(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】抄紙機用無端状織りドライヤーファブリック
(51)【国際特許分類】
D21F 7/10 20060101AFI20241112BHJP
D03D 3/04 20060101ALI20241112BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
D21F7/10
D03D3/04
D03D1/00 C
(21)【出願番号】P 2023537200
(86)(22)【出願日】2021-12-01
(86)【国際出願番号】 US2021061328
(87)【国際公開番号】W WO2022132429
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-08-07
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】523222747
【氏名又は名称】ハイク リセンスコ インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【氏名又は名称】加藤 由加里
(72)【発明者】
【氏名】ポストル,フリードリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ハイデン,クラウス
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-194690(JP,A)
【文献】特表2000-514884(JP,A)
【文献】特表2010-540794(JP,A)
【文献】特開2007-138346(JP,A)
【文献】特開2008-297637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21F 7/10
D03D 3/04
D03D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抄紙機用ドライヤーファブリックであって、
複数の上部経糸、
複数の下部経糸、並びに、
一連の繰り返し単位で、前記複数の上部及び下部経糸と一緒に織り合わされた複数の緯糸を備えており、
ここで、夫々の緯糸は、上部及び下部を備えており、前記上部は、前記上部経糸と一緒に織り合わされており、且つ、前記下部は、前記下部経糸と一緒に織り合わされており、
夫々の緯糸の前記上部は、第1の接合用ループを備えており、並びに、夫々の緯糸の前記下部は、第2の接合用ループを備えており、
前記緯糸の前記第1及び第2の接合用ループは、互いにかみ合わされて接合部を形成し、ここで、該接合部は、前記ファブリックが無端状ループを形成するようにピントルを受ける、
前記ドライヤーファブリック。
【請求項2】
前記接合部に直接隣接する第1及び第2の領域には、前記第1及び第2の接合用ループと前記経糸との間に継ぎ合わせがない、請求項1に記載のドライヤーファブリック。
【請求項3】
前記第1及び第2の領域が、前記ファブリックの残りの部分の密度と比較して、10%以下でより大きい密度を有する、請求項2に記載のドライヤーファブリック。
【請求項4】
夫々の緯糸の前記上部が、夫々の上部経糸と一緒に織り合っている第1及び第2の上部を備えており、並びに、夫々の緯糸の前記下部が、夫々の下部経糸と一緒に織り合っている第1及び第2の下部を備えている、請求項1~3のいずれか一つに記載のドライヤーファブリック。
【請求項5】
前記緯糸が、PET糸を含む、請求項1~4のいずれか一つに記載のドライヤーファブリック。
【請求項6】
前記緯糸が、PPS糸を更に含む、請求項5に記載のドライヤーファブリック。
【請求項7】
抄紙機用ドライヤーファブリックであって、
複数の上部経糸、
複数の下部経糸、並びに、
一連の繰り返し単位で、前記複数の上部及び下部経糸と一緒に織り合わされた複数の緯糸を備えており、
ここで、夫々の緯糸は、上部及び下部を備えており、前記上部は、前記上部経糸と一緒に織り合わされており、且つ、前記下部は、前記下部経糸と一緒に織り合わされており、
夫々の緯糸の前記上部は、第1の接合用ループを備えており、並びに、夫々の緯糸の前記下部は、第2の接合用ループを備えており、
前記緯糸の前記第1及び第2の接合用ループは、互いにかみ合わされて接合部を形成し、ここで、該接合部は、前記ファブリックが無端状ループを形成するようにピントルを受ける、
前記接合部に直接隣接する第1及び第2の領域は、前記ファブリックの残りの部分の密度と比較して、10%以下でより大きい密度を有する、
前記ドライヤーファブリック。
【請求項8】
夫々の緯糸の前記上部が、夫々の経糸と一緒に織り合っている第1及び第2の上部を備えており、並びに、夫々の緯糸の前記下部が、夫々の下部経糸と一緒に織り合っている第1及び第2の下部を備えている、請求項7に記載のドライヤーファブリック。
【請求項9】
前記緯糸が、PET糸を含む、請求項7又は8に記載のドライヤーファブリック。
【請求項10】
前記緯糸が、PPS糸を更に含む、請求項9に記載のドライヤーファブリック。
【請求項11】
抄紙機用ドライヤーファブリックであって、
複数の上部経糸、
複数の下部経糸、並びに、
一連の繰り返し単位で、前記複数の上部及び下部経糸と一緒に織り合わされた複数の緯糸を備えており、
ここで、夫々の緯糸は、上部及び下部を備えており、前記上部は、前記上部経糸と一緒に織り合わされており、且つ、前記下部は、前記下部経糸と一緒に織り合わされており、
夫々の緯糸の前記上部は、第1の接合用ループを備えており、並びに、夫々の緯糸の前記下部は、第2の接合用ループを備えており、
前記緯糸の前記第1及び第2の接合用ループは、互いにかみ合わされて接合部を形成し、ここで、該接合部は、前記ファブリックが無端状ループを形成するようにピントルを受ける、並びに、
前記緯糸は、PET糸及びPPS糸を含む、
前記ドライヤーファブリック。
【請求項12】
前記接合部に直接隣接する第1及び第2の領域には、前記第1及び第2の接合用ループと前記経糸との間に継ぎ合わせがない、請求項11に記載のドライヤーファブリック。
【請求項13】
前記第1及び第2の領域が、前記ファブリックの残りの部分の密度と比較して、10%以下でより大きい密度を有する、請求項12に記載のドライヤーファブリック。
【請求項14】
夫々の緯糸の前記上部が、夫々の上部経糸と一緒に織り合っている第1及び第2の上部を備えており、並びに、夫々の緯糸の前記下部が、夫々の下部経糸と一緒に織り合っている第1及び第2の下部を備えている、請求項11~13のいずれか一つに記載のドライヤーファブリック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年12月16日に出願された米国仮特許出願第63/126,116号の優先権及び利益を主張し、その開示内容全体が参照されることにより本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、広く抄紙に関し、及び、より詳細には、抄紙において使用されるファブリック(fabric)に関する。
【背景技術】
【0003】
慣用の長網抄紙機抄紙プロセスにおいては、セルロース系繊維の水スラリー又は水懸濁液(ペーパー「ストック」として知られている)は、2本以上のロールの間を移動する、織られたワイヤ及び/又は合成材料の無端状ベルトの上側走行部の頂部に供給される。該ベルトは、しばしば「フォーミングファブリック(forming fabric)」と云われ、その上側走行部の上面に、ペーパーストックのセルロース系繊維を水性媒体から分離し、それにより、湿った紙膜を形成するフィルターとして機能する抄紙表面を提供する。水性媒体は、重力又は真空により、フォーミングファブリックの上側走行部の下面(即ち「機械側」)に位置する排水孔として知られている該フォーミングファブリックのメッシュ開口部を通って排水される。
【0004】
上記フォーミングセクションを出た後、上記紙膜は、抄紙機の圧縮セクションに移送され、ここで、該紙膜は、典型的には 「圧縮フェルト」と云われる別のファブリックで覆われた一対以上の圧力ロールの加圧部(nip)に通される。これらのロールからの圧力により、上記紙膜から更に水分が除去される。水分の除去は、圧縮フェルトの「バット」層の存在により強化される。その後、(ドライヤーファブリックを使用する)乾燥機セクションに移送され、更に水分が除去される。乾燥後、二次加工やパッケージングが可能な紙となる。
【0005】
本明細書で使用されるとき、語「機械方向」(「MD」:machine direction)及び「交差機械方向」(「CMD」:cross machine direction)は夫々、抄紙機上の抄紙用ファブリックの移動方向と一致する方向、及び、該ファブリック表面に平行であり、且つ、その移動方向に対して交差する方向を云う。同様に、該ファブリック内の糸の垂直方向の関係を示す方向表示(例えば、~より上方に、~より下方に、~の頂部に、~の底部に、~の直ぐ下に等)は、ファブリックの抄紙面がファブリックの頂部であり、且つ、ファブリックの機械側の面がファブリックの底部であるとしている。
【0006】
典型的には、製紙業者のファブリックは、二つの基本的な織り技法のうちの一つにより無端状ベルトとして製造される。本明細書において使用される場合に、語「無端状ベルト」は、いずれかの技法により製造されたベルトを云う。これらのうちの第1の技法においては、ファブリックは、平織りプロセスにより平織りされ、これらの端部は、端部を解体して一緒に編み直す(一般には、継ぎ合わせ(splicing)として知られている)、又は、夫々の端部にピン接合可能なフラップ若しくは特殊な折り返しを縫い付け、次に、これらをピン接合可能なループに再び織るなどの多数の周知の接合方法のいずれか一つによって無端状ベルトを形成するよう接合される。第2の基本的な織り技法においては、ファブリックが、無端状織りプロセスにより、直接、連続したベルトの形態にて織られる。
【0007】
無端状織用の織機は、平織り用の織機とは大きく異なる。平織りでは、材料(モノフィラメントスプール)は、織機の両側に配置される。シャトルでモノフィラメントを一端から他端へと引っ張る。無端状織りでは、緯糸材はシャトルに入れられ、且つ、シャトルスプールから織られる。シャトルスプールが空になるとき、新しいシャトルスプールの糸が、前の糸に溶着される。しかし、無端状織りプロセスで起こりうる織りの複雑さは、織機のエッジでのファブリックの形成及び品質のために制限される。
【0008】
標準的なドライヤーファブリック(dryer fabric)は平織されており、且つ、該ファブリックを無端状にするためにはヒートセットの後に接合プロセスを必要とする。より容易に製造することができるドライヤーファブリックを提供することが望まれうる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の形態として、本発明の実施態様は、抄紙機用ドライヤーファブリックに向けられる。該ドライヤーファブリックは、複数の上部経糸、複数の下部経糸、並びに、一連の繰り返し単位で、上記複数の上部及び下部経糸と一緒に織り合わされた複数の緯糸を備えている。夫々の緯糸は、上部及び下部を備えており、上部は、上部縦糸と一緒に織り合わされており、且つ、下部は下部経糸と一緒に織り合わされる。夫々の緯糸の上部は、第1の接合用ループ(seam loop)を備えており、並びに、夫々の緯糸の下部は、第2の接合用ループを備えている。緯糸の第1及び第2の接合用ループは、互いにかみ合わされて(interdigitated)接合部(seam)を形成し、ここで、該接合部は、該ファブリックが無端状ループを形成するようにピントル(pintle)を受ける。
【0010】
第2の形態として、本発明の実施態様は、複数の上部経糸、複数の下部経糸、並びに、一連の繰り返し単位で、複数の上部及び下部経糸と一緒に織り合わされた複数の緯糸を備えている、抄紙機用ドライヤーファブリックに向けられる。夫々の緯糸は、上部及び下部を備えており、上部は、上部経糸と一緒に織り合わされており、且つ、下部は、下部経糸と一緒に織り合わされる。夫々の緯糸の上部は、第1の接合用ループを備えており、並びに、夫々の緯糸の下部は、第2の接合用ループを備えている。緯糸の第1及び第2の接合用ループは、互いにかみ合わされて接合部を形成し、ここで、該接合部は、ファブリックが無端状ループを形成するようにピントルを受ける。該接合部に直接隣接する第1及び第2の領域は、ファブリックの残りの部分の密度と比較して、10%以下でより大きい密度を有する。
【0011】
第3の形態として、本発明の実施態様は、複数の上部経糸、複数の下部経糸、並びに、一連の繰り返し単位で、複数の上部及び下部経糸と一緒に織り合わされた複数の緯糸を備えている、抄紙機用ドライヤーファブリックに向けられる。夫々の緯糸は、上部及び下部を備えており、該上部は、上部経糸と一緒に織り合わされており、且つ、該下部は、下部経糸と一緒に織り合わされる。夫々の緯糸の上部は、第1の接合用ループを備えており、並びに、夫々の緯糸の下部は、第2の接合用ループを備えている。緯糸の第1及び第2の接合用ループは、互いにかみ合わされて接合部を形成し、該接合部は、ファブリックが無端状ループを形成するようにピントルを受ける。緯糸は、PET糸及びPPS糸を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施態様に従う無端状織りドライヤーファブリックの概略断面図である。
【
図2】
図2は、
図1のドライヤーファブリックの一部分の平面図である。
【
図3】
図3は、接合部に隣接する継ぎ合わせ(splice)位置を示す、先行技術のドライヤーファブリックの一部分の平面図である。
【
図4】
図4は、先行技術のファブリックの継ぎ合わされた緯糸の拡大概略断面図である。
【
図5】
図5は、
図1及び
図2のドライヤーファブリックと
図3の慣用のドライヤーファブリックとを位置の関数として空気透過性をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここでは、本発明の実施態様が示されている添付図面を参照して、以下において本発明がより完全に説明される。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具現化されてもよく、且つ、本明細書に記載された実施態様に限定して解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施態様は、この開示が徹底的且つ完全であり、且つ、当業者に本発明の範囲を十分に伝達するように提供される。
【0014】
次に、本発明の例示的な実施態様が示されている添付図面を参照して、以下において、本発明がより完全に開示される。
【0015】
本明細書において使用されるとき、語「機械方向」(「MD」)及び「交差機械方向」(「CMD」)は、夫々、抄紙機上のフォーミングファブリックの移動方向と一致する方向、及び、該ファブリック表面に平行であり、且つ、その移動方向に対して交差する方向を云う。同様に、該ファブリック内の糸の垂直方向の関係を示す方向表示(例えば、~より上方に、~より下方に、~の頂部に、~の底部に、~の直下に等)は、ファブリックの抄紙面がファブリックの頂部であり、且つ、ファブリックの機械側の面がファブリックの底部であるとしている。
【0016】
別段に定めない限り、本明細書において使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を包含する)は、本発明が属する技術分野における通常の技術者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有する。一般的に使用されている辞書において定義されているような用語は、関連する技術の文脈におけるその意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、且つ、本明細書において明確にそのように定義されていない限り、理想化された又は過度に形式的な意味に解釈されないことが更に理解されるであろう。
【0017】
本明細書において使用される述語は、特定の実施態様を説明する目的のみのためにあり、且つ、本発明を限定することを意図していない。本明細書において使用されるとき、単数形「一つの」(a)、「一つの」(an)及び「該」(the)は、文脈から明らかにそうでないことが示されない限り、複数形も含むことを意図している。本明細書において使用される場合に、語「含む、備えている(comprise)」及び/又は「含む、備えている(comprising)」は、述べられた特徴、完全体、工程、操作、要素及び/又は成分の存在を特定するが、一つ以上の他の特徴、完全体、工程、操作、要素、成分及び/又はそれらの群の存在又は追加を排除しないことが更に理解されるであろう。本明細書において使用されるとき、表現「及び/又は」は、関連して挙げられた項目の一つ以上の任意及び全ての組み合わせを含む。
【0018】
加えて、空間的関係を示す語、例えば、「~の下に」、「~より下方に」、「~よりも低い」、「~の上に」、「~より上方に」、「~の頂部に」、「~の中間に」、「~の底部に」等、は、本明細書においては、図に示されているように、一つの要素又は特徴と他の一つ以上の要素又は特徴との関係を記述するための説明を容易にするために使用されうる。空間的関係を示す語は、図に描かれた方向に加えて、使用又は操作における装置の異なる方向を包含することを意図していることが理解されるであろう。例えば、図において装置をひっくり返すなら、他の要素又は特徴の「下に」又は「直ぐ下に」と記述された要素は、他の要素又は特徴の「上に」に方向を変えるであろう。よって、具体例として挙げた語「~の下に」は、~の上に及び~の下に、の両方の方向を包含しうる。該装置は、他の状態(90度回転された方向又は他の方向)に方向づけられていてもよく、且つ、本明細書において使用される空間的関係を示す記述子は、それに応じて解釈される。
【0019】
周知の機能又は構造は、簡潔及び/又は明瞭のために詳細に説明されないことがある。
【0020】
ドライヤーファブリックの無端状織りは、平織りファブリックに比べて多くの利点を提供することができると考えられている。平織りファブリックのために必要な接合工程を省くことで、これらの利点のいくつかを提供することができる。以下に、この概念を説明する。
【0021】
図1は、ドライヤーファブリック10の製織プロセスの概略端面図を示す。ドライヤーファブリック10は、複数の上部経糸12及び下部経糸13(
図1においては、
図1のそのページに対して垂直に伸びる円として示されている)と、複数の緯糸14(
図1においては、そのうちの一つが示されている)とを含む。上部並びに経糸12及び経糸13並びに緯糸14は、あるパターンの繰り返し単位における織物として示されている。該繰り返し単位において、四本の上部経糸12が、緯糸14の上部14a及び上部14bと順番に織り合っており、ここで、夫々の上部経糸12は、二本の対をなす緯糸14の上部14aの上を通過し、次に、次の二本の対をなす緯糸14の上部14aと上部14bとの間を通過し、次に、次の対をなす緯糸14の上部14bの下を通過し、次に、次の対をなす緯糸14の上部14aと上部14bとの間を通過し、その後、次の対をなす緯糸14と上記順番を再開する。隣接する上部経糸12は、一対の緯糸14によって互いにオフセット(offset)されている。
【0022】
同様に、下部経糸13は、緯糸14の下部14c及び下部14dと順番に織り合っており、ここで、夫々の下部経糸13は、二本の対をなす緯糸14の下部14cの上を通過し、次に、次の二本の対をなす緯糸14の下部14cと下部14dとの間を通過し、次に、次の対をなす緯糸14の下部14dの下を通過し、次に、次の対をなす緯糸14の下部14cと下部14dとの間を通過し、その後、次の対をなす緯糸14と上記順番を再開する。隣接する下部経糸13は、一対の緯糸14によって互いにオフセットされている。
【0023】
単一の緯糸14が、上部14a及び上部14b並びに下部14c及び下部14dの全てを構成していることは、
図1においてまた理解されうる。より詳細には、
図1の右側を出発点として、緯糸14が左へと道筋を定められて上部14aが形成され、該緯糸は右へと返されて上部14bが形成され、緯糸14は左に戻されて下部14cが形成され、そして、緯糸14が右に戻されて下部14dが形成される。
【0024】
重要なことは、夫々の緯糸14が、上部14aと上部14bとの間を移行するとき、緯糸14が、ピントル18の周囲及び下に接合用ループ16aを形成することである。同様に、夫々の緯糸14が、下部14cと下部14dとの間を移行するとき、緯糸14が、ピントル18の周囲及び上に接合用ループ16bを形成することである。これらが形成されるとき、接合用ループ16a,16bは互いにかみ合わされる。結果として、製織が完了するとき、ピントル18によって、(接合用ループ16a,16bにより規定される)その両端で一緒に保持される無端状ファブリック10が得られる。ファブリック10は、ピントル18を取り外し、そして、互いにかみ合わされた接合用ループ16a,16bにおいて、経糸12の寸法により接近しているより小さなピントル20で置き換えられて(
図2において下に示される)、それにより結果として結合部22が形成されることにより、抄紙機のドライヤー工程に設置されうる。
【0025】
図2に示されているようなファブリック10は、
図3に示されている(無端状に織られているのではなく、平織りであった)類似のファブリック110と有利に比較されうる。
図2において、接合用ループ16a,16bに隣接する領域30は、実質的に均一であり、それ故に、接合部22自体を除くファブリック10の残りの部分と一致する。これに対し、平織りファブリック110は、接合部122に隣接するその領域130において、多数の継ぎ合わせ132を有する。これらの継ぎ合わせ132は、平織りプロセスにより必然的に作られる。
図4に示されているように、夫々の継ぎ合わせ132は、開放端を有し、且つ、緯糸114の端部に隣接して配置されている。このような配置では、継ぎ合わせ132を結合する又は固定するものが適所にない故に、全体の結合部の強度が結果としてより弱くなってしまう。
【0026】
更に、継ぎ合わせ132が緯糸114と隣り合う位置は、ファブリック110の残りの部分よりも糸密度が低い。このような密度が低下した位置は、
図3に見られる。
図5は、ファブリック10,110の長さ方向の空気透過性をプロットしたグラフを示す。夫々のプロットの最も高いピーク(横軸の「0」近傍)は、接合部22,122自体を表している。(ファブリック10,110の領域30,130を表す)接合部22,122に隣接する領域は、著しく異なり、ファブリック10のこれらの領域30はファブリック10の残りの部分に似ているが、ファブリック110の領域130は、継ぎ合わせ端部により生じた孔の寸法の増加によりファブリック110の残りの部分より低い密度(そして従ってより高い空気透過性)を有することが分かりうる。ファブリック10の均一性が増加することにより、ファブリック全体の性能を改善できる。具体的な例として、接合部に隣接する領域(例えば、接合部から約2cm)は、ファブリックの残りの部分と比較して、約10%以下の増加した密度を有することができる。
【0027】
上で議論した性能上の利点に加えて、無端状織りファブリックの使用はまた、一般的には時間と労力を要する接合/継ぎ合わせプロセスを排除するという利点をもたらし、そしてそれ故に、比較するとファブリック110には経費がかさむ。
【0028】
他の潜在的な利点として、ファブリック10は、織機の仕様に合わせてほぼ織られることができる。一方、平織りのドライヤーファブリックは、典型的には(ストック生地のような)大きな片で織られ、且つ、ヒートセットされる。ヒートセットした後、個々の片が、ストック生地から裁断される。このようなやり方では、追加の顧客のファブリックのためには小さ過ぎて使えない端切れが必ず発生する。ドライヤーファブリックのストック生地製造に伴う廃棄率は、通常30~40%程度である。
【0029】
更に、必要なら、多数の無端状織りファブリックを織り、そして、端と端を接合して、2つ、3つ以上の個々の無端状織りファブリックの組み合わせである無端状ファブリックを形成することができる。これは、多数の平織りファブリックの使用を要求される製品に比べれば、製造するためにはるかに簡単な製品である。
【0030】
最後に、無端状織りファブリックは、多数の糸の種類を含むことができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)糸が主体であるが、剛性のために端部近傍にポリフェニレンサルファイド(PPS)糸を含むファブリックを構成することができる。このような糸の種類の融通性は、ドライヤーファブリックが切り出される大量のストック生地を製造することによっては得られない。
【0031】
この技術分野の当業者であれば、本発明の実施態様に従うドライヤーファブリックが他の形態を取りうることを理解するであろう。例えば、説明したものとは異なる織りパターンを採用することができる。同様に、説明したものとは異なる糸の種類を採用することもできる。他の変形例は、この技術分野の当業者には明らかでありうる。
【0032】
経糸は、PETで形成されていてもよく、及び/又は、直径約0.50~1.0mmの範囲内であってもよい。緯糸は、PETで形成されていてもよく、及び/又は、直径0.30~0.70mmの範囲であってもよい。該ファブリックのメッシュは、約25~60ppi(緯糸)×15~30ppi(経糸)であってもよい。
【0033】
具体的な例として、上記のファブリック10は、下記の表1に示した特性を有しうる。
【表1】
【0034】
上記説明は、本発明の例示であり、且つ、本発明を限定するものとして解釈してはならない。本発明の例示的な実施態様について説明したが、当業者であれば、本発明の新規な教示及び利点から実質的に逸脱すること無しに、該例示的な実施態様において多くの改変が可能であることを容易に理解するであろう。従って、このような改変は全て、特許請求の範囲に定義された本発明の範囲に含まれることが意図される。本発明は、続く特許請求の範囲、及び、その中に含まれる特許請求の範囲の均等物により定義される。