IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツングの特許一覧

特許7587054カルマンフィルタを用いて少なくとも1つのシステム状態を求めるための方法
<>
  • 特許-カルマンフィルタを用いて少なくとも1つのシステム状態を求めるための方法 図1
  • 特許-カルマンフィルタを用いて少なくとも1つのシステム状態を求めるための方法 図2
  • 特許-カルマンフィルタを用いて少なくとも1つのシステム状態を求めるための方法 図3
  • 特許-カルマンフィルタを用いて少なくとも1つのシステム状態を求めるための方法 図4
  • 特許-カルマンフィルタを用いて少なくとも1つのシステム状態を求めるための方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】カルマンフィルタを用いて少なくとも1つのシステム状態を求めるための方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/02 20100101AFI20241112BHJP
【FI】
G01S5/02 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023551184
(86)(22)【出願日】2022-01-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(86)【国際出願番号】 EP2022051562
(87)【国際公開番号】W WO2022179784
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-08-23
(31)【優先権主張番号】102021104433.2
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー ディゲル
(72)【発明者】
【氏名】ジーモン ヴァイセンマイヤー
【審査官】東 治企
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-169640(JP,A)
【文献】特開2009-031096(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0128138(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0312156(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104880707(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00-7/64
G01S 13/00-17/95
G05B 13/00-13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルマンフィルタアセンブリを用いて少なくとも1つのシステム状態を求めるための方法であって、前記カルマンフィルタアセンブリには、システムの少なくとも1つのセンサによって測定された少なくとも1つの測定値が供給され、
前記方法は、少なくとも以下のステップ:
a)前記カルマンフィルタアセンブリの第1のカルマンフィルタを用いて前記システム状態の第1の推定を実施するステップであって、第1の推定結果と、該第1の推定結果の信頼性に関する少なくとも1つの所属の第1の情報とが出力されるステップと、
b)前記カルマンフィルタアセンブリの第2のカルマンフィルタを用いてシステム状態の第2の推定を実施するステップであって、第2の推定結果と、該第2の推定結果の信頼性に関する少なくとも1つの所属の第2の情報とが出力され、前記第2のカルマンフィルタは、少なくとも1つの設定パラメータにおいて、前記第1のカルマンフィルタとは異なるステップと、
c)前記第1の推定結果と前記第2の推定結果とを、システム状態についての全体的な推定結果に融合し、ならびに前記第1の推定結果の信頼性に関する前記第1の情報と、前記第2の推定結果の信頼性に関する前記第2の情報とを、前記全体的な推定結果の信頼性に関する全体的な情報に融合するステップとを含
前記全体的な推定結果の信頼性に関する前記全体的な情報は、前記第1の推定結果と前記第2の推定結果との間の不一致についての尺度を用いて修正される、方法。
【請求項2】
前記第1のカルマンフィルタと前記第2のカルマンフィルタとに同じ測定値が供給される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ステップc)において、前記第1の推定結果は、前記第1の推定結果の信頼性に関する前記第1の情報で重み付けされ、前記第2の推定結果は、前記第2の推定結果の信頼性に関する前記第2の情報で重み付けされる、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記第2のカルマンフィルタは、測定ノイズの共分散行列の少なくとも1つの設定パラメータにおいて、前記第1のカルマンフィルタとは異なる、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記第2のカルマンフィルタは、プロセスノイズの共分散行列の少なくとも1つの設定パラメータにおいて、前記第1のカルマンフィルタとは異なる、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
少なくとも、前記第1の推定結果の信頼性に関する前記第1の情報または前記第2の推定結果の信頼性に関する前記第2の情報は、該当する推定に所属する少なくとも1つのモデル値と、該当する推定に所属する少なくとも1つの測定値との間の不一致を使用して修正される、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
コンピュータプログラムであって、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法を実施するためのコンピュータプログラム。
【請求項8】
機械可読記憶媒体であって、請求項記載のコンピュータプログラムが記憶されている、機械可読記憶媒体。
【請求項9】
移動対象物(2)の位置を求めるためのシステム(1)であって、前記システム(1)は、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法を実施するように構成されている、システム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルマンフィルタを用いて少なくとも1つのシステム状態を求めるための方法、該方法を実施するためのコンピュータプログラム、コンピュータプログラムが記憶されている機械可読記憶媒体、ならびに本方法を実施するように構成された移動対象物、特に車両などの位置を求めるためのシステムに関する。本発明は、特に、少なくとも部分的に自動化されたもしくは自律した運転に関連して適用可能である。
【0002】
従来技術
カルマンフィルタは、通常、誤差の含まれる観測に基づいたシステム状態の反復推定に用いられる。これに関連して、カルマンフィルタは、特に、様々なセンサからのセンサ情報を特にモデル情報と統合(もしくは融合)しなければならない用途に特に好適であることが証明されている。その上さらに、カルマンフィルタは、頻繁に、埋め込みシステムに使用される。なぜなら、その計算が好適には正確でかつ堅固であるからである。その他に、マイクロコントローラーは、カルマンフィルタの計算を好適には効率的に実行することができる。
【0003】
カルマンフィルタ方程式は、以下のように行列表記で記述することができる:
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
【0004】
特に、各測定変数に対して同じスケーリングを有する対応するモデル変数が存在する場合、および/または逆に、各モデル変数に対して同じスケーリングを有する対応する測定変数が存在する場合は、式中符号K,Σ’,Σ,Σ,μ’,μ,μを用いた明示的な方程式を使用することができる。そうでない場合は、例えば、式中符号H,K’,P,R,
【数6】
、zを用いた方程式GL3~GL5を使用することができる。数値計算について、これらの方程式は、予め明示的な形式にもたらすことができ、このことは特に、方程式の両辺におけるHもしくはHの除算によって行うことができる。
【0005】
方程式GL1およびGL2は、カルマンフィルタの反復推定過程を記述し、方程式GL3~GL5は、反復推定されたモデル値とセンサ的に捕捉された測定値との補正もしくは融合を記述する。より詳細な説明に対しては、図1に関連するカルマンフィルタの典型的な構造の説明を参照されたい。
【0006】
ただし、カルマンフィルタは比較的複雑であり、記述すべきそれぞれのシステム特性のために選択および/または設定されなければならない多数の設定手段(特に、システム行列F、測定ノイズの分散行列R、およびシステムノイズの分散行列Q)が存在する。これは、新しい用途へのカルマンフィルタの利用および/または既存の用途の保守を困難にする。
【0007】
一部では、非線形の動的プロセスをモデル化できるようにするために、いわゆる拡張型カルマンフィルタが使用され、かつ/または実行期間中に付加的フィルタを用いて多数の設定手段、特に測定およびシステムノイズのための行列RおよびQの値を自動的に適合化できるようにするために、いわゆる適合型カルマンフィルタ(もしくはROSEフィルタ)が使用される。ただし、ここでの比較的大きな労力は、付加的フィルタを設計もしくは構成することにあり、この場合、自身の付加的フィルタとともにROSEフィルタを構成することにはさらなる困難が伴う。
【0008】
さらに、アンサンブルカルマンフィルタのようなカルマンフィルタの実装が公知である。このアンサンブルでは、通常、状態ベクトルおよび状態ベクトルに所属の共分散行列の代わりに、可能性のある状態ベクトルの行列が使用され、測定ベクトルおよび測定ベクトルに所属の共分散行列の代わりに、可能性のある測定ベクトルの行列が使用される。アンサンブル要素の状態
【数7】
の予測は、標準カルマンフィルタの場合のように遷移行列Fを用いて形成されるが、ただし、その分布がN(0,Q)に従った正規分布に対応するノイズベクトルwi,kを加算する点が異なっており、ここでは、全てのアンサンブル要素について同じプロセスノイズQが選択される。同様に、アンサンブル要素の測定ベクトル
【数8】
の形成についても、その分布が正規分布N(0,R)に対応するノイズベクトルvi,kが加算され、ここでは、全てのアンサンブル要素について測定ノイズの同じ共分散行列Rが使用される。
【0009】
発明の開示
請求項1に従って本明細書で提案されるのは、カルマンフィルタアセンブリを用いて少なくとも1つのシステム状態を求めるための方法であって、カルマンフィルタアセンブリには、システムの少なくとも1つのセンサによって測定された少なくとも1つの測定値が供給され、該方法は、少なくとも以下のステップ:
a)カルマンフィルタアセンブリの第1のカルマンフィルタを用いてシステム状態の第1の推定を実施するステップであって、ここで、第1の推定結果と、該第1の推定結果の信頼性に関する少なくとも1つの所属の第1の情報とが出力されるステップと、
b)カルマンフィルタアセンブリの第2のカルマンフィルタを用いてシステム状態の第2の推定を実施するステップであって、ここで、第2の推定結果と、該第2の推定結果の信頼性に関する少なくとも1つの所属の第2の情報とが出力され、ここで、第2のカルマンフィルタは、少なくとも1つの設定パラメータにおいて、第1のカルマンフィルタとは異なるステップと、
c)第1の推定結果と第2の推定結果とを、システム状態についての全体的な推定結果に融合し、ならびに第1の推定結果の信頼性に関する第1の情報と、第2の推定結果の信頼性に関する第2の情報とを、全体的な推定結果の信頼性に関する全体的な情報に融合するステップとを含む方法である。
【0010】
ステップa)、b)およびc)の呈示されている順序は、例示的なものであり、そのように呈示された順序で、例えば、正規の動作シーケンスにおいて本方法を実施するために少なくとも1回実施することができる。代替的または付加的に、ステップa)、b)およびc)、特にステップa)およびb)は、少なくとも部分的に並行して、または同時に実施することができる。本方法は、例えば、(マイクロ)コントローラーなどの制御機器によって実施することができ、この制御機器は、例えば本明細書にも記載されているシステムの構成要素であってよい。
【0011】
本方法によれば、場合によっては、モデルエラーおよび/または測定エラーに対する予想エラーの割り当てが未知な場合であっても、モデル形成および/または構成におけるエラーまたは大きな不正確さ、および/または支障のある測定値に起因する観測中の基準状況からの偏差を識別もしくは(自動的に)修正できるようにすることが好適に実現可能となる。このことは、特に、カルマンフィルタアセンブリにおいて、様々に設定されたカルマンフィルタが最初に測定値、特に同じ測定値を用いて相互に独立して推定を実施し、これらの推定結果が引き続き全体的な推定結果に融合されることによって達成される。このことは、設定固有の誤差源、すなわちカルマンフィルタの設定に理由のあるエラーが、特に、アセンブリの設定された少なくとも1つのさらなる別のカルマンフィルタによって、可及的に補償され得ることに有利に寄与する。
【0012】
本システムは、例えば車両(自動車)など、対象物の位置を求めるためのシステムであり得る。このシステムは、少なくとも部分的に、例えば車両などの対象物の内部または上部に配置されていてよい。この車両は、例えば、相応に構成された制御機器を用いて、好適には少なくとも部分的に自動化された運転モードおよび/または自律的な運転モードのために構成されていてもよい。この制御機器は、システムからの位置データを受け取るためにシステムに接続されていてよい。このシステムは、複数の、特に、様々なセンサもしくは多様なセンサを含むか、または車両のセンサに接続されていてよい。これらのセンサは、例えば、少なくとも1つのGNSSセンサと、例えばカメラセンサ、LIDARセンサ、RADARセンサ、超音波センサなどの1つの(光学式または音響式の)周辺環境センサを含むことができる。これらのセンサの測定値は、本明細書に記載された方法もしくはカルマンフィルタアセンブリを用いて融合することができる。
【0013】
本方法は、特に、カルマンフィルタアセンブリを用いてかつセンサデータに依存してシステム状態を(連続的に)求めることに寄与している。これらのカルマンフィルタアセンブリには、これらの測定値を考慮に入れて推定を実施するために、本システムの複数の様々なセンサもしくは多様なセンサからの測定値が供給され得る。少なくとも1つのシステム状態は、例えば、移動する、特に、例えば(自動車)車両(Automobils)、船、飛行機、スマートフォン、またはスマートウォッチなど、地表に沿って移動可能な対象物もしくは移動部品の(瞬時の)(自車)位置を含むことができる。さらに、少なくとも1つのシステム状態は、対象物の(瞬時の)速度、(瞬時の)移動方向、および/または(瞬時の)加速度を含むことができる。記載された方法の使用は、例えば、車両の位置決定、対象物識別、および/または走行動特性制御など、任意のセンサデータ融合タスクにとって基本的に有利である。その上さらに、記載された本方法は、例えば、センサ信号に対する測定ノイズやその他の障害的な影響を低減すべくセンサの伝送特性のモデル化のために使用可能であってもよい。
【0014】
カルマンフィルタアセンブリは、相互に独立して動作できる複数の(それぞれが自己完結式に動作する)カルマンフィルタを含むことができる。この場合、これらのカルマンフィルタは、相互に独立して動作することができるが、好適には、同じ測定値で動作し得る。特に、このカルマンフィルタアセンブリは、少なくとも部分的に相互に並行して、または同時に動作することができる。このことは、換言すれば、特に、アセンブリ内のカルマンフィルタが相互に並列に配置もしくは接続されているように記載することもできる。
【0015】
カルマンフィルタアセンブリの個々のカルマンフィルタの方程式は、方程式(1)~(5)と同様に、以下に示すように呈示することができる。この場合、インデックスiは、それぞれのカルマンフィルタの番号を表す。
【数9】
【数10】
【数11】
【数12】
【数13】
【0016】
ステップa)では、カルマンフィルタアセンブリの第1のカルマンフィルタ(インデックス:i=1)を用いてシステム状態の第1の推定を実施するステップが行われ、ここで、第1の推定結果(式中符号:
【数14】
)と、第1の推定結果の信頼性に関する少なくとも1つの所属の第1の情報(式中符号:
【数15】
)とが出力される。ステップb)では、カルマンフィルタアセンブリの第2のカルマンフィルタ(インデックス:i=2)を用いてシステム状態の第2の推定を実施するステップが行われ、ここで、第2の推定結果(式中符号:
【数16】
)と、第2の推定結果の信頼性に関する少なくとも1つの所属の第2の情報(式中符号:
【数17】
)とが出力される。基本的には、3つ以上のカルマンフィルタを設けてもよいし、あるいはカルマンフィルタアセンブリに所属させることもできる。第1の推定および第2の推定は、通常、同じ時間ステップ(インデックス:k)で実施される。
【0017】
この場合、第2のカルマンフィルタは、少なくとも1つの設定パラメータにおいて、第1のカルマンフィルタとは異なる。3つ以上のカルマンフィルタが設けられている場合、それに応じて例えばさらなるカルマンフィルタの各々は、少なくとも1つの設定パラメータにおいて、他のカルマンフィルタとは異なり得る。設定パラメータとして、特に、冒頭で述べた設定手段のうちの個々のパラメータまたは複数のパラメータ(特に、システム行列F、測定ノイズの分散行列R、およびシステムノイズの分散行列Q)が考慮される。これらの設定パラメータは、例えば、カルマンフィルタの分散行列もしくは共分散行列のエントリーに該当し得る。さらに、設定パラメータが、対応する行列のスケーリングのための係数に該当し、そのようにして分散行列もしくは共分散行列に作用するか、もしくは該当するカルマンフィルタの設定に寄与することも考えられる。
【0018】
特に、ステップa)およびb)では、少なくとも第1のカルマンフィルタおよび第2のカルマンフィルタを含む複数の相互に独立したカルマンフィルタを、特に、同じ時間ステップ内で複数の個別の共分散行列(式中符号:Pi,k)と並行して、ただし、エラーの可能性があるセンサ変数および/またはモデル変数についての異なる仮定、特にプロセスノイズ(式中符号:Qi,k)についての個別の仮定、および/または測定ノイズの共分散行列(式中符号:Ri,k)についての個別の仮定とともに計算することができる。それらの独立した状態ベクトル(式中符号:
【数18】
)および共分散行列(式中符号:
【数19】
)は、出力前もしくはステップc)において相互に融合される。
【0019】
例えば、カルマンフィルタアセンブリの複数のカルマンフィルタまたは全てのカルマンフィルタについて、以下の変数:
-i:カルマンフィルタのインデックス、
-j:カルマンフィルタの数、
-F:例えば運動方程式を用いてシステム状態を時点tk-1から時点tまで伝播する遷移行列、
-H:システム状態のn個の値をm個の観測値にマッピングする観測行列、および/または

【数20】
:時点tkで存在する新たな観測値、
のうちの1つまたは複数が同じであってよい(そのように選択されてよい)。
【0020】
好適には、(第2のカルマンフィルタの)以下の変数:

【数21】
:新たな観測値
【数22】
の適用前の、先行する時点tk-1の状態から導出された時点tでのシステム状態、

【数23】
:新たな観測値
【数24】
(a-posteriori)の適用後のシステム状態、
-Pi,k:新たな観測値
【数25】
(a-priori)の適用前の
【数26】
のエラーの共分散行列、

【数27】
:新たな観測値
【数28】
(a-posteriori)の適用後の
【数29】
のエラーの共分散行列、
-Ri,k:測定ノイズの共分散行列、および/または
-Qi,k:共分散行列
【数30】
が、長期的にシステム状態
【数31】
のエラーに対して適正な関係にあるように作用し得るプロセスノイズもしくはプロセスノイズの共分散行列、
のうちの少なくとも1つまたは複数は、別のカルマンフィルタ(特に第1のカルマンフィルタ)の変数とは異なる。
【0021】
ステップc)では、第1の推定結果(式中符号:
【数32】
)と、第2の推定結果(式中符号:
【数33】
)とを、システム状態についての全体的な推定結果(式中符号:
【数34】
)に融合し、ならびに第1の推定結果の信頼性に関する第1の情報(式中符号:
【数35】
)と、第2の推定結果の信頼性に関する第2の情報(式中符号:
【数36】
)とを、全体的な推定結果の信頼性に関する全体的な情報(式中符号:
【数37】
)に融合するステップが行われる。
【0022】
好適な実施形態によれば、第1のカルマンフィルタと第2のカルマンフィルタとに同じ測定値が供給されることが提案される。例えば、第1のカルマンフィルタおよび第2のカルマンフィルタは、同じセンサ出力側に接続された測定値エントリーを有することができる。このことは、換言すれば、特に、第1のカルマンフィルタおよび第2のカルマンフィルタについて、(新たな)観測値(測定値ベクトル:
【数38】
)が同じであるか、もしくは(それぞれ該当する時間ステップにおいて)同じものであるというように説明することも可能である。
【0023】
さらなる好適な実施形態によれば、ステップc)において、第1の推定結果は、第1の推定結果の信頼性に関する第1の情報で重み付けされ、第2の推定結果は、第2の推定結果の信頼性に関する第2の情報で重み付けされることが提案される。特に、それぞれの推定結果(式中符号:
【数39】
)は、所属の共分散行列(式中符号:
【数40】
)で重み付けすることができる。
【0024】
例えば、共分散行列
【数41】
で重み付けされたシステム状態の平均値
【数42】
は、以下の式:
【数43】
のように全てのj個のカルマンフィルタから計算することができる。
【0025】
この場合、融合された共分散行列
【数44】
は、全てのカルマンフィルタから以下の式:
【数45】
のように計算することができる。
【0026】
さらなる好適な実施形態によれば、全体的な推定結果の信頼性に関する全体的な情報(式中符号:
【数46】
)は、第1の推定結果(式中符号:
【数47】
)と第2の推定結果(式中符号:
【数48】
)との間の不一致(式中符号:D)についての尺度を用いて修正されることが提案される。その上さらに、不一致についての尺度の計算の際には、全体的な推定結果(式中符号:
【数49】
)および/または該当する推定結果の信頼性に関するそれぞれの情報(式中符号:
【数50】
)も考慮に入れることができる。
【0027】
例えば、異なる推定結果もしくはカルマンフィルタモデル値
【数51】
の間の不一致Dは、以下の式:
【数52】
のように計算することができる。
【0028】
したがって、不一致Dは、例示的に、これまでの分散
【数53】
の計算による共分散行列
【数54】
、カルマンフィルタのシステム状態
【数55】
からの加重和、およびカルマンフィルタの共分散行列
【数56】
に関するシステム状態の加重平均値
【数57】
から計算することができる。
【0029】
不一致についての尺度は、さらに(引き続き)不一致についての重みEで重み付けすることもでき、かつ/または例えば、以下の式:
【数58】
のように場合によっては共分散についての重みEで加重融合された共分散行列
【数59】
に加算することもできる。
【0030】
例えば、不一致についての重みEまたは共分散についての重みEは、行列として要素ごとに乗算することができ、あるいはスカラー変数であってもよい。
【数60】
は、この場合、カルマンフィルタアセンブリの全体的な推定結果の信頼性に関する全体的な情報についての出力を表す。
【0031】
特に、不一致についての尺度は、以下の要素:
-第1の推定結果、
-第2の推定結果、
-全体的な推定結果、
-第1の推定結果の信頼性の情報、
-第2の推定結果の信頼性の情報、および
-全体的な推定結果の信頼性に関する全体的な情報、
を使用して決定もしくは計算することができる(方程式13参照)。
【0032】
さらに、不一致もしくは不一致についての尺度は、時間的にフィルタリングされ、かつ/または要素ごとにスケーリングされることが想定されてよい。
【0033】
方程式(11)~(14)による計算に対して代替的または付加的に、例えば以下の式:
【数61】
のように重みπを用いてシステム状態の加重平均値
【数62】
を計算することができる。
【0034】
これに関連して、出力される共分散行列
【数63】
もしくは
【数64】
は、以下の式:
【数65】
のように計算することができる。
【0035】
方程式(11)~(14)と比較して、エラー識別および補償は、それほど顕著に目立つほどではない場合もある(エラーによる偏差は、若干小さくなる分散かもしくは過度に小さな分散に結び付く可能性がある)。しかしながら、方程式(15)および(16)は、それについて逆行列を計算する必要がないという利点を有しており、そのため計算時間を有利に節約することができる。
【0036】
重みπは、静的に選択することも動的に計算することもでき、この場合、重みπの動的計算では、融合されたシステム状態
【数66】
の共分散行列
【数67】
およびシステム状態
【数68】
を使用することができ、この場合、全ての重みπの総和はいつでも1になる。
【0037】
特に、以下のこと:
-全体的な推定結果は、第1および第2のカルマンフィルタの推定結果と重みとを用いて計算され、
-全体的な推定結果の信頼性に関する全体的な情報は、第1および第2のカルマンフィルタの加重推定結果、第1および第2のカルマンフィルタの推定結果の信頼性に関する(加重)情報、第1および第2のカルマンフィルタの(非加重)推定結果、および重みを用いて計算されることが想定されてよい(方程式15および16参照)。
【0038】
さらなる好適な実施形態によれば、第2のカルマンフィルタは、測定ノイズ(式中符号:Ri,k)の共分散行列の少なくとも1つの設定パラメータにおいて、第1のカルマンフィルタとは異なることが提案される。この設定パラメータは、例えば、測定ノイズの共分散行列のエントリー、または測定ノイズの共分散行列のスケーリングのための係数であり得る。設定パラメータは、特に、第1のカルマンフィルタの測定ノイズの共分散行列が(同じ時間ステップ内の)第2のカルマンフィルタの測定ノイズの共分散行列とは異なるように選択される。
【0039】
さらなる好適な実施形態によれば、第2のカルマンフィルタは、プロセスノイズ(式中符号:Qi,k)の共分散行列の少なくとも1つの設定パラメータにおいて、第1のカルマンフィルタとは異なることが提案される。この設定パラメータは、例えば、プロセスノイズの共分散行列のエントリー、またはプロセスノイズの共分散行列のスケーリングのための係数であり得る。設定パラメータは、特に、第1のカルマンフィルタのプロセスノイズの共分散行列が(同じ時間ステップ内の)第2のカルマンフィルタのプロセスノイズの共分散行列とは異なるように選択される。
【0040】
これに関連して、カルマンフィルタアセンブリのカルマンフィルタの構成は、とりわけ、測定ノイズおよび/またはプロセスノイズQi,kの共分散行列Ri,kの選択において異なり得る。特に、カルマンフィルタ計算へのその影響が無視できるほど確実にその誤差を事前に識別し、補償することができないセンサ値については、測定ノイズの個別の共分散行列Ri,kを有する別個のカルマンフィルタを求めるかもしくはアセンブリに追加することができる。例えば、これに関連して、(この目的のために設けられるカルマンフィルタ内の)測定ノイズの共分散行列Ri,kの対角要素エントリーは、二乗誤差値だけ増加させることができる。さらに(代替的に)例えば,既知の基準値
【数69】
と、エラーのある信号を伴う状況からの測定値とに基づいて,多数のn個の測定ステップにわたる測定ノイズの個別の共分散行列Ri,kを、以下の式:
【数70】
のように計算することができる。
【0041】
例示的に、相応のモデル化によって事前にその誤差をきちんと十分に低減できない各モデル値についても同様のやり方で、プロセスノイズQi,kの対応する対角要素を増加させることができる。
【0042】
例えば、1つの潜在的にエラーのあるセンサ値のみかまたは1つの潜在的にエラーのあるモデル値のみを補償すべき場合、例示的に2つのカルマンフィルタのみを有するカルマンフィルタアセンブリを形成することで有利もしくは十分となる場合があり、この場合、第1のカルマンフィルタの構成は、障害が存在しない前提で形成され、第2のカルマンフィルタの構成は、障害が存在する前提で形成される。例えば、複数のセンサ値および/またはモデル値からエラーのある値を識別すべき場合、潜在的にエラーのある各センサ値についての各カルマンフィルタに対して付加的に、さらに1つのカルマンフィルタをエラーのある複数のセンサ値からの可能性のある各組み合わせについて実装することも有利になる可能性がある。
【0043】
さらなる好適な実施形態によれば、少なくとも、第1の推定結果の信頼性に関する第1の情報または第2の推定結果の信頼性に関する第2の情報は、該当する推定に所属する少なくとも1つのモデル値と、該当する推定に所属する少なくとも1つの測定値との間の不一致を使用して修正されることが提案される。このことは、アセンブリの計算についてカルマンフィルタによって計算される共分散行列
【数71】
を改善することに有利なやり方で寄与することができる(例えば、既存の障害もしくは存在しない障害の誤った仮定を可及的に補償するために)。
【0044】
例えば、カルメンフィルタ個別の不一致Dを用いて、全体的な推定結果の信頼性に関するアセンブリ情報もしくは全体的な情報を計算する前に、共分散行列
【数72】
を修正することは有利である。この不一致Dは、例えば以下の式:
【数73】
のように計算することができる。
【0045】
この場合、サブ状況Wi,0およびWi,1は、以下の式:
【数74】
【数75】
のように計算することができる。
【0046】
この場合、方程式(11)~(13)もしくは全体的な推定結果の信頼性に関する全体的な情報を用いたアセンブリの計算については、共分散行列
【数76】
の代わりに、修正された共分散行列
【数77】
を使用することができ、これは、カルマンフィルタ個別の不一致Dを用いて以下の式:
【数78】
のように計算することができる。重み行列Eは、例えば、要素ごとに不一致で乗算することができる。
【0047】
その上さらに、不一致を要素ごとにPT1フィルタリングすることも有利であり、これにより、出力される共分散行列
【数79】
は、好適には測定ノイズに対してより安定的にかつ堅牢になり得る。
【0048】
さらなる態様によれば、本明細書に呈示された方法を実施するためのコンピュータプログラムが提案される。このことは、換言すれば、特に、プログラムがコンピュータによって実行されるときに、当該コンピュータに本明細書に記載された方法を実行させる命令を含んだコンピュータプログラム(製品)に関している。
【0049】
さらなる態様によれば、本明細書で提案されるコンピュータプログラムが格納もしくは記憶されている、機械可読記憶媒体が提案される。通常、機械可読記憶媒体とは、コンピュータで読み取り可能なデータ担体である。
【0050】
さらなる態様によれば、本明細書に記載された方法を実施するように構成された、例えば車両などの移動対象物の位置を求めるためのシステムも提案される。移動対象物の位置を求めるための本システムは、例えば、移動対象物の自車位置を求めるように、かつ/または特に移動している他の移動対象物、例えば他の道路利用者などに対する相対的な位置測定を行うように想定され、構成されてよい。本システムは、例えば、本明細書に記載された方法を実施するように構成された運動および位置センサを含むことができる。さらに、運動および位置センサは、例えばGNSSデータおよび/または(移動対象物もしくは車両の周辺環境センサからの)周辺環境センサデータを受信することができる。本システムは、本方法を実施するために、例えば、本明細書にも記載されたコンピュータプログラムにアクセスできる例えば(マイクロ)コントローラーなどの計算装置を含むことができる。これに関連して、記憶媒体も同様に、例えば本システムの構成部品であるかまたは本システムに接続されていてもよい。
【0051】
方法に関連して説明してきた詳細、特徴、および好適な実施形態は、相応に本明細書に呈示されたコンピュータプログラムおよび/または記憶媒体および/またはシステムにおいても生じ得るし、その逆もあり得る。その限りでは、特徴のより詳細な特徴付けについては、本明細書に記載の説明を完全に参照されたい。
【0052】
以下では、本明細書に呈示された解決手段ならびにそれらの技術的環境を図面に基づきより詳細に説明する。本発明は、図示の実施例に限定されるべきものではないことに留意されたい。特に、明示的に他の方法が示されない限り、図で説明した事例の部分的な態様を抽出し、他の図面および/または本明細書からの他の構成要素および/または知見と組み合わせることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】従来技術によるカルマンフィルタの典型的な信号フローチャートを概略的に示した図である。
図2】本明細書に呈示された方法の例示的なシーケンスを概略的に示した図である。
図3】本明細書に呈示された方法のより詳細な例示を概略的に示した図である。
図4】本明細書に呈示された方法を用いて実現できる確率密度分布の例示を概略的に示した図である。
図5】車両の位置を求めるための例示的なシステムを概略的に示した図である。
【0054】
図1は、従来技術によるカルマンフィルタの典型的な構造を概略的に示す。この構造の基礎となるカルマンフィルタ方程式は、以下の式:
【数80】
【数81】
【数82】
【数83】
【数84】
のように行列表記方式で記述することができる。
【0055】
この場合、方程式(GL1)は、先行する時間ステップ(反復推定)の状態ベクトル
【数85】
、システム行列F、制御行列B、および制御ベクトル
【数86】
に基づいて推定された状態ベクトル
【数87】
を記述する。これらの状態ベクトルは、この場合、通常、ガウス分布の平均値を記述する。換言すれば、方程式(GL1)によれば、新たな最良の推定
【数88】
は、先行の最良の推定
【数89】
から作成された予測+既知の外部影響についての補正である。
【0056】
方程式(GL2)は、これに関連して、推定された状態ベクトル
【数90】
のガウス分布に所属する共分散行列Pを記述する。これは、先行する時間ステップ(反復推定)の共分散行列Pk-1、システム行列F、およびシステムノイズの共分散行列Qに基づいて生じる。換言すれば、方程式(GL2)によれば、新たな(推定)不確実性Pは、周辺環境からの付加的な不確実性を伴って、古い不確実性P(k-1)から予測される。
【0057】
方程式(GL3)は、いわゆるカルマンゲインKもしくはカルマンゲイン行列K’を記述する。これは、共分散行列P、観測行列H、および測定ノイズの共分散行列Rに基づいて形成される。共分散行列Pは、観測行列Hとともにモデル値ベクトルμの共分散行列Σを形成することができる。
【0058】
方程式(GL4)は、測定値ベクトルzもしくはμによって示される測定値を用いて推定された状態ベクトル
【数91】
もしくはモデル値ベクトルμの補正を記述する。したがって、方程式(GL4)からは、修正もしくは融合されたモデル値ベクトルμ’もしくは新たな状態ベクトル
【数92】
が生じ、これは時間的に後続する推定ステップについての入力として用いることが可能である。
【0059】
方程式(GL5)は、状態ベクトル
【数93】
もしくはモデル値ベクトルμの共分散行列PもしくはΣに基づいて、修正もしくは融合された共分散行列
【数94】
もしくはΣ’の決定を記述する。この場合、カルマンゲインKを介した測定値ベクトルzもしくはμの共分散行列RもしくはΣが導入される。
【0060】
したがって、方程式(GL1)および(GL2)は、カルマンフィルタの反復推定過程を記述する。この推定過程には、図1では参照符号10が付されている。方程式(GL3)~(GL5)は、それに続く、反復的に推定されたモデル値とセンサによって捕捉された測定値との補正もしくは融合を記述する。この補正もしくは融合には、図1では参照符号20が付されている。この修正もしくは融合された(新たな)モデル値は、それに続く推定過程10の反復ステップにおいて使用することができる。このことは、図1中の帰還矢印で示されている。
【0061】
図2は、本明細書に呈示された方法の例示的なシーケンスを概略的に示す。この方法は、カルマンフィルタアセンブリを用いて少なくとも1つのシステム状態を求めるために用いられる。この場合、カルマンフィルタアセンブリには、システムの少なくとも1つのセンサによって測定された少なくとも1つの測定値が供給される。このシステムは、例えば、車両の位置を求めるためのシステムであり得る。
【0062】
ブロック110,120および130によって示されたステップa)、b)およびc)の順序は例示的なものであり、本方法の実施のために例えば少なくとも一回、図示の順序で実施することができる。その上さらに、ステップa)、b)およびc)、特にステップa)およびb)は、少なくとも部分的に並行してまたは同時に実施することもできる。
【0063】
ブロック110では、ステップa)により、カルマンフィルタアセンブリの第1のカルマンフィルタを用いてシステム状態の第1の推定を実施するステップが行われ、ここで、第1の推定結果と、第1の推定結果の信頼性に関する少なくとも1つの所属の第1の情報とが出力される。
【0064】
ブロック120では、ステップb)により、カルマンフィルタアセンブリの第2のカルマンフィルタを用いてシステム状態の第2の推定を実施するステップが行われ、ここで、第2の推定結果と、第2の推定結果の信頼性に関する少なくとも1つの所属の第2の情報とが出力され、ここで、第2のカルマンフィルタは、少なくとも1つの設定パラメータにおいて、第1のカルマンフィルタとは異なる。
【0065】
この場合、第1のカルマンフィルタと第2のカルマンフィルタとに同じ測定値が供給され得る。
【0066】
例えば、この場合、第2のカルマンフィルタは、測定ノイズの共分散行列の少なくとも1つの設定パラメータにおいて、第1のカルマンフィルタとは異なり得る。
【0067】
代替的または累積的に、この場合、第2のカルマンフィルタは、プロセスノイズの共分散行列の少なくとも1つの設定パラメータにおいて、第1のカルマンフィルタとは異なり得る。
【0068】
これに関連して、第2のカルマンフィルタの少なくとも1つの異なる設定パラメータが、第2のカルマンフィルタの測定ノイズの共分散行列に、かつ/または第2のカルマンフィルタのプロセスノイズの共分散行列に、例えば、該当する行列のスケーリングのための係数のタイプで作用することが想定されてもよい。
【0069】
ブロック130では、ステップc)により、第1の推定結果と第2の推定結果とを、システム状態についての全体的な推定結果に融合し、ならびに第1の推定結果の信頼性に関する第1の情報と、第2の推定結果の信頼性に関する第2の情報とを、全体的な推定結果の信頼性に関する全体的な情報に融合するステップが行われる。
【0070】
ここでは、第1の推定結果は、第1の推定結果の信頼性に関する第1の情報で重み付けされ、第2の推定結果は、第2の推定結果の信頼性に関する第2の情報で重み付けされ得る。
【0071】
さらに、全体的な推定結果の信頼性に関する全体的な情報は、第1の推定結果と第2の推定結果との間の不一致についての尺度を用いて修正することができる。
【0072】
その上さらに、少なくとも、第1の推定結果の信頼性に関する第1の情報または第2の推定結果の信頼性に関する第2の情報が、該当する推定に所属する少なくとも1つのモデル値と、該当する推定に所属する少なくとも1つの測定値との間の不一致を使用して修正されることが想定されてよい。
【0073】
図3は、本明細書で呈示される方法のより詳細な例示を概略的に示す。カルマンフィルタアセンブリでは、ステップa)およびステップb)において、それぞれ1つのカルマンフィルタ推定が実施され、対応する出力:
第1の推定結果
【数95】
および第1の推定結果の信頼性に関する所属の第1の情報
【数96】
ならびに第2の推定結果
【数97】
および第2の推定結果の信頼性に関する所属の第2の情報
【数98】
を伴う。これらは、ステップc)において、全体的な推定結果
【数99】
と、全体的な推定結果の信頼性に関する所属の全体的な情報
【数100】
とに融合される。
【0074】
図3に例示的に示されるカルマンフィルタは、例えば、センサ精度について異なる仮定を用いて設定もしくは設計されたことなどのように、それらの設定が相互に異なっている可能性がある。これに関連して、例示的に第2のカルマンフィルタは、測定ノイズの共分散行列Rの少なくとも1つの設定パラメータにおいて、第1のカルマンフィルタとは異なる可能性がある。簡潔に言えば、第1のカルマンフィルタではセンサエラーが存在しないことを仮定することができ、第2のカルマンフィルタではセンサエラーが存在することを仮定することができよう。
【0075】
図4は、本明細書に呈示された方法を用いて実現できる確率密度分布の例示を概略的に示す。この描写は、図3の例示的なカルマンフィルタアセンブリに向けられている。
【0076】
図5は、例えば車両などの移動対象物2の位置を求めるための例示的なシステム1を概略的に示す。このシステム1は、本明細書に記載された方法を実施するように想定され、構成されている。
【0077】
本明細書に記載された方法ならびに本明細書に記載されたシステムは、特に、以下の利点のうちの1つまたは複数を可能にする:
・カルマンフィルタアセンブリは、好適には、モデルエラーおよび測定エラーに対してより堅牢である。
・カルマンフィルタの開発およびパラメータ化において、特に、センサ障害の識別および補償のモデル形成、開発、およびパラメータ化においてコストを節約することができる。
・不一致の計算は、好適には、カルマンフィルタ拡張部EKF(Extended Kalman Filter)およびUKF(Unscented Kalman Filter)の出力にも、公知のEnKF(Ensemble Kalman Filter)においても適用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5