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特許7587059多層構造メルトブローン不織布およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】多層構造メルトブローン不織布およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/16 20060101AFI20241112BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20241112BHJP
   D04H 3/018 20120101ALI20241112BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20241112BHJP
   G10K 11/168 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
D04H3/16
B32B5/26
D04H3/018
G10K11/16 120
G10K11/168
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023561113
(86)(22)【出願日】2022-05-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(86)【国際出願番号】 KR2022006369
(87)【国際公開番号】W WO2022245016
(87)【国際公開日】2022-11-24
【審査請求日】2023-10-03
(31)【優先権主張番号】10-2021-0063282
(32)【優先日】2021-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520080171
【氏名又は名称】東レ尖端素材株式会社
【氏名又は名称原語表記】TORAY ADVANCED MATERIALS KOREA INC.
【住所又は居所原語表記】(Imsu-dong)300,3gongdan 2-ro,Gumi-si,Gyeongsangbuk-do 39389(KR)
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イム,ソンス
(72)【発明者】
【氏名】チョン,クァンヨン
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-043779(JP,A)
【文献】特開2005-266445(JP,A)
【文献】国際公開第2015/025531(WO,A1)
【文献】特開平09-001704(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0057103(KR,A)
【文献】特開2018-003191(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1922806(KR,B1)
【文献】国際公開第2016/031624(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0119511(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
D04H 1/00 - 18/04
G10K 11/16 - 11/178
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空率が30%以上の中空繊維から構成された第1メルトブローン不織布と、
前記第1メルトブローン不織布の一面または両面に積層された第2メルトブローン不織布と、を含み、
前記第2メルトブローン不織布は、平均直径が1~10μmの極細繊維から構成されることを特徴とする多層構造メルトブローン不織布。
【請求項2】
前記中空繊維は、平均直径が15~30μm、比重が1.0以下であることを特徴とする請求項1に記載の多層構造メルトブローン不織布。
【請求項3】
前記第1メルトブローン不織布および第2メルトブローン不織布は、1:0.22~0.42の坪量比を有することを特徴とする請求項1に記載の多層構造メルトブローン不織布。
【請求項4】
前記第1メルトブローン不織布および第2メルトブローン不織布は、1:0.35~0.65の厚さ比を有することを特徴とする請求項1に記載の多層構造メルトブローン不織布。
【請求項5】
前記中空繊維および極細繊維それぞれは、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリテトラメチレンテレフタレート(PTT)繊維、ポリブチレンテレフタレート(PBT)繊維およびポリプロピレン(PP)繊維の中から選ばれた1種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の多層構造メルトブローン不織布。
【請求項6】
中空繊維形成用組成物を紡糸して、中空率が30%以上の中空繊維を製造し、製造した中空繊維を積層させて、第1メルトブローン不織布を製造する第1工程と、
極細繊維形成用組成物を紡糸して、平均直径が1~10μmの極細繊維を製造し、製造した極細繊維を第1メルトブローン不織布の一面または両面に積層させて、第1メルトブローン不織布の一面または両面に第2メルトブローン不織布を形成させる第2工程と、を含むことを特徴とする多層構造メルトブローン不織布の製造方法。
【請求項7】
前記中空繊維は、平均直径が15~30μm、比重が1.0以下であることを特徴とする請求項6に記載の多層構造メルトブローン不織布の製造方法。
【請求項8】
前記中空繊維形成用組成物および極細繊維形成用組成物それぞれは、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリテトラメチレンテレフタレート(PTT)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂およびポリプロピレン(PP)樹脂の中から選ばれた1種以上を含むことを特徴とする請求項6に記載の多層構造メルトブローン不織布の製造方法。
【請求項9】
スパンボンド不織布を最外層とし、内層に少なくとも1つ以上のメルトブローン不織布層を有する多層構造スパンボンド不織布であって、
前記メルトブローン不織布層は、請求項1に記載の多層構造メルトブローン不織布を含むことを特徴とする多層構造スパンボンド不織布。
【請求項10】
前記多層構造スパンボンド不織布は、自動車吸音材用であることを特徴とする請求項9に記載の多層構造スパンボンド不織布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層構造メルトブローン不織布およびその製造方法に関し、軽量性に優れているだけでなく、耐久性にも優れた多層構造メルトブローン不織布およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真空清掃機、食器洗い機、洗濯機、エアコン、空気清浄機、コンピュータ、プロジェクターなどのように騒音源の種類がさらに多様化し、これによって、騒音公害問題がますます深刻になっている。したがって、このような現代生活の中で様々な騒音源から発生する騒音を遮断または減少させるための努力が続けられており、海外先進国では、アパートなどの共同住宅の層間および世代間の騒音レベルを規制するための法的規制がますます厳しくなる傾向にある。また、自動車の室内に流入する騒音は、エンジンから発生し、車体または空気を介して伝達されるエンジン騒音、輪および地面との摩擦音が代表的であり、このような騒音を抑制するために、エンジンカバー、フードインシュレーションを使用しているが、実際に騒音を低減する効果が僅かであり、車両の室外に付着したダッシュアウター、室内に付着したダッシュインナーおよびフロアーカーペットなどが大部分の騒音を除去する役割を行っている。
【0003】
騒音を改善する方法には、吸音性能を改善すること、遮音性能を改善することの2つの方法があり、吸音とは、発生した音エネルギーが素材の内部経路を介して伝達されることで、熱エネルギーに変換して消滅することを言い、遮音とは、発生した音エネルギーが遮蔽物により反射して遮断されることを言う。
【0004】
従来、伝統的に使用される吸音材としては、フェルト(felt)、スポンジ、ポリウレタンフォームなどが主に使用されており、その他にも、圧縮繊維、ガラス繊維、岩綿、または再生繊維などに熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を含浸させた吸音材が挙げられる。しかしながら、上記で記述された吸音材の大部分が防音性能において十分でなく、吸音材の大部分は、人体に有害な成分を含有しているという問題点があった。
【0005】
今年、環境に優しさおよびリサイクル可能の有無に対する各国の規制が徐々に強化されている傾向にあり、PETやPP(polypropylene)などの熱可塑性樹脂をベースとする繊維吸音材の使用割合が増加している状況である。また、二酸化炭素の低減のために、車両の燃費の規制も次第に深刻になっているが、燃費の向上は、部品の軽量化を通じて達成することができるので、向上した性能と共に、軽量化した吸音材の開発が必要な状況である。
【0006】
これによって、人体に無害で、厚さを減少させながらも、騒音を効果的に吸収して低減できる吸音機能に優れた吸音材に対する研究開発が活発に行われている。
【0007】
従来の研究開発された吸音材としては、一般的なメルトブローン繊維にクリンプされる直径10μm以上の一般的な短繊維が10重量%以上含有されてなるウェブ形態の吸音材が開示されており、一般的なメルトブローン繊維にクリンプされるバルキー繊維が含有されてなるウェブ形態の吸音材兼用保温材が開示されているが、一般的なメルトブローン繊維からなるウェブの空隙率が非常に大きいため、組織構造が緻密でなく、吸音材の耐久性が不足していて、十分な吸音効果を提供することができず、また、十分な吸音効果を提供するためには、吸音材の厚さを大きく増加させなければならないという問題点がある。
【0008】
また、極細繊維をメルトブローンしてなる3次元不織布ウェブである吸音材が開示されているが、3次元不織布ウェブは、空隙率が大きいため、組織構造が緻密でなく、耐久性が不足していて、3次元不織布ウェブの特性上、十分な吸音効果を提供するためには、前記3次元不織布ウェブの厚さを大きく増加させなければならず、また、上記のように3次元で構成される不織布ウェブの製造が難しいため、製造コストが大きく上昇するという問題点がある。
【0009】
この他にも、吸音性と断熱性に優れたメルトブローン不織布では、平均直径0.1~20μmの繊維からなる密度50~4,000g/mの単一構造のメルトブローン不織布が開示されているが、このような単一構造のメルトブローン不織布は、従来の吸音材に比べて防音性能があまり改善されなかったという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、軽量性に優れているだけでなく、耐久性にも優れた多層構造メルトブローン不織布およびその製造方法を提供することに目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の多層構造メルトブローン不織布は、中空率が30%以上の中空繊維から構成された第1メルトブローン不織布と、第1メルトブローン不織布の一面または両面に積層された第2メルトブローン不織布と、を含む。
【0012】
本発明の好ましい一実施形態において、第2メルトブローン不織布は、平均直径が1~10μmの極細繊維から構成されてもよい。
【0013】
本発明の好ましい一実施形態において、中空繊維は、平均直径が15~30μm、比重が1.0以下であってもよい。
【0014】
本発明の好ましい一実施形態において、第1メルトブローン不織布および第2メルトブローン不織布は、1:0.22~0.42の坪量比を有していてもよい。
【0015】
本発明の好ましい一実施形態において、第1メルトブローン不織布および第2メルトブローン不織布は、1:0.35~0.65の厚さ比を有していてもよい。
【0016】
本発明の好ましい一実施形態において、中空繊維は、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリテトラメチレンテレフタレート(PTT)繊維、ポリブチレンテレフタレート(PBT)繊維およびポリプロピレン(PP)繊維の中から選ばれた1種以上を含んでもよい。
【0017】
本発明の好ましい一実施形態において、極細繊維は、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリテトラメチレンテレフタレート(PTT)繊維、ポリブチレンテレフタレート(PBT)繊維およびポリプロピレン(PP)繊維の中から選ばれた1種以上を含んでもよい。
【0018】
また、本発明の多層構造メルトブローン不織布の製造方法は、中空繊維形成用組成物を紡糸して、中空率が30%以上の中空繊維を製造し、製造した中空繊維を積層させて、第1メルトブローン不織布を製造する第1工程と、極細繊維形成用組成物を紡糸して、平均直径が1~10μmの極細繊維を製造し、製造した極細繊維を第1メルトブローン不織布の一面または両面に積層させて、第1メルトブローン不織布の一面または両面に第2メル
トブローン不織布を形成させる第2工程と、を含んでもよい。
【0019】
本発明の好ましい一実施形態において、本発明の多層構造メルトブローン不織布の製造方法の中空繊維は、平均直径が15~30μm、比重が1.0以下であってもよい。
【0020】
本発明の好ましい一実施形態において、中空繊維形成用組成物は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリテトラメチレンテレフタレート(PTT)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂およびポリプロピレン(PP)樹脂の中から選ばれた1種以上を含んでもよい。
【0021】
本発明の好ましい一実施形態において、極細繊維形成用組成物は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリテトラメチレンテレフタレート(PTT)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂およびポリプロピレン(PP)樹脂の中から選ばれた1種以上を含んでもよい。
【0022】
さらには、本発明の多層構造スパンボンド不織布は、スパンボンド不織布を最外層とし、内層に少なくとも1つ以上のメルトブローン不織布層を有する多層構造スパンボンド不織布であって、メルトブローン不織布層は、本発明の多層構造メルトブローン不織布を含んでもよい。
【0023】
本発明の好ましい一実施形態において、多層構造スパンボンド不織布は、自動車吸音材用であってもよい。
【0024】
以下、本発明において使用した用語について説明する。
【0025】
本発明において使用される「繊維」という用語は、「糸(Yarn)」または「毛糸」を意味し、通常の様々な種類の糸および繊維を意味する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の多層構造メルトブローン不織布およびその製造方法は、軽量性に優れているだけでなく、耐久性にも優れている。
【0027】
また、本発明の多層構造メルトブローン不織布およびその製造方法は、優れた吸音性、繊度均一性および圧縮弾性率を有する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施例について本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳細に説明する。本発明は、様々な異なる形態で具現することができ、ここで説明する実施例に限定されない。図面において本発明を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、明細書全体において同一または同様の構成要素については同じ参照符号を付加する。
【0029】
本発明の多層構造メルトブローン不織布は、第1メルトブローン不織布および第1メルトブローン不織布の一面または両面、好ましくは、一面に積層された第2メルトブローン不織布を含んでもよい。
【0030】
まず、第1メルトブローン不織布は、中空繊維から構成されたものであってもよく、第1メルトブローン不織布を構成する中空繊維は、中空率が30%以上、好ましくは、30~45%、より好ましくは、35~40%であってもよい。もし、中空繊維の中空率が30%未満であると、軽量性および吸音性能が不十分な問題があり得る。
【0031】
また、第1メルトブローン不織布を構成する中空繊維は、平均直径が15~30μm、好ましくは、25~30μmであってもよく、もし、平均直径が15μm未満であると、中空形態のモフォロジーの具現が難しい問題があるだけでなく、吸音材に使用時に、低周波領域での吸音率が低下する問題があり得、30μmを超えると、中空繊維を製造するに際して、固化速度が遅くなり、不織布の製造時に、体積が減少するだけでなく、吸音材に使用時に、中低音帯の領域での吸音率が低下する問題があり得る。
【0032】
また、第1メルトブローン不織布を構成する中空繊維は、比重が1.0以下、好ましくは、0.80~1.00、より好ましくは、0.85~0.95であってもよい。もし中空繊維の比重が1.0を超えると、軽量化が低下する問題があるだけでなく、繊維の体積が減少し、重量と比べて効果的な吸音性能の発現に障害がありえる。
【0033】
また、第1メルトブローン不織布を構成する中空繊維は、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリテトラメチレンテレフタレート(PTT)繊維、ポリブチレンテレフタレート(PBT)繊維およびポリプロピレン(PP)繊維の中から選ばれた1種以上を含んでもよく、好ましくは、ポリプロピレン(PP)繊維を含んでもよい。もし、中空繊維として、ポリプロピレン(PP)繊維でなく、他の素材の繊維を使用する場合、高比重により繊維自らの重量が増加するので、中空率を満たしても、高比重に起因して軽量効果が減少する問題だけでなく、重量と比べて効果的な吸音性能の発現に障害がありえる。
【0034】
また、第1メルトブローン不織布は、坪量が10~700gsm、好ましくは、33~350gsm、より好ましくは、50~300gsm、さらに好ましくは、200~280gsmであってもよい。
【0035】
また、第1メルトブローン不織布は、厚さが1~80mm、好ましくは、2~60mm、より好ましくは、3~50mm、さらに好ましくは、35~45mmであってもよい。
【0036】
次に、第2メルトブローン不織布は、平均直径が1~10μm、好ましくは、2~8μm、より好ましくは、3~7μm、さらに好ましくは、2~4μmの極細繊維から構成されてもよい。もし、極細繊維の平均直径が1μm未満であると、不織布の強力が低下する問題があり得、10μmを超えると、高周波領域での吸音性能が低下する問題があり得る。
【0037】
また、第2メルトブローン不織布を構成する極細繊維は、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリテトラメチレンテレフタレート(PTT)繊維、ポリブチレンテレフタレート(PBT)繊維およびポリプロピレン(PP)繊維の中から選ばれた1種以上を含んでもよく、好ましくは、ポリプロピレン(PP)繊維を含んでもよい。もし、極細繊維としてポリプロピレン(PP)繊維でなく、他の素材の繊維を使用する場合、高比重により繊維自らの重量が増加するので、中空率を満たしても、高比重に起因して軽量効果が減少する問題だけでなく、重量と比べて効果的な吸音性能の発現に障害がありえる。
【0038】
また、第2メルトブローン不織布は、坪量が10~700gsm、好ましくは、33~350gsm、より好ましくは、50~165gsm、さらに好ましくは、60~100gsmであってもよい。
【0039】
また、第2メルトブローン不織布は、厚さが1~80mm、好ましくは、2~60mm、より好ましくは、3~40mm、さらに好ましくは、10~30mmであってもよい。
【0040】
なお、第1メルトブローン不織布および第2メルトブローン不織布は、1:0.22~
0.42の坪量比、好ましくは、1:0.25~0.39の坪量比、より好ましくは、1:0.28~0.36の坪量比、さらに好ましくは、1:0.3~0.34の坪量比を有していてもよく、もし、坪量比が1:0.25未満であると、吸音材に使用時に、高周波領域の吸音率が低下する問題があり得、坪量比が1:0.39を超えると、吸音材に使用時に、低周波領域の吸音率が低下する問題があり得る。
【0041】
さらには、第1メルトブローン不織布および第2メルトブローン不織布は、1:0.35~0.65の厚さ比、好ましくは、1:0.4~0.6の厚さ比、より好ましくは、1:0.45~0.55の厚さ比、さらに好ましくは、1:0.47~0.53の厚さ比を有していてもよく、もし、厚さ比が1:0.35未満であると、吸音材に使用時に、高周波領域の吸音率が減少するだけでなく、同一体積で重量が過度に減少して不織布の生産性が劣り、剛性も低下する問題があり得、厚さ比が1:0.65を超えると、吸音材に使用時に、低周波領域の吸音率が低下する問題があるだけでなく、同一体積で重量が過度に増加して製造過程で不織布の垂れによって工程通過性が不利になる問題があり得る。
【0042】
なお、本発明の多層構造メルトブローン不織布は、厚さが6~90mm、好ましくは、8~80mm、より好ましくは、10~80mm、さらに好ましくは、50~70mmであってもよく、もし、厚さが6mm未満であると、吸音性能の問題があり得、90mmを超えると、吸音材が適用されるモジュールの組み立て時に、厚さによる離隔発生の問題があり得る。
【0043】
また、本発明の多層構造メルトブローン不織布は、坪量が20~1,000gsm、好ましくは、100~500gsm、より好ましくは、280~380gsmであってもよい。
【0044】
また、本発明の多層構造メルトブローン不織布は、中空繊維の割合が50~90%、好ましくは、60~85%、より好ましくは、65~80%、さらに好ましくは、70~80%であってもよい。この際、中空繊維の割合は、光学顕微鏡を用いて多層構造メルトブローン不織布の断面を観察して、中空繊維の面積比を測定したものである。
【0045】
このように、本発明の多層構造メルトブローン不織布は、中空による空気層の形成により吸音、吸熱の性能が発現する長所があり、これは、従来吸音材より性能が向上するだけでなく、電気自動車に使用する場合、冷房/暖房を介したエネルギー(電力)消費を最小化して、燃費の向上に寄与できるという長所がある。
【0046】
また、本発明の多層構造メルトブローン不織布の製造方法は、第1工程および第2工程を含む。
【0047】
まず、本発明の多層構造メルトブローン不織布の製造方法の第1工程は、中空繊維形成用組成物を紡糸して、中空率が30%以上、好ましくは、30~45%、より好ましくは、35~40%である中空繊維を製造し、製造した中空繊維を積層させて、第1メルトブローン不織布を製造することができる。
【0048】
この際、中空繊維形成用組成物は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリテトラメチレンテレフタレート(PTT)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂およびポリプロピレン(PP)樹脂の中から選ばれた1種以上を含んでもよく、好ましくは、ポリプロピレン(PP)樹脂を含んでもよい。
【0049】
また、紡糸は、メルトブローン(meltblown)用紡糸口金で行うことができ、紡糸直後に、高圧熱風により固化させて、中空繊維(=メルトブローン繊維)を製造する
ことができる。
【0050】
また、製造した中空繊維は、平均直径が15~30μm、好ましくは、25~30μmであってもよく、比重が1.0以下、好ましくは、0.80~1.00、より好ましくは、0.85~0.95であってもよい。
【0051】
次に、本発明の多層構造メルトブローン不織布の製造方法の第2工程は、極細繊維形成用組成物を紡糸して、平均直径が1~10μm、好ましくは、2~8μm、より好ましくは、3~7μmの極細繊維を製造し、製造した極細繊維を第1メルトブローン不織布の一面または両面、好ましくは、一面に積層させて、第1メルトブローン不織布の一面または両面、好ましくは、一面に第2メルトブローン不織布を形成させることができる。
【0052】
この際、極細繊維形成用組成物は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリテトラメチレンテレフタレート(PTT)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂およびポリプロピレン(PP)樹脂の中から選ばれた1種以上を含んでもよく、好ましくは、ポリプロピレン(PP)樹脂を含んでもよい。
【0053】
また、紡糸は、メルトブローン(meltblown)用紡糸口金で行うことができ、紡糸直後に、高圧熱風により固化させて、極細繊維(=メルトブローン繊維)を製造することができる。
【0054】
また、紡糸温度は、230~300℃、好ましくは、250~290℃、より好ましくは、260~280℃、さらに好ましくは、265~275℃であってもよい。
【0055】
さらには、本発明の多層構造スパンボンド不織布は、上記で述べた本発明の多層構造メルトブローン不織布を1つ以上の層に含んでもよい。
【0056】
具体的には、本発明の多層構造スパンボンド不織布は、スパンボンド不織布を最外層とし、内層に少なくとも1つ以上のメルトブローン不織布層を有する不織布であり、メルトブローン不織布層は、本発明の多層構造メルトブローン不織布を含んでもよい。
【0057】
本発明の多層構造スパンボンド不織布の基本的な不織布の構成は、スパンボンド不織布/メルトブローン不織布/スパンボンド不織布形態の多層で構成されてもよく、ここで、外部層を形成するスパンボンド不織布層は、1層以上で構成してもよく、内部のメルトブローン不織布層も、1層以上で構成してもよく、構成する層数を限定するものではない。このような本発明の多層構造スパンボンド不織布を「SMS系不織布」と称することができる。
【0058】
なお、本発明の多層構造メルトブローン不織布は、吸音材用に使用することができ、好ましくは、自動車吸音材用に使用することができる。
【0059】
また、本発明の多層構造スパンボンド不織布は、吸音材用に使用することができ、好ましくは、自動車吸音材用に使用することができる。
【0060】
以上、本発明について具現例を中心に説明したが、これは、ただ例示に過ぎず、本発明の具現例を限定するものではなく、本発明の実施例が属する分野における通常の知識を有する者なら本発明の本質的な特性を逸脱しない範囲で以上に例示されていない様々な変形と応用が可能であることが分かる。例えば、本発明の具現例に具体的に示された各構成要素は変形して実施することができる。また、このような変形と応用に関連した相違点は、特許請求範囲で規定する本発明の範囲に含まれるものと解すべきである。
【0061】
実施例1:多層構造メルトブローン不織布の製造
(1)中空繊維形成用組成物としてポリプロピレン(PP)樹脂を準備し、中空繊維形成用組成物をメルトブローン(meltblown)用中空タイプの紡糸口金に投入し、270℃の紡糸温度で紡糸させた後、300℃の高圧熱風により固化させて、中空率が37%、平均直径が27μm、比重が0.92の中空繊維を製造し、製造した中空繊維を積層させて、自己結合型(self-bonding)の不織布である坪量250gsm、厚さ40mmの第1メルトブローン不織布を製造した。
【0062】
(2)極細繊維形成用組成物としてポリプロピレン(PP)樹脂を準備し、極細繊維形成用組成物をメルトブローン(meltblown)用真円タイプの紡糸口金に投入し、270℃の紡糸温度で紡糸させた後、300℃の高圧熱風により固化させて、平均直径が3.5μmの極細繊維を製造し、製造した極細繊維を第1メルトブローン不織布の一面に積層させて、第1メルトブローン不織布の一面に自己結合型(self-bonding)の不織布である坪量80gsm、厚さ20mmの第2メルトブローン不織布を形成させることで、坪量が330gsm、厚さが60mm、中空繊維の割合が76%の多層構造メルトブローン不織布を製造した。
【0063】
実施例2:多層構造メルトブローン不織布の製造
(1)中空繊維形成用組成物としてポリプロピレン(PP)樹脂を準備し、中空繊維形成用組成物をメルトブローン(meltblown)用中空タイプの紡糸口金に投入し、280℃の紡糸温度で紡糸させた後、300℃の高圧熱風により固化させて、中空率が32%、平均直径が27μm、比重が0.92の中空繊維を製造し、製造した中空繊維を積層させて、自己結合型(self-bonding)の不織布である坪量250gsm、厚さ40mmの第1メルトブローン不織布を製造した。
【0064】
(2)極細繊維形成用組成物としてポリプロピレン(PP)樹脂を準備し、極細繊維形成用組成物をメルトブローン(meltblown)用真円タイプの紡糸口金に投入し、280℃の紡糸温度で紡糸させた後、300℃の高圧熱風により固化させて、平均直径が3.3μmの極細繊維を製造し、製造した極細繊維を第1メルトブローン不織布の一面に積層させて、第1メルトブローン不織布の一面に自己結合型(self-bonding)の不織布である坪量80gsm、厚さ20mmの第2メルトブローン不織布を形成させることで、坪量が330gsm、厚さが60mm、中空繊維の割合が76%の多層構造メルトブローン不織布を製造した。
【0065】
実施例3:多層構造メルトブローン不織布の製造
(1)中空繊維形成用組成物としてポリプロピレン(PP)樹脂を準備し、中空繊維形成用組成物をメルトブローン(meltblown)用中空タイプの紡糸口金に投入し、260℃の紡糸温度で紡糸させた後、300℃の高圧熱風により固化させて、中空率が38%、平均直径が27μm、比重が0.92の中空繊維を製造し、製造した中空繊維を積層させて、自己結合型(self-bonding)の不織布である坪量250gsm、厚さ40mmの第1メルトブローン不織布を製造した。
【0066】
(2)極細繊維形成用組成物としてポリプロピレン(PP)樹脂を準備し、極細繊維形成用組成物をメルトブローン(meltblown)用真円タイプの紡糸口金に投入し、260℃の紡糸温度で紡糸させた後、300℃の高圧熱風により固化させて、平均直径が4.0μmの極細繊維を製造し、製造した極細繊維を第1メルトブローン不織布の一面に積層させて、第1メルトブローン不織布の一面に自己結合型(self-bonding)の不織布である坪量80gsm、厚さ20mmの第2メルトブローン不織布を形成させることで、坪量が330gsm、厚さが60mm、中空繊維の割合が76%の多層構造メ
ルトブローン不織布を製造した。
【0067】
実施例4:多層構造メルトブローン不織布の製造
(1)中空繊維形成用組成物としてポリプロピレン(PP)樹脂を準備し、中空繊維形成用組成物をメルトブローン(meltblown)用中空タイプの紡糸口金に投入し、270℃の紡糸温度で紡糸させた後、300℃の高圧熱風により固化させて、中空率が37%、平均直径が27μm、比重が0.92の中空繊維を製造し、製造した中空繊維を積層させて、自己結合型(self-bonding)の不織布である坪量330gsm、厚さ50mmの第1メルトブローン不織布を製造した。
【0068】
(2)極細繊維形成用組成物としてポリプロピレン(PP)樹脂を準備し、極細繊維形成用組成物をメルトブローン(meltblown)用真円タイプの紡糸口金に投入し、270℃の紡糸温度で紡糸させた後、300℃の高圧熱風により固化させて、平均直径が3.5μmの極細繊維を製造し、製造した極細繊維を第1メルトブローン不織布の一面に積層させて、第1メルトブローン不織布の一面に自己結合型(self-bonding)の不織布である坪量110gsm、厚さ30mmの第2メルトブローン不織布を形成させることで、坪量が440gsm、厚さが80mm、中空繊維の割合が76%である多層構造メルトブローン不織布を製造した。
【0069】
実施例5:多層構造メルトブローン不織布の製造
(1)中空繊維形成用組成物としてポリプロピレン(PP)樹脂を準備し、中空繊維形成用組成物をメルトブローン(meltblown)用中空タイプの紡糸口金に投入し、270℃の紡糸温度で紡糸させた後、300℃の高圧熱風により固化させて、中空率が37%、平均直径が27μm、比重が0.92の中空繊維を製造し、製造した中空繊維を積層させて、自己結合型(self-bonding)の不織布である坪量250gsm、厚さ20mmの第1メルトブローン不織布を製造した。
【0070】
(2)極細繊維形成用組成物としてポリプロピレン(PP)樹脂を準備し、極細繊維形成用組成物をメルトブローン(meltblown)用真円タイプの紡糸口金に投入し、270℃の紡糸温度で紡糸させた後、300℃の高圧熱風により固化させて、平均直径が3.5μmの極細繊維を製造し、製造した極細繊維を第1メルトブローン不織布の一面に積層させて、第1メルトブローン不織布の一面に自己結合型(self-bonding)の不織布である坪量80gsm、厚さ40mmの第2メルトブローン不織布を形成させることで、坪量が330gsm、厚さが60mm、中空繊維の割合が50%の多層構造メルトブローン不織布を製造した。
【0071】
実施例6:多層構造メルトブローン不織布の製造
(1)中空繊維形成用組成物としてポリプロピレン(PP)樹脂を準備し、中空繊維形成用組成物をメルトブローン(meltblown)用中空タイプの紡糸口金に投入し、270℃の紡糸温度で紡糸させた後、300℃の高圧熱風により固化させて、中空率が37%、平均直径が27μm、比重が0.92の中空繊維を製造し、製造した中空繊維を積層させて、自己結合型(self-bonding)の不織布である坪量280gsm、厚さ40mmの第1メルトブローン不織布を製造した。
【0072】
(2)極細繊維形成用組成物としてポリプロピレン(PP)樹脂を準備し、極細繊維形成用組成物をメルトブローン(meltblown)用真円タイプの紡糸口金に投入し、270℃の紡糸温度で紡糸させた後、300℃の高圧熱風により固化させて、平均直径が3.5μmの極細繊維を製造し、製造した極細繊維を第1メルトブローン不織布の一面に積層させて、第1メルトブローン不織布の一面に自己結合型(self-bonding)の不織布である坪量10gsm、厚さ20mmの第2メルトブローン不織布を形成させ
ることで、坪量が290gsm、厚さが60mm、中空繊維の割合が95%の多層構造メルトブローン不織布を製造した。
【0073】
実験例1:多層構造メルトブローン不織布の物性の測定
実施例1~6で製造された多層構造メルトブローン不織布それぞれに対して、下記に記載された実験を実施し、これを通じて測定された結果を下記表1に示した。
【0074】
(1)繊度均一性
繊維引張強度試験機(Fiber Tensile Strength Tester)を利用して実施例1~6で製造された多層構造メルトブローン不織布それぞれの物性を確認し、任意の不織布サンプルを10回分析して標準偏差を確認し、これを基準として実施例1~6で製造された多層構造メルトブローン不織布それぞれの繊度均一性を測定した。
【0075】
(2)吸音性
ISO354(Acoustics-Measurement of sound absorption in a reverberation room)によってALPHA CABIN装備を利用して、実施例1~6で製造された多層構造メルトブローン不織布それぞれの1000hz、2000hz、3150hzおよび5000hzにおける吸音係数をそれぞれ測定した(ただし、吸音性実験は、枠フレームなしで840mm×840mm平板試験片で進め、5個以上の試験片を測定し、その算術平均値を表記した。)
【0076】
(3)圧縮弾性率
実施例1~6で製造された多層構造メルトブローン不織布それぞれを100mm×100mmにカットして試験片を製造し、これを100×100×0.8mmの鋼板の間に配置し、上鋼板の中央部に500gの分銅を載せた。この状態で下記の条件によって静置し、分銅を除去して、状態調節(状態調節条件:23±2℃、50±5%RHで1時間静置した後)後、圧縮弾性率を測定した(ただし、厚さ測定方法は、100×100mmの試験片を試験片保持台に載せ、120×120mmの150g加圧板を試験片の上に載置し、圧縮して、10秒後に1平方センチメートルの円板状加圧器で0.1kPa以下の圧力で厚さを測定した。また、厚さ測定地点は、加圧板の各辺の中央地点とし、4個地点の算術平均値を厚さとした。測定機は、ISO5084に準ずる装置を使用した)。
【0077】
<条件>
(1)耐熱:120±2℃×1時間→23±2℃と50±5%RHで1時間放置後に厚さを測定
(2)耐湿:40±2℃、95%RH×22時間→23±2℃と50±5%RHで1時間放置後に厚さを測定
(3)圧縮弾性率(%)=H1/H0×100(H0:加圧前の試験片の厚さ、H1:加圧老化後の試験片の厚さ)
【0078】
【表1】
【0079】
前記表1から確認できるように、実施例1で製造した多層構造メルトブローン不織布は、繊度均一性および圧縮弾性率に優れていると共に、低周波だけでなく、高周波領域でも吸音性に優れていることを確認することができた。
【0080】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の思想は、本明細書に提示される実施例に制限されず、本発明の思想を理解する当業者は、同じ思想の範囲内で、構成要素の付加、変更、削除、追加などにより他の実施例を容易に提案することができるが、これも、本発明の思想範囲内に入ると言える。