ全体に及ぶ。
【0048】
図9は、フィン72の一部を示す図7の詳細図である。図示の実施形態では、フィン72は、表面50から垂直に突出し、直角三角形の垂直形状を有する。直角三角形の小さい方の底辺は垂直であり、高さHを有する。直角三角形の大きい方の底辺は横方向であり、2Hの長さを有する。直角三角形の大きい方の底辺は、Xに対して18度の角度を画定する。
【0049】
他のフィン形状も可能である。フィン72は、非直角三角形、長方形、平行四辺形、台形、正方形、他の多角形形状、または湾曲したエッジを有する形状などの他の形状を有することができるが、依然として造形平面31の真上の境界層の速度フローフィールドに対してある程度の制御を提供する。概して、高さHは、フィンが表面50の上方に延在する範囲であると解釈される。好ましくは、Hは、境界層の高さよりも大きく、境界層フローフィールドのより良好な制御を提供する。
【0050】
図10は、2対のフィン74(縮尺通りではない)の例示的な実施形態の上面図である。所与の対のフィンについて、フィンはXに沿って横方向に広がる。一対のフィンの風下側エッジでは、それらは2.5H離れている。配列されたフィンの対は、Yに沿って6Hのピッチで離間される。
【0051】
この例示的な実施例では、ダイバータ74およびダム76は、表面50の上方に高さHだけ延在する垂直壁である。ダイバータ74は、軸Xに対して鋭角を画定する1つのダイバータと、Xに対してほぼ平行である別のダイバータ74とを含む。ダイバータは、造形平面31の後方(より大きいX)部分に沿って、かつYに対する造形平面のエッジにおいて、境界層の速度を維持するのに役立つ。
【0052】
ダム76は、Yに沿って造形チャンバを完全に横断しない1つのより長いダムおよび1つのより短いダムを含む。出口表面82上の造形チャンバ43のコーナー部分には、造形平面31に向かって上方に延在し、境界層ガスフローを減速させることができる、横方向に画定された渦がある。ダム76は、これらの渦を遮断し、造形平面31の後方(より高いX部分)コーナーにおいて、Xに沿ってより高い速度を確保する。
【0053】
表面50にわたる突出構造70のこの配置は、造形平面に近接する速度の最も均一なフローフィールドを提供するのに最適であることが分かっている。これにより、金属粉末27粒子を乱すことなくプルームを効果的に除去するために、造形平面の全ての領域において速度を最大にすることが可能になる。最適な平均速度は、金属粉末27粒子の密度および粒径の関数である。
【0054】
要約すると、説明されているのは、造形平面31の上方を流れる境界層ガス流60を、可能な限りXに沿った均一な流速で最適化するように構成された、完全なガスフロー制御アーキテクチャ96(図6)である。フローディレクタ構造98は、ガス入口54からガス出口56までの略ダクト状の矩形チャンバ48と、下側および上側の速度(それぞれV1、V2、V2>V1)を有する下側および上側の列のノズル(それぞれ86および92)を備えたガス入口54スナウト58と、ダイバータ壁78およびフィン72を有する入口表面78と、フィン72を有する中間領域80と、ダム76を有する出口表面82とを含む。
【0055】
図11は、プリントエンジン4を動作させて3D物品3を作製する方法100を示すフローチャートである。コントローラ16は、以下で説明するように、プリントエンジン8の様々なデバイスを動作させることによって方法100を実行するように構成される。
【0056】
102によれば、垂直位置決めシステム26は、新しい粉末層27を受け取るために造形プレート22を垂直に位置決めする。新しい粉末層は、造形平面31に垂直に近接または一致する上面を有する。
【0057】
104によれば、ディスペンサ32は、新しい粉末層27を上面24または29上に分配する。次いで、新しい粉末層は、造形平面31と概ね一致する新しい上面29を画定する。
【0058】
106によれば、ガントリ64は、ディスペンサをドック67に戻すように移動させる。次いで、壁部分66は、側壁44の一部を形成する。
【0059】
108によれば、ガス処理システム14は、ガス入口54からガス出口56に流れるガス流60を生成するように動作される。フローディレクタ構造98は、ガスフロー流のフローフィールドを形成し、造形平面31の上方でより均一な速度のガスフロー速度を提供する。
【0060】
110によれば、ビームシステム40は、新しい粉末層28を選択的に溶融および融合するように動作される。矢印によって示されるように、工程102~110は、3D物品が作製されるまで繰り返される。
【0061】
上述の特定の実施形態およびその適用は、例示のみを目的としており、以下の特許請求の範囲によって包含される修正および変形を排除するものではない。
他の実施形態
1. 3D物品を作製するための3次元(3D)プリントエンジンであって、以下:
造形チャンバを横方向に画定する複数の壁;
垂直位置決め装置に連結され側面積を画定する造形プレートを含む、造形ボックス;
粉末ディスペンサ;
前記造形プレートの側面積内の造形平面上を走査し、かつ粉末溶融のために概して固定高さにある、複数のエネルギービームを生成するように構成されたビームシステム;
前記造形プレートと前記複数の壁との間に配置され、上面を有する、周辺プレート;
前記造形チャンバの入口端部においてガスフロー流を放出し、前記造形平面および前記周辺プレートの上面の少なくとも一部を通過させる、ガス入口;
前記造形チャンバの出口端部に設けられ、前記ガス入口からガスフロー流を受け取る、ガス出口;
前記周辺プレートの上面に取り付けられ、その上方に延在する複数の突出構造であって、前記ガスフロー流のフローフィールドを成形して、前記造形平面の上方でより均一な速度のガスフロー速度を提供する、複数の突出構造;
前記ガス入口およびガス出口に連結されるガス処理システム;および
コントローラ
を備え、
前記コントローラが、以下:
1)前記垂直位置決めシステムを動作させ、新しい粉末の層を受け取るために前記造形プレートを位置決めする;
2)前記粉末ディスペンサを動作させ、新しい粉末の層を前記造形プレートまたは以前に分配された粉末の層の上に分配し、前記新しい粉末の層は、前記造形平面に近接した上面を有する;
3)前記ガス処理システムを動作させ、ガスフロー流を提供する;
4)前記ビームシステムを動作させ、前記新しい粉末の層を選択的に溶融させる;および
5)工程(1)~(4)を繰り返して3D物品の作製を完了する
ように構成される、3Dプリントエンジン。
2. 前記造形プレートの側面積が、少なくとも約0.5平方メートルであることを特徴とする、実施形態1に記載の3Dプリントエンジン。
3. 前記造形プレートの側面積が、少なくとも約0.7平方メートルであることを特徴とする、実施形態1に記載の3Dプリントエンジン。
4. 前記周辺プレートが、前記造形平面を横方向に取り囲むことを特徴とする、実施形態1に記載の3Dプリントエンジン。
5. 前記周辺プレートの上面が、前記造形平面に概ね平行であることを特徴とする、実施形態1に記載の3Dプリントエンジン。
6. 前記周辺プレートの上面が、前記造形平面に対して概ね同一平面上にあることを特徴とする、実施形態1に記載の3Dプリントエンジン。
7. 前記ガス入口が、第1の流入速度でガスを放出するノズルの下側列および第2の流入速度でガスを放出するノズルの上側列を含み、前記第2の流入速度は、前記第1の流入速度よりも高く、前記造形平面にわたって前記ノズルの下側列からのフロー流を巻き込むことを特徴とする、実施形態1に記載の3Dプリントエンジン。
8. 前記周辺プレートの上面が、前記造形プレートと前記ガス入口との間に横方向に配置される入口表面を含み、前記複数の突出構造は、前記入口表面の上方に延在するフィンのアレイを含み、全体的なフロー方向Xに沿って見たときに、三角形、矩形、多角形、および曲線のうちの1つである、垂直プロファイルを個々に有することを特徴とする、実施形態1に記載の3Dプリントエンジン。
9. 前記周辺プレートの上面が、側壁と前記造形平面との間にあり、全体的なフロー方向Xに関して前記造形平面と重なり合う2つの中間表面を含み、前記複数の突出構造は、前記中間表面の上方に延在するフィンのアレイを含み、全体的なフロー方向Xに沿って見たときに、三角形、矩形、多角形、および曲線のうちの1つである、垂直プロファイルを個々に有することを特徴とする、実施形態8に記載の3Dプリントエンジン。
10. 前記複数の突出構造が、ガス流の全体的な流れ方向Xに対して対向する鋭角を画定する2つのフィンを個々に有する垂直フィンの複数の対を含むことを特徴とする、実施形態1に記載の3Dプリントエンジン。
11. 前記複数の突出構造が、ガス流の全体的な流れ方向Xに対して鋭角を画定する垂直短軸および横軸を個々に有する複数のフィンを含むことを特徴とする、実施形態1に記載の3Dプリントエンジン。
12. 前記複数の突出構造が、複数の三角形フィンを含み、該三角形フィンは、前記周辺プレートの上面の下側エッジ、前縁、および後縁を含み、風下側エッジは最短エッジであることを特徴とする、実施形態1に記載の3Dプリントエンジン。
13. 前記周辺プレートの上面が、前記造形プレートと前記ガス入口との間に横方向に配置された入口表面を含み、前記複数の突出構造は、前記入口表面の上方に突出し、前記ガス流の全体的な流れ方向Xに対して斜角を画定する長軸を有する、第1の垂直ダイバータ壁を含むことを特徴とする、実施形態1に記載の3Dプリントエンジン。
14. 前記複数の突出構造が、前記入口表面の上方に突出し、前記ガス流の全体的な流れ方向Xと概ね位置合わせされた長軸を有する、第2の垂直ダイバータ壁を含むことを特徴とする、実施形態13に記載の3Dプリントエンジン。
15. 前記周辺プレートの上面が、前記造形プレートと前記ガス出口との間に横方向に配置された出口表面を含み、前記複数の突出構造は、前記入口表面の上方に突出し、前記ガス流の全体的な流れ方向Xにほぼ垂直な軸Yに沿った長軸を有する、ダム壁を含むことを特徴とする、実施形態1に記載の3Dプリントエンジン。
16. 前記ダム壁が、前記造形チャンバの幅の一部に個々に広がり、軸Yに沿ってそれらの間にギャップを有する、2つのダム壁を含むことを特徴とする、実施形態15に記載の3Dプリントエンジン。
17. 前記ダム壁がYに沿って不均等な長さを有し、前記ギャップは、Yに対して中心にないことを特徴とする、実施形態16に記載の3Dプリントエンジン。
18. 前記粉末ディスペンサが、該粉末ディスペンサがドッキング位置にあるときに前記造形チャンバを横方向に画定する前記複数の壁の一部を形成する壁部分を含むことを特徴とする、実施形態1に記載の3Dプリントエンジン。
19. 3次元(3D)物品を作製する方法であって、
以下:
造形チャンバを横方向に画定する複数の壁;
垂直位置決め装置に連結され側面積を画定する造形プレートを含む、造形ボックス;
粉末ディスペンサ;
前記造形プレートの側面積内の造形平面上を走査し、かつ粉末溶融のために概して固定高さにある、複数のエネルギービームを生成するように構成されたビームシステム;
前記造形プレートと前記複数の壁との間に配置され、上面を有する、周辺プレート;
前記造形チャンバの入口端部においてガスフロー流を放出し、前記造形平面および前記周辺プレートの上面の少なくとも一部を通過させる、ガス入口;
前記造形チャンバの出口端部に設けられ、前記ガス入口からガスフロー流を受け取る、ガス出口;
前記周辺プレートの上面に取り付けられ、その上方に延在する複数の突出構造であって、前記ガスフロー流のフローフィールドを成形して、前記造形平面の上方でより均一な速度のガスフロー速度を提供する、複数の突出構造;および
前記ガス入口およびガス出口に連結されるガス処理システム
を備える3Dプリントエンジンを提供する工程;
前記垂直位置決めシステムを動作させ、新しい粉末の層を受け取るために前記造形プレートを位置決めする工程;
前記粉末ディスペンサを動作させ、新しい粉末の層を前記造形プレートまたは以前に分配された粉末の層の上に分配する工程であって、前記新しい粉末の層は、前記造形平面に近接した上面を有する、工程;
前記ガス処理システムを動作させ、前記ガス入口からガスフロー流を放出する工程;
前記複数の突出構造で前記ガスフロー流を成形し、前記ガスフロー流のフローフィールドを成形して、前記造形平面の上方でより均一な速度のガスフロー速度を提供する工程;
前記ビームシステムを動作させ、前記新しい粉末の層を選択的に溶融させる工程;および
工程(1)~(4)を繰り返して3D物品の作製を完了する工程
を含む、方法。
20. 前記ガス入口でガスフロー流を放出する工程が、第1の速度V1でノズルの下側アレイから下側ガス流を放出する工程、および、前記第1の速度V1より大きい第2の速度V2でノズルの上側アレイから上側ガス流を放出することにより前記下側ガス流を巻き込む工程を含むことを特徴とする、実施形態19に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11