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特許7587064レーザ誘起ブレークダウン分光法用途のためのアーク走査方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】レーザ誘起ブレークダウン分光法用途のためのアーク走査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/71 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
G01N21/71
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2023571300
(86)(22)【出願日】2022-05-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(86)【国際出願番号】 EP2022061740
(87)【国際公開番号】W WO2022243020
(87)【国際公開日】2022-11-24
【審査請求日】2023-11-16
(31)【優先権主張番号】2107038.8
(32)【優先日】2021-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】511141744
【氏名又は名称】サーモ フィッシャー サイエンティフィック (エキュブラン) エスアーエールエル
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ランキューバ パトリック
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-003989(JP,A)
【文献】特開2019-060831(JP,A)
【文献】特開2016-019656(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0271652(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/62 - G01N 21/74
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ誘起ブレークダウン分光法のための方法であって、前記方法が、
分析される領域を含む表面を有するサンプルを準備することと、
複数のアークによって画定されたアーク経路に沿って、前記表面上の複数の位置のうちの1つの位置にアブレーションポイントを移動させることであって、前記複数のアークは前記領域の縁部から前記領域の別の縁部まで延在しており、前記アーク経路が前記複数のアークのうちの隣接するアークをたどる、移動させることと、
エネルギー源をパルス化して電磁エネルギービームを提供し、前記アブレーションポイントにおける材料をアブレーションすることと、
前記エネルギー源のパルス化に応答して、発光スペクトルを収集することと、
前記発光スペクトルを分析して、前記表面における組成を決定することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記経路に沿って、前記アブレーションポイントを前記表面上の第2の位置に移動させることを更に含み、前記第2の位置が、前記経路に沿って第1の位置に隣接する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アブレーションポイントを移動させることは、並進プレートを使用して、前記サンプルを移動させることを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記アブレーションポイントを移動させることは、ミラーを位置決めすることを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記エネルギー源が、レーザを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記発光スペクトルを収集することが、ソリッドステートデバイス又は光電子増倍管を用いて前記発光スペクトルを収集することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記アーク経路は、前記隣接するアークに沿って異なった角度方向で前記複数のアークのうちの隣接するアークをたどる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記複数のアークは、共通の中心点を有し、異なる半径で分布している、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
前記共通の中心点は、前記表面の縁部に配設されている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記共通の中心点は、前記表面の2つの縁部の交点に配設されている、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記共通の中心点は、前記表面の境界の外側に配設されている、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記アブレーションポイントを移動させることが、前記共通の中心点に向かう方向に、前記複数のアークの中のアークを連続的に走査することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記複数のアークの各アークが、前記共通の中心点から半径方向に沿って、隣接するアークから等距離に分布されている、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記複数のアークが、2つの共通の焦点を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項15】
前記アブレーションポイントを移動させることが、前記複数のアークの中のアークを前記共通の焦点に向かう方向に連続的に走査することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記複数のアークの各アークが、前記共通の焦点からの1つの方向に沿って、隣接するアークから等距離に分布されている、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記複数のアークのうちの1つのアーク内の前記複数の位置の各位置が、線形に等距離に分布されている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項18】
前記複数のアークのうちの1つのアーク内の前記複数の位置の各位置が、前記アークに沿って等距離に分布されている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項19】
前記複数のアークのうちの1つのアーク上の前記位置が、前記複数のアークのうちの前記アーク上の別の位置、及び前記複数のアークのうちの隣接するアーク上の更なる位置から等距離である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項20】
サンプリング密度を選択し、かつ選択された前記サンプリング密度に少なくとも部分的に基づいて、前記複数のアークを画定するいくつかのアークを決定することを更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項21】
分析することが、前記位置における組成を決定し、かつ前記複数の位置のうちの他の位置において決定された他の組成を用いて、前記組成を平均化することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項22】
分析することが、前記位置における組成を決定し、かつ相対位置において表示された前記組成並びに他の相対位置に表示された他の組成を含む位置分解画像を生成することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項23】
レーザ誘起ブレークダウン分光法のためのシステムであって、
エネルギービームを提供するためのエネルギー源と、
サンプルの表面及び前記エネルギービームを相対的に位置決めして、前記表面上の複数の位置のうちの1つの位置におけるアブレーションポイントを提供するための位置決め機構であって、前記表面が分析される領域を含む、位置決め機構と、
前記アブレーションポイントから発光スペクトルを収集するように方向付けられた集光レンズと、
集光レンズと光通信する分光計と、
前記位置決め機構と通信するコントローラであって、前記コントローラが、前記領域の縁部から前記領域の別の縁部まで延在する複数のアークによって画定されたアーク経路に沿って、前記表面上の前記アブレーションポイントの移動を前記複数の位置に方向付ける、コントローラと、を備える、システム。
【請求項24】
前記エネルギービームの経路内にFθレンズを更に備える、請求項23に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、レーザ誘起ブレークダウン分光法を実行するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
元素分析技術は、様々な形態の材料の元素組成を判定するのに役立つ。元素分析技術は、破壊的(例えば、材料が試験において破壊される)から、半破壊的(例えば、材料がサンプリングされるか、又は表面が損傷される)まで、更に完全に非破壊的(例えば、材料が完全に無傷のまま残される)までの範囲に及ぶ。例示的な技術としては、誘導結合プラズマ-原子発光分光法(例えば、ICP-AES)、ICP-質量分析法(例えば、ICP-MS)、電熱原子化原子吸光分光法(例えば、ETA-AAS)、X線蛍光分光法(例えば、XRF)、X線回折(例えば、XRD)、レーザ誘起ブレークダウン分光法(例えば、LIBS)を挙げることができる。元素分析は、定性的又は定量的のいずれかであり得、多くの場合、既知の標準に対する較正を必要とする。
【0003】
レーザ誘起ブレークダウン分光法(Laser-induced breakdown spectroscopy、LIBS)は、金属、半導体、ポリマー、ガラス、セラミックス、及び鉱物を含む多種多様な材料を分析するために使用される分析技術である。LIBSは、周期表の元素を非常に正確に検出及び定量化することができる。それは、大きなサンプル及び小さなサンプルの分析を行うことができ、サンプル調製をほとんど又は全く必要とせず、バルク元素分析及びイメージングのためのマイクロスキャニングの両方に使用することができる。LIBSは、物質をアブレーションし、原子化し、イオン化するためにサンプルに方向付けられるパルスレーザ放射などのパルスエネルギー放射に依拠する。サンプルの表面上への各レーザパルスの衝突は、物質をアブレーションし、続いて、原子化及びイオン化して、プラズマのプルーム、定性分光測定及び定量分光測定を行うために分析され得る光を作り出す。したがって、LIBSは、高精度、好ましい検出限界、及び低コストで、使用しやすい、迅速な、かつその場での化学分析を提供することができる。
【0004】
物質とのレーザ相互作用は、光子が原子によってどのように吸収又は放出されるかを記述する量子力学によって支配される。原子が光子を吸収する場合、1つ以上の電子は、基底状態から高エネルギー量子状態に遷移する。電子は、可能な限り低いエネルギー準位を占める傾向があり、冷却/減衰プロセスにおいて、原子は光子を放出し、より低いエネルギー準位に戻る。異なる原子の異なるエネルギーレベルは、原子の種類毎に異なる光子エネルギーを生成し、それらの量子化に起因する狭帯域光放出を伴う。これらの発光は、LIBSスペクトルに見られるスペクトル放射光線に対応する。
【0005】
プラズマ寿命には、3つの基本的な段階がある。第1の段階は、レーザパルス中の初期結合破壊及びプラズマ形成を含む点火プロセスである。これは、レーザのタイプ、レーザ出力及びパルス持続時間の影響を受ける。プラズマ寿命の第2の段階は、プラズマが冷却プロセス中に原子放出を引き起こすので、LIBSスペクトル取得及び測定の最適化にとって最も重要である。点火後、プラズマは膨張及び冷却を続ける。同時に、電子温度及び密度が変化する。このプロセスは、アブレーションされた質量、スポットサイズ、サンプルに結合されるエネルギー、及び環境条件(サンプルの状態、圧力など)に依存する。
【0006】
プラズマ寿命の最終段階は、LIBS測定にはあまり有用ではない。アブレーションされた質量のうちのある程度の量は、蒸気又はプラズマとして励起されない。ゆえに、この量の材料は粒子としてアブレーションされ、これらの粒子は、放射線を放出しない、凝縮蒸気、液体サンプル排出及び固体サンプル剥離を引き起こす。更に、アブレーションされた原子は、冷たくなり、プラズマの再結合プロセスにおいてナノ粒子を生成する。
【発明の概要】
【0007】
第1の実施形態では、組成分析のための方法は、分析される領域を含む表面を有するサンプルを提供することと、複数のアークによって画定されたアーク経路に沿って、表面上の複数の位置のうちの1つの位置にアブレーションポイントを移動させることと、を含む。複数のアークは、領域の縁部から領域の別の縁部まで延在する。アーク経路は、複数のアークのうちの隣接するアークをたどる。この方法は、エネルギー源をパルス化して、電磁エネルギービームを提供し、アブレーションポイントにおいて材料をアブレーションすることと、エネルギー源のパルス化に応答して発光スペクトルを収集することと、発光スペクトルを分析して表面における組成を決定することと、を更に含む。発光スペクトルとは、光放出のスペクトルである。
【0008】
第1の実施形態の例では、この方法は、経路に沿って、アブレーションポイントを表面上の第2のポイントに移動させることを更に含み、第2の位置は、経路に沿って第1の位置に隣接する。
【0009】
第1の実施形態の別の例及び上記の例では、アブレーションポイントを移動させることは、並進プレートを使用して、サンプルを移動させることを含む。
【0010】
第1の実施形態の更なる例及び上記の例では、アブレーションポイントを移動させることは、ミラーを位置決めすることを含む。
【0011】
第1の実施形態の追加の例及び上記の例では、エネルギー源はレーザを含む。
【0012】
第1の実施形態の別の例及び上記の例では、発光スペクトルを収集することは、ソリッドステートデバイス又は光電子増倍管を用いて発光スペクトルを収集することを含む。
【0013】
第1の実施形態の更なる例及び上記の例では、アーク経路は、隣接するアークに沿って異なった角度方向で複数のアークのうちの隣接するアークをたどる。
【0014】
第1の実施形態の更なる例及び上記の例では、複数のアークは、共通の中心点を有し、異なる半径で分布される。例えば、共通の中心点は、表面の縁部に配設される。一例では、共通の中心点は、表面の2つの縁部の交点に配設される。別の例では、共通の中心点は、表面の境界の外側に配設される。更なる例では、アブレーションポイントを移動させることは、共通の中心点に向かう方向に、複数のアークのうちのアークを連続的に走査することを含む。更なる例では、複数のアークの各アークは、共通の中心点から半径方向に沿って、隣接するアークから等距離で分布される。
【0015】
第1の実施形態の別の例及び上記の例では、複数のアークは、2つの共通の焦点を有する。例えば、アブレーションポイントを移動させることは、複数のアークのうちのアークを共通の焦点に向かう方向に連続的に走査することを含む。別の例では、複数のアークの各アークは、共通の焦点からの1つの方向に沿って、隣接するアークから等距離で分布される。
【0016】
第1の実施形態の更なる例及び上記の例では、複数のアークのうちの1つのアーク内の複数の位置の各位置は、線形に等距離に分布される。
【0017】
第1の実施形態の追加の例及び上記の例では、複数のアークのうちの1つのアーク内の複数の位置の各位置は、アークに沿って等距離に分布される。
【0018】
第1の実施形態の別の例及び上記の例では、複数のアークのうちの1つのアーク上の位置は、複数のアークのうちのアーク上の別の位置、及び複数のアークのうちの隣接するアーク上の更なる位置から等距離である。
【0019】
第1の実施形態の更なる例及び上記の例では、この方法は、サンプリング密度を選択し、かつ選択されたサンプリング密度に少なくとも部分的に基づいて、複数のアークを画定するいくつかのアークを決定することを更に含む。
【0020】
第1の実施形態の追加の例及び上記の例では、分析することは、位置における組成を決定し、かつ複数の位置のうちの他の位置において決定された他の組成を用いて組成を平均化することを含む。
【0021】
第1の実施形態の別の例及び上記の例では、分析することは、位置における組成を決定し、かつ他の相対位置に表示された他の組成とともに、相対位置において表示された組成を含む、位置分解画像を生成することを含む。
【0022】
第1の実施形態の更なる例及び上記の例では、複数のアークの各アークは、非ゼロかつ非無限の曲率半径を有する。
【0023】
第2の実施形態では、システムは、エネルギービームを提供するためのエネルギー源と、サンプルの表面及びエネルギービームを相対的に位置決めして、表面上の複数の位置のうちの1つの位置におけるアブレーションポイントを提供するための位置決め機構と、を備える。表面は、分析される領域を含む。システムは、アブレーションポイントから発光スペクトルを収集するように方向付けられた集光レンズと、集光レンズと光通信する分光計と、位置決め機構と通信するコントローラと、を更に含む。コントローラは、領域の縁部から領域の別の縁部まで延在する複数のアークによって画定されたアーク経路に沿って、表面上のアブレーションポイントの移動を複数の位置に方向付けることができる。
【0024】
第2の実施形態の一例では、システムは、エネルギービームの経路内にFθレンズを更に含む。
【0025】
第2の実施形態の別の例及び上記の例では、位置決め機構は調整可能なミラーを含む。
【0026】
第2の実施形態の更なる例及び上記の例では、アーク経路は、隣接するアークに沿って異なった角度方向で複数のアークのうちの隣接するアークをたどる。
【0027】
第2の実施形態の追加の例及び上記の例では、複数のアークは、共通の中心点を有し、異なる半径で分布される。例えば、共通の中心点は、表面の隅に配設される。一例では、コントローラは、共通の中心点に向かう方向に、複数のアークのうちのアークを連続的に走査するように、アブレーションポイントの移動を方向付けることになる。別の例では、複数のアークの各アークは、共通の中心点から半径方向に沿って隣接するアークから等距離に分布される。
【0028】
第2の実施形態の別の例及び上記の例では、複数のアークは、2つの共通の焦点を有する。例えば、コントローラは、共通の焦点に向かう方向に、複数のアークのうちのアークを連続的に走査するように、アブレーションポイントの移動を方向付けることになる。一例では、複数のアークの各アークは、共通の焦点から1つの方向に沿って、隣接するアークから等距離に分布される。
【0029】
第2の実施形態の更なる例及び上記の例では、複数のアークの各アークは、非ゼロかつ非無限の曲率半径を有する。
【0030】
第2の実施形態の追加の例及び上記の例では、複数のアークのうちの1つのアーク内の複数の位置の各位置は、線形に等距離に分布される。
【0031】
第2の実施形態の別の例及び上記の例では、複数のアークのうちの1つのアーク上の、複数の位置のうちの1つの位置は、複数のアークのうちのそのアーク上の、複数の位置のうちの別の位置、及び、複数のアークのうちの隣接するアーク上の、複数の位置のうちの更なる位置から、等距離である。
【0032】
本開示は、添付の図面を参照することによって、より良く理解され、その多数の特徴及び利点が当業者に明らかにされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】例示的なレーザ誘起ブレークダウン分光システムの図を含む。
図2】例示的なレーザ誘起ブレークダウン分光システムの図を含む。
図3】先行技術の走査パターン、及びそれらに関連付けられたアブレーションポイントの配列の説明図を含む。
図4】先行技術の走査パターン、及びそれらに関連付けられたアブレーションポイントの配列の説明図を含む。
図5】先行技術の走査パターン、及びそれらに関連付けられたアブレーションポイントの配列の説明図を含む。
図6】先行技術の走査パターン、及びそれらに関連付けられたアブレーションポイントの配列の説明図を含む。
図7】位置的に分解された例示的な組成マップの説明図を含む。
図8】例示的なアーク通り道、及びそれらに関連付けられたアブレーションポイントの配列を含む。
図9】例示的なアーク通り道、及びそれらに関連付けられたアブレーションポイントの配列を含む。
図10】例示的なアーク通り道、及びそれらに関連付けられたアブレーションポイントの配列を含む。
図11】例示的なアーク通り道、及びそれらに関連付けられたアブレーションポイントの配列を含む。
図12】例示的なアーク通り道、及びそれらに関連付けられたアブレーションポイントの配列を含む。
図13】例示的なアーク通り道、及びそれらに関連付けられたアブレーションポイントの配列を含む。
図14】例示的なアーク、及び関連付けられた中心点を含む。
図15】例示的なアーク、及び関連付けられた中心点を含む。
図16】例示的なアーク、及び関連付けられた中心点を含む。
図17】例示的なアーク、及び関連付けられた中心点を含む。
図18】非円形構成の例示的なアークを含む。
図19】非円形構成の例示的なアークを含む。
図20】レーザ誘起ブレークダウン分光法のための例示的な方法を説明するブロックフロー図を含む。
図21】不規則な形状に重なり合う例示的なアーク通り道の説明図を含む。
図22】異なる深さにおける組成を試験するための例示的なアーク通り道の説明図を含む。
図23】レーザ誘起ブレークダウン分光法を行うための例示的な方法のブロックフロー図を含む。
図24】位置的に分解された組成を示す例示的な画像の説明図を含む。
図25】位置的に分解された組成を示す例示的な画像の説明図を含む。
図26】位置的に分解された組成を示す例示的な画像の説明図を含む。
図27】位置的に分解された組成を示す例示的な画像の説明図を含む。
図28】位置的に分解された組成を示す例示的な画像の説明図を含む。
【発明を実施するための形態】
【0034】
異なる図面における同じ参照符号の使用は、類似又は同一の項目を示す。
【0035】
一実施形態では、組成分析のためのシステムは、サンプルの表面上のアブレーションポイントに方向付けられたエネルギービームを提供するエネルギー源を含む。エネルギー源は、例えば、レーザであり得る。アブレーションポイントは、アーク経路又はアーク通り道に沿って、表面上の位置に順次移動することができる。一例では、アーク経路は、複数のアークによって画定され、その経路は、隣接するアークに沿って異なった角度方向で隣接するアークをたどる。一例では、複数のアークは、円形とすることができ、中心点から異なる半径で分布されながら、共通の中心点を有することができる。別の例では、複数のアークは、2つの共通の焦点を有することができる。複数のアークの各アークは、曲率半径を有するが、この曲率半径は、アーク間で変化してもよい。一例では、各アークは、例えば、共通の中心点又は焦点に面する側で、走査の方向において凹状である。システムは、アーク経路に沿ってアブレーションポイントをそれら位置に移動させる、コントローラを含むことができる。システムは、レンズ及びミラー、又は任意選択的に、アブレーションポイントの移動を容易にするためのリニアステージプラットフォームを更に含むことができる。エネルギービームは、アブレーションポイントにおいてサンプルの表面から材料をアブレーションする。アブレーションされた材料は、発光スペクトルを発生する。システムは、発光スペクトルを収集するための収集システムを含むことができる。一例では、収集システムは、アブレーションされた材料によって放出された波長を決定するために、スペクトル分析器又は分光計に光学的に接続された集光レンズを含む。システムは、発光スペクトルを使用して、どのような元素が存在するか、任意選択的に、どれだけの量で存在するかを判定することができる。
【0036】
更なる例において、組成分析のための方法は、表面を有するサンプルを提供することを含む。アーク経路に沿った一連の各位置において、材料がその位置で表面からアブレーションされ、発光スペクトルが収集され、その発光スペクトルは、分析されて、表面にける組成を決定し、任意選択的に、発光スペクトルは、デジタル信号に変換されて、更なる分析により組成が決定される。平均表面組成を判定するために、平均化などによって、組成を分析することができる。別の例では、位置における組成を使用して、位置分解された組成の画像又はマップを形成することができる。
【0037】
従来の走査方法は、位置分解画像又は位置分解マップとして表示されるときに、アーチファクトを残すことが明らかになっている。そのようなアーチファクトは、画像上のぼけ又はスミアとして現れる可能性がある。特に、そのようなアーチファクトの存在は、画像の精度と、組成測定から導出された任意の平均の精度との両方に問題をもたらす。これらのアーチファクトは、以前に放出された材料によって引き起こされると考えられ、パルス化されたレーザを、単一の方向に、すなわち、実質的に直線状の経路に沿って、移動させたときに、強い材料輸送の影響のせいで、従来の走査方法がぼけ問題を悪化させていることが見出されている。対照的に、表面上の位置を横断するアーク経路を使用することにより、材料輸送の影響が低減され、具体的には、ぼけ又はスミアなどのアーチファクトの出現が排除されることが見出されている。更に、ガルボミラーを使用するときに、アーク経路は、方向の変化が制限された同じ方向への、各アーク経路に沿ったポイント間の移動を提供し、システムの機械的な態様、具体的には、ガルボミラーに対する応力及び歪みを制限する。
【0038】
図1は、例えば、レーザ誘起ブレークダウン分光法によって組成分析を行うためのシステム100の概略説明図を含む。サンプル102は、プラットフォーム104上に配置されている。エネルギー源106は、サンプル102の表面上に位置決めされたアブレーションポイント112において、レンズ110などの光学系を通じて、エネルギービーム108を方向付ける。材料が、サンプル102の表面からアブレーションされ、アブレーションされた材料の少なくとも一部が、原子化又はイオン化され、例えば、光ファイバケーブルを使用して、分光計118に光学的に接続された集光レンズ116によって収集される発光スペクトル114が得られる。
【0039】
エネルギー源106は、レーザとすることができる。一例では、エネルギー源は、1064nm、532nm又は266nmなどの、200nm~1100nmの範囲の典型的な波長を有する、パルスレーザであり得る。更に、エネルギー源は、サンプルの表面から材料をアブレーションし、元素組成を調べるのに十分な、少なくとも1MW/cm2などの、0.5MW/cm2~2GW/cm2の範囲のピーク電力を有することができる。例えば、レーザパルスは、100μJ~100mJの範囲のエネルギーと、MHz領域までのパルス繰り返し率の、フェムト秒、ピコ秒又はナノ秒領域のパルス幅と、を有することができる。レーザは、モードロックレーザ又はQスイッチレーザであり得る。例えば、レーザは、受動Qスイッチレーザ又は能動Qスイッチレーザであり得る。
【0040】
レンズ110は、球面レンズ、フラットフィールド走査レンズ、例えば、F-tan(θ)走査レンズ、又はFθ走査レンズを含むことができる。特に、レンズ110は、Fθ走査レンズである。
【0041】
収集システムは、集光レンズ116及び分光計118を含むことができる。一例では、分光計は、ソリッドステートデバイス、例えば、電荷結合素子(charge coupled device、CCD)撮像装置、又は光電子増倍管などの撮像装置を含む。
【0042】
特に、システム100は、コントローラ120を含む。一例では、コントローラ120は、アブレーションポイント112の相対的な移動を、サンプル102の表面上の位置に対して制御することができる。例えば、コントローラ120は、プラットフォーム104などのリニアステージ並進テーブルを制御して、サンプル102を固定ビーム108に対して移動させることができる。別の例では、ガルボミラー、プリズム、又はレンズなどのミラーを使用して、固定サンプル上のアブレーションポイントの相対位置を変更することができる。コントローラ120は、アーク経路に沿って、サンプル102の表面上の位置に対する、アブレーションポイント112の相対的な移動を順次制御することができる。サンプル102の表面上の各位置における発光スペクトルの収集から、走査された表面の組成マップを構築することが可能である。
【0043】
コントローラ120は、レーザ106のタイミングを更に制御して、サンプル表面上の所望の位置における材料のみをアブレーションすることができる。更に、コントローラ120は、分光計118などの収集システムを制御して、レーザ106の作動から遅延した時間に発光スペクトルを収集することができる。
【0044】
別の例では、図2は、組成分析を行うためのシステム200を概略的に示す。システム200は、電磁エネルギービーム206を放出する、電磁エネルギー源204を含む。1つ以上の固定ミラー208と、ガルボミラー210などの可動位置決めミラーとのセットは、電磁エネルギービームを、レンズ212を通して、サンプル202の表面上のアブレーションポイント214に方向付けることができる。一例では、モータ駆動されるミラー210は、サンプル202の表面上のアーク経路に沿って順次配設された位置にアブレーションポイントを誘導するように、自動的に調整され得る。レンズ212は、球面レンズ、フラットフィールド走査レンズ又はFθ走査レンズであり得る。一例では、レンズ212は、フラットフィールド走査レンズ又はFθ走査レンズである。特に、レンズ212は、Fθ走査レンズである。
【0045】
材料が、アブレーションポイント214において電磁エネルギービーム206によってアブレーションされると、発光スペクトル216が発生する。発光スペクトル216は、1つ以上のミラー218によって分光計220に方向付けられ得る。
【0046】
一例では、電磁エネルギー源204はレーザである。一例では、エネルギー源204は、1064nm、532nm又は266nmなどの、200nm~1100nmの範囲の典型的な波長を有する、パルスレーザであり得る。更に、エネルギー源は、サンプルの表面から材料をアブレーションし、元素組成を調べるのに十分な、少なくとも1MW/cm2などの、0.5MW/cm2~2GW/cm2の範囲のピーク電力を有することができる。例えば、レーザパルスは、100μJ~100mJの範囲のエネルギー、及びフェムト秒、ピコ秒、又はナノ秒レジームのパルス幅を有し、パルス反復率はMHzレジームまでとすることができる。レーザは、モードロックレーザ又はQスイッチレーザであり得る。例えば、レーザは、受動Qスイッチレーザ又は能動Qスイッチレーザであり得る。
【0047】
分光計220は、1つ以上のミラー、レンズ、開口、格子、プリズム及び発光収集装置などの、様々な光学構成要素を含み得る。一例では、放出収集装置は、ソリッドステートデバイス、例えば、電荷結合素子(CCD)撮像装置である。他の例では、光電子増倍管などの他の発光検出器が採用され得る。
【0048】
システム200は、コントローラ222を含み得る。一例では、コントローラ222は、調整可能なミラー210を制御して、アブレーションポイント214が位置する、サンプル202の表面上の位置を調整する。特に、コントローラ222は、例えば、調整可能なミラー210を駆動するモータを制御することによって、アブレーションポイントをアーク経路に沿って順次配設された位置に移動させるように構成されている。更に、コントローラ222は、エネルギー源204の作動を制御することができ、分光計220が発光スペクトルを収集又は分析する時間を制御することができる。
【0049】
コントローラ222又は120は、コンピュータ(図示せず)を備えることができ、そのコンピュータは、例えば、記憶媒体と、メモリと、プロセッサと、ユーザ出力インターフェース、ユーザ入力インターフェース、及びネットワークインターフェースなどの1つ以上のインターフェースと、を備え、これらは、ともにリンクされる。この記憶媒体は、ハードディスクドライブ、磁気ディスク、光ディスク、ROMなどのうちの1つ以上などの、任意の形態の不揮発性データ記憶デバイスであってもよい。記憶媒体は、コントローラ222に、アブレーションポイント214が配置されている、サンプル202の表面上の位置を調整させるための1つ以上のコンピュータプログラムを記憶することができる。メモリは、データ又はコンピュータプログラムを記憶するために好適な任意のランダムアクセスメモリであってもよい。プロセッサは、1つ以上のコンピュータプログラム(記憶媒体上又はメモリ内に記憶されるものなど)を実行するために好適な任意の処理ユニットであり得る。プロセッサは、単一の処理ユニット、又は並列に、別々に、若しくは互いに協働して動作する複数の処理ユニットを備え得る。プロセッサは、処理動作を実行する際に、記憶媒体又はメモリにデータを記憶し得るか、又は記憶媒体又はメモリからデータを読み取り得る。コンピュータと、可動ミラー210と、エネルギー源204との間のインターフェースを提供するための任意のユニットである、インターフェースが提供されてもよい。ユーザ入力インターフェースは、ユーザ又はオペレータからの入力を受信するように配設されてもよい。ユーザは、ユーザ入力インターフェースに接続された、又はユーザ入力インターフェースと通信する、マウス(又は他のポインティングデバイス)又はキーボードなどのコントローラの1つ以上の入力デバイスを介して、この入力を提供し得る。しかしながら、ユーザは、1つ以上の追加的な又は代替的な入力デバイス(タッチスクリーンなど)を介して、コンピュータに入力を提供し得ることが理解されよう。コンピュータは、ユーザ入力インターフェースを介して入力デバイスから受信した入力を、プロセッサが後でアクセスして処理するためにメモリに記憶し得るか、又はプロセッサがそれに応じてユーザ入力に応答することができるように、入力を直接プロセッサに引き渡し得る。ユーザ出力インターフェースは、グラフィカル/ビジュアル出力をユーザ又はオペレータに提供するように配設されてもよい。例えば、サンプルから収集された発光スペクトルは、グラフィカル/ビジュアル出力としてユーザ又はオペレータに提供し得る。したがって、プロセッサは、ユーザ出力インターフェースに、所望のグラフィカル出力を表す画像/ビデオ信号を形成するように命令し、この信号を、ユーザ出力インターフェースに接続されたモニタ(又はスクリーン表示ユニット)などのビデオ表示ユニット(video display unit、VDU)に提供するように構成され得る。上述のコンピュータアーキテクチャは単に例示的なものであり、異なるアーキテクチャを有する(例えば、より少ない構成要素を有する、又は追加的な若しくは代替的な構成要素を有する)他のコンピュータシステムが使用され得ることが理解されよう。例として、コンピュータは、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、ラップトップ、などのうちの1つ以上を含み得る。
【0050】
図3及び図4は、従来の走査パターンを示す。例えば、図3は、従来のラスタ走査パターンを示す。図4は、従来のスネーク走査パターンを示す。図5及び図6は、従来のラスタ走査パターン及びスネーク走査パターンに対してアブレーションが行われる位置の格子又は配列などの、位置の分布を示す。これらの従来の走査パターンは、画像を、走査線としても知られる水平ストリップに分割することに基づいている。次に、各走査線は、離散位置のセットに分割されて、各ポイントが単一のアブレーションの位置を表すアブレーションポイントとして使用され得る。図5及び図6に示す例では、位置は等間隔に分布している。図3及び図4に示されたそのような従来の走査方法又は従来の走査パターンは、位置分解組成画像にアーチファクトをもたらし、位置の格子又は配列にわたって平均化するときに、疑わしい平均組成をもたらすことが明らかになっている。そのため、従来の走査方法は、特に走査パターンがレーザを主に単一方向に走査させるときに、サンプルの表面上の均一に分布した位置の測定にエラーを引き起こすという問題がある。別の問題は、検流計又はリニアステージが急停止することができず、各走査線の端部を越えて移動する可能性があるので、検流計又はリニアステージのいずれかの慣性特性によって引き起こされる、各走査線の端部で調査中の領域の境界を越えて表面をサンプリングすることから生じ得る。
【0051】
従来の走査方法によって引き起こされるアーチファクトを示すために、プリント回路基板(printed circuit board、PCB)が、異なる走査パターンを利用するレーザ誘起ブレークダウン分光法を使用して、表面上の元素ニッケルの存在について試験される。パルス当たり2mJのエネルギー及び1kHzの繰り返し率を有する532nmのレーザを、各走査パターンに使用する。レーザは、パルス当たり2MWの出力及び4mmのビーム幅を有し、16MW/cm2を提供する。図7に示すように、スネーク走査方法は、汚れ、又は追加の跡、又はぼけ効果などのアーチファクトを生成する。スネーク走査は、1つのガルボミラーを使用して、X方向の高速走査を利用する。第2のガルボミラーは、線が走査された後、Y寸法の各行の端部において、1つの離散ステップで変化される。したがって、レーザ走査は単一方向に集中し、このことは、レーザがサンプル表面上を走査するときに、強い材料輸送効果を引き起こす。
【0052】
対照的に、アーク経路に沿って走査して、アーク経路に沿った位置にアブレーションポイントを順次移動させることにより、従来の走査方法に関連付けられたアーチファクトを免れて、発光スペクトルの収集が可能になることが見出されている。例えば、アーク経路は、複数のアークによって画定することができ、その場合、その経路は、隣接するアークに沿って異なる方向又は反対方向に隣接するアークをたどる。一例では、アークは、共通の中心点(すなわち、同じ中心点)を有し得、かつ異なる半径で分布され得る。別の例では、アークは、2つの共通の焦点(すなわち、同じ焦点)を有することができる。従来の走査方法の間、放出された材料は、後続のアブレーションポイントまで線形経路をたどるが、これに対して、アーク経路走査方法の間、放出された材料は、アークに対して接線方向に移動し、同じ材料の再分析を制限し、したがって、ぼけ又は汚れのアーチファクトを制限すると考えられる。
【0053】
アーク経路は、複数のアークを含む。アーク経路を通る走査は、アークに沿った隣接位置を通って順次移動し、その後、隣接するアークに移動して、隣接するアークに沿った隣接位置を通って順次移動することを含む。一例では、1つのアークの走査は、第1の角度方向にあり、これに対して、隣接するアークの走査は、反対の角度方向にある。特定の例では、連続したアークの走査は、角度方向で交互に行われる。あるいは、アークを通る走査は、同じ角度方向にあってもよい。
【0054】
一例では、アークは、異なる半径で配置され、共通の中心点、すなわち、同じ中心点を有する。アークは、表面の縁部から別の縁部まで延在する。例えば、図8は、アーク経路が画定されている表面を例示している。それらのアークは、半径方向に等しい差で分布され得る。
【0055】
円形アークの一例では、選択された表面にわたって延在するように、最大半径が識別され得、アークは、半径に沿って互いに等しい距離で離間され得る。例えば、いくつかのアークが選択され得、最大半径は、そのアークの数で除算されてアークの間隔を決定することができる。
【0056】
μが負でない実数であり、かつυが0~2πの範囲にわたる楕円座標系の例では、アークは、μを一定に保ちながらυを変化させることによって形成されて、アークを形成することができる。アークは、μの等しい差で分布され得る。他の例では、とりわけ、二角座標、双曲線座標などの他の座標系を使用して、複数のアークを定義することができる。更に、各アークは、同じであってもよく、表面にわたって等しい距離で離間されてもよい。
【0057】
アーク経路は、1つのアークに横切って移動すること、隣接するアークに移動すること、及び隣接するアークを横切って移動することを含むことができる。アブレーションポイントがアークを横切って移動されて、アークの角度境界において(典型的には、表面領域の縁部において)アークの終端に到達すると、アブレーションポイントは、隣接するアークの最初に移動されて、そのアークを横切って移動を開始することができる。アブレーションポイントが隣接するアークを横切って反対の角度方向に移動する例では、アブレーションポイントは、アークの終端から表面領域の縁部に沿って後続のアークの最初に移動され得る。したがって、アブレーションポイントは、アークを横切って縁部から縁部に移動する。
【0058】
図8に例示されているように、アーク経路は、中心点又は焦点から最も遠いアークから開始して、中心点又は焦点により近い隣接するアークに順次移動することができる。例えば、以下の式1に例示されているように、円形のセグメントから構成されたアーク経路は、境界が概して0より大きく、かつπ/2より小さいθにあり、かつそのアークが表面領域の縁部に接触する場所に応じて設定される正弦関数として定義することができる。各後続のアークの半径は、以前のアークの半径よりも徐々に小さくなる。放出される任意の材料は、アークの接線方向に移動する可能性が高く、同じ材料の再分析を制限する。あるいは、アーク経路は、中心点に最も近いアークから開始し、より大きい半径を有する隣接するアークに順次移動することができる。
【数1】
である。ここで、rは、半径であり、rmaxは、最大半径であり、step_numは、最大step_nummaxを有するステップの番号であり、θは、表面の第1の縁部における値θEdge1を有し、第2の縁部における値θEdge2を有する角度である。
【0059】
アークは、他の形状を有するように、かつ、他の座標系において二角座標系又は楕円座標系における楕円形状などの他の形状を有するように、定義することができる。楕円座標系では、アーク経路は、楕円のセグメントとすることができる。例えば、式2に示すように、アーク経路は、楕円座標を使用して定義することができる。
【数2】
式中、aは、定数であり、μは、負でない実数であり、υは、表面の第1の縁部におけるυEdge1から第2の縁部におけるυEdge1までの範囲である。各アークは、μの値が一定に保たれるときに定義される楕円のセグメントとすることができる。複数のアークは、μの差が等しい楕円のセグメントによって定義することができる。
【0060】
アーク経路を更に定義するために、各アークに沿って、位置が指定される。例えば、図9は、図8のアーク経路に沿って分布された位置を例示している。一例では、それらの位置は、アークに沿って互いに等距離に分布され得る。例えば、それらの位置は、線形に等距離であってもよい(例えば、式3)。別の例では、それらの位置は、アークに沿って等距離であってもよい(例えば、式4)。
【数3】
式中、x及びyは、アブレーションポイントがt1において第1の位置にあり、かつt2において隣接位置にある、時間の関数として表現される。そして、Δlは、直線
【数4】
に沿った位置間の距離であるか、又はアーク
【数5】
に沿った位置間の距離である。
【0061】
サンプリング密度又はサンプリング位置の数、したがって、アブレーションポイントの密度又は数を指定するために、アークの数、又はアークの間隔を選択することができ、又はアークに沿った位置間の距離を選択することができる。あるいは、システムは、所望の密度に基づいて、アークの数、及び隣接ポイント間の間隔を決定することができる。
【0062】
例えば、図10図11図12、及び図13に例示されているように、アークの数を増加させて、アーク上に位置間の距離を減少させることは、位置の密度を増加させ、したがって、測定が行われ得るアブレーションポイントを増加させる。位置の密度の増加は、組成の画像の空間解像度における増加をもたらし得る。
【0063】
任意選択的に、アークは、離間され、かつ位置がアークに沿って分布されて、表面にわたって均等に分布された位置の格子又は配列を形成することができる。一例では、アーク上の位置は、アーク上の別の位置、及び隣接するアーク上の更なる位置から等距離にある。例えば、位置は、極座標系において格子又は配列を形成することができる。一例では、それらの位置は、アークに沿って等距離に、かつ半径に沿って等距離に配設される。位置は、アーク内の隣接位置から、かつ中心点からの半径に沿った隣接位置から、等距離にあり得る。別の例では、位置は、二角座標系又は楕円座標系において格子又は配列を形成することができる。
【0064】
図14に例示されているように、隣接するアークは、同じ中心点(center point、CP)から異なる半径方向の距離(R1又はR2)に位置決めされている。隣接するアークは、中心点から等しい距離の曲率半径を有することができる。一例では、アーク経路は、半径R1のアークに沿って第1の角度方向に走査することができ、次いで、半径R2のアークに沿って反対の角度方向に走査することができる。あるいは、アーク経路は、半径R1のアークの前に、半径R2のアークを走査することができる。更なる代替例では、アーク経路は、同じ角度方向の両方のアークを走査することができる。
【0065】
図14に例示されているように、中心点は、表面の隅に配設されている。一例では、図15に例示されているように、中心点(CP)は、表面の縁部に配設され得る。別の例では、図16に例示されているように、中心点(CP)は、表面の2つの縁部(例えば、隅)の交点に配設され得る。図17に例示された更なる例では、中心点(CP)は、表面の境界の外側に配設され得る。あるいは、中心点(CP)は、表面の境界上又は境界内に配設され得る。表面の境界の形状に応じて、中心点(CP)の異なる位置は、中心点(CP)の他の任意選択的な位置を上回る利点を提供することができる。
【0066】
図18に例示された別の例では、複数のアークの各アークは、2つの共通の焦点(すなわち、同じ2つの焦点)を有することができる。例えば、アークは、楕円のセグメントであってもよい。楕円のそのようなセグメントは、位置がアブレーションポイントのためにそれに沿って分布されているアーク経路を定義することができる。そのようなアークは、楕円座標系又は二角座標系で定義することができる。焦点は、表面領域の縁部に配設することができる。別の例では、焦点は、表面領域の異なる縁部に配設することができる。更なる例では、焦点は、表面領域の異なる隅に配設することができる。追加の例では、焦点は、表面領域の外側に配設することができる。
【0067】
追加の例では、図19に例示されているように、各アークは、同じ形状を有し、かつ表面にわたって均等に分布され得る。一般に、アークは、非ゼロ(例えば、ポイント)及び非無限の(例えば、直線の)曲率半径を有する。曲率半径は、例えば、アークが楕円曲線又は他の非円形曲線のセグメントである場合、アーク間で変化し得る。
【0068】
一例では、アークの各々は、走査の終点に向かって面する凹側を有し、走査の終点から離れて、かつ走査の最初に向かって面する凸側を有する。本明細書で言及される場合、曲線は、走査の方向に対して凹状である。
【0069】
図20は、組成分析を行うための例示的な方法2000の説明図を含む。例えば、この方法は、ブロック2002において例示されているように、サンプルを組成分析システムに挿入することを含む。一般に、サンプルは、材料がアブレーションされて、組成分析のために使用することができる発光スペクトルを放出する表面を有する。
【0070】
ブロック2004において例示されているように、システムは、アーク経路に沿ってアブレーションポイントを一連の位置に移動させることができる。アブレーションポイントは、アーク経路に沿って様々な位置に位置決めすることができる。アーク経路の構成(例えば、中心点の位置、アーク間の距離、アークの角度の境界、アーク上のポイント間の距離など)は、表面にわたって所望のサンプル密度を提供するように選択され得る。
【0071】
ブロック2006において例示されているように、選択された時間間隔で、レーザなどのエネルギー源を作動させることができる。例えば、レーザは、100Hz~1000Hzなどの、1Hz~数MHzの範囲の速度で作動され得る。作動されると、材料は、アブレーションポイントにおいて表面からアブレーションされ、発光スペクトルの発生を促進する。
【0072】
アブレーションポイントは、例えば、リニアステージプラットフォームを用いて、固定電磁エネルギービームに対してサンプルを移動させることによって、アーク経路に沿って位置と位置との間で順次移動され得る。別の例では、アブレーションポイントは、調整可能なレンズ若しくは可動レンズ、プリズム又はミラー、例えば、ガルボミラーの使用などを通して、固定サンプル表面に対してエネルギービームの経路を変化させることによって、移動され得る。
【0073】
ブロック2008に示すように、発光スペクトルは、収集されることができる。例えば、集光レンズのセットなどの光学系を使用して、アブレーションポイントから生じる発光スペクトルを収集することができる。発光スペクトルは、ブロック2010に示すように、発光スペクトルを収集してデジタル信号に変換する分光計に、光学的に提供され得る。デジタル信号は、組成を決定するために使用することができる、様々な波長で受信された光の強度を示すことができる。
【0074】
ブロック2012に例示されているように、システムは、アーク経路の終端に到達したかどうかを判定する。そうでない場合、システムは、ブロック2004において例示されているように、アーク経路に沿ってアブレーションポイントを後続の位置に移動させ、エネルギー源を作動させ、発光スペクトルを収集し、発光スペクトルを信号に変換する。
【0075】
ブロック2014において例示されているように、システムは、変換された信号又はデジタル信号を分析して、組成を定性的に、かつ任意選択的に定量的に決定することができる。一例では、分析は、アブレーションポイントの各々にわたって測定値が取得された後に行うことができる。代替的に、分析は、発光スペクトルの測定と平衡して行うことができる。分析により、アーク経路に沿った位置にわたって組成を平均化することがもたらされ得る。別の例では、分析は、サンプルの表面の様々な位置における組成を示す、位置分解画像又は位置分解マップを提供することができる。分析は、分光計と関連付けられたコンピュータによって行われてもよい。いくつかの実施形態では、分析を行うためのコンピュータは、上述の図2のコントローラ222のコンピュータであってもよい。
【0076】
所望の分析の性質、組成を示す画像の解像度又は他の要因に応じて、選択サンプル領域にわたる測定位置の数又は測定位置の密度を調整することができる。アーク経路の性質により、中心点又は焦点の位置、アークの数、アーク間の分離、及びアークに沿った位置間の距離を変更することによって、測定位置の密度又は数の調整が可能になる。
【0077】
試験領域の異なる形状は、様々なアーク経路を使用してカバーすることができる。例えば、図8図13は、正方形の表面領域のために構成されたアーク経路を例示している。同様のアーク経路を使用して、長方形の形状を試験することができる。アーク経路は、正方形、長方形、他の平行四辺形などの規則的な形状、台形又は凧形などの他の四辺形形状、他の多角形、及びそれらの組み合わせ又は連結を試験するように想定され得る。更に、アーク経路を使用して、不規則な形状を試験することができる。例えば、図21は、不規則な形状を有する例示的な2D表面と、そのような不規則な形状を有する表面を試験するために有用な関連付けられたアーク経路と、を例示している。表面を通って延びる半径方向ベクトルを有する中心点が選択され得る。その中心点は、表面の縁部の上、又は境界の外側に位置決めされ得る。
【0078】
アーク経路を更に使用して、同じ領域を異なる深さで試験することができる。例えば、位置のパターン内などの同じ位置は、2回以上試験して表面下の深さに到達することができる。レーザによる第1のアークパターン走査は、サンプルの表面を分析し、連続的な各アークパターン走査は、サンプルを追加の深さまでエッチングする。このプロセスを継続することによって、複数の層を深さの関数として分析することができる。これらの層の分析を三次元で構築することによって、システムは、三次元マップを生成することができ、すなわち、サンプルの組成は、三次元で分析することができる。一例では、図22は、同じ試験領域にわたってアーク経路から生成されたアークパターンを利用して、深さの関数として組成を試験する説明図を含む。説明された例では、試験位置の配列を通じた第1のアーク経路を使用して、表面分析が、試験(1)において行われる。追加のアーク経路は、エッチング深さ1、2、又は3などにおいて組成を試験するために、試験(2)、(3)、又は(4)などの各々において使用することができる。図20で例示されている例では、同じアーク経路は、後続の試験(2)、(3)、又は(4)の各々において使用されて、同じ試験ポイントで、異なる深さで組成を試験することができる。代替的な例では、アーク経路が測定位置の同じパターンを通過するという条件で、異なるアーク経路が、追加の試験のうちの1つ以上において利用することができる。アーク経路に沿ったレーザの走査方向は、各試験深さ1、2、3などの場合には同じであり得、又は試験深さ間で異なり得る。一例では、第1の試験深さにおいて、レーザは、アーク経路に沿って第1の方向に移動し、第2の試験深さにおいて、レーザは、アーク経路に沿って第2の方向又は反対方向に移動し、レーザは、走査方向にかかわらず、測定位置の同じ配列を通って移動する。
【0079】
一般に、試験領域が選択されると、様々な幾何学的形状、アークパターン、及びアーク分布を利用して、試験領域にわたってアーク領域を定義することができる。特に、この幾何学的形状は、アークパターンの連結、ステップサイズ及び異なる寸法の調整、又は、組成の測定値を深さの関数として生成するための、以前に試験されたポイントにわたる後続の追跡を含むことができる。更に、位置の密度、アーク間の距離、位置間の距離、共通の中心点又は焦点の位置、及び他の要因を選択することにより、試験領域の部分内の格子又は配列(例えば、極座標系又は楕円座標系における2D配列)内の測定位置の数又は密度が画定される。
【0080】
図23に例示された一例では、組成分析を行うための方法2300は、ブロック2302において例示されているように、サンプルを試験システムに挿入することを含む。サンプルは、組成のために試験が行われ得る表面を含む。例えば、サンプルは、金属、半導体、ポリマー、ガラス、セラミック、又は鉱物のサンプルであってもよい。
【0081】
ブロック2304において例示されているように、試験領域が、挿入されたサンプルの上で選択され得る。一例では、試験領域は、正方形領域である。あるいは、試験領域は、上述したように、長方形形状又は別の幾何学的形状をとることができる。例えば、幾何学的形状は、不規則な形状の形態をとることができる。
【0082】
試験領域の形状及び性質に応じて、システムは、ブロック2306において例示されているように、試験領域内に画定された測定位置を通ってアーク経路を画定する際に利用される、幾何学的形状を決定することができる。例えば、幾何学的形状を画定することには、様々なアークパターンの連結を画定すること、アーク間のステップサイズを調整すること、共通の中心点又は焦点を選択すること、アークの角度境界を決定すること、又は2回以上試験されることになる測定位置にわたってアークパターンを選択することが含まれ得る。
【0083】
この方法は、ブロック2308において例示されているように、測定位置の配列の所望の密度を提供する、アーク間のステップサイズ、又は位置間の距離などの要因を選択することによって、測定位置の格子又は配列の密度を画定することを更に含むことができる。ステップサイズ、及びポイント間の距離が小さいほど、配列内の測定位置の数が多くなり、所与の領域に対する測定位置の密度が高くなる。あるいは、密度を選択することができ、システムは、選択された密度を達成するアークパターン又は位置間の距離を決定することができる。
【0084】
幾何学的形状が選択されると、測定が行われ得るアーク経路が画定される。例えば、ブロック2310において例示されているように、アブレーションポイントは、測定位置の格子又は配列(例えば、極座標における2D配列又は格子)内のアーク経路に沿って一連の位置に移動され得る。ブロック2312において例示されているように、所望の位置において、レーザなどのエネルギー源がパルス化されることができる。パルスは、サンプルの表面上のアブレーションポイント又は位置における材料のアブレーションをもたらし、発光スペクトルの発生を引き起こす。
【0085】
ブロック2314において例示されているように、発光スペクトルは、集光レンズ又は他の光学系などを使用して収集することができる。ブロック2316において例示されているように、収集された発光スペクトルは、例えば、分光計を利用して、デジタル信号に変換することができる。
【0086】
発光スペクトルの収集に続いて、ブロック2318において例示されているように、システムは、選択された幾何学的形状に沿ったアーク経路の終端に到達したかどうかを判定することができる。そうでない場合、システムは、アーク経路に沿ってアブレーションポイントを後続の位置に移動させ、レーザのパルス化、及び発光スペクトルの収集を繰り返すことができる。
【0087】
経路の終端に到達すると、ブロック2320において例示されているように、システムは、幾何学的形状の終端に到達したかどうかを判定することができる。例えば、システムは、深さの全てが試験されたかどうか、又は試験されるべき追加のアークパターンが存在するかどうかを判定することができる。幾何学的形状の終端に到達していない場合、次に、ブロック2322において例示されているように、システムは、次の幾何学的形状を選択することができる。
【0088】
ブロック2326において例示されているように、幾何学的形状の性質に応じて、システムは、レーザなどのエネルギー源の焦点をリセットすることができる。例えば、追加の深さを試験するとき、焦点は、次の深さに応じて調整され得る。次いで、システムは、アーク経路の一連の位置に沿ってアブレーションポイントを移動させ、レーザをパルス化し、各位置において発光スペクトルを収集することができる。
【0089】
ブロック2324において例示されているように、システムは、変換された信号を分析して、組成を決定することができる。例えば、システムは、位置における組成を平均化し、表面試験領域にわたる平均を決定することができる。別の例では、システムは、異なる位置における組成を示す、位置的に分解されるマップ又は画像を提供することができる。
【0090】
上記のシステム及び方法の実施形態は、従来のシステムに勝る技術的利点を提供する。具体的には、実施形態は、従来のシステム及び試験方法において見られる物質輸送効果の問題を克服し、位置の関数として組成を示す位置分解マップにおける、エラーと、ぼけ又はスミアなどのアーチファクトの出現と、を低減する。そのようなエラーは、位置のセットから収集された組成が平均化されるときにも低減される。ガルボミラー(又はリニアステージ)移動が最小限に抑えられるため、位置的に分解された高精度なマップが可能である。また、ガルボミラー(又はリニアステージ)の急激な方向変化の回数が制限されるため、システムの構成要素の耐久寿命が増加する。
【実施例
【0091】
(実施例1)
【0092】
プリント回路基板(PCB)は、PCBの表面上の元素の銅、ニッケル、錫、及びバリウムの存在について試験される。PCBの同じ領域は、アーク経路を利用するレーザ誘起ブレークダウン分光法を使用して試験される。パルス当たり2mJのエネルギー、及び1kHzの繰り返し速度を有する532nmレーザが、走査パターンのために使用される。レーザは、パルス当たり2MWの出力及び4mmのビーム幅を有し、16MW/cm2を提供する。図24(銅)、図25(ニッケル)、図26(錫)、及び図27(バリウム)は、アーク経路を利用して測定された組成の位置的に分解されたマップを例示している。
【0093】
図24図27に例示されているように、アーク経路を利用することにより、図7に例示された汚れ又はぼけのアーチファクトとは対照的に、正確でかつ視覚的に鮮明な画像が提供される。アークは、走査の方向に対して凹状の曲率を持っており、これにより、放出された材料が連続的な走査領域の外側に存在する可能性があり、したがって、アブレーションされた材料の再分析を回避する。例えば、レーザがアーク経路に沿って走査したときに、放出された材料は、それをアーク曲線関数の法線方向に押す求心力を受ける。更に、走査方向に対して接線方向に放出された任意の残りの材料は、連続的なアブレーション位置に重なり合わない。アーク経路の曲率は、接線から離れた、したがって、物質の重ね合わせから離れた格子上の次のスポットにマッピングされる。
【0094】
(実施例2)
【0095】
2ユーロ硬貨が、アーク経路を利用するレーザ誘起ブレークダウン分光法を使用して、元素クロムの存在について試験される。パルス当たり2mJのエネルギー、及び1kHzの繰り返し速度を有する532nmレーザが、走査パターンのために使用される。レーザは、パルス当たり2MWの出力及び4mmのビーム幅を有し、16MW/cm2を提供する。図28は、アーク経路を利用して測定された組成(クロム)の位置的に分解されたマップを例示している。
【0096】
図28に例示されているように、化学マッピングは、文字をコーティングするために使用される元素と、すぐ周囲の基材とを区別する。その結果、各文字は、鮮明な境界を持っており、別様の場合にはぼけ又は不鮮明なアーチファクトにつながることになる、アブレーション後の質量輸送の影響がほとんど又は全くのないことが明らかになっている。
【0097】
一般的な説明又は実施例において上で説明される活動の全てが必要とされるわけではなく、特定の活動の一部分が必要とされない場合があり、1つ以上の更なる活動が、説明されたものに加えて実行される場合があることに留意されたい。更に、活動が列挙されている順序は、必ずしもそれらが実行される順序ではない。
【0098】
前述の明細書では、特定の実施形態を参照して概念を説明してきた。しかしながら、当業者であれば、以下の特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更を行うことができることを理解する。したがって、明細書及び図面は、限定的な意味ではなく例示的な意味で考慮されるべきであり、全てのそのような修正は、本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【0099】
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(has)」、「有している(having)」、又はそれらの任意の他の変形は、非排他的な包含をカバーすることが意図される。例えば、特徴のリストを含むプロセス、方法、物品、又は装置は、必ずしもそれらの特徴のみに限定されず、明示的に列挙されていない、又はそのようなプロセス、方法、物品、又は装置に固有の他の特徴を含み得る。更に、反対のことが明示的に述べられていない限り、「又は」は、包含的な「又は」を指し、排他的な「又は」を指さない。例えば、条件A又はBは、以下のいずれか1つによって満たされる。Aが真(又は存在)かつBが偽(又は存在しない)、Aが偽(又は存在しない)かつBが真(又は存在する)、並びにA及びBの両方が真(又は存在する)である。
【0100】
また、「a」又は「an」の使用は、本明細書に記載される要素及び成分を記載するために使用される。これは、単に便宜上のためであり、本発明の範囲の一般的な意味を与えるためである。この記載は、1つ又は少なくとも1つを含むように読まれるべきであり、単数形は、それが他のことを意味することが明らかでない限り、複数形も含む。
【0101】
利益、他の利点、及び問題に対する解決策が、特定の実施形態に関して上で説明されている。しかしながら、利益、利点、問題に対する解決策、及び任意の利益、利点、又は解決策を生じさせ得るか、又はより顕著にし得る任意の特徴は、いずれか又は全ての請求項の重要な、必要な、又は本質的な特徴として解釈されるべきではない。
【0102】
本明細書を読んだ後、当業者は、明確にするために、別個の実施形態の文脈において本明細書に記載されている特定の特徴が、単一の実施形態において組み合わせて提供され得ることを理解するであろう。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で説明されている様々な特徴は、別々に又は任意のサブコンビネーションで提供され得る。更に、範囲で記載された値への言及は、その範囲内の各値及び全ての値を含む。
図1
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