(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】多機能シートおよび積層体、物品、並びに方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20241112BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
B32B27/32 Z
H05K7/20 A
H05K7/20 B
(21)【出願番号】P 2023524927
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(86)【国際出願番号】 CN2020123116
(87)【国際公開番号】W WO2022082702
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】519372065
【氏名又は名称】デュポン エレクトロニクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピン ワン
(72)【発明者】
【氏名】チョン ヤン ワン
(72)【発明者】
【氏名】ジョーユエ ヤン
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-329261(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0180588(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0373360(US,A1)
【文献】特開2019-131705(JP,A)
【文献】特表2018-507123(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0301258(US,A1)
【文献】国際公開第2015/050452(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/190929(WO,A1)
【文献】特表2017-506696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08J 7/04- 7/06
C08C 19/00-19/44
C08F 6/00-246/00;301/00
H05K 7/20
F28F 21/00-27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)シートと、第1のポリマー層と、第2のポリマー層と、を含む多機能積層体であって、前記UHMWPEシートは前記第1のポリマー層と前記第2のポリマー層との間に挟まれており、前記第1のポリマー層および前記第2のポリマー層は異なる材料で作製されて
おり、
前記UHMWPEシートは、少なくとも1つのUHMWPE層を含み、かつ、0.90g/cm
3
未満の密度を有し、
前記少なくとも1つのUHMWPE層は溶剤なしで延伸加工され、少なくとも6W/mKの、延伸方向における熱伝導率k
para
、および0.20W/mK以下の、前記層の平面と直角をなす熱伝導率k
ortho
を有する、
多機能積層体。
【請求項2】
前記UHMWPEシートは、2層以上のUHMWPE層を含み、前記2層以上のUHMWPE層は2つのセットに分割され、前記層は、第1のセットの延伸方向が第2のセットの延伸方向と直角をなす層構造において交互に配置されており、2つの方向に熱伝導を提供する、
請求項1に記載の多機能積層体。
【請求項3】
前記第1のポリマー層または前記第2のポリマー層は、保護層、ハードコート層、または接着剤層である、
請求項1または2に記載の多機能積層体。
【請求項4】
前記積層体は、ガラス層、第3のポリマー層、ガラス繊維層、セラミック層、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される層をさらに含む、
請求項1から3のいずれかに記載の多機能積層体。
【請求項5】
多機能積層体を含むポータブル電子デバイス用ハウジングの背面パネル
であって、
前記多機能積層体は、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)シートと、第1のポリマー層と、第2のポリマー層と、を含み、
前記UHMWPEシートは前記第1のポリマー層と前記第2のポリマー層との間に挟まれており、前記第1のポリマー層および前記第2のポリマー層は異なる材料で作製されている、
ポータブル電子デバイス用ハウジングの背面パネル。
【請求項6】
前記ポータブル電子デバイスは、スマートフォン、携帯情報端末、カメラ、オーディオプレーヤ、オーディオ録音デバイス、医療機器、電子ツール、ラジオ、および照明デバイス、小火器、ゲームコンソール、キーフォブ、およびそれらの組み合わせ、からなる群から選択される、
請求項5に記載の背面パネル。
【請求項7】
前記背面パネルは、前記ポータブル電子デバイスの背面ハウジングの内面上、前記ポータブル電子デバイスの前記背面ハウジングの凹部内、または前記ポータブル電子デバイスの背面ハウジングの外面上に配置される、
請求項5または6に記載の背面パネル。
【請求項8】
多機能積層体を含むポータブル電子デバイス用の保護ケース
であって、
前記多機能積層体は、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)シートと、第1のポリマー層と、第2のポリマー層と、を含み、
前記UHMWPEシートは前記第1のポリマー層と前記第2のポリマー層との間に挟まれており、前記第1のポリマー層および前記第2のポリマー層は異なる材料で作製されている、
ポータブル電子デバイス用の保護ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多機能積層体、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)シートを含むポータブル電子デバイス、並びにポータブル電子デバイスにおける多機能積層体を作製し使用するための方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
個人用またはポータブル電子デバイスとしても知られる携帯電子デバイス(例えば、セルラー電話、スマートフォン、タブレット、ラップトップコンピュータ、電子ブックリーダー、MP3プレーヤ、ポケットPC、および類似製品)は、熱を発生させる構成要素を有する。携帯電子デバイス技術およびモバイルインターネットの発達に伴い、携帯端末の機能および性能は、特にスマートフォン産業の急速な開発により、徐々にコンピュータに接近しまたはコンピュータに収束し、端末内の主チップであるCPUおよびGPUの周波数は益々高くなり、CPUおよびGPUのコア数は単一コアからデュアルコア、4コア、および8コアにさえ徐々に進化し、端末携帯電話とネットワークとの間でのデータ交換の量も急激に増加し、それにより、端末デバイスにおける各チップの電力消費は大幅に増加している。例えば、セル電話の温度が高いとき(特にビデオゲームをしているとき)、セル電話の保護機構に起因してセル電話の性能は低下することになる。電力消費の増加は、端末デバイスの加熱問題をもたらす。携帯端末では、コンピュータのようにCPUおよびGPUに冷却用ファンを追加することは、困難である。加えて、無線充電が、特に将来の家電製品にとって、標準的なソリューションになってきており、無線充電に干渉しない熱散逸ソリューションが重要になっている。
【0003】
現時点では、携帯端末用の熱散逸方法は、主に、携帯端末のケース表面の内部に(例えば後部バッテリカバー内部に、およびバッテリコンパートメントケース内部に)、大面積の銅箔積層区域または片状黒鉛区域を追加して熱散逸を増加させることである。銅箔および片状黒鉛の高い横方向熱伝導率の特徴により、冷却のためのケースの熱散逸表面積は増加する。熱伝導方法の鍵となる課題は、熱源チップ内の熱を低熱抵抗でケースの外面に急速に伝達させることであり、したがって、熱をデバイス内の高温区域から外面の低温区域へと伝達させることが有益である。しかしながら、金属およびグラファイト/グラフェンまたは半導体は、無線充電および/または無線信号送信/受信と干渉し、これらを不可能にするであろう。ファンは、デバイスの総体積および重量を増加させ、同時に追加の電源を必要とすることになる。
【0004】
加えて、携帯デバイスは、少なくとも、毎日、何回も、つまみ上げられ、置かれ、使用され、手荒く扱われるため、落下による損傷を特に受けやすい。このような携帯デバイスを保護するために、保護ケースおよびカバーが長く使用されてきた。したがって、熱を効果的に散逸させることが可能であって、同時に、携帯デバイスを無線充電し保護する際に、無線信号送信/受信に干渉することなく、携帯デバイスにとって柔軟なアンテナデザインを可能にする、多機能材料システムの必要性が存在する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本明細書の全体にわたって使用される場合、以下の略語は、文脈が特に明確に示さない限り、以下の意味を有するものとする:℃=摂氏度;K=ケルビン度;W=ワット;g=グラム;nm=ナノメートル;μm=ミクロン=マイクロメートル;mm=ミリメートル;s=秒;およびmin=分。特に明記しない限り、全ての量は重量パーセント(「重量%」)であり、全ての比はモル比である。全ての数値範囲は、そのような数値範囲が合計100%になるように制約されることが明らかである場合を除いて、包含的であり、且つ任意の順序で組み合わせ可能である。特に明記しない限り、全てのポリマーおよびオリゴマーの分子量は、g/molまたはダルトン単位の重量平均分子量(Mw)であり、ポリスチレン標準と比較したゲル浸透クロマトグラフィーを用いて決定される。
【0006】
冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」および「前記(the)」は、そうではないことを文脈が明確に示さない限り、単数形および複数形を指す。本明細書で使用される場合、用語「および/または」は、関連する項目のうちの1つ以上の項目の任意のおよび全ての組み合わせを含む。用語「ポリマー」は、繰り返しモノマー単位から構成される分子を指す。用語「コポリマー」は、重合単位としての2種以上の化学的に異なるモノマーから構成されるポリマーを指し、ブロックコポリマー、ターポリマー、テトラポリマー等を含む。本開示のポリマーおよびコポリマーは、有機および/または無機添加剤を含んでもよい。
【0007】
第1、第2、第3等の用語は、様々な要素、成分、領域、層および/または区域を記述するために本明細書において使用され得るが、これらの要素、成分、領域、層および/または区域は、これらの用語によって限定されるべきでないことが理解されるであろう。これらの用語は、1つの要素、成分、領域、層および/または区域を、別の要素、成分、領域、層および/または区域から区別するために用いられるにすぎない。したがって、第1の要素、成分、領域、層および/または区域は、本開示の教示から逸脱することなく、第2の要素、成分、領域、層および/または区域と称することができよう。要素が別の要素の「上に」ある、または「上に配置」されている、と言われる場合、その要素は、物体部分の上または下に位置していることを意味するが、重力方向に基づく物体部分の上側に位置することを本質的に意味せず、その要素は、他の要素の直接上にあり得る、またはその間に介在要素が存在し得る。対照的に、要素が別の要素の「上に直接ある」または「上に直接配置されている」と言われる場合、介在要素は存在しない。
【0008】
さらには、1つの要素、成分、領域、層および/または区域が、2つの要素、成分、領域、層および/または区域の「間」にあると言われる場合、それは、2つの要素、成分、領域、層および/または区域の間の唯一の要素、成分、領域、層および/または区域であり得る、または1つ以上の介在する要素、成分、領域、層および/または区域が存在し得ることも理解されるであろう。
【0009】
用語「膜」は、「層」および「シート」様の構造を含む。用語「膜」、「層」および「シート」は、本明細書の全体にわたって同じ意味で用いられる。層は、1つの層、または、異なる物理的特性若しくは同じ物理的特性を有するが異なるポリマー組成を有する複数の層であり得る。
【0010】
熱を熱源から広い領域に拡散させて、熱散逸または熱拡散を促進させるために、デバイスの熱スプレッダが一般に使用される。本開示において、用語「熱が散逸する」、「熱散逸」、「熱が散逸する」、「熱拡散」、または、「熱が拡散する」は、交換可能に用いられる。
【0011】
本開示は、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)シートと、第1のポリマー層と、第2のポリマー層と、を含む多機能積層体であって、UHMWPEシートは第1のポリマー層と第2のポリマー層との間に挟まれており、第1のポリマー層および第2のポリマー層は異なる材料で作製されている、多機能積層体を対象とする。
【0012】
UHMWPE薄膜は、拡張的な機械的延伸により、高い熱伝導率を有し得ることが知られている。本開示のUHMWPEシートは、少なくとも1つのUHMWPE層を含む。UHMWPE層は、平面状であり、すなわち、2つの方向に次元を有し、これは第3の次元における寸法よりも大幅に大きい。UHMWPE層を作製するための延伸工程において溶剤は使用されない。延伸比は、100~150に変動し得る。延伸工程中、層中のポリマーの連鎖は、延伸方向に配向される、すなわち実質的に整列される。延伸中、層に空洞が形成される。層の密度は、0.90g/cm3未満、または0.85g/cm3未満であり得る。密度は、層の面密度および層の厚さを使用して、並びにヘリウム比重瓶法によって決定される。このようなUHMWPE層の調製は、米国特許第7858004号明細書、および、米国特許出願公開第2017/0373360A1号明細書に開示されており、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0013】
本開示のUHMWPE層は延伸方向に良好な熱伝導率kparaを有する。kparaは、少なくとも6W/mK、または少なくとも10W/mK、または少なくとも15W/mK、または少なくとも20W/mK、または少なくとも25W/mK、または少なくとも30W/mK、または少なくとも35W/mK、または少なくとも40W/mK、または少なくとも45W/mK、または少なくとも50W/mK、または少なくとも60W/mKであり得る。層の平面と直角をなす熱伝導率korthoは、非常に低下する。korthoは、0.20W/mK以下、0.18W/mK未満、または0.15W/mK未満である。比率kpara/korthoは、200超、または250超、または400超である。
【0014】
UHMWPE層は、他の例外的な機械的、化学的、および電気的特性を有する。例えば、UHMWPE層は、高い弾性率、耐摩滅性および耐摩耗性を有する極めて強靱なプラスチックである。UHMWPE層は、実質的に水分吸着を示さない。また、UHMWPE層は、低摩擦および強い耐化学性を有して耐久性がある。加えて、UHMWPEは、電気絶縁体であり、良好な誘電特性を有する。UHMWPEは、低い誘電率Dk、および低い散逸係数Dfを有する。例えば、UHMWPE層は、最大30GHzの高周波において、2.2未満のDk、および0.00022未満のDfを有する。
【0015】
いくつかの実施形態では、UHMWPEシートは、2層以上のUHMWPE層を含むことができる。これは、熱散逸の増加、および機械的強度の増加をもたらす。2層以上の層を、各層の延伸方向がシートにおける1つ置きの層の延伸方向に整列するような層構造で配置してもよい。代わりに、層は2つのセットに分割されてもよく、層は、第1のセットの延伸方向が第2のセットの延伸方向と角度をなす層構造において交互に配置されており、2つの方向に熱伝導を提供してもよい。一実施形態では、角度は90度である。いくつかの実施形態では、層構造中の層は、例えば接着剤を用いて、一緒に結合され得る。一実施形態では、UHMWPE層を一緒に結合させるために、少なくとも0.2W/mKまたは少なくとも0.5W/mKの熱伝導率を有する接着剤を使用できる。
【0016】
UHMWPEシートの市販製品は、DuPont de Nemours,Inc.Wilmington,Delawareから市販されているDuPont(商標) Temprion(商標)OHS、およびTeijin Aramid,Arnhem,The Netherlandsから市販されているEndumax(登録商標)、を含むことができるが、これらに限定されない。
【0017】
第1および第2のポリマー層は、ハードコート層、接着剤層、または保護層であり得る。ハードコート層は、有機材料、または有機/無機ハイブリッド材料から作製できる。有機材料の例には、これらに限定されないが、エポキシ-シロキサン樹脂、シリコーン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン-(メタ)アクリレート、ポリウレタン、エポキシ、およびこれらの組み合わせが含まれ得る。無機材料には、これらに限定されないが、シリカ、アルミナ、またはジルコニアが含まれ得る。有機/無機ハイブリッド材料は、ポリシルセスキオキサンであり得る。
【0018】
一実施形態では、ハードコート層は、エポキシ-シロキサンオリゴマー、平均直径50~250nmを有する有機粒子、および1つ以上のエポキシまたはオキセタン部位を有する反応性担体、を含むハードコーティング組成物から作製することができる。組成物および得られるハードコート層は、米国特許出願第2019/0185710号明細書に開示されており、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0019】
別の実施形態では、ハードコート層は、シロキサンオリゴマー、またはシリカ若しくは金属酸化物のナノ粒子を有するシロキサンオリゴマー、を含むハードコーティング組成物から作製することができる。組成物およびハードコート層は、米国特許出願第2017/0369654号明細書および同第2019/0185633号明細書に開示されており、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0020】
さらに別の実施形態では、ハードコート層は、紫外線硬化性アクリル組成物から作製されたポリウレタン-(メタ)アクリレートをハードコーティング組成物として含み得る。組成物は、脂肪族三官能性、四官能性、または五官能性(メタ)アクリレートモノマー、イソシアヌレート基を含むアクリレートモノマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、およびUVラジカル開始剤を含み得る。組成物およびハードコート層は、米国特許出願第2019/0185602号明細書に開示されており、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0021】
本開示のハードコーティング組成物は、強化剤、接着促進剤、および有機溶剤をさらに含むことができる。強化剤は、エポキシ化合物、ポリエーテル化合物、およびポリエーテルアミン類からなる群から選択できる。多種多様な接着促進剤が、使用されてもよく、当技術分野において公知である。接着促進剤の例としては、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、8-メタクリロキシ-オクチルトリメトキシシラン、((クロロメチル)フェニルエチル)トリクロロシラン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタンおよびN,N’-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミンなどのシランカップリング剤;並びに、Huntsman Corporation(The Woodlands,Texas)から市販されているJEFFAMINE(商標)D230およびJEFFAMINE(商標)T403などのポリエーテルアミンを挙げることができるが、それらに限定されない。
【0022】
有機溶剤は、1種の有機溶剤、または2種以上の有機溶剤の混合物であり得る。有機溶剤の例としては、プロピレングリコールメチルエーテル;プロピレングリコールメチルアセテートなどのエーテルアセテート;メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソアミルケトンおよびジメチルケトンなどのケトン;メチル2-ヒドロキシルイソブチレート、酢酸エチルおよび酢酸ブチルなどのエステル;並びにメタノールおよびブタノールなどのアルコール;並びにそれらの混合物を挙げることができるが、それらに限定されない。
【0023】
いくつかの実施形態では、1つのハードコート層は、少なくとも2つのハードコート層を含み得る。ハードコート層は、0.1~200μm、または0.5~150μm、または1~100μm、または1~50μm、または1~30μm、または1~20μm、または1~10μm、または1~6μm、または2~50μm、または2~10μm、または2~5μm、または3~50μm、または3~30μm、または3~15μm、または5~50μm、または5~25μm、または10~50μm、または10~35μm、または15~50μm、または15~30μmの厚さを有し得る。
【0024】
ハードコート層は、高い弾性率および硬度を有し得る。ハードコート層は、少なくとも2H、または少なくとも3H、または少なくとも4H、または少なくとも5H、または少なくとも6H、または少なくとも7H、または少なくとも8H、または少なくとも9Hの鉛筆硬度を有し得る。鉛筆硬度は、ガラス上に配置されたハードコート層で測定される。ハードコート層は、少なくとも3GPa、または少なくとも4GPa、または少なくとも8GPaのナノインデンテーション係数を有する。
【0025】
接着剤層は、感圧性接着剤(PSA)、光学的に透明な接着剤(OCA)、光学的に透明な樹脂(OCR)、等を含むことができる。接着剤層は、シリコーン、シリコーン(メタ)アクリレート、シリコーンエポキシ、ポリウレタン-(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(アルキル)アクリレート、ポリブタジエン、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリウレタン(PU)、ビニルエーテルポリマー、エポキシ、スチレンおよびブタジエンのブロックコポリマー、ポリスチレン、多糖類、フェノール樹脂、タンパク質誘導接着剤、アクリル酸またはメタクリル酸を含有するポリマー、ポリ(ヒドロキシエチル)アクリレートを含有するポリマー、およびそれらの組み合わせ、を使用する熱または圧縮プロセスを使用して接着されてもよいフィルム様形状に形成されてもよい。接着剤層は、単一の材料または2種類以上の材料で形成できる。一実施形態では、接着剤層は、-30℃未満または80℃超のガラス転移温度(Tg)を有するポリマーを含み得る。いくつかの実施形態では、接着剤層は、本発明のカバーウィンドウアセンブリの層間のエラストマー層により置換できる。接着剤層の厚さは、1~200μm、または1~100μm、または1~50μm、または1~20μm、または3~50μm、または3~20μm、または5~50μm、または5~40μm、または5~30μm、または5~20μm、または5~15μm、または7~15μm、または10~30μm、または10~20μm、で変動し得る。
【0026】
保護層は、保護を提供する任意のポリマー層であり得る。保護層として使用されるポリマー材料の例としては、ポリイミド、ポリイミド-ポリアミド、ポリアミド、ポリエーテルサルホン、環状オレフィンコポリマー、ポリエステルイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン-(メタ)アクリレート、シリコーン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレン酢酸ビニル(EVA)ポリマー、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、ポリアクリル酸、フルオロシリコーン、ポリビニルアルコール、ポリエーテルイミド、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート-ウレタン(メタ)アクリレート(PCUA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、またはそれらの組み合わせ、が挙げることができるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、保護層は、ポリウレタン、シリコーン、またはそれらの誘導体を含むが、それらに限定されない、熱可塑性エラストマーであり得る。一実施形態では、保護層は、DuPont de Nemours,Inc.,Wilmington,Delawareから市販されているTPSiV(登録商標)熱可塑性エラストマーを含む、熱可塑性シリコーン加硫物(TPSiV)であり得る。一実施例は、TPSiV(登録商標)5300 A6002である。
【0027】
保護層の厚さは、1~600μm、または3~600μm、または5~600μm、または10~600μm、または15~600μm、または20~600μm、25~600μm、または25~550μm、または25~500μm、または25~450μm、は25~400μmの範囲であり得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、多機能積層体は、ガラス層、第3のポリマー層、ガラス繊維層、セラミック層、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される層をさらに含み得る。第3のポリマー層は、前述した第1および第2のポリマー層と同じであり得る。一実施形態では、第3のポリマー層は、熱可塑性シリコーン加硫物(TPSiV)であり得る。
【0029】
本開示はまた、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)シートと、第1のポリマー層と、層であって、UHMWPEシートが第1のポリマー層とその層との間に挟まれており、その層はガラス層、ガラス繊維層、セラミック層、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、層と、を含む多機能積層体を対象とする。UHMWPEシートおよび第1のポリマー層は、前述したものと同様である。
【0030】
本開示では、ポータブル電子デバイスに好適ないかなるガラス層も使用され得る。ガラス層は、0.1ミクロン、または0.5ミクロン、または1ミクロン、または10ミクロン、または20ミクロン、または30ミクロン、または40ミクロン、または50ミクロン、または60ミクロン、または70ミクロン、または80ミクロン、または90ミクロン、または100ミクロン、または125ミクロン、または150ミクロン、または175ミクロン、または200ミクロン、または250ミクロン、または300ミクロン、または350ミクロン、または400ミクロン、または500ミクロン、または600ミクロン、または700ミクロン、または800ミクロン、または900ミクロンの厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、ガラス層は、超薄型ガラス層であってもよい。本明細書で使用する場合、用語「超薄型ガラス層」は、0.1ミクロン~75ミクロンの範囲の厚さを有するガラス層を意味する。
【0031】
ガラス層は、強化ガラス層でなくてもよく、または化学強化ガラス層および/または熱強化ガラス層であってもよい。熱強化ガラス層は、ガラス層を、ガラスのガラス転移温度を超える高温まで加熱し、そしてその層の表面を急速に冷却する(「焼入れする」)一方で、ガラスの厚さおよびかなり低い熱伝導率により絶縁される層の内部領域がより遅い速度で冷却されることにより強化される。ガラス層の化学強化プロセスについて、イオン拡散などのプロセスにより表面の近くの領域におけるガラスの化学組成を変化させることにより、表面圧縮応力が発生する。いくつかのイオン拡散ベースのプロセスでは、表面の近くにおいて、より大きいイオンをより小さいイオンと交換して、表面にまたは表面の近くに負の引張応力を付与することにより、得られるガラス層の外側部分を強化できる。
【0032】
いくつかの実施形態では、ガラス層は、イオン交換プロセスを受けていてもよい。そのような実施形態では、ガラス層は、イオン交換ガラス層と呼ばれ得る。イオン交換プロセスの結果、ガラス層の上面および/または底面のうちの少なくとも1つにおける圧縮応力と、ガラス層の厚さにわたる少なくとも2つの異なるポイントにおいて異なる、金属酸化物の濃度と、を有するガラス層が得られる。金属酸化物は、アルカリ金属酸化物であってもよい。
【0033】
多機能積層体は、異なる層をコーティングおよび積層することにより作製できる。いくつかの実施形態では、ハードコーティング組成物は、スロットダイコーティング、ドローダウンバーコーティング、ワイヤーバーコーティング、ロールツーロールコーティング、スリットコーティング、フレキソ印刷、インプリンティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、フラッドコーティング、フローコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、グラビアコーティング等、を含むが、これらに限定されない、任意の既知のコーティング技術を使用して、UHMWPEシート上にコーティングされる。ハードコーティング組成物は、前述したものと同様である。UHMWPEシート上にハードコーティング組成物の層を塗布した後に、層を、任意選択で、60~150℃、または70~120℃、または70~90℃などの温度でソフトベークして、いかなる有機溶剤をも除去することができる。
【0034】
UHMWPEシート上のハードコーティング組成物の層は、次いで、典型的には240~400nmの波長での、およびUHMWPEシート上に硬化ハードコート層を形成するために十分なUV線量での、紫外線(UV)照射への曝露により硬化される。様々なUVシステムを用いることができる。UVシステムの例としては、Fusion Dバルブ、H UVランプ、および中圧水銀UVランプを挙げることができるが、それらに限定されない。使用される特定の波長は、ハードコーティング組成物において使用される特定の光開始剤に依存することになる。そのような波長選択およびUV線量は、十分に当業者の能力の範囲内にある。一実施形態では、UV線量を、200~8,000mJ/cm2、または400~6,000mJ/cm2、または500~5,000mJ/cm2に変化させることができる。
【0035】
次いで、接着剤層が、当該技術で公知のラミネータにより、コーティングされたUHMWPEシートのUHMWPEの面に積層されて、多機能積層体を形成することができる。いくつかの実施形態では、ガラス層、ガラス繊維層、セラミック層、または第3のポリマー層が、多機能積層体の接着剤層の面にさらに積層され得る。一実施形態では、第3のポリマー層は、熱可塑性シリコーン加硫物(TPSiV)であり得る。本開示の多機能積層体を形成するために、積層化を、0.4MPa且つ100℃で、1mL/分にて実施され得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、ガラス層、ガラス繊維層、セラミック層、または第3のポリマー層に接着剤層を積層させて、第1の積層体を形成できる。次いで、第1の積層体の接着剤層の面にUHMWPEシートを積層させて、第2の積層体を形成できる。さらには、UHMWPEシートの上部にハードコーティング組成物をコーティングして多機能積層体を形成することにより、ハードコート層を形成できる。コーティングプロセスおよび積層プロセスは、上述したものと同様である。
【0037】
いくつかの実施形態では、上述した既知のコーティング技術のいずれかを使用して、UHMWPEシート上にハードコーティング組成物がコーティングされる。ハードコーティング組成物は、前述したものと同様である。ハードコーティング組成物の層をUHMWPEシート上に塗布した後、層は任意選択でソフトベークされて、いかなる有機溶剤も除去されてよい。次いで、UHMWPEシート上のハードコーティング組成物の層は、紫外線(UV)照射への曝露により硬化される。次いで、コーティングされたUHMWPEシートのコーティングされていない面は、ポリマー層に積層される。積層化は、0.4MPa且つ100℃~120℃で、1mL/分にて実施され得る。ポリマー層は、第1、第2、および第3のポリマー層として記載されるものと同様である。一実施形態では、ポリマー層は、熱可塑性シリコーン加硫物(TPSiV)であり得る。
【0038】
本開示の多機能積層体は、改善された熱特性および機械的特性を有する。多機能積層体の熱特性としては、例えば、熱伝導率、熱コンダクタンス、比熱容量、熱容量、熱拡散率などを挙げることができる。熱伝導率は、材料を通して供給された熱流速に応じる、距離を横切る固有温度差に比例し、メートル・ケルビン当たりのワットなどの、長さ・温度当たりの電力の典型的な単位を有する。熱コンダクタンスは、本体表面間の単位温度差により誘起される、材料の単位面積を通る定常状態での熱流の時間速度であり、ケルビン当たりのワットなどの、温度当たりの電力の典型的な単位を有する。比熱容量は、熱エネルギーに応じた、固有温度の上昇であり、キログラム・ケルビン当たりのジュールなどの、質量・温度当たりのエネルギーの典型的な単位を有する。熱容量は、材料の質量を含み、ケルビン当たりのジュールなどの、温度当たりのエネルギーの典型的な単位を有する。熱拡散率は、熱伝導率と、質量密度および比熱容量の積との比率であり、材料が、その周囲環境と同等の温度に、どのくらい迅速に到達するかを示し、秒当たりの平方メートルなどの、時間当たりの面積の典型的な単位を有する。
【0039】
積層体の熱特性は、当業者に既知の方法を使用して測定されてよい。例えば、固体材料の熱拡散率を測定するために、しばしば、オングストローム法または温度波法が使用される。材料の熱拡散率は、通常、時間変化する熱源に対して測定される過渡的な温度応答を使用する過渡的方法を利用することにより、直接測定される。過渡的方法は、過渡的温度法および周期的温度法に分類される。過渡的方法では、熱拡散率は、入力された熱の急激な変化に対する試料温度の応答から推定される。良く知られる例は、レーザーフラッシュ分析またはキセノンランプフラッシュ分析などのフラッシュ法である。周期的温度法では、熱拡散率は、周期的な(時間変動する)熱入力に対する試料の応答から推定される。例としては、3ω法およびオングストローム法を挙げることができる。熱特性を測定するための他の方法としては、過渡格子分光法、ビーム偏向技術、熱画像化技術、ASTM D5470-12に従う熱界面材料の熱伝達特性を測定するための標準試験方法、および熱サイクリングを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0040】
ボール落下試験は、外力による、材料の広範囲の耐衝撃性を明らかにできる。本開示では、ボール落下試験を使用して、厚さ300μmのガラス層を保護するためのUHMWPEシートまたは多機能積層体の耐衝撃性を評価する。ボール落下試験のために、UHMWPE、または本開示のガラス層、ガラス繊維層若しくはセラミック層のない多機能積層体を、10μm接着剤を使用して厚さ300μmのガラスに接着する。ガラス層、ガラス繊維層、またはセラミック層を含む多機能積層体を、ボール落下試験で直接使用できる。ボール落下試験には、直径約20mmの32グラムのボールを使用できる。ボールを落下させた高さが記録される。UHMWPEおよび多機能積層体は、ボールがガラス層の表面に当たった後にガラス層の表面上に目に見えるいかなるクラックも生じることなく、少なくとも60cm、または少なくとも80cm、または少なくとも100cmの高さを有することができる。
【0041】
ペン落下試験も、外力の、広範囲の耐衝撃性を明らかにできる。本開示では、ペン落下試験も使用して、厚さ300μmのガラスを保護するためのUHMWPEシートまたは多機能積層体の耐衝撃性を評価する。ボール落下試験のために、UHMWPE、または本開示のガラス層、ガラス繊維層若しくはセラミック層のない多機能積層体を、10μm接着剤を使用して厚さ300μmのガラスに接着する。ガラス層、ガラス繊維層、またはセラミック層を含む多機能積層体を、ペン落下試験で直接使用できる。0.5mmの直径を有する先端を有する、11グラムの合計重量を有するペンを、ペン落下試験に使用できる。UHMWPEおよび多機能積層体は、ペンがガラス層の表面に当たった後にガラス層の表面上に目に見えるいかなるクラックも生じることなく、少なくとも40cm、少なくとも50cm、少なくとも60cm、または少なくとも80cm、または少なくとも85cmの高さを有することができる。
【0042】
電気デバイスは、ハウジングを含んでもよい。ハウジング内に電子構成要素および機械式構造が取り囲まれていてもよい。ハウジングは、デバイスの前面、側壁および背面を覆っていてもよい。ハウジングは、一緒に組み立てられる複数の構造を使用して実装されてもよい。ハウジングは、正面パネルおよびリアルパネルが取り付けられる中心フレームから形成されてもよい。前面パネルおよび背面パネルは、異なる機能を有する多くの層を含むことができる。場合によっては、正面および/または背面パネルは、外側の透明層(例えばカバーガラスまたは透明ポリマーフィルム)を含んでもよい。パネルは、取り外し可能であってもよい。例えば、電子デバイスの内部へのアクセスを提供するために、背面パネルはハウジングの他の部分から取り外しできる。
【0043】
本開示は、ポータブル電子デバイス用のハウジングの背面パネルも対象とする。背面パネルを使用して、熱を散逸させ、ポータブル電子デバイスを外力の衝撃から保護することができる。ポータブル電子デバイスは、スマートフォン、携帯情報端末、カメラ、オーディオプレーヤ、オーディオ録音デバイス、医療機器、電子ツール、ラジオ、および照明デバイス、小火器、ゲームコンソール、キーフォブ、およびそれらの組み合わせ、からなる群から選択される。一実施形態では、ポータブル電子デバイスはスマートフォンである。
【0044】
ハウジングの背面パネルは、平面背面パネルであり得る。いくつかの実施形態では、平面背面パネルは、UHMWPEシートを含む。いくつかの実施形態では、平面背面パネルは、多機能積層体を含む。UHMWPEシートおよび多機能積層体は、前述したものと同様である。本開示の背面パネルは可撓性または剛性であり得るため、ポータブル電子デバイスの背面ハウジングのいかなる場所に配置することもでき、最速の熱散逸が実現される。背面ハウジングは、ポータブル電子デバイスの電子構成要素に向かって面する内面と、電子構成要素から離れる方向に面する外面とを有する。いくつかの実施形態では、背面パネルは、ポータブル電子デバイスの背面ハウジングの内面に配置できる。一実施形態では、背面パネルは、ポータブル電子デバイスの背面ハウジングの凹部内に配置できる。いくつかの実施形態では、背面パネルは、ポータブル電子デバイスの背面ハウジングの外面に配置できる。一実施形態では、背面パネルは、ポータブル電子デバイスの背面ハウジングに接着剤で接着され得る。接着剤は、前述した接着剤層と同じポリマー材料であり得る。
【0045】
本開示は、ハウジングの背面パネルを含むポータブル電子デバイスも対象とする。ハウジングの背面パネルは、前述したものと同様である。ポータブル電子デバイスは、スマートフォン、携帯情報端末、カメラ、オーディオプレーヤ、オーディオ録音デバイス、医療機器、電子ツール、ラジオ、および照明デバイス、小火器、ゲームコンソール、キーフォブ、およびそれらの組み合わせ、からなる群から選択される。一実施形態では、ポータブル電子デバイスはスマートフォンである。本開示の背面パネルを有するスマートフォンは、ユーザがスマートフォンを保持しているときに、改善された性能およびより良好な温度感覚を経験できるように、スマートフォンの背後にあるホットスポット、例えばGPUおよびCPUから発生する熱を急速に散逸させることができる。AnTuTu Appを使用して、スマートフォンにおけるGPUおよびCPUの熱性能を間接的に測定することができる。AnTuTu Appは、スマートフォンおよびタブレット用のベンチマーキングツールであり、ユーザがスマートフォンおよびタブレットの性能を検査できるようにするものである。いくつかの実施形態では、AnTuTu Appを使用して、本開示の背面パネルを含むスマートフォンを、背面パネルのないスマートフォンと比較すると、性能スコアを少なくとも6%増加させることができる。加えて、本開示の背面パネルは電気絶縁性であり、したがって、スマートフォンの背後からの信号伝送に干渉することなく、無線充電のためにスマートフォンを使用することができる。さらには、本開示のスマートフォンは、落下などの外力の衝撃に対して、より良好な保護を有することができる。
【0046】
通常、ポータブル電子デバイスは、過酷な環境条件に曝される。例えば、ポータブル電子デバイスは、乱暴な取扱いおよび落下により損傷を受ける可能性がある。さらに、工業薬品、グリース、水、汚損、および汚れが、機能しているデバイスに損傷を与えまたは破壊し、デバイスの貴重なデータの使用を阻止する場合がある。輸送および使用のために、ポータブル電子デバイスを保護ケース内に保持することは一般的である。本開示は、ポータブル電子デバイス用の保護ケースも対象とする。ポータブルデバイスは、前述したものと同様である。いくつかの実施形態では、保護ケースはUHMWPEシートを含む。UHMWPEシートは、前述したものと同様である。いくつかの実施形態では、保護ケースは、多機能積層体を含む。多機能積層体は、前述したものと同様である。保護ケースは、ポータブル電子デバイスを収容し、少なくとも部分的に囲い込むように適合される。一実施形態では、保護ケースは、スマートフォンの背後を囲い込むために使用できる。スマートフォンの背後を囲い込むために使用する保護ケースは、熱散逸と、スマートフォンの落下による損傷とを改善できる。
【実施例】
【0047】
材料
ハードコート液体製剤-P2
製剤は、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(166.67重量部、Sigma-Aldrich)中に、Ebercryl(商標)8602(45重量部、Allnex)、Photomer(登録商標)4356(20重量部、IGM Resins)、Sartomer SR399(15重量部、Arkema)、Ebercryl(商標)LED 02(15重量部、Allnex)、Esacure KTO 46(5重量部、IGM Resins)を混合することによって調製した。得られた混合物を濾過し(孔径0.2μm、Whatman(商標))、次いでOPTOOL DAC-HP(1重量部、Daikin Industries,Ltd.)およびNANOBYK-3601(1重量部、BYK USA Inc.)を添加し、続いて濾過した(孔径1.0μm、Whatman(商標))。最終配合物の濃度範囲は、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(Sigma-Aldrich)、メチルイソブチルケトン(Sigma-Aldrich)、または2-ペンタノン(Sigma-Aldrich)のいずれかでさらに希釈することにより、固形分20~60重量%に調整した。
【0048】
UHMWPE層
DuPont de Nemours,Inc.,Wilmington,Delawareから市販されている、45W/mK(縦方向)、0.2W/mK(横方向)の熱伝導率、および0.2W/mKの面内熱伝導率を有する、60μmDuPont(商標)Temprion(商標)OHS Film。
【0049】
UHMWPEシート
UHMWPE層は、その熱伝導がより高い方向に対して配向角90°で積層され、したがって、機方向および横方向の両方において、約16W/mKの面内熱伝導率を有する。UHMWPEシートは120μmの厚さを有した。
【0050】
接着剤層
Sichuan EM Technology Co.Ltdから市販されている、10μmのポリアクリレート両面接着剤フィルムロール。
【0051】
ガラス層
Corning Incorporatedから市販されている、0.3mmガラス層、Eagle XG(0.3mm)。
【0052】
積層体の作製
実施例1
接着剤ロールを、ホルダーラック上に配置し、(C Sun,Taiwan,R.O.C.から市販されている)C-Sun M25Eラミネータを用いて、0.4MPaにて、速度1m/分且つ100℃で、0.3mmガラス層上に積層させて、第1の積層体を形成した。次いで、UHMWPEシートを、0.4MPaにて、1m/分且つ100℃で、第1の積層体の接着剤の面上に積層させて、多機能積層体を形成した。
【0053】
実施例2
接着剤ロールを、ホルダーラック上に配置し、(C Sun,Taiwan,R.O.C.から市販されている)C-Sun M25Eラミネータを用いて、0.4MPaにて、速度1m/分且つ100℃で、0.3mmガラス上に積層させて、第1の積層体を形成した。次いで、UHMWPEシートを、0.4MPaにて、1m/分且つ100℃で、第1の積層体の接着剤の面上に積層させて、第2の積層体を形成した。10.2gのP2と10.2gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)との混合物を、バーコータを用いて第2の積層体のUHMWPEシートの上部にコーティングし、オーブンで5分間にわたって90℃で乾燥させ、Heraeus Fusion H紫外線ランプで5秒間にわたって硬化させて、多機能積層体を形成した。ハードコーティングされた層は、硬化後に厚さが2~3μmであった。
【0054】
比較実施例1
UHMWPEシートが120μmの厚さを有するPETフィルムと置換されていることを除き、実施例1と同じ手順を用いて積層体を作製した。
【0055】
比較実施例2
UHMWPEシートが120μmの厚さを有するPETフィルムと置換されていることを除き、実施例2と同じ手順を用いて積層体を作製した。
【0056】
ボール落下試験
損傷からの積層体の耐衝撃性を評価するために、ボール落下試験を実施した。実施例1または比較実施例1から得られた積層体は、積層体のUHMWPEシートまたはPETフィルムをステンレス鋼スペーサに直接接触させて、厚さ180μmのステンレス鋼スペーサの上部に配置した。ステイン鋼スペーサを、ステンレス鋼テーブルに取り付けた。約20mmの直径を有する、32グラムのステンレス鋼ボールを、積層体の表面から測定した異なる高さから落下させて、積層体のガラス層を保護するための積層体の有効性を評価した。実施例1の積層体は、ボールを100cmの高さから落下させたときに、ガラス層の表面上に目に見えるクラックを示した一方で、比較実施例1は、ボールを26cmの高さから落下させたときに、ガラス層の表面上に目に見えるクラックを示した。
【0057】
ペン落下試験
損傷からの積層体の耐衝撃性を評価するために、ペン落下試験を実施した。実施例2または比較実施例2から得られた積層体は、積層体のハードコート層をステンレス鋼スペーサに直接接触させて、厚さ180μmのステイン鋼スペーサの上部に配置した。ステイン鋼スペーサを、ステンレス鋼テーブルに取り付けた。約0.5mmの直径を有する、11グラムのペンを、積層体の表面から測定した異なる高さから落下させて、積層体のガラス層を保護するための積層体の有効性を評価した。実施例2の積層体は、ペンを88cmの高さから落下させたときに、ガラス層の表面上に目に見えるクラックを示した一方で、比較実施例2は、ペンを28cmの高さから落下させたときに、ガラス層の表面上に目に見えるクラックを示した。